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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026958
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】圧電式バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/02 20060101AFI20230221BHJP
【FI】
F16K31/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132431
(22)【出願日】2021-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(71)【出願人】
【識別番号】502254796
【氏名又は名称】有限会社メカノトランスフォーマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100158702
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 卓也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆文
(72)【発明者】
【氏名】松下 忠史
(72)【発明者】
【氏名】徐 世傑
(72)【発明者】
【氏名】王 徴力
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062BB30
3H062CC07
3H062EE07
3H062HH02
(57)【要約】
【課題】アクチュエータに設けられる弁体が弁座プレートに設けられる弁座に対して円弧運動により接離する場合であって、前記弁体と前記弁座の長さを短くした場合でも、開弁時に必要な圧縮気体の排出量を確保することが可能な圧電式バルブを提供する。
【解決手段】弁体を駆動するアクチュエータと、前記弁体と接離する弁座及び排出路を有し、前記アクチュエータを固定する弁座プレートと、前記弁座プレートを収納する本体ケースと、を備える圧電式バルブであって、前記アクチュエータに設けられる前記弁体が前記弁座プレートに設けられる前記弁座に対して円弧運動により接離する圧電式バルブにおいて、前記弁座は、複数の環状凸部内にそれぞれ前記排出路の一端が開口する弁座面を有し、前記複数の環状凸部は、複数の錐台の頂面にそれぞれ前記排出路の一端が開口し、前記弁体は、前記弁座面の前記複数の環状凸部と接離する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体を駆動するアクチュエータと、
前記弁体と接離する弁座及び排出路を有し、前記アクチュエータを固定する弁座プレートと、
前記弁座プレートを収納する本体ケースと、を備える圧電式バルブであって、
前記アクチュエータは、
前記弁座プレートに固定される基部と、
前記基部の取付け面に一端部が接続され、第1長手方向に延びる圧電素子と、
前記基部に一体に設けられ、前記圧電素子と並んで前記第1長手方向と交差する第2長手方向に延びる支持部と、
前記圧電素子の他端部及び前記支持部の先端部と接続され、前記圧電素子の伸縮に伴って、前記第1長手方向及び前記第2長手方向それぞれと異なる方向に変位する作用部と、
前記作用部の前記変位する方向の側に設けられ、前記作用部の変位によって駆動される前記弁体と、を備え、
前記本体ケースは、
圧縮気体が供給される気体供給口と、
前記気体供給口から供給された圧縮気体を前記弁体と前記弁座との離間によって前記弁座プレートの前記排出路を介して排出する気体排出口と、を備える圧電式バルブにおいて、
前記弁座は、複数の環状凸部内にそれぞれ前記排出路の一端が開口する弁座面を有し、
前記複数の環状凸部は、複数の錐台の頂面にそれぞれ前記排出路の一端が開口し、
前記弁体は、前記弁座面の前記複数の環状凸部と接離することを特徴とする圧電式バルブ。
【請求項2】
前記複数の環状凸部は、前記弁座の幅方向に並設され、前記排出路の一端は、前記弁座の長さ方向に沿って前記複数の環状凸部内にそれぞれスリット状に開口する請求項1に記載の圧電式バルブ。
【請求項3】
