(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027176
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】生体情報計測用衣類
(51)【国際特許分類】
A61B 5/256 20210101AFI20230221BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20230221BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
A61B5/256 210
A61B5/352
A41D13/00 102
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194693
(22)【出願日】2022-12-06
(62)【分割の表示】P 2019527715の分割
【原出願日】2018-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2017130223
(32)【優先日】2017-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017130222
(32)【優先日】2017-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北澤 木綿香
(72)【発明者】
【氏名】表 雄一郎
(57)【要約】
【課題】不快感を軽減し、かつ高い測定精度を有する生体情報計測用衣類を提供することにある。
【解決手段】衣類本体と生体情報計測用の電極を有する電極支持部を備える生体情報計測用衣類であって、前記電極支持部はフレキシブルな布帛を基材とし、前記電極支持部は前記衣類本体の生体と接する側に位置し、前記電極支持部の基材は前記衣類本体に固定された接合辺と前記衣類本体に固定されていない自由辺を有し、前記接合辺は一個所のみであり、前記接合辺と前記自由辺の合計を前記電極支持部の基材の周囲長とした場合に、前記接合辺の長さが前記電極支持部の基材の周囲長の60%以下であることを特徴とする生体情報計測用衣類。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類本体と生体情報計測用の電極を有する電極支持部を備える生体情報計測用衣類であって、
前記電極支持部はフレキシブルな布帛を基材とし、
前記電極支持部は前記衣類本体の生体と接する側に位置し、
前記電極支持部の基材は前記衣類本体に固定された接合辺と前記衣類本体に固定されていない自由辺を有し、前記接合辺は一個所のみであり、
前記接合辺と前記自由辺の合計を前記電極支持部の基材の周囲長とした場合に、前記接合辺の長さが前記電極支持部の基材の周囲長の60%以下であることを特徴とする生体情報計測用衣類。
【請求項2】
衣類本体と生体情報計測用の電極を有する電極支持部を備える生体情報計測用衣類であって、
前記電極支持部はフレキシブルな布帛を基材とし、
前記電極支持部は前記衣類本体の生体と接する側に位置し、
前記電極支持部の基材は前記衣類本体に固定された接合辺と前記衣類本体に固定されていない自由辺を有し、
前記接合辺と前記自由辺の合計を前記電極支持部の基材の周囲長とした場合に、前記接合辺の長さが前記電極支持部の基材の周囲長の60%以下であり、
前記接合辺において、前記基材の一部と他の一部が重なっている状態で前記基材と前記衣類本体は縫合されていることを特徴とする生体情報計測用衣類。
【請求項3】
衣類本体と生体情報計測用の電極を有する電極支持部を備える生体情報計測用衣類であって、
前記電極支持部はフレキシブルな布帛を基材とし、
前記電極支持部は前記衣類本体の生体と接する側に位置し、
前記電極支持部の基材は前記衣類本体に固定された接合辺と前記衣類本体に固定されていない自由辺を有し、
前記接合辺と前記自由辺の合計を前記電極支持部の基材の周囲長とした場合に、前記接合辺の長さが前記電極支持部の基材の周囲長の60%以下であり、
前記接合辺において、前記基材と前記衣類本体は縫合されており、
前記接合辺および前記自由辺は、前記電極支持部の前記基材のうち前記電極が設けられている領域が前記衣類本体と相対的に移動可能となる位置に設けられていることを特徴とする生体情報計測用衣類。
【請求項4】
衣類本体と生体情報計測用の電極を有する電極支持部を備える生体情報計測用衣類であって、
前記電極支持部はフレキシブルな布帛を基材とし、
前記電極支持部は前記衣類本体の生体と接する側に位置し、
前記電極支持部の基材は前記衣類本体に固定された接合辺と前記衣類本体に固定されていない自由辺を有し、
前記接合辺と前記自由辺の合計を前記電極支持部の基材の周囲長とした場合に、前記接合辺の長さが前記電極支持部の基材の周囲長の60%以下であり、
前記電極支持部の基材は、間隔を有して設けられる第1部分および第2部分を含み、
前記接合辺は前記第1部分にのみ設けられ、前記電極は前記第2部分に設けられることを特徴とする生体情報計測用衣類。
【請求項5】
前記接合辺において、前記基材と前記衣類本体は縫合されている請求項1または請求項4に記載の生体情報計測用衣類。
【請求項6】
前記基材の接合辺と前記電極との最短距離が3mm以上50mm以下の範囲である事を特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の生体情報計測用衣類。
【請求項7】
前記衣類本体は前身頃と後身頃とを少なくとも有し、前記接合辺が前記前身頃と前記後身頃との縫合個所と同位置で縫合されている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の生体情報計測用衣類。
【請求項8】
前記衣類本体は袖部と胴体部を少なくとも有し、前記接合辺が前記袖部と前記胴体部との縫合個所と同位置で縫合されている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の生体情報計測用衣類。
【請求項9】
前記接合辺が前記衣類本体の襟刳りの縫合個所と同位置で縫合されている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の生体情報計測用衣類。
【請求項10】
前記接合辺が前記衣類本体の袖口の縫合個所と同位置で縫合されている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の生体情報計測用衣類。
【請求項11】
前記接合辺が前記衣類本体のウエスト周りの縫合個所と同位置で縫合されている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の生体情報計測用衣類。
【請求項12】
前記接合辺が前記衣類本体の裾口の縫合個所と同位置で縫合されている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の生体情報計測用衣類。
【請求項13】
前記電極支持部の基材が、開放袋構造を有する事を特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の生体情報計測用衣類。
【請求項14】
前記開放袋構造において開放部が2個所以上ある事を特徴とする請求項13に記載の生体情報計測用衣類。
【請求項15】
前記開放袋構造において開放部が1個所である事を特徴とする請求項13に記載の生体情報計測用衣類。
【請求項16】
前記電極支持部の基材が前記開放袋構造を有し、かつ電極位置が前記基材上における縫合部からの最遠位置を含む個所であることを特徴とする請求項13から請求項15のいずれか一項に記載の生体情報計測用衣類。
【請求項17】
前記衣類本体は、胸部を覆うカップ部と前身頃とを少なくとも有し、前記カップ部と前記前身頃と前記電極支持部が前記接合辺の同位置で縫い合わせられている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の生体情報計測用衣類。
