(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027230
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】丸鋸用ガイド装置
(51)【国際特許分類】
B27B 9/04 20060101AFI20230221BHJP
B27G 19/04 20060101ALI20230221BHJP
B23D 47/02 20060101ALI20230221BHJP
B23D 59/00 20060101ALI20230221BHJP
B43L 1/04 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
B27B9/04
B27G19/04 Z
B23D47/02
B23D59/00
B43L1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196675
(22)【出願日】2022-12-08
(62)【分割の表示】P 2022566134の分割
【原出願日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2022/015968
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021093947
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521243872
【氏名又は名称】渡▲辺▼ 二朗
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】渡▲辺▼ 二朗
(57)【要約】
【課題】被加工物を載せる作業台が存在しない場合でもガイド機能の存在下で確実に切断ができる丸鋸用ガイド装置を提供する。
【解決手段】丸鋸用ガイド装置2Aは、長手方向一端側に鋸刃34を沿わせるためのガイド端4を有するベース部材6と、角材30の端面30cに引っ掛ける係止爪8aを有するスケール8を進退自在に備えた巻尺10と、ハンドル20とを有している。ベース部材6の長手方向の中央部は細幅の把持部16となっており、巻尺10はハンドル20のX2方向の端部に収納されている。係止爪8aを角材30の端面30cに引っ掛けて所定寸法丸鋸用ガイド装置2Aを移動させれば、ガイド端4が切断位置となる。この場合、ハンドル20の貫通部18から指を通して把持部16で角材30とベース部材6とを一体に把持すれば、作業台がなくても電動丸鋸32を支持面26に載せて鋸刃34をガイド端4に沿わせることにより、正確に切断できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向一端側に鋸刃を沿わせるためのガイド端を有し、被加工物の表面に宛がわれるベース部材と、
前記ベース部材の長手方向他端側に設けられ、前記被加工物の端面に引っ掛ける係止部を有するスケールを進退自在に備えた巻尺と、を有し、
前記被加工物の端面に前記係止爪を引っ掛けた状態で前記ベース部材を移動させることにより、前記スケールの目盛りに基づいた所望の加工位置に前記ガイド端を設定可能な丸鋸用ガイド装置であって、
前記スケールの目盛りの値は、前記ガイド端から前記目盛りを読む計測点までの長さ寸法に等しい値から開始されている
ことを特徴とする丸鋸用ガイド装置。
【請求項2】
前記ベース部材の前記一端側と他端側との間に、前記長手方向と直交する方向の幅が狭い把持部が設けられていると共に、
前記ベース部材の前記長手方向と直交する方向における前記把持部側に、前記長手方向に延びて前記被加工物の前記表面に直角な側面に沿うガイド部材を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の丸鋸用ガイド装置。
【請求項3】
前記ベース部材の前記長手方向における前記ガイド端よりも内方に、前記ガイド端に平行で丸鋸のハウジングを沿わせる段差縁が設けられ、前記ガイド端と前記段差縁との間は前記ハウジングを載せる支持面としてなることを特徴とする請求項2に記載の丸鋸用ガイド装置。
【請求項4】
前記支持面が、前記ハウジングの前記長手方向における幅を超える幅を有し、
