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特開2023-26973溶湯駆動装置、溶湯撹拌システム、溶湯搬送システム、連続鋳造システム、および溶湯駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023026973
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】溶湯駆動装置、溶湯撹拌システム、溶湯搬送システム、連続鋳造システム、および溶湯駆動方法
(51)【国際特許分類】
   F27D 27/00 20100101AFI20230221BHJP
   B22D 35/00 20060101ALI20230221BHJP
   B22D 37/00 20060101ALI20230221BHJP
   B22D 11/115 20060101ALI20230221BHJP
   B22D 1/00 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
F27D27/00
B22D35/00 C
B22D37/00 A
B22D35/00 D
B22D11/115 A
B22D1/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132454
(22)【出願日】2021-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】503332824
【氏名又は名称】株式会社ヂーマグ
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙三
【テーマコード(参考)】
4E004
4E014
4K056
【Fターム(参考)】
4E004AA02
4E004AA09
4E004MB12
4E014KA01
4K056AA06
4K056CA04
4K056EA13
4K056EA16
(57)【要約】
【課題】低消費電力でありながら、溶湯に対する大きな駆動力を得る。
【解決手段】溶湯駆動装置1の磁場装置2は、鉄心21~25と、鉄心21~25を連結するヨーク31,32,33と、鉄心に21~25にヨーク31を挟むように巻回されたコイル41a,41bと、鉄心21~25にヨーク32を挟むように巻回されたコイル42a,42bと、鉄心21~25にヨーク33を挟むように巻回されたコイル43a,43bと、を備え、コイル41aおよびコイル41bは第1相の電流が流れたときにヨーク31に向かう磁界H1を発生するように巻回されており、コイル42aおよびコイル42bは第2相の電流が流れたときにヨーク32に向かう磁界H2を発生するように巻回されており、コイル43aおよびコイル43bは第3相の電流が流れたときにヨーク33に向かう磁界H3を発生するように巻回されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶湯を駆動するための溶湯駆動装置であって、
複数の鉄心と、
前記複数の鉄心を連結する第1のヨークと、
前記第1のヨークに隣接し、前記複数の鉄心を連結する第2のヨークと、
前記第2のヨークに隣接し、前記複数の鉄心を連結する第3のヨークと、
前記複数の鉄心のうち少なくとも1つの鉄心に、前記第1のヨークを挟むように巻回された第1および第2のコイルと、
前記複数の鉄心のうち少なくとも1つの鉄心に、前記第2のヨークを挟むように巻回された第3および第4のコイルと、
前記複数の鉄心のうち少なくとも1つの鉄心に、前記第3のヨークを挟むように巻回された第5および第6のコイルと、を備え、
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルはいずれも、第1相の電流が流れたときに、前記第1のヨークに向かう磁界を発生するように巻回されており、前記第3のコイルおよび前記第4のコイルはいずれも、第2相の電流が流れたときに、前記第2のヨークに向かう磁界を発生するように巻回されており、前記第5のコイルおよび前記第6のコイルはいずれも、第3相の電流が流れたときに、前記第3のヨークに向かう磁界を発生するように巻回されている、
ことを特徴とする溶湯駆動装置。
【請求項2】
前記第1~第3のヨークのセットが前記複数の鉄心に複数セット設けられていることを特徴とする請求項1に記載の溶湯駆動装置。
【請求項3】
前記複数の鉄心は、前記第1~第3のヨークが延びる方向の厚みが、前記複数の鉄心間の間隔よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の溶湯駆動装置。
【請求項4】
前記複数の鉄心は、前記第1~第3のヨークが延びる方向の厚みが、前記方向に直交する方向の厚みよりも小さいことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の溶湯駆動装置。
【請求項5】
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルは直列接続されて第1の直列コイルを構成し、前記第3のコイルおよび前記第4のコイルは直列接続されて第2の直列コイルを構成し、前記第5のコイルおよび前記第6のコイルは直列接続されて第3の直列コイルを構成し、前記第1の直列コイル、前記第2の直列コイルおよび前記第3の直列コイルはスター結線されていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の溶湯駆動装置。
【請求項6】
前記第1の直列コイルにR相の電流を流し、前記第2の直列コイルにS相の電流を流し、前記第3の直列コイルにT相の電流を流す交流電源をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の溶湯駆動装置。
【請求項7】
前記複数の鉄心を収納するケースをさらに備え、
前記ケースには、前記ケースの内部に空気を取り入れるための空気取入口と、前記ケース内の空気を外部に排出するための空気排出口が設けられ、
前記空気取入口および前記空気排出口は、前記複数の鉄心を挟むように配設されていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の溶湯駆動装置。
【請求項8】
前記空気取入口にはブロワーが接続されていることを特徴とする請求項7に記載の溶湯駆動装置。
【請求項9】
前記複数の鉄心は、互いに平行に延在し、
