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特開2023-26934出来形管理方法、芯材の打設又は建込み方法、出来形管理装置及び芯材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026934
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】出来形管理方法、芯材の打設又は建込み方法、出来形管理装置及び芯材
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/24 20060101AFI20230221BHJP
【FI】
E02D5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132388
(22)【出願日】2021-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】397009831
【氏名又は名称】株式会社ガンケン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】稲積 一訓
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】田口 博文
(72)【発明者】
【氏名】松原 秀和
(72)【発明者】
【氏名】中島 通宏
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA44
(57)【要約】
【課題】根固め液により形成される根固め部の出来形を的確に管理することができる出来形管理方法、芯材の打設又は建込み方法、出来形管理装置及び芯材を提供する。
【解決手段】地盤中の鋼管杭10と地盤との間で形成される根固め部の出来形を管理する出来形管理装置は、ソケット部材21と、センサ用管30と、検知センサ35と、を備える。ソケット部材21は、鋼管杭10を地盤の所定深度に配置した状態で予定する根固め液の検知高さDF1に対応する高さで鋼管杭10に固定される。センサ用管30は、鋼管杭10の軸方向に延在し、ソケット部材21に対する相対位置を変更することにより、検知高さDF1に生じた開放領域S1に配置される。検知センサ35は、鋼管杭10と地盤の間に充填される根固め液を検出する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中の芯材と前記地盤との間に形成する根固め部の出来形を管理するための出来形管理方法であって、
前記芯材を前記地盤の所定深度に配置した状態で予定する根固め液の液面高さに対応する高さで前記芯材に固定されたソケット部材に、前記芯材の軸方向に延在するセンサ用管の先端を挿入した状態で、前記芯材の打設又は建込みを行い、
前記芯材と前記地盤の間に前記根固め液を充填する際には、前記ソケット部材と前記センサ用管との相対位置を変更し、前記変更により前記液面高さに形成された開放領域を通じて、検知センサで前記根固め液の充填位置を検出することを特徴とする出来形管理方法。
【請求項2】
前記センサ用管の先端が前記ソケット部材の上端部よりも上の位置になるように前記センサ用管を上昇させ、前記挿入した状態を解除して前記開放領域を形成することを特徴とする請求項1に記載の出来形管理方法。
【請求項3】
前記ソケット部材は、外周に第1孔が形成され底を有する筒体であって、
前記センサ用管は、前記第1孔に整合する第2孔が形成された前記ソケット部材に内嵌する筒体であって、
前記第1孔と前記第2孔が整合しない向きで、前記センサ用管の先端が前記ソケット部材に挿入された状態で、前記打設又は前記建込みを行い、
前記センサ用管を回転させて、前記第1孔と前記第2孔とを整合させ、連通させることにより前記開放領域を形成することを特徴とする請求項1に記載の出来形管理方法。
【請求項4】
地盤中の芯材と前記地盤との間に形成する根固め部を形成する芯材の打設又は建込み方法であって、
前記芯材の軸方向に延在するセンサ用管の先端を挿入するソケット部材を前記芯材に固定し、
前記ソケット部材が根固め液の液面高さに対応する高さに位置するように、前記芯材を打設又は建込み、
検知センサによる前記根固め液の充填位置の検出が可能となるように、前記ソケット部材と前記センサ用管との相対位置を変更し、
前記芯材と前記地盤の間に前記根固め液を充填することを特徴とする芯材の打設又は建込み方法。
【請求項5】
