(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026931
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】エアバッグ取付構造
(51)【国際特許分類】
B60R 21/215 20110101AFI20230221BHJP
B60R 21/205 20110101ALI20230221BHJP
【FI】
B60R21/215
B60R21/205
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132385
(22)【出願日】2021-08-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋介
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA14
3D054BB11
3D054BB16
3D054BB23
3D054BB24
(57)【要約】
【課題】扉部の下方の空間内でのエアバッグの膨張による圧力の上昇の遅れを抑制する。
【解決手段】エアバッグ取付構造10は、少なくとも一端部41がインストルメントパネル2の開裂線6に沿うように設けられ、エアバッグ4aが展開することにより一端部41が開く扉部40と、エアバッグ4aが展開すると扉部40が開いて開状態になる開口部20aを有し、エアバッグ4aを収容するエアバッグケース4bが取り付けられる取付部20と、扉部40を回動可能に保持するヒンジ部30と、エアバッグ4aと扉部40との間の展開通路8が狭まるように取付部20から突出し、エアバッグ4aが展開するのをガイドするガイド部50と、ガイド部50に接続されてエアバッグ4aとヒンジ部30との間に介在し、エアバッグ4aの展開時にエアバッグ4aによって付勢され扉部40と共に回動するフラップ60と、を備え、ガイド部50は、フラップ60と比較して剛性が高い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグをインストルメントパネルに取り付けるエアバッグ取付構造であって、
少なくとも一端部が前記インストルメントパネルの開裂線に沿うように設けられ、前記エアバッグが展開することにより前記一端部が開く扉部と、
前記エアバッグが展開すると前記扉部が開いて開状態になる開口部を有し、前記エアバッグを収容するエアバッグケースが取り付けられる取付部と、
前記取付部に接続され、前記扉部を回動可能に保持するヒンジ部と、
前記エアバッグと前記扉部との間の展開通路が狭まるように前記取付部から突出し、前記エアバッグが展開するのをガイドするガイド部と、
前記ガイド部に接続されて前記エアバッグと前記ヒンジ部との間に介在し、前記エアバッグの展開時に前記エアバッグによって付勢されて前記扉部と共に回動するフラップと、
を備え、
前記ガイド部は、前記フラップと比較して剛性が高い、
ことを特徴とするエアバッグ取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のエアバッグ取付構造であって、
前記フラップにおいて、回動における軸方向の両端部が当該両端部の間の中央部と比較して剛性が高い、
ことを特徴とするエアバッグ取付構造。
【請求項3】
請求項2に記載のエアバッグ取付構造であって、
前記フラップは、前記両端部に前記ガイド部と連結されるリブを各々有する、
ことを特徴とするエアバッグ取付構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のエアバッグ取付構造であって、
前記ガイド部は、前記エアバッグの展開時に前記フラップの回動を規制する回動ストッパ部を有する、
ことを特徴とするエアバッグ取付構造。
【請求項5】
請求項4に記載のエアバッグ取付構造であって、
前記回動ストッパ部は、前記フラップと前記ガイド部との接続箇所から、前記エアバッグの展開方向における外側に所定距離離れた位置に設けられる、
ことを特徴とするエアバッグ取付構造。
【請求項6】
請求項5に記載のエアバッグ取付構造であって、
前記所定距離は、少なくとも前記フラップの厚さ分の距離である、
ことを特徴とするエアバッグ取付構造。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか一つに記載のエアバッグ取付構造であって、
前記フラップにおいて、前記エアバッグが展開した状態で前記回動ストッパ部に当たる当接部は、他の部分よりも厚く形成される、
ことを特徴とするエアバッグ取付構造。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載のエアバッグ取付構造であって、
