(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026960
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】作業車の安全装置
(51)【国際特許分類】
B66C 23/88 20060101AFI20230221BHJP
E21B 7/00 20060101ALI20230221BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
B66C23/88 Z
B66C23/88 Q
E21B7/00 B
H02G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132434
(22)【出願日】2021-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】久保 淳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 伊織
(72)【発明者】
【氏名】仙石 卓也
【テーマコード(参考)】
2D129
3F205
5G352
【Fターム(参考)】
2D129AB17
2D129BA13
2D129DC37
2D129EB38
2D129EC12
3F205AA06
3F205BA10
5G352AJ05
(57)【要約】
【課題】垂下式作業装置の影響により吊上げ作業装置が破損することを回避することが可能な作業車の安全装置を提供する。
【解決手段】コントローラ70は、ウィンチ操作検出器73dからの検出信号によりウィンチ操作レバー32eが操作されたことを検知したときに、オーガ格納検出器73eからの検出信号によりアースオーガ装置15が格納位置に格納されていないことを検知した場合には、インターロックバルブ88を作動させ、油圧ポンプ83からウィンチモータ63eへのウィンチ制御バルブ61eを介しての作動油の供給を遮断するウィンチインターロック制御を行う。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車体と、前記車体に少なくとも起伏動可能に設けられたブームと、第1油圧アクチュエータにより作動される垂下式作業装置と、第2油圧アクチュエータにより作動される吊上げ作業装置と、前記垂下式作業装置及び前記吊上げ作業装置の作動を制御する作動制御装置と、を備えた作業車の安全装置であって、
前記垂下式作業装置は、基端部が前記ブームの先端部に枢結され、前記ブームの先端部から垂下された状態となる作業位置と、前記ブームに沿って格納支持された状態となる格納位置との間を揺動可能に構成され、
前記吊上げ作業装置は、巻上機と、前記巻上機に巻回されたウィンチワイヤと、前記ウィンチワイヤを介して前記ブームの先端部から吊り下げられ前記巻上機により上下方向に移動される吊り器具とを有して構成され、
前記作業制御装置は、作業者により操作される操作装置と、前記操作装置の操作を検出する操作検出器と、前記操作装置の操作を受けて油圧供給源から前記第1及び前記第2油圧アクチュエータへの作動油供給制御を行う油圧制御バルブと、前記吊り器具が前記ブームの先端部から下方の所定範囲内に位置しているか否かを検出する吊り器具位置検出器と、前記油圧供給源から前記油圧制御バルブを介した前記第1及び前記第2油圧アクチュエータへの作動油供給を遮断可能な作動油供給遮断バルブとを備え、
前記操作検出器により前記操作装置の前記垂下式作業装置に対する操作が検出されたときに、前記吊り器具位置検出器により前記吊り器具が前記所定離範囲内に位置していないことが検出された場合には、前記作動油供給遮断バルブにより前記油圧供給源から前記第1油圧アクチュエータへの作動油供給を遮断することを特徴とする作業車の安全装置。
【請求項2】
走行可能な車体と、前記車体に少なくとも起伏動可能に設けられたブームと、第1油圧アクチュエータにより作動される垂下式作業装置と、第2油圧アクチュエータにより作動される吊上げ作業装置と、前記垂下式作業装置及び前記吊上げ作業装置の作動を制御する作動制御装置と、を備えた作業車の安全装置であって、
前記垂下式作業装置は、基端部が前記ブームの先端部に枢結され、前記ブームの先端部から垂下された状態となる作業位置と、前記ブームに沿って格納支持された状態となる格納位置との間を揺動可能に構成され、
前記吊上げ作業装置は、巻上機と、前記巻上機に巻回されたウィンチワイヤと、前記ウィンチワイヤを介して前記ブームの先端部から吊り下げられ前記巻上機により上下方向に移動される吊り器具とを有して構成され、
前記作業制御装置は、作業者により操作される操作装置と、前記操作装置の操作を検出する操作検出器と、前記操作装置の操作を受けて油圧供給源から前記第1及び前記第2油圧アクチュエータへの作動油供給制御を行う油圧制御バルブと、前記垂下式作業装置が前記格納位置に格納されているか否かを検出する作業装置格納検出器と、前記油圧供給源から前記油圧制御バルブを介した前記第1及び前記第2油圧アクチュエータへの作動油供給を遮断可能な作動油供給遮断バルブとを備え、
前記操作検出器により前記操作装置の前記吊上げ作業装置に対する操作が検出されたときに、前記作業装置格納検出器により前記垂下式作業装置が前記格納位置に格納されていないことが検出された場合には、前記作動油供給遮断バルブにより前記油圧供給源から前記第2油圧アクチュエータへの作動油供給を遮断することを特徴とする作業車の安全装置。
【請求項3】
前記作業制御装置は、前記吊り器具が前記ブームの先端部から下方の所定範囲内に位置しているか否かを検出する吊り器具位置検出器を有し、
前記操作検出器により前記操作装置の前記垂下式作業装置に対する操作が検出されたときに、前記吊り器具位置検出器により前記吊り器具が前記所定離範囲内に位置していないことが検出された場合には、前記作動油供給遮断バルブにより前記油圧供給源から前記第
