(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027093
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】光バイオリアクターデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230221BHJP
C12M 1/04 20060101ALI20230221BHJP
C12M 1/36 20060101ALI20230221BHJP
C12Q 3/00 20060101ALI20230221BHJP
C12N 1/12 20060101ALN20230221BHJP
C12N 1/00 20060101ALN20230221BHJP
C12R 1/89 20060101ALN20230221BHJP
【FI】
C12M1/00 E
C12M1/04
C12M1/36
C12Q3/00
C12N1/12 A
C12N1/00 C
C12R1:89
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022184934
(22)【出願日】2022-11-18
(62)【分割の表示】P 2019529569の分割
【原出願日】2017-12-01
(31)【優先権主張番号】PCT/GB2016/053786
(32)【優先日】2016-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1708940.0
(32)【優先日】2017-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】518192736
【氏名又は名称】アーボレア リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ARBOREA LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100229264
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 正一
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン ポール メルキオッリ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】膜光バイオリアクター内に含まれる液体培地内の、CO
2およびO
2を含む特定の気体の濃度を制御するデバイスおよび方法を提供する。
【解決手段】バイオマスの生産および環境汚染の修復のための光バイオリアクターデバイスおよびユニットが提供される。バイオリアクターデバイスは、膜光バイオリアクター(PBR)60を含み、PBRは、液体培地12、少なくとも1種の光合成微生物、および少なくとも1つの外側膜層を含み、膜層は、膜層を横切る気体移動に透過性である材料からなる;その中に取り囲まれた気体大気を画定するチャンバー50をさらに含み、PBRはチャンバー内に配置されている。デバイスは、チャンバー内の大気の組成を制御する制御システムも含む。気体移動は、PBRとチャンバー内に含まれる大気との間で、PBRの膜層を横切って起こる。
【選択図】
図19a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを生産するためのデバイスであって、
膜光バイオリアクター(PBR)であって、前記PBRが、液体培地、少なくとも1種
の光合成微生物、および少なくとも1つの外側膜層を含み、前記膜層が、前記膜層を横切
る気体移動に透過性である材料からなる膜光バイオリアクターと、
その中に取り囲まれた気体大気を画定するチャンバーであって、前記PBRが前記チャ
ンバー内に配置されているチャンバーと、
前記チャンバー内の大気の組成を制御する制御システムと、を含み、
気体移動が、前記PBRと前記チャンバー内に含まれる大気との間で、前記PBRの膜
層を横切って起こる、デバイス。
【請求項2】
前記チャンバーが複数の壁からなり、少なくとも1つの壁、またはその一部が、そこを
通っての前記チャンバーの内部への可視光の透過を可能にする、請求項1に記載のデバイ
ス。
【請求項3】
前記チャンバーが照明源を含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記チャンバーの壁が実質的に硬い、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記チャンバーの壁がエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)を含む、請求項1
~3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記PBRの膜層が半透明であり、典型的には実質的に透明である、請求項1~5のい
ずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記PBRの膜層が、ポリシロキサン、典型的にはポリジメチルシロキサン(PDMS
)を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記PBRの膜層を通る酸素の透過係数が、少なくとも約100バーラー以上、適切に
は少なくとも200以上、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少
なくとも650、少なくとも750、適切には少なくとも820バーラーから選択される
、請求項1~7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記PBRの膜層を通る二酸化炭素(CO2)の透過係数が、少なくとも400以上、
少なくとも600、少なくとも800、少なくとも1000、少なくとも1500、少な
くとも2000、少なくとも2200、少なくとも2500、少なくとも2800、少な
くとも2900、少なくとも3000、少なくとも3100、少なくとも3200、少な
くとも3300、少なくとも3400、少なくとも3500、少なくとも3600、少な
くとも3700、少なくとも3800、適切には少なくとも3820バーラーから選択さ
れる、請求項1~8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記PBRが、前記気体不透過性チャンバー内の大気によって全側面を実質的に囲まれ
ている、請求項1~9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記チャンバー内に配置されている複数のPBRを含み、前記PBRの液体培地が流体
連通している、請求項1~10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記少なくとも1種の光合成微生物が、ヘマトコッカス種、ヘマトコッカス・プルビア
リス、クロレラ属、クロレラ・オートグラフィカ、クロレラ・ブルガリス、シーンデスム
ス属、シネココッカス属、シネココッカス・エロンガタス、シネコシスティス属、アルス
ロスピラ属、アルスロスピラ・プラテンシス、アルスロスピラ・マキシマ、スピルリナ属
、クラミドモナス属、クラミドモナス・レインハルトチイ、ジモルフォコックス属、ガイ
トレリネマ属、リングビア属、クロオコッキディオプシス属、カロスリックス属、シアノ
シス属、オスキラトリア属、グロエオシス属、ミクロコレウス属、ミクロシスティス属、
ノストック属、ナンノクロロプシス属、アナベナ属、フェオダクチラム属、フェオダクチ
ラムトリコニウタム、ドナリエラ属、ドナリエラ・サリナからなる群のうちの1つまたは
複数から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記チャンバーが2つ以上の区画に分割され、少なくとも第1チャンバー区画と第2チ
ャンバー区画とを提供する、請求項1~12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記制御システムが、CO2豊富気体を前記チャンバーまたはチャンバー区画の1つも
しくは複数に導入するよう構成されている、請求項1~13のいずれか一項に記載のデバ
イス。
【請求項15】
前記制御システムが、O2枯渇気体を前記チャンバーまたはチャンバー区画の1つもし
くは複数に導入するよう構成されている、請求項1~14のいずれか一項に記載のデバイ
ス。
【請求項16】
前記制御システムが、工業原料または燃焼源からの排出気体を前記チャンバーまたはチ
ャンバー区画の1つもしくは複数に導入するよう構成されている、請求項1~15のいず
れか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記チャンバー内の圧力が大気圧よりも大きくなるように、前記制御システムが前記チ
ャンバー内に気体を導入するよう構成されている、請求項1~16のいずれか一項に記載
のデバイス。
【請求項18】
前記チャンバーが実質的に気体不透過性である、請求項1~17のいずれか一項に記載
のデバイス。
【請求項19】
膜光バイオリアクター(PBR)内の微生物培養物を制御するための方法であって、前
記PBRが少なくとも1つの外側膜層を含み、少なくとも1種の気体が前記膜層を通過す
ることができ、
前記PBR内に微生物培養物を提供する工程であって、前記微生物培養物が液体培地お
よび少なくとも1種の光合成微生物を含み、バイオマスを産生する能力がある工程と;
チャンバー内に前記PBRを配置する工程であって、前記チャンバーが少なくとも第1
入口を含み、さらに前記チャンバー内に気体大気を画定して取り囲む壁を含む工程と;
前記第1入口を通って前記チャンバーに入る供給気体の含有量を制御することによって
前記チャンバー内の大気を制御する工程とを含み;
前記チャンバー内の大気の大気組成を制御することによって、前記PBR内の微生物培
養物によるバイオマスの生産が制御される、方法。
【請求項20】
前記チャンバー内の気体大気を画定し取り囲む前記壁が、前記チャンバーを実質的に気
体不透過性にする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記チャンバー内の圧力が実質的に大気圧に維持される、請求項19または20に記載
の方法。
【請求項22】
前記チャンバー内の圧力が、大気圧より高い正圧に維持される、請求項19または20
に記載の方法。
【請求項23】
前記液体培地のpHが前記チャンバー内の気体大気によって制御される、請求項19~
22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
バイオマス製造用アセンブリであって、請求項1~18のいずれか一項に記載の複数の
デバイスを含み、複数のPBRの前記液体培地が流体連通しており;複数のチャンバーの
前記大気が流体連通している、アセンブリ。
【請求項25】
膜光バイオリアクター(PBR)であって、前記PBRが、液体培地、少なくとも1種
の光合成微生物、および少なくとも1つの外側膜層を含み、前記膜層が、前記膜層を横切
る気体移動に透過性である材料からなる膜光バイオリアクターと;
その中に取り囲まれた気体大気を画定するチャンバーであって;
前記PBRの少なくとも一部が前記チャンバー内に配置されているチャンバーとを含む
、バイオマス製造用デバイス。
【請求項26】
前記PBRの少なくとも30%、典型的には少なくとも50%、適切には少なくとも7
0%、任意に少なくとも90%が前記チャンバー内に配置されている、請求項25に記載
のデバイス。
【請求項27】
前記PBRの実質的に全部が前記チャンバー内に配置されている、請求項25または2
6に記載のデバイス。
【請求項28】
膜光バイオリアクター(PBR)であって、前記PBRが、液体培地、少なくとも1種
の光合成微生物、および少なくとも1つの外側膜層を含み、前記膜層が、前記膜層を横切
る気体移動に透過性である材料からなる膜光バイオリアクターと;
その中に取り囲まれた気体大気を画定する壁を含むチャンバーであって;
前記PBRが前記チャンバー内に配置されているチャンバーとを含む、バイオマス製造
用デバイス。
【請求項29】
前記チャンバーが少なくとも上壁と下壁とを備える、請求項28に記載のデバイス。
【請求項30】
前記上壁が丸い凸形状を有し、その上に画定された表面からの流体の流出を可能にする
、請求項29に記載のデバイス。
【請求項31】
前記上壁が水平に対して傾斜しており、その上に画定された表面からの流体の流出を可
能にする、請求項29に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを発生させ、環境改善に役立てるために使用することができる光
バイオリアクターデバイスに関する。そのようなデバイスは、環境から二酸化炭素および
窒素酸化物などの気体を除去することもでき、酸素を発生させることができる。
【背景技術】
【0002】
化石燃料ベースのエネルギー源への依存からの世界的な移行のために、バイオマスは、
エネルギー生成、化学物質の製造、食品および飼料成分の製造ならびに他の産業および環
境用途にとってますます重要になっている。微生物由来のバイオマスは、トウモロコシお
よびダイズなどの他の種類の陸上農業用バイオマスよりもはるかに速く生産でき、収穫後
に加工して(例えば発酵または精製により)バイオディーゼル、エタノール、ブタノール
およびメタン(バイオガス)などのバイオ燃料を生産することができるため、ならびに/
または貴重な化学物質および栄養素を生産することができるため、ならびに/または食品
および飼料成分を生産することができるため、特に興味深い。
【0003】
米国特許出願公開第2014/186909号明細書は、流体分配構造と連通する、複
