(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002701
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】新規ブラジキニンB2受容体アンタゴニスト
(51)【国際特許分類】
C07D 401/04 20060101AFI20221227BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20221227BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20221227BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20221227BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20221227BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20221227BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221227BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221227BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20221227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221227BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20221227BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20221227BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20221227BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20221227BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221227BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20221227BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221227BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221227BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20221227BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20221227BHJP
C07D 405/14 20060101ALI20221227BHJP
C07D 413/14 20060101ALI20221227BHJP
C07D 417/14 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C07D401/04 CSP
A61P1/18
A61P11/02
A61P11/06
A61P19/02
A61P25/00
A61P25/28
A61P29/00
A61P37/08
A61P43/00 111
A61K9/12
A61K9/06
A61K9/107
A61K9/48
A61K9/08
A61K9/70 401
A61K9/20
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/4709
A61K31/5377
C07D405/14
C07D413/14
C07D417/14
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168473
(22)【出願日】2022-10-20
(62)【分割の表示】P 2020545875の分割
【原出願日】2018-11-23
(31)【優先権主張番号】17203675.8
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520179280
【氏名又は名称】ファルバリス ネザーランズ ベー.ヴェー.
【氏名又は名称原語表記】PHARVARIS NETHERLANDS B.V.
【住所又は居所原語表記】Leiden BioScience Park,J.H.Oortweg 21,2333 CH Leiden Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギブソン クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】サウペ ジョーン
(72)【発明者】
【氏名】アンブロシ ホルスト-ディーター
(72)【発明者】
【氏名】ハウシュテット ラース オレ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】改善された特性を有するブラジキニンB2受容体アンタゴニストを提供する。
【解決手段】ブラジキニンB2(BK B2)受容体アンタゴニストとして作用する一般式(I)の化合物、本発明の化合物の1以上を含む医薬組成物、少なくとも1つの本発明の化合物と少なくとも1つのさらなる活性医薬成分を含む組合せ調剤、および医薬としての使用を含む該化合物の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物:
【化1】
またはその塩であり、ここで
Aは、以下の基を表す:
【化2】
A
1は N または CHである;
A
2 は N または C-R
A2である
A
3 は N または C-R
A3である;
A
4 は NH、O または Sである;
A
5 は N-R
A5である;
R
A1 は水素原子またはメチル基を表す;
R
A2 および R
A3 はそれぞれ互いに独立に水素原子、ハロゲン原子、OH、CN、NH
2; ハロゲン原子、OH、=O、および NH
2から選択される1以上の同一または異なる基で置換されていてもよい(C
1-C
3)アルキル; ハロゲン原子、OH、=O、および NH
2から選択される1以上の同一または異なる基で置換されていてもよい(C
1-C
3)アルコキシ; ハロゲン原子、OH、=O、および NH
2から選択される1以上の同一または異なる基で置換されていてもよい(C
2-C
5)アルコキシアルキル; C(O)NR
B1R
B2; または NR
B1R
B2を表す;
R
B1, R
B2および R
A5はそれぞれ互いに独立に水素原子、またはハロゲン原子、OH、=O、および NH
2から選択される1以上の同一または異なる基で置換されていてもよい(C
1-C
3)アルキル基を表す;
R
1 は(C
1-C
3)アルキルまたは (C
2-C
5)アルコキシアルキル基を表し、そのアルキル基またはアルコキシアルキル基は重水素原子、ハロゲン原子、OH、=O、および NH
2から選択される1以上の同一または異なる基で置換されていてもよい;
R
2 は水素原子または重水素原子を表す;
R
3 は水素原子、(C
1-C
3)アルキル, または(C
1-C
3)ハロアルキル基を表す;
E は CR
E1R
E2R
E3 または Hceを表す;
Hce は3から10個の炭素原子と、それぞれ互いに独立にN、O または Sから選択される1から4個のヘテロ原子をもつ単環式または二環式の部分的不飽和または芳香族複素環を表し、その複素環は非置換であるか、あるいは各場合で独立にハロゲン原子、OH、G、NR
C1R
C2 および/または=Oで一、二、または三置換されていてもよい;
R
C1 および R
C2 はそれぞれ互いに独立に水素原子または(C
1-C
3)アルキル基を表す;
G は(C
1-C
6)アルキル基を表し、ここで1から7個の水素原子は各場合につき独立にハロゲン原子、OR
G1、CN、NR
G2R
G3または
(C
3-C
6)シクロアルキルで置換されていてもよく、および/または1つのCH
2基または2つの隣接しないCH
2基がO、C(O)、OC(O)、C(O)O、C(O)NH、NH、S, SO, SO
2で置換されていてもよく、および/またはCH=CH 基で置換されていてもよい;
R
G1、 R
G2、および R
G3はそれぞれ互いに独立に水素原子、(C
1-C
4)アルキル、(C
1-C
4) ハロアルキル、(C
1-C
4) ヒドロキシアルキル、(C
1-C
4) ヘテロアルキルまたは(C
3-C
6)シクロアルキル基を表す;
R
E1 および R
E2 はそれぞれ互いに独立に水素原子、ハロゲン原子、またはGを表すか、あるいは R
E1 および R
E2 は一緒になって =O または Cycを形成する;
R
E3 は水素原子、ハロゲン原子、G、OG または OHを表す; そして
Cyc は単環式または二環式の飽和または部分的不飽和の3員から10員のシクロアルキル基あるいはそれぞれ互いに独立にN、O または Sから選択される1から3個のヘテロ原子をもつ4員から10員のヘテロシクロアルキル基を表し、そのシクロアルキル基あるいはヘテロシクロアルキル基は非置換であるか、あるいは各場合につき独立にハロゲン原子、OH、G、NR
C1R
C2 および/または=Oで一、二、三または四置換されていてもよい。
【請求項2】
R1 が(C1-C2)アルキルまたは (C2-C4)アルコキシアルキル基を表し、そのアルキル基またはアルコキシアルキル基は重水素原子、ハロゲン原子およびOHから選択される1以上の同一または異なる基で置換されていてもよい、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項3】
R3 が水素原子またはメチル基を表す、請求項1または2に記載の化合物または塩。
【請求項4】
E が CRE1RE2RE3 であって、RE1 が水素原子、フッ素原子、メチルまたはエチルを表し;そしてRE2およびRE3 のそれぞれが請求項1で定義したものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項5】
RE2 が水素原子、フッ素原子、(C1-C6)アルキル基、好ましくは(C1-C3)アルキル基、ここで1 から 4個の水素原子が各場合で独立にフッ素原子、OH, =O, または NRC1RC2で置換されていてもよく; (C1-C6)アルコキシ基、好ましくは(C1-C3)アルコキシ基、ここで1 から 4個の水素原子が各場合で独立にフッ素原子、OH, =O, NRC1RC2またはシクロプロピルで置換されていてもよく; または(C2-C5)アルコキシアルキル基、ここで1 から 5個の水素原子が各場合で独立にフッ素原子、OH, =O, NRC1RC2またはシクロプロピルで置換されていてもよく; そしてRC1および RC2 のそれぞれが請求項1で定義したものである、を表す、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項6】
RE3 が水素原子、フッ素原子、OH、(C1-C6)アルキル基、好ましくは(C1-C3)アルキル基、ここで1 から 5個の水素原子が各場合で独立にフッ素原子、OH, =O, または NRC1RC2で置換されていてもよく; (C1-C6)アルコキシ基、ここで1 から 5個の水素原子が各場合で独立にフッ素原子、OH, =O, NRC1RC2またはシクロプロピルで置換されていてもよく; (C2-C5)アルコキシアルキル基、ここで1 から 5個の水素原子が各場合で独立にフッ素原子、OH, =O, NRC1RC2またはシクロプロピルで置換されていてもよく; そしてRC1および RC2 のそれぞれが請求項1で定義したものである、を表す、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項7】
E が CRE1RE2RE3 であって、そしてRE1 および RE2 が一緒になって=O または Cycを形成し、ここでCyc はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロ-2H-ピラニル、1,3-ジオキソラニル、モルホリニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、(イミダゾリジン-2-オン)イルおよび(オキサゾリジン-2-オン)イルから選択される、そして非置換であるか、あるいは各場合で独立にハロゲン原子、OH、G、NRC1RC2 および/または=Oで一、二、または三置換されていてもよく;そしてRC1、RC2 および RE3 のそれぞれが請求項1で定義したものである、を表す、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項8】
RE3 が水素原子、フッ素原子、OH、または(C1-C3)アルキル基を表す、請求項7に記載の化合物または塩。
【請求項9】
E がHceであり、そしてHceが、3 から 5個の炭素原子と1 から 3個の窒素原子;3 から 5個の炭素原子、1または2個の窒素原子と1個の酸素原子;または3 から 5個の炭素原子、1または2個の窒素原子および1個の硫黄原子をもつ単環式の部分的不飽和または芳香族複素環を表し、その複素環は非置換であるか、あるいは各場合で独立にハロゲン原子、OH、(C1-C3)アルキル、(C1-C3)ハロアルキル、(C1-C3)アルコキシ、(C1-C3)ハロアルコキシおよび/または=Oで一、二、または三置換されていてもよい、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【請求項10】
Eが以下のものを表す、請求項1~6および9のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【化3】
【請求項11】
化合物が以下の群から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物または塩。
【化4】
【化5】
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の1以上の化合物を含み、および少なくとも1つの担体物質、賦形剤および/またはアジュバントを含んでもよい、医薬組成物。
【請求項13】
医薬組成物がエアロゾル、クリーム、ジェル、ピル、カプセル、シロップ、溶液、経皮パッチまたは医薬送達装置として処方される、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の少なくとも1つの化合物、および少なくとも1つのさらなる活性医薬成分を含む組合せ調剤。
【請求項15】
医薬として用いるための請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物、請求項12に記載の医薬組成物、または請求項14に記載の組合せ調剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブラジキニン(BK)B2受容体アンタゴニストとして作用する一般式(I)の化合物、本発明の化合物の1以上を含む医薬組成物、少なくとも1つの本発明の化合物と少なくとも1つのさらなる活性医薬成分を含む組合せ調剤、および医薬としての使用を含む該化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
BKは内皮細胞を活性化して血管拡張、血管透過性の増加、一酸化窒素の生成、およびアラキドン酸の動員に導く炎症プロセスに関与するペプチドホルモンである。BKはまた感覚神経終末を刺激して灼熱感覚異常を引き起こす。したがって、炎症の古典的パラメータ(発赤、熱、腫れや痛みなど)は全てBKの生成から生じうる。BKはカリクレイン-キニン系の短命な成分である。循環するBKの濃度は正常な生理学的条件下では低いレベルに維持されており、病理学的状況において、キニノーゲンと呼ばれる循環性糖タンパク質前駆体が酵素分解されることによって急激に増加する。最も有力な2つのキニノーゲン代謝酵素は、トリプシン様セリンプロテアーゼ血漿カリクレインと組織カリクレインである。これらの酵素の前駆体は正常時には全ての組織に存在し、生理学的または病理生理学的プロセスによって容易に活性化される(Sainz, I. M. ら Thromb. Haemost. 2007, 98, 77-83)。BK B2受容体はほとんどの細胞や組織型で構成的に発現されており、BKが血漿や組織で生成されると、ほとんどのBKの公知の効果を仲介する(Regoli, D. ら Pharmacol. Rev. 1980, 32, 1-46)。多数のin vivo研究がBK B2受容体をブロックする薬剤が、喘息、アレルギー性鼻炎、膵炎、変形性関節症、外傷性脳損傷、アルツハイマー病および血管浮腫などの病理学的症状において治療効果を与えることを示してきた。
【0003】
多数のBK B2受容体のペプチド性および非ペプチド性アンタゴニストが先行文献に記載されている。BK B2受容体アンタゴニストとして活性を有するキノリン誘導体がたとえば、WO 2014/159637, WO 2010/031589, WO 2008/116620, WO 2006/40004, WO 03/103671, WO 03/87090, WO 00/23439, WO 00/50418, WO 99/64039, WO 97/41104, WO 97/28153, WO 97/07115, WO 96/13485, EP 0 795 547, EP 0 796 848, EP 0 867 432, および EP 1 213 28に記載されている。しかしながら、これらの化合物はWO 2014/159637に記載するように、低い代謝安定性、低い生物学的利用能、グルタチオン付加物の生成や生物活性化(毒性)を含む、薬物としてのその使用を妨げる多くの欠点を示した。
先行技術化合物の欠点と、急性および慢性のBKの病理生理学的レベルに関連する厳しい状況に鑑み、新規なBK B2受容体アンタゴニストの必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO 2014/159637
【特許文献2】WO 2010/031589
【特許文献3】WO 2008/116620
【特許文献4】WO 2006/40004
【特許文献5】WO 03/103671
【特許文献6】WO 03/87090
【特許文献7】WO 00/23439
【特許文献8】WO 00/50418
【特許文献9】WO 99/64039
【特許文献10】WO 97/41104
【特許文献11】WO 97/28153
【特許文献12】WO 97/07115
【特許文献13】WO 96/13485
【特許文献14】EP 0 795 547
【特許文献15】EP 0 796 848
【特許文献16】EP 0 867 432
【特許文献17】EP 1 213 28
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sainz, I. M. ら Thromb. Haemost. 2007, 98, 77-83
【非特許文献2】Regoli, D. ら Pharmacol. Rev. 1980, 32, 1-46
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した先行技術と必要性に鑑みてなされたものであり、よって本発明の目的は一般式(I)の新規BK B2受容体アンタゴニスト、好ましくは1以上の改善された特性、たとえば生物学的利用能、溶解性、代謝安定性やLADME(放出、吸収、分布、代謝および排泄)特性を含む改善された薬物動態および/または生理化学的性質を有する新規なBK B2受容体アンタゴニストを提供することである。本発明の別の目的は、本明細書に記載する少なくとも1つのBK B2受容体アンタゴニストを含む医薬組成物、少なくとも1つの本発明の化合物と少なくとも1つのさらなる活性医薬成分を含む組合せ調剤、および医薬としての使用を含む該化合物の使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの目的は添付の特許請求の範囲の主題によって解決され、以下の記載と定義を参照することによって明らかになる。
本発明は以下のものに関する:
[1] 一般式(I)の化合物:
【化1】
またはその塩であり、ここで
Aは、以下の基を表す:
【化2】
A
1 は N または CHである;
A
2 は N または C-R
A2である;
A
3 は N または C-R
A3である;
A
4 は NH、O または Sである;
A
5 は N-R
A5である;
R
A1 は水素原子またはメチル基を表す;
R
A2 および R
A3 はそれぞれ互いに独立に水素原子、ハロゲン原子、OH、CN、NH
2; ハロゲン原子、OH、=O、および NH
2から選択される1以上の同一または異なる基で置換されていてもよい(C
1-C
3)アルキル; ハロゲン原子、OH、=O、および NH
2から選択される1以上の同一または異なる基で置換されていてもよい(C
1-C
3)アルコキシ; ハロゲン原子、OH、=O、および NH
2から選択される1以上の同一または異なる基で置換されていてもよい(C
2-C
5)アルコキシアルキル; C(O)NR
B1R
B2; または NR
B1R
B2を表す;
R
B1, R
B2および R
A5はそれぞれ互いに独立に水素原子、またはハロゲン原子、OH、=O、および NH
2から選択される1以上の同一または異なる基で置換されていてもよい(C
1-C
3)アルキル基を表す;
R
1 は(C
1-C
3)アルキルまたは (C
2-C
5)アルコキシアルキル基を表し、そのアルキル基またはアルコキシアルキル基は重水素原子、ハロゲン原子、OH、=O、および NH
2から選択される1以上の同一または異なる基で置換されていてもよい;
R
2 は水素原子または重水素原子を表す;
R
3 は水素原子、(C
1-C
3)アルキル, または(C
1-C
3)ハロアルキル基を表す;
E は CR
E1R
E2R
E3 または Hceを表す;
Hce は3から10の炭素原子と、それぞれ互いに独立にN、O または Sから選択される1から4のヘテロ原子をもつ単環式または二環式の部分的不飽和または芳香族複素環を表し、その複素環は非置換であるか、あるいは各場合で独立にハロゲン原子、OH、G、NR
C1R
C2 および/または=Oで一、二、または三置換されていてもよい;
R
C1 および R
C2 はそれぞれ互いに独立に水素原子または(C
1-C
3)アルキル基を表す;
G は(C
1-C
6)アルキル基を表し、ここで1から7の水素原子は各場合で独立にハロゲン原子、OR
G1、CN、NR
G2R
G3または
(C
3-C
6)シクロアルキルで置換されていてもよく、および/または1つのCH
2基または2つの隣接しないCH
2基がO、C(O)、OC(O)、C(O)O、C(O)NH、NH、S, SO, SO
2で置換されていてもよく、および/またはCH=CH 基で置換されていてもよい;
R
G1、 R
G2、および R
G3はそれぞれ互いに独立に水素原子、(C
1-C
4)アルキル、(C
1-C
4) ハロアルキル、(C
1-C
4) ヒドロキシアルキル、(C
1-C
4) ヘテロアルキルまたは(C
3-C
6)シクロアルキル基を表す;
R
E1 および R
E2 はそれぞれ互いに独立に水素原子、ハロゲン原子、またはGを表すか、あるいは R
E1 および R
E2 は一緒になって =O または Cycを形成する;
R
E3 は水素原子、ハロゲン原子、G、OG または OHを表す; そして
Cyc は単環式または二環式の飽和または部分的不飽和の3員から10員のシクロアルキル基あるいはそれぞれ互いに独立にN、O または Sから選択される1から3個のヘテロ原子をもつ4員から10員のヘテロシクロアルキル基を表し、そのシクロアルキル基あるいはヘテロシクロアルキル基は非置換であるか、あるいは各場合で独立にハロゲン原子、OH、G、NR
C1R
C2 および/または=Oで一、二、三または四置換されていてもよい。
【0008】
化合物は通常、標準の命名法または以下に示す定義を用いて本明細書に記載される。不斉中心をもつ化合物については、特記しない限り、その全ての光学異性体および混合物を含むと理解すべきである。2以上の不斉要素をもつ化合物はジアステレオマーの混合物としても存在しうる。さらに、炭素-炭素の二重結合をもつ化合物はZ-形およびE-形がとりえて、本発明では特記しない限り化合物のあらゆる異性体も含む。化合物が互変異性で存在するときは、記載された化合物は1つの特定の互変異性体に限定されるものではなく、あらゆる互変異性体形を含むことを意図する。本発明の化合物は水和物、溶媒和物または非共有結合複合体として存在しうるが、これに限定されないことが明らかである。さらに、種々の結晶形や多形が本発明の範囲内であり、本発明の化合物のプロドラッグも同じである。記載の化合物はさらに1以上の原子が同位体、すなわち同じ原子番号であるが、異なる質量数をもつ原子で置換されていてもよい。限定するものではないが、一般的な例として水素の同位体は三重水素および重水素を含み、炭素の同位体は11C、13C および14Cを含む。