使用前に前記鋸刃で余分な寸法を切断されることにより、使用する鋸の種類に応じた寸法となる
ことを特徴とする請求項3に記載の丸鋸用ガイド装置。
【請求項5】
前記ベース部材の前記長手方向と直交する方向における前記把持部と反対側にも前記ガイド部材が設けられ、
前記各ガイド部材のうち一方を使用する際に他方は支障がないように退避可能に設けられている
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の丸鋸用ガイド装置。
【請求項6】
前記ベース部材における前記把持部の上面側に、指を通す貫通部を形成する取っ手部材が設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の丸鋸用ガイド装置。
【請求項7】
前記取っ手部材の前記他端側に、前記巻尺を着脱自在に収納する巻尺収納部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の丸鋸用ガイド装置。
【請求項8】
前記取っ手部材の前記一端側の端と前記ベース部材の前記段差縁との間の寸法が、前記丸鋸のモータが前記取っ手部材に干渉しないように設定されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の丸鋸用ガイド装置。
【請求項9】
前記取っ手部材に、メモ書き部が設けられている
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の丸鋸用ガイド装置。
【請求項10】
前記メモ書き部がホワイトボードである
ことを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一項に記載の丸鋸用ガイド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸鋸で材木等の被加工物を切断したり切り込みを入れる際に用いる丸鋸用ガイド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば垂木を所定の長さに切断する場合、作業台に垂木を載せた状態で木口に巻尺の係止爪を引っ掛けて所定の寸法位置を計り、その位置に鉛筆等で印を付けた後、L字定規で垂木の長手方向と直交する方向に切断ラインを引き、この切断ラインに沿って電動丸鋸や柄付き鋸で切断することが行われている。切断作業を複数回行う場合には同様の作業を繰り返さなければならず、煩わしさを否めなかった。
【0003】
この問題に対処すべく、特許文献1には、巻尺を内蔵した鋸ガイドが提案されている。この鋸ガイドは角材の側面に沿うガイドフェンスと、巻尺と反対側に設けられ、角材の長手方向と直交するガイドプレートと、を備えており、木口に巻尺の係止爪を引っ掛けて本体を所定寸法移動させた後、ガイドプレートの表面に沿って鋸で切断するだけで作業が完了するものである。すなわち、所定の寸法位置を計って印を付け、切断ラインを引く作業が不要となり、巻尺も一体に備えられているのでその取扱いも管理する必要がない。
【0004】
特許文献2には、同様の原理に基づく電動工具の案内装置が提案されている。この案内装置は、L字形の案内板の短手部から巻尺を引き出し、長手部の側縁に電動丸鋸の倣い部(ハウジング側縁)を沿わせるもので、平板を木口からの所定寸法位置で切断するのに適した構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0201965号明細書
【特許文献2】実開平4-13301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、作業現場によっては被加工物を載せる作業台がなく、例えば垂木をその場で所定寸法に切断しなければならない状況が存在する。このような場合、特許文献1の鋸ガイドでは床面に垂木を置いてその上に鋸ガイドを載せ、所定寸法位置に移動した後鋸で切断することになる。しかしながら鋸刃が床面に達するため、鋸ガイドを載せたまま垂木を床面から浮かせた状態で切断する必要があるが、該鋸ガイドは単にブロック状の外郭を有しているだけであるので、所定位置に安定に垂木と共に片手で保持することは困難である。床面に置いた状態である程度切り込みを入れた後に鋸ガイドを外し、垂木だけを持って切断することも考えられるが、二度手間となり鋸ガイド本来の利点を活かせない。