(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002718
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】金属酸化物濃度勾配を有するガラスおよびガラスセラミック
(51)【国際特許分類】
C03C 3/087 20060101AFI20221227BHJP
C03C 3/097 20060101ALI20221227BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C03C3/087
C03C3/097
C03C21/00 101
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169097
(22)【出願日】2022-10-21
(62)【分割の表示】P 2022032473の分割
【原出願日】2015-10-08
(31)【優先権主張番号】62/061,372
(32)【優先日】2014-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/117,585
(32)【優先日】2015-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/171,110
(32)【優先日】2015-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/194,967
(32)【優先日】2015-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】グアンリー フゥ
(72)【発明者】
【氏名】シャーリーン マリー スミス
(72)【発明者】
【氏名】ヂョンヂー タン
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン アルヴィン ティエトジェ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】改善された破壊抵抗を示す薄いガラス系物品を提供する。
【解決手段】約3ミリメートル以下の厚さを画成する、第1の表面とその第1の表面の反対にある第2の表面、および応力プロファイルであって、約0・tから0.3・tまで、および0.7・t超からの厚さ範囲の間の応力プロファイルの全ての点が、約-0.1MPa/マイクロメートル未満、または約0.1MPa/マイクロメートル超の正接を持つ応力プロファイルを有するガラス系物品を提供する。いくつかの実施の形態において、このガラス系物品は、その厚さの少なくとも一部(例えば、0・tから約0.3・t)に沿って変動するゼロではない金属酸化物濃度を有する。
【選択図】
図39
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基体において、モル%で表して、
60モル%から72モル%の量のSiO2、
5モル%から20モル%の量のAl2O、
2モル%から4モル%の量のMgO、
6モル%から10モル%の量のLi2O、
0モル%から10モル%の量のNa2O、
超ゼロから15モル%以下の量のアルカリ土類金属酸化物であって、前記アルカリ土類金属酸化物は超ゼロから2モル%以下の量のCaOを含み、
0モル%から4モル%の量のB2O3、
超ゼロから2モル%までの量のK2O、
を含む組成を有し、
前記組成は、ZnOを実質的に含まず、
Li2O+Na2O+K2Oの合計は、5モル%から18モル%であり、
R2Oに対するLi2Oの比は、0.5~1.0であり、R2Oは、Li2O+Na2O+K2Oの合計である、ガラス基体。
【請求項2】
前記アルカリ土類金属の総量は、超ゼロから14モル%以下である、請求項1に記載のガラス基体。
【請求項3】
前記アルカリ土類金属の総量は、超ゼロから12モル%以下である、請求項1に記載のガラス基体。
【請求項4】
前記アルカリ土類金属の総量は、2.5モル%から8モル%である、請求項1に記載のガラス基体。
【請求項5】
前記組成は、0モル%から10モル%の量のP2O5を有する請求項1に記載のガラス基体。
【請求項6】
前記組成は、1モル%未満の量のFe2O3を含む、請求項1記載のガラス基体。
【請求項7】
前記組成は、0.1モル%未満の量のFe2O3を含む、請求項1記載のガラス基体。
【請求項8】
前記組成は、0.1001モル%未満の量のAs2O3を含む、請求項1記載のガラス基体。
【請求項9】
前記Na2Oの濃度は変動する、請求項1記載のガラス基体。
【請求項10】
前記ガラス基板は、イオン交換可能かつ非晶質である、請求項1記載のガラス基体。
【請求項11】
前記ガラス基体は、0.4ミリメートルから3ミリメートルの厚さおよび、100MPaから250MPaの最大中央張力を有する、請求項1記載のガラス基板。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2015年7月21日に出願された米国仮特許出願第62/194967号、2015年6月4日に出願された米国仮特許出願第62/171110号、2015年2月18日に出願された米国仮特許出願第62/117585号、2014年10月8日に出願された米国仮特許出願第62/061372号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【0002】
また、本願は、2022年3月3日に出願された特願2022-032473号の分割出願である。
【技術分野】
【0003】
本開示は、改善された破壊抵抗を含む改善された損傷抵抗を示すガラス系物品に関し、より詳しくは、ゼロではない金属酸化物濃度勾配または厚さの相当な部分に沿って変動する金属酸化物濃度を示すガラスおよびガラスセラミック物品に関する。
【背景技術】
【0004】
ガラス系物品は、そのような物品の表面に大きい傷をもたらし得る激しい衝撃をしばしば経験する。そのような傷は、表面から約200マイクロメートルまでの深さにまで延在することがある。従来、そのような傷をガラスにもたらすかもしれない破損を防ぐために、熱強化されたガラスが使用されてきた。何故ならば、熱強化されたガラスは、大抵、大きい圧縮応力(CS)層(例えば、ガラスの全厚の約21%)を示し、これが、傷の伝搬を防ぎ、それゆえ、破損を防ぐことができるからである。熱強化により生じる応力プロファイルの一例が
図1に示されている。
図1において、熱処理されたガラス系物品100は、第1の表面101、厚さt
1、および表面CS110を有する。このガラス系物品100は、第1の表面101から、ここに定義されるような層の深さ(DOL)130まで減少するCSを示し、この層の深さで、応力は、圧縮応力から引張応力に変化し、最大中央張力(CT)120に到達する。
【0005】
熱強化は、現在、厚いガラス系物品(すなわち、厚さt1が約3ミリメートル以上のガラス系物品)に限られている。何故ならば、熱強化および所望の残留応力を達成するために、そのような物品のコアと表面の間に、十分な温度勾配が形成されなければならないからである。そのような厚い物品は、ディスプレイ(例えば、携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステムなどを含む家庭用電化製品)、建物(例えば、窓、シャワーパネル、カウンター甲板など)、輸送機関(例えば、自動車、列車、航空機、航海用船舶など)、電化製品、または優れた破壊抵抗を要求するが薄い軽量の物品を必要とする任意の用途などの多くの用途において、望ましくないかまたは実用的ではない。
【0006】
公知の化学強化されたガラス系物品は、熱強化されたガラス系物品の応力プロファイルを示さないが、化学強化は、熱強化と同じ様式でガラス系物品の厚さにより制限されない。化学強化(例えば、イオン交換法による)により生じる応力プロファイルの一例が、
図2に示されている。
図2において、化学強化されたガラス系物品200は、第1の表面201、厚さt
2、および表面CS210を有する。このガラス系物品200は、第1の表面201から、ここに定義されるようなDOC230まで減少するCSを示し、この層の深さで、応力は、圧縮応力から引張応力に変化し、最大CT220に到達する。
図2に示されるように、そのようなプロファイルは、平らなCT領域、もしくは引張応力が一定またはほぼ一定のCT領域、および大抵、
図1に示された最大中央値と比べて、より小さい最大CT値を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、改善された破壊抵抗を示す薄いガラス系物品が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様は、厚さ(t)(例えば、約3ミリメートル以下、約1ミリメートル以下、または約0.5ミリメートル以下)を画成する、第1の表面とその第1の表面の反対にある第2の表面、およびその厚さに沿って延在する応力プロファイルを有するガラス系物品に関する。1つ以上の実施の形態において、約0・tから0.3・tまで、および0.7・t超からの厚さ範囲の間の応力プロファイルの全ての点が、約-0.1MPa/マイクロメートル未満、または約0.1MPa/マイクロメートル超の正接を持つ。
【0009】
実施の形態において、そのガラス系物品は、その厚さの相当な部分または全厚に沿って変動するゼロではない金属酸化物濃度を有する。金属酸化物濃度の変動は、ここでは、勾配と称されることがある。いくつかの実施の形態において、金属酸化物の濃度は、約0・tから0.3・tまでの厚さ範囲に沿って、ゼロではなく、変動する。いくつかの実施の形態において、金属酸化物の濃度は、約0・tから0.35・tまで、約0・tから0.4・tまで、約0・tから0.45・tまで、または約0・tから0.48・tまでの厚さ範囲に沿って、ゼロではなく、変動する。この金属酸化物は、そのガラス系物品に応力を生じさせると記載されることがある。金属酸化物濃度の変動は、約100マイクロメートルの厚さセグメントに沿って約0.2モル%の変化を含むことがある。この濃度の変動は、上記の厚さ範囲に沿って連続的であることがある。いくつかの実施の形態において、濃度の変動は、約10マイクロメートルから約30マイクロメートルの範囲の厚さセグメントに沿って連続的であることがある。
【0010】
いくつかの実施の形態において、金属酸化物の濃度は、第1の表面から、その第1の表面と第2の表面の間の地点まで減少し、その地点から第2の表面まで増加する。
【0011】
ここに用いたように、その金属酸化物は、強化イオンまたはガラス系物品にCSを生じさせるイオンを含む。いくつかの実施の形態において、その金属酸化物は、ガラス系基体中の全金属酸化物の全ての最大のイオン直径を有する。1つ以上の実施の形態において、金属酸化物は、アルカリ金属酸化物、または異なる金属酸化物またはアルカリ金属酸化物の組合せを含むことがある。例示の金属酸化物としては、Ag2Oが挙げられる。例示のアルカリ金属酸化物としては、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、およびCs2Oのいずれか1つ以上が挙げられる。その金属酸化物は、このガラス系物品の相当な部分または全厚に沿って変動する、その特定の金属酸化物のゼロではない濃度で存在してよい。いくつかの実施の形態において、金属酸化物の濃度は、第1の表面から、第1の表面と第2の表面の間の地点まで減少し、その地点から第2の表面まで増加する。その金属酸化物の濃度は、その地点でゼロではないであろう。
【0012】
その金属酸化物の濃度は、その厚さに亘り約0.05モル%以上または約1モル%以上であることがある。例えば、Na2Oの濃度は、そのガラス系物品の厚さに亘り約0.05モル%以上であってよいが、Na2Oのそのような濃度は、第1の表面から、第1の表面と第2の表面の間の地点まで減少し、その地点から第2の表面まで増加する。ある場合には、ガラス系物品の全厚に沿った金属酸化物の総濃度は、約1モル%から約20モル%の範囲にある。いくつかの実施の形態において、その表面近くの金属酸化物の濃度は、約0.4・tから約0.6・tの範囲の深さでのその同じ金属酸化物の濃度の1倍または1.5倍(例えば、5倍、10倍、15倍、またさらには20倍)より大きいことがある。金属酸化物の濃度は、濃度プロファイル(すなわち、ここに記載されたような勾配または変動)を示すように変更される前の、ガラス系物品中のその金属酸化物濃度の基準量から決定されることがある。
【0013】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス系物品は、第1の金属酸化物の濃度が、約0tから約0.5tの第1の厚さ範囲に沿って約0モル%から約15モル%の範囲にあり、第2の金属酸化物の濃度が、約0マイクロメートルから約25マイクロメートルの第2の厚さ範囲に沿って約0モル%から約10モル%の範囲にあるように、第1の金属酸化物の濃度および第2の金属酸化物の濃度を有する。そのガラス系物品は、随意的な第3の金属酸化物の濃度を有することがある。第1の金属酸化物はNa2Oであることがあり、第2の金属酸化物がK2Oであることがある。
【0014】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス系物品は、約150MPa以上または約200MPa以上の表面CSを有する。1つ以上の実施の形態において、そのガラス系物品は、約300MPa超、約600MPa超、または約700MPa超の表面CSを有することがある。そのガラス系物品は、約0.4・t以上の化学深さを示すことがある。
【0015】
いくつかの実施の形態において、前記ガラス系物品は、第1の表面から約0.1・t以上のDOCまで延在するCS層を有することがある。ある場合には、そのガラス系物品はCTの層を有し、この層は、厚さtの相当な部分に沿って変動するゼロではない金属酸化物濃度を有する。このCTの層は、表面CSに対する最大CTの比が約0.01から約0.5の範囲にあるような最大CTを示すことがある。この最大CTは約25MPa以上であることがある。
【0016】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス系物品は、そのガラス系物品が割れたときに、ガラス系物品が1平方インチ(約6.4516cm2)当たり少なくとも2の破片に割れるような破壊抵抗を示すことがある。ある場合には、そのガラス系物品は、1平方インチ(約6.4516cm2)当たり3以上の破片、5以上の破片、または10以上の破片に割れることがある。
【0017】
ある場合には、前記ガラス系物品は、約0J/m2超から20J/m2未満の貯蔵引張エネルギーを示すことがある。
【0018】
前記ガラス系物品の1つ以上の実施の形態のCT領域は、式:
応力(x)=MaxCT-(((MaxCT・(n+1))/0.5n)・|(x/t)-0.5|n)
により定義される応力プロファイルを示すことがあり、式中、MaxCTは最大CT値であり、MPaの単位の正の値として与えられ、xは、マイクロメートルの厚さ(t)に沿った位置であり、nは1.5と5の間(または1.8から約2)である。
【0019】
前記ガラス系物品は、非晶質構造、結晶質構造またはその組合せを含むことがある。そのガラス系物品は、透明または不透明であってよい。いくつかの実施の形態において、そのガラス系物品は、実質的に白色または実質的に黒色を示す。それに加え、またはそれに代えて、そのガラス系物品は、特定の色を付与する着色剤を含んでもよい。
【0020】
この開示の第2の態様は、モル%で、約68から約75の範囲の量のSiO2、約12から約15の範囲の量のAl2O3、約0.5から約5の範囲の量のB2O3、約2から約8の範囲の量のLi2O、約0から約6の範囲の量のNa2O、約1から約4の範囲の量のMgO、約0から約3の範囲の量のZnO、および約0から約5の範囲の量のCaOを含む組成を有する非晶質ガラス基体に関する。いくつかの実施の形態において、そのガラス基体は、約0.5から約1の範囲のR2Oに対するLi2Oの比;約-5から約0の範囲にあるR2Oの総量とAl2O3の量の間の差;約0から約3の範囲にあるRxOの総量(モル%)とAl2O3の量の間の差;および約0から約2の範囲にあるROの総量(モル%)に対するMgOの量(モル%)の比のいずれか1つ以上を示す。
【0021】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス基体はイオン交換可能である。他の実施の形態において、そのガラス基体はイオン交換法により強化されている。
【0022】
この開示の第3の態様は、ここに記載されたような破壊抵抗のガラス系物品を形成する方法に関する。その方法の実施の形態は、約3ミリメートル以下の厚さを画成する、第1の表面および第2の表面を有するガラス系基体を提供する工程、およびCT層およびCS層を有するガラス系基体に応力プロファイルを生じさせる工程であって、そのCS層は、表面CS、約0.4t以上の化学深さおよび約0.1・t以上のDOCを有し、そのCT層は最大CTを有し、表面CSに対する最大CTの比は約0.01から約0.5である工程を有してなる。
【0023】
追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明白となるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む、ここに記載されように実施の形態を実施することによって認識されるであろう。
【0024】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、単に説明のためであり、請求項の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供することが意図されているのが理解されよう。添付図面は、さらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、1つ以上を実施の形態を図解しており、説明と共に、様々な実施の形態の原理および作動を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】公知の熱強化されたガラス系物品の厚さに亘る断面図
【
図2】公知の化学強化されたガラス系物品の厚さに亘る断面図
【
図3】本開示の1つ以上の実施の形態による化学強化されたガラス系物品の厚さに亘る断面図
【
図5】公知の化学強化されたガラス系物品および本開示の1つ以上の実施の形態によるガラス系物品におけるNa
2Oの濃度を示すグラフ
【
図6】本開示の1つ以上の実施の形態による、イオン交換時間の関数としてのCT値およびDOC値を示すグラフ