【請求項18】
前記カップ部が、表カップ部と裏カップ部からなり、前記表カップ部が前記前身頃と同じ繊維素材にて構成されていることを特徴とする請求項17に記載の生体情報計測用衣類。
【請求項19】
前記電極支持部が袋構造を有し、袋の閉じ口が、前記カップ部と前記前身頃と前記電極支持部と同位置で縫い合わせられていることを特徴とする請求項17または請求項18に記載の生体情報計測用衣類。
【請求項20】
前記電極と着脱式電子ユニットを接続するためのコネクタが、前記電極支持部と前記前身頃に挟まれた位置にあることを特徴とする請求項17から請求項19のいずれか一項に記載の生体情報計測用衣類。
【請求項21】
前記前身頃と前記表カップ部を構成する繊維素材が、綿を50%以上含むニット素材であることを特徴とする請求項18に記載の生体情報計測用衣類。
【請求項22】
前記生体情報計測用衣類が、後ろ開き構造を有し、前記後ろ開き部に胸部のサイズを調整するための複数の係合部を有することを特徴とする請求項17から請求項21のいずれか一項に記載の生体情報計測用衣類。
【請求項23】
前記電極は配線を備え、該電極と該配線は同じ材料で構成されている請求項17から請求項22のいずれか一項に記載の生体情報計測用衣類。
【請求項24】
前記生体情報計測用の前記電極が導電性ファブリックである請求項17から請求項23のいずれか一項に記載の生体情報計測用衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は少なくとも生体と接触する電極を有する生体情報計測用衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体情報を計測する方法として、心電図等の人体の生体情報を計測する方法が知られている。しかし、かかる従来技術は電極を固定するために電極と皮膚表面との間にゲル又はペーストを使用すること、あるいは粘着テープを使用することが必須である。このため、長時間の連続計測においては発汗による不快感、掻痒感や違和感の発生を伴い、粘着テープ等の粘着性の高い貼り付け電極ではさらに皮膚炎を生じやすいという問題点があった。
【0003】
一方、かかる問題点を解消すべく、衣類として着用することにより心電図などの生体情報を簡便に計測しうるウェアラブル生体情報計測装置という発明がなされた。しかし、かかる発明は発汗による不快感、掻痒感や違和感の発生、皮膚炎という点では改良されたものの、生体に電極が触れることによる不快感を完全に無くすものではなかった。
また従来のウェアラブル生体情報計測装置では、計測装置が露出していたり(特許文献1)、装置部は露出していないものの、装置を覆うためのカバーが露出しているため(特許文献2)、外観上のデザインの制約などが生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6114501号公報
【特許文献2】特開2016-158912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、かかる問題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、生体情報計測用電極を有する衣類を着用した際の不快感は、電極が肌に貼り付くからではなく、電極が肌に貼り付くことによって衣服と着用者の身体との位置関係が束縛されてしまう事に起因することを見出し、衣類に位置する電極部の位置自由度を上げることにより、逆に電極位置が固定された場合でも相対的に衣類全体の位置自由度が高くなり不快感が大幅に軽減されることを見出し、本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
[1] 衣類本体と生体情報計測用の電極を有する電極支持部を備える生体情報計測用衣類であって、
前記電極支持部はフレキシブルな布帛を基材とし、
前記電極支持部は衣類本体の生体と接する側に位置し、
前記電極支持部の基材は衣服本体に固定された接合辺と衣服本体に固定されていない自由辺を有し、
前記接合辺と前記自由辺の合計を電極支持部の基材の周囲長とした場合に、前記接合辺の長さが電極支持部の基材周囲長の60%以下であることを特徴とする生体情報計測用衣類。
[2] 前記電極支持部の基材の接合辺と電極との最短距離が3mm以上50mm以下の範囲である事を特徴とする前記[1]に記載の生体情報計測用衣類。
[3] 前身頃と後身頃とを少なくとも有する衣類であって、前記接合辺が前身頃と後身頃との縫合個所と同位置で縫合されていることを特徴とする[1]または[2]に記載の生体情報計測用衣類。
[4] 袖部と胴体部を少なくとも有する衣類であって、前記接合辺が袖部と胴体部との縫合個所と同位置で縫合されていることを特徴とする[1]または[2]に記載の生体情報計測用衣類。
[5] 前記接合辺が衣類の襟刳りの縫合個所と同位置で縫合されていることを特徴とする[1]または[2]に記載の生体情報計測用衣類。
[6] 前記接合辺が衣類の袖口の縫合個所と同位置で縫合されていることを特徴とする[1]または[2]に記載の生体情報計測用衣類。
[7] 前記接合辺が衣類のウエスト周りの縫合個所と同位置で縫合されていることを特徴とする[1]または[2]に記載の生体情報計測用衣類。
[8] 前記接合辺が衣類の裾口の縫合個所と同位置で縫合されていることを特徴とする[1]または[2]に記載の生体情報計測用衣類。
[9] 前記電極支持部の基材が、開放袋構造(ループ構造)を有する事を特徴とする[1]から[8]のいずれかに記載の生体情報計測用衣類。
[10] 前記開放袋構造において開放部が2個所以上ある事を特徴とする[9]に記載の生体情報計測用衣類。
[11] 前記開放袋構造において開放部が1個所である事を特徴とする「9」に記載の生体情報計測用衣類。
[12] 電極支持部の基材が開放袋構造を有し、かつ電極位置が前記基材上における縫合部からの最遠位置を含む個所であることを特徴とする[9]から[11のいずれかに記載の生体情報計測用衣類。
[13] 胸部を覆うカップ部と前身頃とを少なくとも有する衣類であって、衣類の内側
に、さらに生体情報計測用の電極を備える電極支持部を有し、前記カップ部と前身頃と電極支持部が同位置で縫い合わせられていることを特徴とする[1]に記載の生体情報計測用衣類。
[14] 前記カップ部が、表カップ部と裏カップ部からなり、前記表カップ部が前身頃と同じ繊維素材にて構成されていることを特徴とする前記[13]に記載の生体情報計測用衣類。
[15] 前記電極支持部が袋構造を有し、袋の閉じ口が、カップ部と前身頃と電極支持部と同位置で縫い合わせられていることを特徴とする[13]または[14]に記載の生体情報計測用衣類。
[16] 前記電極と着脱式電子ユニットを接続するためのコネクタが、電極支持部と前身頃に挟まれた位置にあることを特徴とする[13]から[15]のいずれかに記載の生体情報計測用衣類。
[17] 前記前身頃と前記表カップ部を構成する繊維素材が、綿を50%以上含むニット素材であることを特徴とする[13]から[16]のいずれかに記載の生体情報計測用衣類。
[18] 前記生体情報計測用衣類が、後ろ開き構造を有し、後ろ開き部に胸部のサイズを調整するための複数の係合部を有することを特徴とする[13]から[17]のいずれかに記載の生体情報計測用衣類。
[19] 前記電極は配線を備え、該電極と該配線は同じ材料で構成されている[13]から[18]のいずれか1項に記載の生体情報計測用衣類。
[20] 前記生体情報計測用の電極が導電性繊維複合素材である[13から[19]のいずれか1項に記載の生体情報計測用衣類。
【0007】
さらに本発明は以下の構成を有する事が好ましい。
[21] 前記生体情報計測用の電極が導電性繊維複合素材である[1]から[12]のいずれか1項に記載の生体情報計測用衣類。
