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特開2023-27133相補的に音響出力するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027133
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】相補的に音響出力するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20230221BHJP
【FI】
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022189299
(22)【出願日】2022-11-28
(62)【分割の表示】P 2020147378の分割
【原出願日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】20195726
(32)【優先日】2019-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(71)【出願人】
【識別番号】598156701
【氏名又は名称】ジェネレック・オーワイ
【氏名又は名称原語表記】GENELEC OY
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】ジャイルズ・マッキノン
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220AA04
5D220AA05
5D220AA14
5D220AB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】相補的な音響出力を使用して、応答を向上するサウンドシステム、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】少なくとも1つの第1スピーカ要素を備える第1ラウドスピーカ、少なくとも1つの第2スピーカ要素を備える第2ラウドスピーカを備えるサウンドシステムであって、第1ラウドスピーカと第2ラウドスピーカは、少なくとも部分的に重なる周波数範囲を有し、第1スピーカを、該第1スピーカの周波数範囲内に規定した少なくとも1つの第1動作帯域内で応答を生成するように構成し、第2スピーカを、該第2スピーカの周波数範囲内に規定した少なくとも1つの第2動作帯域内で応答を生成するように構成し、第1動作帯域と第2動作帯域は、重ならず、第1の場所でのサウンドシステムの全応答は、第1動作帯域内の応答と第2動作帯域内の応答から成る。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サウンドシステムであり、該サウンドシステムは:
-第1スピーカ要素、
-第2スピーカ要素、
-少なくとも1つのデジタル信号プロセッサ、及び
-少なくとも1つの処理ユニットを備えるサウンドシステムであって、
-前記第1スピーカ要素と第2スピーカ要素は、少なくとも部分的に重なる周波数範囲
を有し、
-前記第1スピーカ要素を、該第1スピーカ要素の前記周波数範囲内に規定した少なく
とも1つの第1動作帯域内で応答を生成するように構成し、前記第2スピーカ要素を、該
第2スピーカ要素の前記周波数範囲内に規定した少なくとも1つの第2動作帯域内で応答
を生成するように構成し、
-前記第1動作帯域と前記第2動作帯域は、重ならず、
第1の場所での前記サウンドシステムの全応答は、前記第1動作帯域内の前記応答と前
記第2動作帯域内の前記応答から成る、サウンドシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの処理ユニットを:
-前記第1スピーカ要素の前記応答を、第1測定で測定させ、
-前記第2スピーカ要素の前記応答を、第2測定で測定させ、
-前記第1及び第2応答を分析し、
-前記第1及び第2動作帯域を規定するよう構成する、請求項1に記載のサウンドシス
テム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの処理ユニットを、少なくとも部分的に前記第1測定及び第1決定
に基づいて、少なくとも1つの応答を、前記第1動作帯域に割当てるように構成する、請
求項1又は請求項2に記載のサウンドシステム。
【請求項4】
前記第1場所で第3応答を有する第3スピーカ要素を備え、前記第3スピーカ要素を、
前記第3スピーカ要素の周波数範囲内の少なくとも1つの動作帯域内でサウンドを生成す
るように構成し、前記第1、第2及び第3動作帯域は、重ならない、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載のサウンドシステム。
【請求項5】
前記スピーカ要素を、アクティブラウドスピーカに含む、請求項1から請求項4のいず
れか一項に記載のサウンドシステム。
【請求項6】
前記第1、第2、及び第3スピーカ要素は、単一の筐体内に存在する、請求項1から請
求項5のいずれか一項に記載のサウンドシステム。
【請求項7】
前記第1、第2、及び第3スピーカ要素は、別々の筐体内に存在し、前記別々の筐体の
少なくとも幾つかは、複数のスピーカ要素から成る、請求項1から請求項5のいずれか一
項に記載のサウンドシステム。
【請求項8】
前記スピーカの少なくとも幾つかは、ウーハとツィータの組合せから成る、請求項1か
ら請求項7のいずれか一項に記載のサウンドシステム。
【請求項9】
少なくとも1つのスピーカを、前記システムの全応答を形成するために、少なくとも2
つの動作帯域で動作するように構成する、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の
サウンドシステム。
【請求項10】
等化を使用して、個別スピーカ要素の応答を、前記全システム応答の振幅目標に、適合
させる、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のサウンドシステム。
【請求項11】
全通過等化器パラメータ及びグループ遅延を、個別スピーカ間で最適化する、請求項1