【
図7】公知の化学強化されたガラス系物品および本開示の1つ以上の実施の形態によるガラス系物品の深さの関数としての応力プロファイル比較するグラフ
【
図8】公知の化学強化されたガラスおよびガラスセラミックの応力プロファイルのグラフ
【
図9】本開示の1つ以上の実施の形態によるガラスおよびガラスセラミックの応力プロファイルのグラフ
【
図9A】実施例3Dの落下試験における破損高さのグラフ
【
図10】化学強化されたガラス系物品の公知の応力プロファイルおよび本開示の1つ以上の実施の形態によるガラス系物品の応力プロファイルを比較するグラフ
【
図11】厚さの関数としての実施例4A~4Dの応力プロファイルを示すグラフ
【
図12】実施例4B~4Dに関する個別の貯蔵引張エネルギーデータ点を示すグラフ
【
図13】実施例4B~4Dにおける深さの関数としてのK
2OおよびNa
2Oの濃度を示すグラフ
【
図14】
図13と同じデータを示すが、深さの関数としてのNa
2Oの濃度をより明白に示すために目盛りが異なるグラフ
【
図15】深さの関数としての実施例4Aおよび4C~4Fの応力プロファイルを示すグラフ
【
図17】深さの関数としての実施例5A~5Gの応力プロファイルを示すグラフ
【
図18】第2および/または第3のイオン交換工程の期間の関数としての実施例5A~5GのDOC値を示すグラフ
【
図19】第2および/または第3のイオン交換工程の期間の関数としての実施例5A~5GのCT値を示すグラフ
【
図20】深さの関数としての実施例6A-1から6A-6の応力プロファイルを示すグラフ
【
図21】イオン交換時間の関数としての実施例6A-1から6A-6のCT値およびDOC値を示すグラフ
【
図22】深さの関数としての実施例6B-1から6B-6の応力プロファイルを示すグラフ
【
図23】イオン交換時間の関数としての実施例6B-1から6B-6のCT値およびDOC値を示すグラフ
【
図24】深さの関数としての実施例6C-1から6C-6の応力プロファイルを示すグラフ
【
図25】イオン交換時間の関数としての実施例6C-1から6C-6のCT値およびDOC値を示すグラフ
【
図26】深さの関数としての実施例6D-1から6D-6の応力プロファイルを示すグラフ
【
図27】イオン交換時間の関数としての実施例6D-1から6D-6のCT値およびDOC値を示すグラフ
【
図28】実施例7A~7Gに関するイオン交換時間の関数としてCTを示すグラフ
【
図29】両方とも、実施例7A~7Gに関するイオン交換時間の関数としての、中央張力値および貯蔵引張エネルギーの変化を示すグラフ
【
図30】深さの関数としての比較例8Aおよび実施例8Bの応力プロファイルを示すグラフ
【
図31】CTの関数としての、比較例8Aおよび実施例8Bの貯蔵引張エネルギーを示すグラフ
【
図32】CTの関数としての、比較例8Cおよび実施例8Dの貯蔵引張エネルギーを示すグラフ
【
図33】実施例2、6および9B、並びに比較例9Aに関する落下破壊高さを示すグラフ
【
図34】実施例2、6および9B、並びに比較例9Bに関する研磨時リング・オン・リング結果を示すグラフ
【
図35】実施例2および9Bに関する4点曲げ結果を示すワイブル分布プロット
【
図36】本開示に記載される研磨紙上反転球(inverted ball on sandpaper)(IBoS)試験を行うために使用される装置の実施の形態の概略断面図
【
図37】携帯用または手持ち式電子機器に使用されるガラス系物品に典型的に起こる、曲げに加えた損傷の導入による破損の支配的メカニズムを示す概略断面図
【
図38】ここに記載された装置においてIBoS試験を実施する方法の流れ図
【
図39】本開示の1つ以上の実施の形態による様々な応力プロファイルを示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで、その例が付随の実施例および図面に示されている、様々な実施の形態を詳しく参照する。
【0027】
以下の説明において、図面に示されたいくつかの図に亘り、同様の参照文字が、同様のまたは対応する部品を指す。特に明記のない限り、「上部」、「下部」、「外方」、「内方」などの用語は、便宜上の単語であり、制限用語と考えるべきではないことも理解される。その上、群が、複数の要素およびその組合せの群の内の少なくとも1つを含むと記載されているときはいつでも、その群は、個別にまたは互いとの組合せのいずれかで、列挙されたそれらの要素のいくつを含んでも、から実質的になっても、またはからなってもよいことが理解される。同様に、群が、複数の要素またはその組合せの群の内の少なくとも1つからなると記載されているときはいつでも、その群は、個別にまたは互いとの組合せのいずれかで、列挙されたそれらの要素のいくつからなってもよいことが理解される。特に明記のない限り、値の範囲は、列挙されている場合、その範囲の上限と下限の両方、並びにそれらの間の任意の範囲も含む。ここに用いたように、特に明記のない限り、名詞は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」の対象を指すことが意図されている。本明細書および図面に開示された様々な特徴は、いずれの組合せにも、また全ての組合せにも使用して差し支えないことも理解される。
【0028】
ここに用いたように、「ガラス系物品」および「ガラス系基体」という用語は、全てがまたは部分的にガラスから作られた任意の物体を含むために最も広い意味で使用されている。ガラス系物品は、ガラス材料および非ガラス材料の積層体、ガラス材料および結晶質材料の積層体、およびガラスセラミック(非晶質相および結晶質相を含む)を含む。特に明記のない限り、全ての組成は、モルパーセント(モル%)で表されている。
【0029】
「実質的に」および「約」という用語は、任意の定量比較、値、測定、または他の表現に寄与するであろう固有の不確実性の度合いを表すためにここに使用されることがあることを留意のこと。これらの用語は、問題となっている主題の基本機能を変えずに、定量的表現が、述べられた基準から変動するかもしれない度合いを表すためにもここに使用される。したがって、例えば、「MgOを実質的に含まない」ガラス系物品は、MgOが積極的に添加されていないか、またはガラス系物品中にバッチ配合されていないが、汚染物質としてごく少量存在することもあるものである。
【0030】
概して図面を、特に
図1~3を参照すると、図解は、特定の実施の形態を記載する目的のためであり、本開示または付随する特許請求の範囲をそれに制限することは意図されていないことが理解されよう。図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれておらず、図面の特定の特徴および特定の視野は、明確さおよび簡潔さのために、縮尺または図式で誇張されて示されることがある。
【0031】
ここに用いたように、DOCは、ガラス系物品内の応力が圧縮応力から引張応力に変化する深さを称する。DOCでは、応力は、正の(圧縮)応力から負の(引張)応力に交差し(例えば、
図1における130)、それゆえ、ゼロの応力値を示す。
【0032】
ここに用いたように、「化学深さ」、「層の化学深さ」および「化学層の深さ」という用語は、互いに交換可能に使用されることがあり、金属酸化物またはアルカリ金属酸化物のイオン(例えば、金属イオンまたはアルカリ金属イオン)がガラス系物品中に拡散する深さおよびイオンの濃度が、電子プローブマイクロアナリシス(EPMA)またはグロー放電発光分析(GD-OES)により決定される最小値に到達する深さを称する。詳しくは、Na2O拡散の深さまたはNa+イオン濃度は、EPMAおよびFSM(下記により詳しく記載されている)を使用して決定してよい。
【0033】
当該技術分野で通常使用されている慣例によれば、圧縮は負の(<0)応力と表され、張力は正(>0)の応力と表される。しかしながら、この説明を通じて、CSは正または絶対値として表される-すなわち、ここに挙げられるように、CS=|CS|である。
【0034】
携帯用電子機器およびタッチ操作可能なディスプレイ用のカバーガラスとして使用されることがある、アルカリ含有ガラスを含むケイ酸塩ガラスなどのガラス、およびガラスセラミックを含む薄い化学強化されたガラス系物品がここに記載されている。そのガラス系物品は、ディスプレイ(またはディスプレイ物品)(例えば、広告用掲示板、店頭システム(point-of-sale systems)、コンピュータ、ナビゲーションシステムなど)、建築物品(壁、建具、パネル、窓など)、輸送物品(例えば、自動車用途、列車、航空機、航海用船舶など)、電化製品(例えば、洗濯機、ドライヤー、食洗機、冷蔵庫など)、またはいくらかの破壊抵抗を要求する任意の物品に使用されることもある。
【0035】
特に、ここに記載されたガラス系物品は、薄いものであり、典型的に、厚いガラス物品(例えば、厚さが約2mmまたは3mm以上)を熱強化することによってしか達成できない応力プロファイルを示す。そのガラス系物品は、その厚さに沿って独特な応力プロファイルを示す。ある場合には、そのガラス系物品は、熱強化ガラス物品よりも大きい表面CSを示す。1つ以上の実施の形態において、ガラス系物品は、そのガラス系物品またはそれを含む装置が硬質粗面上に落下した場合でさえ、そのガラス系物品が相当改善された破壊抵抗を示すような、大きい深さの圧縮層(CSが、公知の化学強化されたガラス系物品よりも徐々に増減する)を示す。1つ以上の実施の形態のガラス系物品は、いくつかの公知の化学強化されたガラス基体よりも大きい最大CT値を示す。
【0036】
CSおよび圧縮応力層の深さ(「DOL」)は、当該技術分野で公知の手段を使用して測定される。DOLは、DOLが、株式会社ルケオ(日本国、東京都)により製造されているFSM-6000などの市販の計器を使用した表面応力計測器(FSM)により決定される測定技法によって、DOCから区別され、CSおよび層の深さを測定する方法は、「Standard Specification for Chemically Strengthened Flat Glass」と題するASTM 1422C-99、および「Standard Test Method for Non-Destructive Photoelastic Measurement of Edge and Surface Stresses in Annealed, Heat-Strengthened, and Fully-Tempered Flat Glass」と題するASTM1279.19779に記載されており、これらの内容をここに全て引用する。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関連する応力光係数(SOC)の正確な測定に依存する。次に、SOCは、その内容がここに全て引用される、両方とも「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題するASTM標準C770-98(2008)に記載されているファイバおよび4点曲げ法、並びにバルクシリンダ法などの当該技術分野で公知の方法により測定される。
【0037】
CS層がガラス系物品内のより深い深さまで延在している強化ガラス系物品について、FSM技法は、観測されたDOL値に影響するコントラスト問題を被ることがある。より深いDOL値では、TEスペクトルとTMスペクトルの間のコントラストが不適切となり、それゆえ、TEスペクトルとTMスペクトルの間の差の計算-DOLの決定-が、より難しくなるであろう。さらに、FSM技法は、応力プロファイル(すなわち、ガラス系物品内の深さの関数としてのCSの変動)を決定することができない。その上、FSM技法は、例えば、ナトリウムのリチウムによるものなどの、特定の元素のイオン交換から生じるDOLを決定することができない。
【0038】
強化ガラス系物品に関するDOCおよび応力プロファイルをより正確に決定するために、下記に記載される技法が開発された。
【0039】
「Systems And Methods for Measuring the Stress Profile of Ion-Exchanged Glass」と題する、2011年5月25日に出願された、米国仮特許出願第61/489800号に優先権を主張する、Rostislav V. Roussev等により2012年5月3日に出願された、同じ名称の米国特許出願第13/463322号明細書(以後、「Roussev I」と称する)において、焼き入れまたは化学強化ガラスの詳細かつ正確な応力プロファイル(深さの関数としての応力)を入手する2つの方法が開示されている。TMおよびTE偏波に関する結合光学モードのスペクトルが、プリズム結合技法により収集され、全部が使われて、詳細かつ正確なTMおよびTE屈折率プロファイルnTM(z)およびnTE(z)を得る。先の出願の内容を、ここに全て引用する。
【0040】
1つの実施の形態において、逆ウェンツェル・クラマース・ブリルアン(IWKB)法を使用することにより、モードスペクトルから詳細な屈折率プロファイルが得られる。
【0041】
別の実施の形態において、屈折率プロファイルの形状を描写する所定の関数形式の数値計算スペクトルに測定モードスペクトルを当てはめ、最良の適合から関数形式のパラメータを得ることにより、詳細な屈折率プロファイルが得られる。応力光学係数(SOC)の公知の値を使用することにより得られたTM屈折率プロファイルおよびTE屈折率プロファイルの差から、詳細な応力プロファイルS(z)が計算される:
S(z)=[nTM(z)-nTE(z)]/SOC (2)
SOCの値が小さいために、任意の深さzでの複屈折nTM(z)-nTE(z)は、屈折率nTM(z)およびnTE(z)のいずれかのわずかな割合(典型的に1%程度)である。測定したモードスペクトルにおけるノイズによる歪みが著しくはない応力プロファイルを得るには、0.00001RIU程度の精度でモード実効屈折率を決定する必要がある。Roussev Iに開示された方法は、収集されたTEおよびTMモードスペクトルまたはモードスペクトルの画像におけるノイズおよび/または不十分なコントラストにかかわらず、測定されたモード屈折率に関するそのような高精度を確保するために、生データに適用される技法をさらに含む。そのような技法としては、サブピクセル解像度のモードに対応する極値の位置を見つけるための、ノイズ平均化、フィルタリング、および曲線の当てはめが挙げられる。
【0042】
同様に、「Systems and Methods for Measuring Birefringence in Glass and Glass-Ceramics」と題する、2012年9月28日に出願された、米国仮特許出願第61/706891号に優先権を主張する、Rostislav V. Roussev等により2013年9月23日に出願された、同じ名称の米国特許出願第14/033954号明細書(以後、「Roussev II」と称する)には、不透明なガラスおよびガラスセラミックを含む、ガラスおよびガラスセラミックの表面上の複屈折を光学的に測定するための装置および方法が開示されている。別個のモードスペクトルが特定されるRoussev Iとは異なり、Roussev IIに開示された方法は、プリズム結合測定形式においてプリズム・サンプル界面で反射したTMおよびTE光に関する角度強度分布の綿密な解析による。先の出願の内容を、ここに全て引用する。
【0043】
それゆえ、角度に対する反射した光強度の正確な分布は、別個のモードの位置だけしか求められない従来のプリズム結合応力測定よりも、ずっとより重要である。この目的のために、Roussev IおよびRoussev IIに開示された方法は、基準画像または信号に対する正規化を含む強度スペクトルの正規化、検出器の非線形性の補正、画像ノイズおよびスペックルを減少させるための多数の画像の平均化、および強度角スペクトルをさらに平滑化するためのデジタル・フィルタリングの適用のための技法を含む。その上、1つの方法は対比信号の形成を含み、これは、加えて、TM信号とTE信号の間の形状の基本的な相違を補正するために正規化されている。上述した方法は、ほぼ同一の2つの信号を得ること、および最も急勾配の領域を含む信号の部分を比較することによりサブピクセル解像度でその相互の変位を決定することに依存する。複屈折はその相互の変位に比例しており、係数は、プリズムの形状および屈折率、レンズの焦点距離、およびセンサ上のピクセル間隔を含む装置の設計により決まる。前記応力は、測定された複屈折を公知の応力光学係数で乗じることにより決定される。
【0044】
開示された別の方法において、上述した信号処理技法のいくつかの組合せの適用後に、TMおよびTE信号の導関数が決定される。TMおよびTE信号の最大導関数の位置は、サブピクセル解像度で得られ、複屈折は、装置パラメータにより前述したように決定された係数で、先の2つの最大値の間隔に比例する。
【0045】
正確な強度抽出のための要件に関連して、前記装置は、照明の角度均一性を改善するためのプリズム入射表面に近接したまたはその上の光散乱表面(静的ディフューザ)、光源がコヒーレントまたは部分コヒーレントである場合のスペックル低減のための移動ディフューザ、および強度信号を歪ませる傾向にある寄生背景を低減させるための、プリズムの入力面と出力面の部分上並びにプリズムの側面上の光吸収コーティングなどのいくつかの機能強化を備えている。その上、その装置は、不透明材料の測定を可能にする赤外光源を備えることがある。
【0046】
さらに、Roussev IIには、記載の方法および装置の機能強化により測定が可能になる、研究サンプルの減衰係数および波長範囲が開示されている。その範囲は、αsλ<250πσsにより定義され、式中、αsは、測定波長λでの光減衰係数であり、σsは、実際の適用に典型的に要求される制度で測定されるべき応力の期待値である。この広い範囲により、大きい光減衰が従来の測定法を適用できなくしてしまう波長で、実際的に重要な測定値を得ることができる。例えば、Roussev IIには、減衰が約30dB/mmより大きい、1550nmの波長での不透明白色ガラスセラミックの応力誘起複屈折のうまくいく測定が開示されている。
【0047】
先に、より深いDOL値でFSM技法に関して問題がいくつかあることに触れられているが、FSMはそれでも、より深いDOL値で±20%までの誤差範囲の可能性があるという了解の下で、利用できる有益な在来型技術である。ここに用いたDOLは、FSM技法を使用して計算した圧縮応力層の深さを称するのに対し、DOCは、Roussev IおよびIIに記載された方法により決定された圧縮応力層の深さを称する。
【0048】