数の隣接する流路に分割された透明(または半透明)の可撓性ポリマーフィルムによって
製造された光バイオリアクターカプセルを記載している。
【0004】
米国特許出願公開第2015/0230420号明細書は、培養懸濁液の貫流用の透明
なパイプシステムを使用し、いくつかのレベルにわたる培養を可能にするためにレベルの
形態で構成された、光バイオリアクターならびにそのような光バイオリアクターを備える
バイオガスユニットに関する。
【0005】
DE102012013587は、壁によって囲まれた反応チャンバーを画定する使い
捨て袋と、前記壁のすぐ近くに配置された光源とを含む光バイオリアクターに関する。
【0006】
米国特許出願公開第2014/0093924号明細書は、バイオフィルムを形成し、
光合成およびそれに続く自己発酵を通して化学製品を製造する、光合成自己発酵微生物を
有する平面パネルバイオフィルム光バイオリアクターシステムを記載している。
【0007】
国際公開第2015/116963号パンフレットは、気体および/または栄養素の導
入を可能にする少なくとも1つの開口部を除いて、本質的に閉鎖されているシステムを画
定するバイオリアクターに関する。気体および/または栄養素は、バイオリアクター内で
細胞培養物の混合および通気を提供するように導入される。
【0008】
米国特許出願公開第2009/305389号明細書は、可撓性外袋を含み、その外袋
の内側に配置された膜チューブが、その中に含まれる媒体への高濃度の二酸化炭素の導入
を可能にする、光バイオリアクターに関する。
【0009】
米国特許出願公開第2012/329147号明細書は、支持アセンブリと水面近くに
沈められた一群の浮遊CO2/O2透過性光バイオリアクターとを使用する水生藻類製造
装置を記載している。
【0010】
米国特許出願公開第2012/040453号明細書は、酸素を細胞培養物に送達する
酸素運搬分子を使用する酸素透過膜によって分離された少なくとも2つのチャンバーを含
むバイオリアクターに関する。
【0011】
米国特許出願公開第2015/275161号明細書は、光独立栄養性単細胞生物の高
密度培養物の薄層でコーティングされたプラスチックシートを含む光バイオリアクターを
記載している。
【0012】
米国特許出願公開第2010/261918号明細書は、藻類細胞を破壊し、次いで破
壊した細胞から脂質油を分離し、次いでその脂質油をバイオ燃料に変換することを含む、
バイオ燃料生産のために藻類バイオマスから脂質油を分離する方法に関する。
【0013】
米国特許出願公開第2014/144839号明細書は、好気性消化チャンバーからの
流出物と共に供給される微細藻類培養反応器を含む、スラッジ処理からの流出物を使用し
て微細藻類を培養するための装置および方法に関する。
【0014】
米国特許第8409845号は、第1液体(例えば、海水)中に懸濁させたCO2/O
2交換膜を有し、内部の藻類を第2液体中で培養して炭化水素を製造する可撓性袋を記載
している。
【0015】
光バイオリアクター(PBR)はCO2を消費してO2を生成し、その中に含まれる液
体培地からそれぞれ導入および除去されなければならない。
【0016】
高濃度のCO2は、最適温度、最適pH、ならびに高レベルの栄養素および照度の存在
などの一連の他のパラメータと同様に、光合成微生物の増殖を促進することができる。C
O2は、膜ベースのPBRの液体培地中で光合成微生物によって絶えず消費され、大気中
のCO2分圧(pp)は、膜を通る十分なCO2移動を維持し、高濃度のCO2を補充ま
たは維持するのに必ずしも十分に高いわけではない。結果として、最適CO2濃度は液体
培地内で維持されない場合がある。これは、PBRの液体培地中のCO2濃度を効果的か
つ経済的に管理する必要性を示している。この問題を考慮して、当該技術分野においては
、PBRを液体中に浸漬する方向に動く傾向があり、これは膜を横切るCO2ppのより
有利な制御を可能にする。
【0017】
CO2に関連する気候変動の影響を低減するために、炭素の捕捉および隔離(CCS)
のための、すなわち、CO2放出の防止または大気からのCO2の除去のための新規メカ
ニズムを提供する必要もある。そのようなメカニズムの目的は、CO2を使用可能または
保管可能な形態に変換することである。大気は、標準的な環境大気または排出気体の導入
によってなどで改質された大気を含み得る。
【0018】
高濃度のO2は、藻類などの光合成微生物にとって有毒である可能性があり、そのよう
な微生物の増殖を減少させる可能性があり、それによってバイオマス生産率を低下させる
可能性がある。O2は微生物の光合成の老廃物として生成されるため、液体培地から除去
して適切なO2レベルを維持する必要がある。大気中のO2飽和水中のO2の濃度は、光
合成微生物の増殖に最適なO2濃度レベルよりも高い可能性がある。さらに、PBRの液
体培地中のO2濃度と周囲大気中のO2のppとの間の差は、O2の迅速で効果的な枯渇
を可能にするのに十分ではないかもしれない。したがって、液体培地中のO2の濃度を制
御すること、および/または効果的かつ経済的な方法で過剰なO2を除去することも必要
である。やはり、この問題に対処するための当該技術分野における1つの標準的なアプロ
ーチは、膜PBRが液体によって囲まれることを確実にすることである。
【0019】
pHは、光合成微生物の最適な成長にとってもう1つの重要な要因である。気体の供給
を用いて液体培地中のpHレベルを所望の理想値に達するように制御することができ、C
O2では溶液のpHに影響を与えることができ、NH3(アンモニア)を含む他の可能性
もある。
【0020】
特定の気体は特定の微生物において特定の生理活性も刺激し、これらの気体は天然の大
気中には存在しない場合も多い。結果として、液体培地へのまたは液体培地からの特定の
気体の効果的かつ経済的な送達または除去は、特定の微生物活性を刺激する手段を提供す
る。
【0021】
液体培地中の気体濃度の変化は、環境もしくは気候の変化、PBRの用途もしくは設置
の違い、それに含まれる微生物の違い、培養パラメータもしくは生産されるバイオマスの
変化、または微生物活性の変化など、さまざまな原因から発生し得る。
【0022】
したがって、(i)特定の微生物活性を刺激するためにおよび/または(ii)バイオ
マス生産率を上げるためにおよび/または(iii)生産されたバイオマスの化学組成を
変えるために、膜PBR内に含まれる液体培地内の、CO2およびO2を含むがこれらに
限定されない特定の気体の濃度を適応的に制御する必要がある。
【0023】
本発明は、先行技術に存在する問題、特にバイオマスからの価値ある生産物の製造、C
CSの改善、およびPBRシステムのより効率的な制御に対処する。本発明のこれらおよ
び他の用途、特徴および利点は、本明細書中に提供される教示から当業者に明らかである
はずである。
【発明の概要】
【0024】
本発明の第1態様によれば、バイオマス生産用デバイスが提供され、デバイスは膜光バ
イオリアクター(PBR)を含み、PBRは液体培地、少なくとも1種の光合成微生物、
および少なくとも1つの外側膜層を含み、ここで膜層は、膜層を横切る気体移動に透過性
である材料からなる。デバイスは、その中に取り囲まれた気体大気を画定するチャンバー
も含み、ここでPBRはチャンバー内に配置されている;チャンバー内の大気の組成を制
御する制御システムも含む。気体移動は、PBRとチャンバー内に含まれる大気との間で
、PBRの膜層を横切って起こる。適切には、チャンバーは実質的に気体不透過性である
。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態では、チャンバーは複数の壁からなり、少なくとも1つの
壁、またはその一部が、そこを通ってのチャンバーの内部への可視光の透過を可能にする
。チャンバーはさらに照明源を含み得る。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態では、チャンバーの壁は実質的に硬くてもよい。チャンバ
ーの壁はエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)を含み得る。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、PBRの膜層は半透明であってよく、典型的には実
質的に透明であってよく、ポリシロキサンを含み得る。PBRは、チャンバー内の大気に
よって全側面を実質的に囲まれていてもよい。
【0028】
本発明のいくつかの構成では、複数のPBRがチャンバーの内側に配置されてもよく、
PBRの液体培地が流体連通していてもよい。他の構成は、上記のいずれかの複数のデバ
イスを含んでもよく、複数のPBRの液体培地は流体連通しており;複数のチャンバーの
大気は流体連通している。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも1種の光合成微生物は、ヘマトコッカス
種、ヘマトコッカス・プルビアリス、クロレラ属、クロレラ・オートグラフィカ、クロレ
ラ・ブルガリス、シーンデスムス属、シネココッカス属、シネココッカス・エロンガタス
、シネコシスティス属、アルスロスピラ属、アルスロスピラ・プラテンシス、アルスロス
ピラ・マキシマ、スピルリナ属、クラミドモナス属、クラミドモナス・レインハルトチイ
、ジモルフォコックス属、ガイトレリネマ属、リングビア属、クロオコッキディオプシス
属、カロスリックス属、シアノシス属、オスキラトリア属、グロエオシス属、ミクロコレ
ウス属、ミクロシスティス属、ノストック属、ナンノクロロプシス属、アナベナ属、フェ
オダクチラム属、フェオダクチラムトリコニウタム、ドナリエラ属、ドナリエラ・サリナ
からなる群のうちの1つまたは複数から選択され得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、本発明のデバイスは2つ以上の区画に分割され、少なくとも
第1チャンバー区画と第2チャンバー区画とを提供し得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、制御システムは、CO2豊富気体をチャンバーまたはチャン
バー区画の1つもしくは複数に導入するように構成されている。制御システムは、O2枯
渇気体をチャンバーまたはチャンバー区画の1つもしくは複数に導入するように構成され
得る。いくつかの実施形態では、制御システムは、工業原料からの排出気体をチャンバー
またはチャンバー区画の1つもしくは複数に導入するように構成され得る。
【0032】
本発明の別の態様によれば、膜光バイオリアクター(PBR)内の微生物培養物を制御
するための方法が提供され、PBRは少なくとも1つの外側膜層を含み、少なくとも1種
の気体は膜層を通過することができ、本方法は、PBR内に微生物培養物を提供する工程
であって、微生物培養物が液体培地および少なくとも1種の光合成微生物を含み、バイオ
マスを産生する能力がある工程と;チャンバー内にPBRを配置する工程であって、チャ
ンバーが少なくとも第1入口を含み、チャンバー内に気体大気を画定して取り囲む壁をさ
らに含み、いくつかの実施形態において、その壁が、チャンバーを実質的に気体不透過性
にする工程と;第1入口を通ってチャンバーに入る供給気体の含有量を制御することによ
ってチャンバー内の大気を制御する工程とを含み;PBR内の微生物培養物によるバイオ
マスの生産が、チャンバー内の大気の大気組成を制御することによって制御されるおよび
/または影響を受ける。
【0033】
本発明のさらに別の態様のデバイスは、膜光バイオリアクター(PBR)であって、P
BRが、液体培地、少なくとも1種の光合成微生物、および少なくとも1つの外側膜層を
含み、膜層が、膜層を横切る気体移動に透過性である材料からなる膜光バイオリアクター
を含み;その中に取り囲まれた気体大気を画定するチャンバーであって、PBRの少なく
とも一部がチャンバー内に配置されているチャンバーをさらに含む。いくつかの実施形態
では、PBRの少なくとも30%、典型的には少なくとも50%、適切には少なくとも7
0%、任意に少なくとも90%がチャンバーの内側に配置されており、典型的には実質的
に全てのPBRがチャンバー内に配置されている。
【0034】
本発明のさらなる態様のデバイスは、膜光バイオリアクター(PBR)であって、PB
Rが、液体培地、少なくとも1種の光合成微生物、および少なくとも1つの外側膜層を含
み、膜層が、膜層を横切る気体移動に透過性である材料からなる膜光バイオリアクターと
;その中に取り囲まれた気体大気を画定する壁を含むチャンバーであって、PBRがチャ
ンバー内に配置されているチャンバーとを含む。いくつかの実施形態では、チャンバーは
少なくとも上壁と下壁とを備える。上壁は丸い凸形状を有していてもよく、または水平に
対して傾斜していてもよく、その上に画定された表面からの重力下での流体の流出を可能
にする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
添付の図面を参照して、本発明をさらに説明する:
【
図1】入口および出口も設けられた気体充填チャンバー内に配置されており、反対側に配置された入口と出口とを有する線形光バイオリアクターを有する本発明の一実施形態のデバイスの断面図(
図13aの断面A)を示す。
【
図2】本発明の一実施形態のデバイスの断面図を示しており、チャンバー内の大気からPBRへの、およびその逆の気体の移動も示している。
【
図3】チャンバーが2つの区画に分けられている、本発明の一実施形態のデバイスの断面図を示している。
【
図4】本発明の一実施形態のデバイスの断面図を示しており、チャンバーの2つの区画のそれぞれに含まれる大気からPBRへの、およびその逆の気体の移動も示している。
【
図5】直列に直接接続された2つのPBRを有する本発明の一実施形態の構成の断面図を示しており、両方のPBRは単一のチャンバー内に収容されている。
