(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002715
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】糖原病を処置するための組換えウイルスベクター
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20221227BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20221227BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20221227BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221227BHJP
A61P 3/08 20060101ALI20221227BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z ZNA
C12N7/01
A61K35/76
A61P3/08
A61K48/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022169032
(22)【出願日】2022-10-21
(62)【分割の表示】P 2019540667の分割
【原出願日】2018-01-30
(31)【優先権主張番号】62/451,963
(32)【優先日】2017-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】508285606
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジャニス ジェイ. チョウ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】糖原病を処置するための組換えウイルスベクターを提供する。
【解決手段】本明細書では、糖原病、特にGSD-Ibの処置のための遺伝子治療適用に使用することができる、組換え核酸分子、AAVおよびレンチウイルスベクターなどの組換えベクター、ならびに組換えAAVおよび組換えレンチウイルスなどの組換えウイルスが記載されている。本明細書では、ヒトグルコース-6-ホスファターゼ(G6PC)プロモーター/エンハンサー(GPE)配列に作動可能に連結した、ヒトグルコース-6-リン酸トランスポーター(G6PT)コード配列を含む組換え核酸分子が提供される。本明細書ではまた、ミニマルG6PTプロモーター/エンハンサー(miGT)配列に作動可能に連結した、ヒトG6PTコード配列を含む組換え核酸分子が提供される。
【選択図】
図5-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2017年1月30日に出願された米国仮出願第62/451,963号(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
本開示は、糖原病、特に糖原病Ib型の処置のための遺伝子治療用ベクターに関する。
【背景技術】
【0003】
糖原病Ib型(GSD-Ib、MIM232220)は、グルコース-6-リン酸(G6P)を細胞質から小胞体(ER)の内腔に移行させる、遍在的に発現しているG6Pトランスポーター(G6PTまたはSLC37A4)の欠損によって引き起こされる(Chouら、Curr Mol Med、2巻:121~143頁、2002年;Chouら、Nat Rev Endocrinol、6巻:676~688頁、2010年)。ER内では、G6Pは、肝臓/腎臓/腸に限定されたグルコース-6-ホスファターゼ-α(G6Pase-αもしくはG6PC)、または遍在的に発現しているG6Pase-βのいずれかによって、グルコースとリン酸に加水分解される。G6PTとG6Paseは機能的に共依存しており、G6PT/G6Pase複合体を形成する。G6PT/G6Pase-α複合体は、食間血中グルコースの恒常性を維持する。いずれかのタンパク質の欠損は、空腹時低血糖症、肝腫大、腎腫大、高脂血症、高尿酸血症、乳酸血症、および成長遅延により特徴付けられる異常な代謝表現型をもたらす。G6PT/G6Pase-β複合体は、好中球/マクロファージの恒常性と機能を維持し、いずれかのタンパク質の欠損は、好中球減少症と骨髄機能障害を引き起こす(Chouら、Curr Mol Med、2巻:121~143頁、2002年;Chouら、Nat Rev Endocrinol、6巻:676~688頁、2010年)。したがって、GSD-Ibは代謝だけでなく、グルコース恒常性の障害、好中球減少症、および骨髄機能障害によって特徴付けられる免疫障害でもある。処置されないとGSD-Ibは、年少において致死的である。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)療法(Visserら、J Pediatr、137巻:187~191頁、2000年;Visserら、Eur J Pediatr、161巻(補遺1):S83~S87頁、2002年)を伴う、食事療法(Greeneら、N Engl J Med、294巻:423~425頁、1976年;Chenら、N Engl J Med、310巻:171~175頁、1984年)の厳格な遵守により、GSD-Ib患者はほぼ正常な成長と思春期の発達を達成することができた。しかしながら、現在の治療法では、25歳を超えるGSD-I患者の75%で発生する肝細胞腺腫(HCA)の長期合併症に対処することができない(Chouら、Curr Mol Med、2巻:121~143頁、2002年;Chouら、Nat Rev Endocrinol、6巻:676~688頁、2010年;Rakeら、Eur J Pediatr、161巻(補遺1):S20~S34頁、2002年;Francoら、J Inherit Metab Dis、28巻:153~162頁、2005年)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Chouら、Curr Mol Med(2002年)2巻:121~143頁
【非特許文献2】Chouら、Nat Rev Endocrinol(2010年)6巻:676~688頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、糖原病、特にGSD-Ibの処置のための遺伝子治療適用に使用することができる、組換え核酸分子、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたはレンチウイルスベクターなどの組換えベクター、および組換えウイルスが開示されている。
本明細書では、ヒトグルコース-6-ホスファターゼ(G6PC)プロモーター/エンハンサー(GPE)配列、またはミニマルグルコース-6-リン酸トランスポーター(G6PT)プロモーター/エンハンサー(miGT)配列のいずれかに作動可能に連結した、ヒトG6PTコード配列を含む組換え核酸分子が提供される。
【0006】
本明細書では、本明細書に開示される組換え核酸分子を含むベクターも提供される。一部の実施形態では、ベクターはAAVベクターである。他の実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクターである。本明細書に開示される組換え核酸分子またはベクターを含む単離された宿主細胞がさらに提供される。例えば、単離された宿主細胞は、AAVまたはレンチウイルスの増殖に適した細胞であり得る。
【0007】
本明細書に開示される組換え核酸分子を含む組換えAAV(rAAV)または組換えレンチウイルスがさらに提供される。本明細書に開示されるrAAVまたは組換えレンチウイルスおよび薬学的に許容される担体を含む組成物も提供される。
【0008】
本明細書では、糖原病と診断された被験体を処置する方法も提供される。一部の実施形態では、方法は、GSD-Ibを有する被験体を選択することと、治療有効量の、本明細書に開示される組換えウイルスまたは組成物を被験体に投与することとを含む。
【0009】
本開示の前述および他の目的、特徴、および利点は、添付の図面を参照して進める以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1-1】
図1A~1Eは、6週齢の野生型およびrAAV処置したG6pt-/-マウスの表現型分析を示す図である。(
図1A)肝臓のミクロソームのG6P取り込み活性。データは、野生型(+/+、n=8)、GPE(n=12)、およびmiGT(n=12)マウスから得られた。(
図1B)血中グルコースレベル。(
図1C)マウスの体重(BW)、肝臓重量(LW)、およびLW/BW。データは、野生型(+/+、n=24)、GPE(n=13)、およびmiGT(n=15)マウスから得られた。(
図1D)白血球のパーセントとして表される血中好中球数。データは、野生型(+/+、n=16)、GPE(n=6)、およびmiGT(n=7)マウスから得られた。(
図1E)200ng/mLのホルボールミリステートアセテート(PMA)に応答する骨髄好中球の呼吸バースト活性および10
-6Mのf-Met-Leu-Phe(fMLP)に応答するカルシウムフラックス活性。データは、野生型(+/+、n=3)、GPE(n=2)、およびmiGT(n=2)マウスから得られた。データは、平均±SEMを表す。*p<0.05、**p<0.005。
【
図1-2】
図1A~1Eは、6週齢の野生型およびrAAV処置したG6pt-/-マウスの表現型分析を示す図である。(
図1A)肝臓のミクロソームのG6P取り込み活性。データは、野生型(+/+、n=8)、GPE(n=12)、およびmiGT(n=12)マウスから得られた。(
図1B)血中グルコースレベル。(
図1C)マウスの体重(BW)、肝臓重量(LW)、およびLW/BW。データは、野生型(+/+、n=24)、GPE(n=13)、およびmiGT(n=15)マウスから得られた。(
図1D)白血球のパーセントとして表される血中好中球数。データは、野生型(+/+、n=16)、GPE(n=6)、およびmiGT(n=7)マウスから得られた。(
図1E)200ng/mLのホルボールミリステートアセテート(PMA)に応答する骨髄好中球の呼吸バースト活性および10
-6Mのf-Met-Leu-Phe(fMLP)に応答するカルシウムフラックス活性。データは、野生型(+/+、n=3)、GPE(n=2)、およびmiGT(n=2)マウスから得られた。データは、平均±SEMを表す。*p<0.05、**p<0.005。
【0011】
【
図2】
図2A~2Cは、60~78週齢の野生型およびrAAV処置したG6pt-/-マウスの生化学的分析を示す図である。(
図2A)rAAV処置したG6pt-/-マウスにおける肝臓のミクロソームのG6P取り込み活性が、指定された週齢(W)で示される。マウスは、遺伝子構築物とウイルス投与量に基づいて群分けされた:GPE(n=6)、GPE-low(n=9)、およびmiGT(n=15)マウス。正常な肝臓のG6PT活性の44~62%(G6PT/44-62%、n=6)および3~22%(G6PT/3-22%、n=24)を発現するマウスに関して、2つの主要な亜群が出現した。G6PT/44-62%マウスにはGPEマウスが含まれ、G6PT/3-22%マウス(n=24)にはGPE-lowおよびmiGTマウスが含まれていた。60~78週齢の野生型マウス(n=30)における肝臓のミクロソームのG6P取り込み活性は、平均して123±6単位(pmol/分/mg)であった。(
図2B)肝臓のミクロソームのG6P取り込み活性およびそのベクターゲノムコピー数との関連性。(
図2C)60~78週齢の野生型(+/+、n=30)、G6PT/44-62%(n=6)、およびG6PT/3-22%(n=24)マウスの、肝臓のG6pcのmRNA発現およびミクロソームのG6Pase-α酵素活性。データは、平均±SEMを表す。*p<0.05、**p<0.005。
【0012】
【
図3-1】
図3A~3Eは、60~78週齢の野生型およびrAAV処置したG6pt-/-マウスの表現型分析および空腹時血中グルコース耐性プロファイルを示す図である。データは、野生型(+/+、n=30)、G6PT/44-62%(n=6)、ならびにG6PT/3-22%(GPE-low、n=9およびmiGT、n=15)マウスから分析された。(
図3A)血中グルコース、コレステロール、トリグリセリド、尿酸、および乳酸のレベル。(
図3B)BWおよび体脂肪の値。(
図3C)LW/BWの比。(
図3D)H&E染色肝臓切片および肝臓のグリコーゲン含有量。各プレートは個々のマウスを表し、各処置について2匹のマウスが示されている。GPE-lowおよびmiGTマウスにおける2つの代表的なH&E染色されたHCAが示されている。スケールバー=200μm。矢印はHCAを示す。(
図3E)グルコース耐性試験プロファイル。データは、平均±SEMを表す。*p<0.05、**p<0.005。
【
図3-2】
図3A~3Eは、60~78週齢の野生型およびrAAV処置したG6pt-/-マウスの表現型分析および空腹時血中グルコース耐性プロファイルを示す図である。データは、野生型(+/+、n=30)、G6PT/44-62%(n=6)、ならびにG6PT/3-22%(GPE-low、n=9およびmiGT、n=15)マウスから分析された。(
図3A)血中グルコース、コレステロール、トリグリセリド、尿酸、および乳酸のレベル。(
図3B)BWおよび体脂肪の値。(
図3C)LW/BWの比。(
図3D)H&E染色肝臓切片および肝臓のグリコーゲン含有量。各プレートは個々のマウスを表し、各処置について2匹のマウスが示されている。GPE-lowおよびmiGTマウスにおける2つの代表的なH&E染色されたHCAが示されている。スケールバー=200μm。矢印はHCAを示す。(
図3E)グルコース耐性試験プロファイル。データは、平均±SEMを表す。*p<0.05、**p<0.005。
【0013】
【
図4-1】
図4A~4Fは、60~78週齢の野生型およびrAAV処置したG6pt-/-マウスの表現型、グルコース耐性、インスリン耐性、および抗G6PT抗体分析を示す図である。データは、野生型(+/+、n=30)、G6PT/44-62%(n=6)、ならびにG6PT/3-22%(GPE-low、n=9およびmiGT、n=15)マウスから分析された。(
図4A)空腹時グルコース耐性プロファイルおよび24時間空腹時の血中グルコースレベル。(
図4B)肝臓のグルコースレベル。(
図4C)肝臓の乳酸塩とトリグリセリドの含有量。(
図4D)24時間空腹時の血中インスリンレベル。(
図4E)インスリン耐性試験プロファイル。値は、ゼロ時における各群のそれぞれのレベルのパーセントとして報告される。(