【0009】
1以上の立体中心をもつ、本明細書に記載する式の化合物は少なくとも50%のエナンチオマー過剰をもつ。たとえば、このような化合物は少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95% または98%のエナンチオマー過剰をもつ。化合物のいくつかの態様は少なくとも99%のエナンチオマー過剰をもつ。単一のエナンチオマー(光学活性形)は不斉合成、光学的に純粋な前駆体からの合成またはラセミ体からの分割によって得ることができることは明らかである。ラセミ体からの分割は、たとえば分割剤の存在下での結晶、あるいはたとえばキラルHPLCカラムを用いるクロマトグラフィーなどの慣用法で行うことができる。
【0010】
本発明の化合物は、たとえばA, A1-A5, E, R1-R3, RA1-RA5, RB1-RB2, RC1-RC2, RE1-RE3, および RG1-RG3のような変数を含む一般式を用いて本明細書で記載される。特記しない限り、このような式の各変数はいずれの他の変数とも独立に定義され、また式中で2回以上使われるいずれの変数も各場合で独立に定義される。したがって、たとえば、もしもある基が0から2の R*で置換されると示されているときは、その基は非置換か、あるいは1または2個の基 R*で置換され、ここでR*は各場合につき対応するR*の定義から独立して選択される。また、置換基および/または変数の組合せは、そのような組合せが安定な化合物、すなわち単離され、性状決定され生物活性を試験されうる化合物になるときのみ許される。
【0011】
本明細書で使用する、たとえば「1から5」のような長さの範囲を限定する用語は1から5のあらゆる整数、すなわち1、2、3、4および5を意味する。換言すれば、明瞭に記載された2つの整数で定義されるいかなる範囲も、その限定を定義するあらゆる整数およびその範囲に含まれるあらゆる整数を含んで開示することを意味する。たとえば、用語「C1-C3」は、1から3、すなわち1, 2 または3個の炭素原子をいい、用語「C1-C6」は、1から6、すなわち1, 2, 3, 4, 5 または6個の炭素原子をいう。さらに、本明細書で使用する接頭語「(Cx-y)」は、該接頭語と直接関連して示される、鎖、環または鎖と環構造の組合せ全体として、最小xと最大yの炭素原子(すなわちx<y)からなることを意味し、ここでxとyが鎖の長さ(炭素原子の数)および/または環の大きさ(炭素環原子の数)の限定を定義する整数を表す。
【0012】
本明細書に開示する化合物の「薬理学的に許容可能な塩」とは、過度の毒性や発がん性なく、そして好ましくは刺激、アレルギー応答やその他の問題または合併症なく、ヒトや動物の組織に接して用いるのに適していると当業界で一般に考えられる酸性塩または塩基性塩である。このような医薬の塩は、アミンなどの塩基性残基の鉱酸および有機酸の塩、ならびにカルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩を含む。
【0013】
適切な医薬の塩は、塩酸、リン酸、臭化水素酸、リンゴ酸、グリコール酸、フマル酸、硫酸、スルファミン酸、スルファニル酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエチルスルホン酸、硝酸、安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ステアリン酸、サリチル酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、パモ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、プロピオン酸、ヒドロキシマレイン酸、ヨウ化水素酸、フェニル酢酸、酢酸などのアルカン酸やnが0から4のいずれかの整数(すなわち0, 1, 2, 3, または 4)であるHOOC-(CH2)n-COOHなどの酸の塩を含むが、これに限定されない。同様に、医薬的に許容できるカチオンは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウムおよびアンモニウムを含むが、これに限定されない。当業者は本明細書で提供する化合物についてのさらなる薬理学的に許容できる塩を認識するであろう。一般に、薬理学的に許容できる酸性塩または塩基性塩は、塩基性部分または酸性部分を含む親化合物から慣用の化学的方法によって合成できる。簡潔にいうと、このような塩は、これらの化合物の酸性形または塩基性形を、水中または有機溶媒中またはこの2つの混合物中で、化学量論的量の適当な塩基または酸と反応させることによって調製できる。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水性媒体を用いることが好ましい。
【0014】
本明細書で用いる「置換基」とは、興味のある分子内のある原子と共有結合した分子部分をいう。たとえば、環上の置換基は、ハロゲン原子、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ、シアノ、またはアミノ基、あるいは環メンバーである原子、好ましくは炭素または窒素原子と共有結合する本明細書に記載のその他のあらゆる置換基などの部分である。
【0015】
本明細書で用いる用語「置換された」は、指定の原子または基(アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールなど)上のいずれか1以上の水素原子が、示される置換基からの選択で置き換えられることを意味し、ただし指定された原子の正常な価数または基の置換できる位置の数を超えないこと、そして置換によって安定な化合物、すなわち単離、性状決定および生物活性の試験ができる化合物が得られることを条件とする。置換基がオキソ、すなわち=Oであるとき、原子上の2つの水素が置き換えられる。芳香族炭素原子の置換基であるオキソ基は-CH- から -C(=O)- への変換となり、芳香族性を失うことになる。たとえば、オキソで置換されたピリジル基はピリドンである。一、二、三または四置換されたとは1(モノ)、2(ジ)、3(トリ)または4(テトラ)置換基をもつ基を意味するが、ただし置換が置換できる位置の数を超えないこと、そして置換によって安定な化合物が得られることを条件とする。たとえば、モノ置換されたイミダゾリル基は(イミダゾリジン-2-オン)イル基であり、ジ置換されたイソオキサゾリル基は((3,5-ジメチル)イソオキサゾリル)基となる。
【0016】
本明細書で使用するとき、「含む(comprising)」「含む(including)」「含む(containing)」「で特徴つけられる(characterized by)」およびその文法的同等物は包含的または制約のない(open-ended)用語であり、追加の非記載の要素や方法ステップを排除するものではない。しかし、「含む(comprising)」などの用語は、より制限的な用語である「から本質的になる(consisting essentially of)」や「からなる(consisting of)」をも含むものであると解釈される。
本明細書で使用するとき、「からなる(consisting of)」は特許請求の範囲に特定されていないあらゆる要素、ステップ、または成分を排除する。
【0017】
商標名を本明細書で用いる場合には、商標名製品の処方、ジェネリック薬、および商標名製品の活性医薬成分を独立に含むことを意図する。
一般に特記しない限り、本明細書で用いる技術的および科学的用語は本発明が属する当業者が通常理解するのと同じ意味をもち、一般的教科書や辞書と合致する。
【0018】
アルキルまたはアルキル基との表現は、1から20個の炭素原子、好ましくは1から12個の炭素原子、より好ましくは1から6個の炭素原子、または接頭語に示す炭素原子数を含む飽和、直鎖または分枝の炭化水素基を意味する。アルキルが置換されている場合には、置換は分子の個々の炭素原子の一、二または三置換によって互いに独立に起き、たとえば、1, 2, 3, 4, 5, 6, または 7水素原子が各場合に独立して示される置換基からの選択で置き換えられる。前述の記載は、アルキル基がハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキルアミノ、アルコキシまたはアルコキシアルキルのような基の一部を形成している場合にも適用される。アルキル基の例にはメチル、エチル、プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、iso-ペンチル、n-ヘキシル、2,2-ジメチルブチル、またはn-オクチルを含み、置換アルキル基またはアルキルが基の一部を形成する基の例には、トリフルオロメチルまたはジフルオロメチル基のようなハロアルキル;ヒドロキシメチルまたは2-ヒドロキシエチル基のようなヒドロキシアルキル、およびメトキシメチル基を含む。用語「(C1-6)アルキル」は、たとえば、H3C-, H3C-CH2-, H3C-CH2-CH2-, H3C-CH(CH3)-, H3C-CH2-CH2-CH2-, H3C-CH2-CH(CH3)-, H3C-CH(CH3)-CH2, H3C-C(CH3)2-, H3C-CH2-CH2-CH2-CH2-, H3C-CH2-CH2-CH(CH3)-, H3C-CH2-CH(CH3)-CH2-, H3C-CH(CH3)-CH2-CH2-, H3C-CH2-C(CH3)2-, H3C-C(CH3)2-CH2-, H3C-CH(CH3)-CH(CH3)-, H3C-CH2-CH(CH2CH3)-, -CH2CH2CH2CH2CH2CH3, -CH(CH3)CH2CH2CH2CH3, (H3CH2C)CH(CH2CH2CH3)-, -C(CH3)2(CH2CH2CH3), -CH(CH3)CH(CH3)CH2CH3, および -CH(CH3)CH2CH(CH3)2を含む。
【0019】
アルコキシまたはアルコキシ基との表現は酸素と単結合したアルキル基、すなわち-O-アルキルをいう。用語「(C1-C6)アルコキシ」は、たとえば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、iso-プロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、iso-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、tert-アミルオキシ、またはn-ヘキシルオキシを含み、したがって、(C1-C3)アルコキシはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、iso-プロポキシを含む。
【0020】
アルコキシアルキルまたはアルコキシアルキル基との表現は、1以上のアルコキシ基と単結合したアルキル基、たとえば、-アルキル-O-アルキルまたは-アルキル-O-アルキル-O-アルキルをいう。用語「(C2-C5)アルコキシアルキル」は、たとえば、メトキシメチル、メトキシエトキシメチルおよび1-エトキシエチルを含む。
【0021】
ハロアルキルまたはハロアルキル基との表現は、1,2,3またはそれ以上の水素原子が互いに独立にハロゲン原子で置き換えられたアルキル基をいう。用語「(C1-C3) ハロアルキル」は、たとえば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、ヨードメチル、(1- または 2-)ハロエチル (たとえば (1- または 2-)フルオロエチルまたは(1- または 2-)クロロエチル), (2- または 3-)ハロプロピル (たとえば(2- または 3-) フルオロプロピルまたは(2- または 3-) クロロプロピル)を含む。
【0022】
ヒドロキシアルキルまたはヒドロキシアルキル基との表現は、1,2,3またはそれ以上の水素原子が互いに独立にヒドロキシ(OH)基で置き換えられたアルキル基をいう。用語「(C1-C4)ヒドロキシアルキル」は、たとえばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキプロピルおよびシヒドロキシブチルを含む。
【0023】
本明細書で使用するとき、ヘテロアルキルまたはヘテロアルキル基との表現は、上述した直鎖または分枝のアルキル基で、その1以上、好ましくは1, 2, 3 または4個の炭素原子が互いに独立に酸素、窒素、セレン、シリコンまたは硫黄原子、好ましくは酸素、硫黄または窒素原子、C(O), OC(O), C(O)O, C(O)NH, NH, SO, SO2 で置き換えられているか、あるいは CH=CHで置き換えられたものをいい、ここでヘテロアルキル基は置換されていてもよい。たとえば、「(C1-C4)ヘテロアルキル基」は1から4個、たとえば、1, 2, 3 または4個の炭素原子と、酸素、窒素および硫黄(特に酸素および窒素)から選択される1, 2, 3 または4個、好ましくは1, 2 または 3個のヘテロ原子を含む。ヘテロアルキル基の例はアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アシル、アシルアルキル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルオキシアルキル、カルボキシアルキルアミド、アルコキシカルボニルオキシ、アルキルカルバモイル、アルキルアミド、アルキルカルバモイルアルキル、アルキルアミドアルキル、アルキルカルバモイルオキシアルキル、アルキルウレイドアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、またはアルキルチオ基を含む。アルキルチオまたはアルキルチオ基との表現は、1以上の隣接しないCH2基が硫黄で置き換えられたアルキル基をいい、ここでアルキルチオ基のアルキル部分は置換されていてもよい。ヘテロアルキル基の特定の例にはアシル、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、iso-プロピルオキシ、tert-ブチルオキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエチル、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、イソプロピルエチルアミノ、メチルアミノメチル、エチルアミノメチル、ジイソプロピルアミノエチル、ジメチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル、アセチル、プロピオニル、ブチリルオキシ、アセチルオキシ、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソブチリルアミノ-メチル、N-エチル-N-メチルカルバモイル、N-メチルカルバモイル、シアノ、ニトリル、イソニトリル、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネートおよびアルキルニトリルを含む。
【0024】
シクロアルキルまたはシクロアルキル基との表現は、1以上の環(好ましくは1または2)を含み、3から14の環炭素原子、好ましくは3から10(より好ましくは3, 4, 5, 6 または 7)の環炭素原子を含む飽和炭素環式環基をいい、シクロアルキル基が置換されていてもよく、また環系の全ての適切な位置を介して置換基として結合されてもよい。シクロアルキルの例には、単環式炭化水素環、二環式炭化水素環およびスピロ-炭化水素環を含む。二環式シクロアルキル基では、2つの環が少なくとも2つの炭素原子を共有するように結合されている。スピロ-炭化水素環では、2または3の環が1つの共通の炭素原子(スピロ原子)によって結合されている。もしシクロアルキルが置換されているときは、分子の個々の環炭素原子のモノまたはジ置換によって、互いに独立に起きて、シクロアルキル基全体として、示される置換基の選択肢からの1, 2, 3, または 4 置換基をもつことになり、炭素環原子の1, 2, 3, または 4水素原子が各場合で独立に、示される置換基リストから選択される置換基で置き換えられて、一、二、三または四置換されたシクロアルキル基となる。シクロアルキルの例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロ[2.2.0]ヘキシル、ビシクロ[3.2.0]ヘプチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[4.3.0]ノニル(オクタヒドロインデニル)、ビシクロ[4.4.0]デシル(デカヒドロナフチル), ビシクロ[2.2.1]ヘプチル(ノルボルニル), ビシクロ[4.1.0]ヘプチル(ノルカラニル), ビシクロ[3.1.1]ヘプチル(ピナニル), スピロ[2.5]オクチル、およびスピロ[3.3]ヘプチルを含む。もしシクロアルキル基が部分的に不飽和であるときは、該基は、たとえば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロブタジエニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、ビシクロ[2.2.1 ]ヘプタジエニル、およびスピロ[4,5]デセニルを含むシクロアルケニル基のような1、2またはそれ以上の二重結合を含む。
【0025】
ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルキル基との表現は、1以上の、好ましくは1, 2 または 3の環炭素原子が互いに独立に酸素、窒素または硫黄原子、好ましくは酸素または窒素で、あるいはNO, SO or SO2で置き換えられた、上で定義する飽和または部分的に不飽和のシクロアルキル基であり、該ヘテロシクロアルキルは置換されていてもよく、また環系のあらゆる適切な位置を介して置換基として結合されてもよく、少なくとも1つの炭素原子が2つの酸素原子の間に、2つの硫黄原子の間に、または酸素原子と硫黄原子の間に存在しなければならず、また環は全体として化学的安定性をもたねばならない。ヘテロシクロアルキル基は3 から 10 (より好ましくは 3, 4, 5, 6 または 7, そして最も好ましくは 5, 6 または 7)の環原子を含む、好ましくは1または2環をもつ。ヘテロシクロアルキルの例には、アジリジニル、オキシラニル、チイラニル、オキサジリジニル、ジオキシラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ジアゼチジニル、ジオキセタニル、ジチエタニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、チオラニル、アゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、ジオキソラニル、ジチオラニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、トリオキサニル、アゼパニル、オキセパニル、チエパニル、ホモピペラジニル、ウロトロピニル、オキサゾリジノニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピロリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピリジル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロフリル、ジヒドロピラニルを含み、置換ヘテロシクロアルキルの例には、ラクタム、ラクトンおよび環状イミド環系を含む。
【0026】
アリール、Arまたはアリール基との表現は、6 から14 の環炭素原子(C6-C14)、好ましくは6 から10 (C6-C10)、より好ましくは 6 の環炭素原子を含む1以上の芳香環を含有する芳香族基をいい、アリールは置換されていてもよく、また環系のあらゆる適切な位置を介して置換基として結合されてもよい。アリールの例には、フェニル、ナフチル、ビフェニル、インダニル、インデニル、アントラセニル、フェナントレニル、テトラヒドロナフチルおよびフルオレニルを含む。
【0027】
ヘテロアリールまたはヘテロアリール基との表現は、5 から14 、好ましくは5 から10(より好ましくは5または6)の環原子を含み、1以上(好ましくは1, 2, 3 または 4)の酸素、窒素、リンまたは硫黄の環原子(好ましくはO, S または N)を含む1以上の芳香環を含有する芳香族基をいい、ヘテロアリールは置換されていてもよく、また環系のあらゆる適切な位置を介して置換基として結合されてもよい。非置換ヘテロアリール基の例には、2-ピリジル、2-イミダゾリル、3-フェニルピロリル、チアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、テトラゾリル、イソキサゾリル、インダゾリル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ピリダジニル、キノリニル、プリニル、カルバゾリル、アクリジニル、ピリミジル、2,3´-ビフリル、3-ピラゾリルおよびイソキノリニルを含む。
【0028】
複素環との表現は、上述したヘテロシクロアルキルとヘテロアリール環系を含む環系を示し、たとえば、部分的不飽和な複素環は部分的不飽和なヘテロシクロアルキルと同義語であり、芳香族複素環はヘテロアリールと同義語である。複素環は置換されていてもよく、また環系のあらゆる適切な位置を介して置換基として結合されてもよい。部分的不飽和または芳香族複素環の例には、オキセテニル、チエテニル、アゼチニル、2,3-ジヒドロフラニル、2,5-ジヒドロフラニル、2,5-ジヒドロチオフェニル、2,5-ジヒドロ-1H-ピロリル、フラニル、チオフェニル、ピロリル、ベンゾ[b]フラニル、ベンゾ[b]チオフェニル、インドリル、ベンゾ[c]ピロリル、ベンゾ[a]ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、テトラゾリル、ジヒドロピリジニル、オキサジニル、ピリジニル、ジヒドロピラニル、アゼピニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロチオピラニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、プリニルおよびプテリジニルを含む。
【0029】
本明細書で使用する一般的用語の環は、特記しない限り、上で定義する環基、たとえば、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基および複素環を含む。
【0030】
本明細書で使用するハロゲンまたはハロゲン原子との表現は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
本明細書で使用するヘテロ原子との表現は、好ましくは酸素、窒素または硫黄原子、より好ましくは窒素または酸素原子を示す。
本明細書で使用する用語「8-ベンジルオキシ-キノリン」は、本明細書で提供する一般式(I)の化合物、およびその塩、そして好ましくは医薬的に許容可能な塩をいう。このような化合物がさらに上述したように置換されうることは明らかである。
【0031】
本発明は好ましくは1以上の以下のものに関する:
[2] Aが以下のものを表す、上記[1]に記載の化合物または塩:
【化3】
[3] Aが以下のものを表す、[1]または[2]に記載の化合物または塩:
【化4】
[4] Aが以下のものを表す、[1]から[3]のいずれかに記載の化合物または塩:
【化5】
[5] R
1 が(C
1-C
2)アルキルまたは (C
2-C
4)アルコキシアルキル基を表し、そのアルキル基またはアルコキシアルキル基は重水素原子、ハロゲン原子およびOHから選択される1以上の同一または異なる基で置換されていてもよい、[1]から[4]のいずれかに記載の化合物または塩。
【0032】
[6] R1 が、重水素原子、ハロゲン原子およびOHから選択される1以上の同一または異なる基で置換されていてもよいメチル、エチル、メトキシメチル、メトキシエチル、またはエトキシメチル基である、[1]から[5]のいずれかに記載の化合物または塩;
[7] R1 が CH3, C2H5, CD3, C2D5, CH2OH, CH2F, CHF2, CF3, CH2CH2OH, CH2CH2F, CH2CF3, CH2OCH3, CH2OCHF2, または CH2OCF3を表す、[1]から[6]のいずれかに記載の化合物または塩;
