(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026937
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】水門開閉装置
(51)【国際特許分類】
E02B 7/36 20060101AFI20230221BHJP
E02B 7/20 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
E02B7/36
E02B7/20 109
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132391
(22)【出願日】2021-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000241290
【氏名又は名称】豊国工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】下見 広司
【テーマコード(参考)】
2D019
【Fターム(参考)】
2D019AA57
2D019AA59
2D019BA02
2D019BA03
2D019BA22
(57)【要約】
【課題】電動機を含む減速機構の部位をコンパクト化し、且つその配置バランスを改善することができ、大型化を抑制でき、安価な水門開閉装置を提供する。
【解決手段】水門開閉装置1は、減速機ケース10上に配置され、扉体を昇降させる電動機11と、減速機ケース10内に設けられ、電動機11からの回転が伝達されて、前記扉体を昇降させるウォームギヤ21と、を備え、該ウォームギヤ21は、セルフロック機能を有する。これにより、水門開閉装置1では、電動機11を含む減速機構(減速機ケース10)の部位をコンパクト化し、且つその配置バランスを改善することができ、大型化を抑制でき、安価にすることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水門を開閉すべく扉体を昇降させる水門開閉装置であって、
減速機ケース上に配置され、前記扉体を昇降させる電動機と、
前記減速機ケース内に設けられ、前記電動機からの回転が伝達されて、前記扉体を昇降させるウォームギヤと、を備え、
該ウォームギヤは、セルフロック機能を有することを特徴とする水門開閉装置。
【請求項2】
前記ウォームギヤを有するウォーム軸は鉛直方向に延び、
前記扉体を昇降させる際の、前記ウォーム軸に伝達される軸方向荷重が、前記ウォーム軸の下端部を回転自在に支持する軸受に伝達されることを特徴とする前請求項1に記載の水門開閉装置。
【請求項3】
前記電動機からの回転軸と前記ウォーム軸とは、互いに同心状に配置されることを特徴とする請求項2に記載の水門開閉装置。
【請求項4】
前記電動機からの回転軸と前記ウォーム軸との間には、互いの回転トルク差が所定値に到達すると、機械的に前記電動機の回転軸から前記ウォーム軸への動力の伝達を遮断する機械式トルクリミッタが設けられることを特徴とする請求項2または3に記載の水門開閉装置。
【請求項5】
前記ウォーム軸に傘歯車を設け、
手動ハンドルからの回転が伝達される回転スライド軸の先端に、前記ウォーム軸の傘歯車と対をなす傘歯車を設けて、
該回転スライド軸は、前記ウォーム軸の傘歯車と、前記回転スライド軸の傘歯車とが噛合及び噛合解除自在となるように軸方向に沿って移動自在に構成されることを特徴とする請求項2~4いずれかに記載の水門開閉装置。
【請求項6】
前記ウォームギヤを有するウォーム軸は、前記減速機ケース内でその底部を水平方向に沿って延びていることを特徴とする請求項1に記載の水門開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水門を開閉する扉体に連結されるラック棒、チェーンまたはワイヤロープを昇降、または巻回して、扉体を昇降させて水門を開閉する水門開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、水門を開閉する際には、水門開閉装置に備えた電動機の回転軸を開閉方向に回転駆動させることで扉体を昇降させている。従来の水門開閉装置としては、電動機、減速機および制動装置が一体化されたものがある。また、従来の水門開閉装置では、減速機ケース内の主要な回転軸は水平方向に延び、電動機は減速機ケースに対してその側方に配置され、電動機からの回転軸も水平方向に延びている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
このような、従来の水門開閉装置では、高い減速比を得るために複数の歯車セットが減速機ケース内に配置され、部品点数が増加するとともに、その平面的に大きな配置スペースも必要となる。その結果、電動機および歯車などの構成部材が平面的に拡張して配置され、開閉装置の支持点に対してバランスの悪い配置となっている。また、従来の水門開閉装置の強度設計においては、電動機の定格トルクおよび最大発生トルクに対して安全となるように強度設計されている。すなわち、従来の水門開閉装置では、過負荷防止装置として、動力伝達経路におけるトルク上昇をリミットスイッチ等により検出して電動機を停止させる装置が標準的に備えられているが、電動機との連結は機械的に遮断されていないので、安全性及び信頼性の観点から、電動機の最大発生トルクに対して、動力伝達経路に関わる多数の構成部材がその機能を十分に果たすように強度設計されている。
【0004】