図4F)ヒトG6PTに対する抗体。Ad-human(h)G6PT感染COS-1細胞のミクロソームタンパク質を、単一の12%ポリアクリルアミド-SDSゲルで電気泳動し、PVDFメンブレンに転写した。ゲル上の個々のレーンを表すメンブレンストリップを、適切なマウス血清と共に個別にインキュベートした。マウスG6PTも認識するポリクローナル抗ヒトG6PT抗体を陽性対照として使用した。レーン1、2、13、14:抗hG6PT抗血清、レーン3、5、7、9、11、15、17、19、21:野生型マウスの血清試料(1:50希釈)、またはG6PT/44-62%(レーン4、6、8)、GPE-low(レーン10、12、16)、およびmiGT(レーン18、20、22)マウスの血清試料(1:50希釈)。データは、平均±SEMを表す。*p<0.05、**p<0.005。
【
図4-2】
図4A~4Fは、60~78週齢の野生型およびrAAV処置したG6pt-/-マウスの表現型、グルコース耐性、インスリン耐性、および抗G6PT抗体分析を示す図である。データは、野生型(+/+、n=30)、G6PT/44-62%(n=6)、ならびにG6PT/3-22%(GPE-low、n=9およびmiGT、n=15)マウスから分析された。(
図4A)空腹時グルコース耐性プロファイルおよび24時間空腹時の血中グルコースレベル。(
図4B)肝臓のグルコースレベル。(
図4C)肝臓の乳酸塩とトリグリセリドの含有量。(
図4D)24時間空腹時の血中インスリンレベル。(
図4E)インスリン耐性試験プロファイル。値は、ゼロ時における各群のそれぞれのレベルのパーセントとして報告される。(
図4F)ヒトG6PTに対する抗体。Ad-human(h)G6PT感染COS-1細胞のミクロソームタンパク質を、単一の12%ポリアクリルアミド-SDSゲルで電気泳動し、PVDFメンブレンに転写した。ゲル上の個々のレーンを表すメンブレンストリップを、適切なマウス血清と共に個別にインキュベートした。マウスG6PTも認識するポリクローナル抗ヒトG6PT抗体を陽性対照として使用した。レーン1、2、13、14:抗hG6PT抗血清、レーン3、5、7、9、11、15、17、19、21:野生型マウスの血清試料(1:50希釈)、またはG6PT/44-62%(レーン4、6、8)、GPE-low(レーン10、12、16)、およびmiGT(レーン18、20、22)マウスの血清試料(1:50希釈)。データは、平均±SEMを表す。*p<0.05、**p<0.005。
【0014】
【
図5-1】
図5A~5Eは、60~78週齢の野生型およびrAAV処置したG6pt-/-マウスにおける肝臓の炭水化物応答エレメント結合タンパク質(ChREBP)シグナル伝達の分析を示す図である。定量的RT-PCRおよび肝臓のG6Pレベルについて、データは、60~78週齢の野生型(n=30)、G6PT/44-62%(n=6)、ならびにG6PT/3-22%(GPE-low、n=9およびmiGT、n=15)マウスに対して、平均±SEMを表す。(
図5A)肝臓のG6Pレベル。(
図5B)リアルタイムRT-PCRによるChREBPのmRNAの定量化。(
図5C)肝臓のChREBP核局在化の免疫組織化学分析およびChREBP核移行細胞の定量化。スケールバー=50μm。データは、野生型(+/+、n=7)、G6PT/44-62%(n=4)、およびG6PT/3-22%(n=15)マウスに対して、平均±SEMを表す。(
図5D)リアルタイムRT-PCRによるAcc1、Fasn、およびScd1のmRNAの定量化。(
図5E)野生型(+/+、n=17)、G6PT/44-62%(n=5)、およびG6PT/3-22%(n=12)マウスにおける、ACC1、FASN、およびSCD1、β-アクチンのウエスタンブロット解析、ならびにデンシトメトリーによるタンパク質レベルの定量化。データは、平均±SEMを表す。*p<0.05、**p<0.005。
【
図5-2】
図5A~5Eは、60~78週齢の野生型およびrAAV処置したG6pt-/-マウスにおける肝臓の炭水化物応答エレメント結合タンパク質(ChREBP)シグナル伝達の分析を示す図である。定量的RT-PCRおよび肝臓のG6Pレベルについて、データは、60~78週齢の野生型(n=30)、G6PT/44-62%(n=6)、ならびにG6PT/3-22%(GPE-low、n=9およびmiGT、n=15)マウスに対して、平均±SEMを表す。(
図5A)肝臓のG6Pレベル。(
図5B)リアルタイムRT-PCRによるChREBPのmRNAの定量化。(
図5C)肝臓のChREBP核局在化の免疫組織化学分析およびChREBP核移行細胞の定量化。スケールバー=50μm。データは、野生型(+/+、n=7)、G6PT/44-62%(n=4)、およびG6PT/3-22%(n=15)マウスに対して、平均±SEMを表す。(
図5D)リアルタイムRT-PCRによるAcc1、Fasn、およびScd1のmRNAの定量化。(
図5E)野生型(+/+、n=17)、G6PT/44-62%(n=5)、およびG6PT/3-22%(n=12)マウスにおける、ACC1、FASN、およびSCD1、β-アクチンのウエスタンブロット解析、ならびにデンシトメトリーによるタンパク質レベルの定量化。データは、平均±SEMを表す。*p<0.05、**p<0.005。
【0015】
【
図6】
図6A~6Bは、60~78週齢の野生型およびrAAV処置したG6pt-/-マウスにおける肝臓のAktおよびFGF21の分析を示す図である。定量的RT-PCRについて、データは、60~78週齢の野生型(n=30)、G6PT/44-62%(n=6)、ならびにG6PT/3-22%(GPE-low、n=9およびmiGT、n=15)マウスに対して、平均±SEMを表す。(
図6A)野生型(+/+、n=17)、G6PT/44-62%(n=5)、およびG6PT/3-22%(n=12)マウスにおける、AktのmRNAの定量化、Akt、p-Akt-S473、p-Akt-T308、およびβ-アクチンのウエスタンブロット解析、ならびにデンシトメトリーによるタンパク質レベルの定量化。(
図6B)野生型(+/+、n=17)、G6PT/44-62%(n=5)、およびG6PT/3-22%(n=12)マウスにおける、FGF21のmRNAの定量化、FGF21、β-アクチンのウエスタンブロット解析、およびデンシトメトリーによるタンパク質レベルの定量化。データは、平均±SEMを表す。*p<0.05、**p<0.005。
【0016】
【
図7】
図7A~7Bは、肝臓のサーチュイン1(SIRT1)およびAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)のシグナル伝達の分析を示す図である。(
図7A)60~78週齢の野生型(+/+、n=17)、G6PT/44-62%(n=5)、およびG6PT/3-22%(n=12)マウスにおける、デンシトメトリーによるタンパク質レベルの定量化を伴うSIRT1、p-AMPK-T172、AMPK、およびβ-アクチンのウエスタンブロット解析。(
図7B)野生型(n=17)、G6PT/44-62%(n=5)、およびG6PT/3-22%(n=12)マウスにおける肝臓のNAD+レベル。データは、平均±SEMを表す。*P<0.05、**P<0.005。
【0017】
【
図8】
図8A~8Bは、肝臓のシグナル伝達性転写因子3(STAT3)および核因子カッパB(NFκB)のシグナル伝達の分析を示す図である。(
図8A)60~78週齢の野生型(+/+、n=30)、G6PT/44-62%(n=6)、およびG6PT/3-22%(n=24)マウスにおける、qPCRによる、Stat3およびNfkbのmRNAの定量化。(
図8B)野生型(+/+、n=17)、G6PT/44-62%(n=5)、およびG6PT/3-22%(n=12)マウスにおける、デンシトメトリーによるタンパク質レベルの定量化を伴うSTAT3-Y705、STAT3、Ac-NFκB-p65-K310、およびβ-アクチンのウエスタンブロット解析。データは、平均±SEMを表す。*p<0.05、**p<0.005。
【0018】
【
図9】
図9は、60~78週齢の野生型(+/+、n=17)、G6PT/44-62%(n=5)、およびG6PT/3-22%(n=12)マウスにおける、デンシトメトリーによるタンパク質レベルの定量化を伴うE-カドヘリン、N-カドヘリン、Slug、およびβ-アクチンのウエスタンブロット解析を示す図である。データは、平均±SEMを表す。*p<0.05、**p<0.005。
【0019】
【
図10】
図10A~10Bは、肝臓のβ-クロトー発現の分析を示す図である。(
図10A)60~78週齢の野生型(+/+、n=30)、G6PT/44-62%(n=6)、およびG6PT/3-22%(n=24)マウスにおける、qPCRによるβ-クロトーのmRNAの定量化。(
図10B)60~78週齢の野生型(+/+、n=17)、G6PT/44-62%(n=5)、およびG6PT/3-22%(n=12)マウスにおける、デンシトメトリーによるタンパク質レベルの定量化を伴うβ-クロトーおよびβ-アクチンのウエスタンブロット解析。データは、平均±SEMを表す。*p<0.05、**p<0.005。
【発明を実施するための形態】
【0020】
配列表
添付の配列表に列挙されている核酸配列およびアミノ酸配列は、37 C.F.R. 1.822で定義されているように、ヌクレオチド塩基の標準文字略語、およびアミノ酸の3文字コードを使用して示されている。各核酸配列の1本の鎖のみが示されているが、相補鎖は、表示された鎖への言及によって包含されていると理解されたい。配列表は、1月22日に作成された18.0KBのASCIIテキストファイルとして提出され、参照により本明細書に組み込まれる。添付の配列表:
【0021】
配列番号1は、以下の特徴を有するpTR-GPE-ヒトG6PTのヌクレオチド配列である:
ITR-ヌクレオチド17~163
G6PCプロモーター/エンハンサー(GPE)-ヌクレオチド182~3045
イントロン-ヌクレオチド3185~3321
G6PTコード配列-ヌクレオチド3366~4655
ITR-ヌクレオチド4868~5003。
【0022】
配列番号2は、以下の特徴を有するpTR-miGT-ヒトG6PTのヌクレオチド配列である:
ITR-ヌクレオチド17~163
miGT-ヌクレオチド182~792
イントロン-ヌクレオチド924~1560
G6PTコード配列-ヌクレオチド1105~1938
ITR-ヌクレオチド2171~2316。
【0023】
【0024】
II.用語と方法
別段の記載がない限り、技術用語は、従来の使用法に従って使用される。分子生物学の一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin、Genes V、Oxford University Pressにより出版、1994年(ISBN 0-19-854287-9);Kendrewら(編)、The Encyclopedia of Molecular Biology、Blackwell Science Ltd.により出版、1994年(ISBN 0-632-02182-9);およびRobert A. Meyers(編)、Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference、VCH Publishers, Inc.により出版、1995年(ISBN 1-56081-569-8)において見出すことができる。
本開示の様々な実施形態の検討を容易にするために、以下の特定の用語の説明が提供される:
【0025】
アデノ随伴ウイルス(AAV):エンベロープを持たない複製欠損の小型ウイルスで、ヒトおよび他のいくつかの霊長類に感染する。AAVは、疾患を引き起こすことが知られておらず、非常に軽度の免疫応答を誘発する。AAVを利用する遺伝子治療用ベクターは、分裂細胞と静止細胞の両方に感染することができ、宿主細胞のゲノムに組み込まれることなく染色体外状態で持続し得る。これらの特徴により、AAVは遺伝子治療のための魅力的なウイルスベクターとなる。現在、AAVには11種類の血清型(AAV1~11)が認められている。
【0026】
投与/投与する:任意の有効な経路により、被験体に治療薬(例えば、組換えAAV)などの薬剤を提供する、または与えること。例示的な投与経路には、注射(皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、静脈内、または腎静脈の注射など)、経口、管内、舌下、直腸、経皮、鼻腔内、膣、および吸入の経路が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
エンハンサー:プロモーターの活性を増加させることにより、転写率を増加させる核酸配列。
【0028】
グルコース-6-ホスファターゼ触媒サブユニット(G6PC):グルコース-6-ホスファターゼ-α(G6Pase-α)をコードするヒト第17染色体長椀q21に位置する遺伝子。G6Pase-αは、それを小胞体に固定する9つのヘリックスを有する357アミノ酸の疎水性タンパク質である(Chouら、Nat Rev Endocrinol、6巻:676~688頁、2010年)。G6Pase-αタンパク質は、グルコース新生とグリコーゲン分解の最終段階においてグルコース6-リン酸のグルコースとホスフェートへの加水分解を触媒し、グルコース恒常性の重要な酵素である。G6PC遺伝子の有害な変異は、肝臓と腎臓におけるグリコーゲンと脂肪の蓄積に関連する重度の空腹時低血糖症によって特徴付けられる代謝障害である、糖原病Ia型(GSD-Ia)を引き起こす。
【0029】
グルコース-6-リン酸トランスポーター(G6PT):ヒト第11染色体長椀q23.3に位置する遺伝子。G6PT遺伝子は、グルコース恒常性を維持するために、細胞質からERの内腔へのグルコース-6-リン酸の輸送を調節するタンパク質をコードする。G6PT遺伝子の変異は、糖原病Ib型に関連する。G6PTはまた、溶質輸送体ファミリー37メンバー4(SLC37A4)としても公知である。
【0030】
糖原病(GSD):筋肉、肝臓、および他の組織内のグリコーゲン合成または分解のプロセスの欠陥に起因する疾患群。GSDは遺伝的または後天的のいずれかであり得る。遺伝的GSDは、これらのプロセスに関与するいずれかの先天性代謝異常によって引き起こされる。現在、11の認定された糖原病が存在する(GSD I型、II型、III型、IV型、V型、VI型、VII型、IX型、XI型、XII型、およびXIII型)。GSD-Iは、2つの常染色体劣性障害、GSD-IaおよびGSD-Ibからなる(Chouら、Nat Rev Endocrinol、6巻:676~688頁、2010年)。GSD-Iaは、グルコース-6-ホスファターゼ-αの欠損に起因する。グルコース-6-リン酸トランスポーター(G6PT)の欠損がGSD-Ibの原因である。
【0031】
