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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026916
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】調剤支援システム
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20230221BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
A61J3/00 310E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132363
(22)【出願日】2021-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100204456
【弁理士】
【氏名又は名称】調 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047JJ07
4C047JJ26
4C047JJ28
4C047JJ31
4C047JJ34
4C047KK14
4C047KK18
4C047KK24
4C047KK25
4C047KK28
4C047KK31
(57)【要約】      (修正有)
【課題】手作業を含んだ調剤作業においても安全性に配慮した上で残存薬剤の管理を支援する調剤支援システムを提供する。
【解決手段】各種の薬剤について薬品名と規定量とを含む情報をデータ保持した薬品マスタと、処方情報に基づいて薬品マスタから薬品名および規定量を求めるとともに、薬品名と、規定量と、処方量と、を含んだ調剤者の調剤作業内容に係る表示データを作成する表示制御手段と、を備える情報処理装置13と、表示データを調剤者に目視可能に表示しうる表示手段14と、薬剤を用いて調剤作業を行うときに薬剤の供給容器の認識コードを読み取る読取手段11と、調剤作業において薬剤を収容している供給容器の重量を測定しうる測定手段12と、を備えた調剤支援システム10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種の薬剤について薬品名と規定量とを含む情報をデータ保持した薬品マスタと、
処方情報に基づいて前記薬品マスタから薬品名および規定量を求めるとともに、前記薬品名と、規定量と、処方量と、を含んだ調剤者の調剤作業内容に係る表示データを作成する表示制御手段と、を備える情報処理装置と、
前記表示データを前記調剤者に目視可能に表示しうる表示手段と、
前記薬剤を用いて調剤作業を行うときに当該薬剤の供給容器の認識コードを読み取る読取手段と、
前記調剤作業において前記薬剤を収容している供給容器の重量を測定しうる測定手段と、を備えた調剤支援システムであって、
前記調剤作業の終了後に、使用された当該薬剤のうち、所定の条件を満たす薬剤について、前記調剤作業において読み取られた前記認識コードに対応する薬剤を残薬として監査情報と共に表示させ、残薬登録操作により前記薬品マスタに残薬登録を行う残薬確定手段と、
前記残薬登録操作が行われた薬剤について、固有の識別番号を発行する識別番号発行手段と、
を有する調剤支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の調剤支援システムであって、
前記調剤作業において読取手段によって読み取られた前記認識コード及び前記測定手段による当該薬剤の重量の測定結果と前記規定量より残薬量を算出する残薬量算出手段を有することを特徴とする調剤支援システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の調剤支援システムであって、
前記読取手段において前記識別番号が読み取られたことを条件として、前記薬剤の使用期限が所定の期間内であるか否かを確認することを特徴とする調剤支援システム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載の調剤支援システムであって、
前記識別番号発行手段は、前記識別番号を前記供給容器が密閉された密閉部材の外から貼り付け可能な態様で印刷する印刷手段を有することを特徴とする調剤支援システム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の調剤支援システムであって、
前記読取手段において前記識別番号が読み取られたことを条件として、前記表示手段が前記調剤者に前記薬剤が使用中であると表示することを特徴とする調剤支援システム。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1つに記載の調剤支援システムであって、
前記読取手段において複数の前記識別番号が読み取られたことを条件として、
複数の前記識別番号に対応する前記薬剤の総量が、前記処方情報に含まれる当該薬剤の処方量を超えないか否かを確認する処方指定量確認手段を有することを特徴とする調剤支援システム。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1つに記載の調剤支援システムであって、
前記表示手段は、前記調剤者が視認可能なように前記処方情報に含まれる薬剤のうち、前記残薬登録された薬剤の一覧を表示するとともに、前記調剤者が前記残薬登録された薬剤の使用を決定するための指定手段を有することを特徴とする調剤支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液剤等を含む薬剤の混合や管理を支援するための調剤支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