前記ガイド部は、前記開口部から前記エアバッグを見たときに前記エアバッグと重複しない範囲で前記取付部から突出している、
ことを特徴とするエアバッグ取付構造。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一つに記載のエアバッグ取付構造であって、
前記ガイド部は、前記取付部とは別体に設けられて前記取付部に取り付けられている、
ことを特徴とするエアバッグ取付構造。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一つに記載のエアバッグ取付構造であって、
前記フラップの自由端部は、前記エアバッグが収納されている状態で前記扉部と当接しており、
前記扉部は、前記自由端部の位置を規定する自由端ストッパ部を有する、
ことを特徴とするエアバッグ取付構造。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一つに記載のエアバッグ取付構造であって、
前記扉部は、各々の前記一端部が前記開裂線に沿う位置にて対向するように一対設けられ、
前記ヒンジ部は、各々の前記扉部を回動可能に保持するように一対設けられ、
前記エアバッグは、一方の前記ヒンジ部との距離よりも他方の前記ヒンジ部との距離が大きくなるように傾斜して前記取付部に取り付けられ、
前記ガイド部は、前記取付部における前記エアバッグとの距離が大きい方の前記ヒンジ部が接続される位置に取り付けられる、
ことを特徴とするエアバッグ取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、支持フレームにヒンジを介して接続される扉と、扉とエアバッグとの間に設けられエアバッグの展開時にヒンジを保護するディフレクタと、を備える車両安全装置が開示されている。この車両安全装置では、エアバッグのインフレータが作動すると、まずエアバッグが扉の下方の空間で膨張する。そして、エアバッグの膨張による圧力が作用し、インストルメントパネルに形成されている開裂線が裂けて、扉がヒンジを中心に回転する。これにより、エアバッグが乗員に向かって膨出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の車両安全装置では、ヒンジを保護するためのディフレクタは、ヒンジと一体に成形されている。即ち、ディフレクタは、弾性のあるヒンジと同一の材料、かつ同等の肉厚に形成されている。そのため、扉の下方の空間にてエアバッグが膨張すると、ディフレクタが撓む。そうすると、開裂線の位置へ充分な圧力を印加するのが、その分だけ遅れることになる。即ち、開裂線のない位置(より正確には、最初に開裂させる位置とは異なる位置)で、エアバッグが膨張する分、開裂線に印加させるべき圧力が分散してしまう。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、扉部の下方の展開通路内でのエアバッグが膨張する際に、開裂線の位置(最初に開裂させる位置)に圧力を集中させやすくする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、エアバッグをインストルメントパネルに取り付けるエアバッグ取付構造は、少なくとも一端部が前記インストルメントパネルの開裂線に沿うように設けられ、前記エアバッグが展開することにより前記一端部が開く扉部と、前記エアバッグが展開すると前記扉部が開いて開状態になる開口部を有し、前記エアバッグを収容するエアバッグケースが取り付けられる取付部と、前記取付部に接続され、前記扉部を回動可能に保持するヒンジ部と、前記エアバッグと前記扉部との間の展開通路が狭まるように前記取付部から突出し、前記エアバッグが展開するのをガイドするガイド部と、前記ガイド部に接続されて前記エアバッグと前記ヒンジ部との間に介在し、前記エアバッグの展開時に前記エアバッグによって付勢されて前記扉部と共に回動するフラップと、を備え、前記ガイド部は、前記フラップと比較して剛性が高い。
【発明の効果】
【0007】
上記態様では、展開通路が狭まるように取付部から突出して設けられるガイド部は、フラップと比較して剛性が高い。そのため、エアバッグが膨張したときには、剛性の高いガイド部が展開通路の容積を小さくしているので、エアバッグの膨張によって、開裂線の位置に圧力を集中させやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るエアバッグ取付構造が適用されるインストルメントパネルの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II断面に相当する図であり、エアバッグ取付構造について説明する断面図である。
【
図4】
