(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027204
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】ハンドオーバ制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 36/18 20090101AFI20230221BHJP
H04W 24/04 20090101ALI20230221BHJP
H04W 36/36 20090101ALI20230221BHJP
H04W 36/30 20090101ALI20230221BHJP
【FI】
H04W36/18
H04W24/04
H04W36/36
H04W36/30
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195975
(22)【出願日】2022-12-07
(62)【分割の表示】P 2021509240の分割
【原出願日】2020-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2019056187
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤代 真人
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ハンドオーバ中の通信中断時間の削減及び無線状態が不安定な環境下におけるハンドオーバの信頼性を改善するハンドオーバ制御方法を提供する。
【解決手段】ハンドオーバ制御方法は、ユーザ装置が接続するソースセルからターゲットセルに対してユーザ装置の条件付きハンドオーバを行うための方法である。ハンドオーバ制御方法は、ユーザ装置が、ソースセルから、条件付きハンドオーバのハンドオーバ指令を受信することと、ユーザ装置がハンドオーバ指令の受信後に接続障害を検知することと、ユーザ装置が、条件付きハンドオーバにおける接続障害に関する情報を含む報告メッセージを、ユーザ装置が接続したセルに送信することと、を含む。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ装置が接続するソースセルからターゲットセルに対して前記ユーザ装置の条件付きハンドオーバを行うためのハンドオーバ制御方法であって、
前記ユーザ装置が、前記ソースセルから、前記ターゲットセルの候補である複数の候補セルの識別子を含むハンドオーバ指令を受信することと、
前記ユーザ装置が、前記ソースセルとの接続時における接続障害に関する情報を含む報告メッセージを、前記接続障害の後に前記ユーザ装置が接続したセルに送信することと、を有し、
前記報告メッセージは、前記ハンドオーバ指令に含まれる全ての前記候補セルの識別子を含む
ハンドオーバ制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法を実行するユーザ装置。
【請求項3】
ユーザ装置が接続するソースセルからターゲットセルに対して条件付きハンドオーバを行う前記ユーザ装置を制御するためのプロセッサであって、
前記ソースセルから、前記ターゲットセルの候補である複数の候補セルの識別子を含むハンドオーバ指令を受信する処理と、
前記ソースセルとの接続時における接続障害に関する情報を含む報告メッセージを、前記接続障害の後に前記ユーザ装置が接続したセルに送信する処理と、を実行し、
前記報告メッセージは、前記ハンドオーバ指令に含まれる全ての前記候補セルの識別子を含む
プロセッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハンドオーバ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムにおいて、ユーザ装置は、自身の移動に伴って、自身が接続するセルをソースセルからターゲットセルに変更するハンドオーバを行う(例えば、非特許文献1参照)。近年、ハンドオーバ中の通信中断時間の削減、及び無線状態が不安定な環境下におけるハンドオーバの信頼性の改善が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】3GPP技術仕様書「TS36.300 V15.4.0」2019年1月
【発明の概要】
【0004】
本開示は、ハンドオーバ中の通信中断時間の削減、及び無線状態が不安定な環境下におけるハンドオーバの信頼性の改善を可能とする技術に関する。
【0005】
第1の態様に係るハンドオーバ制御方法は、ユーザ装置が接続するソースセルからターゲットセルに対して前記ユーザ装置の条件付きハンドオーバを行うための方法である。前記ハンドオーバ制御方法は、前記ユーザ装置が、前記ソースセルから、前記条件付きハンドオーバのハンドオーバ指令を受信することと、前記ユーザ装置が前記ハンドオーバ指令の受信後に接続障害を検知することと、前記ユーザ装置が、前記条件付きハンドオーバにおける前記接続障害に関する情報を含む報告メッセージを、前記ユーザ装置が接続したセルに送信することとを含む。
【0006】
第2の態様に係るハンドオーバ制御方法は、ユーザ装置が接続するソースセルからターゲットセルに対して前記ユーザ装置の条件付きハンドオーバを行うための方法である。前記ハンドオーバ制御方法は、前記ユーザ装置が、前記ソースセルから、前記ターゲットセルの候補である複数の候補セルの識別子とハンドオーバのトリガ条件とを含むハンドオーバ指令を受信することと、前記ハンドオーバ指令の受信後、前記複数の候補セルのうち2つ以上の候補セルについて前記トリガ条件が満たされた場合、前記ユーザ装置が、前記2つ以上の候補セルの中から所定の選択規則を用いて、前記ユーザ装置がアクセスする候補セルを選択することとを含む。
【0007】
第3の態様に係るハンドオーバ制御方法は、ユーザ装置が接続するソースセルからターゲットセルに対して前記ユーザ装置の条件付きハンドオーバを行うための方法である。前記ハンドオーバ制御方法は、前記ユーザ装置が、前記ソースセルから、前記ターゲットセルの候補である複数の候補セルの識別子と、ハンドオーバのトリガ条件とを含むハンドオーバ指令を受信することを含む。前記トリガ条件は、前記ハンドオーバをトリガするために所定のイベントが満たされた状態が持続されるべき持続時間を含む。前記持続時間は、前記候補セルごとに個別に設定される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る移動通信システムの構成を示す図である。
【
図2】一実施形態に係るユーザ装置の構成を示す図である。
【
図3】一実施形態に係る基地局の構成を示す図である。
【
図4】一実施形態に係る無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る無線フレームの構成を示す図である。