から請求項10のいずれか一項に記載のサウンドシステム。
【請求項12】
サウンドシステムの応答の品質を向上させる方法であって、該方法は:
-第1の場所で第1スピーカの応答を測定して、第1応答を得るステップ、
-前記第1の場所で第2スピーカの応答を測定して、第2応答を得るステップ、
-前記第1及び第2応答を分析するステップ、
-前記第1及び第2応答の周波数範囲を、動作帯域に分割するステップ、及び
-少なくとも部分的に前記分析に基づいて、前記第1スピーカ又は前記第2スピーカを
、各動作帯域に割当てるステップ、
-少なくとも部分的に前記割当てに基づいて、前記第1スピーカ用に第1フィルタ組と
前記第2スピーカ用に第2フィルタ組を生成するステップ、及び
-全サウンドシステム応答を実装するために、前記第1フィルタ組を、前記第1スピー
カに提供し、前記第2フィルタ組を、前記第2スピーカに提供するステップ
を備える、方法。
【請求項13】
前記周波数範囲の前記動作帯域への分割を、前記測定した第1及び第2応答の分析に少
なくとも部分的に基づいて、実行する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのスピーカを少なくとも2つの動作帯域に使用して、前記システムの全
応答を形成する、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項12~請求項14の少なくとも一項に記載の方法を、実行させるように構成する
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、相補的な音響出力を使用して、特にサウンド及び音響用途の分野で、サウ
ンドシステムの応答を向上するためのシステム及び方法を提供する。
【0002】
より具体的には、本開示は、サウンドシステムであり、該サウンドシステムは:少なく
とも1つの第1スピーカ要素を備える第1ラウドスピーカ、少なくとも1つの第2スピー
カ要素を備える第2ラウドスピーカを備えるサウンドシステムであって、第1ラウドスピ
ーカと第2ラウドスピーカは、少なくとも部分的に重なる周波数範囲を有し、第1スピー
カを、該第1スピーカの周波数範囲内に規定した少なくとも1つの第1動作帯域内で応答
を生成するように構成し、第2スピーカを、該第2スピーカの周波数範囲内に規定した少
なくとも1つの第2動作帯域内で応答を生成するように構成し、第1動作帯域と第2動作
帯域は、重ならず、第1の場所でのサウンドシステムの全応答は、第1動作帯域内の応答
と第2動作帯域内の応答から成る、サウンドシステムを提供する。
【背景技術】
【0003】
聴取室又は聴取空間は、聴取者の位置又は聴取位置又は場所での音響システムのサウン
ド出力に大きく影響する。空間の音響効果とラウドスピーカ放射の音響効果との相互作用
は、複雑である。各空間によって、モニタの応答は、独特な方法で多少変化する、例えば
、反響室か減衰室か、又は壁に設置するか、壁から離れて立設するかによって変化する。
聴取空間の効果を、「部屋応答(room response)」と呼ぶことがある。そ
のため、聴取空間の効果は、サウンドシステム、スピーカシステム、個別ラウドスピーカ
又は個別スピーカ要素のサウンド品質に不利な効果を招くことがある。聴取空間の効果を
較正によって抑制すると、その結果、聴取位置で平坦な周波数応答を伴うより一貫したサ
ウンド特性を有するシステムとなる。このように、異なる音響空間(部屋)では、較正し
ない状態より系統的に同様に聞こえ始める。その結果、曖昧な(neutral)サウン
ド特性、つまり特定の周波数について増減しないが、同量の全可聴周波数-即ち、平坦な
周波数応答を含む、サウンドになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、独立請求項の特徴によって規定される。幾つかの特定の実施形態は、従属項
で規定される。
【0005】
本発明の第1態様によると、サウンドシステムであり、該サウンドシステムは:少なく
とも1つの第1スピーカ要素を備える第1ラウドスピーカ、少なくとも1つの第2スピー
カ要素を備える第2ラウドスピーカを備えるサウンドシステムであって、第1ラウドスピ
ーカと第2ラウドスピーカは、少なくとも部分的に重なる周波数範囲を有し、第1スピー
カを、該第1スピーカの周波数範囲内に規定した少なくとも1つの第1動作帯域内で応答
を生成するように構成し、第2スピーカを、該第2スピーカの周波数範囲内に規定した少
なくとも1つの第2動作帯域内で応答を生成するように構成し、第1動作帯域と第2動作
帯域は、重ならず、第1の場所でのサウンドシステムの全応答は、第1動作帯域内の応答
と第2動作帯域内の応答から成る、サウンドシステムを提供する。
【0006】
本発明の第2態様によると、サウンドシステムの応答の品質を向上させる方法であって
、該方法は:第1の場所で第1スピーカの部屋応答を測定して、第1応答を得るステップ
、第1の場所で第2スピーカの部屋応答を測定して、第2応答を得るステップ、第1及び
第2応答を分析するステップ、少なくとも部分的に該分析に基づいて、第1及び第2応答
の周波数範囲を、動作帯域に分割するステップ、少なくとも部分的に該分析に基づいて、
第1スピーカ又は第2スピーカを、各動作帯域に割当てるステップ、少なくとも部分的に
該割当てに基づいて、第1スピーカ用に第1フィルタ組と第2スピーカ用に第2フィルタ
組を生成するステップ、及び全サウンドシステム応答を実装するために、第1フィルタ組
を、第1スピーカに提供し、第2フィルタ組を、第2スピーカに提供するステップを備え
る、方法を提供する。
【0007】
第1又は第2態様の様々な実施形態は、以下の箇条書き一覧から少なくとも1つの特徴
を備え得る:
-動作帯域を、サウンドシステムの全応答が、動作帯域無しの応答と比べてより平坦と
なるように、選択していること、
-第1動作帯域と第2動作帯域を、第1測定及び第1決定に少なくとも部分的に基づい
て、規定すること、
-サウンドシステムは、第1の場所で第3部屋応答を有する第3スピーカを更に備え、
第3スピーカを、第3スピーカの周波数範囲内の少なくとも1つの動作帯域内でサウンド
を生成するよう構成し、第1、第2及び第3動作帯域は、重ならないこと、
