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特開2023-27231凝固因子に対する免疫寛容を誘導する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027231
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】凝固因子に対する免疫寛容を誘導する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/36 20060101AFI20230221BHJP
   A61K 38/37 20060101ALI20230221BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230221BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230221BHJP
【FI】
A61K38/36
A61K38/37
A61K39/395 W
A61P7/04
A61P37/02
A61K47/68
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022196725
(22)【出願日】2022-12-09
(62)【分割の表示】P 2019529527の分割
【原出願日】2017-12-01
(31)【優先権主張番号】62/429,516
(32)【優先日】2016-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/466,937
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/529,866
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/558,790
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/582,829
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512147244
【氏名又は名称】バイオベラティブ セラピューティクス インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】513284586
【氏名又は名称】スウェディッシュ・オーファン・バイオヴィトラム・アーベー(ペーウーベーエル)
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・デュモン
(72)【発明者】
【氏名】ニシャ・ジャイン
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・リタゲン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】血友病を有する人において免疫寛容を誘導する方法を提供する。
【解決手段】血友病を有するヒトにおいて免疫寛容を誘導する方法における凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の使用であって、(1)該凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量を、免疫寛容を誘導するために十分な期間、該ヒトに投与し、該凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量は、該ヒトにおいて免疫寛容を誘導する;および(2)免疫寛容の誘導後、該凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の漸減レジメンを該ヒトに投与する、前記使用、を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血友病を有するヒトにおいて免疫寛容を誘導する方法における凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の使用であって、
(1)該凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量を、免疫寛容を誘導するために十分な期間、該ヒトに投与し、該凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量は、該ヒトにおいて免疫寛容を誘導する;および
(2)免疫寛容の誘導後、該凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の漸減レジメンを該ヒトに投与する、前記使用。
【請求項2】
FVIIIとFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量は、約50IU/kg~約300IU/kgである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
血友病を有するヒトにおいて免疫寛容を誘導する方法における凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の使用であって、該キメラタンパク質の約200IU/kgを、免疫寛容を誘導するために十分な期間、該ヒトに投与し、該ヒトは、該凝固因子に対するインヒビターを発生させ、該凝固因子に対する1つまたは複数の過去の免疫寛容療法に反応していない、前記使用。
【請求項4】
免疫寛容後、ヒトに凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の漸減レジメンを投与する、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質は、第VIII因子-Fc(FVIII-Fc)または第IX因子-Fc(FIXFc)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質は、免疫寛容が観察されるまで投与され、ヒトにおける阻害性抗体の力価が約0.6BU未満である場合に免疫寛容が観察される、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
漸減レジメンは、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の約50IU/kg~約100IU/kgの漸減用量を投与する工程を含む、請求項1、2、および4~6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
漸減用量は、1日1回、2日毎に1回、または1週間に3回投与される、請求項1、2、および4~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
漸減用量は、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約9週間、少なくとも約10週間、少なくとも約11週間、少なくとも約12週間、少なくとも約13週間、少なくとも約14週間、少なくとも約15週間、少なくとも約16週間、少なくとも約17週間、少なくとも約18週間、少なくとも約19週間、少なくとも約20週間、少なくとも約21週間、少なくとも約22週間、少なくとも約23週間、少なくとも約24週間、少なくとも約25週間、少なくとも約26週間、少なくとも約27週間、少なくとも約28週間、少なくとも約29週間、少なくとも約30週間、少なくとも約31週間、または少なくとも約32週間投与される、請求項1、2、および4~8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
漸減レジメンは、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の約50IU/kgの漸減用量を、免疫寛容後1週目から6週目まで1日1回投与する工程、または該キメラタ
ンパク質の約100IU/kgの漸減用量を、免疫寛容後1週目から6週目まで1日1回投与する工程を含む、請求項1、2、および4~9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
漸減レジメンは、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の約50IU/kgもしくは約100IU/kgの漸減用量を、免疫寛容後6週目から12週目まで2日毎に1回投与する工程、または該キメラタンパク質の約50IU/kgもしくは約100IU/kgの漸減用量を、12週目から16週目まで2日毎に1回投与する工程をさらに含む、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の予防用量を、漸減レジメン後に投与する工程をさらに含む、請求項1、2、および4~11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
寛容が起こるまでの期間が、約24週間未満、約23週間未満、約22週間未満、約21週間未満、約20週間未満、約19週間未満、約18週間未満、約17週間未満、約16週間未満、約15週間未満、約14週間未満、約13週間未満、約12週間未満、約11週間未満、約10週間未満、約9週間未満、約8週間未満、約7週間未満、約6週間未満、約5週間未満、約4週間未満、約3週間未満、約2週間未満、または約1週間未満である、請求項1~12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
FVIIIが、Bドメイン欠失FVIIIを含む、請求項5~13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の投与によって、凝固因子単独による処置後のヒトにおいて寛容が起こるまでの期間と比較して、ヒトにおいて寛容が起こるまでの期間が短縮される、請求項1~14のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その各々の全体を参照によって本明細書に組み入れる、2016年12月2日に提出された米国特許仮出願第62/429,516号、2017年3月3日に提出された同第62/466,937号、2017年7月7日に提出された同第62/529,866号、2017年9月14日に提出された同第62/558,790号、および2017年11月7日に提出された同第62/582,829号の恩典を主張する。
【0002】
本開示は、全般的に止血障害の治療薬の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
血友病は、凝固タンパク質をコードする遺伝子、特にFVIII活性の欠乏を引き起こす(血友病A)第VIII因子(FVIII)遺伝子の変異および/もしくは欠失、またはFIX活性の欠乏を引き起こす(血友病B)第IX因子遺伝子の変異および/もしくは欠失によって引き起こされるX連鎖出血障害である(例えば、非特許文献1を参照されたい)。疾患は、特発性出血および外傷後の過剰な出血を特徴とする。血友病の処置は、特発性出血を予防するためにFVIIIおよび/またはFIX活性の回復を標的とする代替治療による(例えば、非特許文献2を参照されたい)。
【0004】
凝固因子補充療法は、血友病の主要な処置である。しかし、重度の血友病Aを有する患者のほぼ30%を含むかなりの割合の血友病患者が、凝固因子産物に対するインヒビターを発生させることから、これらの患者におけるその効能は大きく低減する。免疫応答は、輸注された凝固因子、例えばFVIII補充療法に向けられるT細胞依存性またはB細胞媒介性免疫応答である。
【0005】
重度の血友病を有する人は、インヒビターを発生させる可能性がより高いが、軽度または中等度の血友病Aを有する人のおよそ5~8%がインヒビターを発生させる。凝固因子インヒビターの発生は、抗体が、輸注された凝固因子濃縮物のみならず、体が天然に産生しているいかなる少量の凝固因子タンパク質も阻害し得ることから、致命的であり得る。したがって、現にインヒビターを発生させている軽度または中等度の血友病を有する人は、実際には重度の血友病を有する(<1%循環因子)。
【0006】
血友病Bを有する人のおよそ2~3%がインヒビターを発生させる。血友病Bを有する人におけるインヒビターは、血友病Aより一般的ではないが、血友病Bインヒビターを有する患者の約半数が、輸注した第IX因子に対して生命を脅かし得るアナフィラキシー反応を発生させることからさらにより難題であり得る。
【0007】
したがって、1つまたは複数の凝固因子に対して既に免疫応答を発生させた人、および過去の免疫寛容療法に反応しなかった人において、免疫寛容を誘導する方法がなおも必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Peyvandi,F.ら、Haemophilia 12:82~89頁(2006年)
【非特許文献2】Mannucci,P.M.ら、N.Engl.J.Med.344:1773~1779頁(2001年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、血友病を有する人において免疫寛容を誘導する方法であって、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質、または凝固因子とFc領域とを含む組成物の有効量をヒトに投与する工程を含み、ヒトが、凝固因子に対するインヒビターを発生させており、凝固因子に対する1つまたは複数の過去の免疫寛容療法に反応することができない、方法を提供する。一部の態様では、方法は、投与前の阻害性免疫応答レベルを測定する工程、および投与後の阻害性免疫応答レベルを測定する工程をさらに含む。一部の態様では、方法は、投与前の阻害性免疫応答レベルを、投与後の阻害性免疫応答レベルと比較する工程をさらに含む。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、血友病を有するヒトにおいて免疫寛容を誘導する方法であって、(1)凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質、または凝固因子とFc領域とを含む組成物の有効量をヒトに投与する工程であって、キメラタンパク質の有効量がヒトにおいて免疫寛容を誘導する工程と、(2)免疫寛容の誘導後、キメラタンパク質の漸減レジメンをヒトに投与する工程とを含む方法をさらに提供する。ある特定の態様では、免疫寛容の誘導は、ヒトにおける阻害性抗体の力価が約0.6BU未満である場合に起こる。ある特定の態様では、方法は、(3)漸減レジメン後に、凝固因子の予防用量をヒトに投与する工程をさらに含む。ある特定の態様では、ヒトは、過去に凝固因子に対する免疫寛容療法によって処置されていない。
【0011】
一部の態様では、ヒトは、凝固因子に対する阻害性免疫応答を発生させている。一部の実施形態では、阻害性免疫応答は、凝固因子に対する阻害性抗体の産生を含む。一部の実施形態では、投与前の阻害性抗体の力価は、少なくとも約0.6ベセスダ単位(BU)である。一部の実施形態では、投与後の阻害性抗体の力価は、約0.6BU未満である。
【0012】
一部の態様では、免疫応答は細胞性免疫応答を含む。一部の実施形態では、細胞性免疫応答は、サイトカインの放出を含む。一部の実施形態では、投与により、FVIIIポリペプチドからなるポリペプチドによる過去の処置後のヒトにおけるレベルと比較して、ヒトにおけるサイトカインレベルが低減する。一部の実施形態では、サイトカインは、IL-12、IL-4、IL-17、TNF-α、およびその任意の組合せからなる群から選択される。
【0013】
ある特定の態様では、1つまたは複数の寛容原性分子の発現は、投与前の1つまたは複数の寛容原性分子の発現レベルと比較して、投与後に増加している。一部の実施形態では、1つまたは複数の寛容原性分子は、IL-10、TGF-β、IL-35、IDO-1、およびその任意の組合せから選択される。他の実施形態では、免疫応答は、出血傾向の増加、高い凝固因子消費、凝固因子療法に対する反応の欠如、凝固因子療法の効能の減少、および凝固因子の半減期の短縮からなる群から選択される臨床症状を含む。
【0014】
一部の実施形態では、ヒトは、投与の少なくとも約1カ月前、少なくとも約2カ月前、少なくとも約3カ月前、少なくとも約6カ月前、少なくとも約12カ月前、少なくとも約18カ月前、少なくとも約24カ月前、少なくとも約30カ月前、少なくとも約36カ月前、少なくとも約42カ月前、少なくとも約48カ月前、少なくとも約54カ月前、少なくとも約60カ月前、少なくとも約6年前、少なくとも約7年前、少なくとも約8年前、または少なくとも約10年前に、凝固因子に対する阻害性免疫応答を発生させていると過去に診断された。一部の実施形態では、寛容が起こるまでの期間は、約1~約24週間、約1~約23週間、約1~約22週間、約1~約21週間、約2~約20週間、約2~約
19週間、約2~約18週間、約2~約17週間、約3~約16週間、約3~約15週間、約3~約14週間、約3~約13週間、約4~約12週間、約4~約11週間、約4~約10週間、約4~約9週間、約5~約8週間、約5~約7週間、約5~約6週間、約1~約12週間、約1~約11週間、約1~約10週間、約1~約9週間、約1~約8週間、約1~約7週間、約1~約6週間、約1~約5週間、または約1~約4週間である。
【0015】
一部の態様では、凝固因子は第VIII因子(FVIII)である。一部の実施形態では、キメラタンパク質は、FVIII-Fcを含む。一部の実施形態では、キメラタンパク質は、FVIII部分とVWF部分とを含み、FVIII部分はFVIIIポリペプチドまたはその断片を含み、VWF部分はVWFポリペプチドまたはその断片を含み、FVIII部分は第1のFc領域に連結され、VWF部分は第2のFc領域に連結され、および第1のFc領域と第2のFc領域は互いに会合している。
【0016】
一部の態様では、キメラタンパク質は、半減期延長部分をさらに含む。ある特定の実施形態では、半減期延長部分は、アルブミンもしくはその断片、アルブミン結合部分、PAS配列、HAP配列、トランスフェリンもしくはその断片、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリシアル酸、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、その誘導体、またはその任意の組合せを含む。
【0017】
一部の実施形態では、FVIIIとFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量は、約20IU/kg~約300IU/kgである。一部の実施形態では、FVIII-Fcを含むキメラタンパク質は、約1日間、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約15日間、約16日間、約17日間、約18日間、約19日間、約20日間、約21日間、約22日間、約23日間、または約24日間の投与間隔で投与される。
【0018】
ある特定の態様では、ヒトは、FVIII阻害性免疫応答を過去に発生させた。一部の実施形態では、ヒトは、出血性凝固障害、血友病性関節症、筋肉出血、口腔内出血、出血、筋肉への出血、口腔内出血、外傷、頭部外傷、消化管出血、頭蓋内出血、腹部内出血、胸腔内出血、骨折、中枢神経系の出血、咽頭後隙の出血、腹膜後腔の出血、および腸腰筋膜の出血からなる群から選択される出血状態を有する。
【0019】
実施形態
E1.血友病を有するヒトにおいて免疫寛容を誘導する方法であって、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量をヒトに投与する工程を含み、ヒトが、凝固因子に対するインヒビターを発生させており、凝固因子に対する1つまたは複数の過去の免疫寛容療法に反応していない方法。
【0020】
E2.投与前の阻害性免疫応答レベルを測定する工程と、投与後の阻害性免疫応答レベルを測定する工程とをさらに含む、E1に記載の方法。
【0021】
E3.投与前の阻害性免疫応答レベルを、投与後の阻害性免疫応答レベルと比較する工程をさらに含む、E2に記載の方法。
【0022】
E4.ヒトが、凝固因子に対する阻害性免疫応答を発生させている、E1~E3のいずれか一項に記載の方法。
【0023】
E5.阻害性免疫応答が、凝固因子に対する阻害性抗体の産生を含む、E4に記載の方法。
【0024】
E6.投与前の阻害性抗体の力価が、少なくとも約0.6ベセスダ単位(BU)である、E5に記載の方法。
【0025】
E7.投与前の阻害性抗体の力価が、少なくとも約1BU、少なくとも約2BU、少なくとも約3BU、少なくとも約4BU、少なくとも約5BU、少なくとも約6BU、少なくとも約7BU、少なくとも約10BU、少なくとも約20BU、少なくとも約30BU、少なくとも約40BU、少なくとも約50BU、少なくとも約100BU、少なくとも約150BU、または少なくとも約200BUである、E5またはE6に記載の方法。
【0026】
E8.投与前の阻害性抗体の力価が、少なくとも約5BUである、E5~E7のいずれか一項に記載の方法。
【0027】
E9.投与後の阻害抗体の力価が、約0.6BU未満である、E5~E8のいずれか一項に記載の方法。
【0028】
E10.投与後の阻害性抗体の力価が、0BUである、E5~E9のいずれか一項に記載の方法。
【0029】
E11.免疫応答が、細胞性免疫応答を含む、E1~E10のいずれか一項に記載の方法。
【0030】
E12.細胞性免疫応答が、サイトカインの放出を含む、E11に記載の方法。
【0031】
E13.投与により、FVIIIポリペプチドからなるポリペプチドによる過去の処置後のヒトにおけるレベルと比較して、ヒトにおけるサイトカインレベルが低減する、E12に記載の方法。
【0032】
E14.サイトカインが、IL-12、IL-4、IL-17、TNF-α、およびその任意の組合せからなる群から選択される、E12またはE13に記載の方法。
【0033】
E15.1つまたは複数の寛容原性分子の発現が、投与前の1つまたは複数の寛容原性分子の発現レベルと比較して、投与後に増加している、E1~E14のいずれか一項に記載の方法。
【0034】
E16.1つまたは複数の寛容原性分子が、IL-10、TGF-β、IL-35、IDO-1、およびその任意の組合せから選択される、E15に記載の方法。
【0035】
E17.免疫応答が、出血傾向の増加、高い凝固因子消費、凝固因子療法に対する反応の欠如、凝固因子療法の効能の減少、および凝固因子の半減期の短縮からなる群から選択される臨床症状を含む、E1~E14のいずれか一項に記載の方法。
【0036】
E18.ヒトが、投与の少なくとも約3カ月前、少なくとも約6カ月前、少なくとも約12カ月前、少なくとも約18カ月前、少なくとも約24カ月前、少なくとも約30カ月前、少なくとも約36カ月前、少なくとも約42カ月前、少なくとも約48カ月前、少なくとも約54カ月前、少なくとも約60カ月前、少なくとも約6年前、少なくとも約7年前、少なくとも約8年前、または少なくとも約10年前に、凝固因子に対する阻害性免疫応答を発生させていると過去に診断された、E1~E17のいずれか一項に記載の方法。
【0037】
E19.ヒトが、投与の少なくとも約5年前に、凝固因子に対する阻害性免疫応答を発
生させていると過去に診断された、E1~E18のいずれか一項に記載の方法。
【0038】
E20.寛容が起こるまでの期間が、約1~約24週間、約1~約23週間、約1~約22週間、約1~約21週間、約2~約20週間、約2~約19週間、約2~約18週間、約2~約17週間、約3~約16週間、約3~約15週間、約3~約14週間、約3~約13週間、約4~約12週間、約4~約11週間、約4~約10週間、約4~約9週間、約5~約8週間、約5~約7週間、約5~約6週間、約1~約12週間、約1~約11週間、約1~約10週間、約1~約9週間、約1~約8週間、約1~約7週間、約1~約6週間、約1~約5週間、または約1~約4週間である、E1~E19のいずれか一項に記載の方法。
【0039】
E21.寛容が起こるまでの期間が、約24週間未満、約23週間未満、約22週間未満、約21週間未満、約20週間未満、約19週間未満、約18週間未満、約17週間未満、約16週間未満、約15週間未満、約14週間未満、約13週間未満、約12週間未満、約11週間未満、約10週間未満、約9週間未満、約8週間未満、約7週間未満、約6週間未満、約5週間未満、約4週間未満、約3週間未満、約2週間未満、または約1週間未満である、E1~E20のいずれか一項に記載の方法。
【0040】
E22.寛容が起こるまでの期間が、約4~約12週間である、E1~E21のいずれか一項に記載の方法。
【0041】
E23.寛容が起こるまでの期間が、約4週間である、E1~E22のいずれか一項に記載の方法。
【0042】
E24.ヒトがインターフェロン治療を受けている、E1~E23のいずれか一項に記載の方法。
【0043】
E25.ヒトが抗ウイルス療法を受けている、E1~E24のいずれか一項に記載の方法。
【0044】
E26.ヒトがTNF-αの増加に関連する遺伝子多型を有する、E1~E25のいずれか一項に記載の方法。
【0045】
E27.多型がTNF-308G>Aである、E26に記載の方法。
【0046】
E28.ヒトが、IL10の増加に関連する遺伝子多型を有する、E1~E27のいずれか一項に記載の方法。
【0047】
E29.多型が、IL10Gマイクロサテライトのアレル134である、E28に記載の方法。
【0048】
E30.ヒトが、凝固因子に対して150未満の曝露日数(ED)を有している、E1~E29のいずれか一項に記載の方法。
【0049】
E31.ヒトが50未満のEDを有する、E30に記載の方法。
【0050】
E32.ヒトが20未満のEDを有する、E31に記載の方法。
【0051】
E33.凝固因子が第VIII因子(FVIII)である、E1~E32のいずれか一項に記載の方法。
【0052】
E34.キメラタンパク質が、FVIII-Fcを含む、E1~E33のいずれか一項に記載の方法。
【0053】
E35.キメラタンパク質がFVIII部分とVWF部分とを含み、FVIII部分がFVIIIポリペプチドまたはその断片を含み、VWF部分がVWFポリペプチドまたはその断片を含み、FVIII部分が第1のFc領域に連結され、VWF部分が第2のFc領域に連結され、および第1のFc領域と第2のFc領域が互いに会合している、E1~E34のいずれか一項に記載の方法。
【0054】
E36.FVIIIポリペプチドが成熟FVIIIを含む、E33~E35のいずれか一項に記載の方法。
【0055】
E37.FVIIIポリペプチドがBドメイン欠失FVIIIを含む、E33~E35のいずれか一項に記載の方法。
【0056】
E38.Bドメイン欠失FVIIIが、FVIIIのBドメインの全てまたは一部の欠失を含む、E37に記載の方法。
【0057】
E39.Bドメイン欠失FVIIIが、成熟FVIIIのアミノ酸残基746~1648の欠失を含む、E37またはE38に記載の方法。
【0058】
E40.VWFポリペプチドが、VWFのD’ドメインおよびD3ドメインを含むVWF断片を含む、E33~E39のいずれか一項に記載の方法。
【0059】
E41.キメラタンパク質が半減期延長部分をさらに含む、E1~E40のいずれか一項に記載の方法。
【0060】
E42.半減期延長部分が、アルブミンもしくはその断片、アルブミン結合部分、PAS配列、HAP配列、トランスフェリンもしくはその断片、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリシアル酸、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、その誘導体、またはその任意の組合せを含む、E41に記載の方法。