具体的には、電動機の最大発生トルクは、定格トルクの通常300%を超える大きなものであり、強度上の必要性から多数の構成部材の寸法を大きくし、または高価な材質を使用することが必要となり、コストアップの要因となっている。さらに、一般に、水門開閉装置には、停電など電源が喪失した場合に備えて、手動操作で扉体を昇降させることが求められているが、手動操作するための手動ハンドルを設けるために高価な差動歯車を用いる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-124450号公報
【特許文献2】特公昭59-43608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そして、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、電動機を含む減速機構の部位をコンパクト化し、且つその配置バランスを改善するとともに、電動機の特性による大型化を抑制して、安価な水門開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、請求項1の水門開閉装置に係る発明は、水門を開閉すべく扉体を昇降させる水門開閉装置であって、減速機ケース上に配置され、前記扉体を昇降させる電動機と、前記減速機ケース内に設けられ、前記電動機からの回転が伝達されて、前記扉体を昇降させるウォームギヤと、を備え、該ウォームギヤは、セルフロック機能を有することを特徴とするものである。
請求項1の発明では、電動機を減速機ケース上に配置することにより、平面的な占有スペースを縮小できるとともに、電動機を安定して配置することができる。すなわち、電動機が減速機ケース上に配置されることにより、電動機を減速機ケースの側方に配置する従来と比較して、平面的な占有スペースを縮小することができる。しかも、電動機が減速機ケースの側方に張り出すことなく、電動機は平面的に減速機ケースの支持領域内に配置されるので、電動機を安定して配置することができる。また、減速機構としてウォームギヤを用いることにより平歯車に比較して、高い減速比を得ることができる。その結果、複数の歯車セットを必要とせず小型化することができる。また、ウォームギヤは、セルフロック機能を付与しているので、扉体の落下を抑制する制動装置を備える必要がなく、構成部材の数量を削減でき、コスト減を達成することができる。なお、電動機には、減速ギヤを内蔵したギヤドモータを採用してもよい。
【0008】
請求項2の水門開閉装置に係る発明は、請求項1の発明において、前記ウォームギヤを有するウォーム軸は鉛直方向に延び、前記扉体を昇降させる際の、前記ウォーム軸に伝達される軸方向荷重が、前記ウォーム軸の下端部を回転自在に支持する軸受に伝達されることを特徴とするものである。
請求項2の発明では、ウォーム軸に作用する支配的な軸方向荷重である扉体の降下方向の荷重(扉体の自重)が、例えば、減速機ケース内において、油浴状態にある潤滑に有利な、ウォーム軸の下端部を回転自在に支持する軸受に伝達されるので、この軸方向荷重を安全に支持することができる。
【0009】
請求項3の水門開閉装置に係る発明は、請求項2の発明において、前記電動機からの回転軸と前記ウォーム軸とは、互いに同心状に配置されることを特徴とするものである。
請求項3の発明では、電動機からの回転軸を鉛直方向に沿って配置して、ウォーム軸と回転軸とを、同心状に配置して、他の伝達ギヤを介することなく相対回転不能に連結することができる。その結果、回転軸からウォームギヤまでの動力伝達経路にて伝達ギヤ等を配置する必要はなく、伝達ギヤ等の構成部材の数量を削減することができるので、小型化でき、コスト減にも繋がる。
【0010】
請求項4の水門開閉装置に係る発明は、請求項2または3の発明において、前記電動機からの回転軸と前記ウォーム軸との間には、互いの回転トルク差が所定値に到達すると、機械的に前記電動機の回転軸から前記ウォーム軸への動力の伝達を遮断する機械式トルクリミッタが設けられることを特徴とするものである。
請求項4の発明では、機械式トルクリミッタにより、電動機からの回転軸とウォーム軸との間の回転トルク差が所定値に到達した段階で、電動機の回転軸からウォーム軸への動力伝達(トルク伝達)を機械的に遮断することができる。その結果、機械式トルクリミッタよりも動力伝達経路に係る下流側の多数の構成部材に対し、過大な電動機の最大発生トルクに基づいて強度設計する必要はなく、通常運転時の電動機からの回転トルクよりも若干大きい回転トルクに基づいて設計すればよく、装置のさらなる小型化及びコスト減を達成することができる。なお、電動機からの動力伝達が機械式トルクリミッタにより遮断された場合でも、ウォームギヤのセルフロック機能により吊上げ状態にある扉体が落下することはない。
【0011】
請求項5の水門開閉装置に係る発明は、請求項2~4いずれかの発明において、前記ウォーム軸に傘歯車を設け、手動ハンドルからの回転が伝達される回転スライド軸の先端に、前記ウォーム軸の傘歯車と対をなす傘歯車を設けて、該回転スライド軸は、前記ウォーム軸の傘歯車と、前記回転スライド軸の傘歯車とが噛合及び噛合解除自在となるように軸方向に沿って移動自在に構成されることを特徴とするものである。
請求項5の発明では、電動機により扉体を昇降させる際には、回転スライド軸が回転しないように、回転スライド軸を軸方向に沿って一方向に移動させて、回転スライド軸の傘歯車とウォーム軸の傘歯車との噛み合いが解除された状態とする。一方、手動ハンドルにより扉体を昇降させる際には、回転スライド軸を軸方向に沿って他方向に移動させて、回転スライド軸の傘歯車とウォーム軸の傘歯車とが噛み合う状態とする。その後、手動ハンドルを回転させることで、ウォーム軸を介して扉体を昇降させることができる。この結果、高価な差動歯車を用いることなく手動操作機能を確保することができる。
【0012】
請求項6の水門開閉装置に係る発明は、請求項1の発明において、前記ウォームギヤを有するウォーム軸は、前記減速機ケース内でその底部を水平方向に沿って延びていることを特徴とするものである。