前記排出路は、前記複数の環状凸部内にそれぞれ開口する複数の弁座側流路と、前記各弁座側流路が交差して連通し前記弁座プレートの表面に開口する1つの主流路とを有し、
前記主流路の内面は、前記各弁座側流路が交差する連通部において前記弁座面側に凸状をなし、前記各連通部間において凹状をなす形状とする請求項1又は2に記載の圧電式バルブ。
【請求項4】
弁体を駆動するアクチュエータと、
前記弁体と接離する弁座及び排出路を有し、前記アクチュエータを固定する弁座プレートと、
前記弁座プレートを収納する本体ケースと、を備える圧電式バルブであって、
前記アクチュエータは、
前記弁座プレートに固定される基部と、
前記基部の取付け面に一端部が接続され、第1長手方向に延びる圧電素子と、
前記基部に一体に設けられ、前記圧電素子と並んで前記第1長手方向と交差する第2長手方向に延びる支持部と、
前記圧電素子の他端部及び前記支持部の先端部と接続され、前記圧電素子の伸縮に伴って、前記第1長手方向及び前記第2長手方向それぞれと異なる方向に変位する作用部と、
前記作用部の前記変位する方向の側に設けられ、前記作用部の変位によって駆動される前記弁体と、を備え、
前記本体ケースは、
圧縮気体が供給される気体供給口と、
前記気体供給口から供給された圧縮気体を前記弁体と前記弁座との離間によって前記弁座プレートの前記排出路を介して排出する気体排出口と、を備える圧電式バルブにおいて、
前記弁座は、環状凸部内に前記排出路の一端が開口する弁座面を有し、
前記環状凸部は、錐台の頂面に前記排出路の一端が開口し、
前記弁体は、前記弁座面の前記環状凸部と接離することを特徴とする圧電式バルブ。
【請求項5】
前記支持部は、前記第2長手方向に延びる中間部分にくびれ部を有する請求項1乃至4のいずれかに記載の圧電式バルブ。
【請求項6】
前記弁座プレートは、前記弁座及び前記排出路が形成される弁座部を有し、前記弁座部の正面側又は背面側の少なくとも一面に前記弁座が設けられ、
前記アクチュエータは、前記弁体が前記弁座に対峙すべく前記弁座プレートに固定される請求項1乃至5のいずれかに記載の圧電式バルブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子の変位を利用してバルブの開閉を行う圧電式バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電素子の変位を利用してバルブの開閉を行い、圧縮気体を噴出する圧電式バルブは周知である(特許文献1,2を参照。)。
【0003】
特許文献1,2に記載された圧電式バルブは、高速応答性能に優れる圧電素子の特性を利用するアクチュエータを備えるものであり、前記アクチュエータに前記圧電素子の小さな変位をテコの原理に基づき拡大する変位拡大機構を備えるものである。
【0004】
前記圧電式バルブは、応答性に優れるため、米粒等の粒状物を対象とした光学式選別機のエジェクタバルブに用いて不良品を除去する場合、良品が巻き添えとなって除去されることが少なく、除去された不良品側の不良品混入率が電磁式バルブに比べて高いとの知見を、試験からも、また経験則上も得られている。
【0005】
ところで、本発明者らは、先に、アクチュエータがシンプルな構造の変位拡大機構を備える圧電式バルブを提案した(特許文献3を参照。)。
特許文献3に記載された圧電式バルブは、アクチュエータにおける作用部に弁体が設けられ、前記弁体が支持部に設けられるくびれ部を支点として円弧運動するものであり、特許文献1,2に記載された従来の圧電式バルブに比べ、バルブの開閉動作をより高速に行うことができる。
【0006】
ところが、特許文献3に記載された圧電式バルブは、前記弁体が弁座プレートに設けられる弁座に対して円弧運動により接離するものであり、弁体の長さ方向であって前記支点から遠い先端側と前記支点に近い基端側で前記弁体が前記弁座と接離するタイミングが異なる(時間差が生じる)虞があるため、前記弁座の長さを短くする必要があるが、前記弁座の長さを短くすることで開弁時に圧縮気体の排出量が少なくなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5764049号公報
【特許文献2】特開2021-8892号公報