【0061】
E43.半減期延長部分が、凝固因子内に挿入される、E41またはE42に記載の方法。
【0062】
E44.半減期延長部分が、凝固因子とFc領域の間に挿入される、E41またはE42に記載の方法。
【0063】
E45.FVIIIとFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量が、約20IU/kg~約300IU/kgである、E33~E44のいずれか一項に記載の方法。
【0064】
E46.FVIII-Fcを含むキメラタンパク質の有効量が、約100IU/kg~約300IU/kg、約100IU/kg~約200IU/kg、約100IU/kg~約290IU/kg、約100IU/kg~約280IU/kg、約100IU/kg~約270IU/kg、約100IU/kg~約260IU/kg、約100IU/kg~約250IU/kg、約100IU/kg~約240IU/kg、約100IU/kg~約230IU/kg、約100IU/kg~約220IU/kg、約100IU/kg~約210IU/kg、約150IU/kg~約300IU/kg、約150IU/kg~約290IU/kg、約150IU/kg~約280IU/kg、約150IU/kg~
約270IU/kg、約150IU/kg~約260IU/kg、約150IU/kg~約250IU/kg、約150IU/kg~約240IU/kg、約140IU/kg~約250IU/kg、約130IU/kg~約260IU/kg、約120IU/kg~約270IU/kg、約110IU/kg~約280IU/kg、約200IU/kg~約290IU/kg、約200IU/kg~約280IU/kg、約200IU/kg~約270IU/kg、約200IU/kg~約260IU/kg、約200IU/kg~約250IU/kg、約200IU/kg~約240IU/kg、約200IU/kg~約230IU/kg、約200IU/kg~約220IU/kg、または約200IU/kg~約210IU/kgである、E45に記載の方法。
【0065】
E47.FVIII-Fcを含むキメラタンパク質の有効量が、約100IU/kg、約105IU/kg、約110IU/kg、約115IU/kg、約120IU/kg、約125IU/kg、約130IU/kg、約135IU/kg、約140IU/kg、約145IU/kg、約150IU/kg、約155IU/kg、約160IU/kg、約165IU/kg、約170IU/kg、約175IU/kg、約180IU/kg、約185IU/kg、約190IU/kg、約195IU/kg、約200IU/kg、約225IU/kg、約250IU/kg、約275IU/kg、または約300IU/kgである、E45またはE46に記載の方法。
【0066】
E48.FVIII-Fcを含むキメラタンパク質が、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約15日間、約16日間、約17日間、約18日間、約19日間、約20日間、約21日間、約22日間、約23日間、または約24日間の投与間隔で投与される、E33~E47のいずれか一項に記載の方法。
【0067】
E49.FVIII-Fcを含むキメラタンパク質が、約1~約14日間、約1~約13日間、約1~約12日間、約1~約11日間、約1~約10日間、約1~約9日間、約1~約8日間、約1~約7日間、約1~約6日間、約1~約5日間、約1~約4日間、約1~約3日間、約1~約2日間、約2~約14日間、約3~約14日間、約4~約14日間、約5~約14日間、約6~約14日間、約7~約14日間、約8~約14日間、約9~約14日間、約10~約14日間、約11~約14日間、約12~約14日間、約13~約14日間、または約5~約10日間の投与間隔で投与される、E33~E47のいずれか一項に記載の方法。
【0068】
E50.FVIII-Fcを含むキメラタンパク質が、約3日間~約5日間の投与間隔で投与される、E33~E49のいずれか一項に記載の方法。
【0069】
E51.キメラタンパク質が、FVIII部分、VWF部分、第1のFc領域、および第2のFc領域を含み、FVIII部分がFVIIIポリペプチドまたはその断片を含み、VWF部分がVWFポリペプチドまたはその断片を含み、FVIII部分が第1のFc領域に連結され、VWF部分が第2のFc領域に連結され、および第1のFc領域と第2のFc領域が互いに会合している、E1~E33のいずれか一項に記載の方法。
【0070】
E52.ヒトがFVIII阻害性免疫応答を過去に発生させた、E1~E51のいずれか一項に記載の方法。
【0071】
E53.阻害性FVIII免疫応答が、ADVATE(登録商標)、RECOMBINATE(登録商標)、KOGENATEFS(登録商標)、HELIXATEFS(登録商標)、XYNTHA/REFACTOAB(登録商標)、HEMOFIL-M(登録商標)、MONARC-M(登録商標)、MONOCLATE-P(登録商標)、HUMA
TE-P(登録商標)、ALPHANATE(登録商標)、KOATE-DVI(登録商標)、AFSTYLA(登録商標)、およびHYATE:C(登録商標)からなる群から選択されるFVIII産物に反応して発生した、E52に記載の方法。
【0072】
E54.阻害性FVIII免疫応答が、組換えFVIII産物に反応して発生する、E52に記載の方法。
【0073】
E55.ヒトが、出血性凝固障害、血友病性関節症、筋肉出血、口腔内出血、出血、筋肉への出血、口腔内出血、外傷、頭部外傷、消化管出血、頭蓋内出血、腹部内出血、胸腔内出血、骨折、中枢神経系の出血、咽頭後隙の出血、腹膜後腔の出血、および腸腰筋膜の出血からなる群から選択される出血状態を有する、E1~E54のいずれか一項に記載の方法。
【0074】
E56.出血性凝固障害が、血友病Aである、E55に記載の方法。
【0075】
E57.FVIIIとFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量が、約50IU/k~約300IU/kgである、E33~E56のいずれか一項に記載の方法。
【0076】
E58.FVIIIとFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量が、約50IU/kg、約60IU/kg、約70IU/kg、約80IU/kg、約90IU/kg、約100IU/kg、約110IU/kg、約120IU/kg、約130IU/kg、約140IU/kg、約150IU/kg、約160IU/kg、約170IU/kg、約180IU/kg、約190IU/kg、約200IU/kg、約225IU/kg、約250IU/kg、約275IU/kg、または約300IU/kgである、E57に記載の方法。
【0077】
E59.キメラタンパク質の有効量が約200IU/kgであり、毎日投与される、E57またはE58に記載の方法。
【0078】
E60.キメラタンパク質の有効量が約50IU/kgであり、1週間に約3回投与される、E57またはE58に記載の方法。
【0079】
E61.キメラタンパク質の有効量が1日を通して2回またはそれより多い用量で投与される、E57~E60のいずれか一項に記載の方法。
【0080】
E62.キメラタンパク質が、免疫寛容が観察されるまで投与され、ヒトにおける阻害性抗体の力価が約0.6BU未満である場合に免疫寛容が観察される、E57~E61のいずれか一項に記載の方法。
【0081】
E63.免疫寛容後、FVIIIとFc領域とを含むキメラタンパク質の漸減レジメンをヒトに投与する、E62に記載の方法。
【0082】
E64.漸減レジメンが、FVIIIとFc領域とを含むキメラタンパク質の約50IU/kg~約100IU/kgの漸減用量を投与する工程を含む、E63に記載の方法。
【0083】
E65.漸減用量が、1日1回または2日毎に1回投与される、E63またはE64に記載の方法。
【0084】
E66.漸減用量が、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間
、少なくとも約8週間、少なくとも約9週間、少なくとも約10週間、少なくとも約11週間、少なくとも約12週間、少なくとも約13週間、少なくとも約14週間、少なくとも約15週間、少なくとも約16週間、少なくとも約17週間、少なくとも約18週間、少なくとも約19週間、少なくとも約20週間、少なくとも約21週間、少なくとも約22週間、少なくとも約23週間、少なくとも約24週間、少なくとも約25週間、少なくとも約26週間、少なくとも約27週間、少なくとも約28週間、少なくとも約29週間、少なくとも約30週間、少なくとも約31週間、または少なくとも約32週間投与される。E63~E65のいずれか一項に記載の方法。
【0085】
E67.漸減レジメンが、キメラタンパク質の約50IU/kgまたは約100IU/kgの漸減用量を投与する工程を含む、E63~E66のいずれか一項に記載の方法。
【0086】
E68.漸減レジメンが、キメラタンパク質の約50IU/kgの漸減用量を、免疫寛容後1週目から6週目まで1日1回投与する工程を含む、E63~E67のいずれか一項に記載の方法。
【0087】
E69.漸減レジメンが、キメラタンパク質の約100IU/kgの漸減用量を、免疫寛容後1週目から6週目まで1日1回投与する工程を含む、E63~E67のいずれか一項に記載の方法。
【0088】
E70.漸減レジメンが、キメラタンパク質の約50IU/kgまたは約100IU/kgの漸減用量を、免疫寛容後6週目から12週目まで2日毎に1回投与する工程をさらに含む、E68またはE69に記載の方法。
【0089】
E71.漸減レジメンが、キメラタンパク質の約50IU/kgまたは約100IU/kgの漸減用量を、12週目から16週目まで2日毎に1回投与する工程をさらに含む、E70に記載の方法。
【0090】
E72.漸減レジメン後に凝固因子の予防用量を投与する工程をさらに含む、E66~E71のいずれか一項に記載の方法。
【0091】
E73.予防用量が、約50IU/kg~約100IU/kgを含む、E72に記載の方法。
【0092】
E74.予防用量が、1週間に約1回、1週間に約2回、1週間に約3回、または約3~5日毎に1回投与される、E72またはE73に記載の方法。
【0093】
E75.血友病を有するヒトにおいて免疫寛容を誘導する方法であって、
(1)凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量をヒトに投与する工程であって、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量がヒトにおいて免疫寛容を誘導する工程と、
(2)免疫寛容の誘導後、キメラタンパク質の漸減レジメンをヒトに投与する工程とを含む方法。
【0094】
E76.免疫寛容の誘導が、ヒトにおける阻害性抗体の力価が約0.6BU未満である場合に起こる、E75に記載の方法。
【0095】
E77.(3)漸減レジメン後に、凝固因子の予防用量をヒトに投与する工程をさらに含む、E75またはE77に記載の方法。
【0096】
E78.ヒトが、凝固因子に対する過去の免疫寛容療法によって処置されていない、E75~E77のいずれか一項に記載の方法。
【0097】
E79.投与前の阻害性免疫応答レベルを測定する工程と、投与後の阻害性免疫応答レベルを測定する工程とをさらに含む、E75~E78のいずれか一項に記載の方法。
【0098】
E80.投与前の阻害性免疫応答レベルを、投与後の阻害性免疫応答レベルと比較する工程をさらに含む、E79に記載の方法。
【0099】
E81.ヒトが、凝固因子に対する阻害性免疫応答を発生させている、E75~E80のいずれか一項に記載の方法。
【0100】
E82.阻害性免疫応答が、凝固因子に対する阻害性抗体の産生を含む、E81に記載の方法。
【0101】
E83.投与前の阻害性抗体の力価が、少なくとも約0.6ベセスダ単位(BU)である、E82に記載の方法。
【0102】
E84.投与前の阻害性抗体の力価が、少なくとも約1BU、少なくとも約2BU、少なくとも約3BU、少なくとも約4BU、少なくとも約5BU、少なくとも約6BU、少なくとも約7BU、少なくとも約10BU、少なくとも約20BU、少なくとも約30BU、少なくとも約40BU、少なくとも約50BU、少なくとも約100BU、少なくとも約150BU、または少なくとも約200BUである、E82またはE83に記載の方法。
【0103】
E85.投与前の阻害性抗体の力価が、少なくとも約5BUである、E82~E84のいずれか一項に記載の方法。
【0104】
E86.投与後の阻害抗体の力価が、約0.6BU未満である、E82~E85のいずれか一項に記載の方法。
【0105】
E87.投与後の阻害性抗体の力価が、0BUである、E82~E86のいずれか一項に記載の方法。
【0106】
E88.免疫応答が、細胞性免疫応答を含む、E79~E87のいずれか一項に記載の方法。
【0107】
E89.細胞性免疫応答が、サイトカインの放出を含む、E88に記載の方法。
【0108】
E90.投与により、FVIIIポリペプチドからなるポリペプチドによる過去の処置後のヒトにおけるレベルと比較して、ヒトにおけるサイトカインレベルが低減する、E88に記載の方法。
【0109】
E91.1つまたは複数の寛容原性分子の発現が、投与前の1つまたは複数の寛容原性分子の発現レベルと比較して、投与後に増加している、E75~E90のいずれか一項に記載の方法。
【0110】
E92.ヒトが、投与の少なくとも約3カ月前、少なくとも約6カ月前、少なくとも約12カ月前、少なくとも約18カ月前、少なくとも約24カ月前、少なくとも約30カ月前、少なくとも約36カ月前、少なくとも約42カ月前、少なくとも約48カ月前、少な
くとも約54カ月前、少なくとも約60カ月前、少なくとも約6年前、少なくとも約7年前、少なくとも約8年前、または少なくとも約10年前に、凝固因子に対する阻害性免疫応答を発生させていると過去に診断された、E75~E91のいずれか一項に記載の方法。
【0111】
E93.ヒトが、投与の少なくとも約5年前に、凝固因子に対する阻害性免疫応答を発生させていると過去に診断された、E75~E92のいずれか一項に記載の方法。
【0112】
E94.寛容が起こるまでの期間が、約1~約24週間、約1~約23週間、約1~約22週間、約1~約21週間、約2~約20週間、約2~約19週間、約2~約18週間、約2~約17週間、約3~約16週間、約3~約15週間、約3~約14週間、約3~約13週間、約4~約12週間、約4~約11週間、約4~約10週間、約4~約9週間、約5~約8週間、約5~約7週間、約5~約6週間、約1~約12週間、約1~約11週間、約1~約10週間、約1~約9週間、約1~約8週間、約1~約7週間、約1~約6週間、約1~約5週間、または約1~約4週間である、E75~E93のいずれか一項に記載の方法。
【0113】
E95.寛容が起こるまでの期間が、約24週間未満、約23週間未満、約22週間未満、約21週間未満、約20週間未満、約19週間未満、約18週間未満、約17週間未満、約16週間未満、約15週間未満、約14週間未満、約13週間未満、約12週間未満、約11週間未満、約10週間未満、約9週間未満、約8週間未満、約7週間未満、約6週間未満、約5週間未満、約4週間未満、約3週間未満、約2週間未満、または約1週間未満である、E75~E94のいずれか一項に記載の方法。
【0114】
E96.寛容が起こるまでの期間が、約4~約12週間である。E75~E95のいずれか一項に記載の方法。
【0115】
E97.寛容が起こるまでの期間が、約4週間である、E75~E96のいずれか一項に記載の方法。
【0116】
E98.ヒトが、インターフェロン治療を受けている、E75~E97のいずれか一項に記載の方法。
【0117】
E99.ヒトが、抗ウイルス療法を受けている、E75~E98のいずれか一項に記載の方法。
【0118】
E100.ヒトが、TNF-αの増加に関連する遺伝子多型を有する、E75~E91のいずれか一項に記載の方法。
【0119】
E101.多型がTNF-308G>Aである、E100に記載の方法。
【0120】
E102.ヒトが、IL10の増加に関連する遺伝子多型を有する、E75~E101のいずれか一項に記載の方法。
【0121】
E103.多型が、IL10Gマイクロサテライトのアレル134である、E102に記載の方法。
【0122】
E104.ヒトが、凝固因子に対して150未満の曝露日数(ED)を有している、E75~E103のいずれか一項に記載の方法。
【0123】
E105.ヒトが50未満のEDを有する、E104に記載の方法。
【0124】
E106.ヒトが20未満のEDを有する、E105に記載の方法。
【0125】
E107.凝固因子が第VIII因子(FVIII)である、E75~E106のいずれか一項に記載の方法。
【0126】
E108.キメラタンパク質が、FVIII-Fcを含む、E75~E107のいずれか一項に記載の方法。
【0127】
E109.キメラタンパク質がFVIII部分とVWF部分とを含み、FVIII部分がFVIIIポリペプチドまたはその断片を含み、VWF部分がVWFポリペプチドまたはその断片を含み、FVIII部分が第1のFc領域に連結され、VWF部分が第2のFc領域に連結され、および第1のFc領域と第2のFc領域が互いに会合している、E75~E108のいずれか一項に記載の方法。
【0128】
E110.FVIIIポリペプチドが成熟FVIIIを含む、E75~E109のいずれか一項に記載の方法。
【0129】
E111.FVIIIポリペプチドがBドメイン欠失FVIIIを含む、E75~E109のいずれか一項に記載の方法。
【0130】
E112.Bドメイン欠失FVIIIが、FVIIIのBドメインの全てまたは一部の欠失を含む、E110に記載の方法。
【0131】
E113.Bドメイン欠失FVIIIが、成熟FVIIIのアミノ酸残基746~1648の欠失を含む、E110またはE111に記載の方法。
【0132】
E114.VWFポリペプチドがVWFのD’ドメインおよびD3ドメインを含むVWF断片を含む、E109~E113のいずれか一項に記載の方法。
【0133】
E115.キメラタンパク質が半減期延長部分をさらに含む、E75~E114のいずれか一項に記載の方法。
【0134】
E116.半減期延長部分が、アルブミンもしくはその断片、アルブミン結合部分、PAS配列、HAP配列、トランスフェリンもしくはその断片、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリシアル酸、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、その誘導体、またはその任意の組合せを含む、E115に記載の方法。
【0135】
E116.半減期延長部分が、凝固因子内に挿入される、E115またはE116に記載の方法。
【0136】
E117.半減期延長部分が、凝固因子とFc領域の間に挿入される、E115またはE116に記載の方法。
【0137】
E118.FVIIIとFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量が、約50IU/kg~約300IU/kgである、E75~E118のいずれか一項に記載の方法。
【0138】
E120.FVIII-Fcを含むキメラタンパク質の有効量が、約100IU/kg~約300IU/kg、約100IU/kg~約200IU/kg、約100IU/kg
~約290IU/kg、約100IU/kg~約280IU/kg、約100IU/kg~約270IU/kg、約100IU/kg~約260IU/kg、約100IU/kg~約250IU/kg、約100IU/kg~約240IU/kg、約100IU/kg~約230IU/kg、約100IU/kg~約220IU/kg、約100IU/kg~約210IU/kg、約150IU/kg~約300IU/kg、約150IU/kg~約290IU/kg、約150IU/kg~約280IU/kg、約150IU/kg~約270IU/kg、約150IU/kg~約260IU/kg、約150IU/kg~約250IU/kg、約150IU/kg~約240IU/kg、約140IU/kg~約250IU/kg、約130IU/kg~約260IU/kg、約120IU/kg~約270IU/kg、約110IU/kg~約280IU/kg、約200IU/kg~約290IU/kg、約200IU/kg~約280IU/kg、約200IU/kg~約270IU/kg、約200IU/kg~約260IU/kg、約200IU/kg~約250IU/kg、約200IU/kg~約240IU/kg、約200IU/kg~約230IU/kg、約200IU/kg~約220IU/kg、または約200IU/kg~約210IU/kgである、E119に記載の方法。
【0139】
E121.FVIII-Fcを含むキメラタンパク質の有効量が、約50IU/kg、約60IU/kg、約70IU/kg、約80IU/kg、約90IU/kg、約100IU/kg、約110IU/kg、約120IU/kg、約130IU/kg、約140IU/kg、約150IU/kg、約160IU/kg、約170IU/kg、約180IU/kg、約190IU/kg、約200IU/kg、約225IU/kg、約250IU/kg、約275IU/kg、または約300IU/kgである、E119またはE120に記載の方法。
【0140】
E122.キメラタンパク質の有効量が約200IU/kgであり、毎日投与される、E75~E121のいずれか一項に記載の方法。
【0141】
E123.FVIII-Fcを含むキメラタンパク質が、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約15日間、約16日間、約17日間、約18日間、約19日間、約20日間、約21日間、約22日間、約23日間、または約24日間の投与間隔で投与される、E75~E122のいずれか一項に記載の方法。
【0142】
E124.FVIII-Fcを含むキメラタンパク質が、約1~約14日間、約1~約13日間、約1~約12日間、約1~約11日間、約1~約10日間、約1~約9日間、約1~約8日間、約1~約7日間、約1~約6日間、約1~約5日間、約1~約4日間、約1~約3日間、約1~約2日間、約2~約14日間、約3~約14日間、約4~約14日間、約5~約14日間、約6~約14日間、約7~約14日間、約8~約14日間、約9~約14日間、約10~約14日間、約11~約14日間、約12~約14日間、約13~約14日間、または約5~約10日間の投与間隔で投与される、E75~E121のいずれか一項に記載の方法。
【0143】
E125.FVIII-Fcを含むキメラタンパク質が、約3日間~約5日間の投与間隔で投与される、E75~E122のいずれか一項に記載の方法。
【0144】
E126.キメラタンパク質が、FVIII部分、VWF部分、第1のFc領域、および第2のFc領域を含み、FVIII部分がFVIIIポリペプチドまたはその断片を含み、VWF部分がVWFポリペプチドまたはその断片を含み、FVIII部分が第1のFc領域に連結され、VWF部分が第2のFc領域に連結され、および第1のFc領域と第2のFc領域が互いに会合している、E75~E125のいずれか一項に記載の方法。
【0145】
E127.ヒトがFVIII阻害性免疫応答を過去に発生させた、E75~E126のいずれか一項に記載の方法。
【0146】
E128.阻害性FVIII免疫応答が、ADVATE(登録商標)、RECOMBINATE(登録商標)、KOGENATEFS(登録商標)、HELIXATEFS(登録商標)、XYNTHA/REFACTOAB(登録商標)、HEMOFIL-M(登録商標)、MONARC-M(登録商標)、MONOCLATE-P(登録商標)、HUMATE-P(登録商標)、ALPHANATE(登録商標)、KOATE-DVI(登録商標)、AFSTYLA(登録商標)、およびHYATE:C(登録商標)からなる群から選択されるFVIII産物に反応して発生した、E127に記載の方法。
【0147】
E129.阻害性FVIII免疫応答が、組換えFVIII産物に反応して発生する、E128に記載の方法。
【0148】
E130.ヒトが、出血性凝固障害、血友病性関節症、筋肉出血、口腔内出血、出血、筋肉への出血、口腔内出血、外傷、頭部外傷、消化管出血、頭蓋内出血、腹部内出血、胸腔内出血、骨折、中枢神経系の出血、咽頭後隙の出血、腹膜後腔の出血、および腸腰筋膜の出血からなる群から選択される出血状態を有する、E75~E129のいずれか一項に記載の方法。
【0149】
E131.出血性凝固障害が、血友病Aである、E130に記載の方法。
【0150】
E132.キメラタンパク質の有効量が、1日を通して2回またはそれより多い用量で投与される、E75~E131に記載の方法。
【0151】
E133.漸減レジメンが、キメラタンパク質の約50IU/kg~約100IU/kgの漸減用量を投与する工程を含む、E75~E132のいずれか一項に記載の方法。
【0152】
E134.漸減用量が、1日1回、2日毎に1回、または週に3回投与される、E75~E133のいずれか一項に記載の方法。
【0153】
E135.漸減用量が、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約9週間、少なくとも約10週間、少なくとも約11週間、少なくとも約12週間、少なくとも約13週間、少なくとも約14週間、少なくとも約15週間、少なくとも約16週間、少なくとも約17週間、少なくとも約18週間、少なくとも約19週間、少なくとも約20週間、少なくとも約21週間、少なくとも約22週間、少なくとも約23週間、少なくとも約24週間、少なくとも約25週間、少なくとも約26週間、少なくとも約27週間、少なくとも約28週間、少なくとも約29週間、少なくとも約30週間、少なくとも約31週間、または少なくとも約32週間投与される、E75~E134のいずれか一項に記載の方法。
【0154】
E136.漸減レジメンが、キメラタンパク質の約50IU/kgまたは約100IU/kgの漸減用量を投与する工程を含む、E74~E135のいずれか一項に記載の方法。
【0155】
E137.漸減レジメンが、キメラタンパク質の約50IU/kgの漸減用量を、免疫寛容後1週目から6週目まで1日1回投与する工程を含む、E75~E136のいずれか一項に記載の方法。
【0156】
E138.漸減レジメンが、キメラタンパク質の約100IU/kgの漸減用量を、免疫寛容後1週目から6週目まで1日1回投与する工程を含む、E75~E136のいずれか一項に記載の方法。
【0157】
E139.漸減レジメンが、キメラタンパク質の約50IU/kgまたは約100IU/kgの漸減用量を、免疫寛容後6週目から12週目まで2日毎に1回投与する工程をさらに含む、E137またはE138に記載の方法。
【0158】
E140.漸減レジメンが、キメラタンパク質の約50IU/kgまたは約100IU/kgの漸減用量を、12週目から16週目まで2日毎に1回投与する工程をさらに含む、E139に記載の方法。
【0159】
E141.予防用量が、約50IU/kg~約100IU/kgを含む、E77~E140のいずれか一項に記載の方法。
【0160】
E142.予防用量が、1週間に約1回、1週間に約2回、1週間に約3回または1週間に約3回投与される、E77~E141のいずれか一項に記載の方法。
【0161】
E143.凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質が、ヒトにおける阻害性免疫応答レベルの測定後、約1日未満、約2日未満、約3日未満、約4日未満、約5日未満、約6日未満、約7日未満、約2週間未満、約3週間未満、約4週間未満、約2カ月未満、約3カ月未満、約4カ月未満、約5カ月未満、約6カ月未満、または約1年未満でヒトに投与される、E79~E91および94~E142のいずれか一項に記載の方法。
【0162】