前記第1~第3のヨークは、互いに平行に配置されていることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の溶湯駆動装置。
【請求項10】
前記複数の鉄心は、互いに平行に延在し、
前記第1~第3のヨークは、前記複数の鉄心の延在方向に沿って折り曲げられていることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の溶湯駆動装置。
【請求項11】
前記複数の鉄心は環状鉄心であり、各々の中心軸が同軸になるように互いに間隔をあけて配置され、前記第1~第3のヨークは前記環状鉄心の内側に配置されていることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の溶湯駆動装置。
【請求項12】
金属溶湯を貯留するための炉と、
前記炉の下方に配置された、請求項9に記載の溶湯駆動装置と、
を備えることを特徴とする溶湯撹拌システム。
【請求項13】
金属溶湯を搬送するための樋と、
前記樋の少なくとも下方を囲うように配置された、請求項10に記載の溶湯駆動装置と、
を備えることを特徴とする溶湯搬送システム。
【請求項14】
筒状の鋳型と、
前記鋳型が前記環状鉄心の内側に配置された、請求項11に記載の溶湯駆動装置と、
を備えることを特徴とする連続鋳造システム。
【請求項15】
金属溶湯を駆動するための溶湯駆方法であって、
金属溶湯を貯留するための炉、金属溶湯を搬送するための樋、または鋳型に隣接するように、磁場装置を有する溶湯駆動装置を配置する工程であって、
前記磁場装置は、複数の鉄心と、前記複数の鉄心を連結する第1のヨークと、前記第1のヨークに隣接し、前記複数の鉄心を連結する第2のヨークと、前記第2のヨークに隣接し、前記複数の鉄心を連結する第3のヨークと、前記複数の鉄心のうち少なくとも1つの鉄心に、前記第1のヨークを挟むように巻回された第1および第2のコイルと、前記複数の鉄心のうち少なくとも1つの鉄心に、前記第2のヨークを挟むように巻回された第3および第4のコイルと、前記複数の鉄心のうち少なくとも1つの鉄心に、前記第3のヨークを挟むように巻回された第5および第6のコイルとを備える、工程と、
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルに第1相の電流を流して、前記第1のヨークに向かう磁界を発生させ、前記第3のコイルおよび前記第4のコイルに第2相の電流を流して、前記第2のヨークに向かう磁界を発生させ、前記第5のコイルおよび前記第6のコイルに第3相の電流を流して、前記第3のヨークに向かう磁界を発生させる工程と、
を備えることを特徴とする溶湯駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶湯駆動装置、溶湯撹拌システム、溶湯搬送システム、連続鋳造システム、および溶湯駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム、銅などの非鉄金属の溶湯(以下、単に「金属溶湯」または「溶湯」という。)を電磁力により駆動する溶湯駆動装置が知られている。この溶湯駆動装置は、移動磁界を発生する磁場装置を備えている。移動磁界が溶湯内を走ることで溶湯に渦電流が生じる。この渦電流によって溶湯に電磁力が作用し、溶湯が駆動される。
【0003】
電磁力を利用した溶湯駆動装置として、たとえば、特許文献1には、環状鉄心に巻回された複数のコイルに三相交流電流を流して移動磁界を発生させ、環状鉄心の内側に存在する溶湯を撹拌する溶湯撹拌装置が記載されている。
【0004】
その他、リニアモータ式の溶湯駆動装置も広く使われている。この方式では、一枚の板状の鉄心の上に複数本のヨーク(磁極)が互いに平行に設けられ、各ヨークの側面にコイルが巻回される。ヨークに巻回されたコイルに通電することで、ヨークから磁界が放射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-182358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、溶湯への十分な駆動力を確保するためには、駆動対象の溶湯の存在する空間に十分な強度の磁界を発生させることが求められる。
【0007】
強力な磁界を発生させる方法として、コイルに大きな電流を流すことが考えられる。しかしながら、コイルに流す電流を大きくするにつれて、消費電力が大きくなり、溶湯駆動装置のランニングコストが増加するという問題がある。また、溶湯駆動装置の発熱量が増加し、水冷式など強力な冷却設備が必要となるため、製造コストだけでなくメンテナンスコストも増加する。
【0008】
強力な磁界を発生させる他の方法として、コイルの巻数を増やすことが考えられる。しかしながら、コイルの巻数の二乗に比例してコイルのインダクタンスが増加する。このため、交流電流の流れが妨げられ、強い磁界が得られないという問題がある。また、駆動力は交流電流の周波数に比例することが知られているが、コイルの巻数を増やしてインダクタンスが増加すると、交流電流の周波数を上げることが困難となる。
【0009】
本発明は、上記の技術的認識に基づいてなされたものであり、低消費電力でありながら、大きな駆動力を得ることが可能な溶湯駆動装置、溶湯撹拌システム、溶湯搬送システム、連続鋳造システム、および溶湯駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に係る溶湯駆動装置は、
金属溶湯を駆動するための溶湯駆動装置であって、
複数の鉄心と、
前記複数の鉄心を連結する第1のヨークと、
前記第1のヨークに隣接し、前記複数の鉄心を連結する第2のヨークと、
前記第2のヨークに隣接し、前記複数の鉄心を連結する第3のヨークと、
前記複数の鉄心のうち少なくとも1つの鉄心に、前記第1のヨークを挟むように巻回された第1および第2のコイルと、
前記複数の鉄心のうち少なくとも1つの鉄心に、前記第2のヨークを挟むように巻回された第3および第4のコイルと、
前記複数の鉄心のうち少なくとも1つの鉄心に、前記第3のヨークを挟むように巻回された第5および第6のコイルと、を備え、
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルはいずれも、第1相の電流が流れたときに、前記第1のヨークに向かう磁界を発生するように巻回されており、前記第3のコイルおよび前記第4のコイルはいずれも、第2相の電流が流れたときに、前記第2のヨークに向かう磁界を発生するように巻回されており、前記第5のコイルおよび前記第6のコイルはいずれも、第3相の電流が流れたときに、前記第3のヨークに向かう磁界を発生するように巻回されていることを特徴とする。