【特許文献3】特願2020-154308号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、弁体が弁座に対して円弧運動により接離する場合であって、前記弁体と前記弁座の長さを短くした場合でも、開弁時に必要な圧縮気体の排出量を確保することが可能な圧電式バルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、
弁体を駆動するアクチュエータと、
前記弁体と接離する弁座及び排出路を有し、前記アクチュエータを固定する弁座プレートと、
前記弁座プレートを収納する本体ケースと、を備える圧電式バルブであって、
前記アクチュエータは、
前記弁座プレートに固定される基部と、
前記基部の取付け面に一端部が接続され、第1長手方向に延びる圧電素子と、
前記基部に一体に設けられ、前記圧電素子と並んで前記第1長手方向と交差する第2長手方向に延びる支持部と、
前記圧電素子の他端部及び前記支持部の先端部と接続され、前記圧電素子の伸縮に伴って、前記第1長手方向及び前記第2長手方向それぞれと異なる方向に変位する作用部と、
前記作用部の前記変位する方向の側に設けられ、前記作用部の変位によって駆動される前記弁体と、を備え、
前記本体ケースは、
圧縮気体が供給される気体供給口と、
前記気体供給口から供給された圧縮気体を前記弁体と前記弁座との離間によって前記弁座プレートの前記排出路を介して排出する気体排出口と、を備える圧電式バルブにおいて、
前記弁座は、複数の環状凸部内にそれぞれ前記排出路の一端が開口する弁座面を有し、
前記複数の環状凸部は、複数の錐台の頂面にそれぞれ前記排出路の一端が開口し、
前記弁体は、前記弁座面の前記複数の環状凸部と接離することを特徴とする。
【0010】
本発明は、
前記アクチュエータの前記作用部が、前記圧電素子の伸縮に伴って、前記第1長手方向及び前記第2長手方向それぞれと異なる方向であって、前記第1長手方向及び前記第2長手方向を含む平面に平行な面内における変位方向に変位することが好ましい。
【0011】
本発明は、
前記複数の環状凸部が、前記弁座の幅方向に並設され、前記排出路の一端は、前記弁座の幅方向に直交する長さ方向に沿って前記複数の環状凸部内にそれぞれスリット状に開口することが好ましい。
【0012】
本発明は、
前記排出路が、前記複数の環状凸部内にそれぞれ開口する複数の弁座側流路と、前記各弁座側流路が交差して連通し前記弁座プレートの表面に開口する1つの主流路とを有し、
前記主流路の内面は、前記各弁座側流路が交差する連通部において前記弁座面側に凸状をなし、前記各連通部間において凹状をなす形状とすることが好ましい。
【0013】
本発明は、
前記主流路が、前記各弁座側流路の流路断面の合計よりも大きな流路断面を有することが好ましい。
【0014】
また、上記目的を達成するため、本発明は、
弁体を駆動するアクチュエータと、
前記弁体と接離する弁座及び排出路を有し、前記アクチュエータを固定する弁座プレートと、
前記弁座プレートを収納する本体ケースと、を備える圧電式バルブであって、
前記アクチュエータは、
前記弁座プレートに固定される基部と、
前記基部の取付け面に一端部が接続され、第1長手方向に延びる圧電素子と、
前記基部に一体に設けられ、前記圧電素子と並んで前記第1長手方向と交差する第2長手方向に延びる支持部と、
前記圧電素子の他端部及び前記支持部の先端部と接続され、前記圧電素子の伸縮に伴って、前記第1長手方向及び前記第2長手方向それぞれと異なる方向に変位する作用部と、
前記作用部の前記変位する方向の側に設けられ、前記作用部の変位によって駆動される前記弁体と、を備え、
前記本体ケースは、
圧縮気体が供給される気体供給口と、
前記気体供給口から供給された圧縮気体を前記弁体と前記弁座との離間によって前記弁座プレートの前記排出路を介して排出する気体排出口と、を備える圧電式バルブにおいて、
前記弁座は、環状凸部内に前記排出路の一端が開口する弁座面を有し、
前記環状凸部は、錐台の頂面に前記排出路の一端が開口し、
前記弁体は、前記弁座面の前記環状凸部と接離することを特徴とする。
【0015】
本発明は、
前記アクチュエータの前記支持部が、前記第2長手方向に延びる中間部分にくびれ部を有することが好ましい。
【0016】
本発明は、
