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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027219
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】ガン予防における短鎖脂肪酸の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/19 20060101AFI20230221BHJP
   A61K 31/194 20060101ALI20230221BHJP
   A61K 35/741 20150101ALI20230221BHJP
   A61K 35/742 20150101ALI20230221BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20230221BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20230221BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20230221BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230221BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20230221BHJP
   A23L 33/12 20160101ALI20230221BHJP
【FI】
A61K31/19
A61K31/194
A61K35/741
A61K35/742
A61K35/744
A61K35/745
A61K35/747
A61K47/36
A61P1/16
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P43/00 121
A23L33/135
A23L33/12
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022196339
(22)【出願日】2022-12-08
(62)【分割の表示】P 2020176442の分割
【原出願日】2016-01-21
(31)【優先権主張番号】62/106,778
(32)【優先日】2015-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516289166
【氏名又は名称】テンプル ユニヴァーシティ - オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイアー エデュケーション
(71)【出願人】
【識別番号】517256725
【氏名又は名称】ヘイス,エレナ・エミ.ジェー.ぺー.ヴェー.
【氏名又は名称原語表記】REIS,Helena,M.G.P.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ファイテルソン,マーク・エー.
(72)【発明者】
【氏名】ヘイス,エレナ・エミ.ジェー.ぺー.ヴェー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させるための方法を提供する。
【解決手段】方法は、少なくとも1つの短鎖脂肪酸を含む治療有効量の組成物を被験体に投与することを含む。前記組成物はまた、プロバイオティクス細菌を含み得る。前記組成物は、肝臓炎、肝疾患及び前ガン病変を治療又は予防することによって、肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させるための組成物を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させるための方法であって、少なくとも1つの短鎖脂肪酸を含む治療有効量の組成物を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項2】
短鎖脂肪酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、吉草酸、イソカプロン酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸及びピルビン酸からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物を別の治療剤と組み合わせて投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
組成物を経口投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
組成物を食品又は飲料と共に投与する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
被験体における肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させるための方法であって、少なくとも1つのプロバイオティクス細菌を含む治療有効量の組成物を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項8】
プロバイオティクス細菌が、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus paracasei、Leuconostoc mesenteroides、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus sasei、Lactobacillus salivarius、Pediococcus pentosaceus、Streptococcus thermophiles、Bacillus subtilis、Bacillus coagulans、Enteroccous faecium、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum及びBifidobacterium infantisからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記賦形剤が少なくとも1つのプレバイオティクス(prebiotic)を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物を別の治療剤と組み合わせて投与する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
組成物を経口投与する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
組成物を食品又は飲料と共に投与する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
被験体における肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させるためのキットであって、少なくとも1つの短鎖脂肪酸を含む組成物を含有する、キット。
【請求項15】
被験体における肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させるためのキットであって、少なくとも1つのプロバイオティクス細菌を含む組成物を含有する、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年1月23日に出願された米国仮出願第62/106,778号(その内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
肝細胞ガン(HCC)は、世界で5番目に多いガンであり、ガンによる死亡の2番目に多い原因である(Ding J et al., Cancer Lett, 2014; 346(1):17-23)。早期HCCは、治癒的アプローチを適用し得る場合には無症候性であることが多く、進行性疾患が検出される頃には、利用可能な処置選択肢がほとんどない。未処置HCCの生存率は5年間で3%未満であり、マルチキナーゼ阻害剤ソラフェニブを適用した場合であっても、平均余命は平均で3カ月延長されたに過ぎなかった(Peck-Radosavljevic M, Liver Cancer, 2014; 3(2):125-31)。ソラフェニブ+細胞毒性薬を使用した併用療法は、寿命を診断後約1年間延長させた。
【0003】
HCCは、持続的な炎症(肝炎)のバックグラウンドで生じることが最も多く、慢性B型肝炎及びC型肝炎ウイルス感染症に関連することが多い(Flores et al., Clin Med Insights Oncol, 2014; 8:71-6)。B型肝炎ウイルス(HBV)について、関連ウッドチャック肝炎ウイルス(WHV)モデルでは、HCCの病因に対する慢性肝疾患(CLD)の重要性が強調されている(Menne S et al., World J Gastroenterol, 2007; 13(1):104-24)。この場合、慢性WHV感染症及びCLDは、ほぼ100%のHCC発生率をもたらした一方、急性治癒性感染症を伴うウッドチャックのわずか数%が、この腫瘍を発症した(Menne S et al., World J Gastroenterol, 2007; 13(1):104-24)。同様に、進行性慢性肝疾患(肝炎、線維症及び肝硬変)を有するウイルスキャリアである患者は、HCCリスクが高いが、無症候性キャリアは、はるかに低リスクである(Beasley et al., Lancet, 1981; 2(8256):1129-33)。HBV及び関連哺乳動物ヘパドナウイルス(WHVを含む)は、HCCの病因に大きく寄与する小さなポリペプチド(X抗原と称される)をコードする(Feitelson MA et al., Amer J Pathol, 1997; 150:1141-1157)。HBVがコードするX抗原又はHBxは、細胞質内のシグナル伝達経路を構成的に活性化することによって、及び核内の遺伝子転写をレギュレーションする複合体に結合することによって、宿主遺伝子発現のパターンを変化させるtrans-調節性タンパク質である(Tian Y et al., Mol Cell Biol, 2013; 33(15):2810-6; Feitelson MA et al., Amer J Pathol, 1997; 150:1141-1157)。HBx遺伝子の統合はほとんどの染色体で起こり、このような統合事象は、一連の肝炎及び再生ごとに蓄積し、HBxの細胞内蓄積の増加をもたらす(Xu C et al., Cancer Lett, 2014; 345(2):216-22; Wang W et al., Hepatology, 1998; 14:29-37; Wang W et al., Cancer Res, 1991; 51:4971-4977)。ウイルス感染細胞の損傷及び死滅を目標とする細胞媒介性免疫応答に直面して、HBxは、細胞の生存及び成長を促進する。したがって、HBxとCLDとの間には密接な関連がある(Jin YM et al., J Viral Hepat, 2001; 8(5):322-30)。これに関連して、HBxは、ウイルス感染肝細胞を目標とする免疫応答によって生成されたフリーラジカルによって活性化されると思われるが(Wang JH et al., Biochem Biophys Res Commun, 2003; 310(1):32-9)、これは、HCCの免疫媒介性病因を調節し得るならば、疾患転帰がそのようになり得ることを示唆している。
【0004】
様々なプロバイオティクス細菌株が、腸内の免疫応答を穏やかに促進又は抑制することが公知である。実際、選択されたプロバイオティクス細菌株は、複雑な炭水化物を短鎖脂肪酸(SCFA)(これは、腸壁を介して容易に吸収され、調節性T細胞を活性化する)に代謝する。最近の研究では、SCFAは、大腸炎のマウスモデルにおける炎症を改善したことが示された(Smith PM et al., Science, 2013; 341(6145):569-73)。これは、SCFA(特に、酪酸塩)が、ヒストンデアセチラーゼ活性(HDACi)を阻害することによって、ターゲット細胞における遺伝子発現のパターンを変化させ得るという事実によるものであり得る(Tan J et al., Adv Immunol, 2014; 121:91-119)。HBxは、HDAC活性を活性化することが示されているが(Yoo et al., Oncogene, 2008; 27:3405-13)、これは、選択されたプロバイオティクス細菌又はこれらの細菌によって作られたSCFAを、HCCを発症するHBxトランスジェニックマウスに投与することが、HBxの腫瘍発生促進能力を部分的に遮断するための簡便な新規方法を提供し得ることを示唆している。
【0005】
当技術分野では、肝臓炎の肝細胞ガンへの進行を予防し又は遅延させるための有効な治療の必要性が存在する。本発明は、この必要性に対処する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被験体における肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させるための方法を提供する。一実施態様では、前記方法は、少なくとも1つの短鎖脂肪酸を含む治療有効量の組成物を被験体に投与することを含む。
【0007】
一実施態様では、短鎖脂肪酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、吉草酸、イソカプロン酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸及びピルビン酸からなる群より選択される。
【0008】
一実施態様では、組成物は、薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む。
【0009】
一実施態様では、組成物は、別の治療剤と組み合わせて投与される。
【0010】
一実施態様では、組成物は、経口投与される。
【0011】
一実施態様では、組成物は、食品又は飲料と共に投与される。
【0012】
本発明はまた、被験体における肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させるための方法を提供する。一実施態様では、前記方法は、少なくとも1つのプロバイオティクス細菌を含む治療有効量の組成物を被験体に投与することを含む。
【0013】
一実施態様では、プロバイオティクス細菌は、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus paracasei、Leuconostoc mesenteroides、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus sasei、Lactobacillus salivarius、Pediococcus pentosaceus、Streptococcus thermophiles、Bacillus subtilis、Bacillus coagulans、Enteroccous faecium、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum及びBifidobacterium infantisからなる群より選択される。
【0014】
一実施態様では、組成物は、薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む。
【0015】
一実施態様では、賦形剤は、少なくとも1つのプレバイオティクス(prebiotic)を含む。
【0016】
一実施態様では、組成物は、別の治療剤と組み合わせて投与される。
【0017】
一実施態様では、組成物は、経口投与される。
【0018】