【
図6】直列に直接接続された2つのPBRを有する本発明の一実施形態の構成の断面図を示しており、各PBRはチャンバー内に収容され、その内部も互いに接続されている。
【
図7】導管を介して直列に接続された2つのPBRを有する本発明の一実施形態の構成の断面図を示す。
【
図8】直列に直接接続された2つのPBRを有する本発明の一実施形態の構成の断面図を示しており、各PBRはさらに2つの区画に分離されたチャンバー内に収容されており、各区画の内部は他のチャンバーの対応する区画と接続されている。
【
図9】導管を介して直列に接続された2つのPBRを有する本発明の一実施形態の構成の断面図を示す。
【
図10】チャンバー内に収容されたPBRを有する本発明の実施形態のデバイスの断面図(
図13aの断面B)を示す。
【
図11】チャンバー内に収容されたPBRを有する本発明の実施形態のデバイスの断面図を示しており、チャンバーは2つの区画に分けられている。
【
図12】チャンバー内に収容されたPBRを有する本発明の一実施形態のデバイスの断面図(
図13bの区画C)を示しており、チャンバーは2つの区画に分割されている。
【
図13a】本発明の一実施形態のデバイスを表す平面
図AおよびBを示しており、本明細書で提供される他の図面の理解を助けるために含まれている。
【
図13b】本発明の一実施形態のデバイスを表す平面
図Cを示しており、PBRは分岐した流路を形成する中央流れ制御構造を有し、本明細書に提供される他の図面の理解を助けるために含まれている。
【
図13c】本発明の一実施形態のデバイスを表す平面
図Dを示しており、PBRまたはその一部は、液体培地が流れるための波状または蛇行状の流路を形成する流れ制御構造を有し、本明細書に提供される他の図面の理解を助けるために含まれている。
【
図14a】本発明の一実施形態のデバイスを表す平面
図Aを示しており、
図5によって提供される図面の理解を助けるために含まれている。
【
図14b】本発明の一実施形態のデバイスを表す平面
図Aを示しており、
図6によって提供される図面の理解を助けるために含まれている。
【
図14c】本発明の一実施形態のデバイスを表す平面
図Aを示しており、
図7によって提供される図面の理解を助けるために含まれている。
【
図15】チャンバー内に取り囲まれた線形光バイオリアクターを有する本発明の一実施形態のデバイスの断面図を示しており、チャンバーの壁は、介在空間を有する2つの層から構成されている。
【
図16】本発明の一実施形態のデバイスの断面図を示しており、チャンバーの下壁を除く全てが介在空間を有する2つの層で構成されており、下壁は単一の層で構成されており、この壁は表面に対して配置されている。
【
図17】本発明の一実施形態のデバイスの断面図を示しており、チャンバーの上壁および下壁は、介在空間を有する2つの層から構成されており、側壁は単一の層から構成されている。
【
図18】本発明の一実施形態のデバイスの断面図を示しており、チャンバーの上壁は2つの層で構成されており、側壁および下壁は単一の層で構成されており、下壁は表面に対して配置されている。
【
図19a】デバイスのバイオマスの生成および収穫の制御を容易にする、本発明の実施形態の補助システムの概略図を示す。
【
図19b】デバイスのバイオマスの生成および収穫の制御を容易にする、本発明の実施形態の補助システムの概略図を示す。
【
図20】本発明の実施形態のデバイスと共に使用するための支持部材および結合取付板の断面図を示す。
【
図21a】隣接する支持部材がどのように協働してチャンバー内でPBRを支持し、さらにチャンバー自体を独立に制御された大気を有する区画に分割するかを示す、本発明の一実施形態のデバイスの断面図である。
【
図21b】PBRが1つまたは複数の懸架部材によってチャンバー内で支持されている、本発明の実施形態のデバイスの断面図(
図13cの区画D)を示す。
【
図21c】PBRが1つまたは複数の懸架部材によってチャンバー内で支持されている、本発明の実施形態のデバイスの断面図(
図13cの区画D)を示す。
【
図22a】本発明の実施形態のデバイスと共に使用するための支持部材の斜視図を示す。
【
図22b】本発明の実施形態のデバイスと共に使用するための支持部材の斜視図を示しており、支持部材は複数の開口部を備えており、隣接するチャンバー間の気体連通を可能にする。
【
図23a】水、雪、砂、および内面または外面に堆積する可能性のある他の物質の重力下での流出を促進するための、凸状湾曲上部チャンバー壁を含む本発明の実施形態のデバイスの断面図を示す。
【
図23b】ここでも、水および内面または外面に堆積する可能性のある他の物質の重力下での流出を促進するための、水平に対して傾斜してピッチを作り出す上部チャンバー壁を備える、本発明の実施形態のデバイスの断面図を示す。
【
図24】デバイスのバイオマスの生成および収穫の制御を容易にする、本発明の実施形態の補助システムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書に引用された全ての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。別段に
定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が
属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0037】
本発明者は、チャンバー内に含まれる、バイオマスを生成するのに適した気体透過性光
バイオリアクター(PBR)デバイスを開発した。有利には、PBRデバイスに特定の組
成の気体供給物を供給すると共に流出気体を除去するために、チャンバー内の大気を制御
することができる。本発明の実施形態は、特定の組成が、PBR内のバイオマス生産を改
善または最大化するために最適化された大気を含むことを可能にする。本発明の代替の実
施形態は、特定の組成が、PBR内に含まれる微生物による生体分子合成の成長を制御す
るかまたは調節する大気を含むことを可能にする。本発明のこれらおよび他の実施形態は
、以下により詳細に記載される。
【0038】
本発明の実施形態は、その中に含まれる光合成微生物の効率および適応性を最大化し、
したがってバイオマスならびにバイオマス内に含まれる任意の価値ある生成物の生成効率
を最大化するように最適化される。
【0039】
本発明をさらに説明する前に、本発明の理解を助けるであろういくつかの定義を提供す
る。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「含む」は、記載された要素のどれもが必然的に含ま
れ、他の要素も任意に含まれ得ることを意味する。「から本質的になる」は、記載された
要素が必然的に含まれ、列挙された要素の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼす
要素は除外され、他の要素は任意に含まれ得ることを意味する。「からなる」は、列挙さ
れたもの以外の全ての要素が除外されることを意味する。これらの用語のそれぞれによっ
て定義される実施形態は、本発明の範囲内にある。
【0041】
当業者は、用語「光合成」が、藻類およびシアノバクテリアを含む光合成微生物を含む
、緑色植物ならびに他の光合成微生物で起こる生化学的プロセスを指すことを理解するで
あろう。光合成のプロセスは、光を利用して二酸化炭素と水を代謝物と酸素に変換する。
本明細書で使用される場合、用語「光合成微生物」は、光合成することができる任意の微
生物を指す。本明細書で使用される場合、関連用語「光合成の」および「光合成する」は
、「光合成」と同義であり、2つの用語は本明細書では交換可能に使用され得る。
【0042】
当業者はまた、液体中のCO2(二酸化炭素)の濃度または割合への言及が、溶液の溶
存無機炭素(DIC)、すなわち溶存CO2ならびに関連する無機種H2CO3(炭酸)
、HCO3
-(重炭酸塩)およびCO3
2-(炭酸塩)の濃度を指すことを理解するであろ
う。同様に、本明細書における「気体濃度」などへの言及は、液体または水性状況で気体
から形成されるありとあらゆるイオン種または化学化合物、例えばアンモニア気体の結果
としてのアンモニウムイオン(NH4
+)、または硫黄酸化物の結果としての硫酸(H2
SO4)を含むことを意図している。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「半透明(translucent)」は、当該技術
分野におけるその通常の意味を有し、光を通過させ、その結果光線のランダムな内部散乱
をもたらす光透過性材料を指す。この用語は「半透明(semi-transparen
t)」と同義である。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「透明」は、当該技術分野におけるその通常の意味を
有し、物体が材料の反対側ではっきりと見え、言い換えれば「光学的に透明である」と表
現することができるように、可視光を通過させる材料を指す。本明細書に記載の全ての膜
および非膜材料、チャンバー壁、追加の構成要素、制御構造、コーティングおよび他の材
料は、実質的に半透明または実質的に透明であり得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「流出気体」は、天然または人為的プロセスからの廃
棄物、副産物または目的生成物として製造される気体であって、特にそのような気体が通
常の大気と比較してCO2に富むおよび/またはO2が枯渇している場合を意味する。そ
のようなプロセスは、燃焼、製造、工業プロセス、船舶、飛行機および路上走行車などの
乗物、発酵槽、ならびに廃棄物処理を含むが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「透過性」または「気体透過性」は、気体、特に酸素
(O2)、二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)および、任意にメタン(CH4)を、材
料の一方の側からもう一方の側へ、一方向または両方向に移動させる材料を意味する。本
明細書で使用される場合、関連する用語「通気性」および「半透性」は「透過性」と同義
であり、2つの用語は本明細書では交換可能に使用することができる。典型的には、材料
はシート、フィルムまたは膜の形態である。透過率は、透過物(気体など)の濃度勾配、
材料の固有透過率、および膜材料内の透過物種の拡散率に直接関係している。
【0047】
特定の材料を通る気体の透過性は、本明細書においてバーラーで測定される。バーラー
は、所与の圧力によって駆動される、厚さを有する材料の領域を通過する気体流の速度を
測定する。バーラーは次のように定義される:
[数1]
1バーラー = 10-10(cm3
stp・cm/cm2・s・cmHg)
【0048】
バーラーは、特に気体透過性膜に関して、昨今の使用における気体透過性の最も一般的
な測定値であるが、透過性は他の単位によって定義することもでき、その例にはkmol
.m.m-2.s-1.kPa-1、m3.m.m-2.s-1.kPa-1、またはk
g.m.m-2.s-1.kPa-1が含まれることが理解されよう。ISO 1510
5-1は、単層プラスチックフィルムまたはシートおよび多層構造の差圧下での気体透過
率を決定するための2つの方法を規定している。1つの方法は圧力センサーを用い、もう
1つは気体クロマトグラフを用いて、試験片を透過する気体の量を測定する。気体透過性
の他の同等の測定値は当業者に知られており、本明細書に記載されたバーラー測定値と容
易に等価であろう。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「バイオマス」は、微生物の任意の部分(微生物によ
って生成および/または排出される代謝産物および副産物を含む)を含む、任意の生きて
いるまたは死んでいる微生物を指す。本発明の文脈において、用語「バイオマス」は、特
に、上記のように光合成の合成生成物を含む。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「デバイス」は、1つの「ユニット」から構成されて
もよく、または複数の「ユニット」のアレイまたは組み合わせを含んでもよい。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「チャンバー」は、「気体チャンバー」も指し、この
2つの用語は、本明細書中で交換可能に使用することができる。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「流体」は、流動性材料、典型的には液体および適切
には液体媒体を指し、それはユニット、したがって本発明のデバイス内に含まれる。「流
体」は、本発明のチャンバー内に含まれる大気などの気体を説明するために使用されても
よい。
【0053】
本明細書中で使用される場合、用語「液体培地」は、当該技術分野におけるその通常の
意味を有し、微生物を増殖させるために使用され、微生物を含有する液体である。液体培
地は、以下の1つまたは複数を含み得る:淡水、塩水、食塩水、ブライン、海水、廃水、
下水、栄養素、リン酸塩、硝酸塩、ビタミン、ミネラル、微量栄養素、多量栄養素、金属
、消化物、肥料、微生物増殖培地、BG11増殖培地、および微生物。
【0054】
本明細書で使用される場合、関連用語「光バイオコンバーター」および「光バイオリア
クター」は同義語であり、2つの用語は本明細書では交換可能に使用することができる。
【0055】
本明細書で使用される場合、本発明のデバイスの配向に関する用語は通常それらの一般
に抱かれる意味で使用されるが、本発明の特定の意図または構成に応じて適切に変わるこ
