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特開2023-27127微生物性炎症を処置するための方法および組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027127
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】微生物性炎症を処置するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20230221BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
A61K38/16 ZNA
A61P29/00
A61P31/00
A61P31/04
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022189061
(22)【出願日】2022-11-28
(62)【分割の表示】P 2019569762の分割
【原出願日】2018-06-18
(31)【優先権主張番号】62/521,159
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502073245
【氏名又は名称】ヴァンダービルト ユニヴァーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】502310254
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
【氏名又は名称原語表記】The United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ハウィガー,ジャック ヤツェク
(72)【発明者】
【氏名】ツィエンキービッツ,ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーチ,ルース アン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ワイルジンスキ,ルカス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】末期敗血症ならびに血小板減少症および低グリコーゲン血症などの微生物性炎症に関連する状態を含む、微生物性炎症を処置するための組成物および方法を提供する。
【解決手段】微生物負荷を低減するための医薬組成物であって、治療有効量の核内輸送モディファイヤー(NTM)を含む組成物。本明細書で開示される組成物および方法を使用すると、対象において感染組織、臓器、または系からの微生物のクリアランスを増強することも可能である。微生物性炎症に罹った対象において細胞中のストレス応答転写因子および代謝転写因子のレベルを低減するための組成物および方法も本明細書で開示される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において微生物性炎症を処置する/阻害する/低減する方法であって、治療有効量
の抗菌剤、および核内輸送モディファイヤー(NTM)を含む組成物を前記対象に投与す
ることを含む方法。
【請求項2】
前記NTMを含む組成物が前記抗菌剤を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記NTMを含む組成物が前記抗菌剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記微生物性炎症が、急性炎症、亜急性炎、慢性炎症、臓器特異的炎症、全身性炎症、
または敗血症である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記NTMが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列
番号6もしくは配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号16に示される配
列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記微生物性炎症が、血液、脳、洞、上気道、または肺、心臓、骨髄、脾臓、肝臓、腎
臓、尿路、膀胱、耳空洞、胃、腸、皮膚、目、歯、および/または歯肉に局在している、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記微生物性炎症がウイルス感染により引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ウイルス感染が、単純ヘルペスウイルス1、単純ヘルペスウイルス2、水痘帯状疱
疹ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイル
ス6、痘瘡ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C
型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ライノウイルス、コロナウイル
ス、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、麻疹ウイルス、ポリオーマ
ウイルス、ヒトパピローマウイルス、呼吸器多核体ウイルス、アデノウイルス、コクサッ
キーウイルス、デングウイルス、ムンプスウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、
ラウス肉腫ウイルス、レオウイルス、黄熱病ウイルス、ジカウイルス、エボラウイルス、
マールブルグウイルス、ラッサ熱ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、
セントルイス脳炎ウイルス、マレー渓谷熱ウイルス、西ナイルウイルス、リフトバレー熱
ウイルス、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、シンドビスウイルス、サ
ル免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス1型、ハンタウイルス、風疹ウイルス、
ヒト免疫不全ウイルス1型、およびヒト免疫不全ウイルス2型からなる群から選択される
ウイルスによる感染である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記微生物性炎症が細菌感染により引き起こされ、前記細菌感染を引き起こす細菌が炭
疽菌(Bacillus anthracis)ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記細菌感染が、結核菌(Mycobaterium tuberculosis)、マイコバクテリウム・ボビ
ス(Mycobaterium bovis)、マイコバクテリウム・ボビス BCG株(Mycobaterium bov
is strain BCG)、BCG亜株(BCG substrains)、マイコバクテリウム・アビウム(Myc
obaterium avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(Mycobaterium intracel
lular)、マイコバクテリウム・アフリカヌム(Mycobaterium africanum)、マイコバク
テリウム・カンサシ(Mycobaterium kansasii)、マイコバクテリウム・マリヌム(Mycob
aterium marinum)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobaterium ulcerans)、マ
イコバクテリウム・アビウム亜種パラ結核菌(Mycobaterium avium subspecies paratube
rculosis)、ノカルジア・アステロイデス(Nocardia asteroides)、他のノカルジア種
(Nocardia species)、在郷軍人病菌(Legionella pneumophila)、他のレジオネラ種(
Legionella species)、アシネトバクター・バウマンニ(Acetinobacter baumanii)、チ
フス菌(Salmonella typhi)、サルモネラ菌(Salmonella enterica)、他のサルモネラ
種(Salmonella species)、シゲラ・ボイディ(Shigella boydii)、志賀赤痢菌(Shige
lla dysenteriae)、ソンネ菌(Shigella sonnei)、シゲラ・フレックスネリ(Shigella
flexneri)、他のシゲラ種(Shigella species)、ペスト菌(Yersinia pestis)、ヘモ
リチカ菌(Pasteurella haemolytica)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multoci
da)、他のパスツレラ種(Pasteurella species)、アクチノバチルス・プルロニューモ
ニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)
、リステリア・イバノビイ(Listeria ivanovii)、ウシ流産菌(Brucella abortus)、
他のブルセラ種(Brucella species)、コウドリア・ルミナンチウム(Cowdria ruminant
ium)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ボルデテラ・アビウム
(Bordetella avium)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、気管支敗血症菌(Bordetel
la bronchiseptica)、ボルデテラ・トレマツム(Bordetella trematum)、ボルデテラ・
ヒンジイ(Bordetella hinzii)、ボルデテラ・プテリ(Bordetella pteri)、ボルデテ
ラ・パラペルツシス(Bordetella parapertussis)、ボルデテラ・アンソルピイ(Bordet
ella ansorpii)、他のボルデテラ種(Bordetella species)、鼻疽菌(Burkholderia ma
llei)、類鼻疽菌(Burkholderia psuedomallei)、セパシア菌(Burkholderia cepacian
)、クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、トラコーマクラミジア(Chla
mydia trachomatis)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)、Q熱コクシエラ(C
oxiella burnetii)、リケッチア種(Rickettsial species)、エーリキア種(Ehrlichia
species)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococ
cus epidermidis)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿性連鎖球菌(Strepto
coccus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)
、大腸菌(Escherichia coli)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、カンピロバクター種(C
ampylobacter species)、髄膜炎菌(Neiserria meningitidis)、淋菌(Neiserria gono
rrhea)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、他のシュードモナス種(Pseudomonas spe
cies)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、軟性下疳菌(Haemophilus ducr
eyi)、他のヘモフィルス種(Hemophilus species)、破傷風菌(Clostridium tetani)
、他のクロストリジウム種(Clostridium species)、エンテロコルチカ菌(Yersinia en
terolitica)、および他のエルシニア種(Yersinia species)からなる群から選択される
細菌による感染である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記微生物性炎症が真菌感染により引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記真菌感染が、カンジタ・アルビカンス(Candida albicans)、クリプトコッカス・
ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(His
toplama capsulatum)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、コ
コシジオイデス・イミチス(Coccidiodes immitis)、南アメリカ分芽菌(Paracoccidiod
es brasiliensis)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermitidis)、ニ
ューモシスシス・カリニ(Pneumocystis carinii)、ペニシリウム・マルネッフェイ(Pe
nicillium marneffi)、およびアルテルナリア・アルテナータ(Alternaria alternata)
からなる群から選択される真菌による感染である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記微生物性炎症が寄生虫感染により引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記寄生虫感染が、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫
(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、四日熱マラリ
ア原虫(Plasmodium malariae)、他のプラスモディウム種(Plasmodium species)、エ
ントアメーバ・ヒストリチカ(Entamoeba histolytica)、ネグレリア・フォーレリ(Nae
gleria fowleri)、リノスポリジウム・セーベリ(Rhinosporidium seeberi)、ランブル
鞭毛虫(Giardia lamblia)、ぎょう虫(Enterobius vermicularis)、エンテロビウス・
グレゴリイ(Enterobius gregorii)、回虫(Ascaris lumbricoides)、ズビニ鉤虫(Anc
ylostoma duodenale)、アメリカ鉤虫(Necator americanus)、クリプトスポリジウム種
(Cryptosporidium spp.)、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパ
ノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi)、森林型熱帯リーシュマニア(Leishmania ma
jor)、他のリーシュマニア種(Leishmania species)、広節裂頭条虫(Diphyllobothriu
m latum)、小型条虫(Hymenolepis nana)、縮小条虫(Hymenolepis diminuta)、単包
条虫(Echinococcus granulosus)、多包条虫(Echinococcus multilocularis)、フォー
ゲル包条虫(Echinococcus vogeli)、ヤマネコ条虫(Echinococcus oligarthrus)、肝
吸虫(Clonorchis sinensis);クロノルキス・ビベリニ(Clonorchis viverrini)、肝蛭
(Fasciola hepatica)、巨大肝蛭(Fasciola gigantica)、槍形吸虫(Dicrocoelium de
ndriticum)、肥大吸虫(Fasciolopsis buski)、横川吸虫(Metagonimus yokogawai)、
タイ肝吸虫(Opisthorchis viverrini)、ネコ肝吸虫(Opisthorchis felineus)、膣ト
リコモナス(Trichomonas vaginalis)、アカントアメーバ種(Acanthamoeba species)
、インターカラーツム住血吸虫(Schistosoma intercalatum)、ビルハルツ住血吸虫(Sc
histosoma haematobium)、日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)、マンソン住血吸虫
(Schistosoma mansoni)、他のシストソーマ種(Schistosoma species)、トリコビルハ
ルツ住血吸虫(Trichobilharzia regenti)、旋毛虫(Trichinella spiralis)、旋毛虫
ブリトビ(Trichinella britovi)、旋毛虫ネルソニ(Trichinella nelsoni)、旋毛虫ナ
ティバ(Trichinella nativa)、およびエントアメーバ・ヒストリチカ(Entamoeba hist
olytica)からなる群から選択される寄生虫による感染である、請求項13に記載の方法
【請求項15】
血液、脳、洞、上気道、または肺、心臓、骨髄、脾臓、肝臓、腎臓、尿生殖器官、膀胱
、耳空洞、胃、腸、皮膚、目、歯、または歯肉において微生物負荷を低減する方法であっ
て、NTMを含む治療有効量の組成物を対象に投与することを含む方法。
【請求項16】
対象において血小板減少症に関連する微生物性炎症を処置する/阻害する/低減する方
法であって、NTMを含む治療有効量の組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項17】
感染を有する対象の炎症部位の細胞において、ストレス応答転写因子(SRTF)のレ
ベルを低減する方法であって、核内輸送モディファイヤー(NTM)を含む治療有効量の
組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項18】
前記NTMが配列番号2を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記SRTFが、NF-κB、STAT1α、またはAP-1を含む、請求項17に記
載の方法。
【請求項20】
前記NF-κBが、NF-κB1、NF-κB RelAまたはそれらの組合せである
、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)が、微生物性炎症に関与する
細胞の核中で低減される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞が、顆粒球、単球、マクロファージ、樹状細胞、自然リンパ球系細胞、B細胞
、NK細胞、T細胞、内皮細胞または上皮細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
対象において抗菌剤の治療効果を増加させる方法であって、配列番号1、配列番号2、
配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6もしくは配列番号7、配列番号8、配
列番号9、または配列番号16に示される配列を含むNTMを前記対象に投与することを
含む方法。
【請求項24】
対象において微生物性炎症関連低グリコーゲン血症を低減する/阻害する/予防する方
法であって、NTMを前記対象に投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物性炎症を処置するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物性炎症(microbial inflammation)は、細菌、ウイルス、真菌または原生動物病
原体に起因する全身性または限局性感染症(localized infection)の機序である。これ
らの感染症の一部の末期は、微小循環に可逆的または不可逆的損傷を与え多臓器不全(or
gan failure)の原因となる血管内または血管外感染症に応答した重症内皮機能損傷症候
群(severe endothelial dysfunction syndrome)と定義される敗血症である。敗血症は
現代の病院において予防し処置するべきもっとも困難な問題の1つを表す。重度の血管内
または血管外感染症は、ついには、低血圧の根底にあり抗菌療法および対症療法を開始し
ているにもかかわらず逆転させるのが困難な重症微小血管内皮損傷(severe microvascul
ar endothelial injury)となる。自然および適応免疫系により開始される防御を回避す
る微生物病原体は、特定の病原菌指向抗菌療法(pathogen-directed antimicrobial ther
apy)により完全には制御されず、この療法は遅延する場合が多い。微生物病原体の制御
されない増殖中、特に血管外部位では、細菌はクオラムセンシングメカニズム(quorum s
ensing mechanism)を通じてそのゲノムを再プログラムし、微小血管損傷を強める複数の
病原性因子を産生する。宿主の自然免疫応答は、免疫細胞ならびに非免疫内皮、線維芽細