また、垂木を持っての最終的な切断はガイドプレートが存在しない状態での切断となるために、切断位置がずれる可能性もある。特許文献2の案内装置においても同様のことが言える。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被加工物を載せる作業台が存在しない場合でもガイド機能の存在下で確実に切断ができる丸鋸用ガイド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の丸鋸用ガイド装置(2A)は、長手方向一端側に鋸刃(34)を沿わせるためのガイド端(4)を有し、被加工物(30)の表面に宛がわれるベース部材(6)と、ベース部材(6)の長手方向他端側に設けられ、被加工物(30)の端面(30c)に引っ掛ける係止爪(8a)を有するスケール(8)を進退自在に備えた巻尺(10)と、を有し、被加工物(30)の端面(30c)に係止爪(8a)を引っ掛けた状態でベース部材(6)を移動させることにより、スケール(8)の目盛り(8b)に基づいた所望の加工位置にガイド端(4)を設定可能な丸鋸用ガイド装置であって、スケール(8)の目盛り(8b)の値は、ガイド端(4)から目盛り(8b)を読む計測点(24c)までの長さ寸法(L1)に等しい値から開始されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る丸鋸用ガイド装置によれば、スケールの目盛りの値は、ガイド端から目盛りを読む計測点までの長さ寸法に等しい値から開始されていることで、計測点におけるスケールの目盛りの値が切断位置で切断される被加工物の長さ寸法の値となる。したがって、計測点におけるスケールの目盛りの値を読むだけで、切断する被加工物の長さ寸法(切断寸法)を迅速かつ正確に設定することが可能となる。
【0010】
また、上記の丸鋸用ガイド装置(2A)では、ベース部材(6)の一端側(12a、14a)と他端側(12b、14b)との間に、長手方向と直交する方向の幅が長手方向の両側よりも狭い把持部(16)が設けられていると共に、ベース部材(6)の長手方向と直交する方向における把持部(16)側に、長手方向に延びて被加工物(30)の表面(30a)に直角な側面(30b)に沿うガイド部材(24)を有していてもよい。これによれば、被加工物がベース部材よりも幅の狭いものであれば被加工物をベース部材の把持部と共に把持することができる。したがって、被加工物を載せる作業台がない状況でも手で持った状態で切断等の加工を行うことができ、現場における加工作業の自由度を向上させることができる。また、被加工物の側面にガイド部材を当てて丸鋸用ガイド装置を移動することにより、移動を安定させることができるとともに、被加工物に対するガイド端の直交の精度を向上させることができる。
【0011】
また、上記の丸鋸用ガイド装置(2A)では、ベース部材(6)の長手方向におけるガイド端(4)よりも内方に、ガイド端(4)に平行で丸鋸(32)のハウジング(36)を沿わせる段差縁(28)が設けられ、ガイド端(4)と段差縁(28)との間はハウジング(36)を載せる支持面(26)としてもよい。これによれば、段差縁にハウジングを沿わせて支持面に丸鋸を載せることで安定に且つガイド端に鋸刃が沿った正確な加工を行うことができる。
【0012】
また、上記の丸鋸用ガイド装置(2A)では、支持面(26)が、ハウジング(36)の長手方向における幅を超える幅を有し、使用前に鋸刃(34)で余分な寸法を切断されることにより、使用する丸鋸の種類に応じた寸法となるようにしてもよい。これによれば、種類が異なる丸鋸であっても適正な支持面を得ることができ、丸鋸の種類に応じて丸鋸用ガイド装置を買い替える必要がない。
【0013】
また、上記の丸鋸用ガイド装置(2B)では、ベース部材(40)の長手方向と直交する方向における把持部(42)と反対側にもガイド部材(46)が設けられ、各ガイド部材(44、46)のうち一方を使用する際に他方は支障がないように退避可能に設けられていてもよい。これによれば、両方のガイド部材を必要に応じて任意に使い分けることができる構成の利点を活かしつつ、一方が邪魔になるケースでは支障がないように該一方のガイド部材を退避させることができる。