注射薬を混合する混注作業や、小規模の薬局で行われる調剤作業では、人の手による手作業での調剤作業が依然として主流である。
こうした手作業を含んだ調剤作業について、自動化あるいは半自動化によって、調剤者の負担を減らすような調剤支援システムがいくつか提案されている(例えば特許文献1、2等参照)。
また、特に劇物を扱うこともあるような抗がん剤の混注作業では、患者の体格等に合わせて、薬剤の使用量を個々に変動させるものが多く、使用時に一定の残液が生じてしまう場合がある。このような残液は、従来では廃棄処分が推奨されていたが、医療費や廃棄コストの増大に伴い、近年ではこうした残液を十分に安全性に配慮した上で再利用する方法が模索されている。
例えば、完全自動化された混注装置においては、残液を装置内に保持することで、残存薬剤の効率的な使用を行う方法が提案されている(例えば特許文献3等参照)。
しかしながら、薬剤の調剤作業には前述のように手作業を含まざるを得ないことも多く、安全性に配慮した上で残存薬剤の管理を支援するような調剤支援システムが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5828832号公報
【特許文献2】特許第5743332号公報
【特許文献3】特許第5696822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる問題点を解決するべく考案されたものであり、手作業を含んだ調剤作業においても安全性に配慮した上で残存薬剤の管理を支援するような調剤支援システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の調剤支援システムは、各種の薬剤について薬品名と規定量とを含む情報をデータ保持した薬品マスタと、処方情報に基づいて前記薬品マスタから薬品名および規定量を求めるとともに、前記薬品名と、規定量と、処方量と、を含んだ調剤者の調剤作業内容に係る表示データを作成する表示制御手段と、を備える情報処理装置と、前記表示データを前記調剤者に目視可能に表示しうる表示手段と、前記薬剤を用いて調剤作業を行うときに当該薬剤の供給容器の認識コードを読み取る読取手段と、前記調剤作業において前記薬剤を収容している供給容器の重量を測定しうる測定手段と、を備えた調剤支援システムであって、前記調剤作業の終了後に、使用された当該薬剤のうち、所定の条件を満たす薬剤について、前記調剤作業において読み取られた前記認識コードに対応する薬剤を残薬として監査情報と共に表示させ、残薬登録操作により前記薬品マスタに残薬登録を行う残薬確定手段と、前記残薬登録が行われた薬剤について、固有の識別番号を発行する識別番号発行手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、手作業を含んだ調剤作業においても安全性に配慮した上で残存薬剤の管理を支援するような調剤支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の調剤支援システムのシステム構成の一例を示す図である。
図2】調剤支援システムの機能の構成の一例を示す図である。
図3】調剤支援システムで用いられる薬剤や容器の模式的な図である。
図4】調剤支援システムを用いた調製作業の一例を示す図である。
図5】調剤支援システムが表示手段に表示する作業指示の一例を示す図である。
図6】調剤支援システムを用いた残薬登録作業の表示画面の一例を示す図である。
図7】調剤支援システムを用いた残薬登録表示画面の一例を示す図である。
図8】残薬登録がなされた薬剤の一例を示す図である。
図9】調剤支援システムを用いた調製作業の他の一例を示す図である。
図10】調剤支援システムが表示手段に表示する残薬選択画面の一例を示す図である。
図11】調剤支援システムが表示手段に表示する作業指示の一例を示す図である。
図12】表示手段が表示する画面の変遷の一例である。
図13】表示手段が表示する画面の変遷の他の一例である。
図14】調剤支援システムが表示手段に表示する作業指示の一例を示す図である。
図15】調剤支援システムを用いて残薬を使用した時の監査時における表示画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の調剤支援システムの一例である具体的な形態を、図1に沿って説明する。
以降の説明図においては、簡明化等のため、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【0009】
調剤支援システム10は、図1に示すように、プログラマブルな情報処理装置13と、情報処理装置13の入力機器として情報処理装置13に信号ケーブル等で接続されたリーダ11と電子秤12と操作入力装置15と処方情報入力装置16と、情報処理装置13の出力機器として情報処理装置13に信号ケーブル等で接続された表示装置14とを具えたものであり、この例では、それら総てが調剤台4あるいは他の調剤台4’にそれぞれ装備されている。
ここでは、後述する供給容器6からシリンジなどの手動式吸入器具8を用いて水剤(薬剤M)を必要量だけ抜き取ったり混注したりする調剤作業について支援を行う場合を例示する。
【0010】