図4は、エアバッグ取付構造について説明する背面からの斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4のエアバッグ取付構造からガイド部及びフラップを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、ガイド部及びフラップの斜視図である。
【
図7】
図7は、エアバッグの展開途中の状態を説明する断面図である。
【
図8】
図8は、エアバッグの展開状態を説明する断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態の変形例に係るエアバッグ取付構造について説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係るエアバッグ取付構造10について説明する。
【0010】
まず、
図1及び
図2を参照して、エアバッグ取付構造10が適用される自動車等の車両1のインストルメントパネル2について説明する。
図1は、インストルメントパネル2の斜視図である。
図2は、
図1のII-II断面に相当する図であり、エアバッグ取付構造10について説明する断面図である。
【0011】
図1に示すように、インストルメントパネル2は、車両1の車室内の前部に設けられる。車両1は、エアバッグ装置3を備える。
【0012】
エアバッグ装置3は、車両1の衝突時等の緊急時に乗員を保護するための安全装置である。エアバッグ装置3は、インストルメントパネル2の助手席側の部分に設けられ、助手席乗員を保護する。エアバッグ装置3は、エアバッグモジュール4(
図2参照)と、エアバッグリッド5と、エアバッグ取付構造10と、を備える。
【0013】
エアバッグ装置3には、例えば、運転席用のエアバッグ、助手席用のエアバッグ、サイドエアバッグ、カーテンエアバッグ等がある。本実施形態では、エアバッグ装置3は、助手席用のエアバッグである。
【0014】
図2に示すように、エアバッグモジュール4は、エアバッグ4aと、エアバッグケース4bと、複数のフック4cと、インフレータ4dと、を有する。
【0015】
エアバッグ4aは、袋状に形成され、折り畳まれてエアバッグケース4bに収納される。エアバッグ4aは、緊急時に展開されて膨張する。複数のフック4cは、エアバッグケース4bをインストルメントパネル2に固定する。インフレータ4dは、エアバッグ4aを展開させ膨張させるためのガスを発生させる。
【0016】
図1に示すように、エアバッグリッド5は、インストルメントパネル2の助手席側の部分に設けられる。エアバッグリッド5には、インストルメントパネル2と一体に設けられる一体型や、インストルメントパネル2と別体に設けられてインストルメントパネル2に取り付けられる別体型等がある。本実施形態では、エアバッグリッド5は、一体型であり、インストルメントパネル2の一部を構成する。
【0017】
エアバッグリッド5は、通常時にエアバッグモジュール4を表面から覆い隠す。エアバッグリッド5は、開裂線6を有する。エアバッグリッド5は、緊急時には、展開されて膨張するエアバッグ4aの押圧力によって開裂線6から開裂し、エアバッグ4aを車室内へ膨出させる開口部を形成する。
【0018】
開裂線6は、エアバッグリッド5の裏面から凹状に形成されエアバッグリッド5の表面に達しない溝形状である。開裂線6は、略車幅方向に延びる横開裂線部6aと、横開裂線部6aの両端部から略車両前後方向に延びる左右の縦開裂線部6bと、を有する略H字状に設けられる。本実施形態では、開裂線6は、縦開裂線部6bの両端部間を各々連結する一対の横開裂線部6cを更に有する。エアバッグリッド5には、開口部を形成可能な一対の開閉部7が、開裂線6によって画成される。なお、横開裂線部6aは、略H字状の開裂線6において、最初に開裂させるべき位置である。
【0019】
次に、
図3から
図6をあわせて参照して、エアバッグ取付構造10について説明する。
図3は、
図2におけるガイド部50近傍の拡大図である。
図4は、エアバッグ取付構造10について説明する背面からの斜視図である。
図5は、
図4のエアバッグ取付構造10からガイド部50及びフラップ60を取り外した状態を示す斜視図である。
図6は、ガイド部50及びフラップ60の斜視図である。
【0020】
図2に示すように、エアバッグ取付構造10は、エアバッグ4aをインストルメントパネル2に取り付けるものである。エアバッグ取付構造10は、取付部20と、一対のヒンジ部30と、一対の扉部40と、ガイド部50と、フラップ60と、を有する。
【0021】
取付部20は、樹脂材料によって成形される。取付部20は、エアバッグ4aが展開すると扉部40が開いて開状態になる開口部20aを有する。取付部20には、エアバッグ4aを収容するエアバッグケース4bがフック4cを介して取り付けられる。取付部20は、本体部21と、フランジ部22と、貫通孔23と、複数の補強リブ24(
図4及び
図5参照)と、を有する。