【0011】
また、前記溶湯駆動装置において、
前記第1~第3のヨークのセットが前記複数の鉄心に複数セット設けられていてもよい。
【0012】
また、前記溶湯駆動装置において、
前記複数の鉄心は、前記第1~第3のヨークが延びる方向の厚みが、前記複数の鉄心間の間隔よりも小さくてもよい。
【0013】
また、前記溶湯駆動装置において、
前記複数の鉄心は、前記第1~第3のヨークが延びる方向の厚みが、前記方向に直交する方向の厚みよりも小さくてもよい。
【0014】
また、前記溶湯駆動装置において、
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルは直列接続されて第1の直列コイルを構成し、前記第3のコイルおよび前記第4のコイルは直列接続されて第2の直列コイルを構成し、前記第5のコイルおよび前記第6のコイルは直列接続されて第3の直列コイルを構成し、前記第1の直列コイル、前記第2の直列コイルおよび前記第3の直列コイルはスター結線されていてもよい
また、前記溶湯駆動装置において、
前記第1の直列コイルにR相の電流を流し、前記第2の直列コイルにS相の電流を流し、前記第3の直列コイルにT相の電流を流す交流電源をさらに備えてもよい。
【0015】
また、前記溶湯駆動装置において、
前記複数の鉄心を収納するケースをさらに備え、
前記ケースには、前記ケースの内部に空気を取り入れるための空気取入口と、前記ケース内の空気を外部に排出するための空気排出口が設けられ、
前記空気取入口および前記空気排出口は、前記複数の鉄心を挟むように配設されていてもよい。
【0016】
また、前記溶湯駆動装置において、
前記空気取入口にはブロワーが接続されていてもよい。
【0017】
また、前記溶湯駆動装置において、
前記複数の鉄心は、互いに平行に延在し、
前記第1~第3のヨークは、互いに平行に配置されていてもよい。
【0018】
また、前記溶湯駆動装置において、
前記複数の鉄心は、互いに平行に延在し、
前記第1~第3のヨークは、前記複数の鉄心の延在方向に沿って折り曲げられていてもよい。
【0019】
また、前記溶湯駆動装置において、
前記複数の鉄心は環状鉄心であり、各々の中心軸が同軸になるように互いに間隔をあけて配置され、前記第1~第3のヨークは前記環状鉄心の内側に配置されていてもよい。
【0020】
本発明の実施形態に係る溶湯撹拌システムは、
金属溶湯を貯留するための炉と、
前記炉の下方に配置された前記溶湯駆動装置と、
を備えることを特徴とする。
【0021】
本発明の実施形態に係る溶湯搬送システムは、
金属溶湯を搬送するための樋と、
前記樋の少なくとも下方を囲うように配置された前記溶湯駆動装置と、
を備えることを特徴とする。
【0022】
本発明の実施形態に係る連続鋳造システムは、
筒状の鋳型と、
前記鋳型が前記環状鉄心の内側に配置された前記溶湯駆動装置と、
を備えることを特徴とする。
【0023】
本発明の実施形態に係る溶湯駆動方法は、
金属溶湯を駆動するための溶湯駆方法であって、
金属溶湯を貯留するための炉、金属溶湯を搬送するための樋、または鋳型に隣接するように、磁場装置を有する溶湯駆動装置を配置する工程であって、
前記磁場装置は、複数の鉄心と、前記複数の鉄心を連結する第1のヨークと、前記第1のヨークに隣接し、前記複数の鉄心を連結する第2のヨークと、前記第2のヨークに隣接し、前記複数の鉄心を連結する第3のヨークと、前記複数の鉄心のうち少なくとも1つの鉄心に、前記第1のヨークを挟むように巻回された第1および第2のコイルと、前記複数の鉄心のうち少なくとも1つの鉄心に、前記第2のヨークを挟むように巻回された第3および第4のコイルと、前記複数の鉄心のうち少なくとも1つの鉄心に、前記第3のヨークを挟むように巻回された第5および第6のコイルとを備える、工程と、
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルに第1相の電流を流して、前記第1のヨークに向かう磁界を発生させ、前記第3のコイルおよび前記第4のコイルに第2相の電流を流して、前記第2のヨークに向かう磁界を発生させ、前記第5のコイルおよび前記第6のコイルに第3相の電流を流して、前記第3のヨークに向かう磁界を発生させる工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、低消費電力でありながら、大きな駆動力を得ることが可能な溶湯駆動装置、溶湯撹拌システム、溶湯搬送システム、連続鋳造システム、および溶湯駆動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1の実施形態に係る溶湯駆動装置の一部透視平面図である。
図2】(a)は第1の実施形態に係る溶湯駆動装置の磁場装置の平面図であり、(b)は当該磁場装置の側面図である。
図3】第1の実施形態に係る溶湯駆動装置の磁場装置が有する複数のコイルの結線図である。
図4】(a)は第1の実施形態に係る溶湯駆動装置の磁場装置による磁界の発生について説明するための平面図であり、(b)は当該磁場装置による磁界の発生について説明するための側面図である。
図5】第1の実施形態に係る溶湯駆動装置を備える溶湯撹拌システムの第1の例を示す図である。
図6】第1の実施形態に係る溶湯駆動装置を備える溶湯撹拌システムの第2の例を示す図である。
図7】第2の実施形態に係る溶湯駆動装置の一部透視側面図である。
図8】第2の実施形態に係る溶湯駆動装置を備える溶湯搬送システムの例を示す斜視図である。
図9】第2の実施形態に係る溶湯駆動装置の磁場装置による磁界の発生について説明するための側面図である。
図10】第2の実施形態に係る溶湯駆動装置を備える溶湯搬送システムの適用例を示す図である。
図11】第2の実施形態に係る溶湯駆動装置を備える溶湯搬送システムの別の適用例を示す図である。
図12】第3の実施形態に係る溶湯駆動装置の一部透視正面図である。
図13】第3の実施形態に係る溶湯駆動装置の側面の一部断面図である。
図14】第3の実施形態に係る溶湯駆動装置の磁場装置による磁界の発生について説明するための正面図である。
図15】第3の実施形態に係る溶湯駆動装置の磁場装置による磁界の発生について説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図においては、同等の機能を有する構成要素に同一の符号を付している。