情報処理装置13は、図2に示すような電子カルテ等の上位システム200から処方箋等の処方情報を受け取る情報処理部であって、パーソナルコンピュータのようなプログラマブルな汎用のハードウェアと、当該ハードウェアにインストールされたプログラム及びデータとを備えた情報処理端末である。
情報処理装置13には、薬剤Mの外箱等の供給容器6に表示されたバーコード等の認識コードを読み取る読取手段としてリーダ11が接続されている。
また、情報処理装置13の内部あるいは外部には、薬剤に関する情報を参照可能な薬品マスタデータベースとして、データベース80が備えられており、情報処理装置13と双方向に通信可能な態様で接続される。
調剤支援システム10はまた、調剤作業において薬剤Mを収容している供給容器6の重量を測定しうる測定手段として電子秤12を有している。
【0011】
情報処理装置13は、入力された処方情報から、薬剤Mの薬品名、規定量、処方量等を含んだ調剤者の調剤作業内容に係る表示データを作成する表示制御手段40と、供給容器6に残留した薬品Mについて残薬として残薬登録を行う残薬確定手段50と、残薬登録が行われた薬剤Mについて、固有の識別番号であるロット番号を発行する識別番号発行手段60と、を有している。
残薬確定手段50は、残薬量算出手段54、使用期限判断手段56、処方指定量確認手段57、を有している。
【0012】
操作入力装置15は、人の操作によって所望の情報を情報処理装置13に入力するための装置であり、本実施形態では調剤台4の下方に配置されたフットペダルである。このようにフットペダルとすることで調剤台4において調製者の手が塞がっている場合にも、足で操作可能になっている。
なお、操作入力装置15は、かかる構成に限定されるものではなく、例えば手指で操作するマウス、キーボード等の既存の入力装置であってよい。
また、操作入力装置15と、表示装置14とを一体にした態様として、表示と同時に入力操作も可能なタッチパネル方式を採用しても良い。
【0013】
調剤台4は、薬剤Mを収容した供給容器6から手動式吸入器具8にて水剤を抜き取る調剤作業を調剤者が遂行する作業台であり、調剤支援システム10を設置して調剤作業が行えれば、簡素な平机でも良く、作業板の付いた調剤棚でも良く、単独で設置できる設備でも良く、他の設備に付属した設備でも良く、病院に設置されることが多いが、その他の所に設置されていても良く、大気圧下でも良く、陽圧や陰圧の環境に置かれても良く、クリーンルームやクリーンベンチ等の清浄区間の内外いずれに置かれても良い。
【0014】
調剤台4の台上である作業面の上には、リーダ11と電子秤12が置かれており、調剤作業時には供給容器6と手動式吸入器具8も置かれる。
また、調剤台4のうち調剤者の視認しやすい部位には、画像投射装置である表示装置14が設置され、調剤台4のうち調剤者の操作しやすい部位に操作入力装置15が設置されている。
なお、この例では、説明のため情報処理装置13も調剤台4に設置されているが、調剤者が直に知覚や操作するものではない情報処理装置13や処方情報入力装置16は調剤台4とは別の所に設置されていても良く、また情報処理装置13とネットワークで接続されたものであっても良い。また、調剤台4と同様の構成を備えた調剤台4’を複数備えても良い。
【0015】
供給容器6は、図3に示すように本実施形態では特に水剤のような薬剤Mを収容して密封した容器であり、典型例としてバイアルや,ボトル,アンプル,バッグが挙げられる。水剤は、注射薬が典型例であるが、注射薬を薄める希釈液や,施用前に液化する錠剤や散薬,その液化に用いる溶解剤,生理食塩水からなる点滴用の輸液なども該当する。なお、水剤以外の薬剤たとえば錠剤や箱詰め薬剤などを扱う調剤作業を支援する場合には、供給容器6が密封されていないこともある。
手動式吸入器具8は、人手で操作することにより供給容器6から水剤を抜き取って内部空間に吸入できる器具であり、典型例として、注射針を装着した注射器や,注射針の着いていないシリンジが挙げられる。水剤以外の取扱では計量カップ等のこともある。
【0016】
電子秤12は、薬剤Mを収容している供給容器6や薬剤Mを吸入した手動式吸入器具8の重量を精度良く測定しうる精密な秤であって、測定重量すなわち測定結果の重量値を情報処理装置13に送信するようになっている(例えば特許文献1参照)。
【0017】
処方情報入力装置16は、例えば情報処理装置13に内蔵された有線LANインターフェイス及び/又は情報処理装置13に外付けされた無線通信装置などからなり、既述した外部の処方箋受付装置や処方オーダーエントリシステムのような上位システム200から同じく既述した処方指示の内容すなわち処方箋データ(処方箋の電子データの処方情報)や調剤指示データ(支援対象処方情報)を取得して情報処理装置13のデータ処理に供するようになっている。
なお、かかる処方情報は、操作入力装置15を使用して情報処理装置13に処方内容や調剤指示を入力することもできるので、操作入力装置15も処方情報入力装置の一種であるとしても良い。
処方情報入力装置16と操作入力装置15と表示装置14と次に詳述する情報処理装置13は、任意の物同士が一体化されていても良く、あるいは全て別体でも良い。
【0018】
本実施形態では、識別番号発行手段60は、発行されたロット番号を印字するための印刷手段としてプリンタ61を有している。
プリンタ61は、ロット番号と、薬品名称と、用量と、成分量と、使用期限と、調製日時と、調製者と、最終監査者と、オーダーNoと、入院・外来の種別と、患者番号と、患者名と、等が記載され、さらにリーダ11によってロット番号を読み取り可能なようにバーコードとして表示コード62を印字する。
