(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027088
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】プルランを作製する方法
(51)【国際特許分類】
C12P 19/10 20060101AFI20230221BHJP
【FI】
C12P19/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022184620
(22)【出願日】2022-11-18
(62)【分割の表示】P 2019555886の分割
【原出願日】2018-04-09
(31)【優先権主張番号】62/485,855
(32)【優先日】2017-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511291027
【氏名又は名称】カプスゲル・ベルギウム・ナムローゼ・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Capsugel Belgium NV
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・エフ・ブライト
(72)【発明者】
【氏名】ブラブドン・イェー・ダウニー
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン・ベラー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】オーガニック表示の要件を満たすプルランカプセルの原料としてのプルランを製造する方法を提供する。
【解決手段】プルランを製造する方法であって、a.水、窒素供給源、炭素供給源、リン酸塩供給源及びマグネシウム供給源を含む発酵培地を調製するステップ、b.プルランを産生する微生物を発酵培地に接種するステップ、c.発酵培地でプルランを産生するように発酵培地で微生物を培養するステップを含み、リン酸塩供給源はリン酸カルシウムを含む、方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プルランを製造する方法であって、
a.水、窒素供給源、炭素供給源、リン酸塩供給源及びマグネシウム供給源を含む発酵培地を調製するステップ、
b.プルランを産生する微生物を発酵培地に接種するステップ、
c.発酵培地でプルランを産生するように発酵培地で微生物を培養するステップを含み、
リン酸塩供給源はリン酸カルシウムを含む、方法。
【請求項2】
リン酸塩供給源がリン酸カルシウムからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
発酵培地が、約0.25g/L~約4g/Lの初期リン酸カルシウム濃度を有する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
マグネシウム供給源が塩化マグネシウムである、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
発酵培地が、0.01g/L~1g/Lの塩化マグネシウムの初期濃度を有する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
窒素供給源が、酵母抽出物、NH4OH、L-グルタミン、NaNO3、NH4Cl及びL-アルギニンからなる群から選択される、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
窒素供給源が酵母抽出物である、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
炭素供給源が、グルコース、マルトース、ラクトース、スクロース、果実及び植物のシロップ、果実及び植物の糖蜜からなる群から選択される、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
炭素供給源がスクロースである、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
微生物がアウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)である、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