【
図6】一実施形態に係る移動通信システムの動作シーケンスの一例を示す図である。
【
図7】一実施形態に係るハンドオーバ指令に含まれる情報(情報要素)の一例を示す図である。
【
図8】一実施形態に係る条件付きハンドオーバにおける接続障害に関連するUEの動作例を示す図である。
【
図9A】一実施形態に係る報告メッセージに含まれる障害セルリストの第1の例を示す図である。
【
図9B】一実施形態に係る報告メッセージに含まれる障害セルリストの第2の例を示す図である。
【
図10】
図8のステップS203の一例を示す図である。
【
図11】一実施形態に係るアクセス先セルの選択に関連するUEの動作例を示す図である。
【
図12】一実施形態に係るハンドオーバ指令に含まれる情報(情報要素)の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照しながら、一実施形態に係る移動通信システムについて説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0010】
(移動通信システムの構成)
まず、一実施形態に係る移動通信システムの構成について説明する。
図1は、一実施形態に係る移動通信システムであるLTE(Long Term Evolution)システムの構成を示す図である。LTEシステムは、3GPP(3rd Generation Partnership Project)(登録商標。以下同じ。)規格に基づくシステムである。
【0011】
以下において、移動通信システムとしてLTEシステムを例示するが、移動通信システムには3GPP規格の第5世代(5G)システムが少なくとも部分的に適用されてもよい。
【0012】
図1に示すように、LTEシステムは、ユーザ装置(UE:User Equipment)100、無線アクセスネットワーク(E-UTRAN:Evolved-UMTS Terrestrial Radio Access Network)10、及びコアネットワーク(EPC:Evolved Packet Core)20を備える。
【0013】
5Gシステムにおいては、無線アクセスネットワークはNG-RAN(Next Generation RAN)と呼ばれ、コアネットワークは5GC(5G Core Network)と呼ばれる。
【0014】
UE100は、移動型の通信装置である。UE100は、自身が在圏するセル(サービングセル)を管理するeNB200との無線通信を行う。UE100は、ユーザにより利用される装置であればよい。例えば、UE100は、携帯電話端末(スマートフォンを含む)やタブレット端末、ノートPC、センサ若しくはセンサに設けられる装置、車両若しくは車両に設けられる装置(Vehicle UE)、又は飛行体若しくは飛行体に設けられる装置(Aerial UE)である。
【0015】
E-UTRAN10は、基地局(eNB:evolved Node-B)200を含む。eNB200は、基地局間インターフェイスであるX2インターフェイスを介して相互に接続される。eNB200は、1又は複数のセルを管理する。eNB200は、自セルとの接続を確立したUE100との無線通信を行う。eNB200は、無線リソース管理(RRM)機能、ユーザデータ(以下、単に「データ」という)のルーティング機能、及び/又はモビリティ制御・スケジューリングのための測定制御機能等を有する。「セル」は、無線通信エリアの最小単位を示す用語として用いられる。「セル」は、UE100との無線通信を行う機能又はリソースを示す用語としても用いられる。1つのセルは1つのキャリア周波数に属する。
【0016】
5Gシステムにおいては、基地局はgNBと呼ばれ、基地局間インターフェイスはXnインターフェイスと呼ばれる。なお、gNBがEPCに接続することもでき、eNBが5GCに接続することもでき、gNBとeNBとが基地局間インターフェイス(Xnインターフェイス、X2インターフェイス)を介して接続されることもできる。
【0017】
EPC20は、モビリティ管理エンティティ(MME)及びサービングゲートウェイ(S-GW)300を含む。MMEは、UE100に対する各種モビリティ制御等を行う。MMEは、NAS(Non-Access Stratum)シグナリングを用いてUE100と通信することにより、UE100が在圏するトラッキングエリア(TA)の情報を管理する。トラッキングエリアは、複数のセルからなるエリアである。S-GWは、データの転送制御を行う。MME及びS-GWは、基地局-コアネットワーク間インターフェイスであるS1インターフェイスを介してeNB200と接続される。
【0018】
5Gシステムにおいては、UE100に対する各種モビリティ制御等を行うコアネットワークエンティティはAMF(Access and Mobility Management Function)と呼ばれる。また、データの転送制御を行うコアネットワークエンティティはUPF(User Plane Function)と呼ばれる。基地局-コアネットワーク間インターフェイスはNGインターフェイスと呼ばれる。
【0019】
図2は、UE100(ユーザ装置)の構成を示す図である。UE100は、受信部110、送信部120、及び制御部130を備える。
【0020】
受信部110は、制御部130の制御下で各種の受信を行う。受信部110は、アンテナ及び受信機を含む。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部130に出力する。
【0021】
送信部120は、制御部130の制御下で各種の送信を行う。送信部120は、アンテナ及び送信機を含む。送信機は、制御部130が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
【0022】
制御部130は、UE100における各種の制御を行う。制御部130は、少なくとも1つのプロセッサ及び少なくとも1つのメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPU(Central Processing Unit)と、を含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。プロセッサは、後述する処理を実行する。
【0023】
図3は、eNB200(基地局)の構成を示す図である。eNB200は、送信部210、受信部220、制御部230、及びバックホール通信部240を備える。
【0024】
送信部210は、制御部230の制御下で各種の送信を行う。送信部210は、アンテナ及び送信機を含む。送信機は、制御部230が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