E144.凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質が、ヒトにおける阻害性免疫応答レベルの測定後、約1日未満でヒトに投与される、E79~E91および94~E143のいずれか一項に記載の方法。
【0163】
E145.凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質が、ヒトにおける阻害性免疫応答レベルの測定後、約12時間未満でヒトに投与される、E79~E91および94~E144のいずれか一項に記載の方法。
【0164】
E146.キメラタンパク質の投与によって、凝固因子単独による処置後のヒトにおける寛容が起こるまでの期間と比較して、ヒトにおいて寛容が起こるまでの期間が短縮される、E1~E145のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0165】
図1図1は、FcγR結合に対するrFVIIIFcの効果、内在化、シグナル伝達およびサイトカイン産生、および遺伝子発現変化、ならびにin vitroでのその後の相互作用およびT細胞に対する効果を調査するために使用される方法を概略する流れ図である。
図2図2A~2Cは、西洋わさびペルオキシダーゼ免疫複合体(HRP-IC;陽性対照)、IgG1、組換えFVIII(rFVIII)、またはrFVIII Fc融合タンパク質(rFVIIIFc)を用いる処理後のFcγ受容体CD16(図2A)、CD32(図2B)、およびCD64(図2C)の相対的なマクロファージおよび樹状細胞上での表面発現レベルのグラフ表示である。星印()は、有意性の程度を示す(n=3;**=P≦0.01、***=P≦0.005、他の処理と比較したHRP-ICの有意性は示さない)。
図3-1】図3A~3Cは、rFVIIIまたはrFVIIIFcを用いる処理後の相対的シグナル伝達を示すグラフ表示である。図3Aは、HRP-IC、IgG1、rFVIIIまたはfRVIIIFcで15分間処理したTHP-1単球株(「THP-1」)、単球、末梢血単球由来マクロファージ(「マクロファージ」)、および末梢血単球由来樹状細胞中での、Sykリン酸化によって測定されたシグナル伝達を示す。図3Bは、rFVIIIFc(「WT」)、新生児Fc受容体に結合することができないrFVIIIFc変異体(「FcRn変異体」)、またはFcγRに結合することができないrFVIIIFc変異体(「FcgR変異体」)で処理したマクロファージ中での相対的Sykリン酸化を示す。図3Cは、HRP-IC、IgG1、rFVIIIまたはrFVIIIFcで処理した24時間後のマクロファージ中での炎症性サイトカインであるインターロイキン1b(IL-1b)、IL-6、IL-8、IL-10、および腫瘍壊死因子アルファ(TNFa)の相対的産生を示す。
図3-2】図3-1の続き。
図4図4は、rFVIIIまたはrFVIIIFcで処理した1分後、5分後、および30分後の、Src相同性領域2ドメイン含有ホスファターゼ-1(SHP1)、pSHP2、ホスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸5-ホスファターゼ1(SHIP1)、およびpSHIP2の相対的リン酸化状態を示す。星印()は、有意性の程度を示す(n=3;**P≦0.01、***P≦0.005)。
図5-1】図5A~5Mは、rFVIIIまたはrFVIIIFcで処理した後の寛容原性マクロファージの遺伝子発現パターンのグラフ表示である。図5A~5Bは、IgG1、rFVIIIcで6時間処理した単球由来マクロファージ(n=3)中で、有意に下方調節された遺伝子の分布(図5A)および有意に上方調節された遺伝子の分布(図5B)を示すベン図である。図5C~5Gは、rFVIIIまたはrFVIIIFcで処理した後に、定量的PCRによって測定された、様々なNRF2ならびにヘムオキシゲナーゼ1(Hmox1;図5C)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ;図5D)、リポタンパク質リパーゼ(LPL;図5E)、初期増殖応答タンパク質2(EGR2;図5F)、および溶質運搬有機アニオン輸送体ファミリーメンバー4A1(SLCO4A1;図5G)などの脂質代謝経路遺伝子;処理後6時間(図5I)および12時間(図5J)でのCD206;ならびにアルギナーゼ1(ARG1;図5L)の相対的発現を示すグラフである。星印()は、有意性の程度を示す(n=8;P≦0.05、**P≦0.01、***P≦0.005;図5C~5G)。図5Kおよび5Mは、CD206を発現するフローサイトメトリーによって収集された細胞数を示すグラフである。さらに、rFVIIIFcにより教育されたマクロファージは、特徴的なM2様表現型を示すことがわかった(図5I~5M)。特に、rFVIIIFcで処理したマクロファージは、6時間後(図5I)および24時間後(図5J)に、rFVIIIで処理した細胞よりも高い相対的CD206(マンノース受容体C-1型;MRC1としても知られる)発現を有し、rFVIIIFcで処理したマクロファージは、24時間後にrFVIIIで処理した細胞よりも高い相対的ARG1発現を有していた(図5M)。
図5-2】図5-1の続き。
図5-3】図5-2の続き。
図5-4】図5-3の続き。
図5-5】図5-4の続き。
図5-6】図5-5の続き。
図6A図6Aは、T細胞分化に対するrFVIIIFc処理の効果を決定するために使用される方法を示す流れ図である。
図6B図6Bは、マクロファージまたは樹状細胞をIgG1(対照)、rFVIII、またはrFVIIIFcで24時間処理した後、ナイーブなCD4陽性T細胞との同時培養物中に入れた6日後の調節性T細胞のパーセントのグラフ表示である。
図6C図6Cは、IgG1、rFVIII、またはrFVIIIFcで予備処理されたマクロファージまたは樹状細胞の条件化培地中でのナイーブなCD4陽性T細胞の培養後の調節性T細胞のパーセントを示すグラフ表示である。
図7図7は、rFVIIIFc調節性T細胞分化の提唱される機構を示す図である。
図8図8は、マクロファージに対するrFIXFcの提唱される効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0166】
本開示は、血友病を有するヒトにおいて免疫寛容を誘導する方法であって、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質、または凝固因子とFc領域とを含む組成物の有効量をヒトに投与する工程を含み、ヒトが、凝固因子に対するインヒビターを発生させており、凝固因子に対する1つまたは複数の過去の免疫寛容療法に反応しなかった方法を提供する。一部の実施形態では、凝固因子は、第VII因子(FVII)、第VIIa因子(FVIIa)、FVIII、FIX、第X因子(FX)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、およびその任意の組合せからなる群から選択される。
【0167】
I.定義
用語「1つの(a)」または「1つの(an)」実体は、その実体の1つまたは複数を指す;例えば、「1つのヌクレオチド配列(a nucleotide sequence)」は、1つまたは
複数のヌクレオチド配列を表すと理解される。そのため、用語「1つ(a)」(または「1つ(an)」)、「1つまたは複数」、および「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用することができる。
【0168】
さらに、本明細書で使用される場合の「および/または」は、他の特色または構成要素の存在下または非存在下で、明記された2つの特色または構成要素の各々の具体的な開示として解釈すべきである。このため、本明細書における「Aおよび/またはB」などの語句で使用される場合の用語「および/または」は、「AとB」、「AまたはB」、「A」(単独)および「B」(単独)を含むと意図される。同様に、「A、B、および/またはC」などの語句で使用される場合の用語「および/または」は、以下の態様の各々を包含すると意図される:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)。
【0169】
態様が本明細書において「含む」という言語と共に記載される場合は常に、「からなる」および/または「本質的にからなる」に関して記載される類似の態様も同様に提供されると理解される。
【0170】
それ以外であると定義していない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本開示が関連する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology、Juo、Pei-Show、第2版、2002、CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology、第3版、1999、Academic Press;およびthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology、改訂版、2000、Oxford University Pressは、本開示で使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0171】
単位、接頭辞、および記号は、Systeme International de Unites(SI)が承認した書式で記される。数値範囲は、範囲を定義する数を含む。それ以外であると示していない限り、アミノ酸配列は、左から右にアミノからカルボキシ方向に書かれている。本明細書に提供する見出しは、開示の様々な態様の制限ではなく
、本明細書を全体として参照することによって得ることができる。したがって、以下に定義する用語は、本明細書をその全体で参照することによってより十分に定義される。
【0172】
用語「約」は、本明細書において、およそ、ほぼ、おおよそ、またはその領域を意味するために使用される。用語「約」を数値範囲と共に使用する場合、これは記載の数値より上および下に境界を伸長させることによってその範囲を修飾する。このように、「約10~20」は、「約10~約20」を意味する。一般的に、用語「約」は、例えば10パーセント上または下の(高いまたは低い)分散によって、記載の数値の上および下の数値を修飾することができる。
【0173】
本明細書で使用される場合の「投与する」は、例えば本明細書に開示されるキメラタンパク質を含む薬学的に許容される組成物を、薬学的に許容される経路を介して対象に与えることを意味する。投与経路は、静脈内、例えば静脈内注射および静脈内輸注であり得る。さらなる投与経路には、例えば、皮下、筋肉内、経口、鼻、および肺投与が挙げられる。キメラタンパク質およびハイブリッドタンパク質を、少なくとも1つの賦形剤を含む医薬組成物の一部として投与することができる。一部の実施形態では、凝固因子および/またはFc、例えばキメラタンパク質を、遺伝子治療を通してヒトに投与し、例えば凝固因子および/またはFc、例えばキメラタンパク質をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドをヒトに投与し、凝固因子および/またはFc、例えばキメラタンパク質をヒトにおいて発現させる。
【0174】
本明細書で使用される場合の「処置する」、「処置」、または「処置している」は、例えば、疾患または状態の重症度の低減;状態の経過期間の低減;疾患また状態に関連する1つまたは複数の症状の改善または消失;疾患または状態を必ずしも治癒する必要なく疾患または状態を有する対象に対する有益な効果の提供を指す。一部の実施形態では、用語「処置する」または「処置している」は、凝固因子、例えばFVIIIに対する阻害性免疫応答を低減または消失させることを意味する。
【0175】
本明細書で使用される場合の用語「免疫寛容を誘導する」は、特定の刺激を投与した場合に、例えば凝固因子(例えば、FVIII)を投与した場合に、対象が免疫応答を有しない状態を対象において誘発することを意味する。この状態、免疫寛容は、対象が刺激に対して有限の期間寛容である一過性であり得るか、または対象が刺激に対して無限に寛容である長期間であり得る。ある特定の実施形態では、対象は、刺激が対象に投与される限り、刺激に対して寛容であり続ける。例えば、一部の実施形態では、対象は、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質が所定の投与間隔で対象に投与される限り、凝固因子に対して寛容であり続ける。他の実施形態では、対象は、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の投与が終了した後であっても、凝固因子に対して寛容であり続ける。
【0176】
一部の実施形態では、免疫応答は、「阻害性」免疫応答である。阻害性免疫応答は、刺激、例えば凝固因子(例えば、FVIII)の投与の効果を遮断するかまたは減損させる免疫応答である。ある特定の実施形態では、阻害性免疫応答は、刺激に対する阻害性抗体、例えば阻害性抗FVIII抗体の産生を含む。本明細書で使用される場合の用語「阻害性抗体」または「複数の阻害性抗体」は、抗体によって認識される抗原の機能を遮断または減損する抗体を指す。例えば、FVIIIに対する阻害性抗体は、FVIIIの活性を遮断するかまたは減損させる。一部の実施形態では、阻害性抗体は、抗原、例えばFVIIIに結合し、ヒトの血清からの抗原のクリアランスを加速する。抗体が、抗原のクリアランスを加速すると、抗体は、抗原の半減期を低減させる。
【0177】
阻害性免疫応答は、ベセスダ法またはベセスダ法のナイメゲン変法などの臨床検査を使用して決定することができる。少なくとも0.6ベセスダ単位(BU)のレベルは、阻害
性免疫応答の存在を示し得る。少なくとも5BUのレベルは、高力価インヒビターの存在を示し得る。凝固因子のボーラス輸注の生体内回収率および半減期の測定も同様に使用することができる。ある特定の実施形態では、免疫寛容は、ヒトにおける阻害性抗体の力価が、約5BU未満、約4BU未満、約3BU未満、約2BU未満、約1BU未満、約0.9BU未満、約0.8BU未満、約0.7BU未満、約0.6BU未満、約0.5BU未満、約0.4BU未満、約0.3BU未満、約0.2BU未満、約0.1BU未満、または約0BUである場合に観察される。1つの特定の実施形態では、免疫寛容は、ヒトにおける阻害性抗体の力価が、約0.6BU未満である場合に観察される。
【0178】
他の実施形態では、免疫応答は、細胞性免疫応答を含む。一部の実施形態では、細胞性免疫応答は、サイトカインの放出を含む。ある特定の実施形態では、細胞性免疫応答の一部として放出されるサイトカインは、IL-12、IL-4、IL-17、TNF-α、およびその任意の組合せからなる群から選択することができる。
【0179】
他の実施形態では、免疫応答は、出血傾向の増加、高い凝固因子消費、凝固因子療法に対する反応の欠如、凝固因子療法の効能の減少、凝固因子の半減期の短縮、およびその任意の組合せからなる群から選択される臨床症状を含む。
【0180】
他の実施形態では、免疫寛容は、ヒトに投与後の凝固因子の半減期の増加によって測定される。一部の実施形態では、免疫寛容の誘導前のヒトに投与した凝固因子の半減期と比較して、凝固因子の半減期が、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、または少なくとも約1000%増加すれば、免疫寛容は誘導されている。ある特定の実施形態では、凝固因子の半減期は、免疫寛容の誘導後、少なくとも約3時間、少なくとも約4時間、少なくとも約5時間、少なくとも約6時間、少なくとも約7時間、少なくとも約8時間、少なくとも約9時間、少なくとも約10時間、少なくとも約11時間、少なくとも約12時間、少なくとも約13時間、少なくとも約14時間、または少なくとも約15時間である。
【0181】
本明細書で使用される場合の用語「比較可能な」は、例えば、キメラタンパク質を使用することに起因する比較される速度またはレベルが、基準の速度またはレベルと等しい、実質的に等しい、または類似であることを意味する。本明細書で使用される場合の用語「類似」は、比較される速度またはレベルが、基準の速度またはレベルから10%以下または15%以下の差を有することを意味する(例えば、2つのFc部分とプロセシングされたFVIIIから本質的になるまたはからなるキメラタンパク質であって、プロセシングされたFVIIIが2つのFc部分のうちの1つのFcに融合しているキメラタンパク質によるFXa生成速度)。用語「実質的に等しい」は、基準の速度またはレベルから0.01%、0.5%、または1%以下の差を有することを意味する。
【0182】
本明細書で使用される場合の止血障害は、フィブリンクロット形成能の障害または形成不全による自然発生または外傷の結果としての出血傾向を特徴とする遺伝性または後天性状態を意味する。そのような障害の例には、血友病が挙げられる。3つの主な型は、血友病A(第VIII因子欠乏)、血友病B(第IX因子欠乏、または「クリスマス病」)、および血友病C(第XI因子欠乏、軽度の出血傾向)である。他の止血障害には、例えば、フォンヴィレブランド病、第XI因子欠乏(PTA欠乏)、第XII因子欠乏、フィブリノゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子、または第XIII因子の欠乏または構造異常、GPIbの欠損または欠乏であるベルナールスーリエ症候群が挙げられる。VWFの受容体であるGPIbは、正常に機能しない場合があり、一次クロッ
ト形成(一次止血)の欠如および出血傾向の増加、ならびにグランツマン-ネーゲリ血小板無力症(グランツマン血小板無力症)が起こり得る。肝不全(急性および慢性型)では、肝臓による凝固因子の産生が不十分であり、このことが出血リスクを増加させ得る。
【0183】
本明細書で使用される場合の「血漿中濃度対時間曲線下面積(AUC)」は、薬理学の技術分野の用語と同じであり、投与後のFVIIIの吸収の速度および程度に基づく。AUCは、12、18、24、36、48、もしくは72時間などの明記された期間に対して、または曲線の勾配に基づく外挿を使用して無限大で決定される。本明細書において特に明記していない限り、AUCは、無限大で決定される。AUCの決定は、単一の対象について実行することができ、または平均を計算するために対象の集団について実行することができる。
【0184】
用語「凝固促進活性」は、本発明の凝固因子、例えばFVIIIが、本来の凝固因子、例えば本来のFVIIIの代わりに、血液中の凝固カスケードに関与する能力を意味する。凝固1段法(one stage clotting assay)(活性化部分トロンボプラスチン時間;aPTT)、トロンビン生成時間(TGA)、およびトロンボエラストメトリー(ROTEM(登録商標))を含む、第VIII活性を測定するためのいくつかのアッセイが利用可能である。
【0185】
免疫グロブリンまたは免疫グロブリン断片または領域のアミノ酸ナンバリングに対する参照は全て、その全体を参照によって本明細書に組み入れる、Kabatら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、U.S.Department of Public Health、Bethesda;MDに基づく。FcRn受容体は、ヒトを含むいくつかの動物種から単離されている。ヒトFcRn、ラットFcRn、およびマウスFcRn配列は公知である(その全体を参照によって本明細書に組み入れる、Storyら、J.Exp.Med.180:2377(1994))。Fcは、免疫グロブリンのヒンジ領域を伴ってまたは伴わずに、免疫グロブリンのCH2およびCH3ドメインを含み得る。例示的なFcバリアントは、その全体を参照によって本明細書に組み入れる、国際公開第2004/101740号および国際公開第2006/074199号に提供される。
【0186】
本明細書で使用される場合の「ハイブリッド」ポリペプチドおよびタンパク質は、キメラタンパク質と第2のポリペプチドとの組合せを意味する。ハイブリッド中のキメラタンパク質と第2のポリペプチドは、タンパク質-タンパク質相互作用、例えば電荷-電荷または疎水性相互作用を介して互いに会合することができる。ハイブリッド中のキメラタンパク質と第2のポリペプチドは、ジスルフィド結合または他の共有結合を介して互いに会合することができる。ハイブリッドは、その各々の全体を参照によって本明細書に組み入れる、国際公開第2004/101740号および国際公開第2006/074199号に記載されている。同様に、その各々の全体を参照によって本明細書に組み入れる、米国特許第7,404,956号および第7,348,004号も参照されたい。第2のポリペプチドは、同じキメラタンパク質の第2のコピーであり得るか、または非同一のキメラタンパク質であり得る。
【0187】
本明細書で使用される場合、タンパク質配列における「に対応するアミノ酸」、「に対応する部位」、または「同等のアミノ酸」は、第1のタンパク質配列、例えばFVIII配列と、第2のタンパク質配列、例えば第2のFVIII配列との間の同一性または類似性を最大限にするためのアライメントによって同定される。第2のタンパク質配列における同等のアミノ酸を同定するために使用される番号は、第1のタンパク質配列における対応するアミノ酸を同定するために使用される番号に基づく。
【0188】
本明細書で使用される場合の用語「挿入部位」は、異種部分を挿入することができる位置の直ちに上流であるポリペプチド(典型的に成熟ポリペプチド、例えば成熟FVIIIポリペプチド)、またはその断片、バリアント、もしくは誘導体におけるアミノ酸残基の番号を指す。「挿入部位」は、番号として明記され、番号は、挿入位置の直ちにN-末端である挿入部位が対応する、アミノ酸が明記されたタンパク質配列の番号である。例えば、語句「FVIIIは、所定の配列のアミノ酸745に対応する挿入位置で異種部分を含む」とは、異種部分が配列のアミノ酸745とアミノ酸746に対応する2つのアミノ酸の間に位置することを示している。しかし、当業者は、表記のタンパク質の任意のバリアントにおける対応する位置を容易に同定することができ、本開示は、本開示に具体的に開示されたバリアントのみになされた挿入に限定されない。むしろ、本明細書に開示される挿入は、本明細書に開示されるバリアントの位置に対応する位置で活性を有する任意の関連するバリアントまたはその断片に行うことができる。
【0189】
本明細書に使用される場合の語句「アミノ酸の直ちに下流」は、アミノ酸の末端カルボキシル基の右隣の位置を指す。同様に、語句「アミノ酸の直ちに上流」は、アミノ酸の末端アミン基の右隣の位置を指す。したがって、本明細書で使用される場合の「挿入部位の2つのアミノ酸の間」という語句は、2つの隣接するアミノ酸の間に異種部分(例えば、半減期延長部分)が挿入されている位置を指す。
【0190】
本明細書で使用される場合、用語「挿入された」、「挿入される」、「~に挿入された」、またはその文法的に関連する用語は、明記されたタンパク質(例えば、FVIIIタンパク質)における類似の位置と比較した、融合ポリペプチドにおける異種部分(例えば、半減期延長部分)の位置を指す。当業者は、他のポリペプチド配列、例えば他のFVIIIバリアントに関して対応する挿入位置を同定する方法を理解するであろう。本明細書で使用される場合、用語は、本明細書に開示される組換えポリペプチドの特徴を指し、融合ポリペプチドが作製される任意の方法または過程を示す、暗示する、または推論するものではない。例えば、本明細書に提供される融合ポリペプチドを参照して、語句「異種部分を、FVIIIポリペプチドの残基745の直ちに下流に挿入する」という語句は、融合ポリペプチドが、例えばFVIIIバリアントのアミノ酸745と746に対応するアミノ酸に接している、特定のFVIIIバリアントにおけるアミノ酸745に対応するアミノ酸の直ちに下流で異種部分を含むことを意味する。
【0191】
「融合体」または「キメラ」タンパク質は、自然界で天然に連結されていない第2のアミノ酸配列に連結された第1のアミノ酸配列を含む。異なるタンパク質に通常存在するアミノ酸配列を、融合ポリペプチドにおいて共に結合させることができ、または同じタンパク質に通常存在するアミノ酸配列を、融合ポリペプチド、例えば本発明のFVIIIドメインとIg Fcドメインとの融合体において新しい配置に置くことができる。融合タンパク質は、例えば化学合成によって、またはペプチド領域が所望の関係でコードされるポリヌクレオチドを作成および翻訳することによって作成される。融合タンパク質は、共有性の非ペプチド結合または非共有結合によって第1のアミノ酸配列に会合した第2のアミノ酸配列をさらに含み得る。
【0192】
用語「異種」および「異種部分」は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または他の部分が、それが比較される実体の部分とは別個の実体に由来することを意味する。例として、異種ポリペプチドは、合成であり得るか、または異なる種、個体の異なる細胞タイプ、または別個の個体の同じもしくは異なるタイプの細胞に由来し得る。一態様では、異種部分は、融合ポリペプチドまたはタンパク質を産生するために、別のポリペプチドに融合したポリペプチドである。別の態様では、異種部分は、ポリペプチドまたはタンパク質にコンジュゲートしたPEGなどの非ポリペプチドである。
【0193】
本明細書に使用される場合の用語「連結した」および「融合した」は、第2のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列にそれぞれ、共有結合または非共有結合した第1のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を指す。第1のアミノ酸またはヌクレオチド配列を、第2のアミノ酸またはヌクレオチド配列に直接結合させるか、または並置することができ、あるいは介在配列によって、第1の配列と第2の配列とを共有結合させることができる。用語「連結された」は、C末端またはN末端での第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列の融合体のみならず、第2のアミノ酸配列(または第1のアミノ酸配列、それぞれ)における任意の2つのアミノ酸への第1のアミノ酸配列(または第2のアミノ酸配列)全体の挿入を含む。一実施形態では、第1のアミノ酸配列は、ペプチド結合またはリンカーによって第2のアミノ酸配列に連結される。第1のヌクレオチド配列は、ホスホジエステル結合またはリンカーによって第2のヌクレオチド配列に連結することができる。リンカーは、ペプチドもしくはポリペプチド(例えば、ポリペプチド鎖の場合)、またはヌクレオチドもしくはヌクレオチド鎖(ヌクレオチド鎖の場合)、または任意の化学部分(ポリペプチドとポリヌクレオチド鎖の両方の場合)であり得る。用語「連結された」はまた、ハイフン(-)によって示される。
【0194】
本明細書で使用される場合、用語「会合する」は、第1のアミノ酸鎖と第2のアミノ酸鎖との間で形成された共有結合または非共有結合を指す。一実施形態では、用語「会合する」は、共有性の非ペプチド結合または非共有結合を意味する。この会合は、コロン、すなわち(:)によって示すことができる。別の実施形態では、これはペプチド結合を除く共有結合を意味する。例えば、アミノ酸システインは、第2のシステイン残基上のチオール基とジスルフィド結合または架橋を形成することができるチオール基を含む。ほとんどの天然に存在するIgG分子では、CH1およびCL領域は、ジスルフィド結合によって会合し、2つの重鎖は、Kabatナンバリングシステムを使用して239および242に対応する位置(EUナンバリングシステム226または229位、)で2つのジスルフィド結合によって会合している。共有結合の例には、ペプチド結合、金属結合、水素結合、ジスルフィド結合、シグマ結合、パイ結合、デルタ結合、グリコシド結合、アゴニスト結合、曲がった結合、配位結合、π逆供与、二重結合、三重結合、四重結合、五重結合、六重結合、コンジュゲーション、ハイパーコンジュゲーション、芳香族性、ハプト数、または反結合が挙げられるがこれらに限定されない。非共有結合の非制限的な例には、イオン結合(例えば、カチオンπ結合または塩結合)、金属結合、水素結合(例えば、二水素結合、二水素複合体、低障壁水素結合、または対称性水素結合)、ファンデルワールス力、ロンドン分散力、機械的結合、ハロゲン結合、金親和性、インターカレーション、スタッキング、エントロピー力、または化学極性が挙げられる。