とも意図される。したがって、上部、頂上および上などの用語は、地球の重力から離れる
方向を指し得るが、いくつかの実施形態では、例えば本発明が建物のファサードとして使
用される場合、本発明によって使用される一次光源に向かう方向を指し得る。同様に、下
部、底、下などの用語は、地球の重力に向かう方向および/または主光源から離れる方向
を指す。
【0056】
本明細書に記載され利用されるタイプの膜ベースの光バイオリアクター(PBR)は、
実質的に本出願人の同時係属中の国際(PCT)特許出願No. PCT/GB2016
/053786に記載の通りであり得る。
【0057】
二酸化炭素気体のPBRへの移動は、通常、CO2または空気を圧縮してノズルを介し
て液体培地に圧縮気体を供給するか、または液体培地に気体をバブリングするか散布する
などの通気技術を使用して実現される(例えば、米国特許出願公開第2015/0230
420号明細書、WO2015/116963を参照)。CO2含有混合物または他の気
体混合物を使用するこれらの技術は、過剰のO2を除去するように作用することもできる
(例えば、米国特許出願公開第2015/0093924号明細書を参照)。
【0058】
この種の技術は、エネルギー必要量およびインフラストラクチャーコストの両方におい
て不利に非効率的であり得る。いくつかのPBRでは、液体にバブリングされるCO2の
ほんのわずかな割合だけが無事に溶解されるようになると推定される;その結果、残りの
CO2が無駄になり、エネルギーの浪費と非効率的なCO2取り込みにつながる。同様に
、この技術によるO2除去は、生成された気泡中に捕捉され得るO2によって制限され、
それは限られた表面積しか有効な気体交換に提供しない。
【0059】
本発明の利点は、前述のように、標準的なPBRにおけるCO2(または空気混合物)
の曝気および圧縮デバイスに関連する気体濃度を制御するための高エネルギーコスト、運
用コストおよび資本コストに関する。本発明は、部分的には、大規模を含む、はるかに効
率的な液体培地中の気体移動制御を可能にし、液体培地に直接投与される供給気体の曝気
および圧縮を制御するためのデバイスを必要とするシステムと比較してより優れた汎用性
を提供する。圧縮および曝気技術に関連する操作上の複雑さおよび余分な重量も回避され
る。他のPBR技術を使用するのに必要とされるよりも低い圧力に加圧された気体も、さ
らなる圧力を必要とせずに使用され得る。本発明の性質により、気体の自然な膨張特性は
、供給気体が容易に供給され、膨張してチャンバー全体の組成を急速に変化させることが
できることを意味する。チャンバー内の気体濃度は大規模で比較的容易に制御することが
でき、ひいては液体培地中の気体濃度を同じ規模で制御することができるため、これはさ
らなる利点を提供する。
【0060】
本発明の別の利点は、アセンブリ内に含まれるPBRの堅牢性および耐環境性を向上さ
せることにある。チャンバーの壁は、変化する環境条件または季節条件などの外部要因に
対する断熱性を提供するように構成されていてもよい。この断熱性は、PBRと共に含ま
れる液体培地の温度を維持するために必要なエネルギーも減少させる。PBRの潜在的に
もろい膜の物理的保護は、天候、風もしくはひょう、または動物被害などの要因に対して
も提供される。追加の障壁を設けることは、PBRから環境への流出を防ぐようにも作用
する。
【0061】
本発明によって、デバイス自体以外で断熱性を提供することもできる。本発明のいくつ
かの実施形態は、建物の屋根またはファサード上に設置するように構成することができ、
それによってそれらが設置されている建物に断熱の追加的利益を提供することが想定され
る。この目的のために、建造物と接触するチャンバーの表面は、コルク、瀝青、ガラス繊
維、または任意の他の高断熱材料および/またはコーティングおよび/または建築用複合
材料などの断熱材料で置き換えることができ、またはそれらを追加的に含むことができる
。
【0062】
本発明の一実施形態によれば、チャンバー内に取り囲まれた膜PBRを含むデバイスが
提供される。チャンバーは、気体大気が含まれているチャンバーを画定するように協働す
る内面壁を備える。(膜)PBRは完全にチャンバー内に取り囲まれている。PBRは、
チャンバーの底面などの内面壁と接触して配置することができる。あるいは、PBRを、
PBR膜の外面の大部分がチャンバー内に含まれる大気と接触するようにチャンバー内に
吊り下げるか、そうでなければ実質的に中央に配置することができ、またはチャンバーの
下部内壁および/もしくは任意の他の内壁に取り付けられたフィンもしくは突起上に載せ
、気体がPBRの外面の周りおよびそれを横切って循環することを可能にすることができ
るか、またはチャンバーの側面の内壁に取り付けられたネットの上、もしくは一連のコー
ド、ひも、もしくはケーブル、および/もしくはチャンバーの任意の他の内壁の上に載せ
ることができる。
【0063】
本発明のさらなる実施形態では、PBRの一部分のみが含まれ、一部分が一般大気にさ
らされるように、PBRはチャンバー内に部分的に取り囲まれている。適切には、いくつ
かの実施形態では、PBRの少なくとも50%、適切には少なくとも70%、および任意
に少なくとも90%がチャンバー内に配置されている。特定の実施形態では、実質的に全
てのPBRがチャンバー内に配置されている。
【0064】
チャンバーは、液体培地の濃度よりも高濃度のCO2を含む気体混合物で満たされ、液
体培地と周囲大気との間の濃度差を増大させる。このようにして、膜を通した液体培地中
へのCO2の気体移動速度が増加する。
【0065】
液体培地中のCO2(光合成微生物によって取り込まれ得る全ての可能な形態)は、そ
の中に含まれる光合成微生物によって消費され、より多くのCO2がPBRの膜を横切っ
てチャンバー内の大気から液体培地へと通過するため、濃度差が平衡状態に向かって安定
するにつれて、CO2気体移動速度は時間とともに減少する。平衡に向かう傾向を克服す
るために、CO2を含む気体混合物を気体チャンバー入口を通して連続的または断続的に
供給することができ、同等量の気体を出口を通して、典型的には電磁弁および/または感
圧弁などの制御弁を用いて除去することができる。任意に、気体混合物が供給されたとき
に弁を閉じ、気体チャンバーを周囲標準大気圧より高く加圧し、PBRの気体透過膜を横
切る気体移動速度をさらに増加させることができる。
【0066】
気体チャンバーに導入される気体混合物はまた、液体培地からのO2枯渇速度を増大さ
せるために、液体培地中に見出されるO2濃度および/または大気中のO2レベルよりも
低い濃度のO2を含み得る。あるいは、大気と液体培地との間のO2濃度差を増大させる
ために、窒素、ヘリウム、アルゴンもしくはメタンおよび/またはCO2などの不活性気
体を気体チャンバーに導入することによって、液体培地からO2を除去することができる
。
【0067】
いくつかの実施形態では、気体チャンバーは、本明細書で第1および第2チャンバーな
どと呼ばれる2つ以上の区画に分離されていてもよく、その中に異なる気体または気体混
合物を導入することができる。例えば、第1チャンバーは、CO2富化気体混合物を含む
ことができ、一方第2チャンバーは、O2を効果的に除去するために、N2豊富気体など
のO2枯渇気体混合物を含むことができる。本発明の特定の実施形態では、PBRは、第
1チャンバーと第2チャンバー(および必要であればさらなるチャンバー)との間に介在
障壁を提供する。したがって、本発明のこの実施形態では、第1および第2チャンバーは
、介在するPBRの膜壁と組み合わせてチャンバーの外壁によって画定される。
【0068】
気体は、気体膨張によって、またはファン、タービン、もしくは他のインペラなどのC
O2供給物配送コストを削減する低エネルギー方法を使用することによって、チャンバー
内で受動的に移動させることができる。あるいは、気体チャンバーに導入する前に気体を
圧縮することができる。
【0069】
チャンバーの内部環境は、内部的にまたは気体供給および/もしくは気体排出を制御す
ることによって制御することができる。例えば、チャンバー内の大気の湿度は、気体入口
に設置された乾燥剤の存在によって、またはチャンバー自体の内部もしくは付属の補助シ
ステム内に配置された乾燥剤もしくは材料もしくはコーティングによって制御することが
できる。例えば、チャンバーに戻される前に、チャンバーの空気を乾燥させるために乾燥
剤に循環させることができる;通常、乾燥剤はハニカムホイールの形態であり得る。
【0070】
チャンバー材料を画定する壁の少なくとも一部は透明または半透明であり、チャンバー
内に含まれるPBRが機能し得るように効果的な光の透過を可能にする。いくつかの実施
形態では、1つまたは複数の壁の少なくとも一部、例えば光源から最も遠い位置にある壁
は、PBRを通る光の通過を増加させるために、反射性である。いくつかの実施形態にお
いて、壁の面積の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少な
くとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少な
くとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%は、光を透過するこ
とができる。
【0071】
「切替可能ガラス」、「スマートガラス」または同様の材料を本発明において使用する
ことができる。これらは、電圧、光または熱が加えられると光透過特性が変化する(ガラ
スのように硬く、ポリマーフィルムまたはコーティングのように可撓性であり得るが、こ
れらに限定されない)材料である。これらは、高い光曝露を有する領域において特に有用
であり得、例えば、特に強い光の結果としての材料または微生物への損傷を減らす。典型
的には、材料は、実質的に半透明、および/または反射光学特性(鏡面仕上げと同様)か
ら実質的に透明に変化し、いくつかの(または全ての)波長の光を遮断する状態から、光
を通過させる状態へ変化する。上記を追求して使用され得る技術の例には、エレクトロク
ロミック、フォトクロミック、サーモクロミック、懸濁粒子、マイクロブラインドおよび
ポリマー分散液晶デバイスが含まれるがこれらに限定されない。
【0072】
適切には、チャンバーの壁は実質的に気体不透過性であり、チャンバー全体は実質的に
気密であり、内部の制御された大気の損失または汚染を防ぐ。
【0073】
チャンバーの壁は、乗物、産業機械、船舶、宇宙船または宇宙探査機、潜水機、壁の空
洞、容器、地下室、建築構造物、建築室および/もしくはスイッチハウスの構造物もしく
は本体アセンブリによって構成または画定することができる。
【0074】
これらの場合および/または他の場合では、チャンバー壁は、透明/半透明ではない材
料を含み得る。そのような場合、チャンバー内の補助光源が使用され得る。これらの補助
光源は、LED/OLEDもしくは蛍光管であり得るか、または光ファイバーおよび/も
しくは光学アセンブリによって導かれる自然光であり得る。チャンバー壁が半透明/透明
であるがデバイスが内側に配置されているか、そうでなければ自然光から離れている場合
にも同様に、そのような補助光源を使用することができる。
【0075】
チャンバー内への光の透過を可能にする半透明/透明部位は、任意の適切な半透明/透
明材料から構成され得る。チャンバーは、全体的に半透明/透明材料から構成され得るか
、または後述するように、足場もしくはフレームなどの支持構造上で支持され得る。適切
には、この材料は実質的に気体不透過性、頑丈、軽量であり、良好な断熱特性を有する。
任意に、材料はシートおよび/またはフィルムで提供される。いくつかの実施形態では、
材料は非可撓性、非弾性、透明および頑丈であり、例えばガラス、高性能ガラス、非常に
高い太陽エネルギー透過率を有する低鉄ガラス(Pilkington Sunplus
(商標))、ガラス複合材料、強度が増加した強化ガラス複合材料、耐衝撃性ガラス複合
材料、低反射率ガラス、高光透過率ガラス、間に真空/アルゴン/空気を含むもしくは含
まない二重ガラスおよび/もしくは三重ガラス、または複数層の異なる材料からなり強度
および/もしくは光透過率を増加させるガラス複合材料、または電気的に切り替え可能な
スマートガラスが含まれる。
【0076】
他の実施形態では、チャンバー壁材料は可撓性および弾性であり、例えばエチレンテト
ラフルオロエチレン(ETFE)、アクリル/PMMA、ポリカーボネートおよび/また
は他のプラスチック、プラスチック複合材料が含まれる。
【0077】
ETFEの適切な特性には、その半透明性および/または透明性、非常に高い光透過性
、ならびに耐紫外線性が含まれる。ETFEはまた、好都合にはリサイクル可能であり、
(その非接着性表面のために)容易に洗浄可能であり、弾性、頑丈で軽く、広い温度範囲
にわたる良好な断熱性、高い耐食性および強度を有する。熱溶着を使用すると、パッチま
たは複数のシートで裂け目を修復することができ、大きなパネルに組み立てられる。
【0078】
アクリルは、その強度、高い透明性、ならびに耐候性および耐紫外線性のために、チャ
ンバー壁材料として適している。
【0079】
本発明の特定の実施形態では、可撓性および/または弾性材料の使用は、デバイスの外
側の周囲大気と比較して相対的に正圧である大気をチャンバー内に供給することによって
、チャンバーを膨張させることを可能にする。あるいは、温度の上昇によるチャンバー内
の気体膨張も、対応する相対正圧の上昇を引き起こし得る。本発明の特定の実施形態では
、可撓性および/または弾性材料の使用は、(チャンバーの外側の位置に対して)チャン
バーの上壁に凸型、ドーム型、反り型、または他の形で盛り上がった形状を作り出すこと
を、周囲大気に対するチャンバー内の正圧(すなわち、供給されたガスによるチャンバー
の膨張)の結果としてか、またはチャンバーの壁に取り付けられた補助構造を使用して、