[8] R1 が CH3, C2H5, CD3, またはCH2OHを表す、[1]から[7]のいずれかに記載の化合物または塩;
[9] R3 が水素原子またはメチル基を表す、[1]から[8]のいずれかに記載の化合物または塩;
[10] R2 が水素原子を表す、[1]から[9]のいずれかに記載の化合物または塩。
【0033】
[11] R2 が重水素原子を表す、[1]から[9]のいずれかに記載の化合物または塩;
[12] E が CRE1RE2RE3であって、そしてRE1, RE2 およびRE3のそれぞれが[1]で定義したものである、[1]から[11]のいずれかに記載の化合物または塩;
[13] RE1 が水素原子、フッ素原子、メチルまたはエチルを表す、[1]から[12]のいずれかに記載の化合物または塩;
[14] RE2 が水素原子、フッ素原子、(C1-C6)アルキル基、好ましくは(C1-C3)アルキル基、ここで1 から 4 の水素原子が各場合で独立にフッ素原子、OH, =O, または NRC1RC2で置き換えられてよく; (C1-C6)アルコキシ基、好ましくは(C1-C3)アルコキシ基、ここで1 から 4 の水素原子が各場合で独立にフッ素原子、OH, =O, NRC1RC2またはシクロプロピルで置き換えられてよく; または(C2-C6)アルコキシアルキル基、好ましくは(C2-C5) または(C2-C4)アルコキシアルキル基、ここで1 から 5 の水素原子が各場合で独立にフッ素原子、OH, =O, NRC1RC2またはシクロプロピルで置き換えられてよく; そしてRC1および RC2 のそれぞれが [1]で定義したものである、を表す、[1]から[13]のいずれかに記載の化合物または塩;
[15] RE3 が水素原子、フッ素原子、OH、(C1-C6)アルキル基、好ましくは(C1-C3)アルキル基、ここで1 から 5 の水素原子が各場合で独立にフッ素原子、OH, =O, または NRC1RC2で置き換えられてよく; (C1-C6)アルコキシ基、ここで1 から 5 の水素原子が各場合で独立にフッ素原子、OH, =O, NRC1RC2またはシクロプロピルで置き換えられてよく; (C2-C6)アルコキシアルキル基、好ましくは(C2-C5) または(C2-C4)アルコキシアルキル基、ここで1 から 5 の水素原子が各場合で独立にフッ素原子、OH, =O, NRC1RC2またはシクロプロピルで置き換えられてよく; そしてRC1および RC2 のそれぞれが [1]で定義したものである、を表す、[1]から[14]のいずれかに記載の化合物または塩。
【0034】
[16] RE1 および RE2 が一緒になって=O または Cycを形成し、ここでCyc はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロ-2H-ピラニル、1,3-ジオキソラニル、モルホリニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、(イミダゾリジン-2-オン)イルおよび(オキサゾリジン-2-オン)イルから選択される、そして非置換であるか、あるいは各場合で独立にハロゲン原子、OH、G、NRC1RC2 および/または=Oで一、二、または三置換されていてもよい、[12]に記載の化合物または塩;
[17] Cycが非置換であるか、あるいは各場合で独立にフッ素原子、OH、(C1-C3)アルキル、(C1-C3)アルコキシ、NRC1RC2 および/または=Oで一、二、または三置換されていてもよく、そしてRC1 および RC2 のそれぞれが [1]で定義したものである、[16]に記載の化合物または塩;
[18] Cycがオキセタニル、テトラヒドロフラニル、1,3-ジオキソラニル、モルホリニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、(イミダゾリジン-2-オン)イルまたは(オキサゾリジン-2-オン)イルであり、そして非置換であるか、あるいは各場合で独立にフッ素原子、OH、(C1-C3)アルキルおよび/または(C1-C3)アルコキシで一、二
、または三置換されていてもよい、[16]または[17]に記載の化合物または塩;
[19] RE3 が水素原子、フッ素原子、OHまたは(C1-C3)アルキル基を表す、[16]から[18]のいずれかに記載の化合物または塩;
[20] E がHceを表す、[1]から[11]のいずれかに記載の化合物または塩。
【0035】
[21] Hceが、3 から 5 の炭素原子と1 から 3 の窒素原子;3 から 5 の炭素原子、1または2の窒素原子と1の酸素原子;または3 から 5 の炭素原子、1または2の窒素原子および1の硫黄原子をもつ単環式の部分的不飽和または芳香族複素環を表し、その複素環は非置換であるか、あるいは各場合で独立にハロゲン原子、OH、(C
1-C
3)アルキル、(C
1-C
3)ハロアルキル、(C
1-C
3)アルコキシ、(C
1-C
3)ハロアルコキシおよび/または=Oで一、二、または三置換されていてもよい、[20]に記載の化合物または塩;
[22] Eが以下のものから選択される、[20]または[21]に記載の化合物または塩;
【化6】
[23] Eが以下の基を表す、[1]から[15] および[20]から[22]のいずれかに記載の化合物または塩;
【化7】
[24] 化合物が以下の群から選択される、[1]から[23]のいずれかに記載の化合物または塩。
【化8】
【化9】
【0036】
一般式(I)による化合物の好ましい態様である[2]から[23]の適切な組合せを含む化合物またはその塩、たとえば本明細書で開示する[1], [3], [6] および [9]の組合せを含む化合物またはその塩が特に好ましい。換言すれば、本発明は上述の[1]から[23]の全ての可能な組合せを特に包含し、これらは安定な化合物をもたらす。
【0037】
本明細書で提供する[1]から[24]のいずれかに記載の8-ベンジルオキシ-キノリンBK B2受容体アンタゴニストはヒトBK B2受容体に高い活性を示し、たとえば下記のアッセイにおいて、BK誘導のBK B2受容体活性の阻害についての阻害定数IC50 (50%阻害濃度)は、1 マイクロモル(μM) またはそれ以下、たとえば251 ナノモル(nM) から1 μM、 好ましくは250 nM またはそれ以下のIC50、たとえば51 nM から 250 nM、より好ましくは50 nM またはそれ以下のIC50、さらに好ましくは約10 nM またはそれ以下の、あるいは 1 nM またはそれ以下のIC50を示す。[1]から[24]のいずれかに記載の8-ベンジルオキシ-キノリンBK B2受容体アンタゴニストはヒトBK B2受容体に高い活性を示すことができるが、ヒト以外の種、たとえばラット、マウス、スナネズミ、モルモット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタまたはカニクイザルのBK B2受容体にも活性を示す。
【0038】
本発明の化合物の活性、特に生物活性は当業者に公知の適切なアッセイ、たとえばin vitro またはin vivo アッセイを用いて評価できる。たとえば、B2受容体活性に対する本発明の化合物の阻害効果(IC50 値で表す)は、実施例12に示すような細胞内カルシウム移動アッセイによって決定され、よってこれは標準のin vitro のB2受容体仲介アッセイの一態様である。[1]から[24]のいずれかに記載の特に好ましい化合物または塩は、標準のin vitro B2受容体アッセイ、たとえば実施例12のアッセイで50 nM またはそれ以下のIC50を示す。
【0039】
一般式(I)の化合物、その薬理学的に許容できる塩、溶媒和物または水和物、およびこれを含む製剤または医薬組成物の治療上の用途は本発明の範囲内にある。本発明は医薬の調製または製造における活性成分として、一般式(I)の化合物を使用することにも関する。
【0040】
本発明による医薬組成物は少なくとも1つの式(I)の化合物またはその薬理学的に許容できる塩、好ましくは[1]から[24]のいずれかに記載の化合物またはその塩、および必要に応じて少なくとも1つの、すなわち1以上の担体物質、賦形剤および/またはアジュバントを含む。特に、本発明の医薬組成物は1以上の本発明の化合物、たとえば[1]から[24]のいずれかに記載の化合物、および必要に応じて少なくとも1つの担体物質、賦形剤および/またはアジュバントを含む。医薬組成物は追加的に、たとえば1以上の水、緩衝液(たとえば中性緩衝食塩水またはリン酸緩衝食塩水)、エタノール、鉱物油、植物油、ジメチルスルホキシド、炭水化物(たとえばグルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、アジュバント、ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸、抗酸化剤、EDTAなどのキレート剤またはグルタチオンおよび/または保存剤を含んでもよい。
【0041】
さらに、本明細書で提供する医薬組成物には1以上の別の活性成分が含まれてもよい(ただし必ずしも必要としない)。たとえば本発明の1以上の化合物を、少なくとも1つの追加の活性医薬成分を含む組合せ製剤中に有利に含めることができる。追加の、または補充的活性薬剤または活性医薬成分は、好ましくは、BK B2受容体調節に応答する1以上の症状を予防または治療するうえで有用性をもつ活性薬剤または医薬成分であり、該症状は皮膚障害;眼の疾患;耳の疾患;口、喉および呼吸疾患;胃腸疾患;肝臓、胆嚢および膵臓疾患;尿路および腎臓疾患;男性生殖器官および女性生殖器官の疾患;ホルモン系疾患;代謝疾患;心臓血管疾患;血液疾患;リンパ系疾患;中枢神経系の障害;脳の障害;筋骨格系疾患;アレルギー障害;痛み;感染症;炎症性疾患;ケガ;免疫障害;癌;遺伝性疾患;および浮腫を含む群から選択される症状を含む。たとえば、少なくとも1つの本発明の化合物または医薬的に許容できる塩を、抗生物質、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗ヒスタミン剤、非ステロイド性抗炎症薬、疾患修飾性抗リウマチ薬、細胞増殖抑制薬、平滑筋活性調整活性を有する医薬、抗体、または前記の混合物を含む組合せ製剤中に、追加の、または補充的活性薬剤または活性医薬成分として有利に含ませることができる。
【0042】
本発明の医薬組成物は、たとえば局所(経皮または眼内)、経口、口腔(buccal)、鼻、膣、直腸または非経口投与を含むあらゆる適切な投与方法用に製剤することができる。本明細書で使用する用語、非経口は皮下、皮内、血管内(たとえば静脈内)、筋肉内、脊椎、頭蓋内、クモ膜下腔内、眼内、周眼、眼窩内、滑膜内および腹腔内注射や、同様のあらゆる注射や輸液法を含む。いくつかの態様では、経口用に適した形の組成物が好ましい。このような形は、たとえば錠剤、トローチ、薬用ドロップ、水性または油性の懸濁液、分散可能な粉末または顆粒、エマルジョン、硬カプセルまたは軟カプセル、またはシロップあるいはエリキシルを含む。さらに別の態様では、本明細書で提供する組成物を凍結乾燥品として製剤できる。局所投与のための製剤は一定の症状(たとえば火傷やかゆみなどの皮膚症状の治療において)に好ましい。簡単にまとめると、医薬組成物は、たとえばエアロゾル、クリーム、ジェル、ピル、カプセル、シロップ、溶液、経皮パッチまたは医薬送達装置として処方できる。
【0043】
BKまたはその類似物によって仲介される疾患の予防および/または治療のために、本発明の生物学的に活性な化合物の投与量は広範囲に変更可能で、個々の必要性により調節される。本発明の活性化合物は一般に治療的有効量で投与される。好ましい投与量は、1日体重1kgあたり約0.1 mg から約140 mg (1日患者あたり約 0.5 mg から約7 g)の範囲である。1日の投与量は1回の投与量として、あるいは複数回の投与量として投与してよい。担体物質と組合せて単一の投与形を製造する活性成分の量は、治療する対象および特定の投与形式によって変化する。投与単位形は一般に活性成分を約1mgから約500mg含む。
【0044】
しかしながら、あらゆる特定の患者のための特定の投与レベルは用いる特定化合物の活性、年齢、体重、一般的健康(general health)、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、医薬の組合せ(すなわちその患者の治療に用いる他の薬)および治療する特定疾患の重篤度を含む多くの要因によることが理解されるであろう。
【0045】
本明細書で提供する8-ベンジルオキシ-キノリンはBK B2受容体のアンタゴニストとして、in vitro とin vivoの両方で多くの応用にも使用できる。本発明のBK B2受容体アンタゴニストは、BK B2受容体リガンド(たとえばBK)のBK B2受容体への結合をin vitro またはin vivo で阻害するのに用いることができる。この使用は、たとえばBKのBK B2受容体への結合をin vitro またはin vivo で阻害する方法を含み、ここで該方法はBK B2受容体を少なくとも1つの本発明の化合物若しくは塩、たとえば[1]から[39]のいずれかの化合物と、BKまたは他のいかなる物質とBK B2受容体との結合を検出可能に阻害するのに十分な条件と量で接触させることを含む。本明細書で提供するBK B2受容体アンタゴニストは好ましくは患者(たとえばヒト)に経口または局所投与され、患者の少なくとも1つの体液または組織内に存在し、BK B2受容体活性を調節する。
【0046】
本発明の[1]から[24]のいずれかに記載のBK B2受容体アンタゴニスト、医薬組成物、または組合せ製剤は医薬として有用である。特に、本発明のBK B2受容体アンタゴニスト、医薬組成物、または組合せ製剤はBK B2受容体の調節に応答性である症状または疾患の治療および/または予防および/または防止に有用である。BK B2受容体の調節に応答性である症状または疾患は、皮膚障害;眼の疾患;耳の疾患;口、喉および呼吸疾患;胃腸疾患;肝臓、胆嚢および膵臓疾患;尿路および腎臓疾患;男性生殖器官および女性生殖器官の疾患;ホルモン系疾患;代謝疾患;心臓血管疾患;血液疾患;リンパ系疾患;中枢神経系の障害;脳の障害;筋骨格系疾患;アレルギー障害;痛み;感染症;炎症性疾患;ケガ;免疫疾患;癌;遺伝性疾患;浮腫または毛細血管漏出症候群である。以下において上述したBK B2受容体の調節に応答性である疾患または症状をさらに特定する。
【0047】
皮膚障害:本出願では、用語「皮膚障害」は、肌の老化、褥瘡を含む皮膚皮疹、褥瘡性潰瘍、炎症性皮膚、敏感性皮膚および感覚異常皮膚、紅斑、発疹、皮膚浮腫、乾癬、湿疹、苔癬、吹き出物、膿瘍、痰、丹毒、毛包炎、およびとびひを含む、細菌、ウイルス、真菌および寄生虫が引き起こす皮膚感染、シラミ、疥癬、および単純ヘルペス、ニキビ、発疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎(Scholzen, T.E.; Luger, T.A. Exp Dermatol. 2004; 13 Suppl 4:22-6)を含む皮膚炎、神経皮膚炎、放射線障害、日焼け、掻痒、かゆみ、蕁麻疹(EP0622361; Frigas, E.; Park, M. Immunol. Allergy Clin. North Am. 2006, 26, 739-51; Luquin, E.; Kaplan, A. P.; Ferrer, M. Clin. Exp. Allergy2005, 35, 456-60; Kaplan, A. P.; Greaves, M. W. J. Am. Acad. Dermatol. 2005, 53, 373-88; quiz 389-92)、乾癬、真菌症、組織潰瘍、表皮溶解、表皮水疱症、異常な創傷治癒を含む創傷、火傷(Nwariaku, F. E.; Sikes, P. J.; Lightfoot, E.; Mileski, W. J.; Baxter, C. Burns 1996, 22, 324-7; Neely, A. N.; Imwalle, A. R.; Holder, I. A. Burns 1996, 22, 520-3)、凍傷、毒によって引き起こされる皮膚の炎症および浮腫、脱毛症、毛髪鱗、うおのめ、いぼおよびパナリスのような障害を含むが、これに限定されない。
【0048】
眼の疾患:本出願では、用語「眼の疾患」は、強膜炎、結膜炎、結膜浮腫、虹彩炎、虹彩毛様体炎、ぶどう膜炎、脈絡網膜炎のような炎症性障害、網脈絡膜循環障害などの障害、細菌性、眼感染症、非特異的結膜炎および眼刺激、未熟児網膜症、増殖性硝子体網膜症、黄斑変性(加齢黄斑変性を含み、ウエット型およびドライ型の両方を含む)、角膜移植拒絶を含む角膜疾患、角膜損傷、角膜瘢痕、角膜潰瘍、角膜混濁、円錐角膜、緑内障(好ましくは狭隅角緑内障)、近視、高眼圧症、眼血管損傷、血管新生、眼の線維症(たとえば前嚢下線維症、後嚢下混濁、後嚢混濁、レーザー手術後の角膜ヘイズ、緑内障手術後の結膜下瘢痕)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、麦粒腫を含む細菌性眼感染症および睫毛脱落症などを含むが、これに限定されない。
【0049】
耳の疾患:本出願では、用語「耳の疾患」は、メニエール病、中耳の炎症、外耳道の炎症および急性難聴などを含むが、これに限定されない。
【0050】
口、喉および呼吸疾患:本出願では、用語「口、喉および呼吸疾患」は、アフタや口内炎を含む粘膜や歯肉の炎症、歯周炎、喉頭蓋炎、咽頭炎、喉頭気管炎、扁桃腺炎、風邪、狭心症、季節性アレルギー性鼻炎または通年性アレルギー性鼻炎を含む鼻炎、鼻漏、あらゆるタイプの副鼻腔炎、あるいは化膿性副鼻腔炎または非化膿性副鼻腔炎、急性および慢性副鼻腔炎および篩骨洞炎、前頭洞炎、上顎洞炎あるいは蝶形骨洞炎からなる群から選択される副鼻腔炎、去痰、たとえばアルミニウム肺症、炭肺、石綿症、石粉症、鉄沈着症、珪肺症、タバコ症、および特に綿肺症を含む、あらゆるタイプの起源のじん肺、気管支炎、咳、気管炎、充血、肺炎、好酸球性肺浸潤、慢性好酸球性肺炎、突発性肺線維症およびその他の線維症肺疾患、治療関連線維症肺疾患、たとえば放射線、メトトレキサート、化学療法、アミオダロンまたはニトロフラントインに関連するもの、サルコイドーシス、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、気管支収縮、あらゆるタイプの起因性または病因性の喘息(Akbary, A. M.; Wirth, K. J.; Scholkens, B. A. Immunopharmacology1996, 33, 238-42; WO 00/75107 A2)、またはアトピー性喘息、非アトピー性喘息、アレルギー性および非アレルギー性喘息、環境因子で引き起こされる外因性喘息、病態生理学的障害で引き起こされる内因性喘息、気管支喘息、IgE-仲介性喘息、本質的喘息、原因不明または理由が明らかでない本質的喘息、真性喘息、気腫性喘息、運動誘発性喘息、職業性喘息、細菌、真菌、原生動物あるいはウイルス感染で引き起こされる感染性喘息、初期喘息、喘鳴乳児症候群、気管支過敏症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、不可逆的で進行性の慢性気道閉塞で特徴つけられるCOPD、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)および他の医薬治療の結果としての気道過敏症の悪化、呼吸困難、高酸素性肺胞損傷、肺気腫、胸膜炎、結核、高地への暴露、すなわち高山病、好ましくは高地肺水腫(HAPE)、抵抗性の咳、気管支過敏症などを含むが、これに限定されない。
【0051】
胃腸疾患:本出願では、用語「胃腸疾患」は、食道炎、胃炎、過敏な胃、胃および十二指腸潰瘍、イレウス、大腸過敏、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、腸炎、高血圧性胃症および腸症、大腸炎、腹膜炎、虫垂炎、直腸炎、門脈高血圧症で引き起こされる胃腸出血、側副血行または充血、胃切除後ダンピング症候群、消化器不快感、下痢、痔核、メジナ虫症、腹部疝痛および胃腸系部の疝痛を含むが、これに限定されない。
【0052】
肝臓、胆嚢および膵臓疾患(Cugno, M.; Salerno, F.; Nussberger, J.; Bottasso, B.; Lorenzano, E.; Agostoni, A. Clin. Sci. (Lond) 2001, 101, 651-7; WO 01/56995 A1; EP0797997 B1; Wirth, K. J.; Bickel, M.; Hropot, M.; Gunzler, V.; Heitsch, H.; Ruppert, D.; Scholkens, B. A. Eur. J. Pharmacol. 1997, 337, 45-53): 本出願では、用語「肝臓および胆嚢疾患」は、肝炎、肝硬変、肝線維症(たとえばウイルス(HBV/HCV)感染、毒(アルコールによるもの)、脂肪肝、胆汁鬱滞、低酸素症)、門脈高血圧症、肝腎症候群、肝性浮腫、胆管炎、胆嚢炎、急性および慢性の膵炎、および胆汁疝痛を含むが、これに限定されない。
【0053】
尿路および腎臓疾患:本出願では、用語「尿路および腎臓疾患」は、急性および慢性の膀胱炎、間質性膀胱炎などの尿路感染症(Campbell, D. J. Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. 2001, 28, 1060-5; Meini, S.; Patacchini, R.; Giuliani, S.; Lazzeri, M.; Turini, D.; Maggi, C. A.; Lecci, A. Eur. J. Pharmacol. 2000, 388, 177-82; Zuraw, B. L.; Sugimoto, S.; Parsons, C. L.; Hugli, T.; Lotz, M.; Koziol, J. J. Urol. 1994, 152, 874-8; Rosamilia, A.; Clements, J. A.; Dwyer, P. L.; Kende, M.; Campbell, D. J. J. Urol. 1999, 162, 129-34)、過敏膀胱、過活動膀胱(WO 2007003411 A2)、ストレス性、衝動性および反射性失禁を含むが、これに限定されない失禁、良性前立腺肥大(Srinivasan, D.; Kosaka, A.H.; Daniels, D.V.; Ford, A.P.; Bhattacharya, A. Eur J Pharmacol. 2004, 504(3):155-67)、慢性腎臓病、糸球体腎炎を含む炎症性腎臓疾患、腎臓の糸球体疾患、間質性腎炎、腎盂腎炎、利尿、タンパク尿、ナトリウム利尿、カルシウム利尿、水バランスの障害、電解質バランスの障害、酸-塩基バランスの障害および腎疝痛、腎臓線維症、慢性腎臓同種移植機能不全、造影剤腎症を含むが、これに限定されない。
【0054】
男性生殖器官および女性生殖器官の疾患:本出願では、用語「男性生殖器官および女性生殖器官の疾患」は、精子の移動度の変更、男性不妊、精巣炎、前立腺炎、前立腺肥大、乳房炎、骨盤内炎症性疾患、膣感染症および痛み、付属器炎、膣炎、軟性潰瘍、梅毒、淋病および卵巣過剰刺激症候群(Ujioka, T.; Matsuura, K.; Tanaka, N.; Okamura, H. Hum Reprod. 1998 Nov;13(11):3009-15.)を含むが、これに限定されない。
【0055】
ホルモン系疾患:本出願では、用語「ホルモン系疾患」は、月経障害および痛み、更年期障害、嘔吐、早期子宮収縮、早産、子宮内膜症、子宮内膜炎、筋腫、子癇前症を含むが、これに限定されない。
【0056】
代謝疾患:本出願では、用語「代謝疾患」は、非インシュリン依存性糖尿病を含む糖尿病、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫(Speicher, M. A.; Danis, R. P.; Criswell, M.; Pratt, L. Expert Opin. Emerg. Drugs 2003, 8, 239-50; Gao, B. B.; Clermont, A.; Rook, S.; Fonda, S. J.; Srinivasan, V. J.; Wojtkowski, M.; Fujimoto, J. G.; Avery, R. L.; Arrigg, P. G.; Bursell, S. E.; Aiello, L. P.; Feener, E. P. Nat. Med. 2007, 13, 181-8; Tranos, P. G.; Wickremasinghe, S. S.; Stangos, N. T.; Topouzis, F.; Tsinopoulos, I.; Pavesio, C. E. Surv. Ophthalmol 2004, 49, 470-90)、糖尿病性腎症および糖尿病性神経障害、インシュリン抵抗性および糖尿病性潰瘍、痛風などのプロテオおよびプリン代謝疾患、脂質代謝障害、低血糖を含むが、これに限定されない。