[22] 前記生体情報計測用の電極が伸縮性導電素材である[1]から[12]のいずれか1項に記載の生体情報計測用衣類。
[23] 前記電極は配線を備え、該電極と該配線は同じ材料で構成されている[1]から[12]のいずれか一項、ないし[21]から[22]のいずれか1項に記載の生体情報計測用衣類。
【発明の効果】
【0008】
本発明は電極を衣類に直接取り付けるのではなく、電極支持部を介して、自由度を持たせて取り付けるところに特徴がある。電極支持部の基材は柔軟性のある布帛で有り、好ましくは衣類と同じ素材の布帛からなり、生体情報計測用の電極が基材に貼り付け、縫い付け、印刷、転写、等の方法で取り付けられている。通常であれば、電極支持部の全周囲を衣類に縫い付ける、あるいは全面をホットメルト接着剤で貼り付ける等により電極支持部と衣類を接合するところであるが、本発明で、電極支持部の一部のみを衣類に接合し、少なくとも電極が取り付けられている個所を含む電極支持部の大部分が自由端とされるところに特徴がある。すなわち、このような構成により、電極部が衣類本体に対して自由度を有することになる。電極部は着用者の皮膚に接触し、望ましくは計測中にズレることなく生体との安定的な電気的接触を維持することが好ましい。本発明では電極に対して相対的に衣類側が自由度を持つため、衣類が身体からズレるような動作を行い、実際に衣類がズレたとしても、どの分は電極支持部が持つアソビが吸収し、電極は生体との安定的な電気的接触を維持することができる。ここにアソビとは、電極支持部の衣類との接合部(縫合部)と電極端との間の部分である。
本発明ではさらに電極支持部と衣類本体との接合部を、衣類を製作する際に必要な縫合部と重ねて同位置で縫合することにより、生体情報計測機能を付与するための新たな縫い目や接合部を増やすことなくデザイン性に優れた生体情報計測用衣類を得ることができる。
【0009】
本発明によれば、外側から計測用装置が見えない、外観デザインに優れた生体情報計測用衣類を提供できる。
また、本願の生体情報計測用衣類は一般衣類と同様に、機能性やデザイン性を取り入れた生地を用いることができる。従来、生体情報計測用衣類に使用する生地は、電極を配置するのに適した、電極を十分に固定できる凹凸がない生地、厚みのあるしっかりとした生地が使用されてきた。しかし、本願の生体情報計測用衣類は電極部を電極支持部に設置するため、衣類本体の生地は電極による制限を受けない。そのため、季節や好みに合わせた生地選びが可能であり、例えば、通常の平らなニットとは異なるデザイン性に優れたワッフルニットと呼ばれる凹凸のある格子状の生地を用いた生体情報計測用衣類や、ジョーセエット生地と呼ばれるヒラヒラと薄い生地を用いた生体情報計測用衣類を提供できる。
さらに、本願の生体情報計測用衣類はカップ部と前身頃を縫い合わせる際に、同位置で電極支持部を一緒に縫い合わせるため、電極を付けるための新たな縫い目が生じず、外観上の美観、デザイン性を損なわず、さらに縫い目が肌に当たる不快感がない。不快感については、生体情報計測用衣類は電極部を生体に密着させる必要があるため、締め付けによる窮屈感が問題となるが、本願の生体情報計測用衣類は、後ろ開き構造で長さ調整が可能なため、着用者の体形に合わせた適度な締め付けで電極を肌に密着させることができる。また、電極の密着に必要なアンダーバスト部だけを締め付けるため、乳房や腹部などは締め付けられず不快感が少ない。
本発明は美観、デザイン性の改善を主目的に進めたものであったが、さらに予期しなかったことに、従来の衣類本体生地に直接電極を取り付けた生体情報計測用衣類に比較して、生体情報取得時のノイズが低減される効果を得ることが出来た。これは、従来の生体情報計測用衣類では、衣類本体と身体との擦れに伴い電極と生体感の擦れも生じていたところが、本発明の構成では電極部に対する衣類本体からの束縛が緩くなるために、電極と生体との擦れが低減されたことによると推定される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は本発明の生体上計測用衣類の一例であるスタンダードなTシャツの外形を示す概略図である。
【
図2】
図2は
図1に一例として示した生体情報計測用衣類を裏返した状態を示す概略図であり、前身頃と後身頃の縫合部に両開き袋構造の電極支持体を縫合した一例である。
【
図3】
図3は本発明の生体上計測用衣類の一例であるラグラン袖Tシャツの外形を示す概略図である。
【
図4】
図4は
図3に一例として示し生体情報計測用衣類を裏返した状態を示す概略図であり、ラグラン袖部と後身頃との縫合部に両開き袋構造の電極支持体を縫合した一例である。
【
図5】
図5は本発明において前身頃と後身頃の縫合個所と同じ個所において電極支持部を縫合する場合の位置関係を示す断面図である。
【
図6】
図6は本発明において前身頃と後身頃の縫合個所と同じ個所において袋構造を有する電極支持部を縫合する場合の位置関係を示す断面図である。
【
図7】
図7は本発明において前身頃と後身頃の縫合個所と同じ個所において電極支持部を縫合する場合の位置関係を示す概略図である。
【
図8】
図8は本発明において前身頃と後身頃の縫合個所と同じ個所において開口部が2個所ある袋構造の電極支持部を縫合する場合の位置関係を示す概略図である。
【
図9】
図9は本発明において前身頃と後身頃の縫合個所と同じ個所において袋構造を有する電極支持部を縫合する場合の位置関係を示す概略図であり、電極位置が電極支持部の基材上における縫合部からの最遠位置を含む個所にある場合を示す概略図である。
【
図10】
図10は本発明の袋構造を有する電極支持部を用いた場合の一例で有り、開口部を1個所とし、袋を円錐状に閉じた例である。
【
図11】
図11は本発明において単葉型の電極支持部を使用した場合において、電極支持部を折り返してポケット状にした例である。
【
図12】
図12は本発明における生体情報計測用衣類の一例であるTシャツ型生体情報計測用衣類の試作品の外観写真である。
【
図14】
図14は本発明の実施例における心電測定の結果を示す図である。
【
図15】
図15は本発明の比較例における心電測定の結果を示す図である。
【
図16】
図16は本発明における生体情報計測用衣類の一例であるブラジャー付きキャミソールの前側外面の図である。
【
図17】
図17は本発明における生体情報計測用衣類の一例であるブラジャー付きキャミソールの前側肌面の図である。
【
図18】
図18は本発明における生体情報計測用衣類の一例であるブラジャー付きキャミソールにおける後側外面の図である。
【
図19】
図19は本発明における生体情報計測用衣類の一例であるブラジャー付きキャミソールに取り付ける電極支持部の詳細図である。
【
図20】
図20は本発明における生体情報計測用衣類の一例であるブラジャー付きキャミソールに取り付ける電極支持部の断面構造と衣類本体とを縫い合わせる個所の位置関係を示す概略図である。
【
図21】
図21は本発明における生体情報計測用衣類の一例であるブラジャー付きキャミソールの試作品を、面側から撮影した外観写真である。
【
図22】
図22は本発明における生体情報計測用衣類の一例であるブラジャー付きキャミソールの試作品を、後面側から、係合部を外して後開き部を広げて電極支持部が見えるようにして撮影した写真である。
【
図23】
図23は本発明における生体情報計測用衣類の一例であるブラジャー付きキャミソールの試作品を、後面側から係合部を外して後開き部を広げ他状態にて、さらに電極支持部を裏返してコネクタとして機能するスナップホックが見えるようにして撮影した写真である。
【
図24】
図24は本発明の実施例における心電測定の結果を示す図である。
【
図25】