前記弁座プレートが、前記弁座及び前記排出路が形成される弁座部を有し、前記弁座部の正面側又は背面側の少なくとも一面に前記弁座が設けられ、
前記アクチュエータは、前記弁体が前記弁座に対峙すべく前記弁座プレートの少なくとも一側面に固定されることが好ましい。
【0017】
本発明は、
前記弁座プレートが、前記弁座及び前記排出路が形成される弁座部を有し、前記弁座部の正面側及び背面側の相対する両面に前記弁座が設けられ、
複数の前記アクチュエータは、各弁体が前記各弁座にそれぞれ対峙すべく前記弁座プレートに固定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の圧電式バルブは、前記弁座が、複数の環状凸部内にそれぞれ前記排出路の一端が開口する弁座面を有するので、前記弁座の長さを短くした場合でも、前記複数の環状凸部によって前記排出路における前記開口の周長を全体として長くすることができる。
また、本発明の圧電式バルブは、前記弁座が、複数の環状凸部内にそれぞれ前記排出路の一端が開口する弁座面を有し、前記複数の環状凸部は、複数の錐台の頂面にそれぞれ前記排出路の一端が開口するので、前記弁座面は、前記複数の環状凸部の周囲が傾斜面となり、開弁時に前記複数の環状凸部の周囲から前記排出路の前記開口に圧縮気体を取り込む際の抵抗を小さくすることができる。
したがって、本発明の圧電式バルブによれば、弁体が弁座に対して円弧運動により接離する場合であって、前記弁体と前記弁座の長さを短くした場合でも、開弁時に必要な圧縮気体の排出量を確保することが可能となる。
【0019】
本発明の圧電式バルブは、前記複数の環状凸部が、前記弁座の幅方向に並設され、前記排出路の一端は、前記弁座の幅方向に直交する長さ方向に沿って前記複数の環状凸部内にそれぞれスリット状に開口することとすれば、前記弁座の長さを短くした場合でも、前記複数の環状凸部によって前記各弁座側流路における前記開口の周長を全体として長くすることができる。
【0020】
本発明の圧電式バルブは、前記排出路が、前記複数の環状凸部内にそれぞれ開口する複数の弁座側流路と、前記各弁座側流路が交差して連通し前記弁座プレートの表面に開口する1つの主流路とを有し、前記主流路の内面が、前記各弁座側流路が交差する連通部において前記弁座面側に凸状をなす形状とするものであれば、前記各弁座側流路の長さが短くなり、開弁時に前記排出路に圧縮気体を取り込む際の前記弁座側流路内における抵抗を小さくすることができる。
また、本発明の圧電式バルブは、前記主流路の内面が、前記各連通部間において前記弁座面側から凹状をなす形状とするものであれば、前記各環状凸部間の溝の深さを深くして大きな空気溜まりを形成できるので、開弁時に前記弁座側流路に取り込む圧縮気体の容量を確保することができる。
したがって、本発明の圧電式バルブによれば、弁体が弁座に対して円弧運動により接離する場合であって、前記弁体と前記弁座の長さを短くした場合でも、開弁時に必要な圧縮気体の排出量を確保することが可能となる。
【0021】
本発明の圧電式バルブは、前記弁座が、環状凸部内に前記排出路の一端が開口する弁座面を有し、前記環状凸部は、錐台の頂面に前記排出路の一端が開口するので、前記弁座面は、前記環状凸部の周囲が傾斜面となり、開弁時に前記環状凸部の周囲から前記排出路の前記開口に圧縮気体を取り込む際の抵抗を小さくすることができる。
したがって、本発明の圧電式バルブによれば、弁体が弁座に対して円弧運動により接離する場合であって、前記弁体と前記弁座の長さを短くした場合でも、開弁時に必要な圧縮気体の排出量を確保することが可能となる。
【0022】
本発明の圧電式バルブは、前記アクチュエータの前記支持部が、前記第2長手方向に延びる中間部分にくびれ部を有するものであれば、前記作用部の変位を拡大することができる。
また、本発明の圧電式バルブは、前記アクチュエータの前記支持部が、前記第2長手方向に延びる中間部分にくびれ部を有するものであれば、前記アクチュエータに設けられる弁体が前記弁座プレートに設けられる弁座に対し前記くびれ部を支点として円弧運動するため、前記弁体の軌道が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】圧電式バルブの斜視図である。
図2図1の圧電式バルブの正面図である。
図3】アクチュエータの斜視図である。