プリンタ61は、例えばロット番号と表示コード62とを含んで印字されたシール63を、後述するようにロット番号に対応する残薬登録された薬剤Mにジップ等の密閉部材90の外から貼り付け可能な態様で印刷する。
なお、本実施形態では特にプリンタ61は、なお、図1においてはプリンタ61は最終監査台5に備えられているが、調剤台4、4’に備えられても良く、また情報処理装置13と接続可能な位置であれば任意の位置に備えられていて良い。
【0019】
リーダ11は、例えば図8に示して後述するようなロット番号と紐づけられた表示コード62と、薬剤の外箱等の供給容器6に記された図3に示す認識コードたる正規コード70を読み取り可能なバーコードリーダーであり、例えば調剤台4の上や、最終監査台5の上に配置されている。
リーダ11は、情報処理装置13に接続されており、表示コード62や正規コード70を読み取ると、かかるコードに従って対応する薬剤Mの識別情報を情報処理装置13へと送信可能である。
【0020】
表示装置14は、本実施形態では調製者が調剤台4に座ったとき、その正面の見やすい位置に調剤指示情報を目視可能に表示させるための表示手段であって、プロジェクタのような画像投射装置として示している。
情報処理装置13は、表示制御手段40によって作成された表示データを表示装置14へと送信し、表示装置14は例えば調製者の入力に従って手順通りにかかる表示データを順次表示する。
調製者は、かかる表示データを視認しながら調剤を行うことで、実際の薬剤Mの処方量や注意事項等の調剤指示情報を確認しながら、安全に調剤を行うことができる。
【0021】
このような調剤支援システム10を用いて、残薬を管理する方法について図4を用いて説明する。なお、本実施形態では、新規に用意された薬剤Mが残薬登録される場合と、残薬登録された薬剤Mを使用する場合とに分けて説明を行う。
なお、薬剤Mについてこのような残薬登録を行うかどうかの指示は、予め情報処理装置13において、薬品マスタデータ内の薬剤Mの「残薬管理」フラグをオン状態にすることで行われ、どのような薬剤について残薬管理を行うかどうかは、調製者、最終監査者等を含む使用者によって任意に定められる。
また、このような残薬管理は、液体薬品のみにおいて行われることが望ましい。
【0022】
まず、残薬管理を行う場合も行わない場合も、上位システム200から処方情報入力装置16を介して情報処理装置13へと処方箋データ(処方箋の電子データの処方情報)や調剤指示データ(支援対象処方情報)が入力される(処方情報取得ステップS101)。
【0023】
これらの処方箋データは、同時に調剤支援システム10以外の各種装置にも流れており、調製者は手動あるいは自動で、処方箋データに記載された薬剤Mを含む処方薬剤を、トレイ100に搭載する(事前準備ステップS102)。
【0024】
上位システム200は、トレイ100を例えば患者番号やトレイ番号等の番号や、RP(所謂レセプト)単位で管理しており、事前準備ステップにおいては、これらの番号と、対応する薬剤Mの名称や処方量に従って、1RPごとに薬剤が準備される。
このとき、上位システム200は、調剤支援システム10を介して調製者に対してこれらの準備されるべき薬剤を報知しても良いし、既に知られている自動払出装置等の外部装置に処方箋データを通信し、トレイ100に払い出されるようにしても良い。また、これらの手段を組み合わせても良い。
【0025】
このような事前準備ステップを終え、トレイ100内に必要な薬剤が確保されると、トレイ100内に必要な薬剤が揃っているか否かを確認する前監査が行われる(前監査ステップS103)。
前監査ステップあるいはそれよりも前の段階において、抗がん剤などの注射薬は、調剤指示データに従ってRP単位・施用単位で取り揃えられ、調剤指示を印刷した調剤指示箋と一緒にトレイ100に収容される。
【0026】
調製者は、前監査ステップを経た後、トレイ100を前述のクリーンルームあるいは無菌室のような清浄環境下に所定の手順で持ち込み、調製作業を行う(調製ステップS104)。
【0027】
表示装置14は、かかる調製ステップにおいて、前監査ステップで揃えられたRP単位あるいは施用単位の調剤指示データを選択可能なものとして表示しており、調製者は、かかる調剤指示データを確認しながら、操作入力装置15を用いてトレイ100の調剤指示箋に対応する適切な調剤指示データを選択する。
なお、この選択は例えばトレイ100の調剤指示箋をリーダ11に読み取らせることによって行われても良いし、操作入力装置15を用いて調製者が行うとしても良い。
調製者は、かかる選択がなされた後、トレイ100内から所定の薬品Mを取り出して、リーダ11に薬品Mの正規コード70を読み込ませる(ステップS105)。
すると、表示装置14には、かかる薬品Mについての調剤指示データが表示される(ステップS106)。
以降の説明では具体的に、図5(a)に示すように、処方箋データによって生理食塩液500mLと、フルオロウラシル注射液を0.125g(125mg)処方が指示された場合を例示する。このとき、調剤指示データとしては、5-FU注250mg/5mLを収容している供給容器6から、シリンジに2.5mLだけ抜き取ることが指示される。
【0028】
調製者は、まずトレイ100から取り出した薬品Mとしてフルオロウラシル注射液の供給容器6を、電子秤12に載置して、その重量を測定する(ステップS107)。
ここで、調剤支援システム10が取り扱う薬剤Mの薬剤収容量等の諸元データについては、前述のデータベース80内の薬剤マスタに予め登録されており、調製者は、表示装置14に表示される諸元データから供給容器6内の薬剤Mが処方に必要な規定量含まれているかどうかの確認をすることができる。