微生物がアウレオバシジウム・プルランス、ATCC番号42023である、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
微生物の培養が殺菌によって停止される、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
プルランの分子量を、微生物によって産生されたプルラナーゼによって低下させ、方法が、プルランの分子量を低下させるために酸又は加熱を加えるステップを含まない、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
発酵培地が2.5~8の初期pHを有する、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
微生物が少なくとも3日間培養される、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の方法から産生されたプルラン。
【請求項17】
200~500kDaの分子量を有する、請求項15に記載のプルラン。
【請求項18】
少なくとも50mg/kg、又は少なくとも100mg/kg、又は少なくとも200mg/kg、又は少なくとも300mg/kg、又はさらには少なくとも500mg/kgのCa2+含有量を有するプルラン。
【請求項19】
少なくとも10mg/kg、又は20mg/kg、又は30mg/kg、又は少なくとも40mg/kg、又はさらには少なくとも50mg/kgのMg2+含有量を有するプルラン。
【請求項20】
(Mg2++Ca2+)/K+の比が、3を超える、又は5を超える、又は10を超える、又はさらには15を超える、請求項19に記載のカプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2017年4月14日に出願された米国仮出願第62/485,855号の利益を主張するものである。
【0002】
主要なリン酸塩供給源としてリン酸カルシウムを含有する発酵培地で、微生物によってプルランを産生する方法が開示される。
【背景技術】
【0003】
プルランは、グルコースのポリマー、より詳しくは、三糖の末端グルコシド残基間でα-1,6結合によって連結した、α-1,4結合マルトトリオース単位からなる多糖である。
【0004】
プルランは、アウレオバシジウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)の株が発酵培地で好気的に培養されると、その株から細胞外に得られる。このようにして得られたプルランの重合度は、数百~数千キロダルトン(kDa)の範囲にあると報告されている。高い製品品質一貫性は、発酵プロセスの制御により得ることができる。
【0005】
プルランを用いて形成されたフィルムは、そのようなフィルムがカプセルのような製品の形成に好適となる、様々な特性を有する。そのような得られたフィルムは、優れた均質性及び透明性を有する。さらに、そのようなフィルムは、非常に低い酸素透過性を有する。したがって、プルランから作製されたカプセルは、魚油及び植物油のような酸素に敏感な製品の充填のために特に有用である。プルランから作製されたそのようなフィルム及び得られるカプセルはまた、比較的低い含水率を有し、機械的特性及び溶解特性に関するような貯蔵上高い安定性を示す。
【0006】
プルランが天然起源でありフィルム形成材料としての特性が優れているため、すべて天然起源の原料を有するカプセルの製造についてプルランは望ましいポリマーになっている。プルランを用いて作製されたカプセルは、これによって「オーガニック」表示のための要件を満たすことができる。オーガニック表示の要件を満たすカプセルに対する商業的必要性にもかかわらず、オーガニック表示の要件を満たす、満足すべきプルランカプセルは、現在までのところ開発されていない。これは、主としてオーガニック表示の要件を満たすように作製される原料としてのプルランが存在しないためである。
【発明の概要】
【0007】
一実施形態において、プルランを製造する方法であって、a.水、窒素供給源、炭素供給源、リン酸塩供給源及びマグネシウム供給源を含む発酵培地を調製するステップ;b.プルランを産生する微生物を発酵培地に接種するステップ;c.発酵培地でプルランを産生するように発酵培地で微生物を培養するステップを含み、リン酸塩供給源はリン酸カルシウムを含む、方法が提供される。
【0008】
一実施形態において、リン酸塩供給源は、リン酸カルシウムを含み、本質的にこれからなり、又はこれからなる。