請求項6の発明では、減速機ケース内の潤滑油の量を比較的少ない量とすることができ、経済的にメリットがある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る水門開閉装置によれば、電動機を含む減速機構の部位をコンパクト化し、且つその配置バランスを改善できるとともに、確実な過負荷防止のための機械式トルクリミッタを設けることで、電動機の特性による大型化を抑制して、安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る水門開閉装置の外観斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る水門開閉装置に採用した減速機ケース及び手動操作伝達機構の部位の縦断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る水門開閉装置に採用した減速機ケース及びピン歯車機構の部位の横断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る水門開閉装置に採用した手動操作伝達機構の拡大縦断面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る水門開閉装置に採用した減速機ケースの部位の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を
図1~
図5に基づいて詳細に説明する。
本発明の第1及び第2実施形態に係る水門開閉装置1A、1Bは、水門(図示略)を開閉するためのものであって、水門を構成する左右一対の門柱(図示略)間に扉体(図示略)を昇降自在に支持するものである。まず、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aを
図1~
図4に基づいて詳しく説明する。
図1に示すように、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aは、鉛直方向に沿って延びる、左右一対のラック棒4、4を昇降させて扉体を昇降させるものであるが、チェーン、ワイヤロープを用いて扉体を昇降させる水門開閉装置にも同様に適用することができる。
図1に示すように、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aにより、左右一対のラック棒4、4がそれぞれ昇降自在に支持され、左右一対のラック棒4、4の下部に扉体がそれぞれ懸垂される。左右一対のラック棒4、4間を架設するように機械台6が配置される。
【0016】
第1実施形態に係る水門開閉装置1Aは、
図1及び
図2に示すように、内部に、減速機構としてウォーム軸20及びウォームホイル34が収容される減速機ケース10と、該減速機ケース10上に配置される電動機11と、減速機ケース10から左右一対のラック棒4、4に向かって延び、電動機11からの回転がウォーム軸20及びウォームホイル34を介してそれぞれ伝達される一対の連動軸12、12と、該一対の連動軸12、12からの回転がそれぞれ伝達され、一対のラック棒4、4を昇降させる一対のピン歯車機構13、13と、作業者の手動操作による回転を、減速機ケース10内のウォーム軸20及びウォームホイル34に伝達する手動操作伝達機構14と、を備えている。
【0017】
減速機ケース10は、機械台6の長手方向略中央部であって、その上面に配置される。減速機ケース10は、内部空間を有する直方体状に形成される。減速機ケース10の長手方向が機械台6の幅方向(短手方向)に一致する。減速機ケース10の内部に、減速機構としてウォーム軸20及びウォームホイル34が配置される。電動機11は、減速機ケース10の上方であって、機械台6の幅方向一端寄りに配置される。減速機ケース10の長手方向一端寄りには、その上面から角筒状カバー部材18が上方に向かって突設される。この角筒状カバー部材18の上面に電動機11が配置される。なお、本実施形態では、電動機11には、減速ギヤが内蔵されたギヤドモータが採用される。当該ギヤドモータは、内蔵された減速ギヤにより減速され、その回転軸11Aの回転数が100~200rpm程度とされている。
【0018】
図2に示すように、減速機ケース10内において、ウォーム軸20が鉛直方向に沿って配置される。ウォーム軸20の下部には、ウォームギヤ21が設けられる。ウォーム軸20は、減速機ケース10内に回転自在に支持される。詳しくは、ウォーム軸20は、その上端寄りの部分が上下一対の上側軸受24、24により回転自在に支持され、その下端が上下一対の下側軸受26、26により回転自在に支持される。上側軸受24、24は、主にラジアル方向の荷重を受けるものであり、各上側軸受24、24内へグリースが封入される。一方、下側軸受26、26は、ラジアル方向及びアキシアル方向の荷重を受けるものである。ウォーム軸20は、下側の上下一対の下側軸受26、26により、下方への移動が規制される。なお、例えばベアリング押え等により、減速機ケース10に対する下側軸受26、26の上方への移動も規制される。ウォーム軸20の上端は、減速機ケース10の上面から角筒状カバー部材18内に突出される。電動機11からの回転軸11Aは鉛直方向に延びる。電動機11からの回転軸11Aの先端は、角筒状カバー部材18内に配置される。電動機11からの回転軸11Aとウォーム軸20とは同心状に配置される。電動機11からの回転軸11Aとウォーム軸20とは、角筒状カバー部材18内で機械式トルクリミッタ29により連結される。
【0019】