糖原病Ib型(GSD-Ib):G6Pを細胞質からER内腔に移行させる遍在的に発現する小胞体(ER)タンパク質である、グルコース-6-リン酸トランスポーター(G6PT)の欠損によって引き起こされる常染色体劣性障害。GSD-Ibは、代謝障害と免疫障害の両方である。GSD-Ib代謝異常には、空腹時低血糖症、肝腫大、腎腫大、高脂血症、高尿酸血症、乳酸血症、および成長遅延が含まれる。GSD-Ibの代謝異常を大幅に緩和するGSD-Ibの食事療法は利用可能であるが、患者は肝細胞腺腫/肝細胞癌および腎疾患などのGSD-Ibの長期合併症に苦しみ続ける。GSD-Ibの免疫学的異常には、好中球減少症および骨髄機能障害が含まれる。GSD-Ib患者の好中球は、走化性、カルシウム動員、呼吸バースト、および食作用活性の機能障害を示す。結果として、細菌感染症の再発が一般的に見られ、好中球減少症を示す患者の77%までが、特発性クローン病と見分けがつかない炎症性腸疾患(IBD)も発症する(Visserら、J Pediatr、137巻:187~191頁、2000年;Dieckgraefeら、Eur J Pediatr、161巻:S88~S92頁、2002年)。本明細書で使用するとき、「GSD-Ibを処置すること」は、GSD-IbまたはGSD-Ibに関連する病態の1つまたは複数の徴候または症状を改善する治療的介入を指す。したがって、「GSD-Ibを処置すること」には、低血糖症、肝腫大、腎腫大、高脂血症、高尿酸血症、乳酸血症(lactic academia)、成長遅延、好中球減少症、骨髄機能不全、およびIBDなどが含まれるが、これらに限定されないGSD-Ibに関連する代謝または免疫の機能障害を処置することが含まれ得る。
【0032】
イントロン:タンパク質のコード情報を含有しない遺伝子内のDNAのストレッチ。イントロンはメッセンジャーRNAの翻訳の前に除去される。
【0033】
末端逆位配列(ITR):効率的な複製に必要なアデノ随伴ウイルスのゲノム内の対称的な核酸配列。ITR配列は、AAVのDNAゲノムの両端に位置する。ITRは、ウイルスDNA合成の複製起点として機能し、AAV組込みベクターを生成するための必須のcis成分である。
【0034】
単離された:「単離された」生体成分(核酸分子、タンパク質、ウイルス、または細胞など)は、他の染色体および染色体外DNAおよびRNA、タンパク質、ならびに細胞などの、生物の細胞もしくは組織内の他の生体成分から、またはその成分が天然で生じる生物自体から実質的に分離または精製されている。「単離された」核酸分子およびタンパク質には、標準的な精製方法により精製されたものが含まれる。この用語はまた、宿主細胞における組換え発現により調製された核酸分子およびタンパク質、ならびに化学合成された核酸分子およびタンパク質をも包含する。
【0035】
レンチウイルス:長いインキュベーション期間および非分裂細胞に感染する能力によって特徴付けられるレトロウイルスの属。レンチウイルスは、長期にわたる安定した遺伝子発現を提供する能力、および非分裂細胞に感染する能力のために、魅力的な遺伝子治療用ベクターである。レンチウイルスの例には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、およびウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)が含まれる。
【0036】
作動可能に連結した:第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係を有して配置されるとき、第1の核酸配列は第2の核酸配列と作動可能に連結している。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合、プロモーターは、コード配列に作動可能に連結している。一般に、作動可能に連結したDNA配列は連続しており、2つのタンパク質コード領域を結合する必要がある場合、同一のリーディングフレーム内にある。
【0037】
薬学的に許容される担体:本開示において有用な薬学的に許容される担体(ビヒクル)は従来のものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences、E. W. Martinによる、Mack Publishing Co.、Easton、PA、第15版(1975年)は、1つまたは複数の治療用化合物、分子、または薬剤の薬学的送達に適した組成物および製剤について記載している。
【0038】
一般に、担体の性質は、採用されている特定の投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は通常、ビヒクルとして水、生理食塩水、平衡塩溶液、水性デキストロース、グリセロールなどの薬学的および生理学的に許容される流体を含む注射可能な流体を含む。固体組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル形態)の場合、従来の非毒性固体担体には、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムが含まれ得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤などの少量の非毒性補助物質、例えば酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートを含有することができる。
【0039】
疾患を予防、治療、または改善すること:疾患(GSD-Ibなど)を「予防すること」は、疾患の完全な発症を阻害することを指す。「処置すること」は、疾患または病態が発症し始めた後に、その徴候または症状を改善する治療的介入を指す。「改善すること」は、疾患の徴候または症状の数または重症度の軽減を指す。
【0040】
プロモーター:核酸(例えば、遺伝子)の転写を指示/開始するDNAの領域。プロモーターには、転写開始部位の近くの必要な核酸配列が含まれる。通常、プロモーターは、それらが転写する遺伝子の近くに位置する。プロモーターはまた、転写の開始部位から数千塩基対も離れて位置することができる遠位エンハンサーまたはリプレッサーエレメントを、必要に応じて含む。
【0041】
精製された:「精製された」という用語は絶対的な純度を必要とせず、むしろ、相対的な用語として意図されている。したがって、例えば、精製されたペプチド、タンパク質、ウイルス、または他の活性化合物は、天然で結合したタンパク質および他の汚染物質から全体または一部が単離されたものである。ある特定の実施形態では、「実質的に精製された」という用語は、細胞、細胞培地、または他の粗調製物から単離され、初期調製物の様々な成分、例えば、タンパク質、細胞残屑、および他の成分を除去するために、分画に供されたペプチド、タンパク質、ウイルス、または他の活性化合物を指す。
【0042】
組換え:組換え核酸分子は、天然に存在しない配列を有するか、組み換えなかったなら分離されていた2つの配列のセグメントの人工的な組合せにより作製された配列を有するものである。この人工的な組合せは、化学合成によって、または単離した核酸分子のセグメントの人工的な操作によって、例えば、遺伝子操作技術によって達成できる。
【0043】
同様に、組換えウイルスは、天然に存在しない配列、または異なる起源の少なくとも2つの配列の人工的な組合せによって作製された配列(ゲノム配列など)を含むウイルスである。「組換え」という用語には、天然の核酸分子、タンパク質、またはウイルスの一部の付加、置換、または欠失によってのみ改変された核酸、タンパク質、およびウイルスも含まれる。本明細書で使用するとき、「組換えAAV」は、組換え核酸分子(G6PTをコードする組換え核酸分子など)がパッケージされているAAV粒子を指す。
【0044】
配列同一性:2つもしくはそれよりも多い核酸配列間、または2つもしくはそれよりも多いアミノ酸配列間の同一性または類似性は、配列間の同一性または類似性の点で表される。配列同一性は、同一性の百分率で測定することができ、百分率が高いほど、配列がより同一となる。配列類似性は、類似性の百分率で測定することができ(保存的なアミノ酸置換を考慮する)、百分率が高いほど、配列がより類似となる。核酸またはアミノ酸配列の相同体またはオルソログは、標準的な方法を使用して整列させたとき、比較的高い程度の配列同一性/配列類似性を有する。
【0045】
比較のための配列の整列方法は、当該技術分野で周知である。様々なプログラムおよび整列のアルゴリズムは以下に記載される:SmithおよびWaterman、Adv. Appl. Math.、2巻:482頁、1981年;NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol.、48巻:443頁、1970年;PearsonおよびLipman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、85巻:2444頁、1988年;HigginsおよびSharp、Gene、73巻:237~44頁、1988年;HigginsおよびSharp、CABIOS、5巻:151~3頁、1989年;Corpetら、Nuc. Acids Res.、16巻:10881~90頁、1988年;Huangら、Computer Appls. in the Biosciences、8巻、155~65頁、1992年;ならびにPearsonら、Meth. Mol. Bio.、24巻:307~31頁、1994年。Altschulら、J. Mol. Biol.、215巻:403~10頁、1990年は、配列整列方法と相同性計算の詳細な検討事項を提示する。
【0046】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschulら、J. Mol. Biol.、215巻:403~10頁、1990年)は、シーケンス分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn、およびtblastxと関連して使用するために、National Center for Biological Information(NCBI)を含むいくつかの供給源またはインターネット上で利用可能である。さらなる情報は、NCBIのウェブサイトで見つけることができる。
【0047】
血清型:特徴的な抗原のセットによって区別される、密接に関連する微生物(ウイルスなど)の群。
【0048】
被験体:生きている多細胞脊椎生物、ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含むカテゴリー。
【0049】
合成:実験室で人工的な手段によって産生されること、例えば、合成核酸は、実験室で化学的に合成することができる。
【0050】
治療有効量:薬剤で処置されている被験体または細胞において所望の効果を達成するのに十分な特定の医薬品または治療薬(例えば、組換えAAV)の量。薬剤の有効量は、処置されている被験体または細胞、および治療用組成物の投与方法を含むがこれらに限定されないいくつかの要因に依存するだろう。
【0051】
ベクター:ベクターは、ベクターが宿主細胞内で複製および/または組み込まれる能力を乱すことなく、外来核酸の挿入を可能にする核酸分子である。ベクターは、複製起点などの宿主細胞内での複製を可能にする核酸配列を含むことができる。ベクターはまた、1つまたは複数の選択可能なマーカー遺伝子および他の遺伝子エレメントを含んでもよい。発現ベクターは、挿入された遺伝子または複数の遺伝子の転写と翻訳を可能にするために必要な制御配列を含有するベクターである。本明細書の一部の実施形態では、ベクターはレンチウイルスベクターまたはAAVベクターである。
【0052】
別途説明されない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語は全て、本開示の所属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。「a」、「an」、および「the」という単数形の用語には、文脈が他を明確に示さない限り、複数の指示対象が含まれる。「AまたはBを含むこと」とは、AもしくはB、またはAおよびBを含むことを意味する。さらに、核酸またはポリペプチドに与えられた全ての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、および全ての分子量または分子質量値が近似であり、説明のために提供されていることを理解されたい。本明細書において記載されているものと類似または同等の方法および材料を本開示の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。矛盾する場合、用語の説明を含む本明細書が優位となるであろう。さらに、材料、方法、および例は、例示にすぎず、限定を意図しない。
【0053】
III.導入
GSD-Ib(G6pt-/-)マウスは、ヒトGSD-Ibに特徴的な代謝機能障害と骨髄機能障害の両方を示す(Chenら、Hum Mol Genet、12巻:2547~2558頁、2003年)。処置せずに放置すると、G6pt-/-マウスは離乳を生き延びることもめったになく、ヒト患者に見られる年少の致死性を反映する。これまで研究では、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモーター/CMVエンハンサーによって指示されてヒトG6PTを発現する偽型AAV2/8ベクターの全身投与が、G6PT導入遺伝子を主に肝臓に送達することが示されている。そうすることで、マウスのGSD-Ibの代謝異常を正常化する。しかしながら、51~72週間生存した5匹の処置したG6pt-/-マウスのうち、2匹(40%)が多発性HCAを発症し、1匹は悪性転換を経た(Yiuら、J Hepatol、51巻:909~917頁、2009年)。
【0054】
研究は、導入遺伝子プロモーターの選択が、ターゲティング効率、組織特異的発現、および免疫応答または治療法に対する耐性のレベルに影響を与え得ることを示している(Zieglerら、Mol Ther、15巻:492~500頁、2007年;Francoら、Mol Ther、12巻:876~884頁、2005年)。実際に、G6Pase-α酵素活性の欠損により引き起こされる関連疾患GSD-Iaでは、天然の2.8kbヒトG6PCプロモーター/エンハンサー(GPE)によって指示されるG6Pase-α発現rAAVベクターでは、HCAの証拠はなく、マウスGSD-Iaの代謝異常の持続的な修正をもたらす(Leeら、Hepatology、56巻:1719~1729頁、2012年;Kimら、Hum Mol Genet、24巻:5115~5125頁、2015年)。さらに、糖新生組織特異的GPEは、CBAプロモーター/CMVエンハンサーで観察された体液性応答を誘発しない(Yiuら、Mol Ther、18巻:1076~1084頁、2010年)。
【0055】
本明細書に開示されるベクターは、G6PTコード配列の+1ヌクレオチドの上流のヌクレオチド-610~-1からなる、GPEまたはミニマルG6PTプロモーター/エンハンサー(miGT)のいずれかを使用する(HiraiwaおよびChou、DNA Cell Biol、20巻:447~453頁、2001年)。本明細書に記載する研究では、それぞれヒトG6PCおよびG6PTプロモーター/エンハンサーによって指示されるrAAV8ベクターである、rAAV-GPE-G6PTおよびrAAV-miGT-G6PTを使用して、G6pt-/-マウスにおける肝臓指向性遺伝子治療の安全性と有効性を調べた。腫瘍形成を防ぐために必要な肝臓のG6PT活性の閾値もまた調べた。60~78週間の研究では、両方のベクターがG6PT導入遺伝子を肝臓に送達し、マウスGSD-Ibの代謝異常を修正したが、rAAV-GPE-G6PTベクターがより高い有効性を有したことが示された。回復したG6PT活性のレベルを制御する用量滴定を使用して、正常な肝臓のG6PT活性の3~62%を発現するrAAV処置したG6pt-/-マウスは、グルコース恒常性を維持し、長い絶食に耐え、抗G6PT抗体を誘発しなかったことが示された。しかしながら、正常な肝臓のG6PT活性の6%未満が回復したG6pt-/-マウスは、肝腫瘍を発症するリスクがあった。本明細書では、野生型の活性の62%までの肝臓のG6PT発現の回復が、野生型マウスで見られる加齢に伴う肥満症およびインスリン抵抗性の発症からの保護をもたらしたことも示されている。