また、表示装置14には、後述するように薬剤Mを供給容器6からどれだけ抜き出せばいいかの抜取目標量が表示される。
調製者は、このように表示装置14によって視覚的に表示された調剤指示データに基づいて、所定の手順に沿って調製を行う(ステップS108)。なお、これらの調剤指示データの具体例については、例えば特許第5828832号等に記載された具体例を用いても良い。
【0029】
電子秤12は、調製ステップ前後での供給容器6の重量の変化を測定している。情報処理装置13は、測定された供給容器6の重量の変化を、供給容器6からの抜取量として記録する(ステップS109)。
このとき表示装置14は、例えば抜取目標量を抜き取った後の供給容器6を電子秤12に載置することを調製者に促す。
【0030】
調製者が、かかる指示にしたがって、供給容器6から手動式吸入器具8を用いて注射薬を抜取り、電子秤12に供給容器6を載置すると、調剤支援システム10は、かかる重量を計測して、ステップS107において算出した抜取目標値から所定の範囲(例えば±5%)に入っているかどうかが判定される。
例えば、図5(b)に示した監査画面の例では、目標成分量125mgに対応する目標体積2.50mL、目標重量2.62gが表示されるとともに、調製ステップにおける調製結果の記録として、抜取量として結果重量2.5gと結果体積2.39mLとが表示されている。
調剤支援システム10は、さらにかかる調製が行われた調製者や調製時刻、調製内容についても記録を行うことが好ましい。また、調剤支援システム10にカメラのような撮影部を設け、かかる調製作業について画像データとして記録を残すとしても良い。
【0031】
このようにして手動式吸入器具8内に調製された注射薬Mbは、供給容器6とともに、トレイ100に載せられて調剤台4近傍に位置する最終監査台5へと持ち込まれる(ステップS110)。
なお、ここでは実施例として調剤台4とは別途に最終監査台5にて最終監査を行う場合について述べるが、かかる構成に限定されるものではなく、調剤台4において調製者とは別の最終監査者が監査を行うとしても良いし、全く別の場所において監査を行うとしても良い。
【0032】
ステップS110において、最終監査者は、トレイ100内の注射薬Mbについて、調製ステップで行われた調製が処方データと合致するか否かを判定する。
具体的には、調剤支援システム10は、表示装置14あるいはモニタ17のような表示手段を用いて、調製済み処方である注射薬Mbの調製者、調製時刻、調製内容を参照可能とする。
最終監査者は、例えば最終監査台5に設置された表示手段であるモニタ17に表示された図5(b)の画面から注射薬の調製者、調製時刻、調製内容を確認するとともに、トレイ100に収められている供給容器6、手動式吸入器具8の実物を確認し、処方されたオーダー情報と調製記録とが互いに一致していることを確認する。
調製ステップで行われた調製が処方データと合致すると判断すると、最終監査者は操作入力装置15を用いて監査が正常に行われた旨を記録する。情報処理装置13は、かかる操作が行われたことを条件として最終監査内容(担当した最終監査者、監査時刻)を記録に残す。
【0033】
さて、従来の調製方法や、調剤支援システムでは、このように調製者の調製内容や、最終監査者の監査時刻を記録することで、注射薬について正しく調製が行われたことを確認するような仕組みが行われていた。
【0034】
本実施形態では、かかる構成に加えてさらに、トレイ100において残された残薬について、薬品マスタ上で残薬管理フラグがONの薬品が所定以上の量残ってしまった場合には、かかる薬品について残薬管理を行うことが可能である。
例えば上述の図5(a)(b)で示した処方データでは調製された5-FU注250mg/5mLについて、処方量が125mg(0.5瓶)であることから、供給容器6の内部には、残薬として結果体積2.39mLを除いた2.61mLが残っている。
【0035】
このような残薬は、従来では廃棄されていたが、医療費や廃棄コストの増大に伴い、近年ではこうした残薬を十分に安全性に配慮した上で再利用する方法が模索されている。
【0036】
調剤支援システム10は、最終監査ステップS110において、処方データの中に、処方量が整数値以外となる薬剤があり、かつ当該薬剤が、薬剤マスタデータにおいて残薬管理フラグがONの場合には、かかる残薬N1について、調剤支援システム10はモニタ17に残量印刷ボタン71を表示する(ステップS111)。
このときステップS111は、処方された薬剤のうち残薬管理フラグを満たす薬剤の有無を確認するための残薬管理確認ステップである。
残量印刷ボタン71が押下されると、残薬量算出手段54は薬品マスタに登録された薬品Mの基準量(5mL)から、結果体積2.39mLを除いた2.61mLを残薬N1の用量として算出する。このように、調製ステップにおいて読み取られた正規コード70に対応する薬剤が残薬として監査情報と共に表示される。
調剤支援システム10は、最終監査者によって残量印刷ボタン71が押下されたことで、残薬登録処理へと移行する(ステップS112)。
なお、ステップS111において、残薬確認フラグがONとなっている薬剤が含まれていない場合や、処方量が全て整数値であって、残薬が生じないか生じたとしても所定量以下の微小量である場合には、通常通り、最終監査を終える。
【0037】
ステップS112の残薬登録処理において、調剤支援システム10は、図6に示すような残薬登録画面を表示する。