図25は本発明の比較例における心電測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における生体情報とは、電極およびまたはその他センサにより検知可能な心電、筋電、体温、衣服内温、呼吸数、呼吸状態、発汗量、発汗状態、関節角度、身体各部の変位量、身体各部の加速度、身体各部の位置情報等をさす。電極およびまたはその他センサは、計測対象となる生体情報により適宜選択される。このうち、本発明は少なくとも生体に接触する複数の電極を有する事が好ましい態様であり、さらに生体情報として心電を計測可能な電極を備えることが好ましい様態である。一般に心電の計測結果は一般的には横軸に時間を、縦軸に電位差をプロットした心電図、心電波形として記録される。心拍1回ごとに心電図に現れる波形は、P波、Q波、R波、S波、T波の代表的な5つの波により主に構成され、この他にU波が存在し、また、Q波の始めからS波の終わりまでをQRS波と称する場合がある。これらの波のうちで、少なくともR波を検知可能な電極を備えることが好ましい。R波は左右両心室の興奮を示し、最も電位差の大きな波である。また、R波の頂点と次のR波の頂点までの時間を一般にR-R時間(RRI)と称するが、(心拍数)=60/(R-R時間(秒))の式を用いて、1分間当りの心拍数を計算することができる。つまり、R波を検知可能な電極を備えてR波を検知することにより、心拍数を知ることができる。本発明においては特に注釈のない限り、QRS波もR波に含まれるものである。
【0012】
以下本発明の構成を図によって説明する。
図1と
図2は本発明をTシャツに適用した例
である。
図1はTシャツの外観であり、
図2はTシャツを裏返した状態を示す。電極支持部4は、長方形の布を折り曲げて両側が開いた袋とじ形状としてTシャツの前身頃2と後身頃9との縫合部に合わせて縫い合わせてある。電極はほぼ身体の側面位置に密着することになり、心電測定には比較的好ましい位置と云える。
【0013】
図3と
図4は一般にラグラン袖型と呼ばれるタイプのTシャツである。
図3が外観を、
図4がラグラン袖型Tシャツを裏返した状態を示す。ここに示した例では、ラグラン袖部9と後身頃9の縫合部に電極支持部を縫い合わせている。この場合、電極位置は肩甲骨に近い位置となる。同様に、ラグラン袖部22と前身頃2との縫合部に電極支持部を縫い合わせた場合には、電極位置はほぼ胸筋の上で心臓を挟んで左右に位置する。左右の電極支持体を前後に分け、例えば左側は後身頃と、右側は前身頃との縫合部に縫い合わせることもできる。また前後左右各4個所あるいはそれ以上、加えて前身頃と後身頃との縫合部を使ってさらに電極支持部を設ける事により、3極以上の複数の電極を無理なく一着の衣類に集積することも可能であり、しかも、電極を設置することによる新たな縫い目を必要としないために衣類のデザイン性や、本来の着心地を損なわない。
なおここでは衣類を構成する各パーツの縫合部に合わせて電極支持部を縫い合わせる場合について説明したが、本発明はかならずしもその形態に限定されず、新たな縫い目が許容される場合には、衣類のパーツの縫合部に留まらず、自由な位置に電極支持体を縫い合わせれば良い。
【0014】
図5と
図6は縫合部の断面構造の一例を示している。
図5が電極支持部が単葉である場合、
図6は電極支持部が袋綴じ構造になっている場合を示している。袋綴じ構造の場合には接合辺が2個所になり、電極支持部が単純長方形の場合には対向する2辺が接合辺となる。電極は衣類内側の身体に直接的に接する個所に位置する。図では省略されているが、電極には配線およびまたはコネクタ63が好ましくは接続される。
【0015】
図7は本発明において前身頃と後身頃の縫合個所と同じ個所において単葉の電極支持部の接合辺を縫合する場合の位置関係を示す概略図である。例示として前身頃、後身頃としているが、衣類を構成するための縫合であれば、どこに縫い合わせても良く、縫い合わせる場所は、好ましくはあ心電計測や筋電計測などに好ましい位置ないしその近傍に電極が配置されるように選択される。本例示では電極支持部は単純化して示しているが、基材として複数素材を縫い合わせないし貼り合わせた構造を用いても良い。
ここに電極支持部の基材の接合辺(縫合部)と電極との最短距離は、
図7の両端矢印の直線で与えられる。この距離が電極と衣類とのズレ(ないしアソビ)を許容する部分となる本発明では、この距離は特に限定されないが、3mm以上50mm以下の範囲であることが好ましく、5mm以上45mm以下であることが好ましく、10mm以上40mm以下であることがなお好ましい。
図8は
図7と同様に袋とじ構造の電極支持部をLシーム構造(横貼り、サイドシーム、スミ貼り)的に縫い合わせた様子を示す概略図である。電極支持部の基材の接合辺(縫合部)と電極との最短距離は、
図7の場合と同様に
図8の図中の両端矢印の直線で与えられる。袋綴じ構造の場合には、袋無いに脱着式の電子ユニットを配置するようにしてもよい。配線、コネクタなどは目的に応じて適合するように設計される。
【0016】
図9は本発明において袋構造を有する電極支持部をセンター貼り(中貼、センターシーム)的に縫い合わせた場合を示す概略図である。電極位置は電極支持部を袋とじにする前の段階において、ほぼ両接合部からの等距離点、すなわち接合辺からの最遠点を含む場所にある。図では両開き構造(円筒構造)の場合が示されているが、片側を縫い合わせてポケット状にしてもよい。
【0017】
図10は本発明の袋構造を有する電極支持部を用いた場合の一例で有り、開口部を1個所とし、円錐状に閉じることにより捻り方向のズレが強い個所に好ましく適合させることができる。
図11は本発明において単葉型の電極支持部を使用した場合の特殊な例に相当し、電極支持部を折り返してポケット状にして使用する場合の一例である。図では省略されているが、ポケットの両サイドを縫合して袋構造を完成させることが好ましい。ポケットの口は肌側にあっても、衣類側にあっても良い。電極位置は各々の場合に適宜合わせて身体の肌に直接触れるように配置される。このようなポケット構造の場合にはポケット内に脱着型の電子デバイスを装着するようにしても良い。
【0018】
本発明の電極支持部4の肌側には生体情報計測用の電極部61が配置されている。電極部と配線部を同じ導電性素材で構成する場合には、導電性素材の電極部分以外の場所を絶縁シート材料でカバーすることにより、絶縁シートで覆われていない部分を電極部、覆われている部分を配線部として使い分けることができる。
本発明では別の例として、導電性繊維素材等からなる電極素材と配線を使用してもよい。導電性繊維素材としては、電極部の肌と接する面には好ましくは、カーボンペースト、導電性ゴムシート、導電性プラスチックシートなどを配置して肌との電気的接触インピーダンスを適正化することができる。
【0019】
本発明の電極に接続された配線部には好ましくはコネクタ63が接続され、好ましくは脱着式の電子ユニットと接続されて生体情報計測用衣類として機能するシステムとなる。
コネクタとしてスナップホックを用いるのは好ましい態様である。なお着脱電子ユニットは電子ユニット部が十分な耐水性を有していない場合には、衣類の洗濯時などに取り外して洗濯に供されるが、電子ユニット部側の防水機能が十分な場合には、あえて取り外せるように設計しなくても良い。その場合にはコネクタ部の脱着を前提としない接続具にしてもよい。
【0020】
電極支持部の好ましい例として袋綴じ構造の場合には電極支持部の自由端の端部が直接肌に触れた場合の不快感を軽減している。電極支持部の素材を適度に選択すれば、必ずしも袋綴じにする必要は無い。袋の内側に補強材71を挿入してコネクタ部の強度を補強してもよい。スナップホックと配線部との接点は圧着されているが、好ましくは導電性接着材、低温ハンダ、等で確実に電気接続が取れるように電気的補強を行っておくことが好ましい。金属線や導電性繊維などで縫い付けるのも好ましい態様である。
【0021】
以上は、本発明の一例として主としてTシャツを一例に説明したものである。本発明はTシャツに限定されるものでは無く、男性用、女性用、上半身用、下半身用を問わず広範囲に適用することができる。