【0014】
また、上記の丸鋸用ガイド装置(2A)では、ベース部材(6)における把持部(16)の上面側に、指を通す貫通部(18)を形成する取っ手部材(20)が設けられていてもよい。これによれば、丸鋸用ガイド装置を容易に移動させることができて使用性の向上を図ることができるとともに、貫通部で指が拘束されることによりベース部材と共に被加工物を把持する場合の把持状態を安定させることができる。
【0015】
また、上記の丸鋸用ガイド装置(2A)では、取っ手部材(20)の他端側に、巻尺(10)を着脱自在に収納する巻尺収納部(22)が設けられていてもよい。これによれば、スケールの直線性が損なわれて壊れやすい巻尺の交換を容易に行うことができる。
【0016】
また、上記の丸鋸用ガイド装置(2A)では、取っ手部材(20)の一端側の端とベース部材(6)の段差縁(28)との間の寸法が、丸鋸(32)のモータ(38)が取っ手部材(20)に干渉しないように設定されていてもよい。これによれば、丸鋸をスムーズに移動させることができるので、切断等の加工を容易且つ正確に行うことができる。
【0017】
また、上記の丸鋸用ガイド装置(2A)では、取っ手部材(20)に、メモ書き部(20a)が設けられていてもよい。これによれば、作業中に生じる記憶すべき寸法等のメモを書き留めることができ、従来手のひらや手の甲に書いていた面倒さやそれを消すための手洗いの無駄を無くすことができる。
【0018】
また、上記の丸鋸用ガイド装置(2A)では、メモ書き部(20a)がホワイトボードであってもよい。これによれば、メモの書き消しを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、計測点におけるスケールの目盛りの値を読むだけで、切断する被加工物の長さ寸法(切断寸法)を迅速かつ正確に設定してその長さに切断することが可能となる。また、被加工物がベース部材よりも幅の狭いものであれば被加工物を載せる作業台が存在しない場合でもガイド機能の存在下で確実に切断や切り込みができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る丸鋸用ガイド装置の斜視図である。
【
図2】
図1で示した丸鋸用ガイド装置の反対側から見た分解斜視図である。
【
図3】
図1で示した丸鋸用ガイド装置の巻尺を有する側の要部背面図である。
【
図4】
図1で示した丸鋸用ガイド装置の平面図である。
【
図6】
図1で示した丸鋸用ガイド装置の使用における角材を切断する前の状態を示す斜視図である。
【
図7】
図6に示す状態から電動丸鋸で角材を切断する状態を示す上側から見た斜視図である。
【
図8】第2実施形態に係る丸鋸用ガイド装置の平面図である。
【
図9】
図8で示した丸鋸用ガイド装置の要部分解斜視図である。
【
図10】
図8で示した丸鋸用ガイド装置の使用例を示す
図5相当図で、
図10Aは共に使用位置に設定されたガイドフェンスの一方を使用する例を示す図、
図10Bはベース部材よりも幅の大きい平板に対して一方のガイドフェンスを退避させる使用例を示す図である。
【
図11】第3実施形態に係る丸鋸用ガイド装置の平面図である。
【
図12】第4実施形態に係る丸鋸用ガイド装置の巻尺を有する側の要部背面図である。
【
図13】第5実施形態に係る丸鋸用ガイド装置の巻尺を有する側の要部背面図である。
【
図14】第6実施形態に係る丸鋸用ガイド装置の巻尺を有する側の要部背面図である。
【
図15】第7実施形態に係る丸鋸用ガイド装置の斜視図である。
【
図16】第7実施形態に係る丸鋸用ガイド装置の使用方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1乃至
図7を参照して第1実施形態を説明する。
図1は本実施形態に係る丸鋸用ガイド装置2Aを右利き使用での正面側から見た斜視図、
図2は背面側から見た分解斜視図である。
図1及び
図2に示すように、丸鋸用ガイド装置2Aは、長手方向(矢印X方向)の一端側(X1側)に丸鋸32の鋸刃34(
図7参照)を沿わせるためのガイド端4を有し、被加工物30の表面に宛がわれるベース部材6と、ベース部材6の長手方向他端側(X2側)に設けられ、被加工物である角材30(
図5、