-ラウドスピーカは、アクティブラウドスピーカであること、
-第1、第2及び第3スピーカは、単一の筐体内に存在すること、
-スピーカの少なくとも幾つかは、複数のスピーカ要素から成ること、
-少なくとも幾つかのスピーカは、ウーハ、サブウーハ及びツィータの組合わせから成
ること、
-少なくとも1つのスピーカを、少なくとも2動作帯域用に使用して、システムの全応
答を形成すること、
-等化を使用して、個別スピーカの応答を、全システム応答の振幅目標に適合させるこ
と、
-全通過等化器パラメータ及びグループ遅延を、個別スピーカ間で最適化すること、
-動作帯域の分割を、測定した応答に少なくとも部分的に基づいて、実行すること、
-少なくとも1つのスピーカを少なくとも2動作帯域に使用して、システムの全応答を
形成すること。
【0008】
本開示の少なくとも幾つかの実施形態では、非一時的なコンピュータ可読媒体を提供し
、該媒体上に、少なくとも1つのプロセッサによって実行すると、装置に、上記箇条書き
一覧で提示した特徴を任意選択で含む、本発明の上記態様の少なくとも幾つかを実行させ
るコンピュータ可読な命令のセットを記憶させておく。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による例示的なラウドスピーカ応答の概略図を示している。
図1B】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による例示的なラウドスピーカ応答のプロットを示している。
図2】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による例示的なラウドスピーカ応答の概略プロットを示している。
図3A】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による例示的なラウドスピーカ応答の概略図を示している。
図3B】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による例示的なラウドスピーカ応答のプロットを示している。
図4A】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による例示的なサウンドシステム応答の例示的なプロットを示している。
図4B】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による例示的なサウンドシステム応答の例示的なプロットを示している。
図4C】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による例示的なサウンドシステム応答の例示的なプロットを示している。
図4D】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による例示的なサウンドシステム応答の例示的なプロットを示している。
図5】本発明の少なくとも幾つかの実施形態に対応できる例示的なサウンドシステムの概略図を示している。
図6】本発明の少なくとも幾つかの実施形態に対応できる例示的なサウンドシステムの概略図を示している。
図7】本発明の少なくとも幾つかの実施形態に対応できる例示的なサウンドシステムの概略図を示している。
図8】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による例示的な方法を示すフロー図である。
図9】本発明の少なくとも幾つかの実施形態による例示的な方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、聴取者位置での部屋の効果を軽減するために、スピーカ要素の測定、分析、
及び等化を備えるシステム及び方法を提供する。より具体的には、サウンドシステムの全
応答を、測定し、動作帯域に分割し、次に、最適な応答を達成するために、選択した応答
を、各動作帯域に割当てる。
【0011】
特定の空間に対して聴取位置で結果的に生じる応答を、スピーカの場所及び聴取位置両
方に結び付ける。聴取位置に対してスピーカの位置を変える、スピーカに対して聴取位置
を変える、又は所定の部屋内で両方の位置を変えると、その結果、聴取者の場所で結果的
に生じる応答に変化が生じる。
【0012】
本開示では、この効果を有益に利用して、選択した周波数範囲で聴取空間の効果によっ
て殆ど影響を受けないラウドスピーカを選択して、該スピーカからの当該周波数範囲を選
択的に使用することによって、所定の部屋において全体的に平坦な周波数応答を生成する
【0013】
測定プロセスは、少なくとも1本のマイクロホンの場所での個別再生要素の個別室内応
答の分析によって、及び本開示の他の箇所で開示されるような複数の測定基準を評価する
ことによって、個別ユニットの動作周波数範囲を決定することを備える。動作周波数範囲
とも呼ばれる周波数範囲は、最小周波数で始まり、スピーカ要素又はラウドスピーカ又は
サウンドシステムが発する最大周波数まで続く。つまり、周波数範囲は、装置がサウンド
を表現できる範囲である。
【0014】
フィルタを、個別ユニット応答を振幅目標に適合するように設計し、全域通過フィルタ
最適化を使用して、個別ユニット応答を聴取者位置で合わせる。応答におけるディップを
減少することによって、部屋の効果を、聴取者位置で軽減させる。本開示によるフィルタ
は、少なくとも以下:全域通過フィルタ、ロールオフフィルタ、シェルビングフィルタ、
帯域阻止フィルタ、帯域通過フィルタ、パラメトリックフィルタ、特に、パラメトリック
シェルビングフィルタの1つを備え得、該パラメトリックシェルビングフィルタは、それ
ぞれが少なくとも以下の3引数:中心周波数、Q、及び選択した中心周波数より大幅に上
又は下の周波数に対して、これらの周波数をどの程度ブースト又はカットするかを決定す
るゲイン、を伴う二次フィルタ機能を実装する1又は複数のセクションを有する。本開示
の文脈では、特定の動作帯域内で使用していない応答を、消音し得る、即ち、応答全体を
、特定の動作帯域内にフィルタリングするものと理解される。全通過等化器パラメータ及
びグループ遅延の最適化を、本明細書に開示した計算方法を含む任意の適切な方法によっ