一実施態様では、組成物は、食品又は飲料と共に投与される。
【0019】
本発明はまた、被験体における肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させるためのキットを提供する。一実施態様では、キットは、少なくとも1つの短鎖脂肪酸を含む組成物を含む。
【0020】
本発明はまた、被験体における肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させるためのキットを提供する。一実施態様では、キットは、少なくとも1つのプロバイオティクス細菌を含む組成物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の好ましい実施態様に関する以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとより良好に理解されるであろう。本発明を例証する目的で、現在好ましい実施態様が図面に示されている。しかしながら、本発明は、図面に示されている実施態様の正確な配置及び手段に限定されないと理解されるべきである。
図1図1A~1Cは、示されている年齢時にSynbiotic 2000(商標)(Δ)又はPBS(■)で処置したマウスのアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の値を示すグラフを示す。
図2図2A~2Cは、異なる肝病態の発生頻度を比較したグラフを示す。これは、脂肪症及び異形成の証拠について6カ月の時点に評価した3カ月齢マウスについて(図2A)に、異形成性結節(dysplasic nodule)及び早期HCCの証拠について9カ月の時点に評価した6カ月齢マウスについて(図2B)に、大きなHCC結節の証拠について12カ月齢の時点に評価した9カ月齢マウスについて(図2C)に示されている。灰色のバーは、示されている年齢からSynbiotic 2000(商標)を3カ月間給餌した試験マウスである。白色のバーは、PBSを給餌したコントロールマウスである。X遺伝子の直ぐ上流のHBxエンハンサー/プロモーター領域を使用して、HBxトランスジェニックマウスを作製した。HBxが出生時には検出不可能であるが、年齢と共に肝細胞内に蓄積するように、このエンハンサー/プロモーターは、成熟肝細胞において活性となる(Yu DY et al., J Hepatol, 1999; 31:123-132)。免疫学的観点から、HBxは異物として認識され、4~5カ月齢までに炎症反応(肝炎)及び脂肪症(脂肪肝)を引き起こす。これは、6~7カ月齢までに異形成(前新生物病変)に進行し、9~10カ月齢までに異形成性結節及び微小HCCに進行し、最終的には10~12カ月齢までに大きなHCCに進行する。
図3図3A~3Dは、PBS(図3A及び図3C)又はSynbiotic 2000(商標)(図3B及び3D)による処置後の6カ月齢(図3A)及び9カ月齢(図3C)マウス肝臓の肝臓におけるHBx染色を示す。両方の場合において、Synbiotic 2000(商標)による処置後、HBxの小葉分布はより散在性の分布になるが、これは、HBxレベルが処置で減少され得ることを示唆していることに留意されたい。
図4図4は、示されている年齢時にSynbiotic 2000(商標)を投与したHBxトランスジェニックマウスにおける、発ガンメディエーター(列1~20)及び免疫メディエーター(列21~27)の選択マーカーの発現を、並行してプラセボを投与したHBxトランスジェニックマウスと比較して示す限定的なマイクロアレイ分析のグラフを示す。ディファレンシャルな発現の値をGAPDHで正規化した。他のコントロールには、ゲノムDNAコンタミネーション(MGDC)、RNA品質(RTC)及び一般的なPCRパフォーマンス(PPC)に関するものが含まれていた。
図5図5A~5Dは、12カ月齢時に得た4匹のSCFA給餌マウス由来の肝臓を示す。図5Aでは、次いで、肝小葉の表面上において、観察可能な腫瘍の数及びサイズを推定した。これらの腫瘍の例は、9カ月齢からPBS(図5A及び5B)又はSCFA(図5C)で3カ月間処置したマウスの肝臓上に示されている。矢印は、腫瘍結節を示している。結果は、各群のマウスの代表的なものである。図5Dは、両マウス群の腫瘍の特徴の概要である。
図6図6A~6Eは、SCFA給餌マウスにおける腫瘍の特徴を示すH&E染色肝臓切片及び棒グラフを示す。HBxマウスを、9カ月齢からSCFA又はPBSで3カ月間処置した。図6Aは、SCFA処置マウスにおける小さな腫瘍の例を示す(×40)。図6Bは、SCFA処置マウスにおける中サイズの腫瘍結節の例を示す(×40)。図6Cは、PBS処置マウス由来の大きな腫瘍の例を示す。図6Dは、PBS処置マウス由来のより高倍率のHCC結節を示す(×100)。腫瘍(T)は左側にあり、非腫瘍(NT)肝臓は右側にある。矢印は、腫瘍結節を示している。図6Eは、9カ月齢マウスをSCFA(+)又はPBS(-)で3カ月間処置した結果を示す。ホルマリン固定組織を切断し、H&Eによって染色した。S=小さな腫瘍(直径<0.5cm);M=中サイズの腫瘍(直径0.5~1.0cm);L=大きな腫瘍(>1cm)。
図7図7は、3~6カ月からSynbiotic 2000(商標)で処置したHBxマウスにおける肝病態を示す表を示す。
図8図8は、6~9カ月からSynbiotic 2000(商標)で処置したHBxマウスにおける肝病態を示す表を示す。
図9図9は、9~12カ月からSynbiotic 2000(商標)で処置したHBxマウスにおける肝病態を示す表を示す。
図10図10は、Synbiotic 2000(商標)処置マウス及びコントロールマウスにおける肝内HBx染色の結果を示す表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本発明は、短鎖脂肪酸が肝臓ガンの化学予防治療アプローチとして有効であるという発見に部分的に基づくものである。本明細書に提示される結果は、肝臓において炎症、肝炎及び前ガン病変を有する被験体への短鎖脂肪酸の投与が、肝細胞ガンへの肝疾患の進行の予防又は遅延に有効であることを実証する。
【0023】
定義
本発明の図及び説明は、明確性のために、典型的な顕微鏡デバイスに見られる他の多くの要素を排除する一方、本発明の明確な理解に関連する要素を示すために簡略化されていることを理解すべきである。当業者であれば、他の要素及び/又は工程が本発明の実施に望ましい及び/又は必要であることを認識し得る。しかしながら、このような要素及び工程は当技術分野で周知であり、それらは本発明のより良い理解を促すものではないので、このような要素及び工程の議論は、本明細書では提供されない。本明細書の開示は、当業者に公知のこのような要素及び方法に対する全ての変形及び改変を対象とする。
【0024】
特に他の箇所で定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の方法及び材料が本発明の実施又は試験に使用され得るが、好ましい方法及び材料が記載される。
【0025】
本明細書で使用される場合、以下の各用語は、本セクションにおけるそれに関連する意味を有する。
【0026】
「a」及び「an」という冠詞は、本明細書では、冠詞の文法上の目的語の1つ又は複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素」は、1つの要素又は複数の要素を意味する。
【0027】
量、時間的な期間等の測定可能な値を指す場合に本明細書で使用される「約」は、指定値から±20%、±10%、±5%、±1%及び±0.1%の変動を、このような変動が適切であるように、包含することを意味する。
【0028】
生物、組織、細胞又はその構成要素との関連で使用される場合の「異常な」という用語は、少なくとも1つの観察可能な又は検出可能な特徴(例えば、年齢、処置、時刻等)が、「正常な」(予想される)各特徴を示す生物、組織、細胞又はその構成要素と異なる生物、組織、細胞又はその構成要素を指す。ある細胞又は組織型にとって正常な又は予想される特徴は、異なる細胞又は組織型にとっては異常であり得る。
【0029】
疾患又は障害の徴候又は症候の重症度、患者がこのような徴候又は症候を経験する頻度、又はそれらの両方が軽減される場合、疾患又は障害は、「緩和される」。
【0030】
本明細書で使用される「抗腫瘍効果」という用語は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞の数の減少、転移の数の減少、平均余命の増加、又はガン性状態に関連する様々な生理学的症候の改善によって示され得る生物学的効果を指す。「抗腫瘍効果」はまた、初期段階の腫瘍発生の予防における本発明の組成物の能力によって示され得る。
【0031】
「疾患」は、動物が恒常性を維持し得ず、疾患が改善されなければ、動物の健康が悪化し続ける動物の健康状態である。対照的に、動物における「障害」は、動物が恒常性を維持することができるが、動物の健康状態が障害の非存在下よりも低調な健康状態である。処置せずに放置しても、障害は、動物の健康状態のさらなる低下を必ずしも引き起こさない。
【0032】
本明細書で使用される「阻害する」という用語は、活性又は機能を、コントロール値と比べて少なくとも約10%抑制又は遮断することを意味する。好ましくは、活性は、コントロール値と比較して50%、より好ましくは75%、さらにより好ましくは95%抑制又は遮断される。
【0033】
「肝疾患」という用語は、肝硬変、アルコール性及び非アルコール性線維症、並びに肥満症、糖尿病及びメタボリックシンドロームに関連する肝疾患又は変化を含む肝臓の疾患及び状態を含む。肝疾患の他の例としては、肝炎、脂肪肝、毒性肝不全、肝硬変症、糖尿病関連肝疾患、肝脂肪症、肝線維症、肝硬変、慢性肝炎等が挙げられる。
【0034】
「プロバイオティクス生物」という用語は、宿主の健康に有益な影響を与える、生きている微生物を含む。宿主の健康に対する利益としては、限定されないが、腸の微生物バランスの改善が挙げられる。宿主に対する他の有益な効果としては、例えば、免疫系の増強、貪食活性の刺激、インターフェロンの刺激、高血圧症の軽減、ガンリスクの減少、抗菌活性及び免疫調節効果の増加、高コレステロール血症の軽減、並びにガンの処置が挙げられる。
【0035】
「処置」、「処置すること」等の用語は、本明細書では一般に、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを意味するために使用される。効果は、疾患若しくはその症候を完全に若しくは部分的に予防するという点で予防的であり得、並びに/又は疾患及び/若しくは疾患に起因する有害効果を部分的若しくは完全に治癒するという点で治療的であり得る。本明細書で使用される「処置」という用語は、被験体における疾患の任意の処置を包含し、(a)疾患の素因を有し得る被験体において起こる望ましくない免疫応答に関係する疾患の予防;(b)疾患の阻害(すなわち、その進行の阻止)、又は(c)疾患の軽減(すなわち、疾患の退縮を引き起こすこと)を含む。
【0036】
「有効量」及び「薬学的有効量」という用語は、所望の生物学的結果を提供するための薬剤の十分な量を指す。その結果は、疾患若しくは障害の徴候、症候若しくは原因の軽減及び/若しくは緩和、又は生物系の任意の他の所望の変化であり得る。当業者であれば、ルーチンな実験を使用して、任意の個々の症例における適切な有効量を決定し得る。
【0037】
「治療有効量」は、所定の状態及び投与レジメンのための治療効果を提供する量を指す。特に、「治療有効量」は、疾患の症候を予防、緩和若しくは改善し、又は処置される被験体(これは、ヒト又は非ヒト動物であり得る)の生存を延長するために有効な量を意味する。治療有効量の決定は、当業者の技術範囲内である。
【0038】
本明細書で使用されるとき、「医薬組成物」という用語は、少なくとも1つの本発明の化合物と、他の化学的な成分及び実体、例えば担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤及び/又は賦形剤との混合物を指す。医薬組成物は、生物への化合物の投与を容易にする。当技術分野では、化合物を投与する複数の技術が存在し、限定されないが、静脈内投与、経口投与、エアロゾル投与、非経口投与、眼投与、肺内投与及び局所投与が挙げられる。
【0039】
「薬学的に許容し得る」は、薬理学的/毒物学的観点から患者が許容し得、組成、製剤、安定性、患者許容性及びバイオアベイラビリティに関する物理的/化学的観点から製薬化学者が許容し得る特性及び/又は物質を指す。「薬学的に許容し得る担体」は、有効成分の生物学的活性の有効性に干渉しない媒体であって、それが投与される宿主に対して毒性ではない媒体を指す。
【0040】
本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容し得る担体」という用語は、本発明内で有用な化合物を、それがその目的の機能を果たし得るように患者内に又は患者に運搬又は輸送することに関与する薬学的に許容し得る材料、組成物又は担体(例えば、液体若しくは固体の充填剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、希釈剤、賦形剤、増粘剤、溶媒又は封入材料)を意味する。典型的には、このような構築物は、体のある器官又は部分から体の別の器官又は部分に運搬又は輸送される。各担体は、本発明内で有用な化合物を含む製剤の他の成分と適合性であり、患者に対して有害なものではないという意味で「許容し得る」ものでなければならない。薬学的に許容し得る担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、糖、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばカカオバター及び坐剤ワックス;油、例えばピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油;グリコール、例えばプロピレングリコール;ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;界面活性剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張生理食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;並びに医薬製剤に用いられる他の非毒性適合性物質が挙げられる。本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容し得る担体」はまた、本発明内で有用な化合物の活性と適合性であり、患者に生理学的に許容され得る任意及び全てのコーティング、抗菌剤及び抗真菌剤並びに吸収遅延剤等を含む。補助的な活性化合物もまた、組成物に組み込まれ得る。「薬学的に許容し得る担体」は、本発明内で有用な化合物の薬学的に許容し得る塩をさらに含み得る。本発明の実施に使用される医薬組成物に含まれ得る他のさらなる成分は当技術分野で公知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Genaro, Ed., Mack Publishing Co., 1985, Easton, PA)(これは、参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている。
【0041】
「栄養組成物」という用語は、ヒトが消費するための食品製品、例えば飲物、飲料、バー、スナック、アイスクリーム、乳製品、例えば冷蔵の又は常温保存可能な乳製品、発酵乳製品、飲料、例えば乳性飲料、乳児用調製粉乳、成長期用ミルク、菓子製品、チョコレート、穀物製品、例えば朝食用シリアル、ソース、スープ、インスタント飲料、電子レンジ若しくはオーブンで加熱後に消費するための冷凍製品、即席食製品、ファーストフード又は栄養製剤であり得る。
【0042】