胞および上皮細胞に存在するパターン認識受容体、例えば、Toll様受容体を通じて、
細菌および真菌病原性因子ならびにウイルス核酸により開始され乱される。これらの受容
体が生み出すシグナルは、核内因子カッパB(NF-κB)、アクチベータータンパク質
1(AP-1)、活性化されたT細胞の核内因子(NFAT)、およびsignal t
ransducer and activator of transcription
1アルファ(STAT-1α)などのストレス応答転写因子(stress responsive tran
scription factor)(SRTF)の活性化を通じて、細胞の核へ中継される。これらの転
写因子のそれぞれは、単独でまたは組み合わさって、炎症性促進性サイトカインおよびケ
モカイン、ならびにそれらの受容体、シグナルトランスジューサ(signal transducer)
、および細胞接着分子をコードする複数の遺伝子の発現を引き起こすが、これはゲノム嵐
と呼ばれる応答である。これらのゲノム再プログラミングの産物は、発熱、低血圧の原因
となる微小血管内皮不安定性、急性呼吸促拍症候群(acute respiratory distress syndr
ome)の根底にある微小血管内皮損傷、播種性血管内凝固(disseminated intravascular
)、および多臓器機能障害を媒介し、ついには昇圧剤(vasopressor)および補液蘇生(f
luid resuscitation)が効かない潜在的致死性血管虚脱(potentially lethal vascular
)をもたらすが、これは敗血症性ショックとして知られる状態である。このように、多数
の微生物侵襲(microbial insult)に応答しての遺伝子調節ネットワークの再プログラミ
ングは、微生物性炎症という基本過程を構成する宿主細胞核へのシグナル伝達に依存して
いる。したがって、病原菌指向抗菌療法に加えて、シグナルカスケードの核内輸送を停止
し、それによって肺、腎臓、心臓、脳、肝臓、皮膚等などの主要臓器にコラテラルダメー
ジを与える宿主炎症応答の再プログラミングを阻害することが可能な新しい処置法および
組成物が必要とされる。
【発明の概要】
【0003】
微生物性炎症および/または敗血症(sepsis)もしくは敗血症(septicemia)として知
られるその末期形態を処置することに関する方法および組成物が開示される。
【0004】
一態様では、対象における微生物感染(例えば、ウイルス、細菌、真菌、または寄生虫
感染など)に起因する微生物性炎症(例えば、急性炎症、亜急性炎、慢性炎症、臓器特異
的炎症、全身性炎症、および/または敗血症など)を処置する/阻害する/低減する方法
であって、治療有効量の抗菌剤、ならびに例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3
、配列番号4、配列番号5、配列番号6もしくは配列番号7、配列番号8、配列番号9、
および/または配列番号16に示される配列を含むNTMなどの1つまたは複数の核内輸
送モディファイヤー(nuclear transport modifier)(NTM)を含む組成物を対象に投
与することを含む方法が本明細書で開示される。
【0005】
対象において微生物性炎症(急性炎症、亜急性炎、慢性炎症、臓器特異的炎症、全身性
炎症、および/または敗血症など)関連血小板減少症を処置する/阻害する/低減する方
法であって、1つまたは複数のNTMを含む治療有効量の組成物を対象に投与することを
含む方法も本明細書で開示される。
【0006】
一態様では、血液、脳、洞、上気道、または肺、心臓、骨髄、脾臓、肝臓、腎臓、尿路
、膀胱、耳空洞、胃、腸、皮膚、目、歯または歯肉において微生物負荷量を低減する方法
であって、1つまたは複数のNTMを含む治療有効量の組成物を対象に投与することを含
む方法が本明細書で開示される。
【0007】
いずれかの先行する態様の方法であって、NTMを含む組成物が抗菌剤を含まない方法
も本明細書で開示される。
【0008】
一態様では、いずれかの先行する態様の方法であって、NTMを含む組成物が抗菌剤を
確かに含む方法も本明細書で開示される。
【0009】
感染症に罹った対象の炎症部位での細胞(単球、マクロファージ、樹状細胞、自然リン
パ球系細胞、B細胞、NK細胞、NK T細胞、T細胞、内皮細胞、または上皮細胞など
)においてストレス応答転写因子(SRTF)のレベルを低減する方法であって、例えば
、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6もしくは
配列番号7、配列番号8、配列番号9、および/または配列番号16に示される配列を含
むNTMなどの1つまたは複数の核内輸送モディファイヤー(NTM)を含む治療有効量
の組成物を対象に投与することを含む方法も本明細書で開示される。
【0010】
いずれかの先行する態様のSRTFのレベルを低減する方法であって、SRTFがNF
-κB(NF-κBはNF-κB1、NF-κB RelAまたはその組合せであるなど
)、STAT1α、および/またはAP-1を含む方法も開示される。
【0011】
ステロール調節エレメント結合タンパク質(Sterol Regulatory Element Binding Prot
ein)(SREBP)のレベルを低減する方法であって、SREBPがSREBP1a、
SREBP1c、SREBP2を含む方法も開示される。
【0012】
一態様では、対象において抗菌剤の治療効果を増加させる方法であって、配列番号1、
配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6もしくは配列番号7、配
列番号8、配列番号9、または配列番号16に示される配列を含むNTMを対象に投与す
ることを含む方法が本明細書で開示される。
【0013】
添付図面は、本明細書に組み込まれその一部を構成するが、いくつかの実施形態を説明
し、記述と一緒に開示された組成物および方法を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】核内輸送が微生物性炎症のゲノム調節における中心的なチェックポイントであることを示す模式図である。凡例:TLR(Toll様受容体);Ca2+(カルシウムイオン);IL-1RおよびIL-18R(それぞれインターロイキン1および18受容体);IFN-γ(インターフェロンガンマ);IFNGR(インターフェロンガンマ受容体);SFK(タンパク質チロシンキナーゼのSrcファミリー);MyD88(ミエロイド分化一次応答88(Myeloid Differentiation Primary Response 88));IRAK(インターロイキン-1受容体関連キナーゼ);JAK(ヤヌスキナーゼ);P(リン酸基);Ub(ユビキチン);CaM(カルモジュリン);TRAF6(TNF受容体関連因子6):IKK(IカッパBキナーゼ);IκBα(NF-κB阻害因子アルファ);JNK(c-Jun N末端キナーゼ);MAPK(マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ);NFAT(活性化T細胞の核内因子);AP-1(アクチベータータンパク質1);NF-κB(核内因子カッパB);NPC(核膜孔複合体);STAT1(signal transducer and activator of transcription 1);Impα5(インポーチンアルファ5);Impβ1(インポーチンベータ1);TNFα(腫瘍壊死因子アルファ);IL-1、IL-6、IL-10およびIL-17(それぞれインターロイキン1、6、10および17);MCP-1(単球走化性タンパク質1)。
図2】NTMでの処置を受けた感染マウスにおいてSRTFの核内輸送が低減され、正常な肝臓構造が保護されていることを示す図である。図2Aは、NTM(cSN50.1)またはビヒクルでの処置を受けた偽感染または盲腸スラリー(CS)感染マウスから感染12時間後に収集した肝臓中のNF-κBp50、NF-κBp65、pY701ホスホ-STAT1α(MW91)および-STAT1β(MW84)、ならびにAP-1(cFos)の核内含有量を示している。ドナー動物から新たに単離された腸内マイクロバイオームを含むCSは、多微生物性腹膜炎(polymicrobial peritonitis)および敗血症を引き起こすための腹腔内注射前に標準化された。それぞれのレーンは1つのマウス由来の核抽出物であり、それぞれの横列で示されるレーンは同じゲル由来である。示されている免疫ブロットは2つの独立した核抽出調製物を代表している。図2Bは、図2Aに示される免疫ブロットの定量分析を示している。試料はすべて同じ免疫ブロット上のTATA結合タンパク質(TBP)に正規化された(データポイントは倍率変化の平均+SEMとして表示されている、n=10/群;t検定によりp<0.05、**p<0.005、***p<0.0001、NS=有意ではない)。図2Cは、NTM(cSN50.1)またはPASで染色されたビヒクルでの処置を受けた偽感染またはCS感染マウスから感染12時間後に収集した肝臓切片を示している。画像は5マウス/群を代表している。
図3】細菌クリアランスがNTMでの処置を受けた感染マウスにおいて改善されていることを示すグラフである。細菌コロニー形成単位(CFU)は、NTM(cSN50.1)またはビヒクルでの処置を受けた偽感染またはCS感染マウスから感染12時間後に収集され、標準条件下で培養された全血および臓器ホモジネートの段階希釈により決定された。バーは4~5マウス/群からの平均値を表す(p値はマン・ホイットニー検定により決定される)。
図4】NTMが敗血症に対する血液および血管応答を調節することを示す図である。図4Aは、CS感染前のおよびその感染後の2時間、6時間、12時間、および24時間での細胞数測定ビーズアレイ(cytometric bead array)により血漿中で測定されたサイトカイン/ケモカインを示している。メロペネムを用いた抗生物質療法は感染後12時間で開始された(n=20マウス/群;p値は二元配置反復測定(two-way repeated measure)ANOVAにより計算される)。IFN-γはCS感染前におよびその感染後2時間、6時間および12時間で血漿中ELISAにより測定された(ビヒクル+抗生物質、n=8;cSN50.1+抗生物質、n=13;p値は二元配置反復測定ANOVAにより計算される)。図4Bは、NTM(cSN50.1)またはビヒクルでの処置を受けた偽感染またはCS感染マウスから感染12時間後に収集された全血中の全WBC、リンパ球、好中球、単球、および血小板を示している。バーは5マウス/群からの中央値を表す(p値はマン・ホイットニー検定により決定される)。図4Cは、CS感染前におよびその感染後12時間および24時間で血漿中において測定された可溶性Eセレクチン、Lセレクチン、およびPセレクチンを示す。メロペネムを用いた抗生物質療法は感染後12時間で開始された(sEセレクチンおよびsLセレクチンのp値は二元配置反復測定ANOVAにより計算された、sPセレクチンのp値は24時間でのみマン・ホイットニー検定により決定された、n=9/群)。図4Dは、NTM(cSN50.1)またはビヒクルでの処置を受けた偽感染またはCS感染マウスから感染12時間後に収集された肝臓の肝実質中の好中球(矢印で示される)の代表的な画像(400×拡大率)および定量化を示している。陽性茶色(DAB-陽性)染色細胞のパーセンテージは、陽性細胞の全分析数を肝臓の切片中の全細胞数で除して計算された。バーは5マウス/群からの中央値を表す(p値はマン・ホイットニー検定により決定される)。
図5図4Bに示され、感染またはNTM処置により変化することがない全血球数(CBC)のパラメータを示すグラフである(N=5マウス/群)。バーは5マウス/群からの平均値を表している。マン・ホイットニー検定により有意差は判定されなかった。
図6】生存が、NTM処置を抗生物質療法と組み合わせることにより増加することを示す図である。マウスにCSを感染させ、ビヒクルまたはNTM(cSN50.1)で処置し、両方がメロペネムを用いた抗生物質療法により補われた(n=20マウス/群;p値がログランク分析により計算されるカプラン・マイヤー生存プロット)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本化合物、組成物、物品、装置、および/または方法が開示され説明される前に、本化
合物、組成物、物品、装置、および/もしくは方法は、別段の明記がない限り特定の合成
方法もしく特定の組換えバイオテクノロジー方法に、または別段の明記がない限り、特定
の試薬に限定されないこと、したがって、当然のことながら、変化してもよいことは理解
されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを
目的とし、限定的であることを意図されていないことも理解されるべきである。
【0016】
定義
明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つ(a)」、「1つ
(an)」および「その(the)」は、文脈上別段の指示がない限り、複数の指示対象を含
む。したがって、例えば、「薬学的担体」への言及は、2つ以上のそのような担体および
同類の物の混合物を含む。
【0017】
範囲は、「約(about)」1つの特定の値から、および/または「約(about)」もう1
つの特定の値までとして本明細書では表わすことが可能である。そのような範囲が表され
る場合、別の実施形態は、1つの特定の値からおよび/または他の1つの特定の値までを
含む。同様に、値が、先行詞「約(about)」を使用して近似値として表される場合、特
定の値は別の実施形態を形成することは理解されるであろう。範囲のそれぞれのエンドポ
イントは、もう一方のエンドポイントとの関係で、およびもう一方のエンドポイントとは
独立に、重要であることはさらに理解されるであろう。本明細書ではいくつかの値が開示
されていること、およびそれぞれの値が、値それ自体に加えて「約(about)」その特定
の値としても本明細書で開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される
場合、「約10」も開示される。当業者であれば適切に理解するように、値が開示される
場合、その値「未満または等しい」、「その値より大きいまたは等しい」および値間の考
えられる範囲も開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合、「
10未満または等しい」ならびに「10よりも大きいまたは等しい」も開示される。出願
全体を通じて、データはいくつかの異なるフォーマットで提供されること、およびこのデ
ータはエンドポイントおよび開始ポイント、ならびにデータポイントのいかなる組合せの
範囲でも表わすことも理解される。例えば、特定のデータポイント「10」および特定の
データポイント15が開示される場合、10および15より大きい、10および15より
大きいまたは等しい、10および15未満、10および15未満または等しい、および1
0および15に等しい値、ならびに10と15の間の値が開示されていると見なされるも
のと理解される。2つの特定の単位の間のそれぞれの単位も開示されるとも理解される。
例えば、10および15が開示される場合、11、12、13、および14も開示される
【0018】
本明細書ではおよび続く特許請求の範囲では、以下の意味を持つと定義されることとす
るいくつかの用語に言及する。
【0019】
「任意の」または「任意に」とは、それに続いて記載されるイベントまたは状況が生じ
ても生じなくてもよいこと、その記載が前記イベントまたは状況が生じる場合および前記
イベントまたは状況が生じない場合を含むことを意味する。
【0020】
用語「患者」、「対象」および「個体」は本明細書では互換的に使用され、処置を受け
る、診断されるおよび/またはそれから生体試料を得る動物(例えば、哺乳動物(ヒト、
ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌなど)、爬虫類、魚など)を意味する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「結合する(bind)」、「結合する(binds)」、または
「と相互作用する」とは、試料または生物中で1つの分子が特定の第2の分子を認識して
接着するが、試料中の他の構造的に無関係な分子を実質的に認識しない、または接着しな
いことを意味する。一般に、第2の分子に「特異的に結合する」第1の分子は、その第2
の分子に対して約10~1012モル/リットルよりも大きな結合親和性を有し、共有
結合および非共有結合(水素結合、疎水性、イオン性、およびファンデルワールス)が可
能である正確に「1つになっている(hand-in-a-glove)」ドッキング相互作用を含む。
【0022】
語句「核内輸送モディファイヤー」および「NTM」は、転写因子の核内への進入を調
節することができるペプチドを意味する。核内輸送モディファイヤーの例は、ヒト核内因
子カッパB1核局在化配列由来のおよびヒト線維芽細胞成長因子4シグナル配列疎水性領
域由来の26~29アミノ酸ペプチドである。この語句は、語句「核内移行インヒビター
」と互換的に使用される。
【0023】
本明細書に記載されるNTMでは、NTM配列中のアミノ酸残基のいずれでも、その改
変がペプチドの移行媒介機能に影響を及ぼさない限り突然変異させるおよび/または改変
させる(すなわち、模倣物を形成する)ことが可能である。したがって、単語「ペプチド
」は模倣物を含み、単語「アミノ酸」は改変されたアミノ酸、異常なアミノ酸、D型アミ
ノ酸などを含む。
【0024】
本明細書で使用される場合、語句「核内移行アダプター」および「核内輸送アダプター
」は、通常45kDよりも大きなタンパク質(例えば、転写因子)の核への輸送を媒介す
ることができる細胞成分を意味する。核内輸送アダプターの例は、カリオフェリンとして
も知られるインポーチンである。
【0025】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」および「ポリペプチド」は同意語として使
用されて、長さまたは翻訳後修飾、例えば、グリコシル化もしくはリン酸化とは無関係に
、アミノ酸の任意のペプチド結合鎖を意味する。
【0026】
用語「遺伝子」は、特定のタンパク質、またはある特定の場合には、機能的もしくは構
造的RNA分子をコードする核酸分子を意味する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「核酸」または「核酸分子」は、RNA(リボ核酸)およ
びDNA(デオキシリボ核酸)などの2つ以上のヌクレオチドの鎖を意味する。
【0028】
用語「標識された」は、核酸、タンパク質、プローブまたは抗体に関しては、検出可能
物質(検出可能薬剤)を核酸、タンパク質、プローブまたは抗体にカップリングする(す
なわち、物理的にまたは化学的に連結する)ことによる核酸、タンパク質、プローブまた
は抗体の直接標識化を包含することが意図されている。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「治療的」および「治療剤」は互換的に使用され、疾
患または他の医学的状態を予防する、軽快させる、または処置することができる任意の分
子、化学的実体、組成物、薬物、細胞、治療剤、化学療法剤、または生物学的製剤を包含
することが意図されている。この用語は、低分子化合物、アンチセンス試薬、siRNA
試薬、抗体、酵素、ペプチド有機または無機分子、細胞、天然または合成化合物および同
類の物を含む。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「処置」は、疾患、疾患の症状もしくは疾患への素因
を治癒する、治す、軽減する、緩和する、変更する、治療する、軽快させる、改善するま
たは影響を及ぼす目的で、疾患、疾患の症状もしくは疾患への素因を有する、患者もしく
は対象への治療剤の適用もしくは投与、または患者もしくは対象由来の単離された組織も
しくは細胞株への治療剤の適用もしくは投与と定義される。
【0031】
「減少」とは、症状、疾患、組成物、状態、または活性のより少ない量をもたらす任意
の変化を指すことが可能である。物質は、その物質を用いた遺伝子産物の遺伝的生産量が
その物質なしでの遺伝子産物の生産量と比べて少ない場合には、遺伝子の遺伝的生産量を
減少させるとも理解される。その上、例えば、減少は、症状が以前観察されたよりも少な
くなるような障害の症状の変化が可能である。減少は、状態、症状、活性、組成物の統計
的に有意な量でのいかなる個々の、中央値の、または平均の減少でも可能である。したが
って、減少は、その減少が統計的に有意である限り、1、2、3、4、5、6、7、8、
9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70
、75、80、85、90、95、または100%減少が可能である。
【0032】
「阻害する」、「阻害すること」、および「阻害」は、活性、応答、状態、疾患、また
は他の生物学的パラメータを減少させることを意味する。これは、活性、応答、状態、ま
たは疾患の完全な消失を含むことが可能であるがこれらに限定されない。これは、例えば
、天然または対照レベルと比べた場合、活性、応答、状態、または疾患の10%低減を含
んでもよい。したがって、低減は、天然または対照レベルと比べた場合、10、20、3
0、40、50、60、70、80、90、100%またはその間の任意の量の低減が可
能である。
【0033】
「増加」とは、症状、疾患、組成物、状態、または活性のより大きな量をもたらす任意
の変化を指すことが可能である。増加は、状態、症状、活性、組成物の統計的に有意な量
でのいかなる個々の、中央値の、または平均の増加でも可能である。したがって、増加は