【0056】
IV.いくつかの実施形態の概要
本明細書では、糖原病、特にGSD-Ibの処置のための遺伝子治療適用に使用することができる、組換え核酸分子、AAVおよびレンチウイルスベクターなどの組換えベクター、ならびに組換えAAVおよび組換えレンチウイルスなどの組換えウイルスが記載されている。
【0057】
本明細書では、ヒトグルコース-6-ホスファターゼ(G6PC)プロモーター/エンハンサー(GPE)配列に作動可能に連結した、ヒトグルコース-6-リン酸トランスポーター(G6PT)コード配列を含む組換え核酸分子が提供される。一部の実施形態では、ヒトG6PTコード配列は、配列番号1のヌクレオチド3366~4655に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。一部の例では、ヒトG6PTコード配列は、配列番号1のヌクレオチド3366~4655を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、GPE配列は、配列番号1のヌクレオチド182~3045に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。一部の例では、GPE配列は、配列番号1のヌクレオチド182~3045を含むかまたはそれからなる。特定の例では、組換え核酸分子は、配列番号1のヌクレオチド182~4655、または配列番号1のヌクレオチド17~5003に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。具体的な例では、組換え核酸分子は、配列番号1のヌクレオチド182~4655、または配列番号1のヌクレオチド17~5003を含むかまたはそれからなる。他の特定の例では、組換え核酸分子は、配列番号1に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。具体的な非限定的な例では、組換え核酸分子は、配列番号1を含むかまたはそれからなる。
【0058】
本明細書ではまた、ミニマルG6PTプロモーター/エンハンサー(miGT)配列に作動可能に連結した、ヒトG6PTコード配列を含む組換え核酸分子が提供される。一部の実施形態では、ヒトG6PTコード配列は、配列番号2のヌクレオチド1105~1938に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。一部の例では、ヒトG6PTコード配列は、配列番号2のヌクレオチド1105~1938を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、miGT配列は、配列番号2のヌクレオチド182~792に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。一部の例では、miGT配列は、配列番号2のヌクレオチド182~792を含むかまたはそれからなる。特定の例では、組換え核酸分子は、配列番号2のヌクレオチド182~1938、または配列番号2のヌクレオチド17~2316に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。具体的な例では、組換え核酸分子は、配列番号2のヌクレオチド182~1938、または配列番号2のヌクレオチド17~2316を含むかまたはそれからなる。他の特定の例では、組換え核酸分子は、配列番号2に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一である。具体的な非限定的な例では、組換え核酸分子は、配列番号2を含むかまたはそれからなる。
【0059】
本明細書では、本明細書に開示される組換え核酸分子を含むベクターがさらに提供される。一部の実施形態では、ベクターはAAVベクターである。AAV血清型は、被験体への導入遺伝子の送達に適した任意の血清型であり得る。一部の例では、AAVベクターは血清型8のAAV(AAV8)である。他の例では、AAVベクターは、血清型1、2、3、4、5、6、7、9、10、11、または12のベクター(すなわち、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9、AAV10、AAV11、またはAAV12)である。さらに他の例では、AAVベクターは、2つまたはそれよりも多いAAV血清型のハイブリッドである(例えば、AAV2/1、AAV2/7、AAV2/8、またはAAV2/9であるがこれらに限定されない)。AAV血清型の選択は、遺伝子治療の標的となる細胞型(複数可)に部分的に依存する。GSD-Ibの処置では、肝臓と腎臓が主要な標的臓器である。他の実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクターである。一部の例では、レンチウイルスベクターは、HIV、SIV、FIV、BIV、CAEV、またはEIAVベクターである。
【0060】
本明細書では、本明細書に開示される組換え核酸分子またはベクターを含む単離された宿主細胞も提供される。例えば、単離された宿主細胞は、組換えAAV(rAAV)または組換えレンチウイルスの産生に適した細胞(または細胞株)であり得る。一部の例では、宿主細胞は、HEK-293、HEK293T、BHK、Vero、RD、HT-1080、A549、COS-1、Cos-7、ARPE-19、またはMRC-5細胞などの哺乳動物細胞である。
【0061】
本明細書に開示される組換え核酸分子を含むrAAVがさらに提供される。一部の実施形態では、rAAVは、rAAV8および/またはrAAV2である。しかしながら、AAV血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV9、AAV10、AAV11、もしくはAAV12などの任意の他の適切なAAV血清型、または2つもしくはそれよりも多いAAV血清型のハイブリッド(例えば、AAV2/1、AAV2/7、AAV2/8、もしくはAAV2/9であるが、これらに限定されない)であってよい。本明細書に開示されるrAAVおよび薬学的に許容される担体を含む組成物も本開示により提供される。一部の実施形態では、組成物は、静脈内または筋肉内投与のために製剤化される。rAAVの投与に適した医薬製剤は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0219528号に見出すことができる。
【0062】
本明細書に開示される組換え核酸分子を含む組換えレンチウイルスも提供される。一部の実施形態では、レンチウイルスは、HIV、SIV、FIV、BIV、CAEV、またはEIAVである。特定の例では、レンチウイルスはHIV-1である。本明細書に開示される組換えレンチウイルスおよび薬学的に許容される担体を含む組成物も本開示により提供される。一部の実施形態では、組成物は、静脈内または筋肉内投与のために製剤化される。他の実施形態では、組換えレンチウイルスは、骨髄細胞へのex vivo投与などのex vivo投与のために製剤化される。
【0063】
糖原病と診断された被験体を処置する方法であって、GSD-Ibを有する被験体を選択することと、治療有効量の、本明細書に開示されるrAAVもしくは組換えレンチウイルス(または、rAAVもしくは組換えレンチウイルスを含む組成物)を被験体に投与することとを含む方法がさらに提供される。一部の実施形態では、rAAVまたは組換えレンチウイルスは静脈内投与される。他の実施形態では、組換えウイルスは逆行性腎静脈注入により投与される(例えば、Roccaら、Gene Ther、21巻:618~628頁、2014年を参照されたい)。
【0064】
一部の実施形態では、処置される被験体は、GSD-Ibに関連する1つまたは複数の代謝異常を示す。一部の例では、被験体は、空腹時低血糖症、肝腫大、腎腫大、高脂血症、高尿酸血症、乳酸血症、および/または成長遅延に罹患している。一部の実施形態では、処置される被験体は、GSD-Ibに関連する1つまたは複数の免疫異常を示す。一部の例では、被験体は好中球減少症、骨髄機能障害、再発性細菌感染症および/または炎症性腸疾患(IBD)を示す。
【0065】
一部の実施形態では、rAAVは、約1×1011~約1×1014ウイルス粒子(vp)/kgの用量で投与される。一部の例では、rAAVは、約1×1012~約1×1014vp/kgの用量で投与される。他の例では、rAAVは、約5×1012~約5×1013vp/kgの用量で投与される。具体的な非限定的な例では、rAAVは、少なくとも約1×1011vp/kg、少なくとも約5×1011vp/kg、少なくとも約1×1012vp/kg、少なくとも約5×1012vp/kg、少なくとも約1×1013vp/kg、少なくとも約5×1013vp/kg、または少なくとも約1×1014vp/kgの用量で投与される。他の非限定的な例では、rAAVは約5×1011vp/kg以下、約1×1012vp/kg以下、約5×1012vp/kg以下、約1×1013vp/kg以下、約5×1013vp/kg以下、または約1×1014vp/kg以下の用量で投与される。具体的な非限定的な例では、rAAVは、約0.7×1013vp/kg、2×1013vp/kg、1.4×1013vp/kg、または4×1013vp/kgの用量で投与される。rAAVは、所望の治療結果に必要な場合、単回用量または複数回用量(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10回用量)で投与することができる。
【0066】
本明細書では、GSD-Ibと診断された被験体の骨髄機能不全などの免疫異常を処置する方法も提供される。一部の実施形態では、方法は、被験体から骨髄細胞を採取することと、ex vivoで骨髄細胞に本明細書に開示される組換えウイルスを形質導入することと、形質導入された骨髄細胞を被験体に注入することとを含む。一部の例では、組換えウイルスは組換えレンチウイルスである。
【0067】
V.遺伝子治療適用のための組換えAAV
AAVは、Parvoviridae科およびDependovirus属に属している。AAVは、直線状の一本鎖DNAゲノムをパッケージ化した、エンベロープを持たない小型ウイルスである。AAVのDNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の両方が、同じ頻度でAAVカプシドにパッケージされている。
【0068】
AAVゲノムは、2つのオープンリーディングフレーム(ORF)に隣接する2つの末端逆位配列(ITR)によって特徴付けられる。例えば、AAV2ゲノムでは、ITRの最初の125ヌクレオチドはパリンドロームであり、パリンドロームはそれ自体に折り畳まれて塩基対形成を最大化し、T字型のヘアピン構造を形成する。D配列と呼ばれるITRの他の20塩基は、対を形成しないままである。ITRは、AAVのDNA複製に重要なcis作用性配列であり、ITRは複製起点であり、DNAポリメラーゼによる第2の鎖の合成のプライマーとして機能する。この合成中に形成される二本鎖DNAは、複製型モノマーと呼ばれ、2回目の自己プライミング複製に使用され、複製型ダイマーを形成する。これらの二本鎖中間体は、鎖置換機序を介してプロセシングされ、パッケージングに使用される一本鎖DNAと転写に使用される二本鎖DNAをもたらす。ITR内には、Rep結合エレメントと末端解離部位(terminal resolution site、TRS)がある。これらの特徴は、二本鎖中間体をプロセシングするために、AAV複製中にウイルス調節タンパク質Repによって使用される。AAV複製における役割に加えて、ITRはAAVゲノムパッケージング、転写、非許容条件下での負の調節、および部位特異的組込みにも不可欠である(DayaおよびBerns、Clin Microbiol Rev、21巻(4号):583~593頁、2008年)。
【0069】
AAVの左ORFには、Rep78、Rep68、Rep52、およびRep40の4つのタンパク質をコードするRep遺伝子が含有される。右ORFには、3つのウイルスカプシドタンパク質(VP1、VP2、およびVP3)を生じるCap遺伝子が含有される。AAVカプシドには、正二十面体対称に配置された60個のウイルスカプシドタンパク質が含有される。VP1、VP2およびVP3は、1:1:10のモル比で存在する(DayaおよびBerns、Clin Microbiol Rev、21巻(4号):583~593頁、2008年)。
【0070】
AAVは現在、遺伝子治療で最も頻繁に使用されるウイルスの1つである。AAVはヒトや他のいくつかの霊長類種に感染するが、疾患を引き起こすことは知られておらず、非常に軽度の免疫応答を誘発する。AAVを利用する遺伝子治療用ベクターは、分裂細胞と静止細胞の両方に感染することができ、宿主細胞のゲノムに組み込まれることなく染色体外状態で持続し得る。AAVの有利な特徴のために、本開示は、本明細書に開示される組換え核酸分子および方法のためのAAVの使用を企図する。
【0071】
AAVは、標的細胞に結合して進入する能力、核に入る能力、長期間核内で発現する能力、および低毒性を含む、遺伝子治療用ベクターのためにいくつかの望ましい特徴を有する。しかしながら、AAVゲノムのサイズが小さいため、組み込むことができる異種DNAのサイズが制限される。この問題を最小限に抑えるために、Repおよび組込み効率エレメント(integration efficiency element、IEE)をコードしないAAVベクターが構築されている。ITRはパッケージングに必要なcisシグナルであるため、保持される(DayaおよびBerns、Clin Microbiol Rev、21巻(4号):583~593頁、2008年)。
【0072】
遺伝子治療に適したrAAVを産生するための方法は当該技術分野において周知であり(例えば、米国特許出願第2012/0100606号;同第2012/0135515号;同第2011/0229971号;および同第2013/0072548号;ならびにGhoshら、Gene Ther、13巻(4号):321~329頁、2006年を参照されたい)、本明細書に開示される組換え核酸分子および方法と共に利用することができる。
【0073】
一部の実施形態では、rAAVは、凍結乾燥調製物として提供され、即時または将来の使用のために、ビリオン安定化組成物に希釈されている(例えば、参照により本明細書に組み込まれるUS2012/0219528を参照されたい)。代替的に、rAAVは、産生直後に提供される。
【0074】