【0027】
(第1の実施形態)
図1を参照して、第1の実施形態に係る溶湯駆動装置1の概略的な構成について説明する。なお、図1では、磁場装置2の鉄心21~25に巻回されたコイルは図示していない。
【0028】
図1に示すように、溶湯駆動装置1は、磁場装置2と、ケース5と、端子箱6と、交流電源7とを備えている。この溶湯駆動装置1は、交流電源7から三相交流を供給された磁場装置2により移動磁界を発生し、この移動磁界によって金属溶湯を電磁的に駆動するように構成されている。
【0029】
磁場装置2は、詳細は後述するが、溶湯を駆動するための移動磁界(後述の反発磁界H,H,H)を発生するように構成されている。磁場装置2は、ケース5内に収納されている。たとえば、磁場装置2は、設置治具ないし取付台(図示せず)により、ケース5内の所定の位置に配置される。溶湯駆動装置1の動作時において、磁場装置2は、空気取入口5aから取り入れられた冷却用空気によって冷却される。
【0030】
ケース5は、磁場装置2を収納するように構成されている。ケース5の材質は特に限定されないが、たとえば、耐火材、ステンレス等の金属からなる。
【0031】
ケース5は、空気取入口5aおよび空気排出口5bを有する。空気取入口5aは、磁場装置2を冷却するための空気をケース5の内部に取り入れるために設けられている。空気排出口5bは、ケース5内の空気を外部に排出するために設けられている。本実施形態では、空気取入口5aは、冷風供給用エアダクトの接続フランジとして構成されている。このため、ブロワー(図示せず)を空気取入口5aに接続し、磁場装置2を強制空冷することが可能である。
【0032】
図1に示すように、空気取入口5aおよび空気排出口5bは、鉄心21~25が延在する方向に沿って鉄心21~25を挟むように配設されている。本実施形態では、空気取入口5aおよび空気排出口5bは、ケース5の互いに対向する面(鉄心21~25の延在する方向と直交する面)にそれぞれ設けられている。これにより、空気取入口5aからケース5内に取り込まれた冷却用空気は、鉄心21~25に沿って、鉄心21~25間を通った後、空気排出口5bから排出される。このように冷却用空気は、鉄心21~25を効率的に冷却した後に空気排出口5bから排出されるため、磁場装置2の冷却効率を大幅に高めることができる。
【0033】
端子箱(ターミナルボックス)6は、図1に示すように、ケース5に設けられている。端子箱6には、ターミナルポスト(図示せず)が収納されている。ターミナルポストは、磁場装置2のコイルと電気的に接続されている。端子箱6は、ターミナルポストと交流電源7を接続する配線を導入するための配線導入口6aを有する。
【0034】
交流電源7は、三相の交流電源であり、三相(R相、S相、T相)の交流電流を出力する。交流電源7は、溶湯の駆動力を調整するために、出力電流および/または周波数を可変に構成されてもよい。
【0035】
<磁場装置2>
次に、図2図4を参照して、磁場装置2の構成および動作について詳しく説明する。
【0036】
磁場装置2は、図2に示すように、間隔をあけて配置された複数の鉄心21~25と、複数のヨーク31~36と、複数のコイル41a~46a,41b~46bとを有する。
【0037】
鉄心21~25は、強磁性体からなり、たとえば、珪素鋼板、炭素鋼板から構成される。鉄損を低減する観点からは珪素鋼板が有利である。ただし、後述のように、本実施形態によれば、動作時に鉄心21~25に発生する渦電流を従来よりも低減できるため、コスト的に有利な炭素鋼板を用いることが可能である。炭素鋼板を用いることで、磁場装置2の軽量化を図ることもできる。
【0038】
本実施形態では、鉄心21~25は、図2に示すように、細板状ないし角棒状である。なお、鉄心21~25の形状は細板状ないし角棒状に限定されず、たとえば丸棒状であってもよい。また、鉄心の本数は、5本に限定されず、任意の数であってよい。たとえば、駆動対象の溶湯が貯留された溶解炉の大きさに基づいて鉄心の本数が決定されてもよい。
【0039】
図2に示すように、本実施形態では、鉄心21~25は、互いに平行に延在している。これにより、空気取入口5aから取り入れられた冷却用空気は鉄心に沿って鉄心間を通って流れるため、従来のリニアモータ式の磁場装置(鉄心が一枚の板状)に比べて、極めて効率的に磁場装置を冷却することができる。
【0040】
なお、図2に示すように、鉄心21~25は、ヨーク31~36が延びる方向(図2の縦方向)の厚みWが鉄心間の間隔Dよりも小さくてもよい。これにより、空気取入口5aから取り入れられた空気による鉄心の冷却効率を高めることができる。
【0041】
また、図2に示すように、鉄心21~25は、ヨーク31~36が延びる方向の厚みWが、当該方向に直交する方向の厚みTよりも小さくてもよい。これにより、空気取入口5aから取り入れられた空気による鉄心の冷却効率を高めることができる。
【0042】
ヨーク31~36は、鉄心21~25に巻回された2つのコイルの間に設けられており、後述のようにコイル通電時に磁極として機能する。各ヨークは、たとえば、鉄、純鉄(SUY)、SS材、パーメンジュール等の合金からなる。
【0043】
ヨークは3本で1組である。すなわち、ヨーク31~33は第1のセットを構成し、ヨーク34~36は第2のセットを構成する。ヨーク31,34はR相に対応し、ヨーク32,35はS相に対応し、ヨーク33,36はT相に対応する。
【0044】
ヨーク31~36は、いずれも複数の鉄心21~25を連結する。本実施形態では、ヨーク31~36は複数の鉄心21~25に直交するように配置されている。これに限らず、複数本のヨークは、平行配置された複数の鉄心に斜交するように配置されてもよい。
【0045】
ヨーク31~36は、互いに平行に、ヨーク31,32,33,34,35,36の順で配置されている。ヨーク32はヨーク31に隣接し、ヨーク33はヨーク32に隣接し、ヨーク34はヨーク33に隣接し、ヨーク35はヨーク34に隣接し、ヨーク36はヨーク35に隣接している。
【0046】
なお、本実施形態では、ヨーク31~36は、鉄心21~25に直接接続しているが、これに限らず、接続部(図示せず)を介して鉄心21~25に接続してもよい。この接続体は、鉄心21~25に設けられた突起であってもよいし、鉄心やヨークとは別体の部材であってもよい。
【0047】