地盤中の芯材と前記地盤との間に形成する根固め部の出来形を管理するための出来形管理装置であって、
前記芯材を前記地盤の所定深度に配置した状態で予定する根固め液の液面高さに対応する高さで前記芯材に固定されたソケット部材と、
前記芯材の軸方向に延在し、前記ソケット部材に嵌合可能に設けられるとともに、前記ソケット部材への嵌合状態から前記ソケット部材に対する相対位置を変更することにより、中空部を外部に連通させる開放領域が前記液面高さに形成されるように設けられたセンサ用管と、
前記芯材と前記地盤の間に充填される根固め液を、前記開放領域を通じて検出する検知センサと、を備えることを特徴とする出来形管理装置。
【請求項6】
地盤中に打設される芯材であって、
前記地盤の所定深度に配置した状態で予定する根固め液の液面高さに対応する高さに固定して設けられ、嵌合させたセンサ用管の相対位置の変更によって、検知センサで前記根固め液を検出する開放領域を形成するための筒形状のソケット部材と、
前記ソケット部材の直下に固定して配置される保護部材と、を有することを特徴とする芯材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤中に打設もしくは建て込んだ芯材に形成する根固め部の出来形を管理する出来形管理方法、芯材の打設又は建込み方法、出来形管理装置及びそれに用いる芯材に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭等の杭体(芯材)を地盤に打設する方法の1つとして、ウォータージェット併用バイブロハンマ工法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この工法では、杭体の先端に取り付けた複数の噴射ノズルから高圧水を噴射して岩盤(硬質地盤)を緩め又は切削する。更に、礫塊等を移動させ、バイブロハンマによる振動力と杭体の自重とによって杭体を岩盤に打ち込んでゆく。
【0003】
また、一般に、杭体の先端を岩盤の所定深さまで打ち込んだ段階、すなわち、杭体を所定の打ち止め深さまで打ち込んだ段階で、杭体の先端部と岩盤との隙間にセメントミルク等の根固め液(グラウト材)を充填して硬化させている。そして、この根固め液が充填硬化してなる根固め部によって杭体と岩盤とを一体化させることにより、杭の支持力を高めるようにしている。
なお、杭体の周面と岩盤との隙間にセメントミルク等のグラウト材を充填して硬化させ、杭体と地盤とを一体化させるケースもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-65692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、従来、杭体の先端部と岩盤の隙間に根固め液を充填する際の施工管理は、根固め液の注入量の計測管理によって行っていた。すなわち、計画した注入量で根固め液が注入されていることが流量計で確認された時点で根固め液の充填を終了するようにしていた。
しかしながら、例えば、亀裂性の岩盤や川沿いなど水みちが発生しやすい岩盤等に対して根固め液を充填する場合においては、根固め液が亀裂や水みちなどの想定外の隙間に流れることがある。この場合、計画注入量を注入したにもかかわらず、好適に根固め部を形成できないおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する出来形管理方法は、地盤中の芯材と前記地盤との間に形成する根固め部の出来形を管理するための出来形管理方法であって、前記芯材を地盤の所定深度に配置した状態で予定する根固め液の液面高さに対応する高さで前記芯材に固定されたソケット部材に、前記芯材の軸方向に延在するセンサ用管の先端を挿入した状態で、前記芯材の打設又は建込みを行い、前記芯材と前記地盤の間に前記根固め液を充填する際には、前記ソケット部材と前記センサ用管との相対位置を変更し、前記変更により前記液面高さに形成された開放領域を通じて、検知センサで前記根固め液の充填位置を検出する。
更に、上記課題を解決するための芯材の打設又は建込み方法は、地盤中の芯材と前記地盤との間に形成する根固め部を形成する芯材の打設又は建込み方法であって、前記芯材の軸方向に延在するセンサ用管の先端を挿入するソケット部材を前記芯材に固定し、前記ソケット部材が根固め液の液面高さに対応する高さに位置するように、前記芯材を打設又は建込み、検知センサによる前記根固め液の充填位置の検出が可能となるように、前記ソケット部材と前記センサ用管との相対位置を変更し、前記芯材と前記地盤の間に前記根固め液を充填する。