一部の実施形態では、rAAV組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含有する。そのような賦形剤には、それ自体が組成物を投与された個体に有害な抗体の産生を誘発せず、過度の毒性なしに投与され得る任意の薬学的作用物質が含まれる。薬学的に許容される賦形剤には、水、食塩水、グリセロール、およびエタノールなどの液体が含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩、および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩もそれに含まれ得る。さらに、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質が、そのようなビヒクルに存在してもよい。
【0075】
一般に、賦形剤は、製剤化手順、パッケージング、保管および輸送などから、rAAVの損失を最小限に抑えるために、rAAVビリオンに保護効果をもたらす。分解条件からrAAV粒子を保護するために使用される賦形剤には、界面活性剤、タンパク質、例えばオボアルブミンおよびウシ血清アルブミン、アミノ酸、例えばグリシン、多価および二価アルコール、例えば、様々な分子量のポリエチレングリコール(PEG)、例えば、PEG-200、PEG-400、PEG-600、PEG-1000、PEG-1450、PEG-3350、PEG-6000、PEG-8000、およびそれらの値の間の任意の分子量のもの、プロピレングリコール(PG)、糖アルコール、例えば炭水化物、例えばソルビトールが含まれるがこれらに限定されない。界面活性剤は、存在するとき、陰イオン性、陽イオン性、双性イオン性、または非イオン性界面活性剤であり得る。一部の実施形態では、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。一部の例では、非イオン性界面活性剤は、ソルビタンエステル、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(TWEEN-20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(TWEEN-40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(TWEEN-60)、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート(TWEEN-65)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(TWEEN-80)、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート(TWEEN-85)である。具体的な例では、界面活性剤は、TWEEN-20および/またはTWEEN-80である。
【0076】
VI.遺伝子治療適用のためのレンチウイルスベクター
レンチウイルスは、長いインキュベーション期間および非分裂細胞に感染する能力によって特徴付けられるレトロウイルスの属である。レンチウイルスは複雑なレトロウイルスであり、一般的なレトロウイルス遺伝子gag、pol、およびenvに加えて、調節機能または構造機能を持つ他の遺伝子を含有する。複雑さが増しているため、潜伏感染の過程におけるように、ウイルスはそのライフサイクルを調整することができる。レンチウイルスの例には、HIV、SIV、FIV、SIV、BIV、CAEV、およびEIAVが含まれる。
【0077】
レンチウイルスベクターは、HIV病原性遺伝子を多重に減衰させることによって生成され、例えば、遺伝子env、vif、vpr、vpu、およびnefを欠失させて、レンチウイルスベクターを、ヒト用の遺伝子治療用ベクターとして安全なものとした。レンチウイルスベクターは、遺伝子治療にいくつかの利点を提供する。それらは、標的細胞の染色体に安定して組み込まれ(これは長期発現に必要である)、ウイルス遺伝子を移入せず、そのため、細胞傷害性Tリンパ球によって破壊される可能性がある形質導入細胞の生成の問題を回避する。さらに、レンチウイルスベクターは比較的大きなクローニング能力を持ち、ほとんどの想定される臨床応用に十分である。さらに、レンチウイルスは(他のレトロウイルスとは対照的に)非分裂細胞に形質導入することができる。これは、いくつかの組織タイプ、特に造血細胞、脳、肝臓、肺、および筋肉の遺伝子治療の文脈において非常に重要である。例えば、HIV-1由来のベクターは、ニューロン、肝細胞、および筋細胞などの細胞への導入遺伝子の効率的なin vivoおよびex vivoの送達、組込み、および安定した発現を可能にする(Blomerら、J Virol、71巻:6641~6649頁、1997年;Kafriら、Nat Genet、17巻:314~317頁、1997年;Naldiniら、Science、272巻:263~267頁、1996年;Naldiniら、Curr Opin Biotechnol、9巻:457~463頁、1998年)。
【0078】
レンチウイルスゲノムおよびプロウイルスDNAは、レトロウイルスに見出される3つの遺伝子:gag、polおよびenvを有し、これらは2つの長い末端反復(LTR)配列に隣接している。gag遺伝子は内部構造(マトリックス、カプシド、およびヌクレオカプシド)タンパク質をコードし、pol遺伝子はRNA指向性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)、プロテアーゼおよびインテグラーゼをコードし、env遺伝子はウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする。5’および3’LTRはビリオンRNAの転写およびポリアデニル化を促進するのに役立つ。LTRはウイルス複製に必要な全ての他のcis作用配列を含有する。レンチウイルスは、vif、vpr、tat、rev、vpu、nef、およびvpxを含む追加の遺伝子も有する。
5’LTRには、ゲノムの逆転写(tRNAプライマー結合部位)およびウイルスRNAの粒子への効率的カプシド形成(Psi部位)に必要な配列が隣接している。カプシド形成(またはレトロウイルスRNAの感染性ビリオンへのパッケージング)に必要な配列がウイルスゲノムから欠けている場合、cis欠陥はゲノムRNAのカプシド形成を妨げる。しかしながら、得られた変異体は依然として全てのビリオンタンパク質の合成を指示することができる。
多数の種々のレンチウイルスベクター、パッケージング細胞株、およびレンチウイルス遺伝子治療用ベクターを生成する方法は、当技術分野で公知である(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、EscorsおよびBreckpot、Arch Immunol Ther Exp、58巻(2号):107~119頁、2010年;Naldiniら、Science、272巻:263~267頁、1996年;Naldiniら、Proc Natl Acad Sci USA、93巻:11382~11388頁、1996年;Naldiniら、Curr Opin Biotechnol、9巻:457~463頁、1998年;Zuffereyら、Nat Biotechnol、15巻:871~875頁、1997年;Dullら、J Virol、72巻:8463~8471頁、1998年;Ramezaniら、Mol Ther、2巻:458~469頁、2000年;ならびに米国特許第5,994,136号、同第6,013,516号、同第6,165,782号、同第6,207,455号、同第6,218,181号、同第6,218,186号、同第6,277,633号、同第7,901,671号、同第8,551,773号、同第8,709,799号、および同第8,748,169号を参照されたい)。したがって、当業者は、本明細書に開示される組換え核酸分子に適したレンチウイルスベクターを選択することができる。
【0079】
本明細書では、本明細書に開示される核酸分子またはベクターを含む単離された細胞も提供される。例えば、単離された細胞は、パッケージング細胞株などのレンチウイルス遺伝子治療ベクターの産生に適した細胞(または細胞株)であり得る。例示的な細胞株には、HeLa細胞、293細胞、およびPERC.6細胞が含まれる。
【0080】
一部の実施形態では、組換えレンチウイルス組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含有する。そのような賦形剤には、それ自体が組成物を投与された個体に有害な抗体の産生を誘発せず、過度の毒性なしに投与され得る任意の薬学的作用物質が含まれる。薬学的に許容される賦形剤には、水、食塩水、グリセロール、およびエタノールなどの液体が含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩、および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩もそれに含まれ得る。さらに、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質が、そのようなビヒクルに存在してもよい。
【0081】
一般に、賦形剤は、製剤化手順、パッケージング、保管および輸送などから、組換えウイルスの損失を最小限に抑えるために、ビリオンに保護効果をもたらす。分解条件からウイルス粒子を保護するために使用される賦形剤には、界面活性剤、タンパク質、例えばオボアルブミンおよびウシ血清アルブミン、アミノ酸、例えばグリシン、多価および二価アルコール、例えば、様々な分子量のポリエチレングリコール(PEG)、例えば、PEG-200、PEG-400、PEG-600、PEG-1000、PEG-1450、PEG-3350、PEG-6000、PEG-8000、およびそれらの値の間の任意の分子量のもの、プロピレングリコール(PG)、糖アルコール、例えば炭水化物、例えばソルビトールが含まれるがこれらに限定されない。界面活性剤は、存在するとき、陰イオン性、陽イオン性、双性イオン性、または非イオン性界面活性剤であり得る。一部の実施形態では、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。一部の例では、非イオン性界面活性剤は、ソルビタンエステル、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(TWEEN-20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(TWEEN-40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(TWEEN-60)、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート(TWEEN-65)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(TWEEN-80)、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート(TWEEN-85)である。具体的な例では、界面活性剤は、TWEEN-20および/またはTWEEN-80である。
【0082】
以下の実施例は、ある特定の特徴および/または実施形態を説明するために提供される。これらの実施例は、開示を、記載された特定の特徴または実施形態に限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例0083】
(実施例1:材料および方法)
この実施例は、実施例2に記載される研究のための材料および実験手順を記載する。
【0084】
rAAVベクターの構築およびG6pt-/-マウスの注入
2.8kbのヒトG6PCプロモーター/エンハンサーの制御下のヒトG6PTを含有するpTR-GPE-G6PTプラスミドは、pTR-GPE-G6PC(Yiuら、Mol Ther、18巻:1076~1084頁、2010年)中の5’のSbfIと3’のNotI部位でのヒトG6PCを、5’のNsiIと3’のNotI部位でのヒトG6PTのcDNAで置き換えることによって構築した。ヒトG6PTミニマルプロモーター/エンハンサーの制御下のヒトG6PTを含有するpTR-miGT-G6PTプラスミドは、pTR-GPE-G6PT中の5’のKpnIと3’のHindIII部位でのGPEを、5’のKpnIと3’のHindIII部位でのmiGTで置き換えることによって構築した。両方のプラスミドはDNAシーケンシングによって検証した。rAAV-GPE-G6PTおよびrAAV-miGT-G6PTベクターは、それぞれ、pTR-GPE-G6PCおよびpTR-miGT-G6PTから作製した。遺伝子治療では、各ベクターをG6pt-/-マウスに2回用量で、新生仔では側頭静脈から、4週齢では後眼窩洞(retro-orbital sinus)から投与した。区別できない表現型を持つ年齢を合わせたG6pt+/+/G6pt+/-マウスを対照として使用した(まとめて野生型または対照マウスと呼ぶ)。
【0085】
ミクロソームのG6P取り込みおよびホスホヒドロラーゼアッセイ
ミクロソーム調製物、G6P取り込み、およびホスホヒドロラーゼ測定は、これまでに記載された(Chenら、Hum Mol Genet、12巻:2547~2558頁、2003年;Leiら、Nat Genet、13巻:203~209頁、1996年)ように実施した。G6P取り込みアッセイでは、肝臓から分離されたミクロソームを、50mMのカコジル酸ナトリウム緩衝液、pH6.5、250mMのスクロース、および0.2mMの[U-14C]G6P(50μCi/μmol、American Radiolabeled Chemicals、St Louis、MO)を含有する反応混合物(100μl)中、30℃で3分間インキュベートした。ニトロセルロース膜(Millipore、Billerica、MA)を通して濾過することにより、反応を停止した。G6Pの取り込みを無効にするために0.2%デオキシコレートで透過処理したミクロソームを、陰性対照として使用した。G6PT活性の1単位は、ミクロソームタンパク質1mgあたり1分あたり1pmolのG6Pの取り込みを表す。
【0086】
ホスホヒドロラーゼアッセイでは、50mMのカコジル酸ナトリウム緩衝液、pH6.5、2mMのEDTA、10mMのG6P、および適切な量のミクロソーム調製物を含有する反応混合物(50μl)を30℃で10分間インキュベートした。破壊されたミクロソーム膜は、4℃で20分間、0.2%デオキシコレート中で無傷の膜をインキュベートすることにより調製した。非特異的ホスファターゼ活性は、破壊されたミクロソーム調製物をpH5において37℃で10分間プレインキュベートして、酸に不安定なG6Pase-αを不活性化することにより推定した。
【0087】
骨髄好中球のフローサイトメトリーおよび機能分析
ヘパリン化マウス末梢血細胞は、赤血球を枯渇させ、Lysis/Fix緩衝液(BD Biosciences、San Jose、CA)で固定した。得られた白血球をFITCコンジュゲートマウスモノクローナルGr-1抗体(eBiosciences、San Diego、CA)およびPEコンジュゲートCD11b抗体(eBiosciences)で染色し、Guava EasyCyte Mini System(Millipore)を使用してフローサイトメトリーにより分析した。