また、ヨークの本数は、6本に限定されない。たとえば、ヨークの本数は9本、12本など3の倍数であってもよい。ヨークの本数は、たとえば、駆動対象の溶湯が貯留された溶解炉の大きさに基づいてヨークの本数が決定されてもよい。
【0048】
また、図2において、ヨーク31~36は、鉄心21,25(平行配置された複数の鉄心のうち端に位置する鉄心)から平面視で突出しているが、これに限らず、突出しなくてもよい。
【0049】
次に、鉄心21~25に巻回されたコイルについて説明する。
【0050】
図2に示すように、各鉄心には、ヨークを挟むように一対のコイルが巻回されている。たとえば、鉄心21~25の各々には、ヨーク31を挟むように、コイル41a(第1のコイル)とコイル41b(第2のコイル)が巻回されている。同様に、ヨーク32を挟むように、コイル42a(第3のコイル)とコイル42b(第4のコイル)が巻回され、ヨーク33を挟むように、コイル43a(第5のコイル)とコイル43b(第6のコイル)が巻回されている。さらに、本実施形態では、ヨーク34を挟むように、コイル44a(第1のコイル)とコイル44b(第2のコイル)が巻回され、ヨーク35を挟むように、コイル45a(第3のコイル)とコイル45b(第4のコイル)が巻回され、コイル46a(第5のコイル)とコイル46b(第6のコイル)がヨーク36を挟むように巻回されている。
【0051】
本実施形態では、各コイルが発生する磁界の強さを略等しくするために、各コイルの巻数は同じである。なお、コイルと鉄心の間に絶縁用の絶縁紙が介装されてもよい。
【0052】
コイル41aおよびコイル41bは、互いに逆巻きに鉄心21に巻回されている。鉄心22~25についても同様に、コイル41aおよびコイル41bは互いに逆巻きに巻回されている。各鉄心のコイル41aとコイル41bは直列接続されている。したがって、通電時において、コイル41aとコイル41bには逆向きの電流Iが流れ、互いに逆向きの磁界が発生する(図4(a)参照)。
【0053】
なお、コイル41aとコイル41bが同じ方向に巻回されてもよい。この場合、コイル41aとコイル41bは、互いに逆向きの磁界が発生するように直列接続される。
【0054】
ヨーク32、ヨーク33、ヨーク34、ヨーク35およびヨーク36をそれぞれ挟むように巻回された、一対のコイル42a,42b、コイル43a,43b、コイル44a,44b、コイル45a,45bおよびコイル46a,46bについても、コイル41a,41bと同様に、互いに逆向きの磁界が発生するように巻回されている。
【0055】
コイル41aとコイル41bはいずれも、R相の電流(第1相の電流)が流れたときに、ヨーク31に向かう略同じ強度の磁界H1(後述)を発生するように巻回されている。同様に、コイル44aとコイル44bはいずれも、R相の電流が流れたときに、ヨーク34に向かう略同じ強度の磁界H1を発生するように巻回されている。
【0056】
コイル42aとコイル42bはいずれも、S相の電流(第2相の電流)が流れたときに、ヨーク32に向かう磁界H2を発生するように巻回されている。同様に、コイル45aとコイル45bはいずれも、S相の電流が流れたときに、ヨーク35に向かう磁界H2を発生するように巻回されている。
【0057】
コイル43aとコイル43bはいずれも、T相の電流(第3相の電流)が流れたときに、ヨーク33に向かう磁界H3を発生するように巻回されている。同様に、コイル46aとコイル46bはいずれも、T相の電流が流れたときに、ヨーク36に向かう磁界H3を発生するように巻回されている。
【0058】
上記一対のコイルは直列接続されている。たとえば、鉄心21~25の各々に巻回された一対のコイル41aおよびコイル41bは、直列接続され、直列コイル41を構成する。同様に、鉄心21~25の各々に巻回された一対のコイル42aおよびコイル42bは直列接続されて直列コイル42を構成する。鉄心21~25の各々に巻回された一対のコイル43aおよびコイル43bが直列接続されて直列コイル43を構成する。鉄心21~25の各々に巻回された一対のコイル44aおよびコイル44bが直列接続されて直列コイル44を構成する。鉄心21~25の各々に巻回された一対のコイル45aおよびコイル45bが直列接続されて直列コイル45を構成する。鉄心21~25の各々に巻回された一対のコイル46aおよびコイル46bが直列接続されて直列コイル46を構成する。
【0059】
上記の直列コイル41~46は、図3に示すように結線される。すなわち、直列コイル41と直列コイル44が直列接続され、直列コイル42と直列コイル45が直列接続され、直列コイル43と直列コイル46が直列接続される。そして、直列接続された直列コイル41と直列コイル44、直列接続された直列コイル42と直列コイル45、および直列接続された直列コイル43と直列コイル46がスター結線される。直列コイル41、直列コイル42および直列コイル43はそれぞれ、交流電源7のR相端子、S相端子およびT相端子に接続される。これにより、溶湯駆動装置1の動作時において、直列コイル41および44に交流電源7のR相電流が流れ、直列コイル42および45に交流電源7のS相電流が流れ、直列コイル43および46に交流電源7のT相電流が流れる。
【0060】
なお、コイル間の接続は上記に限定されず、後述の移動磁界(H,H,H)が生成すれば他の接続形態であってもよい。
【0061】
また、ヨークが1セット(すなわち、磁場装置のヨークがヨーク31~33の3本のみ)の場合は、直列コイル41、直列コイル42および直列コイル43がスター結線される。
【0062】
上記の磁場装置2では、鉄心21~25の各々について、ヨークを挟むように一対のコイルが設けられていたが、一部のコイルを省略してもよい。たとえば、一対のコイル41a,41bは鉄心21,23,25にのみ設け、一対のコイル42a,42bは鉄心22,24にのみ設けるようにしてもよい。
【0063】
<磁場装置2の動作>
次に、図4(a),(b)を参照して、磁場装置2の動作について説明する。
【0064】
交流電源7のR相電流が直列コイル41に流れることによって、図4(a)に示すように、コイル41aおよびコイル41bには、互いに逆向きで略同じ大きさの磁界H1がそれぞれ発生する。コイル41aで発生した磁界H1およびコイル41bで発生した磁界H1はいずれもヨーク31に向かう。そして、図4(b)に示すように、ヨーク31で2つの磁界H1が衝突、反発し、これにより生成された反発磁界Hがヨーク31から外部に向けて放射される。R相電流が流れる直列コイル44についても同様であり、ヨーク34から外部に向けて反発磁界Hが放射される。