て実行し得る。
【0015】
ラウドスピーカを、本開示の文脈では、使用して、サウンドを発生させる、即ち、個別
応答を生じさせ、該応答は、周波数範囲に亘り振幅を有する。ラウドスピーカは、通常、
キャビネット及びスピーカ要素を含む。本開示におけるラウドスピーカを、少なくとも1
つのアンプが、ラウドスピーカキャビネット中にあるアクティブラウドスピーカとし得る
。アクティブラウドスピーカの利点は、アンプがスピーカ要素要件に合うこと、及びデジ
タルサウンド処理用(DSP:digital sound processing)構
成要素を、キャビネット内に含むことができる点である。しかしながら、所謂、パッシブ
ラウドスピーカも、本明細書に提示した方法及び装置と共に使用可能である。
【0016】
本開示によるラウドスピーカは、M個の個別セクションを有するスピーカである、所謂
Mウェイスピーカを備え得る。例えば、スピーカは、ウーハ要素とツィータ要素から成る
2ウェイラウドスピーカであり得る、又は、スピーカは、ウーハ要素、ミッドレンジ要素
及びツィータ要素から成る3ウェイラウドスピーカであり得る。また、ラウドスピーカは
、スピーカ要素であるサブウーファ要素からも成り得る。ラウドスピーカは、アクティブ
スピーカ又はパッシブスピーカであり得る。スピーカ要素は、ダイナミックスピーカ要素
、又は電気信号を音響に変換するのに使用可能な他の種類の要素であり得る。
【0017】
少なくとも1つのラウドスピーカを備えるサウンドシステムを、本開示では使用して、
総システム応答を生成する。例えば、2つのスピーカ要素XとYを備えるサウンドシステ
ムであって、第1スピーカ要素Xが、応答x1を生成し、第2スピーカ要素Yが、応答y
1を生成するサウンドシステムは、x1y1の総システム応答を有する。総システム応答
は、聴取者位置と関係しており、聴取者位置は、部屋等の空間内における静止位置である
。聴取者位置を、部屋の特徴によって、分析又は較正を介して、決定し得る。また、サウ
ンドシステムは、マイクロホン、マイクアンプ、サウンド源、及び/又はネットワークイ
ンタフェースも備え得る。マイクロホンを含む利点は、システムが閉ループ制御の可能性
を有するという点である。
【0018】
ラウドスピーカは、無響応答を有するが、無響応答とは、ラウドスピーカが、他の応答
が全く無い場合に、即ち、部屋の応答がゼロのときに、生成する応答である。ラウドスピ
ーカは、筐体とも呼ぶことがあるキャビネット、及び少なくとも1つのスピーカ要素から
成る。アクティブラウドスピーカは更に、アンプ、及び任意選択で、デジタルサウンドプ
ロセッサ(DSP)から成る。キャビネットは、ラウドスピーカの物理的容積を画成し、
スピーカの音響的特性に対して大きな影響を与える。少なくとも部分的にアルミニウムか
ら成るキャビネットは、キャビネットの軽量化と相まって、キャビネットの構造の剛性に
有益である。
【0019】
本開示によると、応答に関する振幅の目標を、本開示の実施形態において使用する少な
くとも幾つかの決定の一部として設定、利用し得る。振幅の目標を、別のスピーカ又は該
スピーカの応答に対する、絶対量としてのdB、デシベル、値として表現し得る。所定の
局所応答、広域応答、及び/又は全応答に対する振幅目標を、80dB~100dB、特
に85dB等、デシベルで表現し得る。相対的な目標を、少なくとも1つの他のスピーカ
の応答に対して0dBとし得る。振幅目標を満たす応答を達成するという効果は、システ
ムが、その結果、所定の周波数で、又は全応答に対して十分な又は理想的でさえある性能
を有するものである。
【0020】
図1Aは、本発明の少なくとも幾つかの実施形態によるサウンドシステムの例示的な応
答を示す。図1Aに提示した実施形態では、ラウドスピーカを使用して、入力信号x10
から、結果として生じるサウンドy150を生成する。結果として生じる応答は、ラウド
スピーカ(無響)の特性11と部屋の伝達関数12の組合せである。部屋の伝達関数を、
空間におけるスピーカ及び聴取者(又は、マイクロホン)の位置によって決定する。従っ
て、スピーカの無響応答110は、部屋の伝達関数の効果が無いスピーカ応答である。
【0021】
図1Bは、周波数と振幅のプロットとして、例示的なスピーカ無響応答110を示して
おり、振幅を、y軸、周波数をx軸としている。
【0022】
図2は、聴取位置、例えば、部屋内の場所で結果として生じる応答150を、周波数と
振幅のプロットとして、示している。部屋の反響及び他の音響問題により、ラウドスピー
カの無響応答110と比べて、聴取位置で深い切込み21及び22が発生している。
【0023】
図3Aは、ラウドスピーカ場所の効果を示している。スピーカ(又は、マイクロホン)
を部屋内の異なる場所に移動することで、これらの個別反響の強度及び到達時間(及び、
従って、位相関係)を調整する-その結果、切込みの場所(周波数)及び振幅における(
電位)シフトが生じる。図3では、サウンドx10を、ラウドスピーカ11によって放射
する。第1位置pos112では、結果として生じるサウンドは、y1150である。しか
しながら、図で示すように、第1位置とは異なる第2位置pos213では、結果として
生じるサウンドは、y2160である。
【0024】
図3Bは、応答に対するラウドスピーカの場所の効果を、振幅と周波数のグラフで示し
て、説明している。ラウドスピーカ位置pos1から結果として生じたサウンド150に
は、切込み21及び22があるのに対して、ラウドスピーカ位置pos2から結果として
生じたサウンド160には、切込み31及び32がある。切込み21及び22は、切込み
31及び32とは異なる周波数に存在している。結果として生じるサウンド150及び1
60を、ラウドスピーカの無響応答110と比較して示している。
【0025】
図4Aは、第1、第2及び第3スピーカが、部屋内の異なる場所に配置され、それぞれ
応答170、175、及び176を生成する例示的実施形態を説明している。上記応答は
、振幅と周波数グラフに示されている。応答は変化し、異なる周波数での切込み等、異な
る特性を有するのが分かる。上記スピーカを、スピーカ要素、或いはラウドスピーカとし
得る。
【0026】