、その増加が統計的に有意である限り、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、1
5、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80
、85、90、95、または100%増加が可能である。
【0034】
本出願全体を通じて、種々の刊行物が参照される。これらの刊行物のその全体の開示は
、これが関係する最先端の技術をさらに完全に説明するために、これにより参照によって
本出願に組み込まれる。開示される参考文献は、参考文献に含まれその参照に頼っている
文で考察される材料についても、参照により本明細書に個々におよび明確に組み込まれる
【0035】
開示される組成物を調製するために使用される成分ならびに本明細書に開示される方法
内で使用される組成物それ自体が開示される。これらのおよび他の材料が本明細書で開示
され、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、群などが開示される場合、これら
の化合物のそれぞれ種々の個々のおよび集合的な組合せおよび並び替えの特定の参照が明
確に開示されていない場合があるが、それぞれは具体的に想定されており本明細書に記載
されていることは理解される。例えば、特定の核内輸送モディファイヤー(NTM)が開
示され考察され、NTMを含むいくつかの分子に加えることが可能であるいくつかの改変
が考察される場合、特にそれとは反対に示されていなければ、NTMのありとあらゆる組
合せおよび並び替えならびに可能な改変が具体的に想定される。したがって、分子A、B
、およびCのクラスならびに分子D、E、およびFのクラスが開示され、ならびに組合せ
分子A-Dの例が開示されるならば、たとえそれぞれが個々に列挙されていなくても、そ
れぞれは個々におよび集合的に想定され、組合せA-E、A-F、B-D、B-E、B-
F、C-D、C-E、およびC-Fが開示されると見なされる。同様に、これらのいかな
るサブセットまたは組合せも開示される。したがって、例えば、A-E、B-F、および
C-Eのサブグループが開示されると見なされる。この発想は、開示された組成物を作成
し使用する方法におけるステップを含むがこれに限定されない本出願のすべての態様に当
てはまる。したがって、実施することが可能な種々の追加のステップが存在する場合、こ
れらの追加のステップのそれぞれを開示された方法のいかなる特定の実施形態または実施
形態の組合せでも実施することが可能であることは理解される。
【0036】
B.使用方法
本明細書に記載される組成物、キット、細胞、および方法に類似するまたは等価である
組成物、キット、細胞、および方法を本発明の実行または試験において使用することが可
能であるが、適切な組成物、キット、細胞、および方法が下に記載されている。本明細書
で言及されるすべての刊行物、特許出願、および特許は参照によりその全体が組み込まれ
る。例えば、米国特許出願第14/349,918号明細書および米国特許第7,553
,929号明細書は参照によりその全体が組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含む本
明細書が統制する。下で考察される特定の実施形態は説明的なものにすぎず、限定的であ
ることを意図されていない。
【0037】
例えば、ウイルス、細菌、真菌、または寄生虫などの微生物の感染に応答して、宿主免
疫系は、サイトカイン、抗体の分泌、ならびに顆粒球、単球、マクロファージ、樹状細胞
、自然リンパ球系細胞、NK細胞、NK T細胞、T細胞、B細胞、およびプラズマ細胞
のエフェクター機序を含む、自然および適応免疫系という武器を用いることにより感染性
微生物を除去しようと企てる。いかなる炎症でも、微生物病原性因子およびサイトカイン
に対する細胞応答により開始される炎症性シグナル伝達カスケードによりついにはストレ
ス応答転写因子(SRTF)が核移行(nuclear translocation)し、炎症性遺伝子ネッ
トワークを上方調節する。抑制されなければ、このゲノム再プログラミング(ゲノム嵐)
は、内皮機能障害、多臓器不全ならびに先進国および発展途上国における10の主要な死
因の1つである微生物性炎症の最終的な末期を表す、敗血症性ショックとして知られ最終
的に死に至るショックをもたらす。
【0038】
感染中、毒性サイトカインの産生は、例えば、NF-κB、AP-1、NF-AT、S
TAT-1などのSRTFによる厳密に調節された細胞内シグナル伝達に依存している。
NF-κBはパラダイムSRTF(paradigmatic SRTF)であり微生物性炎症病態形成に
役割を有し、ミエロイド、リンパ球、内皮細胞および外皮細胞のレベルで重大な役割を果
たしている。しかし、NF-AT、AP-1、およびSTAT-1を含む他のSRTFも
、標的組織の破壊の根底にある炎症およびアポトーシスのメディエーターをコードする数
多くの標的遺伝子を活性化することにより関与してきた。さらに、ステロール調節エレメ
ント結合タンパク質(SREBP)1a、1cおよび2などの代謝転写因子は、ある特定
の微生物病原体により活性化されることが可能である。核への炎症促進性免疫シグナル伝
達のこれらの陽性エフェクターは自動刺激ループに関与しており、このループは微生物ト
リガーにより開始される炎症過程を増幅する。これらの機能を実行するため、活性化され
たSRTFおよびSREBPは、自然および適応免疫刺激に応答している細胞の核に運ば
れる。したがって、SRTFおよびSREBPの制御されていない核移行は、微生物性炎
症およびその末期、すなわち、敗血症の追加の特長を表す。
【0039】
細胞生存因子をコードするハウスキーピング遺伝子を通常は調節する小さな転写因子(
<50kD)は、細胞質から核に自由に通過する。これとは対照的に、SRTFなどの5
0kDよりも大きな転写因子の核内輸送は、1つまたは複数の核局在化配列(NLS)に
より先導される。これらの細胞内「ジップコード」は、微生物侵襲により免疫および非免
疫細胞が刺激されるとSRTF上に提示される。次に、NLSは、核内輸送アダプタータ
ンパク質である、インポーチン/カリオフェリンアルファ(Imp α)により認識され
る(図1参照)。SRTFとインポーチンα複合体の刺激誘発形成はインポーチンベータ
1(Imp β1)も包含し、このインポーチンはカーゴの核への移行を可能にする核膜
孔タンパク質により認識される。最近まで、核内輸送は、IκBαと名付けられたNF-
κBの分解抵抗性因子などの炎症促進性SRTFの阻害因子をコードする遺伝子の強制発
現を通じて標的にされてきた。しかし、NF-κBは、感染に応答した核へのシグナル伝
達を媒介する複数のSRTFの1つにすぎない。AP-1、STAT1およびNFATな
どの他のSRTFも炎症応答中は核に輸送されるが、それらの核内輸送はIκBαにより
妨げられず、反対に、AP-1経路は活性化される。核への複数の転写因子の移行を統合
する重要なチェックポイントである核内輸送を標的にすることは、個々の転写因子のシグ
ナル伝達経路を標的にするよりも効率的な戦略になり得る。この発想は、核内輸送モディ
ファイヤー(NTM)の設計および開発により証明された。
【0040】
NTMは核内輸送シャトル、Imp α5およびImp β1を標的にする。これらの
核内輸送シャトルはSRTFを核に移行させシグナル伝達経路を制御し、このシグナル伝
達経路はついにはゲノム再プログラミングをもたらす。最近の前臨床研究では、二重特異
性を有する高度に可溶性の細胞透過性NTM(cSN50.1)が使用された。このNT
Mは、NF-κB1由来のNLSを認識するImp α5と線維芽細胞成長因子4由来の
シグナル配列疎水性領域(SSHR)を認識するImp β1の両方に結合するセグメン
トを有する。SSHRは、ATP-およびエンドサイトーシス非依存性機序を通じてペプ
チドおよびタンパク質の細胞内送達を可能にする膜移行モチーフ(membrane translocati
ng motif)(MTM)としての役目も果たす。このおよび他のNTMは、細菌毒素により
誘発される致命的なショックのモデルにおいて、SRTFおよび代謝転写調節因子である
ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)の核移行を阻害し、それによっ
て炎症応答、微小血管損傷、アポトーシスおよび出血性壊死ならびに代謝障害(metaboli
c derangement)を低減し、これに付随して生存が増加することが示されている。
【0041】
本明細書に記載される核内移行を標的にする新規の形態の免疫療法は、所与の臓器の微
生物感染組織および周辺領域の炎症駆動型破壊(inflammation-driven destruction)を
停止することが可能である。微生物性炎症(例えば、急性炎症、亜急性炎症、慢性炎症、
臓器特異的炎症、全身性炎症、および/または敗血症など)に関して、自然免疫の主要受
容体である、Toll様受容体(TLR)の刺激を通じて開始される炎症促進性シグナル
伝達は、抗原提示細胞(APC)を活性化する1つの機序である。TLRおよびサイトカ
イン受容体の下流に位置する共通の「チェックポイント」で核内輸送の阻害は、炎症性遺
伝子の発現を全体的に抑制し、それによってゲノム嵐を静め多臓器損傷を防ぐ。多数の微
生物侵襲に応答しての遺伝子調節ネットワークの再プログラミングは、微生物性炎症の基
本的過程を構成する宿主細胞核へのシグナル伝達に依存している(描写については図1
照)。
【0042】
したがって、一態様では、感染症に罹った対象における炎症部位での細胞核でストレス
応答転写因子(SRTF)および代謝転写因子であるステロール調節エレメント結合タン
パク質(SREBP)のレベルを低減する方法であって、1つまたは複数の核内輸送モデ
ィファイヤー(NTM)を含む治療有効量の組成物を対象に投与することを含む方法が本
明細書で開示される。
【0043】
細胞核においてSRTFおよび代謝転写因子であるステロール調節エレメント結合タン
パク質(SREBP)のレベルを低減することにより、開示されたNTMは、ゲノム嵐(
例えば、急性炎症、亜急性炎症、慢性炎症、臓器特異的炎症、全身性炎症、および/また
は敗血症など)ならびにその結果として内皮機能障害、多臓器不全、および敗血症に関連
する最終的に致命的なショックを引き起こす微生物性炎症を低減する、阻害する、および
/または予防することが可能であると理解され、本明細書では想定されている。したがっ
て、微生物性炎症(例えば、急性炎症、亜急性炎症、慢性炎症、臓器特異的炎症、全身性
炎症、および/または敗血症など)を処置する、阻害する、低減する、および/または予
防する方法であって、NTMを含む組成物を1つまたは複数の抗菌剤と組み合わせて微生
物性炎症に罹った対象に投与することを含む方法が本明細書に記載されている。
【0044】
一態様では、細胞においてSRTFおよびSREBP(例えば、SREBP1a、SR
EBP1c、SREBP2など)のレベルを低減するために方法、微生物性炎症(例えば
、急性炎症、亜急性炎症、慢性炎症、臓器特異的炎症、全身性炎症、および/または敗血
症など)を処置する、阻害する、低減する、および/または予防する方法、ならびに宿主
組織から微生物を取り除く方法は、1つまたは複数の核内輸送モディファイヤー(NTM
)を含む治療有効量の組成物を哺乳動物対象に投与することを含む。組成物の投与は、少
なくとも1つのストレス応答転写因子調節遺伝子および/または少なくとも1つのステロ
ール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)調節遺伝子の発現を減弱することによ
り微生物性炎症を減少させる。したがって、効果的な用量は、哺乳動物対象において、少
なくとも1つのストレス応答転写因子(SRTF)のインポーチンアルファ媒介核移行を
低減し、感染により引き起こされる炎症を低減するのに効果的な量である。同様に、効果
的な用量は、哺乳動物対象において、少なくとも1つの代謝転写因子であるステロール調
節エレメント結合タンパク質(SREBP)のインポーチンベータ媒介核移行を低減し、
感染により引き起こされる炎症を低減するのに効果的な量である。NTMはインポーチン
アルファに、インポーチンベータに、またはインポーチンアルファとインポーチンベータ
の両方に結合してもよい。
【0045】
cSN50.1ペプチドおよびその同類物により例証される核内輸送モディファイヤー
の重要な態様は、感染部位および感染宿主細胞、ならびに他のミエロイド、リンパ系、お
よび非リンパ系臓器に到達するそれらの能力である。このペプチドの細胞内送達の機序は
解明されており、カポジFGF由来のシグナル配列疎水性領域(SSHR)に基づいてい
る膜移行モチーフ(MTM)により媒介される細胞膜を通過するエンドサイトーシス非依
存性過程が報告されている(Veach et al. (2004) J Biol Chem 279: 11425-11431)。S
SHRの両親媒性ヘリックスベースの構造は、細胞膜への直接的挿入を促進し、傾斜型の
膜横断配向は、膜統合性を乱すことなく、細胞膜のリン脂質二重層を通じて直接細胞の内
部に核内輸送モディファイヤーを移行することを可能にする。この機序は、微生物性炎症
に関与する複数の細胞型の細胞膜を通過するSSHR先導カーゴの効率的な送達を説明す
る。
【0046】
本明細書で開示されるNTMは、ヒト線維芽細胞成長因子4のシグナル配列疎水性領域
(SSHR)由来のモチーフに融合したNFκB1/p50サブユニットの核局在化配列
(NLS)領域(表1参照)に倣って作られる疎水性N50モチーフで構成されるN50
含有NTM(SN50、cSN50、およびcSN50.1)に由来している。SSHR
は、ATP-およびエンドソーム非依存性機序によりペプチドに細胞膜を通過させ、N5
0モチーフは刺激開始シグナル伝達中にインポーチンαに結合し、それによってNLS保
有SRTFのそのアダプタータンパク質へのドッキングを制限し活性化されたSRTFの
核内移行を低減するように設計された。
【0047】
【表1】
【0048】
SN50は、カポジ線維芽細胞成長因子(K-FGF)のシグナル配列疎水性領域(S
SHR)とNFκB1のp50サブユニットの核局在化シグナル(NLS)を組み合わせ
る断片連結ペプチドである。SN50のいかなる模倣物、誘導体、または相同体も、本明
細書に開示される組成物、方法、およびキットに使用してもよい。SN50の配列は、A
AVALLPAVLLALLAPVQRKRQKLMP(配列番号1)である。SN50
の生成および使用は米国特許第7,553,929号明細書に記載されている。
【0049】
cSN50は、カポジ線維芽細胞成長因子シグナル配列の疎水性領域をp50-NFκ
B1の核局在化シグナル(NLS)と組み合わせ、NLSのそれぞれの側にシステインを
挿入して鎖内ジスルフィド結合を形成する断片設計環状ペプチドである。cSN50のア
ミノ酸配列は、AAVALLPAVLLALLAPCYVQRKRQKLMPC(配列番
号1)である。cSN50を作成し使用する方法は、例えば、米国特許第7,553,9
29号明細書および米国特許第6,495,518号明細書に記載されている。これらの
特許は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0050】
別の実施形態では、cSN50.1は細胞、組織、または臓器を免疫破壊から守るため
に投与してもよい。cSN50.1は、第1のシステインに隣接しているcSN50の1
8位のチロシンが取り除かれていること以外は、cSN50の配列を有する環状ペプチド
である。cSN50.1のアミノ酸配列は、AAVALLPAVLLALLAPCVQR
KRQKLMPC(配列番号2)である。cSN50.1はcSN50ペプチドの安定性
を増加させるように設計され、すなわち、安定性を増加させるように、チロシンがcSN
50の配列から取り除かれていた。cSN50は、合成および精製方法に応じて2.0m
g/mLから40mg/mLの範囲に及ぶレベルで可溶性であり、cSN50.1は少な
くとも100mg/mlのレベルで可溶性である。cSN50.1は、配列番号3、配列
番号4および配列番号5にも包含される。NTMの追加の例は、カーゴがNFκB1以外
の細胞内タンパク質由来の1つよりもむしろ2つのモジュールまたはカーゴとして組み込
まれている断片設計および合成ペプチドを含む。そのような追加の例は、配列番号6、配
列番号7、配列番号8、および配列番号9の配列を含む。
【0051】
したがって、微生物性炎症(例えば、急性炎症、亜急性炎症、慢性炎症、臓器特異的炎
症、全身性炎症、および/または敗血症など)を処置する、阻害する、低減する、および
/または予防する開示された方法において使用するための核内輸送モディファイヤー(N
TM)は、例えば、配列Xaa Xaa Xaa Xaa Leu Leu Pro X
aa Xaa Leu Leu Ala Leu Leu Ala Pro Xaa X
aa Xaa Gln Arg Lys Arg Gln Lys Xaa Xaa X
aa Xaa(配列番号3)を有するNTMでもよく、Xaaは任意のアミノ酸であるま
たは存在しない。例えば、核内輸送モディファイヤーは、配列Xaa Xaa Xaa
Xaa Leu Leu Pro Xaa Xaa Leu Leu Ala Leu
Leu Ala Pro Cys Xaa Xaa Gln Arg Lys Arg
Gln Lys Xaa Xaa Xaa Cysを有することが可能であり、Xaaは
任意のアミノ酸であるまたは存在しない(配列番号4)。別の例として、核内輸送モディ
ファイヤーは、配列Xaa Xaa Xaa Xaa Leu Leu Pro Xaa
Xaa Leu Leu Ala Leu Leu Ala Pro Cys Xaa
Gln Arg Lys Arg Gln Lys Xaa Xaa Xaa Cys
を有することが可能であり、Xaaは任意のアミノ酸であるまたは存在しない(配列番号
5)。一実施形態では、核内輸送モディファイヤーは、配列番号2に示される配列を有す
るcSN50.1である。NTMの別の例では、NTMは、配列Xaa Xaa Xaa
Xaa Leu Leu Pro Xaa Xaa Leu Leu Ala Val
Leu Ala Pro Xaa Xaa Xaa Gln Arg Lys Arg
Gln Lys Xaa Xaa Xaa Xaaを有し、Xaaは任意のアミノ酸で
あるまたは存在しない(配列番号6)。さらに別の例では、NTMは、配列Ala Al
a Val Ala Leu Leu Pro Ala Val Leu Leu Al
a Val Leu Ala Pro Cys Val Gln Arg Lys Ar
g Gln Lys Leu Met Pro Cys(配列番号7)を有する。さらな
る例では、NTMは、配列Xaa Xaa Xaa Xaa Leu Leu Pro
Xaa Xaa Leu Leu Ala Val Leu Ala Pro Xaa
Xaa Xaa Gln Arg Asp Glu Gln Lys Xaa Xaa
Xaa Xaaを有し、Xaaは任意のアミノ酸であるまたは存在しない(配列番号8)
。別の例では、NTMは、配列Ala Ala Val Ala Leu Leu Pr
o Ala Val Leu Leu Ala Val Leu Ala Pro Cy
s Val Gln Arg Asp Glu Gln Lys Leu Met Pr
o Cys(配列番号9)を有する。一態様では、対象において、微生物性炎症(例えば
、急性炎症、亜急性炎症、慢性炎症、臓器特異的炎症、全身性炎症、および/または敗血
症などの)を処置する、阻害する、低減する、および/または予防する方法であって、抗
菌剤ならびに配列番号1に示される配列を有するSN50または配列番号2に示される配
列を有するcSN50.1、配列番号16に示される配列を有するcSN50.1ベータ
、または配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、
もしくは配列番号9に示されるアミノ酸配列を有する本明細書で開示されるNTMのいず
れかを含むがこれらに限定されない1つまたは複数のNTMを含む組成物を対象に投与す
ることを含む方法が本明細書で開示される。一態様では、NTMは、アミノ酸配列AAV
ALLPAVLLALLAPCVQRDEQKLMPC(配列番号16)を含むcSN5
0.1ベータが可能である。cSN50.1ベータは、21位のリジンがアスパラギン酸
で置き換えられており、22位のアルギン残基がグルタミン酸で置き換えられていること
以外は、cSN50.1の配列を有する環状ペプチドである。
【0052】
上記のように、本明細書で開示される方法は、微生物性炎症(例えば、急性炎症、亜急
性炎症、慢性炎症、臓器特異的炎症、全身性炎症、および/または敗血症など)を処置す
る、阻害する、低減する、および/または予防するのに使用することが可能である。一態
様では、対象において、微生物性炎症(例えば、急性炎症、亜急性炎症、慢性炎症、臓器
特異的炎症、全身性炎症、および/または敗血症など)を処置する、阻害する、低減する
、および/または予防する方法であって、治療有効量の抗菌剤、および1つまたは複数の
NTM(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列
番号6もしくは配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号16など)を含む組
成物を対象に投与することを含む方法が本明細書で開示される。
【0053】
微生物性炎症(例えば、急性炎症、亜急性炎症、慢性炎症、臓器特異的炎症、全身性炎
症、および/または敗血症など)の有害作用の1つは、微生物性炎症に罹った対象におけ
る血小板の喪失(すなわち、血小板減少症)の発生が可能であることが理解され本明細書
