(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027213
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】術後悪心嘔吐の救援治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/40 20060101AFI20230221BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
A61K31/40
A61P1/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022196161
(22)【出願日】2022-12-08
(62)【分割の表示】P 2019543311の分割
【原出願日】2018-02-09
(31)【優先権主張番号】1702250.0
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】509294346
【氏名又は名称】アカシア ファーマ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ACACIA PHARMA LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギルバート,ジュリアン クライブ
(72)【発明者】
【氏名】グリストウッド,ロバート ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】フォックス,ガブリエル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】術後悪心及び/又は嘔吐(PONV)の救援(rescue)治療に使用するアミスルプリドを提供する。
【解決手段】アミスルプリドは、患者の術後悪心及び/又は嘔吐の治療に有用であり、ここで、患者は、術後悪心及び/又は嘔吐の予防薬を既に投与されており、アミスルプリドの用量は、7.5乃至15mgである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の術後悪心及び/又は嘔吐の治療に使用するアミスルプリドであって、前記患者は、術後悪心及び/又は嘔吐の予防薬を既に投与されており、アミスルプリドの用量は、7.5乃至15mgである、アミスルプリド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、術後悪心及び/又は嘔吐(PONV)の治療におけるアミスルプリドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
PONVは、全外科手術患者の略30%及び高リスク患者の70%に生じる状態である。PONVの危険因子には、手術の種類、性別、喫煙歴、PONV又は乗り物酔いの既往歴、手術の長さ、揮発性麻酔薬の使用、及びオピオイド鎮痛薬の使用が含まれる。一般に、女性は、男性よりもPONVを起こす傾向があり、非喫煙者及び以前にPONV又は乗り物酔いの経験がある人も同様である。
【0003】
PONVは、患者及び医療提供者にとって重要な問題となる。患者が最も恐れる合併症として、術後痛より上に評価される場合も多く、そのため不安及び患者の苦痛を与える大きな要因となる。PONVは、病院からの患者の退院を遅らせる場合、又は入院処置後の再入院をもたらす場合があり、外来患者の入院を要する場合もある。これは経済的、社会的に大きな影響を与える。院内での耐性菌感染率が高まると共に、臨床転帰に影響を与える恐れもある。
【0004】
多数の機序がPONVに関係しているとされており、最も顕著なものは、腸壁からのセロトニンの放出及び脳内の化学受容器引金帯の活性化である。そのため、幾つかの異なる受容体がPONVに関与していると思われ、これらは薬物療法のための効果的な標的を意味する。最も重要なものには、セロトニン作動性5HT3受容体とドパミン作動性D2及び恐らくはD3受容体とがある。
【0005】
中度及び高度リスク患者における予防的制吐剤の日常的使用にも拘わらず、PONVは、5HT3拮抗薬及びコルチコステロイドの現在の標準治療を受けている患者でも、未だに約30乃至40%の症例で起きており、効果的且つ安全な追加薬剤、特に、作用機序の異なるものに対する必要性は依然として高い。