【0007】
また、上記課題を解決する出来形管理装置は、地盤中の芯材と前記地盤との間に形成する根固め部の出来形を管理するための出来形管理装置であって、前記芯材を前記地盤の所定深度に配置した状態で予定する根固め液の液面高さに対応する高さで前記芯材に固定されたソケット部材と、前記芯材の軸方向に延在し、前記ソケット部材に嵌合可能に設けられるとともに、前記ソケット部材への嵌合状態から前記ソケット部材に対する相対位置を変更することにより、中空部を外部に連通させる開放領域が前記液面高さに形成されるように設けられたセンサ用管と、前記芯材と前記地盤の間に充填される根固め液を、前記開放領域を通じて検出する検知センサと、を備える。
【0008】
また、上記課題を解決する芯材は、地盤中に打設される芯材であって、前記地盤の所定深度に配置した状態で予定する根固め液の液面高さに対応する高さに固定して設けられ、嵌合させたセンサ用管の相対位置の変更によって、検知センサで前記根固め液を検出する開放領域を形成するための筒形状のソケット部材と、前記ソケット部材の直下に固定して配置される保護部材と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、施工時に根固め液の液面を特定することができるので、根固め液により形成される根固め部の出来形を的確に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態における根固め液の充填方法を説明するための振動杭打機及びこれに取り付けた鋼管杭の正面図。
図2】第1実施形態における鋼管杭の平面図(平断面図)。
図3】第1実施形態における鋼管杭の要部の模式図。
図4】第1実施形態における鋼管杭の要部とセンサ用管とを説明するための図であって、(a)は、打設時の状態、(b)は、開放領域を形成した状態、(c)は、検知センサを配置した状態を示す。
図5】第2実施形態における鋼管杭の要部の模式図。
図6】第2実施形態における鋼管杭の要部とセンサ用管とを説明するための図であって、(a)は、打設時の状態、(b)は、開放領域を形成した状態、(c)は、検知センサを配置した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、図1図4を用いて、出来形管理方法、芯材の打設又は建込み方法、出来形管理装置及び芯材を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明に係る出来形管理方法、出来形管理装置及び芯材を用い、ガンパイル工法において地盤中に打設又は建て込まれた芯材の先端部を地盤(岩盤層B1)に定着させるために、根固め液G1によって形成される根固め部の出来形を管理するものとして説明を行う。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の出来形管理装置に用いられる芯材としての鋼管杭10は、その基端部近傍(上端部近傍)にバイブロハンマ等の振動杭打機50を取り付け、振動杭打機50の駆動によって地盤に打設される。
【0013】
図2は、鋼管杭10の断面図(平断面)であり、図3は、鋼管杭10の要部を示す模式図である。図4(a)は打設時の状態、図4(b)は開放領域S1を形成した状態、図4(c)は検知センサ35を配置した状態を示す。
【0014】
図2に示すように、例えば、鋼管杭10は、本体管11を備える。この本体管11の先端部(下端部)は、高強度鋼を用いて構成されている。そして、本体管11の内周面(内側面)と外周面(外側面)には、複数のジェット管12及び複数のグラウト管15が固着されている。更に、本体管11の外周面(外側面)には、複数のグラウト管15とともに複数のソケット部材21が固着されている。ジェット管12は、先端(下端)にノズルを備えたノズル管であり、鋼管杭10を地盤に打ち込む際に、ジェット管12内を流通させるとともにジェット水をノズルから噴射させる。グラウト管15は、根固め液(グラウト)G1としてのセメントミルクを孔に注入するための供給管である。ジェット管12及びグラウト管15は、それぞれ本体管11の中心軸(軸方向)と平行となるように延在し、中心軸を中心とした周方向に所定の間隔をあけて複数配置される。
【0015】
更に、本実施形態において、鋼管杭10の本体管11の外周面には、中心軸を中心とした対称位置(対向位置)に2個のソケット部材21が設けられている。これらソケット部材21は、本体管11の先端(下面)よりも高い位置に配置されている。