1油圧アクチュエータへの作動油供給を遮断することを特徴とする請求項2に記載の作業車の安全装置。
【請求項4】
前記作動油供給遮断バルブにより前記油圧供給源から前記第1及び/又は前記第2油圧アクチュエータへの作動油供給が遮断された際に作業者に警告を行う警告装置を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の作業車の安全装置。
【請求項5】
作動油供給遮断状態解除スイッチを有し、前記作動油供給遮断状態解除スイッチが操作された場合に、前記作動油供給遮断バルブによる前記第1及び/又は前記第2油圧アクチュエータへの作動油供給遮断状態を解除可能に構成されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の作業車の安全装置。
【請求項6】
前記垂下式作業装置は、前記ブームの先端部に枢結されて垂下支持される回転駆動機と、前記回転駆動機の出力軸に連結され前記回転駆動機の作動により前記作業位置において上下軸まわりに回転駆動される掘削作業具と、前記ブームと前記掘削作業具との間に架設可能な格納用ロープとを有し、
前記格納用ロープを前記ブームと前記掘削作業具との間に架設した状態で前記掘削作業具を回転駆動させて前記格納用ロープを巻き取らせることにより、前記回転駆動機を前記ブームに対し揺動させて前記掘削作業具を前記作業位置から前記格納位置に移動させることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の作業車の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧アクチュエータにより作動される複数の作業装置を備えた作業車の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の作業装置を備えた作業車として穴掘建柱車が知られている。穴掘建柱車は、例えば、車体上に水平旋回自在に設けられた旋回台に起伏及び伸縮自在にブームを取り付け、このブームに複数の作業装置を取り付けて構成される(例えば、特許文献1を参照)。穴掘建柱車における複数の作業装置は、それぞれ油圧アクチュエータ(例えば、油圧シリンダ、油圧モータ)等により作動されるように構成されており、これら油圧アクチュエータの作動制御を行う油圧制御バルブが設けられる。
【0003】
穴掘建柱車における作業装置として、掘削作業装置及び吊上げ作業装置が知られている。掘削作業装置(「アースオーガ装置」とも称する)は、基端部がブームの先端部に枢結され、ブームの先端部から垂下された状態となる作業位置と、ブームに沿って格納支持された状態となる格納位置との間を揺動可能に構成され、作業位置において所定の作業(例えば、穴掘り作業)を行う作業装置(このようなブーム先端部から垂下された状態で使用される作業装置のことを「垂下式作業装置」とも称する)である。吊上げ作業装置(「ウィンチ装置」とも称する)は、例えば、ブームに設置される巻上機と、巻上機に巻回されたウィンチワイヤを介してブームの先端部から吊り下げられた吊り器具とを備えて構成され、巻上機により吊り器具をブーム下において上下方向に移動させることにより吊上げ作業等を行う作業装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
穴掘建柱車等の作業車において、垂下式作業装置を作業位置において作動させて作業を行う場合、吊上げ作業装置の吊り器具の位置(ブーム下の上下方向の位置)によっては、吊り器具やウィンチワイヤが垂下式作業装置の作動に巻き込まれたり、吊り器具がブームと垂下式作業装置との間に挟まれたりして、吊上げ作業装置が破損する虞がある。そのため、垂下式作業装置を作業位置において作動させるときは、吊り器具を垂下式作業装置の作動の障害とならない位置(例えば、ブーム先端部から下方の所定範囲内の位置)に移動させておくことが求められる。また、垂下式作業装置が格納位置に格納されていない状態で吊上げ作業装置を作動させて吊り器具を上下動させると、吊り器具やウィンチワイヤが垂下式作業装置と接触して吊上げ作業装置が破損する虞がある。そのため、吊上げ作業装置を作動させるときは、垂下式作業装置を格納位置に移動させて格納しておくことが求められる。
【0006】
しかし、従来の穴掘建柱車等の作業車においては、吊り器具の位置によらず垂下式作業装置を作動させることが可能であり、垂下式作業装置が未格納状態でも吊上げ作業装置を作動させることが可能に構成されている。また、吊り器具の位置の確認や垂下式作業装置が格納されているかどうかの確認は、作業者の判断に任されているのが実情である。そのため、吊り器具が作業位置における垂下式作業装置の作動の障害とならない位置に移動していないにもかかわらず作業位置において垂下式作業装置が作動されたり、垂下式作業装
置が格納位置に格納されていないにもかかわらず吊上げ作業装置が作動されたりして、吊上げ作業装置が破損する事態が生じ得るという課題がある。