【0022】
図4及び
図5に示すように、本体部21は、略矩形の筒状に形成される。
図2に示すように、本体部21の一端部21aには、開口部20aが形成される。本体部21の他端部21bには、エアバッグモジュール4が取り付けられる。
【0023】
フランジ部22は、本体部21の一端部21aの外周に、全周にわたって形成される。
図2に示すように、フランジ部22は、インストルメントパネル2の裏面に当接するように取り付けられる。フランジ部22は、インストルメントパネル2の裏面に溶着され、インストルメントパネル2を補強している。
【0024】
貫通孔23は、本体部21を厚さ方向に貫通する。貫通孔23には、エアバッグモジュール4のフック4cが引っ掛けられる。これにより、取付部20にエアバッグモジュール4が取り付けられる。
【0025】
図4及び
図5に示すように、補強リブ24は、互いに間隔をあけて、フランジ部22の外周に複数設けられる。補強リブ24は、本体部21とフランジ部22とを連結して補強している。
【0026】
図2に示すように、ヒンジ部30は、各々の扉部40を回動可能に保持するように一対設けられる。ヒンジ部30は、扉部40及び取付部20と一体に成形される。ヒンジ部30は、略U字状の断面を有するように開口部20aの内側(展開通路8内)に突出して形成される。ヒンジ部30は、エアバッグ4aが展開して扉部40が開くときに、略U字状の断面の部分が開口部20aから外部に向かって伸長しながら、取付部20との接続箇所を起点に回転する。ここで、展開通路8は、扉部40、エアバッグ4a、及び取付部20で囲まれる空間を意味する。展開通路8内に設けられるエアバッグ4aは、一方のヒンジ部30との距離よりも他方のヒンジ部30との距離が大きくなるように傾斜して取付部20に取り付けられる。即ち、エアバッグ4aは、展開する方向が扉部40に対して垂直ではなく傾斜した状態で取付部20に取り付けられる。
【0027】
扉部40は、取付部20及びヒンジ部30と一体に成形される。扉部40は、一端部41がインストルメントパネル2の横開裂線部6aに沿うように設けられる。即ち、扉部40は、少なくとも一端部41がインストルメントパネル2の開裂線6に沿うように設けられる。扉部40は、一端部41の両端の側端部が各々インストルメントパネル2の縦開裂線部6bに沿うように設けられる。扉部40は、エアバッグリッド5の裏面に当接するように取り付けられる。扉部40は、エアバッグリッド5の裏面に溶着され、エアバッグリッド5を補強している。
【0028】
扉部40は、互いの自由端部である一端部41が横開裂線部6aの内側にて対向するように一対設けられる。扉部40は、エアバッグ4aが展開することにより、ヒンジ部30を中心として一端部41が回動するように開く。扉部40は、自由端ストッパ部42を有する。
【0029】
自由端ストッパ部42は、ヒンジ部30における回転軸の軸方向(ヒンジ部30が延在する延在方向ともいい、車両1の助手席前に搭載された状態では車両1の幅方向である)に沿って延在する。
図4に示すように、自由端ストッパ部42には、エアバッグ4aが収納されている状態、即ちエアバッグ4aが展開する前の状態で、フラップ60の自由端部61が当接している。自由端ストッパ部42は、自由端部61の位置を規定する。
【0030】
図2に示すように、ガイド部50は、取付部20の本体部21から展開通路8に突出するように設けられる。ガイド部50は、展開通路8の容積を小さくしつつ、エアバッグ4aが展開するのをガイドする。ガイド部50は、樹脂材料によって成形される。ガイド部50は、平面部51と、突出部52と、傾斜部53と、先端部54と、を有する。
【0031】
ここで、上述したように、展開通路8内に設けられるエアバッグ4aは、一方のヒンジ部30との距離よりも他方のヒンジ部30との距離が大きくなるように傾斜して取付部20に取り付けられる。そのため、エアバッグ4aとヒンジ部30との間に空間が生まれやすい。
【0032】
これに対して、エアバッグ取付構造10では、ガイド部50は、取付部20におけるエアバッグ4aとの距離が大きい方のヒンジ部30が接続される位置に取り付けられる。このように、エアバッグ4aとヒンジ部30との間の空間をガイド部50が埋めることで、展開通路8にてエアバッグ4aが膨張する際に、開裂線(横開裂線部6a)に圧力を集中させることができる。
【0033】
また、ガイド部50とフラップ60とが設けられることで、扉部40の裏面にてエアバッグ4aが当接する面積が小さくなるので、展開通路8にてエアバッグ4aが膨張する際に、開裂線(横開裂線部6a)に圧力が集中しやすくできる。
【0034】