図4図3のアクチュエータを側面側から見た説明図である。
図5】弁座プレートの斜視図である。
図6】アクチュエータを固定した状態の弁座プレートの斜視図である。
図7図6の弁座プレートの側面図である。
図8】弁座プレートの弁座部を正面側から見た説明図である。
図9図8の弁座部を側面側から見た説明図である。
図10図8のA-A断面図である。
図11図9のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は圧電式バルブの斜視図を示す。図2図1の圧電式バルブの正面図を示す。
本発明の実施の形態において、圧電式バルブ1は、バルブ本体2、後述するアクチュエータ3、及び前記アクチュエータ3が固定された状態で前記バルブ本体2の内部に配設される後述する弁座プレート4を備える。
【0025】
前記バルブ本体2は、後面(図1及び図2では下面)が開口するケースであって、内部には、外部の圧縮気体供給源(図示せず)から圧縮気体の供給を受ける気体圧力室を備える。
また、前記バルブ本体2の前面(図1及び図2では上面)には、圧縮気体源から圧縮気体が供給される空間を内部に有するマニホールド(図示せず)に装着するためのコネクタ部(図示せず)が設けられる。
【0026】
前記コネクタ部の前面には、前記バルブ本体2内に圧縮気体を吸入する気体吸入口及び前記圧縮気体を排出する複数の気体排出口が開口する。
また、前記バルブ本体2の前面には、前記コネクタ部の前記気体吸入口と連通する気体供給口21、及び前記コネクタ部の前記各気体排出口と連通する複数の気体排出口22が開口する。
図1及び図2に示すように、前記バルブ本体2の後面にはカバー体6が装着され、前記カバー体6の後面には後述する圧電素子32に給電するための配線コネクタが形成される。
【0027】
図3はアクチュエータの斜視図を示す。図4図3のアクチュエータを側面側からみた説明図を示す。
前記アクチュエータ3は、後述する弁座プレート4に固定される基部31と、前記基部31の取付け面に一端部が接続され、第1長手方向に延びる圧電素子32と、前記基部31に一体に設けられ、前記圧電素子32と並んで前記第1長手方向と交差する第2長手方向に延びる支持部33を備える。
【0028】
前記アクチュエータ3は、前記圧電素子32の他端部及び前記支持部33の先端部と接続され、前記圧電素子32の伸縮に伴って、前記第1長手方向及び前記第2長手方向それぞれと異なる方向に変位する作用部34、前記作用部34の先端側であって前記変位する方向の一側面に設けられ、前記作用部34の前記変位によって駆動される弁体35を備える。
【0029】
前記基部31は、少なくとも前記支持部33が一体に設けられる側の取付け穴381を利用して前記弁座プレート4にネジにより固定される。
【0030】
また、前記支持部33は、前記第2長手方向に延びる中間部分にくびれ部331を有し、前記くびれ部331よりも前記基部31の側に設けられる取付け穴382を利用して前記弁座プレート4にネジにより固定される。
【0031】
前記アクチュエータ3は、前記圧電素子33の変位を拡大して前記弁体35に作用させる変位拡大機構として前記支持部33及び前記作用部34を含み、前記圧電素子32の伸縮に伴い、前記作用部34が前記第1長手方向及び前記第2長手方向を含む平面に略平行な面内で、前記第1長手方向及び前記第2長手方向それぞれと異なる変位方向(X方向)に変位する。
その際、前記支持部33の前記第2長手方向に延びる中間部分に前記くびれ部331を設けることで、前記圧電素子32の伸縮に伴う前記作用部34の変位を拡大することができる。
【0032】
また、前記アクチュエータ3は、前記作用部34の変位する方向の一側面に前記弁体35が設けられるので、前記弁体35が前記支持部33に設けられる前記くびれ部331を支点として前記作用部34とともに前記変位方向(X方向)に円弧運動する。前記弁体35は、後述する弁座に対し前記くびれ部331を支点として円弧運動するので軌道が安定する。
【0033】
なお、前記アクチュエータ3において、前記支持部33に設けられる前記くびれ部331は必須のものでなく、前記支持部33に前記くびれ部331が設けられていない場合でも、前記作用部34及び前記弁体35は前記変位方向(X方向)に変位することができる。
【0034】