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、垂下式作業装置の影響により吊上げ作業装置が破損することを回避することが可能な作業車の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的達成のため、本発明に係る第一態様の作業車の安全装置は、走行可能な車体と、前記車体に少なくとも起伏動可能に設けられたブームと、第1油圧アクチュエータ(例えば、実施形態におけるオーガモータ63d)により作動される垂下式作業装置(例えば、実施形態におけるアースオーガ装置15)と、第2油圧アクチュエータ(例えば、実施形態におけるウィンチモータ63e)により作動される吊上げ作業装置(例えば、実施形態におけるウィンチ装置17)と、前記垂下式作業装置及び前記吊上げ作業装置の作動を制御する作動制御装置(例えば、実施形態におけるコントローラ70)と、を備えた作業車の安全装置であって、前記垂下式作業装置は、基端部が前記ブームの先端部に枢結され、前記ブームの先端部から垂下された状態となる作業位置と、前記ブームに沿って格納支持された状態となる格納位置との間を揺動可能に構成され、前記吊上げ作業装置は、巻上機と、前記巻上機に巻回されたウィンチワイヤと、前記ウィンチワイヤを介して前記ブームの先端部から吊り下げられ前記巻上機により上下方向に移動される吊り器具とを有して構成され、前記作業制御装置は、作業者により操作される操作装置と、前記操作装置の操作を検出する操作検出器(例えば、実施形態におけるオーガ操作検出器73c及びウィンチ操作検出器73d)と、前記操作装置の操作を受けて油圧供給源から前記第1及び前記第2油圧アクチュエータへの作動油供給制御を行う油圧制御バルブ(例えば、実施形態における作動制御バルブ60)と、前記吊り器具が前記ブームの先端部から下方の所定範囲内に位置しているか否かを検出する吊り器具位置検出器(例えば、実施形態における吊り器具退避検出器73a及び吊り荷重検出器73b)と、前記油圧供給源から前記油圧制御バルブを介した前記第1及び前記第2油圧アクチュエータへの作動油供給を遮断可能な作動油供給遮断バルブ(例えば、実施形態におけるインターロックバルブ88)とを備え、前記操作検出器により前記操作装置の前記垂下式作業装置に対する操作が検出されたときに、前記吊り器具位置検出器により前記吊り器具が前記所定離範囲内に位置していないことが検出された場合には、前記作動油供給遮断バルブにより前記油圧供給源から前記第1油圧アクチュエータへの作動油供給を遮断する構成である。
【0009】
上記目的達成のため、本発明に係る第二態様の作業車の安全装置は、走行可能な車体と、前記車体に少なくとも起伏動可能に設けられたブームと、第1油圧アクチュエータにより作動される垂下式作業装置と、第2油圧アクチュエータにより作動される吊上げ作業装置と、前記垂下式作業装置及び前記吊上げ作業装置の作動を制御する作動制御装置と、を備えた作業車の安全装置であって、前記垂下式作業装置は、基端部が前記ブームの先端部に枢結され、前記ブームの先端部から垂下された状態となる作業位置と、前記ブームに沿って格納支持された状態となる格納位置との間を揺動可能に構成され、前記吊上げ作業装置は、巻上機と、前記巻上機に巻回されたウィンチワイヤと、前記ウィンチワイヤを介して前記ブームの先端部から吊り下げられ前記巻上機により上下方向に移動される吊り器具とを有して構成され、前記作業制御装置は、作業者により操作される操作装置と、前記操作装置の操作を検出する操作検出器と、前記操作装置の操作を受けて油圧供給源から前記第1及び前記第2油圧アクチュエータへの作動油供給制御を行う油圧制御バルブと、前記垂下式作業装置が前記格納位置に格納されているか否かを検出する作業装置格納検出器(例えば、実施形態におけるオーガ格納検出器73e)と、前記油圧供給源から前記油圧制御バルブを介した前記第1及び前記第2油圧アクチュエータへの作動油供給を遮断可能な作動油供給遮断バルブとを備え、前記操作検出器により前記操作装置の前記吊上げ作業装
置に対する操作が検出されたときに、前記作業装置格納検出器により前記垂下式作業装置が前記格納位置に格納されていないことが検出された場合には、前記作動油供給遮断バルブにより前記油圧供給源から前記第2油圧アクチュエータへの作動油供給を遮断する構成である。
【0010】
上記第二態様の作業車の安全装置において、前記作業制御装置は、前記吊り器具が前記ブームの先端部から下方の所定範囲内に位置しているか否かを検出する吊り器具位置検出器を有し、前記操作検出器により前記操作装置の前記垂下式作業装置に対する操作が検出されたときに、前記吊り器具位置検出器により前記吊り器具が前記所定離範囲内に位置していないことが検出された場合には、前記作動油供給遮断バルブにより前記油圧供給源から前記第1油圧アクチュエータへの作動油供給を遮断する構成とすることが好ましい。
【0011】
上記第一又は第二態様の作業車の安全装置において、前記作動油供給遮断バルブにより前記油圧供給源から前記第1及び/又は前記第2油圧アクチュエータへの作動油供給が遮断された際に作業者に警告を行う警告装置(例えば、実施形態における警報装置75)を備えることが好ましい。
【0012】
また、上記第一又は第二態様の作業車の安全装置において、作動油供給遮断状態解除スイッチ(例えば、実施形態におけるオーガ・ウィンチインターロック解除スイッチ71b)を有し、前記作動油供給遮断状態解除スイッチが操作された場合に、前記作動油供給遮断バルブによる前記第1及び/又は前記第2油圧アクチュエータへの作動油供給遮断状態を解除可能に構成されることが好ましい。
【0013】
また、上記第一又は第二態様の作業車の安全装置において、前記垂下式作業装置は、前記ブームの先端部に枢結されて垂下支持される回転駆動機(例えば、実施形態におけるオーガ駆動装置15b)と、前記回転駆動機の出力軸に連結され前記回転駆動機の作動により前記作業位置において上下軸まわりに回転駆動される掘削作業具(例えば、実施形態におけるオーガスクリュー15c)と、前記ブームと前記掘削作業具との間に架設可能な格納用ロープとを有し、前記格納用ロープを前記ブームと前記掘削作業具との間に架設した状態で前記掘削作業具を回転駆動させて前記格納用ロープを巻き取らせることにより、前記回転駆動機を前記ブームに対し揺動させて前記掘削作業具を前記作業位置から前記格納位置に移動させる構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