【0006】
アミスルプリドの制吐剤としての使用は、2010年3月11日出願の英国特許明細書GB1004020.2からの優先権を主張する2011年9月15日公開のWO2011/110854に記載されており、これらは共に出典を明記することによりその開示内容全体を本願明細書の一部とする。
【0007】
多施設二重盲検無作為化用量範囲探索第II相試験(出願者が実施)では、PONV(予防)のリスクが中度乃至高度である成人外科患者に対し、アミスルプリドを1mg、5mg、及び20mgの用量で静脈内に投与し、第4の群にはプラセボを与えた。PONVの発生率は全てのアミスルプリド群で低く、1mg(48%、p<0.05)及び5mg(40%、p<0.01)の場合にプラセボ(69%)と比較して有意に低かった。これは、PONVの発生率を評価する際に、5mgが、U字型の用量反応曲線の底部又はその近くに位置することを示唆している。
【0008】
出願者が実施した、PONV(予防)のリスクが中度及び高度である626人の評価可能な成人外科患者を含む、2件の多施設二重盲検無作為化プラセボ対照第III相臨床試験では、5mgのアミスルプリド投与によりPONV発生率を48%に低減できた一方、プラセボでは59%となった(p<0.01)。
【0009】
出願者が実施した、PONV(予防)のリスクが高度である1147人の評価可能な成人外科患者を含む多施設二重盲検無作為化第III相試験では、アミスルプリド5mgと標準制吐剤との併用により、PONV発生率を42%に低減できた一方、プラセボと標準制吐剤との併用では53%となった(p<0.001)。
【0010】
出願者が実施した別の臨床試験では、事前予防を受けなかった患者において、PONVの治療について5mgと10mgの用量のアミスルプリドをプラセボと比較した。用量5mgと10mgとの間に臨床効果の差はなく、両方の用量が、U字型の用量反応曲線の平坦域にあることを示唆している。両方の用量は、PONVの治療においてプラセボよりも有意に良好となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【0012】
本発明は、出願人が実施した、PONVの救援(rescue)治療としての(即ち、PONVの事前予防を受けたが、その後PONVを呈した患者における)アミスルプリドの研究結果に少なくとも部分的に基づく。予想通り、アミスルプリドは、(嘔吐エピソード及び/又は悪心のエピソードに続く)PONVの救援治療として有効であることが分かったが、データを詳細に分析すると、驚くべきことに、アミスルプリド用量10mgは、PONV救援治療としてアミスルプリド用量5mgより効果的であることが分かった。これは、特に上述した臨床試験の結果(2種類の用量に差がないはずであることを示唆する)を考えると、全く予想外であった。
【0013】
第1の態様によれば、アミスルプリドは、患者の術後悪心及び/又は嘔吐の治療に有用であり、ここで、患者は、術後悪心及び/又は嘔吐の予防薬を既に投与されており、アミスルプリドの用量は、7.5乃至15mgである。
【0014】
第2の態様によれば、患者の術後悪心及び/又は嘔吐を治療する方法が提供され、患者にアミスルプリドを投与することを含み、患者は、術後悪心及び/又は嘔吐の予防薬を投与されており、アミスルプリドの用量は、7.5乃至15mgである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
アミスルプリドは、単一のキラル中心を有し、2つのエナンチオマー、即ち、(S-)アミスルプリド及び(R+)アミスルプリドが存在する。ラセミ体、又は(R+)エナンチオマーを実質的に含まない(S-)アミスルプリドを使用することが好ましい場合がある。ほぼ全ての治療活性が(S-)エナンチオマーに見られることが報告されており、そのため、このエナンチオマーの使用は、ラセミ体と比較して、用量を50%(例えば、50%、60%、70%、80%、又は90%、又は50%乃至60%、60%乃至70%、70%乃至80%、又は80乃至90%)減らすことが可能となり得ることを意味する。
【0016】