図6参照)の端面30cに引っ掛ける係止爪(係止部)8aを有するスチール製のスケール8を進退自在に備えた巻尺10と、を有し、角材30の端面30cに係止爪8aを引っ掛けた状態でベース部材6をX1方向に移動させることにより、スケール8の目盛り8bに基づいた所望の加工位置にガイド端4を設定可能となっている。すなわち、スケール8の引き出された寸法にベース部材6の長手方向の実質長さを足した寸法が所望の加工位置となる。換言すれば、角材30に対する所望の加工寸法からベース部材6の実質長さを引いた寸法分スケール8が引き出されるようにベース部材6をX1方向に移動させれば、そのときのガイド端4の位置が所望の加工位置となる。ベース部材6の実質長さとは、スケール8の重複寸法を引いた長さである。
【0023】
本実施形態では、スケール8に表示された目盛り8bの値は、係止爪8aの位置(先端部)の値がベース部材6の長手方向の実質長さであるガイド端4から計測点(目盛り8bを読む位置)24cまでの長さL1(
図4参照)に等しい値となっている。すなわち、スケール8の目盛り8bの値は、ガイド端4から計測点24cまでの長さL1に等しい値から開始されている。これにより、引き出されたスケール8の目盛り8bにおける計測点24cの値を読めば、その値が角材30の加工寸法(角材30における係止爪8aが引っ掛けられた端面30cから切断面までの長さ寸法)となる。
【0024】
図2に示すように、ベース部材6は、平板状のベース本体12と、該ベース本体12よりも薄肉の底板14とを重ねて結合した構成を有している。ベース本体12の一端側12aと他端側12bとの間には、長手方向(X方向)と直交する方向(Y方向)の幅が狭い(長手方向の両側の幅よりも狭い)把持部12cが形成されている。底板14の一端側14aと他端側14bとの間にも同様に、長手方向(X方向)と直交する方向(Y方向)の幅が狭い(長手方向の両側の幅よりも狭い)把持部14cが形成されている。把持部12cと把持部14cとの重ね合わせにより、細幅の把持部16(
図1参照)が構成されている。
【0025】
ベース部材6における把持部16の上面には、指を通す貫通部18をベース本体12との間で形成する取っ手部材としてのハンドル20が固定されている。ハンドル20はコ字状のブロック形状をなし、各角部は握り易くするために面取りされている。また、ハンドル20の上面には、ハッチングで表示するように、メモ書き部としてのホワイトボード20aが埋設状態に設けられており、加工作業中に生じるメモすべき寸法等を書いたり消したりすることができるようになっている(
図1以外の図では省略)。本実施形態における貫通部18は、親指を除く4本の指を通す開口度となっている。
【0026】
ハンドル20の他端側(X2側)には、巻尺10を着脱自在(交換自在)に収納する巻尺収納部22の主要部22aが形成されており、ベース本体12と底板14には主要部22aに連通する凹部22b、22cが形成されている。凹部22b、22cのX2方向側の開口端は狭くなっており、巻尺10はベース部材6の底面側から収納された後不図示のロック機構で下方への抜けを阻止されるとともに、X2方向への抜けを阻止されるようになっている。巻尺10はスケール8を引き出した位置で止めるロック摘み23を有している。
図3に示すように、スケール8は角材30の表面との間に隙間が殆ど無いように、底板14の下面に沿って引き出される。
【0027】
図1及び
図2に示すように、ベース部材6の長手方向と直交する方向における把持部16側には、長手方向に延びて角材30の表面に直角な側面に沿うガイドフェンス(ガイド部材)24が底板14の下面に固定されている。ガイドフェンス24はX2方向でベース部材6よりも若干突出する長さを有しており、突出部分24aはスケール8のガイドとして機能する。
【0028】
図2に示すように、底板14の一端側はベース本体12よりもX1方向へ寸法E分長く伸びており、この部分は後述する電動丸鋸のハウジング(筐体)を載せる支持面26としてなる。支持面26のX1方向端がガイド端4となっている。ベース本体12のX1方向の端縁は、支持面26から上方に立ち上がりガイド端4に平行な段差縁28としてなる。すなわち、ベース部材6の長手方向におけるガイド端4よりも内方に、ガイド端4に平行で電動丸鋸のハウジングを沿わせる段差縁28が設けられ、ガイド端4と段差縁28との間は電動丸鋸のハウジングを載せる支持面26としてなる。