第一態様の本発明によれば、操作検出器により操作装置の垂下式作業装置に対する操作が検出されたときに、吊り器具位置検出器により吊り器具がブームの先端部から下方の所定離範囲内に位置していないことが検出された場合には、作動油供給遮断バルブにより油圧供給源から第1油圧アクチュエータへの作動油供給を遮断するようになっているので、吊り器具が作業位置における垂下式作業装置の作動の障害とならない位置(上記所定範囲内の位置)に移動していない場合には、垂下式作業装置の作動を規制することが可能となる。そのため、吊り器具が垂下式作業装置の作動の障害とならない位置に移動していないにもかかわらず作業位置において垂下式作業装置が作動され、吊り器具やウィンチワイヤが垂下式作業装置の作動に巻き込まれたり、吊り器具がブームと垂下式作業装置との間に挟まれたりして、吊上げ作業装置が破損してしまうことを防止することができる。
【0015】
第二態様の本発明によれば、操作検出器により操作装置の吊上げ作業装置に対する操作が検出されたときに、作業装置格納検出器より垂下式作業装置が格納位置に格納されていないことが検出された場合には、作動油供給遮断バルブにより油圧供給源から第2油圧アクチュエータへの作動油供給を遮断するようになっているので、垂下式作業装置が格納位置に格納されていない場合には、吊上げ作業装置の作動を規制することが可能となる。そ
のため、垂下式作業装置が格納位置に格納されていないにもかかわらず吊上げ作業装置が作動されて吊り器具が上下動され、吊り器具やウィンチワイヤが垂下式作業装置と接触して吊上げ作業装置が破損してしまうことを防止することができる。また、垂下式作業装置が未格納の状態では車両の安定度が低下する場合があり、その状態で吊上げ作業装置による吊上げ作業が行われると、車両が傾いたり転倒したりする虞もあるが、第二態様の本発明によれば、吊上げ作業装置の作動を規制することによって、そのような事態が生じることを回避することができる。
【0016】
また、本発明によれば、作動油供給遮断バルブにより油圧供給源から第1又は第2油圧アクチュエータへの作動油供給が遮断された際に作業者に警告を行う警告装置を備えることにより、垂下式作業装置又は吊上げ作業装置の作動が規制されていることを作業者に伝えて注意を喚起することができる。
【0017】
また、本発明によれば、作動油供給遮断状態解除スイッチを有し、作動油供給遮断状態解除スイッチが操作された場合に、作動油供給遮断バルブによる第1及び/又は第2油圧アクチュエータへの作動油供給遮断状態を解除可能に構成することにより、作動油供給遮断状態解除スイッチを操作して垂下式作業装置及び/又は吊上げ作業装置の作動が規制された状態を解除し、未格納状態の垂下式作業装置を格納位置に移動させたり、吊り器具を作業位置における垂下式作業装置の作動の障害とならない位置に移動させたりすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明を適用した穴掘建柱車を電柱吊り作業状態で示す側面図である。
【
図2】上記穴掘建柱車を穴掘り作業状態で示す側面図である。
【
図3】上記穴掘建柱車のアースオーガ装置を格納する際の準備状態を示す図である。
【
図4】上記穴掘建柱車の作動制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】上記作動制御装置のオーガ・ウィンチインターロック制御を行う部分の構成を示すブロック図である。
【
図6】上記穴掘建柱車における吊り器具退避範囲についての概要説明図である。
【
図7】上記穴掘建柱車における吊り器具退避検出器の作用についての概要説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、上記図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1及び
図2に、本発明を適用した作業車の一例として穴掘建柱車1を示しており、
図3に、穴掘建柱車1のアースオーガ装置15を格納する際の準備状態を示している。また、
図4に、穴掘建柱車1の作動制御安全装置構成を示している。まず、これら
図1~
図4を参照して、穴掘建柱車1の全体構成について概要説明する。なお、以下では、主に
図1を参照しながら説明を行い、他の図を参照する場合はその旨記載する。
【0020】
この穴掘建柱車1は、車体11の前後左右に前後輪を有して走行可能であり、車体11の前部に運転キャブ11aを有したトラック車両をベースに構成される。車体11の前部には、旋回台12が油圧モータである旋回モータ63a(
図4を参照)により旋回動自在となって取り付けられている。さらに、旋回台12の上部にはブーム13が起伏シリンダ63b(
図4を参照)により起伏動自在に取り付けられている。このブーム13は、基端ブーム13a、中間ブーム13b、先端ブーム13cからなる入れ子式の3段のブームであり、内蔵の伸縮シリンダ63c(
図4を参照)により伸縮動自在である。車体11の架装領域には、全縮状態で倒伏したブーム13を格納保持するブームレスト16が設けられている。
【0021】
先端ブーム13c先端には、ブームヘッド20が固着されており、このブームヘッド20の内部には回転自在に取り付けられたシーブ(図示略)が設けられている。ブーム13には、吊上げ、吊下げ作業を行うウィンチ装置17が設けられている。このウィンチ装置17は、基端ブーム13cの基端部上面に設けられた巻上機17aと、この巻上機17aのウィンチドラム(図示略)に巻回されてブーム13に沿って繰り出され、ブームヘッド20のシーブに掛け回されて先端ブーム13cの下方に垂れ下がるウィンチワイヤ17b(一部図示省略)と、ウィンチワイヤ17bの先端部に取り付けられた吊り器具17cとを有している。このウィンチ装置17は、油圧モータであるウィンチモータ63e(