「患者」、「被験体」、「個体」等の用語は、本明細書では互換的に使用され、in vitro又はin situにかかわらず、本明細書に記載される方法に適した任意の動物又はその細胞を指す。特定の非限定的な実施態様では、患者、被験体又は個体は、ヒトである。
【0043】
「生物学的サンプル」という語句は、本明細書では、その最も広い意味で使用される。サンプルは、本発明のバイオマーカーが検出、抽出、単離、特性評価又は測定され得る任意の生物学的組織又は液体のものであり得る。このようなサンプルの例としては、限定されないが、血液、リンパ、尿、婦人科医学的液体、生検、羊水及びスミアが挙げられる。本来的に液体であるサンプルは、本明細書では「体液」と称される。生物学的サンプルは、例えば、ある領域を擦る若しくは拭き取ること、又は針を使用して体液を吸引することを含む様々な技術によって、患者から得られ得る。様々な生物学的サンプルを収集するための方法は、当技術分野で周知である。多くの場合、サンプルは、「臨床サンプル」、すなわち、患者由来のサンプルであろう。このようなサンプルとしては、限定されないが、体液(これは細胞を含有してもよいし、又は含有しなくてもよい)、例えば、血液(例えば、全血、血清又は血漿)、尿、唾液、組織又は細針生検サンプル、並びに診断、処置及び/又は転帰の経緯が公知の保管サンプルが挙げられる。生物学的サンプルとしては、組織、例えば、組織学的目的で採取された凍結切片も挙げられる。サンプルはまた、生物学的サンプルを処理することによって得られる任意の材料を包含する。得られる材料としては、限定されないが、サンプルから単離された細胞(又はそれらの子孫)、サンプルから抽出されたタンパク質又は核酸分子が挙げられる。生物学的サンプルの処理は、干渉成分のろ過、蒸留、抽出、濃縮、不活性化、試薬の追加等の1つ以上を含み得る。
【0044】
本明細書で使用されるとき、「容器」という用語は、医薬組成物を保持するための任意の入れ物を含む。例えば、一実施態様では、容器は、医薬組成物を含有するパッケージングである。他の実施態様では、容器は、医薬組成物を含有するパッケージングではない、すなわち、容器は、パッケージングされた医薬組成物又はパッケージングされていない医薬組成物と、医薬組成物の使用説明書とを含有する入れ物(例えば、箱又はバイアル)である。また、パッケージング技術は、当技術分野で周知である。医薬組成物の使用説明書は、医薬組成物を含有するパッケージングに含まれ得、説明書それ自体は、パッケージングされた製品との高い機能的関係を形成することを理解すべきである。しかしながら、説明書は、その目的の機能を果たす(例えば、被験体における疾患を治療又は予防する)化合物の能力に関する情報を含有し得ることを理解すべきである。
【0045】
本明細書で使用される「教材」という用語は、本明細書に列挙される様々な疾患又は障害を同定又は緩和又は処置するためのキット中の本発明の成分の有用性を伝達するために使用され得る刊行物、記録、ダイアグラム又は任意の他の表現媒体を含む。場合により又は代替的に、教材は、被験体の細胞又は組織における疾患又は障害を同定又は緩和する1つ以上の方法を記載し得る。キットの教材は、例えば、本発明の組成物を含有する容器に添付され得るか、又は本発明の組成物を含有する容器と一緒に輸送され得る。代替的に、レシピエントが教材及び化合物を協調的に使用することを意図して、教材は、容器と別に輸送され得る。
【0046】
本開示を通して、本発明の様々な態様は、範囲の形式で提示され得る。範囲の形式の記載は単に利便性及び簡潔性のためのものであると理解されるべきであり、本発明の範囲に対する柔軟性を欠く限定と解釈されるべきではない。したがって、範囲の記載は、可能な部分範囲及びその範囲内の個々の数値全てを具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6等の範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、6及びそれらの間の任意の全体的及び部分的な増分を具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、範囲の幅にかかわらず適用される。
【0047】
説明
本発明は、SCFAを産生するプロバイオティクス細菌の導入又はSCFAのみの導入が、HCCの病因を遅らせるという発見に部分的に基づくものである。本明細書に提示される結果は、SCFAを産生するプロバイオティクス細菌及び対応するSCFAのみ(プロバイオティクス処置なし)が、HBxトランスジェニックマウスにおける異形成性結節及びHCCの出現を抑制することを実証する。したがって、本発明は、ガン化学予防のための簡便なアプローチとして、SCFAを産生する細菌又はSCFAのみの導入を使用する組成物及び方法を含む。本発明は、肝臓ガン及び解剖学的に大腸から遠位に位置する他の腫瘍型に対する新規適用である。
【0048】
組成物
一実施態様では、本発明は、短鎖脂肪酸又は短鎖脂肪酸の組み合わせを提供する。一実施態様では、本発明は、プロバイオティクス細菌又はプロバイオティクス細菌の組み合わせを提供する。様々な実施態様では、本発明は、それを必要とする被験体、細胞、組織又は器官における肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させるための組成物を含む。本発明の組成物は、肝臓炎、肝疾患、前ガン病変等を治療又は予防するための組成物を含む。
【0049】
短鎖脂肪酸
様々な実施態様では、本発明は、肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させる組成物及び方法を含む。様々な実施態様では、本発明は、肝臓炎、肝疾患及び前ガン病変を治療又は予防することによって、肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させる組成物及び方法を含む。一実施態様では、肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させるための組成物は、短鎖脂肪酸又は短鎖脂肪酸の組み合わせを含む。
【0050】
一実施態様では、本発明は、肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させるための治療として、短鎖脂肪酸を投与するための一般的概念を提供する。一実施態様では、本発明の組成物は、短鎖脂肪酸を含む。一実施態様では、短鎖脂肪酸は、限定されないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、吉草酸、イソカプロン酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸、ピルビン酸、オクタン酸及びドデカン酸を含む群より選択される。一実施態様では、短鎖脂肪酸の組み合わせは、少なくとも10mM、少なくとも20mM、少なくとも30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM又はそれ以上の等量の酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム及び酪酸ナトリウムを含む。
【0051】
例えば、炭素鎖上の置換基、例えばO、S、N、メチル、エチル、ハロゲン、及び生物学的活性に干渉しない他の基を有する短鎖脂肪酸の生物学的に活性な誘導体もまた、本発明の組成物を形成するために使用され得る。
【0052】
プロバイオティクス細菌
様々な実施態様では、本発明は、肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させる組成物及び方法を含む。様々な実施態様では、本発明は、肝臓炎、肝疾患及び前ガン病変を治療又は予防することによって、肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させる組成物及び方法を含む。一実施態様では、肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させるための組成物は、プロバイオティクス細菌又はプロバイオティクス細菌の組み合わせを含む。
【0053】
一実施態様では、本発明は、肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させるための治療として、プロバイオティクス細菌を投与するための一般的概念を提供する。一実施態様では、本発明の組成物は、プロバイオティクス細菌を含む。一実施態様では、プロバイオティクス細菌は、限定されないが、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus paracasei、Leuconostoc mesenteroides、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus sasei、Lactobacillus salivarius、Pediococcus pentosaceus、Streptococcus thermophiles、Bacillus subtilis、Bacillus coagulans、Enteroccous faecium、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum及びBifidobacterium infantisを含む群より選択される。
【0054】
本発明のプロバイオティクス細菌はまた、その遺伝的特性及び/又は表現型特性が親株と比較して変化したプロバイオティクス細菌株の突然変異体、変異体及び遺伝子改変突然変異体を含み得る。プロバイオティクス細菌株の天然に存在する変異体は、選択的に単離されたターゲット特性の自発的変化を含む一方、親株の特性の意図的な変化は、従来の遺伝子操作技術、例えば遺伝子破壊、接合伝達等によって達成される。
【0055】
プロバイオティクス細菌の一般的な状態は、生細胞又は凍結乾燥細胞(これを使用して本明細書のデータを作成した)の形態である。しかしながら、それはまた、非生細胞、例えば死菌培養物、又はプロバイオティクス細菌によって発現される有益な因子を含有する組成物まで拡大され得る。これは、熱的に死滅させた微生物、又はpH変化に曝露すること若しくは圧力に供することによって死滅させた微生物を含み得る。非生細胞では、生成物の調製がより簡便であり、細胞を医薬品に容易に組み込み得、保存要件の制限が生細胞よりもはるかに少ない。
【0056】
一実施態様では、以下の細菌の組成物及び投与量を使用して、本明細書に提示される予備データを作成した:1010のLactobacillus plantarum 2362、1010のLactobacillus paracasei subsp paracsei 19、1010のLeuconostoc mesenteroids 32-77:1e、及び1010のPediococcus pentosaceus 5-33:3(生物活性植物繊維種、イヌリン2.5g、ペクチン2.5g、β-グルカン2.5g及び耐性デンプン2.5gの混合物(Synbiotic 2000(商標))を有する)。組成物及び投与量を3カ月間毎日投与した。
【0057】
処置方法
一実施態様では、本発明は、プロバイオティクス又はプロバイオティクスの組み合わせを使用して、肝細胞ガンを治療、阻害、予防又は軽減するための方法を提供する。別の実施態様では、本発明は、短鎖脂肪酸又は短鎖脂肪酸の組み合わせを使用して、肝細胞ガンを治療、阻害、予防又は軽減するための方法を提供する。
【0058】
本発明は、肝細胞ガンの発症を予防又は阻害する方法を提供する。肝臓の炎症(例えば、肝炎)は、肝細胞の損傷、再生、並びに前ガン結節及び肝細胞ガン結節への進行をもたらす初期病変を引き起こす。肝臓炎及び他の前ガン病変の処置は、肝細胞ガンの発症を予防し又は遅延させ得る。肝疾患及び炎症を検出するための方法は、当業者には明らかであり、及び/又は本明細書に記載されるであろう。
【0059】
本発明に従って肝臓炎を低減するための一般的なアプローチは、短鎖脂肪酸を細胞に提供することである。一実施態様では、短鎖脂肪酸は、直接的に送達され得る。別の実施態様では、短鎖脂肪酸は、プロバイオティクス細菌による複雑な炭水化物の代謝(プレバイオティクス)を通じて間接的に送達され得る。
【0060】
肝臓炎を阻害するために、短鎖脂肪酸は、細胞に送達されなければならない。1つの送達機構は、細胞膜を物理的又は化学的に透過性にする上記方法のいずれかによるものである。短鎖脂肪酸を細胞に伝達するための本発明の別の実施態様は、粒子衝撃を含み得る。この方法は、短鎖脂肪酸を運搬するマイクロプロジェクタイルを高速まで加速させて、それらが細胞膜を貫通し、細胞を死滅させずに細胞に侵入することを可能にする能力に依存する。小さな粒子を加速させるためのいくつかのデバイスが開発されている。このようなデバイスの1つは、高電圧放電により電流を発生させ、そしてこれが原動力を提供する。使用されるマイクロプロジェクタイルは、生物学的に不活性な物質、例えばタングステン又は金ビーズからなる。
【0061】
本発明のさらなる実施態様では、短鎖脂肪酸は、リポソームに封入され得る。リポソームは、リン脂質二重層膜及び内部水性媒体を特徴とする小胞構造である。多重膜リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質を過剰な水溶液に懸濁すると自発的に形成する。脂質成分は、閉鎖構造の形成前に自己再配列を受け、水及び溶解溶質を脂質二重層間に封入する。
【0062】
本発明の組成物及び前記化合物を含有する医薬組成物は、経口投与され得るので、経口投与に適切な形態で(すなわち、固体又は液体調製物として)製剤化され得る。適切な固体経口製剤としては、錠剤、カプセル、丸薬、顆粒、ペレット等が挙げられる。適切な液体経口製剤としては、溶液、懸濁液、分散液、エマルション、油等が挙げられる。カプセルの形態で製剤化される場合、本発明の組成物は、活性化合物及び不活性な担体又は希釈剤に加えて、硬質ゲル化カプセルを含む。
【0063】
本発明の組成物及び前記化合物を含有する医薬組成物は、さらに鼻腔内、すなわち、吸入によって投与され得るので、鼻腔内投与に適切な形態で(すなわち、エアロゾル又は液体調製物として)製剤化され得る。
【0064】
本発明の組成物はまた、例えば、人間医学若しくは獣医学に使用するための従来の坐剤基剤を含有する坐剤として、又は例えば従来のペッサリー基剤を含有するペッサリーとして製剤化され得る。
【0065】
本発明の一態様は、本発明の組成物を使用して、肝臓炎、肝疾患及び前ガン病変を治療又は予防する方法を提供する。一実施態様では、本発明の組成物は、肝臓炎、肝疾患及び前ガン病変を治療又は予防することによって、肝細胞ガンの発症を抑制するために使用され得る。
【0066】
以下は、開示される方法及び組成物によって処置され得る肝疾患の非限定的な例である:肝線維症、肥満症に関連する肝疾患、メタボリックシンドロームに関連する肝疾患、肝硬変、アルコール性肝硬変、非アルコール性肝硬変、脂肪肝、糖尿病に関連する肝硬変症、遺伝性肝疾患、肝脂肪症又は慢性肝炎。これは、HIV等の他のウイルスに関連する慢性肝疾患を含み、長期抗レトロウイルス療法中の個体の推定40%が、慢性肝疾患を発症する。
【0067】
肝細胞ガンに加えて、本発明の組成物を被験体に投与することによって治療又は予防接種(すなわち、予防的処置)され得るガンは、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、骨髄腫、白血病、造血新生物、胸腺腫、リンパ腫、肉腫、肺ガン、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、子宮ガン、腺ガン、乳ガン、膵臓ガン、肺ガン、腎ガン、膀胱ガン、前立腺ガン、卵巣ガン、原発性又は転移性黒色腫、扁平上皮ガン、基底細胞ガン、脳ガン、管肉腫、血管肉腫、頭頸部ガン、甲状腺ガン、軟部組織肉腫、骨肉腫、精巣ガン、子宮ガン、子宮頸ガン、胃腸ガン及び現在公知の又は将来同定される任意の他のガンからなる群より選択されるガンであり得る(例えば、Rosenberg (1996) Ann. Rev. Med. 47:481 -491(この全内容は、参照により本明細書に組み入れられる)を参照のこと)。本発明の範囲内で企図されるさらなる免疫原は、限定されないが、微生物疾患、細菌疾患、原虫疾患、寄生虫疾患、真菌疾患及びウイルス性疾患を含む感染性疾患から被験体を保護するために適切な任意の免疫原を含み得る感染病原体免疫原である。炎症関連ガンに加えて、SCFAはまた、炎症関連自己免疫疾患又は自己攻撃性疾患(例えば、関節リウマチ)の処置に有用であり得る。