【0025】
受信部220は、制御部230の制御下で各種の受信を行う。受信部220は、アンテナ及び受信機を含む。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部230に出力する。
【0026】
制御部230は、eNB200における各種の制御を行う。制御部230は、少なくとも1つのプロセッサ及び少なくとも1つのメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPUと、を含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。プロセッサは、後述する処理を実行する。
【0027】
バックホール通信部240は、基地局間インターフェイス(X2インターフェイス又はXnインターフェイス)を介して隣接eNB又は隣接gNBと接続される。バックホール通信部240は、基地局-コアネットワーク間インターフェイス(S1インターフェイス又はNGインターフェイス)を介してMME/S-GW300又はAMF/UPFと接続される。
【0028】
図4は、LTEシステムにおける無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
図4に示すように、無線インターフェイスプロトコルは、OSI参照モデルの第1レイヤ乃至第3レイヤに区分されている。第1レイヤは物理(PHY)レイヤである。第2レイヤは、MAC(Medium Access Control)レイヤ、RLC(Radio Link Control)レイヤ、及びPDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤを含む。第3レイヤは、RRC(Radio Resource Control)レイヤを含む。PHYレイヤ、MACレイヤ、RLCレイヤ、PDCPレイヤ、及びRRCレイヤは、AS(Access Stratum)レイヤを構成する。
【0029】
PHYレイヤは、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行う。UE100のPHYレイヤとeNB200のPHYレイヤとの間では、物理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0030】
MACレイヤは、データの優先制御、ハイブリッドARQ(HARQ)による再送処理、及びランダムアクセスプロシージャ等を行う。UE100のMACレイヤとeNB200のMACレイヤとの間では、トランスポートチャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。eNB200のMACレイヤはスケジューラを含む。スケジューラは、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式(MCS))及びUE100への割当リソースブロックを決定する。
【0031】
RLCレイヤは、MACレイヤ及びPHYレイヤの機能を利用してデータを受信側のRLCレイヤに伝送する。UE100のRLCレイヤとeNB200のRLCレイヤとの間では、論理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0032】
PDCPレイヤは、ヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化を行う。
【0033】
RRCレイヤは、制御情報を取り扱う制御プレーンでのみ定義される。UE100のRRCレイヤとeNB200のRRCレイヤとの間では、各種設定のためのRRCシグナリングが伝送される。RRCレイヤは、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル、及び物理チャネルを制御する。UE100のRRCとeNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がある場合、UE100はRRCコネクティッドモードである。UE100のRRCとeNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がない場合、UE100はRRCアイドルモードである。
【0034】
RRCレイヤの上位に位置するNASレイヤは、セッション管理及びモビリティ管理等を行う。UE100のNASレイヤとMME300CのNASレイヤとの間では、NASシグナリングが伝送される。UE100は、無線インターフェイスのプロトコル以外にアプリケーションレイヤ等の機能を有する。
【0035】
5Gシステムにおいては、ユーザプレーンにおいてPDCPレイヤの上位にSDAP(Service Data Adaptation Protocol)レイヤが設けられる。SDAPレイヤは、コアネットワークがQoS制御を行う単位であるIPフローとAS(Access Stratum)がQoS制御を行う単位である無線ベアラとのマッピングを行う。
【0036】
図5は、LTEシステムにおいて用いられる無線フレームの構成を示す図である。無線フレームは、時間軸上で10個のサブフレームで構成される。各サブフレームは、時間軸上で2個のスロットで構成される。各サブフレームの長さは1msである。各スロットの長さは0.5msである。各サブフレームは、周波数軸上で複数個のリソースブロック(RB)を含む。各サブフレームは、時間軸上で複数個のシンボルを含む。各リソースブロックは、周波数軸上で複数個のサブキャリアを含む。具体的には、12個のサブキャリア及び1つのスロットにより1つのRBが構成される。1つのシンボル及び1つのサブキャリアにより1つのリソースエレメント(RE)が構成される。UE100に割り当てられる無線リソース(時間・周波数リソース)のうち、周波数リソースはリソースブロックにより特定でき、時間リソースはサブフレーム(又はスロット)により特定できる。
【0037】
下りリンクにおいて、各サブフレームの先頭数シンボルの区間は、主に下りリンク制御情報を伝送するための物理下りリンク制御チャネル(PDCCH:Physical Downlink Control Channel)として用いられる領域である。各サブフレームの残りの部分は、主に下りリンクデータを伝送するための物理下りリンク共有チャネル(PDSCH:Physical Downlink Shared Channel)として用いることができる領域である。
【0038】
上りリンクにおいて、各サブフレームにおける周波数方向の両端部は、主に上りリンク制御情報を伝送するための物理上りリンク制御チャネル(PUCCH:Physical Uplink Control Channel)として用いられる領域である。各サブフレームにおける残りの部分は、主に上りリンクデータを伝送するための物理上りリンク共有チャネル(PUSCH:Physical Uplink Shared Channel)として用いることができる領域である。