図4Bは、図4Aからの例示的実施形態を示しており、該実施形態では、組合せたシス
テム応答を最適化するために、各個別スピーカの動作帯域を、選択する。総周波数範囲を
、縦線によって表した動作帯域181、182、183、及び184に分割した。図4A
及び図4Bから分かるように、動作帯域181では、応答175が、最も平坦な応答と最
も高い出力を有する、そのため、システムは、動作帯域181で、総システム応答に第2
スピーカを使用すると、有益である。次に、帯域182を見ると、この帯域では、最も平
坦な応答は、第1スピーカの応答、即ち応答170であり、この応答を、総システム応答
に使用する。帯域183では、同じく最も平坦な応答は、応答175であり、該応答を、
総システム応答に使用する。最後に、帯域184では、最も平坦な応答は、応答176で
あり、該応答を、総システム応答に使用する。従って、総システム応答は、帯域181に
おける応答175、帯域182における応答170、帯域183における応答175、及
び帯域184における応答176から成る。更に平坦な応答を得るために、選択した帯域
及び/又は応答を、本開示のこの及び他の実施形態において、増幅等の等化手順にかけ得
る。更に、本開示の文脈では、周波数範囲を、任意の数の帯域、好適には1~1000帯
域に、特に2~20帯域に分割し得る。
【0027】
本開示による更なる例示的実施形態では、図4A及び図4Bのx軸上に表した周波数範
囲は、10Hz~21kHzであり、帯域181は、10Hz~50Hz、帯域182は
、50Hz~100Hz、帯域183は、100Hz~300Hz、及び帯域184は、
300Hz~21kHzであり得る。総周波数範囲の帯域への分割を、プリセット値に基
づいて行い得る、又はこの分割は、測定した応答を考慮に入れ得る。例えば、2つの切込
み間に動作帯域の境界を存在させ、それにより各切込みを異なる動作帯域に割当て、その
結果、切込みを、共同でよりはむしろ単独で除去可能にすると、有益である。分割を実行
した後に、各動作帯域内の応答を評価し、選択したスピーカからの応答を、各動作帯域に
割当てる。1つ又は複数の応答は、動作帯域内の応答を備え得る。帯域内の応答の評価、
及び帯域への応答の割当てを、本開示の他の箇所で開示する方法に従い、行う。
【0028】
図4Cは、個別帯域181、182、183及び184内で選択した個別スピーカの結
果として生じた応答を示している。上記図では、本開示による少なくとも幾つかの実施形
態において、応答が、単なる平坦な線であるだけではなく、上昇勾配や下降勾配も包含す
ることが、分かる。帯域間の1~30%、より具体的には10%の重なりは、周波数範囲
に、有益に存在し得る。これにより、動作帯域に対する応答を限定するフィルタが、あま
り急に開始及び終了しないようにできる。図4Dは、等化手順を完了した後の、結果とし
て生じる総システム応答を表示している。図4Dでは、総システム応答179が、図4A
の個別応答と比較して、実質的に平坦であることが分かる。
【0029】
図5は、本開示内で提示した方法を使用できる例示的実施形態を示している。音響シス
テム500は、サウンド源501、ネットワークインタフェース及びマイクロホンプリア
ンプ502、マイクロホン503及び少なくとも1つのスピーカ510から成る。音響シ
ステム500を、サウンドシステムとも呼ぶことがある。更なる例示的実施形態では、要
素501、502、及び503を結合して、単一のユニットにし得る、又は他の更なる例
示的実施形態では、上記要素の1つ又は複数を、該システムから除き得る。スピーカ51
0は、デジタルサウンドプロセッサ511、アンプ512、及び少なくとも1つのスピー
カ要素513を含み得る。スピーカ510の各要素は、通常、単一のハウジング内に存在
している。図5で示した実施形態では、第2スピーカ520や任意の第3スピーカ530
も存在する。つまり、少なくとも幾つかの実施形態は、2つのスピーカユニットから成り
、少なくと幾つかの他の実施形態は、3つのスピーカユニットから成る。更に、本開示の
方法により使用可能なスピーカユニット数を、変数nとして表し得、その際、nは、正の
整数、好適には1~10,000、特に2~20である。
【0030】
第2スピーカ520及び第3スピーカ530は、スピーカ510と同じとし得、又は第
2スピーカ520と第3スピーカ530は、使用した構成要素、周波数範囲、デジタルサ
ウンド処理の種類等の特徴について異なり得る。これらのスピーカは、聴取位置に対して
異なる場所を有し得る。
【0031】
図5に示した実施形態で使用可能な例示的な方法では、サウンド信号を、スピーカ51
0、520及び任意選択で530を介して再生する。サウンド信号は、各スピーカに対し
て異なり得る。サウンド信号を、複数のスピーカによって連続して再生し得る、即ち、1
つのスピーカが1回ずつ、又は、別の実施形態では、複数のスピーカは、異なるサウンド
を同時に再生し得る。サウンド信号は、テスト信号、例えば、10Hzで始まり、21k
Hzまで続く周波数の掃引(sweep)とし得る。次に、上記サウンド信号を、聴取位
置でマイクロホン503によって測定し、測定値を、分析のためにネットワーク装置50
2に記憶する。或いは、分析を、リモートサーバで行い得る。
【0032】
マイクロホンの場所での個別要素それぞれに対する個別応答を、以下の局所及び広域の
値又は計算の少なくとも1つを含む複数の測定基準を使用して、分析し、評価する:応答
の平坦度、応答の振幅、応答の傾き、応答の平均的振幅、応答の加重平均、切込みの位置
及び傾きの度合いを含む切込みの特性。フーリエ解析及び/又はフーリエ法を、少なくと
も部分的に使用して、応答を評価し得る。分析及び評価の結果、各ユニットに対する個別
動作帯域を決定することになる。従って、フィルタを、個別部分それぞれが、応答を個別
帯域の目標応答に合致するように設計する、即ち、各スピーカ用フィルタを、各帯域で要
求される応答を達成するように設計する。かかるフィルタは、本書中で開示するどのフィ
ルタでも備え得る。全通過等化及びグループ遅延を、個別ユニットが確実に最大限に纏ま
った複合応答となるように、最適化する。
【0033】
合成するために、スピーカの出力の周波数応答グラフを、ネットワーク装置502によ