本発明の衣類には、各種スポーツ、格闘技、作業現場、警護等の際に用いる防具用衣類に適用することが出来る。また本発明は着用者が寝ている際に介護者や医療従事者が衣類を着脱するケースが多い病院用衣類、介護用衣類として適用することができる。
【0022】
本発明において衣類を構成する主要材料(基材)は繊維素材からなる布帛である。布帛としては織物、編み物、不織布を例示することができ、さらにこれらに樹脂コート、樹脂含浸したコート布なども基材として用いることができる。また、クロロプレンに代表される合成ゴムシート等も基材として用いることができる。本発明で用いられる布帛は繰り返し10%以上の伸縮が可能なストレッチャビリティを有する事が好ましい。また本発明の基材は50%以上の破断伸度を有する事が好ましい。本発明の基材は布元反でもよく、また、リボン、テープ状でも良く、組紐、網組でもよく、元反からカットされた枚葉の布でも良い。
布帛が織物の場合、例えば平織、綾織、朱子織、等を例示できる。布帛が編み物の場合
、例えば平編み、およびその変形、鹿の子編、アムンゼン編、レース編、アイレット編、添え糸網、パイル編、リブ網、リップル編、亀甲編、ブリスター編、ミラノ・リブ編、ダブルピケ編、シングル・ピケ編み、斜文編、ヘリボーン編、ポンチローマ編、バスケット編、トリコット編、ハーフ・トリコット編、サテントリコット編、ダブルトリコット編、クインズコード編、ストライプ・サッカー編、ラッセル編、チュールメッシュ編、およびこれらの変形・組み合わせを例示できる。布帛はエラストマー繊維などからなる不織布であっても良い。
【0023】
本発明における繊維素材とは、特に限定されるものではなく、天然繊維であれば、綿、ウール、麻などがあり、化学繊維であれば、ナイロン、アクリル、ポリエステル、ポリウレタンなどがある。これらは、それぞれ単体で用いることもでき、任意の割合で混紡することもできる。本願の生体情報計測用衣類の繊維素材は、綿素材を重量比率25%以上混紡することが好ましい。より好ましくは、伸縮性を有する素材を重量比率5%以上混紡することが好ましい。好ましい混紡素材は綿とポリウレタンとの混紡素材、綿、ポリエステル、ポリウレタンの混紡素材である。特に前記電極支持部の繊維素材は、綿を重量比率35%以上含有する素材とすることが好ましい。
また本発明の衣類を構成する繊維素材による生地としては織物、編物(ニット)いずれでも良いが、本一例に例示されたブラジャー付きキャミソールにおいては編物を主体として構成することが好ましい。
【0024】
本発明における電気配線およびまたは電極に用いられる素材はとしては、金属箔、導電性ファブリック、伸縮性導体シートなどを用いる事ができる。電極部分においては必要に応じて電極表面層が設けられる場合もある。配線部分は絶縁カバー層、好ましくは伸縮性の絶縁カバー層で覆われること好ましい。また電極、配線共に布帛との境界に接着性改善や絶縁性を担うための下地層を設けても良い。
【0025】
次に本発明を、少なくとも衣類前面が例えば胸部と腹部のように上下に分割された複数の基本パーツから構成される衣類に適用した場合について説明する。かかる形態は特に限定されるものでは無いが、典型的には女性用のブラジャー付きキャミソール(ブラキャミソール、カップ付きキャミソール、あるいは短縮しブラキャミなどと呼ばれる)に見ることができる。
【0026】
以下本発明の構成の一例を図によって説明する。
図16~
図18は、本発明の衣類の一例であるブラジャー付きキャミソールの例である。以下ブラジャー付きキャミソールをの例を本一例と略記する。本一例においては、衣類は、前身頃2、カップ部3、後身頃9、バッグ布10からなる基本パーツで構成されており、さらに肩紐11とバッグ布に取り付けられる係合部7が付属している。
本発明におけるカップ部とは胸部(女性用衣類の場合は乳房)を覆う部分である。カップ部の裏側(肌側)には必要に応じて裏カップを付属させてもよい。本発明における前身頃とは、胴部分前側のカップより下の部分である。後身頃は前身頃に対応する身体背部の概ね腰の上部から下を覆う部分である。
【0027】
本発明における電極支持部4は、本一例においては胴部前側の肌側に位置し、裏カップの下に配置された部分である。電極支持部の上端はカップ部と前身頃との縫合部と重ねて同時に縫合され(カップ部側縫合部65)、衣服に取り付けられている。一方電極支持部の下側は衣服本体(前身頃)とは縫合されておらず、フリーになっている。本一例では電極支持部の側部を、前身頃と後身頃ないしはバッグ布との縫合部と重ねて同時に縫合(横側縫合部66)することにより、電極支持部が着用に裏返りにくくなるように配慮されている。電極支持部を衣服を構成する基本パーツの縫合時に同自に縫い付けることにより、余分な縫い目を増やすことなく衣類に電極を取り付けることが可能となる。
【0028】
前記電極支持部4の肌側には生体情報計測用の電極61が配置されている。好ましい例としての本一例においては、身体の全面中心から左右に概ね100mm~180mm程度に電極中心が位置するように配置されており、電極から身体中央部に向けて配線部62が配置されている。本例ではシート状の電気配線材料を使用する例が示されており、配線部は長方形であり、図では省略されているが電極部分以外を絶縁シート材料でカバーすることにより、絶縁シートで覆われていない部分を電極部、覆われている部分を配線部として使い分けている。
本発明では別の例として、導電性繊維素材等からなる電極素材と配線を使用してもよい。導電性繊維素材としては、電極部の肌と接する面には好ましくは、カーボンペースト、導電性ゴムシート、導電性プラスチックシートなどを配置して肌との電気的接触インピーダンスを適正化することができる。
【0029】
左右の配線部の胸中央に相当する部分には、コネクタとしてステンレス製のスナップホック63が取り付けられており、コネクタを介して着脱式電子ユニット80と接続される。
本一例では、好ましい例として、スナップホックの台座部が配線部に接触し、スナップホックの凸部が電極支持部を突き抜けて電極支持部の電極とは反対側に突出するように配置され、着脱可能な着脱式電子ユニットを取り付けることができる様に構成されている。
着脱電子ユニットは電子ユニット部が十分な耐水性を有していない場合には、衣類の洗濯時などに取り外して洗濯に供されるが、電子ユニット部側の防水機能が十分な場合には、あえて取り外せるように設計しなくても良い。その場合にはコネクタ部の脱着を前提としない接続具にしてもよい。
【0030】
本一例では電極支持部は好ましい例として、折り返して袋縫いになっており、電極支持部の自由端(下側)が直接肌に触れた場合の不快感を軽減している。電極支持部の素材を適度に選択すれば、必ずしも袋縫いにする必要は無い。本一例では袋の内側に補強材71を挿入してコネクタ部の強度を補強している。スナップホックと配線部との接点は圧着されているが、好ましくは導電性接着材、低温ハンダ、等で確実に電気接続が取れるように電気的補強を行っておくことが好ましい。金属線や導電性繊維などで縫い付けるのも好ましい態様である。
【0031】
本一例では好ましい例として、電極支持部の肌側の、特にコネクタ、脱着式電子ユニットに重なる部分の肌側に肌当て64を配置し、コネクタ部の補強と同時に、コネクタや着脱式電子ユニットの凸凹が直接肌に触れる不快感を低減している。
電極支持部の電子ユニットが取り付けられる近傍の肌側に肌当てを配置しても良い。前記肌当ては、少なくとも電極部のコネクタを覆うことができるだけの面積を有する。前記肌当ての素材は特に限定されないが、発泡ウレタンシートや発泡ゴムシートなどの柔軟性とクッション製を有する素材が好ましい。ウェットスーツなどに使用される発泡クロロプレンゴムシートなどは好ましく用いる事ができる素材である。さらに、前記電極支持部のコネクタ側には、コネクタ部分の補強と絶縁保護のために絶縁性の補強材を配置しても良い。補強材として好ましく用いられる素材はポリウレタンシートで有り、シリコーンゴムシートであり、その他の合成ゴムシート、天然ゴムシートである。