【0057】
心臓血管疾患:本出願では、用語「心臓血管疾患」は、血管透過性、血管拡張、末梢循環障害、大動脈瘤、腹部大動脈瘤、脳大動脈瘤を含む動脈疾患、高血圧および低血圧関連性敗血症、経皮的冠動脈形成術後の再狭窄、アテローム性動脈硬化のプラーク破綻を含むアテローム性動脈硬化(Fernando, A.N.; Fernando, L.P.; Fukuda, Y.; Kaplan, A.P. Am J Physiol Heart Circ Physiol. 2005 Jul;289(1):H251-7)、血管腫、血管繊維種、血栓症のような静脈障害、静脈瘤、静脈炎、血栓性静脈炎、静脈血栓症、心臓病、うっ血性心不全、冠状動脈心臓病、カルチノイド症候群、狭心症、心不整脈、心内膜炎を含む炎症性心疾患、心膜炎および収縮性心膜炎、心筋炎、心筋梗塞、心筋梗塞後症候群、左心室拡張、虚血後再灌流障害、感染性ショック、アレルギー性ショック、心的外傷後ショックおよび血行力学的ショックを含むショックや崩壊、羊水塞栓症(Robillard, J.; Gauvin, F.; Molinaro, G.; Leduc, L.; Adam, A.; Rivard, G.E. Am J Obstet Gynecol. 2005 Oct;193(4):1508-12.)、手術中の心肺バイパスで引き起こされる全身性炎症反応症候群(SIRS)を含むSIRS、心肺バイパス手術中の敗血症ならびに内的および外的合併症(ヘパリンの硫酸プロタミン逆転に続く有害な血液動力学的効果を含むが、これに限定されない)(Pretorius, M.; Scholl, F.G.; McFarlane, J.A.; Murphey, L.J.; Brown, N.J..Clin Pharmacol Ther. 2005 Nov;78(5):477-85)を含むが、これに限定されない。
【0058】
血液疾患:本出願では、用語「血液疾患」は、凝固、播種性血管内凝固症候群、出血、出血性素質、高コレステロール血症および高脂血症、血液量減少性ショック、発作性夜間ヘモグロビン尿症を含むが、これに限定されない。
【0059】
リンパ系疾患:本出願では、用語「リンパ系疾患」は、脾腫、リンパ管炎、リンパ節炎および過形成アデノイドを含むが、これに限定されない。
【0060】
中枢神経系の障害:本出願では、用語「中枢神経系の障害」は、脳炎、髄膜炎、脳脊髄炎、髄膜脳炎を含む中枢神経系の炎症性疾患、水頭症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄外傷、脊髄浮腫、神経系の脱髄性疾患、多発性硬化症、加齢を含む急性および慢性神経変性疾患、アルツハイマー病およびパーキンソン病、神経炎、および末梢神経障害、鬱病、拒食症、不安および統合失調症、睡眠障害を含むが、これに限定されない。
【0061】
脳の障害: 本出願では、用語「脳の障害」は、向知性や認識の促進、脳アミロイド血管症、脳卒中、頭部および脳外傷、外傷性脳損傷(Marmarou, A.; Guy, M.; Murphey, L.; Roy, F.; Layani, L.; Combal, J.P.; Marquer, C.; American Brain Injury Consortium J Neurotrauma 2005 Dec;22(12):1444-55)、脳腫瘍、脳熱損傷、脳虚血、脳出血、外傷後および虚血後の脳浮腫、一般的脳浮腫、急性登山病、好ましくは高度脳浮腫(HACE)、細胞障害性脳浮腫、血管原性脳浮腫、手術後脳浮腫、代謝性疾患関連性脳浮腫、血液-脳関門または血液-脳腫瘍関門の透過性の増加を含むが、これに限定されない。
【0062】
筋骨格系疾患:本出願では、用語「筋骨格系疾患」は、炎症性筋骨格系障害、関節症、骨関節症、変形性関節症、関節外傷後または半月板または膝蓋骨損傷または靭帯損傷後の比較的長期の関節の固定後の軟骨症、急性関節炎、急性痛風性関節炎、慢性炎症性関節炎、変性関節炎、感染性関節炎、ライム病関節炎、増殖性関節炎、椎骨関節炎、敗血症性関節炎、乾癬性関節炎、慢性多発性関節炎を含むあらゆるタイプ、病因または病原性の関節炎、リウマチ、シェーグレン症候群、腰痛、脊椎炎、脊椎関節炎、強直性脊椎炎、骨髄炎、捻挫、腱骨膜炎、炎症性骨吸収、骨折など、骨粗鬆症、筋骨格痛および硬化、椎間板症候群を含むが、これに限定されない。
【0063】
アレルギー障害:本出願では、用語「アレルギー障害」は、一般的アレルギー反応、食物アレルギー、アナフィラキシーショック、アレルギー性接触過敏、アレルギー性皮膚反応、アレルギー性喘息、春季カタル、季節性または通年性のアレルギー性鼻炎(Summers, C.W.; Pumphrey, R.S.; Woods, C.N.; McDowell, G.; Pemberton, P.W.; Arkwright, P.D. J Allergy Clin Immunol. 2008, 121(3), 632-638)を含むが、これに限定されない。
【0064】
痛み:本出願では、用語「痛み」は、中枢および抹消仲介性の痛み、血管痛、内臓痛、炎症性の痛み、神経痛様疼痛、関連痛、侵害性疼痛、不応性の痛み、心身の痛み、ケガ、外傷または骨、筋肉、組織、軟組織、器官の手術などで引き起こされる急性の痛み、虫刺され後の痛み、脳卒中後疼痛症候群、手術後の疼痛、病態進行関連疼痛、神経障害性疼痛症状などで引き起こされる慢性疼痛(複合性局所疼痛症候群を含むが、これに限定されない(WO00/75107 A2; Yamaguchi-Sase, S.; Hayashi, I.; Okamoto, H.; Nara, Y.; Matsuzaki, S.; Hoka, S.; Majima, M. Inflamm. Res. 2003, 52, 164-9; Petersen, M.; Eckert, A. S.; Segond von Banchet, G.; Heppelmann, B.; Klusch, A.; Kniffki, K. D. Neuroscience 1998, 83, 949-59; Birklein, F.; Schmelz, M.; Schifter, S.; Weber, M. Neurology 2001, 57, 2179-84; Weber, M.; Birklein, F.; Neundorfer, B.; Schmelz, M. Pain2001, 91, 251-7)、カウザルギー、ズデック骨萎縮、反射性交換神経性ジストロフィー)、糖尿病性末梢神経障害、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、癌関連疼痛、リウマチ性関節炎関連疼痛、変形性関節症(Bond, A. P.; Lemon, M.; Dieppe, P. A.; Bhoola, K. D. Immunopharmacology 1997, 36, 209-16; Cassim, B.; Naidoo, S.; Ramsaroop, R.; Bhoola, K. D. Immunopharmacology 1997, 36, 121-5; Calixto, J. B.; Cabrini, D. A.; Ferreira, J.; Campos, M. M. Pain 2000, 87, 1-5; Kaneyama, K.; Segami, N.; Sato, J.; Fujimura, K.; Nagao, T.; Yoshimura, H. J. Oral. Maxillofac. Surg. 2007, 65, 242-7)、腱骨膜炎、痛風、月経および狭心症、繊維筋痛症、眼痛、背部痛、頭痛、群発頭痛、偏頭痛(Ebersberger, A.; Ringkamp, M.; Reeh, P.W.; Handwerker, H.O. J Neurophysiol. 1997 Jun;77(6):3122-33.)、急性炎症性または慢性炎症性と関連する炎症性疼痛を含むが、これに限定されない。炎症性疼痛は神経障害性疼痛、虚血性疼痛、関節炎で誘導される疼痛、急性または慢性炎症で誘導される筋肉痛、急性または慢性炎症で引き起こされる神経痛、感覚過敏を含むが、これに限定されない。また、化学療法で誘導される末梢神経痛、感覚過敏、オピオイドで誘導される感覚過敏および熱。さらに、本発明の化合物は、一般的および監視下麻酔中の鎮痛剤として有用である。
【0065】
感染症:本出願では、用語「感染症」は、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫、原生動物、プリオンまたはマイコバクテリア感染で仲介される疾患を含むが、これに限定されない。特に、本発明は連鎖球菌、大腸菌、サルモネラ菌、ブドウ球菌、クレブシエラ、モラクセラ、ヘモフィラスおよびエルシニアで引き起こされる細菌感染の治療に有用である。本発明の範囲内に意図する細菌感染の例は、ペスト、敗血症、発疹チフス、食中毒、破傷風、猩紅熱、百日咳、ジフテリアを含むが、これに限定されない。本発明の範囲内に意図するウイルス感染の例は、水疱瘡、および帯状疱疹、AIDS、インフルエンザ、天然痘、および麻疹、風疹、おたふく風邪、ポリオ(acute anterior poliomyelitis)などの小児疾患を含むが、これに限定されない。本発明はマラリアを誘導するマンソン住血吸虫、コナヒョウヒダニおよびプラスモディウムで引き起こされる原生動物および寄生虫感染の治療に有用である。本発明の範囲内に意図するプリオン感染の例は、ウシ海綿状脳症(BSE)、クロイツフェルト・ヤコブ病およびクールー、デング熱、出血熱などの疾患を含むが、これに限定されない。
【0066】
炎症性疾患:本出願では、用語「炎症性疾患」は、あらゆるタイプ、病因、病原性の他の疾患で引き起こされるか、あるいは本出願で特定する炎症性疾患で引き起こされる急性期反応、局所炎症および全身炎症のような疾患を含むが、これに限定されない。
【0067】
ケガ:本出願では、用語「ケガ」は、多発外傷、頭部外傷、肺損傷、外部、内部および手術の傷を含むが、これに限定されない。
【0068】
免疫疾患:本出願では、用語「免疫障害」は、知覚過敏症、自己免疫疾患、移植における移植片拒絶、移植毒性、肉芽腫性炎症/組織リモデリング、重症筋無力症、免疫抑制、免疫複合体病、抗体の過剰生産および過小生産、血管炎、臓器移植後臓器機能障害、狼瘡などの疾患を含むが、これに限定されない。
【0069】
癌:本出願では、用語「癌」は、乳癌、肺癌(非小細胞肺癌および小細胞肺癌)、前立腺癌、口腔および咽頭(唇、舌、口、咽頭)の癌、食道、胃、小腸、大腸、結腸、直腸、胆嚢、胆道、膵臓、喉頭、肺、骨、骨肉腫、結合組織、カポジ症候群を含む皮膚癌、メラノーマおよび皮膚転移、扁平上皮癌、基底細胞癌、子宮頸、子宮内膜癌、卵巣腫瘍、精巣、睾丸、膀胱、尿管および尿道、腎臓、眼、脳および中枢神経系、偽脳腫瘍、肉腫、サルコイド、甲状腺およびその他の内分泌腺(カルチノイド腫瘍を含むが、これに限定されない)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、リンパ性白血病、顆粒球白血病、および単球白血病を含む血液悪性腫瘍、腫瘍浸潤、転移、腹水、腫瘍の成長および血管新生などの疾患を含むが、これに限定されない。
【0070】
遺伝性疾患:本出願では、用語「遺伝性疾患」は、遺伝性血管性浮腫(Davis, A. E. et al., 3rd Transfus. Apher. Sci. 2003, 29, 195-203; Zuraw, B. L. Immunol. Allergy Clin. North Am. 2006, 26, 691-708; Bas, M. et al. Allergy 2006, 61, 1490-2)および血管神経性浮腫、軟骨石灰症、ハンチントン病、嚢胞性線維症などの疾患を含むが、これに限定されない。
【0071】
浮腫:本出願では、用語「浮腫」は、一般的浮腫および炎症で引き起こされる浮腫、第XII因子欠損誘導性浮腫、その他の薬剤、たとえばアンジオテンシン変換酵素阻害剤誘導性血管浮腫を含むが、これに限定されない薬剤誘導性血管浮腫 (Mathelier-Fusade, P. Clin. Rev. Allergy Immunol. 2006, 30, 19-23; Finley, C. J. et al. Am. J. Emerg. Med. 1992, 10, 550-2; Bielory, L. et al. Allergy Proc. 1992, 13, 85-7)、感染、火傷、ケガ、外傷、凍傷、手術、ねじれ、骨折、高所への暴露(たとえば高所肺浮腫(HAPE)および高所脳浮腫(HACE))、遺伝性、自己免疫およびその他の疾患および障害、特に、限定するわけではないが、本出願で特定する障害、消化器のストレス誘導性浮腫(顕著な腫れ)を含むが、これに限定されない。
【0072】
毛細血管漏出症候群:本出願では、用語「毛細血管漏出症候群」は、敗血症における全身性毛細血管漏出症候(Marx, G. Eur J Anaesthesiol. 2003 20(6):429-42; Traber, D.L. Crit Care Med. 2000, 28(3):882-3)、火傷(Jonkam, C.C.; Enkhbaatar, P.; Nakano, Y.; Boehm, T.; Wang, J.; Nussberger, J. Esechie, A.; Traber, L.D.; Herndon, D.; Traber, D.L.. Shock. 2007 Dec;28(6):704-9)、アレルギー、薬剤/毒素誘導性の症状、臓器移植およびIL-2サイトカイン療法を含むが、これに限定されない。
【0073】
本発明の化合物は診断剤の製造用にも用いうる。そのような診断剤は本明細書に開示する疾患および症状の診断に特に有用であり、それは治療および予防目的用の本発明の化合物によって検討されうる。本発明の化合物は以下に開示する特定の方法論および診断でも有用である。
【0074】
方法論および診断:本発明の化合物は、同位体、蛍光、または発光マーカー、抗体または抗体断片、ナノボディ、アプタマー、ペプチドなどのその他の親和性ラベル、酵素または酵素基質で標識されうる。標識された本発明の化合物は、in vivo、ex vivo、in vitro およびin situ(たとえば組織切片をオートラジオグラフィで見るとき)でブラジキニン受容体の位置をマッピングするときや陽電子放出断層撮影(PET)造影、単光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)などで受容体を生体や他の物質中で特性つける放射性トレーサーとして有用である。
【0075】
本発明はブラジキニン受容体のシグナル伝達活性をin vitroおよびin vivoで変更する方法にも関する。たとえば、本発明の化合物およびその標識誘導体は、有力な医薬がBK B2受容体と結合する能力を決める際の標準および試薬として使用できる。
【0076】
本発明はまた、組織中、好ましくは組織切片中でBK B2受容体を特定または検出する方法を提供し、該方法は、BK B2受容体を含む組織試料を本発明の検出可能に標識された化合物と、化合物がBK B2受容体と結合でき、かつ結合化合物を検出できる条件下で接触させることを含む。そのような方法およびそれぞれの条件は当業者に公知であり、たとえば、実施例12に記載の結合アッセイを含む。
【0077】
さらに、本発明は上述したBK B2受容体調節に対応する症状または疾患に苦しむ患者を治療する方法を提供する。そのような治療を必要とする被験者の治療法は、本発明の化合物、たとえば[1] から [24]までのいずれかの化合物、その薬理学的に許容できる塩、本明細書で開示する医薬組成物、または本明細書で開示する組合せ製剤を投与することを含む。本明細書で使用するとき、用語「治療」は疾患調節治療および対症療法の両方を含み、いずれも予防的(すなわち発症の前に症状の重篤度を予防、遅延または減少するために)または治療的(すなわち発症の後に症状の重篤度を減少および/または症状の期間を減少するために)でありうる。もしBK B2受容体活性の調節が状態やその症状の軽減に至るときは、状態は「BK B2受容体調節に応答性」である。患者は霊長類(特にヒト)、ペット動物(イヌ、ネコ、ウマなど)および家畜(ウシ、ブタ、ヒツジなど)を含むが、これに限定されず、本明細書で記載した投与量で用いる。
【0078】
本発明の一般式(I)の化合物は当業界で公知のBK B2受容体アンタゴニストと比較して改善された性質、特に1以上の改善された特性、たとえば生物学的利用能、代謝安定性、改善された活性/選択制、低い毒性、および低い医薬同士の相互作用を含む改善された薬物動態および/または生理化学的性質を有する。したがって、本明細書で開示する化合物(またはその薬理学的に許容できる塩)、医薬組成物、または組合せ調剤は医薬として使用できる。 たとえば、本明細書で開示する化合物(またはその薬理学的に許容できる塩)、医薬組成物、または組合せ調剤は、BK B2受容体の調節に応答性の症状、たとえば本明細書で列挙する症状の治療および/または予防に使用できる。
【実施例0079】
本発明を以下の実施例でさらに説明するが、これにより本発明のさらなる特徴、態様および利点が得られる。しかしながら、本発明は実施例に限定するものと解釈してはならず、特許請求の範囲に定義する主題を包含するものである。
【0080】
以下の実施例で用いる略語は以下の通りである:
ACN はアセトニトリル
BuLi はn-ブチルリチウム
conc. は濃縮
DCM はジクロロメタン
DIPEA はエチル-ジイソプロピル-アミン
DMF はジメチルホルムアミド
EA は酢酸エチル
HPLC は高速液体クロマトグラフィー
MeOH はメタノール
NBS はN-ブロモスクシンイミド
NMP はN-メチルピロリドン
PyAOP は、 (7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート
PyBOP は、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート
RT は室温
THF はテトラヒドロフラン
TLC は薄層クロマトグラフィー
TFA はトリフルオロ酢酸
sat. は飽和。
【0081】
式(I)の化合物を製造するための特定の例を以下の実施例に示す。別途特記しない限り、全ての出発物質および試薬は標準の商用グレードであり、さらに精製することなく用いるか、あるいはこのような材料から通常の方法で容易に調製されるものである。有機合成に関する当業者は、出発物質や反応条件は本発明に包含される化合物の製造に用いる追加の工程を含めて変更されることを理解するであろう。
【0082】
実施例1:化合物番号1の製造
【化10】
(R)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシプロパンアミド
工程A 3-アミノ-5-フルオロ-2-メチル安息香酸メチルの合成
5-フルオロ-2-メチル-3-ニトロ安息香酸メチル[Gillmore, A. T. et al. Org. Process Res. Dev. 2012, 16, 1897-1904] (4.69 g, 22 mmol) をMeOH (100 mL)に溶解し、活性炭上のパラジウム- 10% Pd (200 mg)を添加した。溶液をフラッシュし、窒素で3回排気した後、水素でフラッシュした。反応混合物を水素1気圧下で激しく撹拌した。TLCで反応の完了をみた後(21時間)、溶液をシリカゲル上で濾過した。濾過ケーキをメタノール(5 x 20 mL)で洗浄した。濾液を減圧で濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィーで精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 184.0 [M+H
+]。
【0083】
工程B 3-クロロ-5-フルオロ-2-メチル安息香酸メチルの合成
半濃縮の水性HCl (400 mL)中の3-アミノ-5-フルオロ-2-メチル安息香酸メチル(4.00 g, 18.8 mmol)に0℃でNaNO2 (1.68 g, 24.4 mmol)を添加した。0℃で5分撹拌した後、反応混合物にCuCl (3.72 g, 37.5 mmol)を添加した。0℃で2時間撹拌した後、反応混合物をDCM (2 x 100 mL)で抽出した。有機層を合わせて濃縮水性NaHCO3-溶液 (1 x)で洗浄して、Na2SO4で乾燥、濾過し、真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(DMC/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。
【0084】
工程C 2-(ブロモメチル)-3-クロロ-5-フルオロ安息香酸メチルの合成
ベンゼン(7.0 mL)中の3-クロロ-5-フルオロ-2-メチル安息香酸メチル(200 mg, 0.99 mmol)の撹拌溶液に過酸化ベンゾイル(26 mg, 0.11 mmol)とN-ブロモスクシンイミド(210 mg, 1.18 mmol)を添加した。還流下に1.5時間撹拌した後、反応混合物をEA (20 mL)で希釈し、10%水性Na2S2O3 (1 x 5 mL)溶液で洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥し、濾過し、真空で濃縮して表題化合物を得た。
【0085】
工程D 3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)安息香酸メチルの合成
ACN (7.0 mL)中の2-(ブロモメチル)-3-クロロ-5-フルオロ安息香酸(300 mg, 1.07 mmol)および4-メトキシフェノール (172 mg, 1.39 mmol)の撹拌溶液にCs2CO3 (617 mg, 3.20 mmol)を添加した。室温で一晩撹拌した後、反応混合物を濾過し、真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 342.1 [M+NH4
+]。
【0086】
工程E 3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)安息香酸の合成
ジオキサン(100 mL)中の3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)安息香酸メチル(9.16g, 28 mmol)の撹拌溶液に、水(50 mL) 中のLiOH (2.37 g, 57 mmol)溶液を0℃で添加した。室温で2時間撹拌した後、反応混合物を真空で濃縮し、濃水性HCl を添加してpHを1-2に調整した。混合物をDCM (3 x 100 mL)で抽出し、有機層を合わせてNa2SO4上で乾燥、濾過し、真空で濃縮して表題化合物を得た。
【0087】
工程F 1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エタノンの合成
無水ジエチルエーテル(110 mL)中の3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)安息香酸(5.00 g, 16 mmol)の溶液に、ジエチルエーテル中のメチルリチウム(1.6 M, 30.2 mL)溶液を0℃で滴下して添加した。0℃で30分撹拌した後、飽和水性NH4Cl (15 mL)を0℃で添加して反応を止めた。反応混合物を水(15 mL)で希釈し、有機層を分離して水層をジエチルエーテル(3 x 50 mL)で抽出した。有機層を合わせてNa2SO4上で乾燥、濾過し、真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。
【0088】
工程G (R)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミドの合成
無水THF(10 mL)中の1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エタノン(1.24 g, 4.02 mmol)および(R)-(+)-2-メチル-2-プロパンスルフィンアミド(535.5 mg, 4.42 mmol)の溶液に、チタン(IV)エトキシド(2.53 mL, 12.05 mmol)をアルゴン雰囲気下に滴下して添加した。変換が完了するまで(TLC)混合物を還流下に加熱した。その後、混合物を0℃に冷却し、L-セレクトリド(1 M 溶液、12.05 mL, 12.05 mmol)を滴下して添加した。変換が完了するまで(TLC)混合物をこの温度で撹拌した。次いで、ガスの発生が止むまでメタノール(約10mL)を添加した。溶液を飽和水性NaCl 溶液(30 mL)に注いだ。次に、混合物をセライトパッド上で濾過し、DCMで注意深くリンスした。濾液を飽和水性NaCl 溶液で洗浄した。水層をDCMで抽出した。有機層を合わせてNa2SO4で乾燥、濾過し、蒸発により乾燥した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 458.2 [M+HCO2