先に述べたように、ここに記載されたガラス系物品は、イオン交換により化学強化してもよく、公知の強化ガラスが示す応力プロファイルと異なる応力プロファイルを示す。この過程において、ガラス系物品の表面で、またはその近くのイオンが、同じ価数または酸化状態を有するより大きいイオンにより置き換えられる-または交換される。ガラス系物品が、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスを含む、それらの実施の形態において、ガラスの表面層内のイオンおよび前記より大きいイオンは、Li+(ガラス系物品中に存在する場合)、Na+、K+、Rb+、およびCS+などの、一価アルカリ金属陽イオンである。あるいは、その表面層内の一価陽イオンは、Ag+などの、アルカリ金属陽イオン以外の一価陽イオンと置き換えられてもよい。
【0049】
イオン交換過程は、一般に、ガラス系物品中のより小さいイオンと交換されるべきより大きいイオンを含有する溶融塩浴(または2つ以上の溶融塩浴)中に、ガラス系物品を浸漬することによって行われる。水性塩浴も使用してよいことに留意すべきである。その上、その浴の組成は、複数の種類のより大きいイオン(例えば、Na+およびK+)または単一のより大きいイオンを含んでもよい。以下に限られないが、浴の組成と温度、浸漬時間、塩浴(または複数の塩浴)中のガラス系物品の浸漬の回数、多数の塩浴の使用、徐冷、洗浄などの追加の工程を含むイオン交換過程のパラメータは、一般に、ガラス系物品(物品の構造および存在する任意の結晶相を含む)の組成、並びに強化操作から生じるガラス系物品の所望のDOLまたはDOCおよびCSにより決まることが当業者に認識されよう。一例として、ガラス系物品のイオン交換は、以下に限られないが、より大きいアルカリ金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、および塩化物などの塩を含有する少なくとも1つの溶融浴中へのガラス系物品の浸漬により行われるであろう。典型的な硝酸塩としては、KNO3、NaNO3、LiNO3、およびそれらの組合せが挙げられる。溶融塩浴の温度は、典型的に、約380℃から約450℃までの範囲にあり、一方で、浸漬時間は、ガラスの厚さ、浴の温度およびガラスの拡散性に応じて、約15分から約100時間に及ぶ。しかしながら、上述したものとは異なる温度および浸漬時間も使用してよい。
【0050】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス系物品は、約370℃から約480℃の温度を有する100%のNaNO3の溶融塩浴中に浸漬されることがある。いくつかの実施の形態において、前記ガラス系基体は、約5%から約90%のKNO3および約10%から約95%のNaNO3を含む溶融混合塩浴中に浸漬されることがある。いくつかの実施の形態において、そのガラス系基体は、Na2SO4およびNaNO3を含み、より幅の広い温度範囲(例えば、約500℃まで)を有する溶融混合塩浴中に浸漬されることがある。1つ以上の実施の形態において、そのガラス系物品は、第1の浴中の浸漬後に、第2の浴中に浸漬されることがある。第2の浴中の浸漬は、15分から8時間に亘る100%のKNO3を有する溶融塩浴中の浸漬を含むことがある。
【0051】
イオン交換条件は、「スパイク」を与えるように、すなわち表面、またはその近くで応力プロファイルの勾配を増加させるように調整することができる。このスパイクは、ここに記載されたガラス系物品に使用されるガラス組成物の独特な性質のために、浴が単一組成または混合組成を有する、単一浴または多数の浴により達成できる。
【0052】
図3に示されるように、1つ以上の実施の形態のガラス系物品300は、厚さtを画成する、第1の表面302およびこの第1の表面の反対にある第2の表面304を有する。1つ以上の実施の形態において、その厚さtは、約3ミリメートル以下(例えば、約0.01ミリメートルから約3ミリメートル、約0.1ミリメートルから約3ミリメートル、約0.2ミリメートルから約3ミリメートル、約0.3ミリメートルから約3ミリメートル、約0.4ミリメートルから約3ミリメートル、約0.01ミリメートルから約2.5ミリメートル、約0.01ミリメートルから約2ミリメートル、約0.01ミリメートルから約1.5ミリメートル、約0.01ミリメートルから約1ミリメートル、約0.01ミリメートルから約0.9ミリメートル、約0.01ミリメートルから約0.8ミリメートル、約0.01ミリメートルから約0.7ミリメートル、約0.01ミリメートルから約0.6ミリメートル、約0.01ミリメートルから約0.5ミリメートル、約0.1ミリメートルから約0.5ミリメートル、または約0.3ミリメートルから約0.5ミリメートルの範囲)であることがある。
【0053】
前記ガラス系物品は、第1の表面302から第2の表面304まで(または厚さtの全厚に沿って)延在する応力プロファイルを有する。
図3に示される実施の形態において、ここに記載されたようにRoussev IおよびIIにより測定されるような応力プロファイル312が、ここに記載されたようなFSM測定技法により推定される応力プロファイル340と共に示されている。x軸は応力値を表し、y軸がガラス系物品内の深さまたは厚さを表す。
【0054】
図3に示されるように、応力プロファイル312は、CS層315(表面CS310を有する)、CT層325(最大CT320を有する)、および応力プロファイル312が330で圧縮から引張になるDOC317を示す。CT層325は、関連する深さまたは長さ327(CT領域または層)も有する。推定される応力プロファイル340は、DOCより大きいDOLを示す。ここに用いたように、DOCおよびDOLへの言及は、そのようなDOCまたはDOLが他方の表面から存在してもよいという理解で、一方の表面(第1の表面302または第2の表面304のいずれか)からの各々の深さに関する。
【0055】
表面CS310は、約150MPa以上または約200MPa以上(例えば、約250MPa以上、約300MPa以上、約400MPa以上、約450MPa以上、約500MPa以上、または約550MPa以上)であってよい。表面CS310は、約900MPaまで、約1000MPaまで、約1100MPaまで、または約1200MPaまでであってよい。最大CT320は、約25MPa以上、約50MPa以上、または約100MPa以上(例えば、約150MPa以上、約200MPa以上、約250MPa以上、または約300MPa以上)であってよい。いくつかの実施の形態において、最大CT320は、約50MPaから約250MPa(例えば、約75MPaから約250MPa、約100MPaから約250MPa、約150MPaから約250MPa、約50MPaから約175MPa、約50MPaから約150MPa、または約50MPaから約100MPa)の範囲にあってよい。最大CT320は、約0.3・tから約0.7・t、約0.4・tから約0.6・t、または約0.45・tから約0.55・tの範囲に位置することがある。表面CS310および最大CT320のいずれか1つ以上は、ガラス系物品の厚さに依存するであろうことを留意すべきである。例えば、約0.8mmの厚さを有するガラス系物品は、約100MPa以上の最大CTを有することがある。ガラス系物品の厚さが減少すると、最大CTが増加することがある。言い換えると、最大CTは、厚さが減少するにつれて(すなわちガラス系物品がより薄くなるにつれて)、増加する。
【0056】
いくつかの実施の形態において、表面CS310に対する最大CT320の比は、約0.05から約1の範囲(例えば、約0.05から約0.5、約0.05から約0.3、約0.05から約0.2、約0.05から約0.1、約0.5から約0.8、約0.5から約1、約0.2から約0.5、約0.3から約0.5の範囲)にあることがある。公知の化学強化されたガラス系物品において、表面CS310に対する最大CT320の比は0.1以下である。いくつかの実施の形態において、表面CSは最大CTの1.5倍(または2倍または2.5倍)以上であってよい。いくつかの実施の形態において、表面CSは最大CTの約20倍までであってよい。
【0057】
1つ以上の実施の形態において、応力プロファイル312は最大CSを有し、これは一般に表面CS310にあり、第1の表面302および第2の表面304の一方または両方に見られる。1つ以上の実施の形態において、CS層または領域315は、厚さの一部に沿ってDOC317まで延在する。1つ以上の実施の形態において、DOC317は約0.1・t以上であることがある。例えば、DOC317は、約0.12・t以上、約0.14・t以上、約0.15・t以上、約0.16・t以上、約0.17・t以上、約0.18・t以上、約0.19・t以上、約0.20・t以上、約0.21・t以上、または約0.25・t以上であることがある。いくつかの実施の形態において、DOC317は、化学深さ342未満である。化学深さ342は、約0.4・t以上、約0.5・t以上、約0.55・t以上、または約0.6・t以上であることがある。1つ以上の実施の形態において、応力プロファイル312は、形状が放物線状と記載されることがある。いくつかの実施の形態において、引張応力を示すガラス系物品の領域または深さに沿った応力プロファイルは、放物線形状を示す。1つ以上の特別な実施の形態において、応力プロファイル312は、平らな応力(すなわち、圧縮または引張)部分または実質的に一定の応力(すなわち、圧縮または引張)を示す部分がない。いくつかの実施の形態において、CT領域は、平らな応力が実質的にない、または実質的に一定な応力がない応力プロファイルを示す。1つ以上の実施の形態において、約0・tから約0.2・tまでおよび0.8・t超(または約0・tから約0.3・tおよび0.7・t超)の厚さ範囲の間の応力プロファイル312の全ての地点は、約-0.1MPa/マイクロメートル未満または約0.1MPa/マイクロメートル超の正接を有する。いくつかの実施の形態において、その正接は約-0.2MPa/マイクロメートル未満または約0.2MPa/マイクロメートル超であってよい。いくつかのより特別な実施の形態において、その正接は約-0.3MPa/マイクロメートル未満または約0.3MPa/マイクロメートル超であってよい。さらにより特別な実施の形態において、その正接は約-0.5MPa/マイクロメートル未満または約0.5MPa/マイクロメートル超であってよい。言い換えると、これらの厚さ範囲(すなわち、約0・tから約0.2・tまでおよび0.8・t超、または約0・tから約0.3・tおよび0.7・t以上)に沿った1つ以上の実施の形態の応力プロファイルは、ここに記載されたような、正接を有する地点を排除する。理論により束縛されないが、公知の誤差関数または準線形応力プロファイルは、これらの厚さ範囲(すなわち、約0・tから約0.2・tまでおよび0.8・t超、または約0・tから約0.3・tおよび0.7・t以上)に沿って、約-0.1MPa/マイクロメートルから約0.1MPa/マイクロメートル、約-0.2MPa/マイクロメートルから約0.2MPa/マイクロメートル、約-0.3MPa/マイクロメートルから約0.3MPa/マイクロメートル、または約-0.5MPa/マイクロメートルから約0.5MPa/マイクロメートルの正接を有する(
図2の220に示されるような、そのような厚さ範囲に沿って平らなまたはゼロ勾配の応力プロファイルを示す)地点を有する。本開示の1つ以上の実施の形態の応力プロファイルは、
図3に示されるように、これらの厚さ範囲に沿って平らなまたはゼロ勾配の応力プロファイルを有するそのような応力プロファイルを示さない。
【0058】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス系物品は、約0.1・tから0.3・tおよび約0.7・tから0.9・tの厚さ範囲に、最大正接および最小正接を有する応力プロファイルを示す。ある場合には、最大正接および最小正接の間の差は、約3.5MP/マイクロメートル以下、約3MP/マイクロメートル以下、約2.5MP/マイクロメートル以下、または約2MP/マイクロメートル以下である。
【0059】
1つ以上の実施の形態において、応力プロファイル312は、ガラス系物品の深さ方向に、または厚さtの少なくとも一部に沿って延在するどのような線形セグメントも実質的に含まない。言い換えると、応力プロファイル312は、厚さtに沿って実質的に連続的に増減している。いくつかの実施の形態において、その応力プロファイルは、約10マイクロメートル以上、約50マイクロメートル以上、または約100マイクロメートル以上、または約200マイクロメートル以上の長さを有する、深さ方向におけるどのような線形セグメントも実質的に含まない。ここに用いたように、「線形」という用語は、その線形セグメントに沿って約5MPa/マイクロメートル未満、または約2MPa/マイクロメートル未満の大きさを有する勾配を称する。いくつかの実施の形態において、深さ方向にどのような線形セグメントも実質的に含まない応力プロファイルの1つ以上の部分が、第1の表面または第2の表面のいずれか一方または両方から約5マイクロメートル以上(例えば、10マイクロメートル以上、または15マイクロメートル以上)のガラス系物品内の深さに存在する。例えば、第1の表面から約0マイクロメートルから約5マイクロメートル未満の深さに沿って、応力プロファイルは、線形セグメントを含むことがあるが、第1の表面から約5マイクロメートル以上の深さからは、その応力プロファイルは、線形セグメントを実質的に含まないことがある。
【0060】
いくつかの実施の形態において、前記応力プロファイルは、約0tから約0.1tまでの深さに線形セグメントを含むことがあり、約0.1tから約0.4tの深さに線形セグメントを実質的に含まないことがある。いくつかの実施の形態において、約0tから約0.1tの範囲内の厚さの応力プロファイルは、約20MPa/マイクロメートルから約200MPa/マイクロメートルの範囲の勾配を有することがある。ここに記載されるように、そのような実施の形態は、それにより、浴が2種類以上のアルカリ塩を含むまたは混合アルカリ塩浴である単一イオン交換過程、または多数(例えば、2回以上)のイオン交換過程を使用して形成してよい。
【0061】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス系物品は、CT領域(
図3の327)に沿った応力プロファイルの形状の観点で記載されることがある。例えば、いくつかの実施の形態において、CT領域(応力が張力である)に沿った応力プロファイルは、式により近似されることがある。いくつかの実施の形態において、CT領域に沿った応力プロファイルは、式(1):
【0062】
【0063】
により近似されることがある。式(1)において、応力(x)は位置xでの応力値である。ここで、応力は正(張力)である。MaxCTは、MPaで表された正の値としての最大中央張力である。値xは、マイクロメートルで表される厚さ(t)に沿った位置であり、範囲は0からtまでである;x=0は、一方の表面であり(
図3における302)、x=0.5は、ガラス系物品の中心であり、応力(x)=MaxCT、x=tは、反対の表面(
図3の304)である。式(1)に使用されるMaxCTは、約50MPaから約350MPa(例えば、60MPaから約300MPa、または約70MPaから約270MPa)の範囲にあってよく、nは、1.5から5(例えば、2から4、2から3または1.8から2.2)の近似パラメータであり、それにより、n=2は、放物線応力プロファイルを与えることができ、n=2から逸れる指数は、応力プロファイルに近放物線応力プロファイルを与える。
図39は、厚さ0.8mmのガラス系物品に関する、MaxCTおよびn(凡例に示されているように1.5から5)の様々な組合せの例示の応力プロファイルを示している。
【0064】
いくつかの実施の形態において、前記応力プロファイルは、熱処理により変えてもよい。そのような実施の形態において、その熱処理は、いずれのイオン交換過程前、イオン交換過程の間、または全てのイオン交換過程後に行ってよい。いくつかの実施の形態において、熱処理により、表面またはその近くでの応力プロファイルの勾配が低下することがある。より急なまたはより大きい勾配が表面で望ましい、いくつかの実施の形態において、熱処理後のイオン交換過程を使用して、その表面またはその近くで「スパイク」を与えても、すなわち応力プロファイルの勾配を増加させてもよい。
【0065】
1つ以上の実施の形態において、応力プロファイル312(および/または推定される応力プロファイル340)が、厚さの一部に沿って変動するゼロではない濃度の金属酸化物のために生じる。濃度の変動は、ここで、勾配と称されることがある。いくつかの実施の形態において、金属酸化物の濃度は、共に約0・tから約0.3・tの厚さ範囲に沿って、ゼロではなく、変動する。いくつかの実施の形態において、金属酸化物の濃度は、約0・tから約0.35・t、約0・tから約0.4・t、約0・tから約0.45・t、または約0・tから約0.48・tの厚さ範囲に沿って、ゼロではなく、変動する。その金属酸化物は、前記ガラス系物品に応力を生じさせると記載してよい。濃度の変動は、上述した厚さ範囲に沿って連続的であることがある。濃度の変動は、約100マイクロメートルの厚さセグメントに沿って金属酸化物濃度の約0.2モル%の変化を含むことがある。この変化は、実施例1に示されるように、マイクロプローブを含む当該技術分野で公知の方法により測定されるであろう。濃度がゼロではなく、厚さの一部に沿って変動する金属酸化物は、ガラス系物品に応力を生じさせると記載してよい。
【0066】
濃度の変動は、上述した厚さ範囲に沿って連続的であることがある。いくつかの実施の形態において、濃度の変動は、約10マイクロメートルから約30マイクロメートルの範囲の厚さセグメントに沿って連続的であることがある。いくつかの実施の形態において、金属酸化物の濃度は、第1の表面から、第1の表面と第2の表面の間の地点まで減少し、その地点から第2の表面まで増加する。
【0067】
金属酸化物の濃度は、複数の金属酸化物(例えば、Na2OおよびK2Oの組合せ)を含むことがある。2種類の金属酸化物が利用され、イオンの半径が互いに異なる、いくつかの実施の形態において、半径がより大きいイオンの濃度は、浅い深さで、半径がより小さいイオンの濃度より大きく、一方で、より深い深さでは、半径がより大きい小さいイオンの濃度が、半径がより大きいイオンの濃度より大きい。例えば、イオン交換過程に単一のNa含有浴およびK含有浴が使用される場合、ガラス系物品中のK+イオンの濃度は、より浅い深さではNa+イオンの濃度より大きく、一方で、より深い深さでは、Na+イオンの濃度はK+イオンの濃度より大きい。これは、一部には、イオンのサイズのためである。そのようなガラス系物品において、表面またはその近くの区域は、その表面またはその近くにより大きいイオンがより多量にあるために、より大きいCSを有する。このより大きいCSは、表面またはその近くのより急な勾配(すなわち、表面での応力プロファイルにおけるスパイク)を有する応力プロファイルにより示されるであろう。