電動機11からの回転軸11Aとウォーム軸20とは、機械式トルクリミッタ29により、互いの回転トルク差が所定の範囲内であれば、互いに相対回転不能に連結される。一方、電動機11からの回転軸11Aとウォーム軸20との間の回転トルク差が所定値に到達すると、機械式トルクリミッタ29にて、ばねの押しつけ力に抗してボールまたはコロが溝外に出ることで、電動機11からの回転軸11Aとウォーム軸20とが互いに空転(相対回転)するようになる。要するに、電動機11からの回転軸11Aとウォーム軸20との間の回転トルク差が所定値に到達すると、機械式トルクリミッタ29により、機械的に、電動機11の回転軸11Aからウォーム軸20への動力(回転トルク)の伝達が遮断される。なお、機械式トルクリミッタ29は、角筒状カバー部材18により保護される。
図1を参照して、角筒状カバー部材18には、十分な大きさの点検窓23(
図1も参照)が設けられている。この点検窓23を通じて、機械式トルクリミッタ29を目視点検でき、長期に安定して動作させることができる。
【0020】
なお、電動機11からの回転軸11Aとウォーム軸20との間の回転トルク差が所定値に到達すると、機械式トルクリミッタ29により、ウォーム軸20からの負荷は電動機11のブレーキとも切り離されるため、機械式トルクリミッタ29から動力伝達経路に係る下流側において制動装置が備えられていない場合、扉体が落下することになる。しかしながら、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aでは、ウォームギヤ21及びウォームホイル34のセルフロック機能(後述)が制動装置として働くので扉体の落下を防止することができる。また、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aには、機械式トルクリミッタ29の動力伝達遮断動作、すなわち、電動機11からの回転軸11Aとウォーム軸20との間にて互いの回転トルク差が所定値に到達した際に発生する、機械式トルクリミッタ29の動力伝達遮断動作を検出するリミットスイッチ32が設けられている。リミットスイッチ32は、電動機11の駆動を制御する制御装置(図示略)と電気的に接続されている。制御装置では、リミットスイッチ32により、機械式トルクリミッタ29の動力伝達遮断動作を検出すると、電動機11の駆動を停止するように制御する(インターロック回路)。
【0021】
図2及び
図3に示すように、ウォーム軸20のウォームギヤ21には、ウォームホイル34が噛み合っている。ウォームホイル34は、減速機ケース10内に配置される。ウォームホイル34の軸方向は水平方向に延びる。ウォームホイル34は、その軸方向が機械台6の長手方向に一致するように減速機ケース10に回転自在に支持される。これにより、扉体の降下方向の荷重(扉体の自重)が、ウォーム軸20の軸方向下方に向かって伝達される歯車組合せ(ウォームギヤ21とウォームホイル34との歯車組合せ)となる。なお、ウォームギヤ21及びウォームホイル34は、扉体側からの荷重(負荷)によって回転しないセルフロック機能が付与されている。具体的には、ウォームギヤ21及びウォームホイル34の材質、加工精度、使用潤滑油などによって決定されるウォームギヤ21とウォームホイル34との間の摩擦係数を勘案して、ウォームギヤ21の歯形および進み角等が適切に設計され、扉体の降下方向の荷重により、ウォームギヤ21が、扉体の降下方向に沿って回転しない(セルフロック機能)ように構成されている。
【0022】
ウォーム軸20には、ウォームギヤ21よりも上方の位置に傘歯車36が相対回転不能に連結される。そして、手動操作伝達機構14からの回転が、当該傘歯車36を介してウォーム軸20に伝達される。
図2及び
図4に示すように、手動操作伝達機構14は、手動ハンドル40と、手動ハンドル40からの回転が伝達される第1平歯車41と、該第1平歯車41に噛み合う第2平歯車43と、第2平歯車43に対してその回転が互いに伝達されると共に軸方向への相対移動は許容される第2回転軸44と、を備えている。第1平歯車41には、その径方向中央部に第1回転軸42が相対回転不能に連結される。第1回転軸42は水平方向に延びる。第1回転軸42はウォーム軸20から離れる方向に延びている。第1回転軸42は、手動操作ハウジング46に対して複数の軸受48、48により回転自在に支持される。第1回転軸42は、手動操作ハウジング46から減速機ケース10の長手方向に沿って外部に突出される。第1回転軸42の、手動操作ハウジング46から外部に突出された端部に手動ハンドル40が一体的に連結される。
【0023】
第2平歯車43は、第1平歯車41と噛み合う。該第2平歯車43は、複数の軸受49、49を介して回転自在に手動操作ハウジング46に支持される。第2平歯車43には、その径方向中央部に第2回転軸44が相対回転不能に連結される。第2回転軸44の、ウォーム軸20と近接する側の端部に、傘歯車52が相対回転不能に連結される。第2回転軸44は、水平方向に沿って延びる。第2回転軸44は、第2平歯車43に対して、その回転は互いに伝達される一方、その軸方向に沿う相対移動は許容される。第2回転軸44は、第2平歯車43の径方向中央に設けた挿通孔に対してスプライン係合またはキー溝係合により連結される。第2回転軸44は、手動操作ハウジング46に軸受54を介して回転自在に、且つ軸方向に沿って移動自在に支持される。第2回転軸44が回転スライド軸に相当する。第2回転軸44の、ウォーム軸20から離間される側の端部の外周面には軸受55が配置される。該軸受55の外周にアダプタ軸部57が配置される。
【0024】