【0009】
一実施形態において、発酵培地は、約0.25g/L~約4g/Lの初期リン酸カルシウム濃度を有する。
【0010】
一実施形態において、マグネシウム供給源は塩化マグネシウムである。
【0011】
一実施形態において、発酵培地は、0.01g/L~1g/Lの塩化マグネシウムの初期濃度を有する。
【0012】
一実施形態において、窒素供給源は、酵母抽出物、NH4OH、L-グルタミン、NaNO3、NH4Cl、アルギニン又はこれらの混合物である。
【0013】
一実施形態において、窒素供給源は酵母抽出物である。
【0014】
一実施形態において、炭素供給源は、グルコース、マルトース、ラクトース、スクロース、果実及び植物のシロップ、果実及び植物の糖蜜又はこれらの混合物である。
【0015】
一実施形態において、炭素供給源はスクロースである。
【0016】
一実施形態において、微生物はアウレオバシジウム・プルランスである。
【0017】
一実施形態において、微生物はアウレオバシジウム・プルランス、ATCC番号42023である。
【0018】
一実施形態において、微生物の培養は殺菌によって停止される。
【0019】
一実施形態において、プルランの分子量を、微生物によって産生されたプルラナーゼによって低下させ、本方法は、プルランの分子量を低下させるために酸又は熱を加えるステップを含まない。
【0020】
一実施形態において、発酵培地は2.5~8の初期pHを有する。
【0021】
一実施形態において、微生物は少なくとも3日間培養される。
【0022】
一実施形態において、プルランは前述の方法から産生される。
【0023】
一実施形態において、プルランは200~500kDaの分子量を有する。
【0024】
一実施形態において、プルランは、少なくとも50mg/kg、又は少なくとも100mg/kg、又は少なくとも200mg/kg、又は少なくとも300mg/kg、又はさらには少なくとも500mg/kgのCa2+含有量を有する。
【0025】
一実施形態において、プルランは、少なくとも10mg/kg、又は20mg/kg、又は30mg/kg、又は少なくとも40mg/kg、又はさらには少なくとも50mg/kgのMg2+含有量を有する。
【0026】
一実施形態において、プルランは、3を超える、又は5を超える、又は10を超える、又はさらには15を超える(Mg2++Ca2+)/K+の比を有する。
【0027】
前述の一般的な記載及び以下の詳細な記載はともに、例示及び説明のためのみであり、特許請求の主題を限定するものでないことは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施例1で測定されたプルラン濃度、分子量及びバイオマス濃度の時間進行プロットを表すグラフである。
【
図2A】実施例2で測定されたプルラン濃度、分子量及びバイオマス濃度を示すグラフである。
【
図2B】実施例2で測定されたプルラン濃度、分子量及びバイオマス濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<定義>
【0030】
本明細書において使用される場合、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」による要素への言及は、1個でありかつ1個のみの要素が存在することを文脈が明確に要求しない限り、1個より多い要素の存在する可能性を除外しない。したがって、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は通常「少なくとも1つ」を意味する。数的範囲の開示は、特に明記しない限り、終点を包括する範囲内の各離散的な地点を指すものと理解されなければならない。数的範囲の開示に使用される用語「約」は、明示された値からの乖離が測定ばらつきの結果及び/又は同一若しくは同様の特性の生成物を与える程度に、この乖離が許容できることを示す。
【0031】
本明細書において使用される場合、「w/w%」及び「wt%」は、合計重量の百分率として、重量によることを意味する。
【0032】
<プルランを作製する方法>
【0033】
プルランを製造する方法は、
a.水、窒素供給源、炭素供給源、リン酸塩供給源及びマグネシウム供給源を含む発酵培地を調製するステップ;
b.プルランを産生する微生物を発酵培地に接種するステップ;
c.発酵培地でプルランを産生するように発酵培地で微生物を培養するステップを含む。
【0034】