【0039】
(移動通信システムの動作)
次に、一実施形態に係る移動通信システムの動作について説明する。LTEシステムを例に挙げて説明するが、5Gシステムに適用してもよく、その場合、eNBをgNBと読み替えてもよく、X2インターフェイスをXnインターフェイスと読み替えてもよい。
【0040】
(1)条件付きハンドオーバの概要
一般的なハンドオーバプロシージャにおいて、UE100のハンドオーバをeNB200が決定する。例えば、UE100は、UE100とソースセルとの間の無線状態が悪化したこと、及び/又はUE100とターゲットセルとの間の無線状態が良化したことに応じて、無線状態に関する測定報告をソースセルに送信する。
【0041】
なお、ハンドオーバは、UE100のサービングセルをソースセルからターゲットセルへ切替える動作である。以下において、ソースセル及びターゲットセルが互いに異なるeNBに属している一例について説明するが、ソースセル及びターゲットセルが同じeNBに属していてもよい。
【0042】
ソースセルを管理するソースeNB200は、UE100から送信される測定報告に基づいてUE100のハンドオーバを決定し、ターゲットセルを管理するターゲットeNBに対して、UEコンテキストを含むハンドオーバ要求を送信する。そして、ソースeNB200は、ターゲットeNBからハンドオーバ要求確認応答を受信すると、UE100に対してハンドオーバ指令を送信する。UE100は、ハンドオーバ指令を受信すると、ターゲットeNBへのハンドオーバを開始し、ターゲットeNBに対してランダムアクセス信号を送信する。
【0043】
これに対し、条件付きハンドオーバ(Conditional Handover)のプロシージャにおいて、UE100のハンドオーバをUE100自身が決定する。具体的には、ソースeNB200は、ターゲットセルの候補である候補セルを管理する候補eNBに対してハンドオーバ要求を予め送信する。ここで、候補eNBは、1つに限らず、複数であってもよい。このため、複数の候補eNBがハンドオーバ要求を受信し得る。
【0044】
ソースeNB200は、UE100に対してハンドオーバ指令を予め送信する。UE100は、ハンドオーバ指令を受信した後、トリガ条件が満たされるまでハンドオーバを保留し、トリガ条件が満たされたときにハンドオーバを開始して1つの候補eNBに対してランダムアクセス信号を送信する。
【0045】
かかる条件付きハンドオーバは、ソースeNB200が測定報告に基づくハンドオーバ決定を行わずに、UE100自身でハンドオーバを決定する。このため、UE100とソースeNB200との間の無線状態が不安定である場合でも、無線状態に応じて即座にハンドオーバを行うことで、ハンドオーバの信頼性(ロバストネス)を改善できる。
【0046】
一実施形態において、UE100は、ソースセル(ソースeNB200)から、ターゲットセルの候補である候補セルのリスト(以下、セルリストと呼ぶ)と当該セルリスト中の候補セルごとに指定されるトリガ条件とを含むハンドオーバ指令を受信する。UE100は、受信されたハンドオーバ指令に含まれるセルリスト中の特定の候補セルに対応するトリガ条件が満たされた場合に、当該トリガ条件が満たされた特定の候補セルへのハンドオーバを行う。
【0047】
このように、一実施形態においては、ハンドオーバ指令にセルリストが含まれる。ソースeNB200がUE100の移動方向を予測して移動先の1つのセルのみを候補セルとする方法も考えられるが、このような方法は、予測が外れたときに条件付きハンドオーバを行うことができないという問題がある。一実施形態においては、ハンドオーバ指令にセルリストが含まれるため、そのような問題を解決しやすい。
【0048】
また、候補セルごとにトリガ条件を指定することにより、候補セルの属性(例えば、セルの種別やサイズ)に応じてきめ細かにトリガ条件を指定できる。
【0049】
なお、以下においてソースeNB200を「ソースeNB200S」と表記し、候補eNBを「候補eNB200T」と表記する。
【0050】
(2)動作シーケンスの一例
図6は、一実施形態に係る移動通信システムの動作シーケンスの一例を示す図である。なお、
図6の破線で示すシグナリングは必須ではない。
【0051】
図6に示すように、ステップS101において、RRCコネクティッドモードのUE100は、ソースeNB200Sのセル(ソースセル)との無線接続(RRC接続)を確立している。
【0052】
ソースeNB200Sは、UE100をハンドオーバする場合のターゲットセルの候補である候補セル(候補eNB200T)を決定する。候補eNB200Tは、ソースeNB200Sに隣接する隣接eNBであってもよい。ソースeNB200Sは、UE100が自セルと接続した際に候補eNB200Tを決定してハンドオーバ要求を候補eNB200Tに送信してもよい。ソースeNB200Sは、複数のeNB(複数の候補eNB)に対してハンドオーバ要求を送信してもよい。ここでは、ソースeNB200Sは、候補eNB200T1のセル及び候補eNB200T2のセルを候補セルとして決定することを想定する。以下において、候補eNB200T1のセルを候補セル#1と呼び、候補eNB200T2のセルを候補セル#2と呼ぶ。
【0053】
ステップS102において、ソースeNB200Sは、条件付きハンドオーバのためのハンドオーバ要求メッセージを基地局間インターフェイス(X2インターフェイス)上で候補eNB200T1に送信する。
【0054】
また、ステップS103において、ソースeNB200Sは、条件付きハンドオーバのためのハンドオーバ要求メッセージを基地局間インターフェイス(X2インターフェイス)上で候補eNB200T2に送信する。
【0055】
ハンドオーバ要求メッセージは、UEコンテキストを含む。ハンドオーバ要求メッセージは、条件付きハンドオーバ専用の新たなメッセージであってもよい。或いは、ハンドオーバ要求メッセージは、条件付きハンドオーバを示す情報(情報要素)を含む既存のハンドオーバ要求メッセージであってもよい。
【0056】
候補eNB200T1及び候補eNB200T2のそれぞれは、ソースeNB200Sからハンドオーバ要求メッセージを受信し、ハンドオーバ要求メッセージに含まれるUEコンテキストを保持する。
【0057】
ステップS104において、候補eNB200T1は、ハンドオーバ要求確認応答(Ack)メッセージをX2インターフェイス上でソースeNB200Sに送信する。
【0058】