【0065】
S相についても同様である。すなわち、交流電源7のS相電流が直列コイル42に流れることによって、コイル42aおよびコイル42bには、互いに逆向きで略同じ大きさの磁界H2が発生する。コイル42aで発生した磁界H2およびコイル42bで発生した磁界H2はいずれもヨーク32に向かい、ヨーク32で2つの磁界H2が衝突、反発する。これにより生成された反発磁界Hがヨーク32から外部に向けて放射される。S相電流が流れる直列コイル45についても同様であり、ヨーク35から外部に向けて反発磁界Hが放射される。
【0066】
T相についても同様である。すなわち、交流電源7のT相電流が直列コイル43に流れることによって、コイル43aおよびコイル43bには、互いに逆向きで略同じ大きさの磁界H3が発生する。コイル43aで発生した磁界H3およびコイル43bで発生した磁界H3はいずれもヨーク33に向かい、ヨーク33で2つの磁界H3が衝突、反発する。これにより生成された反発磁界Hがヨーク33から外部に向けて放射される。T相電流が流れる直列コイル46についても同様である、ヨーク36から外部に向けて反発磁界Hが放射される。
【0067】
交流電源7が供給されるR相電流、S相電流およびT相電流により、反発磁界H、反発磁界Hおよび反発磁界Hがこの順で繰り返し磁場装置2から放射される。これにより、磁場装置2の上方にある金属溶湯はヨーク31からヨーク36の方向に駆動されることとなる。
【0068】
<溶湯駆動装置1の作用効果>
上記のように、溶湯駆動装置1では、磁場装置2が、強力な反発磁界を放射することができる。これにより、コイルに大きな電流を流したり、コイルの巻数を増やさずとも、磁場装置2は、強力な移動磁界を発生させることができる。したがって、本実施形態の溶湯駆動装置1によれば、低消費電力でありながら、大きな駆動力を得ることができる。
【0069】
さらに、溶湯駆動装置1では、各鉄心21~25が従来の磁場装置の鉄心(一枚の板状鉄心)よりも薄いため、コイルの通電時に各鉄心21~25に発生する渦電流を低減することができる。このため、鉄心21~25の材料として、低鉄損の薄型珪素鋼板を積層したものでなく、汎用の炭素鋼板を使用することができる。したがって、磁場装置2のコスト(設計費、材料費、製造費)を削減できるとともに、溶湯駆動装置1の軽量化を図ることができる。
【0070】
さらに、溶湯駆動装置1では、磁場装置2の鉄心が、間隔をあけて平行配置された複数の鉄心21~25から構成されるため、磁場装置2の鉄心の表面積が大きくなる。このため、従来に比べて放熱特性を大幅に改善することができる。その結果、従来の溶湯撹拌装置では、水冷により磁場装置を冷却することが不可欠であったが、本実施形態によれば、空冷により磁場装置を冷却することが可能である。水冷式の場合は、管路の詰まりを防ぐために、軟水化処理等の冷却水の前処理や藻の定期的除去といったメンテナンスコストが膨大である。本実施形態によれば、このようなメンテナンスコストを削減することができる。加えて、溶湯駆動装置1の小型化を図ることができる。
【0071】
<溶湯撹拌システム>
第1の実施形態に係る溶湯駆動装置1の適用例として、溶湯撹拌システム1100について図5を参照して説明する。
【0072】
溶湯撹拌システム1100は、金属溶湯を貯留するための炉100と、炉100の下方に配置された溶湯駆動装置1とを備えている。この例では、溶湯駆動装置1は、炉100の底壁とほぼ同じ大きさである。
【0073】
炉100は、たとえば、アルミニウム等の非鉄金属を溶解するための溶解炉、または金属溶湯を保持するための保持炉である。なお、非鉄金属は、たとえば、Al,Cu,Znもしくはこれらのうちの少なくとも2つの合金、またはMg合金であってもよい。
【0074】
図5では、溶湯駆動装置1の上に炉100が設置されている。これに限らず、溶湯駆動装置1は、たとえば、炉100の載置面の下方に設けられた収納空間(図示せず)に設置されてもよい。
【0075】
ケース5の空気取入口5aには、図5に示すように、ブロワー50が取り付けられている。ブロワー50からケース5内に送り込まれた冷却風により磁場装置2が強制的に冷却される。
【0076】
溶湯撹拌システム1100では、交流電源7から供給される三相交流により順次放射される反発磁界H,H,Hにより、炉100内の溶湯Mは、図5中の矢印の方向(すなわち、ヨーク31からヨーク36への方向)に沿って駆動される。駆動された溶湯Mは炉100の側壁に当たり、側壁に沿って上下左右に広がった後、駆動方向と反対方向に拡散する。その結果、溶湯Mは炉100内で撹拌されることとなる。
【0077】
次に、図6を参照して、溶湯駆動装置1の別の適用例(溶湯撹拌システム1100A)について説明する。この適用例では、溶湯駆動装置1に比べて大きい炉100の下方に複数の溶湯駆動装置1が配置されている。この例では、複数の溶湯駆動装置1が平面視で炉100の側壁に沿って配置されている。これにより、炉100内の溶湯Mは炉100の側壁に沿って駆動されるため、炉100内で効率良く撹拌される。
【0078】
なお、所望の撹拌方向に沿って溶湯駆動装置1を炉100の角部に配置してもよい。
【0079】
(第2の実施形態)
次に、図7を参照して、第2の実施形態に係る溶湯駆動装置1Aについて説明する。図7は、磁場装置2Aを有する溶湯駆動装置1Aの一部透視側面図である。なお、図7では、磁場装置2Aの鉄心に巻回されたコイルは図示していない。
【0080】
第1の実施形態と第2の実施形態との間の相違点の一つは、第2の実施形態では、ヨーク31~36がU字状に折り曲げられている点である。以下、相違点を中心に第2の実施形態について説明する。
【0081】
溶湯駆動装置1Aは、磁場装置2Aと、ケース5Aと、端子箱6と、交流電源7とを備えている。端子箱6および交流電源7は、第1の実施形態で説明したものと同様であるため、詳しい説明は省略する。
【0082】
磁場装置2Aは、第1の実施形態で説明した磁場装置2と同じ構成要素を有する。ただし、図7に示すように、磁場装置2Aでは、ヨーク31~36がU字状に折り曲げられている。詳しくは、ヨーク31~36は、鉄心21と鉄心22間および鉄心24および鉄心25間において、鉄心21~25の延在方向に沿って折り曲げられている。これにより、磁場装置2Aは側面視でU字状となり、収納空間が形成される。この収納空間に、溶湯の搬送路(後述の樋200)、あるいは炉100が収納される。
【0083】