【0088】
6週齢の野生型およびrAAV処置したG6pt-/-マウスの大腿骨および脛骨から骨髄細胞を単離し、Gr-1マイクロビーズキット(Miltenyi Biotec、San Diego、CA)と共にMACS分離カラムシステム(Miltenyi Biotec)を使用して骨髄細胞から好中球を精製した。骨髄好中球の呼吸バーストは、これまでに記載された(Junら、Blood、116巻:2783~2792頁、2010年)ように、LUMIMAX(商標)スーパーオキシドアニオン検出キット(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)およびVictor Light 1420発光カウンター(PerkinElmer Life&Analytical Sciences、American Fork、UT)を使用して、ルミナル(luminal)増幅化学発光によってモニターした。LUMIMAX(商標)SOAアッセイ媒体中の好中球を、200ng/mlのホルボールミリステートアセテート(PMA)(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)で活性化した。10-6Mのf-Met-Leu-Phe(fMLP)(Sigma-Aldrich)に応答した骨髄好中球のカルシウムフラックスは、これまでに記載された(Junら、Blood、116巻:2783~2792頁、2010年)ように、FLIPERカルシウム3アッセイキットコンポーネントA(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を使用して測定し、37℃に設定されたFlexstation II蛍光計(Molecular Devices)で分析した。
【0089】
表現型分析
Bruker minispec NMRアナライザー(Karlsruhe、Germany)を使用して、体組成を評価した。マウスのHCA結節の存在は、肝臓ごとに5つまたはそれよりも多い、別々の切片を使用して、肝生検試料の組織学的分析によって確認した。グルコース、コレステロール、トリグリセリド、乳酸塩、および尿酸塩の血中レベルと、グルコース、トリグリセリド、乳酸塩、およびG6Pの肝臓のレベルを、これまでに記載された(Leeら、Hepatology、56巻:1719~1729頁、2012年;Kimら、Hum Mol Genet、24巻:5115~5125頁、2015年)ように、決定した。
【0090】
マウスのグルコース耐性試験は、採血前の6時間の絶食、それに続く2mg/g体重のグルコース溶液の腹腔内注射、および2時間の尾静脈からの繰り返し採血からなった(Leeら、Hepatology、56巻:1719~1729頁、2012年)。マウスのインスリン耐性試験は、採血前の4時間の絶食、それに続く0.25IU/kgのインスリンの腹腔内注射、および1時間の尾静脈からの繰り返し採血からなった(Kimら、Hum Mol Genet、24巻:5115~5125頁、2015年)。
【0091】
定量的リアルタイムRT-PCRおよびウエスタンブロット解析
mRNA発現は、Applied Biosystems TaqManプローブ(Foster City、CA)を使用したApplied Biosystems 7300リアルタイムPCRシステムでのリアルタイムRT-PCRにより定量化した。データはRpl19のRNAに対して正規化した。ウエスタンブロット画像は、LI-COR OdysseyスキャナーとImage studio 3.1ソフトウェア(Li-Cor Biosciences、Lincoln、NE)を使用して検出した。使用されたマウスモノクローナル抗体は、β-アクチン(Santa Cruz Biotechnology、Dallas、TX)であった。使用されたウサギモノクローナル抗体は、p-Akt-S473およびp-Akt-T308(Cell Signaling、Danvers、MA);ならびにFGF21(Abcam、Cambridge、MA)であった。使用されたウサギポリクローナル抗体は、ChREBP(Novus biologicals、Littleton、CO);Akt、ACC、およびSCD-1(Cell Signaling);ならびにFASN(Abcam)であった。ImageJ 1.51aソフトウェア(NIH、Bethesda、MD)を使用したデンシトメトリーによりタンパク質発現を定量化した。
【0092】
ChREBP核局在化の分析
マウスの肝臓切片でのChREBP核局在化は、これまでに記載された(Kimら、Hum Mol Genet、24巻:5115~5125頁、2015年)ように、実施した。マウス肝臓パラフィン切片(厚さ10μm)をメタノール中の0.3%過酸化水素で処理して内因性ペルオキシダーゼをクエンチし、次いでアビジン/ビオチンブロッキングキット(Vector Laboratories、Burlingame、CA)でブロッキングした。ChREBP検出のために、肝臓切片を、逐次的に、ChREBPに対するウサギ抗体とビオチン化抗ウサギIgG(Vector Laboratories)とでインキュベートした。得られた複合体は、DAB基質(Vector Laboratories)を使用したABCキットで検出した。切片をヘマトキシリン(Sigma-Aldrich)で対比染色し、40倍/0.50NA対物レンズ(Carl Zeiss MicroImaging、Jena、Germany)を備えたZeiss Axioskop2 plus顕微鏡を使用して視覚化した。Nikon DS-FilデジタルカメラとNIS-Elements F3.0イメージングソフトウェア(株式会社ニコン、東京、日本)を使用して画像を取得した。ChREBP陽性核を含有する、10のランダムに選択された視野における細胞の百分率を記録した。
【0093】
統計学的分析
対応のないt検定は、GraphPad Prism Programバージョン4(GraphPad Software、San Diego、CA)を使用して実行した。値は、p<0.05で統計学的に有意とみなした。
【0094】
(実施例2:糖原病1b型に対する肝臓指向性遺伝子治療)
この実施例では、G6PCまたはG6PTプロモーター/エンハンサーのいずれかによって指示される組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを使用して、G6pt-/-マウスにおけるG6PT遺伝子治療の有効性を調べる研究について記載する。両方のベクターがマウスGSD-Ibの肝臓のG6PT欠損を修正したが、G6PCプロモーター/エンハンサーがより有効であった。rAAV構築物の用量滴定を使用した78週間にわたる研究で、正常な肝臓のG6PT活性の3~62%を発現するG6pt-/-マウスは、正常化された肝臓表現型を示した。正常な肝臓のG6PT活性の6%未満を発現する12匹のマウスのうち2匹がHCAを発症した。全ての処置したマウスは、野生型マウスよりも痩せており、インスリンに対してより感受性であった。正常な肝臓のG6PT活性の3~22%を発現するマウスは、44~62%を発現するマウスよりも高いインスリン感受性を示した。インスリン感受性のレベルは、肝臓の炭水化物応答エレメント結合タンパク質シグナル伝達活性化の大きさと相関していた。これらの研究は、腫瘍形成を防ぐために必要な肝臓のG6PT活性の閾値を確立し、正常な肝臓のG6PT活性の3~62%を発現するマウスがグルコース恒常性を維持し、加齢に伴う肥満症とインスリン抵抗性から保護されることを示した。
【0095】
rAAV注入はG6PT導入遺伝子を肝臓に送達する
GSD-Ibマウスは頻繁に低血糖発作に苦しみ、低血糖症を制御するためのグルコース療法にもかかわらず、離乳後に生存するマウスは10%未満である(Chenら、Hum Mol Genet、12巻:2547~2558頁、2003年)。遺伝子治療の場合、各ベクターをG6pt-/-マウスに新生仔に1回と4週齢に1回との2回用量で投与し、早期治療を提供することと、肝臓質量の発達的増加を可能にすることの両方を行った。最初に、2つのG6PT発現ベクター:2.8kbのG6PCプロモーター/エンハンサー(Yiuら、Mol Ther、18巻:1076~1084頁、2010年;Leeら、Mol Genet Metab、110巻:275~280頁、2013年)によって指示される一本鎖ベクターである、rAAV-GPE-G6PTと、類似の1.62kbのG6PTプロモーター/エンハンサーによって指示される一本鎖G6PT発現ベクターである、rAAV-GT-G6PTを調べた。rAAV-GPE-G6PTで観察された有効性とは対照的に(後述)、rAAV-GT-G6PT注入はG6pt-/-マウスの生存を維持できず、注入された40匹のG6pt-/-マウスのうち4匹のみが12週齢まで生存した。さらなるプロモーター解析に続いて、代替のG6PTプロモーター、610bpのG6PTプロモーター/エンハンサーによって指示されるrAAV-miGT-G6PTが含まれる別のG6PT発現ベクターを構築し、AAVウイルスの適切なパッケージングを確保するための二本鎖ベクターが得られた。このベクター構築物は、律速である、形質導入中の一本鎖ベクターゲノムから二本鎖ベクターゲノムへの変換を迂回することから生じる(Fisherら、J Virol、70巻:520~532頁、1996年)、増大した形質導入効率からも恩恵を受けることも予想されていた(McCarty、Mol Ther、16巻、1648~1656頁、2008年)。予備実験は、rAAV-GPE-G6PTベクターもまた、rAAV-miGT-G6PTベクターよりも有効であることを示した。したがって、この研究では、G6pt-/-マウスに投与される2つのベクターの投与量を調整して、肝臓のG6PT活性の同等な回復レベルを得た。
【0096】
GSD-Ibマウスは若くして死亡するため、早期の治療的介入が必要である。しかしながら、形質導入された新生仔の肝臓の急速な成長中に起きるベクターの希釈のため、マウスを有効に処置するために2回の連続用量が必要であった。rAAV-GPE-G6PTについて、最初の(新生仔)用量は0.7×10
13ウイルス粒子(vp)/kgであり、続けて4週齢で2×10
13vp/kgの2回目の用量であった。これらのマウスは、「GPE」マウスと呼ばれた。rAAV-miGT-G6PTについて、両方の用量は、GPEマウスのものよりも2倍高かった。これらのマウスは、「miGT」マウスと呼ばれた。両方のベクターは、G6PT導入遺伝子をG6pt-/-マウスの肝臓に送達し、それらの生存を著しく改善した。6週齢マウスから単離された肝臓のミクロソーム(治療法あたりn=12)は、野生型の肝臓のG6P取り込み活性(152±5単位)のそれぞれ60%(GPE)および30%(miGT)のG6P取り込み活性を有し(
図1A)、rAAV-GPE-G6PTベクターが、用量(vp/kg)に基づいてrAAV-miGT-G6PTベクターよりもおよそ4倍多い活性を発現することを示していた。注目すべきことに、GPEとmiGTの両方のマウスは、24時間の絶食に耐えることができた(
図1B)。GPEの24時間絶食した血中グルコースレベルは、野生型マウスのものと比べて一貫して低かったが、統計学的に差異はなかった。同様に、miGTマウスの24時間絶食した血中グルコースレベルもまた低かったが、なおも正常の範囲内であった(
図1B)。GPEとmiGTマウスの両方は、野生型の対照の同腹仔よりも有意に痩せていた(
図1C)。GPEマウスの肝臓重量(LW)は野生型マウスのものと同様であったが、miGTマウスの肝臓重量は有意に高かった(
図1C)。rAAV処置したマウスは痩せていたため、両方のマウス群における、LWの体重に対する比(LW:BW)は野生型の同腹仔のものよりも高かった(
図1C)。GSD-Ibはまた、好中球減少症および好中球機能障害によっても特徴付けられる(Chouら、Curr Mol Med、2巻:121~143頁、2002年;Chouら、Nat Rev Endocrinol、6巻:676~688頁、2010年)。rAAV-CBA/CMV-G6PT注入が、G6pt-/-マウスの好中球減少症を2週間にわたり一時的に補正することが、これまでに示されていた(Yiuら、J Hepatol、51巻:909~917頁、2009年)。この研究では、6週齢のGPEおよびmiGTマウスは、好中球減少症(
図1D)および好中球機能障害(
図1E)を示し続けた。この知見は、AAV2/8血清型の異なる細胞指向性を反映している可能性が最も高い。
【0097】
rAAV注入は長期の肝臓のG6PT発現を指示する
G6pt-/-マウスのグルコース恒常性を維持し、HCAの発症を防ぐために必要なrAAVベクターの投与量を78週間にわたる研究で調べた。rAAV-GPE-G6PTの研究の場合、全ての新生仔マウス(n=15)は0.7×10
13vp/kgを投与され、続けて4週齢で2×10
13vp/kg(GPEマウス、n=6)または0.7×10
13vp/kg(GPE-lowマウス、n=9)を投与された。rAAV-miGT-G6PTの研究の場合、全ての新生仔マウス(n=15)は、1.4×10
13vp/kgを新生仔で投与され、次いで4週齢で4×10
13vp/kgを投与され、これらは、「miGT」マウスと呼ばれた。肝臓のG6PT活性は、24時間の絶食後に屠殺された野生型およびrAAV処置したマウスで調べた。60~78週齢の野生型マウスの場合、平均的な肝臓のミクロソームのG6P取り込み活性は、123±6単位(またはpmol/分/mg)(100%正常の肝臓のG6PT活性に相当)であった。GPEマウスは、野生型の肝臓のG6PT活性の44~62%を再構成するために滴定され、G6PT/44-62%マウスと命名された(
図2A)。GPE-lowおよびmiGTマウスは、野生型の肝臓のG6PT活性の3~22%を有し、G6PT/3-22%マウスと命名された(
図2A)。60~78週齢の野生型またはG6PT/44-62%マウスのいずれにもHCAは存在しなかった(
図2A)。24匹のG6PT/3-22%マウスのうち、12匹が7単位以下のミクロソームのG6P取り込み活性(または正常な肝臓のG6PT活性の5.7%以下)を有した。非腫瘍肝組織でそれぞれ正常な肝臓のG6P取り込み活性の5.7%および3.2%を有する1匹のGPE-lowおよび1匹のmiGTマウスがHCAを発症した(
図2A)。これは、正常な肝臓のG6PT活性の5.7%がGSD-IbのHCA形成の閾値にあることを示唆する。肝臓のG6P取り込み活性の増加は、肝臓のベクターゲノムコピー数の増加と相関するように思われた(
図2B)。要約すると、正常な肝臓のG6PT活性の6%未満が回復したrAAV処置したG6pt-/-マウスは、HCAを発症するリスクがある。
【0098】