候補eNB200T1が送信するハンドオーバ要求Ackメッセージは、候補eNB200T1により決定された無線通信設定(RRC Configuration)を含む。無線通信設定は、UE100が候補eNB200T1にハンドオーバした場合に候補eNB200T1との無線通信に適用すべき設定である。無線通信設定は、レイヤごとの設定を含んでもよい。例えば、無線通信設定は、PDCP設定、RLC設定、MAC設定、及びPHY設定のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0059】
候補eNB200T1が送信するハンドオーバ要求Ackメッセージは、UE100が候補eNB200T1に対するランダムアクセスプロシージャを省略するための情報を含んでもよい。このような情報は、タイミングアドバンス情報及び/又は上りリンク無線リソース情報を含む。タイミングアドバンス情報は、UE100が候補eNB200T1に対して上りリンク送信を行う際に適用すべきタイミングアドバンス値(TA値)を示す情報である。上りリンク無線リソース情報は、UE100が候補eNB200T1に対して上りリンク送信を行う際に用いるべき上りリンク無線リソース(時間・周波数リソース)を示す情報である。上りリンク無線リソース情報は、上りリンクグラント(UL grant)と呼ばれることがある。上りリンク無線リソース情報は、上りリンク送信に適用すべき変調・符号化方式(MCS)を示す情報をさらに含んでもよい。
【0060】
ステップS105において、候補eNB200T2は、ハンドオーバ要求AckメッセージをX2インターフェイス上でソースeNB200Sに送信する。
【0061】
候補eNB200T2が送信するハンドオーバ要求Ackメッセージは、候補eNB200T1が送信するハンドオーバ要求Ackメッセージと同様な情報(情報要素)を含んでもよい。すなわち、候補eNB200T2が送信するハンドオーバ要求Ackメッセージは、候補eNB200T2により決定された無線通信設定を含む。候補eNB200T2が送信するハンドオーバ要求Ackメッセージは、UE100が候補eNB200T2に対するランダムアクセスプロシージャを省略するための情報として、タイミングアドバンス情報及び/又は上りリンク無線リソース情報を含んでもよい。
【0062】
ソースeNB200Sは、これらのハンドオーバ要求Ackメッセージを受信することにより、各候補eNB200から無線通信設定を取得する。また、ソースeNB200Sは、タイミングアドバンス情報及び/又は上りリンク無線リソース情報を取得する。
【0063】
ステップS106において、ソースeNB200Sは、条件付きハンドオーバに関する情報(情報要素)を含むハンドオーバ指令(例えば、RRC connection reconfigurationメッセージ)をUE100に送信する。
【0064】
図7は、一実施形態に係るハンドオーバ指令に含まれる情報(情報要素)の一例を示す図である。条件付きハンドオーバのハンドオーバ指令は、条件付きハンドオーバ設定又はターゲット設定(Target Configuration)と呼ばれてもよい。
【0065】
図7に示すように、ソースeNB200SがUE100に送信するハンドオーバ指令は、候補セルごとの設定情報のリストである「Target Config List」を含む。本動作例では、「Target Config List」は、候補セル#1に対応する「Target Config Info」と、候補セル#2に対応する「Target Config Info」とを含む。
【0066】
「Target Config List」は、候補セルごとの設定情報である「Target Config Info」からなる。「Target Config Info」は、対応する候補セルの識別子(例えば、物理セル識別子)である「Cell ID」と、対応する候補セルの無線通信設定(RRC Configuration)と、対応する候補セルへのハンドオーバのトリガ条件(Trigger Condition)とを含む。「Target Config Info」は、候補セルごとのタイミングアドバンス情報及び/又は上りリンク無線リソース情報をさらに含んでもよい。これらの情報が含まれる場合、ハンドオーバ指令は、対応する候補セルについてランダムアクセスプロシージャを省略可能であることを示す情報をさらに含んでもよい。さらに、ハンドオーバ指令は、当該ハンドオーバ指令が有効である時間(有効期間)を指定する情報をさらに含んでもよい。
【0067】
トリガ条件は、トリガ用のイベント(Event)と、このイベント式用のパラメータと、TTT(Time To Trigger)とを含む。
【0068】
イベント(Event)は、例えば、UE100とソースeNB200(ソースセル)との間の無線状態が悪化したこと、及び/又はUE100と候補eNB(候補セル)との間の無線状態が良化したというイベント式が指定される。イベント(Event)は、イベント種別(例えば、イベントA3)を示す識別子により表現されてもよい。イベント種別は、下記のイベント種別のいずれかが設定されうる。
【0069】
Event A1 (Serving becomes better than threshold)
Event A2 (Serving becomes worse than threshold)
Event A3 (Neighbour becomes offset better than PCell/ PSCell)
Event A4 (Neighbour becomes better than threshold)
Event A5 (PCell/ PSCell becomes worse than threshold1 and neighbour becomes better than threshold2)
Event A6 (Neighbour becomes offset better than SCell)
Event B1 (Inter RAT neighbour becomes better than threshold)
Event B2 (PCell becomes worse than threshold1 and inter RAT neighbour becomes better than threshold2)。
【0070】
イベント式用のパラメータは、ソースセルの無線状態と比較される第1の閾値又はこれに付与されるオフセット値、及び候補セルの無線状態と比較される第2の閾値又はこれに付与されるオフセット値等である。無線状態は、例えば、受信参照信号品質(RSRP、RSRQ、及び/又はRS-SINR等)であってもよく、パケット再送回数(RLC再送回数等)であってもよい。
【0071】
TTT(Time To Trigger)は、ハンドオーバをトリガするためにイベント(Event)が満たされた状態が持続されるべき持続時間である。具体的には、イベント(Event)が満たされた状態がTTTの時間だけ継続したときにハンドオーバをトリガすることにより、無線状態の一時的な変動でハンドオーバがトリガされてしまうことが防止され、信頼性を向上させることができる。