詳しくは、アダプタ軸部57は水平方向に延びる。アダプタ軸部57は、第2回転軸44と同心状に配置される。アダプタ軸部57は、ウォーム軸20側に形成されるアダプタ大径軸部59と、該アダプタ大径軸部59から連続してウォーム軸20から離れる方向に延びるアダプタ小径軸部60と、を備えている。アダプタ大径軸部59の、ウォーム軸20に近接する端面に収容凹部62が形成される。該収容凹部62の内周面に設けた係合溝部と、第2回転軸44の外周面との間に軸受55が配置される。なお、第2回転軸44には、軸受55を境にウォーム軸20から離間される側に抜止リング63が配置され、軸受55からウォーム軸20に近接する側に段差部64が形成される。
【0025】
これにより、第2回転軸44の、ウォーム軸20から離間される側の端部は、アダプタ軸部57に対して、軸受55を介して回転自在に支持される。また、第2回転軸44は、軸受55により、アダプタ軸部57の軸方向に沿う移動に追従するように軸方向に沿って移動することが可能になる。アダプタ軸部57のアダプタ大径軸部59の外周面は、対向する手動操作ハウジング46の内周面と螺合している。アダプタ軸部57のアダプタ小径軸部60が、軸受56を介して手動操作ハウジング46に回転自在に支持される。アダプタ小径軸部60の先端部がさらに小径に形成されて、手動操作ハウジング46から外部に突出される。そして、作業者が、アダプタ軸部57を回転させることで軸方向に移動させて、第2回転軸44をその軸方向に沿って移動させることが可能になる。
【0026】
その際、作業者が、アダプタ軸部57を正方向に回転させると、第2回転軸44が軸方向に沿って前進することで、第2回転軸44の先端に設けた傘歯車52がウォーム軸20に設けた傘歯車36と噛み合う。その後、手動ハンドル40を回転させることで、その回転が、第1回転軸42、第1平歯車41、第2平歯車43、第2回転軸44、第2回転軸44の傘歯車52及びウォーム軸20の傘歯車36を経由して、ウォーム軸20に伝達される。一方、作業者が、アダプタ軸部57を逆方向に回転させると、第2回転軸44が軸方向に沿って後退することで、第2回転軸44の先端に設けた傘歯車52とウォーム軸20に設けた傘歯車36との噛合が解除される。
【0027】
図2及び
図4に示すように、第2回転軸44の、傘歯車52よりもウォーム軸20から離れる側の外周面には、径方向外方に向かって環状のストライカ部材67が突設される。ストライカ部材67は、傘歯車52の外径よりも大径である。ストライカ部材67よりもウォーム軸20側にリミットスイッチ70が配置される。当該リミットスイッチ70は、手動ハンドル40を正方向に回転させ、第2回転軸44が所定位置まで前進した際にストライカ部材67との接触を検出するものである。このリミットスイッチ70は、電動機11の駆動を制御する制御装置と電気的に接続されている。当該制御装置では、リミットスイッチ70により、ストライカ部材67との接触を検知すると、電動機11の駆動を停止するように制御する(インターロック回路)。
【0028】
図2及び
図3に示すように、ウォームホイル34には、その径方向中央に出力軸72が相対回転不能に連結される。出力軸72は、複数の軸受73、73を介して回転自在に減速機ケース10に支持される。出力軸72は機械台6の長手方向に沿って、水平方向に延びる。また、
図2を参照して、減速機ケース10内には、その油面がウォームギヤ21とウォームホイル34との噛合範囲における略上端部位に位置するように、言い換えれば、その油面が出力軸72の上端付近に位置するように潤滑油が貯溜されている。その結果、ウォームギヤ21とウォームホイル34との噛合範囲と、ウォーム軸20の下部を回転自在に支持する上下一対の下側軸受26、26とは、潤滑油により常時潤滑された油浴状態となる。
図1及び
図3を参照して、出力軸72は、減速機ケース10から外部に突出され、その両端に各カップリング74,74(
図1及び
図3では1個しか図示されていない)を介して一対の連動軸12、12が相対回転不能にそれぞれ連結される。連動軸12は機械台6の長手方向に沿って、水平方向に延びる。連動軸12は、カップリング75を介してピン歯車機構13の第3回転軸79に相対回転不能に連結される。
【0029】
図3に示すように、ピン歯車機構13は、第3回転軸79を有する第3平歯車78と、該第3平歯車78に噛み合う第4平歯車80と、第4平歯車80の回転が伝達されるピン歯車82と、を備えている。第3回転軸79は、水平方向に延びている。第3回転軸79は、機械台6の長手方向に沿って、第3平歯車78から減速機ケース10に向かって延びている。第3回転軸79は、ピン歯車用ハウジング85に複数の軸受87、87を介して回転自在に支持される。当該第3回転軸79が、連動軸12にカップリング75を介して相対回転不能に連結される。当該第3回転軸79の減速機ケース10から離間される側に第3平歯車78が一体的に設けられる。第3平歯車78に第4平歯車80が噛み合っている。
【0030】
当該第4平歯車80の径方向中央部に第4回転軸81が相対回転不能に連結される。第4回転軸81は、機械台6の長手方向に沿って、減速機ケース10側とは反対方向に向かって延びている。第4回転軸81は、水平方向に延びている。第4回転軸81の、減速機ケース10側とは反対側端部の外周面にピン歯車82が一体的に設けられている。第4回転軸81は、ピン歯車用ハウジング85に複数の軸受88、88を介して回転自在に支持される。そして、ピン歯車82にラック棒4が係合しており、第4回転軸81の回転に伴うピン歯車82の回転によりラック棒4が昇降される。
【0031】