【0068】
1種類以上の金属酸化物の濃度勾配または変動は、例えば、ガラス系物品中の複数の第1の金属イオンが複数の第2の金属イオンと交換される、ここに先に記載されたイオン交換過程により、ガラス系物品を化学強化することにより生じる。第1の金属イオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびルビジウムのイオンであることがある。第2の金属イオンは、その第2のアルカリ金属イオンが第1のアルカリ金属イオンのイオン半径よりも大きいイオン半径を有するという条件で、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムの内の1つのイオンであってよい。その第2の金属イオンは、その酸化物(例えば、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2O、またはそれらの組合せ)としてガラス系基体中に存在する。
【0069】
1つ以上の実施の形態において、金属酸化物の濃度勾配は、CT層325を含むガラス系物品の厚さtの相当な部分または全厚t中に広がる。1つ以上の実施の形態において、金属酸化物の濃度は、CT層325において約0.5モル%以上である。いくつかの実施の形態において、金属酸化物の濃度は、ガラス系物品の全厚に沿って約0.5モル%以上(例えば、約1モル%以上)であることがあり、第1の表面302および/または第2の表面304で最大であり、第1の表面302および第2の表面304の間の地点まで実質的に一定に減少する。その地点で、金属酸化物の濃度は全厚tに沿って最小である;しかしながら、その濃度は、その地点でゼロでもない。言い換えると、その特定の金属酸化物のゼロではない濃度は、厚さtの相当な部分(ここに記載されるように)または全厚tに沿って延在する。いくつかの実施の形態において、その特定の金属酸化物の最低濃度はCT層327にある。ガラス系物品中の特定の金属酸化物の総濃度は、約1モル%から約20モル%の範囲にあるであろう。
【0070】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス系物品は、第1の金属酸化物濃度および第2の金属酸化物濃度を有し、その第1の金属酸化物濃度は、約0tから約0.5tの第1の厚さ範囲に沿って、約0モル%から約15モル%の範囲にあり、第2の金属酸化物濃度は、約0マイクロメートルから約25マイクロメートル(または約0マイクロメートルから約12マイクロメートル)の第2の厚さ範囲に沿って、約0モル%から約10モル%の範囲にある。そのガラス系物品は、随意的な第3の金属酸化物濃度を有することがある。第1の金属酸化物はNa2Oを含むことがあり、第2の金属酸化物はK2Oを含むことがある。
【0071】
前記金属酸化物の濃度は、そのような金属酸化物の濃度勾配を含ませるために変えられる前に、ガラス系物品中の金属酸化物の基準量から決定してもよい。
【0072】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス系物品は、それらがどのように割れるか、およびそのような割れから生じる破片の観点で記載されることがある。1つ以上の実施の形態において、ガラス系物品は、割れたときに、平方インチ当たり(または6.4516平方センチメートル当たり)で2以上の破片に割れる。ある場合には、そのガラス系物品は、ガラス系物品(割れ前)の平方インチ当たり(または6.4516平方センチメートル当たり)で3以上、4以上、5以上、または10以上の破片に割れる。ある場合には、ガラス系物品は、割れたときに、破片の50%以上が、ガラス系物品(割れ前)の表面積の5%未満、2%未満、または1%未満の表面積を有するように、破片に割れる。いくつかの実施の形態において、ガラス系物品は、割れたときに、破片の90%以上またさらには100%が、ガラス系物品(割れ前)の表面積の5%未満、2%未満、または1%未満の表面積を有するように割れる。
【0073】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス系物品を化学強化した後、そのガラス系物品の得られた応力プロファイル312(および推定される応力プロファイル340)は、改善された破壊抵抗を与える。例えば、いくつかの実施の形態において、ガラス系物品は、割れの際に、約2・t以下(例えば、1.8・t、1.6・t、1.5・t、1.4・t、1.2・t、または1・t以下)の平均最長断面寸法を有する破片を含む。
【0074】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス系物品は、約0.7MPa・m1/2以上の破壊靭性(K1C)を示すことがある。ある場合には、その破壊靭性は、約0.8MPa・m1/2以上、または約0.9MPa・m1/2以上であることがある。いくつかの実施の形態において、その破壊靭性は、約0.7MPa・m1/2から約1MPa・m1/2の範囲にあることがある。
【0075】
いくつかの実施の形態において、前記基体は、200gの荷重でビッカース硬度試験により測定して、約500HVNから約800HVNの硬度を有するとして特徴付けられることもある。
【0076】
ここに記載されたガラス系物品は、0J/m2超から約20J/m2の範囲の貯蔵引張エネルギーを示すことがある。ある場合には、その貯蔵引張エネルギーは、約1J/m2から約20J/m2、約2J/m2から約20J/m2、約3J/m2から約20J/m2、約4J/m2から約20J/m2、約1J/m2から約19J/m2、約1J/m2から約18J/m2、約1J/m2から約16J/m2、約4J/m2から約20J/m2、または約4J/m2から約18J/m2の範囲にあることがある。その貯蔵引張エネルギーは、式(2):
【0077】
【0078】
を使用して、引張領域において、厚さtの試料の単位面積当たりの貯蔵弾性エネルギーΣを積分することによって形成され、式中、σは応力であり、Eはヤング率である。
【0079】
より詳しくは、貯蔵引張エネルギーは、以下の式(3):
【0080】
【0081】
を使用して計算され、式中、nはポアソン比であり、Eは弾性率であり、積分は、引張領域のみについて計算される。
【0082】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス系物品は、研磨時リング・オン・リング(AROR)試験を行った場合、改善された表面強度を示す。材料の強度は、割れが生じた応力として定義される。このA-ROR試験は、平らなガラス試料を試験するための表面強度測定であり、“Standard Test Method for Monotonic Equibiaxial Flexural Strength of Advanced Ceramics at Ambient Temperature,”と題するASTM C1499-09(2013)が、ここに記載されるリング・オン・リング研磨時ROR試験方法の土台として働く。ASTM C1499-09の内容が、ここに全て引用される。1つの実施の形態において、ガラス試料は、リング・オン・リング試験の前に、「Standard Test Methods for Strength of Glass by Flexure (Determination of Modulus of Rupture)」と題するASTM C158-02(2012)の「abrasion Procedures」と題するAnnex A2に記載された方法および装置を使用して、ガラスサンプルに送達される90グリットの炭化ケイ素(SiC)粒子で研磨される。ASTM C158-02の内容および特に、Annex 2の内容が、ここに全て引用される。
【0083】
リング・オン・リング試験の前に、ガラス系物品の表面を、ASTM C158-02の
図A2.1に示された装置を使用して、サンプルの表面欠陥条件を標準化および/または制御するために、ASTM C158-02、Annex 2に記載されたように研磨する。研磨材を、304kPa(44psi)の空気圧を使用して、15psi(約103kPa)の荷重でガラス系物品の表面110に吹き付ける;けれども、下記の実施例においては、研磨材を25psi(約172kPa)および45psi(約310kPa)の荷重で表面110に吹き付けた。気流を確立した後、5cm
3の研磨材を漏斗に入れ、研磨材の導入後、5秒間に亘りサンプルを砂吹き機で磨く。
【0084】
リング・オン・リング試験について、
図4に示されるような少なくとも1つの研磨面を有するガラス試料410を、これも
図4に示されるように、異なるサイズの2つの同心のリングの間に配置して、等二軸曲げ強度(すなわち、2つの同心のリングの間の湾曲に施されたときに材料が維持できる最大応力)を決定する。研磨時リング・オン・リング構成400において、研磨されたガラス系物品410は、直径D
2を有する支持リング420により支持されている。直径D
1を有する荷重リング430によりガラス系物品の表面に、ロードセル(図示せず)により、力Fを印加する。
【0085】
荷重リングと支持リングの直径比D1/D2は、約0.2から約0.5の範囲にあるであろう。いくつかの実施の形態において、D1/D2は約0.5である。荷重および支持リング430、420は、支持リングの直径D2の0.5%以内に同心状に揃えるべきである。試験に使用されるロードセルは、選択された範囲内の任意の荷重で±1%以内まで正確であるべきである。いくつかの実施の形態において、試験は、23±2℃の温度および40±10%の相対湿度で行われる。
【0086】
器具の設計について、荷重リング430の突出面の半径rは、h/2≦r≦3h/2であり、式中、hはガラス系物品410の厚さである。荷重および支持リング430、420は、一般に、硬度HRc>40の硬化鋼から作られている。ROR器具は市販されている。
【0087】
ROR試験の目的の破壊メカニズムは、荷重リング430内の表面430aから発生するガラス系物品410の割れを観察することである。この領域の外-すなわち、荷重リング430と支持リング420との間-で生じる破損は、データ解析から除外する。しかしながら、ガラス系物品410の薄さと高強度のために、試料の厚さhの1/2を超える大きい撓みが観察されることがある。したがって、荷重リング430の下から生じる破損の百分率が高いと観察することは、珍しいことではない。リングの内側と下側の両方での応力の発生(歪みゲージ分析により収集)および各試料における破損の始点を知らずには、応力は正確に計算できない。したがって、AROR試験は、測定反応としての破損時の最大荷重に焦点を当てる。
【0088】
ガラス系物品の強度は、表面傷の存在に依存する。しかしながら、ガラスの強度は実際には統計に基づくので、存在する所定のサイズの傷の傾向は正確に予測できない。したがって、確率分布を、得られたデータの統計的表示として一般に使用できる。
【0089】
いくつかの実施の形態において、ここに記載された強化されたガラス系物品は、表面を研磨するために25psi(約172kPa)またさらには45psi(約310kPa)の荷重を使用する研磨時リング・オン・リング試験により決定して、少なくとも20kgf(約196N)および約30kgf(約294N)までの表面または等二軸曲げ強度を有する。その表面強度は、他の実施の形態において、少なくとも25kgf(約245N)であり、さらに他の実施の形態において、少なくとも30kgf(約294N)である。
【0090】
いくつかの実施の形態において、ここに記載された強化されたガラス系物品は、研磨紙上反転球(IBoS)試験における性能の観点で記載されることがある。このIBoS試験は、損傷の導入に加え、
図36に概略示されるような、携帯用または手持ち式電子機器に使用されるガラス系物品に典型的に生じる曲げによる、破壊の支配的メカニズムを模倣した動的成分レベル試験である。現場では、ガラス系物品の上面に損傷の導入(
図37におけるa)が起こる。割れがガラス系物品の上面で始まり、損傷がガラス系物品に貫通する(
図37におけるb)か、または割れが、上面の曲げからまたはガラス系物品の内部から伝搬する(
図37におけるc)。このIBoS試験は、ガラスの表面への損傷の導入と、動荷重下での曲げの印加を同時に行うように設計されている。ある場合には、そのガラス系物品は、同じガラス系物品が圧縮応力を含まない場合よりも、圧縮応力を含む場合に、改善された落下性能を示す。
【0091】
IBoS試験装置が、
図36に概略示されている。装置500は、試験スタンド510および球530を含む。球530は、例えば、ステンレス鋼球などの、剛体または固体球である。1つの実施の形態において、球530は、直径が10mmで4.2グラムのステンレス鋼球である。球530は、所定の高さhからガラス系物品サンプル518に直接落とされる。試験スタンド510は、花崗岩などの硬質剛性材料から作られた固体土台512を含む。表面に研磨材を有するシート514が、研磨材を有する表面が上向きになるように、固体土台512の上面に配置されている。シート514は、いくつかの実施の形態において、30グリットの表面、他の実施の形態において、180グリットの表面を有する研磨紙である。ガラス系物品サンプル518は、ガラス系物品サンプル518とシート514との間に空隙516が存在するように、サンプル保持器515によりシート514の上の適所に保持される。ガラスシート514とガラス系物品サンプル518との間に空隙516により、球530によるシート514の研磨面への衝撃の際に、ガラス系物品サンプル518が曲げられる。1つの実施の形態において、ガラス系物品サンプル518は、曲げが球の衝撃点のみに制約され、再現性を確保するために、全ての角で固定されている。いくつかの実施の形態において、サンプル保持器515および試験スタンド510は、約2mmまでのサンプル厚を収容するように適合されている。空隙516は、約50μmから約100μmの範囲にある。空隙516は、材料の剛性(ヤング率、EMod)の違いに合わせて調整するように適合されており、サンプルの弾性率および厚さも含む。球530の衝撃の際にガラス系物品サンプル518の割れ事象における破片を収集するために、粘着テープ520を使用して、ガラス系物品サンプルの上面を覆ってもよい。
【0092】
研磨面として様々な材料を使用してよい。1つの特定の実施の形態において、研磨面は、炭化ケイ素またはアルミナ研磨紙、工業用研磨紙、または同程度の硬度および/または鋭さを有すると当業者に知られている任意の研磨材などの研磨紙である。いくつかの実施の形態において、コンクリートまたはアスファルトのいずれかよりも一貫した表面トポグラフィー、並びに試料に所望のレベルの表面損傷を生じる粒径および鋭さを有するので、30グリットを有する研磨紙を使用してよい。
【0093】
1つの態様において、先に記載された装置500を使用してIBoS試験を行う方法600が、
図38に示されている。工程610において、先に記載され、ガラス系物品サンプル518と、研磨面を有するシート514との間に空隙516が形成されるように、サンプル保持器515に固定されたガラス系物品サンプル(
図36における518)を、試験スタンド510に配置する。方法600は、研磨面を有するシート514が既に試験スタンド510に配置されていることを前提とする。しかしながら、いくつかの実施の形態において、この方法は、研磨材を有する表面が上向きになるように、試験スタンド510にシート514を配置する工程を含んでもよい。いくつかの実施の形態(工程610a)において、ガラス系物品サンプル518をサンプル保持器515に固定する前に、ガラス系物品サンプル518の上面に粘着テープ520を貼る。
【0094】
工程620において、所定の質量とサイズの固体球530を、所定の高さhからガラス系物品サンプル518の上面に落とし、よって、球530が上面に、その上面のほぼ中心(すなわち、中心から1mm以内、または3mm以内、または5mm以内、または10mm以内)に衝突する。工程620における衝突後、ガラス系物品サンプル518に対する損傷の程度を決定する(工程630)。先に述べたように、ここでは、「割れ」という用語は、基体が落下したとき、または物体により基体に衝撃が与えられたときに、亀裂が基体の全厚および/または全表面に亘り伝搬することを意味する。
【0095】
方法600において、研磨面を有するシート514は、他の種類(例えば、コンクリートまたはアスファルト)の落下試験表面の反復使用に観察されてきた「時効」硬化を避けるために、各落下後に交換してもよい。
【0096】
方法600に、様々な所定の落下高さhおよび増分が一般に使用される。この試験は、例えば、始めに最小落下高さ(例えば、約10~20cm)を使用することがある。次いで、この高さは、規定の増分または可変の増分のいずれかだけ、連続した落下のために増加させてよい。方法600に記載された試験は、ガラス系物品サンプル518が一旦壊れたらまたは割れたら停止する(工程631)。あるいは、落下高さhが、割れずに最大落下高さ(例えば、約100cm)に到達したら、方法600の落下試験を停止しても、または割れが生じるまで、その最大高さで工程620を繰り返してもよい。
【0097】
いくつかの実施の形態において、方法600のIBoS試験は、各所定の高さhで各ガラス系物品サンプル518に一度だけ行われる。しかしながら、他の実施の形態において、各サンプルに、各高さで多数の試験を行ってもよい。
【0098】
ガラス系物品サンプル518の割れが生じた場合(
図38における工程631)、方法600によるIBoS試験が終わる(工程640)。所定の落下高さでの球の落下により割れが観察されない場合(工程632)、例えば、5、10、または20cmなどの、所定の増分だけ落下高さを増加させ(工程634)、サンプルの割れが観察されるか(工程631)、またはサンプルが割れずに、最大試験高さに到達する(工程636)まで、工程620および630を繰り返す。工程631または636のいずれかに到達したら、方法600による試験が終わる。
【0099】