では想定されている。炎症(例えば、急性炎症、亜急性炎症、慢性炎症、臓器特異的炎症
、全身性炎症、および/または敗血症など)の結果として、多くの炎症促進性および抗炎
症性サイトカインが放出されて微小血管内皮損傷を生じ、これが血小板の活性化および沈
着を誘起し、それによって、血液中の血小板数の減少(血小板減少症)により明らかにさ
れるその「消費」が生じる。この過程は凝血酵素であるトロンビンの生成を伴うが、プラ
スミノーゲン活性化因子も産生し、この因子がフィブリン分解酵素であるプラスミンの形
成をもたらす。このようにして、フィブリノーゲンを枯渇させることが可能であり、播種
性血管内凝固なしでまたはと共に血小板減少症として知られる過程である循環血小板が枯
渇される間、制御されないトロンビン形成と出血の両方が起こる場合がある。成人の典型
的な血小板数は150,000~400,000/μLの間であるが、これらの数は微生
物性炎症のせいでより少ない80,000/μLになることがある。一態様では、微生物
性炎症を呈する対象における微小血管内皮機能障害を処置することにより、血小板減少症
は軽快することが理解されている。したがって、対象において炎症(例えば、急性炎症、
亜急性炎症、慢性炎症、臓器特異的炎症、全身性炎症、および/または敗血症など)に関
連する血小板減少症を処置する/阻害する/低減する方法であって、1つまたは複数のN
TM(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番
号6もしくは配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番号16など)を含む治療
有効量の組成物を対象に投与することを含む方法が本明細書で開示される。血小板減少症
を処置する、阻害する、または低減する開示された方法は、抗菌剤および/または抗炎症
剤の追加をさらに含むことが可能であることが理解され、本明細書では想定されている。
【0054】
核への炎症促進性シグナル伝達は、微生物性炎症中の肝臓における急速なグリコーゲン
枯渇とも関連付けられてきたことも理解され本明細書では想定される。しかし、本明細書
に示されるように、NTM処置はグリコーゲン分解を予防する。したがって、一態様では
、対象における炎症(例えば、急性炎症、亜急性炎症、慢性炎症、臓器特異的炎症、全身
性炎症、および/または敗血症など)関連低グリコーゲン血症(hypoglycogenemia)を低
減する/阻害する/予防する方法であって、NTM(例えば、配列番号1、配列番号2、
配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6もしくは配列番号7、配列番号8、配
列番号9または配列番号16などの)を対象に投与することを含む方法が本明細書で開示
される。一態様では、炎症関連低グリコーゲン血症を低減する/阻害する/予防する方法
は、抗菌剤の投与をさらに含むことが可能である。
【0055】
「微生物性炎症」とは、ウイルス、細菌、真菌、または寄生虫などの微生物感染に起因
する、発赤、膨潤、温度上昇、疼痛、および肺(および他の臓器)での微小血管内皮損傷
の結果としての障害のある呼吸などの臓器機能の障害などの主徴に関連する身体状態のこ
とである。感染性病原体(病原微生物)に対する自然および適応免疫応答は、顆粒球、単
球、マクロファージ、樹状細胞、マスト細胞、自然リンパ球系細胞、T細胞、B細胞、N
K細胞、およびNK T細胞によるサイトカイン、ケモカイン、およびタンパク質分解酵
素の産生の突発を含むことが可能である。微生物性炎症は特定の臓器に局在化することが
可能である、または全身性であることが可能である。微生物性炎症は、急性から亜急性お
よび慢性へと段階が進むことが可能であり、これに付随して組織破壊およびそれに続く線
維症になる。野放しにしておけば、急性微生物性炎症は敗血症および敗血症ショックをも
たらすことがあり、これは微生物性炎症の末期となる。
【0056】
「微生物性炎症」とは、感染(「微生物侵襲」)により引き起こされる疾患の機序のこ
とである。微生物性炎症は、自然免疫応答から、例えば、ウイルス、細菌、真菌、または
寄生虫などの微生物に起因する感染症に発展する。したがって、微生物病原性因子により
引き起こされる微生物損傷は、侵入微生物のクリアランスを妨げ臓器の損傷へさらに傷害
を加える宿主産生炎症性メディエーターにより悪化する。微生物性炎症およびその末期で
ある敗血症は、既知の(または未知の)病原性因子および微生物抗原により誘発されるい
かなる微生物侵襲からも生じることが可能であると理解され、本明細書では想定されてい
る。
【0057】
「病原体」は、感染または疾患を引き起こす病原体、具体的には、ウイルス、細菌、真
菌、原生動物、または寄生虫である。
【0058】
病原体はウイルスであり得ると理解されている。したがって、一実施形態では、病原体
は、単純ヘルペスウイルス1、単純ヘルペスウイルス2、水痘帯状疱疹ウイルス、エプス
タイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス6、痘瘡ウイルス
、水疱性口内炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D
型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、インフルエンザ
ウイルスA、インフルエンザウイルスB、麻疹ウイルス、ポリオーマウイルス、ヒトパピ
ローマウイルス、呼吸器多核体ウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、デン
グウイルス、ムンプスウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、ラウス肉腫ウイルス
、レオウイルス、黄熱病ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ラッサ熱ウ
イルス、東部ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、マレー
渓谷熱ウイルス、西ナイルウイルス、リフトバレー熱ウイルス、ロタウイルスA、ロタウ
イルスB、ロタウイルスC、シンドビスウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白
血病ウイルス1型、ハンタウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1型、および
ヒト免疫不全ウイルス2型からなる群から選択することができる。
【0059】
病原体が細菌である方法も開示される。病原体は、結核菌(Mycobaterium tuberculosi
s)、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobaterium bovis)、マイコバクテリウム・ボビ
ス BCG株(Mycobaterium bovis strain BCG)、BCG亜株(BCG substrains)、マ
イコバクテリウム・アビウム(Mycobaterium avium)、マイコバクテリウム・イントラセ
ルラーレ(Mycobaterium intracellular)、マイコバクテリウム・アフリカヌム(Mycoba
terium africanum)、マイコバクテリウム・カンサシ(Mycobaterium kansasii)、マイ
コバクテリウム・マリヌム(Mycobaterium marinum)、マイコバクテリウム・ウルセラン
ス(Mycobaterium ulcerans)、マイコバクテリウム・アビウム亜種パラ結核菌(Mycobat
erium avium subspecies paratuberculosis)、ノカルジア・アステロイデス(Nocardia
asteroides)、他のノカルジア種(Nocardia species)、在郷軍人病菌(Legionella pne
umophila)、他のレジオネラ種(Legionella species)、アシネトバクター・バウマンニ
(Acetinobacter baumanii)、チフス菌(Salmonella typhi)、サルモネラ菌(Salmonel
la enterica)、他のサルモネラ種(Salmonella species)、シゲラ・ボイディ(Shigell
a boydii)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、ソンネ菌(Shigella sonnei)、シ
ゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri)、他のシゲラ種(Shigella species)、ペ
スト菌(Yersinia pestis)、ヘモリチカ菌(Pasteurella haemolytica)、パスツレラ・
マルトシダ(Pasteurella multocida)、他のパスツレラ種(Pasteurella species)、ア
クチノバチルス・プルロニューモニア(Actinobacillus pleuropneumoniae)、リステリ
ア菌(Listeria monocytogenes)、リステリア・イバノビイ(Listeria ivanovii)、ウ
シ流産菌(Brucella abortus)、他のブルセラ種(Brucella species)、コウドリア・ル
ミナンチウム(Cowdria ruminantium)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdo
rferi)、ボルデテラ・アビウム(Bordetella avium)、百日咳菌(Bordetella pertussi
s)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、ボルデテラ・トレマツム(Bordet
ella trematum)、ボルデテラ・ヒンジイ(Bordetella hinzii)、ボルデテラ・プテリ(
Bordetella pteri)、ボルデテラ・パラペルツシス(Bordetella parapertussis)、ボル
デテラ・アンソルピイ(Bordetella ansorpii)、他のボルデテラ種(Bordetella specie
s)、鼻疽菌(Burkholderia mallei)、類鼻疽菌(Burkholderia psuedomallei)、セパ
シア菌(Burkholderia cepacian)、 クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae
)、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、オウム病クラミジア(Chlamydia
psittaci)、Q熱コクシエラ(Coxiella burnetii)、リケッチア種(Rickettsial spec
ies)、エーリキア種(Ehrlichia species)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus
)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、肺炎球菌(Streptococcus pneumo
niae)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクチ
ア(Streptococcus agalactiae)、大腸菌(Escherichia coli)、コレラ菌(Vibrio cho
lerae)、カンピロバクター種(Campylobacter species)、髄膜炎菌(Neiserria mening
itidis)、淋菌(Neiserria gonorrhea)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、他のシ
ュードモナス種(Pseudomonas species)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae
)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、他のヘモフィルス種(Hemophilus species)
、破傷風菌(Clostridium tetani)、他のクロストリジウム種(Clostridium species)
、エンテロコルチカ菌(Yersinia enterolitica)、および他のエルシニア種(Yersinia
species)、ならびにマイコプラズマ種(Mycoplasma species)からなる細菌の群から選
択することができる。一態様では、細菌は炭疽菌(Bacillus anthracis)ではない。
【0060】
病原体が、カンジタ・アルビカンス(Candida albicans)、クリプトコッカス・ネオフ
ォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplam
a capsulatum)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、ココシジ
オイデス・イミチス(Coccidiodes immitis)、南アメリカ分芽菌(Paracoccidiodes bra
siliensis)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermitidis)、ニューモ
シスシス・カリニ(Pneumocystis carinii)、ペニシリウム・マルネッフェイ(Penicill
ium marneffi)、およびアルテルナリア・アルテナータ(Alternaria alternata)からな
る真菌の群から選択される真菌である方法も開示される。
【0061】
病原体が、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmod
ium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、四日熱マラリア原虫(Pl
asmodium malariae)、他のプラスモディウム種(Plasmodium species)、エントアメー
バ・ヒストリチカ(Entamoeba histolytica)、ネグレリア・フォーレリ(Naegleria fow
leri)、リノスポリジウム・セーベリ(Rhinosporidium seeberi)、ランブル鞭毛虫(Gi
ardia lamblia)、ぎょう虫(Enterobius vermicularis)、エンテロビウス・グレゴリイ
(Enterobius gregorii)、回虫(Ascaris lumbricoides)、ズビニ鉤虫(Ancylostoma d
uodenale)、アメリカ鉤虫(Necator americanus)、クリプトスポリジウム種(Cryptosp
oridium spp.)、トリパノソーマ・ブルセイ(Trypanosoma brucei)、トリパノソーマ・
クルージ(Trypanosoma cruzi)、森林型熱帯リーシュマニア(Leishmania major)、他
のリーシュマニア種(Leishmania species)、広節裂頭条虫(Diphyllobothrium latum)
、小型条虫(Hymenolepis nana)、縮小条虫(Hymenolepis diminuta)、単包条虫(Echi
nococcus granulosus)、多包条虫(Echinococcus multilocularis)、フォーゲル包条虫
(Echinococcus vogeli)、ヤマネコ条虫(Echinococcus oligarthrus)、肝吸虫(Clono
rchis sinensis);クロノルキス・ビベリニ(Clonorchis viverrini)、肝蛭(Fasciola
hepatica)、巨大肝蛭(Fasciola gigantica)、槍形吸虫(Dicrocoelium dendriticum)
、肥大吸虫(Fasciolopsis buski)、横川吸虫(Metagonimus yokogawai)、タイ肝吸虫
(Opisthorchis viverrini)、ネコ肝吸虫(Opisthorchis felineus)、膣トリコモナス
(Trichomonas vaginalis)、アカントアメーバ種(Acanthamoeba species)、インター
カラーツム住血吸虫(Schistosoma intercalatum)、ビルハルツ住血吸虫(Schistosoma
haematobium)、日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)、マンソン住血吸虫(Schistos
oma mansoni)、他のシストソーマ種(Schistosoma species)、トリコビルハルツ住血吸
虫(Trichobilharzia regenti)、旋毛虫(Trichinella spiralis)、旋毛虫ブリトビ(T
richinella britovi)、旋毛虫ネルソニ(Trichinella nelsoni)、旋毛虫ナティバ(Tri
chinella nativa)、およびエントアメーバ・ヒストリチカ(Entamoeba histolytica)か
らなる寄生生物の群から選択される寄生虫である方法も開示される。
【0062】
処置を受けている微生物性炎症は、血液、脳、洞、上気道、または肺、心臓、骨髄、脾
臓、肝臓、腎臓、尿生殖器官、膀胱、耳空洞、胃、腸、皮膚、目、歯、または歯肉を含む
がこれらに限定されない、微生物感染が起こることが可能である対象のいかなる組織、臓
器、または系でも可能であると理解され、本明細書では想定されている。したがって、一
態様では、対象において微生物性炎症(例えば、急性炎症、亜急性炎症、慢性炎症、臓器
特異的炎症、全身性炎症、および/または敗血症など)を処置する、阻害する、低減する
、または予防する方法であって、抗菌剤および1つまたは複数のNTMを含む組成物を対
象に投与することを含み、微生物性炎症が血液、脳、洞、上気道、または肺、心臓、骨髄
、脾臓、肝臓、腎臓、尿生殖器官、膀胱、耳空洞、胃、腸、皮膚、目、歯、または歯肉に
ある、方法が本明細書では開示される。
【0063】
本明細書に示されるように、開示されているNTM(例えば、配列番号1、配列番号2
、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6もしくは配列番号7、配列番号8、
配列番号9、または配列番号16など)は、抗菌剤が存在しなくても、直接に殺菌的でな
くても、感染性微生物のクリアランスを増強することが可能である。このクリアランスは
、宿主免疫系が、NTMがなければ、制御されない炎症(例えば、急性炎症、亜急性炎症
、慢性炎症、臓器特異的炎症、全身性炎症、および/または敗血症など)が進行する、増
加する、もしくは続くと考えられる感染性微生物を除去することができるように、または
ウイルス、真菌、もしくは原生生物などの感染性病原体における病原性因子産生の低減に
より、炎症応答を制御するNTMの能力の結果であり得る。したがって、一態様では、血
液、脳、洞および/または肺を含む上気道、心臓、骨髄、脾臓、肝臓、腎臓、尿生殖器官
、膀胱、耳空洞、胃、腸、皮膚、目、歯、または歯肉において病原微生物の負荷を低減す
る(すなわち、微生物を排除する)方法であって、1つまたは複数のNTMを含む治療有
効量の組成物を対象に投与することを含む方法が本明細書で開示される。一態様では、病
原微生物の存在を低減する/阻害する(すなわち、微生物を排除する)方法は、NTMを
含む組成物を対象に投与することを含むが、前記方法は抗菌剤の投与を含まない。一態様
では、病原微生物の存在を低減する/阻害する(すなわち、微生物を排除する)方法は、
抗菌剤の投与をさらに含むことが可能である。本明細書で使用される場合、クリアランス
とは、組織、臓器、または系(例えば、血液、洞を含む上気道、および/または肺、脳、
骨髄、脾臓、肝臓、腎臓、尿生殖器官、膀胱、耳空洞、胃、腸、皮膚、目、歯および歯肉
など)などの感染部位での感染性微生物の数の低減のことである。感染性病原微生物の完
全なまたは部分的な除去を含むクリアランスは、感染性微生物のより頑強ではない低減を
含み得ることが理解されており、本明細書では想定されている。したがって、クリアラン
スは、感染性微生物の数の10、20、25、30、33、40、45、50、55、6
0、66、70、75、80、85、90、95、96、97、98、または99%の低
減などを含むことが可能である。
【0064】
微生物性炎症を処置する開示された方法で使用される開示された組成物の結果として観
察された抗炎症効果は、NTMを有する組成物中でおよび/またはNTMとは別個の組成
物中で投与されるいかなる抗菌剤も存在しなくても治療効果を有することが可能であると
理解され、本明細書では想定されている。したがって、一態様では、対象において微生物
性炎症(例えば、急性炎症、亜急性炎症、慢性炎症、臓器特異的炎症、全身性炎症、およ
び/または敗血症などの)を処置する、阻害する、低減する、および/または予防する方
法であって、NTM(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列
番号5、配列番号6もしくは配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号16
など)を含み、NTM組成物の一部としても別個の投与としても抗菌剤を投与することを
含まない方法が本明細書で開示される。
【0065】
一態様では、抗菌剤の投与なしで炎症を低減し、微生物を宿主組織、臓器、または系か
ら除去することができるにもかかわらず、開示されたNTM(例えば、配列番号1、配列
番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6もしくは配列番号7、配列番