発酵培地は、プルランの産生に適切な任意の炭素供給源を含有していてもよい。適切な既知の炭素供給源は、スクロース、フルクトース及びグルコースのような糖類;異性化糖、転化糖のような改質糖類;デンプンのような炭水化物;並びにタピオカ及びナツメのような天然産物を含む。好ましい実施形態において、炭素供給源は、オーガニック表示の要件を満たすものとして認定される。一実施形態において、炭素供給源はスクロースである。炭素供給源、例えば、スクロースは、発酵培地中に最初、10g/L~200g/L、より好ましくは60g/L~110g/Lの濃度で存在する。
【0035】
発酵培地は、プルランの産生に適切な任意の窒素供給源を含有していてもよい。一般に、アンモニウム塩、硝酸塩、ペプトン及び酵母抽出物が、窒素供給源として使用されてもよい。好ましい実施形態において、窒素供給源は、オーガニック表示の要件を満たすものとして認定される。一実施形態において、窒素供給源は酵母抽出物である。窒素供給源、例えば、酵母抽出物は、発酵培地中に最初、1g/L~6g/L(0.08g/L~0.4g/Lの窒素当量)の濃度で存在する。
【0036】
発酵培地はまた、リン酸カルシウムを含むリン酸塩供給源を含有する。一実施形態において、リン酸塩供給源はリン酸カルシウムからなる。リン酸カルシウムは、オーガニック表示の要件を満たすと認定することができるので、リン酸塩の好ましい供給源である。リン酸カルシウムは、発酵培地中に最初、0.25g/L~4g/Lの濃度で存在する。
【0037】
発酵培地はまた、プルランの製造に適切なマグネシウム供給源を含む。一実施形態において、マグネシウム供給源は塩化マグネシウムからなる。塩化マグネシウムは、オーガニック表示の要件を満たすと認定することができるので、マグネシウムの好ましい供給源である。マグネシウム供給源は、発酵培地中に最初、0.01g/L~1g/L(0.1mM~10.5mMのMg又は0.002g/L~0.26g/LのMg)の濃度で存在する。
【0038】
発酵培地は、他の任意選択の材料を含有していてもよい。一実施形態において、発酵培地は、アスコルビン酸を含有していてもよい。アスコルビン酸は、初期の発酵培地の0.2mg/ml~3mg/mlの量で存在してもよい。
【0039】
発酵培地中に含まれていてもよい他の任意選択の材料は、塩化ナトリウムのような塩を含む。
【0040】
発酵培地のpHは、2.5~8の範囲であってもよい。発酵培地のpHは、水酸化ナトリウム及び塩酸のような酸、塩基又は緩衝剤の添加によって調整されてもよい。
【0041】
発酵培地は、微生物を培養するのに適切な、振盪フラスコ又はバイオリアクターのような何らかの容器で調製されてもよい。発酵培地原料及び水は、容器に加えられ、撹拌され、又は揺動されて、原料を溶解する又は一様に分散させる。次いで、微生物の導入前に、発酵培地は、例えば少なくとも60℃の温度へ少なくとも30分間の加熱によって殺菌される。
【0042】
本発明で使用可能なプルランを産生する微生物は、アウレオバシジウム・プルランス、プルラリア・フェルメンタンス・バール・フェルメンタンス(Pullularia fermentans var fermentans)IFO6401、プルラリア・フェルメンタンス・バール・フスカ(Pullularia fermentans var fusca)IFO6402、プルラリア・プルランス(Pullularia pullulans)AHU9553、プルラリア・プルランスIFO6353、デマティウム・プルランス(Dematium pullulans)IFO4464を含む。好ましいプルランを産生する微生物はアウレオバシジウム・プルランスである。アウレオバシジウム・プルランスは、ATCCから得ることができる。好ましいクローンは、アウレオバシジウム・プルランス、ATCC番号42023である。
【0043】
発酵培地を加熱殺菌しpH調節した後、微生物は培地で曝気及び/又は揺動しながら25~30℃で、好ましくは27℃で約3~7日間、培養される。曝気は、空気散布によって行われてもよい。揺動は撹拌羽根によって行われてもよい。発酵開始の約3日後に、相当な量のプルランの堆積が観察され、培養混合物の粘度は高まる。
【0044】
培地中のプルラン濃度及び分子量は、一定間隔で求められてもよい。培養は、プルラン濃度の値が20g/Lを超える濃度に近づき、200kDa~500kDaの分子量を有するとき、中止されてもよい。
【0045】
発酵はプルラン分子量が200kDa~500kDaになり、プルランの10wt%溶液の粘度が100cP~190cPになったとき、停止されてもよい。発酵は殺菌によって停止されてもよい。