って生成する。応答を生成した後に、応答の分析を、測定基準に基づいて実行して、応答
における平坦部分、ピーク及び切込みの表示を得る。また、この表示を得ることを、第1
決定とも呼び得、本開示内で開示した測定基準及び計算方法を利用し得る。次に、個別ス
ピーカからの表示を、他のスピーカからの同じ表示に対して評価する。次に、最適解を、
測定した応答及び/又はシミュレートした応答について行った計算方法で求めるが、該計
算方法は、少なくとも以下を含む:最小二乗法、線形最小二乗法、非線形最小二乗法、最
小二乗推定法、加重最小二乗法、一般化最小二乗法、部分的最小二乗法、総最小二乗法、
非負最小二乗法、リッジ回帰法、正則化最小二乗法、最小絶対偏差法、繰返し加重最小二
乗法、ベイズ線形回帰法、ベイズ多変量線形回帰法、線形回帰法、多項回帰法、二項回帰
法。計算に関与する値は、測定した又はシミュレートした応答に関する以下の変数の少な
くとも1つである:平坦度、振幅、傾き、平均的振幅、加重平均、切込みの位置及び傾き
の度合いを含む切込みの特性。フーリエ解析及び/又はフーリエ法を、上記計算で少なく
とも部分的に使用し得る。
【0034】
計算に基づいて、総システム応答を生成し、その際、選択した周波数帯域を、上記生成
された総システム応答を達成するために、特定のラウドスピーカに割当てる。計算は、任
意選択で、少なくとも以下の1つを備え得る:個別帯域の振幅最適化、位相最適化。
【0035】
総システム応答の実装を、個別スピーカ用のフィルタを作成し、上記フィルタをスピー
カに送信することによって、達成する。フィルタを、スピーカのデジタル信号プロセッサ
(DSP)によって実装し得る。スピーカは、筐体内にフィルタを記憶し得る。また、上
記フィルタは、例えばデータ損失を防ぐために、リモートサーバにも記憶し得る。フィル
タを、少なくとも以下のためのセットとして、記憶し得る:システム全体用、各帯域用、
各スピーカ用、各ラウドスピーカ要素用。フィルタ及びフィルタセットをデジタルファイ
ルとして記憶することで、例えば、複数の部屋が、同じ音響特性を有し、同じサウンドシ
ステムを、各部屋に設置した場合に、フィルタをバックアップやエクスポートすることが
可能になる。この実装を、測定を繰返すことによって、及び任意選択で、本方法の分析、
フィルタ生成、及びフィルタ実装ステップを繰返すことによって、精度を高めるという有
益な効果を伴い、任意選択で、実証し得る。かかる繰返しを、反復プロセスと呼び得る。
【0036】
本開示による第3の例示的実施形態では、複数対のスピーカの応答を、本明細書に提示
した方法に従い調整する。より具体的には、スピーカ対の応答を、まず、聴取位置でマイ
クロホンを使用して測定し、次に、異なる部屋位置を有する別のスピーカ対を測定する。
【0037】
図6で説明する本開示による第4の例示的実施形態では、サウンドシステム600は、
サウンド源601、ネットワークインタフェース606、マイクロホンプリアンプ605
、マイクロホン603及びスピーカ610と620から成る。スピーカ610は、DSP
611及びアンプ612と614、及びスピーカ要素613と615を備える多要素スピ
ーカである。スピーカ620は、単一要素スピーカであるが、更なる例示的実施形態では
、スピーカ610等の多要素スピーカともし得る。スピーカ620を、本書で後に開示す
る接続手段の1つによって、ネットワークインタフェースに直接接続する。
【0038】
サウンドシステム600の全応答を、本開示で提示した方法と一致する方法を介して、
即ち、測定用マイクロホンを使用して、10Hz~21kHzのテスト信号に基づいて応
答を測定して、又は応答に基づいてテスト信号を測定して、獲得し得る。以下の少なくと
も1つを、測定プロセスの一部として測定することになろう:サウンドシステムの全応答
、スピーカの個別応答。
【0039】
本開示による第5の例示的実施形態では、図7で説明したサウンドシステム700は、
サウンド源、ネットワークインタフェース、及びマイクロホンプリアンプを備える制御ユ
ニット708、マイクロホン703、及びDSP711、3つのアンプ712、714、
716、及び3つのスピーカ要素713、715、717を備えるラウドスピーカ710
から成る。有益な実施形態では、要素713及び717は、動作範囲周波数が互いに対し
て最小量だけ重なる、或いは全く重ならず、ラウドスピーカ710が広域の周波数範囲と
なるという有益な効果を伴う。スピーカ要素715は、要素712と716の両方との重
なりを有し得、本開示による方法を、要素715の周波数範囲に亘り効果的に使用し得る
という有益な効果を伴う。要素715と要素717の重なりは、要素717の範囲の1%
~90%とし得る、また要素715と713にも同じことが等しく適用し得る。例えば、
更なる例示的実施形態では、要素713は、20Hz~250kHzの周波数範囲を有し
得、要素715は、50kHz~500kHzの周波数範囲を有し得、要素717は、3
00Hz~20kHzの周波数範囲を有し得る。これらの要素は、異なる種類とし得る;
例えば、要素717を、ツィータとし得、要素713を、ウーハとし得る。これらの要素
は、ラウドスピーカの筐体内で異なる場所に存在し得る、即ち、第1要素は、ラウドスピ
ーカの前面に存在し得、第2要素は、背面に存在し得る。これには、各スピーカ要素毎に
異なる部屋応答を提供するという有益な効果があり、本明細書に開示した方法を施すと、
平坦な周波数応答を齎し得る。
【0040】
本発明の有益な例示的実施形態では、スピーカ要素は同一であり、これは、周波数範囲
が100%重なることを意味する。また、スピーカ要素の総数の一部を同一にすること、
例えば、3要素のスピーカは、2つの同一要素と1つの非同一要素を有し得ることが可能
である。複数のかかるスピーカ、例えば、一対の3ウェイスピーカも、本明細書に提示し
た開示に従い使用するのに、極めて適当なサウンドシステムである。スピーカ要素の重な
りは、スピーカ要素が、筐体上の異なる場所に位置する際に、総応答に関して柔軟性を提
供する。異なる種類のスピーカ要素を使用することで、拡大した周波数範囲を、特に超高
周波数及び/又は超低周波数で、提供できる。