【0195】
本明細書で使用される場合、用語「切断部位」または「酵素切断部位」は、酵素によって認識される部位を指す。ある特定の酵素切断部位は、細胞内プロセシング部位を含む。一実施形態では、ポリペプチドは、そのような部位の切断が、クロット形成部位で起こるように、凝固カスケードの際に活性化される酵素によって切断される酵素切断部位を有する。例示的なそのような部位には、例えばトロンビン、第XIa因子、または第Xa因子によって認識される部位が挙げられる。他の酵素切断部位は、当技術分野で公知である。
【0196】
本明細書で使用される場合、用語「プロセシング部位」または「細胞内プロセシング部位」は、ポリペプチドの翻訳後に機能する酵素の標的であるポリペプチドにおける酵素切断部位の一種を指す。一実施形態では、そのような酵素は、ゴルジ体のルーメン側からトランスゴルジ区画に輸送される際に機能する。細胞内プロセシング酵素は、細胞からタンパク質が分泌される前にポリペプチドを切断する。そのようなプロセシング部位の例には、例えば、PACE/フューリン(PACEは、Paired basic Amino
acid Cleaving Enzymeの頭字語である)ファミリーエンドペプチダーゼによって標的とされる部位が挙げられる。これらの酵素は、ゴルジ膜に局在し、配
列モチーフArg-[任意の残基]-(LysまたはArg)-Argのカルボキシ末端側でタンパク質を切断する。本明細書で使用される場合、「フューリン」ファミリー酵素には、例えばPCSK1(PC1/PC3としても知られる)、PCSK2(PC2としても知られる)、PCSK3(フューリンまたはPACEとしても知られる)、PCSK4(PC4としても知られる)、PCSK5(PC5またはPC6としても知られる)、PCSK6(PACE4としても知られる)、またはPCSK7(PC7/LPC、PC8、またはSPC7としても知られる)が挙げられる。他のプロセシング部位は当技術分野で公知である。
【0197】
1つより多くのプロセシングまたは切断部位を含む構築物では、そのような部位は同じまたは異なり得ると理解される。
【0198】
本明細書で使用される「プロセシング可能なリンカー」は、本明細書において他所で記載される少なくとも1つの細胞内プロセシング部位を含むリンカーを指す。
【0199】
本明細書で使用される場合の「ベースライン」は、用量を投与前の対象において所定の検体、例えば凝固因子(例えば、FVIII)または抗体(例えば、抗FVIII抗体)について測定された最低の血漿中レベルである。血漿中レベルは、投与前の2回の時点:スクリーニング診察時、および投与直前で測定することができる。
【0200】
本明細書で使用される場合の「同等量」は、当該ポリペプチドの分子量とは無関係な国際単位で表記される凝固因子活性、例えばFVIII活性の同じ用量を意味する。例えば、FVIII活性の1国際単位(IU)は、通常のヒト血漿1ミリリットル中のFVIIIの量にほぼ対応する。欧州薬局方色素生成基質アッセイおよび凝固1段法を含む、凝固因子活性を測定するためのいくつかのアッセイが利用可能である。
【0201】
本明細書で使用する場合の「投与間隔」は、対象に投与される複数の用量間で経過する投与の時間を意味する。投与間隔の比較は、単一の対象または対象集団で行うことができ、集団で得られた平均値を計算することができる。
【0202】
本明細書で使用する場合の「対象」は、ヒト個体を意味する。対象は、出血性障害に現在罹患しているか、またはそのような処置を必要とすると予想される患者であり得る。一部の実施形態では、対象は、凝固因子によって過去に処置されていない(すなわち、対象は、過去に無処置の対象であるか、または過去に無処置の患者である)。一部の実施形態では、対象は胎児であり、方法は、組成物またはキメラタンパク質を胎児の母親に投与する工程を含み、対象への投与は、母体から胎盤を通して起こる。一部の実施形態では、対象は小児または成人である。一部の実施形態では、対象は、1歳未満、2歳未満、3歳未満、4歳未満、5歳未満、6歳未満、7歳未満、8歳未満、9歳未満、10歳未満、11歳未満、または12歳未満の小児である。一部の実施形態では、小児は1歳未満である。一部の実施形態では、小児または成人は、出血性障害を発症しており、出血性障害の症状の開始は、1歳以降に起こる。一部の実施形態では、組成物またはキメラタンパク質の対象への投与は、凝固因子に対する液性免疫応答、細胞性免疫応答、または液性免疫応答と細胞性免疫応答の両方から選択される免疫応答の発生を予防、阻害、または低減させるために十分である。一部の実施形態では、対象はヒトであり、対象は、凝固因子に対する免疫応答を過去に発生させている。一部の実施形態では、ヒトは、免疫寛容療法に対して過去に反応しなかった。一部の実施形態では、過去の免疫寛容療法は、高用量の凝固因子の投与を含む。他の実施形態では、過去の免疫寛容療法は、1つまたは複数の免疫抑制剤の投与を含む。一実施形態では、過去の免疫寛容療法は、Malmoレジメンであった。別の実施形態では、過去の免疫寛容療法はBonnプロトコールであった。
【0203】
本明細書で(互換的に)使用される場合の、「治療用量」、「用量」、「有効量」、または「投与量」は、本明細書に記載される治療目標を達成する用量を意味する。一部の実施形態では、「治療用量」は、対象において免疫寛容を誘導する用量を意味する。ある特定の実施形態では、「治療用量」は、明記された寛容が起こるまでの期間内に、例えば第1の用量の投与の12週間以内に対象において免疫寛容を誘導する用量を意味する。
【0204】
同様に、ポリペプチドの断片またはバリアント、およびその任意の組合せも本発明に含まれる。本開示の方法に使用されるポリペプチドについて言及する場合の用語「断片」または「バリアント」は、基準ポリペプチドの少なくとも一部の特性(例えば、FcRn結合ドメインもしくはFcバリアントのFcRn結合親和性、またはFVIIIの凝固活性)を保持する任意のポリペプチドを含む。ポリペプチドの断片は、本明細書において他所で考察する特異的抗体断片に加えて、タンパク質分解断片、ならびに欠失断片を含むが、天然に存在する完全長のポリペプチド(または成熟ポリペプチド)を含まない。本開示の方法で使用されるポリペプチド結合ドメインまたは結合分子のバリアントは、上記の断片を含み、同様にアミノ酸の置換、欠失、または挿入により変化したアミノ酸配列を有するポリペプチドも含む。バリアントは、天然に存在する、または天然に存在しないバリアントであり得る。天然に存在しないバリアントを、当技術分野で公知の変異誘発技術を使用して産生することができる。バリアントポリペプチドは、保存的または非保存的アミノ酸置換、欠失、または付加を含み得る。
【0205】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基に交換されている置換である。塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当技術分野で定義されている。このように、ポリペプチド中のアミノ酸が同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸に交換されている場合、置換は保存的であると考えられる。別の実施形態では、一連のアミノ酸を、側鎖ファミリーメンバーの順序および/または組成が異なる構造的に類似の一連のアミノ酸に保存的に交換することができる。
【0206】
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列間の用語「パーセント配列同一性」は、2つの配列の最適なアライメントのために導入しなければならない付加または欠失(すなわち、ギャップ)を考慮に入れて、比較ウィンドウにわたって配列が共有する同一のマッチした位置の数を指す。マッチした位置は、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸が標的および基準配列の両方に存在する任意の位置である。標的配列に存在するギャップは、ギャップがヌクレオチドまたはアミノ酸ではないことから計数されない。同様に、基準配列に存在するギャップは、標的配列のヌクレオチドもしくはアミノ酸が計数されない、または基準配列のヌクレオチドもしくはアミノ酸ではないことから、計数されない。
【0207】
配列同一性のパーセンテージは、同一のアミノ酸残基または核酸塩基が両方の配列に存在する位置の数を決定して、マッチした位置の数を得る工程、マッチした位置の数を、比較ウィンドウにおける位置の総数で除算する工程、および結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得る工程によって計算される。2つの配列間の配列の比較およびパーセント配列同一性の決定は、オンライン使用およびダウンロードの両方で容易に入手可能なソフトウェアを使用して行ってもよい。タンパク質およびヌクレオチド配列のアライメントのための適したソフトウェアプログラムは、様々な起源から入手可能である。パーセント配列同一性を決定するための1つの適したプログラムは、米国政府の国立生物工学
情報センター(National Center for Biotechnology
Information、BLAST)のウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なBLASTプログラムスイートの一部であるbl2seqである。Bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムのいずれかを使用して2つの配列間の比較を実行する。BLASTNは、核酸配列を比較するために使用され、BLASTPは、アミノ酸配列を比較するために使用される。他の適したプログラムは、例えば、Needle、Stretcher、Water、またはMatcherであり、これらはバイオインフォマティクスプログラムのEMBOSSスイートの一部であり、同様に欧州バイオインフォマティクス研究所(EBI)のwww.ebi.ac.uk/Tools/psaから入手可能である。
【0208】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチド基準配列と整列する単一のポリヌクレオチドまたはポリペプチド標的配列内の異なる領域は、各々が、自身のパーセント配列同一性を有し得る。パーセント配列同一性の値は、最も近い十の位の値に四捨五入されることに注意されたい。例えば、80.11、80.12、80.13、および80.14は、80.1に切り捨てられるが、80.15、80.16、80.17、80.18、および80.19は、80.2に切り上げられる。同様に長さの値は常に整数であることにも注意されたい。
【0209】
当業者は、パーセント配列同一性の計算のための配列アライメントの生成が、一次配列データのみによって促進されるバイナリ配列-配列比較に限定されないことを認識する。配列アライメントは、複数の配列アライメントから誘導することができる。複数の配列アライメントを生成するための1つの適したプログラムは、www.clustal.orgから入手可能なClustalW2である。別の適したプログラムは、www.drive5.com/muscle/から入手可能なMUSCLEである。ClustalW2およびMUSCLEは、あるいは、例えばEBIからも入手可能である。
【0210】
配列アライメントは、配列データを、構造データ(例えば、結晶学的タンパク質構造)、機能データ(例えば、変異の位置)、または系統発生学データなどの異成分からなる起源からのデータと統合することによって生成することができることも認識されたい。異成分からなるデータを統合して複数の配列アライメントを生成する適したプログラムは、www.tcoffee.org、あるいはEBIからも入手可能なT-Coffeeである。同様に、パーセント配列同一性を計算するために使用される最終的なアライメントを、自動または手動のいずれかで精選してもよいと認識されたい。
【0211】
ポリヌクレオチドバリアントは、コード領域、非コード領域、またはその両方で変化を含み得る。一実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、サイレント置換、付加、または欠失を産生するが、コードされるポリペプチドの特性または活性を変化させない変化を含む。別の実施形態では、ヌクレオチドバリアントは、遺伝子コードの縮重によるサイレント置換によって産生される。他の実施形態では、バリアントは、5~10、1~5、または1~2個のアミノ酸が、任意の組合せで置換、欠失、または付加されている。ポリヌクレオチドバリアントは、多様な理由から、例えば特定の宿主に関してコドン発現を最適化する(ヒトmRNAにおけるコドンを、他の宿主、例えば大腸菌(E.coli)などの細菌宿主のコドンに変化させる)ために産生することができる。
【0212】
天然に存在するバリアントは、「アレルバリアント」と呼ばれ、生物の染色体上の所定の座を占有する遺伝子のいくつかの代替型の1つを指す(Genes II、Lewin,B.編、John Wiley & Sons、New York(1985))。これらのアレルバリアントは、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドレベルで変化することができ、本開示に含まれる。あるいは、天然に存在しないバリアントを、変異誘
発技術または直接合成によって産生することができる。
【0213】
タンパク質操作および組換えDNA技術に関する公知の方法を使用して、ポリペプチドの特徴を改善または変化させるためにバリアントを生成することができる。例として、生物機能を実質的に失うことなく、分泌されたタンパク質のN末端またはC末端から1つまたは複数のアミノ酸を欠失させることができる。その全体を参照によって本明細書に組み入れる、Ronら、J.Biol.Chem.268:2984~2988頁(1993年)は、3、8、または27個のアミノ末端アミノ酸残基を欠失させた後でもヘパリン結合活性を有するバリアントKGFタンパク質を報告した。同様に、インターフェロンガンマは、このタンパク質のカルボキシ末端から8~10個のアミノ酸残基を欠失させた後でも最大10倍高い活性を示した(その全体を参照によって本明細書に組み入れる、Dobeliら、J.Biotechnology 7:199~216頁(1988年))。
【0214】
その上、バリアントがしばしば、天然に存在するタンパク質と類似の生物活性を保持することは、十分な証拠により証明されている。例えば、Gayleとその共同研究者(その全体を参照によって本明細書に組み入れる、J.Biol.Chem 268:22105~22111頁(1993年))は、ヒトサイトカインIL-1aの広範な変異解析を実施した。彼らは、ランダム変異誘発を使用して、分子の全長にわたってバリアントあたり平均で2.5個のアミノ酸変化を有する3,500個を超える個々のIL-1a変異体を生成した。複数の変異を起こり得るあらゆるアミノ酸位置で調べた。研究者らは、「[結合または生物活性]のいずれにもほとんど影響を及ぼすことなく、分子のほとんどを変化させることができる」ことを見出した。(要約書を参照されたい)。実際に、野生型と活性が有意に異なるタンパク質を産生したのは、調べた3,500個を超えるヌクレオチド配列のうちわずか23個のユニークアミノ酸配列に過ぎなかった。
【0215】
上記のように、ポリペプチドバリアントは、例えば改変ポリペプチドを含む。改変には、例えばアセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化(その全体を参照によって本明細書に組み入れる、Meiら、Blood 116:270~79頁(2010年))、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化などのアミノ酸のタンパク質への転移-RNA媒介付加、およびユビキチン化が挙げられる。一部の実施形態では、FVIIIは、任意の簡便な位置で改変され、例えばペグ化される。一部の実施形態では、FVIIIは、FVIIIの表面露出アミノ酸、例えば操作されたシステインであり得る表面露出システインでペグ化される。同上。一部の実施形態では、改変FVIII、例えばペグ化FVIIIは、キメラまたは融合FVIIIである。
【0216】
用語「下流」は、基準ヌクレオチド配列の3’に位置するヌクレオチド配列を指す。「下流」はまた、基準ペプチド配列のC末端に位置するペプチド配列も指し得る。
【0217】
用語「上流」は、基準ヌクレオチド配列の5’に位置するヌクレオチド配列を指す。「上流」はまた、基準ペプチド配列のN末端に位置するペプチド配列も指し得る。
【0218】
本明細書で使用される場合、用語「調節領域」は、コード領域の上流(5’非コード配列)、領域内、または下流(3’非コード配列)に位置し、会合するコード領域の転写、RNAプロセシング、安定性、または翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。調節
領域には、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステムループ構造が挙げられ得る。コード領域が、真核細胞での発現を意図する場合、ポリアデニル化シグナルおよび転写終止配列は通常、コード配列の3’に位置する。
【0219】
遺伝子産物、例えばポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、1つまたは複数のコード領域に作動可能に会合したプロモーターおよび/または他の転写もしくは翻訳制御エレメントを含み得る。プロモーター以外の他の転写制御エレメント、例えばエンハンサー、オペレーター、リプレッサー、および転写終止シグナルもまた、コード領域に作動可能に会合して、遺伝子産物の発現を指示することができる。
【0220】
多様な転写制御領域が当業者に公知である。これらには、サイトメガロウイルス(イントロンAと共に前初期プロモーター)、シミアンウイルス40(初期プロモーター)、およびレトロウイルス(例えば、ラウス肉腫ウイルス)のプロモーターおよびエンハンサーセグメントなどの、しかしこれらに限定されない脊椎動物細胞において機能する転写制御領域が挙げられるがこれらに限定されない。他の転写制御領域には、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモンおよびウサギβ-グロビンなどの脊椎動物遺伝子に由来する領域、ならびに真核細胞において遺伝子発現を制御することができる他の配列が挙げられる。さらに適した転写制御領域には、組織特異的プロモーターおよびエンハンサー、ならびにリンフォカイン誘導可能プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンによって誘導可能なプロモーター)が挙げられる。
【0221】
同様に、多様な翻訳制御エレメントが当業者に公知である。これらには、リボソーム結合部位、翻訳開始および終止コドン、ならびにピコルナウイルス由来のエレメント(特に、配列内リボソーム進入部位またはIRES、同様にCITE配列とも呼ばれる)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0222】
本明細書で使用される場合の用語「発現」は、それによってポリヌクレオチドが遺伝子産物、例えばRNAまたはポリペプチドを産生する過程を指す。
【0223】
「ベクター」は、核酸を宿主細胞にクローニングおよび/または移入するための任意の媒体を指す。ベクターは、結合したセグメントの複製をもたらすために別の核酸セグメントを結合させてもよいレプリコンであり得る。「レプリコン」は、in vivoで自律複製単位として機能する、すなわち、自身の制御下で複製することができる任意の遺伝子エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)を指す。用語「ベクター」は、核酸をin vitro、ex vivo、またはin vivoで細胞に導入するためのウイルスおよび非ウイルス媒体の両方を含む。例えばプラスミド、改変真核生物ウイルス、または改変細菌ウイルスを含む、多数のベクターが公知であり、当技術分野で使用される。ポリヌクレオチドの適したベクターへの挿入は、相補的付着末端を有する適切なポリヌクレオチド断片を選択したベクターにライゲートすることによって行うことができる。
【0224】
用語「プラスミド」は、細胞の中心代謝の一部ではなく、通常、環状二本鎖DNA分子の形態である遺伝子をしばしば有する染色体外エレメントを指す。そのようなエレメントは、複数のヌクレオチド配列が、選択された遺伝子産物に関するプロモーター断片およびDNA配列を、適切な3’非翻訳配列と共に細胞に導入することができる独自の構成に結合または組換えされている、任意の起源に由来する、自律複製配列、ゲノム組込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列、直線、環状、もしくはスーパーコイルの一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAであり得る。
【0225】
使用することができる真核生物ウイルスベクターには、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、およびポックスウイルス、例えばワクシニアウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、またはヘルペスウイルスベクターが挙げられるがこれらに限定されない。非ウイルスベクターには、プラスミド、リポソーム、帯電した脂質(サイトフェクチン)、DNA-タンパク質複合体、およびバイオポリマーが挙げられる。
【0226】
「クローニングベクター」は、結合したセグメントの複製をもたらすために別の核酸セグメントを結合させてもよい、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどの、連続的に複製し、複製開始点を含む単位長さの核酸である「レプリコン」を指す。ある特定のクローニングベクターは、1つの細胞タイプ、例えば細菌において複製することができ、別の細胞、例えば真核細胞において発現することができる。クローニングベクターは典型的に、ベクターおよび/または目的の核酸配列を挿入するための1つもしくは複数のマルチクローニングサイトを含む細胞を選択するために使用することができる1つまたは複数の配列を含む。
【0227】
用語「発現ベクター」は、宿主細胞への挿入後に、挿入された核酸配列を発現させることができるように設計された媒体を指す。挿入された核酸配列は、上記の調節領域に作動可能に会合して配置される。
【0228】
ベクターは、当技術分野で周知の方法、例えばトランスフェクション、電気穿孔、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子銃の使用、またはDNAベクター輸送体によって宿主細胞に導入される。
【0229】
「単離された」ポリペプチド、またはその断片、バリアント、もしくは誘導体は、その天然の環境に存在していないポリペプチドを指す。特定の精製レベルは必要ではない。例えば、単離されたポリペプチドは、単純にその本来のまたは天然の環境から除去することができる。宿主細胞において発現された組換えによって産生されたポリペプチドおよびタンパク質は、任意の適した技術によって分離、分画、または部分的もしくは実質的に精製されている本来のまたは組換えポリペプチドと同様に、本発明の目的に関して単離されたと考えられる。
【0230】
本明細書で使用される場合、用語「宿主細胞」は、組換え核酸を有する、または有することができる細胞または細胞集団を指す。宿主細胞は、原核細胞(例えば、大腸菌(E.coli))であり得るか、あるいは宿主細胞は真核細胞、例えば真菌細胞(例えば、サッカロミセスセレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピチアパストリス(Pichia pastori)、またはシゾサッカロミセスポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などの酵母細胞)、および様々な動物細胞、例えば昆虫細胞(例えば、Sf-9)、または哺乳動物細胞(例えば、HEK293F、CHO、COS-7、NIH-3T3)であり得る。
【0231】
本明細書で使用される場合の「定常状態での分布容積(Vss)」は、薬理学で使用される用語と同じ意味を有し、薬物が分布する見かけの空間(容積)である。Vss=定常状態での血漿中濃度によって除算した体における薬物量。
【0232】
II.本発明の方法
本開示は、凝固因子に対するインヒビターを生じ、1またはそれ以上の以前の免疫寛容療法に失敗した、血友病を有するヒトにおいて免疫寛容を誘導するために、Fc領域に融合された凝固因子を使用することができるという発見に基づくものである。以前は、FV
III-Fcキメラタンパク質を用いる処置が、FVIII処置に対する免疫応答を防止することができると考えられていたが、驚くべきことに、凝固因子-Fcキメラタンパク質を用いる処置が、以前の免疫寛容療法に反応しなかったヒトにおいて以前に生じた免疫応答を軽減することができることが本開示において発見された。かくして、本開示は、ヒトにおける免疫寛容を誘導するための方法であって、ヒトに、凝固因子と、Fcとを含む組成物または凝固因子と、Fc領域もしくはそれをコードするポリヌクレオチドとを含むキメラタンパク質の有効量を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0233】