【0072】
ここで、「Target Config Info」中にTTTの値を含めることに変えて、TTTのインデックス値(ポインタ値)を含めてもよい。例えば、TTT値が(0,1,2,3)と用意されていた場合、候補セル1は2つ目のTTT、候補セル2は4つ目のTTTというように指定されてもよい。
【0073】
なお、ソースセル(ソースeNB200S)は、各TTTの値として、RLF発生タイミング(T310:out of sync、T312:Re-establishment、RLC再送上限、RACH再送上限)よりも短い値をセットする。
【0074】
図6に示されるシーケンスの説明に戻る。ステップS107及びS108において、ソースeNB200は、UE100がハンドオーバを行う前に、セルリスト中の候補セルを管理する候補eNB200T1及び候補eNB200T2に対して、UE100の下りリンクデータの複製の転送を開始する。すなわち、ソースeNB200は、下りリンクデータの複製の転送処理(いわゆる、データフォワーディング)を開始する。なお、データフォワーディングは、UE100の接続処理の後に行われてもよい。
【0075】
ステップS109において、UE100は、ソースeNB200Sからハンドオーバ指令を受信すると、受信されたハンドオーバ指令に含まれるいずれかのトリガ条件が満たされたか否かを判定する。例えば、UE100は、ソースeNB200S(ソースセル)及び各候補eNB200Tの無線状態を測定し、無線状態を閾値と比較することにより、トリガ条件が満たされたか否かを判定する。
【0076】
具体的には、UE100は、「Target Config Info」に含まれるイベントに、この「Target Config Info」に含まれるパラメータ値を適用する。パラメータ値が適用されたイベントが発生し、且つ、このイベントが満たされた状態がTTTの時間だけ継続したときに、この「Target Config Info」に含まれる「Cell ID」を有する候補セルへのハンドオーバのトリガ条件が満たされる。
【0077】
ステップS110において、UE100は、セルリスト中の特定の候補セルに対応するトリガ条件が満たされた場合に、トリガ条件が満たされた特定の候補セルへのアクセス(接続処理)を行うことを決定する。ここでは、候補eNB200T1(候補セル#1)に対応するトリガ条件が満たされたと仮定して説明を進める。
【0078】
ステップS111において、UE100は、ハンドオーバの実行を示す通知(ハンドオーバ通知)をソースeNB200Sに送信してもよい。ソースeNB200Sは、かかる通知に基づいて、UE100がハンドオーバを実行することを把握する。ハンドオーバ実行通知は、UE100がハンドオーバ先として選択したセルを示す情報を含んでもよい。
【0079】
ステップS112において、UE100は、ハンドオーバ先として選択した候補セル#1(候補eNB200T1)に対してランダムアクセスプロシージャ(接続処理)を開始し、当該セルに対してランダムアクセス信号を送信する。
【0080】
ステップS113において、候補eNB200T1は、ランダム信号に基づいてタイミングアドバンスを算出するとともに、UE100に割り当てる上りリンク無線リソースを決定する。そして、候補eNB200T1は、当該算出したタイミングアドバンス及び決定した上りリンク無線リソースの情報を含むランダムアクセス応答をUE100に送信する。
【0081】
ここで、候補セル#1に対応するタイミングアドバンス情報及び/又は上りリンク無線リソース情報(UL grant)がハンドオーバ指令に含まれている場合がある。この場合、UE100は、候補セル#1(候補eNB200T1)に対するランダムアクセスプロシージャ、すなわち、ランダムアクセス信号の送信(ステップS112)及びランダムアクセス応答の受信(ステップS113)を省略してもよい。ここでは、UE100がランダムアクセスプロシージャを省略したと仮定して説明を進める。
【0082】
ステップS114において、UE100は、候補セル#1(候補eNB200T1)へのハンドオーバを行う際に、候補セル#1に対応するタイミングアドバンス情報及び/又は上りリンク無線リソース情報を用いて、候補セル#1へのランダムアクセス信号の送信を省略するとともに、上りリンクメッセージを候補セル#1に送信する。ここで、上りリンクメッセージは、RRCメッセージの一種であるRRC再設定完了メッセージであってもよい。これにより、UE100と候補セル#1(候補eNB200T1)との間の接続処理が完了し、ハンドオーバが完了する。
【0083】
ステップS115において、UE100は、ハンドオーバが完了すると、ハンドオーバ指令に含まれていた候補セル#1(候補eNB200T1)に対応する無線通信設定を用いて、候補セル#1(候補eNB200T1)とデータを送受信する。候補eNB200T1は、UE100からデータフォワーディングにより予め転送された下りリンクデータをUE100に送信してもよい。
【0084】
ステップS116において、候補eNB200T1は、UE100が候補eNB200T1にハンドオーバ(接続)したことを示すハンドオーバ通知をX2インターフェイス上でソースeNB200Sに送信してもよい。
【0085】
ステップS117において、ソースeNB200Sは、候補eNB200T1からのハンドオーバ通知の受信に応じて、ハンドオーバキャンセルを候補eNB200T2に通知してもよい。候補eNB200T2は、ハンドオーバキャンセルの受信に応じて、ハンドオーバ要求(ステップS103)に含まれ且つ候補eNB200T2が保持していたUEコンテキストを破棄してもよい。
【0086】
以上説明したように、UE100が接続するソースセルからターゲットセルに対してUE100の条件付きハンドオーバを行うためのハンドオーバ制御方法において、UE100は、ソースセルから、ターゲットセルの候補である候補セルのリストとリスト中の候補セルごとに指定されるトリガ条件とを含むハンドオーバ指令を受信する。UE100は、受信されたハンドオーバ指令に含まれるリスト中の特定の候補セル(候補セル#1)に対応するトリガ条件が満たされた場合に、トリガ条件が満たされた特定の候補セル(候補セル#1)へのハンドオーバを行う。このように、候補セルごとにトリガ条件を指定することにより、候補セルの属性(例えば、セルの種別やサイズ)に応じてきめ細かにトリガ条件を指定できる。
【0087】
(3)条件付きハンドオーバにおける接続障害
UEは、条件付きハンドオーバのハンドオーバ指令を受信した後、接続障害を検知することが有りうる。このような接続障害に関する情報をネットワークが取得及び分析し、その後の条件付きハンドオーバに分析結果を反映することにより、その後の接続障害の発生を抑制できる。