-]。
【0089】
工程H (S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エタンアミンの合成
3 M メタノール性 HCl (3.53 mL, 10.6 mmol)中の(R)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(2.19 g, 5.29 mmol)の溶液を、変換が完了するまで(TLC)室温で撹拌した。溶液を真空で濃縮した。残渣をDCM (5 mL)に溶解して飽和水性NaHCO3 溶液(6 mL) と水(6 mL)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥、濾過し、真空で濃縮して表題化合物を得た。MS (m/z): 354.4 [M+HCO2
-]。
【0090】
工程I (S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成
DCM (20 mL)中の(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エタンアミン(1.64 g, 5.26 mmol)の溶液に無水フタル酸(862 mg, 5.82 mmol)を添加した。混合物を15分撹拌し、次いで真空で濃縮した。残渣を開放容器中、175℃に約10分加熱した。この温度に45分保った後、反応混合物を室温まで冷却し、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン/EAで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 484.3 [M+HCO2
-]。
【0091】
工程J (S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成
ACN (20 mL)中の(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオン(1.07 g, 2.45 mmol)の撹拌溶液に、水(4 mL)中の硝酸アンモニウムセリウム(IV)(3.36 g, 6.12 mmol)溶液を0℃で添加した。0℃で5時間撹拌した後に、塩水(20 mL)と水(5 mL)を加えて反応を止めた。混合物をEA (3 x 100 mL)で抽出し、有機層を合わせてNa2SO4で乾燥、濾過し、真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。
【0092】
工程K (S)-2-(1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成
DCM (10 mL)中の(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオン(662 mg, 1.98 mmol)の撹拌溶液に、SOCl2 (288 μL, 3.96 mmol)と水(4 μL)を室温で添加した。変換が完了するまで(TLC)溶液を撹拌した。次に溶媒を真空で除去し、残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 396.1 [M+HCO2
-]。
【0093】
工程L (S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成
ACN (20 mL)中の(S)-2-(1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオン(698 mg, 1.98 mmol)および4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-オール (482 mg, 1.98 mmol)の撹拌溶液に、Cs2CO3(1.94 g, 5.95 mmol)を添加した。室温で一晩撹拌した後、反応混合物を濾過して真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 559.3 [M+H+]。
【0094】
工程M (S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エタンアミンの合成
EtOH (30 mL)中の(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオン(1.07 g, 1.91 mmol)の溶液に、ヒドラジン水和物(371 μL)を添加した。85℃で2時間撹拌した後、反応混合物を室温まで冷却して濾過した。濾液を真空で濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOH/濃縮水性NH3で溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 429.4 [M+H+]。
【0095】
工程N (R)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシプロパンアミドの合成
DMF (4.5 mL)中の(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エタンアミン(55.1 mg, 137 μmol)および(R)-2-ヒドロキシプロパン酸(13.9 mg, 154 μmol)の撹拌溶液に、PyAOP (90.7 mg, 174 μmol) およびDIPEA (29.4 mg, 227 μmol)を0℃で順次添加した。室温で2時間撹拌した後、反応混合物を真空で濃縮した。残渣を逆相HPLCで精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 501.2 [M+H+]。
【0096】
工程O 4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-8-メトキシ-2-メチルキノリンの合成
無水NMP (12 mL)中の4-クロロ-8-メトキシ-2-メチルキノリン (5.00 g, 24.0 mmol) および 4-フルオロ-1H-ピラゾール (3.85 g, 28.8 mmol)の撹拌混合物にK2CO3(4.99 g, 36.1 mmol)を添加した。140℃で48時間撹拌した後、反応混合物を室温まで冷却し、濾過した。残渣をDMF (13 mL)でリンスした。次に合わせた濾液に水(90 mL)を添加した。沈殿を濾過で除いて、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(DCM/メタノールで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 258.0 [M+H+]。
【0097】
工程P 4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-オールの合成
無水トルエン(37.8 mL)中の4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-8-メトキシ-2-メチルキノリン(5.51 g, 21.4 mmol)の溶液を80℃に熱し、激しく撹拌する無水トルエン(32.4 mL)中のAlCl3 (8.58 g, 64.3 mmol)混合物に滴下して加えた。80℃で8時間撹拌した後、反応混合物を0℃まで冷却し、水(106 mL) と濃縮水性 NH3 (27 mL)を加えて反応を止めた。室温で一晩撹拌した後、混合物を遠心分離した。上清をEA (3 x 200 mL)で抽出し、有機層を合わせて、Na2SO4で乾燥、濾過し、真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(DCM/メタノールで溶出)で精製して表題化合物を得た。
【0098】
実施例2:化合物番号2の製造
【化11】
(S)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシ-N-メチルプロパンアミド
工程A (2S)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルオキシ)プロパンアミドの合成
N-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-3-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミドの合成に従って、(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エタンアミン (100 mg, 323 μmol)を(2S)-2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルオキシ)プロパン酸と反応させた[Garner P. et al. J. Org. Chem. (2002), 67(17), 6195-6209]。粗生成物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 488.5 [M+Na]。
【0099】
工程B (2S)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)-N-メチル-2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルオキシ)プロパンアミドの合成
(2S)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルオキシ)プロパンアミド (50 mg, 107 μmol)を無水DMF (約5 ml/mmol)に溶解した。アルゴン雰囲気下に水素化ナトリウム[パラフィン中60%] (4.7 mg, 118 μmol)を加えて、混合物を20分撹拌した。次にヨードメタン(33.3 μl, 535 μmol)を加えて、完全に変換されるまで(TLC)撹拌を続けた。水を加えて、EAによる抽出を数回行った。有機層を合わせて、Na2SO4で乾燥、濾過し、減圧で蒸発乾固した。粗生成物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 502.3 [M+Na]。
【0100】
工程C (S)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシ-N-メチルプロパンアミドの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、(2S)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)-N-メチル-2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イルオキシ)プロパンアミド (41.0 mg, 85 μmol)を硝酸アンモニウムセリウム(IV)(117.1 mg, 214 μmol)と反応させた。粗生成物をメタノールに溶解し、3 M メタノール性HCl溶液を加えて、反応が完了するまで(TLC)室温で撹拌を続けた。減圧で蒸発して表題化合物を得た。MS (m/z): 312.4 [M+Na]。
【0101】
工程D (S)-N-((S)-1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチル)-2-ヒドロキシ-N-メチルプロパンアミドの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、(S)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシ-N-メチルプロパンアミド (13.70 mg, 47 μmol)をSOCl2 (6.82 μl, 11.18 mg, 156 μmol)と反応させて表題化合物を得た。MS (m/z): 330.4 [M+Na]。
【0102】
工程E (S)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシ-N-メチルプロパンアミドの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、(S)-N-((S)-1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチル)-2-ヒドロキシ-N-メチルプロパンアミド(14.6 mg, 47 μmol)を4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-オール (12 mg, 47 μmol)と反応させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 515.5 [M+H+]。
【0103】
実施例3:化合物番号3の製造
【化12】
(R)-3-アミノ-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシプロパンアミド
工程A (R)-3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-2-ヒドロキシプロパン酸の合成
ジオキサンおよび水(3 : 1, v/v, 10 mL)中の(R)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパン酸(668 mg, 6.36 mmol)の混合物に、K
2CO
3 (107. mg, 0.78 mmol) および NaHCO
3 (107 mg, 1.27 mmol)を添加した。二炭酸ジ-tert-ブチル(998 mg, 6.99 mmol)を加えて、室温で一晩撹拌した。次に混合物を1 M HClを用いてpH 2に酸性化した。次いで、混合物をEAで数回抽出した。有機層を合わせて、Na
2SO
4で乾燥、濾過し、真空で濃縮して表題化合物を得た。MS (m/z): 206.2 [M+H
+]。
【0104】
工程B tert-ブチル(R)-3-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチルアミノ)-2-ヒドロキシ-3-オキソプロピルカルバメートの合成
(R)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシプロパンアミドの合成に従って、(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エタンアミン(25 mg, 0.06 mmol)を(R)-3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-2-ヒドロキシプロパン酸(18.0 mg, 0.09 mmol)と反応させて表題化合物を得た。粗生成物をさらに精製することなく用いた。
【0105】
工程C (R)-3-アミノ-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシプロパンアミドの合成
粗tert-ブチル(R)-3-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチルアミノ)-2-ヒドロキシ-3-オキソプロピルカルバメートをDCM (1.5 mL)に溶解し、TFA (200 μL)を添加した。混合物を1時間撹拌した。次いで、混合物をトルエン(1.5 mL)で希釈し、真空で濃縮した。残渣を逆相HPLCで精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 516.5 [M+H+]。
【0106】
実施例4:化合物番号4の製造
【化13】
(S)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2,3-ジヒドロキシプロパンアミド
工程A (S)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-カルボキサミドの合成
(R)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシプロパンアミドの合成に従って、(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エタンアミン(25.0 mg, 0.06 mmol)を(S)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-カルボン酸(12.8 mg, 0.09 mmol)と反応させて表題化合物を得た。粗生成物をさらに精製することなく用いた。
【0107】
工程B (S)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2,3-ジヒドロキシプロパンアミドの合成
粗(S)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-カルボキサミドをMeOH (1.0 mL)に溶解し、濃HCl(5 滴)を加えた。混合物を20時間撹拌した。次いで、混合物を真空で濃縮した。残渣を逆相HPLCで精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 517.1 [M+H+]。
【0108】
実施例5:化合物番号5の製造
【化14】
(S)-N-((R)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)-2-ヒドロキシエチル)-2-ヒドロキシ-3-メチルブタンアミド
工程A 3-ブロモ-5-フルオロ-2-メチルアニリンの合成
1-ブロモ-5-フルオロ-2-メチル-3-ニトロベンゼン(3.04 mL, 22.0 mmol)をジオキサンと水の4:1混合物(110 mL)に溶解した。溶液を0℃に冷却し、亜鉛末(14.4 g, 220 mmol)およびNH
4Cl (11.8 g. 220 mmol)を添加した。反応混合物を室温で3時間撹拌した。完全な変換の後、混合物をセライトパッド上で濾過した。EAで注意深くリンスし、濾液を水で洗浄した。有機層をNa
2SO
4で乾燥、濾過し、真空で濃縮して表題化合物を得た。
【0109】
工程B 1-ブロモ-3-クロロ-5-フルオロ-2-メチルベンゼンの合成
酢酸(100 mL)および半濃縮水性HCl (400 mL)中の3-ブロモ-5-フルオロ-2-メチルアニリン(4.40 g, 21.6 mmol)の溶液にNaNO2 (1.93 g, 28.0 mmol)を0℃で添加した。0℃で5分間撹拌した後、反応混合物にCuCl (3.72 g, 37.5 mmol)を添加した。0℃で2時間撹拌した後、反応混合物を室温まで温めてさらに3時間撹拌を続けた。次いで、混合物をEt2Oで抽出した。有機層を合わせて濃縮水性NaHCO3溶液(1 x)で洗浄し、Na2SO4で乾燥、濾過し、真空で濃縮(浴温度は最大30℃、真空>150 mbar)して表題化合物を得た。
【0110】
工程C 1-ブロモ-2-(ブロモメチル)-3-クロロ-5-フルオロベンゼンの合成
ACN (150 mL)中の1-ブロモ-3-クロロ-5-フルオロ-2-メチルベンゼン(5.43 g, 21.6 mmol)の撹拌溶液に、NBS (4.61 g, 25.9 mmol)およびAIBN (531 mg, 3.23 mmol)を添加した。還流下に8時間撹拌した後、混合物を真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(ヘプタン/EAで溶出)で精製して表題化合物を得た。
【0111】
工程D 1-ブロモ-3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)ベンゼンの合成
ACN (250 mL)中の1-ブロモ-2-(ブロモメチル)-3-クロロ-5-フルオロベンゼン(4.48 g, 14.8 mmol)および4-メトキシフェノール(2.39 g, 19.3 mmol)の撹拌溶液に、Cs2CO3(14.5g, 44.5 mmol)を添加した。室温で一晩撹拌した後、反応混合物を濾過し、真空で濃縮した。残渣をDCMに溶解し、水(1x)で洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥、濾過し、真空で濃縮した。粗生成物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。
【0112】
工程E (R)-N-((R)-2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミドの合成
無水トルエン(1 mL)中の(R,E)-N-(2-(tert-ブチルメチルシリルオキシ)エチリデン)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(325 mg, 1.17 mmol)の溶液にAlMe3 (トルエン中 2 M, 741 μL, 1.48 mmol)を-78℃で添加した。次いで、第2のバイアルに、乾燥トルエン中の1-ブロモ-3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)ベンゼン(427 mg, 1.24 mmol)の溶液に、BuLi (ヘキサン中2.5 M, 544 μL, 1.36 mmol)を-78℃で添加した。溶液をこの温度で15分撹拌した。1-ブロモ-3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)ベンゼンを含有する溶液を(R,E)-N-(2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)エチリデン)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミドを含有する溶液に-78℃でゆっくり添加した。混合物を22時間撹拌し、室温に至るまで放置した。完全な変換の後、反応混合物を飽和水性NH4Cl溶液で抑えた(quenched)。混合物をEAで抽出し、有機層を合わせてNa2SO4で乾燥、濾過し、真空で濃縮した。粗生成物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 544.6 [M+H+]。
【0113】
工程F (R)-2-アミノ-2-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エタノールの合成
(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エタンアミンの合成に従って、(R)-N-((R)-2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(149 mg, 0.27 mmol)を3 M メタノール性 HCl (274 μL, 0.82 mmol)と反応させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 370.3 [M+HCO2
-]。
【0114】
工程G (S)-N-((R)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)-2-ヒドロキシエチル)-2-ヒドロキシ-3-メチルブタンアミドの合成
DMF(1 mL)中の(R)-2-アミノ-2-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エタノール(87.0 mg, 0.27 mmol)および(S)-(+)-2-ヒドロキシ-3-メチル酪酸(47.3 mg, 0.40 mmol)の撹拌溶液に、PyBOP (279 mg, 0.53 mmol)およびDIPEA (114 μL mg, 0.67 mmol)を0℃で順次添加した。室温で16時間撹拌した後、反応混合物を真空で濃縮した。残渣を飽和メタノール性アンモニア溶液に再溶解し、室温で3時間撹拌し、真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 426.4 [M+H+]。
【0115】
工程H (S)-1-((R)-2-(ベンゾイルオキシ)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチルアミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イルベンゾエートの合成