【0068】
それを必要とする個体におけるガンを阻害するための方法のいくつかの実施態様では、第2の薬剤、例えば抗新生物剤が個体に投与される。いくつかの実施態様では、第2の薬剤は、第2の転移阻害剤、例えばプラスミノーゲンアンタゴニスト又はアデノシンデアミナーゼアンタゴニストを含む。他の実施態様では、第2の薬剤は、血管新生阻害剤である。
【0069】
本発明の組成物は、ヒト及び動物における腫瘍転移を予防、減少、最小化、制御及び/又は縮小するために使用され得る。開示される化合物はまた、原発性腫瘍成長の速度を減速させるために使用され得る。開示される化合物は、処置が必要な被験体に投与される場合、ガン細胞の拡散を停止させるために使用され得る。このように、本明細書に開示される化合物は、1つ以上の薬物又は他の医薬品との併用療法の一部として投与され得る。併用療法の一部として使用される場合、開示される化合物によってもたらされる転移の減少及び原発性腫瘍成長の軽減は、患者の処置に使用される任意の医薬療法又は薬物療法のより有効かつ効率的な使用を可能にする。加えて、開示される化合物による転移の制御は、疾患を一箇所に集中させるより大きな能力を被験体に与える。
【0070】
以下は、開示される方法及び組成物によって処置され得るガンの非限定的な例である:急性リンパ芽球性;急性骨髄性白血病;副腎皮質ガン;小児副腎皮質ガン;虫垂ガン;基底細胞ガン;肝外胆管ガン;膀胱ガン;骨ガン;骨肉腫及び悪性線維性組織球腫;小児脳幹神経膠腫;成人脳腫瘍;脳腫瘍、脳幹神経膠腫(小児);脳腫瘍、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍(小児);中枢神経系胚芽腫;小脳星状細胞腫;大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫;頭蓋咽頭腫;上衣芽細胞腫;上衣腫;髄芽腫;髄様上皮腫;中間型松果体実質腫瘍;テント上原始神経外胚葉性腫瘍及び松果体芽細胞腫;視覚路及び視床下部神経膠腫;脳腫瘍及び脊髄腫瘍;乳ガン;気管支腫瘍;バーキットリンパ腫;カルチノイド腫瘍;消化管カルチノイド腫瘍;中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍;中枢神経系胚芽腫;中枢神経系リンパ腫;小脳星状細胞腫大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫(小児);子宮頸ガン;小児脊索腫;慢性リンパ球性白血病;慢性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖性障害;結腸ガン;結腸直腸ガン;頭蓋咽頭腫;皮膚T細胞リンパ腫;食道ガン;ユーイングファミリー腫瘍;性腺外杯細胞腫瘍;肝外胆管ガン;眼ガン、眼内黒色腫;眼ガン、網膜芽細胞腫;胆嚢ガン;胃(Gastric)(胃(Stomach))ガン;消化管カルチノイド腫瘍;消化管間質腫瘍(GIST);頭蓋外杯細胞腫瘍;性腺外杯細胞腫瘍;卵巣杯細胞腫瘍;妊娠性絨毛腫瘍;神経膠腫;小児脳幹神経膠腫;小児大脳星状細胞腫神経膠腫;小児視覚路及び視床下部神経膠腫;有毛細胞白血病;頭頸部ガン;肝細胞(肝臓)ガン;ランゲルハンス細胞組織球症;ホジキンリンパ腫;下咽頭ガン;視床下部及び視覚路神経膠腫;眼内黒色腫;島細胞腫瘍;腎臓(腎細胞)ガン;ランゲルハンス細胞組織球症;喉頭ガン;急性リンパ芽球性白血病;急性骨髄性白血病;慢性リンパ球性白血病;慢性骨髄性白血病;有毛細胞白血病;口唇ガン及び口腔ガン(Lip and Oral Cavity Cancer);肝臓ガン;非小細胞肺ガン;小細胞肺ガン;AIDS関連リンパ腫;バーキットリンパ腫;皮膚T細胞リンパ腫;ホジキンリンパ腫;非ホジキンリンパ腫;原発性中枢神経系リンパ腫;ワルデンシュトレームマクログロブリン血症;骨の悪性線維性組織球腫及び骨肉腫;髄芽腫;黒色腫;眼内(目)黒色腫;メルケル細胞ガン;中皮腫;原発不明転移性扁平上皮性頸部ガン;口腔ガン;多発性内分泌腺腫瘍症候群(小児);多発性骨髄腫/形質細胞新生物;菌状息肉腫;骨髄異形成症候群;骨髄異形成/骨髄増殖性疾患;慢性骨髄性白血病;成人急性骨髄性白血病;小児急性骨髄性白血病;多発性骨髄腫;慢性骨髄増殖性障害;鼻腔及び副鼻腔ガン;上咽頭ガン;神経芽細胞腫;非小細胞肺ガン;口腔ガン(Oral Cancer);口腔ガン(Oral Cavity Cancer);中咽頭ガン;骨肉腫及び骨の悪性線維性組織球腫;卵巣ガン;卵巣上皮ガン;卵巣杯細胞腫瘍;卵巣低悪性度腫瘍;膵臓ガン;膵臓ガン、島細胞腫瘍;乳頭腫症;副甲状腺ガン;陰茎ガン;咽頭ガン;褐色細胞腫;中間型松果体実質腫瘍;松果体芽細胞腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍;下垂体腫瘍;形質細胞新生物(Plasma Celt Neoplasm)/多発性骨髄腫;胸膜肺芽腫;原発性中枢神経系リンパ腫;前立腺ガン;直腸ガン;腎細胞(腎臓)ガン;腎盂及び尿管の移行上皮ガン;第15染色体上のNUT遺伝子に関与する気道ガン;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;唾液腺ガン;肉腫、ユーイングファミリー腫瘍;カポジ肉腫;軟部組織肉腫;子宮肉腫;セザリー症候群;皮膚ガン(非黒色腫);皮膚ガン(黒色腫);メルケル細胞皮膚ガン;小細胞肺ガン;小腸ガン;軟部組織肉腫;扁平上皮ガン、原発不明転移性扁平上皮性頸部ガン;胃(Stomach)(胃(Gastric))ガン;テント上原始神経外胚葉性腫瘍;皮膚T細胞リンパ腫;精巣ガン;咽喉ガン;胸腺腫及び胸腺ガン;甲状腺ガン;腎盂及び尿管の移行上皮ガン;妊娠性絨毛腫瘍;尿道ガン;子宮ガン(子宮内膜);子宮肉腫;腟ガン;外陰部ガン;ワルデンシュトレームマクログロブリン血症;並びにウィルムス腫瘍。
【0071】
一実施態様では、本発明は、ガンを処置するための方法であって、本発明の組成物による処置の前に、それと同時に又はその後に、ガンの補完療法、例えば外科手術、化学療法、化学療法剤、放射線療法若しくはホルモン療法又はそれらの組み合わせで被験体を処置することを含む方法を提供する。
【0072】
別の実施態様では、本発明は、ガンを処置するための方法であって、本発明の組成物による処置の前に、それと同時に又はその後に、ガンの補完療法、例えば外科手術、化学療法、化学療法剤、放射線療法若しくはホルモン療法又はそれらの組み合わせで被験体を処置することを含む方法を提供する。
【0073】
化学療法剤としては、細胞毒性剤(例えば、5-フルオロウラシル、シスプラチン、カルボプラチン、メトトレキサート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、オキソルビシン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、シタラビンUSP、シクロホスファミド、エストラムスチン(estramucine)リン酸エステルナトリウム、アルトレタミン、ヒドロキシウレア、イホスファミド、プロカルバジン、マイトマイシン、ブスルファン、シクロホスファミド、ミトキサントロン、カルボプラチン、シスプラチン、インターフェロンアルファ-2a組み換え体、パクリタキセル、テニポシド及びストレプトゾシン)、細胞毒性アルキル化剤(例えば、ブスルファン、クロラムブシル、シクロホスファミド、メルファラン、又はエチルスルホン酸(ethylesulfonic acid))、アルキル化剤(例えば、アサリー、AZQ、BCNU、ブスルファン、ビスルファン、カルボキシフタラート白金(carboxyphthalatoplatinum)、CBDCA、CCNU、CHIP、クロラムブシル、クロロゾトシン、cis-白金、クロメソン、シアノモルホリノドキソルビシン、シクロジソン、シクロホスファミド、ジアンヒドロガラクチトール、フルオロドパン、ヘプスルファム、ヒカントン、イホスファミド(iphosphamide)、メルファラン、メチルCCNU、マイトマイシンC、ミトゾールアミド(mitozolamide)、ナイトロジェンマスタード、PCNU、ピペラジン、ピペラジンジオン、ピポブロマン、ポルフィロマイシン、スピロヒダントインマスタード、ストレプトゾトシン、テロキシロン、テトラプラチン、チオテパ、トリエチレンメラミン、ウラシルナイトロジェンマスタード及びYoshi-864)、抗有糸分裂剤(例えば、アロコルヒチン、ハリコンドリンM、コルヒチン、コルヒチン誘導体、ドラスタチン10、メイタンシン、リゾキシン、パクリタキセル誘導体、パクリタキセル、チオコルヒチン、トリチルシステイン、硫酸ビンブラスチン及び硫酸ビンクリスチン)、植物性アルカロイド(例えば、アクチノマイシンD、ブレオマイシン、L-アスパラギナーゼ、イダルビシン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ダウノルビシン、VP-16-213、VM-26、ナベルビン及びタキソテール)、生物学的製剤(例えば、アルファインターフェロン、BCG、G-CSF、GM-CSF及びインターロイキン-2)、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、カンプトセシン、カンプトセシン誘導体及びモルホリノドキソルビシン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、ミトキサントロン(mitoxantron)、アモナフィド、m-AMSA、アントラピラゾール誘導体、ピラゾロアクリジン、ビサントレンHCl、ダウノルビシン、デオキシドキソルビシン、メノガリル、N,N-ジベンジルダウノマイシン、オキサントラゾール(oxanthrazole)、ルビダゾン(rubidazone)、VM-26及びVP-16)及び合成物質(例えば、ヒドロキシウレア、プロカルバジン、o,p’-DDD、ダカルバジン、CCNU、BCNU、cis-ジアミンジクロロ白金、ミトキサントロン、CBDCA、レバミゾール、ヘキサメチルメラミン、all-transレチノイン酸、グリアデル及びポルフィマーナトリウム)が挙げられる。
【0074】
抗増殖剤は、細胞の増殖を減少させる化合物である。抗増殖剤としては、アルキル化剤、代謝拮抗物質、酵素、生物学的応答調節剤、雑多な薬剤、ホルモン及びアンタゴニスト、アンドロゲン阻害剤(例えば、フルタミド及びロイプロリド酢酸塩)、抗エストロゲン剤(例えば、クエン酸タモキシフェン及びその類似体、トレミフェン、ドロロキシフェン及びロロキシフェン(roloxifene))が挙げられる。特定の抗増殖剤のさらなる例としては、限定されないが、レバミゾール、硝酸ガリウム、グラニセトロン、サルグラモスチムストロンチウム-89クロライド、フィルグラスチム、ピロカルピン、デクスラゾキサン及びオンダンセトロンが挙げられる。
【0075】
本発明の組成物は、単独で又は細胞毒性剤/抗新生物剤及び抗血管新生剤を含む他の抗腫瘍剤と組み合わせて投与され得る。細胞毒性剤/抗新生物剤は、ガン細胞を攻撃及び死滅する薬剤として定義される。いくつかの細胞毒性剤/抗新生物剤は、腫瘍細胞中の遺伝物質をアルキル化するアルキル化剤、例えばシスプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、トリメチレンチオホスホルアミド、カルムスチン、ブスルファン、クロラムブシル、ベルスチン、ウラシルマスタード、クロルナファジン(chlomaphazin)及びダカルバジン(dacabazine)である。他の細胞毒性剤/抗新生物剤は、腫瘍細胞の代謝拮抗物質、例えば、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン(mercaptopuirine)、アザチオプリム(azathioprime)及びプロカルバジンである。他の細胞毒性剤/抗新生物剤は、抗生物質、例えば、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、マイトマイシン(mytomycin)C及びダウノマイシンである。これらの化合物について市販されている多数のリポソーム製剤がある。さらに、他の細胞毒性剤/抗新生物剤は、有糸分裂阻害剤(ビンカアルカロイド)である。これらとしては、ビンクリスチン、ビンブラスチン及びエトポシドが挙げられる。雑多な細胞毒性剤/抗新生物剤としては、タキソール及びその誘導体、L-アスパラギナーゼ、抗腫瘍抗体、ダカルバジン、アザシチジン、アムサクリン、メルファラン、VM-26、イホスファミド、ミトキサントロン並びにビンデシンが挙げられる。
【0076】
抗血管新生剤は、当業者に周知である。本開示の方法及び組成物に使用するための適切な抗血管新生剤としては、抗VEGF抗体(ヒト化抗体及びキメラ抗体を含む)、抗VEGFアプタマー及びアンチセンスオリゴヌクレオチドが挙げられる。他の公知の血管新生阻害剤としては、アンジオスタチン、エンドスタチン、インターフェロン、インターロイキン1(α及びβを含む)、インターロイキン12、レチノイン酸並びにメタロプロテイナーゼ-1及び-2(TIMP-1及び-2)の組織阻害剤が挙げられる。トポイソメラーゼを含む小分子(例えば、抗血管新生活性を有するトポイソメラーゼII阻害剤であるラゾキサン)もまた使用され得る。
【0077】
開示される化合物と組み合わせて使用され得る他の抗ガン剤としては、限定されないが、アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;アメタントロン酢酸塩;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビサントレン塩酸塩;ビスナフィドジメシラート;ビゼレシン;ブレオマイシン硫酸塩;ブレキナールナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;セデフィンゴール;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンクエン酸塩;プロピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン;エダトレキサート;エフロルニチン塩酸塩;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロマート;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;エストラムスチンリン酸エステルナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;エトポシドリン酸塩;エトプリン;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルオロシタビン(fluorocitabine);ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ヒドロキシウレア;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イルモホシン;インターロイキンII(組み換えインターロイキンII又はrIL2を含む);インターフェロンα-2a;インターフェロンα-2b;インターフェロンα-n1;インターフェロンα-n3;インターフェロンβ-Ia;インターフェロンγ-Ib;イプロプラチン;イリノテカン塩酸塩;ランレオチド酢酸塩;レトロゾール;ロイプロリド酢酸塩;リアロゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコール;メイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;ミトキサントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペグアスパラガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシン硫酸塩;ペルホスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン塩酸塩;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;セムスチン;シムトラゼン;スパルフォセートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;テロキサントロン塩酸塩;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;トレミフェンクエン酸塩;酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;ツブロゾール塩酸塩;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン硫酸塩;ビンクリスチン硫酸塩;ビンデシン;ビンデシン硫酸塩;ビネピジンスルファート;ビングリシナートスルファート;硫酸ビンロイロシン;ビノレルビン酒石酸塩;ビンロシジンスルファート;ビンゾリジンスルファート;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;ゾルビシン塩酸塩が挙げられる。