このような構成により、着脱式電子ユニットが衣服外側からは見えず、なおかつ肌に直接触れない位置に設置することが可能となる。なお、本一例では衣類の胸繰りから手を入れることにより着脱式ユニット設置部に容易に手が届くため、衣類を着用後に着脱式ユニットを脱着する上での不便はない。
【0032】
本一例では好ましい設定として後ろ開き構造としている。後開き部のバッグ布には係合部が取り付けられており、段階的ないし連続的に衣類の締め付け具合を調整可能となっている。これにより、電極支持部の身体への密着度合いを適宜調整可能となる。係合部として
は、特に限定されるものではなく、例えばホック、面ファスナー、ボタンなどを用いる事が出来る。
【0033】
以上は、本発明の一例として女性用のブラジャー付きキャミソールを一例に説明したものである。本発明はブラジャー付きキャミソールに限定されるものでは無く、少なくとも衣類前面が例えば胸部と腹部のように上下に分割された複数の基本パーツから構成される衣類であれば、男性用、女性用を問わず広範囲に適用することができる。
【0034】
本発明における電気配線として用いられる金属箔とは、厚さが50μm以下、好ましくは25μm以下、さらに好ましくは15μm以下、なお好ましくは8μm以下、なおさらに好ましくは4μm以下であり、かつ0.08μm以上である、銅箔、りん青銅箔、ニッケルメッキ銅箔、錫めっき銅箔、ニッケル/金めっき銅箔、アルミニウム箔、銀箔、金箔から選択される少なくとも一種以上の金属箔であることが好ましい。
これら金属箔は、電解法、無電解法、圧延法、蒸着法、スパッタリング法、などの常法にて泥像可能である。かかる金属箔はエッチング法、リフトオフ法、アディティブ法、打ち抜き法、レーザーカッティング法などにより所定のパターン形状に加工することができる。
【0035】
本発明に於ける幾何学的冗長性とは、空間中に、点A、点Bの二点を定義した際に、二点間の最短距離Xに対して、最短距離よりも長い経路Yを用いて2点を結ぶことにより、二点間の距離が伸びた際にも余裕をもって接続状態が維持されることを云う。
ここに冗長係数は、
冗長係数=Y/X
にて定義される。ここでの長さは、幅を持った線路であれば、その中央を通るラインの長さである。
本発明における冗長係数は1.41.以上が好ましく、1.8以上がさらに好ましく2.2以上がなお好ましく、2.8以上がさらに好ましい。冗長係数を大きくするには、端的には金属箔をジグザクないし正弦波形状、繰り返し馬蹄形状に配置すれば良い。
【0036】
かかる好ましくはジグザグパターンを有する金属箔は、一例としてゴムシート、ウレタンシート、シリコーンゴムシートなどの伸縮可能なシートと金属箔とのラミネートを形成後、金属箔をサブトラクティブ法にて不要部分を除去して所定のパターンと加工することができる。サブトラクティブ法とは一般的なプリント配線板製法に用いられるエッチング法と同義である。伸縮可能なシートは下地層を兼ねても良く、下地層の一部として機能してもよい。
【0037】
本発明において金属箔を電極として用いる場合には、好ましくは金属箔表面を金、銀、白金、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属メッキあるいは不動態形成により酸化劣化が生じにくい金属、例えばクロム、モリブデン、タングステン、ニッケル、あるは耐食性合金などのメッキにより保護することが出来る。また電極表面にカーボンペーストなどを印刷することにより電極表面保護層を設ける事も出来る。あるいは導電性フィラーと柔軟性樹脂などから構成される伸縮性導電組成物で覆うこともできる。
【0038】
本発明では配線として導電糸(導電性糸、導電性繊維を含む)を用いる事ができる。導電糸による配線は導電性ファブリックを用いた電極と組み合わせてもちいることが好ましい。本発明における導電糸とは、繊維長1cmあたりの抵抗値が100Ω以下の糸を云う。ここに導電糸とは導電繊維、及び導電繊維の繊維束、導電繊維を含む繊維から得られる撚糸、組み糸、紡績糸、混紡糸の総称である。本発明の導電糸として、金属被覆された化学繊維、金属被覆された天然繊維、導電性酸化物がより被覆された化学繊維、導電性酸化
物により被覆された天然繊維、カーボン系導電性材料(グラファイト、カーボン、カーボンナノチューブ、グラフェンなど)により被覆された化学繊維、カーボン系導電性素材により被覆された天然繊維、導電性高分子により被覆された化学繊維、導電性高分子により被覆された天然繊維などから得られる導電糸を例示できる。かかるタイプの導電糸には、高分子フィルムに金属、カーボン系導電性素材、導電性金属酸化物、導電性高分子から選択される一種以上の導電性素材を被覆した高分子フィルムを800μm幅以下に細くスリットした導電性極細スリットフィルムが含まれる。
本発明における導電糸としては、金属、カーボン系導電性素材、導電性金属酸化物、導電性高分子から選択される一種以上の導電性素材を練り込んだ高分子を紡糸して得られる導電繊維から得られる導電糸を用いることができる。
さらに本発明では。太さが250μm以下、好ましくは120μm以下、さらに好ましくは80μm以下、なおさらに好ましくは50μm以下の金属微細線を導電繊維ないし導電糸として用いる事ができる。さらに本発明ではマイクロファイバーナノファイバーなどの繊維束に導電性フィラー、導電性高分子等を担持、含浸させて得られる導電糸を用いる事ができる。
本発明では特に、金属被覆された化学繊維、導電性高分子を含浸させた繊維束、太さが50μm以下の金属微細線、から選択される少なくとも一種以上の導電糸を用いる事が好ましい。
導電糸による配線は冗長性を有することが好ましい。冗長性は導電糸を例えばジグザグに刺繍する、あるいは導電糸をニットに組み込み、導電糸部分にループを作って冗長性を確保し、ニット生地そのものを配線的に用いる等の方法により与えることができる。
【0039】
本発明では電極として導電性ファブリックを用いる事ができる。本発明における導電性ファブリックは導電性を有する繊維構造体の総称である。本発明の導電性ファブリックの一例として、導電糸(導電性糸、導電性繊維を含む)を含む繊維から構成される織物、編物、不織布を用いる事ができる。また本発明では非導電性の布帛に、導電糸を刺繍することにより導電性ファブリックとすることができる。また非導電性の布帛に導電性高分子の溶液、あるいは導電性フィラーとバインダ樹脂を含む組成物の溶液を含浸、乾燥して得られる繊維構造体を用いる事ができる。
本発明における導電性ファブリックとして導電性高分子を含浸させた繊維構造物を用いる事が好ましい。また、本発明の導電性ファブリックは、溶媒中に導電性高分子とバインダとを分散した分散液をファブリックに塗布することにより、前記繊維構造物に前記導電性高分子を含浸させた導電性ファブリックを用いる事が好ましい。発明において、前記導電性高分子は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物を好ましく用いる事ができる。本発明において、前記電極に用いる導電市得ファブリックが織編物からなり、前記織編物の目付けが50g/m2未満であるか、ないしは、300g/m2を越える目付である事が好ましい。本発明の電極に用いるファブリックは合成繊維マルチフィラメントからなり、合成繊維マルチフィラメントの少なくとも一部が、繊度が30dtex未満の極細フィラメントであるか、ないしは400dtexを越える繊度を有し、かつ単糸繊度が0.2dtex以下である合成繊維マルチフィラメントであることが好ましい。
【0040】
本発明では電極および配線の素材として伸縮性導体層(または伸縮性導体層シート)を用いる事が出来る。伸縮性導体層は、伸縮性を有し、かつ比抵抗が1×100Ωcm以下の材料で構成されている層を云う。本発明の伸縮性導体層はストレッチャビリティを有する。本発明におけるストレッチャビリティとは、導電性を保った状態にて繰り返し10%以上の伸縮が可能であることを云う。さらに本発明の伸縮性導体層は、導体層単独で40%以上の破断伸度、好ましくは50%以上の破断伸度、さらに好ましくは80%以上の破断伸度を有する事が好ましい。さらに本発明の伸縮性導体層は引っ張り弾性率が10~500MPaであることが好ましい。このようなストレッチャビリティを有する伸縮性導体