凸形状を作り出すことによる結果として可能にする。これは、光がPBRに達するのを妨
げる障害となり得る、雨、雪、葉、粉、砂またはその他のデトリタスの「パドル」の形成
を回避するのに役立つ。さらに、凸形状は、雨が降っているときの材料の自己洗浄を容易
にするか、および/またはプラントオペレータもしくは自動洗浄システムによって行われ
る手動/自動洗浄を容易にする。同様の理由で、本発明の他の実施形態では、例えばチャ
ンバーの側壁を異なる高さにすることによって、チャンバーの任意の上面を水平に対して
わずかに傾斜させることができる。
【0080】
そのような構成の別の利点は、内部チャンバーの湿度に対する制御手段を可能にすると
いうことである - 特にチャンバー内が外の大気よりも温かい場合、チャンバー大気中
の水分がチャンバー内の壁の内側に凝縮し得る。凸状または傾斜した上壁では、凝縮をチ
ャンバーの上壁から逃れるように促進し、起こり得る光透過に対する干渉を減少させるこ
とができる。
【0081】
透明/半透明材料をコーティングもしくは処理し、その光学的または化学的特性に影響
を及ぼすことができる。例えば、材料を、良好な透明性/半透明性を有する材料で、およ
び/または気体不透過性材料でコーティングし、光反射率を減少させることができる。コ
ーティングは、上記のように、材料に電圧、光または熱依存特性を付与し得る。
【0082】
材料に施されるコーティング、化学修飾またはフィルムを使用し、例えば、人工ナノド
ットおよび/または人工量子ドットおよび/またはマイクロおよびナノ光学系および/ま
たは電圧を印加することによってなどで、電荷が分子に印加されたときにおよび/または
分子から除去されたときに光学特性を変化させる分子を含む光学材料を使用することによ
って、電磁放射を、光合成スペクトルの外側の可視または不可視波長から光合成に適した
波長または任意の意図する波長に変換することができる。材料に施される着色コーティン
グ、化学修飾または着色フィルムを使用し、特定の波長を遮蔽して他の波長が液体培地に
到達することを可能にすることができ、この技術を使用して特定の生物活性を促進するこ
とができ、したがって、例えば、光学カラーフィルタフィルムならびに/または人工ナノ
ドットおよび/もしくは人工量子ドット、および/もしくはマイクロおよびナノ光学系、
および/もしくは電圧を印加することによって電荷が分子に印加されたときにおよび/も
しくは分子から除去されたときに色が変わる分子を含む光学材料を使用することによって
、バイオマス中の特定の生成物の生産を増加させることができる。例えば、赤色フィルム
を透明/半透明の材料上に施し、実質的に赤色光のみを液体培地に到達させ、したがって
、赤色光をほとんど吸収する顔料、例えば顔料フィコシアニンの光合成微生物による生産
を促進することができる。
【0083】
グラフェンコーティングを使用し、その透明性に起因して材料を補強し、抗微生物増殖
コーティングを提供し、次いで材料の破損(例えば裂け目)の検出を補助することができ
る導電性を提供することができる。カビ、細菌および真菌の増殖を抑えるためのコーティ
ング、処理、塗料またはフィルムもチャンバーの内面に塗布することができる。カビまた
は微生物の増殖を防ぐことを目的とした特定の材料をチャンバーの構成要素として使用す
ることができる。透明/半透明材料は、補強のために、またはより薄くより軽い壁材料の
使用を可能にするために、グラフェン、カーボンナノチューブおよび/またはグラファイ
トを含むこともできる。
【0084】
チャンバーを構成する1つまたは複数の壁を除去することによって、チャンバーの内側
にメンテナンス目的で容易にアクセスできることが想定される。
【0085】
本発明の一実施形態によれば、膜層である少なくとも1つの外層を含むデバイスのPB
Rが提供される。膜層(1つまたは複数)は可撓性であり得る。膜層のうちの1つの少な
くとも一部、および任意に膜層の各々の実質的に全部が、膜を横切る気体の移動に透過性
である。膜を通る酸素の透過係数は、約100バーラー以上、典型的には約300バーラ
ー、適切には約400バーラーであり得る。本発明の特定の実施形態では、膜を通る酸素
の透過係数は、約500バーラー以上、場合によってはそれ以上である。膜を通過する二
酸化炭素の透過係数は、約400バーラー以上、適切には約600バーラー、約800バ
ーラー、約1000バーラー、約1500バーラー、約2000バーラー、約2500バ
ーラー、典型的には約3000バーラー以上である。本発明の特定の実施形態では、膜を
通る二酸化炭素の透過係数は、約3200バーラー以上である。これに関連して使用され
る場合、語句「少なくとも一部」は、気体がPBRの外層を通過することを可能にするの
に十分なサイズの層の領域を意味する。気体は、典型的には酸素および二酸化炭素である
がそれらに限定されず、窒素、窒素酸化物、硫黄酸化物および/またはメタンを含み得る
。
【0086】
PBRは、単一の方向からまたは複数の方向から照らされてもよい。PBRが、主に単
一方向からの光を受け、一方の(第1)膜層が他方の(第2)膜層よりも透明度が低いか
または半透明度が低いように配置される場合、第1膜層は、一次光源に面するPBRの側
面にあり得る。特定の実施形態では、第1膜層は、光源とは反対側を向くPBRの側面に
配置されている。
【0087】
典型的には、膜層は少なくとも半透明であり、適切には実質的に透明である。
【0088】
典型的には、膜層は1つまたは複数の気体透過性材料を含む。PBR内の液体培地が外
部に漏れるのを防ぐために、気体透過性材料が液体に透過性ではないことが重要である。
気体透過性材料は、多孔質(微孔性構造の気体透過性材料を含む)または非多孔質であり
得る。気体透過性材料は、気体粒子が微孔性構造を通る直接的運動を通して移動すること
ができる場合、多孔質と呼ばれる。気体透過性材料が多孔質である場合、それが液体に対
して実質的に不透過性であることが重要である。適切には、気体透過性材料は非多孔質で
あり、これは気体透過性材料を通る液体透過も回避し、材料の多孔度に関連し得る低い透
明度を回避する。
【0089】
気体透過性材料は、化学的に最適化された気体透過性ポリマーなどのポリマーであり得
る。化学的に最適化されたポリマーは、より安価で、より裂けにくく、疎水性で、帯電防
止性で、より透明で、加工し易く、脆くなく、より弾性で、より気体透過性があり、特定
気体に選択透過性があるため、対応する未修飾ポリマーよりも有利であり得る。ポリマー
の化学修飾は、モノマー、主鎖、側鎖、末端基の化学組成を修飾することにより、ならび
に/または異なる硬化剤、架橋剤、充填剤、加硫、製造、加工のプロセス、および他の方
法の使用などの、当業者が知っている方法で行うことができる。
【0090】
膜層は、シリコーン、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、フルオ
ロシリコーン、オルガノシリコーン、セルロース(植物セルロースおよびバクテリアセル
ロースを含む)、酢酸セルロース(セルロイド)、ニトロセルロース、およびセルロース
エステルを含むがこれらに限定されない任意の適切な気体透過性材料を含み得る。
【0091】
適切な実施形態では、膜層はポリシロキサン、任意に最適化されたポリシロキサンを含
む。ポリシロキサンは化学的に修飾されていても機械的に修飾されていてもよい。典型的
には、膜層はポリシロキサンエラストマーを含む。ポリシロキサンは、より高い結合回転
を促進し、鎖の移動度を高め、それにより透過性のレベルを高めるポリマー構造へのSi
-O結合のおかげで、気体透過性膜の優れた候補であることがわかった。ポリシロキサン
エラストマー(シリコーンゴムなど)は弾性で、耐紫外線性であり、弾力材でもある。
【0092】
一実施形態では、膜層はポリジメチルシロキサン(PDMS)、適切には最適化された
ポリジメチルシロキサンを含む。典型的には、膜層はポリジメチルシロキサン(PDMS
)エラストマーを含む。ポリジメチルシロキサン(PDMS)は、エラストマー、樹脂、
または流体の形態をとることができる。PDMSエラストマーは架橋剤を用いて形成され
る。PDMSは、その非常に高い酸素および二酸化炭素透過性、その光学的透明性および
その耐紫外線性のために、典型的な気体透過性材料である。これらのエラストマーは、典
型的には、それらの表面上での微生物増殖を支持しないため、バイオマスを生成するデバ
イスの効力を低下させる可能性のある(光を遮断する)、制御されていないバイオフィル
ムの成長および/または生物付着を回避する。場合によって、バイオフィルムの成長は、
以下に記載されるように生物学的支持体および/または追加の成分を利用することによっ
て促進され得る。さらに、ポリジメチルシロキサン(PDMS)エラストマーは可撓性で
あり、弾力材である。
【0093】
ポリジメチルシロキサン(PDMS)は、その気体透過性を増大させるためにおよび/
またはその特性を変えるために化学的に修飾されても機械的に修飾されてもよい。PDM
Sエラストマーは、典型的には、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも45
0、少なくとも550、少なくとも650、少なくとも750、適切には少なくとも82
0バーラーの酸素透過度、および少なくとも2000、少なくとも2500、少なくとも
2600、少なくとも2700、少なくとも2800、少なくとも2900、少なくとも
3000、少なくとも3100、少なくとも3200、少なくとも3300、少なくとも
3400、少なくとも3500、少なくとも3600、少なくとも3700、少なくとも
3800、適切には少なくとも3820バーラーの二酸化炭素透過度を有する。本発明の
実施形態で使用されるPDMSの特性は、ポリマー鎖のモル質量(Mm)、ポリマー中の
分散度(分散度は重量平均モル質量対数平均モル質量の比である)、硬化中の熱処理の温
度および期間、架橋剤対PDMSの比、架橋剤の化学組成、架橋中に末端結合PDMS構
造が形成される方法に影響を及ぼし得る異なる末端基(メチル-、ヒドロキシ-およびビ
ニル-末端PDMSなど)に関連するが、これらに限定されない化学的、機械的ならびに
プロセス駆動の介入によって最適化することができる。
【0094】
膜層は、厚さが約1000μm以下、適切には約800μm以下、約600μm、約4
00μm、約200μm、典型的には約100μm以下、任意に約50μm以下、適切に
は25μm以下または未満であり得る。
【0095】
別の実施形態では、膜層はバクテリアセルロースを含む。バクテリアセルロースは植物
セルロースと同じ分子式を持っているが、それは著しく異なる高分子特性および特徴を持
っている。一般に、バクテリアセルロースはより化学的に純粋であり、ヘミセルロースま
たはリグニンを含んでいない。さらに、バクテリアセルロースは、形成中の成形性が高い
ため、様々な基材上で製造することができ、実質的に任意の形状に成長させることができ
る。さらに、バクテリアセルロースは、植物セルロースと比較してより結晶性の構造を有
し、植物セルロースよりも著しく小さい特徴的な薄いリボン状のミクロフィブリルを形成
し、バクテリアセルロースをより一層多孔質にする。当業者は、アセトバクター属、アゾ
トバクター属、リゾビウム属、シュードモナス属、サルモネラ属、およびアルカリゲネス
属のセルロース生合成系などの、例えば大腸菌で発現させることができる、セルロース生
産を最適化するように設計された多くの細菌系を知っているであろう。細菌セルロースを
、その表面が分子との結合を可能にする化学的界面を提供するように処理することができ
る。
【0096】
PBRの他の層も、上記で定義されたような膜層、すなわち気体透過層であり得るか、
またはそれらは天然もしくは合成材料などの任意の適切な材料を含む非膜層からなり得る
。適切には、層は少なくとも半透明であり、典型的には透明である。層は適切には通気性
である。
【0097】
典型的な実施形態では、PBRの全ての層は、本明細書で定義されるように気体透過性
膜層である。他の実施形態では、膜PBRは、チューブなどの単層または連続層で形成さ
れた単膜、または1つもしくは複数の場所で折り重ねられてそれ自体にシールされてPB
Rを作り出す単層を含む。
【0098】
デバイスのPBR内に含まれる微生物は、典型的には、光合成または電磁エネルギー源
の存在に依存する他の反応を実施する能力がある。光合成を行う能力がある微生物を、本
明細書では光合成微生物と呼ぶ。適切な実施形態では、光合成微生物は、微細藻類(緑藻
、藍藻、黄金色藻および紅藻など)、植物プランクトン、渦鞭毛藻類、珪藻類、細菌、な
らびにスピルリナ属などのシアノバクテリアから選択される。微生物は野生型または遺伝
子改変株であり得る。本発明の実施形態の単一のデバイスは、1つまたは複数の異なる種
類の微生物を含み得る。
【0099】
典型的には、少なくとも1つの微生物は、ヘマトコッカス種、ヘマトコッカス・プルビ
アリス、クロレラ属、クロレラ・オートグラフィカ、クロレラ・ブルガリス、シーンデス
ムス属、シネココッカス属、シネココッカス・エロンガタス、シネコシスティス属、アル
スロスピラ属、アルスロスピラ・プラテンシス、アルスロスピラ・マキシマ、スピルリナ
属、クラミドモナス属、クラミドモナス・レインハルトチイ、ジモルフォコックス属、ガ
イトレリネマ属、リングビア属、クロオコッキディオプシス属、カロスリックス属、シア
ノシス属、オスキラトリア属、グロエオシス属、ミクロコレウス属、ミクロシスティス属
、ノストック属、ナンノクロロプシス属、アナベナ属、フェオダクチラム属、フェオダク
チラムトリコニウタムである。
【0100】
デバイス内の流路を通過する液体培地が海水、塩水またはブラインを含む実施形態では
、ドナリエラ・サリナ、いくつかのアルスロスピラ・プラテンシス、いくつかのナンノク
ロロプシス属およびシネココッカス・マリヌスが典型的な微生物である。