DCM (1 mL)中の(S)-N-((R)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)-2-ヒドロキシエチル)-2-ヒドロキシ-3-メチルブタンアミド(131 mg, 0.31 mmol)の撹拌溶液に、ピリジン(300 μL)および塩化ベンゾイル(89.3 μL, 0.77 mmol)を順次添加した。室温で23時間撹拌した後、反応混合物を真空で濃縮した。残渣をトルエン(2 mL)に再溶解し、真空で濃縮した。粗生成物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 634.3 [M+H+]。
【0116】
工程I (S)-1-((R)-2-(ベンゾイルオキシ)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)エチルアミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イルベンゾエートの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、ACN (2 mL)中の(S)-1-((R)-2-(ベンゾイルオキシ)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチルアミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イルベンゾエート(141 mg, 0.22 mmol)を、水(400 μL)中の硝酸アンモニウムセリウム(IV) (304 mg. 0.56 mmol)と反応させた。粗生成物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 528.5 [M+H+]。
【0117】
工程J (S)-1-((R)-2-(ベンゾイルオキシ)-1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチルアミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イルベンゾエートの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、(S)-1-((R)-2-(ベンゾイルオキシ)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)エチルアミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イルベンゾエート(48.3 mg, 0.09 mmol)をSOCl2(13.3 μL, 0.18 mmol)と反応させて表題化合物を得た。MS (m/z): 546.6 [M+H+]。
【0118】
工程K (S)-1-((R)-2-(ベンゾイルオキシ)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチルアミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イルベンゾエートの合成
乾燥ACN (1 mL)中の(S)-1-((R)-2-(ベンゾイルオキシ)-1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチルアミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イルベンゾエート(46.8 mg, 0.09 mmol)および4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-オール(24.5 mg, 0.10 mmol)の撹拌溶液に、Cs2CO3 (89.4 mg, 0.28 mmol)を添加した。一晩撹拌した後、水(3 mL)を加えて、混合物をDCMで抽出した。有機層を合わせて塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥、濾過し、真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 753.4 [M+H+]。
【0119】
工程L (S)-N-((R)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)-2-ヒドロキシエチル)-2-ヒドロキシ-3-メチルブタンアミドの合成
濃メタノール性アンモニア中の(S)-1-((R)-2-(ベンゾイルオキシ)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチルアミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イルベンゾエート(46.2 mg, 0.06 mmol)の溶液を室温で一晩撹拌した。完全な変換(TLC)の後、反応混合物を真空で濃縮した。残渣を逆相HPLCで精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 545.2 [M+H+]。
【0120】
工程M (R,E)-N-(2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)エチリデン)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミドの合成
乾燥DCM (15 mL)中のチタン(IV)エトキシド(363 μL, 1.73 mmol)、(R)-(+)-2-メチル-2-プロパンスルフィンアミド(210 mg, 1.73 mmol) および(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)アセトアルデヒド(300 μL, 1.58 mmol)の溶液を窒素雰囲気下に室温で22時間撹拌した。完全な変換(TLC)の後、水(15 mL)で反応を止めて、セライトパッド上で濾過した。次いで、フィルターをDCM (2 x 15 mL)で注意深くリンスした。水層をDCM(10 mL)で抽出し、有機層を合わせてNa2SO4で乾燥、濾過し、真空で濃縮して表題化合物を得た。
【0121】
実施例6:化合物番号6の製造
【化15】
(S)-N-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミド
工程A 8-メトキシ-2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリンの合成
乾燥キシレン(20 mL)中に、4-クロロ-8-メトキシ-2-メチルキノリン(5.00 g, 24.15 mmol)、1-メチル-1,2,4-トリアゾール(42.74 mL, 48.30 mmol)、K
2CO
3(6.67 g, 48.30 mmol)、Pd(OAc)
2(0.54 g, 2.41 mmol)、テトラフルオロホウ酸トリシクロヘキシルホスフィン(1.87 g, 5.07 mmol) およびトリメチル酢酸(2.47 g, 24.15 mmol)を懸濁した。フラスコを排気して、次に窒素で換気した。脱ガス工程は2回繰り返した。混合物を140℃で18時間加熱した。完全な変換の後、混合物を蒸発させ、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(DCM/メタノールで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 255.4 [M+H
+]。
【0122】
工程B 2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-オールの合成
無水トルエン(25 mL)中の8-メトキシ-2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン(3.14 g, 12.35 mmol)の溶液を80℃に加熱し、激しく撹拌する無水トルエン(25 mL)中のAlCl3(4.94 g, 37.06 mmol)の混合物に滴下して加えた。80℃で8時間撹拌した後、反応混合物を0℃に冷却し、水(68 mL)を加えて反応を止め、次に濃水性NH3をpH 10 になるまで加えた(約1.7 mL)。混合物を遠心分離した。上清をEAで抽出し、有機層を合わせてNa2SO4で乾燥、濾過し、真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(DCM/メタノールで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 239.2 [M-H+]。
【0123】
工程C (S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、(S)-2-(1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオン (34.3 mg, 97 μmol)を2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-オール(23.4 mg, 97 μmol)と反応させて表題化合物を得た。MS (m/z): 556.3 [M-H+]。
【0124】
工程D (S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エタンアミンの合成
(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エタンアミンの合成に従って、(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオン(45.5 mg, 82μmol)を脱保護して表題化合物を得た。MS (m/z): 448.3 [M+Na+]。
【0125】
工程E (S)-N-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミドの合成
(R)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシプロパンアミドの合成に従って、(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エタンアミン(28.9 mg, 68 μmol)と2-(ジフルオロメトキシ)酢酸 (11.1 mg, 88 μmol)を反応させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 535.0 [M+H+]。
【0126】
実施例7:化合物番号7の製造
【化16】
(S)-N-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミド
工程A (3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)メタノールの合成
THF (8.9 mL)およびMeOH (2 mL)中の3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)安息香酸メチル(347 mg, 0.81 mmol)の撹拌溶液に、LiBH
4 (200 mg, 9.3 mmol)を室温で3時間かけて数回に分けて添加した。室温で1時間撹拌した後、反応混合物をDCM (20 mL)と水(10 mL)に分配した。水層をDCM (2 x 15 mL)で抽出した。有機層を合わせてNa
2SO
4で乾燥、濾過し、真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。
【0127】
工程B 3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)ベンズアルデヒドの合成
(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)メタノール(1.70g, 5.73 mmol)を、ジオキサンとトルエンの1:1混合物(70 mL)を中に溶解し、酸化マンガン(IV)(9.96 g, 114.59 mmol)を添加した。反応が完了するまで(TLC)反応混合物を室温で撹拌した。セライト上で濾過した後、濾液を減圧下で蒸発して、表題化合物を得た。
【0128】
工程C (R,E)-N-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)ベンジリデン)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミドの合成
アルゴン雰囲気下に、3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)ベンズアルデヒド(317 mg, 1.08 mmol)および(R)-tBu-スルフィニルアミド(143 μL, 1.18 mmol)を無水THF (5 mL)に溶解した。次にチタン(IV)エトキシド(676.5 mL, 3.23 mmol)を滴下して加えた。反応混合物を65℃で一晩撹拌した。反応完了後に反応混合物を水で抑制した。水層をDCMで3回抽出した。有機層を合わせてNa2SO4で乾燥、濾過し、減圧下で蒸発して表題化合物を得た。MS (m/z): 420.1 [M+Na]。
【0129】
工程D (R)-N-((R)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)プロピル)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミドおよび(R)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)プロピル)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミドの合成
(R,E)-N-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)ベンジリデン)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(352.0 mg, 884.67 μmol)をTHF (20 mL)に溶解した。THF (2.21 mL, 2.21 mmol)中の臭化エチルマグネシウムの1M 溶液を滴下して加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌した。氷を注意深く加えた後、飽和水性NH4Cl溶液で希釈した。水層をDCMで3回抽出した。有機層を合わせてNa2SO4で乾燥、濾過し、減圧で蒸発乾燥した。粗生成物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。R-異性体: MS (m/z): 428.3 [M+H+] および S-異性体: MS (m/z): 428.0 [M+H+]。
【0130】
工程E (S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)プロパン-1-アミンの合成
(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エタンアミンの合成に従って、(R)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)プロピル)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(182 mg, 425 μmol)を3M メタノール性 HCl溶液と反応させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 324.1 [M+H+]。
【0131】
工程F (S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)プロピル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)プロパン-1-アミン(95.4 mg, 295 μmol)を無水フタル酸(48 mg, 324 μmol)と反応させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 454.6 [M+H+]。
【0132】
工程G (S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)プロピル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)プロピル)イソインドリン-1,3-ジオン(102 mg, 225 μmol)を硝酸アンモニウムセリウム(IV) (308 mg, 562 μmol) と反応させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 370.3 [M+Na]。
【0133】
工程H (S)-2-(1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)プロピル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)プロピル)イソインドリン-1,3-ジオン(52.9 mg, 152 μmol)をSOCl2(22.06 μL, 304 μmol) と反応させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 388.3 [M+Na]。
【0134】
工程I (S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)プロピル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成
メチル(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、(S)-2-(1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)プロピル)イソインドリン-1,3-ジオン(53.3 mg, 146 μmol)を4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-オール (35.4 mg, 146 μmol) と反応させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 573.4 [M+H+]。
【0135】
工程J (S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)プロパン-1-アミンの合成
(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エタンアミンの合成に従って、(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)プロピル)イソインドリン-1,3-ジオン(80.8 mg, 141 μmol)をヒドラジン水和物(27.5 μL, 282 μmol) と反応させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 444.1 [M+H+]。
【0136】
工程K (S)-N-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)プロピル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパンアミドの合成
(R)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシプロパンアミドの合成に従って、(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)プロパン-1-アミン(18 mg, 41 μmol)をα-ヒドロキシイソ酪酸(4.9 mg, 47 μmol) と反応させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 529.6 [M+H+]。
【0137】
実施例8:化合物番号8の製造
【化17】
(R)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシプロパンアミド
工程A 4-(4-フルオロ-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-8-メトキシ-2-メチルキノリンの合成
5 M 水性HCl (5.3 mL)中の4-ヒドラジニル-8-メトキシ-2-メチルキノリン (100 mg, 0.493 mmol)および3-フルオロ-4,4-ジメトキシブタン-2-オン(110 mg, 0.739 mmol)の混合物[Funabiki, K. et al J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1 1997, 18, 2679-2680]を90℃で1.5時間撹拌した。反応混合物を真空で濃縮し、飽和水性NaHCO
3 (3 mL)および DCM (5 mL)に分配した。水層をDCM (2 x 5 mL)で抽出し、有機層を合わせてNa
2SO
4で乾燥、濾過し、真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(MeOH/DCM で溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 272.0 [M+H
+]。
【0138】
工程B 4-(4-フルオロ-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-オールの合成
4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-オールの合成に従って、4-(4-フルオロ-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-8-メトキシ-2-メチルキノリン(118 mg, 0.436 mmol)を脱メチル化して表題化合物を得た。MS (m/z): 258.1 [M+H+]。
【0139】
工程C (S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、4-(4-フルオロ-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-オール(21.0 mg, 82 μmol)を(S)-2-(1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオン(28.8 mg, 82μmol)と反応させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 573.1 [M+H+]。
【0140】
工程D (S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エタンアミンの合成
(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エタンアミンの合成に従って、(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオン(31.1 mg, 54 μmol)を脱保護して、表題化合物を得た。MS (m/z): 465.4 [M+Na+]。
【0141】
工程E (R)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシプロパンアミドの合成
(R)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシプロパンアミドの合成に従って、(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-5-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エタンアミン(20.5 mg, 46 μmol)を(R)-2-ヒドロキシプロパン酸(4.8 mg, 53 μmol)と結合させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 515.9 [M+H+]。
【0142】
実施例9:化合物番号9および化合物番号10の製造
【化18】
(S)-N-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(5-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミド(9) および (S)-N-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミド(10)
工程A 8-メトキシ-2-メチル-4-(5-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリンおよび8-メトキシ-2-メチル-4-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリンの合成