また、このとき調剤支援システム10は、薬品マスタから登録された残薬N1の薬品の使用期限と保管条件とを確認して、用量とともに残薬登録画面に表示しても良い。
最終監査者は、かかる残薬登録画面において、残薬ラベルを印字したい薬品(例えば5-FU注250mg/5mLとして表示された残薬N1)に操作入力装置15を用いてチェックを入れ、印刷ボタン72を押下する。
これらの用量等の情報は、例えば最終監査者が手動入力操作によって用量を実際の供給容器6の残量等から確認して書き換えても良い。
また、処方量が整数であって、名目上は残薬が発生しない場合にも、微小に残った残薬を利用したい場合等も考えられる。その場合には、ステップS112で表示される残薬登録画面において、新規登録ボタン73を押下し、図7に示すような残薬新規登録画面にて用量、薬品名称、使用期限等の必要な情報を操作入力装置15を用いて入力しても良い。
このように新規登録された残薬についても、同様に残薬登録画面に表示して良い。これらステップS112において最終監査者が行う操作が残薬登録操作である。
【0038】
情報処理装置13内の識別番号発行手段60は、残薬登録画面においてチェックが入れられた残薬N1について、固有のロット番号を発行する(ステップS113)。
ステップS113で印刷ボタン72が押下されると、プリンタ61は、例えば図8に示すようなロット番号と表示コード62とを含んで印字されたシール63を、ジップ等の密閉部材90の外から貼り付け可能な態様で印刷する(ステップS114)。
このとき、ロット番号は残薬N1に固有の識別番号であり、かかる識別番号に1対1で紐づいた形で、リーダ11に読み取り可能な表示コード62が発行されている。
【0039】
最終監査者は、最終監査を終えたトレイ100について、監査済として一連の工程を終了する。
また、残薬管理される残薬N1については、供給容器6ごと密閉部材90に入れ、密閉部材90にはステップS114で印刷されたシール63を貼り付けて、安全キャビネットや保管庫等、所定の保存場所に載置する。
【0040】
本実施形態では、電子秤12が調製ステップにおいて測定した重量に従って調剤支援システム10が抜取量を算出し、薬品マスタに登録された基準量から、抜取量を差し引きすることで最終監査時に残薬N1の用量を算出した。
薬品マスタに登録される薬品の量には、処方上の規定量(例えば5-FU注250mg/5mLであれば5.0mL)の他、処方上の規定量よりも大きく、実際に供給容器6に入れられている過量充填量を用いる方が適切な場合もあり得る。
本実施形態においては、残薬量算出手段54は、基準量を規定量として残薬量の算出を行う場合についてのみ述べたが、基準量として過量充填量を用いても良い。
なお、何れの場合にも、規定量及び過量充填量は、薬品のメーカーから薬品のバーコードやYJコード等の正規コード70をリーダ11に読み取らせることで把握可能であり、事前に薬品マスタに登録することが可能である。
【0041】
さて、上述の手順に従って残薬管理された残薬N1~N5が保管場所にあるときに、これらの残薬N1~N5を使用する場合の工程について図9を用いて説明する。
【0042】
なお、かかる工程においても、基本的な手順については図3図8の構成と共通しているため、適宜説明を省略する。
前監査ステップS203までの動作については、既に述べたのと共通の内容であるため説明を省略する。
【0043】
調剤支援システム10は、ステップS204において、処方箋データに使用可能な残薬がある場合には、オーダー情報の下部に、残薬N1~N5を使用可能な残薬データの一覧として図10に網掛けで示すように残薬対象薬品名と共に表示する。
【0044】
新規の薬品Nに代えて、残薬N1を用いる場合について説明する。
調製者は、ステップS204において使用可能な残薬N1、N2があることを視認すると、残薬N1、N2を調剤台4にもってきて、残薬N1に張り付けられたシール63の表示コード62を、リーダ11を用いて読み取る(ステップS205)。
表示コード62が読み取られたことを条件として、調剤支援システム10は、かかる残薬データ内の残薬N1の状況欄の状態を「使用中」に変更するとともに、選択された残薬N1の用量や成分量等の情報が、処方箋データに追加される。
同様に、調製者は、残薬N2に張り付けられたシール63の表示コード62を、リーダ11を用いて読み取る(ステップS205)。
それぞれの残薬N1、N2は、既に述べたように固有のロット番号とともに表示コード62によって管理されている。したがって、表示コード62をリーダ11を用いて読み込ませることにより、残薬N1、N2の用量を容易に把握することができる。
【0045】
調剤支援システム10は、表示コード62から読み取った残薬N1、N2の用量が、処方量を満たすか否かについて判定を行う(ステップS206)。
ステップS205において読み取られた残薬N1の用量が、処方量を満たしている場合には、表示装置14は、図11に示すように、薬品Nの行について残薬N1で置き換えて表示する(S208)。
また、処方量を満たしていない場合には、図11のN2の欄に示すように、選択した残薬N2の用量を処方量から除いた分だけを新規の薬品Nから使用するように、表示を変更するとともに、残薬使用の旨を表示する(S207)。
図11ではより具体的に、5-FU注1000mg/20mLの一部について、用量0.61mLの残薬N2を使用する場合について示している。
このとき、0.61mL/20mL=0.0305(V)であるので、残り0.9695(V)分については、トレイ100に入っている新規の薬品Nを使用することとなる。