【0101】
いくつかの光合成微生物は、天然株であれ遺伝子組み換え株であれ遺伝子操作された株
であれ、NO2(およびNO、N2O2、N2O3、N2O5などの他のNOx)、SO
2(およびS2O2、SO、SO3などの他のSOx)、VOC、NH3、またはN2O
などのCO2以外の「温室」気体などの大気汚染物質を取り込む能力を持つことができる
。もしそうであれば、これらの気体は気体チャンバー内に送り込まれ、次いで液体培地中
に移送され得る。これらの気体は、流出気体から来ることもできる。
【0102】
いくつかの実施形態では、PBRの光合成微生物は、チャンバー内に含まれる大気中に
送達することができる気体状または気化した刺激剤への曝露によって活性化される特定の
誘因を有するように遺伝子組み換えされている。この刺激剤がチャンバーに導入されると
、それはPBRの膜を横切って拡散し、液体培地中に送達される。刺激剤は引き金として
働き、遺伝的介入によって所定の様式で意図されるように反応するよう光合成微生物を誘
導する。例えば、刺激剤は、特定の代謝産物の産生を誘発するかもしくはその産生を停止
し得、ならびに/または特定の代謝産物の産生速度を変化させ得る。
【0103】
チャンバー内のCO2富化および/またはO2枯渇大気の提供に関する上記の説明は、
全ての他の適切な気体に適用可能であり、その制御を様々な目的に使用することができる
。
【0104】
PBR内に含まれる液体培地のpHを制御するためにチャンバー内に、気体を導入する
ことができる。本発明の特定の実施形態によれば、大気中のCO2およびアンモニア(N
H3)の濃度を使用して、液体培地のpHを制御してもよい。
【0105】
上記のように、微生物を、それらの生理学的プロセスを変えることによって特定の気体
の存在または不在に応答するように組み換えてもよく、チャンバー内に含まれる大気に供
給される気体混合物を制御し、そのような気体を提供または除去することができる。
【0106】
デバイスに供給される気体混合物の組成および/または量は、PBR内の液体培地内で
測定された1つまたは複数のパラメータの変化に応じて、ならびに/またはPBR内に含
まれる光合成微生物の代謝的状況もしくは他の生理学的状態に応じて制御および緩和され
得る。例えば、液体培地のpH変化を含むパラメータ変化は、pHに影響を与える気体の
提供をもたらし得る。あるいは、液体培地の低いCO2濃度の検出は、CO2富化気体に
おける増加したレベルのCO2の供給をもたらし得る。液体培地および/または光合成微
生物の状態の監視は、デバイスを制御する補助システムを介して実施することができる(
下記参照)。
【0107】
工業原料、例えばボイラー、発電機、熱電併給発電機(CHPユニット)、工業プロセ
ス、醸造所を含む発酵タンク、廃水処理プロセス/活性汚泥/脱窒、もしくは嫌気性消化
デバイス、またはあらゆる種類の乗物もしくは燃焼機関などから得られる排出気体を導入
することによって、チャンバー内にCO2豊富大気を提供することができる。例えば、光
合成微生物に有毒であり得るか、またはPBRもしくはチャンバー表面の清浄度もしくは
透明度に影響を及ぼし得る物質を除去するために、流出気体を気体チャンバーに送達する
前に前処理する必要があり得る。チャンバーへの気体状供給物の前処理は、高効率微粒子
空気(HEPA)フィルターおよび/または活性炭フィルターなどの任意の適切な技術ま
たは戦略を含み得、特定の大気汚染物質、揮発性有機化合物(VOC)、さまざまなグレ
ードの粒子状物質(例えばPM1、PM2、5、PM10)、煤、および任意のその他の
望ましくないあるいは有害な物質を除去するように働くことができる。
【0108】
本発明の特定の実施形態によれば、供給気体をチャンバー内に、PBR内の液体培地の
流れの全体的な方向とは反対方向に供給することができる。このようにして、最高CO2
濃度の供給気体を最低溶存CO2濃度の液体培地と接触させることができる向流配置を確
立することができ(液体媒体がPBRシステムを通って流れる間に光合成が起こるため)
、同様に、最低O2濃度の気体は、最高溶存O2濃度の液体媒体と接触する。これにより
、気体の濃度差が増大し、気体移動効率が向上する。
【0109】
デバイスは、チャンバー内でPBRを上昇させるおよび/または支持する働きをするフ
レーム、足場および/またはマニホールドを含み - ならびにデバイス内のアレイが含
まれる複数のチャンバー内で複数のPBRを支持する支持構造を備えることができる。支
持構造は、チャンバー自体の形状および構造を維持し、ならびに/またはチャンバー内に
含まれるPBRの周りに気体大気の流れを方向付けることに関しても同様である。加えて
、支持構造はさらに、デバイスをマウントまたは他の表面に取り付けるのを助け、デバイ
ス全体の安定性を提供するのを助けることができる。
【0110】
本発明の特定の実施形態では、支持構造体は、以下の例示的なデバイスに記載されてい
るように、硬質固体材料、好ましくは軽量の押出物からなり得る。支持構造体は、透明で
ある必要はないが、透明であってよく、任意の適切な材料から製造されてよく、典型的に
は頑丈で軽量であり、かつ無毒の材料であり得、酸化、腐食、極端な温度および紫外線に
対して高い耐性を有する。支持構造は、実質的に固体の材料を含むことができ、または強
度を維持しながらその重量を減らすために多孔質構造を含むことができる。
【0111】
適切には、支持構造は、バイオプラスチック、熱可塑性プラスチック、熱硬化性ポリマ
ー、非晶質プラスチック、結晶性プラスチックなどのプラスチック、アクリル、ポリカー
ボネート、ポリエステルなどの合成ポリマー、ポリウレタン炭素繊維複合材料、ケブラー
複合材料、炭素繊維およびケブラー複合材料またはガラス繊維;鋼、軟鋼、ステンレス鋼
、アルミニウムまたはチタンなどの金属または金属合金;木材もしくは塗装木材などの天
然材料;またはグラフェン、カーボンナノチューブもしくはグラファイトなどの炭素系材
料を含み得る。
【0112】
デバイスのPBRは、使用される気体ならびに/または液体培地の供給および状態を制
御する補助システムに接続されていてもよい。デバイスの用途に応じて、補助システムは
任意の程度の複雑さであり得、任意の種類の補助構成要素によって構成され得る。
【0113】
本発明の適切な実施形態では、デバイスは、主に気体用および液体培地用の導管、水タ
ンク、気体タンクまたはキャニスター、気体および液体培地用ポンプ、弁、バイオマス分
離器、人工照明システム(特に自然光が存在しない場合)、水温制御システム、センサー
およびコンピュータによって構成される補助システムに接続される。
【0114】
導管および貯留部(水槽)は、任意の種類および任意の適切な材料のものであり得る。
【0115】
ポンプはどんな種類のものでもよい;典型的には、液体ポンプは、液体培地と接触する
唯一の構成要素である蠕動管の使用により、液体培地の汚染の危険性と、使用される微生
物の細胞の破損とを減らすことができる蠕動ポンプである。いくつかの実施形態では、ダ
イヤフラムポンプ(膜ポンプとしても知られる)を使用することができる。ダイヤフラム
ポンプは、液体培地との摩擦が比較的少ないため、細胞の破損と汚染の危険性を減らすと
いう利点を有することができる。
【0116】
バイオマス分離器は、当業者に知られている任意の種類のものであり得る;適切には、
バイオマス分離器は遠心分離式バイオ分離器、小口径メッシュを含む濾過システム、およ
び/または精密濾過/ナノ濾過デバイス、および/または沈降デバイス、および/または
清澄化プロセスである。複数のバイオマス分離デバイス、例えば初期清澄化プロセスまた
は精密濾過デバイスとそれに続く遠心分離機を直列に設置することができる。
【0117】
水温制御は、当業者に知られている任意の種類のものであり得る;典型的には、それは
導管の部位の周りおよび/または水タンクの上に適切に設置される加熱構成要素を含む。
加熱構成要素は任意の種類であり得、適切には熱交換機構を含み得る。特に、光合成微生
物にとって最適な液体培地温度を維持するために熱交換を使用することができると考えら
れる。生理学的プロセスまたは高い環境温度によって生成された液体培地からの過剰な熱
を使用して、家庭用または工業用水を加熱することができ、あるいは排水、雨水、下水お
よび/または雑排水などの水源からの水を使用して過剰な熱を除去することができる。同
様に、必要に応じて家庭用または工業用原料から発生する熱を用い、液体培地を加熱する
ことができる。熱交換デバイスは、それらのサイズおよび経済性のために、小容量用の二
重管式熱交換器、または大容量用のプレート式熱交換器などの任意の適切な種類のもので
あり得る。液体培地がPBRに到着する前に、補助システムの位置で熱交換が適切に行わ
れる。
【0118】
当業者に知られている任意の種類の人工光源を含む人工照明システムを使用することが
でき、適切な照明システムはLEDを含み、典型的には人工光源は、デバイス内に含まれ
る任意の光合成微生物の光合成活性放射線(PAR)必要量に対応する特定の波長の電磁
放射線(光)を放射するように、ならびに/または特定の生物活性を促進し、それによっ
て、例えば特定の波長を放射するLEDを使用することによって、バイオマス中の特定の
生成物の生産を増加させるように設計および/もしくは制御される。例えば、LEDベー
スの光源は、約620nm~750nmの間の波長(赤色光)を放射して、色素フィコシ
アニンなどの、ほとんど赤色光を吸収する色素の微生物内での産生を促進することができ
る。人工照明システムは、LEDもしくは光ファイバーのアレイまたはストリップを含む
支持構造内に含まれ得る。照明システムによって発せられる光の強度および質を自動的に
(PARセンサー、湿度センサー、温度センサー、化学センサー、pHセンサーなどのよ
うな任意の種類のセンサーからの入力に従って)制御し、特定の微生物生理学的活動を促
進することができるおよび/または環境の変化に対応することができるおよび/またはバ
イオマス生産を増加または修正することができる。同様に、上述したように「切り替え可
能」または「スマートガラス」材料を通る光透過の量(自然光または人工光)も、同様の
理由で自動的に制御することができる。
【0119】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、PBR内に含まれる液体培地中のバイオマス
濃度が所望のレベルに達すると、三方弁は、バイオマスの少なくとも一部を液体培地から
分離するバイオマス分離器に流れを向け、単離されたバイオマスは追加の処理用の容器に
進み、液体培地は貯留部に戻される。バイオマス分離器に流れを向けるこの動作は、定期
的に、および弁が流路を貯留部へ再び変える前の所定の期間にわたって実行することがで
きる。このタイミングは、各用途、使用される微生物、周囲環境およびデバイスの物理的
な位置に関して最適化することができる。バイナリスイッチの代わりに別の実施形態では
、弁は流路の開口部を変えることができ、それによってバイオマス分離プロセスに供給さ
れる液体培地の流速および量を制御する。
【0120】
栄養素を、定期的にシステム内の貯留部に直接導入することができる。液体培地中の水
および/もしくは微生物、または洗浄液も同様に導入することができる。
【0121】
他のあらゆる種類のシステム構成要素を利用することができ、例えば制御可能な圧力弁
または圧力調整器をシステムに配置することができ、この例では圧力弁は、液体または気
体圧力の変化の影響を通してユニットの容積変化を制御することができる。一部の弁は、
ユニットへの流量を制御することができる。
【0122】
必要に応じて、補助空気および/またはCO2を富化した空気および/または他の気体
を、主PBR供給導管に任意に導入することができる。例えばシステムの設置中に誤って
油圧システムに入る可能性がある空気を除去するために、通気孔を導管に設置することが
でき、通常はシステムの最も高い位置に配置され、望ましくない空気の排除を容易にする
。
【0123】
洗浄手順を作動させ、PBRユニットおよび/もしくは導管および/もしくは水タンク
および/もしくは全ての補助システムおよび/もしくはチャンバーを洗浄ならびに/また
は滅菌することができる。「洗浄液」は、当業者に知られている任意の化合物で作ること
ができる。それは、過酸化水素、エタノール、水、塩水、洗剤、漂白剤、界面活性剤、ア
ルカリまたは他の任意の適切な洗浄組成物を含み得る。洗浄流体は、システムの任意の箇
所の特定の導管(入口)を通ってシステムに入ることができ、システムの任意の箇所(出
口)で出ることができ、システム全体を洗浄するのではなく、必要に応じて特定の場所で
の清掃のみを可能にする。洗浄液は事実上気体でもよく、120℃を超える温度で適切に
供給される蒸気、加熱空気または水蒸気を含むことができる。
【0124】
透明/半透明導電性材料および/または他の任意の導電性材料を含むセンサーを、透明
/半透明部分またはチャンバーの任意の他の表面上(チャンバーの内側または外側)に設
けて、放射照度レベル、温度、湿度またはその他の環境条件などの条件を監視することが
できる。チャンバー内に配置されている場合、これらのセンサーまたは類似のセンサーを
使用して、チャンバー内の気体濃度レベル、湿度および/または温度を検出することがで
きる。
【0125】
本発明の実施形態および/または補助システムは、例えば液体培地および/もしくは大
気中のCO2濃度および/もしくはO2濃度などの化学濃度を監視するために;ならびに
/または温度および毒性レベルなどの他の環境的および生物学的パラメータを監視するた
めに、ならびに/またはバイオマス濃度および/もしくは総細胞密度および/もしくは生
存細胞密度および/もしくは液体培地中の微生物の光合成活性を監視するために使用する
ことができる埋め込みセンサーを含むことができる。
【0126】