【0088】
図8は、条件付きハンドオーバにおける接続障害に関連するUE100の動作例を示す図である。
【0089】
図8に示すように、ステップS201において、UE100は、ソースセル(ソースeNB200S)から条件付きハンドオーバのハンドオーバ指令を受信する。
【0090】
ステップS202において、UE100は、接続障害を検知する。接続障害には、例えば、ソースセルとの接続時における無線リンク障害(RLF)と、トリガ条件が満たされた候補セルへのアクセス障害(ハンドオーバ障害)とが含まれる。
【0091】
ソースセルとの接続時におけるRLFを検知したUE100は、RRCコネクティッドモードを維持しつつ、RRC接続再確立を試みる。ここで、UE100は、このRLFに関する障害情報を記憶する。
【0092】
また、候補セルへのアクセス障害を検知したUE100は、RRCコネクティッドモードを維持しつつ、RRC接続再確立を試みる。ここで、UE100は、このアクセス障害に関する障害情報を記憶する。或いは、1つの候補セルへのアクセス失敗を検知したUE100は、RRCコネクティッドモードを維持しつつ、ハンドオーバ指令で指定された他のセルへのアクセスを試みてもよい。
【0093】
具体的には、UE100は、ある候補セルへのアクセスを行い、アクセスが成功すれば(コネクションが確立すれば)、他の候補セルへのアクセスは行わない。すなわち、他の候補セルへの条件付きハンドオーバ指令がキャンセルされる(Target Config Infoが破棄される)。一方、UE100は、ある候補セルへのアクセスが失敗した場合、他の候補セルの「Target Config Info」を用いて他の候補セルへのアクセスを行う。
【0094】
なお、UE100は、RRC接続再確立に成功した場合、RRCコネクティッドモードを維持しつつ、再確立先のセルに接続する。一方、UE100は、RRC接続再確立に失敗した場合、RRCコネクティッドモードからRRCアイドルモードに遷移する。RRCアイドルモードに遷移したUE100は、セルに接続してRRCコネクティッドモードに遷移するまで、障害情報を保持する。
【0095】
ステップS203において、UE100は、自身が接続したセルを管理するeNB200に対して、障害情報を含む報告メッセージを送信する。このような報告メッセージは、RLFレポート(RLF Report)と呼ばれてもよい。
【0096】
上述したように、条件付きハンドオーバのハンドオーバ指令は、ターゲットセルの候補である複数の候補セルの識別子を含みうる。UE100が送信する報告メッセージは、これら複数の候補セルの識別子のうち少なくとも1つの識別子を含んでもよい。
【0097】
報告メッセージに識別子が含まれる候補セルは、条件付きハンドオーバのハンドオーバ指令で指定された候補セルの全てであってもよい。或いは、報告メッセージに識別子が含まれる候補セルは、条件付きハンドオーバのハンドオーバ指令で指定された候補セルのうち、トリガ条件が満たされ、且つUE100のアクセス時に接続障害が検知された1又は複数の候補セルのみであってもよい。
【0098】
例えば、報告メッセージは、トリガ条件が満たされ、且つUE100のアクセス時に接続障害が検知された少なくとも1つの候補セルの識別子のリスト(以下、「障害セルリスト」と呼ぶ)を含んでもよい。
【0099】
また、報告メッセージは、障害セルリスト中の候補セルのそれぞれと対応付けられた時間情報を含んでもよい。時間情報は、対応する候補セルについて接続障害の発生が検知された時刻の特定に用いる情報である。
【0100】
図9は、報告メッセージに含まれる障害セルリストの一例を示す図である。
【0101】
図9Aに示す第1の例において、障害セルリスト(FailedCellList)は、接続障害が検知されたセルごとに、このセルのセル識別子(CellId)と、このセルについての時間情報(timeConnFailure)と、接続障害の種別(connectionFailureType)とを含む。時間情報(timeConnFailure)は、アクセス障害の発止時刻からの経過時間を示す情報である。接続障害の種別(connectionFailureType)は、無線リンク障害(rlf)、ハンドオーバ障害(hof)、条件付きハンドオーバ障害(chof)の3種類の中から選択される。
【0102】
図9Bに示す第2の例において、障害セルリスト(FailedCellList)は、接続障害が検知されたセルごとに、このセルのセル識別子(CellId)と、このセルについての時間情報(timeConnFailure)と、接続障害の種別(connectionFailureType)と、条件付きハンドオーバ情報(conditionalHO)とを含む。条件付きハンドオーバ情報(conditionalHO)は、条件付きハンドオーバにおける接続障害の場合にTrueが設定される。
【0103】
図10は、
図8のステップS203の一例を示す図である。
【0104】
図10に示すように、RRC接続再確立処理を行う場合、1)RRC Connection Re-establishment RequestメッセージをUE100からeNB200に送信し、2)RRC Connection Re-establishmentメッセージをeNB200からUE100に送信し、3)RRC Connection Re-establishment CompleteメッセージをUE100からeNB200に送信し、4)UE Information RequestメッセージをeNB200からUE100に送信し、5)RLF ReportをUE100からeNB200に送信する。
【0105】
一方、RRC接続処理を行う場合、1)RRC Connection RequestメッセージをUE100からeNB200に送信し、2)RRC Connection SetupメッセージをeNB200からUE100に送信し、3)RRC Connection Setup CompleteメッセージをUE100からeNB200に送信し、4)UE Information RequestメッセージをeNB200からUE100に送信し、5)RLF ReportをUE100からeNB200に送信する。
【0106】
ここで、上記1)のメッセージをUE100からeNB200に送信する際に、RRC接続又は再確立の理由を示す情報要素として「Conditional Handover Failure」を含むメッセージを送信してもよい。
【0107】
また、上記3)のメッセージをUE100からeNB200に送信する際に、接続障害情報を有することを示す情報要素を含むメッセージを送信してもよい。この情報要素は、条件付きハンドオーバにおける接続障害であることを具体的に示す情報要素であってもよい。