アミスルプリドのラセミ混合物又はラセミ体とは、アミスルプリドが(S-)アミスルプリド及び(R+)エナンチオマーの両方を含むことを意味する。例えば、ラセミ混合物は、40%乃至60%の(S-)アミスルプリドと60%乃至40%の(R+)エナンチオマーとを含み得る。一部の実施形態において、ラセミ混合物は、約50%の(S-)アミスルプリドと約50%の(R+)エナンチオマーとを含み得る。
【0017】
(R+)エナンチオマーを実質的に含まない(S-)アミスルプリドは、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、又は1%未満の(R+)エナンチオマーを含む)。例えば、(R+)エナンチオマーを実質的に含まない(S-)アミスルプリドは、2%未満又は1%未満の(R+)エナンチオマーを含む。
【0018】
本明細書での使用において、術後悪心及び/又は嘔吐(PONV)という用語は、当該技術分野における従来の意味を有する。この分野では、外科手技に続いて生じる1つ又は複数の嘔吐エピソード(嘔吐及び/又は吐気)の発生、又は嘔吐の欲求(悪心)の発生を意味することが十分に理解されている。吐気は、嘔吐と同じ生理機構を含むが、閉じた声門に対して生じる。PONVは、外科手技終了後48時間以内に発生する悪心及び/又は嘔吐として定義してもよい。また、外科手技終了後24時間以内に発生する悪心及び/又は嘔吐として定義してもよい。
【0019】
本明細書での使用において、「嘔吐のエピソード」とは、嘔吐の発生及び/又は吐気の発生を意味する。
【0020】
本明細書での使用において、「悪心のエピソード」とは、悪心の発生を意味する。これは、患者が嘔吐の欲求を報告すること、又は制吐剤を要求することで示される場合がある。
【0021】
本明細書での使用において、「外科手技」は、当該技術分野における従来の意味を有する。好ましくは、全身麻酔、例えば全身吸入麻酔の投与を含む。処置は、全身麻酔下の待機的手術(開放術又は腹腔鏡下術)にし得る。麻酔導入から抜管まで、少なくとも1時間持続する予定とすることが好ましい。抜管前に、創傷は、閉じる。
【0022】
本明細書での使用において、「外科手技の終了」という用語は、当該技術分野における従来の意味を有し、当業者に理解される。通常、手術終了時の創傷閉鎖に一致する。
【0023】
本明細書での使用において、「約」又は「略」という用語は、数値(例えば、5、10%、1/3)と共に使用される場合、その数より小さい又は大きい可能性のある数値の範囲を示す。例えば、「約5」とは、5よりも10%、5%、2%、又は1%小さい又は大きい数値の範囲、例えば、4.5乃至5.5、又は4.75乃至5.25、又は4.9乃至5.1、又は4.95乃至5.05の範囲を示す。一部の例において、「約5」は、5より2%又は1%小さい又は大きい数値の範囲、例えば、4.9乃至5.1、又は4.95乃至5.05の範囲を示す。
【0024】
本発明の一態様において、アミスルプリドの用量は、7.5mg乃至15mgである。好ましくは、アミスルプリドの有効量(即ち用量)は、8乃至15mgのアミスルプリド、より好ましくは8.5、9、又は9.5乃至15mgを含む。アミスルプリドの用量は、7.5乃至14.5、14、13.5、13、12.5、12、11.5、11、又は10.5であってもよい。前述した範囲の制限の何れかを互いに組み合わせてもよい。好ましくは、用量は、8乃至12mg、より好ましくは9乃至12mg、最も好ましくは約10mgのアミスルプリドである。用量は、10mgが最も好ましい。好ましくは、アミスルプリドは、ラセミ混合物の形態である。
【0025】
好ましくは、アミスルプリドは一日一回の用量として投与される。
【0026】
好ましくは、アミスルプリドは、ラセミ体として投与される。S-エナンチオマーとして投与される場合、用量は、相応に変更し得る(例えば、半分にし得る)。
【0027】
本発明によれば、アミスルプリドは、PONVの「治療」に使用される。これは、患者が既にPONV(上記の定義)であることを意味する。また、本発明によれば、患者は、既にPONVの予防薬を投与されている。したがって、当然ながら、PONVの予防は、成功していない。
【0028】
本発明によるPONVの「予防」は、PONVの治療前に投与される。「予防薬」とは、PONVの予防の意図/目的で投与される薬物を意味する。適切な薬物は、当業者に公知であろう。例は、以下に示す。
【0029】