ガイド部50は、フラップ60と比較して剛性が高い。ここで、剛性とは、エアバッグ4aが展開して膨張し、展開通路8内の圧力が上昇したときの変形のしにくさ(変形量の小ささ)である。即ち、展開通路8内でエアバッグ4aの内圧が上昇した状態で、エアバッグ4aがガイド部50及びフラップ60と接触したときに、ガイド部50はフラップ60と比較して変形しにくい(変形量が小さい)。ガイド部50は、展開通路8に臨まない裏面に補強リブ56を有する。これにより、ガイド部50の剛性が高められている(
図6参照)。
【0035】
図2に示すように、ガイド部50は、取付部20とは別体に設けられて取付部20に取り付けられている。そのため、ヒンジ部30と一体に成形される取付部20と別々にガイド部50を成形できる。よって、例えば、取付部20とガイド部50とを異なる材料で形成したり異なる厚さに形成したりできるので、ガイド部50の剛性を高くすることが容易である。
【0036】
図3に示すように、平面部51は、取付部20に沿うように設けられ、取付部20に取り付けられる。平面部51に、取付部20の貫通孔23と重複する位置に、エアバッグモジュール4のフック4cが挿通する貫通孔(図示省略)を有する。
【0037】
突出部52は、エアバッグ4aと扉部40との間の展開通路8が狭まるように取付部20から突出する。突出部52は、開口部20aからエアバッグ4aを見たときにエアバッグ4aと重複しない範囲で取付部20から内側に突出している。そのため、エアバッグ4aを取りつける際に、ガイド部50がエアバッグ4aと干渉することを防止できる。
【0038】
傾斜部53は、平面部51の上端と突出部52の下端とを連結する。傾斜部53は、平面部51との連結部から突出部52との連結部に向かって、徐々に展開通路8が狭くなるように傾斜する。
【0039】
先端部54は、ガイド部50の上端に設けられる。先端部54は、突出部52の上端から延設され、突出部52と取付部20とを連結する。先端部54は、取付部20に対して略垂直に設けられる。先端部54における展開通路8の内周側の内周端部54aは、フラップ60が接続される接続箇所54bよりも展開通路8の外周側(本体部21に近い位置)に設けられる。
【0040】
内周端部54aは、フラップ60が回動する際に、回動ストッパ部として機能する。これにより、フラップ60が必要以上に回動して、フラップ60の回転軸(フラップ60がガイド部50に接続される接続箇所54b)に負荷がかかるのを抑制し、これによりフラップ60の破損を防止している。なお、本実施形態では、内周端部54aを回動ストッパ部として機能させているが、これに限らず、回動ストッパ部は、先端部54からフラップ60に向かって突出させた凸部等であってもよい。即ち、回動ストッパ部として機能させるという観点では、形状や配置は、特に限定されない。
【0041】
内周端部54aは、フラップ60とガイド部50との接続箇所54bから、エアバッグ4aの展開方向における外側に所定距離離れた位置に設けられる。この所定距離は、少なくともフラップ60の厚さ分の距離である。即ち、先端部54は、フラップ60とガイド部50との接続箇所54bよりも取付部20の近くに位置する。具体的には、先端部54は、少なくともフラップ60の厚さ分、接続箇所54bよりも取付部20の近くに位置する。
【0042】
これにより、フラップ60が回動してガイド部50の先端部54の内周端部54a(回動ストッパ部)に当たるまで折り畳まれた状態で、フラップ60が展開通路8内に突出する量が低減する。これにより、膨張するエアバッグ4aにフラップ60の接続箇所54bが干渉することを抑制できる。
【0043】
フラップ60は、ガイド部50と一体に成形される。これに代えて、ガイド部50とフラップ60とを別体に形成して組み立ててもよい。この場合、ガイド部50とフラップ60とを異なる材料で成形したり、異なる厚さにしたりすることで、ガイド部50の剛性をフラップ60と比較して高くすることができる。
【0044】
フラップ60は、ガイド部50に接続されてエアバッグ4aとヒンジ部30との間に介在する。フラップ60は、ヒンジ部30が延在する延在方向に沿って延在する。フラップ60は、自由端部61と、当接部62と、一対のリブ70(
図6参照)と、を有する。
【0045】
フラップ60は、エアバッグ4aの展開時にエアバッグ4aによって付勢されて撓み、エアバッグ4aが展開されると接続箇所54bを中心として扉部40と共に回動する。フラップ60は、エアバッグ4aの展開方向において、ガイド部50の先端部54の近傍にてガイド部50に接続される。
【0046】
エアバッグ4aとヒンジ部30との間にフラップ60が設けられることで、エアバッグ4aが展開する際に、エアバッグ4aの膨張による圧力を一対の扉部40の間(横開裂線部6a)に集中させ、また、エアバッグ4aがヒンジ部30の回転軸に直接接触するのを防止することでヒンジ部30の損傷を防止できる。
【0047】