上述した研磨紙上反転球(IBoS)試験を行う場合、ここに記載されたガラス系物品の実施の形態は、球を100cmの高さからガラスの表面に落下させたときに、少なくとも約60%の生存率を有する。例えば、ガラス系物品は、5つの同一(またはほぼ同一)のサンプル(すなわち、ほぼ同じ組成を有し、ここに記載されたように、強化されたときに、ほぼ同じ圧縮応力および圧縮または圧縮応力層の深さを有する)の内の3つが、割れずにIBoS試験に生存した場合、所定の高さ(ここでは100cm)から落下したときに60%の生存率を有すると記載される。他の実施の形態において、強化されたガラス系物品の100cmIBoS試験における生存率は、少なくとも約70%、他の実施の形態において、少なくとも約80%、さらに他の実施の形態において、少なくとも約90%である。他の実施の形態において、IBoS試験において100cmの高さから落下した強化されたガラス系物品の生存率は、少なくとも約60%、他の実施の形態において、少なくとも約70%、さらに他の実施の形態において、少なくとも約80%、他の実施の形態において、少なくとも約90%である。1つ以上の実施の形態において、IBoS試験において150cmの高さから落下した強化されたガラス系物品の生存率は、少なくとも約60%、他の実施の形態において、少なくとも約70%、さらに他の実施の形態において、少なくとも約80%、他の実施の形態において、少なくとも約90%である。
【0100】
先に記載されたIBoS試験方法および装置を使用して、所定の高さから落下したときのガラス系物品の生存率を決定するために、ガラス系物品の少なくとも5つの同一(またはほぼ同一)のサンプル(すなわち、ほぼ同じ組成を有し、ほぼ同じ圧縮応力および圧縮または層の深さを有する)が試験されるが、試験結果の信頼水準を上昇させるために、それより多い数(例えば、10、20、30など)のサンプルに試験を行ってもよい。各サンプルは、所定の高さ(例えば、100cmまたは150cm)から一回落とされ、あるいは、所定の高さに到達するまで、割れずに、次第に高い高さから落とされ、割れの証拠(サンプルの全厚および/または全表面に亘る亀裂の形成および伝搬)について目視で(すなわち、裸眼で)調べた。所定の高さからの落下後に割れが観察されない場合、サンプルは、落下試験に「生存した」と考えられ、サンプルが所定の高さ以下の高さから落とされたときに、割れが観察された場合、サンプルは、「破損した」(または「生存しなかった」)と考えられる。生存率は、落下試験に生存したサンプル個体数の百分率であると決定される。例えば、所定の高さから落下したときに、10のサンプル群の内の7つのサンプルが割れなかった場合、そのガラスの生存率は70%となるであろう。
【0101】
ここに記載されたガラス系物品は、透明または不透明であってよい。1つ以上の実施の形態において、そのガラス系物品は、約1ミリメートル以下の厚さを有し、約380nmから約780nmの範囲の波長に亘り約88%以上の透過率を示すことがある。別の実施の形態において、そのガラス系物品は、約1ミリメートル以下の厚さを有し、約380nmから約780nmの範囲の波長に亘り約10%以下の透過率を示すことがある。
【0102】
前記ガラス系物品は、実質的に白色も示すことがある。例えば、そのガラス系物品は、CIE光源F02の下で、約88以上のL*値、約-3から約+3の範囲のa*値、および約-6から約+6の範囲のb*値の、CIELAB色空間座標を示すことがある。あるいは、そのガラス系物品は、CIE光源F02の下で、約40以下のL*値、約-3から約+3の範囲のa*値、および約-6から約+6の範囲のb*値の、CIELAB色空間座標を示すことがある。そのような色空間座標は、他のCIE光源(例えば、D65)の下で存在することがある。
【0103】
基体の選択は特に制限されない。いくつかの例において、ガラス系物品は、イオン交換のために高い陽イオン拡散性を有すると記載されることがある。1つ以上の実施の形態において、ガラスまたはガラスセラミックは、高速イオン交換能力を有する、すなわち、拡散性が500μm2/時超である、または460℃で450μm2/時超と特徴付けられることがある。
【0104】
特定の温度で、拡散性は、式(4):
【0105】
【0106】
を使用して計算され、式中、DOLはイオン交換層の深さであり、TはそのDOLに到達するのにかかるイオン交換時間である。
【0107】
前記ガラス系物品は、非晶質基体、結晶質基体、またはその組合せ(例えば、ガラスセラミック基体)を含むことがある。1つ以上の実施の形態において、そのガラス系物品の基体(ここに記載されるように化学強化される前)は、モルパーセント(モル%)で表して、約40から約80の範囲のSiO2、約10から約30の範囲のAl2O3、約0から約10の範囲のB2O3、約0から約20の範囲のR2O、および約0から約15の範囲のROを含む、組成を有するガラスを含むことがある。ある場合には、その組成は、約0モル%から約5モル%の範囲のZrO2および約0モル%から約15モル%の範囲のP2O5のいずれか一方または両方を含むことがある。TiO2は、約0モル%から約2モル%で存在し得る。
【0108】
いくつかの実施の形態において、前記ガラス組成物は、モル%で表して、約45から約80、約45から約75、約45から約70、約45から約65、約45から約60、約50から約70、約55から約70、約60から約70、約70から約75、約70から約72、または約50から約65の範囲の量でSiO2を含むことがある。
【0109】
いくつかの実施の形態において、前記ガラス組成物は、モル%で表して、約5から約28、約5から約26、約5から約25、約5から約24、約5から約22、約5から約20、約6から約30、約8から約30、約10から約30、約12から約30、約14から約30、約16から約30、約18から約30、約18から約28、または約12から約15の範囲の量でAl2O3を含むことがある。
【0110】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、モル%で表して、約0から約8、約0から約6、約0から約4、約0.1から約8、約0.1から約6、約0.1から約4、約1から約10、約2から約10、約4から約10、約2から約8、約0.1から約5、または約1から約3の範囲の量でB2O3を含むことがある。ある場合には、そのガラス組成物は、B2O3を実質的に含まないことがある。ここに用いたように、ガラス組成物の成分に関する「実質的に含まない」という句は、その成分が、最初のバッチ配合中またはその後のイオン交換中に、そのガラス組成物に積極的または意図的に加えられていないが、不純物として存在することがあることを意味する。例えば、ガラスは、ある成分が約0.1001モル%未満の量で存在する場合、その成分を実質的に含まないとして記載してよい。
【0111】
いくつかの実施の形態において、前記ガラス組成物は、MgO、CaOおよびZnOなどのアルカリ土類金属酸化物を1種類以上含むことがある。いくつかの実施の形態において、1種類以上のアルカリ土類金属酸化物の総量は、ゼロではない量から約15モル%であることがある。1つ以上の特別な実施の形態において、アルカリ土類金属酸化物のいずれの総量も、ゼロではない量から約14モル%まで、約12モル%まで、約10モル%まで、約8モル%まで、約6モル%まで、約4モル%まで、約2モル%まで、または約1.5モル%までであることがある。いくつかの実施の形態において、前記1種類以上のアルカリ土類金属酸化物のモル%で表された総量は、約0.1から10、約0.1から8、約0.1から6、約0.1から5、約1から10、約2から10、または約2.5から8の範囲にあることがある。MgOの量は、約0モル%から約5モル%(例えば、約2モル%から約4モル%)の範囲にあることがある。ZnOの量は、約0モル%から約2モル%の範囲にあることがある。CaOの量は、約0モル%から約2モル%の範囲にあることがある。1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、MgOを含むことがあり、CaOおよびZnOを実質的に含まないことがある。1つの変種において、そのガラス組成物は、CaOまたはZnOのいずれか一方を含むことがあり、MgO、CaOおよびZnOの他のものを実質的に含まないことがある。1つ以上の特別な実施の形態において、そのガラス組成物は、MgO、CaOおよびZnOのアルカリ土類金属酸化物の2種類のみを含むことがあり、そのアルカリ土類金属酸化物の第3のものを実質的に含まないことがある。
【0112】
前記ガラス組成物中のアルカリ金属酸化物R2Oのモル%で表された総量は、約5から約20、約5から約18、約5から約16、約5から約15、約5から約14、約5から約12、約5から約10、約5から約8、約6から約20、約7から約20、約8から約20、約9から約20、約10から約20、約6から約13、または約8から約12の範囲にあることがある。
【0113】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、約0モル%から約18モル%、約0モル%から約16モル%、約0モル%から約14モル%、約0モル%から約10モル%、約0モル%から約5モル%、約0モル%から約2モル%、約0.1モル%から約6モル%、約0.1モル%から約5モル%、約1モル%から約5モル%、約2モル%から約5モル%、または約10モル%から約20モル%の範囲の量でNa2Oを含む。
【0114】
いくつかの実施の形態において、Li2OおよびNa2Oの量は、成形性およびイオン交換性のバランスをとるために、特定の量または比に制御される。例えば、Li2Oの量が増加するにつれて、液相粘度は減少することがあり、よってある種の成形法が使用できなくなる;しかしながら、そのようなガラス組成物は、ここに記載されるように、より深いDOCレベルまでイオン交換される。Na2Oの量は、液相粘度を変えることができるが、より深いDOCレベルまでのイオン交換を阻害し得る。
【0115】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、約5モル%未満、約4モル%未満、約3モル%未満、約2モル%未満、または約1モル%未満の量でK2Oを含むことがある。1つ以上の代わりの実施の形態において、前記ガラス組成物は、K2Oを、ここに定義されるように、実質的に含まないことがある。
【0116】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、約0モル%から約18モル%、約0モル%から約15モル%、または約0モル%から約10モル%、約0モル%から約8モル%、約0モル%から約6モル%、約0モル%から約4モル%、または約0モル%から約2モル%の量でLi2Oを含むことがある。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、約2モル%から約10モル%、約4モル%から約10モル%、約6モル%から約10モル%、または約5モル%から約8モル%の量でLi2Oを含むことがある。1つ以上の代わりの実施の形態においてそのガラス組成物は、Li2Oを、ここに定義されるように、実質的に含まないことがある。
【0117】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、Fe2O3を含むことがある。そのような実施の形態において、Fe2O3は、約1モル%未満、約0.9モル%未満、約0.8モル%未満、約0.7モル%未満、約0.6モル%未満、約0.5モル%未満、約0.4モル%未満、約0.3モル%未満、約0.2モル%未満、約0.1モル%未満、およびそれらの間の全ての範囲および部分的な範囲の量で存在することがある。1つ以上の代わりの実施の形態において、そのガラス組成物は、Fe2O3を、ここに定義されるように、実質的に含まないことがある。
【0118】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、ZrO2を含むことがある。そのような実施の形態において、ZrO2は、約1モル%未満、約0.9モル%未満、約0.8モル%未満、約0.7モル%未満、約0.6モル%未満、約0.5モル%未満、約0.4モル%未満、約0.3モル%未満、約0.2モル%未満、約0.1モル%未満、およびそれらの間の全ての範囲および部分的な範囲の量で存在することがある。1つ以上の代わりの実施の形態において、そのガラス組成物は、ZrO2を、ここに定義されるように、実質的に含まないことがある。
【0119】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、約0モル%から約10モル%、約0モル%から約8モル%、約0モル%から約6モル%、約0モル%から約4モル%、約0.1モル%から約10モル%、約0.1モル%から約8モル%、約4モル%から約8モル%、または約5モル%から約8モル%の範囲でP2O5を含むことがある。ある場合には、そのガラス組成物は、P2O5を実質的に含まないことがある。
【0120】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、TiO2を含むことがある。そのような実施の形態において、TiO2は、約6モル%未満、約4モル%未満、約2モル%未満、または約1モル%未満の量で存在することがある。1つ以上の代わりの実施の形態において、そのガラス組成物は、TiO2を、ここに定義されるように、実質的に含まないことがある。いくつかの実施の形態において、TiO2は、約0.1モル%から約6モル%、または約0.1モル%から約4モル%の範囲の量で存在する。
【0121】
いくつかの実施の形態において、前記ガラス組成物は、様々な組成の関係を含むことがある。例えば、そのガラス組成物は、約0.5から約1の範囲にある、R2Oの総量(モル%)に対するLi2Oの量(モル%)の比を含むことがある。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、約-5から約0の範囲にある、Al2O3の量(モル%)に対するR2Oの総量(モル%)の差を含むことがある。ある場合には、そのガラス組成物は、約0から約3の範囲にある、RxOの総量(モル%)とAl2O3の量(モル%)の間の差を含むことがある。1つ以上の実施の形態のガラス組成物は、約0から約2の範囲にある、ROの総量(モル%)に対するMgOの量(モル%)の比を示すことがある。
【0122】
いくつかの実施の形態において、前記ガラス組成物は、核形成剤を実質的に含まないことがある。典型的な核形成剤の例に、TiO2、ZrO2などがある。核形成剤は、ガラス中の晶子の形成を開始できるガラス中の成分であるという機能の観点で記載されることがある。
【0123】
いくつかの実施の形態において、前記ガラス基体に使用される組成物に、Na2SO4、NaCl、NaF、NaBr、K2SO4、KCl、KF、KBr、およびSnO2を含む群から選択される少なくとも1種類の清澄剤を0~2モル%の量で配合してもよい。1つ以上の実施の形態によるガラス組成物は、約0から約2、約0から約1、約0.1から約2、約0.1から約1、または約1から約2の範囲でSnO2をさらに含むことがある。ここに開示されたガラス組成物は、As2O3および/またはSb2O3を実質的に含まないことがある。
【0124】
1つ以上の実施の形態において、前記組成物は、具体的に、62モル%から75モル%のSiO2、10.5モル%から約17モル%のAl2O3、5モル%から約13モル%のLi2O、0モル%から約4モル%のZnO、0モル%から約8モル%のMgO、2モル%から約5モル%のTiO2、0モル%から約4モル%のB2O3、0モル%から約5モル%のNa2O、0モル%から約4モル%のK2O、0モル%から約2モル%のZrO2、0モル%から約7モル%のP2O5、0モル%から約0.3モル%のFe2O3、0モル%から約2モル%のMnOx、および0.05モル%から約0.2モル%のSnO2を含むことがある。1つ以上の実施の形態において、前記組成物は、67モル%から約74モル%のSiO2、11モル%から約15モル%のAl2O3、5.5モル%から約9モル%のLi2O、0.5モル%から約2モル%のZnO、2モル%から約4.5モル%のMgO、3モル%から約4.5モル%のTiO2、0モル%から約2.2モル%のB2O3、0モル%から約1モル%のNa2O、0モル%から約1モル%のK2O、0モル%から約1モル%のZrO2、0モル%から約4モル%のP2O5、0モル%から約0.1モル%のFe2O3、0モル%から約1.5モル%のMnOx、および0.08モル%から約0.16モル%のSnO2を含むことがある。1つ以上の実施の形態において、前記組成物は、70モル%から75モル%のSiO2、10モル%から約15モル%のAl2O3、5モル%から約13モル%のLi2O、0モル%から約4モル%のZnO、0.1モル%から約8モル%のMgO、0モル%から約5モル%のTiO2、0.1モル%から約4モル%のB2O3、0.1モル%から約5モル%のNa2O、0モル%から約4モル%のK2O、0モル%から約2モル%のZrO2、0モル%から約7モル%のP2O5、0モル%から約0.3モル%のFe2O3、0モル%から約2モル%のMnOx、および0.05モル%から約0.2モル%のSnO2を含むことがある。
【0125】
1つ以上の実施の形態において、前記組成物は、52モル%から約63モル%のSiO2、11モル%から約15モル%のAl2O3、5.5モル%から約9モル%のLi2O、0.5モル%から約2モル%のZnO、2モル%から約4.5モル%のMgO、3モル%から約4.5モル%のTiO2、0モル%から約2.2モル%のB2O3、0モル%から約1モル%のNa2O、0モル%から約1モル%のK2O、0モル%から約1モル%のZrO2、0モル%から約4モル%のP2O5、0モル%から約0.1モル%のFe2O3、0モル%から約1.5モル%のMnOx、および0.08モル%から約0.16モル%のSnO2を含むことがある。
【0126】
ここに記載されたような、化学強化される前のガラス系物品の他の例示の組成が、表1に示されている。
【0127】
【0128】
【0129】
前記ガラス系物品がガラスセラミックを含む場合、結晶相は、βスポジュメン、ルチル、亜鉛尖晶石または他の公知の結晶相およびその組合せを含むことがある。
【0130】
前記ガラス系物品は実質的に平面状であってよいが、他の実施の形態は、湾曲したもしくは他に成形されたまたは造形された基体を使用してもよい。ある場合には、そのガラス系物品は、3Dまたは2.5D形状を有することがある。前記ガラス系物品は、実質的に光学的透き通り、透明であり、光散乱がないことがある。そのガラス系物品は、約1.45から約1.55の範囲の屈折率を有することがある。ここに用いたように、屈折率値は550nmの波長に関する。
【0131】
それに加え、またはそれに代えて、前記ガラス系物品の厚さは、1つ以上の寸法に沿って一定であっても、または審美的および/または機能的理由のために、その寸法の1つ以上に沿って変動してもよい。例えば、ガラス系物品の縁は、そのガラス組成物のより中央の領域と比べて、厚くなっていてもよい。ガラス系物品の長さ、幅および厚さの寸法も、物品の用途または用法にしたがって変動してもよい。