号8、配列番号9、または配列番号16など)は殺菌的ではないことが理解され、本明細
書では想定されている。したがって、NTMを含む組成物中の成分としてまたは別個の投
与を介して、処置レジメンに抗菌剤を追加することが望ましい状況も存在することが可能
である。したがって、対象において微生物性炎症(例えば、急性炎症、亜急性炎症、慢性
炎症、臓器特異的炎症、全身性炎症、および/または敗血症などの)を処置する、阻害す
る、低減する、および/または予防する方法であって、抗菌剤および1つまたは複数のN
TM(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番
号6もしくは配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号16など)を含む組
成物を対象に投与することを含む方法が本明細書で開示される。NTMおよび抗菌剤は、
同じ組成物の一部としてまたは別個に投与することができる。抗菌剤の例は、感染性微生
物を直接攻撃するまたは宿主条件を変更して宿主系が微生物を寄せ付けないようにする抗
生物質、抗体、低分子、および機能的な核酸(siRNA、RNAi、アンチセンスオリ
ゴヌクレオチド)を含むがこれらに限定されない。
【0066】
さらに、開示されたNTM(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号
4、配列番号5、配列番号6もしくは配列番号7、配列番号8、配列番号9または配列番
号16など)は、宿主免疫系が感染性微生物と適切に戦うことができるように、抗菌剤の
助けなしで、感染性微生物の数を低減し、炎症環境を変更することが可能なので、および
これらの作用は抗菌剤の作用と相補的なので、抗菌剤の治療効果を増やす1つのやり方は
、抗菌剤と一緒にNTM(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、
配列番号5、配列番号6もしくは配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号
16など)を投与することであると理解され、本明細書では想定されている。したがって
、1つまたは複数のNTM(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4
、配列番号5、配列番号6もしくは配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番
号16など)を含む組成物を対象にさらに投与することにより、対象において抗菌剤の治
療効果を増加させる方法が本明細書で開示される。抗菌剤の治療効果を増加させる開示さ
れた処置方法のいくつかの態様では、付随する抗菌剤はNTM含有組成物の成分である。
別の態様では、抗菌剤はNTMとは別個に投与される。抗菌剤の投与は、NTM組成物の
投与に先立って、と同時に、と協同して、またはこれに続いても可能である。
【0067】
上記のように、抗菌剤は、感染性微生物を直接攻撃する、または宿主条件を変更して宿
主系が微生物を寄せ付けないようにするいかなる抗生物質、抗体、低分子、および機能的
な核酸(siRNA、RNAi、アンチセンスオリゴヌクレオチド)を含むことが可能で
ある。そのような薬剤は、アバカビル、アシクロビル、アデホビル、アマンタジン、アン
プレナビル、アンプリゲン、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、バラビル、シド
ホビル、コンビビル、ドルテグラビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサ
ノール、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカ
ビル、エコリエベル、ファムシクロビル、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカル
ネット、ホスホネット、ガンシクロビル、イバシタビン、イムノビル、イドクスウリジン
、イミキモド、インジナビル、イノシン、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド、マラビロ
ク、モロキシジン、メチサゾン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネキサビル、ニタゾキサ
ニド、ノービア、オセルタミビル、ペグインターフェロン アルファ2a、ペンシクロビ
ル、ペラミビル、プレコナリン、ポドフィロトキシン、ラルテグラビル、リバビリン、リ
マンタジン、リトナビル、ピラミジン、サキナビル、ソホスブビル、スタブジン、テラプ
レビル、テノホビル、テノホビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリ
ジビル、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビクリビロ
ック、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル、ジドブジン、クロファジミ
ン;ダプソン;カプレオマイシン;サイクロセリン;エタンブトール(Bs);エチオナ
ミド;イソニアジド;ピラジナミド;リファンピシン;リファブチン;リファペンチン;
ストレプトマイシン;アルスフェナミン;クロラムフェニコール(Bs);ホスホマイシ
ン;フシジン酸;メトロニダゾール;ムピロシン;プラテンシマイシン;キヌプリスチン
/ダルポプリスチン;チアンフェニコール;チゲサイクリン(Bs);チニダゾール;ト
リメトプリム(Bs);例えば、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、メロペネ
ム、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン、スペクチノマイ
シン、ニタゾキサニド、メラルソプロール、エフロルニチン、メトロニダゾール、チニダ
ゾール、メルテホシン、メベンダゾール、ピランテルパモエート、チアベンダゾール、ジ
エチルカルバマジン、イベルメクチン、ニクロサミド、プラジカンテル、アルベンダゾー
ル、リファンピン、アンホテリシンB、フマギリン、カンジシジン、フィリピン、ハマイ
シン、ナタマイシン、ニスタチン、リモシジン、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロト
リマゾール、エコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、ル
リコナゾール、ミコナゾール、オモコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、
スルコナゾール、チオコナゾール、アルバコナゾール、エフィナコナゾール、エポキシコ
ナゾール、フルコナゾール、イサブコナゾール、イントラコナゾール、ポサコナゾール、
プロピコナゾール、ラブコナゾール、テルコナゾール、ボリコナゾール、アバフンギン、
アニデュラファンギン、カスポファンギン、ミカファンギン、オーロン、安息香酸、シク
ロピロクス、フルシトシン、グリセオフルビン、ハロプロジン、トルナフタート、ウンデ
シレン酸、クリスタルバイオレット、ペルーバルサム、オロトミド(Orotomide)、ミル
テホシンなどのアミノグリコシド類;例えば、ゲルダナマイシン、リファキシミン、ハー
ビマイシンなどのアンサマイシン類;例えば、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/
シラスタチン、およびメロペネムなどのカルバペネム類;例えば、セファドロキシル、セ
ファゾリン、セフラジン、セファピリン、セファロチン、セファレキシン、セファクロル
、セフォキシチン、セフォテタン、セファマンドール、セフメタゾール、セフォニシド、
ロラカルベフ、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン
、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セ
フチゾキシム、モキサラクタム、セフトリアキソン、セフェピム、セフタロリンフォサミ
ル、およびセフトビプロールなどのセファロスポリン類;例えば、テイコプラニン、バン
コマイシン、テラバンシン、ダルババンシン、およびオリタバンシンなどの糖ペプチド;
例えば、クリンダマイシンおよびリンコマイシンなどのリンコサミド類(Bs);例えば
、ダプトマイシンなどのリポペプチド;例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン
、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、テリスロマイシン、およびスピラマイシンな
どのマクロライド類(Bs);例えば、アズトレオナムなどのモノバクタム;例えば、フ
ラゾリドンおよびニトロフラントインBs)などのニトロフラン;例えば、リネゾリド、
ポジゾリド、ラデゾリド、およびトレゾリドなどのオキサゾリジノン類(Bs);例えば
、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリ
ン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ペニシリン
V、ピペラシリン、テモシリン、およびチカルシリンなどのペニシリン類;例えば、バシ
トラシン、コリスチン、およびポリミキシンBなどのポリペプチド;例えば、シプロフロ
キサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、レボフロキサシン、ロ
メフロキサシン、モキシフロキサシン、ナジフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサ
シン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、グレパフロキサシン、スパルフロキサシン
、およびテマフロキサシンなどのキノロン/フルオロキサシン;例えば、マフェニド、ス
ルファセタミド、スルファジアジン、スルファジアジン銀、スルファジメトキシン、スル
ファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファニルイミド(古風な)、スルファサ
ラジン、スルフィソキサゾール、トリメトプリムスルファメトキサゾール(コトリモキサ
ゾール)(TMP-SMX)、およびスルホンアミドクリソイジン(古風な)などのスル
ホンアミド類(Bs);例えば、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、メタサイクリ
ン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、およびテトラサイクリンなどのテトラサ
イクリン類(Bs);例えば、アクトクスマブ、アチドルトクスマブ(Atidortoxumab)
、ベルリマトクスマブ(Berlimatoxumab)、ベズロトクスマブ、コスフロビキシマブ(Co
sfroviximab)、エドバコマブ、フェルビズマブ、フィリブマブ、フォラビルマブ、ラル
カビキシマブ、モタビズマブ、ナビブマブ、パノバクマブ、パリビズマブ、ポルガビキシ
マブ、CR6261、ラフィビルマブ、パギバキシマブ、オビルトキサキシマブ、イバリ
ズマブ、レガビルマブ、Rmab、セヴィルマブ、リババズマブペゴル、テフィバズマブ
、スブラトクスマブ、およびツビルマブなどのモノクローナル抗体;およびチェックポイ
ント阻害剤;ペンブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバル
マブ、ピディリズマブ、AMP-224、AMP-514、PDR001、セミプリマブ
、およびイピリムマブを含むがこれらに限定されない。
【0068】
一態様では、微生物性炎症(例えば、急性炎症、亜急性炎症、慢性炎症、臓器特異的炎
症、全身性炎症、および/または敗血症など)を処置する開示された方法は、抗菌剤の効
果に加えて、NTMが核内輸送シャトルを制御し、したがって、野放しの炎症応答を予防
する結果であると理解され、本明細書では想定されている。したがって、感染症に罹って
いる対象の炎症部位の細胞において、ストレス応答転写因子(SRTF)(例えば、NF
-κB(NF-κBが、NF-κB1、NF-κB RelAまたはそれらの組合せであ
る場合を含む)、STAT1α、および/またはAP-1)ならびに/またはステロール
調節エレメント結合タンパク質(SREBP)1a、1c、および2などの代謝転写因子
のレベルを低減する方法であって、例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列
番号4、配列番号5、配列番号6もしくは配列番号7、配列番号8、配列番号9、または
配列番号16などの1つまたは複数の核内輸送モディファイヤー(NTM)を含む治療有
効量の組成物を対象に投与することを含む方法が本明細書で開示される。一態様では、S
RTFが低減されつつある細胞はマクロファージ、B細胞、NK細胞、NK T細胞、T
細胞、内皮細胞、または上皮細胞である。
【0069】
1.医薬担体/医薬製品の送達
対象(例えば、ヒト対象)において微生物性炎症を処置するための本明細書に記載され
る組成物、例えば、医薬組成物は、微生物性炎症を処置する(前記微生物性炎症から生じ
る血小板減少症または低グリコーゲン血症を処置することを含む)および/または組織、
臓器、もしくは系において病原性微生物の負荷を低減するのに十分な治療有効量の核内輸
送モディファイヤー(csN50、cSN50.1、cSN50.1ベータ、または配列
番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、および/もし
くは配列番号9に示されるNTM)ならびに薬学的に許容される担体を含む。同様に、対
象(例えば、ヒト対象)において微生物性炎症を処置するための本明細書に記載される組
成物は、微生物性炎症を有する対象においてSRTFおよびSREBPの核内レベルを低
減するのに十分な治療有効量の核内輸送モディファイヤー(cSN50、cSN50.1
、cSN50.1ベータ、または配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配
列番号7、配列番号8、および/もしくは配列番号9に示されるNTM)ならびに薬学的
に許容される担体を含む。一部の態様では、組成物は抗菌剤をさらに含まない。
【0070】
抗菌剤を添加せずに、組織において微生物病原性を阻害し、微生物クリアランスを実現
する開示された組成物の能力にもかかわらず、抗菌剤の添加(組成物自体の中でまたは別
個の投与として)が望ましい場合があることは理解され、本明細書では想定されている。
したがって、対象において微生物性炎症を処置する、阻害する、低減する、または予防す
る方法であって、対象に抗菌剤を投与することを含む方法が本明細書で開示される。
【0071】
上記のように、組成物は、薬学的に許容される担体中にインビボで投与することも可能
である。「薬学的に許容される」とは、生物学的にも他の点でも望ましくない点がない物
質のことであり、すなわち、この物質は、いかなる望ましくない生物学的効果も引き起こ
さず、またはそれが含有される医薬組成物のその他の成分のいずれとも有害な様式で相互
作用をせず、核酸またはベクターと一緒に対象に投与してもよい。当業者には周知である
ように、担体は、当然のことながら、活性成分のいかなる分解も最小限に抑え、対象にお
いていかなる有害な副作用も最小限に抑えるように選択される。
【0072】
組成物は、経口的に、非経口的に(例えば、静脈内に)、筋肉内注射により、腹腔内注
射により、経皮的に、体外的に、局所的鼻腔内投与もしくは吸入剤による投与を含む、局
所的に、またはその他で投与してもよい。本明細書で使用される場合、「局所的鼻腔内投
与」は、鼻孔の1つまたは両方を通じて鼻および鼻腔内中への組成物の送達を意味し、噴
霧機構もしくは液滴機構により、または核酸もしくはベクターのエアロゾル化を通じての
送達を含むことが可能である。吸入剤による組成物の投与は、噴霧もしくは液滴機構によ
る送達を介する鼻または口を通じて可能である。送達は、挿管を介して呼吸器系のいかな
る領域(例えば、肺)にでも直接可能である。必要とされる組成物の正確な量は、対象の
種、年齢、体重および全身状態、処置を受けているアレルギー障害の重症度、使用される
特定の核酸またはベクター、投与様式などに応じて対象により変動する。したがって、す
べての組成物について正確な量を特定するのは可能ではない。しかし、適切な量は、本明
細書で教示を与えられた日常実験のみを使用して当業者が決定することが可能である。
【0073】
非経口使用のための組成物は、単位剤形で(例えば、単回用量アンプルで)または複数
回用量を含有するおよび適切な保存剤を添加してもよいバイアルで提供してもよい(下記
参照)。組成物は、液剤、懸濁剤、乳濁液剤、輸液装置、もしくは植込用の送達装置の形
態でもよく、または組成物は、使用前に水もしくは別の適切なビヒクルで復元される乾燥
粉末剤として提供してもよい。微生物性炎症を処置する活性剤は別として、組成物は、適
切な非経口的に許容可能な担体および/または賦形剤を含んでいてもよい。活性治療剤は
、徐放のためにマイクロスフェア剤、マイクロカプセル剤、ナノ粒子剤、リポソーム剤、
またはその他に組み込んでもよい。さらに、組成物は、懸濁剤、可溶化剤、安定化剤、p
H調整剤、等張化剤、および/または分散剤を含んでいてもよい。
【0074】
物質は液剤、懸濁剤(例えば、マイクロ粒子剤、リポソーム剤、または細胞に組み込ま
れている)に含まれていてもよい。これらは、抗体、受容体、または受容体リガンドを介
して標的としての特定の細胞型に向けてもよい。以下の参考文献は、特定のタンパク質を
標的としての腫瘍組織に向けるこの技術の使用の例である(Senter, et al., Bioconjuga
te Chem., 2:447-451, (1991); Bagshawe, K.D., Br. J. Cancer, 60:275-281, (1989);
Bagshawe, et al., Br. J. Cancer, 58:700-703, (1988); Senter, et al., Bioconjugat
e Chem., 4:3-9, (1993); Battelli, et al., Cancer Immunol. Immunother., 35:421-42
5, (1992); Pietersz and McKenzie, Immunolog. Reviews, 129:57-80, (1992); およびR
offler, et al., Biochem. Pharmacol, 42:2062-2065, (1991))。また物質は、「ステル
ス」などのビヒクルおよび他の抗体コンジュゲートリポソーム(結腸癌への脂質媒介薬物
ターゲティングを含む)、細胞特異的リガンドを通じたDNAの受容体媒介ターゲティン
グ、リンパ球依存性腫瘍ターゲティング(lymphocyte directed tumor targeting)、お
よびインビボでのマウス膠腫細胞の高度に特異的な治療レトロウイルスターゲティングに
より送達されてもよい。以下の参考文献は、特定のタンパク質を標的としての腫瘍組織に
向けるこの技術の使用の例である(Hughes et al., Cancer Research, 49:6214-6220, (1
989); およびLitzinger and Huang, Biochimica et Biophysica Acta, 1104:179-187, (1
992))。
【0075】
a)薬学的に許容される担体
抗体を含む組成物は薬学的に許容される担体と組み合わせて治療的に使用することが可
能である。
【0076】
適切な担体およびその処方は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (1
9th ed.) ed. A.R. Gennaro, Mack Publishing Company, Easton, PA 1995に記載されて
いる。典型的には、適切な量の薬学的に許容される塩が製剤中で使用されて、製剤を等張
性にする。薬学的に許容される担体の例は、生理食塩水、リンゲル液およびブドウ糖液を
含むがこれらに限定されない。溶液のpHは、好ましくは、約5~約8であり、さらに好
ましくは約7~約7.5である。さらなる担体は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの
半透過性マトリックスなどの持続性調製物を含み、このマトリックスは、造形品、例えば
、フィルム、リポソームまたはマイクロ粒子の形態である。ある特定の担体が、例えば、
投与経路および投与されている組成物の濃度に応じて、より好ましい場合があることは当
業者には明らかである。
【0077】
医薬担体は当業者には公知である。これらの医薬担体は極めて典型的には、生理的pH
の減菌水、生理食塩水、および緩衝液などの溶液を含む、ヒトへの薬物の投与用の標準担
体と考えられる。組成物は筋肉内にまたは皮下に投与することができる。他の化合物は、
当業者が使用する標準的手順に従って投与される。
【0078】
医薬組成物は、最適な分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存剤、界面活
性剤などを含んでいてもよい。医薬組成物は、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔剤などの1つまた
は複数の活性成分を含んでいてもよい。
【0079】
医薬組成物は、局所的処置が望ましいのかまたは全身的処置が望ましいのかに応じて、