アミスルプリドを他の制吐剤(即ち、アミスルプリド以外)と組み合わせて投与することが有利となり得る。「他の制吐剤」は、付加的な有効性の利益を追加することが可能な他のクラスの制吐剤が好ましい。したがって、好ましくは、異なる制吐剤は、D2拮抗薬ではない。これらには、限定では無いが、ステロイド、最も好ましくはデキサメタゾンと、限定では無いがオンダンセトロン、グラニセトロン、及びパロノセトロンを含む5HT3拮抗薬と、アプレピタント、ネツピタント、又はロラピタント等のNK1拮抗薬とが含まれる。アミスルプリドは、D2と5HT3の両方の特性を有するメトクロプラミドと組み合わせてもよい。好ましくは、他の制吐剤は、オンダンセトロン、グラニセトロン、又はデキサメタゾンである。アミスルプリドは、1つ以上(例えば、2つ又は3つ)の異なる制吐剤と組み合わせてもよい。他のクラスの薬物は、任意の適切な投与経路を介して(例えば、経口、静脈内、又は筋肉内等、その薬物に一般的な投与経路を介して)投与し得る。一部の例において、他のクラスの薬物は、外科手術の終了から6時間以内に投与し得る。他の例において、他のクラスの薬物は、外科手術の終了から6時間後に投与し得る。
【0030】
予防薬は、好ましくは外科手術の終了前に投与される。好適な実施形態において、予防は、外科手技の約4時間前から創傷閉鎖/外科手術終了時までの期間に施されている。好ましくは、創傷閉鎖/外科手術終了時までに施され、より好ましくは、予防は、麻酔時(及びより好ましくは麻酔導入時)に施される。
【0031】
本発明での使用に適した多数の予防薬があり、これらは当業者に周知である。特定の予防薬は、年齢及び体重等の多数の要因、又は例えば他の特定の薬物を投与されているかに基づいて、選択されている場合がある。好ましくは、予防薬は、アミスルプリドではない制吐剤である。より好ましくは、予防薬は、ドパミン-2(D2)拮抗薬ではない。
【0032】
一部の実施形態において、予防薬は、5HT3拮抗薬、コルチコステロイド、抗ヒスタミン剤(H1)、抗コリン作用薬、H2拮抗薬、又はNK1拮抗薬から選択される制吐剤である。予防薬は、上記の制吐剤の何れかから選択し得る(即ち、併用療法)。
【0033】
5HT3拮抗薬は、オンダンセトロン、グラニセトロン、パロノセトロン、トロピセトロン、又はドラセトロンにし得る。好ましくは、オンダンセトロン、グラニセトロン、又はパロノセトロンである。より好ましくは、オンダンセトロンである。コルチコステロイドは、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、メチルプレドニゾロン、又はプレドニゾロンにし得る。好ましくは、デキサメタゾンである。抗ヒスタミン剤(H1)は、ジメンヒドリナート、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、プロメタジン、シクリジン、又はメクリジンにし得る。抗コリン作用薬は、スコポラミン/ヒヨスチンにし得る。H2拮抗薬は、ファモチジンにし得る。NK1拮抗薬は、アプレピタントにし得る。D2拮抗薬は、予防的制吐剤として使用する場合、ハロペリドール、ドロペリドール、又はドンペリドンにし得る。
【0034】
上記の様々な制吐剤の一般的な用量は、当業者に公知である。例えば、オンダンセトロンは、一般に2乃至20mg、又は2乃至15mg、又は約10mg、又は約4mgの用量となる。グラニセトロンでは、用量は、一般に1乃至3mg、例えば1mgである。デキサメタゾンでは、一般的な用量は4乃至20mg、例えば4mgである。
【0035】
本発明により使用するアミスルプリドは、添付の使用説明書と共に販売用にパッケージすることができる。使用説明書(薬剤ラベル)には、治療対象の患者が外科手技を受けているべきであること、及びPONVの事前予防を受け、成功しなかった患者群から選択されるべき(即ち、救援治療)であることを明示することが好ましい。また、アミスルプリドの用量が10mgであることを明記することが好ましい。
【0036】
本発明において使用するアミスルプリドは、好ましくは静脈内製剤として処方される(そして静脈内投与用とされる)。アミスルプリドは、塩、水和物、又は溶媒和物の形態にし得る。塩としては、医薬的に許容可能な塩、例えば、無機又は有機酸由来の酸付加塩、例として、塩酸塩、臭化水素酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、及び安息香酸塩が挙げられる。