層を形成できる材料を伸縮性導体組成物と呼ぶ。
伸縮性導体組成物は、以下に述べる導電ペーストを介して得ることができる。以下、本発明の構成要素の実現手段の一つである導電性ペーストについて説明する。導電性ペーストは、少なくとも導電粒子、伸縮性樹脂、溶剤から構成される。
【0041】
本発明の導電性粒子は、比抵抗が1×10-1Ωcm以下の物質からなる、粒子径が100μm以下の粒子である。比抵抗が1×10-1Ωcm以下の物質としては、金属、合金、カーボン、ドーピングされた半導体、導電性高分子などを例示することができる。本発明で好ましく用いられる導電性粒子は銀、金、白金、パラジウム、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、鉛、錫などの金属、黄銅、青銅、白銅、半田などの合金粒子、銀被覆銅のようなハイブリッド粒、さらには金属メッキした高分子粒子、金属メッキしたガラス粒子、金属被覆したセラミック粒子などを用いることができる。
【0042】
本発明ではフレーク状銀粒子ないし不定形凝集銀粉を用いることが好ましい。フレーク状粉の粒子径は特に限定されないが、動的光散乱法により測定した平均粒子径(50%D)が0.5~20μmであるものが好ましい。より好ましくは3~12μmである。平均粒子径が15μmを超えると微細配線の形成が困難になり、スクリーン印刷などの場合は目詰まりが生じる。平均粒子径が0.5μm未満の場合、低充填では粒子間で接触できなくなり、導電性が悪化する場合がある。不定形凝集粉の粒子径は特に限定されないが、光散乱法により測定した平均粒子径(50%D)が1~20μmであるものが好ましい。より好ましくは3~12μmである。平均粒子径が20μmを超えると分散性が低下してペースト化が困難になる。平均粒子径が1μm未満の場合、凝集粉としての効果が失われ、低充填では良導電性を維持できなくなる場合がある。
【0043】
本発明における柔軟性樹脂とは、弾性率が、1~1000MPaの、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴムなどが挙げられるが、膜の伸縮性を発現させるためには、ゴムが好ましい。ゴムとしては、ウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴムや水素化ニトリルゴムなどのニトリル基含有ゴム、イソプレンゴム、硫化ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ化ビニリデンコポリマーなどが挙げられる。この中でも、ニトリル基含有ゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムが好ましく、ニトリル基含有ゴムが特に好ましい。本発明で好ましい弾性率の範囲は3~600MPaであり、さらに好ましく10~500MPa、なお好ましくは30~300MPaの範囲である。
ニトリル基を含有するゴムは、ニトリル基を含有するゴムやエラストマーであれば特に限定されないが、ニトリルゴムと水素化ニトリルゴムが好ましい。ニトリルゴムはブタジエンとアクリロニトリルの共重合体であり、結合アクリロニトリル量が多いと金属との親和性が増加するが、伸縮性に寄与するゴム弾性は逆に減少する。従って、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム中の結合アクリロニトリル量は18~50質量%が好ましく、40~50質量%が特に好ましい。
本発明における柔軟性樹脂の配合量は、導電粒子と柔軟性樹脂の合計に対して7~35質量%であり、好ましくは9~28質量%、さらに好ましくは12~20質量%である。溶剤については限定されず、公知の有機溶剤または水系溶媒を用いれば良い。
【0044】
本発明の下地層は、配線部の基材側の絶縁を担う層である。ここに絶縁とは電気絶縁に加え、機械的、化学的、生物学的な絶縁を含み、基材を透過してくる水分や化学物質、生体物質から導体層を絶縁する機能が必要である。
本発明の下地層は好ましくは、柔軟な高分子材料である。柔軟な高分子材料としては所謂ゴム、エラストマーと呼ばれる材料を使用できる。本発明のかかるゴム、エラストマーとしては、伸縮性導体組成物に用いられる柔軟性樹脂として例示された樹脂材料を好まし
く使用することができる。
本発明の下地層は繰り返し10%以上の伸縮が可能なストレッチャビリティを有する事が好ましい。また本発明の下地層は50%以上の破断伸度を有する事が好ましい。さらに本発明の下地層は引っ張り弾性率が10~500MPaであることが好ましい。
本発明の下地層は、コーティング液、浸漬液、あるいは印刷インク、印刷ペースト等の液状形態、ないしスラリー状態を介して基材上に適用されることが好ましい。またあらかじめ別行程でシート化しておき、ホットプレスなどの手法で布帛と貼り合わせることも可能である。
【0045】
本発明の電気配線は絶縁性のカバーコート層により被覆されることが好ましい。カバーコート層は下地層と同様にストレッチャビリティのある樹脂材料などにより構成することができる。
【0046】
本発明における着脱式電子ユニットとは、少なくとも生体に接する電極から得られる電気信号を配線ならびにコネクタを介して受けとって計測する機能を有し、さらに好ましくは演算機能、表示機能、記憶機能、通信機能を有する小型の電子ユニットである。本発明では既存の通信規格等に基づく機能によりAD変換された生体信号を、外部機器に通信する機能を有する着脱式電子ユニットを用いる事が好ましい。
【実施例0047】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
以下の実施例で使用した絶縁層形成用樹脂、導電性ペーストは以下のようにして調製した。
【0048】
[導電ペーストの調整]
バインダとして、三洋化成工業株式会社製コートロンKYU-1(ガラス転移温度-35℃)、銀粒子として三井金属鉱業株式会社製微小径銀粉SPH02J(平均粒子径1.2μm)、カーボン粒子としてライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製ケッチェンブラックEC600JD、溶剤としてブチルカルビトールアセテートを用い、バインダ10質量部、銀粒子70質量部、カーボン粒子1質量部、溶剤19質量部の配合において伸縮性導体形成用の導電ペーストを調整した。 まず、所定の溶剤量の半分量の溶剤にバインダ樹脂を溶解し、得られた溶液に金属系粒子、炭素系粒子を添加して予備混合の後、三本ロールミルにて分散することによりペースト化した。
得られた伸縮性導体形成用ペーストを厚さが25μmとなるようにスクリーン印刷し、100度にて20分間乾燥して得られた伸縮性導体層(伸縮性導体シート)は、初期の比抵抗が250μΩ・cmであり20%伸張を100回繰り返した後も導電性を維持するストレッチャビリティを有していた。
【0049】
[伸縮性カーボンペーストの調製]
表2に示す組成により、電極保護層用のカーボンペーストを調整した。
ガラス転移温度が-19℃のニトリルブタジエンゴム樹脂を40質量部、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製ケッチェンブラックEC300Jを20質量部、溶剤としてエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート50質量部を予備核酸の後三本ロールミルにて分散化し、伸縮性カーボンペーストを得た。
【0050】
[実施例1]
表面をシリコーン系離型剤により処理されたPET製離型シートに、電極部として伸縮