および処置される領域に応じて、いくつかの方式で投与してもよい。投与は、局所的に(
眼科的に、膣に、直腸に、鼻腔内に、を含む)、経口的に、吸入により、または非経口的
に、例えば、2区画注射器(two- compartment injector)を使用して静脈内点滴、皮下
、腹腔内、または筋肉内注射によってもよい。開示された抗体は、静脈内に、腹腔内に、
筋肉内に、皮下に、体腔内に、または経皮的に投与することができる。
【0080】
非経口投与のための調製物は、無菌水溶性または非水溶性液、懸濁液、および乳濁液を
含む。非水溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイ
ルなどの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能有機エステルである。水溶性担
体は、生理食塩水および緩衝溶媒を含む、水、アルコール/水溶液、乳濁液または懸濁液
を含む。非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム液、リンガーブドウ糖液、ブドウ糖と塩化ナ
トリウム、乳酸加リンガー液、または固定油を含む。静脈内ビヒクルは、流動および栄養
補充液、電解質補充液(リンガーブドウ糖液に基づく補充液など)などを含む。例えば、
抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤、および不活性ガスなどの、保存剤および他の添加剤が
存在していてもよい。
【0081】
マイクロスフェア剤および/またはマイクロカプセル剤の調製において使用するための
材料は、例えば、ポリグラクチン、ポリ-(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(2
-ヒドロキシエチル-L-グルタミン)、およびポリ(乳酸)などの生分解性/生体分解
可能ポリマーである。徐放非経口製剤を処方する際に使用してもよい生体適合性担体は、
炭水化物(例えば、デキストラン)、タンパク質(例えば、アルブミン)、リポタンパク
質、または抗体である。植込錠において使用するための材料は、非生分解性(例えば、ポ
リジメチルシロキサン)または生分解性(例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(乳酸
)、ポリ(グリコール酸)もしくはポリ(オルトエステル)またはそれらの組合せ)が可
能である。
【0082】
経口使用のための製剤は活性成分(例えば、cSN50、cSN50.1、cSN50
.1ベータ、または配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配
列番号8、および/もしくは配列番号9に示されるNTM)を非毒性の薬学的に許容され
る賦形剤との混合物で含有する錠剤を含む。そのような製剤は当業者には公知である。賦
形剤は、例えば、不活性希釈剤または充填剤(例えば、スクロース、ソルビトール、糖、
マンニトール、微結晶セルロース、ジャガイモデンプンを含むデンプン、炭酸カルシウム
、塩化ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、またはリン酸ナト
リウム);顆粒化剤および崩壊剤(例えば、微結晶セルロースを含むセルロース誘導体、
ジャガイモデンプンを含むデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩、ま
たはアルギン酸);結合剤(例えば、スクロース、グルコース、ソルビトール、アカシア
、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、アルファ化デンプン、微結
晶セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウ
ム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリ
ビニルピロリドン、またはポリエチレングリコール);ならびに滑沢剤、滑剤、および付
着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリ
カ、硬化植物油、またはタルク)でもよい。他の薬学的に許容される賦形剤は、着色料、
香味料、可塑剤、湿潤剤、緩衝剤などであり得る。
【0083】
錠剤はコーティングされていなくてもよく、または、任意選択で崩壊および消化管への
吸収を遅延し、それによって長期間にわたり持続作用を提供するために、公知の技法によ
りコーティングされていてもよい。コーティングは、所定のパターンで活性薬物を放出す
るように適応させてもよく(例えば、放出制御製剤を実現するために)、またはコーティ
ングは、胃を通過後まで活性薬物を放出しないように適応させてもよい(腸溶コーティン
グ)。コーティングは、糖衣、フィルムコーティング(例えば、ヒドロキシプロピルメチ
ルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロ
ピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリレートコポリマー、ポリエチレン
グリコールおよび/またはポリビニルピロリドンに基づく)、または腸溶コーティング(
例えば、メタクリル酸コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチル
セルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、
ポリ酢酸ビニルフタレート、シェラック、および/またはエチルセルロースに基づく)で
もよい。さらに、例えば、グリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレート
などの時間遅延材(time delay material)を用いてもよい。
【0084】
固形錠剤組成物は、組成物を望ましくない化学的変化(例えば、活性治療物質の放出に
先立つ化学分解)から保護するように適応させたコーティングを含んでいてもよい。コー
ティングは、Swarbrick, J. and Boylan, J. C., supraに記載される様式に類似する様式
で固形剤形上に適用してもよい。少なくとも2つの治療薬(例えば、cSN50、cSN
50.1、または配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列
番号8、配列番号9、配列番号16に示されるNTMのいずれか、ならびに任意の抗菌剤
)を錠剤中に一緒に混合してもよいし、または分割してもよい。一例では、第2の活性治
療薬の実質的な部分が第1の活性治療薬の放出に先立って放出されるように、第1の活性
治療薬は錠剤の内側に含まれ、第2の活性治療薬は外側にある。
【0085】
経口使用のための製剤は、咀嚼錠として、または活性成分が不活性固形希釈剤(例えば
、ジャガイモデンプン、ラクトース、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシ
ウムまたはカオリン)と混合されている硬ゼラチンカップセル剤として、または活性成分
が、水もしくは油媒体、例えば、ピーナッツオイル、液体パラフィン、もしくはオリーブ
オイルと混合されている柔ゼラチンカプセル剤として提供されてもよい。粉末剤および顆
粒剤は、例えば、ミキサー、流動床装置または噴霧乾燥装置を使用する従来の様式で、錠
剤およびカプセル剤下で上記の成分を使用して調製してもよい。本明細書に記載される組
成物は、吸入および局所的適用のために製剤化することも可能である。任意選択で、抗菌
剤をNTMと組み合わせて投与してもよく、そのような方法は当業者には公知である(例
えば、Gennaro, supra参照)。組合せは、相乗的であり有利であると予想される。
【0086】
経口投与のための組成物は、粉末剤もしくは顆粒剤、水もしくは非水性媒体中の懸濁剤
もしくは剤液、カプセル剤、サシェ剤、または錠剤を含む。増粘剤、香味料、希釈剤、乳
化剤、分散補助剤または結合剤が望ましい場合がある。
【0087】
組成物の一部は、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸、およびリ
ン酸などの無機酸、ならびにギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン
酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、およびフマル酸などの有機酸との反応
により、または水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムなどの無機塩基
、ならびにモノ-、ジ-、トリアルキルおよびアリルアミンならびに置換エタノールアミ
ンなどの有機塩基との反応により形成される薬学的に許容される酸-または塩基付加塩と
して潜在的に投与してもよい。
【0088】
b)治療的使用
組成物を投与するのに効果的な投与量およびスケジュールは、経験的に決めてもよく、
そのような決定を下すことは当技術分野の範囲内である。組成物の投与のための投与量範
囲は、障害の症状が影響を受ける所望の効果を生み出すほどの大きさの範囲である。投与
量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応などの有害な副作用を引き起こすほ
どの大きさであるべきではない。一般に、投与量は、患者の年齢、状態、性別および疾患
の程度、投与経路、または他の薬物がレジメンに含まれているかどうかと共に変動し、当
業者であればこれを決定することが可能である。投与量は、いかなる禁忌症(counterind
ication)の場合にも個々の医師が調整することが可能である。投与量は変動可能であり
、1日または数日の間毎日1つまたは複数の用量投与で投与することが可能である。ガイ
ダンスは、所与のクラスの医薬品の適切な投与量について文献に見出すことが可能である
。例えば、抗体の適切な用量を選択する際のガイダンスは、抗体の治療的使用に関する文
献、例えば、Handbook of Monoclonal Antibodies, Ferrone et al., eds., Noges Publi
cations, Park Ridge, N.J., (1985) ch. 22 and pp. 303-357; Smith et al., Antibodi
es in Human Diagnosis and Therapy, Haber et al., eds., Raven Press, New York (19
77) pp. 365-389に見出すことが可能である。単独で使用される抗体の典型的な1日投与
量は、上記の要因に応じて、1日あたり約1μg/kg~最大100mg/kg体重また
はそれよりも多い範囲に及んでもよい。
【0089】
2.相同性/同一性
本明細書に開示された遺伝子またはタンパク質のいかなる既知の変異体および誘導体ま
たは生じる可能性のある変異体および誘導体を定義する1つのやり方は、特定の既知の配
列に対する相同性の点から変異体および誘導体を定義することによると理解されている。
例えば、配列番号2はNTMの特定の配列を示している(cSN50.1)。具体的には
、表明された配列に対して少なくとも70、71、72、73、74、75、76、77
、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、
91、92、93、94、95、96、97、98、99パーセントの相同性を有する本
明細書で開示されたこれらのおよび他の遺伝子およびタンパク質の変異体が開示される。
当業者であれば、2つのタンパク質または遺伝子などの核酸の相同性を判定する方法を容
易に理解する。例えば、相同性は、相同性がその最も高いレベルであるように2つの配列
を整列させた後で計算することが可能である。本明細書で使用される場合、配列相同性は
配列同一性と互換的に使用される。
【0090】
相同性を計算する別のやり方は、公表されているアルゴリズムにより実施可能である。
比較のための配列の最適整列は、Smith and Waterman Adv. Appl. Math. 2: 482 (1981)
の局地的相同性アルゴリズム(local homology algorithm)により、Needleman and Wuns
ch, J. MoL Biol. 48: 443 (1970)の相同性アライメントアルゴリズム(homology alignm
ent algorithm)により、Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85: 244
4 (1988)の類似検索法(search for similarity method)により、これらのアルゴリズム
のコンピュータ処理実行(GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetic
s Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)によ
り、または精査により行ってもよい。
【0091】
同じタイプの相同性は、例えば、Zuker, M. Science 244:48-52, 1989, Jaeger et al.
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:7706-7710, 1989, Jaeger et al. Methods Enzymol. 1
83:281-306, 1989に開示されるアルゴリズムにより核酸について得ることが可能である。
前記文献は、少なくとも核酸アライメントに関係する資料について参照により本明細書に
組み込まれる。
【0092】
3.ペプチド
a)タンパク質変異体
本明細書で考察されるように、NTMの多数の変異体が知られており、本明細書では想
定されている。タンパク質変異体および誘導体は当業者にはよく理解されており、アミノ
酸配列改変を含むことが可能である。例えば、アミノ酸配列改変は典型的には3つのクラ
ス:置換的、挿入的または欠失的変異体のうちの1つまたは複数に入る。挿入は、アミノ
および/またはカルボキシル末端融合ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿
入を含む。挿入は通常、アミノまたはカルボキシル末端融合の挿入よりも小さな挿入にな
り、例えば、およそ1~4残基である。細胞透過性融合タンパク質誘導体(cell-penetra
ting fusion protein derivative)は、インビトロでの交差架橋によりターゲティング配
列の細胞内送達を与えるのに十分大きなポリペプチドを融合させることにより、または融
合物をコードするDNAで形質転換した組換え細胞培養により作成される。欠失は、タン
パク質配列から1つまたは複数のアミノ酸残基を取り除くことを特徴とする。典型的には
、タンパク質分子内のいずれか1つの部位で約2~6以下の残基が欠失される。これらの
変異体は通常、タンパク質をコードするDNAにおいてヌクレオチドを部位特異的変異誘
発し、それによって変異体をコードするDNAを作成し、その後組換え細胞培養において
そのDNAを発現させることにより調製される。既知の配列を有するDNA中の所定の部
位で置換突然変異を作成するための技法、例えば、M13プライマー変異誘発およびPC
R変異誘発は周知である。アミノ酸置換は典型的には単一残基の置換であるが、いくつか
の異なる位置で同時に起こることが可能であり、挿入は通常、およそ約1~10アミノ酸
残基であり、欠失は約1~30残基の範囲に及ぶ。欠失または挿入は好ましくは、隣接す
る対、すなわち、2残基の欠失または2残基の挿入で行われる。置換、欠失、挿入または
それらの任意の組合せを組み合わせて、最終構築物に到達してもよい。突然変異は配列を
リーディングフレームから逸脱させてはならず、好ましくは第2のmRNA構造を作り出
すおそれのある相補性領域を創り出さない。置換的変異体は、少なくとも1つの残基が取
り除かれておりその場所に異なる残基が挿入されている変異体である。そのような置換は
一般に、以下の表2および3に従って行われ、保存的置換と呼ばれる。
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
機能または免疫学的同一性の実質的な変化は、表3の置換ほど保存的ではない置換を選
択する、すなわち、(a)例えば、シートもしくはらせん状構造として、置換の領域のポ
リペプチド骨格の構造、(b)標的部位の分子の電荷もしくは疎水性または(c)側鎖の
大きさを維持することに対する残基の効果がより有意に異なる残基を選択することにより
加えられる。タンパク質特性に最大の変化を生み出すと一般に予想される置換は、(a)
親水性残基、例えば、セリルもしくはスレオニルが疎水性残基、例えば、ロイシル、イソ
ロイシル、フェニルアラニル、バリルもしくはアラニルに(またはにより)置換される;
(b)システインもしくはプロリンが他の任意の残基に(またはにより)置換される;(
c)正電荷を持つ側鎖、例えば、リジル、アルギニル、もしくはヒスチジルを有する残基
が負電荷を持つ残基、例えば、グルタミルもしくはアスパルチルに(またはにより)置換
される;または(d)大きな側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンは側鎖を持た
ない残基、例えば、グリシンに(またはにより)、この場合、(e)硫酸化および/もし
くはグリコシル化のために部位の数を増やすことにより置換される、置換である。
【0096】
例えば、1つのアミノ酸残基を生物学的におよび/または化学的に類似する別のアミノ
酸残基で置き換えることは保存的置換として当業者には公知である。例えば、保存的置換
であれば、1つの疎水性残基を別の疎水性残基に変える、または1つの極性残基を別の極
性残基に変えることになる。置換は、例えば、Gly、Ala;Val、Ile、Leu
;Asp、Glu;Asn、Gln;Ser、Thr;Lys、Arg;およびPhe、
Tyrなどの組合せを含む。それぞれの明確に開示された配列のそのような保存的に置換
された変動は、本明細書で提供される寄せ集めのポリペプチド内に含まれる。
【0097】
置換的または欠失的変異誘発を用いて、N-グリコシル化(Asn-X-Thr/Se
r)またはO-グリコシル化(SerまたはThr)のための部位を挿入することが可能
である。システインまたは他の不安定な残基の欠失も望ましい場合がある。潜在的タンパ
ク質分解部位、例えば、Argの欠失または置換は、例えば、塩基性残基の1つを欠失す
るまたは1つの残基をグルタミニルもしくはヒスチジル残基により置換することにより達
成される。
【0098】
ある特定の翻訳後誘導体化は、発現されたポリペプチドに対する組換え宿主細胞の作用
の結果である。グルタミニルおよびアスパラギニル残基は頻繁に翻訳後に、対応するグル
タミルおよびアスパルチル残基に脱アミドされる。あるいは、これらの残基は、穏やかな
酸性条件下で脱アミドされる。他の翻訳後修飾は、プロリンおよびリジンの水酸化、セリ
ルまたはスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、およびヒス
チジン側鎖のO-アミノ基のメチル化(T.E. Creighton, Proteins: Structure and Mole
cular Properties, W. H. Freeman & Co., San Francisco pp 79-86 [1983])、N末端ア
ミンのアセチル化、ならびに一部の例では、C末端カルボキシルのアミド化を含む。
【0099】
本明細書で開示されたタンパク質由来ペプチドの変異体および誘導体を定義する1つの
やり方は、特定の既知の配列に対する相同性/同一性の点から変異体および誘導体を定義
することによると理解されている。例えば、配列番号2はcSN50.1の特定の配列を
示している。具体的には、表明された配列に対して少なくとも70%、75%、80%、
85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、
99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、
99.7%、99.8%、99.9%、または100%の配列同一性を有する本明細書に
開示されるこれらのおよび他のタンパク質の変異体が開示される。当業者であれば、2つ
のタンパク質の相同性を判定する方法を容易に理解する。例えば、相同性は、相同性がそ
の最も高いレベルであるように2つの配列を整列させた後で計算することが可能である。
【0100】
相同性を計算する別のやり方は、公表されているアルゴリズムにより実施可能である。
比較のための配列の最適整列は、Smith and Waterman Adv. Appl. Math. 2: 482 (1981)
の局地的相同性アルゴリズムにより、Needleman and Wunsch, J. MoL Biol. 48: 443 (19
70)の相同性アライメントアルゴリズムにより、Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad.
Sci. U.S.A. 85: 2444 (1988)の類似検索法により、これらのアルゴリズムのコンピュー
タ処理実行(GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software P
ackage, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)により、または精
査により行ってもよい。
【0101】
同じタイプの相同性は、例えば、Zuker, M. Science 244:48-52, 1989, Jaeger et al.