【0037】
塩は、塩基と共に形成されてもよい。このような塩としては、無機又は有機塩基由来の塩、例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩と、マグネシウム塩及びカルシウム塩等のアルカリ土類金属塩と、モルホリン塩、ピペリジン塩、ジメチルアミン塩、及びジエチルアミン塩等の有機アミン塩とが挙げられる。
【0038】
本発明において使用するアミスルプリドの静脈内製剤は、無菌注射用水性若しくは非水性(例えば、油性)溶液又は懸濁液の形態にし得る。無菌注射用製剤は、無毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶媒中の無菌注射用溶液又は懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液にし得る。使用し得る許容可能なビヒクル及び溶媒としては、水、リン酸緩衝液、リンゲル液、及び等張食塩水が挙げられる。更に、無菌の不揮発性油を溶媒又は懸濁媒体として利用し得る。この目的のため、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む、任意の無菌の不揮発性油を使用し得る。更に、オレイン酸等の脂肪酸を本発明の静脈内製剤の調製に使用し得る。懸濁液は、それらの適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して公知の技術に従って処方し得る。
【0039】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合した活性成分を含有する。このような賦形剤は、懸濁剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、及びアカシアゴム、分散剤又は湿潤剤、例として天然ホスファチド、例えばレシチン、又はアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物、例えばポリオキシエチレンステアレート、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、又はエチレンオキシドと脂肪酸由来の部分エステル及びヘキシトールとの縮合物、例としてポリオキシエチレンと脂肪酸由来の部分エステル及び無水ヘキシトールとの縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート。水性懸濁液は、1つ以上の防腐剤、例えば、エチル又はn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエート、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味剤、及びスクロース又はサッカリン等の1つ以上の甘味剤を含有してもよい。
【0040】
注射用組成物は、一般的に水性であり、緩衝剤、例えばクエン酸緩衝剤を含む。他の成分は必要としない場合がある。このような組成物のpHは、例えば4乃至7、例えば約5にし得る。
【0041】
水の添加による水性懸濁液の調製に適した分散性粉末及び顆粒は、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤及び1つ以上の防腐剤と混合した活性成分を提供する。適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤は公知である。
【0042】
本発明の医薬組成物は、水中油型乳剤の形態にしてもよい。油相は、植物油、例えばオリーブ油若しくはラッカセイ油、又は鉱油、例えば流動パラフィン、又はこれらの混合物にし得る。適切な乳化剤は、天然ゴム、例えばアカシアゴム又はトラガカントゴム、天然ホスファチド、例えば大豆、レシチン、並びに脂肪酸由来のエステル又は部分エステル及び無水ヘキシトール、例えばソルビタンモノオレエート及び前記部分エステルのエチレンオキシドとの縮合物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであり得る。
【0043】