性カーボンペーストをスクリーン印刷し、さらに伸縮性導体ペーストを重ねて印刷し、さらに両面ホットメルトシート(絶縁下地層に相当)をラミネートして離型シート上に電極を形成した。
ポリエステル-綿-ポリウレタン混紡糸を用いたニット生地を電極支持部の基材とし、基材上に先に得られた電極をアイロンを用いて離型シートから基材上の所定位置に転写し、さらに電極部から基材の縫合部(接続端)まで銀コート紙をジグザグに刺繍して配線とした。
ついで、ポリエステル-綿-ポリウレタン混紡糸を用いたニット生地にて製作された
図1~
図2に示す構造を有するTシャツを衣類とし、電極支持部を
図8に示す袋綴じ構造として前身頃と後身頃との縫合部にて同時に縫い付けた。接続端(縫合部、縫い合わせ部)と電極端の最短距離は5mmとした。さらに電極から銀コート糸にて配引き出された配線に重なるように、前身頃と後身頃の脇腹部分の縫い目から、袖と後身頃の縫い目を経由し、前身頃と後身頃の肩部分の縫い目を利用して後頸部まで銀コート糸の配線を引き、後頸部に取り付けた脱着式電子ユニットとの接続用のスナップホック(コネクタ)と接続し、Tシャツタイプの生体情報計測用衣類を得た。得られた生体情報計測用衣類の写真を
図12に、さらに電極支持部付近の拡大写真を
図13に示す。
【0051】
[比較例1]
比較例1として、実施例1と同じ素材を用い、
図1~
図2に示す構造において電極支持部の周囲をすべて衣類に縫い付けた以外は同じ様に縫製してラグラン袖型Tシャツタイプの生体情報計測用衣類
【0052】
実施例および比較例にて得られたTシャツ型に、着脱式電子ユニットとして、スマートホンへの無線データ伝送機能を有するユニオンツール社製の心拍センサWHS-2を接続し、測定と同時にWHS-2から心電信号をスマートホンに発信し、同心拍センサWHS-2専用のアプリ「myBeat」を組み込んだアップル社製スマートホンで心拍データを受信し、画面表示できるように設定し、さらにRRI(ms(ミリ秒))とHR(bpm(心拍数/分))を測定できるようにした。なおRRIは心電における最も電位差の大きな波であるR波と次のR波との間の時間間隔であり、RRIから(心拍数)=60/(R-R時間(秒))[bpm]を算出することができる。
以上のようにして心拍計測機能を持つ生体情報計測用衣類を用いた心電情報計測システムを構成した。
【0053】
[着用・運動試験]
実施例1と比較例1で得られた各生体情報計測用衣類を被験者に着用させ、表1に示す動作プロトコルに従った運動を実施させ、その間のRRIとHRを計測した。なお試験条件は以下の通りである。
・試験環境 20℃ 50%(動作プロトコル終了時、汗はかいていない)
・電極部はプロトコル開始時に手で押さえ、その後は終了時まで手で押さえない。
・電極部と脇の衣服圧を開始前に計測し
電極部を0.8±0.05kPa、
脇0.7±0.05kPa
となるように調整する。
・着用運動試験後、次の試験を行うまでの間は20分以上あけて被験者に十分な休養を与える。
【0054】
【0055】
得られた試験結果を
図14と
図15に示す。
図14は実施例の生体情報計測用衣類を着用した場合の測定結果である。腕を上下させるタイミングで測定値がややばらついているが、概ね安定した測定が行えていることが解る。
図15は比較例の生体情報計測用衣類を着用した場合の測定結果である。腕の上下時だけでなく運動全般において測定値のバラツキが生じており、運動時に電極と肌のズレが生じている現象が示唆される。
【0056】
[実施例2]
表面をシリコーン系離型剤により処理されたPET製離型シートに、電極部分とコネクタ部が切り抜かれた所定形状のウレタンシート(絶縁カバー層に相当)を仮接着し、電極部分に伸縮性カーボンペーストをスクリーン印刷し、さらに伸縮性導体ペーストを電極部分からコネクタ位置まで所定パターンで印刷し、さらにウレタンシートを覆うように両面ホットメルトシート(絶縁下地層に相当)をラミネートして離型シート上に電極と配線を形成した。
ついで、ポリエステル-綿-ポリウレタン混紡糸を用いたニット生地にて製作された
図16~
図20に示す構造を有するブラジャー付きキャミソールの電極支持部の所定位置に、先に得られた離型シート上に形成された電極と配線を(電極支持部の生地に両面ホットメルトシート側が触れるように)重ね、ホットプレスにより加熱加圧することにより電極と配線を絶縁下地層、絶縁カバー層とともに電極支持部に転写した。その後、
図20に示す断面構造となるように所定位置に補強材を設置し、コネクタとしてのスナップホックを取り付け、さらに肌当てを取り付け、本発明の構成を有するブラジャー付きキャミソールを得た。
得られたブラジャー付きキャミソールの外観写真を
図21、
図22、
図23に示す。
図21は前面側から撮影した外観写真である。
図22は後面側から、係合部を外して後開き部を広げて電極支持部が見えるようにして撮影した写真である。
図23は後面側から係合部を外して後開き部を広げ他状態にて、さらに電極支持部を裏返してコネクタとして機能するスナップホックが見えるようにして撮影した写真である。
【0057】
[比較例2]
比較例として、実施例と同じ素材を用い、
図16~
図18に示す構造において電極支持部を取り付けない以外は同じ様に縫製してブラジャー付きキャミソールを作製し、得られた電極支持部のないブラジャー付きキャミソールのカップの下部分(実施例の電極支持部がある場合に電極と配線が位置するに相当する部分)に、実施例と同様にホットプレスに
より加熱加圧することにより電極と配線を絶縁下地層、絶縁カバー層とともに転写し、さらにスナップホックを、着脱式電子ユニットが当該衣類の外側に位置するように取り付け、本発明の比較例用のブラジャー付きキャミソールを得た。
【0058】
実施例2および比較例2にて得られたブラジャー付きキャミソールに、着脱式電子ユニットとして、スマートホンへの無線データ伝送機能を有するユニオンツール社製の心拍センサWHS-2を接続し、測定と同時にWHS-2から心電信号をスマートホンに発信し、同心拍センサWHS-2専用のアプリ「myBeat」を組み込んだアップル社製スマートホンで心拍データを受信し、画面表示できるように設定し、さらにRRI(ms(ミリ秒))とHR(bpm(心拍数/分))を測定できるようにした。なおRRIは心電における最も電位差の大きな波であるR波と次のR波との間の時間間隔であり、RRIから(心拍数)=60/(R-R時間(秒))[bpm]を算出することができる。
以上のようにして心拍計測機能を持つ生体情報計測用衣類(ブラジャー付きキャミソール)を用いた心電情報計測システムを構成した。
以下実施例1と同様に着用・運動試験を実施した
【0059】
得られた試験結果を
図24と
図25に示す。
図24は実施例の生体情報計測用衣類を着用した場合の測定結果である。腕を上下させるタイミングで測定値がややばらついているが、概ね安定した測定が行えていることが解る。
図15は比較例の生体情報計測用衣類を着用した場合の測定結果である。腕の上下時だけでなく腕を前横と動かした際にも測定値のバラツキが生じており、特に腕の横方向の動きによって、電極と肌のズレが生じている現象が示唆される。
以上述べてきたように、本発明の生体情報計測用衣類は、男性用、女性用、上半身用、下半身用を問わず、広範囲に電極付きの生体情報計測用衣類に適用することができ、各種スポーツ、格闘技、作業現場、警護、等の際に用いる防具用衣類に適用することが出来る。また本発明は着用者が寝ている際に介護者や医療従事者が衣類を着脱するケースが多い病院用衣類、介護用衣類として適用することができる。さらに本発明の生体情報計測用衣類は、測定に関するパーツの存在が衣類の外側から見えにくいために外観デザインに優れた生体情報計測用衣類を提供でき、より気軽に生体情報計測用衣類を着用することが可能となり、同時に高い精度での生体情報計測が可能であるため、産業界に大きく寄与することが期待される。