【0046】
発酵中に産生されるプルランの分子量は、発酵プロセス中に経時的に変化する。これは一部、微生物によるプルラナーゼの産生による。一実施形態において、プロセス中に産生されるプルランの分子量は、主に微生物によって産生されるプルラナーゼによって制御される。これによって、プルランの分子量を低下させるために酸のような材料又は高温をバイオリアクターに加える追加のステップが不要になる。
【0047】
微生物細胞は、遠心分離機にかけることにより液体培地から除去されてもよく、細胞を含まない液体培地は、所望の場合、活性炭を用いて漂白されてもよい。
【0048】
プルランは、有機溶媒中での沈殿によって精製されてもよい。好ましくは、遠心分離後の上澄みは、蓄積されたプルランを沈殿させるためにメタノール又はエタノールのような親水性有機溶媒と混合される。所望の場合、回収されたプルランは、温水に溶解し、溶媒によってもう一度沈殿させる。
【0049】
乾燥後得られるプルランは、水に非常に容易に溶解して粘性のある溶液を形成する白っぽい粉末である。得られるプルランの分子量は、培養条件に応じて50,000~4,500,000Daと、様々である。プルランの収率もまた、培養条件に応じて20~75%と、様々である。
【0050】
一実施形態において、得られるプルランは、比較的高濃度のカルシウム(Ca2+)及びマグネシウム(Mg2+)イオンを有する。発酵培地は、リン酸カルシウム及び塩化マグネシウムを含む。これによって、比較的大量のカルシウム及びマグネシウムを含む最終のプルラン生成物が得られる。さらに、沈殿プロセスを使用しており、イオンを除去するためのイオン交換プロセスがないので、開始時のカルシウム及びマグネシウムのうちかなりの割合を保持する。一実施形態において、プルランは、少なくとも50mg/kg、又は少なくとも100mg/kg、又は少なくとも200mg/kg、又は少なくとも300mg/kg、又はさらには少なくとも500mg/kgのCa2+含有量を有する。別の実施形態において、プルランは、少なくとも10mg/kg、又は20mg/kg、又は30mg/kg、又は少なくとも40mg/kg、又はさらには少なくとも50mg/kgのMg2+含有量を有する。一実施形態において、(Mg2++Ca2+)/K+の比は、3を超え、又は5を超え、又は10を超え、又はさらには15を超える。
【0051】
本発明の別の実施形態において、オーガニックプルランの作製用の発酵培地を作製するための使用に適切である乾燥発酵培地が提供される。一実施形態において、乾燥発酵培地は、
(a)89wt%~99wt%の量の炭素供給源
(b)0.9wt%~9wt%の量の窒素供給源;及び
(c)0.2wt%~0.7wt%の量のリン酸カルシウムからなるリン酸塩供給源を含む。
【0052】
一実施形態において、乾燥発酵培地は、0.009wt%~1.6wt%の量の塩化マグネシウムを含む。
【0053】
本明細書において記載された実施形態が、これらに限定されないことは理解されなければならない。本開示の他の実施形態は、開示された実施形態の仕様及び実施を考慮することによって当業者には明白である。以下の実施例は、単なる例示として考えられるべきであり、本開示の真の範囲及び趣旨は以下の特許請求の範囲によって示される。
【実施例0054】
[実施例1]
【0055】
以下のようにオーガニックプルラン発酵培地を調製した。2g/Lのリン酸モノカルシウム(Ca(H2PO4)2)、0.2g/Lの硫酸マグネシウム(MgSO4)及び1g/Lの塩化ナトリウム(NaCl)を水に加え、激しく揺動しながら少なくとも15分間均一に分散させた。リン酸モノカルシウムは完全には溶解しなかったが、均一に分散して懸濁液となった。次いで、3g/Lのオーガニック酵母抽出物を混合物に加えて溶解した。最終的に、100g/Lのオーガニックスクロースを混合物に加えて溶解した。追加の水で最終体積に調節した後、溶液pHを4.85と測定した。培地は121℃で40分間水蒸気殺菌した。
【0056】
A.プルランス(A.pullulans)のプレート培養物からかき取ったものを、30mLのオーガニックプルラン発酵培地を含有する、殺菌した125mLの振盪フラスコに接種することにより、接種培養物を調製した。プレート培養物は、ポテトデキストロース寒天上で成長させた。次いで、バイオリアクター中で0.32mg/mLの初期バイオマス濃度となるのに十分なバイオマスが得られるまで、振盪フラスコを1:60の希釈率で少なくとも4日毎に継代した。