図4を参照)により巻上機17aが駆動されてウィンチワイヤ17bの巻き取り・繰り出しを行うことによって、先端ブーム13c先端下方において吊り器具17cの上下動(引き上げ・引き下げ)ができるようになっている。なお、吊り器具17cは、ウィンチワイヤ17bが掛け回されるシーブ(図示略)を内蔵したフックブロック17cAと、フックブロック17cAに取り付けられたフック金具17cBとから構成される。
【0022】
ブーム13には、ブーム13の長手方向にスライド移動自在にオーガブラケット14が取り付けられており、このオーガブラケット14には建柱穴を掘削するアースオーガ装置15が取り付けられている。アースオーガ装置15は、オーガブラケット14に枢結された連結ロッド部材15aと、連結ロッド部材15aの先端に枢結されたオーガ駆動装置15bと、オーガ駆動装置15bの出力軸(図示略)に連結されオーガ駆動装置15bの作動により回転駆動されるオーガスクリュー15cとから構成される。なお、オーガ駆動装置15bは油圧モータであるオーガモータ63d(
図4を参照)を有し、車体側から供給される油圧力を受けてオーガスクリュー15cを回転駆動する。
【0023】
アースオーガ装置15を使用するときには、オーガブラケット14を先端ブーム13cに結合して先端ブーム13cの伸縮に応じてアースオーガ装置15全体を所望の位置まで移動させる。そして、
図2に示すように、アースオーガ装置15を先端ブーム13cの先端部から垂下された状態となる作業位置にセットし、オーガスクリュー15cを回転駆動して建柱用の穴Hを掘る。一方、アースオーガ装置15を使用しないときには、オーガブラケット14を基端ブーム13aに結合させるとともにアースオーガ装置15を基端ブーム13aの左側方に沿った格納位置(
図1に示す位置)に格納保持する。なお、この状態において、
図1に示すように、吊り器具17cによる電柱Dの吊り下げ作業等が可能である。以下、旋回台12、ブーム13、アースオーガ装置15及びウィンチ装置17を総称して「作業装置」ともいう。
【0024】
なお、
図3に示すように、基端ブーム13aの左側面部には、格納位置においてアースオーガ装置15を格納保持する保持装置18が設けられている。アースオーガ装置15を格納位置に移動させる際には、
図3に示すように、ブーム13を縮小させ格納用ロープ19をアースオーガ装置15と保持装置18との間に架設する。格納用ロープ19の基端部は保持装置18に設けられたロープ係止部18aに対し係脱可能に構成されており、格納用ロープ19の先端部はアースオーガ装置15(オーガスクリュー15c)の軸部に設けられたロープ係止部15dに対し係脱可能に構成されている。格納用ロープ19をアースオーガ装置15と保持装置18との間に架設した状態で、オーガ駆動装置15bの作動によりオーガスクリュー15cを回転駆動する。このとき、アースオーガ装置15の軸部は格納用ロープ19を巻き取りながら回転し、これによりアースオーガ装置15が格納位置に移動し、保持装置18により格納保持することができる。
【0025】
車体11における運転キャブ11aの直後方で旋回台12の前には、作業操作台30が立設されている。この作業操作台30は、オペレータが座る椅子31と、その前に位置する操作装置35とからなり、椅子31に座ったオペレータが操作装置35の複数の操作レ
バー(総称して「作業操作レバー32」という)等を操作して作業装置に対する各種作動操作を行う。
【0026】
さらに、車体11の前後には、作業時において車体11を支持するアウトリガ装置40が設けられている。各アウトリガ装置40は、車幅方向に延びて車体に取り付けられたアウトリガ(図示略)と、アウトリガの先端に下方に延びて取り付けられたアウトリガジャッキ42とから構成される。アウトリガは車体11の車幅方向に延びて固設されたアウトリガボックス(図示略)とアウトリガボックス内に伸縮自在に配設された左右のアウトリガビーム(図示略)とから構成される。各アウトリガビームの先端にアウトリガジャッキ42が取り付けられており、内蔵の油圧シリンダであるビームシリンダ63f(
図4を参照)によりアウトリガビームをアウトリガボックスに対して伸縮させることにより、アウトリガジャッキ42を車体側方に格納した位置から車体外側(車幅方向)に張り出させたり、引き込んだりすることができる。
【0027】
アウトリガジャッキ42は、左右のビームロッドの先端に結合されたアウターポスト42aと、アウターポスト42a内に内蔵されて下方に伸縮可能なインナーポスト42bと、インナーポスト42bの下端に取り付けられた接地板42cとからなる。このため、内蔵の油圧シリンダであるジャッキシリンダ73b(
図4を参照)によりインナーポスト42bを下方に伸長させて接地板42cを接地させ、車体11を持ち上げ支持可能である。なお、アウトリガ装置40の作動操作は、操作装置35に設けられた複数の操作レバー(総称して「ジャッキ操作レバー33」(
図4を参照)という)の操作により行われる。
【0028】
以上の構成の穴掘建柱車1における作動制御を行う作動制御装置について、
図5を追加参照して説明する。なお、以下では、主に
図4及び
図5を参照しながら説明を行い、他の図を参照する場合はその旨記載する。
図4及び
図5において、実線は信号もしくは電力ラインを示し、破線は油圧ラインを示す。
【0029】
穴掘建柱車1においては、上述したように、旋回台12を水平旋回させる旋回モータ63aと、ブーム13を起伏作動させる起伏シリンダ63bと、ブーム13を伸縮動させる伸縮シリンダ63cと、アースオーガ装置15のオーガスクリュー15cを回転駆動するオーガモータ63dと、ウィンチ装置17を駆動するウィンチモータ63eと、アウトリガ装置40のビームロッドを伸縮させるビームシリンダ63fと、インナーポスト42bを上下移動させるジャッキシリンダ63gとを備える。
【0030】