【0132】
前記ガラス系物品は、それが形成される様式によって特徴付けられることがある。例えば、ガラス系物品が、フロート成形可能(すなわち、フロート法により形成される)、ダウンドロー可能、および特にフュージョン成形可能またはスロットドロー可能(すなわち、フュージョンドロー法またはスロットドロー法などのダウンドロー法により形成される)と特徴付けられることがある。
【0133】
フロート成形可能なガラス系物品は、滑らかな表面および均一な厚さにより特徴付けられることがあり、溶融金属、典型的にスズの床上に溶融ガラスを浮かせることによって製造される。例示のプロセスにおいて、溶融スズ床の表面に供給される溶融ガラスは、浮遊するガラスリボンを形成する。このガラスリボンがスズ浴に沿って流れるときに、その温度は、ガラスリボンが、スズからローラに持ち上げられる固体のガラス系物品に固化するまで、徐々に低下する。一旦浴から離れたら、そのガラス系物品は、さらに冷却し、焼き鈍して、内部応力を減少させることができる。ガラス系物品がガラスセラミックである場合、フロート法により形成されたガラス系物品に、それにより1つ以上の結晶相が生成されるセラミック化プロセスを施してよい。
【0134】
ダウンドロー法では、比較的無垢な表面を有する均一な厚さを持つガラス系物品が製造される。ガラス系物品の平均曲げ強度は、表面傷の量とサイズにより制御されるので、接触が最小の無垢な表面はより高い初期強度を有する。次いで、この高強度ガラス系物品がさらに強化(例えば、化学的に)されると、結果として得られた強度は、ラップ仕上げされ研磨された表面を有するガラス系物品の強度よりも高くあり得る。ダウンドローされたガラス系物品は、約2mm未満の厚さまで板引きされることがある。その上、ダウンドローされたガラス系物品は、費用のかかる研削および研磨を行わずに最終用途に使用できる、非常に平らで滑らかな表面を有する。ガラス系物品がガラスセラミックである場合、ダウンドロー法により形成されたガラス系物品に、それにより1つ以上の結晶相が生成されるセラミック化プロセスを施してよい。
【0135】
フュージョンドロー法では、例えば、溶融ガラス原材料を受け入れるための通路を有するドロー用タンクを使用する。その通路には、通路の両側に通路の長さに沿って上部で開いた堰がある。その通路が溶融材料で満たされると、溶融ガラスが堰を越えて溢れる。溶融ガラスは、重力のために、2つの流れるガラス膜としてドロー用タンクの外面を下方に流れる。ドロー用タンクのこれらの外面は、ドロー用タンクの下の縁で接合するように、下方かつ内側に延在する。この2つの流れるガラス膜はこの縁で接合し、融合して、単一の流れるガラス系物品を形成する。このフュージョンドロー法は、通路を越えて流れる2つのガラス膜は互いに融合するので、結果として得られたガラス系物品の外面はその装置のどの部分とも接触しないという利点を提供する。したがって、フュージョンドロー法により形成されたガラス系物品の表面特性は、そのような接触により影響を受けない。ガラス系物品がガラスセラミックである場合、フュージョン法により形成されたガラス系物品に、それにより1つ以上の結晶相が生成されるセラミック化プロセスを施してよい。
【0136】
スロットドロー法は、フュージョンドロー法とは異なる。スロットドロー法において、溶融原材料ガラスがドロー用タンクに提供される。このドロー用タンクの下部には開放スロットがあり、このスロットの長さに亘りノズルが延在している。溶融ガラスは、このスロット/ノズルを通って流れ、連続したガラス系物品として下方に、焼き鈍し領域へと板引きされる。ガラス系物品がガラスセラミックである場合、スロットドロー法により形成されたガラス系物品に、それにより1つ以上の結晶相が生成されるセラミック化プロセスを施してよい。
【0137】
いくつかの実施の形態において、前記ガラス系物品は、その内容が全てここに引用される、「Precision Glass Roll Forming Process and Apparatus」と題する米国特許第8713972号明細書、「Precision Roll Forming of Textured Sheet Glass」と題する米国特許第9003835号明細書、「Methods And Apparatus For Forming A Glass Ribbon」と題する米国特許出願公開第2015/0027169号明細書、および「Apparatus and Method for Forming Thin Glass Articles」と題する米国特許出願公開第2005/0099618号明細書に記載されているような、薄型圧延法を使用して形成されることがある。より詳しくは、そのガラス系物品は、溶融ガラスの垂直流を供給し、溶融ガラスまたはガラスセラミックの供給された流れを、約500℃以上または約600℃以上の表面温度に維持された一対の成形ロールで成形して、成形厚を有する成形ガラスリボンを成形し、成形ガラスリボンを、約400℃以下の表面温度に維持された一対の寸法仕上げロールで寸法仕上げして、成形厚より小さい所望の厚さおよび所望の厚さ均一性を有する寸法仕上げガラスリボンを生成することによって、形成される。そのガラスリボンを成形するために使用した装置は、溶融ガラスの供給流を供給するためのガラス供給装置;約500℃以上の表面温度に維持される一対の成形ロールであって、成形ロールの間のガラス成形間隙を画成する互いに密接に隣接して間隔が開けられており、そのガラス形成間隙は、溶融ガラスの供給流を受け入れ、成形ロールの間で溶融ガラスの供給流を薄くして、成形厚を有する形成ガラスリボンを成形するために、ガラス供給装置の垂直下方に位置している成形ロール;および約400℃以下の表面温度に維持された一対の寸法仕上げロールであって、寸法仕上げロールの間にガラス寸法仕上げ間隙を画成する互いに密接に隣接して間隔が開けられており、そのガラス寸法仕上げ間隙は、成形ガラスリボンを受け取り、成形ガラスリボンを薄くして、所望の厚さおよび所望の厚さ均一性を有する寸法仕上げ間隙されたガラスリボンを生成するために、成形ロールの垂直下方に位置している寸法仕上げロールを備えることがある。
【0138】
ある場合には、ガラスの粘度のために、フュージョン法やスロットドロー法が使用できない場合、薄型圧延法が利用されることがある。例えば、ガラスが100kP未満の液相粘度を示すときに、ガラス系物品を形成するために薄型圧延法を利用できる。
【0139】
前記ガラス系物品は、表面傷の影響をなくすかまたは低下させるために、酸磨きまたは他の様式で処理してもよい。
【0140】
本開示の別の態様は、破壊抵抗性ガラス系物品を形成する方法に関する。この方法は、約1ミリメートル以下の厚さを画成する、第1の表面および第2の表面を有するガラス系基体を提供する工程、およびここに記載されたように、ガラス系基体に応力プロファイルを生じさせて、破壊抵抗性ガラス系物品を提供する工程を有してなる。1つ以上の実施の形態において、応力プロファイルを生じさせる工程は、複数のアルカリイオンをガラス系基体中にイオン交換して、厚さの相当な部分(ここに記載されたように)に沿ってまたは全厚に沿って変動するゼロではないアルカリ金属酸化物濃度を形成する工程を含む。一例において、応力プロファイルを生じさせる工程は、約350℃以上(例えば、約350℃から約500℃)の温度を有する、Na+、K+、Rb+、Cs+の硝酸塩またはその組合せを含む溶融塩浴中にガラス系基体を浸漬する工程を含む。一例において、その溶融塩浴は、NaNO3を含むことがあり、約485℃の温度を有することがある。別の例において、その浴は、NaNO3を含むことがあり、約430℃の温度を有することがある。そのガラス系基体は、約2時間以上、約48時間まで(例えば、約12時間から約48時間、約12時間から約32時間、約16時間から約32時間、約16時間から約24時間、または約24時間から約32時間)、前記浴中に浸漬されることがある。
【0141】
いくつかの実施の形態において、前記方法は、複数の浴中の連続浸漬工程を使用して、複数の工程で、ガラス系基体を化学強化またはイオン交換する工程を含むことがある。例えば、2つ以上の浴を連続して使用してもよい。その2つ以上の浴の組成物は、同じ浴中に単一の金属(例えば、Ag+、Na+、K+、Rb+、またはCs+)または金属の組合せを含んでよい。複数の浴が使用される場合、その浴は、互いに、同じまたは異なる組成および/または温度を有することがある。そのような各浴中の浸漬時間は、所望の応力プロファイルを与えるために、同じであっても、異なってもよい。
【0142】
1つ以上の実施の形態において、第2の浴またはその後の浴を利用して、より大きい表面CSを生じさせてもよい。ある場合には、前記方法は、層の化学深さおよび/またはDOCに著しく影響を与えずに、その第2のまたはその後の浴中にガラス系基体を浸漬して、より大きい表面CSを生じさせる工程を含む。そのような実施の形態において、第2のまたはその後の浴は、単一の金属(例えば、KNO3またはNaNO3)または金属の混合物(KNO3およびNaNO3)を含んでもよい。その第2のまたはその後の浴の温度は、そのより大きい表面CSを生じさせるために調整してもよい。いくつかの実施の形態において、その第2のまたはその後の浴中のガラス系基体の浸漬時間も、層の化学深さおよび/またはDOCに影響を与えずに、より大きい表面CSを生じさせるために調整してよい。例えば、その第2のまたはその後の浴中の浸漬時間は、10時間未満(例えば、約8時間以下、約5時間以下、約4時間以下、約2時間以下、約1時間以下、約30分以下、約15以下、または約10以下)であってよい。
【0143】
1つ以上の代わりの実施の形態において、前記方法は、ここに記載されたイオン交換過程と組み合わせて使用できる1つ以上の熱処理工程を含むことがある。その熱処理は、ガラス系物品を熱処理して、所望の応力プロファイルを得る工程を含む。いくつかの実施の形態において、熱処理工程は、焼き鈍し、熱強化またはガラス系基体を約300℃から約600℃の範囲の温度に加熱する工程を含む。その熱処理は、1分から約18時間に亘り継続することがある。いくつかの実施の形態において、熱処理は、1つ以上のイオン交換過程の後に、またはイオン交換過程の間に使用されることがある。
【実施例0144】
以下の実施例により、様々な実施の形態をさらに明確にする。実施例において、実施例は、強化される前に、「基体」と称される。実施例は、強化が施された後、「物品」または「ガラス系物品」と称される。
【0145】
実施例1
下記の表2に示された公称組成を有するガラスセラミック基体を提供した。それらのガラスセラミック基体は、厚さが0.8mmであり、主結晶相としてβスポジュメン固溶体およびルチルを含む1種類以上の副相を含む結晶相集合体を含んだ。ガラスセラミック基体を、10時間(条件A)、13時間(条件B)、または24時間(条件C)に亘り485℃の温度を有するNaNO3を含む溶融塩浴、もしくは2時間に亘り430℃の温度(比較条件D)を有するNaNO3を含む溶融塩浴中に浸漬して、ガラスセラミック物品を形成した。
【0146】
【0147】
前記ガラスセラミック物品の応力プロファイルをマイクロプローブにより測定した。その応力プロファイルが
図5に示されている。
図5に示されるように、Na
+イオンは、より高温の浴が利用された場合(すなわち、条件A~C)、物品のほぼ全厚に亘りイオン交換される。そのようなガラスセラミックにおいて、Na
2Oは、CT領域中に約1.2モル%以上の量で存在する。より低温の浴(比較条件D)においてイオン交換されたガラスセラミック物品は、公知の応力プロファイルに似た応力プロファイルを示した。
【0148】
実施例2
表2に示されたものと同じ組成および0.8mmの厚さを有するが、非晶質構造(結晶相なし)を有するガラス基体を、様々な期間に亘り約430℃の温度を有する100%のNaNO
3を含む溶融塩浴中に浸漬することにより化学強化して、ガラス物品を提供した。そのガラス物品のDOCおよび最大CTは、散乱光偏光器(SCALP)を使用して測定した。
図6に示されるように、DOCおよび最大CTは、浸漬すなわちイオン交換の長さが増加するにつれて増加する。最大CT値は、約16時間に亘りガラスを浸漬した後に観察された。
【0149】
実施例2のガラス物品の応力プロファイルをSCALPを使用して測定した。その応力プロファイルが
図7に示されている。正の応力値を示すx軸の上側部分はCT層であり、負の応力値を示すx軸の下側部分はCS値である。16時間に亘り化学強化したガラス物品の応力プロファイルは、最大CT値(すなわち、175MPa)および100マイクロメートルの、深さ方向に、線形部分を実質的に含まない放物線状の形状を示した。SCALPにより測定した表面CSは約410MPaであった。したがって、実施例2の表面CSに対する最大CTの比は、約0.4375である。
【0150】
実施例3
比較のために、各々が約0.8mmの厚さを有する、実施例1のガラスセラミック基体および実施例2のガラス基体に、3.5時間に亘り、350℃の温度を有するNaNO
3の溶融塩浴中に浸漬することによって、化学強化を行った(それぞれ、実施例3Aおよび3B)。
図8に示されたガラスセラミック物品およびガラス物品の得られた応力プロファイルは、誤差関数(erfc)または準線形形状に似ている。さらに、層のCS深さは、ガラスまたはガラスセラミック中に交換されたアルカリイオンの深さ(または化学イオン交換深さ)よりも小さい。
【0151】
各々が約0.8mmの厚さを有する、実施例1のガラスセラミック基体および実施例2のガラス基体に、24時間に亘り、430℃の温度を有するNaNO
3の溶融塩浴中に浸漬することによって、ここに記載された化学強化を行った場合(それぞれ、実施例3Cおよび3D)、得られたガラス系物品は、
図9に示されるような金属酸化物濃度プロファイル(EPMAにより得られる)を示した。その金属酸化物濃度プロファイルは、放物線状であり、全厚に亘りNa
+イオンのイオン交換を示す。その化学プロファイルはEMPAを使用して測定した。Na
2O拡散の化学深さは、400マイクロメートル以上と示されている。さらに、Na
2Oは、CT層を含む厚さに亘り、約1モル%以上の濃度で存在する。実施例3Dの得られたガラスセラミック物品は、ガラスセラミック基体が同一の携帯電話の筐体に据え付けられた落下試験において優れた破壊抵抗を示した。詳しくは、実施例3Dの5つのサンプルを携帯電話装置に組み込み、50cmの深さで始まる連続落下に関して、研磨紙上に落とした。各サンプルがある高さからの落下に生存するにつれて、割れが生じるまで、サンプルを再び増加された高さから落とした。割れた時点で、そのサンプルの破損高さを
図9Aに記録した。実施例3Dは、172.5cmの平均破損高さを示した。
【0152】
図10は、公知のプロセスにより化学強化したガラス系基体およびここに記載された方法にしたがって化学強化したガラス系基体の応力プロファイルを示している。
図10に示されるように、ここに記載された実施の形態のガラス系物品の応力プロファイルは、線形セグメント(約50マイクロメートル超の長さまたは絶対深さを有する)を実質的に含まない形状を有し、約0.2・tのDOCを示す一方で、公知の応力プロファイルは、約0.1ミリメートルから約0.7ミリメートルの深さに実質的に線形の部分を示す(約0.6ミリメートルまたは600マイクロメートルの全長)。公知の応力プロファイルは、より低いCT値およびより小さいDOCも示す。
【0153】
実施例4
表2の組成を有するガラス基体(各々が約1mmの厚さを有する)に、24時間に亘り430℃の温度を有するNaNO
3の第1の溶融塩浴中に浸漬することによって、化学強化を行った。1つのガラス系物品には、どのような追加の強化工程も施さなかった(実施例4A)。3つのガラス系物品に、0.75時間、4時間、または8時間のいずれかに亘り(それぞれ、実施例4B、4Cおよび4D)、430℃の温度を有するKNO
3の第2の溶融塩浴中に浸漬することによって、第2の強化工程を行った。得られたガラス系物品のSCALPにより測定した応力プロファイルが
図11に示されている。ガラス系物品の深さまたは厚さがx軸にプロットされており、応力がy軸にプロットされている。正の応力値はCT値であり、負の応力値はCS値である。装置の空間分解能のために、第2のKNO
3イオン交換工程に関連するCSの測定が妨げられる。実施例4Aおよび4Bのガラス系物品は同様のプロファイルを示した。実施例4Cおよび4Dのガラス系物品は、時間と共に、第2の強化工程での浸漬後に、減少するCT(実施例4Aおよび4Bと比べて)および減少するCS(実施例4Aおよび4Bと比べて)を示した。実施例4Cおよび4Dのガラス系物品は、実施例4Aおよび4Bと比べて、増加したDOCも示し、そのようなDOC値は、0.2・tよりも大きかった。
【0154】
図12は、実施例4B~4Dの各々に関するJ/m
2で表された貯蔵引張エネルギーを示しており、これは、KNO
3の第2の溶融塩浴中に浸漬した時間に応じて、15J/m
2超である。貯蔵引張エネルギーは、測定したSCALP応力プロファイルデータから、先の式(3)を使用して計算できる。
【0155】
図13および14は、実施例4B~4Dの各々について、深さ(マイクロメートル)の関数としてのK
2OおよびNa
2Oの各々の濃度プロファイルを示している。
図13に示されるように、K
2Oの化学深さは、3マイクロメートル(実施例4B、KNO
3浴中の0.75時間の浸漬)、6マイクロメートル(実施例4C、KNO
3浴中の4時間の浸漬)、および5マイクロメートル(実施例4D、KNO
3浴中の8時間の浸漬)である。
図14に示されるように、Na
2Oは、全深さに浸透し、ガラス系物品の全深さに沿って、実施例4B~4Dの各々について、約1モル%以上の濃度を有する。
【0156】
実施例4Eおよび4Fは、表2の組成を有するガラス基体(各々が約1mmの厚さを有する)を含んだ。その基体に、24時間に亘る430℃の温度を有するNaNO
3の第1の溶融塩浴中の浸漬により、化学強化を行い、それぞれ、4時間または8.25時間に亘る空気中における430℃の温度への熱処理を行った。実施例4E、4Fのガラス系物品の応力プロファイルが
図15に示されており、実施例4A、4Cおよび4Dに関する応力プロファイルが比較のために示されている。
図16は、0.5・tの深さまたはその近くで応力プロファイルの差を示すために、より小さい目盛りで、
図15と同じグラフを示している。
【0157】
実施例5