フラップ60とガイド部50との接続箇所54bは、ガイド部50の先端部54から所定距離離れている。この所定距離は、フラップ60の当接部62の長さよりも小さな距離である。
【0048】
ここで、エアバッグ4aの展開時に、扉部40が充分に開いた状態で、ガイド部50の内周端部54aがフラップ60の回動を規制できない位置にあると(即ち、仮に、回動ストッパ部がなかったとすると)、フラップ60の回動角度が大きくなりすぎてフラップ60を大きく変形させる力が作用するおそれがある。
【0049】
これに対して、エアバッグ取付構造10では、ガイド部50の先端部54から所定距離離れた位置にフラップ60が接続される。そのため、フラップ60が回動すると、フラップ60はガイド部50の先端部54の内周端部54aに当たり、フラップ60の回転が規制される。よって、フラップ60を大きく変形させる力が作用することを防止できる。
【0050】
自由端部61は、エアバッグ4aが収納されている状態で扉部40と当接している。自由端部61は、自由端ストッパ部42に当接することで、その位置が規定される。
【0051】
このように、フラップ60の自由端部61が自由端ストッパ部42に当接するので、フラップ60の位置を狙ったとおりに規定することができる。また、扉部40にフラップ60が拘束されるので、車両1が走行している際の振動でフラップ60が動いて、ガタツキ音が発生するのを防止できる。
【0052】
当接部62は、フラップ60における接続箇所54bから所定長さにわたって形成される。当接部62は、エアバッグ4aが展開した状態で先端部54の内周端部54aに当たる。当接部62は、フラップ60の他の部分よりも厚く形成される。
【0053】
このように、エアバッグ4aが展開してフラップ60が回動したときに、フラップ60の他の部分よりも厚く形成される当接部62がガイド部50の先端部54の内周端部54aに当たる。よって、フラップ60が回動して内周端部54aに当たったときの衝撃によりフラップ60に作用する大きな力に対応することができる。
【0054】
図6に示すように、リブ70は、フラップ60の延在方向(ヒンジ部30における回転軸の軸方向と同一であり、車両1に搭載された状態では車両1の幅方向である)の両端部63に設けられ、ガイド部50と連結される。リブ70は、フラップ60の両端部63を補強して、中央部64よりも剛性を高くする。言い換えれば、フラップ60における中央部64を両端部63に対して、相対的に脆弱にしている。ここで、両端部63とは、フラップ60の延在方向の両端から数ミリメートル程度離間した位置も含む領域を示すものである。
【0055】
リブ70を設けることに代えて、例えば、フラップ60の延在方向の両端部63を中央部64よりも厚く形成してもよい。即ち、フラップ60は、回動における軸方向の両端部63が両端部63の間の中央部64と比較して剛性が高ければよい。
【0056】
なお、
図2に示すように、ガイド部50が設けられる本体部21の面と対向する面には、ガイド部50ではなくガイド部55が設けられる。ガイド部55は、突出部52と傾斜部53とを有しておらず、平面部51と先端部54のみが設けられる。ガイド部50と同様に、ガイド部55にもフラップ60が接続される。これに代えて、一対のガイド部50を本体部21の対向する一対の平面に各々設けてもよい。
【0057】
次に、
図7及び
図8をあわせて参照して、エアバッグ取付構造10の作用について説明する。
図7は、エアバッグ4aの展開途中の状態を説明する断面図である。
図8は、エアバッグ4aの展開状態を説明する断面図である。
【0058】
車両1の衝突時等の緊急時には、衝突を検出するセンサ(図示省略)からの信号に基づき、助手席乗員を保護するためにエアバッグ装置3が作動する。エアバッグ装置3が作動すると、エアバッグ4aは、インフレータ4dが発生させるガスによって展開して膨張し、エアバッグリッド5を押圧する。
【0059】
ここで、仮に、ガイド部が設けられずにフラップのみが取付部に取り付けられている場合(比較例)について検討する。この場合には、エアバッグの上面と取付部の本体部とによって画成される展開通路にフラップが配置されることになる。エアバッグが展開して膨張すると、フラップが撓み、その分だけ扉部の間の開裂線部に圧力を集中させることができない。特に、フラップが取付部に取り付けられている場合には、フラップの根本となる取付部との接触位置を起点として、フラップが回転するように撓むため、撓み量が大きくなる。
【0060】
これに対して、エアバッグ取付構造10では、フラップ60と比較して剛性が高いガイド部50が、展開通路8を狭めるように取付部20から突出して設けれ、ガイド部50にフラップ60が接続される。そのため、剛性の高いガイド部50が展開通路8の容積を小さくしているので、エアバッグ4aが膨張したときには、扉部40の間(横開裂線部6a)に圧力を集中させることができる。また、フラップ60は、取付部20から突出したガイド部50に接続されているので、フラップ60を小型化することが可能になる。そうすると、フラップ60を小型化した分だけ、上述した比較例に対して、フラップ60の撓みが小さくなるため、エアバッグ4aが膨張する際の圧力が扉部40の間に集中しやすくなる。