【0016】
図3に示すように、本実施形態のソケット部材21は、根固め液G1の最上液面の予定位置となる液面高さとしての検知高さDF1よりも低い位置の本体管11の外周面に固定されている。このソケット部材21は、底を有した円筒体であって、言い換えれば有底円筒(円管)状であって、底側(本体管11の先端側)が閉鎖され、上側(本体管11の先端とは反対側)が開口した状態で、本体管11の中心軸に沿って延設されている。なお、ソケット部材21は、必ずしも円筒体(円管状体)や有底円筒体に限定しなくてもよく、筒体や有底筒体で構成してもよい。
【0017】
更に、本体管11の外周には、ソケット部材21の先端側(下方)に、保護部材22が固着されている。本実施形態において、この保護部材22は、2つの直方体形状の高強度鋼からなるブロックによって構成される。なお、保護部材22は、本実施形態のようにブロックの数や配置を限定する必要はない。
【0018】
また、本体管11の外周面には、後述するセンサ用管30の振れを止める複数の止め部材16が固着されている。止め部材16は、ソケット部材21の上方で、上下方向に延びるソケット部材21の軸線(軸、軸方向)上に、上下方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。
【0019】
(ガンパイル工法における出来形管理方法)
次に、上述した鋼管杭10を用いたガンパイル工法について説明する。
図1に示すように、ガンパイル工法においては、鋼管杭10の上端部を、振動杭打機50に取り付ける。そして、センサ用管30を設置する。
【0020】
ここで、図4(a)に示すように、センサ用管30は、例えば、両端が開口した筒形状を有する中空管である。このセンサ用管30の先端は、ソケット部材21に内嵌可能に構成されている。なお、センサ用管30の湾曲した上端部側は、必要に応じ、鋼管杭10の打設後に切断される。
そして、センサ用管30は、その先端を、ソケット部材21の上の開口から挿入して配設される。更に、センサ用管30は、その途中部分を止め部材16に係合させて配設される。
【0021】
以上のようにしてセンサ用管30を取り付けた鋼管杭10を地盤中に打ち込む。この場合、鋼管杭10で岩盤層B1を打撃することにより生じる岩砕粉を、ジェット管12から噴射した水で洗浄除去しつつ、振動杭打機50の駆動で振動させながら鋼管杭10を打設する。ここで、センサ用管30の内部に上から圧縮空気を下方に供給して、岩砕粉のソケット部材21への混入を更に抑制してもよい。
【0022】
その後、鋼管杭10の先端が岩盤層B1の所望深度に到達したところで水の噴射を停止する。
次に、グラウト管15から根固め液G1を吐出させる。ここで、根固め液(グラウト)G1として、一般に、硬化すると必要強度を発現するよう予め調整されたセメントミルクが注入される。このセメントミルクは、予め算定された注入量分が注入される。この注入量は、設計時に定まる岩盤層B1の余掘り幅を含めた掘削径と鋼管杭10の杭径との差分、施工時に定まる地盤の掘削下端深度、及び杭工法毎に規定される根固め液G1の上端深度を計測し、注入作業を実施する前に算定される。
【0023】
次に、開放領域S1を形成する。
具体的には、図4(b)に示すように、センサ用管30を上方に持ち上げて、センサ用管30の先端をソケット部材21から引き抜く。この場合、センサ用管30の先端と、ソケット部材21の間には、開放領域S1が設けられる。本実施形態では、この開放領域S1に、検知高さDF1が位置する。
【0024】
次に、図4(c)に示すように、センサ用管30の上方から、検知センサ35を挿入して、検知センサ35を開放領域S1の検知高さDF1に配置する。鋼管杭10の外部に設置されたコンピュータ(計測取得部)は、電気ケーブル36を介して、検知センサ35から計測値を取得して、ディスプレイに表示する。なお、検知センサ35が検知高さDF1に位置する状態で、電気ケーブル36はセンサ用管30内に配置される。
【0025】
本実施形態では、検知センサ35として、液体の電気伝導率(mS/m)を計測する電気伝導率センサを用いる。電気伝導率センサは、例えば、水の場合に80~150mS/mの電気伝導率を示し、セメントミルクの場合に8000~12000mS/mの電気伝導率を示す。すなわち、水とセメントミルクは、電気伝導率に違いがあるので、電気伝導率センサを用いて、検知高さDF1における液体を検知することができる。
【0026】