4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-8-メトキシ-2-メチルキノリンの合成に従って、4-クロロ-8-メトキシ-2-メチルキノリン(100 mg, 0.481 mmol)を3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール(46.0, 0.554 mmol)と反応させて、表題化合物の混合物を得た。MS (m/z): 255.3 [M+H
+]。
【0143】
工程B 2-メチル-4-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-オールおよび2-メチル-4-(5-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-オールの合成
4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-オールの合成に従って、8-メトキシ-2-メチル-4-(5-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリンおよび8-メトキシ-2-メチル-4-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリンの混合物(153 mg, 0.602 mmol)を脱メチル化して、表題化合物の混合物を得た。MS (m/z): 241.1 [M+H+]。
【0144】
工程C (S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(5-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンおよび(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、2-メチル-4-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-イル)キノリン-8-オールおよび2-メチル-4-(5-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-オールの混合物(48.3 mg, 0.201 mmol)を(S)-2-(1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオン(70.7 mg, 0.201 mmol)と反応させて、表題化合物の混合物を得た。MS (m/z): 556.4 [M+H+]。
【0145】
工程D (S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(5-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エタンアミンおよび(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エタンアミンの合成
(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エタンアミンの合成に従って、(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(5-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンおよび(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの混合物(111 mg, 201 μmol)を脱保護して、表題化合物を得た。MS (m/z): 448.3 [M+Na+]。
【0146】
工程E (S)-N-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(5-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミドおよび (S)-N-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミドの合成
(R)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシプロパンアミドの合成に従って、(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(5-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エタンアミンおよび(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エタンアミンの混合物(19 mg, 43 μmol)を2-(ジフルオロメトキシ)酢酸(7.2 mg, 56 μmol)と反応させて、HPLCで精製して、(S)-N-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(5-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミド(MS (m/z): 534.2 [M+H+])および (S)-N-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミド(MS (m/z): 534.0 [M+H+])を得た。
【0147】
実施例10:化合物番号11の製造
【化19】
(S)-N-(1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミド
工程A (R)-N-((S)-1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミドの合成
ジュウテロ-L-Selectride溶液の調製:LiAlD
4 (203 mg, 4.86 mmol)の撹拌懸濁液に無水MeOH (0.591 mL, 14.6 mmol)を0℃で10分以内に添加した。反応混合物を室温になるまで放置し、次にトリ-sec-ブチルボラン溶液(THF中1 M, 3.6 mL, 3.6 mmol)を添加した。室温で15分撹拌した後、ジュウテロ-L-Selectride溶液を用いた。
無水THF (1.7 mL)中の1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エタノン(0.500 g, 1.62 mmol) および (R)-(+)-2-メチル-2-プロパンスルフィンアミド(216 mg, 1.78 mmol)の溶液に、アルゴン雰囲気下にチタン(IV)エトキシド(1.02 mL, 4.86 mmol)を滴下して加えた。混合物を完全に変換するまで(TLC)還流下に加熱した。次に混合物を0℃まで冷却し、ジュウテロ-L-Selectride溶液を滴下して加えた。混合物を完全に変換するまで(TLC)この温度で撹拌した。次に、ガスの発生が止まるまでメタノール(約10 mL)を加えた。溶液を飽和水性NaCl溶液(5 mL)に注いだ。次に、混合物をセライトパッド上で濾過し、DCMで注意深くリンスした。濾液を飽和水性NaCl溶液で洗浄した。水層をDCMで抽出した。有機層を合わせてNa
2SO
4で乾燥、濾過し、蒸発乾燥した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 415.3 [M+H
+]。
【0148】
工程B (S)-1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エタンアミンの合成
(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エタンアミンの合成に従って、(R)-N-((S)-1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(323 mg, 779 μmol)を加水分解して、表題化合物を得た。MS (m/z): 311.7 [M+H+]。
【0149】
工程C (S)-N-(1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミドの合成
(R)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシプロパンアミドの合成に従って、(S)-1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エタンアミン(50.0 mg, 161 μmol)を2-(ジフルオロメトキシ)酢酸(26.4 mg, 209 μmol)と結合させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 419.2 [M+H+]。
【0150】
工程D (S)-N-(1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)エチル)-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミドの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、(S)-N-(1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミド(38 mg, 91 μmol)を脱保護して、表題化合物を得た。MS (m/z): 312.7 [M+H+]。
【0151】
工程E (S)-N-(1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチル)-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミドの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、(S)-N-(1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)エチル)-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミド(19 mg, 61 μmol)を塩素化して、表題化合物を得た。MS (m/z): 330.7 [M+H+]。
【0152】
工程F (S)-N-(1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミドの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、(S)-N-(1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチル)-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミド(20 mg, 57 μmol)を2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-オール (14 mg, 57 μmol)と反応させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 535.4 [M+H+]。
【0153】
実施例10A:化合物番号11Aの製造
【化20】
N-[(1S)-1-[3-クロロ-5-フルオロ-2-({[2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-イル]オキシ}メチル)フェニル](1,2,2,2-
2H
4)エチル]-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミド
工程A (S)-N-[(1,2,2,2-
2H
4)エチリデン]-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミドの合成
(R,E)-N-(2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)エチリデン)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミドの合成に従って、(1,2,2,2-
2H
4)アセトアルデヒド(1.00 g, 15.6 mmol)を(S)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(2.07 g, 17.1 mmol)と反応させて、表題化合物を得た。
【0154】
工程B (S)-N-[(1S)-1-{3-クロロ-5-フルオロ-2-[(4-メトキシフェノキシ)メチル]フェニル}(1,2,2,2-2H4)エチル]-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミドの合成
(R)-N-((R)-2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミドの合成に従って、1-ブロモ-3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)ベンゼン(272.0 mg, 0.79 mmol)を(S)-N-[(1,2,2,2-2H4)エチリデン]-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(113 mg, 0.75 mmol)と反応させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 440.5 [M+Na+]。
【0155】
工程C (1S)-1-{3-クロロ-5-フルオロ-2-[(4-メトキシフェノキシ)メチル]フェニル}(2H4)エタン-1-アミンの合成
(S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エタンアミンの合成に従って、メタノール(1 mL) 中に溶解した(S)-N-[(1S)-1-{3-クロロ-5-フルオロ-2-[(4-メトキシフェノキシ)メチル]フェニル}(1,2,2,2-2H4)エチル]-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(86.5 mg, 0.21 mmol) を3 M メタノール性HCl (207 μL, 0.62 mmol)と反応させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 314.9 [M+H+]。
【0156】
工程D N-[(1S)-1-{3-クロロ-5-フルオロ-2-[(4-メトキシフェノキシ)メチル]フェニル}(1,2,2,2-2H4)エチル]-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミドの合成
(R)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシプロパンアミドの合成に従って、(1S)-1-{3-クロロ-5-フルオロ-2-[(4-メトキシフェノキシ)メチル]フェニル}(2H4)エタン-1-アミン(32 mg. 0.10 mmol)を2-(ジフルオロメトキシ)酢酸(14 mg, 0.11 mmol)、PyAOP (70 mg, 0.13 mmol)、およびDIPEA (21 μL, 0.18 mmol)と反応させて、粗表題化合物を得た。これをシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 444.4 [M+Na+]。
【0157】
工程E N-[(1S)-1-[3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル](1,2,2,2-2H4)エチル]-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミドの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、N-[(1S)-1-{3-クロロ-5-フルオロ-2-[(4-メトキシフェノキシ)メチル]フェニル}(1,2,2,2-2H4)エチル]-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミド(29 mg, 0.070 mmol)を硝酸アンモニウムセリウム(IV)(95.7 mg, 0.175 mmol)と反応させて、表題化合物を得た。
【0158】
工程F N-[(1S)-1-[3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル](1,2,2,2-2H4)エチル]-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミドの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、N-[(1S)-1-[3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル](1,2,2,2-2H4)エチル]-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミド(18 mg, 0.057 mmol)をSOCl2(17 μL, 0.23 mmol)と反応させて、表題化合物を得た。
【0159】
工程G N-[(1S)-1-[3-クロロ-5-フルオロ-2-({[2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-イル]オキシ}メチル)フェニル](1,2,2,2-2H4)エチル]-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミドの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、N-[(1S)-1-[3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル](1,2,2,2-2H4)エチル]-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミド(14.3 mg, 43 μmol)を2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-オール(11 mg, 47 μmol)と反応させた。粗生成物をHPLCで精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 539.2 [M+H+]。
【0160】
実施例10B:化合物番号11Bの製造
【化21】
(R)-N-(1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)-2-ヒドロキシエチル)-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミド
工程A tert-ブチルジメチル[2-オキソ(2-
2H)エトキシ]シランの合成
無水Et
2O (8.9 mL)中の2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)酢酸メチル(2.0 g, 10 mmol)の溶液を、無水Et
2O (35 mL)中のLiAlD
4 (0.49 g, 12 mmol)の撹拌懸濁液に-78℃で滴下して加えた。-78℃で40分撹拌した後、水(0.45 mL)と15% 水性NaOH溶液(0.45 mL)を-78℃で加えて反応を止めた。次に、水(1.34 mL)を加えて、混合物を放置して室温まで温めた。混合物をセライトパッド上で濾過し、濾液を真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。
【0161】
工程B (R)-N-[(1E)-2-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ](1-2H)エチリデン]-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミドの合成
無水DCM (10 mL)中のチタン(IV)エトキシド(794 μL, 3.79 mmol)、(R)-(+)-2-メチル-2-プロパンスルフィンアミド(344 mg, 2.84 mmol)およびtert-ブチルジメチル[2-オキソ(2-2H)エトキシ]シランの溶液を窒素雰囲気下に室温で16時間撹拌した。完全な変換(TLC)の後、水(20 mL)を0℃で添加して反応を止め、得られる混合物をセライトパッドで濾過した。次に、フィルターをDCM (2 x 20 mL)で注意深くリンスした。水層をDCM (20 mL)で抽出し、有機層を合わせてNa2SO4で乾燥、濾過し、真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 279.2 [M+H+]。
【0162】
工程C (R)-N-(2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)ピバルアミドの合成
無水トルエン(1.6 mL)中の(R)-N-[(1E)-2-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ](1-2H)エチリデン]-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミド(279 mg, 1.00 mmol)の溶液にAlMe3 (トルエン中2 M, 551 μL, 1.10mmol)を-78℃で加えて、得られた溶液を-78℃で30分撹拌した。次いで、第2のフラスコで、無水トルエン(3.8 mL)中の1-ブロモ-3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)ベンゼン(381 mg, 1.10 mmol)の溶液にBuLi (ヘキサン中2.5 M, 508 μL, 1.27 mmol)を-78℃で加えて、得られた溶液を-78℃で15分撹拌した。次いで、(R)-N-[(1E)-2-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ](1-2H)エチリデン]-2-メチルプロパン-2-スルフィンアミドを含む溶液を、1-ブロモ-3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)ベンゼンを含む溶液に-78℃でゆっくり添加した。反応混合物を放置して4.5時間以内で室温にし、飽和水性NH4Cl溶液を添加して反応を止めた。混合物をEAで抽出し、有機層を合わせてNa2SO4で乾燥、濾過し、真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 567.0 [M+Na+]。
【0163】
工程D (R)-N-(1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)-2-ヒドロキシエチル)-2-(ジフルオロメトキシ)アセトアミドの合成
(R)-2-アミノ-2-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エタノールの合成に従って、(R)-N-(2-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)ピバルアミド(388 mg, 0.714 mmol)を脱保護して、次いで、(S)-N-((R)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)-2-ヒドロキシエチル)-2-ヒドロキシ-3-メチルブタンアミドの合成に従って、2-(ジフルオロメトキシ)酢酸でアミド化し、次いで (S)-1-((R)-2-(ベンゾイルオキシ)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)エチルアミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イルベンゾエートの合成に従って、ベンゾイル化、4-メトキシフェノールの除去および塩素化し、次いで(S)-N-((R)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)-2-ヒドロキシエチル)-2-ヒドロキシ-3-メチルブタンアミドの合成に従って、2-メチル-4-(1-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル)キノリン-8-オールと反応させ、次いで脱ベンゾイル化して、表題化合物を得た。MS (m/z): 551.3 [M+H+]。
【0164】
実施例10C:化合物番号11Cの製造