なお、ヨークの本数は、溶湯の搬送距離(樋の長さ)に応じて増減してもよい。また、鉄心の本数は樋の幅等に応じて増減してもよい。
【0084】
ケース5Aは、図7に示すように、側面視U字状の磁場装置2Aの形状に合わせ、磁場装置2Aを収納可能に構成されている。ケースの上面5sには、金属溶湯を搬送するための樋200を載置される。なお、ケース5Aの材質は特に限定されないが、たとえば、耐火材、ステンレス等の金属からなる。
【0085】
図示しないが、ケース5Aの両端(樋200の先端側と基端側)に空気取入口5aおよび空気排出口5bがそれぞれ設けられている。これにより、第1の実施形態と同様に、冷却用空気が鉄心21~25に沿って鉄心間を通り、鉄心21~25を効率良く冷却することができる。
【0086】
図8は、ケース5A(磁場装置2A)が画成する収納空間に樋200が配置されてなる溶湯搬送システム1200を示している。なお、図8では、磁場装置2Aの鉄心に巻回されたコイルは図示していない。図9は、溶湯駆動装置1Aの磁場装置2Aによる磁界の発生について説明するための側面図である。この図では、ヨーク36から反発磁界Hが樋200に向けて放射される様子を示している。第1の実施形態の磁場装置2と同様に、三相交流の供給に合わせて、反発磁界H、反発磁界Hおよび反発磁界Hがこの順で繰り返し磁場装置2Aから外部に向けて放射される。これにより、樋200内の溶湯Mはヨーク31からヨーク36の方向に搬送されることとなる。
【0087】
本実施形態では、樋200の側壁に沿って鉄心21および鉄心25が配置されている。このため、溶湯の搬送量が多い場合であっても、樋200の底壁から比較遠い溶湯にも駆動力を及ぼすことが可能となり、溶湯を効率良く搬送することができる。
【0088】
<溶湯搬送システムの使用例>
図10および図11は、溶湯搬送システム1200の使用形態の例を示している。図10の例では、炉100の溶湯Mは、樋200から注出され、水平に設置された樋200に沿って溶湯駆動装置1Aにより搬送された後、容器300に注がれる。
【0089】
図11の例では、樋200の先端側を基端側よりも持ち上げて、いわゆる勾配を付けた状態に樋200が設置されている。樋200の先端には案内板210が設けられている。この例の場合、溶湯Mは、重力に抗って樋200を上昇するように搬送される。
【0090】
さらに、図11の例では、2台の溶湯搬送システム1200Aおよび1200Bが直列に接続されている。炉100からの溶湯Mを溶湯搬送システム1200Aで一段上方へ搬送して溶湯搬送システム1200Bに送り、溶湯搬送システム1200Bで溶湯Mをさらに一段上方へ搬送する。これにより、炉100内の溶湯Mを炉100よりも2段だけ高い位置にある容器300に移動することができる。
【0091】
なお、3以上の溶湯搬送システム1200を直列に連携させてもよい。これにより、溶湯の水平方向への搬送距離を伸ばし、且つ、搬送高さをより高くすることができる。
【0092】
(第3の実施形態)
次に、図12図14を参照して、第3の実施形態に係る溶湯駆動装置1Bについて説明する。図12は、磁場装置2Bを有する溶湯駆動装置1Bの一部透視正面図である。図13は、溶湯駆動装置1Bの側面の一部断面図である。図14は、溶湯駆動装置1Bの磁場装置2Bによる磁界の発生について説明するための正面図である。なお、図12図14では、磁場装置2Bの鉄心に巻回されたコイルは図示していない。
【0093】
第1の実施形態と第3の実施形態との間の相違点の一つは、第3の実施形態では、鉄心21~25が環状鉄心である点である。すなわち、本実施形態の磁場装置2Bは、第1の実施形態の磁場装置2の鉄心の両端(図2の鉄心21~25の左端および右端)を接続して鉄心21~25を環状にしたものに相当する。より詳しくは、第3の実施形態の磁場装置2Bは、ヨーク31~36が内側になるように第1の実施形態の磁場装置2の鉄心21~25を環状に丸めたものに相当する。以下、相違点を中心に第3の実施形態について説明する。
【0094】
溶湯駆動装置1Bは、磁場装置2Bと、ケース5Bと、端子箱6と、交流電源7と、取付台8とを備えている。端子箱6および交流電源7は、第1の実施形態で説明したものと同様であるため、詳しい説明は省略する。取付台8は、磁場装置2Bが収納された円筒状のケース5Bを支持固定するための支持台である。
【0095】
磁場装置2Bは、第1の実施形態で説明した磁場装置2と同じ構成要素を有する。ただし、鉄心21~25は前述のように、環状鉄心として構成されている。環状の鉄心21~25は、図13に示すように、各々の中心軸CLが同軸になるように互いに間隔をあけて配置されている。
【0096】
図12に示すように、ヨーク31~36は、環状の鉄心21~25の内側に配置されている。本実施形態では、ヨーク31はヨーク34と対向し、ヨーク32はヨーク35と対向し、ヨーク33はヨーク36と対向している。
【0097】
なお、磁束の漏れを減らす観点から、環状の鉄心21~25は閉じていることが好ましい。ただし、環状鉄心の一部にギャップが設けられることは排除されず、ギャップが設けられてもよい。
【0098】
環状の鉄心21~25は、たとえば、鋳型(鋳造物)の形状に応じた平面形状を有する。溶湯駆動装置1Bがビレットを鋳造する鋳型に設けられる場合、鉄心21~25は円環状である。溶湯駆動装置1Bがスラブを鋳造する鋳型に設けられる場合、鉄心21~25は方環状である。
【0099】
なお、本実施形態では、図13に示すように、環状の鉄心21~25は等間隔で配置されているが、不等間隔で配置されてもよい。
【0100】
また、環状の鉄心21~25は、薄型であってもよい。図13に示すように、環状の鉄心21~25は、中心軸CLに沿う方向(第1方向)の厚みt1が第1方向に直交する方向(第2方向)の厚みt2よりも小さいようにしてもよい。これにより、磁場装置2Bの冷却効率をさらに向上させることができるとともに、鉄損をさらに低減することができる。所望の起磁力を確保できるよう、環状鉄心の磁気飽和値に基づいて環状鉄心の第1および第2方向の厚みをそれぞれ設定することが好ましい。
【0101】
ケース5Bは、図12および図13に示すように、略円筒状の磁場装置2Bの形状に合わせ、磁場装置2Bを収納可能に構成されている。磁場装置2Bは、ケース5Bの内筒部が環状の鉄心21~25に挿通されるようにケース5B内に収納されている。環状の鉄心21~25がケース5Bの内筒部から所定の距離を保つように、環状の鉄心21~25と内筒部の間には、絶縁材料からなるスペーサ(図示せず)が介装される。そして、当該スペーサを磁場装置2Bの中心軸CLの方向に沿って貫通するようにスタッドボルト(図示せず)を設ける。このスタッドボルトの両端がケース5Bに固定されることで、磁場装置2Bはケース5B内に固定される。