ここで、岩盤層B1に根固め液G1が流れ出る割裂や空隙部が存在しなければ、予め算定した注入量によって根固め液G1の液面は予定した高さまで上昇し、その高さ位置は設計上の根固め部の上端と同等の高さ(検知高さDF1)となる。この際、前述のように、例えば、検知センサ35によって計測された電気伝導率が8000~12000mS/mの電気伝導率を示す。結果として、検知センサ35の計測値から、検知高さDF1まで根固め液G1が充填されたことを把握することができる。
【0027】
一方、根固め液G1が流れ出る割裂や空隙部が鋼管杭10の周囲の岩盤層B1に存在した場合には、予め算定した注入量のセメントミルクを注入しても、検知センサ35が計測した電気伝導率として、8000mS/mよりも大幅に低い数値が検出される。そこで、再度、所定追加量の根固め液G1を、グラウト管15を介して注入する。ここで、セメントミルクの追加後、検知センサ35によって計測された電気伝導率がセメントミルクの電気伝導率とならない場合には、更に、所定追加量の根固め液G1を追加で注入し、セメントミルクの電気伝導率が計測されるまで注入を行う。
【0028】
そして、検知センサ35がセメントミルクの電気伝導率を検出したことにより根固め液G1の充填を確認できた場合には、電気ケーブル36を手繰り寄せて、検知センサ35をセンサ用管30から引き抜く。その後、根固め液G1が硬化すると鋼管杭10の杭先端には、設計上の形状寸法に適合する大きさ及び形状の根固め部が好適に形成される。
【0029】
(作用)
本実施形態では、根固め液G1の注入時には、打設時に内部を閉鎖していたセンサ用管30の先端をソケット部材21から上昇させることにより開放領域S1を形成する。これにより、開放領域S1が、打設時に岩砕粉等に埋まることになく、検知センサ35で根固め液G1の位置を検出(検知)することができる。
【0030】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)本実施形態の出来形管理方法では、岩盤層B1中の鋼管杭10と岩盤層B1との間に形成する根固め部の出来形を管理する。この方法では、鋼管杭10を岩盤層B1の所定深度に配置した状態で予定する根固め液G1の検知高さDF1に対応する高さで鋼管杭10に固定されたソケット部材21に、鋼管杭10の中心軸方向に延在するセンサ用管30の先端を挿入した状態で、鋼管杭10の打設又は建込みを行う。そして、鋼管杭10と岩盤層B1の間に根固め液G1を充填する際には、ソケット部材21とセンサ用管30との相対位置を変更する。この変更によりソケット部材21とセンサ用管30との間に開放領域S1を形成し、この開放領域S1を通じて検知センサ35で根固め液G1の充填状況位置(液面高さの位置)を検出する。
【0031】
また、本実施形態の出来形管理装置では、岩盤層B1中の鋼管杭10と岩盤層B1との間に形成する根固め部の出来形を管理する。この装置は、鋼管杭10を岩盤層B1の所定深度に配置した状態で予定する根固め液G1の検知高さDF1に対応する高さで鋼管杭10に固定されたソケット部材21と、鋼管杭10の中心軸方向に延在し、ソケット部材21に対する相対位置を変更することにより、液面高さに生じた外部に開放可能なセンサ用管30と、鋼管杭10と岩盤層B1の間に充填される根固め液G1を検出(検知)する検知センサ35と、を備える。
【0032】
上記構成によれば、有底筒体のソケット部材21に、センサ用管30の先端を挿入した状態で、鋼管杭10を打設する。これにより、打設時にはセンサ用管30の先端の内部が閉鎖されているため、打設時に発生する粉砕した岩(岩粉砕)がセンサ用管30に混入することを抑制できる。従って、後から検知センサ35を、センサ用管30の中空部を通じてセンサ用管30の下方に円滑に配置することができる。その後、根固め液G1の注入時には、センサ用管30の先端とソケット部材21との間に形成された開放領域S1に、検知センサ35を配置する。これにより、鋼管杭10の外周に露出した検知センサ35によって、開放領域S1の検知高さDF1に至ったセメントミルク(根固め液G1)を検出することができる。よって、検知高さDF1の高さまで根固め液G1が充填されたことを確実に把握することができる。
【0033】
(1-2)本実施形態の出来形管理方法では、センサ用管30の先端がソケット部材21の上端部よりも上の位置になるように、センサ用管30を上昇させて開放領域S1を形成する。