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:7706-7710, 1989, Jaeger et al. Methods Enzymol. 1
83:281-306, 1989に開示されるアルゴリズムにより核酸について得ることが可能である。
【0102】
保存的突然変異および相同性の記載は、変異体が保存的突然変異である特定の配列に対
して少なくとも70%の相同性を有する実施形態などのいかなる組合せでも一緒に組み合
わせることが可能であると理解されている。
【0103】
本明細書は種々のタンパク質およびタンパク質配列を考察しているので、それらのタン
パク質配列をコードすることが可能な核酸も開示されていると理解される。これは、特定
のタンパク質配列に関係するすべての縮重配列、すなわち、1つの特定のタンパク質配列
をコードする配列を有するすべての核酸、ならびにタンパク質配列の開示された変異体お
よび誘導体をコードする、縮重核酸を含む、すべての核酸を含むであろう。したがって、
それぞれの特定の核酸配列が本明細書に略さずに書かれているわけではない場合があるが
、ありとあらゆる配列は実際には、開示されたタンパク質配列を通して本明細書に開示さ
れ記載されることは理解されている。
【0104】
開示された組成物中に組み込むことが可能であるアミノ酸およびペプチド類似物が多数
存在することは理解されている。例えば、多数のDアミノ酸または異なる機能的置換成分
を有するアミノ酸、次に表2および表3に示されるアミノ酸が存在する。
天然に存在するペプチドの逆立体異性体(opposite stereo isomer)、ならびにペプチド
類似物の立体異性体が開示される。これらのアミノ酸は、tRNA分子に最適なアミノ酸
を付与し、遺伝子構築物を操作し、例えば、アンバーコドンを利用して類似物アミノ酸を
部位特異的なやり方でペプチド鎖中に挿入させることによりポリペプチド鎖中に容易に組
み込むことが可能である。
【0105】
ペプチドに似ているが、天然のペプチド連結を経て接続されていない分子を作成するこ
とが可能である。例えば、アミノ酸またはアミノ酸類似物の連結は、CHNH--、-
-CHS--、--CH--CH--、--CH=CH--(cisおよびtra
ns)、--COCH--、--CH(OH)CH--、および--CHHSO-
(これらおよび他の連結はSpatola, A. F. in Chemistry and Biochemistry of Amino Ac
ids, Peptides, and Proteins, B. Weinstein, eds., Marcel Dekker, New York, p. 267
(1983); Spatola, A. F., Vega Data (March 1983), Vol. 1, Issue 3, Peptide Backbo
ne Modifications (general review); Morley, Trends Pharm Sci (1980) pp. 463-468;
Hudson, D. et al., Int J Pept Prot Res 14:177-185 (1979) (--CH2NH--, CH2CH2--);
Spatola et al. Life Sci 38:1243-1249 (1986) (--CH H2--S); Hann J. Chem. Soc Perk
in Trans. I 307-314 (1982) (--CH--CH--, cis and trans); Almquist et al. J. Med.
Chem. 23:1392-1398 (1980) (--COCH2--); Jennings-White et al. Tetrahedron Lett 23
:2533 (1982) (--COCH2--); Szelke et al. European Appln, EP 45665 CA (1982): 97:3
9405 (1982) (--CH(OH)CH2--); Holladay et al. Tetrahedron. Lett 24:4401-4404 (198
3) (--C(OH)CH2--);および Hruby Life Sci 31:189-199 (1982) (--CH2--S--)に見出すこ
とが可能である);これらのそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる。特定の好ま
しい非ペプチド連結は-CHNH-である。ペプチド類似物は、b-アラニン、g-ア
ミノ酪酸などの結合原子間に2つ以上の原子を有することが可能であることは理解されて
いる。
【0106】
アミノ酸類似物およびペプチド類似物は、より経済的な生産、より大きな化学的安定性
、増強された薬理学的特性(半減期、吸収、効力、有効性など)、変更された特異性(例
えば、生物学的活性の広域スペクトル)、低減された抗原性などの増強されたまたは望ま
しい特性を有する場合が多い。
【0107】
D-アミノ酸を使用して、より安定したペプチドを生成することができる。なぜならば
、Dアミノ酸はペプチダーゼなどにより認識されないからである。コンセンサス配列の1
つまたは複数のアミノ酸の同じタイプのD-アミノ酸(例えば、L-リジンの代わりにD
-リジン)での組織的置換を使用して、より安定したペプチドを生成することができる。
システイン残基を使用して、2つ以上ペプチドを一緒に環化させるまたは結合させること
ができる。これはペプチドを特定のコンフォメーションに束縛するのに有益であり得る。
シグナル配列疎水性領域の一括りにされたアルファらせん形配列を使用して、NTMにお
いてその膜移行コンフォメーションを安定化することができる。
【実施例0108】
以下の実施例は、当業者に、本明細書で請求される化合物、組成物、物品、装置および
/または方法がどのようにして作成され評価されるかの完全な開示および説明を提供する
ために提示されており、単に例証的であることが意図されており、開示を限定することを
意図されていない。数(例えば、量、温度など)に関しては正確さを確保するよう努力を
重ねてきたが、いくつかの誤差および逸脱は説明されるべきである。別段の指示がない限
り、部は重量部であり、温度は℃であるまたは周囲温度であり、圧力は大気またはほぼ大
気である。
【0109】
[実施例1]
核内輸送シャトルを標的にすることにより多微生物性敗血症(polymicrobial sepsis)
において生存、クリアランス、および血小板減少症が改善される
多微生物性敗血症の実験モデルにおいて、cSN50.1を用いた核内輸送アダプター
Impα5およびImpβ1の同時ターゲティングによりSRTFの核内移行が減弱され
、肝臓において代謝的に重要なグリコーゲン貯蔵が維持されたことが本明細書で報告され
る。NTM処置により、血液、脾臓、および肺において細菌負荷が著しく低減され、血液
中の炎症促進性サイトカインおよびケモカインが減弱され、血液中の正常な血小板数が維
持され、微小血管損傷並びに肝臓の好中球浸潤の血漿マーカーが低減された。さらに、N
TMと抗生物質療法を組み合わせると、死亡までの平均時間が著しく延長され、生存はほ
ぼ2倍になった。
【0110】
a)結果
(1)NTMは肝細胞においてSRTFの核内輸送を減弱し、敗血症マウスの血液、脾臓
、および肺において細菌負荷を低減する
グラム陰性菌は、単独でまたは他の微生物との組合せで、患者の3分の2で敗血症の原
因となっているので、多微生物性敗血症の臨床的に関連するモデルが用いられた。この非
外科的モデルでは、細菌豊富な腸内マイクロバイオームを用いて標準化チャレンジにより
多微生物性腹膜炎が誘発される。新たに得られた腸内マイクロバイオームを、盲腸スラリ
ー(CS)の形態で、腹腔内に注射し、それによって外科的創傷ならびに外科的腸管穿孔
モデル(cecal ligation and puncture)に伴う腹膜腔中への盲腸内容物の制御されない
溢流を回避した。最新で高度に可溶性の細胞透過性NTMペプチドであるcSN50.1
を用いてSRTFの核内移行を制御すると、微小血管損傷の敗血症関連メディエーターの
産生を低減し、血液および主要臓器での細菌のクリアランスを改善し、抗菌療法の有効性
を増加させ、それによって生存を改善することができるという仮説を検証した。
【0111】
敗血症に屈する患者は、末梢血単核球の核おいてキーとなるSRTF、NF-κBのレ
ベルの著しい増加を示す。この臨床特質と一致して、見出されるNF-κB1(p50)
およびNF-κB RelA(p65)だけでなく、他の細胞の中でも、肝実質細胞、マ
クロファージ、および微小血管内皮細胞を含む敗血症動物の肝細胞中のリン酸化STAT
1α(MW91)、リン酸化STAT1β(MW84)およびAP-1(cFos)も核
含有量が増加していた(図2A)。NTMを用いた処置により、NF-κB1(p50)
およびNF-κB RelA(p65)、リン酸化STAT1αおよびAP-1(cFo
s)の核含有量が著しく低減された(図2B)。STAT1βはNTM処置では低減され
なかった。STAT1αとβ両方のチロシンリン酸化は炎症性サイトカインIFN-γに
より誘発されるが、STAT1βは転写的に不活性な切詰め型アイソフォームでありST
AT1αのドミナントネガティブ阻害剤の機能を果たす。核への炎症促進性シグナル伝達
は、敗血症中肝臓における急速なグリコーゲン枯渇にも関係付けられてきた。したがって
、NTM処置は感染マウスの肝臓においてグリコーゲン分解を予防し、これは過ヨウ素酸
シッフ染色(PAS)により実証された(図2C)。リポ多糖毒血症についての以前の研
究では、NTMは肝臓からのグリコーゲン枯渇も予防した。
【0112】
効率的な微生物クリアランスは多微生物性敗血症からの生存に不可欠である。注目すべ
きことに、抗菌療法の非存在下では、NTMを用いて処置されたCS感染マウスは、感染
後12時間までに血液および標的臓器(脾臓および肺)からの増強された細菌クリアラン
スを示した(図3)。cSN50.1ペプチドは試験された盲腸細菌の増殖をエクスビボ
では阻害しなかったので、NTMの直接的な抗菌効果は排除することが可能である。細菌
負荷の最も劇的な低減(約700倍)が肺において認められ、脾臓および血液中の細菌も
著しく低減された。偽感染動物における細菌の微々たる検出は、複数の腹腔内注射および
繰り返される血液収集に帰すことが可能である。これらの結果は、核への炎症促進性シグ
ナル伝達がNTM処置感染動物において低減している場合には、細菌クリアランスに関す
る血液由来および組織食細胞の機能が保存されている、または増強さえされていることを
示している。
【0113】
(2)NTMは炎症性メディエーターおよび免疫シグナル伝達に対するその下流効果を減
弱する
敗血症の初期高炎症期(hyperinflammatory phase)の間、炎症促進性サイトカインT
NF-αおよびIL-6、ならびにケモカイン単球走化性タンパク質1(MCP-1/C
CL2)の血漿レベルは劇的に増加する。同時に、II型インターフェロン、インターフ
ェロンガンマ(IFN-γ)は細胞媒介免疫応答を増強する。IFN-γはマクロファー
ジ機能の特異的活性化因子であり、細菌感染に対して宿主免疫防御において調節的役割を
果たす。注目すべきことに、抗IFN-γ抗体を投与すると、腹膜炎のラットモデルにお
いて腹膜の細菌負荷が著しく減少した。IFN-γ刺激ヒト肺微小血管内皮細胞において
および急性呼吸促拍症候群(ARDS)により悪化するグラム陰性菌敗血症を抱えた患者
から得られたすべての血管の内皮において、微小血管完全性の中心的存在である血管内皮
(VE)カドヘリンの発現の低減が観察された。IL-10などの抗炎症性サイトカイン
の産生も引き金となって炎症ホメオスタシス(inflammatory homeostasis)を修復する。
増加したIL-10は、TNF-α発現を抑制し過剰な免疫応答を相殺するフィードバッ
ク機構を提供するが、IL-10の過剰産生は細菌クリアランスを低減する。IL-10
の過剰産生が継続すると、敗血症の後期段階を特徴付ける免疫抑制環境に寄与する。しか
し、炎症メディエーターの過剰産生が優勢な場合、その結果は血管機能障害、多臓器不全
および死亡である。SRTFにより媒介される核シグナル伝達が減弱すると、TNF-α
、MCP-1、およびIFN-γの血漿レベルの著しい抑制を伴い、一方、IL-6応答
のパターンは依然として変化しなかった(図4A)。累積的に、敗血症誘発炎症促進性応
答は、IL-6の注目すべき例外はあるが、NTMにより抑制され、これはホメオスタシ
ス調節を維持するのに寄与する。
【0114】
血液および臓器からの細菌クリアランスにおける食細胞の役割と一致して、ビヒクル処
置とcSN50.1処置動物の両方が、敗血症が開始された後12時間で偽感染動物と比
べて全循環白血球の著しい増加を表し、リンパ球、好中球および単球数がNTM(cSN
50.1)を用いた処置により抑制されないことを示した(図4B)。際立ったことに、
NTMは血小板数を維持し(図4B)、一方、ビヒクル処置マウスでは、血液中の血小板
数の低下により明らかにされる血小板減少症が明白であった。重症の細菌感染のこの特質
は、おそらく損傷をうけた微小血管表面による血小板絞扼(platelet entrapment)およ
びそれに続く血小板血栓の形成に起因する、転帰不良のマーカーである。急性血小板消費
および微小血管機能障害は、SRTFにより調節されその核内移行により制御されるゲノ
ム再プログラミングの誘発に依存している。全血球数の他のパラメータは、感染によって
もNTM処置によっても著しく変わることはなかった(図5)。
【0115】
セレクチンは、引き続く接着および遊出のための必要条件である、微小血管内皮に沿っ
た好中球の係留および回転を調節することにより炎症において決定的な役割を果たしてい
る。白血球遊走は、敗血症の間の多臓器炎症および機能障害をもたらす初期事象であると
思われる。白血球のセレクチン媒介回転を妨げると、その血管外遊走および引き続く臓器
機能障害が予防される。L-セレクチンは白血球上で構成的に発現されており、活性化に
応答して血流に急速に放出される。E-セレクチンは内皮細胞では保存されず、むしろ、
グラム陰性菌の主要病原性因子であるリポ多糖により、およびTNF-αなどのサイトカ
インにより惹起されるゲノム上方調節によってE-セレクチンが発現される。次に、E-
セレクチンは血流中に放出される。P-セレクチンは活性化された血小板および内皮細胞
により発現され、血小板-白血球および血小板-内皮細胞相互作用を媒介して血栓形成に
寄与する。NTMは、抗生物質処置に加えて、血漿において可溶性P-セレクチンの発現
を減弱し、可溶性E-セレクチンの上昇を妨げ、一方、内皮損傷のこれらのマーカーの血
漿レベルは抗生物質処置だけでは上昇し続けた(図4C)。
【0116】
低減されたサイトカイン、ケモカインおよびセレクチン産生と一致して、NTM処置は
好中球による肝臓浸潤を阻害した(図4D)。好中球の肝実質中への遊走は、偽感染動物
では観察されなかった。ビヒクルを用いた処置を受けた感染マウスでは、肝実質では好中
球の数の増加が観察され、全身性炎症を示していた。これとは対照的に、NTMを用いて
処置されたCS感染マウスは、主に漿膜表面での好中球の凝集を呈し肝実質中の細胞は少
数であり、これは、腸内マイクロバイオームの標準化された「盲腸スラリー」(CS)の
形態での腹腔内注射に続く腹膜腔での炎症が局所的であることを示した。
【0117】
累積的に、感染マウスがNTM単独でまたは抗菌療法と組み合わせて用いて処置された
場合、微小血管炎症のこれらのパラメータは著しく抑制され、この過程がSRTFの核内
輸送に全面的に依存していることをさらに示した。
【0118】
(3)抗菌療法と組み合わせた核シグナル伝達調節は敗血症において生存を増加する
次に、多微生物性敗血症の急性期でのNTMの有益な作用が敗血症での全体的な生存に
対してプラスの効果をもたらすことが可能かどうかを問うた。この仮説を検証するため、
多微生物性敗血症のモデルにおいてNTM処置を抗菌療法と組み合わせた。図6に示され
るように、重症感染症を処置するのに一般に使用されている広域スペクトルβラクタム抗
生物質であるメロペネムのみで処置した動物間の生存は42時間での生存中央値で30%
であった。これとは対照的に、メロペネム処置をNTMと組み合わせた場合、生存は55
%まで著しく増加し、死亡までの平均時間は83時間まで伸びた(図6)。生存のこの増
加は、手に負えない感染を抗菌療法単独では制御できない場合、NTMを用いて炎症促進
性核シグナル伝達を標的にすると、敗血症において不可逆的な多臓器損傷が予防されるこ
とを示している。
【0119】
b)考察
本研究は、臨床的に関連のある実験モデルにおける多微生物性敗血症の動態および結果
を、微生物病原性因子および内在性メディエーターにより引き起こされるゲノム嵐の原因
であるストレス応答性転写因子の核内輸送を標的にすることにより改善することが可能で
あることを実証している。核への敗血症誘発シグナル伝達は、多臓器不全に寄与する血液
および脈管系応答の原因である。機構的には、NTMは、敗血症に関与しているいくつか
の細胞型の細胞膜を透過し、細胞質から核へのそれぞれSRTFおよびSREBPの移行
により媒介される核シグナル伝達の原因であるImpα5およびImpβ1を標的にする
。NTM、cSN50.1ペプチドによるImpα5およびImpβ1の選択的ターゲテ
ィングは、転写因子の両方の群により調節される種々の炎症促進性および代謝遺伝子の活
性化を抑制するので、SRTFおよびSREBPの核内輸送は治療介入のための魅力的な
標的である。NF-κBおよび他のSRTF(AP-1およびSTAT1)の核内移行を
妨害することにより、NTMは、サイトカイン、ケモカイン、および細胞接着分子(セレ
クチン)の可溶性形態を含む炎症促進性メディエーターの発現を抑制した。注目すべきこ
とに、抗菌療法の非存在下でのNTM処置は、腸内マイクロバイオームに由来する複数の
微生物種のクリアランスを増強した。これは、細菌負荷の700倍の低減が得られた肺で
は特に注目すべきであった。NTM処置のそのような効果は、肺胞マクロファージの食細
胞機能を損なうことが実証されているIL-10の初期抑制と関連する可能性がある。し
たがって、NTM増強細菌クリアランスは、核内輸送を標的化するこの様式が、肺および
他の臓器での貪食細胞の機能に、または血液殺菌力に有害ではないことを示している。注
目すべきことに、肝細胞におけるToll様受容体-4(TLR4)の細胞型特異的遺伝