また、穴掘建柱車1は、旋回モータ63a、起伏シリンダ63b、伸縮シリンダ63c、オーガモータ63d、ウィンチモータ63e、ビームシリンダ63f及びジャッキシリンダ63gへの作動油の供給、排出を制御する作動制御バルブ60を備える。この作動制御バルブ60は、各油圧アクチュエータに対応する複数の制御バルブ(
図5に示すオーガ制御バルブ61d及びウィンチ制御バルブ61eを含む)を有して構成され、操作装置35の作業操作レバー32又はジャッキ操作レバー33により直動制御されるように、連結リンク(図示略)等を介して各制御バルブが作業操作レバー32又はジャッキ操作レバー33に機械的に連結されている。
【0031】
作業操作台30の椅子31に座ったオペレータが作業操作レバー32(詳細には、作業操作レバー32を構成する各操作レバー)を操作すると、この操作が作動制御バルブ60に直接伝えられて作動制御バルブ60が切り換えられる。この結果、上部操作レバー32の操作に応じて、作動制御バルブ60が作動して旋回モータ63a、起伏シリンダ63bおよび伸縮シリンダ63cへの作動油の供給、排出が制御され、旋回台12の旋回作動制御、ブーム13の起伏作動および伸縮作動制御が行われる。同様に、ウィンチ装置17やアースオーガ装置15の作動についても、それぞれ対応する作業操作レバー32(
図5に
示すオーガ操作レバー32d、ウィンチ操作レバー32e)の操作に応じて、アースオーガ装置15におけるオーガモータ63dによるオーガスクリュー15cの回転駆動制御や、ウィンチ装置17におけるウィンチモータ63eによるウィンチワイヤ17bの巻き取り・繰り出し制御が行われる。
【0032】
また、操作装置35のジャッキ操作レバー33(詳細には、ジャッキ操作レバー33を構成する各操作レバー)を操作すると、この操作が作動制御バルブ60に直接伝えられて作動制御バルブ60が切り換えられる。この結果、ジャッキ操作レバー33の操作に応じて、作動制御バルブ60が作動してビームシリンダ63f及びジャッキシリンダ63gへの作動油の供給、排出が制御され、ビームロッドをビームボックスに対して伸縮させる作動制御と、インナーポスト42bをアウターポスト42aに対して上下に伸縮移動させる作動制御とが行われる。
【0033】
作動制御バルブ60には、油圧ポンプ83からの作動油が供給される。油圧ポンプ83は、車輪85を回転駆動するためのエンジン(ENG)81からパワーテイクオフ機構(PTO)82を介して駆動される。エンジン81により駆動された油圧ポンプ83は、タンク84内の作動油を作動制御バルブ60に供給する。ここで、油圧ポンプ83と作動制御バルブ60とを繋ぐ油路上には、インターロックバルブ88が設けられている。このインターロックバルブ88は、コントローラ70により作動制御されるようになっており、後述するオーガ・ウィンチインターロック制御を行う際に使用される(詳細後述)。
【0034】
コントローラ70には、各種操作スイッチ71からの操作信号が入力される。各種操作スイッチ71としては、
図5に示す巻過停止スイッチ71a及びオーガ・ウィンチインターロック解除スイッチ71bが含まれる。この巻過停止スイッチ71a及びオーガ・ウィンチインターロック解除スイッチ71bは、後述するオーガ・ウィンチインターロック制御に関連してオペレータにより操作される操作スイッチであり(詳細後述)、例えば操作装置35に設けられる。
【0035】
また、コントローラ70には、各種検出器73からの検出信号が入力される。各種検出器73としては、
図5に示す吊り器具退避検出器73a、吊り荷重検出器73b、オーガ操作検出器73c、ウィンチ操作検出器73d及びオーガ格納検出器73eが含まれる。これらの検出器73a~73eは、後述するオーガ・ウィンチインターロック制御を行う際に使用される(詳細後述)。さらに、各種検出器73としては、ブーム13(
図1を参照)の旋回角を検出するブーム旋回角検出器、ブーム13の起伏角を検出するブーム起伏角検出器、ブーム13の伸長量を検出するブーム長さ検出器、車体11の傾きを検出する車体傾斜角検出器、アウトリガ装置40(
図1を参照)におけるビームロッドの車体側方への張出量を検出するジャッキ張出量検出器が含まれる(いずれも図示略)。
【0036】
以上の構成を有する作動制御装置は、オーガ・ウィンチインターロック制御を行う安全装置としても機能する。以下、この安全装置としての構成及びオーガ・ウィンチインターロック制御について、
図6及び
図7を追加参照して説明する。この安全装置は、各種操作スイッチ71(
図4を参照)のうち、
図5に示す巻過停止スイッチ71a及びオーガ・ウィンチインターロック解除スイッチ71bを有しており、各種検出器73(
図4を参照)として、
図5に示す吊り器具退避検出器73a、吊り荷重検出器73b、オーガ操作検出器73c、ウィンチ操作検出器73d及びオーガ格納検出器73eを有している。また、安全装置は、オーガ・ウィンチインターロック制御が行われる際にそのことをオペレータに警告報知して注意を喚起する警報装置75を有している。
【0037】
オーガ・ウィンチインターロック制御は、ウィンチ装置17の吊り器具17c(
図1を参照)が吊り器具退避範囲(詳細後述)にない場合にアースオーガ装置15の作動を規制
するオーガインターロック制御と、アースオーガ装置15が格納位置に格納されていない場合にウィンチ装置17の作動を規制するウィンチインターロック制御とに分けられる。いずれのインターロック制御もコントローラ70により行われる。
【0038】
図5に示すオーガ操作レバー32dは、オーガモータ63dへの作動油の供給、排出を制御するオーガ制御バルブ61dを直動制御する操作レバーであり、ウィンチ操作レバー32eは、ウィンチモータ63eへの作動油の供給、排出を制御するウィンチ制御バルブ61eを直動制御する操作レバーである。また、