ここで、前記基部31及び前記支持部33は、例えばインバー材を含むステンレス材等の金属材料を打ち抜いて一体成形することができる。
前記基部31及び前記支持部33を、金属材料を打ち抜いて一体成形すれば、部品点数が削減され、前記アクチュエータ3の組立てが容易となる。
【0035】
また、前記基部31と前記支持部33を別部材により形成し、前記基部31に別部材の前記支持部33を取り付けることで、前記支持部33を前記基部31に一体に設けることもできる。
【0036】
前記基部31の取付け面には、例えばアルミブロック等からなる連結部材(図示せず)を取付けることができる。
前記基部31の取付け面に、前記支持部33よりも線膨張係数の大きな材料からなる連結部材を取付け、前記圧電素子32を、前記連結部材を介して前記基部31に取付けることとすれば、温度変化による前記圧電素子32の熱膨張又は熱収縮の影響を軽減し、又は無くすことができる。
前記連結部材は、前記基部31の取付け面でなく、前記圧電素子32と前記作用部34の間に取り付けることもできる。
【0037】
前記作用部34は、例えばアルミニウム材等の軽量材料により形成することができる。前記作用部34をアルミニウム材等の軽量材料により形成することとすれば、前記作用部34を変位させるうえで好ましい。
また、前記弁体35は、ゴム製等であって、好ましくは滑性ゴムとすることができる。
【0038】
前記アクチュエータ3は、前記基部31と前記作用部34の間を圧縮部材36で連結することができる。
圧電素子は引張方向の荷重に対し損傷しやすいが、前記基部31と前記作用部34の間を前記圧縮部材36で連結することとすれば、前記圧電素子32を前記第1長手方向に圧縮することができるため、前記圧電素子32の損傷を防止できる。
【0039】
図5は弁座プレートの斜視図を示す。図6はアクチュエータを固定した状態の弁座プレートの斜視図を示す。図7図6の弁座プレートの側面図を示す。
図5に示す弁座プレート4は、4つのアクチュエータを取り付けることが可能な弁座プレートの一例である。前記弁座プレート4は中央部分に弁座部41を有し、前記弁座部41の正面側及び背面側の相対する両面にそれぞれ前記アクチュエータ3の前記弁体35が当接する弁座42が2つずつ設けられる。
【0040】
前記弁座プレート4の一側面には、前記弁座部41の両面に対向する位置にそれぞれ前記アクチュエータ3の取り付け部43,43が形成される。
また、前記弁座プレート4の他面側にも、前記弁座部41の両面に対向する位置にそれぞれ前記アクチュエータ3の取り付け部44が形成される。
【0041】
前記弁座部41には、前記各弁座42の弁座面に一端が開口する複数の排出路45が形成され、前記各排出路45の他端が前記弁座プレート4の前面(図5乃至図7では上面)に開口する。
また、前記弁座プレート4には、前記バルブ本体2の後面の開口を閉鎖する蓋材46が一体に設けられる。
【0042】
本発明の実施の形態では、前記弁座プレート4の前記各取り付け部43,44に対し、4つのアクチュエータ3の各弁体35が前記各弁座42に対峙するように配設され、前記各アクチュエータ3が前記弁座プレート4に対しネジにより固定される。
【0043】
前記弁座プレート4は、前記4つのアクチュエータ3が固定された状態で前記バルブ本体2の後面の開口から内部に配設され、前記バルブ本体2の前面側から前記弁座プレート4の前面がネジにより固定されることで、前記弁座プレート4の前面に開口する前記各排出路45が前記バルブ本体2の前面に開口する前記各気体排出口22と連通する。
前記弁座プレート4は、前記蓋材46が前記バルブ本体2に対し後方からネジにより固定され、前記バルブ本体2の前記後面の開口を閉鎖する。
【0044】
上記本発明の実施の形態における圧電式バルブ1は、閉弁状態において前記アクチュエータ3の前記圧電素子32に通電すると、前記圧電素子32が伸長し、前記作用部34が変位して、前記弁体35が前記弁座42から離間して開弁し、前記バルブ本体2に前記気体供給口から供給される圧縮気体を、前記弁座プレート4の前記弁座部41に形成される前記排出路45を介して前記バルブ本体2の前面に開口する前記気体排出口22から排出する。
他方、前記圧電式バルブ1は、前記アクチュエータ3の前記圧電素子32への通電が解除されると、前記圧電素子32が収縮し、前記作用部34が反対方向へ変位して、前記弁体35が前記弁座42に着座して閉弁する。