このように選択された残薬の用量が処方箋データの必要用量を超えていない場合には、調剤支援システム10は、必要用量から選択された残薬量分を引いた調製量と、選択した残薬量分の調製量との両方が表示される。
【0046】
また、ステップS206において調剤支援システム10は、薬品マスタから表示コード62に登録されている残薬N1が、使用期限を満たしているかどうかについても判定を行う。
例えば残薬N1が使用期限を満たしていない場合には、表示装置14は、図12に示すように、使用期限が切れている旨の表示を行う。
【0047】
調製者は、表示コード62を読み込むことで使用する残薬N1の選択がなされた後、密閉部材90から残薬N1を取り出して、リーダ11に残薬N1の供給容器6の正規コード70を読み込ませる(ステップS209)。
調剤支援システム10は、ステップS205において表示コード62を読み込ませた上でさらにステップS209において残薬N1の正規コード70をも読み込ませることによって、残薬登録時の薬品情報が正しかったかどうかを確認することができる。
かかる構成によれば、残薬コードである表示コード62と、薬品情報を示す正規コード70とをダブルチェックすることとなるので、残薬利用時の薬品の取り違えのようなリスクを防ぐことができる。
【0048】
さらに、表示コード62を読み込ませた際に、調剤支援システム10が当該表示コード62に対応する薬品について使用中と表示することで、複数人の調製者がそれぞれ残薬を使用したい場合にも、互いに同一の残薬を取りに行ってしまうことがなくなり、調製作業の効率化に寄与する。
また、調剤台4において残薬N1の使用を取りやめる場合には、読み込んだ残薬N1の表示コード62を再度調剤台4のリーダ11にて読み込むことで、残薬N1の使用中状態を解除し、使用の予約をキャンセルすることができる。
このように、表示コード62の読み込みによって、残薬N1を使用するかしないかの操作を簡易に行うことができる。
なお、かかる使用中状態の残薬N1の表示コード62を、他の調剤台4’に配置されたリーダ11’で読み込んでしまった場合には、当該調剤台4’の表示装置14’は、図13に示すように、かかる画面において該当の残薬N1が使用中である旨の表示を行うことが好ましい。
【0049】
このように残薬N1、N2を使用する際にも、表示装置14には、ステップS106と同様に調剤指示データが表示される(ステップS210)。
具体的には例えば、図11に示すような処方箋データによって、生理食塩液500mLと、フルオロウラシル注射液を1.250g(1250mg)処方する場合が例示されるときには、調剤指示データとして、5-FU注250mg/5mLを収容している残薬N1の供給容器6から、シリンジに5mLだけ抜き取ること、5-FU注1000mg/20mLを収容する供給容器6からシリンジに20×0.9695=19.39より19.39mLだけ抜き取ること、残薬N2の供給容器6から0.61mLだけ抜き取ること、が図14に示すようにそれぞれ指示される。また、何らかの残薬(N1、N2)を使用して調製作業を行う場合には、表示装置14に表示される表示画面において、残薬を使用した旨を表示する残薬使用マーク65が表示される。
調製者は、かかる調剤指示データに従って、手動式吸入器具8を用いて供給容器6から薬剤を抜き取るとともに、かかる抜き取り前後で供給容器6を電子秤12に載置することで、調剤支援システム10が抜取量をそれぞれ記録する(ステップS211)。
かかる調製動作中の調剤支援システム10の動作は、ステップS108~ステップS109と同様である。
また、調製作業中に調製者が何らかの理由によってかかる動作を保留した場合には、新たに残薬の追加は行えないようになっていることが好ましい。保留中の処方箋データに対して新たに残薬N3の表示コード62を読み込もうとした場合には、保留中であるため残薬の選択ができない旨の表示がなされることが好ましい。
【0050】
さて、このような調製作業を行ったあと、本実施例でも同様に最終監査を行う(ステップS214)。
何らかの残薬を使用して調製作業を行った場合には、ステップS214でモニタ17に表示される最終監査の表示画面において、図15に示すように残薬を使用した旨を表示する残薬使用マーク65が表示される。
なお、上述の例では、残薬N1、N2を使用した結果、開封されていない未使用の薬剤と、20-19.39=0.61mLの残薬が残った供給容器6とがトレイ100に載置されているはずである。
【0051】
最終監査者は、新たに生じた残薬についてはステップS112~S114の動作と同様にして、再度、新たな残薬N6として残薬登録処理を行う。
具体的には、識別番号発行手段60が用量が規定量-抜取量=20-19.39=0.61mLの新たな残薬N6として、識別コードである固有のロット番号を発行し、プリンタ61がロット番号と表示コード62とを含んで印字されたシール63を印刷する。なお、例えば上述の開封されていない未使用の薬剤も残薬として扱う場合には、未使用の薬剤について、正規コード70をリーダ11で読み込んでおくことで、識別番号発行手段60が同様に固有のロット番号を発行し、20mLの残薬としての登録も可能である。
最終監査者は、残薬N6について、新たに密閉部材90の中に入れて外側からシール63を貼り付け、保管場所へと移動させる。
【0052】
このような作業手順を繰り返すことによって、調製作業において生じてしまった残薬について、クリーンルーム内で管理を行いながらも、調剤支援システム10がロット番号によって管理できるので、手作業を含む調製作業においても、安全性に配慮された残薬の有効利用を行うことができる。