図5に示すオーガ操作検出器73cは、オーガ操作レバー32dに設けられ、オーガ操作レバー32dが操作されたか否かを示す検出信号を出力する検出器であり、ウィンチ操作検出器73dは、ウィンチ操作レバー32eに設けられ、ウィンチ操作レバー32eが操作されたか否かを示す検出信号を出力する検出器である。さらに、オーガ格納検出器73eは、アースオーガ装置15が格納位置に格納されたか否かを示す検出信号を出力するする検出器である。
【0039】
また、
図5に示す吊り器具退避検出器73aは、ウィンチ装置17の吊り器具17cが吊り器具退避範囲に入ったか否かを示す検出信号を出力する検出器であり、吊り荷重検出器73bは、吊り器具17cにより荷を吊り上げるときの吊り荷重を検出してその検出信号を出力する検出器である。本実施形態において吊り器具退避範囲は、
図6に示すように、ブームヘッド20の下方に位置する吊り器具17c(フックブロック17cA)の上端と、ブームヘッド20の下端との間の距離Dにより規定される。この距離Dが所定の数値範囲内にあるとき、例えば、0<D≦300(数値の単位は[mm])をDが満たすとき、吊り器具17cは吊り器具退避範囲内にあると判断される。この吊り器具退避範囲は、その範囲内に吊り器具17cが位置しているときは、作業位置においてアースオーガ装置15を作動させても、吊り器具17cやウィンチワイヤ17bが、アースオーガ装置15のオーガ駆動装置15b(
図1を参照)とブームヘッド20と間に挟まれたり、オーガスクリュー15cの回転に巻き込まれたりして破損する虞がない範囲として設定される。
【0040】
吊り器具退避検出器73aは、
図7(B),(C)に示すように、ブームヘッド20内に配置される接点部材73aAと共に電気回路を構成するスイッチアーム73aBと、スイッチアーム73aBの一端にワイヤロープ73aCを介して吊り下げられた重り73aDとを有している。重り73aDは、ウィンチワイヤ17bが巻き取られて上昇する吊り器具17cが、吊り器具退避範囲内に達していないときは吊り器具17cと接触せず、吊り器具退避範囲内に入ったときには吊り器具17cと接触して上方に持ち上げられる位置に吊り下げられている。スイッチアーム73aBは、重り73aDが吊り器具17cにより持ち上げられていないときは接点閉の状態をとり、重り73aDが吊り器具17cにより持ち上げられたときはワイヤロープ73aCが緩むことにより接点開の状態をとるように構成されている。吊り器具退避検出器73aは、スイッチアーム73aBが接点開の状態(吊り器具17cが吊り器具退避範囲内に達した状態)であるのか接点閉の状態(吊り器具17cが吊り器具退避範囲内に達していない状態)であるのかを示す検出信号を出力する。
【0041】
吊り器具17cが吊り器具退避範囲内に入っても、さらにウィンチワイヤ17bが巻き取られて吊り器具17cが上昇し続ける(オペレータがそのような操作を続ける)と吊り器具17cがブームヘッド20と当接してしまう虞がある。このようにウィンチワイヤ17bが巻過状態となると、ウィンチワイヤ17bに過大な荷重が作用して損傷する虞がある。そこで、本実施形態では、このような巻過状態を回避するために、スイッチアーム73aBが接点開の状態となった際に、ウィンチワイヤ17bの巻き取りを自動的に停止する巻過停止制御を実行できるように構成されている。なお、吊り荷重検出器73bは、巻過状態によってウィンチワイヤ17bに荷重が作用している場合にもそれを検出できるようになっている。すなわち、吊り荷重検出器73bは、巻過状態であるか否かを検出する
巻過検出器としても機能する。
【0042】
図5に示す巻過停止スイッチ71aは、上記巻過停止制御を実行させるためにオペレータによりオン・オフ操作される操作スイッチであり、オン状態であるかオフ状態であるかを示す操作信号を出力するようになっている。オーガ・ウィンチインターロック解除スイッチ71bは、後述するオーガインターロック状態及びウィンチインターロック状態を解除させるためにオペレータによりオン・オフ操作される操作スイッチであり、オン状態であるかオフ状態であるかを示す操作信号を出力するようになっている。巻過停止スイッチ71aがオン操作されると巻過停止制御が実行され、オーガ・ウィンチインターロック解除スイッチ71bがオン操作されると、オーガインターロック状態及びウィンチインターロック状態が解除される。
【0043】
コントローラ70は、インターロックバルブ88の作動を制御することによって、オーガ・ウィンチインターロック制御を行う。インターロックバルブ88は、油圧ポンプ83からオーガモータ63dへのオーガ制御バルブ61dを介しての作動油の供給を許容する状態と遮断する状態とを切換え可能に構成されている。また、インターロックバルブ88は、油圧ポンプ83からウィンチモータ63eへのウィンチ制御バルブ61eを介しての作動油の供給を許容する状態と遮断する状態とを切換え可能に構成されている。
【0044】
コントローラ70は、オーガインターロック制御を次のように行う。コントローラ70は、オーガ操作検出器73cからの検出信号によりオーガ操作レバー32dが操作されたことを検知すると、巻過停止スイッチ71aからの操作信号により巻過停止スイッチ71aがオン操作されているか否かを検知するとともに、吊り器具退避検出器73aからの検出信号によりスイッチアーム73aBが接点開の状態であるのか接点閉の状態であるのかを検知し、さらに、吊り荷重検出器73bからの検出信号によりウィンチワイヤ17bに荷重が作用しているのか否かを検知する。そして、コントローラ70は、巻過停止スイッチ71aがオン操作されていること、スイッチアーム73aBが接点開であること(吊り器具17cが吊り器具退避範囲内に達していること)、ウィンチワイヤ17bに荷重が作用していないこと(巻過状態でないこと)の3つの条件のうち、いずれか1つでも満たさないときには、吊り器具17cが吊り器具退避範囲内に位置していない虞があると判断し、オーガインターロック制御を行う。すなわち、インターロックバルブ88を作動させ、油圧ポンプ83からオーガモータ63dへのオーガ制御バルブ61dを介しての作動油の供給を遮断する状態に切り換える。そのため、オーガ操作レバー32dを操作してオーガ制御バルブ61dを作動させても、作動油が供給されていないため、アースオーガ装置15を作動させることができない。そのため、吊り器具退避範囲内に位置していない吊り器具17cやウィンチワイヤ17bがアースオーガ装置15の作動の影響を受けウィンチ装置17が破損することを回避することができる。