なお、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aでは、連動軸12は、カップリング75を介してピン歯車機構13の第3回転軸79に相対回転不能に連結されて、第3回転軸79の回転は、第3平歯車78及び第4平歯車80を介してピン歯車82に伝達される構成であり、第3平歯車78及び第4平歯車80により、連動軸12及びカップリング75への負荷を低減して、連動軸12及びカップリング75が過大(大型化)となるのを抑制してコストダウンを図っているが、第3平歯車78及び第4平歯車80を備えず、連動軸12の回転を、カップリング75を介して直接ピン歯車82(第4回転軸81)に伝達する構成としてもよい。
【0032】
そして、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aにおいて、電動機11の駆動により扉体を昇降させる際には、まず、作業者が、手動操作伝達機構14のアダプタ軸部57を逆方向に回転させると共に、第2回転軸44を軸方向に沿って減速機ケース10内のウォーム軸20から後退させることで、第2回転軸44の先端に設けた傘歯車52とウォーム軸20に設けた傘歯車36との噛合を解除しておく。
【0033】
次に、電動機11(ギヤドモータ)を作動させる。すると、電動機11の回転軸11Aは、内蔵された減速ギヤにより減速されて、その回転数が100~200rpm程度にて回転する。当該回転軸11Aの回転に伴って、機械式トルクリミッタ29を経てウォーム軸20が回転する。当該ウォーム軸20の回転に伴って、ウォームギヤ21を経て高い減速比にてウォームホイル34が回転する。なお、ウォーム軸20の回転に伴ってウォームホイル34が回転する際には、1/40~1/80程度の減速が可能となり、他の減速用歯車を用いることなく、必要な減速を達成することができる。
【0034】
ウォームホイル34の回転に伴って、出力軸72及び連動軸12が回転する。当該連動軸12の回転に伴って、第3平歯車78及び第4平歯車80を経て所定の減速比にて第4回転軸81が回転する。そして、当該第4回転軸81の回転に伴って、ピン歯車82が回転して、当該ピン歯車82の回転に伴って、ラック棒4が昇降して扉体が昇降する。なお、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aでは、ピン歯車機構13のピン歯車82の必要回転数として0.3~1.0rpm程度を得ることができる。
【0035】
そこで、電動機11からの回転軸11Aの回転に伴って、機械式トルクリミッタ29を介してウォーム軸20が回転する際、回転軸11Aとウォーム軸20との間の回転トルク差が所定値に到達すると、機械式トルクリミッタ29により、機械的に電動機11の回転軸11Aからウォーム軸20への動力(回転トルク)の伝達を遮断される。また、機械式トルクリミッタ29の作動をリミットスイッチ32が検知すると、電動機11の駆動が停止される。
【0036】
このとき、ウォームギヤ21及びウォームホイル34は、扉体側からの荷重(負荷)によって回転しないセルフロック機能を備えているので、機械式トルクリミッタ29が作動しても、当該セルフロック機能により扉体の落下を防止することができる。また、扉体が昇降する際、ウォーム軸20に作用する支配的な軸方向荷重である扉体の降下方向の荷重(扉体の自重)は、ウォーム軸20に対して軸方向下方に向かっているが、この軸方向下向きの荷重は、ウォーム軸20の下部を回転自在に支持する、油浴状態にある潤滑に有利な上下一対の下側軸受26、26(ラジアル方向及びアキシアル方向の荷重を受ける)にて安全に支持することができる。
【0037】
次に、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aにおいて、手動ハンドル40にて扉体を昇降させる際には、作業者が、手動操作伝達機構14のアダプタ軸部57を正方向に回転させると共に、第2回転軸44を軸方向に沿って減速機ケース10内のウォーム軸20に向かって前進させることで、第2回転軸44の先端に設けた傘歯車52とウォーム軸20に設けた傘歯車36とが噛み合った状態とする。このとき、リミットスイッチ70により、ストライカ部材67との接触が検知された状態であり、その検出信号により、制御装置では、電動機11の駆動を停止するように制御される。
【0038】
次に、作業者により、手動ハンドル40を回転させる。すると、第1回転軸42の回転に伴って第1平歯車41が回転する。当該第1平歯車41の回転に伴って、第2平歯車43が回転する。該第2平歯車43の回転に伴って、第2回転軸44が回転することで、第2回転軸44の先端に設けた傘歯車52とウォーム軸20に設けた傘歯車36との噛合により、ウォーム軸20が回転する。そして、ウォーム軸20からの回転は、上述したように、ウォームホイル34、出力軸72、連動軸12、ピン歯車機構13の第3回転軸79、第3平歯車78、第4平歯車80、及び第4回転軸81を経由してピン歯車82に伝達される。当該ピン歯車82の回転に伴って、ラック棒4が昇降して扉体が昇降される。なお、この作業者による手動操作時には、電動機11に付属されたブレーキは、手動により解放状態とされている。
【0039】
以上説明したように、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aでは、減速機ケース10上に配置され、扉体を昇降させる電動機11と、減速機ケース10内に設けられ、電動機11からの回転が伝達されて扉体を昇降させる、減速機構としてのウォームギヤ21と、を備え、該ウォームギヤ21は、セルフロック機能を有している。これにより、電動機11を減速機ケース10の側方に配置する従来と比較して、平面的な占有スペースを縮小することができる。しかも、電動機11が減速機ケース20の側方に張り出すことなく、電動機11は、平面的に減速機ケース10の支持領域内に配置されるので、電動機11を安定して配置することができる。このように、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aでは、電動機11を含む減速機構(減速機ケース10)の部位をコンパクト化でき、且つその配置バランスを改善することができる。