本発明での使用に適したアミスルプリドの静脈内単位用量は、アミスルプリドを含有する単回注射であることが好ましい。好適な実施形態において、これは、活性薬剤のバイアルと注射器及び針との形態、又は事前充填された注射器/針の組み合わせの形態にし得る。
【0044】
一部の実施形態において、アミスルプリドは、非IV注射製剤に含まれる。これは、固体又は液体製剤の形態にしてよく、経口投与用に製剤化してもよい。固形製剤は、錠剤若しくはカプセル、溶融錠剤の形態、又は分散性粉末若しくは顆粒(水への添加を要し得る)の形態にし得る。液体製剤は、水性若しくは油性懸濁液の形態又はシロップの形態とし、バイアル内にパッケージし得る。
【0045】
アミスルプリドは、薬物の直腸投与用の坐剤の形態にし得る。これらの組成物は、薬物を、常温では固体だが直腸温では液体となるため直腸内で融解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤と混合することにより調製することができる。このような材料には、カカオバター及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0046】
局所送達では、経皮及び経粘膜パッチ、クリーム、軟膏、ゼリー、溶液、又は懸濁液を使用し得る。舌下送達では、速溶性錠剤製剤、更には上述した多数のものを使用し得る。好適な投与である経口投与では、アミスルプリドは、錠剤、カプセル、又は液体として投与し得る。
【0047】
好適な実施形態において、アミスルプリドの経口単位用量は、1個以上の錠剤、又は1個以上のカプセルの形態である。アミスルプリドの単位用量は、ブリスタパックにおいて提供し得る。
【0048】
アミスルプリド製剤は、甘味剤及び防腐剤等、任意の数の医薬的に許容可能な賦形剤を含み得る。
【0049】
本発明での使用に適したアミスルプリドの製剤は、WO2011/110854に記載されている。
【0050】
本発明の使用又は方法が、2種以上の薬物の投与を提供する場合、薬物は同時に、連続して、又は個別に投与することができる。薬物を一緒に梱包する必要はない(但し、これは本発明の一実施形態である)。薬物を同時に投与する必要もない。本明細書での使用において、「個別」投与とは、薬物が同一の全体的な投与計画(多くの日数を含む場合がある)の一部として投与されることを意味するが、好ましくは同日に投与されることを意味する。本明細書での使用において、「同時に」とは、薬物が一緒に摂取されること、又は単一の組成物として製剤化されることを意味する。本明細書中で使用される場合、「連続して」とは、薬物がほぼ同時に、好ましくは互いに約1時間以内に投与されることを意味する。
【0051】
予防薬は、嘔吐が発生する前に投与されているべきである。好ましくは、単一の予防用量として投与されている。
【0052】
好ましくは、アミスルプリドは、IV注入(プッシュ)により、好ましくは約20秒乃至20分までの期間に亘り投与される。例えば、患者が注入時に痛みを感じる場合は、注入時間を長くすることが好適となり得る。一部の実施形態において、アミスルプリドは、約1乃至15、1乃至10、1乃至5、又は1又は2分に亘り投与される。アミスルプリドは、好ましくは単回用量で投与される。
【0053】
アミスルプリドは、最初の嘔吐エピソード及び/又は最初の悪心エピソード(例えば、悪心を治療する制吐剤の最初の要求、又は嘔吐の欲求の報告)に続いて、実際に可能な限り速やかに投与するべきである。好ましくは、アミスルプリドは、最初の嘔吐エピソードの1時間以内及び/又は最初の悪心エピソードの1時間以内に投与される。より好ましくは、最初の嘔吐エピソードの30分以内及び/又は最初の悪心エピソードの30分以内に投与される。更により好ましくは、最初の催吐エピソードの15分以内及び/又は最初の悪心エピソードの15分以内に投与される。
【0054】
一部の実施形態では、初回投薬後24時間以内に、アミスルプリドの更なる用量は投薬されない。一部の実施形態において、本発明による初回投薬後、更に少なくとも1回の投薬が、最初の投薬から約24時間以内、好ましくは約12時間以内に行われる。
【0055】
好適な実施形態において、患者は、ヒトである。
【実施例0056】
以下の研究により、本発明を説明する。
【0057】
研究1
【0058】
プロトコル
【0059】