上記構成によれば、検知センサ35を根固め液G1に効率的に接触させることができる。また、根固め液G1の液面を検知センサ35で捉えて、検知高さDF1まで根固め液G1が充填されたことを確実に把握することもできる。
【0034】
(1-3)本実施形態の鋼管杭10は、岩盤層B1中に打設される鋼管杭10であって、岩盤層B1の所定深度に配置した状態で予定する根固め液G1の検知高さDF1に対応する高さに固定された円筒形状のソケット部材21と、ソケット部材21の底面を塞ぐようにソケット部材21の直下に配置される保護部材22と、を有する。
上記構成によれば、ソケット部材21の底面の打設時等の変形や破損を抑制することができる。
【0035】
(1-4)本実施形態では、センサ用管30を、鋼管杭10の外周面に複数(2個)配置する。これにより、複数の検知センサ35を、検知高さDF1に配置することができるので、セメントミルクが検知高さDF1に至ったことを確実に把握することができる。
【0036】
(1-5)本実施形態では、ソケット部材21の上方には、センサ用管30の揺れを止める止め部材16を固定する。これにより、打設時の振動によりセンサ用管30が大きく揺れることを抑制することができる。また、センサ用管30を上下方向に移動させる際のガイド機能を止め部材16で付加することができる。
【0037】
(1-6)本実施形態では、検知センサ35として電気伝導率センサを用いる。これにより、根固め液G1としてのセメントミルクと、水とでは大きく異なる電気伝導率を用いて根固め液G1を検出することができるので、根固め液G1の充填を確実に把握することができる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、図5及び図6を用いて、出来形管理方法、芯材の打設又は建込み方法、出来形管理装置及び芯材を具体化した第2実施形態を説明する。上記実施形態においてはセンサ用管30を上方に引き上げることにより開放領域S1を形成したが、鋼管杭10の周囲に充填される根固め液G1の液面(検知位置)に露出する開放領域S1を形成できればよい。このため、本実施形態では、センサ用管30を回転することにより開放領域S1を形成し、この開放領域S1に検知センサ35を配置する。なお、本実施形態において、上記実施形態と同様な部分(変更例を含む)については、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0039】
図5に示すように、鋼管杭10の本体管11の外周面には、ソケット部材21と同様に、対向する位置に複数(2個)のソケット部材26が設けられている。ソケット部材26は、本体管11の先端よりも、やや高い位置に配置されている。このソケット部材26は、底を有した円筒体であって、底側(本体管11の先端側)が閉鎖され、上側(本体管11の先端とは反対側)が開口した状態で、本体管11の中心軸と平行となるように延在して設けられている。更に、ソケット部材26の外周面には、本体管11側と反対側に、複数の孔26a,26b,26cが縦に並んで貫通形成されている。本実施形態では、孔26bの中心位置が、根固め液G1の最上液面の予定位置となる液面高さとしての検知高さDF2となるように、ソケット部材26が固定されている。
【0040】
更に、ソケット部材26の先端側(下方)には、保護部材22が固着されている。また、ソケット部材26の軸線方向であって、ソケット部材26の上方に、複数の止め部材16が所定の間隔をあけて設けられる。
【0041】
本実施形態のガンパイル工法においても、鋼管杭10の上端部を、バイブロハンマ等の振動杭打機50に取り付ける際に、センサ用管40を設置する。
図6(a)に示すように、本実施形態に用いるセンサ用管40は、上記第1実施形態のセンサ用管30と同じ構成の管の先端(下端部)に、複数の孔41,42,43が縦に並んで貫通形成された管である。センサ用管40の孔41,42,43は、センサ用管40の先端がソケット部材26に内嵌されて収容された場合に、ソケット部材26の孔26a,26b,26cのそれぞれと対応するようにその高さ位置や大きさが設定されている。
【0042】
そして、センサ用管40の設置においては、センサ用管40の先端を、ソケット部材26の上の開口から挿入する。この場合、センサ用管40の孔41~43を本体管11側に向けて、ソケット部材26の孔26a~26cをセンサ用管40の外周面で塞ぐ。更に、センサ用管40の途中部分を止め部材16に係合させる。
【0043】
以上のようにしてセンサ用管40を取り付けた鋼管杭10を地盤中に打ち込み、鋼管杭10の先端が岩盤層の所望深度に到達したところでジェット管12からの水の噴射を停止する。