絶食中、肝臓でのグルコース新生とグリコーゲン分解の最終段階で、G6PT/G6Pase-α複合体によるG6Pのグルコースへの加水分解により、血中グルコース恒常性が維持される(Chouら、Curr Mol Med、2巻:121~143頁、2002年;Chouら、Nat Rev Endocrinol、6巻:676~688頁、2010年)。肝臓のG6pcのmRNAのレベルは、野生型マウスと比較して、全てのrAAV処置したG6pt-/-マウスで増加したことが示された(
図2C)。並行して、全てのrAAV処置したマウスにおける肝臓のG6Pase-α酵素活性のレベルは、野生型対照のものよりも1.4倍から2.7倍増加した(
図2C)。G6PTを介した肝臓のミクロソームのG6P取り込み活性は、内因性グルコース産生の律速段階である(Arionら、J Biol Chem、251巻:6784~690頁、1976年)が、G6Pase-α活性に共依存している(Leiら、Nat Genet、13巻:203~209頁、1996年)。これまでに、本発明者らは、G6Pase-αを欠損しているが野生型G6PTを発現するGSD-Iaマウスから調製された肝臓のミクロソームが、野生型の肝臓のミクロソームと比較して著しく低いG6P取り込み活性を示すことを示していた(Leiら、Nat Genet、13巻:203~209頁、1996年)。G6Pase-α活性が遺伝子導入により回復させた場合、その表現型を逆転させることができる(Zingoneら、J Biol Chem、275巻:828~832頁、2000年)。rAAV処置したG6pt-/-マウスでは、肝臓のG6Pase-α活性の増加は肝臓のミクロソームのG6P取り込み活性と逆相関した(
図2Aと2Cを比較されたい)。
【0099】
rAAV注入はGSD-Ibの代謝異常を修正する
GSD-Ibは、低血糖症、高脂血症、高尿酸血症、および乳酸血症によって特徴付けられる(Chouら、Curr Mol Med、2巻:121~143頁、2002年;Chouら、Nat Rev Endocrinol、6巻:676~688頁、2010年)。60~78週齢のrAAV処置したG6pt-/-マウスはいずれも低血糖発作に苦しんでいなかった。G6PT/44-62%および野生型マウスの基礎血中グルコースレベルは区別できなかった(
図3A)。正常血糖を維持するG6PT/3-22%マウスの能力にもかかわらず、それらの基礎血中グルコースレベルは野生型マウスよりも有意に低かった(
図3A)。遺伝子治療により、全ての処置したマウスの血清コレステロール、トリグリセリド、尿酸、および乳酸プロファイルが正常化された(
図3A)。処置したG6pt-/-マウスの平均BWおよび体脂肪(
図3B)値は、年齢を合わせた対照マウスのものよりも有意に低く、処置したマウスが加齢に伴う肥満症から保護されたことを示唆した。GSD-Ibはまた、肝腫大によっても特徴付けられる(Chouら、Curr Mol Med、2巻:121~143頁、2002年;Chouら、Nat Rev Endocrinol、6巻:676~688頁、2010年)。肝臓の体重に対する比は、G6PT/44-62%と野生型マウスの間で同様であったが、G6PT/3-22%マウスは肝腫大を示し続けた(
図3C)。
【0100】
肝腫大およびHCAの例は別として、肝組織の組織学は、2匹のHCA担持マウスの非腫瘍領域でさえ顕著ではなかった(
図3D)。正常な肝臓のG6PT活性の5.7%を発現するGPE-lowマウスで直径1cmの1つのHCA結節が同定され、正常な肝臓のG6PT活性の3.2%を発現するmiGTマウスで直径1、0.7、0.3、および0.3cmの4つのHCA結節が同定された。HCAは、HCAと非HCA組織の両方におけるグリコーゲン貯蔵の増加により十分に限定されていた(
図3D)。G6PT/44-62%および野生型マウスの肝臓のグリコーゲン含有量は統計学的に同様であったが、G6PT/3-22%マウスはグリコーゲン貯蔵の著しい増加を示した(
図3D)。全ての処置したマウスの血中グルコース耐性プロファイルは、野生型の同腹仔のものと区別がつかなかった(
図3E)。
【0101】
G6PT/44-62%および野生型マウスの空腹時血中グルコースプロファイルは区別できなかった(
図4A)。GPE-lowおよびmiGTマウスの空腹時血中グルコースプロファイルは、対照マウスのものに匹敵していたが、血中グルコースレベルは一貫して低かった(
図4A)。要約すると、正常な肝臓のG6PT活性の3%を超えて発現するG6pt-/-マウスは、GSD-Ibに特徴的な空腹時低血糖症にもはや罹患していなかった。
【0102】
rAAV処置したG6pt-/-マウスの生化学的表現型
機能的なG6PTを欠損するG6pt-/-マウスは、G6PT/G6Pase-α複合体を介して内因性グルコースを産生することができない。rAAV処置したG6pt-/-マウスは全て、長期の絶食に耐えることができた。実際、24時間の絶食後、G6PT/44-62%およびG6PT/3-22%マウスの肝臓の遊離グルコースレベルは、それぞれ野生型の肝臓のグルコースレベル(204±6nmole/mg)の76%および58%であった(
図4B)。さらに、肝臓の乳酸塩レベルは、全てのrAAV処置したマウスで有意に増加したが、G6PT/3-22%マウスではより顕著であった。肝臓のトリグリセリド含有量はG6PT/44-62%と野生型マウスの間で同様であったが、G6PT/3-22%マウスの肝臓のトリグリセリドレベルは対照と比較して有意に増加した(
図4C)。
【0103】
60~78週齢の野生型マウスの空腹時血中インスリンレベルは1.15±0.07ng/mlであった(
図4D)。血中インスリンレベルは、全てのrAAV処置したG6pt-/-マウスで有意に低く(
図4D)、これは、老齢の野生型マウスのレベルよりも10~20週齢の若い成体マウスのレベルに近かった(FlattおよびBailey、Horm Metab Res、13巻、556~560頁、1981年)。rAAV処置したG6pt-/-マウスは、インスリン感受性の増加を示し、0.25IU/kgの低減させたインスリン用量を選択して、血中インスリン耐性プロファイルをモニターした。腹腔内インスリン注射後、老齢の野生型の血中グルコースレベルは低下せず(
図4E)、インスリン感受性の加齢に伴う低下を反映している(Barzilaiら、Diabetes、61巻、1315~1322頁、2012年)。全ての処置したマウスは、野生型マウスと比較してインスリン感受性の増加を示したが、インスリン感受性の増加はG6PT/3-22%マウスでより顕著であった(
図4E)。
【0104】
注入マウスでヒトG6PTに対する体液性応答が発生するかどうかを決定するために、60~78週齢の野生型およびrAAV処置したG6pt-/-マウスから採取した血清(1:50希釈)を使用してウエスタンブロット解析を実施した。マウスG6PTをも認識するポリクローナル抗ヒトG6PT抗体(Chenら、Hum Mol Genet、11巻:3199~3207頁、2002年)を陽性対照として使用した(レーン1、2、13、14)。対照およびrAAV処置したG6pt-/-マウスの血清では、G6PTに対する抗体は検出されなかった(
図4F)。
【0105】
肝臓のChREBPシグナル伝達の活性化
研究は、肝臓の炭水化物応答エレメント結合タンパク質(ChREBP)を過剰発現するマウスは、対照と比較して改善されたグルコース耐性を示すことを示した(Benhamedら、J Clin Invest、122巻、2176~2194頁、2012年)。ChREBPシグナル伝達の活性化は、rAAV処置したGSD-Iaマウスを加齢に伴うインスリン抵抗性の発症から保護する1つの経路であることが示された(Kimら、Hum Mol Genet、24巻:5115~5125頁、2015年)。ChREBPシグナル伝達は、ChREBP核移行を促進するG6Pによって活性化され得る(Filhoulaudら、Trends Endocrinol Metab、24巻、257~268頁、2013年)。このrAAV処置したG6pt-/-マウスの研究では、G6PT/44-62%およびG6PT/3-22%マウスの肝臓のG6Pレベルは、それぞれ対照マウスより1.9倍および3.1倍高かった(
図5A)。これには、全てのrAAV処置したG6pt-/-マウスにおける肝臓のChrebp転写物の増加が伴った(
図5B)。野生型マウスと比較して、肝臓の核ChREBPタンパク質含有量はG6PT/3-22%マウスで著しく増加したが、肝臓の核ChREBPタンパク質含有量の増加はG6PT/44-62%マウスでは統計学的に有意ではなかった(
図5C)。一貫して、ChREBPによって調節される肝臓の遺伝子(Benhamedら、J Clin Invest、122巻、2176~2194頁、2012年;Filhoulaudら、Trends Endocrinol Metab、24巻、257~268頁、2013年)、アセチル-CoAカルボキシラーゼアイソフォーム-1(ACC1)、脂肪酸シンターゼ(FASN)、およびステアロイル-CoAデサチュラーゼ1(SCD1)のmRNAおよびタンパク質のレベルは、G6PT/3-22%マウスでは著しく増加したが、G6PT/44-62%マウスでは中程度および一貫性のない増加しかなかった(
図5Dおよび5E)。
【0106】
研究は、SCD1の増加を伴う肝臓のChREBPを過剰発現するマウスがプロテインキナーゼB/Aktのリン酸化および活性化と相関するインスリンシグナル伝達の改善を示すことを示した(Benhamedら、J Clin Invest、122巻、2176~2194頁、2012年)。肝臓のAktのmRNAおよび総Aktタンパク質は、野生型およびrAAV処置したG6pt-/-マウスの間で同様であった(
図6A)。ChREBPタンパク質の核移行の肝臓レベルの増加と並行して、Aktの活性なリン酸化型(DanielpourおよびSong、Cytokine Growth Factor Rev、17巻、59~74頁、2006年)、p-Akt-S473ならびにp-Akt-T308の肝臓レベルが、野生型とG6PT/44-62%マウスとで統計学的に同様であった。しかしながら、G6PT/3-22%マウスの場合、Aktタンパク質レベルは野生型のままである一方、p-Akt-S473およびp-Akt-T308は2.1倍および1.5倍高かった(
図6A)。
【0107】
FGF21はエネルギー恒常性とインスリン感受性の主要な調節因子であり(FisherおよびMaratos-Flier、Annu Rev Physiol、78巻、223~241頁、2016年)、ChREBPの標的である(Iizukaら、FEBS Lett、583巻、2882~2886頁、2009年)。FGF21の投与により、げっ歯類と非ヒト霊長類の両方で、肝臓脂肪症を逆転し、肥満症に対抗し、インスリン抵抗性が緩和される(FisherおよびMaratos-Flier、Annu Rev Physiol、78巻、223~241頁、2016年)。再び、ChREBPタンパク質の核移行の肝臓レベルの増加と一致して、FGF21転写物およびタンパク質の肝臓レベルは、対照と比較してG6PT/3-22%マウスでのみ顕著に高かった(
図6B)。
【0108】
治療適用
これまでの遺伝子治療研究は、CBAプロモーター/CMVエンハンサーによって指示されるG6PT発現rAAV2/8ベクターが導入遺伝子を肝臓に送達し、マウスGSD-Ibの代謝補正を達成したことを示した(Yiuら、J Hepatol、51巻:909~917頁、2009年)。その研究は有望であったが、52~72週齢のG6pt-/-マウスで回復した肝臓のG6PT活性は低く、正常な肝臓のG6PT活性の平均およそ3%であり、5匹の形質導入マウスのうち2匹が多発性HCAを発症し、1匹が悪性転換となった(Yiuら、J Hepatol、51巻:909~917頁、2009年)。肝臓疾患のこれまでの研究はまた、組織特異的プロモーター/エンハンサーエレメントの使用が発現効率を改善し、長期導入遺伝子発現を低下させる免疫応答のレベルを低下させることを示した(Zieglerら、Mol Ther、15巻:492~500頁、2007年;Francoら、Mol Ther、12巻:876~884頁、2005年)。糖新生組織特異的G6PCプロモーター/エンハンサーは、マウスGSD-Iaでの持続的な肝臓のG6Pase-α発現の指示においてCBA/CMAよりも顕著に有効であること、およびCBA/CMAエレメントを含有するベクターによって誘発される炎症性免疫応答が肝臓の導入遺伝子発現を低下させたことが示されている(Yiuら、Mol Ther、18巻:1076~1084頁、2010年)。本明細書に開示される研究では、G6PCプロモーター/エンハンサー(GPE)(Leeら、Hepatology、56巻:1719~1729頁、2012年;Kimら、Hum Mol Genet、24巻:5115~5125頁、2015年;Yiuら、Mol Ther、18巻:1076~1084頁、2010年)によって指示される一本鎖rAAVベクターである、rAAV-GPE-G6PTと、天然のG6PTプロモーター/エンハンサー(miGT)(HiraiwaおよびChou、DNA Cell Biol、20巻:447~453頁、2001年)によって指示される二本鎖rAAVベクターである、rAAV-miGT-G6PTとの有効性を比較した。両方のベクターが持続的な肝臓のG6PT発現を指示したが、G6PCプロモーター/エンハンサーを使用するベクターは、天然のG6PTプロモーター/エンハンサーを使用するベクターよりも、用量に基づくと、導入遺伝子発現がおよそ4倍効率的であった。正常な肝臓のG6PT活性の3~62%を発現するrAAV処置したG6pt-/-マウスは、78週間まで正常に成長し、正常化された代謝表現型を示し、検出可能な抗G6PT抗体を有さず、加齢に伴う肥満症とインスリン抵抗性から保護されたこともまた示された。重要なことに、本明細書に開示される研究は、正常な肝臓のG6PT活性の6%未満が回復したG6pt-/-マウスが肝腫瘍を発症するリスクがあることを示し、腫瘍形成を防ぐために必要な肝臓のG6PT活性の閾値が確立された。
【0109】
短い絶食に耐えることができないGSD-Ib患者(Chouら、Curr Mol Med、2巻:121~143頁、2002年;Chouら、Nat Rev Endocrinol、6巻:676~688頁、2010年)およびマウス(Chenら、Hum Mol Genet、12巻:2547~2558頁、2003年)と対照的に、正常な肝臓のG6PT活性の3~62%を発現するマウスは24時間の絶食を維持することができた。細胞質G6Pの加水分解は、G6PT/G6Pase-α複合体におけるG6PTとG6Pase-αの機能的共依存に依存する(Chouら、Curr Mol Med、2巻:121~143頁、2002年)。G6Pase-αを欠損するマウスGSD-Iaの遺伝子治療研究では、正常な肝臓のG6Pase-α活性の3~63%が再構成されるとき、肝臓のG6PTのmRNAのレベルが野生型の2.2倍に上昇することが示された(Leeら、Hepatology、56巻:1719~1729頁、2012年)。G6PT/G6Pase-α複合体におけるG6PTとG6Pase-αの機能的共依存性と合致して、本研究は、G6PT活性が正常の肝臓の活性の44~62%および3~22%までそれぞれ再構成されるとき、G6Pase-αの発現が、1.4~2.8倍増加したことを実証した。処置したGSD-Ibマウスは、対照の同腹仔の平均58~76%の肝臓の内因性グルコースを産生し、長期の絶食中にグルコース恒常性を維持することができた。したがって、G6Pase-αとG6PTの発現レベルが調節され、その結果、一方の減少が他方の増加によって相殺される機能的フィードバック機序が存在するように思われる。これは、I型GSDで発生するG6PT/G6Pase-α複合体の全体的な減少を部分的に補完する。これは、食間血中グルコースの恒常性を維持するG6PT/G6Pase-α複合体の2つの成分の機能的共依存性の性質の理解を広げる。