事前予防を施した患者における、既存の術後悪心嘔吐の治療としてのIV注射用アミスルプリドの無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施した。この試験の主目的は、事前にPONV予防薬を投与された患者において、既存のPONVの治療として、5mg及び10mgのアミスルプリドの有効性をプラセボと比較することである。
【0060】
この試験は、事前にPONV予防を受け、外科手術後24時間以内にPONVを経験した、吸入麻酔の予想持続時間が少なくとも1時間である成人患者(18歳以上)において実施した。
【0061】
5mg又は10mgの用量のアミスルプリド又は対応するプラセボを、約2分間に亘り低速度のIV投与により1回投与した。
【0062】
主要有効性変数は、初期PONV治療の成功又は失敗の二値変数とし、成功は、試験薬投与後30分乃至24時間に嘔吐エピソード(嘔吐又は吐気)が無いこと、及び試験薬投与後24時間の期間の何れの時点においても制吐救援薬の投与が無いこと(「完全寛解」)と定義した。
【0063】
副次有効性変数には以下が含まれる:
・悪心(VRSスコア>0)及び重篤な悪心(VRSスコア≧4)の発生及び重症度。24時間までの期間の悪心スコア曲線下面積等、悪心の経時変化の測定値を含む。
・試験薬投与後の嘔吐(吐気を含む)の発生。
・制吐救援薬の使用。
・初期PONV治療が失敗するまでの時間。
・外科手術の終了との関連でのPONVの発症時間と性別とを含む、様々なパラメータによる成功と失敗のサブ解析。
【0064】
結果
【0065】
完全寛解(CR)率は次のようになった。
プラセボ(235人の患者) 28.5%
アミスルプリド5mg(237人の患者) 33.8%(p=0.109)
アミスルプリド10mg(230人の患者) 41.7%、(p=0.003)
【0066】
結論
【0067】
「救援」治療として使用する場合、即ち、患者が受けた事前予防が成功しなかった際にPONVエピソードを有する患者の治療に使用する場合、アミスルプリドを10mgの用量で投与することには、(5mgの用量と比較して)利点がある。この状況において、10mgの用量のアミスルプリドは、特に効果的であることが明らかとなった。これは、麻酔後回復室での滞在期間を非常に有効に短縮するものとなる可能性があり、医療提供者に利益をもたらし得る。
【0068】
項目
【0069】
[項目1]患者の術後悪心及び/又は嘔吐の治療に使用するアミスルプリドであって、前記患者は、術後悪心及び/又は嘔吐の予防薬を既に投与されており、アミスルプリドの用量は、7.5乃至15mgである、アミスルプリド。
[項目2]アミスルプリドの用量は、10mgである、項目1記載の用途のアミスルプリド。
[項目3]前記予防薬は、アミスルプリドではない、項目1又は2記載の用途のアミスルプリド。
[項目4]前記予防薬は、ドパミン-2(D2)拮抗薬ではない、先行項目の何れかに記載の用途のアミスルプリド。
[項目5]前記予防薬は、5HT3拮抗薬、コルチコステロイド、抗ヒスタミン剤(H1)、抗コリン作用薬、H2拮抗薬、又はNK1拮抗薬から選択される制吐剤である、先行項目の何れかに記載の用途のアミスルプリド。
[項目6]前記アミスルプリドは、他の制吐剤と組み合わせて、個別に、連続して、又は同時に投与される、先行項目の何れかに記載の用途のアミスルプリド。
[項目7]前記他の制吐剤は、5HT3拮抗薬、NK1拮抗薬、又はステロイドである、項目6記載の用途のアミスルプリド。
[項目8]前記他の制吐剤は、デキサメタゾン、オンダンセトロン、グラニセトロン、パロノセトロン、アプレピタント、ネツピタント、又はロラピタントである、項目6又は項目7記載の用途のアミスルプリド。
[項目9]前記アミスルプリドは、実質的にラセミ体の形態である、先行項目の何れかに記載の用途のアミスルプリド。
[項目10]前記アミスルプリドは、静脈内経路を介して投与される、先行項目の何れかに記載の用途のアミスルプリド。
[項目11]患者の術後悪心及び/又は嘔吐を治療する方法であって、前記患者にアミスルプリドを投与することを含み、前記患者は、術後悪心及び/又は嘔吐の予防薬を投与されており、アミスルプリドの用量は、7.5乃至15mgである方法。
[項目12]何れか1つの項目1乃至10の付加的な特徴を有する、項目11記載の方法。