【0061】
エアバッグ4aが膨張して展開通路8内の圧力が上昇すると、エアバッグリッド5は開裂線6から開裂して開閉部7が開く。エアバッグ4aは、開閉部7の外部に向かって(車室内に向かって)更に膨張し、助手席に着座している助手席乗員の身体を保護するように拘束する。
【0062】
ここで、エアバッグリッド5の開閉部7が開く際には、横開裂線部6aの中でも中央近傍が先に開裂し、そこから両端に拡がって行き、横開裂線部6aが開裂した後に、縦開裂線部6bが開裂することが望ましい(
図1参照)。即ち、エアバッグリッド5は、一対の開閉部7が、中央から裂けて互いに反対方向に開く状態(いわゆる観音開きの状態)になることが望ましい。
【0063】
これに対して、エアバッグ取付構造10では、エアバッグ4aとヒンジ部30との間にフラップ60が設けられる。そのため、エアバッグ4aが展開する際に、エアバッグ4aの膨張による圧力を一対の扉部40の間(横開裂線部6a)に集中して作用させることができ、ヒンジ部30に作用することを防止できる。このように、エアバッグ取付構造10では、エアバッグ4aの膨張による圧力が作用すると、エアバッグリッド5は、中央の横開裂線部6aから開裂する。
【0064】
また、フラップ60の両端部63には、リブ70が設けられている。フラップ60の両端部63は、リブ70が設けられることで、フラップ60の中央部64よりも剛性が高くなっている。そのため、フラップ60は、相対的に脆弱な中央部64の近傍が先に変形し、両端部63の近傍は後から変形する。
【0065】
よって、エアバッグ4aの膨張による圧力が作用すると、エアバッグリッド5は、横開裂線部6aの中でも中央近傍が先に開裂し、そこから両端に拡がって行き、横開裂線部6aが開裂した後に、縦開裂線部6bが開裂する。したがって、エアバッグ取付構造10では、開裂線6を望ましい順序で開裂させて、扉部40と共にエアバッグリッド5の開閉部7を開かせることができる。
【0066】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0067】
エアバッグ4aをインストルメントパネル2に取り付けるエアバッグ取付構造10は、少なくとも一端部41がインストルメントパネル2の開裂線6に沿うように設けられ、エアバッグ4aが展開することにより一端部41が開く扉部40と、エアバッグ4aが展開すると扉部40が開いて開状態になる開口部20aを有し、エアバッグ4aを収容するエアバッグケース4bが取り付けられる取付部20と、取付部20に接続され、扉部40を回動可能に保持するヒンジ部30と、エアバッグ4aと扉部40との間の展開通路8が狭まるように取付部20から突出し、エアバッグ4aが展開するのをガイドするガイド部50と、ガイド部50に接続されてエアバッグ4aとヒンジ部30との間に介在し、エアバッグ4aの展開時にエアバッグ4aによって付勢されて扉部40と共に回動するフラップ60と、を備え、ガイド部50は、フラップ60と比較して剛性が高い。
【0068】
この構成によれば、展開通路8が狭まるように取付部20から突出して設けられるガイド部50は、フラップ60と比較して剛性が高い。そのため、エアバッグ4aが膨張したときには、剛性の高いガイド部50が展開通路8の容積を小さくしているので、エアバッグ4aの膨張による圧力を開裂線6に集中させやすい。また、フラップ60をガイド部50に接続してフラップ60を小型化したことで、扉部40の下方の展開通路8にてエアバッグ4aが膨張する際に、フラップ60が撓んだとしても、その撓み量は、フラップ60の小型化の分だけ小さくすることができる。
【0069】
また、フラップ60においては、回動における軸方向の両端部63が当該両端部63の間の中央部64と比較して剛性が高い。具体的には、フラップ60は、両端部63にガイド部50と連結されるリブ70を各々有する。
【0070】
この構成では、フラップ60の両端部63にリブ70が設けられている。フラップ60の両端部63は、リブ70が設けられることで、フラップ60の中央部64よりも剛性が高くなっている。そのため、フラップ60は、中央部64の近傍が先に変形し、両端部63の近傍は後から変形する。よって、エアバッグ4aの膨張による圧力が作用すると、エアバッグリッド5は、横開裂線部6aの中でも中央近傍が先に開裂し、そこから両端に拡がって行き、横開裂線部6aが開裂した後に、縦開裂線部6bが開裂することになる。したがって、エアバッグ取付構造10では、開裂線6を望ましい順序で開裂させて、扉部40と共にエアバッグリッド5の開閉部7を開かせることができる。