表2の組成を有するガラス基体(各々が約1mmの厚さを有する)に、24時間に亘り430℃の温度を有するNaNO3の第1の溶融塩浴中に浸漬することによって、化学強化を行った。1つのガラス系物品には、どのような追加の強化工程も施さなかった(実施例5A)。2つのガラス系物品に、390℃の炉内にガラス系物品を置き、8時間または28時間に亘り(それぞれ、実施例5B~5C)、炉内にガラス系物品を維持することによって、第2の強化工程を行った。4つのガラス系物品に、4時間または8時間に亘り、430℃の温度を有するKNO3の第2の溶融塩浴中に浸漬することによって(第1の強化工程および異なる第2の強化工程のいずれかの後)、第3の強化工程を行った(実施例5D~5G)。実施例5A~5Gの各々に関する強化工程が、表3に示されている。測定したCT値も、表3に示されている。
【0158】
【0159】
得られたガラス系物品の応力プロファイルが
図17に示されている。ガラス系物品の深さまたは厚さがx軸にプロットされており、応力がy軸にプロットされている。正の応力値はCT値であり、負の応力値はCS値である。
図17に示されるように、第2のおよび/または第3の熱処理の期間が増加するにつれて、DOCは増加し、CTは減少した。DOCおよびCTの減少が、それぞれ、
図18および19により明白に示されている。
【0160】
次いで、実施例5A~5Gのガラス系物品に、そのガラス系物品の一方の面にテープを貼り付け、反対の裸の面に鋭利な器具を衝突させ、割る、突き試験(poke test)を行った。得られた破片の数を、ガラス系物品の貯蔵引張エネルギーに相間させることができる。実施例5A、5Bおよび5Dは多数の破片を示し(すなわち、50および100さえ超える)、一方で、実施例5Fは10の破片を示し、実施例5Cは3つの破片を示し、実施例5Eおよび5Gは4つの破片を示した。多数の破片を示した実施例5A、5Bおよび5Dは、全てが約100MPa以下のCT値を有した実施例5C、5E、5Fおよび5Gよりも高いCT(約100MPa超)を示した。
【0161】
実施例6
57.5モル%のSiO2、16.5モル%のAl2O3、16.7モル%のNa2O、2.5モル%のMgO、および6.5モル%のP2O5の公称組成を有し、約0.4mm、0.55mm、または1mmの厚さを有するガラス基体に化学強化を行った。厚さおよび化学強化の条件が、表4に示されている。
【0162】
【0163】
実施例6Aは、4時間、8時間、16時間、32時間、64時間、および128時間に亘り(実施例6A-1から6A-6)、表4に示されたような溶融塩浴中に浸漬した。実施例6Bは、4時間、8時間、16時間、32時間、64時間、および128時間に亘り(実施例6B-1から6B-6)、表4に示されたような溶融塩浴中に浸漬した。実施例6Cは、1時間、2時間、4時間、8時間、16時間、および32時間に亘り(実施例6C-1から6C-6)、表4に示されたような溶融塩浴中に浸漬した。実施例6Dは、4時間、8時間、16時間、32時間、64時間、および128時間に亘り(実施例6D-1から6D-6)、表4に示されたような溶融塩浴中に浸漬した。実施例6A-1から6A-6、6B-1から6B-6、6C-1から6C-6、および6D-1から6D-6の応力プロファイルが、それぞれ、
図20、22、24および26に示されている。
図20、22、24および26において、ガラス物品の深さまたは厚さはx軸にプロットされており、応力はy軸にプロットされている。正の応力値はCT値であり、負の応力値はCS値である。
【0164】
実施例6A-1から6A-6、実施例6B-1から6B-6、実施例6C-1から6C-6、および実施例6D-1から6D-6に関する、溶融塩浴中に浸漬した時間の関数としてのCT値およびDOC値が、それぞれ、
図21、23、25、および27に示されている。
【0165】
実施例7
表2に示されたような公称組成を有し、約1mmの厚さを有するガラス基体に、430℃の温度で、100%のNaNO3を含む溶融塩浴中における化学強化を行った。ガラス基体をその溶融塩浴中に浸漬した期間が、表5に示されている。
【0166】
【0167】
実施例7A~7Gのガラス系物品の応力プロファイルが、
図28に示されている。これらの応力プロファイルはSCALPを使用して測定した。
図28に示されるように、16時間および24時間に亘る溶融塩浴中のガラス基体の浸漬により、絶対項で、最大表面CS値および最大CT値を示すガラス系物品が得られる。両方ともイオン交換時間の関数としての、CT値および貯蔵引張エネルギーにおける変化を示すグラフが、
図29に示されている。
【0168】
実施例8
表2に示されたような公称組成を有し、各々が約0.8mmの厚さを有するガラス基体に、15分間(比較例8A)および16時間(実施例8B)に亘り、500℃の温度で、NaNO
3およびNaSO
4の混合物を含む溶融塩浴中における化学強化を行った。例8Aおよび8Bのガラス系物品の応力プロファイルが、
図30に示されている。
図30に示されるように、比較例8Aは公知の応力プロファイルを示したのに対し、実施例8Bは、本開示の1つ以上による応力プロファイルを示した。例8Aおよび8Bのガラス系物品の貯蔵引張エネルギーを、実施例4B~4Dと同じ様式で計算した。計算された貯蔵引張エネルギーが、
図31に示されるように、測定したCT(MPa)の関数としてプロットされている。
【0169】
図31に示されるように、比較例8Aは、実施例8Bよりも、所定のCT値について、ずっと大きい貯蔵引張エネルギー値を示した(同じCT値について)。詳しくは、約55MPaのCTで、比較例8Aは約8J/m
2の貯蔵引張エネルギーを示したのに対し、実施例は約3.5J/m
2の貯蔵引張エネルギーを示した。比較例8Aおよび実施例8Bは割れ、実施例8Bは、比較例8Aよりも少ない破片に割れた。比較例8Aはずっと多い数の破片に割れた。したがって、理論により束縛せずに、貯蔵引張エネルギーを制御することにより、割れパターンまたは割れから生じる破片の数を制御または予測する方法が与えられるであろうと考えられる。
【0170】
表2に示されたような公称組成を有し、各々が約1mmの厚さを有するガラス基体に、4時間(比較例8C)および61.5時間(実施例8D)に亘り、430℃の温度で、NaNO
3を含む溶融塩浴中における化学強化を行った。比較例8Cは公知の応力プロファイルを示したのに対し、実施例8Dは、本開示の1つ以上による応力プロファイルを示した。例8Cおよび8Dの貯蔵引張エネルギーを、実施例4B~4Dに使用したのと同じ方法を使用して計算し、
図32に示されるように、測定したCT(MPa)の関数としてプロットした。
【0171】
図32に示されるように、比較例8Cは、実施例8Dよりも、所定のCT値について、ずっと大きい貯蔵引張エネルギー値を示した(同じCT値について)。比較例8Cおよび実施例8Dは割れ、実施例8Dは、比較例8Cよりも少ない破片に割れた。比較例8Cはずっと多い数の破片に割れた。
【0172】
実施例9
70.9モル%のSiO2、12.8モル%のAl2O3、1.95モル%のB2O3、7.95モル%のLi2O、2.43モル%のNa2O、2.98モル%のMgO、0.89モル%のZnO、および0.1モル%のSnO2の公称組成を有し、約0.8mmの厚さを有するガラス基体に、表6のイオン交換条件を施した。実施例9の様々な性質が、表7において、実施例2と比べられている。
【0173】
【0174】
【0175】
実施例9のガラス系物品の応力プロファイルを測定した。これらの応力プロファイルは、ここに記載された形状を示した。
【0176】
実施例9と同じ厚さを有する、実施例2、実施例6、および比較例9Aによるガラス基体を提供した。実施例2によるガラス基体は、33時間に亘り430℃の温度を有する100%のNaNO
3の溶融浴中でイオン交換した。実施例6によるガラス基体をイオン交換すと、公知の誤差関数応力プロファイルが示された。比較例9Aは、16時間に亘り390℃の温度を有する100%のNaNO
3の溶融浴中でイオン交換し、これも公知の誤差関数応力プロファイルを示した。ここに用いたように、「誤差関数応力プロファイル」という用語は、
図1に似た応力プロファイルを称する。
【0177】
次いで、実施例2、実施例6、実施例9、および比較例9Aからのガラス系物品を、同一の携帯電話装置に据え付けた。これらの電話装置を、30グリットの研磨紙上に20センチメートルで始まる増分高さから落とした。ガラス系物品がある高さ(例えば、20cm)からの落下に生存した場合、その携帯電話を、より高い高さ(例えば、30cm、40cm、50cmなど)から再び落とした。ガラス系物品が破損した高さが
図33にプロットされている。これは、実施例2、6および9、並びに比較例9Aのサンプルに関する平均破損高さも示している。
図33に示されるように、実施例2および9は、実施例6および比較例9Aよりも著しく高い落下高さで破損を示した。詳しくは、実施例6および比較例9Aは、それぞれ、約38cmおよび55cmの落下高さで破損を示し、一方で、実施例2および9は、それぞれ、約147cmおよび132cmの落下高さで破損を示した。
【0178】
同じ試験を、180グリットの研磨紙上に同じ携帯電話装置を使用して新たなサンプルに繰り返した。実施例6の平均破損高さは190cmであり、比較例9Aについては、204cmであり、実施例2については214cmであり、実施例9については、214cmであった。
【0179】
65モル%のSiO2、5モル%のB2O3、14モル%のAl2O3、14モル%のNa2O、2モル%のMgO、および0.1モル%のSnO2の公称組成、および0.8mmの厚さを有する、比較例9Bによるガラス基体にイオン交換を行うと、公知の誤差関数応力プロファイルが示された。実施例2および実施例6(この実施例において上述した応力プロファイルを示す)、比較例9Bのガラス系物品のサンプルおよび表5に示されるような条件4にしたがってイオン交換した実施例9のガラス系物品に、ここに記載されたように、A-ROR試験を行った。
【0180】
実施例6および9、並びに比較例9Bは、25psi(約172kPa)および45psi(約310kPa)の荷重または圧力を使用して研磨し、実施例2は、25psi(約172kPa)の荷重のみを使用して研磨した。そのARORデータが
図34に示されている。
図34に示されるように、実施例2および9は、実施例6および比較例9Bよりも高い破壊荷重を示した。
【0181】
実施例2(この実施例において上述したようにイオン交換した)および9(条件4にしたがってイオン交換した)のガラス系物品のサンプルに、4点曲げ試験を行った。その結果が、
図35のワイブル分布プロットに示されている。
図35に示されるように、実施例9は、より高い破壊荷重または応力(例えば、約400MPa超)を示した。
【0182】
先に示したように、525℃より高い歪み点を有する組成物から製造されたガラス系物品は、約350℃から約480℃の範囲のイオン交換温度(またはイオン交換浴温度)を可能にする。いくつかの実施の形態において、約800平方ミリメートル/時より大きい拡散性を示すガラス組成物は、金属酸化物がガラス系物品中に拡散して、応力緩和が最小になるほど急激にその物品の全深さまたは厚さに浸透することができる。過剰な応力緩和により、ガラス系物品の表面圧縮応力が低下し得る。
【0183】
本発明の精神または範囲から逸脱せずに、様々な改変および変更が行えることが当業者に明白であろう。
【0184】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0185】
実施形態1
ガラス系物品において、
厚さ(t)を画成する、第1の表面と該第1の表面の反対にある第2の表面、および
ゼロではなく、かつ約0・tから約0.3・tの厚さ範囲に沿って変動する金属酸化物の濃度、
を有し、
前記ガラス系物品が割れた場合、該ガラス系物品は1平方インチ(約6.4516cm2)当たり少なくとも2の破片に割れる、ガラス系物品。
【0186】
実施形態2
前記金属酸化物の濃度が、ゼロではなく、かつ全厚に沿って変動する、実施形態1に記載のガラス系物品。
【0187】
実施形態3
前記金属酸化物により前記厚さ範囲に沿って応力が生じる、実施形態1または2に記載のガラス系物品。
【0188】
実施形態4
前記金属酸化物の濃度が、前記第1の表面から、該第1の表面と前記第2の表面の間の地点まで減少し、該地点から該第2の表面まで増加する、実施形態1から3いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0189】
実施形態5
約300MPa以上の表面圧縮応力(CS)をさらに有する、実施形態1から4いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0190】
実施形態6
前記表面CSが約600MPa以上である、実施形態5に記載のガラス系物品。
【0191】
実施形態7
前記金属酸化物の濃度が前記厚さ全体に亘り約0.05モル%以上である、実施形態1から6いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0192】
実施形態8
前記第1の表面での前記金属酸化物の濃度が、約0.5・tと等しい深さでの該金属酸化物の濃度より約1.5倍大きい、実施形態1から7いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0193】
実施形態9
前記ガラス系物品が、約1モル%から約15モル%の範囲の前記金属酸化物の総濃度を有する、実施形態1から8いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0194】
実施形態10
前記金属酸化物が、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、およびCs2Oのいずれか1つ以上を含む、実施形態1から9いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0195】
実施形態11
約300MPa以上の表面CSおよび約0.4・t以上の層の化学深さをさらに有する、実施形態1から10いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0196】
実施形態12
前記第1の表面から、約0.1・t以上であるDOCまで延在するCS層をさらに有する、実施形態1から11いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0197】
実施形態13
中央張力(CT)領域をさらに有し、該CT領域が前記金属酸化物の濃度勾配を有する、実施形態1から12いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0198】
実施形態14
前記CT領域が最大CTを有し、表面CSに対する最大CTの比が約0.01から約0.5の範囲にある、実施形態13に記載のガラス系物品。
【0199】
実施形態15
tが約3ミリメートル以下を含む、実施形態1から14いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0200】
実施形態16
tが約1ミリメートル以下を含む、実施形態1から15いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0201】
実施形態17
非晶質構造をさらに有する、実施形態1から16いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0202】
実施形態18
結晶質構造をさらに有する、実施形態1から17いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0203】
実施形態19
約380nmから約780nmの範囲の波長に亘り約88%以上の透過率をさらに示す、実施形態1から18いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0204】
実施形態20
約380nmから約780nmの範囲の波長に亘り約10%以下の透過率をさらに示す、実施形態1から19いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0205】
実施形態21
CIE光源F02の下で、約88以上のL*値、約-3から約+3の範囲のa*値、および約-6から約+6の範囲のb*値の、CIELAB色空間座標をさらに示す、実施形態1から20いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0206】
実施形態22
CIE光源F02の下で、約40以下のL*値、約-3から約+3の範囲のa*値、および約-6から約+6の範囲のb*値の、CIELAB色空間座標をさらに示す、実施形態1から21いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0207】
実施形態23
厚さ(t)を画成する、第1の表面と該第1の表面の反対にある第2の表面、第1の金属酸化物濃度、および第2の金属酸化物濃度、
をさらに有し、
前記第1の金属酸化物濃度が、約0・tから約0.5・tの第1の厚さ範囲に沿って約0モル%から約15モル%の範囲にあり、
前記第2の金属酸化物濃度が、約0マイクロメートルから約25マイクロメートルの第2の厚さ範囲に沿って約0モル%から約10モル%の範囲にある、実施形態1から22いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0208】
実施形態24
第3の金属酸化物をさらに有する、実施形態23に記載のガラス系物品。
【0209】
実施形態25
ガラス系物品において、
約3ミリメートル未満厚さ(t)を画成する、第1の表面と該第1の表面の反対にある第2の表面、および
前記厚さに沿って延在する応力プロファイル、
を有し、
約0・tから0.3・tまで、および0.7・t超からの厚さ範囲の間の前記応力プロファイルの全ての点が、約-0.1MPa/マイクロメートル未満、または約0.1MPa/マイクロメートル超の正接を有し、
前記応力プロファイルが、最大CS、DOCおよび最大CTを有し、最大CSに対する最大CTの比が約0.01から約0.5の範囲にあり、前記DOCが約0.1・t以上であり、
前記ガラス系物品が割れた場合、該ガラス系物品は1平方インチ(約6.4516cm2)当たり少なくとも2の破片に割れる、ガラス系物品。
【0210】
実施形態26
約300MPa以上の表面CSをさらに有する、実施形態25に記載のガラス系物品。
【0211】
実施形態27
前記表面CSが約600MPa以上である、実施形態26に記載のガラス系物品。