【0110】
GSD-Ibの異常な代謝の肝臓表現型は、空腹時低血糖症、肝腫大、高脂血症、高尿酸血症、および乳酸血症によって特徴付けられる(Chouら、Curr Mol Med、2巻:121~143頁、2002年;Chouら、Nat Rev Endocrinol、6巻:676~688頁、2010年)。G6PT/3-22%マウスは、正常化された代謝の肝臓表現型を示したが、肝腫大を示し続けた。そのマウスでは、基礎および24時間空腹時の血中グルコースレベルの低下と共に、肝臓のグリコーゲンおよびトリグリセリドの含有量もまた増加した。一方、G6PT/44-62%マウスは、正常なレベルの血中グルコースおよび代謝物、正常なレベルの肝臓グリコーゲンおよびトリグリセリド、正常なLW/BW、ならびに正常なグルコース耐性および空腹時グルコース耐性プロファイルを含む、野生型マウスのものと区別できない代謝の肝臓表現型を示した。しかしながら、脂肪を獲得し、加齢と共にインスリン感受性を失う野生型マウスとは異なり、全ての処置したマウスは加齢に伴う肥満症およびインスリン抵抗性から保護されたが、3~22%の再構成された肝臓のG6PT活性を持つGSD-Ibマウスは、44~62%の再構成された肝臓のG6PT活性を持つマウスよりもインスリン感受性が高かった。
【0111】
研究により、肝臓のChREBPを過剰発現するマウスは、Aktの活性化と、飽和脂肪酸を有益な一不飽和脂肪酸に変換するSCD1の発現の増加により、グルコースおよび脂質代謝が改善することを示すことが示されている(Benhamedら、J Clin Invest、122巻、2176~2194頁、2012年;FlowersおよびNtambi、Curr Opin Lipidol、19巻:248~256頁、2008年)。さらに、インスリン感受性を改善し、肝臓脂肪症を改善し、エネルギー消費を増大させるFGF21(FisherおよびMaratos-Flier、Annu Rev Physiol、78巻、223~241頁、2016年)は、ChREBPの標的である(Iizukaら、FEBS Lett、583巻、2882~2886頁、2009年)。本明細書に開示される研究は、60~78週齢のG6PT/3-22%マウスで肝臓のChREBPシグナル伝達が、FGF21、SCD1、活性なp-Akt-S473およびp-Akt-T308のレベルの増加と共に、ChREBPタンパク質の核移行の増加によって明らかであるように、活性化されていることを実証し、G6PT/3-22%マウスの改善された代謝表現型の根底にある1つの機序を提示する。GSD-Ibは常染色体劣性障害である。したがって、G6PT/44-62%マウスが野生型マウスのものと区別できない代謝の肝臓表現型を示したことは驚くことではない。実際、G6PT/44-62%および野生型マウスでのChREBPシグナル伝達は、同様であるように見えた。これを支持して、核移行ChREBPタンパク質、活性化形態のAkt、ならびにSCD1およびFGF21のレベルを含むChREBPシグナル伝達経路の成分は、G6PT/44-62%と野生型マウスの間で統計学的に同様であった。これは、より低いレベルの正常な肝臓G6PT活性を発現するG6PT/3-22%マウスと比較して、これらのマウスのインスリン感受性の低下を説明している可能性がある。G6PT/3-22%マウスがG6PT/44-62%マウスよりも改善された代謝表現型を示したという事実は、肝臓のG6PT活性の準最適レベルが有益である可能性があることを示唆する。これは、GSD-Iaマウスで見られる同様の観察を反映する(Antinozziら、Annu Rev Nutr、19巻、:511~544頁、1999年;Cloreら、Diabetes、49巻:969~974頁、2000年)。これは、GSD-Iaマウスで見られた同様の観察を反映しており(Kimら、Hum Mol Genet、24巻:5115~5125頁、2015年)、肝臓のG6Pase-α/G6PT活性の増加と糖尿病の関係(Antinozziら、Annu Rev Nutr、19巻:511~544頁、1999年;Cloreら、Diabetes、49巻:969~974頁、2000年)を考えると、おそらく驚くことではない。
【0112】
要約すると、本明細書に開示される研究は、正常な肝臓のG6PT活性の少なくとも3%を発現するよう滴定されたG6PT遺伝子治療を受けたG6pt-/-マウスがグルコース恒常性を維持し、加齢に伴うインスリン抵抗性と肥満症から保護されることを実証した。さらに、処置したマウスの有益な代謝表現型の原因である根底にある1つの機序が、肝臓のChREBPシグナル伝達経路の活性化から生じることが示される。さらに、正常な肝臓のG6PT活性の6%未満を保有する肝細胞は、悪性転換のリスクがある。これらの研究は、GSD-Ibの代謝性疾患の肝臓指向性遺伝子治療において顕著な治療上の利益をもたらすために、正常なG6PT活性の完全な回復は必要とされないことを示している。
【0113】
(実施例3:G6PTトランスジェニックマウスのシグナル伝達経路の分析)
rAAV8を介したG6PT導入遺伝子の発現は、主に肝臓を標的とし、腎臓と腸では導入遺伝子の発現はほとんど観察されなかった。その結果、処置したマウスの腎臓および腸はG6pt-nullのままであり、内因性グルコース産生ができないままであった。腎臓および腸からの内因性グルコース産生がない場合、G6PT/3-22%マウスは、対照の同腹仔のものの平均58%の低下した肝臓のグルコースレベルを産生し(
図4B)、G6PT/3-22%マウスは、カロリー制限下で生存する動物を模倣することを示唆する。
【0114】
AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)およびSIRT1(サーチュイン1)は、エネルギー代謝の調節に関与するカロリー制限の2つの調節因子である(Rudermanら、Am J Physiol Endocrinol Metab、298巻:E751~760頁、2010年)。AMPKは、がんを促進する転写因子であるシグナル伝達性転写因子3(STAT3)のインターロイキン6を介したリン酸化および活性化を阻害する(HeおよびKarin、Cell Res、21巻:159~168頁、2011年)。SIRT1は、転写レベルで、または細胞NAD+レベルの増加に応答して活性化し得るNAD+依存性デアセチラーゼである(Mouchiroudら、Crit Rev Biochem Mol Biol、48巻:397~408頁、2013年)。SIRT1は、核因子κB(NFκB)のp65サブユニットの残基K310を脱アセチル化し、炎症を調節し、炎症関連がんを促進する転写因子であるNFκBの活性を抑制する(HeおよびKarin、Cell Res、21巻:159~168頁、2011年)。STAT3とNFκBによるシグナル伝達は高度に相互接続されている(Yuら、Nat Rev Cancer、9巻:798~809頁、2009年)。それらは一緒になって、腫瘍の増殖、生存、および浸潤に関与する多くの遺伝子を調節する。したがって、G6PT/44-62%およびG6PT/3-22%マウスでのAMPK、SIRT1、STAT3、およびNFκBによるシグナル伝達を調べた。
【0115】
野生型マウスと比較して、総AMPKおよび活性なp-AMPK-T172の肝臓レベルはG6PT/3-22%マウスで顕著に増加したが、G6PT/44-62%マウスではそうではなく(
図7A)、AMPKシグナル伝達の活性化は、主にG6PT/3-22%マウスで起こることを示唆した。SIRT1タンパク質レベルは野生型とrAAV処置したマウスの間で同様であったが(
図7A)、肝臓のNAD
+濃度はG6PT/3-22%マウスで顕著に増加し、G6PT/44-62%マウスでは程度が低かった(
図7B)。この結果は、肝臓のSIRT1活性が主にG6PT/3-22%マウスで活性化されることを示唆する。まとめると、AMPK/SIRT1シグナル伝達が活性化されたG6PT/3-22%マウスは、野生型とG6PT/44-62%マウスの両方と比較して、健康な加齢表現型を示した。
【0116】
次いで、STAT3およびNFκBの発現を調べた。両方とも、AMPK-SIRT1シグナル伝達経路によって調節される。STAT3およびNFκB-p65の転写物とSTAT3タンパク質の肝臓レベルは、rAAV処置したG6pt-/-と野生型マウスの間で統計学的に差異がなかった(
図8A~8B)。活性なp-STAT3-Y705および活性なac-NFκB-p65-K310の肝臓レベルはG6PT/44-62%と野生型マウスの間で同様であったが、p-STAT3-Y705およびac-NFκB-p65-K310の肝臓レベルは、G6PT/44-62%と野生型マウスの両方と比較して、G6PT/3-22%マウスで有意に低下していた(
図8B)。これは、G6PT/3-22%マウスが、炎症性および腫瘍形成応答が低下した肝臓環境も示したことを示唆している。
【0117】
SIRT1は腫瘍転移の負の調節因子でもあり、腫瘍抑制因子であるE-カドヘリンの発現を増加させ、N-カドヘリンを含む間葉系マーカーの発現を減少させる(Chenら、Mol Cancer、13巻:254頁、2014年)。E-カドヘリンは、上皮間葉転換(EMT)を調節する細胞間接着分子であり、E-カドヘリン発現の減少は転移の開始をもたらす(Canelら、J Cell Sci、126巻(2部):393~401頁、2013年)。野生型マウスと比較して、E-カドヘリンの肝臓タンパク質レベルは、主にG6PT/3-22%マウスで著しく増加した(
図9)。G6PT/3-22%の肝臓は、N-カドヘリンとEMT誘導転写因子Slugのタンパク質レベルの減少を示した(
図9)。同様に、G6PT/3-22%マウスは、腫瘍形成応答が低下した肝臓環境を示した。
【0118】
G6PT/3-22%マウスの改善された代謝表現型は、さらなるカロリー制限応答遺伝子が誘導されている可能性があることを示唆する。カロリー制限応答遺伝子であるFGF21は、G6PT/3-22%マウスで増加していることが示された(
図6B)。別のカロリー制限応答遺伝子である腫瘍抑制因子β-クロトーのmRNAとタンパク質の肝臓レベル(Yeら、PLoS One、8巻:e55615頁、2013年)は、対照と比較して、G6PT/3-22%マウスにおいて顕著に増加した(
図10A~10B)。
【0119】
要約すると、G6PT/3-22%マウスの改善された代謝表現型の原因である根底になる機序は、肝臓のAMPK/SIRT1およびFGF21/β-クロトーのシグナル伝達経路の活性化、ならびに肝臓のSTAT3/NFκBを介した炎症性および腫瘍形成のシグナル伝達経路の下方制御と相関する。マウスでの肝臓のG6PT活性の中程度の低下が、炎症性および腫瘍形成応答が低下した肝臓環境をもたらすという知見は、肝臓腫瘍形成におけるG6PTの役割の生物学および病因への洞察をもたらす。
【0120】
本開示の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮して、例示された実施形態は本開示の単なる好ましい例であり、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことが認識されるべきである。むしろ、本開示の範囲は以下の特許請求の範囲によって規定される。したがって、本発明者らはこれらの特許請求の範囲の範囲と趣旨の範囲内に入る全てのものを特許請求する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
配列番号1のヌクレオチド182~4655、または配列番号2のヌクレオチド182~1938を含む、組換え核酸分子。
(項目2)
配列番号1のヌクレオチド17~5003を含む、項目1に記載の組換え核酸分子。
(項目3)
配列番号1を含む、項目1または項目2に記載の組換え核酸分子。
(項目4)
配列番号2のヌクレオチド17~2316を含む、項目1に記載の組換え核酸分子。
(項目5)
配列番号2を含む、項目1または項目4に記載の組換え核酸分子。
(項目6)
項目1~5のいずれか1項に記載の組換え核酸分子を含むベクター。
(項目7)
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、項目6に記載のベクター。
(項目8)
前記AAVベクターが、AAV血清型8(AAV8)のベクターまたは血清型9(AAV9)のベクターである、項目7に記載のベクター。
(項目9)
項目1~5のいずれか1項に記載の組換え核酸分子を含む組換えAAV(rAAV)。
(項目10)
rAAV8またはrAAV9である、項目9に記載のrAAV。
(項目11)
レンチウイルスベクターである、項目6に記載のベクター。
(項目12)
前記レンチウイルスベクターが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ベクターである、項目11に記載のベクター。
(項目13)
項目1~5のいずれか1項に記載の組換え核酸分子を含む組換えレンチウイルス。
(項目14)
組換えHIVである、項目13に記載の組換えレンチウイルス。
(項目15)
薬学的に許容される担体中に、項目9もしくは項目10に記載のrAAV、または項目13もしくは項目14に記載の組換えレンチウイルスを含む組成物。
(項目16)
静脈内投与のために製剤化された、項目15に記載の組成物。
(項目17)
糖原病と診断された被験体を処置する方法であって、糖原病Ib型(GSD-Ib)を有する被験体を選択することと、治療有効量の、項目9もしくは項目10に記載のrAAV、項目13もしくは項目14に記載の組換えレンチウイルス、または項目15もしくは項目16に記載の組成物を前記被験体に投与することとを含む、方法。
(項目18)
前記rAAVが、静脈内投与される、項目17に記載の方法。
(項目19)
1用量あたり約1×1011~約1×1014ウイルス粒子(vp)/kgの前記rAAVを投与することを含む、項目17または項目18に記載の方法。
(項目20)
1用量あたり約1×1012~約1×1014vp/kgの前記rAAVを投与することを含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
1用量あたり約5×1012~約5×1013vp/kgの前記rAAVを投与することを含む、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記rAAVを投与することが、単回用量のrAAVの投与を含む、項目17~21のいずれか1項に記載の方法。
(項目23)
前記rAAVを投与することが、複数回用量のrAAVの投与を含む、項目17~21のいずれか1項に記載の方法。