【0040】
また、減速機構としてウォームギヤ21及びウォームホイル34を用いることにより平歯車に比較して、高い減速比を得ることができる。その結果、複数の平歯車セットを必要とせず小型化することができる。また、ウォームギヤ21及びウォームホイル34は、セルフロック機能を付与しているので、扉体の落下を抑制する制動装置を備える必要がなく、構成部材の数量を削減でき、コスト減を達成することができる。
【0041】
また、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aでは、ウォームギヤ21を有するウォーム軸20は鉛直方向に延び、扉体の降下方向の荷重(扉体の自重)が、ウォーム軸20の軸方向下方に向かって伝達される歯車組合せとしているので、ウォーム軸20に作用する支配的な軸方向荷重である扉体の降下方向の荷重が、ウォーム軸20に対してその下方に向かって伝達される構成とすることができる。また、扉体を昇降させる際のウォーム軸20に伝達される軸方向荷重は、ウォーム軸20の下端部を回転自在に支持する下側軸受26、26に伝達される。しかも、減速機ケース10内の下部は潤滑油が貯溜されており、ウォームギヤ21とウォームホイル34との噛合範囲、及びウォーム軸20の下端部を回転自在に支持する下側の一対の下側軸受26、26が潤滑油による油浴状態となっている。これにより、油浴状態にある潤滑に有利な、ウォーム軸20を回転自在に支持する一対の下側軸受26、26にて、ウォーム軸20に作用する下方に向かう軸方向荷重を安全に支持することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、ウォーム軸20に伝達される支配的な軸方向荷重をウォーム軸20に対してその下方に向かう構成としたが、例えばベアリング押え等により、減速機ケース10に対する一対の下側軸受26、26の上方への移動も規制されることにより、軸方向荷重の如何に係らず、油浴状態となっている一対の下側軸受26、26により、ウォーム軸20への軸方向荷重を安全に支持することができる。
【0043】
さらに、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aでは、電動機11からの回転軸11Aとウォーム軸20とは、互いに同心状に相対回転不能に連結される。これにより、電動機11からの回転軸11Aからウォームギヤ21までの動力伝達経路にて伝達ギヤ等を配置する必要はなく、伝達ギヤ等の構成部材の数量を削減することができるので、小型化でき、コスト減にも繋がる。
【0044】
さらにまた、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aでは、電動機11からの回転軸11Aとウォーム軸20との間には、機械式トルクリミッタ29が設けられている。そして、当該機械式トルクリミッタ29により、電動機11からの回転軸11Aとウォーム軸20との間の回転トルク差が所定値に到達した段階で、電動機11の回転軸11Aからウォーム軸20への動力伝達を機械的に遮断することができる。その結果、機械式トルクリミッタ29よりも動力伝達経路に係る下流側の多数の構成部材に対し、過大な電動機11の最大発生トルクに基づいて強度設計する必要はなく、通常運転時の電動機11からの回転トルクよりも若干大きい回転トルクに基づいて強度設計すればよく、開閉装置1Aの、さらなる小型化及びコスト減を達成することができる。
【0045】
追記すると、従来では、過トルクをリミットスイッチで検出し、電磁接触器を電気的に作動させて電動機11の電源を切る過負荷保護装置が採用されているが、電磁接触器、リレー接点、リミットスイッチ等の電気品の故障の可能性もあるので、上述のように、開閉装置に過大なトルクが作用する可能性に配慮して、この事態が発生しても破壊されないように電動機11の最大発生トルクにおいても強度検証がなされているが、機械式トルクリミッタ29を用いれば、機械的に回転トルクの伝達が遮断されるので、電動機11の最大発生トルクが作用する心配がない。
【0046】
また、本実施形態に係る電動機11(ギヤドモータ)では、その回転軸11Aの回転数が100~200rpmと十分に低速化が図られ、機械式トルクリミッタ29において高速回転により溝へのボールまたはコロの着脱が短時間に高速かつ連続して起こる不安定な現象が発生しないように考慮されている。これに合わせて、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aでは、機械式トルクリミッタ29の作動を検出するリミットスイッチ32を備えており、機械式トルクリミッタ29の作動後、遅滞なく電動機11も停止するように制御されており、安全性及び信頼性をさらに向上させることができる。
【0047】
さらにまた、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aでは、手動ハンドル40からの回転が伝達される第2回転軸44(回転スライド軸)の先端に、ウォーム軸20の傘歯車36と対をなす傘歯車52を相対回転不能に連結して、第2回転軸44は、ウォーム軸20の傘歯車36と、第2回転軸44の傘歯車52とが噛合及び噛合解除自在となるように軸方向に沿って移動自在に構成される。これにより、電動機11により扉体を昇降させる際には、第2回転軸44を軸方向に沿って減速機ケース20内のウォーム軸20から後退させることで、第2回転軸44の傘歯車52とウォーム軸20の傘歯車36との噛合が解除された状態とする。