【化22】
(R)-N-((S)-1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(5-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-フルオロプロパンアミド
工程A 8-メトキシ-2-メチル-4-(5-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリンオールの合成
無水DMF(23.1 mL)中のホルムアミジン酢酸塩(0.705 g, 6.78 mmol)の撹拌混合物に無水酢酸(0.645 mL, 0.692 g, 6.78 mmol)を室温で添加した。室温で5分撹拌した後、Et
3N (1.56 mL, 1.14 g, 11.3 mmol)を添加した。室温で5分撹拌した後、反応混合物を80℃に加熱し、反応混合物が清澄な溶液になるまで撹拌した。次いで 反応混合物を室温まで放置して冷却し、酢酸(3.10 mL, 3.25 g, 54.2 mmol)および4-ヒドラジニル-8-メトキシ-2-メチルキノリンを添加した[A. A. Avetisyan et al. Russ. J. of Org. Chem. 2010 46(3), 427-431] (0.918 g, 4.52 mmol)。80℃で17時間撹拌した後、反応混合物を真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOH で溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 255.2 [M+H
+]。
【0165】
工程B 2-メチル-4-(5-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-オールの合成
4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-オールの合成に従って、2-メチル-4-(5-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-オール (0.750 g, 2.95 mmol)をAlCl3 (1.18 g, 8.85 mmol)で脱メチル化して、表題化合物を得た。MS (m/z): 240.8 [M+H+]。
【0166】
工程C (S)-N-((S)-1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシプロパンアミドの合成
(R)-N-((S)-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシプロパンアミドの合成に従って、(S)-1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エタンアミン(250 mg, 0.804 mmol)をL-(+)乳酸(76 μL, 76 mg, 0.85 mmol)と反応させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 383.7 [M+H+]。
【0167】
工程D (R)-N-((S)-1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-フルオロプロパンアミドの合成
無水トルエン(8 mL)中の(S)-N-((S)-1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-ヒドロキシプロパンアミド(290 mg, 0.758 mmol)の撹拌溶液に、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(170 μL, 173 mg, 1.14 mmol)およびパーフルオロ-1-ブタンスルホニルフルオリド(200 μL, 343 mg, 1.14 mmol)を0℃で順次添加した。0℃で30分撹拌した後、反応混合物を室温にして室温で一晩撹拌した。反応混合物を次に氷/水に注いでDCM (3 x 20 mL)で抽出した。有機層を合わせてNa2SO4で乾燥、濾過し、真空で濃縮した。残渣をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(EA/ヘプタンで溶出)で精製して表題化合物を得た。MS (m/z): 385.9 [M+H+]。
【0168】
工程E (R)-N-((S)-1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)エチル)-2-フルオロプロパンアミドの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、(R)-N-((S)-1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-メトキシフェノキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-フルオロプロパンアミド(96 mg, 0.25 mmol)を硝酸アンモニウムセリウム(IV) (342 mg, 0.624 mmol)と反応させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 276.8 [M-H+]。
【0169】
工程F (R)-N-((S)-1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチル)-2-フルオロプロパンアミドの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、(R)-N-((S)-1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-(ヒドロキシメチル)フェニル)エチル)-2-フルオロプロパンアミド(47 mg, 0.17 mmol)をSOCl2 (49 μL, 0.68 mmol)と反応させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 294.8 [M-H+]。
【0170】
工程G (R)-N-((S)-1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((2-メチル-4-(5-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)-2-フルオロプロパンアミドの合成
(S)-2-(1-(3-クロロ-5-フルオロ-2-((4-(4-フルオロ-1H-ピラゾール-1-イル)-2-メチルキノリン-8-イルオキシ)メチル)フェニル)エチル)イソインドリン-1,3-ジオンの合成に従って、(R)-N-((S)-1-ジュウテロ-1-(3-クロロ-2-(クロロメチル)-5-フルオロフェニル)エチル)-2-フルオロプロパンアミド(29 mg, 0.10 mmol)を2-メチル-4-(5-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)キノリン-8-オール (26 mg, 0.11 mmol)と反応させて、表題化合物を得た。MS (m/z): 501.8[M+H+]。
【0171】
実施例11:化合物番号12から213
以下の表1に示す化合物番号12から213は本発明の一般式(I)の化合物のさらなる代表例である。これらの化合物は上述した方法、ならびに本明細書で引用する文献に開示の合成法、または合成有機化学の当業界で公知の合成法、および当業者に知られたその変形を用いて合成される。本明細書で実施例1から10Cに記載する合成法に関して引用する各文献は、その全体を本明細書に参照して含まれる。いずれにしても、有機合成の当業者は化合物を製造するための出発物質および反応条件をその変形も含めて理解するであろう。
【0172】
表1:化合物番号12から213
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【表1-17】
【表1-18】
【表1-19】
【表1-20】
【表1-21】
【表1-22】
【表1-23】
【表1-24】
【表1-25】
【表1-26】
【0173】
実施例12:試験化合物のヒトB2Rへのアンタゴニスト活性
以下に記載の細胞ベースのヒトブラジキニンB2受容体カルシウム動員(hB2R-CaM)アッセイを用いて、実施例化合物番号1から168から選択される化合物のヒトブラジキニンB2受容体(hB2R)に対するアンタゴニスト活性を決定した。このアッセイは標準的in vitro B2受容体活性アッセイとして本明細書で定義されるものであり、本発明の化合物、たとえば実施例1-11に示す化合物のIC50 値を決定するのに用いることができる。
【0174】
本発明の化合物のアンタゴニスト活性は、B2ブラジキニン受容体Stable Cell Line HTS041C (Eurofins, St. Charles MO)およびFLIPR カルシウム 6 アッセイキット(Molecular Devices, Wokingham, UK)を供給者の指示に従って用いて試験した。CaMアッセイの測定はFlexstation 3 System (Molecular Devices)で実施したが、これは細胞に化合物(B2Rアンタゴニスト)とブラジキニン(B2Rアゴニスト)の正確な添加をし、また時間依存的なCaMアッセイシグナルを隣接して連続的に記録することができる。
【0175】
細胞培養、播種および飢餓:
HTS041C細胞は細胞培養器中、37℃、5% CO2 雰囲気で、10%熱不活性化FBS (PAN Biotech)、10mM HEPES、ペニシリン/ストレプトマイシン(200U/mL, 200μg/mL)、1x 非必須アミノ酸(Lonza)、および250μg/mL G418 (Invivogen)を補充した高グルコースDMEM 細胞培養培地(Lonza)中で培養した。CaMアッセイ実験の1日前に、平底黒(clear bottom black)96ウエルプレート(ThermoFisher #165305)上で、減量したFBS (5%)でG418を含まない200μL のDMEM細胞培養培地に細胞を播いた。ウエル当たり70,000 細胞で24時間から28時間インキュベート(37 °C, 5% CO2)した。カルシウム色素ローディングの直前に培地を注意深く吸引し、細胞をCa2+, Mg2+ および 20 mM HEPES含有でpH 7,4に調整したハンクス平衡塩類溶液(HBSS, Gibco) (HBSS+)で洗浄した。
【0176】
細胞のカルシウム色素ローディング:
カルシウム色素ローディングのために、FLIPR 6アッセイのアリコートを20mL HBSS+に溶解した。色素ローディング溶液150 μLを細胞プレートに加えて37℃、5% CO2で120分インキュベートした。色素ローディング後、直ちに細胞プレートをCaMアッセイ用の予め温めた(37 ℃) Flexstation 3 Systemに移した。
【0177】
細胞内カルシウム動員アッセイ(CaMアッセイ):
実験開始の少し前に、非結合性プレート(Costar)中の新しく調製した化合物(B2受容体アンタゴニスト)希釈シリーズ(8pt, n=2)およびブラジキニン(B2受容体アゴニスト)溶液をFlexstation System (ソースプレート)に移した。ブラジキニンを、3回以上の予備実験で定めたEC80濃度で、8pt濃度応答曲線(n=8)で添加した。CaMアッセイはFlexstation 3 Systemで行い、ex/em=485 nm/525 nm, カットオフ(em)= 515 nMで下方リードのFlexモードでカルシウム感受性色素蛍光の記録を開始した。20秒後に、4倍濃度の化合物希釈物50 μLを細胞に添加して、細胞プレート中、0.1%の最終DMSO (Sigma)濃度とした。可能性のあるアゴニスト活性の検出用に、添加後、80秒間CaMシグナルをモニターした。ブラジキニン刺激の前に、化合物およびベヒクルで処理した細胞をFlexstation System 中で37℃、25分インキュベートした。次に5倍濃度のブラジキニン溶液(HBSS+, 0,1% DMSO) 50 μLを添加してCaMシグナルを引き出し(リードアウト:Max-Min 値)、これをブラジキニン刺激後の80秒間測定した。
8pt (n=2)化合物濃度応答曲線の4パラメータロジスティックモデル曲線フィッティングによって、XLFIT (IDBS)ソフトウェアを用いてIC50を決定した。
【0178】
測定結果:
実施例化合物番号 2, 6, 9, 11, 11A, 11B, 11C, 12, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 26, 27, 29, 30, 56, 57, 58, 59, 60, 61, 63, 64, 70, 71, 82, 83, 84, 85, 90, 91, 92, 94, 95, 101, 102, 104, 106, 107, 110, 116, 117, 118, 120, 121, 122, 124, 126, 127, 128, 129, 130, 131, 132, 133, 134, 139, 140, 141, 142, 143, 144, 145, 147, 148, 149, 150, 155, 156, 157, 158, 159, 160, 161, 162, 163, 164, 165, 166, 167, 168, 169, 170, 171, 172, 173, 174, 175, 176, 177, 178, 179, 180, 181, 182, 183, 184, 185, 187, 188, 189, 190, 191, 192, 193, 194, 195, 196, 197, 198, 199, 200, 201, 202, 203, 204, 205, 206, 207, 208, 209, 210, 211, 212 および 213 は、ヒトブラジキニンB2受容体(hB2R)に対して50 nMと同等またはそれ以下のIC50値を示した。
【0179】
実施例化合物番号 1, 8, 10, 22, 23, 24, 25, 28, 31, 32, 33, 34, 46, 48, 49, 50, 51, 54, 62, 66, 67, 68, 69, 86, 87, 88, 89, 93, 96, 97, 99, 103, 105, 108, 109, 111, 112, 113, 114, 115, 119, 123, 125, 135, 136, 137, 138, 146, 151, 152, 153 および 186 は、ヒトブラジキニンB2受容体(hB2R)に対して51から250 nMのIC50値を示した。
実施例化合物番号 3, 13, 21, 47, 52, 53, 55, 65, 72, 98 および 100 は、ヒトブラジキニンB2受容体(hB2R)に対して251から1000 nMのIC50値を示した。
試験化合物はいずれも細胞ベースの試験系で何ら毒性を示さなかった。
【0180】
実施例13:生物学的活性、透過性、および代謝安定性の決定
治療可能性をさらに詳細に評価するために、本発明の実施例化合物番号1, 6, 11 および 13 のhB2Rに対するアンタゴニスト活性、透過性および代謝安定性を試験した。
【0181】
構造的に類似の化合物は上記で引用した先行特許出願またはその他のいずれにも開示されていなかった。先行技術文献WO 2008/116620は、ピリジン環に類似の置換基をもちうるヘテロアリール-キノリン-8-イルオキシメチル-ピリジン化合物を開示する。しかしながら、WO 2008/116620はその化合物の薬物動態性質、たとえば透過性や代謝安定性については何ら開示していない。WO 2010/031589は、WO 2008/116620の化合物を基礎として開発された第二世代の化合物を開示しており、低い代謝安定性、低い生物利用可能性、グルタチオン付加物の形成や、WO 2014/159637に示すような生物活性化(毒性)を示す。
【0182】
構造的に関連する公知の化合物がなく、また本発明の新規な構造的要素の有利な効果を示すために、WO 2008/116620 およびWO 2010/03158に示唆される要素をそれぞれ含む実際の比較化合物を、hB2Rに対するアンタゴニスト活性、透過性および代謝安定性について同じ方法で評価した。実際の比較化合物として、以下の表2に示す比較化合物番号169, 170, 171, 172, 173 および 174 を用いた。比較化合物番号169, 170, および 171 はWO 2008/116620に示唆される構造的要素に基づいている。比較化合物番号172, 173 および 174はWO 2008/116620に示唆される構造的要素と、WO 2010/031589 および WO 2014/159637に示唆されるピリジン環部分の構造的修飾(フェニル環で置換)を実際に組み合わせたものである。しかしながら、この点において、WO 2010/031589 およびWO 2014/159637のいずれも、フェニル環部分中の塩素原子のメタ位での、特許請求する置換基についての教示や示唆を何ら提供していないことを注意すべきである。実際、WO 2010/031589 およびWO 2014/159637はフェニル環部分中の塩素原子のメタ位にフルオロ置換することについては全く触れておらず、さらにフェニル環中の塩素原子の第2のメタ位には全く異なる置換基を示唆している。
【0183】
A:比較化合物番号169~174の製造
以下の表2に示す比較実施例化合物番号169~174は上述の方法およびWO 2010/031589 およびWO 2008/116620に開示の方法に、合成有機化学の当業者に認められ、知られた変更を適宜加えて製造した。
【0184】
B:試験化合物のhB2Rに対するアンタゴニスト活性
試験化合物の相対的IC50値は実施例12と同じhB2R-CaMアッセイで決定した。結果を以下の表2に示す。
【0185】
C:試験化合物の透過性
試験化合物の透過性はHubatsch I. et al (Nat. Protoc. 2007, 2 (9), 2111-2119)に記載のCaco-2細胞透過性アッセイで決定した。
Caco-2セルラインは異種ヒト上皮性結腸腺癌細胞の連続細胞株である。細胞培養インサートフィルターのような透過性の支持体上でコンフルエントな単層として培養すると、細胞は分化して、イオンや小分子の通過の物理的および生化学的障壁を提供する分極した上皮性細胞単層を形成する。コンフルエントな単層の形態で、Caco-2細胞は経口投与した薬剤の吸収を予測するためのヒト小腸粘膜の確立されたin vitroモデルとして医薬品業界で役割を果たす。細胞単層を横切る両方向(頂端側から基底側へ(A-B)と規定側から頂端側へ(B-A))の輸送を評価することにより、流出速度を決定することができ、これは化合物が活発な流出をするかどうかについての指標を提供する。ある化合物が高い流出速度をもつときには、その化合物がより活発な流出を受けやすいことを示す。理解されるように、活発な流出は実質的に経口の生物学的利用能を損なうことになる。
決定した流出速度の結果を以下の表2に示す。
【0186】
D:試験化合物の代謝安定性
肝クリアランスは体内における最も重要な薬剤排泄機構であり、多くの市販化合物が肝臓のチトクロームP450に仲介される代謝によって排泄される。試験化合物の排泄または排除特性をObach RS (Drug Metab. Dispos. 1999, 27(11), 1350-1359)記載の方法によって代謝安定性アッセイで決定した。
【0187】
アッセイは雄性ウイスターラット(Corning)由来の肝臓ミクロソームを用いて、96ディープウエルプレートで行った。ラット肝臓ミクロソームのインキュベーションを重複して行い、インキュベーション混合物は、全容量0.7 mlのリン酸ナトリウム塩緩衝液(100 mM, pH 7.4)中の肝臓ミクロソーム(0.5 mg ミクロソームタンパク質/mL)、試験化合物(1 μM)、MgCl2 (2 mM)、およびNADPH (1 mM)からなる。NADPHを添加して反応を開始し、37℃の加熱ブロックを備えた水平シェーカーで振とうした。0分、および10分、30分、および60分の時点でアリコート(70 μL)をインキュベーションから取り出し、停止混合物140 μl中に加えた。停止混合物は、内部分析標準としてのジアゼパム、ジクロフェナクおよびグリセオフルビンを補充したアセトニトリルからなる。反応を止めた試料は混合および遠心分離(2,200 x g, 5分)で処理した。粒子を含まない上清を脱イオン水で1+1に希釈し、次に試験化合物の枯渇についての定量的生物分析をLC-MSで行った(ポンプ流速: 600 μL/min; Kinetex Phenyl-Hexyl分析用カラム 2.6 μm, 50x2.1 mm (Phenomenex, Germany))。ベラパミルを1 μMの濃度で含むインキュベーションを高クリアランス陽性対照(PC; n=2)として使用し、またアッセイインキュベーション中のあらゆる試験物質のロスは代謝によるものであることを確かにするために、NADPH なしのインキュベーション(70 μL NADPH 溶液に代えて、70 μl リン酸塩緩衝液(2 mM MgCl2を補充))を陰性対照(NC; n=2)として用いた。
【0188】
代謝安定性アッセイでは、試験化合物の経時的な消失速度を肝臓ミクロソーム中で測定し、そのデータを用いてin vitro 固有クリアランス(Clint)を計算した。Clint データでin vivo の肝臓クリアランスの予測が可能で、言い換えれば、化合物のin vivo での半減期とその経口的生物利用可能性の指標として用いることができる。高度にクリアされる化合物は一般にin vivo で急速にクリアされて作用時間が短いので、好ましくないと考えられている。言い換えれば、低いin vitro 固有クリアランスは通常、in vivo での長い半減期と良好な経口的生物利用可能性を示す。
得られたClint データを以下の表2に示す。
【0189】
【0190】
上記表2からわかるように、本発明の一般式(I)の化合物は多くの重要な利点を示し、その存在はこれまで予期できなかった。先行技術に提案される構造要素を含む化合物と比較して、本発明の化合物は以下の特徴を示す:
・hB2Rに対する高いアンタゴニスト活性;
・有意に改善された流出速度;および
・有意に改善された代謝安定性。
【0191】
より特定すると、本発明の一般式(I)の例示化合物、すなわち実施例化合物番号1、6 および 13 はhB2Rに対する改善されたアンタゴニスト活性を示す。たとえば、実施例化合物番号13は7.6の相対的IC50 値をもち、これは比較化合物番号169および比較化合物番号172の相対的IC50 値のそれぞれ7.5倍および3.8倍改善されており、これらの化合物は本発明の構造的要素-ベンジルの立体中心の立体配置と組み合わせた、塩素原子のメタ位にあるフッ素原子をもっていない。
【0192】
本発明の一般式(I)の例示化合物、すなわち実施例化合物番号1、6 および 13はまた、対応する比較化合物と比べて改善された流出速度を示す。実際、全ての実施例化合物は1.5より小さい非常に好ましい流出速度をもち、一方比較化合物番号169および171は2より大きい好ましくない高流出速度をもち、これは該化合物が活発な流出にさらされることを示す。
【0193】
本発明の一般式(I)の例示化合物、すなわち実施例化合物番号1、6 および 13はまた、対応する比較化合物と比べて有意に改善された代謝安定性を示す。実際、全ての実施例化合物は、本発明の構造的要素の組合せをもっていない対応の比較化合物と比べて実質的に低い固有クリアランスを示す。たとえば、実施例化合物番号6は28のClint をもち、これは比較化合物番号171および比較化合物番号174のClint と比べてそれぞれ17.8倍および4.8倍低い。
【0194】
さらに、ベンジルの立体中心における本発明の立体化学配置をもつ化合物は、より予測可能な薬物動態、安全性、毒性および忍容性を示し、これは全ての化合物が同様に代謝されるからであり、これは異なる立体化学をもつ化合物が異なって代謝されたり、あるいは異なる速度で代謝されるのと対照的である。
【0195】
全体として、これらの結果は、本発明の一般式(I)の化合物が本発明の構造的要素の組合せ(たとえば、フェニル部分中の塩素原子のメタ位にあるフッ素原子と、本発明によるベンジルの立体中心におけるアルキルベースの置換基の立体化学配置との組合せ)をもたない化合物よりも、活性や吸収および排泄のような薬物動態において優れていることを示している。さらに、これらの結果は本発明の一般式(I)の化合物が経口医薬の活性薬剤として適していることを示している。
本明細書および/または特許請求の範囲に開示する本発明の特徴は、個別に、およびそのあらゆる組合せの両方で、本発明の種々の形態において本発明を理解するための素材である。