そして、開放領域S1を形成する。
ここでは、図6(b)に示すように、センサ用管40を回転させる。これにより、本体管11側を向いていた孔41~43を、ソケット部材26の孔26a~26cのそれぞれに整合させ、センサ用管40の孔41~43とソケット部材26の孔26a~26cの対応する孔同士を連通させる。これにより、センサ用管40の内部は、整合した孔26a~26c及び孔41~43によって外部に開放されて、開放領域S1が形成される。ここで、整合した孔26bと孔42の中心の高さに、検知高さDF2が位置する。
【0044】
そして、図6(c)に示すように、センサ用管40の上方から、検知センサ35を挿入して、検知センサ35を検知高さDF2に配置する。この場合、外部のコンピュータは、鋼管杭10内に配置された電気ケーブル36を介して、検知センサ35から計測値を取得する。
【0045】
これ以降は、上記第1実施形態と同様の処理が行われて、検知センサ35によるセメントミルクの電気伝導率の検出により、検知高さDF2まで根固め液G1が充填されたことを把握できる。
【0046】
(作用)
本実施形態において、根固め液G1の注入時には、打設時に内部を閉鎖していたセンサ用管40を回転させ、孔41~43をソケット部材26の孔26a~26cに整合させて、センサ用管40の内部を外部に開放した開放領域S1を形成する。これにより、センサ用管40の内部において開放領域S1に検知高さDF2が位置し、整合した孔41~43,26a~26cを介して根固め液G1がソケット部材26の内部に流入する。その結果、検知高さDF2に配置した検知センサ35が、センサ用管40内において、鋼管杭10の周囲に充填される根固め液G1の電気伝導率を計測できる。
【0047】
本実施形態においても、上記(1-1)、(1-3)~(1-6)と同様の効果を得ることができるとともに、下記の効果を得ることができる。
(2-1)本実施形態の出来形管理方法では、ソケット部材26は、外周に第1孔としての孔26a~26cが形成されるとともに底を有する円筒体であって、センサ用管40は、孔26a~26cに整合する第2孔としての孔41~43が形成されたソケット部材26に内嵌する円筒体を用いる。そして、この方法では、孔26a~26cと第2孔としての孔41~43が整合しない向きで、センサ用管40の先端がソケット部材26に挿入された状態で、芯材(10)の打設又は建込みを行う。更に、センサ用管40を回転させて、孔26a~26cと孔41~43とを整合させて連通させることにより開放領域S1を形成する。
【0048】
上記構成によれば、打設時には、ソケット部材26の孔26a~26cとセンサ用管40の孔41~43とをずらしてセンサ用管40の内部を閉空間にして、打設時に発生する粉砕した岩がセンサ用管40に混入することを抑制する。従って、検知センサ35をセンサ用管40の下方に円滑に配置することができる。その後、根固め液G1の注入後(注入前でもよい)には、センサ用管40を回転させて、センサ用管40の孔41~43と、ソケット部材26の孔26a~26cとを整合させ、センサ用管40を開放し、検知センサ35を配置する。これにより、検知センサ35が本体管11の外に露出する。結果として、孔26b,42を介して鋼管杭10の周囲に充填される根固め液G1がセンサ用管40に流入するので、孔41~43,26a~26cを介して、検知高さDF2の高さに到達したか否かを検出することができる。
【0049】
以上、本発明に係る出来形管理方法、芯材の打設又は建込み方法、出来形管理装置及び芯材の第1、第2実施形態について説明したが、本発明は上記の第1、第2実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の変更例を含め、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の第1実施形態と第2実施形態は、以下のように変更することができる。各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記第1実施形態においては、鋼管杭10に、センサ用管30の先端を挿入する2個のソケット部材21を設けた。また、上記第2実施形態においては、鋼管杭10に、センサ用管40の先端を挿入する2個のソケット部材26を設けた。鋼管杭10の構成は、同種のソケット部材を複数設ける場合に限られない。例えば、鋼管杭10の本体管11に、ソケット部材21とソケット部材26とを設けてもよい。この場合、打設時には、ソケット部材21,26の先端にそれぞれセンサ用管30,40を挿入する。そして、根固め液G1を充填した後、上述した各実施形態のようにソケット部材21,26に対する相対位置を変更させることにより開放領域S1を形成し、検知センサ35を配置してもよい。