【0071】
また、ガイド部50は、エアバッグ4aの展開時にフラップ60の回動を規制する回動ストッパ部(内周端部54a)を有する。
【0072】
この構成では、フラップ60が回動すると、フラップ60はガイド部50の先端部54の内周端部54aに当たり、フラップ60の回転が規制される。よって、フラップ60を大きく変形させる力が作用することを防止できる。
【0073】
また、内周端部54aは、フラップ60とガイド部50との接続箇所54bから、エアバッグ4aの展開方向における外側に所定距離離れた位置に設けられる。具体的には、所定距離は、少なくともフラップ60の厚さ分の距離である。
【0074】
この構成では、先端部54は、フラップ60の厚さ分だけ接続箇所54bよりも取付部20の近くに位置している。そのため、フラップ60が回動してガイド部50の先端部54の内周端部54aに当たったときに、フラップ60がガイド部50から展開通路8内に突出しない。したがって、膨張するエアバッグ4aにフラップ60が干渉することを防止できる。
【0075】
また、フラップ60において、エアバッグ4aが展開した状態で回動ストッパ部(内周端部54a)に当たる当接部62は、他の部分よりも厚く形成される。
【0076】
この構成によれば、フラップ60が回動したときに、他の部分よりも厚く形成される当接部62がガイド部50の先端部54の内周端部54aに当たる。よって、フラップ60が回動して内周端部54aに当たったときの衝撃によりフラップ60に作用する大きな力に対応することができる。
【0077】
また、ガイド部50は、開口部20aからエアバッグ4aを見たときにエアバッグ4aと重複しない範囲で取付部20から突出している。
【0078】
この構成によれば、エアバッグ4aが展開して膨張する際に、ガイド部50が干渉することを防止できる。
【0079】
また、ガイド部50は、取付部20とは別体に設けられて取付部20に取り付けられている。
【0080】
この構成によれば、ヒンジ部30と一体に成形される取付部20と別々にガイド部50を成形でき。よって、例えば、取付部20とガイド部50とを異なる材料で形成したり異なる厚さに形成したりできるので、ガイド部50の剛性を高くすることが容易である。
【0081】
また、フラップ60の自由端部61は、エアバッグ4aが収納されている状態で扉部40と当接しており、扉部40は、自由端部61の位置を規定する自由端ストッパ部42を有する。
【0082】
この構成によれば、フラップ60の自由端部61が自由端ストッパ部42に当接するので、フラップ60の位置を狙ったとおりに規定することができる。また、扉部40にフラップ60が拘束されるので、車両1が走行している際の振動でフラップ60が動いてガタツキ音が発生するのを防止できる。
【0083】
また、扉部40は、各々の一端部41が開裂線(横開裂線部6a)に沿う位置にて対向するように一対設けられ、ヒンジ部30は、各々の扉部40を回動可能に保持するように一対設けられ、エアバッグ4aは、一方のヒンジ部30との距離よりも他方のヒンジ部30との距離が大きくなるように傾斜して取付部20に取り付けられ、ガイド部50は、取付部20におけるエアバッグ4aとの距離が大きい方のヒンジ部30が接続される位置に取り付けられる。
【0084】
この構成では、エアバッグ4aは、一方のヒンジ部30との距離よりも他方のヒンジ部30との距離が大きくなるように傾斜して取付部20に取り付けられるので、エアバッグ4aとヒンジ部30との間に空間が生まれやすいが、この空間をガイド部50が埋めることで、展開通路8にてエアバッグ4aが膨張する際に、開裂線(横開裂線部6a)に圧力を集中させることができる。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0086】
例えば、上記実施形態では、先端部54は、少なくともフラップ60の厚さ分、接続箇所54bよりも取付部20の近くに位置する。これに代えて、
図9に示す変形例のように、先端部54の取付部20からの高さが接続箇所54bと同等であってもよい。
【0087】
この場合にも同様に、剛性の高いガイド部50が展開通路8の容積を小さくしているので、扉部40の下方の展開通路8にてエアバッグ4aが膨張する際に、開裂線6に圧力を集中させやすい。
【符号の説明】
【0088】
10 エアバッグ取付構造
1 車両
2 インストルメントパネル
4a エアバッグ
5 エアバッグリッド
6 開裂線
8 展開通路
20 取付部
20a 開口部
30 ヒンジ部
40 扉部
41 一端部
42 自由端ストッパ部
50 ガイド部
54 先端部
54a 内周端部(回動ストッパ部)
54b 接続箇所
60 フラップ
61 自由端部
62 当接部
63 両端部
64 中央部
70 リブ