他の抗ガン薬としては、限定されないが、20-エピ-1,25 ジヒドロキシビタミンD3;5-エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL-TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドックス;アミフォスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド;血管新生阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリクス;抗背側化形態形成タンパク質-1;抗アンドロゲン薬(前立腺ガン);抗エストロゲン薬;抗新生物薬;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシン塩;アポトーシス遺伝子モデュレーター;アポトーシスレギュレーター;アプリン酸;ara-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;βラクタム誘導体;β-アレチン;ベタクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビスアジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビゼレシン;ブレフラート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシイミン;カルシポトリオール;カルフォスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリアポックスIL-2;カペシタビン;カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリクス;クロリン;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;cis-ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クラムベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペンタントラキノン;シクロプラタム(cycloplatam);シペマイシン;シタラビンオクホスファート;細胞溶解因子;サイトスタチン;ダクリキシマブ(dacliximab);デシタビン;デヒドロジデムニンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド(dexifosfamide);デクスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジコン;ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アザシチジン;9-ジヒドロタキソール(dihydrotaxol, 9-);ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルホシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフール;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;エトポシドリン酸塩;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;塩酸フルオロダウノルニシン(fluorodaunorunicin);ホルフェニメクス;フォルメスタン;フォストリエシン;フォテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリックス;ゲラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモホシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン(imidazoacridone);イミキモド;免疫刺激ペプチド;インスリン様成長因子-1レセプター阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;
4-イポメアノール(ipomeanol, 4-);イロプラクト(iroplact);イルソグラジン;イソベンガゾール(isobengazole);イソホモハリコンドリン(isohomohalicondrin)B;イタセトロン;ジャスプラキノライド;カハラリドF;ラメラリン-Nトリアセタート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;硫酸レンチナン(lentinan sulfate);レプトルスタチン;レトロゾール;白血病阻害因子;白血球αインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;ロイプロレリン;レバミゾール;リアロゾール;直鎖ポリアミン類似体;親油性二糖類ペプチド;親油性白金化合物;リッソクリナミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;溶解ペプチド;メイタンシン(maitansine);マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリリシン阻害剤;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;ミトナフィド;マイトトキシン線維芽細胞成長因子-サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体;ヒト絨毛性ゴナドトロピン(gonadotrophin);モノホスホリルリピドA+ミオバクテリウム(myobacterium)細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子阻害剤;多発腫瘍サプレッサー1-ベース療法;マスタード抗ガン剤;ミカペルオキシドB;ミコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N-アセチルジナリン;N-置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチップ(nagrestip);ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン(napavin);ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素モデュレーター;ニトロキシド抗酸化剤;ニトルリン(nitrullyn);O6-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導因子;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;
パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペグアスパラガーゼ;ペルデシン;ポリ硫酸ペントサンナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール(pentrozole);ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;酢酸フェニル;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニール;ピロカルピン塩酸塩;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチン(placetin)A;プラセチン(placetin)B;プラスミノーゲン活性化因子阻害剤;白金錯体;白金化合物;白金-トリアミン錯体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビス-アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;プロテインAベースの免疫モデュレーター;タンパク質キナーゼC阻害剤;タンパク質キナーゼC阻害剤(微細藻);タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras-GAP阻害剤;脱メチル化レテリプチン;エチドロン酸レニウムRe186(rhenium Re 186 etidronate);リゾキシン;リボザイム;RIIレチンアミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメクス;ルビギノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi1模倣体;セムスチン;老化由来阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達モデュレーター;単鎖抗原結合タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ボロカプト酸ナトリウム(sodium borocaptate);フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール(solverol);ソマトメジン結合タンパク質;ソネルミン;スパルホス酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンジスタチン1;スクアラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分裂阻害剤;スチピアミド;ストロメリシン阻害剤;スルフィノシン;超活性血管作動性腸管ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ(suradista);スラミン;スワインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム;テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロマイド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;タリブラスチン;チオコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣体;チマルファシン;チモポエチンレセプターアゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;エチルエチオプルプリンスズ;チラパザミン;二塩化チタノセン;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン;UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖洞由来成長阻害因子;ウロキナーゼレセプターアンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;ベクター系、赤血球遺伝子療法;ベラレソール;ベラミン(veramine);ベルジン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン(vinxaltine);ビタキシン;ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ及びジノスタチンスチマラマーが挙げられる。一実施態様では、抗ガン薬は、5-フルオロウラシル、タキソール又はロイコボリンである。
【0078】
医薬組成物
本発明は、1つ以上の本発明の組成物を含む医薬組成物を含む。本明細書に記載される医薬組成物の製剤は、薬理学分野で公知の又は将来開発される任意の方法によって調製され得る。一般に、このような調製方法は、有効成分を担体又は1つ以上の他の補助成分と合わせ、次いで、必要な場合又は望ましい場合には、生成物を所望の単回投与単位又は複数回投与単位に成形又はパッケージングする工程を含む。
【0079】
前記組成物は、目的の使用及び用途に応じて、さらなる医薬剤、医薬品、担体、バッファー、アジュバント、分散剤、希釈剤等を含み得る。
【0080】
適切な医薬担体、賦形剤及び/又は希釈剤の例は、当技術分野で周知であり、ガム、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、アルファ化デンプン)、糖(例えば、ラクトース、マンニトール、スクロース、デキストロース)、セルロース材料(例えば、微結晶セルロース)、アクリラート(例えば、ポリメチルアクリラート)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タルク又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
液体製剤のための薬学的に許容し得る担体は、水性又は非水性の溶液、懸濁液、エマルション又は油である。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール及び注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。油の例は、動物起源、植物起源又は合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、オリーブ油、ヒマワリ油、ウコン油、魚肝油、別の海産物油、又は牛乳若しくは卵由来の脂質である。
【0082】