【0102】
本実施形態では、図12に示すように、空気取入口5aおよび空気排出口5bがケース5Bに設けられている。これにより、第1の実施形態と同様に、冷却用空気が環状の鉄心21~25に沿って鉄心間を通り、環状の鉄心21~25を効率良く冷却することができる。
【0103】
なお、本実施形態では、磁場装置2Bは横向きに(すなわち、環状の鉄心21~25の中心軸CLが水平方向になるように)設置されている。これに限られず、磁場装置2Bが縦向きに(すなわち、中心軸CLが垂直方向になるように)設置されるように溶湯駆動装置1Bが構成されてもよい。
【0104】
図14に示すように、本実施形態の磁場装置2Bは、交流電源7から供給される三相交流電流に合わせて、反発磁界H、反発磁界Hおよび反発磁界Hをこの順で繰り返し、中心軸CLに向けて放射する。より詳しくは、R相電流の供給により、ヨーク31,34から反発磁界Hが中心軸CLに向けて放射される。その後、S相電流の供給により、ヨーク32,35から反発磁界Hが中心軸CLに向けて放射される。さらにその後、T相電流の供給により、ヨーク33,36から反発磁界Hが中心軸CLに向けて放射される。その後も、反発磁界が周期的に放射される。これにより、環状の鉄心21~25の内部にある溶湯は中心軸CLのまわりに駆動される。
【0105】
磁場装置2Bのヨーク31~36が放射する反発磁界H,H,Hは中心軸CL方向に沿って略同じ強度分布を有するため、溶湯駆動装置1Bによれば、中心軸CLまわりに均一な撹拌力を発生させることができる。
【0106】
また、交流電源7から出力される交流電流の大きさ、および/または周波数を調整することで、溶湯の撹拌力を調整することができる。
【0107】
なお、磁場装置2Bにおいて鉄心の本数は、5本に限定されず、任意の数であってよい。たとえば、撹拌対象の溶湯の長さ(たとえば後述の鋳型400の長さ)に基づいて鉄心の本数が決定されてもよい。また、ヨークの本数は、6本に限定されず、9本、12本など3の倍数であってもよい。ヨークの本数を増やすことで、溶湯をより均一に撹拌することができる。
【0108】
<連続鋳造システム>
第3の実施形態に係る溶湯駆動装置1Bの適用例として、連続鋳造システム1300について図15を参照して説明する。
【0109】
連続鋳造システム1300は、導電性材料の液相状態にある溶湯Mの供給を受け、この溶湯Mを冷却することにより固相状態の鋳造品Pを取り出すように構成されている。
【0110】
連続鋳造システム1300は、筒状の鋳型400と、鋳型400がケース5Bの内部に配置された溶湯駆動装置1Bとを備えている。溶湯駆動装置1Bは、環状の鉄心21~25が鋳型400と同軸になるように配置されている。鋳型400は、溶湯駆動装置1Bのケース5Bの内筒部に挿通されるように設けられている。
【0111】
鋳型400は、入口側から液相状態の溶湯Mの供給を受け、冷却により固相状態の鋳造品Pを出口側から排出する。本実施形態の鋳型400は円筒状である。この円筒状の鋳型400は、その中心軸が磁場装置2Bの中心軸CLと同軸になるように配置される。なお、鋳造品がスラブの場合は角筒状の鋳型を用いる。
【0112】
鋳型400は、耐火材から構成される。グラファイトから構成される場合、グラファイトは材質的に柔らかいため、表面がより滑らかな鋳造品を得ることができる。
【0113】
鋳型400は、鋳型400内に流れ込む溶湯Mを冷却するためのウォータジャケット(図示せず)を有している。ウォータジャケット内で冷却水を循環させ、この冷却水によって鋳型400の外周を冷却する。これにより、溶湯Mは急激に冷却されることになる。なお、ウォータジャケットは、公知の各種の構造のものを採用することが可能である。
【0114】
上記のように、交流電源7の三相交流電流が磁場装置2Bに供給されることで、鋳型400内に移動磁界が発生する。この移動磁界により未凝固の溶湯に渦電流が発生し、中心軸CLまわりに溶湯Mが撹拌される。そして、撹拌された溶湯がウォータジャケットにより冷却されることで、均一で高品質な鋳造品Pが得られる。
【0115】
このように、連続鋳造システム1300によれば、溶湯Mが鋳型400の入口側(図15の右側)に流入され、製品としての鋳造品Pが出口側(図15の左側)から連続的に成形される。
【0116】
前述のように、溶湯駆動装置1Bによれば、中心軸CLのまわりに均一な撹拌力を発生させることができるため、鋳型400内の溶湯Mを均一に撹拌することができる。
【0117】
したがって、上記の連続鋳造システム1300によれば、溶湯駆動装置1Bの磁場装置2Bが発生する強力、かつ中心軸CLのまわりに均一な移動磁界により、均一な組成を有する高品質な鋳造品Pを得ることができる。
【0118】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【0119】
たとえば、第1の実施形態の溶湯駆動装置1を樋200の底壁および/または側壁に少なくとも一つ以上設けることで、溶湯搬送システムを構成してもよい。
【0120】
また、第2の実施形態の溶湯駆動装置1Aを炉100が収納空間に収納されるようにすることで、溶湯撹拌システムを構成してもよい。
【0121】
また、第3の実施形態の溶湯駆動装置1Bの内部に炉100を設置することで、溶湯撹拌システムを構成してもよい。
【符号の説明】
【0122】
1 溶湯駆動装置
2,2A,2B 磁場装置
21~25 鉄心
31~36 ヨーク
41a,41b,44a,44b コイル
42a,42b,45a,45b コイル
43a,43b,46a,46b コイル
41~46 直列コイル
5,5A,5B ケース
5a 空気取入口
5b 空気排出口
5s 上面
6 端子箱
6a 配線導入口
7 交流電源
8 取付台
50 ブロワー
100 炉
200 樋
210 案内板
300 容器
400 鋳型
1100,1100A 溶湯撹拌システム
1200 溶湯搬送システム
1300 連続鋳造システム
CL 中心軸
D (鉄心間の)間隔
H1,H2,H3 (コイルで発生した)磁界
,H,H 反発磁界
P 鋳造品
T,W (鉄心の)厚み
図1
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