センサーは、PBRもしくはチャンバー内、タンクもしくは導管補助システム内、およ
び/または制御構造または支持構造内に完全にまたは部分的に埋め込むことができ、なら
びに/または外層の内側もしくは外側または内部追加構成要素の表面に取り付けることが
できる。
【0127】
液体培地流速、液体培地品質、栄養素レベル、温度、バイオマス抽出速度、気体混合物
、気体流速、気体チャンバー圧力、および照明強度(および/または「スマートグラス」
によって提供されるような光遮蔽)を含むが、これらに限定されないパラメータの制御を
可能にするために、センサーはデバイスのPBR内の環境の監視を許可することができる
。この制御の目的は、デバイス内に含まれる光合成微生物の光合成効率を最適化すること
、および/または特定の代謝/微生物活性を刺激すること、したがってバイオマスの生成
効率を最適化すること、および/またはその組成を変更することである。
【0128】
同様に、センサーは、気体の流速、品質、組成、温度、光学的透明度および湿度を含む
が、これらに限定されないパラメータの制御を可能にするために、デバイスのチャンバー
内の環境の監視を許可することができる。
【0129】
本発明のいくつかの実施形態の利点は、バイオマスをユニット内で連続的に生成するこ
とができ、連続的に収穫することができることである。
【0130】
バイオマスは、ユニット内の液体培地中に、場合によってはPBRの2つの外層の内面
を含むデバイスの構成要素の表面上に形成されるバイオフィルムの領域に蓄積する。バイ
オマスは、液体培地から直接収穫することができ、場合によってはデバイスの内側からの
バイオマスの分離を容易にするための化学的処理によっても収穫することができる。バイ
オマスは、PBRを通る液体培地の移動中にシステム内でほとんど形成されるが、その理
由は、これが光とCO2にさらされる場所であるためである。デバイスをパージしてバイ
オマスを放出するために、液体培地は1つまたは複数の入口を介してデバイスに入り、1
つまたは複数の流路を通過し、その流れで運ばれるバイオマスと共に1つまたは複数の出
口を介してデバイスを出る。出口を、収穫されたバイオマスを受け取るための適切な容器
に接続することができる。
【0131】
いくつかの実施形態では、バイオフィルムを意図的にデバイス内で成長させる。そのよ
うな実施形態では、バイオフィルムは、固定された活性な光合成微生物表面を提供するよ
うに機能し、それは、デバイスが流されたときに微生物の一部が洗い流されるのを防ぐ。
これにより、バイオマスの迅速な生成が容易になり、デバイス内で生成されたバイオマス
の連続的な収穫が可能になる。これにより、デバイスはバイオマスを迅速に再生/補充す
ることが可能になり、なぜなら、デバイス内に残っている微生物は、光合成を介してバイ
オマスを連続的に生成することができるためである(ただし、光条件が光合成を可能にす
るという条件で)。さらに、より多くのバイオマスを生成するために、バイオマスが収穫
された後に新しい/追加の微生物をPBRに導入する必要はない。
【0132】
あるいは、バイオマスは、バッチベースで断続的に収穫することができる。例えば、バ
イオマスは、本発明のデバイスから頻繁に、毎時、毎日または毎週収集することができる
。
【0133】
本発明のデバイスを、多くの用途に利用することができる。用途は、バイオマス生産、
二酸化炭素隔離、酸素生産、窒素酸化物もしくは他の気体の隔離、または汚染物質の除去
が必要な場所、または廃水処理が必要な場所、または都市家具や機能的な芸術的設備など
の美的もしくは装飾的用途さえ含む、あらゆる種類のものであり得る。本発明で使用する
ための排出気体は、これらの用途のいずれか、または他の局所的もしくは遠方の供給源か
ら供給され得る;それにより、デバイスは、倉庫、醸造所、工業用建物などの場所で脱炭
システムとして使用することができる。同様に、このデバイスを、船、飛行機、自動車、
トラックおよび他の道路車両などの輸送車両と一緒に使用することができる。デバイスを
、屋内および/または屋外で使用することができる。
【0134】
本発明のデバイスの適切な用途は、建物のファサードの一部、屋根、日よけ、ひさし、
窓、および/または屋内天井、屋内壁、もしくは屋内床であることを含むがこれらに限定
されない任意の屋内および/または屋外の建築用途であり得る。これらの用途では、生成
酸素を建物の内部で使用することができ、および/またはチャンバーに供給されるCO2
気体を建物の内部および/または外部から供給することができる。本発明によってこれら
の建物に断熱材を提供することもできる。
【0135】
本発明のデバイスの適切な用途は、天井、地面、壁、机、吊り下げ式、工業用、装飾用
、屋外用、工業用機械照明、車両照明、街路照明、または広告照明器具などの屋内照明シ
ステムを含むがこれらに限定されない、任意の照明システムおよび/または照明器具と一
緒であり得る。
【0136】
そのような用途では、照明システムから提供される人工光源は、微生物が光合成するた
めに必要とする光のほとんどを提供することができ、生成された酸素は建物の内側で使用
され得、および/またはCO2は建物の内側および/または外側から吸収され得る。
【0137】
本発明のデバイスのさらなる適切な用途は、大部分が自然光源を使用する屋外集約バイ
オマス生産プラント、人工光源および/または自然光源を使用する温室内などの屋内集約
バイオマス生産プラントを含むが、これらに限定されない集約的バイオマス生産用途であ
り得る。バイオマスは、食物成分および/または添加物を含有することができ、および/
またはヒトもしくは動物の食用の、または植物もしくは他の施肥目的のためのタンパク質
源として使用することができる。本発明のデバイスのさらなる適切な用途は、都市インフ
ラ、高速道路、橋、産業インフラ、冷却塔、幹線道路、地下インフラ、交通遮音壁、サイ
ロ、給水塔、または格納庫を含むがこれらに限定されないインフラと一緒にすることがで
きる。
【0138】
本発明のデバイスの他の適切な用途は、廃水処理プラント、都市下水処理プラント、下
水嫌気性消化処理、肥料嫌気性消化処理、嫌気性消化器または焼却炉を含むがこれらに限
定されない、廃棄物処理プラントと組み合わせることができる。
【0139】
本発明のデバイスは、汚染物質および/または栄養素(硝酸塩およびリン酸塩など)を
、ユニットの内部に迂回させることができる廃水流から直接除去することができる。これ
は、水の部分的および/または前処理が要求される廃水処理用途および建築/工業用途に
おいて有利である。本発明のデバイス内の微生物に対して毒性である汚染物質を含有する
水は、そのような実施形態では、デバイスに導入する前にこれらの汚染物質を除去するた
めに処理しなければならない。
【0140】
本発明のデバイスは、任意の種類の工業、農業、農耕、集約的農耕(集約的養殖など)
、製造、精製、および/またはエネルギー生産プロセス上にまたはその近くに設置するこ
とができ、これは、デバイスの気体チャンバー内で使用するための気体の一部または全部
を供給することができる。
【0141】
本発明のデバイスは、チャンバーがそれらの本体部分によって実質的に構成されること
ができ、かつデバイスがバイオマスを生成するために、および/もしくは産業機械および
/もしくは乗物によって生成される排出気体から二酸化炭素を除去するために使用される
産業機械ならびに/または乗物の内部に設置することができる。
【0142】
本発明のデバイスは、以下の構成によって例示されるが、決してこれらに限定されない
。
【0143】
図1は、反対側に配置された入口(3)および出口(4)と、一方または両方が気体透
過性である外層(5、6)と、PBR内に含まれる光合成微生物を含む液体培地(12)
とを含む線形PBR(60)を含む、本発明の一実施形態(100)のデバイスの断面図
(
図13aの区画Aを参照)を示す。PBRは、壁(2)、入口(8)および出口(7)
を含むチャンバー(50)内のその囲いによって画定される大気(1)によって実質的に
全側面を囲まれている。チャンバー(50)およびチャンバー壁(2)は、大気(1)を
外部大気(9)から分離する。いくつかの実施形態では、チャンバーは、大気(1)から
気体を除去するためのチャンバー弁(22)をさらに含む。
【0144】
図2は、(10)大気(1)からPBR内容物(12)への気体の移動を示し、(11
)PBR内容物から大気(1)への気体の移動も示す。
【0145】
図3は、チャンバー(50)が隔壁(17)によって2つの区画に分けられ、第1区画
が入口(7)と出口(8)と大気(15)を含み、第2区画が入口(13)と出口(14
)と大気(16)を含む、本発明の別の実施形態のデバイスの断面図を示す。
【0146】
図4は、PBR(60)とチャンバーの大気(15、16)との間の気体の移動を示し
、大気からPBRへの移動(18、20)およびPBRから大気への移動(19、21)
を示している。
【0147】
図5は、2つのPBR(60)が、それらの液体培地(12)が流体連通するように直
列に直接接続されており、PBRが単一のチャンバー(50)内に収容されている、本発
明の別の実施形態の構成の断面図(
図14aの区画Aを参照)を示す。いくつかの実施形
態では、より多くのPBRが単一のチャンバー内に接続され得る。
【0148】
図6および
図7は、2つのPBR(60)が直列に直接接続され、各PBR(60)が
チャンバー(50)内に収容されている、本発明の別の実施形態の構成の断面図(
図14
bおよび14cの区画Aを参照)を示す。チャンバー(50)の大気(1)は、チャンバ
ー壁(2)の開口部(23)を介して互いに流体連通している。PBRは導管(24)を
介して接続することができる。
【0149】
図8および
図9は、2つのPBR(60)が直接直列に接続され、それぞれがチャンバ
ー(50)内に収容されている、本発明の別の実施形態の構成の断面図(
図14bおよび
図14cの区画Aを参照)を示す。チャンバー(50)はそれぞれ2つの区画に分けられ
、各第1区画の大気(15)は流体連通しており、各第2区画の大気(16)も流体連通
している。
【0150】
図10~
図12は、本発明の実施形態のデバイスの代替の断面図を示す。
図10(
図1
3aの区画B)は、チャンバー(50)内に収容されたPBR(60)を示す。
図12(
図13bの区画C)は、分岐流路を形成する中央流れ制御構造(25)およびPBR(6
0)を実質的にチャンバー(50)の中央に維持する支持構造(26)をさらに示す。
【0151】
図13aおよび
図13bは、上記の構成のデバイスを表す平面
図A、BおよびCを示す
。
図13cは、液体培地が波状または蛇行状の経路をたどる配置のデバイスを表す平面断
面Dを示す。
【0152】
図14a、bおよびcは、本発明の一実施形態のデバイスを表す平面
図Aを示す。
【0153】
図15~
図18は、チャンバー(50)内に取り囲まれた線形光バイオリアクター(6
0)を有する本発明の実施形態のデバイスの断面図を示し、チャンバーの1つまたは複数
の壁は、2つの層、介在スペース(31)を有する内層(28)および外層(27)から
なる。下壁は表面(30)に対して配置されてもよい。
【0154】
図19aは、複数のPBRを含む、本発明の一実施形態の適切なシステム(70)を示
す。貯留部(71)内に光合成微生物を含む液体培地(12)は、ポンプ(72)によっ
て入口(3)を通って長方形のPBRに運ばれる。PBRは、入口(7)および出口(8
)を通る気体移動によって制御されている大気(1)も取り囲んでいるチャンバー内に取
り囲まれている。液体培地は、蛇行状の経路を通ってPBRを通り、そこで人工光源(7
3)または自然光源からの光が液体培地(12)中の微生物に到達して光合成を誘導し、
その間、ユニット(12)内の液体媒体と大気(1)との間のガス移動は、例えば
図2に
実質的に示されるように、ユニットの膜層を介して起こる。液体は出口(4)を通ってユ
ニットを出て三方弁(74)に達し、それは液体媒体を貯留部(71)に戻して回路を閉
じる。貯留部(71)内のセンサー(75)は、微生物培養パラメータの値を測定し、次
いで、ポンプ、弁、人工光システム、温度制御システム、バイオマス分離器などの補助シ
ステムの構成要素の動作を制御するコンピュータに出力を送る。コンピュータは、入口(
7)を通るチャンバー大気(1)への気体の供給および出口(8)を通る気体除去も制御
する。
図19bは、2つのPBRが直列に接続されている同様のシステムを示している。
【0155】
液体培地中のバイオマス濃度が所望のレベルに達すると、三方弁(74)は、液体培地
の一部からバイオマスを分離するバイオマス-分離器システム(76)に流れを向け、単
離されたバイオマスは、追加の処理のために容器(77)に進み、一方で液体媒体は貯留
部(71)に戻される。バイオマス-分離器に流れを向けるこの動作は、定期的に、弁(
74)が貯留部(71)への流路を再び変える前の所定の期間にわたって実行することが
できる。このタイミングは、各用途、使用される微生物、周囲環境およびデバイスの場所
に関して最適化することができる。あるいは、三方弁(74)は、貯留部(71)および
バイオマス分離システム(76)への流れを調整し、所与の時間にシステムから除去され
るバイオマスの量の動的制御を可能にしながら、バイオマスの連続収穫を可能にする。例
えば、弁(74)は、弁を通過する全液体培地の0%~100%をバイオマス分離システ
ム(76)に送ることができる。
【0156】
栄養素を、定期的にシステム内の貯留部(71)に直接挿入することができる(78)
。液体培地中の水および/もしくは微生物、または洗浄液も同様に導入することができる
。
【0157】
例えば制御可能な圧力弁または圧力調整器(79)をシステム内に配置することができ
るため、他のあらゆる種類のシステム構成要素を利用することができ、この例では、圧力