水性担体としては、水、アルコール/水溶液、エマルション又は懸濁液が挙げられ、リン酸緩衝生理食塩水溶液等の生理食塩水及び緩衝媒体、水、油/水エマルション等のエマルション、様々な種類の湿潤剤、滅菌溶液等を含む。このような担体を含む組成物は、周知の従来の方法によって製剤化され得る。適切な担体は、本発明の生物学的に活性な化合物と組み合わせた際に生物学的活性を保持する任意の物質を含み得る。非経口投与のための調製物は、滅菌された水性又は非水性の溶液、懸濁液及びエマルションを含み得る。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、及び注射用有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体としては、水、アルコール/水溶液、エマルション又は懸濁液が挙げられ、生理食塩水及び緩衝媒体を含む。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンガー又は固定油が挙げられ得る。静脈内ビヒクルとしては、流体及び栄養補給剤、電解質補給剤(例えば、リンガーデキストロースに基づくもの)等が挙げられ得る。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤及び不活性ガス等を含む保存剤及び他の添加剤も存在し得、加えて、本発明の医薬組成物は、例えば、好ましくはヒト起源の血清アルブミン又は免疫グロブリンのようなタンパク質性担体を含み得る。
【0083】
本明細書で提供される医薬組成物はまた、放出コントロール組成物、すなわち、有効成分が投与後に一定期間にわたって放出される組成物として投与され得る。放出コントロール組成物又は持続放出組成物は、親油性デポー(例えば、脂肪酸、ワックス、油)の製剤を含む。別の実施態様では、組成物は、即時放出組成物、すなわち、全ての有効成分が投与直後に放出される組成物である。
【0084】
さらに、様々な実施態様における本発明の及び本明細書に記載される医薬組成物、又は前記化合物を含む組成物は、食品、機能性食品、飲料、医療食品に混合して投与され得る。
【0085】
本明細書で提供される医薬組成物の説明は主に、ヒトへの倫理的投与に適切な医薬組成物に関するものであるが、当業者であれば、このような組成物は一般に、全ての種類の動物への投与に適切であることを理解するであろう。組成物を様々な動物への投与に適切なものにするためのヒトへの投与に適切な医薬組成物の改変は十分に理解されており、通常の熟練獣医薬理学者であれば、たとえ必要であったとしても、単なる通常の実験でこのような改変を設計及び実施し得る。本発明の医薬組成物の投与が企図される被験体としては、限定されないが、ヒト及び他の霊長類、商業的に関連する哺乳動物を含む哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ及びイヌが挙げられる。
【0086】
本発明の方法に有用な医薬組成物は、眼投与経路、経口投与経路、直腸投与経路、膣内投与経路、非経口投与経路、局所投与経路、肺内投与経路、鼻腔内投与経路、口腔投与経路、腫瘍内投与経路、硬膜外投与経路、大脳内投与経路、脳室内投与経路又は別の投与経路に適切な製剤で調製、パッケージング又は販売され得る。他の企図される製剤としては、射出ナノ粒子、リポソーム調製物、有効成分を含有する再密封赤血球、及び免疫学系製剤が挙げられる。
【0087】
本発明の医薬組成物は、バルクで、単回単位用量として、又は複数の単回単位用量として調製、パッケージング又は販売され得る。本明細書で使用されるとき、「単位用量」は、所定量の有効成分を含む医薬組成物の別個の量である。有効成分の量は、一般に、被験体に投与される有効成分の投与量、又はこのような投与量の便利な一部分、例えばこのような投与量の1/2若しくは1/3等に等しい。
【0088】
本発明の医薬組成物中の有効成分、薬学的に許容し得る担体及び任意のさらなる成分の相対量は、処置される被験体のアイデンティティ、サイズ及び状態に応じて、並びにさらに前記組成物を投与すべき経路に応じて変動するであろう。例として、組成物は、0.1%~100%(w/w)の有効成分を含み得る。
【0089】
有効成分に加えて、本発明の医薬組成物は、1つ以上のさらなる薬学的に活性な薬剤をさらに含み得る。
【0090】
本発明の医薬組成物の放出コントロール製剤又は持続放出製剤は、従来の技術を使用して作製され得る。
【0091】
本発明の組成物はまた、プレバイオティクス成分を含み得る。「プレバイオティクス」は、ペットの腸内細菌叢によって発酵される物質又は化合物であって、したがって病原菌を利用してペットの胃腸管内で乳酸菌の成長又は発達を促進する物質又は化合物を含む。この発酵の結果は、結腸における脂肪酸、特に短鎖脂肪酸の放出であり得る。この放出は、結腸におけるpH値を減少させる効果を有し得る。適切なプレバイオティクスの非限定的な例としては、オリゴ糖、例えばフラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、又はデンプンのオリゴ誘導体(例えば、ペクチン、β-グルカン、及び耐性デンプン)として一般に公知のイヌリン及びその加水分解生成物が挙げられる。プレバイオティクスは、任意の適切な形態で提供され得る。例えば、プレバイオティクスは、繊維を含有する植物材料の形態で提供され得る。適切な植物材料としては、アスパラガス、アーティチョーク、玉ねぎ、小麦若しくはチコリー、又はこれらの植物材料の残留物が挙げられる。あるいは、プレバイオティクス繊維は、イヌリン抽出物として提供され得、例えば、チコリーからの抽出物が適切である。適切なイヌリン抽出物は、「Raftiline」という商標でTirlemont 3300, BelgiumのOrafti SAから入手され得る。例えば、イヌリンは、Raftiline (g) ST(これは、約90~約94重量%のイヌリン、最大約4重量%のグルコース及びフルクトース、並びに約4~9重量%のスクロースを含有する白色の微粉である)の形態で提供され得る。あるいは、繊維は、例えば「Raftilose」という商標でTirlemont 3300, BelgiumのOrafti SAから入手されるような、フラクトオリゴ糖の形態であり得る。例えば、イヌリンは、Raftilose (g) P95の形態で提供され得る。さもなければ、フラクトオリゴ糖は、イヌリンを加水分解することによって、酵素的方法によって、又は微生物を使用することによって得られ得る。
【0092】
医薬組成物はまた、栄養組成物、例えば、経口摂取のための及び場合により経腸吸収のための経口栄養組成物を含み、栄養組成物は、本発明の化合物を含む。
【0093】
栄養組成物を製剤化して経口投与する場合、組成物は、液体経口栄養補給剤(例えば、不完全な栄養補給物)又は完全な栄養補給物であり得る。このように、栄養組成物は、例えば、便利な剤形の、錠剤、カプセル、液体、チュアブル、軟質ゲル、サシェ、粉末、シロップ、液体懸濁液、エマルション及び溶液を含む任意の公知の形態で投与され得る。
【0094】
栄養製剤は、任意の栄養的に完全な又は補助的な製剤(例えば、栄養補給剤)を包含する。本明細書で使用されるとき、「栄養的に完全な」は、好ましくは、十分な種類及びレベルの主要栄養素(タンパク質、脂肪及び炭水化物)と、それが投与される被験体にとって唯一の栄養源であるのに十分な微量栄養素とを含有する栄養製品である。患者は、このような完全な栄養組成物から栄養要求の100%を取り得る。一実施態様によれば、栄養製剤は、補助栄養素を提供する補助的な製剤である。「補助的な製剤」は、栄養的に完全でなくてもよいが、好ましくは、例えば、肉体運動、さらに本発明の有益な効果と組み合わせて支援的な、及び/又は被験体の特定の若しくはさらなる要求に対処する特定の栄養素を含有する。
【0095】
栄養製剤は、一般に、例えば特定の年齢の被験体(例えば、子供用製剤)に適合された適用可能な栄養製剤であり得るが、それはまた、高齢患者のための製剤、集中治療患者のための製剤、又は例えば特定の疾患を患っている患者のために特別に適合された製剤であり得る。任意の栄養製剤は、例えば、再構成可能なもの(すなわち、実質的に乾燥した状態、例えば粉末形態で存在する)又は液体製剤の形態のレディ・トゥ・ドリンクであり得る。
【0096】
本発明のキット
本発明はまた、本発明の方法に有用な化合物と、例えば、本明細書の他の箇所に記載される短鎖脂肪酸の投与方法又は本明細書の他の箇所に記載されるプロバイオティクス細菌の投与方法を記載する教材とを含むキットを含む。非経口投与に適切な医薬組成物の製剤は、薬学的に許容し得る担体、例えば滅菌水又は滅菌等張生理食塩水と組み合わせた有効成分を含む。このような製剤は、ボーラス投与又は連続投与に適切な形態で調製、パッケージング又は販売され得る。注射用製剤は、単位剤形で、例えばアンプルで、又は保存剤を含有する複数回投与容器で調製、パッケージング又は販売され得る。非経口投与のための製剤としては、限定されないが、懸濁液、溶液、油性又は水性ビヒクル中のエマルション、ペースト、及び埋め込み可能な持続放出性又は生分解性製剤が挙げられる。このような製剤は、限定されないが、懸濁剤、安定化剤又は分散剤を含む1つ以上のさらなる成分をさらに含み得る。非経口投与のための製剤の一実施態様では、有効成分は、再構成組成物の非経口投与前に適切なビヒクル(例えば、発熱物質を含まない滅菌水)で再構成するための乾燥(すなわち、粉末又は顆粒)形態で提供される。
【0097】
医薬組成物は、滅菌された注射用の水性又は油性の懸濁液又は溶液の形態で調製、パッケージング又は販売され得る。この懸濁液又は溶液は、公知の技術に従って製剤化され得、有効成分に加えてさらなる成分、例えば本明細書に記載される分散剤、湿潤剤又は懸濁剤を含み得る。このような滅菌注射用製剤は、例えば、非毒性の非経口的に許容し得る希釈剤又は溶媒、例えば水又は1,3-ブタンジオールを使用して調製され得る。他の許容し得る希釈剤及び溶媒としては、限定されないが、リンガー溶液、等張塩化ナトリウム溶液及び固定油、例えば合成モノグリセリド又は合成ジグリセリドが挙げられる。有用な他の非経口投与可能な製剤としては、有効成分を微結晶形態中に、リポソーム調製物中に、又は生分解性ポリマー系の成分として含むものが挙げられる。持続放出又は埋め込みのための組成物は、薬学的に許容し得るポリマー材料又は疎水性材料、例えば、エマルション、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー又は難溶性塩を含み得る。
【実施例0098】
実験例
以下の実験例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、例示目的でのみ提供されるものであり、特に指定がない限り、限定することを意図するものではない。したがって、本発明は、以下の実施例に限定されると決して解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかになる任意かつ全ての変形を包含すると解釈されるべきである。
【0099】
さらなる説明がなくとも、当業者であれば、上記説明及び以下の例示的な実施例を使用して、本発明の化合物を作製及び利用し、特許請求の範囲に記載の方法を実施し得ると考えられる。したがって、以下の実施例は、本発明の好ましい実施態様を具体的に示すものであり、本開示の他の部分を限定するものと決して解釈されるべきではない。
【0100】
実施例1:共生細菌は、B型肝炎xトランスジェニックマウスにおけるB型肝炎ウイルス媒介性肝細胞ガンに対する化学予防を提供する
B型肝炎ウイルス(HBV)による慢性感染症は、慢性肝疾患(CLD)の進行の発展及び肝細胞ガン(HCC)の出現に関連する。HCCは、世界中で流行しているガンであり、処置選択肢がほとんどない。HCCは感染の数十年後に発症し、慢性炎症のバックグラウンドで出現することが最も多いことを考慮して、炎症を抑制することが公知の選択プロバイオティクス細菌を、HCCの出現を予防し又は遅延させるための簡便で安価な手段として使用し得るという仮説を試験するために、実験を設計した。これを試験するために、HCCに至る進行性肝病変を発症するB型肝炎x(HBx)トランスジェニックマウスを、プロバイオティクス細菌の混合物(Synbiotic 2000(商標))で処置した。その結果、コントロールトランスジェニックマウスと比較して、異形成性結節及びHCC結節の数及びサイズの有意な減少が示された。選択した免疫及びガン関連マーカーのマイクロアレイ分析により、コントロールマウスと比較して、Synbiotic 2000(商標)で処置したマウスの肝臓における強い発現減少が示された。使用した細菌は、複雑な炭水化物を短鎖脂肪酸(SCFA)(これは、他の系で抗炎症特性を有することが公知である)に代謝するので、並行実験では、細菌の非存在下で、Synbiotic 2000(商標)(酢酸塩、プロピオン酸塩(proprionate)、酪酸塩)によって作製したSCFAの組み合わせをHBxトランスジェニックマウスに給餌した。その結果、異形成性結節及びHCC結節の数及びサイズの強い減少が再び示された。これらの結果は、Synbiotic 2000(商標)又はSCFAの形態のそれらの代謝副産物がHCCの病因を弱毒化し、HCCだけではなく、おそらくは慢性炎症のバックグラウンドで発症することが多い他のガンに対するガン化学予防アプローチとして有用であり得ることを示している。
【0101】
これらの実験で使用した材料及び方法を次に記載する。
【0102】
材料及び方法
マウス
HCCの病因を研究し、新たな処置アプローチを評価するために、HBxトランスジェニックマウスモデルが作られている(Yu DY et al., J Hepatol, 1999; 31:123-132)。出生時において、これらのHBxトランスジェニックマウスは、肝臓におけるHBx発現がほとんど又は全くなく、病態もない。3~4カ月齢までに、それらは、肝炎/脂肪症に関連する検出可能なHBxを発症する。6~7カ月齢までに、肝内HBxの存在、頻度及び分布がかなり高くなり、これは、異形成性結節及び微小HCCの出現に関連する。9~10カ月齢までに、広範囲のHBx染色が、巨視的なHCC結節の出現に関連する。この一連の事象が慢性ヒト感染症のものと類似することを考慮して、この動物モデルを本研究に使用した。
【0103】
Synbiotic 2000(商標)又はそれらSCFA代謝産物が、HBV関連HCCの病因を遅延させ又は予防するであろうという仮説を試験するために、HBxトランスジェニックマウスを使用した(Arzumanyan A et al., Cancer Res, 2012; 72(22):5912-5920)。HBxが分化肝細胞においてのみ発現されるように、HBx遺伝子をそのエンハンサー/プロモーター複合体と共に使用して、C57Bl6バックグラウンドでトランスジェニックマウスを作製した。これは、肝臓における病変の進行に関連するHBx発現の年齢依存的増加をもたらした。これらのマウスは、Dr. Dr. Dae-Yeul Yu (Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology, Taejon, Korea)から提供されたものであり、CBAマウスと交配させた。次いで、兄姉交配によって、C57Bl6/CBAマウスのコロニーを作製した。後者は、元のC57B16トランスジェニックマウス系統と比較して、進行性病変を有する動物の発生率が高かった。
【0104】
プロバイオティクス細菌及び短鎖脂肪酸(SCFA)
Synbiotic 2000(商標)は、Medipharm(Des Moines, Iowa)によって提供された。それは、1包み当たり、4つの乳酸産生桿菌(1010のLactobacillus plantarum 2362、1010のLactobacillus paracasei subsp paracasei 19、1010のLeuconostoc mesenteroides 32-77:1e、及び1010のPediococcus pentosaceus 5-33:3)の混合物と、4つの生物活性植物繊維種(イヌリン2.5g;ペクチン2.5g;β-グルカン2.5g及び耐性デンプン2.5g)の混合物とを含有する。それを、強制飼養によって0.05g/用量(2.5g/水30ml、用量0.6ml/マウス)で3カ月間毎日投与した。
【0105】
酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム及び酪酸ナトリウムからなる短鎖脂肪酸は、Fisher Scientific(Fairlawn, NJ)を通じてAcros Organics(Geel, Belgium)から購入した。それらを、強制飼養によって0.2ml(150mM SCFA(各SCFAが50mM)を含有)/日で30日間投与した。