【0029】
図4に示すように、ベース本体12の一端側12aのY方向の幅W1は、他端側12bのようにガイド端4の形成に関係しないために他端側12bの幅W2よりも狭くなっており、把持部16の幅W3は一端側12aの幅W1よりもさらに狭くなっている。このように把持部16を細幅とすることにより、
図5に示すように、角材(垂木)30の幅W4がベース部材6の最大幅(W2)よりも狭い場合には、貫通部18に左手LHの親指F1以外の人差し指等F2を通して親指F1との間で角材30をベース部材6と共に把持することができる。すなわち、
図6に示すように、角材30の表面30aに直角な側面30bにこれに平行なガイドフェンス24を突き当て、スケール8の係止爪8aを角材30の端面(木口面)30cに係止した状態で、丸鋸用ガイド装置2Aを角材30の長手方向に沿って移動させることで、ガイド端4が所望の加工位置(ここでは切断位置)に来るようにする。この際、計測点24cにおけるスケール8の目盛り8bの値が切断後の角材30の長さ寸法となるので、当該値が所望の切断寸法となるようにセットする。このように、本実施形態の丸鋸用ガイド装置2Aでは、計測点24cにおけるスケール8の目盛り8bの値が切断位置で切断される角材30の長さ寸法の値となっているので、計測点24cにおけるスケール8の目盛り8bの値を読むだけで、直ちに切断する角材30の長さ寸法を設定することが可能となる。その後、左手で把持部16を介して角材30をベース部材6と共に把持すれば、角材30と丸鋸用ガイド装置2Aとが一体化され、ガイド端4により切断位置が自動的に設定されて位置ずれしない状態となる。
【0030】
この状態で
図7に示すように、右手RHに持った電動丸鋸(丸鋸)32をその鋸刃34がガイド端4に沿うようにY方向に移動させれば角材30を所望の位置(所望の長さ寸法)で正確に切断することができる。この場合、角材30は作業台に載せる必要がなく、空中で手に持った任意の姿勢で容易に切断することができる。電動丸鋸32のハウジング36の側端36aを段差縁28に突き当てると、鋸刃34がガイド端4に沿うように支持面26の長さEが設定されている。ハンドル20の一端側の端とベース部材6の段差縁28との間の寸法W5は、電動丸鋸32のモータ38がハンドル20に干渉しないように設定されている。ガイドフェンス24は丸鋸用ガイド装置2Aの移動を安定化させるとともに、角材30に対するガイド端4の直交性の精度向上に寄与する。
【0031】
上記の右利き基準の構成を左利きで使用する場合には、ハンドル20の反対側から右手の指を貫通部18に通して角材30をベース部材6と共に把持し、左手に持った電動丸鋸32の鋸刃34をガイド端4に沿って移動させる操作となる。勿論、ベース部材6とハンドル20の形状等を逆態様として左利き基準の構成としてもよい。ハンドル20は必ずしも必要ではないが、丸鋸用ガイド装置2Aの取り扱いの利便性を向上できるとともに、貫通部18に挿入された指を位置決めして(拘束して)角材30との一体化を安定させることができる。本実施形態ではベース部材6と共に角材30を把持する例を示したが、ベース部材6と共に把持できないサイズの平板を切断する場合にも特許文献2等の従来品と同様の使用が可能である。この場合、従来品に比べてハンドル20による丸鋸用ガイド装置2Aの移動操作性が向上する。
【0032】
[第2実施形態]
図8乃至
図10を参照して第2実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、既にした構成上及び機能上の説明は適宜省略する。
図8に示すように、本実施形態に係る丸鋸用ガイド装置2Bでは、ベース部材40の長手方向と直交する方向における把持部42側にガイドフェンス(ガイド部材)44が設けられているとともに、把持部42と反対側にもガイドフェンス(ガイド部材)46が設けられている。これらのガイドフェンス44、46は、以下で説明するようにいずれか一方を使用する際に他方は支障がないように退避可能に設けられている。
【0033】
図9に示すように、ベース部材40は、平板状のベース本体48と、該ベース本体48よりも薄肉の底板50とを重ねて結合した構成を有している。符号48a、50aは一端側を、48b、50bは他端側を、48c、50cは把持部を示している。把持部48cと把持部50cとの重ね合わせにより、把持部42(