【0108】
(4)アクセス先セルの選択
図7に示した条件付きハンドオーバのハンドオーバ指令において、持続時間(TTT)が候補セルごとに個別に設定される一例について説明した。しかしながら、持続時間(TTT)は、全候補セルに対して1つの値が設定されてもよい。
【0109】
また、例えばEvent A2(Serving becomes worse than threshold)又は Event A3(Neighbour becomes offset better than PCell/ PSCell)が全候補セルについて指定される場合がある。この場合において、サービングセルの無線状態が劣化したような場合、2つ以上の候補セルについてトリガ条件が同時に満たされうる。このような場合、UE100は、2つ以上の候補セルの中からいずれかの候補セルを選択してアクセスする。
【0110】
図11は、アクセス先セルの選択に関連するUE100の動作例を示す図である。
【0111】
図11に示すように、ステップS301において、UE100は、ソースセル(ソースeNB200S)から、ターゲットセルの候補である複数の候補セルの識別子とハンドオーバのトリガ条件とを含むハンドオーバ指令を受信する(
図7参照)。
【0112】
ステップS301において、UE100は、いずれかの候補セルのトリガ条件が満たされたと判定する。具体的には、UE100は、いずれかの候補セルについて、イベントが満たされた状態がTTTの時間だけ継続した場合、トリガ条件が満たされたと判定する。
【0113】
ステップS303において、UE100は、ハンドオーバ指令により指定された複数の候補セルのうち2つ以上の候補セルについてトリガ条件が満たされたか否かを確認する。
【0114】
ハンドオーバ指令により指定された複数の候補セルのうち1つの候補セルのみについてトリガ条件が満たされた場合(ステップS303:NO)、ステップS304において、UE100は、この1つの候補セルへのアクセスを行う。
【0115】
一方、ハンドオーバ指令により指定された複数の候補セルのうち2つ以上の候補セルのみについてトリガ条件が満たされた場合(ステップS303:YES)、ステップS305において、UE100は、2つ以上の候補セルの中から所定の選択規則を用いて、UE100がアクセスする候補セルを選択する。そして、ステップS306において、UE100は、選択した候補セルへのアクセスを行う。
【0116】
ステップS305における選択処理において、トリガ条件が満たされた2つ以上の候補セルのそれぞれは、アクセス優先順位と対応付けられる。所定の優先順位は、アクセス優先順位が高い順に候補セルを選択する規則である。
【0117】
アクセス優先順位は、ソースセルを管理するソースeNB200Sにより決定されてもよい。ソースeNB200Sがアクセス優先順位を決定することにより、各候補セルの負荷状況を考慮して負荷の少ないセルを優先させることができる。
【0118】
例えば、
図12に示すように、候補セルごとの優先順位がソースeNB200Sにより明示的に指定される。或いは、候補セルのリスト(Target Config List)における候補セルの並び順により、候補セルごとの優先順位がソースeNB200Sにより暗示的に指定される。この場合、UE100は、例えば設定(List)のエントリの上から順番にセルを選択する。候補セルが属するキャリア周波数ごとにアクセス優先順位が指定されてもよい。
【0119】
アクセス優先順位は、候補セルの無線状態又はキャリア周波数に応じてUE100により決定されてもよい。例えば、UE100は、無線状態が最も良好なセル(RSRP、RSRQ、又はSINRが最も良いセル)を選択してもよい。UE100は、Intra-frequencyセル(すなわち、現在のサービングセルと同じキャリア周波数に属するセル)を優先的に選択してもよいし、Inter-frequencyセル(すなわち、現在のサービングセルと異なるキャリア周波数に属するセル)を優先的に選択してもよい。
【0120】
アクセス優先順位は、UE100が任意に決定してもよい。例えば、UE100は、候補セルのリスト(Target Config List)中の各セルIDをソートして、最初又は最後のセルを選択してもよい。或いは、UE100は、候補セルのリスト(Target Config List)中からセルIDをランダムに選択してもよい。
【0121】
なお、上記の優先順位のいずれを用いるかは、ソースeNBによって指定されてもよい。例えば、上記各情報要素の有無によって、各優先順位の適用有無を判断してもよい。上記の優先順位を組み合わせて用いてもよい。例えば、アクセス優先順位が同じセルが複数存在した場合、当該セルの中から無線状態の最も良いセルを選択してもよい。
【0122】
トリガ条件が満たされた後の優先順位について説明したが、トリガ条件が満たされる前において、上述したような優先順位を用いてもよい。例えば、イベントに対応する無線状態を測定する順番(優先順位)が指定されてもよいし、トリガ条件の判定を行う順番(優先順位)が指定されてもよい。
【0123】
(その他の実施形態)
条件付きハンドオーバが設定されたUE100は、ソースeNBとのRLFが発生した場合、条件付きハンドオーバのイベント条件によらず、割り込み処理的にハンドオーバを実行してもよい。例えば、Event A3がトリガ条件として設定されている場合、ソースeNBのRSRPが良い状態(すなわちA3条件が満たされていない)であるものの、ソースeNBに対するRLC再送回数が上限に達することが有りうる。そのような場合、条件付きハンドオーバが設定されたUE100は、設定されたトリガ条件にかかわらず、ハンドオーバをトリガする。或いは、ソースeNBのRSRPを極端に低く見なす、例えば-200dBm程度と見なすことにより、ハンドオーバをトリガしてもよい。
【0124】
或いは、条件付きハンドオーバが設定されたUE100は、ソースeNBとのRLFが発生した場合、接続再確立処理を開始し、接続再確立処理の際に、条件付きハンドオーバの候補セルを、優先的に再確立先のセルとして選択してもよい。
【0125】
UE100(又はeNB200)が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。
【0126】
また、UE100(又はeNB200)が行う各処理を実行する回路を集積化し、UE100(又はeNB200)の少なくとも一部を半導体集積回路(チップセット、SoC)として構成してもよい。
【0127】
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0128】
本願は、日本国特許出願第2019-056187号(2019年3月25日出願)の優先権を主張し、その内容の全てが本願明細書に組み込まれている。