【0106】
プロトコール
テールスニップ分析及びリアルタイムPCR増幅によって、HBx遺伝子の存在について、HBxトランスジェニックマウスを試験した。以前に記載されているように(Arzumanyan A et al., Cancer Res, 2012; 72(22):5912-5920)、ホルマリン固定パラフィン包埋肝臓組織から切断した切片の免疫組織化学染色によって、HBxタンパク質を評価した。この研究のために、3カ月、6カ月及び9カ月の時点の10匹のHBxトランスジェニックマウスの群に、新たに再構成したSynbiotic 2000(商標)を3カ月間毎日強制飼養した。コントロール群には、Synbiotic 2000(商標)に代えてPBSを強制飼養した年齢性別適合HBxトランスジェニックマウスが含まれていた。年齢性別適合HBx陰性同腹仔の群には、Synbiotic 2000(商標)又はPBSを強制飼養した。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)測定(ALT/GPT 50, Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)のために、全てのマウスを眼窩後から定期的に採血し、処置の3カ月後に安楽死させた。各採血の直前にマウスを計量し、安楽死後に肝臓重量を測定した。各肝臓の表面上に見える腫瘍結節を数えた。次いで、各葉由来の肝臓のサンプルを包埋し、切片をH&Eによって染色した。2人が独立してコード下で光学顕微鏡によって各肝臓のスライドを検査し、様々な病変を記録した。全てのマウスの残りの肝臓組織を液体窒素中で急速凍結し、-80℃で保存した。この研究のための動物プロトコールは全て、Temple University Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認された。
【0107】
RNA単離及びcDNA合成
オートクレーブ処理された非使い捨てプローブを備えるハンドヘルドローター-ステーターホモジナイザー(TissueRuptor, Qiagen)を使用して、全てのマウスの凍結肝臓組織サンプルを溶解バッファー(RTL)中でホモジナイズした。次いで、製造業者のプロトコールに従ってRNeasy Mini Kit (Qiagen)を使用して、各サンプル由来の全RNAを抽出した。RNase-Free DNase kit(Qiagen)を使用して、夾雑DNAを除去した。Nanodrop UV-Vis Spectrophotometer(Thermo Scientific)によって各サンプル1μlの吸光度を260及び280nmで読み取って、RNA濃度を測定した。初期組織サンプル30mgから、溶出バッファー(最終容量50μl)中50~1800ng/μlの典型的な収量が得られた。次いで、サンプルを50ng(ηg)/μlの最終濃度に等分し、-80℃で保存した。
【0108】
逆転写は、これらの各サンプル由来の全RNA500ng(ηg)を使用し、提供された製造業者の説明書に従ってRT2 First Strand Kit(Qiagen)を使用して達成した。次いで、qPCRアレイで使用するまで、サンプルを-20℃で保存した。
【0109】
qPCRアレイアッセイ
マイクロウェルでフォーマットされたCustom RT2 Profiler PCR-array(SA Biosciences, Qiagen, Izasa)は、本研究の特定の研究的興味に合った遺伝子のパネルを含んでいた。RT2 SYBR Green Rox qPCR Mastermix(Qiagen)を使用して、cDNAの増幅を実施した。各逆転写サンプルを1:3希釈し、その51μlをマスターミックス550μlに追加した。この反応混合物から、各混合物10μlを各ウェルにロードした。
【0110】
統計分析
コントロールマウスと比較した処置マウスにおける様々な肝病変間の関係を評価するために、カイ二乗検定を使用した。p<0.05の場合に、有意性が得られた。処置マウスとコントロールマウスとの間の腫瘍サイズの差を評価するために、スチューデントt検定を使用した。P<0.05の場合に、有意性が得られた。
【0111】
次に、実験の結果を記載する。
【0112】
慢性肝疾患及びHCCに対するSynbiotic 2000(商標)の効果
HCCの病因は免疫媒介性であること(Feitelson MA et al., Cancer Lett, 2009; 286(1):69-79)、及びSynbiotic 2000(商標)中のプロバイオティクス細菌は抗炎症特性を有し得ることを考慮して、HBxトランスジェニックマウスへのSynbiotic 2000(商標)の給餌がCLDの発症及びそのHCCへの進行を遅らせ又は阻止し得るという仮説を試験するために、実験を設計した。したがって、3カ月、6カ月及び9カ月齢の時点から1群当たり10匹のマウスを3カ月間強制飼養した。処置開始の直前に、及び動物を安楽死させるまで1カ月間隔で、マウスを眼窩後から採血した。次いで、肝臓を摘出し、各葉由来のサンプルをホルマリン固定し、パラフィン包埋した一方、残りの肝臓サンプルを急速凍結した。
【0113】
HBxトランスジェニックマウスは肝炎を発症することを考慮して、ALT酵素活性について、連続血清サンプルを試験した。PBSで処置したほとんどのHBxマウスの平均ALT値は、並行してSynbiotic 2000(商標)で処置した年齢性別適合HBxマウスのものよりも有意に高かった(図1)。3~6カ月齢マウス間では、平均ALT値の差はなかったが(図1A)、6~9カ月齢マウス間では、9~12月齢の処置したマウス間の平均差のように(t=6.78、P<0.001)(図1C)、7.5~9カ月齢間の平均差は有意に異なっていた(t=14.18、P<0.001)(図1B)。これらの知見は、肝疾患が年齢と共に重症及び進行性になるほど、Synbiotic 2000(商標)処置マウスのコントロールと比較した平均ALT値の差が大きくなることを示唆している。しかしながら、これらの場合の多くにおいて、Synbiotic 2000(商標)処置マウスの平均ALT値は、PBS処置マウスと比較して統計的に異なっていたが、ALTの上昇はわずかであり、差の多くは60単位未満の値であったことは強調されるべきである。
【0114】
次いで、3カ月齢、6カ月齢又は9カ月齢から3カ月間処置したHBxマウスにおいて、慢性肝疾患の進行及びHCCの発症に対するSynbiotic 2000(商標)の影響を評価した。6カ月齢時に安楽死させた3カ月齢マウス間では、10匹のPBS処置マウスのうちの5匹(50%)が、門脈周囲性肝炎を有していた一方、これは、10匹のSynbiotic 2000(商標)処置マウスのうちの4匹において観察された(図7)。Symbiotic処置マウスは、PBS処置マウスと比較して少なくかつ一般に軽度の病変を有しているという傾向があったが、これらの差は、統計的に有意ではなかった(図2A)。対照的に、6カ月齢マウス間では、10匹のPBSコントロール全てが、9カ月の時点にそれらの肝臓を評価するまでに、広範囲の異形成の証拠を有していた一方、Synbiotic 2000(商標)処置マウスでは、40%のみが異形成の証拠を有していた。Synbiotic 2000(商標)処置群では、異形成細胞及び異形成性結節が、コントロールマウスと比較して一般に少なかった。重要なことに、Synbiotic 2000(商標)で処置したマウスの半数が、組織学的に正常な肝臓を有していた(図2B図8)。9カ月齢マウスを用いて並行実験を行ったところ、PBS処置マウスの90%がHCC結節を有していた一方、Synbiotic 2000(商標)処置マウスは40%のみがHCCを有していた(図2C)。これらのマウスの多くは、複数の病変型(例えば、肝炎、異形成及び/又はHCC)を有しており、異形成細胞及び多結節性HCCの多発性結節を特徴としていた(図9)。予想通り、並行して処置したHBx陰性マウスは全て、それらの肝臓において有意な病変を示さなかった(データは示さず)。したがって、共生細菌による処置は、異なる年齢のマウス間に存在する肝病変の定性的及び定量的な変化をもたらすと思われた。
【0115】
Synbiotic 2000(商標)を用いた上記観察結果が毒性に関連していたかを決定するために、実験終了時に、全てのマウスを計量した。肝臓も計量した。全ての群のマウスにおいて、Synbiotic 2000(商標)で処置したものはプラセボで処置したものと比較して、体重又は肝臓重量間に統計的な差がなかった。例えば、3カ月間給餌した9カ月齢群間では、プラセボ処置マウスの平均体重は45.3グラムであった一方、Synbiotic 2000(商標)処置マウスの平均体重は49.2グラムであった(t=0.879;P>0.3)。平均肝臓重量は、それぞれ2.62及び2.68グラムであった(t=0.102;P>0.9)。より低年齢のマウスにおいても、同様の結果が観察された(データは示さず)。これらの結果は、3カ月間のSynbiotic 2000(商標)処置に関連する明らかな毒性がないことを示している。
【0116】
本研究室及び他の研究室による以前の研究では、肝内HBx発現と慢性肝疾患の重症度との直接的な相関関係が示された(Jin YM et al., J Viral Hepat, 2001; 8(5):322-30; Feitelson MA et al., J Hepatol, 1993; 17(Suppl. 3):S24-S34; Wang W et al., Hepatology, 1998; 14:29-37; Wang W et al., Cancer Res, 1991; 51:4971-4977)。これが今回該当するか、及びSynbiotic 2000(商標)処置と逆相関するかを試験するために、処置マウス及びコントロールマウスの各群由来の肝臓切片を、免疫組織化学染色によってHBx発現について評価した。3カ月齢マウス間では、散在性の肝細胞又は肝細胞群において、細胞質HBxは弱~中程度であった(+1及び+2)(図10)。より高齢の動物の肝臓では、肝内HBxの存在、頻度及び分布は増加していた(図10)。HBxマウスをSynbiotic 2000(商標)で処置すると、HBx染色はコントロールマウスと比較して減少した(図10図3)。
【0117】
腫瘍原性及び免疫性に関連する選択マーカーの部分発現プロファイル
HCCは慢性炎症の状況で生じること、及びHBxはこの腫瘍型の発症を促進することを考慮して、Synbiotic 2000(商標)が、HCCの病因に寄与し得る選択腫瘍関連シグナル伝達経路及び/又はサイトカインの発現に対して影響を与えるかを決定するために、限定的なPCRアレイ分析を実施した。3カ月齢マウスをSynbiotic 2000(商標)で3カ月間処置し、選択遺伝子の発現プロファイルをPBS処置動物のものと比較したところ、腫瘍形成に関連するマーカーが1.5~3倍アップレギュレーションしていた(図4A)。Synbiotic 2000(商標)処置を6カ月齢マウスに3カ月間施した場合、ほとんどの腫瘍関連マーカーの発現は、試験ではコントロールマウスと比較してアップレギュレーションもダウンレギュレーションもしていなかった(図4B)。注目すべき例外はEGFR(これは、成長を刺激する)であり、Synbiotic 2000(商標)では8倍超ダウンレギュレーションしていた。対照的に、Synbiotic 2000(商標)を9カ月齢マウスに3カ月間与えた場合、ほとんどの腫瘍形成に関連するマーカーは、試験ではプラセボ処置動物と比較して強くダウンレギュレーションしていた(図4C)。これらのマーカーには、ヘッジホッグ経路におけるシグナル伝達分子であるGli1及び2、いくつかのNotchレセプター、TGFβ-1及び2並びにTGFβR1(これらは通常、細胞成長を負にレギュレーションする)、Tcf3(これは、β-カテニンシグナル伝達に重要である)、Akt1(これは、発ガンにおいて構成的に活性化されることが多い)並びにMMP-9及び-10(これらは、転移を促進する)が含まれていた(図4C)。6カ月の時点に安楽死させた3カ月齢マウスの免疫媒介マーカーに関して、ほとんどの免疫マーカーは、試験ではプラセボ処置と比較して2倍以内で上昇も抑制もしていなかった(図4A)。9カ月の時点に安楽死させた6カ月齢マウスにおいて、同様の結果が得られた(図4B)。しかしながら、12カ月の時点に安楽死させた9カ月齢マウス間では、免疫応答関連マーカーは全て、試験ではコントロールマウスと比較して低下していたが(図4C)、これは、HBxに対する免疫応答及び/又はHBxの性質のシフトが、疾患進行に伴う肝臓の変化を誘導したことを示唆している。年齢性別適合トランスジェニック(transgene)陰性同腹仔由来の肝臓においてこの分析を実施したところ、これらのマーカーのレベルに統計的な有意差はなかったが、これは、それらの差が、肝臓に対するHBxの影響の増加に関係しており、加齢に伴う変化によるものではなかったことを示唆している(データは示さず)。
【0118】
短鎖脂肪酸(SCFA)による処置
Synbiotic 2000(商標)中の乳酸産生菌は、SCFAに代謝される豊富なプレバイオティクス栄養源を供給される。SCFAは抗炎症性であることが公知であり、HCCは炎症性成分を有する慢性肝疾患のバックグラウンドで生じるので、SCFAがHCCの病因に対してSynbiotic 2000(商標)と同じ影響を有するかを決定するために、実験を設計した。Synbiotic 2000(商標)の最大の影響は、HCCを発症していた9~12カ月齢マウスで観察されたので、9カ月齢マウスにSFCAを強制飼養によって3カ月給餌し、次いで、病変の存在、頻度及び分布について、それらの肝臓を検査した。12カ月齢のSCFA処置マウスから肝臓を摘出したところ、肝臓表面上の腫瘍は、PBS処置マウスでは、SCFA処置マウスと比較して多くかつ大きかった(図5)。各葉から顕微鏡用切片を調製し、腫瘍サイズを再び評価したところ、存在する腫瘍の52%が小さかった一方(直径<0.5cm)、32%は大きかった(直径>1cm)。対照的に、プラセボ処置マウスでは、29%のみが小さかったが、50%は大きいと考えられた(図6;X2=4.59、P<0.05)。これは、2つのマウス群における大きな腫瘍:小さな腫瘍の比にも反映される。プラセボ処置マウスでは、比は1.75であったが、SCFA処置マウスでは、比は0.62にシフトしており、これは、SCFAが大きな腫瘍の発生を部分的に阻止したことを示唆している。全てのマウスにおいて、腫瘍形態は、腫瘍サイズとは無関係に、未分化HCCに特徴的なものであった(図6D)。
【0119】
特にHBVが風土病である発展途上国では、HCCは、重大な公衆衛生問題である。それは、ほとんどの症例の後期に診断されるので、この腫瘍型は処置困難である。これは、早期ガン又は前ガン病変を有する患者を処置するために使用され得る介入戦略の開発及び適用に対する強い理論的根拠を提供する。本明細書の結果は、選択乳酸菌又はそれらのSCFA代謝産物の混合物による3カ月間の処置でさえ、HBxトランスジェニックマウスにおいて出現するHCC結節の数及びサイズが有意に減少することを実証している。
【0120】
HBxトランスジェニックマウスは、年齢と共に肝病変の進行性発症を経験し、最終的には10カ月までにHCCが出現する(Yu DY et al., J Hepatol, 1999; 31:123-132)。6~9カ月齢からのSynbiotic 2000(商標)によるマウスの処置は、異形成の発生率を大きく減少させた一方(図2B)、9~12カ月齢から処置したマウスは、HCCの発生率が有意に減少した(図2C)。異形成は6~9カ月齢の期間に発症し、HCCは9~12カ月に発症することを考慮すると、これらの知見は、Synbiotic 2000(商標)が、慢性肝疾患の前新生物及び腫瘍結節への進行を予防することを示唆している。この解釈は、9カ月齢までに十分に確立した脂肪症及び異形成が、その年齢時に開始したSynbiotic 2000(商標)処置によって影響を受けないという観察結果とも一致する(図2C)。