本開示の別の態様は、血友病を有するヒトにおける免疫寛容を誘導する方法であって、(1)ヒトに、凝固因子と、Fcとを含む組成物または凝固因子と、Fc領域とを含むキメラタンパク質の有効量であって、ヒトにおける免疫寛容を誘導する、組成物またはキメラタンパク質の前記有効量を投与すること;および(2)免疫寛容の誘導後に、ヒトに、組成物またはキメラタンパク質の漸減レジメンを投与することを含む、前記方法に関する。ある特定の実施形態では、免疫寛容の誘導は、ヒトにおける阻害抗体の力価が約0.6BU未満である場合に生じる。ある特定の実施形態では、免疫寛容の誘導は、ヒトにおける阻害抗体の力価が約0.6BU未満であり、血漿中でモニタリングされる凝固因子活性が60%の回復率である場合に生じる。本開示の一部の実施形態では、方法は、(3)漸減レジメンの後、ヒトに、予防用量の凝固因子を投与することをさらに含む。ある特定の態様では、ヒトは、凝固因子に対する以前の免疫寛容療法を用いて処置されていない。凝固因子と、Fc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を、ヒトがインヒビター免疫応答を生じたと決定された任意の時間に、例えば、ヒトにおける阻害免疫応答のレベルを測定した後に、ヒトに投与することができる。他の実施形態では、組成物またはキメラタンパク質を、インヒビター免疫応答の発生を防止するために1つまたはそれ以上のインヒビター免疫応答を未だ生じていないヒトに投与することができる。一部の実施形態では、組成物またはキメラタンパク質を、インヒビター免疫応答を生じる可能性が高いヒト(例えば、家族歴、遺伝的素因、またはバイオマーカーの指示)に投与する。一部の実施形態では、方法は、阻害免疫応答のレベルまたは投与前にインヒビター免疫応答を生じる可能性を測定することをさらに含む。一部の実施形態では、凝固因子と、Fc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を、ヒトがインヒビター免疫応答を生じたか、またはヒトがインヒビター免疫応答を生じる可能性を有すると決定された後、例えば、ヒトにおける阻害免疫応答のレベルまたはインヒビター免疫応答を生じる可能性を測定した後、約1日未満、約2日未満、約3日未満、約4日未満、約5日未満、約6日未満、約7日未満、約2週未満、約3週未満、約4週未満、約2カ月未満、約3カ月未満、約4カ月未満、約5カ月未満、約6カ月未満、約1年未満、約2年未満、約3年未満、約4年未満、または約5年未満でヒトに投与する。ある特定の実施形態では、凝固因子と、Fc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を、ヒトがインヒビター免疫応答を生じたか、またはヒトがインヒビター免疫応答を生じる可能性を有すると決定された直後に、例えば、ヒトにおける阻害免疫応答のレベルまたはインヒビター免疫応答を生じる可能性を測定した後に、ヒトに投与する。特定の実施形態では、凝固因子と、Fc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を、ヒトがインヒビター免疫応答を生じたか、またはヒトがインヒビター免疫応答を生じる可能性を有すると決定された後、例えば、ヒトにおける阻害免疫応答のレベルまたはインヒビター免疫応答を生じる可能性を測定した後、約5分未満、約10分未満、約15分未満、約20分未満、約30分未満、約45分未満、約1時間未満、約2時間未満、約3時間未満、約4時間未満、約5時間未満、約6時間未満、約7時間未満、約8時間未満、約9時間未満、約10時間未満、約11時間未満、約12時間未満、約18時間未満、または約24時間未満でヒトに投与する。特定の実施形態では、凝固因子と、Fc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を、ヒトがインヒビター免疫応答を生じたか、またはヒトがインヒビター免疫応答を生じる可能性を有すると決定された後、例えば、ヒトにおける阻害免疫応答のレベルまたはインヒビター免疫応答を生じる可能性を測定した後、約5分、約10分、約15分、約20分、約30分、約45分、約1時間、約2時
間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約18時間、または約24時間でヒトに投与する。ある特定の実施形態では、凝固因子と、Fc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を、ヒトがインヒビター免疫応答を生じたか、またはヒトがインヒビター免疫応答を生じる可能性を有すると決定された後、例えば、ヒトにおける阻害免疫応答のレベルまたはインヒビター免疫応答を生じる可能性を測定した後、約1日未満でヒトに投与する。
【0234】
インヒビターのレベルがある特定のレベルよりも低くなるまで、またはインヒビターが検出可能でなくなるまで、免疫応答の誘導を継続することができる。ある特定の実施形態では、誘導期間は、少なくとも約24週、少なくとも約26週、少なくとも約28週、少なくとも約30週、少なくとも約32週、少なくとも約34週、少なくとも約36週、少なくとも約38週、少なくとも約40週、少なくとも約42週、少なくとも約44週、少なくとも約46週、少なくとも約48週、少なくとも約50週、少なくとも約52週、少なくとも約54週、少なくとも約56週、少なくとも約58週、少なくとも約60週、少なくとも約62週、少なくとも約64週、少なくとも約66週、少なくとも約68週、少なくとも約70週にわたって継続してもよい。特定の実施形態では、誘導期間は、60週未満である。
【0235】
本発明の方法によって処置される阻害免疫応答は、凝固因子処置の1つまたはそれ以上の効果に負に影響するヒトにおける任意の応答を含んでもよい。一部の実施形態では、阻害免疫応答は、凝固因子に対する阻害抗体、例えば、阻害抗FVIII抗体の産生を含む。ある特定の実施形態では、本開示の方法は、凝固因子と、Fc領域またはそれをコードするポリヌクレオチドとを含む組成物またはキメラタンパク質の有効量を投与する前(例えば、ベースライン時)および後に、ヒトにおいて1つまたはそれ以上の阻害抗体の力価を測定することをさらに含む。一部の実施形態では、投与前(例えば、ベースライン時)の阻害抗体の力価は、少なくとも約0.6ベセスダ単位(BU)である。ある特定の実施形態では、投与前(例えば、ベースライン時)の阻害抗体の力価は、少なくとも約1BU、少なくとも約2BU、少なくとも約3BU、少なくとも約4BU、少なくとも約5BU、少なくとも約6BU、少なくとも約7BU、少なくとも約10BU、少なくとも約20BU、少なくとも約30BU、少なくとも約40BU、少なくとも約50BU、少なくとも約100BU、少なくとも約150BU、または少なくとも約200BUである。1つの特定の実施形態では、投与前(例えば、ベースライン時)の阻害抗体の力価は、少なくとも約5BUである。
【0236】
一部の実施形態では、本発明の方法は、投与前の阻害抗体の力価と比較して、ヒト対象における阻害抗体の力価を低下させる。ある特定の実施形態では、投与後の阻害抗体の力価は、約0.6BU未満である。一部の実施形態では、投与後の阻害抗体の力価は、約0.5BU未満、約0.4BU未満、約0.3BU未満、約0.2BU未満、または約0.1BU未満である。1つの特定の実施形態では、投与後の阻害抗体の力価は、0BUである。他の実施形態では、投与後の阻害抗体の力価は、5BU未満、4BU未満、3BU未満、2BU未満、1BU未満、0.9BU未満、0.8BU未満、0.7BU未満、または0.6BU未満である。
【0237】
一部の実施形態では、投与は、未処置の対照および凝固因子のみで処置されたヒトにおけるマクロファージ分化と比較して、M2様表現型に向かうヒトにおけるマクロファージの分化を増加させる。一部の実施形態では、M2様表現型は、NRF2経路、PPARガンマ経路、またはNRF2経路とPPARガンマ経路との両方の上方調節を含む。一部の実施形態では、M2様表現型は、CD206(MRC1)の上方調節を含む。一部の実施形態では、M2様表現型は、ARG1の上方調節を含む。一部の実施形態では、M2様表現型は、CD206(MRC1)とARG1の上方調節を含む。
【0238】
一部の実施形態では、投与は、未処置の対象または凝固因子のみで処置された対象における1つまたはそれ以上の遺伝子の発現と比較して、ヒトにおける1つまたはそれ以上の遺伝子のより高い発現をもたらす。一部の実施形態では、投与は、Hmox1、PPARガンマ、LPL、EGR2、SLCO4A1、ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)、酸化ストレス誘導増殖インヒビター1(OSGIN1)、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)、グルタチオン-ジスルフィドリダクターゼ(GSR)、グルタミン酸-システインリガーゼ触媒サブユニット(GCLC)、グルタミン酸-システインリガーゼ改変剤サブユニット(GCLM)、NAD(P)Hキノンデヒドロゲナーゼ1(NQO1)、脂肪酸結合タンパク質5(FABP5)、B7-H3(CD276)、SLAMファミリーメンバー3(SLAMF3;リンパ球抗原9;LY9)、SLAMファミリーメンバー7(SLAMF7)、マンノース受容体C-1型(MRC1)、溶質運搬ファミリー12メンバー4(SLC12A)、ニューロピリン1(NRP1)、およびその任意の組合せからなる群から選択される1つまたはそれ以上の遺伝子のより高い発現をもたらす。一部の実施形態では、投与は、NRF2経路の1つまたはそれ以上の遺伝子のより高い発現をもたらす。ある特定の実施形態では、NRF2経路の1つまたはそれ以上の遺伝子は、HO-1、OSGIN1、SOD1、GSR、GCLC、GCLM、NQO1、およびその任意の組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、投与は、PPARガンマ経路の1つまたはそれ以上の遺伝子のより高い発現をもたらす。一部の実施形態では、PPARガンマ経路の1つまたはそれ以上の遺伝子は、PPARガンマ、LPL、FABP5、EGR2、およびその任意の組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、投与は、B7-H3(CD276)、SLAMF3、SLAM7、MRC1、SLC12A、NRP1、およびその任意の組合せからなる群から選択される1つまたはそれ以上の遺伝子のより高い発現をもたらす。特定の実施形態では、投与は、未処置のヒトまたは凝固因子のみを投与されたヒトにおける1つまたはそれ以上の遺伝子の発現と比較して、1つまたはそれ以上の遺伝子のより高い発現をもたらし、ここで、その発現は、少なくとも約1.5倍高い、少なくとも約2倍高い、少なくとも約2.5倍高い、少なくとも約3倍高い、少なくとも約3.5倍高い、少なくとも約4倍高い、少なくとも約4.5倍高い、または少なくとも約5倍高い。
【0239】
一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の遺伝子の示差的発現は、投与後6時間未満で観察される。一部の実施形態では、示差的発現は、投与後12時間未満で観察される。一部の実施形態では、示差的発現は、投与後18時間未満で観察される。一部の実施形態では、示差的発現は、投与後24時間未満で観察される。
【0240】
一部の実施形態では、阻害免疫応答は、細胞媒介性免疫応答を含む。ある特定の実施形態では、細胞媒介性免疫応答は、サイトカインの放出を含む。一部の実施形態では、サイトカインは、免疫応答の増加と関連する任意のサイトカインである。一部の実施形態では、サイトカインは、IL-1、IL-6、IL-16、IL-12、IL-4、IL-17、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターフェロンα、インターフェロンγおよびその任意の組合せからなる群から選択される。一実施形態では、細胞媒介性免疫応答は、IL-12の血清レベルの増加を含む。別の実施形態では、細胞媒介性免疫応答は、IL-4の血清レベルの増加を含む。別の実施形態では、細胞媒介性免疫応答は、IL-17の血清レベルの増加を含む。別の実施形態では、細胞媒介性免疫応答は、TNF-αの血清レベルの増加を含む。
【0241】
様々な遺伝子変異が、阻害免疫応答を生じるリスクの増大と関連付けられている。例えば、TNFの構成的および誘導的転写レベルの増加と関連する、Hap2内のTNF-α-308G>A多型は、阻害免疫応答を生じるリスクの増大と関連付けられている。全体が参照により本明細書に組み入れられる、Astermarkら、Blood 108:
3739~3745頁(2006)を参照されたい。かくして、一部の実施形態では、ヒトは、TNF-αの増加と関連する遺伝的多型を有する。一部の実施形態では、多型は、TNF-α-308G>A多型である。一部の実施形態では、ヒトは、IL10遺伝子における多型、例えば、IL10の分泌の増加と関連する多型を有する。一部の実施形態では、FVIII-Fcを、IL10遺伝子のプロモーター領域中のIL10Gマイクロサテライトの対立遺伝子134と共に対象に投与する。全体が参照により本明細書に組み入れられる、Astermarkら、Hemostatis,Thrombosis,and Vascular Biology 108:3739~3745頁(2006)を参照されたい。
【0242】
一部の実施形態では、ヒトは、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4)発現の低下と関連する遺伝的多型を有する。一部の実施形態では、ヒトは、DR15(HLA-DR15)またはDQB0602 MHC(主要組織適合複合体)クラスII分子に変異を有する。血友病を有する対象における阻害免疫応答の発生と関連する他のMHCクラスII分子は、A3、B7、C7、DQA0102、C2、DQA0103、DQB0603、およびDR13である(Inhibitors in Patients with Hemophilia、E.C.Rodriguez-Merchan & C.A.Lee編、Blackwell Science,Ltd.、2002を参照されたい)。
【0243】
一部の実施形態では、本開示の方法は、FVIIIポリペプチドからなるポリペプチドを用いた以前の処置後の対象における1つまたはそれ以上のサイトカインのレベルと比較して、対象における1つまたはそれ以上のサイトカインのレベルを低下させる。別の実施形態では、本開示の方法は、投与前の対象における1つまたはそれ以上のサイトカインのレベルと比較して、対象における1つまたはそれ以上のサイトカインのレベルを低下させる。他の実施形態では、1つまたはそれ以上の寛容原性分子の発現は、投与前の1つまたはそれ以上の寛容原性分子の発現レベルと比較して、本開示の方法の投与後に増加する。ある特定の実施形態では、1つまたはそれ以上の寛容原性分子は、IL-10、TGF-β、IL-35、IDO-1、およびその任意の組合せから選択される。
【0244】
他の実施形態では、免疫応答は、出血傾向の増大、高い凝固因子消費、凝固因子療法に対する反応の欠如、凝固因子療法の効能の低下、凝固因子の半減期の短縮、およびその任意の組合せからなる群から選択される臨床症状を含む。ある特定の実施形態では、免疫応答は、出血傾向の増大、高い凝固因子消費、凝固因子療法に対する反応の欠如、凝固因子療法の効能の低下、血漿中でモニタリングされる凝固因子活性の回復の低下、凝固因子の半減期の短縮、およびその任意の組合せからなる群から選択される臨床症状を含む。
【0245】
ある特定の実施形態では、ヒトは、阻害免疫応答を有すると以前に診断されている。そのような診断を、当業界で公知の任意の方法を使用して行うことができる。例えば、ヒトが、以下の1つまたはそれ以上:(a)0.6BUより高いか、またはそれと等しい凝固因子に対する阻害抗体の力価;(b)IL-12、IL-4、IL-17、およびTNF-αからなる群から選択される1つまたはそれ以上のサイトカインの血清レベルの増加;(c)出血傾向の増大;(d)高い凝固因子消費;(e)凝固因子療法に対する反応の欠如;(f)凝固因子療法の効能の低下;(g)凝固因子の半減期の短縮、ならびにその任意の組合せを有する場合、ヒトを、凝固因子、例えば、FVIIIに対する免疫応答を有すると特徴付けることができる。1つの特定の実施形態では、ヒトが0.6BUより高いか、またはそれと等しい凝固因子に対する阻害抗体の力価を有する場合、ヒトは凝固因子に対する免疫応答を有すると特徴付けられる。
【0246】
一部の実施形態では、ヒトは、投与の少なくとも約1カ月前、少なくとも約2カ月前、少なくとも約3カ月前、少なくとも約4カ月前、少なくとも約5カ月前、少なくとも約6
カ月前、少なくとも約7カ月前、少なくとも約8カ月前、少なくとも約9カ月前、少なくとも約10カ月前、少なくとも約11カ月前、少なくとも約12カ月前、少なくとも約13カ月前、少なくとも約14カ月前、少なくとも約15カ月前、少なくとも約16カ月前、少なくとも約17カ月前、少なくとも約18カ月前、少なくとも約19カ月前、少なくとも約20カ月前、少なくとも約21カ月前、少なくとも約22カ月前、少なくとも約23カ月前、少なくとも約24カ月前、少なくとも約27カ月前、少なくとも約30カ月前、少なくとも約33カ月前、少なくとも約36カ月前、少なくとも約39カ月前、少なくとも約42カ月前、少なくとも約45カ月前、少なくとも約48カ月前、少なくとも約51カ月前、少なくとも約54カ月前、少なくとも約57カ月前、少なくとも約60カ月前、少なくとも約6年前、少なくとも約7年前、少なくとも約8年前、少なくとも約10年前、少なくとも約15年前、または少なくとも約20年前に凝固因子に対する阻害免疫応答を生じていたと以前に診断されている。一実施形態では、ヒトは、投与の少なくとも約5年前に凝固因子に対する阻害免疫応答を生じていたと以前に診断されている。
【0247】
一部の実施形態では、本開示の方法は、免疫寛容を誘導する標準治療方法と比較して改善された寛容までの時間を提供する。本明細書で使用される用語「寛容までの時間」とは、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の第1の用量の投与と、ヒトにおける免疫寛容の発生との間の時間量を指す。寛容までの時間の減少は、限定されるものではないが、寛容を達成するのに必要とされる総経済的負担の軽減などの、ヒトに対する有意な利益を有してもよい。一部の実施形態では、寛容までの時間は、約1~約24週、約1~約23週、約1~約22週、約1~約21週、約2~約20週、約2~約19週、約2~約18週、約2~約17週、約3~約16週、約3~約15週、約3~約14週、約3~約13週、約4~約12週、約4~約11週、約4~約10週、約4~約9週、約5~約8週、約5~約7週、約5~約6週、約1~約12週、約1~約11週、約1~約10週、約1~約9週、約1~約8週、約1~約7週、約1~約6週、約1~約5週、または約1~約4週である。一部の実施形態では、寛容までの時間は、約70週未満、約65週未満、約60週未満、約58週未満、約56週未満、約54週未満、約52週未満、約50週未満、約48週未満、約46週未満、約44週未満、約42週未満、約40週未満、約38週未満、約36週未満、約34週未満、約32週未満、約30週未満、約28週未満、約26週未満、約24週未満、約23週未満、約22週未満、約21週未満、約20週未満、約19週未満、約18週未満、約17週未満、約16週未満、約15週未満、約14週未満、約13週未満、約12週未満、約11週未満、約10週未満、約9週未満、約8週未満、約7週未満、約6週未満、約5週未満、約4週未満、約3週未満、約2週未満、または約1週未満である。ある特定の実施形態では、寛容までの時間は、約4~約12週である。一実施形態では、寛容までの時間は、約4週である。別の実施形態では、寛容までの時間は、約12週である。一部の実施形態では、寛容までの時間は、約10カ月未満である。一部の実施形態では、寛容までの時間は、約9カ月未満である。一部の実施形態では、寛容までの時間は、約8カ月未満である。一部の実施形態では、寛容までの時間は、約7カ月未満である。一部の実施形態では、寛容までの時間は、約6カ月未満である。一部の実施形態では、寛容までの時間は、約5カ月未満である。一部の実施形態では、寛容までの時間は、約4カ月未満である。一部の実施形態では、本開示の方法は、凝固因子のみを用いる処置後の寛容までの時間と比較して、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を用いる処置後にヒトにおけるより短い寛容までの時間をもたらす。
【0248】
一部の実施形態では、免疫寛容の発生は、約0.6BU未満の凝固因子に対する阻害抗体の力価を特徴とする。一部の実施形態では、免疫寛容の発生は、約0.5BU未満の凝固因子に対する阻害抗体の力価を特徴とする。一部の実施形態では、免疫寛容の発生は、約0.4BU未満の凝固因子に対する阻害抗体の力価を特徴とする。一部の実施形態では、免疫寛容の発生は、約0.3BU未満の凝固因子に対する阻害抗体の力価を特徴とする
。一部の実施形態では、免疫寛容の発生は、約0.2BU未満の凝固因子に対する阻害抗体の力価を特徴とする。一部の実施形態では、免疫寛容の発生は、約0.1BU未満の凝固因子に対する阻害抗体の力価を特徴とする。一部の実施形態では、免疫寛容の発生は、約0.0BUの凝固因子に対する阻害抗体の力価を特徴とする。ある特定の実施形態では、阻害免疫抗体の力価は、2回の連続する測定において、例えば、4週間以内の2つの連続する週において観察される。
【0249】
一部の実施形態では、免疫寛容の発生は、66%を超える増分回復(例えば、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%の増分回復)を特徴とする。本明細書で使用される場合、「増分回復」とは、輸注の15~30分後のピークFVIIIレベルを指す。
【0250】
誘導期間および漸減期間が完了した後、対象を、キメラタンパク質の予防的処置に置くことができる。例示的な予防投薬レジメンは、4日毎に約50IU/kgのキメラタンパク質または3~5日間隔で約25IU/kg~約65IU/kgのキメラタンパク質であってもよい。6歳未満の小児については、週2回、約50IU/kgのキメラタンパク質または3~5日間隔で約25IU/kg~約65IU/kgのキメラタンパク質を与えることができる。worldwideweb.eloctate.com/_assets/pdf/ELOCTATE_pei_January2017.pdfで入手可能なELOCTATE(登録商標)の添付文書を参照されたい。
【0251】
一部の実施形態では、本開示の方法を用いて処置されるヒトは、免疫刺激療法を受けているか、または最近受けたことがある。例えば、インヒビターは、インターフェロンによる処置を受けているHCV陽性血友病A患者ならびに抗レトロウイルス療法と関連する免疫再構築症候群を有するHIV陽性血友病A患者においても報告されている。Report of Expert Meeting on FVIII Products and Inhibitor Development、European Medicines Agency(2006年2月28日~2006年3月2日)を参照されたい。かくして、一部の実施形態では、ヒトは、インターフェロン療法を受けている。一部の実施形態では、ヒトは、抗ウイルス療法を受けている。一部の実施形態では、ヒトは、抗レトロウイルス療法を受けており、免疫再構築症候群を有している。
【0252】
ある特定の実施形態では、ヒトは、凝固因子、例えば、FVIIIに対する150曝露日(ED)未満を有していた。一実施形態では、ヒトは、50ED未満を有していた。別の実施形態では、ヒトは、20ED未満を有していた。
【0253】
本開示の一部の態様は、それを必要とする対象における凝固因子に対するアレルギー反応またはアナフィラキシー反応の重症度または発生を低減する方法であって、対象に、凝固因子と、Fc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を投与することを含む、前記方法に関する。一部の実施形態では、組成物またはキメラタンパク質の投与は、凝固因子に対するアナフィラキシー様反応の重症度を低減する。一部の実施形態では、組成物またはキメラタンパク質の投与は、凝固因子に対するアレルギー反応の重症度を低減する。
【0254】
II.A.キメラタンパク質
本明細書に開示される免疫寛容を誘導する方法は、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質に一般に適用可能であり、ここで、凝固因子は、任意の公知の凝固因子、その断片、またはそのバリアントであってよく、Fc領域は、任意の公知のFc
領域、その断片、またはそのバリアントであってよい。一部の実施形態では、凝固因子は、第VII因子(FVII)、第VIIa因子(FVIIa)、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、第X因子(FX)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、またはその任意の組合せからなる群から選択される。したがって、FVIIIFcキメラタンパク質、およびその使用に関する本開示は、凝固因子部分と、Fc部分とを含む他のキメラタンパク質にも同等に適用可能である。任意の凝固因子または任意のその断片または任意のそのバリアントを、本開示の方法において使用することができる。同様に、任意のFcまたは任意のその断片または任意のそのバリアントを、本開示の方法において使用することができる。一部の特定例では、キメラタンパク質の凝固因子部分は、FVIIIである。
【0255】
一部の実施形態では、凝固因子と、Fcとは、別々のポリペプチド鎖上に存在する。一部の実施形態では、凝固因子と、Fcとは、連結されていないか、または共有結合によって互いに結合している。
【0256】
他の実施形態では、凝固因子は、凝固因子模倣体であってよい。凝固因子模倣体は、1つまたはそれ以上の凝固因子活性を示すことができる。例えば、抗体またはその抗原結合部分は、第IX因子と第X因子との両方に結合することによって、FVIIIのように作用することができる。抗体またはその抗原結合部分がFc領域を含有する場合、そのような抗体またはその抗原結合部分を本発明の方法のために使用することができる。別の実施形態では、凝固因子は、FVIII活性を有するペプチドである。
【0257】
これに関して、本開示は、一般に、ヒトにおける免疫寛容を誘導する方法であって、対象に、凝固因子とFc部分とを含む組成物またはキメラタンパク質を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0258】
II.A.1.第VIII因子
本明細書で使用される場合、本出願を通して「FVIII」と省略される「第VIII因子」は、別途特定しない限り、凝固におけるその通常の役割において機能的なFVIIIポリペプチドを意味する。かくして、FVIIIという用語は、機能的であるポリペプチドバリアントを含む。「FVIIIタンパク質」は、FVIIIポリペプチド(もしくはタンパク質)またはFVIIIと互換的に使用される。FVIII機能の例としては、限定されるものではないが、凝固を活性化する能力、第IX因子のためのコファクターとして作用する能力、またはCa2+およびリン脂質の存在下で第IX因子とのテンナーゼ複合体を形成した後、第X因子を活性化型Xaに変換する能力が挙げられる。FVIIIタンパク質は、ヒト、ブタ、イヌ、ラット、またはマウスFVIIIタンパク質であってもよい。さらに、ヒトおよび他の種に由来するFVIII間の比較により、機能にとって必要とされる可能性がある保存された残基が同定された(Cameronら、Thromb.Haemost.79:317~22頁(1998);米国特許第6,251,632号)。多くの機能的断片、変異体および改変型と同様、完全長ポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列が公知である。様々なFVIIIアミノ酸およびヌクレオチド配列が、例えば、米国特許出願公開第2015/0158929号A1、第2014/0308230号A1、および第2014/0370035号A1ならびに国際公開第WO2015/106052号A1に開示されている。FVIIIポリペプチドとしては、例えば、完全長FVIII、完全長FVIII-N末端のMet、成熟FVIII(-シグナル配列)、N末端に追加のMetを有する成熟FVIII、および/またはBドメインが完全もしくは部分的に欠失したFVIIIが挙げられる。FVIIIバリアントは、部分的欠失であるにしろ、完全な欠失であるにしろ、Bドメインの欠失を含む。
【0259】
本明細書で使用される凝固因子またはキメラタンパク質中のFVIII部分は、FVI
II活性を有する。FVIII活性を、当業界で公知の任意の方法によって測定することができる。凝固系の機能を評価するためのいくつかの試験:活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)試験、発色アッセイ、ROTEMアッセイ、プロトロンビン時間(PT)試験(INRを決定するためにも使用される)、フィブリノゲン試験(Clauss法によることが多い)、血小板数、血小板機能試験(PFA-100によることが多い)、TCT、出血時間、混合試験(患者の血漿を正常な血漿と混合した場合に異常が是正されるかどうか)、凝固因子アッセイ、抗リン脂質抗体、D-二量体、遺伝子試験(例えば、第V因子Leiden、プロトロンビン変異G20210A)、希釈ラッセル蛇毒時間(dRVVT)、雑多な血小板機能試験、トロンボエラストグラフィー(TEGもしくはSonoclot)、トロンボエラストメトリー(TEM(登録商標)、例えば、ROTEM(登録商標))、またはオイグロブリン溶解時間(ELT)が利用可能である。