図8参照)が構成されている。他端側48b、50bの一部48b-1、50b-1はX2方向に突出しており、その重ね合わせ部は第1実施形態におけるガイドフェンス24の突出部分24aと同様の機能を有している。また、他端側48b、50bはY方向の幅が一端側48a、50aと同じになるように延ばされている。厚みの大きいベース本体48の把持部42側と反対側には、ナット部材52が一端側48aに1つ、他端側48bに2つそれぞれ埋設されている。図示しないが、ベース本体48の把持部42側にはナット部材52がX方向の両端部と中央部の3箇所に埋設されている。ガイドフェンス44、46には、ナット部材52に対応する位置に上下方向に延びる長孔54が形成されており、ナット部材52に螺合するネジ部材56でベース部材40に固定されるようになっている。すなわち、各ガイドフェンス44、46は上下方向にスライド自在(上方に退避可能)に設けられている。各ガイドフェンス44、46は共に、丸鋸用ガイド装置2Bの移動を安定化させるとともに、角材30に対するガイド端4の直交性の精度向上に寄与する。
【0034】
図10Aは、各ガイドフェンス44、46を共に使用位置に固定した状態で把持部42側と反対側のガイドフェンス46を使用する例を示している。例えば、角材30の表面30aに直角な側面30bが凹凸を有している場合には、ガイドフェンス46を平面精度が高い反対側の側面30dに当ててベース部材40を移動させる。このように、各ガイドフェンス44、46のうちいずれか一方を状況に応じて任意に使い分けることにより、使用性の向上を図ることができる。
図10Bに示すように、平板58のY方向の幅がベース部材40よりも大きい場合には、一方のガイドフェンス44の使用に支障がないように、他方のガイドフェンス46を上方に退避させて固定する。
【0035】
[第3実施形態]
図11を参照して第3実施形態を説明する。
図2で示した支持面26のX1方向の長さEは、電動丸鋸32の種類によってハウジング36(
図7参照)のX1方向の幅が違うことにより異なる。本実施形態では全ての種類の電動丸鋸32に対応できるように、流通段階では支持面26のX1方向の長さを全ての種類の電動丸鋸32の最大幅E0に設定している。すなわち、使用前の支持面26が、ハウジング36の長手方向(X方向)における幅(長さE)を超える幅(長さE0)を有している。この場合、使用する電動丸鋸32が最大幅E0に対応したものでない場合、使用前にハウジング36の側端36aを段差縁28に当ててY方向に電動丸鋸32を移動させ、鋸刃34で余分な寸法E1を切断する。これにより、使用する電動丸鋸32の鋸刃34に対応したガイド端4を有する支持面26を得ることができる。他の実施形態においても同様に実施することができる。
【0036】
[第4実施形態]
図12を参照して第4実施形態を説明する。係止爪8aを角材30から外すとスケール8はスチール弾性で自動的に巻き戻される。本実施形態ではその都度ロック摘み23を操作する手間を省くために、ハンドル20の上端部に帯板状の弾性体60がネジ62で固定されており、その自由端60aがスケール8の上面に当接してその摩擦力でスケール8の戻りを止めるようになっている。このようにすれば、スケール8の不意の戻りを抑制することができ、スケール8が自動的に巻き戻される度に作業者が角材30の端面30c側(ゼロ寸法位置)に移動しなければならない面倒さを無くすことができ、作業性の向上を図ることができる。他の実施形態においても同様に実施することができる。
【0037】
[第5実施形態]
図13を参照して第5実施形態を説明する。本実施形態では、巻尺収納部22に収容した巻尺10を僅かに傾けた状態で取り付けるように構成している。具体的には、巻尺10を巻尺収納部22内で中心に対して
図13に示す時計回りに角度αだけ回転させた状態で取り付け、その状態を維持できるように図示しない固定具で固定している。これにより、同図に示すように、巻尺10から引き出されるスケール8がベース部材6の下面に対して角度α傾いた状態となり、スケール8がその巻尺10側の根元から先端に向かって次第に下方に延びるように若干傾斜した状態となる。このように構成することで、スケール8の係止爪8aを角材30の端面(木口面)30cに引っ掛ける(係止させる)ことが非常に行い易くなるという効果がある。また、係止爪8aを角材30の端面30cに引っ掛けた状態でベース部材6を移動させてスケール8を巻尺10から引き出す際に、係止爪8aが角材30の端面30cから外れ難くなるという効果もある。なお、角度αは、一例として約5~10度とすることができる。