【0041】
本開示による例示的な方法を、図8に提示する。この方法は、ステップ801で開始し
、該ステップでは、個別ユニット応答を測定する。測定では、本明細書で提示した実施形
態に関して説明した技術を含む、任意の適当な技術に従い、マイクロホン手段を利用でき
る。測定は、方法自体であり得るように、数回行うことができる。更なる例示的な方法で
は、測定を、順番に各スピーカの個別応答を測定することによって、行う。別の例示的な
方法では、応答を、同時に測定し得る。
【0042】
ステップ802では、測定した応答を分析する。測定した応答を記憶し、分析を、本開
示で言及したように、複数の測定基準に基づいて実施して、各スピーカの周波数と振幅の
プロットを決定する。分析を、ネットワークインタフェース502によって、611又は
612等のサウンドシステムにあるDSPの何れかによって単独で又は共同で、或いは、
別の例示的な方法では、分析を実行する遠隔に位置するサーバにファイルをアップロード
することによって、行い得る。
【0043】
ステップ803では、動作の帯域を、この開示における他の箇所で開示したように決定
する。このステップは、ネットワークインタフェース502によって、又はリモートサー
バによって、ステップ802と連動して行い得る。ステップ804では、目標応答を、所
期の目標応答をモデル化することを通して決定する。ステップ804を、各スピーカ要素
に対して個別に、又はシステム全体に対して、包括的に又は一度に一動作帯域で、実行し
得る。ステップ805では、決定した個別帯域に関する振幅の最適化を、実施する。最後
に、ステップ806では、位相最適化を、最終のシステム応答に対して実施する。次に、
スピーカ用フィルタを、生成し、この文書中の他の箇所で開示したように、スピーカに送
信する。
【0044】
図9では、本開示による第2の例示的な方法を説明している。この方法は、ステップ9
01、902、903、904、905、906及び907から成る。
【0045】
ステップ901では、サウンドシステム内のスピーカの応答を、本書中で開示した技術
を含む、任意の適当な測定技術に従い、測定する。応答を、分析のために記憶する。ステ
ップ902では、応答を、本書中で開示した技術に従い、分析する。ステップ903では
、プリセットによって、又は測定した応答の最小及び最大周波数によって決定するサウン
ドシステムの周波数範囲を、本書中で開示した除算法に従い、動作帯域に分割する。ステ
ップ904では、最適な応答を、本書中で開示したように決定する方法に従って、各帯域
に対して決定する。ステップ905では、各動作帯域に、各帯域の最適な応答を割当てる
、即ち、動作帯域内で最も平坦な応答を提供する1つ又は複数のスピーカの応答を、選択
する。ステップ906では、この割当てと対応するフィルタを、本書中に開示した生成手
順に従い、各スピーカのために個別に生成する。等化を、本書中に開示したようなフィル
タ生成プロセスの一部として、行い得る。ステップ907では、フィルタを、本書中に開
示した提供手順に従い各スピーカに提供する。
【0046】
本明細書に提示した実施形態によると、第1場所でのサウンドシステムの全応答は、動
作帯域内の応答から成り、1つ又は複数の応答を、動作帯域内で使用するために選択し得
、動作帯域は、部分的に重なり得る。更なる例示的実施形態では、サウンドシステム中の
ラウドスピーカの幾つかを、帯域と共に使用し、少なくとも1つのスピーカを、そのまま
使用する、即ち、スピーカの自然な応答を使用する。これは、システムで必要となる処理
の量を最小化するという有益な効果を有する。
【0047】
例示的実施形態では、全応答は、動作帯域内の応答から構成され得、1つ又は複数の応
答を、動作帯域内で使用するように選択し得る。これには、応答の平坦さを更に向上する
という有益な効果がある。
【0048】
本開示の利点として、より平坦な全応答を、1つ又は複数の聴取者位置で生じさせる点
が挙げられる。更に、状態の理由を明らかにできるため、サウンドシステムの出力に関す
る異なる部屋の効果を抑制する。また、総応答に対する如何なる悪影響も抑制できるため
、スピーカを、部屋内でより柔軟に設置できる。
【0049】
局所的又は遠隔的に行うデジタルサウンド処理に関して、サウンド処理を、例えば、以
下の少なくとも1つ:コンピューティング装置、モバイル装置、サーバ、ノード、クラウ
ドコンピューティング装置等の、少なくとも1つのコンピューティング装置を使用して行
い得る。コンピューティング装置は、スピーカ内に存在し、DSPを備え得る、或いは、
代わりに又は追加でコンピューティング装置は、ネットワークインタフェース内に存在し
得る。コンピューティング装置は、少なくとも1つのプロセッサを備え、該プロセッサは
、例えば、シングルコア又はマルチコアプロセッサを備え得、シングルコアプロセッサは
、1つの処理コアを備え、マルチコアプロセッサは、複数の処理コアを備える。プロセッ
サは、複数のプロセッサを備え得る。処理コアは、例えば、ARM Holdings社
によるCortex-A8処理コア、又はAdvanced Micro Device
s Corporation社によって製造されたSteamroller処理コアを備
え得る。プロセッサは、例えば、少なくとも1つのQualcomm Snapdrag
on及び/又はIntel Coreプロセッサを備え得る。プロセッサは、少なくとも
1つの特定用途向け集積回路(ASIC:application-specific
integrated circuit)を備え得る。プロセッサは、少なくとも1つの
フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field-programmab
le gate array)を備え得る。プロセッサは、コンピューティング装置にお
いて方法ステップを実行する手段を備え得る。プロセッサは、動作を実行するために、少
なくとも部分的にコンピュータ命令によって構成し得る。本開示の文脈では、サウンド処
理を、数台の装置によって協働して完了し得ると理解される。
【0050】
ラウドスピーカ、マイクロホン及びネットワークインタフェース等の装置は、互いに、