【0260】
aPTT試験は、「内因性」(接触活性化経路とも呼ばれる)経路と、共通凝固経路との両方の効能を測定する性能指標である。この試験は、市販の組換え凝固因子、例えば、FVIIIの凝固活性を測定するために一般的に使用される。それは、外因性経路を測定する、プロトロンビン時間(PT)と共に使用される。
【0261】
ROTEM分析は、止血の全動力学:凝固時間、クロット形成、クロット安定性および溶解に関する情報を提供する。トロンボエラストメトリーにおける様々なパラメータは、血漿凝固系、血小板機能、線維素溶解、またはこれらの相互作用に影響する多くの因子の活性に依存する。このアッセイは、二次止血の完全な見解を提供することができる。
【0262】
発色アッセイ機構は、活性化されたFVIIIが、活性化された第IX因子、リン脂質およびカルシウムイオンの存在下で第X因子の第Xa因子への変換を促進する、血液凝固カスケードの原理に基づく。第Xa因子活性は、第Xa因子に特異的なp-ニトロアニリド(pNA)基質の加水分解によって評価される。405nMで測定されたp-ニトロアニリンの初期放出速度は、第Xa因子活性に正比例し、かくして、試料中のFVIII活性に正比例する。
【0263】
発色アッセイは、FVIII and Factor IX Subcommittee of the Scientific and Standardization Committee(SSC) of the International Society on Thrombosis and Hemostatsis(ISTH)によって推奨されている。1994年以来、発色アッセイは、FVIII濃縮液効力の割り当てのための欧州薬局方の参考方法でもあった。かくして、一実施形態では、FVIIIを含むキメラタンパク質は、成熟FVIIIを含むキメラタンパク質またはBDD FVIII(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、もしくはELOCTATE(登録商標))と同等のFVIII活性を有する。
【0264】
別の実施形態では、本開示のFVIIIを含むキメラタンパク質は、成熟FVIIIを含むキメラタンパク質またはBDD FVIII(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、もしくはELOCTATE(登録商標))と同等の第Xa因子生成速度を有する。
【0265】
第X因子または第Xa因子を活性化するために、活性化された第IX因子(第IXa因子)は、第X因子中の1個のアルギニン-イソロイシン結合を加水分解して、Ca2+、膜リン脂質、およびFVIIIコファクターの存在下で第Xa因子を形成する。したがって、FVIIIと第IX因子との相互作用は、凝固経路において重要である。ある特定の実施形態では、FVIIIを含むキメラタンパク質は、成熟FVIII配列を含むキメラタンパク質またはBDD FVIII(例えば、ADVATE(登録商標)、REFAC
TO(登録商標)、もしくはELOCTATE(登録商標))と同等の速度で第IXa因子と相互作用することができる。
【0266】
さらに、FVIIIは、フォンヴィレブランド因子に結合するが、循環中では不活性である。FVIIIは、VWFに結合していない場合、急速に分解し、トロンビンの作用によってVWFから放出される。一部の実施形態では、FVIIIを含むキメラタンパク質は、成熟FVIII配列を含むキメラタンパク質またはBDD FVIII(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、もしくはELOCTATE(登録商標))と同等のレベルでフォンヴィレブランド因子に結合する。
【0267】
FVIIIを、カルシウムおよびリン脂質の存在下で活性化されたプロテインCによって不活化することができる。活性化されたプロテインCは、A1ドメイン中のアルギニン336の後で、FVIII重鎖を切断し、第X因子基質相互作用部位を破壊し、A2ドメイン中のアルギニン562の後で切断し、A2ドメインの解離を増強し、ならびに第IXa因子との相互作用部位を破壊する。この切断はまた、A2ドメイン(43kDa)を両断し、A2-N(18kDa)とA2-C(25kDa)ドメインを生成する。かくして、活性化されたプロテインCは、重鎖中の複数の切断部位を触媒することができる。一実施形態では、FVIIIを含むキメラタンパク質は、成熟FVIII配列を含むキメラタンパク質またはBDD FVIII(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、もしくはELOCTATE(登録商標))と同等のレベルで活性化されたプロテインCによって不活化される。
【0268】
他の実施形態では、FVIIIを含むキメラタンパク質は、成熟FVIII配列を含むキメラタンパク質またはBDD FVIII(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、もしくはELOCTATE(登録商標))と同等のin vivoでのFVIII活性を有する。特定の実施形態では、FVIIIを含むキメラタンパク質は、HemAマウス尾静脈離断モデルにおいて、成熟FVIII配列を含むキメラタンパク質またはBDD FVIII(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、もしくはELOCTATE(登録商標))と同等のレベルでHemAマウスを保護することができる。
【0269】
本明細書で使用される場合、FVIIIの「Bドメイン」は、内部アミノ酸配列同一性およびトロンビンによるタンパク質分解的切断部位によって定義される、当業界で公知のBドメインと同じであり、例えば、成熟ヒトFVIIIの残基Ser741~Arg1648である。他のヒトFVIIIドメインは、成熟ヒトFVIIIと比較した、以下のアミノ酸残基:成熟FVIIIのA1、残基Ala1~Arg372;A2、残基Ser373~Arg740;A3、残基Ser1690~Ile2032;C1、残基Arg2033~Asn2172;C2、残基Ser2173~Tyr2332によって定義される。配列番号を参照せずに本明細書で使用される配列の残基番号は、別途指摘しない限り、シグナルペプチド配列(19アミノ酸)を含まないFVIII配列に一致する。FVIII重鎖としても知られる、A3-C1-C2配列は、残基Ser1690~Tyr2332を含む。残りの配列、残基Glu1649~Arg1689は、通常、FVIII軽鎖活性化ペプチドと呼ばれる。ブタ、マウスおよびイヌFVIIIに関する、Bドメインを含む、全てのドメインの境界の位置も、当業界で公知である。一実施形態では、FVIIIのBドメインは欠失している(「Bドメイン欠失FVIII」または「BDD FVIII」)。BDD FVIIIの例は、REFACTO(登録商標)(組換えBDD FVIII)である。1つの特定の実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIバリアントは、成熟FVIIIのアミノ酸残基746~1648の欠失を含む。
【0270】
「Bドメイン欠失FVIII」は、米国特許第6,316,226号、第6,346,
513号、第7,041,635号、第5,789,203号、第6,060,447号、第5,595,886号、第6,228,620号、第5,972,885号、第6,048,720号、第5,543,502号、第5,610,278号、第5,171,844号、第5,112,950号、第4,868,112号、および第6,458,563号ならびに国際公開第WO2015106052号A1(PCT/US2015/010738)に開示された完全な、または部分的な欠失を有してもよい。一部の実施形態では、本開示の方法において使用されるBドメイン欠失FVIII配列は、米国特許第6,316,226号(米国特許第6,346,513号にも)の4列目、第4行~5列目、第28行および実施例1~5に開示された欠失のいずれか1つを含む。別の実施形態では、Bドメイン欠失第VIII因子は、S743/Q1638 Bドメイン欠失第VIII因子(SQ BDD FVIII)(例えば、アミノ酸744~アミノ酸1637の欠失を有する第VIII因子、例えば、成熟FVIIIのアミノ酸1~743およびアミノ酸1638~2332を有する第VIII因子)である。一部の実施形態では、本開示の方法において使用されるBドメイン欠失FVIIIは、米国特許第5,789,203号(米国特許第6,060,447号、米国特許第5,595,886号、および米国特許第6,228,620号)の2列目、第26~51行および実施例5~8に開示された欠失を有する。一部の実施形態では、Bドメイン欠失第VIII因子は、米国特許第5,972,885号の1列目、第25行~第2列、第40行;米国特許第6,048,720号の6列目、第1~22行および実施例1;米国特許第5,543,502号の2列目、第17~46行;米国特許第5,171,844号の4列目、第22行~5列目、第36行;米国特許第5,112,950号の2列目、第55~68行、図2、および実施例1;米国特許第4,868,112号の2列目、第2行~19列目、第21行および表2;米国特許第7,041,635号の2列目、第1行~3列目、第19行、3列目、第40行~4列目、第67行、7列目、第43行~8列目、第26行、および11列目、第5行~13列目、第39行;または米国特許第6,458,563号の4列目、第25~53行に記載された欠失を有する。一部の実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIは、WO91/09122に記載されたように、Bドメインの多くの欠失を有するが、2つのポリペプチド鎖への一次翻訳産物のin vivoでのタンパク質分解的プロセッシングにとって必須であるBドメインのアミノ末端配列を依然として含有する。一部の実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIは、アミノ酸747~1638の欠失、すなわち、実質的にBドメインの完全な欠失を用いて構築される。Hoeben R.C.ら、J.Biol.Chem.265(13):7318~7323頁(1990)。Bドメイン欠失第VIII因子はまた、FVIIIのアミノ酸771~1666またはアミノ酸868~1562の欠失を含有してもよい。Meulien P.ら、Protein Eng.2(4):301~6頁(1988)。本発明の一部であるさらなるBドメイン欠失としては、アミノ酸982~1562または760~1639(Tooleら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1986)83、5939~5942頁))、797~1562(Eatonら、Biochemistry(1986)25:8343~8347頁))、741~1646(Kaufman(PCT公開第WO87/04187))、747~1560(Sarverら、DNA(1987)6:553~564頁))、741~1648(Pasek(PCT公開88/00831))、または816~1598または741~1648(Lagner(Behring Inst.Mitt.(1988)82:16~25頁、EP295597))の欠失が挙げられる。1つの特定の実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIは、成熟FVIIIのアミノ酸残基746~1648の欠失を含む。別の実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIは、成熟FVIIIのアミノ酸残基745~1648の欠失を含む。
【0271】
他の実施形態では、BDD FVIIIは、1つまたはそれ以上のN結合グリコシル化部位、例えば、完全長FVIII配列のアミノ酸配列に対応する、残基757、784、828、900、963、または場合により、943を保持するBドメインの断片を含有
するFVIIIポリペプチドを含む。Bドメイン断片の例は、Miao,H.Z.ら、Blood 103(a):3412~3419頁(2004)、Kasuda,Aら、J.Thromb.Haemost.6:1352~1359頁(2008)、およびPipe,S.W.ら、J.Thromb.Haemost.9:2235~2242頁(2011)に開示されたBドメインの226アミノ酸または163アミノ酸を含む(すなわち、Bドメインの最初の226アミノ酸または163アミノ酸が保持される)。さらに他の実施形態では、BDD FVIIIは、BDD FVIIIタンパク質の発現を改善するために残基309に点突然変異(PheからSerへの)をさらに含む。さらに他の実施形態では、BDD FVIIIは、Bドメインの一部を含有するが、1つまたはそれ以上のフリン切断部位(例えば、Arg1313およびArg1648)を含有しないFVIIIポリペプチドを含む。Pipe,S.W.ら、J.Thromb.Haemost.9:2235~2242頁(2011)を参照されたい。一部の実施形態では、BDD
FVIIIは、成熟完全長FVIIIに対応するアミノ酸765~1652中に欠失を含有する一本鎖FVIIIを含む(rVIII-SingleChainおよびAFSTYLA(登録商標)としても知られる)。米国特許第7,041,635号を参照されたい。前記欠失のそれぞれを、任意のFVIII配列中で作製することができる。
【0272】
上記および下記に考察されるように、多くの機能的FVIIIバリアントが公知である。さらに、FVIIIにおける数百個の非機能的変異が血友病患者において同定されており、FVIII機能に対するこれらの変異の効果が、それらが、置換の性質というよりはむしろ、FVIIIの3次元構造内にあることにより多く起因することが決定された(全体が参照により本明細書に組み入れられるCutlerら、Hum.Mutat.19:274~8頁(2002))。さらに、ヒトと他の種に由来するFVIII間の比較により、機能にとって必要とされる可能性がある保存された残基が同定された(全体が参照により本明細書に組み入れられるCameronら、Thromb.Haemost.79:317~22頁(1998);米国特許第6,251,632号)。
【0273】
一部の実施形態では、FVIIIとFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量は、Fc領域を含まないFVIIIの有効量と同等である。ある特定の実施形態では、有効量は、約20IU/kg~約400IU/kgである。ある特定の実施形態では、有効量は、約20IU/kg~約300IU/kgである。一部の実施形態では、有効量は、約50IU/kg~約300IU/kgである。一部の実施形態では、有効量は、約50IU/kg~約200IU/kgである。一部の実施形態では、有効量は、約100IU/kg~約300IU/kg、約100IU/kg~約200IU/kg、約100IU/kg~約290IU/kg、約100IU/kg~約280IU/kg、約100IU/kg~約270IU/kg、約100IU/kg~約260IU/kg、約100IU/kg~約250IU/kg、約100IU/kg~約240IU/kg、約100IU/kg~約230IU/kg、約100IU/kg~約220IU/kg、約100IU/kg~約210IU/kg、約150IU/kg~約300IU/kg、約150IU/kg~約290IU/kg、約150IU/kg~約280IU/kg、約150IU/kg~約270IU/kg、約150IU/kg~約260IU/kg、約150IU/kg~約250IU/kg、約150IU/kg~約240IU/kg、約140IU/kg~約250IU/kg、約130IU/kg~約260IU/kg、約120IU/kg~約270IU/kg、約110IU/kg~約280IU/kgである。1つの特定の実施形態では、有効量は、約200IU/kg~約300IU/kgである。別の実施形態では、有効量は、約200IU/kg~約290IU/kgである。他の実施形態では、有効量は、約200IU/kg~約280IU/kg、約200IU/kg~約270IU/kg、約200IU/kg~約260IU/kg、約200IU/kg~約250IU/kg、約200IU/kg~約240IU/kg、約200IU/kg~約230IU/kg、約200IU/kg~約220IU/kg、または約200IU/kg~約
210IU/kgである。
【0274】
一部の実施形態では、有効量は、約50IU/kg、約60IU/kg、約70IU/kg、約80IU/kg、約90IU/kg、約100IU/kg、約105IU/kg、約110IU/kg、約115IU/kg、約120IU/kg、約125IU/kg、約130IU/kg、約135IU/kg、約140IU/kg、約145IU/kg、約150IU/kg、約155IU/kg、約160IU/kg、約165IU/kg、約170IU/kg、約175IU/kg、約180IU/kg、約185IU/kg、約190IU/kg、約195IU/kg、約200IU/kg、約225IU/kg、約250IU/kg、約275IU/kg、または約200IU/kgである。1つの特定の実施形態では、有効量は、約150IU/kg/kgである。別の実施形態では、有効量は、約200IU/kgである。別の実施形態では、有効量は、約250IU/kgである。別の実施形態では、有効量は、約50IU/kgである。別の実施形態では、有効量は、約100IU/kgである。
【0275】
FVIIIと、Fc領域またはその断片とを含むキメラタンパク質を投与する場合の投薬間隔は、Fcドメインを含まない凝固因子の等量にとって必要とされる投薬間隔よりも少なくとも約1.5倍長いものであってもよい。投薬間隔は、Fcドメインを含まないFVIIIの等量にとって必要とされる投薬間隔よりも、少なくとも約1.5~6倍長い、1.5倍~5倍長い、1.5倍~4倍長い、1.5倍~3倍長い、または1.5倍~2倍長いものであってもよい。
【0276】
一部の実施形態では、FVIIIとFc領域とを含むキメラタンパク質の有効用量は、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日、約21日、約22日、約23日、または約24日の投薬間隔でヒトに投与される。一部の実施形態では、FVIIIとFc領域とを含むキメラタンパク質の有効用量は、約25日、約26日、約27日、約28日、約29日、約30日、約45日、または約60日の投薬間隔でヒトに投与される。
【0277】
一部の実施形態では、FVIIIと、Fc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質は、約1~約14日、約1~約13日、約1~約12日、約1~約11日、約1~約10日、約1~約9日、約1~約8日、約1~約7日、約1~約6日、約1~約5日、約1~約4日、約1~約3日、約1~約2日、約2~約14日、約3~約14日、約4~約14日、約5~約14日、約6~約14日、約7~約14日、約8~約14日、約9~約14日、約10~約14日、約11~約14日、約12~約14日、約13~約14日、または約5~約10日の投薬間隔で投与される。他の実施形態では、FVIIIと、Fc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質は、約1~約21日、約1~約20日、約1~約19日、約1~約18日、約1~約17日、約1~約16日、約1~約15日、約1~約14日、約1~約13日、約1~約12日、約1~約11日、約1~約10日、約1~約9日、約1~約8日、約1~約7日、約1~約6日、約1~約5日、約1~約4日、約1~約3日、約1~約2日、約2~約21日、約3~約21日、約4~約21日、約5~約21日、約6~約21日、約7~約21日、約8~約21日、約9~約21日、約10~約21日、約11~約21日、約12~約21日、約13~約21日、約14~約21日、約15~約21日、約16~約21日、約17~約21日、約18~約21日、約19~約21日、約20~約21日、約5~約10日、約10~約15日、約15~約20日の投薬間隔で投与される。ある特定の実施形態では、FVIIIと、Fc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質は、約2~約6日の投薬間隔で投与される。別の実施形態では、FVIIIと、Fc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質は、約3~約5日の投薬間隔で投与される。
【0278】
一実施形態では、有効量は、25~65IU/kg(25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、62、64、または65IU/kg)であり、投薬間隔は、3~5、3~6、3~7、3、4、5、6、7、または8日もしくはそれ以上の日数毎に1回、または週に3回、または週に3回以下である。別の実施形態では、有効量は、65IU/kgであり、投薬間隔は週に1回、または6~7日毎に1回である。用量は、それらが必要である限り、反復的に投与することができる(例えば、少なくとも10、20、28、30、40、50、52、または57週、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10年)。1つの特定の実施形態では、有効用量は、約25~65IU/kgであり、投薬間隔は、3~5日毎に1回である。
【0279】
一実施形態では、有効量は、約200IU/kgであり、有効量は毎日投与される。別の実施形態では、有効量は約50IU/kgであり、有効量は週に約3回投与される。
【0280】
ある特定の実施形態では、有効量または有効用量は、単回用量として投与される。一部の実施形態では、有効量または有効用量は、1日を通して2回またはそれ以上の用量で投与される。
【0281】
一部の実施形態では、FVIIIと、Fc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質は、寛容化が観察されるまで、1日1回、約200IU/kgの用量でヒトに投与される。一部の実施形態では、寛容化期間は、約4週~約36カ月延びる。一部の実施形態では、寛容化期間は、約4週、約5週、約6週、約7週、約8週、約9週、約10週、約11週、約12週、約3カ月、約4カ月、約5カ月、約6カ月、約7カ月、約8カ月、約9カ月、約10カ月、約11カ月、約12カ月、約13カ月、約14カ月、約15カ月、約16カ月、約17カ月、約18カ月、約19カ月、約20カ月、約21カ月、約22カ月、約23カ月、約24カ月、約25カ月、約26カ月、約27カ月、約28カ月、約29カ月、約30カ月、約31カ月、約32カ月、約33カ月、約34カ月、約35カ月、または約36カ月延びる。
【0282】
ある特定の実施形態では、一度、免疫寛容が達成されたら、ヒトを漸減期間にかける。本明細書で使用される用語「漸減期間」および「漸減レジメン」は、1またはそれ以上の漸減用量が投与される投薬レジメンと指すように互換的に使用される。一部の実施形態では、漸減期間は、約20IU/kg~約400IU/kgの投与を含む。ある特定の実施形態では、漸減期間は、約20IU/kg~約300IU/kgの投与を含む。一部の実施形態では、漸減期間は、約50IU/kg~約300IU/kgの投与を含む。一部の実施形態では、漸減期間は、約50IU/kg~約100IU/kgの投与を含む。一部の実施形態では、漸減期間は、約100IU/kg~約300IU/kg、約100IU/kg~約200IU/kg、約100IU/kg~約290IU/kg、約100IU/kg~約280IU/kg、約100IU/kg~約270IU/kg、約100IU/kg~約260IU/kg、約100IU/kg~約250IU/kg、約100IU/kg~約240IU/kg、約100IU/kg~約230IU/kg、約100IU/kg~約220IU/kg、約100IU/kg~約210IU/kg、約150IU/kg~約300IU/kg、約150IU/kg~約290IU/kg、約150IU/kg~約280IU/kg、約150IU/kg~約270IU/kg、約150IU/kg~約260IU/kg、約150IU/kg~約250IU/kg、約150IU/kg~約240IU/kg、約140IU/kg~約250IU/kg、約130IU/kg~約260IU/kg、約120IU/kg~約270IU/kg、約110IU/kg~約280IU/kgの投与を含む。1つの特定の実施形態では、漸減期間は、約
200IU/kg~約300IU/kgの投与を含む。別の実施形態では、漸減期間は、約200IU/kg~約290IU/kgの投与を含む。他の実施形態では、漸減期間は、約200IU/kg~約280IU/kg、約200IU/kg~約270IU/kg、約200IU/kg~約260IU/kg、約200IU/kg~約250IU/kg、約200IU/kg~約240IU/kg、約200IU/kg~約230IU/kg、約200IU/kg~約220IU/kg、または約200IU/kg~約210IU/kgの投与を含む。別の実施形態では、漸減レジメンは、約50IU/kg~約100IU/kgの組成物またはキメラタンパク質の漸減用量を投与することを含む。1つの特定の実施形態では、漸減レジメンは、約50IU/kgの組成物またはキメラタンパク質の漸減用量を投与することを含む。別の実施形態では、漸減レジメンは、約150IU/kgの組成物またはキメラタンパク質の漸減用量を投与することを含む。別の実施形態では、漸減レジメンは、約125IU/kgの組成物またはキメラタンパク質の漸減用量を投与することを含む。別の特定の実施形態では、漸減レジメンは、約100IU/kgの組成物またはキメラタンパク質の漸減用量を投与することを含む。別の実施形態では、漸減レジメンは、約90U/kgの組成物またはキメラタンパク質の漸減用量を投与することを含む。別の実施形態では、漸減レジメンは、約80IU/kgの組成物またはキメラタンパク質の漸減用量を投与することを含む。別の実施形態では、漸減レジメンは、約75IU/kgの組成物またはキメラタンパク質の漸減用量を投与することを含む。別の実施形態では、漸減レジメンは、約70IU/kgの組成物またはキメラタンパク質の漸減用量を投与することを含む。別の実施形態では、漸減レジメンは、約60IU/kgの組成物またはキメラタンパク質の漸減用量を投与することを含む。別の実施形態では、漸減レジメンは、約40IU/kgの組成物またはキメラタンパク質の漸減用量を投与することを含む。別の実施形態では、漸減レジメンは、約30IU/kgの組成物またはキメラタンパク質の漸減用量を投与することを含む。別の実施形態では、漸減レジメンは、約25IU/kgの組成物またはキメラタンパク質の漸減用量を投与することを含む。別の実施形態では、漸減レジメンは、約20IU/kgの組成物またはキメラタンパク質の漸減用量を投与することを含む。別の実施形態では、漸減レジメンは、約10IU/kgの組成物またはキメラタンパク質の漸減用量を投与することを含む。
【0283】
一部の実施形態では、漸減期間は、組成物またはキメラタンパク質の毎日の投与を含む。他の実施形態では、漸減期間は、約2日毎に1回、約3日毎に1回、約4日毎に1回、約5日毎に1回、約6日毎に1回、約7日毎に1回、約8日毎に1回、約9日毎に1回、約10日毎に1回、約11日毎に1回、約12日毎に1回、約13日毎に1回、または約14日毎に1回の組成物またはキメラタンパク質の投与を含む。
【0284】