【0050】
・上記各実施形態では、鋼管杭10の本体管11の対向する位置に2個のソケット部材21(26)を設けた。センサ用管30(40)及びこれらの先端を挿入するソケット部材21(26)の個数や配置は、これに限定されない。更に多くの数のソケット部材を設けてもよいし、ソケット部材を等間隔に配置しなくてもよい。
【0051】
・上記各実施形態では、グラウト管15から根固め液G1を注入した後に、開放領域S1を形成し、この開放領域S1に検知センサ35を配置した。開放領域S1を形成するタイミングや検知センサ35を配置するタイミングは、これに限られない。例えば、検知センサ35を配置した後、センサ用管30,40を動かして開放領域S1を形成してもよい。更に、予め算定した注入量の根固め液G1を注入する前に、ソケット部材21,26に挿入していたセンサ用管30,40を動かして開放領域S1を形成して、検知センサ35を配置してもよい。
【0052】
・上記各実施形態では、底を有する円筒形状のソケット部材21,26を用いた。ソケット部材の形状は、センサ用管30,40の先端がソケット部材に挿入可能であれば、これに限られない。例えば、下方に向かって径が小さくなる円錐台形状であってもよい。
【0053】
・上記各実施形態では、ソケット部材21,26の内部にセンサ用管30,40の先端を嵌合させた。この場合、打設時には、センサ用管30,40の内部に岩砕粉が入り込まないように、ソケット部材21,26とセンサ用管30,40との隙間を埋めて、開放領域S1を形成する際には容易に外れる防護部材(例えば、パテ等)を設けてもよい。例えば、この防護部材としては、開放領域S1を形成するためにセンサ用管30,40をソケット部材21,26に対して相対位置を変更した場合に加わる力によって脱落するような部材であってもよい。
【0054】
・上記第2実施形態では、ソケット部材26の縦に並んだ孔26a~26cに整合する孔41~43をセンサ用管40に形成した。センサ用管40に整合させる複数の孔を、すべて整合させずに、1つずつ整合させるようにしてもよい。具体的には、センサ用管40に設ける複数の孔を外周において120度ずらして、縦に並べて(異なる高さに)形成する。これにより、センサ用管40の回転量によって、ソケット部材26の孔(26a~26c)と整合する孔(41~43)とを1つずつ選択的に整合してもよい。この場合には、整合した孔から根固め液G1がソケット部材26に流入するため、整合により外に開口した孔の高さに応じて根固め液G1が充填された高さを把握することができる。
【0055】
・上記各実施形態では、検知センサ35として、電気伝導率を計測する電気伝導率センサを用いた。検知センサ35は、根固め液G1と、水や空気との性質が大きく異なる物性値を測定できるセンサであればよい。
【0056】
・上記各実施形態では、芯材として鋼管杭10を用いた。芯材は、鋼管杭10に限定されず、コンクリート杭等の既製杭、鋼矢板やH形鋼等の鋼材等を用いてもよい。
・上記各実施形態の出来形管理方法では、芯材を地盤中に打設もしくは建て込むガンパイル工法に適用した。適用する工法は、ガンパイル工法に限定されず、中堀工法や打込み工法、プレボーリング工法等、他の工法であってもよい。
【0057】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記ソケット部材の上方には、前記センサ用管の振れを止めるための止め部材が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の芯材。
【符号の説明】
【0058】
B1…岩盤層、G1…根固め液、S1…開放領域、DF1,DF2…液面高さとしての検知高さ、10…芯材としての鋼管杭、11…本体管、12…ジェット管、15…グラウト管、16…止め部材、21,26…ソケット部材、22…保護部材、26a,26b,26c…第1孔としての孔、41,42,43…第2孔としての孔、30,40…センサ用管、35…検知センサ、36…電気ケーブル、50…振動杭打機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6