【0212】
実施形態28
約300MPa以上の表面CSおよび約0.4・t以上の層の化学深さ(DOL)をさらに有する、実施形態25から27いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0213】
実施形態29
前記第1の表面から、約0.1・t以上であるDOCまで延在するCS層をさらに有する、実施形態25から28いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0214】
実施形態30
CT領域をさらに有し、該CT領域が金属酸化物の濃度勾配を有する、実施形態25から29いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0215】
実施形態31
前記CT領域が最大CTを有し、表面CSに対する最大CTの比が約0.01から約0.5の範囲にある、実施形態30に記載のガラス系物品。
【0216】
実施形態32
tが約2ミリメートル以下を含む、実施形態25から31いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0217】
実施形態33
tが約1ミリメートル以下を含む、実施形態25から32いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0218】
実施形態34
ガラス系物品において、
厚さ(t)を画成する、第1の表面と該第1の表面の反対にある第2の表面、
ゼロではなく、かつ約0・tから約0.3・tの厚さ範囲に沿って変動する金属酸化物の濃度、および
約200MPa以上の表面CS、
を有する、ガラス系物品。
【0219】
実施形態35
前記厚さ範囲が約0・tから約0.4tである、実施形態34に記載のガラス系物品。
【0220】
実施形態36
前記厚さ範囲が約0・tから約0.45tである、実施形態34または35に記載のガラス系物品。
【0221】
実施形態37
前記金属酸化物により前記厚さ範囲に沿って応力が生じる、実施形態34から36いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0222】
実施形態38
前記金属酸化物が、前記ガラス系物品中の金属酸化物の全ての中で最大のイオン直径を有する、実施形態37に記載のガラス系物品。
【0223】
実施形態39
前記金属酸化物の濃度が、前記第1の表面から、該第1の表面と前記第2の表面の間の地点まで減少し、該地点から該第2の表面まで増加する、実施形態34から38いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0224】
実施形態40
前記ガラス系物品が割れた場合、該ガラス系物品は1平方インチ(約6.4516cm2)当たり少なくとも1の破片から1平方インチ(約6.4516cm2)当たり40までの破片に割れる、実施形態34から39いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0225】
実施形態41
前記ガラス系物品が、約460℃で約450μm2/時以上の拡散性、最大CT、および約0.15・t超のDOCを有し、前記表面CSが前記最大CTの1.5倍以上である、実施形態34から40いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0226】
実施形態42
前記ガラス系物品が、約0.7MPa・m1/2以上の破壊靭性(K1C)を示す、実施形態34から41いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0227】
実施形態43
前記表面CSが前記最大CTより大きい、実施形態41に記載のガラス系物品。
【0228】
実施形態44
前記表面CSが約300MPa以上である、実施形態34から43いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0229】
実施形態45
前記表面CSが約600MPa以上である、実施形態34から44いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0230】
実施形態46
前記金属酸化物の濃度が前記厚さ全体に亘り約0.05モル%以上である、実施形態34から45いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0231】
実施形態47
前記第1の表面での前記金属酸化物の濃度が、約0.5・tと等しい深さでの該金属酸化物の濃度より約1.5倍大きい、実施形態34から46いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0232】
実施形態48
前記金属酸化物の総濃度が、約1モル%から約15モル%の範囲にある、実施形態34から47いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0233】
実施形態49
前記金属酸化物が、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、およびCs2Oのいずれか1つ以上を含む、実施形態34から48いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0234】
実施形態50
約0.4・t以上の層の化学深さをさらに有する、実施形態34から49いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0235】
実施形態51
前記第1の表面から、約0.1・t以上であるDOCまで延在するCS層をさらに有する、実施形態34から50いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0236】
実施形態52
CT領域をさらに有し、該CT領域が前記金属酸化物の濃度勾配を有する、実施形態34から51いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0237】
実施形態53
前記CT領域が最大CTを有し、表面CSに対する最大CTの比が約0.01から約0.5の範囲にある、実施形態52に記載のガラス系物品。
【0238】
実施形態54
tが約3ミリメートル以下を含む、実施形態34から53いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0239】
実施形態55
tが約1ミリメートル以下を含む、実施形態34から54いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0240】
実施形態56
ガラス系物品において、
厚さ(t)を画成する、第1の表面と該第1の表面の反対にある第2の表面、および
濃度勾配を形成する金属酸化物、
を有し、
前記金属酸化物の濃度が、前記第1の表面から、該第1の表面と前記第2の表面の間の地点まで減少し、該地点から該第2の表面まで増加し、
前記地点での前記金属酸化物の濃度がゼロではなく、
前記ガラス系物品が、約0J/m2超から20J/m2未満の貯蔵引張エネルギーを示す、ガラス系物品。
【0241】
実施形態57
約300MPa以上の表面CSをさらに有する、実施形態56に記載のガラス系物品。
【0242】
実施形態58
前記表面CSが約600MPa以上である、実施形態57に記載のガラス系物品。
【0243】
実施形態59
前記金属酸化物の濃度が前記厚さ全体に亘り約0.05モル%以上である、実施形態56から58いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0244】
実施形態60
前記第1の表面での前記金属酸化物の濃度が、約0.5・tと等しい深さでの該金属酸化物の濃度より約1.5倍大きい、実施形態56から59いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0245】
実施形態61
前記金属酸化物の総濃度が、約1モル%から約15モル%の範囲にある、実施形態56から60いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0246】
実施形態62
前記金属酸化物が、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、およびCs2Oのいずれか1つ以上を含む、実施形態56から61いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0247】
実施形態63
約200MPa以上の表面CSおよび約0.4・t以上の層の化学深さをさらに有する、実施形態56から62いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0248】
実施形態64
前記第1の表面から、約0.1・t以上であるDOCまで延在するCS層をさらに有する、実施形態56から63いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0249】
実施形態65
CT領域をさらに有し、該CT領域が前記金属酸化物の濃度勾配を有する、実施形態56から64いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0250】
実施形態66
前記CT領域が最大CTを有し、表面CSに対する最大CTの比が約0.01から約0.5の範囲にある、実施形態65に記載のガラス系物品。
【0251】
実施形態67
tが約3ミリメートル以下を含む、実施形態56から66いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0252】
実施形態68
tが約1ミリメートル以下を含む、実施形態56から67いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0253】
実施形態69
ガラス系物品において、
約3ミリメートル未満の厚さ(t)を画成する、第1の表面と該第1の表面の反対にある第2の表面、および
前記厚さに沿って延在する応力プロファイル、
を有し、
約0・tから0.3・tまで、および0.7・t超からの厚さ範囲の間の前記応力プロファイルの全ての点が、約-0.1MPa/マイクロメートル未満、または約0.1MPa/マイクロメートル超の正接を有し、
前記応力プロファイルが、最大CS、DOCおよび最大CTを有し、最大CSに対する最大CTの比が約0.01から約0.5の範囲にあり、前記DOCが約0.1・t以上であり、
前記ガラス系物品が、約0J/m2超から20J/m2未満の貯蔵引張エネルギーを示す、ガラス系物品。
【0254】
実施形態70
全厚に沿って連続的に変動するゼロではない濃度の金属酸化物をさらに有する、実施形態69に記載のガラス系物品。
【0255】
実施形態71
約10マイクロメートル未満の厚さセグメントに沿って連続的に変動するゼロではない濃度の金属酸化物をさらに有する、実施形態69または70に記載のガラス系物品。
【0256】
実施形態72
前記最大CSが約300MPa以上を含む、実施形態69から71いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0257】
実施形態73
前記最大CSが約600MPa以上を含む、実施形態69から72いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0258】
実施形態74
約0.4・t以上の層の化学深さをさらに有する、実施形態69から73いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0259】
実施形態75
CT領域をさらに有し、該CT領域が前記金属酸化物の濃度勾配を有する、実施形態69から74いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0260】
実施形態76
tが約3ミリメートル以下を含む、実施形態69から75いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0261】
実施形態77
tが約1ミリメートル以下を含む、実施形態69から76いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0262】
実施形態78
ガラス系物品において、
CS領域およびCT領域を含む応力プロファイル、
を有し、
前記CT領域が、式:
【0263】
【0264】
により定義され、
式中、MaxCTは最大CT値であり、MPaの単位の正の値として与えられ、xは、マイクロメートルの厚さ(t)に沿った位置であり、nは1.5と5の間である、ガラス系物品。
【0265】
実施形態79
前記CT領域が、約50MPaから約250MPaの範囲の最大CT値を有し、該最大CT値が、約0.4tから約0.6tの範囲の深さにある、実施形態78に記載のガラス系物品。
【0266】
実施形態80
約0tから約0.1tの範囲の厚さに亘り、前記応力プロファイルが、約20MPa/マイクロメートルから約200MPa/マイクロメートルの範囲の勾配を有する、実施形態78または79に記載のガラス系物品。
【0267】
実施形態81
前記応力プロファイルが、0.5tから前記表面まで測定して、複数の誤差関数により画成される、実施形態78から80いずれか1つに記載のガラス系物品。
【0268】
実施形態82
破壊抵抗のガラス系物品を形成する方法において、
約3ミリメートル以下の厚さを画成する、第1の表面および第2の表面を有するガラス系基体を提供する工程、および
CT層およびCS層を有する前記ガラス系基体に応力プロファイルを生じさせる工程であって、前記CS層は、表面CS、約0.4t以上の化学深さおよび約0.1・t以上のDOCを有し、前記CT層は最大CTを有し、表面CSに対する最大CTの比は約0.01から約0.5である工程、
を有してなる方法。
【0269】
実施形態83
前記応力プロファイルを生じさせる工程が、複数の金属イオンを前記ガラス系基体中にイオン交換して、前記厚さに沿って延在する金属酸化物のゼロではない濃度を含む金属酸化物の濃度勾配を形成する工程を含む、実施形態82に記載の方法。
【0270】
実施形態84
前記金属酸化物のゼロではない濃度が、前記第1の表面から、該第1の表面と前記第2の表面の間の地点まで減少し、該地点から該第2の表面まで増加する、実施形態83に記載の方法。
【0271】
実施形態85
前記CT層が前記金属酸化物の濃度勾配を有する、実施形態82から84いずれか1つに記載の方法。
【0272】
実施形態86
前記応力プロファイルを生じさせた後、前記表面CSを約100MPa以上増加させる工程をさらに含む、実施形態82から85いずれか1つに記載の方法。
【0273】
実施形態87
前記応力プロファイルを生じさせる工程が、第1の複数のイオンを前記ガラス系基体中に第1のイオン交換を行って、前記厚さに沿って延在する前記金属酸化物のゼロではない濃度を含む前記金属酸化物の濃度勾配を形成する工程を含み、前記表面CSを増加させる工程が、第2の複数のアルカリイオンを、前記金属酸化物の濃度勾配を有する前記ガラス系基体中に第2のイオン交換を行う工程を含む、実施形態86に記載の方法。
【0274】
実施形態88
前記応力プロファイルを生じさせる工程が、複数のイオンを前記ガラス系基体中に第1のイオン交換を行って、前記厚さに沿って延在する前記金属酸化物のゼロではない濃度を含む前記金属酸化物の濃度勾配を形成する工程を含み、該複数のイオンが、互いに異なるイオン半径を有する2種類の異なるイオンを含む、実施形態86に記載の方法。
【0275】
実施形態89
強化ガラスにおけるガラス組成物の使用において、
前記ガラス組成物が、モル%で、
約68から約75の範囲の量のSiO2、
約12から約15の範囲の量のAl2O3、
約0.5から約5の範囲の量のB2O3、
約2から約8の範囲の量のLi2O、
約0から約6の範囲の量のNa2O、
約1から約4の範囲の量のMgO、
約0から約3の範囲の量のZnO、および
約0から約5の範囲の量のCaO、
を含み、
前記ガラス基体はイオン交換可能かつ非晶質であり、
前記ガラス基体は、
約0.5から約1の範囲のR2Oに対するLi2Oの比、
約-5から約0の範囲にあるR2Oの総量とAl2O3の量の間の差、
約0から約3の範囲にあるRxOの総量(モル%)とAl2O3の量の間の差、および
約0から約2の範囲にあるROの総量(モル%)に対するMgOの量(モル%)の比、
のいずれか1つ以上を示し、
前記ガラス基体が核形成剤を実質的に含まない、使用。
【0276】
実施形態90
ガラス基体において、モル%で表して、
約68から約75の範囲の量のSiO2、
約12から約15の範囲の量のAl2O3、
約0.5から約5の範囲の量のB2O3、
約2から約8の範囲の量のLi2O、
約0から約6の範囲の量のNa2O、
約1から約4の範囲の量のMgO、
約0から約3の範囲の量のZnO、および
約0から約5の範囲の量のCaO、
を含む組成を有し、
前記ガラス基体はイオン交換可能かつ非晶質であり、
前記ガラス基体は、
約0.5から約1の範囲のR2Oに対するLi2Oの比、
約-5から約0の範囲にあるR2Oの総量とAl2O3の量の間の差、
約0から約3の範囲にあるRxOの総量(モル%)とAl2O3の量の間の差、および
約0から約2の範囲にあるROの総量(モル%)に対するMgOの量(モル%)の比、
のいずれか1つ以上を示し、
前記ガラス基体が核形成剤を実質的に含まない、ガラス基体。
【0277】
実施形態91
ガラス基体において、モル%で表して、
約68から約75の範囲の量のSiO2、
約12から約15の範囲の量のAl2O3、
約0.5から約5の範囲の量のB2O3、
約2から約8の範囲の量のLi2O、
約0から約6の範囲の量のNa2O、
約1から約4の範囲の量のMgO、
約0から約3の範囲の量のZnO、および
約0から約5の範囲の量のCaO、
を含む組成を有し、
前記ガラス基体は非晶質であり、前記ガラスは強化されており、
前記Na2Oの濃度は変動し、核形成剤を実質的に含まない、ガラス基体。
【0278】
実施形態92
約0.5から約1の範囲のR2Oに対するLi2Oの比、
約-5から約0の範囲にあるR2Oの総量とAl2O3の量の間の差、
約0から約3の範囲にあるRxOの総量(モル%)とAl2O3の量の間の差、および
約0から約2の範囲にあるROの総量(モル%)に対するMgOの量(モル%)の比、
のいずれか1つ以上をさらに示す、実施形態91に記載の強化されたガラス基体。