ある特定の実施形態では、漸減用量は、1日1回、1日おきに1回、または毎週3回投与される。一部の実施形態では、漸減用量は、少なくとも約1週、少なくとも約2週、少なくとも約3週、少なくとも約4週、少なくとも約5週、少なくとも約6週、少なくとも約7週、少なくとも約8週、少なくとも約9週、少なくとも約10週、少なくとも約11週、少なくとも約12週、少なくとも約13週、少なくとも約14週、少なくとも約15週、少なくとも約16週、少なくとも約17週、少なくとも約18週、少なくとも約19週、少なくとも約20週、少なくとも約21週、少なくとも約22週、少なくとも約23週、少なくとも約24週、少なくとも約25週、少なくとも約26週、少なくとも約27週、少なくとも約28週、少なくとも約29週、少なくとも約30週、少なくとも約31週、または少なくとも約32週にわたって投与される。特定の実施形態では、漸減用量は、約16週またはそれ以下にわたって投与される。
【0285】
ある特定の実施形態では、組成物またはキメラタンパク質の用量は、漸減期間に徐々に減少し、投薬間隔は同じままである。他の実施形態では、投薬間隔は、漸減期間に増大し、組成物またはキメラタンパク質の用量は同じままである。一部の実施形態では、組成物
またはキメラタンパク質の用量は漸減期間に徐々に減少し、投薬間隔は徐々に増大する。
【0286】
1つの特定の実施形態では、漸減期間は、1日おきに約200IU/kgのキメラ凝固因子の投与、次いで、用量および投薬間隔のさらなる減少を含む。他の実施形態では、1日に必要とされるキメラタンパク質の用量を、2用量、3用量、またはそれ以上の用量に分割することができる。例えば、約200IU/kgのキメラタンパク質を、1日2回、約100IU/kg、1日3回の約70IU/kg、または1日4回の約50IU/kgに分割することができる。
【0287】
一部の実施形態では、漸減期間は、約1カ月~約6カ月延びる。ある特定の実施形態では、漸減期間は、約1カ月、約2カ月、約3カ月、約4カ月、約5カ月、または約6カ月延びる。1つの特定の実施形態では、漸減期間は、約4カ月延びる。
【0288】
ある特定の実施形態では、漸減レジメンは、免疫寛容後、第1週から第6週まで、1日1回、約100IU/kgのキメラタンパク質の漸減用量を投与することを含む。ある特定の実施形態では、漸減レジメンは、免疫寛容後、第6週から第12週まで、1日おきに1回、約100IU/kgのキメラタンパク質の漸減用量を投与することをさらに含む。ある特定の実施形態では、漸減レジメンは、第12週から第16週まで、1日おきに1回、約50IU/kgのキメラタンパク質の漸減用量を投与することをさらに含む。
【0289】
一部の実施形態では、漸減期間の後、フォローアップ期間がある。一部の実施形態では、フォローアップ期間は、組成物またはキメラタンパク質を用いる予防的処置を含む。一部の実施形態では、フォローアップ期間は、凝固因子を用いる予防的処置を含む。フォローアップ期間において使用される凝固因子を、Fc領域、およびその任意のバリアントを含む、または含まない、寛容化および漸減期間において使用される凝固因子から選択することができる。凝固因子としては、限定されるものではないが、天然の凝固因子、本明細書に記載の任意のバリアント(例えば、FVIIIのBドメイン欠失バリアント)、および本明細書に記載の任意のキメラ凝固因子(例えば、FVIII-Fc、FVIII-アルブミンなど)が挙げられる。ある特定の実施形態では、予防的処置は、例えば、組換えFVIIIFcの認可された予防用量の投与を含む。一部の実施形態では、予防的処置は、25~65IU/kg(25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、62、64、または65IU/kg)を含み、投薬間隔は、3~5日、3~6日、3~7日、3日、4日、5日、6日、7日、もしくは8日もしくはそれ以上の日数毎に1回、または週に3回、または週に3回以下である。別の実施形態では、予防的処置は、65IU/kgを含み、投薬間隔は、週に1回、または6~7日毎に1回である。別の実施形態では、予防的処置は、50IU/kgの凝固因子の用量を投与することを含む。別の実施形態では、予防的処置は、50IU/kgの凝固因子の用量を投与することを含み、投薬間隔は、週に約3回である。1つの特定の実施形態では、予防的処置は、約25~65IU/kgを含み、投薬間隔は、3~5日毎に1回である。ある特定の実施形態では、フォローアップ期間は、約8カ月延びる。
【0290】
1つの特定の実施形態では、キメラタンパク質、例えば、FVIIIFcは、免疫寛容が観察されるまで、例えば、ヒトにおける阻害抗体の力価が約0.6BU未満となるまで、約200IU/kg/日で投与される;次いで、免疫寛容後、第1週から第6週までは1日1回、約100IU/kgのキメラタンパク質、例えば、FVIIIFcの漸減用量を投与すること、免疫寛容後、第6週から第12週までは1日おきに1回、約100IU/kgのキメラタンパク質、例えば、FVIIIFcの漸減用量を投与すること、および第12週から第16週までは1日おきに1回、約50IU/kgのキメラタンパク質、例
えば、FVIIIFcの漸減用量を投与することを含む、漸減レジメンが、免疫寛容後に投与される;次いで、漸減レジメンの後、約50IU/kgの凝固因子の予防用量が週に約3回投与される。
【0291】
FVIIIとFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を、例えば、局所(例えば、経皮もしくは眼内)、経口、頬、経鼻、経膣、直腸または非経口投与を含む、任意の適切な投与様式のために製剤化することができる。
【0292】
本明細書で使用される非経口という用語は、皮下、皮内、血管内(例えば、静脈内)、筋肉内、脊髄、頭蓋内、髄腔内、眼内、眼周囲、眼窩内、滑液嚢内および腹腔内注射、ならびに任意の類似する注射または輸注技術を含む。組成物はまた、例えば、懸濁液、エマルジョン、持続放出製剤、クリーム、ゲルまたは粉末であってもよい。組成物を、伝統的な結合剤およびトリグリセリドなどの担体と共に、坐剤として製剤化することができる。
【0293】
一例では、医薬製剤は、液体製剤、例えば、緩衝化された等張性の水性溶液である。別の例では、医薬組成物は、生理的であるか、または生理条件に近いpHを有する。他の例では、水性製剤は、生理的であるか、または生理状態に近い浸透圧および塩分濃度を有する。それは、塩化ナトリウムおよび/または酢酸ナトリウムを含有してもよい。
【0294】
一部の実施形態では、本発明の方法において使用されるFVIIIとFc領域とを含むキメラタンパク質は、(a)キメラタンパク質;(b)スクロース、トレハロース、ラフィノース、アルギニン、またはその混合物から選択される1つまたはそれ以上の安定化剤;(c)塩化ナトリウム(NaCl);(d)L-ヒスチジン;(e)塩化カルシウム;および(f)ポリソルベート20またはポリソルベート80を含む医薬組成物中で製剤化される。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、(a)50IU/ml~2500IU/mlのキメラタンパク質;(b)10mg/ml~25mg/mlのスクロース;(c)8.8mg/ml~14.6mg/mlの塩化ナトリウム(NaCl);(d)0.75mg/ml~2.25mg/mlのL-ヒスチジン;(e)0.75mg/ml~1.5mg/mlの塩化カルシウム二水和物;および(f)0.08mg/ml~0.25mg/mlのポリソルベート20またはポリソルベート80を含む。一部の例では、本開示の方法において使用される医薬組成物は、凍結乾燥される。
【0295】
一部の実施形態では、医薬組成物は、免疫細胞を含まない。一部の実施形態では、医薬組成物は、細胞を含まない。
【0296】
ある特定の実施形態では、本開示の方法を使用して処置されるヒトは、FVIII阻害免疫応答を以前に生じた。一部の実施形態では、以前の生じたFVIII阻害応答は、組換えFVIIIに応答して生じた。一部の実施形態では、以前に生じたFVIII阻害応答は、ADVATE(登録商標)、RECOMBINATE(登録商標)、KOGENATE FS(登録商標)、HELIXATE FS(登録商標)、XYNTHA/REFACTO AB(登録商標)、HEMOFIL-M(登録商標)、MONARC-M(登録商標)、MONOCLATE-P(登録商標)、HUMATE-P(登録商標)、ALPHANATE(登録商標)、KOATE-DVI(登録商標)、AFSTYLA(登録商標)、およびHYATE:C(登録商標)からなる群から選択されるFVIII産物に応答して生じた。
【0297】
一部の実施形態では、一度、阻害抗体の力価の低下に応じて寛容化に達したら、凝固因子の血清レベルを、約100IU/dL~約200IU/dLに維持する。一部の実施形態では、凝固因子の血清レベルが200IU/dLよりも高いか、またはそれと等しい場合、組成物またはキメラタンパク質の有効量を約175IU/kg/日に減少させる。あ
る特定の実施形態では、凝固因子の血清レベルが200IU/dLよりも高いか、またはそれと等しい場合、組成物またはキメラタンパク質の有効量を約150IU/kg/日に減少させる。ある特定の実施形態では、凝固因子の血清レベルが200IU/dLよりも高いか、またはそれと等しい場合、組成物またはキメラタンパク質の有効量を約125IU/kg/日に減少させる。ある特定の実施形態では、凝固因子の血清レベルが200IU/dLよりも高いか、またはそれと等しい場合、組成物またはキメラタンパク質の有効量を約100IU/kg/日に減少させる。ある特定の実施形態では、凝固因子の血清レベルが200IU/dLよりも高いか、またはそれと等しい場合、組成物またはキメラタンパク質の有効量を約75IU/kg/日に減少させる。ある特定の実施形態では、凝固因子の血清レベルが200IU/dLよりも高いか、またはそれと等しい場合、組成物またはキメラタンパク質の有効量を約50IU/kg/日に減少させる。ある特定の実施形態では、凝固因子の血清レベルが200IU/dLよりも高いか、またはそれと等しい場合、組成物またはキメラタンパク質の有効量を約25IU/kg/日に減少させる。
【0298】
本開示のある特定の態様は、血友病を有するヒトにおいて免疫寛容を誘導する方法であって、ヒトに、約200IU/kgの、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を投与することを含む、前記方法に関する。ある特定の実施形態では、組成物またはキメラタンパク質は、1日おきに投与される。他の実施形態では、組成物またはキメラタンパク質は、毎日投与される。
【0299】
他の態様では、本開示は、血友病を有するヒトにおいて免疫寛容を誘導する方法であって、ヒトに、約202IU/kgの、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を投与することを含む、前記方法に関する。ある特定の実施形態では、組成物またはキメラタンパク質は、毎日投与される。
【0300】
他の態様では、本開示は、血友病を有するヒトにおいて免疫寛容を誘導する方法であって、ヒトに、約150IU/kgの、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を投与することを含む、前記方法に関する。ある特定の実施形態では、組成物またはキメラタンパク質は、毎日投与される。
【0301】
他の態様では、本開示は、血友病を有するヒトにおいて免疫寛容を誘導する方法であって、ヒトに、約130IU/kgの、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を投与することを含む、前記方法に関する。ある特定の実施形態では、組成物またはキメラタンパク質は、毎日投与される。
【0302】
他の態様では、本開示は、血友病を有するヒトにおいて免疫寛容を誘導する方法であって、ヒトに、約115IU/kgの、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を投与することを含む、前記方法に関する。ある特定の実施形態では、組成物またはキメラタンパク質は、1日おきに投与される。
【0303】
他の態様では、本開示は、血友病を有するヒトにおいて免疫寛容を誘導する方法であって、ヒトに、約100IU/kgの、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を投与することを含む、前記方法に関する。ある特定の実施形態では、組成物またはキメラタンパク質は、毎日投与される。他の実施形態では、組成物またはキメラタンパク質は、週に3回投与される。
【0304】
他の態様では、本開示は、血友病を有するヒトにおいて免疫寛容を誘導する方法であって、ヒトに、約102IU/kgの、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を投与することを含む、前記方法に関する。ある特定の実施形態では、組成物またはキメラタンパク質は、1日おきに投与される。
【0305】
他の態様では、本開示は、血友病を有するヒトにおいて免疫寛容を誘導する方法であって、ヒトに、約96IU/kgの、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を投与することを含む、前記方法に関する。ある特定の実施形態では、組成物またはキメラタンパク質は、毎日投与される。
【0306】
他の態様では、本開示は、血友病を有するヒトにおいて免疫寛容を誘導する方法であって、ヒトに、約85IU/kgの、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を投与することを含む、前記方法に関する。ある特定の実施形態では、組成物またはキメラタンパク質は、毎日投与される。
【0307】
他の態様では、本開示は、血友病を有するヒトにおいて免疫寛容を誘導する方法であって、ヒトに、約50IU/kgの、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を投与することを含む、前記方法に関する。ある特定の実施形態では、組成物またはキメラタンパク質は、週に3回投与される。
【0308】
本開示のある特定の態様は、血友病を有するヒトにおいて免疫寛容を誘導する方法であって、(1)ヒトに、約200IU/kgの、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質であって、ヒトにおいて免疫寛容を誘導する、前記組成物またはキメラタンパク質を投与すること;および(2)免疫寛容の誘導後、ヒトに、組成物またはキメラタンパク質の漸減レジメンを投与することを含む、前記方法に関する。
【0309】
II.A.2 Fc
一部の実施形態では、本開示の組成物、キメラタンパク質、および/または凝固因子は、Fc受容体(FcR;例えば、FcRn)に結合する、Fcドメインまたはその一部を含む。一部の実施形態では、Fcドメインは、例えば、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の部分として、凝固因子に融合される。他の実施形態では、Fcドメインは、凝固因子以外のポリペプチドに融合され、ここで、組成物は、(1)凝固因子および(2)Fcドメインとさらなるポリペプチドとを含むキメラタンパク質を含む。Fcドメインまたはその一部は、キメラタンパク質の薬物動態または薬力学特性を改善することができる。ある特定の実施形態では、Fcドメインまたはその一部は、Fcドメインまたはその一部に融合された分子の半減期を延長させる。
【0310】
本明細書で使用される「Fc領域」の、本明細書で使用される用語「Fcドメイン」とは、別途特定しない限り、機能的FcR(例えば、FcRn)結合パートナーを意味する。Fcドメインは、天然のIgのFcドメインに対応する、すなわち、その2つの重鎖のそれぞれのFcドメインの二量体結合によって形成される、ポリペプチドの部分である。天然のFcドメインは、別のFcドメインとホモ二量体を形成する。対照的に、本明細書で使用される場合、用語「遺伝的に融合されたFc領域」または「一本鎖Fc領域」(scFv領域)とは、単一のポリペプチド鎖内に遺伝的に連結された(すなわち、単一の連続する遺伝子配列中にコードされた)Fcドメインを含む合成二量体Fc領域を指す。
【0311】
一実施形態では、「Fc領域」とは、パパイン切断部位のすぐ上流のヒンジ領域(すなわち、重鎖定常領域の最初の残基が114であるとした場合、IgG中の残基216)で始まり、抗体のC末端で終わる単一のIgG重鎖の部分を指す。したがって、完全なFcドメインは、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む。
【0312】
Ig定常領域のFc領域は、Igアイソタイプに応じて、CH2、CH3、およびCH4ドメイン、ならびにヒンジ領域を含んでもよい。IgのFc領域を含むキメラタンパク
質は、安定性の増大、血清半減期の増大(Caponら、1989、Nature 337:525頁)ならびに新生児Fc受容体(FcRn)などのFc受容体への結合(米国特許第6,086,875号、第6,485,726号、第6,030,613号;WO03/077834;US2003-0235536A1)を含む、キメラタンパク質上でのいくつかの望ましい特性を付与する(これらの文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0313】
FcRn受容体は、ヒトを含むいくつかの哺乳動物種から単離されている。ヒトFcRn、サルFcRn、ラットFcRn、およびマウスFcRnの配列が公知である(Storyら、1994、J.Exp.Med.180:2377頁)。FcRn受容体は、比較的低いpHでIgGに結合し(IgA、IgM、IgD、およびIgEなどの他のIgクラスではなく)、内腔中のIgGを漿膜方向に活発に細胞間輸送し、次いで、間質液中に見出される比較的高いpHでIgGを放出する。それは、肺および腸上皮(Israelら、1997、Immunology 92:69頁)、腎近位尿細管上皮(Kobayashiら、2002、Am.J.Physiol.Renal Physiol.282:F358頁)ならびに鼻上皮、膣表面、および胆道系表面を含む、成体上皮組織(米国特許第6,485,726号、第6,030,613号、第6,086,875号;WO03/077834;US2003-0235536A1)中で発現される。
【0314】
本発明において有用なFc領域は、全IgG、IgGのFc断片、およびFcRの完全な結合領域を含む他の断片を含む、FcRに特異的に結合することができる分子を包含する。例えば、FcRn受容体に結合するIgGのFc部分の領域は、X線結晶学に基づいて記載されている(Burmeisterら、1994、Nature 372:379頁)。FcとFcRnとの主な接触領域は、CH2およびCH3ドメインの接続部に近い。Fc-FcRnは全て、単一のIg重鎖内にある。Fc領域は、全IgG、IgGのFc断片、およびFcRnの完全な結合領域を含むIgGの他の断片を含む。主な接触部位は、CH2ドメインのアミノ酸残基248、250~257、272、285、288、290~291、308~311、および314ならびにCH3ドメインのアミノ酸残基385~387、428、および433~436を含む。IgもしくはIg断片、または領域のアミノ酸番号に対する参照は全て、Kabatら、1991、Sequences
of Proteins of Immunological Interest、U.S.Department of Public Health、Bethesda、Mdに基づくものである。
【0315】
特異的結合とは、生理的条件下で比較的安定的である複合体を形成する2つの分子を指す。特異的結合は、通常は中程度から高い能力と共に低い親和性を有する非特異的結合から区別されるように、高い親和性および低いから中程度の能力を特徴とする。典型的には、結合は、親和性定数KAが10-1より高いか、または10-1より高い場合、特異的であると考えられる。必要に応じて、結合条件を変化させることにより、特異的結合に実質的に影響することなく、非特異的結合を減少させることができる。当業者であれば、日常的な技術を使用して、分子の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合させる時間、ブロッキング剤(例えば、血清アルブミン、ミルクカゼイン)の濃度などの適切な結合条件を最適化することができる。
【0316】
ある特定の実施形態では、本発明のキメラタンパク質は、それにも拘わらずFc領域に対してFc結合特性を付与するのに十分である1つまたはそれ以上のトランケートされたFc領域を含む。例えば、FcRnに結合するFc領域の部分(すなわち、FcRn結合部分)は、EUナンバリングによる、IgG1のおよそアミノ酸282~438を含む(主な接触部位は、CH2ドメインのアミノ酸248、250~257、272、285、288、290~291、308~311、および314ならびにCH3ドメインのアミ
ノ酸残基385~387、428、および433~436である)。かくして、本発明のFc領域は、FcRn結合部分を含むか、またはそれからなってもよい。
【0317】
FcR結合部分は、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意のアイソタイプの重鎖に由来してもよい。一実施形態では、ヒトアイソタイプIgG1の抗体に由来するFcR結合部分が使用される。別の実施形態では、ヒトアイソタイプIgG4の抗体に由来するFcR結合部分が使用される。
【0318】
別の実施形態では、「Fc領域」は、Fcドメインの、またはFcドメインに由来するアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、Fc領域は、ヒンジ(例えば、上、中央、および/もしくは下ヒンジ領域)ドメイン(EUナンバリングによる抗体Fc領域のおよそアミノ酸216~230)、CH2ドメイン(EUナンバリングによる抗体Fc領域のおよそアミノ酸231~340)、CH3ドメイン(EUナンバリングによる抗体Fc領域のおよそアミノ酸341~438)、CH4ドメイン、またはそのバリアント、部分、もしくは断片のうちの少なくとも1つを含む。他の実施形態では、Fc領域は、完全なFcドメイン(すなわち、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン)を含む。一部の実施形態では、Fc領域は、CH3ドメイン(またはその一部)に融合したヒンジドメイン(またはその一部)、CH2ドメイン(またはその一部)に融合したヒンジドメイン(またはその一部)、CH3ドメイン(またはその一部)に融合したCH2ドメイン(またはその一部)、ヒンジドメイン(またはその一部)とCH3ドメイン(またはその一部)の両方に融合したCH2ドメイン(またはその一部)を含む、それらから本質的になる、またはそれらからなる。さらに他の実施形態では、Fc領域は、CH2ドメインの少なくとも一部(例えば、CH2ドメインの全部または部分)を欠く。特定の実施形態では、Fc領域は、EU番号221~447に対応するアミノ酸を含むか、またはそれからなる。
【0319】
本明細書でF、F1、またはF2と示されるFc領域を、いくつかの異なる供給源から取得することができる。一実施形態では、ポリペプチドのFc領域は、ヒトIgに由来する。しかしながら、Fc領域は、例えば、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、もしくはモルモット)または非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー、マカク)種を含む、別の哺乳動物種のIgに由来してもよいことが理解される。さらに、Fcドメインまたはその部分のポリペプチドは、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む任意のIgクラスならびにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意のIgアイソタイプに由来してもよい。別の実施形態では、ヒトアイソタイプIgG1が使用される。
【0320】
ある特定の実施形態では、Fcバリアントは、野生型Fcドメインを含むFc領域によって与えられる少なくとも1つのエフェクター機能の変化(例えば、Fc領域がFc受容体(例えば、FcγRI、FcγRII、もしくはFcγRIIIへの結合の改善または低下)、完全なタンパク質(例えば、C1q)、もしくは他のFc結合パートナー(例えば、DC-SIGN)に結合する能力、またはFc領域が抗体依存的細胞傷害性(ADCC)、食作用、もしくは補体依存的細胞傷害性(CDCC)を誘発する能力の改善または低下)を付与する。他の実施形態では、Fcバリアントは、操作されたシステイン残基を提供する。
【0321】
本発明のFc領域は、エフェクター機能および/またはFcRもしくはFcRn結合の変化(例えば、増強または低下)を与えることが知られる当業界で認識されたFcバリアントを用いてもよい。具体的には、本発明の結合分子は、例えば、国際PCT公開WO88/07089A1、WO96/14339A1、WO98/05787A1、WO98/23289A1、WO99/51642A1、WO99/58572A1、WO00/
09560A2、WO00/32767A1、WO00/42072A2、WO02/44215A2、WO02/060919A2、WO03/074569A2、WO04/016750A2、WO04/029207A2、WO04/035752A2、WO04/063351A2、WO04/074455A2、WO04/099249A2、WO05/040217A2、WO04/044859、WO05/070963A1、WO05/077981A2、WO05/092925A2、WO05/123780A2、WO06/019447A1、WO06/047350A2、およびWO06/085967A2;米国特許出願公開第2007/0231329号、第2007/0231329号、第2007/0237765号、第2007/0237766号、第2007/0237767号、第2007/0243188号、第2007/0248603号、第2007/0286859号、第2008/0057056号;または米国特許第5,648,260号;第5,739,277号;第5,834,250号;第5,869,046号;第6,096,871号;第6,121,022号;第6,194,551号;第6,242,195号;第6,277,375号;第6,528,624号;第6,538,124号;第6,737,056号;第6,821,505号;第6,998,253号;第7,083,784号;第7,404,956号、および第7,317,091号に開示された1つまたはそれ以上のアミノ酸位置に変化(例えば、置換)を含んでもよい。一実施形態では、特異的変化(例えば、当業界で開示された1つまたはそれ以上のアミノ酸の特異的置換)を、1つまたはそれ以上の開示されたアミノ酸位置に作製することができる。別の実施形態では、1つまたはそれ以上の開示されたアミノ酸位置での異なる変化(例えば、1つまたはそれ以上の当業界で開示されたアミノ酸位置の異なる置換)を作製することができる。
【0322】
Fc領域を、部位特異的突然変異誘発などのよく認識された手順に従って改変して、FcγRIIBおよび/またはDC-SIGNが結合する改変されたFc断片またはその部分を得ることができる。そのような改変は、FcγRIIBおよび/またはDC-SIGN接触部位から離れた改変ならびにFcγRIIBおよび/またはDC-SIGNへの結合を保存する、またはさらには増強する接触部位内の改変を含む。例えば、ヒトIgG1