【0057】
殺菌したオーガニックプルラン発酵培地でバイオリアクターを予備充填し、28℃の温度に制御し、接種前及び発酵中に単一Rushtonインペラーを用いて700W/m3の電力入力で揺動した。次いで、0.32mg/mLの反応器バイオマス濃度とするのに十分な量で反応器に接種物を加えた。15μmの石製多孔分散管によって純酸素を吹き込むことにより、空気飽和度>50%に溶存酸素を制御した。反応器ガス処理システムは、非低酸素条件を維持するために少なくとも110mM/時間の酸素移動速度が達成されるように設計した。発酵培地に濃縮物を直接戻す凝縮器を通して、排気ガスを追い出した。反応器の作業体積は1.25Lであり、反応器容積の合計は2Lであった。次いで、93時間発酵を進行させた。pHは制御できなかった。93時間目で培養物を>60℃に加熱することにより、発酵を停止した。
【0058】
培養物を日々試料採取して、バイオマス濃度、プルラン濃度及びプルラン分子量を測定した。
【0059】
以下のようにバイオマス濃度を求めた。バイオリアクターから30mLの試料を取り出し、予備秤量した50mLの遠心分離管に配置した。次いで、10000gの力で試料を20分間遠心分離機にかけた。上澄みを保持してプルラン濃度及び分子量を求めた。10mLの水を用いてペレットをすすぎ、再懸濁し、10000gの力でさらに20分間遠心分離した。次いでペレットを瞬間凍結し、凍結乾固した。次いで、乾燥ペレットを秤量し、バイオマス濃度は、バイオリアクター試料の量及びペレットの重量に基づいて算定した。
【0060】
バイオマス分析から得られた最初の上澄みのうち20mLを、1:1.4の比で90%の低温エタノール中に沈殿させることにより、プルラン濃度を求めた。次いで、沈殿したプルランを水に10wt%で溶解した。次いで、この溶液をもう一度同一の比で新鮮な低温エタノール中に沈殿させた。次いで、得られたペレットを乾燥し秤量した。次いで、上澄み試料の量、及び乾燥したプルランペレットの重量に基づいてプルラン濃度を求めた。
【0061】
乾燥したプルランペレットを水に溶解し、10mg/mLの濃度にして、プルラン分子量を求めた。次いで、得られた溶液を0.45umのフィルターに通して濾過し、次いで、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)システムに注入した。HPLCシステムは、サイズ排除カラムを備えていた。ポリマーサイズ及び立体配座と直接相関する時間、プルランポリマーはカラムに保持された。屈折率検出器によってプルランの溶出を検出することにより、保持時間を求めた。多角度光散乱検出器内でのポリマーの応答によって、ポリマーサイズを求めた。多角度光散乱検出器での応答を正規化し、他の既知の分子量標準の測定によって検証した。
【0062】
[実施例2]
【0063】
この実施例において、接種列及びオーガニックプルラン培地処方の継代を含めて、実施例1に記載したように細胞培養物を継代し維持した。完全に認定されるオーガニックプルラン培地を評価するために、本発明者らは、MgSO
4を、認定されたオーガニックMgCl
2と置換して評価した(Mitoku;Tokyo、Japan)。この実験において、3個の別個の125mL PETG振盪フラスコで、0.5mLの接種物を30mLの量のオーガニックプルラン培地(1:60)に接種した。これらの振盪フラスコの1つは、実施例1に記載したのと同一の組成を有する培地を含有していた。他の2個の振盪フラスコに関しては、MgCl
2を、0.16g/L及び0.32g/Lの濃度のMgSO
4に置換した(成分の残りは、実施例1で略述したのど同様であった)。これらの振盪フラスコ培養物は、28℃、200RPMの振盪で軌道型振盪機インキュベーター中4日間成長した。4日目に、実施例1に記載したのと同一の手順を使用して、プルラン収率及びバイオマスについてこれらの振盪フラスコ培養物を分析した。
図2にこの調査からの結果を示す。
【0064】
[実施例3]
【0065】
この実施例において、実施例2のプロセスに従って、プルランを産生した。このプルラン(プルランAと称する。)、及びHayashibaraによって産生されたプルランの代表的な試料(プルランBと称する。)を、Mg2+及びCa2+含有量についてそれぞれ標準プロトコルSM3111B及びD(フレーム原子吸収分光法)に従って分析した。各プルラン試料を3回繰り返して分析した。この分析から、Mg2+及びCa2+の両方の濃度が、プルランAでプルランBより高いと判断した。
【0066】