弁は、液体圧力の変化の影響を通してユニットの容積変化を制御することができる。いく
つかの弁(82)はユニットへの流量を制御することができる。
【0158】
必要に応じて、チャンバーへの気体供給に加えて、補助空気および/または二酸化炭素
を富化した空気および/または他の気体を、主導管内に任意に導入することができる(8
1)。例えばシステムの設置中に誤って油圧システムに入る可能性がある空気を除去する
ために、通気孔を導管に設置することができ、通常はシステムの最も高い位置に配置され
、望ましくない空気の排除を容易にする。
【0159】
洗浄手順を作動させて、ユニットおよび/もしくは導管および/もしくは水タンクおよ
び/もしくは全ての補助システムおよび/もしくは気体チャンバーを洗浄ならびに/また
は滅菌することができる。洗浄手順は、洗浄媒体として蒸気または加熱空気または水蒸気
を使用することによって実施することができる。「洗浄液」は、当業者が知っているであ
ろう任意の化合物で作ることができる。それは、エタノール、水、過酸化水素(H2O2
)、塩水、洗剤、漂白剤、界面活性剤、アルカリまたは他の任意の適切な洗浄組成物を含
み得る。洗浄液は、システムの任意の箇所の特定の導管を介してシステムに入ることがで
き、システムの任意の箇所から出ることができ、必要に応じて、システム全体を清掃する
のではなく、特定の場所でのみの清掃を許可にする。
【0160】
図20~
図23は、チャンバーアセンブリが、双方に直線状に(所望のPBRアレイに
続いて)延びる、例えば押出構造などの金属および/またはプラスチック構造からなり得
る支持構造(90)を含むことができることを示す。押出構造は、膜PBR、上面および
底面のための構造的支持体として機能し得る。押出構造は、PBR(91)と、チャンバ
ーの上壁(92)と、チャンバーの下壁(93)とを固定および/または定位置に保持す
るためのハウジング機構または取り付け具(91、92、93)を備え得る。モジュール
上の端部は、閉じたチャンバーを作り出すために他の支持構造要素によって閉じることが
できる。押出構造の壁(
図22b参照)は、特に複数のチャンバーのアレイを含む実施形
態において、気体が1つのチャンバー区画から別の区画に移動することを可能にする穴(
95)を含み得る。
【0161】
図21bおよび
図21cは、チャンバーの下壁に取り付けられたフィン(94)または
側壁の間に吊り下げられたコード(94´)であり得る懸架部材の追加によって、チャン
バーアセンブリ内でPBRを支持するための追加の構成を示す。この懸架部材はPBRの
中心を支持し、たるみを防止し、PBRと支持構造との接続部に損傷または歪みが生じる
可能性を低減する。
【0162】
図23aおよび
図23bは、装置の水平面上に水または他の物質が集まるのを防ぎ、し
たがって光の干渉を減らすようになっている本発明の実施形態を示す。
図23aでは、チ
ャンバーの上壁は丸い凸形をしているため、水または他の物質はこの表面から流れ出る。
図23bは、異なる高さの支持構造(90)を有し、チャンバーの上壁が水平に対して傾
斜しており、ここでも流出を促進している。そのような実施形態の別の利点は、上壁の内
側の結露が、PBRの真上の位置から流出することを促進されることである。
【0163】
本発明の構成例は以下の通りである。厚さ50~100μmの、2層の透明ポリシロキ
サン化合物気体透過膜からなる通気性膜PBR。
【0164】
PBRはチャンバーアセンブリ内に配置されている。チャンバーアセンブリは、光にさ
らされる上面に開口窓を有する鋼製のシャーシ(箱)でできている。この開口窓は、透明
なETFE層(厚さ100~500μmの範囲)で覆われている。
【0165】
PBRは、シャーシに溶接された水平部材に固定されているPBRの境界上のアイレッ
トによって、支持シャーシ上に引き伸ばされて固定されている。シャーシの底部内側表面
上の保持構造は、PBRの位置を気体チャンバーの中心に維持する。保持構造は、PBR
の層が融合する位置でPBRと接触して流れ制御構造を形成し、保持構造がPBR膜を通
る気体移動を妨げることを回避する。
【0166】
このようにして、頂部と底部の両方の上のPBR表面の大部分が気体チャンバーの大気
にさらされ、その周りの大気の循環を可能にする。
【0167】
PBRは、含有液体培地用の入口および出口を有し、pH、溶存O2およびCO2、温
度、ならびに濁度のためのセンサーを含み、さらに蠕動ポンプおよび水加熱システムを含
む水タンクを含む補助システムに接続されている。
【0168】
チャンバーアセンブリは実質的に気密である。それは供給気体のための入口と流出気体
のための出口とを有し、その両方とも電磁弁によって制御され、その作動はプログラマブ
ル論理制御装置(PLC)の制御下にある。入口はさらに、CO2キャニスターおよび/
または窒素気体キャニスターに接続されている。
【0169】
CO2は、気体チャンバーに先に含まれていた大気の除去を可能にするために、出口弁
が開いた状態で気体チャンバーにポンプで送り込まれる。気体チャンバー内の大気圧を上
げずにCO2を送り込む。
【0170】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することによってさらに例示される。
【実施例0171】
(実施例1)
実験装置を構成し、本発明の実施形態のシステムを実証した。特に、本装置は、本明細
書に記載の種類のPBRを含むチャンバーの気体大気にCO2気体を供給すると、PBR
内に含まれる液体培地内のO2濃度およびpHが低下するとともに、CO2濃度が上昇す
ることを実証する。これはさらに、光合成微生物培養物を含む液体培地で満たされたPB
Rユニットの膜層を通して効率的なO2およびCO2気体移動が起こることを示している
。
【0172】
事例設定は、
図24の簡略図によって表される。この設定は、本発明の一実施形態のシ
ステムを定義する。
図24を参照すると、この概略図に示される特徴の大部分は、
図19
aおよび19bに見られるものと同じである。さらに、タンク(83)が示されており、
それは液体培地の予備を収容しており、貯留部(71)は水浴(84)によって加熱され
ている。
【0173】
PBRユニット(5)は、約400バールに等しいO2の透過係数、約2100バール
に等しいCO2の透過係数、および約200に等しい窒素の透過係数(ISO 1510
5-1)を有する100ミクロン厚の2つのポリシロキサン膜層から構成されていた。P
BRは約450×450mmと測定され、層間にVVB adt-xシリコーン接着剤を
使用して2つの膜層を接合し、それらを熱圧着して蛇行状の経路を画定する連続的な流路
を形成することによって構築された。
【0174】
PBRを、BG11シアノバクテリア淡水培地およびシネコシスティス属培養PCC6
803を含有する液体媒体で、その通常の運転可能容量まで満たした。このシステムは気
密であり、それ故、PBR内の液体培地と周囲のチャンバー内の大気との間の気体交換は
、ユニット(5)のポリシロキサン膜層を通してのみ起こる。弁(8)を介してチャンバ
ーから気体を排出し、大気の圧力と気体混合とを制御することができる。
【0175】
チャンバー(50)は、光に曝される上面に開口窓を有する鋼製シャーシ(箱)から構
成されていた。この開口窓は、厚さ約200μmの透明なETFE層で覆われている。P
BRは、シャーシ上に溶接された水平部材に固定されているPBRの境界上のアイレット
によって支持シャーシ上に引き伸ばされて固定されていた。PBRは、チャンバーの床に
垂直に置かれた1.5mm厚のアクリル製保持構造によってチャンバー内に支持されてい
た。PBR膜を通る気体移動を妨げる保持構造の存在を回避するために、およびPBRの
穿孔または切断を回避するために、保持構造は、PBRの層が融合する位置でPBRと接
触して流れ制御構造を作り出していた。実験の開始時に、チャンバーを大気で(一度)満
たした。実験中、CO2フラッシュを行い、チャンバー内の空気大気を置換した。加圧C
O2をBOCからのシリンダーから供給して入口弁(7)を介してチャンバーに導入し、
出口弁(8)から空気を放出した。
【0176】
貯留部(71)は気密でありかつセンサー(75)を収容するように設計されている。
この事例に使用したセンサー(75)は以下の通りであった:
1.Mettler Toledo製の光学溶存O2センサー「InPro 686
0 i」、
2.Mettler Toledo製の溶存CO2センサー「InPro 500
0 I」、
3.Hannah Instruments製のpHセンサー、
4.温度センサーIFM Efector TM 4431 PT 100
5.セラミック測定セル付き圧力トランスミッターIFM Efector PA
9028
【0177】
システムの照明は、8×4フィートT5蛍光管を取り付けたライトウェーブT5伝播グ
ローライトシステムにより、調光可能なドライバを使用して提供された。
【0178】
液体培地の温度を約29℃(±2℃)に維持し、液体培地の温度を、主貯留部(71)
を囲む加熱二次水浴によって維持した。液体培地を、蠕動ポンプ(VerderFlex
Steptronic EZポンプ)(72)によってシステム全体に汲み上げた。1
つの3方向ピンチ電磁弁(SIRAI S307)は、PBRから来る液体培地をシステ
ムから出し、バイオマス収穫およびさらなる液体培地サンプリング(すなわち、培養総密
度/バイオマス重み付け)用の容器に分散させることができ、必要に応じて、別の3方向
ピンチ弁により、BG11培地を含む新しい液体培地を補助水タンクからシステムに挿入
することができる。液体培地中の溶存気体濃度レベルおよびpHに関するデータを記録し
た。
【0179】
O
2の濃度は実験の初期段階で約1ppm上昇することがわかり、これはシステムの起
動に関連した人為的結果であると考えられた;CO
2の導入前にシステムを50分間にわ
たって運転し、システムを平衡状態にすることを試みた。別の実験では、表1に示すよう
に、大気で満たされているがより低い温度に維持されているチャンバー内のPBRでは、
O
2濃度は著しくは上昇せず、少なくとも15分間安定であった。
【表1】
【0180】
図25aおよび
図25bに例示されるグラフに示されるように(これらのグラフは、示
されるように異なる時間尺度にわたる同じ実験を表す)、垂直の破線で示されるように、
約3600秒で、チャンバーを100%CO
2で、先にあった空気が置換されるまで約1
20秒間フラッシュした。
図23aに示されるように、液体培地のpHはこの期間にわた
って低下し、これはpHに対するCO
2濃度の増加の影響を示している。pHが約7.5
の値に達したとき、内部チャンバーの大気を制御することに対する直接の効果を表すため
に、内部の大気をフラッシュすることなく、チャンバーを通気口を介して大気に開放し、
外気の流入によりCO
2のレベルを徐々に低下させた。
【0181】
同じグラフに示されるように、PBRの液体培地内の溶存CO2濃度(総濃度の%で示
される)は、CO2フラッシングの後に増加し、同時に溶存O2濃度(ppmで示される
)は減少し、両方の変化は約10000秒でプラトーに近づく。これは、液体培地とチャ
ンバー内のCO2富化大気との間でPBR膜を介する気体交換が行われていることを示し
ていた。
【0182】
120秒間のCO2供給から約8000秒後に、溶存CO2濃度は低下し、O2濃度は
上昇するように見え、微生物プロセスまたは大気中へのCO2の排出によるチャンバー大
気内のCO2濃度の低下のいずれかの作用により、CO2供給の効果の逆転が可能である
ことを示した。
【0183】
(実施例2)
本発明のデバイスにおける別の同様の実験において、微生物増殖および複製がデバイス
の内部で起こることを示すために、液体培地の試料を異なる時間間隔でシステムから取り
出し、乾燥重量測定を行い、総バイオマス密度と増殖率を理解した。下の表に示すように
、全バイオマスは8時間強で0.8g/L増加し、この時間枠で40%以上増加した。
【表2】
【0184】
本発明の特定の実施形態を本明細書において詳細に開示してきたが、これは例として説
明のためにのみ行われたものである。前述の実施形態は、以下に続く添付の特許請求の範
囲に関して限定することを意図するものではない。本発明者らは、特許請求の範囲によっ
て定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明に対して様々な置き
換え、変更、および修正を加えることができると考えている。
前記PBRの膜層を通る酸素の透過係数が、少なくとも約100バーラー以上、適切には少なくとも200以上、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも650、少なくとも750、適切には少なくとも820バーラーから選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
前記少なくとも1種の光合成微生物が、ヘマトコッカス種、ヘマトコッカス・プルビアリス、クロレラ属、クロレラ・オートグラフィカ、クロレラ・ブルガリス、シーンデスムス属、シネココッカス属、シネココッカス・エロンガタス、シネコシスティス属、アルスロスピラ属、アルスロスピラ・プラテンシス、アルスロスピラ・マキシマ、スピルリナ属、クラミドモナス属、クラミドモナス・レインハルトチイ、ジモルフォコックス属、ガイトレリネマ属、リングビア属、クロオコッキディオプシス属、カロスリックス属、シアノシス属、オスキラトリア属、グロエオシス属、ミクロコレウス属、ミクロシスティス属、ノストック属、ナンノクロロプシス属、アナベナ属、フェオダクチラム属、フェオダクチラムトリコニウタム、ドナリエラ属、ドナリエラ・サリナからなる群のうちの1つまたは複数から選択される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。