【0121】
HBxトランスジェニックマウスでは、HBxの肝内レベルは、年齢及び基礎肝病態の重症度と共に増加する(図3A及び3C)。これは、慢性肝疾患を有するヒト及びウッドチャックの両方のキャリアにおけるXタンパク質の発現と進行性慢性肝疾患との間の強い関連性と一致する(Jin YM et al., J Viral Hepat, 2001; 8(5):322-30; Feitelson MA et al., J Hepatol, 1993; 17(Suppl. 3):S24-S34)。HBx活性は、肝臓の炎症性浸潤物内の細胞性免疫応答によって提供される活性酸素種(ROS)の存在下で増強される(Wang JH et al., Biochem Biophys Res Commun, 2003; 310(1):32-9; Lim W et al., J Mol Med (Berl), 2010; 88(4):359-69)。これらの状況下では、HBxは、それ自体のエンハンサー/プロモーター(これもまた、これらのHBxトランスジェニックマウスにおける導入遺伝子の一部である)をトランス活性化し、HBx発現レベルの増加をもたらす。また、少量のHBxがミトコンドリア(mitochrondria)に関連することが公知であり、ミトコンドリアにおいて、それは電子伝達鎖を損傷し、ROSのさらなる蓄積をもたらす(Fatima G et al., J Gen Virol, 2012; 93(Pt 4):706-15)。これに関連して、乳酸産生菌及びそれらのSCFA代謝産物は、炎症反応及びROS生成を制限し得る腸内外の調節性T細胞を刺激することが公知であり(Smith PM et al., Science, 2013; 341(6145):569-73)、それにより、HBxの活性及び肝内レベルが減少する(図3)。これは、Synbiotic 2000(商標)で処置したマウスでは、いくつかの免疫系マーカーがダウンレギュレーションしていた限定的なマイクロアレイ分析の結果とも一致する(図4)。以前の研究では、HBVキャリアにおいて、及び進行性慢性肝疾患を有するHBxトランスジェニックマウスにおいて、肝内ROSが増加していたことが示されている(Ha HL et al., World J Gastroentero, 2010; 16(39):4932-7)。徐々に加齢したマウスにおいて免疫マーカーのサンプリングを評価したところ、Synbiotic 2000(商標)による処置は、最高レベルの肝内ROSを有する最高齢のマウスにおいて、効果(すなわち、これらの免疫マーカーのダウンレギュレーション)が最大であった(図4)。HBxのレベル及び活性は部分的にROS依存性であり、HBxはこれらの動物における腫瘍発生を促すので、これにより、Synbiotic 2000(商標)で処置したマウスにおけるHBx発現の減少(図3図10)と異形成及びHCCの発生率の減少(図8及び図9図2)との間の相関関係を説明することができる。
【0122】
HBxは、肝臓ガン形成に大きく寄与する複数の経路における遺伝子の発現を活性化する。Synbiotic 2000(商標)で処置した9カ月齢マウスにおけるそれらの抑制は、この介入(interventioin)がHBxの腫瘍発生促進能力を部分的に遮断するという仮説を裏付けている(図4)。例えば、Gli1及び2のアップレギュレーションを介したヘッジホッグシグナル伝達のHBx媒介性活性化(Arzumanyan A et al., Cancer Res, 2012; 72(22):5912-5920)は、Synbiotic 2000(商標)によって、それぞれ40倍超及び7倍超強くダウンレギュレーションされる(図4C)。標準的なヘッジホッグ阻害剤GDC-0449によるHBxトランスジェニックマウスの処置もまた、HBxトランスジェニックマウスにおいて出現する腫瘍の数及びサイズを減少させたが(Arzumanyan A et al., Cancer Res, 2012; 72(22):5912-5920)、これは、HCCに対するヘッジホッグシグナル伝達の重要性を強調している。Synbiotic 2000(商標)処置後において、Notchシグナル伝達(これもまた、HBxによってアップレギュレーションされる(Wang F et al., Cancer Lett, 2010; 298(1):64-73))も平均で10倍超低下していた(図4C)。Notchは、胚形成中の細胞運命に寄与するので、発ガンにおけるその再活性化もまた、正常細胞を腫瘍細胞に変換する工程を媒介し得る。Synbiotic 2000(商標)で処置した9カ月齢マウスにおいて20倍超ダウンレギュレーションされるNodalについて、同様の議論が可能である。HCCを発症しているSynbiotic 2000(商標)処置マウスでは、肝臓ガン形成に重要なβ-カテニンのHBx活性化は活性化されない(図4C)。β-カテニンは「幹細胞性」関連タンパク質であること、及びHBxはHCCを促進することを考慮すると、少なくとも部分的には、「幹細胞性」マーカーのアップレギュレーション発現を介して、Synbiotic 2000(商標)によるb-カテニン活性化の阻害は、肝臓における肝幹細胞及び/又はガン幹細胞の拡大を阻止し得る。TGFβシグナル伝達(これもHBxによってアップレギュレーションされる)は、9カ月齢マウスで開始するSynbiotic 2000(商標)処置によって本質的に消滅する(図4C)。HBxはTGFβシグナル伝達を肝細胞成長のネガティブレギュレーターからポジティブレギュレーターにシフトさせることを考慮すると、この経路の阻害は、HBxが腫瘍発生を促進することを部分的に防止するであろう。加えて、Synbiotic 2000(商標)処置がMMP-9(15倍)及びMMP-10(65倍超)を強く阻害したという事実(図4C)(さもなければ、これらはHBxによってアップレギュレーションされ(Liu LP et al., Cancer Invest, 2010; 28(5):443-51; Sze KM et al., Hepatology, 2013; 57(1):131-9)、転移によるガンの拡大を促進する)は、この処置アプローチが、肝臓の病変が異形成及びHCCに進行するのを阻止し得るさらなる経路を示唆している。
【0123】
ROSの存在下でHBxによって活性化されるNF-κBの役割は、肝病態及び関連分子変化に対するSynbiotic 2000(商標)の観察された効果の多くと共通点があると思われる。例えば、肝臓ガン形成では、Notchシグナル伝達のダウンレギュレーションは、NF-κB活性のダウンレギュレーションを伴う(Luo J et al., Int J Oncol, 2013; 42(5):1636-43)。Notchの阻害はまた、β-カテニン活性の阻害をもたらすが(Sun Q et al., Int J Oncol, 2014)、これは、HCCの発症におけるこれらの経路間のクロストークを示唆している。NF-κBのHBx活性化はまた、腫瘍転移を促進するMMP-9の発現及び活性をアップレギュレーションする(Liu LP et al., Cancer Invest, 2010; 28(5):443-51)。興味深いことに、IL-6のHBxアップレギュレーションは、MyD88(及びNF-κB)依存的である(Xiang WQ et al., J Hepatol, 2011; 54(1):26-33)。IL-6がそのレセプターに結合すると、STAT3が活性化(リン酸化)され、次にこれが様々な遺伝子(STAT3それ自体を含む)を活性化する。次いで、非リン酸化STAT3がNF-κBに結合すると、HCCに寄与する選択されたさらなる細胞遺伝子の発現が変化する(Yang J et al., Genes Dev, 2007; 21(11):1396-408)。さらに、TLR3、IL-18、TNFα、TGFβ、MyD88及びIRF3等の炎症メディエーターもまた、NF-κBを介して下流にシグナル伝達するが、これは、Synbiotic 2000(商標)処置によって作られる抗炎症環境が、これらの分子を介した発現及び/又はシグナル伝達を減少させると予想されるであろうことを示唆しており、これが、これらのマウスにおいて起こっていると思われることである(図4C)。TLR3及びIL-18レベルは6倍減少しており、TNFα及びMyD88は3倍減少しており、TGFβは5倍超減少しており、IRF3はほぼ4倍減少している。これらの知見は、ROSの減少及びそれに続くNF-κBの不活性化が、ガン化学予防の重要な戦略であり得ることを示唆している。
【0124】
SCFAは、エフェクター細胞及び調節性T細胞の両方へのT細胞分化を促進して、免疫性又は免疫寛容のいずれかを促進する、乳酸産生菌の主要代謝産物である(Park J et al., Mucosal Immunol, 2014)。本研究では、寛容が優先されると思われる。SCFA処置は、HCCの予防におけるSynbiotic 2000(商標)処置の結果を再現した(図5及び6)。酪酸塩の投与は、化学的に誘発された大腸炎の解消を支援し(Smith PM et al., Science, 2013; 341(6145):569-73; Celasco G et al., Biomed Rep, 2014; 2(4):559-563)、DEN誘発性HCCを部分的に阻止した一方(Kuroiwa-Trzmielina J et al., Int J Cancer, 2009; 124(11):2520-7; de Conti A et al., J Nutr Biochem, 2012; 23(8):860-6)、プロピオン酸塩(proprionate)は、定着腫瘍の成長を軽減することがマウスモデルにおいて示されている(Bindels LB et al., Br J Cancer, 2012; 107(8):1337-44)。したがって、SCFAは、腫瘍の発生及び進行の阻止に有益であり得る。SCFAの抗炎症特性は、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)及びHDACiに結合することによって、それらの機能を反映し得る(Tan J et al., Adv Immunol, 2014; 121:91-119)。ヘッジホッグ及びWntシグナル伝達のHBx活性化はGPCR関連経路(GCPRが伸縮する(Smoothened and Frizzled)場所)を介して起こることを考慮すると(Dorsam RT et al., Trends Pharmacol Sci, 2013; 34(4):226-32)、SCFAによるGPCRシグナル伝達の変化は、他のガンの場合と同様に、HBxによって活性化されるシグナル伝達を変化させるか又は部分的に遮断し得る可能性がある。加えて、HBxがHDAC発現を活性化し(Tian Y et al., Mol Cell Biol, 2013; 33(15):2810-6)、SCFAがHDACiとして作用するという知見は、発ガンに寄与する重要な経路がSCFAによって遮断され得ることを示唆している。最後に、処置によるHBx発現の減少(図3)はまた、他のエピジェネティックな遺伝子発現変化(例えば、DNA及びタンパク質のメチル化、タンパク質リン酸化、ユビキチン化、SUMO化、並びに発ガンに寄与する他の翻訳後修飾)を媒介するHBxの能力を抑制し得るので(Mann DA, Hepatology, 2014)、Synbiotic 2000(商標)及びSCFA処置の影響が上記機構をはるかに超えるものであり得ることを考慮することが重要である。
【0125】
本明細書で引用されるそれぞれの及びあらゆる特許、特許出願及び刊行物の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0126】
特定の実施態様に関して本発明を開示したが、当業者であれば、本発明の真の思想及び範囲から逸脱せずに、本発明の他の実施態様及び変形を考案し得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、全てのこのような実施態様及び同等な変形を含むと解釈されることを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-01-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における膵臓ガンの発症を予防し又は遅延させるための医薬組成物であって、少なくともつの短鎖脂肪酸を含む医薬組成物
【請求項2】
前記医薬組成物が2つの短鎖脂肪酸を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物が3つの短鎖脂肪酸を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
少なくとも2つの短鎖脂肪酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、吉草酸、イソカプロン酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸及びピルビン酸、又はその薬学的に許容し得る塩からなる群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項5】
少なくとも2つの短鎖脂肪酸が、酢酸、酪酸、及びプロピオン酸、又はその薬学的に許容し得る塩からなる群より選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項7】
前記医薬組成物を第2の治療剤と組み合わせて投与する、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項8】
経口投与される、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項9】
食品又は飲料と共に投与される、請求項に記載の医薬組成物
【請求項10】
被験体における膵臓ガンを処置するための医薬組成物であって、少なくともつの短鎖脂肪酸を含む医薬組成物
【請求項11】
前記医薬組成物が2つの短鎖脂肪酸を含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物が3つの短鎖脂肪酸を含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
少なくとも2つの短鎖脂肪酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、吉草酸、イソカプロン酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸及びピルビン酸、又はその薬学的に許容し得る塩からなる群より選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
少なくとも2つの短鎖脂肪酸が、酢酸、酪酸、及びプロピオン酸、又はその薬学的に許容し得る塩からなる群より選択される、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む、請求項10に記載の医薬組成物
【請求項16】
前記医薬組成物を第2の治療剤と組み合わせて投与する、請求項10に記載の医薬組成物
【請求項17】
経口投与される、請求項10に記載の医薬組成物
【請求項18】
食品又は飲料と共に投与される、請求項10に記載の医薬組成物
【請求項19】
被験体における膵臓ガンの発症を予防し又は遅延させるためのキットであって、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、酪酸、イソ吉草酸、吉草酸、イソカプロン酸、カプロン酸、乳酸、コハク酸及びピルビン酸、又はその薬学的に許容し得る塩からなる群より選択される少なくともつの短鎖脂肪酸を含む組成物を含有する、キット。
【請求項20】
少なくとも2つの短鎖脂肪酸が、酢酸、酪酸、及びプロピオン酸、又はその薬学的に許容し得る塩からなる群より選択される、請求項19に記載のキット。
【外国語明細書】