【0045】
図8は弁座プレートの弁座部を正面側から見た説明図を示す。図9図8の弁座部を側面側から見た説明図を示す。
本発明の実施の形態において、前記弁座プレート4の前記弁座部41に設けられる前記各弁座42は、それぞれ2つの環状凸部421を有し、前記各環状凸部421内にそれぞれ前記排出路45が開口する弁座面を有する。
【0046】
前記2つの環状凸部421は、それぞれ楕円錐台の頂面のそれぞれに前記排出路45が開口する。前記楕円錐台の傾斜角度は、例えば60度とすることができる。
また、前記2つの環状凸部421は、前記弁座42の幅方向に並設され、前記排出路45は、前記弁座42の幅方向に直交する長さ方向に沿って前記2つの環状凸部421内にそれぞれスリット状に開口する。
【0047】
本発明の実施の形態における圧電式バルブは、前記弁座42が、2つの環状凸部421内にそれぞれ前記排出路45が開口する弁座面を有するので、前記弁座42の長さを短くした場合でも、前記2つの環状凸部421によって前記排出路45における前記開口の周長を全体として長くすることができる。
【0048】
また、本発明の実施の形態における圧電式バルブは、前記2つの環状凸部421が、前記弁座42の幅方向に並設され、前記各排出路45が、前記弁座42の幅方向に直交する長さ方向に沿って前記2つの環状凸部421内にそれぞれスリット状に開口するので、前記弁座42の長さを短くした場合でも、前記2つの環状凸部421によって前記各排出路45における前記開口の周長を全体として長くすることができる。
【0049】
したがって、本発明の実施の形態における圧電式バルブによれば、アクチュエータ3に設けられる弁体35が弁座プレート4に設けられる弁座42に対して円弧運動により接離する場合であって、前記弁座42の長さを短くした場合でも、開弁時に必要な圧縮気体の排出量を確保することが可能となる。
【0050】
また、本発明の実施の形態における圧電式バルブは、前記弁座42が、2つの環状凸部421内にそれぞれ前記排出路45が開口する弁座面を有し、前記2つの環状凸部421は、それぞれ楕円錐台の頂面のそれぞれに前記排出路45が開口するので、前記弁座面は、前記2つの環状凸部421の周囲が傾斜面となり、開弁時に前記2つの環状凸部421の周囲から前記排出路45の前記開口に圧縮気体を取り込む際の抵抗を小さくすることができる。
【0051】
したがって、本発明の実施の形態における圧電式バルブによれば、アクチュエータ3に設けられる弁体35が弁座プレート4に設けられる弁座42に対して円弧運動により接離する場合であって、前記弁座42の長さを短くした場合でも、開弁時に必要な圧縮気体の排出量を確保することが可能となる。
【0052】
図10図8のA-A断面図を示す。図11図9のB-B断面図を示す。
前記排出路45は、前記2つの環状凸部421内にそれぞれスリット状に開口する弁座側流路451と、前記各弁座側流路451が直交状に交差して連通し前記弁座プレート4の前面に開口する1つの前面側流路452を有し、前記前面側流路452は前記各弁座側流路451の流路断面積(軸直断面積)の合計よりも大きなの流路断面積を有する。ここでは、前記各弁座側流路451と前記前面側流路452とが直交状に交差する場合を例としたが、両者が交差して連通するものであれば、必ずしも直交状に交差する必要はない。
【0053】
図11に示すように、前記前面側流路452の内面は、前記各弁座側流路451が交差する連通部46において前記弁座面側に凸状をなし、前記各連通部46間において凹状をなす形状とされる。
【0054】
本発明の実施の形態における圧電式バルブは、前記排出路45が、前記2つの環状凸部421内にそれぞれスリット状に開口する弁座側流路451と、前記各弁座側流路451が交差して連通し前記弁座プレート4の前面に開口する1つの前面側流路452を有し、前記前面側流路452の内面が、前記各弁座側流路451が交差する連通部46において前記弁座面側に凸状をなす形状とされるので、前記各弁座側流路451の長さL1が短くなり、開弁時に前記排出路45に圧縮気体を取り込む際の前記弁座側流路451内における抵抗を小さくすることができる。
【0055】