【0048】
一方、手動ハンドル40により扉体を昇降させる際には、第2回転軸44を軸方向に沿って減速機ケース10内のウォーム軸20に向かって前進させることで、第2回転軸44の傘歯車52とウォーム軸20の傘歯車36とが噛み合う状態として、作業者が手動ハンドル40を回転させることにより、扉体を昇降させることができる。この結果、高価な差動歯車を用いることなく手動操作機能を確保することができ、さらなるコスト減に貢献できる。
【0049】
次に、第2実施形態に係る水門開閉装置1Bを
図5に基づいて、適宜
図4なども参照しながら詳しく説明する。当該第2実施形態に係る水門開閉装置1Bを説明する際には、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aとの相違点のみを説明する。
【0050】
第2実施形態に係る水門開閉装置1Bでは、角筒状カバー部材18は備えておらず、減速機ケース10の上面に電動機11が直接配置されている。減速機ケース10内には、鉛直回転軸100が鉛直方向に延びている。電動機11からの回転軸11Aの先端は、減速機ケース10内に配置される。電動機11からの回転軸11Aと鉛直回転軸100とが互いに同心状に配置される。電動機11からの回転軸11Aと鉛直回転軸100との間に機械式トルクリミッタ29が配置される。機械式トルクリミッタ29は減速機ケース10内に配置される。鉛直回転軸100の下端は、減速機ケース10の底面上に配置される支持台101に一対の軸受105、105を介して回転自在に支持される。鉛直回転軸100の下端寄りには、傘歯車110が相対回転不能に連結される。減速機ケース10内であって、その底部、言い換えれば、鉛直回転軸100の下端近傍にウォーム軸20が配置される。
【0051】
ウォーム軸20は、減速機ケース10内を水平方向に延びる。ウォーム軸20は、減速機ケース10の長手方向(機械台6の幅方向)に沿って延びている。減速機ケース10内の底部には、その長手方向に沿って間隔を置いて一対の支持台101、102が配置される。ウォーム軸20は、複数の軸受106、106を介して一対の支持台101、102それぞれに回転自在に支持される。ウォーム軸20の長手方向略中央部にウォームギヤ21が設けられる。ウォーム軸20の鉛直回転軸100側の端部に、傘歯車111が相対回転不能に連結されている。そして、鉛直回転軸100に設けた傘歯車110と、ウォーム軸20に設けた傘歯車111とが噛み合っている。ウォーム軸20のウォームギヤ21にウォームホイル34が噛み合っている。ウォームホイル34は、減速機ケース10内に配置される。
【0052】
ウォームホイル34は、その軸方向が機械台6の長手方向に一致するように回転自在に支持される。ウォームホイル34には、その径方向中央に出力軸72が相対回転不能に連結される。減速機ケース10内には、ウォームギヤ21とウォームホイル34との噛合範囲が浸漬されるように潤滑油が貯溜されている。その結果、減速機ケース10内において、ウォームギヤ21とウォームホイル34との噛合範囲を含む複数の軸受105、106が油浴状態となる。第2実施形態に係る水門開閉装置1Bでは、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aよりも、減速機ケース10内の潤滑油の量を少なくすることができる。
【0053】
なお、第2実施形態に係る水門開閉装置1Bにおいても、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aの構成である手動操作伝達機構14(
図4参照)を備えて(
図5では図示せず)、一方、鉛直回転軸100に傘歯車(
図5において図示せず)を相対回転不能に連結する。そして、当該手動操作伝達機構14に備えた第2回転軸44の傘歯車52(
図4参照)と、鉛直回転軸100の傘歯車とを噛み合わせることで、作業者により、手動操作伝達機構14を作動させて、扉体を昇降させることができる。
【0054】
そして、第2実施形態に係る水門開閉装置1Bでは、電動機11を作動させると、電動機11の回転軸11Aの回転に伴って、機械式トルクリミッタ29を経て鉛直回転軸100が回転する。当該鉛直回転軸100の回転に伴って、各傘歯車110、111を介してウォーム軸20が回転すると共に、該ウォームホイル34が回転する。当該ウォームホイル34の回転に伴って、出力軸72、連動軸12、ピン歯車機構13の第3回転軸79、第3平歯車78、第4平歯車80、第4回転軸81及びピン歯車82が回転して、当該ピン歯車82の回転に伴って、ラック棒4が昇降して扉体が昇降する。
【0055】
以上説明した、第2実施形態に係る水門開閉装置1Bにおいても、電動機11を減速機ケース10上に配置している点、機械式トルクリミッタ29を設けている点、減速機構として、セルフロック機能を有するウォームギヤ21及びウォームホイル34を採用している点、手動操作伝達機構14を備えている点において、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aと同様の作用効果を奏することができる。
【0056】
また、第2実施形態に係る水門開閉装置1Bでは、ウォームギヤ21を有するウォーム軸20は、減速機ケース10内でその底部を水平方向に沿って延びているので、減速機ケース10内の潤滑油の量を、第1実施形態に係る水門開閉装置1Aに採用した減速機ケース10内の潤滑油の量よりも少なくすることができる。
【符号の説明】
【0057】
1A、1B 水門開閉装置,10 減速機ケース,11 電動機,11A 回転軸,20 ウォーム軸,21 ウォームギヤ,26 下側軸受,29 機械式トルクリミッタ,44 第2回転軸(回転スライド軸),36 傘歯車,52 傘歯車