【0045】
コントローラ70は、オーガインターロック制御を行う際に、警報装置75により警報を発出させ、オペレータに警告する。そして、上記3つの条件を満たすようにするために必要な操作を行うことをオペレータに促す。また、コントローラ70は、オーガインターロック制御を実行した後、オーガ・ウィンチインターロック解除スイッチ71bが操作されたことを検知した場合には、オーガインターロック制御状態を解除する。すなわち、インターロックバルブ88を作動させ、油圧ポンプ83からオーガモータ63dへのオーガ制御バルブ61dを介しての作動油の供給を許容する状態に切り換える。これにより、オーガ操作レバー32dを操作してアースオーガ装置15を作動させることが可能となる。コントローラ70は、オーガ操作レバー32dが操作された際に、上記3つの条件を全て満たしていることを検知した場合には、吊り器具17cが吊り器具退避範囲内に位置していると判断しオーガインターロック制御を行わない。
【0046】
また、コントローラ70は、ウィンチインターロック制御を次のように行う。コントローラ70は、ウィンチ操作検出器73dからの検出信号によりウィンチ操作レバー32eが操作されたことを検知すると、オーガ格納検出器73eからの検出信号によりアースオーガ装置15が格納位置に格納されているか否かを検知する。そして、コントローラ70は、アースオーガ装置15が格納位置に格納されていないことを検知した場合には、アースオーガ装置15が作業位置に位置している虞があると判断してウィンチインターロック制御を行う。すなわち、インターロックバルブ88を作動させ、油圧ポンプ83からウィンチモータ63eへのウィンチ制御バルブ61eを介しての作動油の供給を遮断する状態に切り換える。そのため、ウィンチ操作レバー32eを操作してウィンチ制御バルブ61eを作動させても、作動油が供給されていないため、ウィンチ装置17を作動させることができない。そのため、ウィンチ装置17を作動させて吊り器具17cを上下動させたために、作業位置にあるアースオーガ装置15に吊り器具17cやウィンチワイヤ17bが接触しウィンチ装置17が破損してしまうことを回避することができる。
【0047】
コントローラ70は、ウィンチインターロック制御を行う際に、警報装置75により警報を発出させ、オペレータに警告する。そして、アースオーガ装置15を格納位置に格納する操作を行うことをオペレータに促す。また、コントローラ70は、ウィンチインターロック制御を実行した後、オーガ・ウィンチインターロック解除スイッチ71bが操作されたことを検知した場合には、ウィンチインターロック制御状態を解除する。すなわち、インターロックバルブ88を作動させ、油圧ポンプ83からウィンチモータ63eへのウィンチ制御バルブ61eを介しての作動油の供給を許容する状態に切り換える。これにより、ウィンチ操作レバー32eを操作してウィンチ装置17を作動させることが可能となる。コントローラ70は、ウィンチ操作レバー32dが操作された際に、アースオーガ装置15が格納位置に格納されていることを検知した場合には、ウィンチインターロック制御を行わない。
【0048】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。例えば、上記実施形態では、オーガ操作レバー32d及びウィンチ操作レバー32eの操作がオーガ制御バルブ61d及びウィンチ制御バルブ61eを直接動かす直動制御タイプの構成であるが、これに限られるものではない。すなわち、オーガ操作レバー32d及びウィンチ操作レバー32eの操作状態を示す操作信号(例えば、オーガ操作検出器73c及びウィンチ操作検出器73dの検出信号を操作信号とする)がコントローラ70に入力されるようにし、コントローラ70がその操作信号に基づきオーガ制御バルブ61d及びウィンチ制御バルブ61eを電気的に制御して作動させる操作信号制御タイプの構成としてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、インターロックバルブ88を1つの制御バルブにより構成されるかのように図示しているが、複数の制御バルブにより構成してもよい。例えば、オーガインターロック制御を行うためのインターロックバルブと、ウィンチインターロック制御を行うためのインターロックバルブとを分けて構成してもよい。また、垂下式作業装置はアースオーガ装置15に限定されるものではない。例えば、倒れた電柱や樹木を把持する構成の把持装置を垂下式作業装置として備えた構成としてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、本発明を適用する作業車として、エンジンの動力をPTO機構によって取り出して油圧ポンプを駆動するPTO駆動型の穴掘建柱車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、電気駆動型(バッテリ駆動型)の作業車や、動力源を選択的に切り替えるハイブリッド型の作業車であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 穴掘建柱車
11 車体
13 ブーム
15 アースオーガ装置
15b オーガ駆動装置
17 ウィンチ装置
17c 吊り器具
60 作動制御バルブ
61d オーガ制御バルブ
61e ウィンチ制御バルブ
88 インターロックバルブ