子破壊は、抗生物質療法なしでの腸管穿孔モデルにより引き起こされる多微生物性敗血症
のモデルにおいて、増強されたマクロファージ食作用、低下した細菌レベル、および改善
された生存をもたらした。したがって、核内輸送のNTMターゲティングは、細菌クリア
ランスの点でTLR4の遺伝子破壊に類似する転帰を達成する。
【0120】
TLR4は、全身性炎症の最も活性の高い生物学的誘導因子として知られている病原性
因子である、LPSのキャノニカル受容体である。大腸菌(Escherichia coli)および髄
膜炎菌(Neisseria meningitides)により例証されるように、グラム陰性菌により発現さ
れるLPSは高度に多様であり、著しい構造的多様性および対応する生物活性を示す。単
一の細菌種由来のLPSにより誘発される全身性炎症の分析により、その特定のLPSの
作用機序に関して貴重な情報が提供される。しかし、本研究で使用されるモデルなどの多
微生物性敗血症モデルは、腸内マイクロバイオーム(「盲腸スラリー」)の腹腔内注射に
基づいているが、多様なLPS構造体を発現している多数のグラム陰性菌および追加の病
原性因子ならびにグラム陽性菌および他の微生物を宿主に感染させる。したがって、この
臨床的に関連するモデルは宿主の防御にとっての危険度を高め、新しくより効果的な対応
策の試験にさらに大きな難題を課す。
【0121】
多微生物性敗血症のこの複雑な設定では、核内輸送チェックポイントのターゲティング
図1参照)は、概念上の利点を提供する。このチェックポイントは、細胞質から核への
核内輸送シャトルにより認識され運ばれるNLSを示すストレス応答転写因子の交通を制
御する。6つのインポーチンαのファミリーは、哺乳動物細胞における核内輸送の中心的
存在である。休止、非刺激細胞では、インポーチンαは、例えば、NF-κBの阻害因子
(IκBα)による、または翻訳後修飾、例えば、NFATのリン酸化による、その遮蔽
のせいでSRTF中のNLSモチーフを認識することができない(図1参照)。IκBα
の細胞活性化誘発分解および/または他の修飾(例えば、脱リン酸化)に続いて、NLS
モチーフはSRTF上に露出され、核移行のためにインポーチンαおよびβと複合体化す
ることが可能になる。核内部に入った後は、遊離のSRTFはDNA中のそのコグネート
部位に結合し、遺伝子転写を開始して、ゲノム全体での再プログラミングが生じる。した
がって、免疫および非免疫細胞の休止から活性化状態への移行は、核への転写因子の核移
行により制御される。この過程の間、SRTFは、炎症性サイトカインおよびケモカイン
、シグナルトランスジューサ(シクロオキシゲナーゼ、一酸化窒素合成酵素)、ならびに
細胞接着分子をコードする過度の遺伝子を活性化する。これはゲノム嵐として知られてい
る真に大規模な応答である。
【0122】
次に、サイトカインおよびケモカインの複数のシグナル伝達ネットワークは、ゲノム嵐
の引き金となる微生物病原体により開始される微小血管損傷を悪化させることにより成人
および新生児敗血症の機序に寄与する。注目すべきことに、NTM単独で多微生物性成人
敗血症の細菌クリアランスおよび血液学的指標を改善するが、併用の抗菌療法がなければ
生存を改善するのに十分ではない。反対に、抗菌療法単独では、実験炭疽敗血症モデルに
おいて死亡率を低減するには十分ではない。したがって、抗菌療法とNTMによる遺伝子
調節ネットワークの敗血症誘発調節不全の正常化を組み合わせると、気道および腹膜の感
染経路に基づく2つの異なる実験敗血症モデルにおいて生存が著しく改善された。
【0123】
成人患者での臨床敗血症の大半の研究では、セレクチンのレベルの増加が敗血症の指標
であり、レベルが高いほど一般に、疾患の重症度および死亡率が増加することを示してい
る。しかし、一部の研究では、生存は、可溶性セレクチンのより高い血漿レベルと相関し
ていた。患者での転帰が悪いほど可溶性接着分子のレベルが低くなるのは、崩壊したシェ
ディングのせいであり、細胞表面で保持されている細胞表面接着分子のレベルが上昇して
いると仮定されている。しかし、それらの研究は、炎症性シグナル伝達が軽快している感
染ではなく、激しい感染の文脈でsL-およびsE-セレクチンを評価していた。実際、
セレクチンは、効果的な好中球動員には必要である。実験では、NTM処置マウスでのs
E-およびsP-セレクチンの可溶レベルが低いほど、異常なシェディングではなく、軽
快した炎症性シグナル伝達のせいで内皮損傷が低減していることを示している。これは、
NTM処置動物のsLセレクチンのレベルが低くなっており肝臓への白血球の血管外漏出
が減少していることによっても支持されている。さらに、NTM処置動物では細菌クリア
ランスが増加しているので感染と闘うための血管外漏出が増加する必要性がなくなってい
る。したがって、結果は矛盾してはおらず、代わりに、核移行が阻害されていることに起
因する炎症性シグナル伝達の低減により、セレクチンを流す細胞の活性化が妨げられてい
ることを示す。このように、NTMによるいくつかのSRTFの複雑な調節により、その
いずれか1つに対する効果だけではなく、複数の炎症性シグナル伝達経路を通じたシグナ
ル伝達が正常化される(図1参照)。
【0124】
多微生物性敗血症の機序における核内輸送シグナル伝達についての本研究は、血液およ
び脈管系における炎症促進性と抗炎症性機序の複雑なバランスを修復する革新的アプロー
チを探索するための新たな手段を切り開き、それによりその末期敗血症を含む微生物性炎
症により媒介される感染症からの首尾よい回復が可能になる。しかし、敗血症を回復させ
るのに効果を現す機序を調査するにはさらなる研究が必要である。炎症を調節し、リンパ
球のアポトーシスを低減し、恒常性への復帰を促進するレゾルビンD1などの脂質メディ
エーターの発見は、敗血症研究において登場している多くのアプローチの1つである。注
目すべきことに、レゾルビンD1は、ステロール調節エレメント結合タンパク質(SRE
BP)1発現およびカスパーゼ3活性を低減することにより肝細胞のERストレス誘発ア
ポトーシスを阻害する。高脂血症のモデルにおいて最近実証されたように、本明細書で使
用される二機能性NTM cSN50.1は、SRTFの核内輸送を低減することに加え
て、それぞれ脂質および炭水化物恒常性の原因である転写因子のSREBPおよび炭水化
物応答領域結合タンパク質(ChREPB)の核内輸送も調節する。したがって、SRE
BPおよびChREPBのNTM調節発現および作用、ならびにエンドトキシン誘発カス
パーゼ3/7活性の低減は、初期敗血症でのグリコーゲン分解の抑制および敗血症の後期
免疫抑制段階での細胞保護効果についての潜在的機序を提供する。敗血症生存および死亡
におけるメタボロミック、プロテオミックおよび臨床変数を特徴付ける研究は、生存者お
よび非生存者における敗血症に対する宿主応答の頑強で再現性のある違いを示した。解糖
、糖新生およびクエン酸回路は、市中感染敗血症の生存者と非生存者との間で顕著に異な
っており、中鎖-および短鎖脂肪酸ならびに分岐鎖アミノ酸とのカルニチンエステルの蓄
積は非生存者で特定された最も明白な生化学マーカーであった。総合すると、実験的研究
により、核内輸送が多微生物性敗血症の致死的転帰に寄与する不可逆的微小血管損傷の発
生におけるキーとなるステップと特定されている。本研究で実証されているように、炎症
促進性転写因子の核内輸送、および別の場所に記述されている代謝トランス活性化因子を
標的にすると、敗血症の根底にある微生物および代謝性炎症の開始および進行が減弱され
る。
【0125】
c)材料および方法
(1)ペプチド合成および精製
高度に可溶性の細胞透過性NTMペプチドcSN50.1は、別の場所に記載されてい
る通りに合成し、精製し、フィルター殺菌した。
【0126】
(2)動物、感染および試料収集
生後8週間のメスのC57B1/6Jマウス(Jackson Laboratori
es)をすべての実験で使用し処置群には無作為に割り当てた。生存および血液サイトカ
イン/ケモカイン分析では、すべてのマウスは体重1gあたり2mgのCSを腹腔内注射
した(5.5×10CFU/kg)。CSはWynn et alに記載される通りに実験ごとに
新たに調製した。手短に言えば、健康な生後6週間のメスのマウスを供給業者から到着後
2週間未満で安楽死させ、その盲腸を単離し、盲腸内容物(「腸内マイクロバイオーム」
)を押し出し、秤量して、5%ブドウ糖に80mg/mlの濃度で懸濁した(標準化盲腸
スラリー、CS)。NTMペプチドcSN50.1は減菌水に溶解し、減菌生理食塩水に
、0.45%w/vのNaCl中3.3mg/mlの最終濃度まで希釈した。マウスには
、CSチャレンジ前30分で、並びにチャレンジ後30分、1.5時間、2.5時間、3
.5時間、6時間、9時間、および12時間で、0.2mlの腹腔内注射によりNTM(
cSN50.1ペプチド、0.66mg/注射)、またはビヒクル(0.45%w/vの
NaCl)を与えた。NTM注射は54時間まで6時間ごとに、その後、12時間ごとに
168時間目(CS7日後)の屠殺まで続いた。メロペネム(25mg/kg皮下注射で
投与される)を用いた抗生物質療法は、CS後12時間で開始され、屠殺まで12時間ご
とに続いた。血液試料(約40μL)は、CSチャレンジ前に、チャレンジ後2時間、6
時間、12時間および24時間で伏在静脈からEDTA中に収集した。血漿は遠心分離に
より分離し、-80℃で保存した。マウスは実験期間中ずっと生存について入念にモニタ
ーされた。
【0127】
血球集団、血液および臓器の細菌コロニー化ならびに肝臓核抽出物中のSRTFの分析
では、CSが調製され、1.8mg CS/体重gの用量で上記の通りに投与された。対
照マウスは、その体重に合わせた5%のブドウ糖単独の偽用量を与えられた。CS群は、
上記の通りに調製されたcSN50.1またはビヒクルの7腹腔内注射で処置された。マ
ウスは、CS/偽注射の12時間後にイソフルラン吸入により安楽死させた。全血は、後
眼窩叢からEDTA中に収集した。肺、脾臓および肝臓は収穫され、液体窒素に急速凍結
し、-80℃で保存し、または細菌数では、70%エタノール中に手早く浸し、次に氷上
で0.5mlの無菌PBS中に入れた。1つの肝葉を組織学的解析のために10%ホルマ
リンに固定した。肝臓は、液体窒素またはホルマリンに移す前に無菌PBSで灌流した。
血球集団は、バンダービルト大学のTranslational Pathology
Shared Resourceにおいて自動全血球計算により新たに収集された全血に
おいて決定された。
【0128】
(3)核抽出物調製および免疫ブロッティング
核抽出物は凍結肝臓から調製した。手短に言えば、肝臓切片をNP-40なしで氷上、
ダンス型ハンドホモジナイザー(Dounce hand homogenizer)で破壊し、抽出物調製前に
1分間4000×gで核ペレット化した。それぞれの群(偽感染、CS感染+ビヒクルお
よびCS感染+cSN50.1)中5マウス由来の抽出物を、Licor Odysse
y Infrared Imaging System上で、ポリクローナルヤギ抗cF
os(Santa Cruz)、モノクローナルマウス抗Y701リン酸化STAT1(
Becton-Dickinson)ならびにポリクローナルウサギ抗NF-κBp50
および抗NF-κB p65(Abcam)を使用する定量的免疫ブロッティングにより
SRTFの核内移行について分析した。マウスモノクローナル抗TATA結合タンパク質
(TBP、Abcam)を使用して、正規化のための核ローディングコントロール(nucl
ear loading control)としてTBPを測定した。
【0129】
(4)細菌培養物
全血(50μl)は無菌PBSで1対1に希釈した。左肺および全脾臓を0.5mlの
無菌PBS中でホモジナイズし、無菌PBS中で段階希釈した。試料はトリプチックソイ
寒天+5%ヒツジ血液上に蒔いた。コロニーは37℃での一晩インキュベーション後に計
数し、結果は1ミリリットルの血液、または臓器ホモジネートあたりのCFUで報告した
【0130】
(5)サイトカイン/ケモカインアッセイ
細胞数測定ビーズアレイ(BD BioSciences)を使用して、マウス血漿中
のIL-6、IL-10、MCP-1、TNFα、ならびに可溶性E-およびL-セレク
チンを製造業者のプロトコールに従って測定し、バンダービルト大学のFlow Cyt
ometry Coreにおいて分析した。IFN-γおよび可溶性P-セレクチンは、
ELIZA(それぞれ、ThermoFisher Scientific and R
&D Systems)によりマウス血漿中で測定した。
【0131】
(6)組織学的解析
顕微鏡分析のために収集された組織は一晩ホルマリン中で固定し、次にルーチン的に加
工し、パラフィンに包埋して、5ミクロンで薄片を作り、荷電スライドに載せた。病理学
評価のためのスライドは、バンダービルト大学のTranslational Path
ology Shared Resourceにおいて、PASで染色される、または好
中球について免疫染色された。好中球についての免疫組織化学は、20分間Epitop
e Retrieval2溶液を使用して、Leica Bond Max(Leica
Biosystems inc.Buffalo Grove、IL)上で実施された
。スライドは、1:2000希釈で1時間抗好中球マーカー(カタログ番号ab2557
、Abeam、Cambridge、MA)と一緒にインキュベートし、次に1:200
希釈で15分間ウサギ抗ラット二次(BA-4001、Vector Laborato
ries、Inc.)中でインキュベートした。可視化のためにはBond Polym
er Refine Detectionシステムを使用した。免疫染色スライドは、L
eica Microsystems製の高スループットLeica SCN400スラ
イドスキャナー自動デジタル画像システムを使用して、20倍拡大率で0.5μm/ピク
セルの解像度まで画像化した。色彩、彩度、強度、サイズ、ラウンドネス、および軸長に
ついての上位および下位閾値は、核の青色ヘマトキシリン染色と茶色DAB反応産物の両
方について設定した。したがって、茶色(DAB)陽性細胞は青色(ヘマトキシリンのみ
)陰性細胞と区別することが可能である。陽性茶色(DAB陽性)染色細胞のパーセンテ
ージは、陽性細胞の全分析数を肝臓薄片中の全細胞数で除して計算された。全スライド画
像化および免疫染色の定量化は、バンダービルト大学医療センターのDigital H
istology Shared Resourceで実施された。
【0132】
(7)統計
GraphPad Prismソフトウェアを統計解析のために使用した。24時間目
での血球数、血液、肺ホモジネートおよび肝臓ホモジネート中の細菌数、好中球免疫染色
、sP-セレクチンの血漿レベルならびに死亡までの平均時間は、ノンパラメトリックな
マン・ホイットニーのU検定を使用して比較した。同じ動物から異なる時点で収集した血
漿中のサイトカイン、ケモカイン、sL-セレクチンおよびsEセレクチンレベルは、サ
イダックポスト検定と一緒に反復測定二元配置ANOVAにより評価した。核抽出物中の
SRTFはt-検定により解析した。生存データは、カプラン・マイヤー生存曲線として
プロットし、対数順位検定により解析した。データは平均±SEMとして提示し、<0.
05のp値は有意であると見なした。
【0133】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2023027127000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-12-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液、脳、洞、上気道、または肺、心臓、骨髄、脾臓、肝臓、腎臓、尿生殖器官、膀胱、耳空洞、胃、腸、皮膚、目、歯、または歯肉において微生物負荷を低減するための医薬組成物であって、治療有効量の核内輸送モディファイヤー(NTMを含む組成物。
【請求項2】
対象において血小板減少症に関連する微生物性炎症を処置する/阻害する/低減するための医薬組成物であって、治療有効量のNTMを含む組成物。
【請求項3】
感染を有する対象の炎症部位の細胞において、ストレス応答転写因子(SRTF)のレベルを低減するための医薬組成物であって、治療有効量のNMを含む組成物。
【請求項4】
前記NTMが配列番号2に示される配列を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
前記SRTFが、NF-κB、STAT1α、またはAP-1を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記NF-κBが、NF-κB1、NF-κB RelAまたはそれらの組合せである、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)および/または炭水化物応答領域結合タンパク質(ChREPB)が、微生物性炎症に関与する細胞の核中で低減される、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記細胞が、顆粒球、単球、マクロファージ、樹状細胞、自然リンパ球系細胞、B細胞、NK細胞、T細胞、内皮細胞または上皮細胞である、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
対象において抗菌剤の治療効果を増加させるための医薬組成物であって、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6もしくは配列番号7、配列番号8、配列番号9、または配列番号16に示される配列を含むNTMを含む組成物。
【請求項10】
対象において微生物性炎症関連低グリコーゲン血症を低減する/阻害する/予防するための医薬組成物であって、NTMを含む組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
SN50は、カポジ線維芽細胞成長因子(K-FGF)のシグナル配列疎水性領域(SSHR)とNFκB1のp50サブユニットの核局在化シグナル(NLS)を組み合わせる断片連結ペプチドである。SN50のいかなる模倣物、誘導体、または相同体も、本明細書に開示される組成物、方法、およびキットに使用してもよい。SN50の配列は、AAVALLPAVLLALLAPVQRKRQKLMP(配列番号13)である。SN50の生成および使用は米国特許第7,553,929号明細書に記載されている。

【外国語明細書】