及び外部コンピューティング装置に、以下の技術:電線等の直接配線、同軸ケーブル、光
ファイバケーブル、赤外線伝送、ブルートゥース(登録商標)、無線ローカルエリアネッ
トワーク(WLAN:wireless local area network)、イ
ーサネット、ユニバーサルシリアルバス(USB:universal serial
bus)、及び/又はワールドワイド・インターオペラビリティ・フォー・マイクロウェ
ーブ・アクセス(WiMAX)、及び衛星通信方法、のうち少なくとも1つを使用して、
インタフェースで接続し得る。代わりに又は加えて、独自の通信フレームワークを、利用
し得る。幾つかの実施形態では、別々のネットワークを、以下の目的:ラウドスピーカ間
の通信、ラウドスピーカとネットワークインタフェース間の通信、ネットワークインタフ
ェースとサーバ間の通信等、の1つ又は複数のために使用し得る。
【0051】
開示した本発明の実施形態は、本明細書で開示した特定の構造、工程段階、又は材料に
限定されないが、当業者によって認識されるであろう、それらの均等物にまで拡大される
と、理解されるべきである。また、本明細書で採用した用語は、特定の実施形態だけにつ
いて記載する目的に使用され、限定することを意図するものではないと、理解されるべき
である。
【0052】
本明細書を通して、一実施形態又は実施形態と述べる場合、実施形態に関連して記載す
る特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれているこ
とを意味する。従って、本明細書を通して様々な場所に、「一実施形態において(in
one embodiment)」又は「実施形態において(in an embodi
ment)」という語句が現れても、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけでは
ない。また、例えば、約又は略等の用語を用いて数値に言及している場合は、正確な数値
も開示する。
【0053】
本明細書で使用するとき、複数の項目、構造的要素、組成上の要素、及び/又は、材料
を、便宜上、共通の一覧に提示し得る。しかしながら、これらの一覧は、一覧の各部材(
member)をあたかも別個の一意な部材として個別に識別するように、解釈されるべ
きである。従って、かかる一覧の個別部材は、相反する指示がない限り、共通の群におけ
るそれらの提示のみに基づいて、同じ一覧の他の部材の事実上の均等物として、解釈され
るべきではない。また、本発明の様々な実施形態及び実施例を、それらの様々な構成要素
の代替手段と共に、本明細書で記載し得る。かかる実施形態、実施例、及び代替手段を、
互いの事実上の均等物として解釈しないが、本発明の別々の自律的な表現とみなすべきで
あると、解釈される。
【0054】
更にまた、記載した特徴、構造、又は特性を、1つ又は複数の実施形態において、任意
の適切な方法で組合せ得る。この記載では、多数の特定の詳細、例えば、長さ、幅、形等
の例を、本発明の実施形態の徹底的な理解を提供するために、提供している。しかしなが
ら、当業者は、本発明を、1つ又は複数の特定の詳細無しで、又は他の方法、構成要素、
材料等で、実施できると認識するであろう。他の例では、周知の構造、材料、又は動作に
ついて、本発明の態様を不明瞭にするのを避けるために、図示又は記載しない。
【0055】
前述した実施例は、1つ又は複数の特定用途における本発明の原理について、説明して
いるが、実装の形状、用法、細部に関する多数の変更が、発明力を行使せずに、且つ本発
明の原理及び概念から逸脱せずに、行うことができることは、当業者には明らかである。
よって、以下に記載するクレームよる以外は、本発明を限定することを意図していない。
【0056】
動詞「~を備える(to comprise)」及び「~を含む(to includ
e)」は、本書では、記述していない特徴の存在を除外も、要求もしない、非限定(op
en limitation)として使用される。従属請求項に記述した特徴は、特に明
記しない限り、互いに自由に組合せ可能である。更にまた、「a」又は「an」の使用、
即ち、単数形は、本書を通して、複数形を排除するものではないと、理解されるべきであ
る。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態では、音響工学において、より具体的には、サウ
ンドシステムのための最適化した又は改良した応答を提供する際に、産業上の利用が見い
だされる。
【符号の説明】
【0058】
10 入力音響信号、x
11 スピーカの無響特性
12 部屋の音響特性
110 スピーカの無響応答
150 スピーカの部屋応答、y
21、22 応答における切込み
160 第2聴取位置でのスピーカの部屋応答
13 第2聴取位置での部屋の音響特性
31、32 応答における切込み
170 第1スピーカの応答
175 第2スピーカの応答
176 第3スピーカの応答
179 全システム応答
181、182、183、184 動作帯域
500 サウンドシステム
501 サウンド源
502 ネットワークインタフェース及びマイクロホンプリアンプ
503 マイクロホン
510、520、530 スピーカ筐体
511、521、531 デジタル信号プロセッサ
512、522、532 アンプ
513、523、533 スピーカ要素
600 サウンドシステム
601 サウンド源
602 ネットワークインタフェース
603 マイクロホン
610、620 スピーカ筐体
611、621 デジタル信号プロセッサ
612、614、622 アンプ
613、615、623 スピーカ要素
700 サウンドシステム
703 マイクロホン
708 サウンド源、ネットワークインタフェース、及びマイクロホンプリアンプ
710 スピーカ筐体
711 デジタル信号プロセッサ
712、714、716 アンプ
713、715、717 スピーカ要素
801、802、803、804、805、806 方法のステップ
901、902、903、904、905、906、907 方法のステップ
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】