図13では、巻尺10の傾きを誇張して示している。
【0038】
[第6実施形態]
図14を参照して第6実施形態を説明する。第1実施形態では、スケール8に表示された目盛り8bの値は、係止爪8aの位置(先端部)の値がベース部材6の長手方向の実質長さであるガイド端4から計測点24cまでの長さL1に等しい値となっていたが、本実施形態では、スケール8に表示された目盛り8bの値を係止爪8aの位置(先端部)の値が0となる通常の値とし、その代わりに、スケール8に装着するストッパー部材50を備えている。ストッパー部材50は、スケール8の上下面を挟んで固定するネジなどの固定具51と、角材30の端面(木口面)30cに引っ掛ける(係止させる)ための係止具52とを備えている。このストッパー部材50は、スケール8の長手方向における任意の位置に固定することが可能である。したがって、このストッパー部材50は、係止具52の位置の目盛り8bの値がベース部材6の長手方向の実質長さに等しい値となる位置に固定することで、本実施形態においても、引き出されたスケール8の目盛り8bにおける計測点の値を読めば、その値が角材30の加工寸法(被加工物における係止具52が係止された端面から切断面までの長さ寸法)となる。
【0039】
したがって、本実施形態によれば、巻尺10として、スケール8の先端部の目盛り8bの値が0である市販の巻尺を使用することが可能となるので、丸鋸用ガイド装置の製造コストを低く抑えることができる。また、使用時に巻尺10が故障した場合などは、巻尺10のみを市販品に付け替えることができるので、丸鋸用ガイド装置の耐久性の向上にも資することができる。
【0040】
[第7実施形態]
図15及び
図16を参照して第6実施形態を説明する。本実施形態では、ガイドフェンス24の側面(外側面)に補助目盛り24bの表示を更に設けている。補助目盛り24bは、ベース部材6(ベース本体12)における一端側12a(段差縁28の側)から他端側12b(巻尺10の側)に向かって次第に値が大きくなるように付された長さの表示である。この補助目盛り24bは、ベース本体12における一端側12a(段差縁28)に対応する端部24dの値が支持面26におけるガイド端4と段差縁28との間の長さ寸法L2に等しい値から開始されている。
【0041】
切断する角材30の長さ(切断長さ)がガイド端4から計測点24cまでの長さL1よりも短い場合には、補助目盛り24bを用いて切断する角材30の長さを計測してセットする。すなわち、
図16に示すように、左手LHで角材30をベース部材6と共に把持し、その状態で、角材30の端面30cに対応する位置の目盛り24bが角材30の切断後の長さ寸法の値となるように角材30をセットする。その後、他の実施形態の場合と同様に、電動丸鋸(丸鋸)32をその鋸刃34がガイド端4に沿うように移動させれば、角材30を所望の位置(所望の長さ寸法)で正確に切断することができる。本実施形態によれば、切断する角材30の長さ(切断長さ)がガイド端4から計測点24cまでの長さL1よりも短い場合でも、角材30を所望の長さに迅速かつ正確に切断することが可能となる。
【0042】
上記各実施形態に係る丸鋸用ガイド装置の材質(材料)としては、木質系の材料やプラスチックなどの合成樹脂材料を採用でき、部分的にアルミ合金等の軽金属等を採用することもできる。さらにはこれらの材料のうち2つ以上を組み合わせたものとすることもできる。また、上記各実施形態では電動丸鋸32で板材を切断する例を示したが、電動直刃鋸や手動のノコギリでの切断においても同様に実施することができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、ベース部材6、40を2枚の板材を重ねて形成するようにしたが、合成樹脂で一体成形するようにしてもよい。巻尺10の収納方向は下方側からに限定されず、側面や上方から収納する構成としてもよい。