【0053】
以上述べたように、本実施形態における調剤支援システム10は、各種の薬剤について薬品名と規定量とを含む情報をデータ保持した薬品マスタと、処方情報に基づいて薬品マスタから薬品名および規定量を求めるとともに、薬品名と、規定量と、処方量と、を含んだ調剤者の調剤作業内容に係る表示データを作成する表示制御手段40と、を備える情報処理装置13と、表示データを調剤者に目視可能に表示しうる表示装置14と、薬剤を用いて調剤作業を行うときに薬剤の供給容器6の正規コード70を読み取るリーダ11と、調剤作業において薬剤を収容している供給容器6の重量を測定しうる電子秤12と、を備えている。
また、かかる調剤支援システム10は、調剤作業の終了後に、使用された薬剤のうち、所定の条件を満たす薬剤について、前記調剤作業において読み取られた正規コード70に対応する薬剤を残薬として監査情報と共に表示させ、残薬登録操作により薬品マスタに残薬登録を行う残薬確定手段50と、残薬登録操作が行われた薬剤について、固有の識別番号を発行する識別番号発行手段60と、を有している。
【0054】
また本実施形態における調剤支援システム10は、調剤者が調剤作業において残薬登録の済んだ薬剤を使用するときには、リーダ11を用いて正規コード70に加えて表示コード62を読み取ることで、残薬の使用を確認するとしても良い。
かかる構成によれば、薬剤の外箱に印字された正規コード70と、最終監査時において付与された残薬の薬剤の情報とが、一致するか否かを判別可能であるから、取り違える危険をなくして、安全に残薬の利用を可能とする。
【0055】
また本実施形態では、リーダ11において表示コード62が読み取られたことを条件として、残薬N1の使用期限が所定の期間内であるか否かを確認する使用期限判断手段56を有している。
かかる構成によれば、使用期限の確認をも表示コード62の読み込みによって同時に行えることができるから、操作の煩雑性を増加させることなく、安全に残薬を利用することができる。
【0056】
また本実施形態では、識別番号発行手段60は、表示コード62を供給容器6が密閉された密閉部材90の外から貼り付け可能な態様で印刷するプリンタ61を有する。
かかる構成により、密閉状態の外側から残薬N1の薬品名や、残量、使用期限をリーダ11によって確認可能であるから、残薬の劣化や汚染を極力防ぎつつも、安全に残薬を利用することができる。
【0057】
また本実施形態では、リーダ11において表示コード62が読み取られたことを条件として、表示装置14が調剤者に薬剤が使用中であると表示する。
かかる構成によれば、異なる複数の調剤台を併用するような環境下においても、残薬を複数人で取り合うことなく、安全に残薬の利用が可能となる。
【0058】
また本実施形態では、リーダ11によって、互いに異なる複数の表示コード62が読み取られたことを条件として、複数の表示コード62に対応する薬剤の総量が、処方情報に含まれる薬剤の処方量を超えないか否かを確認する処方指定量確認手段57を有する。
かかる構成により、調剤支援システム10は、残薬の増加を極力減らすことができる。
【0059】
また本実施形態では、表示装置14は、調剤者が視認可能なように処方情報に含まれる薬剤のうち、残薬登録された薬剤の一覧を表示する。また、調剤支援システム10は、調剤者が操作入力装置15を用いて選択することで、残薬登録された薬剤の使用を決定する。
【0060】
また本実施形態では、調製ステップにおいてリーダ11によって読み取られた認識コード62及び電子秤12による抜取量と規定量より残薬量を算出する残薬量算出手段54を有している。また、残薬量算出手段54が算出した残薬量は、かかる残薬確定手段50によって確定された残薬の量を表示コード62と紐づけられて発行する。
かかる構成によれば、最終監査時に残薬の量を共通の動作で読み込ませることができるので、作業を増加させることなく、残薬の量を調製作業中に測定された抜取量と紐づけて記録することができる。
【0061】
上述のように、本実施形態では残薬管理について述べる都合上、液剤についての説明のみ行ったが、調剤支援システム10は、液剤のみならず、凍結乾燥剤を溶解剤を用いて溶融して調製を行うタイプの注射薬についても使用可能である。
【0062】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0063】
例えば本実施形態では、調剤支援システム10として、リーダ11、電子秤12、情報処理装置13、表示装置14等が接続されたシステムの実施形態について示したが、例えばこれらのシステムは、ステップS101~ステップS215において上述した各手段を実行するプログラムあるいは当該プログラムが記憶された各種記憶媒体によって実行されるとしても良い。
また、これらを実行するための端末や機器は、それぞれ別個の場所に載置され、互いにネットワークで接続されるとしても良い。
【0064】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0065】
6…供給容器
8…手動式吸入器具(シリンジ)
10…調剤支援システム
11…読取手段
12…測定手段
13…情報処理装置
14…表示手段
40…表示制御手段
50…残薬確定手段
54…残薬量算出手段
60…識別番号発行手段
61…印刷手段
62…認識コード
67…処方指定量確認手段
80…薬品マスタ(データベース)
90…密閉部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15