また、本発明の実施の形態における圧電式バルブは、前記前面側流路452の内面が、前記各連通部46間において前記弁座面側から凹状をなす形状とされるので、前記各環状凸部421間の溝47の深さL2を深くして大きな空気溜まりを形成できるので、開弁時に前記弁座側流路451に取り込む圧縮気体の容量を確保することができる。
【0056】
したがって、本発明の実施の形態における圧電式バルブによれば、アクチュエータ3に設けられる弁体35が弁座プレート4に設けられる弁座42に対して円弧運動により接離する場合であって、前記弁座42の長さを短くした場合でも、開弁時に必要な圧縮気体の排出量を確保することが可能となる。
【0057】
上記本発明の実施の形態において、2つの環状凸部421は、それぞれ楕円錐台の頂面のそれぞれに前記弁座側流路451(排出路45)が開口するものであったが、これに限定されるものでなく、例えば角錐台など、他の形状の錐台の頂面に前記弁座側流路451(排出路45)が開口するものとすることができる。
【0058】
上記本発明の実施の形態において、前記弁座42には、2つの環状凸部421が設けられるものであったが、3つ以上の環状凸部を設けることもできる。
【0059】
本発明の実施の形態において、前記弁座42には、1つの環状凸部421を設けるものとすることもできる。
前記弁座42に1つの環状凸部421を設ける場合でも、開弁時に前記環状凸部421の周囲から前記排出路45における前記開口に圧縮気体を取り込む際の抵抗を小さくすることができるので、アクチュエータ3に設けられる弁体35が弁座プレート4に設けられる弁座42に対して円弧運動により接離する場合であって、前記弁体と前記弁座の長さを短くした場合でも、開弁時に必要な圧縮気体の排出量を確保することが可能となる。
【0060】
上記本発明の実施の形態において、前記圧電式バルブ1は、前記圧電素子32に電圧が印加されていない状態で、弁体35が弁座42に着座することとしたが、駆動部から供給される電圧等の極性を変更することで、前記圧電素子32に電圧が印加されていない状態で、弁体35が弁座42から離間した状態とすることもできる。
【0061】
上記本発明の実施の形態において、前記圧電式バルブ1は、バルブ本体2の内部に4つのアクチュエータ3を固定した弁座プレート4を配設し、前記バルブ本体2の前面に4つの気体排出口22が開口することとしたが、これに限定されるものでなく、バルブ本体2に1つ以上のアクチュエータを固定した弁座プレートを配設することができる。
【0062】
上記本発明の実施の形態では、4つのアクチュエータ3を取り付けることが可能な弁座プレート4を例として説明したが、これに限定されるものでなく、例えば、一面側にのみ2つのアクチュエータ3を取り付けることが可能な弁座プレートや、一面側にのみ1つのアクチュエータ3を取り付けることが可能な弁座プレートを用いることもできる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものでなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいてその構成を適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の圧電式バルブは、アクチュエータに設けられる弁体が弁座プレートに設けられる弁座に対して円弧運動により接離する場合であって、前記弁体と前記弁座の長さを短くした場合でも、開弁時に必要な圧縮気体の排出量を確保することが可能なものであり、極めて有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 圧電式バルブ
2 バルブ本体(本体ケース)
21 気体供給口
22 気体排出口
3 アクチュエータ
31 基部
32 圧電素子
33 支持部
331 くびれ部
34 作用部
35 弁体
36 圧縮部材
381 取付け穴
382 取付け穴
4 弁座プレート
41 弁座部
42 弁座
421 環状凸部
43 取り付け部
44 取り付け部
45 排出路
451 弁座側流路
452 前面側流路(主流路)
46 連通部
47 溝
6 カバー体
L1 弁座側流路の長さ
L2 溝の深さ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11