Fc(Fcγ1)中の以下の単一のアミノ酸残基:P238A、S239A、K246A、K248A、D249A、M252A、T256A、E258A、T260A、D265A、S267A、H268A、E269A、D270A、E272A、L274A、N276A、Y278A、D280A、V282A、E283A、H285A、N286A、T289A、K290A、R292A、E293A、E294A、Q295A、Y296F、N297A、S298A、Y300F、R301A、V303A、V305A、T307A、L309A、Q311A、D312A、N315A、K317A、E318A、K320A、K322A、S324A、K326A、A327Q、P329A、A330Q、P331A、E333A、K334A、T335A、S337A、K338A、K340A、Q342A、R344A、E345A、Q347A、R355A、E356A、M358A、T359A、K360A、N361A、Q362A、Y373A、S375A、D376A、A378Q、E380A、E382A、S383A、N384A、Q386A、E388A、N389A、N390A、Y391F、K392A、L398A、S400A、D401A、D413A、K414A、R416A、Q418A、Q419A、N421A、V422A、S424A、E430A、N434A、T437A、Q438A、K439A、S440A、S444A、およびK447Aを、FcγRIIBおよび/またはDC-SIGNに対するFc結合親和性の有意な喪失なく置換することができ、ここで、例えば、P238Aは、位置番号238でアラニンによって置換された野生型プロリンを表す。例として、特定の実施形態は、高度に保存されたN-グリコシル化部位を除く、N297A変異を含む。アラニンに加えて、他のアミノ酸を、上記で特定された位置で野生型アミノ酸に置換することができる。変異を、Fc中に単一に導入して、天然のFcと異なる100個を超えるFc領域を生じさせることができる。さらに、2
個、3個、またはそれ以上のこれらの個々の変異の組合せを一緒に導入して、さらに数百個のFc領域を生じさせることができる。さらに、本発明の構築物のFc領域の1つを変異させ、構築部の他のFc領域を全く変異させないか、またはその両方を、異なる変異を用いるが変異させることができる。
【0323】
ある特定の上記変異は、Fc領域またはFcRn結合パートナーに対して新しい機能を付与することができる。例えば、一実施形態は、高度に保存されたN-グリコシル化部位を除く、N297Aを含む。この変異の効果は、免疫原性を低下させることによってFc領域の循環半減期を増強すること、およびFcRnに対する親和性を損なうことなく、Fc領域がFcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、およびFcγRIIIAに結合できなくすることである(Routledgeら、1995、Transplantation 60:847頁;Friendら、1999、Transplantation
68:1632頁;Shieldsら、1995、J.Biol.Chem.276:6591頁)。上記の変異から生じる新しい機能のさらなる例として、FcRnに対する親和性を、一部の例では、野生型のものを超えて増加させることができる。この親和性の増加は、「オン」レートの増加、「オフ」レートの減少または「オン」レートの増加と「オフ」レートの減少の両方を反映してもよい。FcRnに対する親和性の増加を与えると考えられる変異の例としては、限定されるものではないが、T256A、T307A、E380A、およびN434Aが挙げられる(Shieldsら、2001、J.Biol.Chem.276:6591頁)。
【0324】
さらに、少なくとも3つのヒトFcガンマ受容体が、下ヒンジ領域内のIgG上の結合部位、一般的には、アミノ酸234~237を認識すると考えられる。したがって、新しい機能および潜在的な免疫原性の減少の別の例は、例えば、ヒトIgG1のアミノ酸233~236「ELLG」を、IgG2に由来する対応する配列「PVA」に置き換えることによるような(1個のアミノ酸欠失を含む)、この領域の変異から生じてもよい。様々なエフェクター機能を媒介する、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIは、そのような変異が導入された場合、IgG1に結合しないことが示されている。WardおよびGhetie 1995、Therapeutic Immunology 2:77頁およびArmourら、1999、Eur.J.Immunol.29:2613頁。
【0325】
一実施形態では、Fcドメインまたはその一部は、米国特許第5,739,277号の配列番号3を含み、場合により、米国特許第5,739,277号の配列番号11、1、2および31から選択される配列をさらに含むポリペプチドである。
【0326】
ある特定の実施形態では、Fcドメインまたはその一部は、ヘミグリコシル化される。例えば、2つのFc領域を含むキメラタンパク質は、第1の、グリコシル化されたFc領域(例えば、グリコシル化されたCH2領域)と、第2の、無グリコシル化されたFc領域(例えば、無グリコシル化されたCH2領域)とを含有してもよい。一実施形態では、グリコシル化されたFc領域と無グリコシル化されたFc領域との間に、リンカーを置くことができる。別の実施形態では、Fc領域は完全にグリコシル化される、すなわち、Fc領域の全てがグリコシル化される。他の実施形態では、Fc領域は無グリコシル化されてもよい、すなわち、Fc部分はいずれもグリコシル化されない。
【0327】
ある特定の実施形態では、本発明のキメラタンパク質は、Fcドメインの抗原非依存的エフェクター機能、特に、タンパク質の循環半減期を変化させる、Fcドメインまたはその一部(例えば、Fcバリアント)に対するアミノ酸置換を含む。
【0328】
そのようなタンパク質は、これらの置換を欠くタンパク質と比較した場合、FcRに対
する結合の増加または減少を示し、したがって、それぞれ、血清中での半減期が増加または減少している。FcRに対する親和性が改善されたFcバリアントは、より長い血清半減期を有すると予想され、そのような分子は、投与されるポリペプチドの長い半減期が、例えば、慢性疾患または障害を処置するために望ましい哺乳動物を処置する方法における有用な適用を有する(例えば、米国特許第7,348,004号、第7,404,956号、および第7,862,820号を参照されたい)。対照的に、FcR結合親和性が減少したFcバリアントは、より短い半減期を有すると予想され、そのような分子も、例えば、短縮された循環時間が、例えば、in vivoでの診断的イメージングにとって有利である場合、または出発ポリペプチドが長期間にわたって循環中に存在する場合に毒性副作用を有する状況での哺乳動物への投与にとって有用である。FcRn結合親和性が減少したFcバリアントはまた、胎盤を通過する可能性が低く、かくして、妊娠女性における疾患または障害の処置においても有用である。さらに、FcRn結合親和性の減少が望ましい他の適用としては、脳、腎臓、および/または肝臓における局在化が望ましい適用が挙げられる。1つの例示的な実施形態では、本発明のキメラタンパク質は、血管系から腎臓糸球体の上皮を通過する輸送の減少を示す。別の実施形態では、本発明のキメラタンパク質は、脳から血管腔への血液脳関門(BBB)を通過する輸送の減少を示す。一実施形態では、FcR結合が変化したタンパク質は、Ig定常領域の「FcR結合ループ」内に1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有する少なくとも1つのFc領域(例えば、1つまたは2つのFc領域)を含む。FcR結合ループは、一実施形態では、野生型、完全長Fc領域のアミノ酸残基280~299(EUナンバリングによる)を含む。他の実施形態では、FcR結合親和性が変化した本発明のキメラタンパク質中のIg定常領域またはその一部は、15ÅのFcR「接触ゾーン」内に1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有する少なくとも1つのFc領域を含む。本明細書で使用される場合、15ÅのFcRn「接触ゾーン」という用語は、野生型、完全長Fc部分の以下の位置:243~261、275~280、282~293、302~319、336~348、367、369、372~389、391、393、408、424、425~440(EUナンバリング)の残基を含む。他の実施形態では、FcR結合親和性が変化した本発明のFcドメインまたはその一部は、以下のEU位置:256、277~281、283~288、303~309、313、338、342、376、381、384、385、387、434(例えば、N434AまたはN434K)、および438のいずれか1つに対応するアミノ酸位置に1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有する少なくとも1つのFc領域を含む。FcR結合活性が変化した例示的なアミノ酸置換は、参照により本明細書に組み入れられる国際PCT公開第WO05/047327号に開示されている。
【0329】
本発明において使用されるFc領域はまた、キメラタンパク質のグリコシル化を変化させる当業界で認識されたアミノ酸置換を含んでもよい。例えば、FVIIIタンパク質に連結されたキメラタンパク質のFc領域は、グリコシル化(例えば、N-もしくはO-結合グリコシル化)の減少をもたらす変異を有するFc領域を含んでもよいか、または野生型Fc部分の糖型の変化(例えば、低フコースもしくは無フコースグリカン)を含んでもよい。
【0330】
一実施形態では、本発明のプロセッシングされていないキメラタンパク質は、本明細書に記載のIg定常領域またはその一部から独立に選択される、2つまたはそれ以上のその構成要素Ig定常領域またはその一部を有する遺伝的に融合されたFc領域(すなわち、scFc領域)を含んでもよい。一実施形態では、二量体Fc領域のFc領域は同じである。別の実施形態では、少なくとも2つのFc領域は異なる。例えば、本発明のタンパク質のFc領域は、同じ数のアミノ酸残基を含むか、またはそれらは1つもしくはそれ以上のアミノ酸残基(例えば、約5個のアミノ酸残基(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸残基)、約10個の残基、約15個の残基、約20個の残基、約30個の残基、約40個の残基、もしくは約50個の残基)によって長さが異なってもよい。さらに他
の実施形態では、本発明のタンパク質のFc領域は、1つまたはそれ以上のアミノ酸位置において配列が異なっていてもよい。例えば、少なくとも2つのFc領域は、約5個のアミノ酸位置(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸位置)、約10個の位置、約15個の位置、約20個の位置、約30個の位置、約40個の位置、または約50個の位置で異なっていてもよい。
【0331】
一部の実施形態では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、1個より多いポリペプチド鎖を含む。一部の実施形態では、キメラタンパク質は、2個のポリペプチド鎖を含む。ある特定の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、凝固因子と第1のFc領域とを含み、第2のポリペプチド鎖は、第2のFc領域を含む。ある特定の実施形態では、第1のFc領域と第2のFc領域は、共有結合によって結合する。一実施形態では、第1のFc領域と第2のFc領域は、ペプチド結合によって結合する。別の実施形態では、第1のFc領域と第2のFc領域は、ジスルフィド結合によって結合する。
【0332】
1つの特定の実施形態では、キメラタンパク質は、第VIII因子部分およびフォンヴィレブランド因子(VWF)部分を含み、ここで、FVIII部分は、FVIIIポリペプチドまたはその断片を含み、VWF部分は、VWFポリペプチドまたはその断片を含み、FVIII部分は、第1のFc領域に連結され、VWF部分は、第2のFc領域に連結され、第1のFc領域と第2のFc領域は、互いに結合する。ある特定の実施形態では、VWF部分は、VWFのD’およびD3ドメインを含む。一実施形態では、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、または第1のポリペプチドと第2のポリペプチドの両方は、1つまたはそれ以上の半減期延長部分をさらに含む。
【0333】
本開示の方法において使用されるキメラタンパク質を産生するためのFc領域またはその一部を、いくつかの異なる供給源から取得することができる。一部の実施形態では、Fc領域またはその一部は、ヒトIgに由来する。しかしながら、Fc領域またはその一部は、例えば、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、もしくはモルモット)または非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー、マカク)種を含む、別の哺乳動物種のIgに由来してもよいことが理解される。さらに、Fc領域またはその一部は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む任意のIgクラスならびにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意のIgアイソタイプに由来してもよい。一実施形態では、ヒトアイソタイプIgG1が使用される。
【0334】
様々なFc領域遺伝子配列(例えば、ヒトFc遺伝子配列)が、公共的にアクセス可能な寄託物の形態で利用可能である。特定のエフェクター機能を有する(もしくは特定のエフェクター機能を欠く)、または免疫原性を低下させる特定の改変を有するFc配列を選択することができる。抗体および抗体コード遺伝子の多くの配列が公開されており、好適なFc領域配列を、当業界で認識された技術を使用してこれらの配列から誘導することができる。次いで、前記方法のいずれかを使用して得られた遺伝子材料を変化させるか、または合成して、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質を取得することができる。さらに、本発明の範囲は、定常領域DNA配列の対立遺伝子、バリアントおよび変異を包含することが理解される。
【0335】
Fcまたはその一部の配列を、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応および目的のドメインを増幅するように選択されるプライマーを使用してクローニングすることができる。抗体に由来するFc領域またはその一部の配列をクローニングするために、mRNAをハイブリドーマ、脾臓、またはリンパ細胞から単離し、DNAに逆転写し、抗体遺伝子をPCRによって増幅することができる。PCR増幅法は、米国特許第4,683,195号;第4,683,202号;第4,800,159号;第4,965,188号;および例えば、「PCR Protocols:A Guide to Methods and A
pplications」、Innisら(編)、Academic Press、San Diego、CA(1990);Hoら、1989.Gene 77:51頁;Hortonら、1993.Methods Enzymol.217:270頁に詳細に記載されている。コンセンサス定常領域プライマーによって、または公開された重鎖および軽鎖のDNAおよびアミノ酸配列に基づくより特異的なプライマーによって、PCRを開始することができる。上記で考察された通り、PCRを使用して、抗体軽鎖および重鎖をコードするDNAクローンを単離することもできる。この場合、コンセンサスプライマーまたはマウス定常領域プローブなどのより大きい相同なプローブによってライブラリーをスクリーニングすることができる。抗体遺伝子の増幅にとって好適ないくつかのプライマーセットが当業界で公知である(例えば、精製された抗体のN末端配列に基づく5’プライマー(BenharおよびPastan、1994、Protein Engineering 7:1509頁);cDNA末端の急速増幅(Ruberti,F.ら、1994、J.Immunol.Methods 173:33頁);抗体リーダー配列(Larrickら、1989、Biochem.Biophys.Res.Commun.160:1250頁))。抗体配列のクローニングは、参照により本明細書に組み入れられる、1995年1月25日に出願されたNewmanらの米国特許第5,658,570号にさらに記載されている。
【0336】
II.B.半減期延長部分
一部の実施形態では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、1つまたはそれ以上の半減期延長部分をさらに含む。凝固因子の半減期を、当業者には公知の任意の方法、例えば、血漿FVIII活性を検出するためのFVIII活性アッセイ(発色アッセイもしくは1段階凝固aPTTアッセイ)または血漿FVIII抗原レベルを検出するためのFVIII ELISAによって決定することができる。特定の実施形態では、凝固因子の凝固活性の半減期は、凝固1段法によって決定される。より特定の実施形態では、凝固因子の凝固活性の半減期は、HemAマウスまたはFVIIIとフォンヴィレブランド因子二重ノックアウト(DKO)マウスにおいて決定される。
【0337】
ある特定の態様では、本発明の凝固因子の半減期を増加させる異種部分は、限定されるものではないが、アルブミン、免疫グロブリンFc領域、XTEN配列、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、PAS配列、HAP配列、トランスフェリン、アルブミン結合部分などの異種ポリペプチド、またはこれらのペプチドの任意の断片、誘導体、バリアント、もしくは組合せを含む。他の関連する態様では、半減期延長部分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、ポリシアル酸などの非ポリペプチド部分、またはこれらの部分の任意の誘導体、バリアント、もしくは組合せのための結合部位を含んでもよい。ある特定の実施形態では、半減期延長部分は、アルブミンもしくはその断片、アルブミン結合部分、PAS配列、HAP配列、トランスフェリンもしくはその断片、またはその任意の組合せを含む。一部の実施形態では、半減期延長部分は、XTENを含まない。他の実施形態では、半減期延長部分は、XTENを含む。
【0338】
他の実施形態では、本発明のキメラタンパク質は、1つまたはそれ以上のポリマーにコンジュゲートされる。ポリマーは、水溶性または非水溶性であってもよい。ポリマーを、凝固因子、Fcまたは凝固因子もしくはFcにコンジュゲートされた他の部分に共有的または非共有的に結合することができる。ポリマーの非限定例は、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリオキサゾリン、またはポリ(アクリロイルモルホリン)であってもよい。例えば、ポリマーにコンジュゲートしたFVIIIのさらなる型は、その全体が参照により開示される、米国得特許第7,199,223号に開示されている。
【0339】
ある特定の態様では、本発明のキメラタンパク質は、それぞれ同じか、または異なる分子であってもよい、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の半減期延長部分を含んでもよい。
【0340】
一部の実施形態では、半減期延長部分は、キメラタンパク質のN末端またはC末端に融合される。一部の実施形態では、半減期延長部分は、凝固因子のN末端またはC末端に融合される。一部の実施形態では、半減期延長部分は、FcのN末端またはC末端に融合される。ある特定の実施形態では、半減期延長部分は、キメラタンパク質の凝固因子内に挿入される。
【0341】
一部の実施形態では、キメラタンパク質は、FVIIIまたはその一部を含み、半減期延長部分は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2015-0158929号A1および/または国際公開第WO2015106052号A1に開示された1つまたはそれ以上の位置でFVIII内に挿入される。1つの特定の実施形態では、半減期延長部分は、FVIIIのBドメイン(またはその断片)内に挿入される。1つの特定の実施形態では、半減期延長部分は、成熟FVIIIのアミノ酸残基745のすぐ下流でFVIII内に挿入される。
【0342】
II.B.1.アルブミン
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、少なくとも1つのアルブミンポリペプチドまたはその断片、バリアント、もしくは誘導体を含む。ヒト血清アルブミン(HSA、またはHA)、その完全長形態で609アミノ酸のタンパク質は、血清の浸透圧の有意な割合を占め、内因性および外因性リガンドの担体としても機能する。本明細書で使用される用語「アルブミン」は、完全長アルブミンまたはその機能的断片、バリアント、誘導体、もしくは類似体を含む。アルブミンまたはその断片もしくはバリアントの例は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許公開第2008/0194481号A1、第2008/0004206号A1、第2008/0161243号A1、第2008/0261877号A1、もしくは第2008/0153751号A1またはPCT出願公開第2008/033413号A2、第2009/058322号A1、もしくは第2007/021494号A2に開示されている。
【0343】
アルブミン結合ポリペプチド(ABP)は、限定されるものではないが、アルブミンに結合することができる、細菌アルブミン結合ドメイン、アルブミン結合ペプチド、またはアルブミン結合抗体断片を含んでもよい。Kraulisら、FEBS Lett.378:190~194頁(1996)およびLinhultら、Protein Sci.11:206~213頁(2002)によって開示された、連鎖球菌プロテインGに由来するドメイン3は、細菌アルブミン結合ドメインの例である。アルブミン結合ペプチドの例は、Dennisら、J.Biol.Chem.2002、277:35035~35043頁(2002)に開示されている。アルブミン結合抗体断片の例は、MullerおよびKontermann、Curr.Opin.Mol.Ther.9:319~326頁(2007);Rooversら、Cancer Immunol.Immunother.56:303~317頁(2007)、およびHoltら、Prot.Eng.Design Sci.、21:283~288頁(2008)に開示されており、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0344】
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、非ポリペプチド低分子、アルブミンに結合することができるそのバリアント、または誘導体のための少なくとも1個の結合部位を含む。例えば、キメラタンパク質は、1つまたはそれ以上の有機アルブミン結合部分を含んでもよい。そのようなアルブミン結合部分の例は、Trusselら、Bioconjugate Chem.20:2286~2292頁(2009)によって開示されたような、2-(3-マレイミドプロパンアミド)-6-(4
-(4-ヨードフェニル)ブタンアミド)ヘキサノエート(「Albu」タグ)である。
【0345】
II.B.2.XTEN
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、少なくとも1つのXTENポリペプチドまたはその断片、バリアント、もしくは誘導体を含む。本明細書で使用される場合、「XTEN配列」とは、生理的条件下で低い程度の構造を有するか、または二次もしくは三次構造を有さない配列と共に、主に小さい親水性のアミノ酸を含む、天然には存在しない、実質的に非反復的な配列を有する伸長した長さのポリペプチドを指す。キメラタンパク質パートナーと同様、XTENは、例えば、キメラタンパク質の凝固因子と融合した場合、またはその中に挿入された場合、ある特定の望ましい薬物動態特性、物理化学特性および薬学特性を提供する担体として働くことができる。そのような望ましい特性としては、限定されるものではないが、薬物動態パラメータおよび溶解度特性の増強が挙げられる。
【0346】
本開示の方法において有用なキメラタンパク質の凝固因子と融合した、またはその中に挿入されたXTEN配列は、キメラタンパク質に、1つまたはそれ以上の以下の有意な特性:コンフォメーションの可撓性、水性溶解度の増強、高い程度のプロテアーゼ耐性、低い免疫原性、哺乳動物受容体への低い結合、または水力学(またはStokes)半径の増大を提供することができる。ある特定の態様では、XTEN配列は、キメラタンパク質がin vivoに留まり、XTENを含まないキメラタンパク質と比較して長期間にわたって凝血促進活性を有するように、より長い半減期(例えば、in vivoでの半減期)または曲線下面積(AUC)の増大などの薬物動態特性を増大させることができる。
【0347】
本発明の組換えFVIIIタンパク質中に挿入することができるXTEN配列の例は、例えば、米国特許出願公開第2010/0239554号A1、第2010/0323956号A1、第2011/0046060号A1、第2011/0046061号A1、第2011/0077199号A1、もしくは第2011/0172146号A1、または国際特許出願公開第WO2010091122号A1、第WO2010144502号A2、第WO2010144508号A1、第WO2011028228号A1、第WO2011028229号A1、第WO2011028344号A2、もしくは第WO2015106052号A1に開示されており、それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0348】
II.B.3.VWFまたはその断片
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、少なくとも1つのVWFポリペプチドまたはその断片、バリアント、もしくは誘導体を含む。VWF(F8VWFとしても公知である)は、血漿中に存在する大きい、多量体糖タンパク質であり、内皮(バイベル-パラーデ小体)、巨核球(血小板のα-顆粒)、および内皮下結合組織中で構成的に産生される。塩基性VWF単量体は、2813アミノ酸のタンパク質である。全ての単量体は、特異的機能を有するいくつかの特異的ドメイン、D’/D3ドメイン(第VIII因子に結合する)、A1ドメイン(血小板GPIb-受容体、ヘパリン、および/またはおそらくコラーゲンに結合する)、A3ドメイン(コラーゲンに結合する)、C1ドメイン(RGDドメインが、血小板インテグリンαIIbβ3が活性化された場合にこれに結合する)、およびタンパク質のC末端の「システインノット」ドメイン(VWFが血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子-β(TGFβ)およびβ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(βHCG)と共有する)を含有する。
【0349】
一実施形態では、VWFポリペプチドは、VWF断片である。本明細書で使用される用語「VWF断片」としては、限定されるものではないが、内因性VWFのFVIIIへの結合を阻害することができる、D’ドメインとD3ドメインとを含む機能的VWF断片が
挙げられる。一実施形態では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、凝固因子、Fc領域、およびVWF断片を含み、ここで、凝固因子はFVIIIを含み、VWF断片はFVIIIタンパク質に結合する。別の実施形態では、VWF断片は、FVIIIタンパク質上のVWF結合部位を遮断することによって、FVIIIタンパク質と、内因性VWFとの相互作用を阻害する。VWF断片は、VWFのこれらの活性を保持する誘導体、バリアント、変異体、または類似体を含む。ある特定の実施形態では、VWF断片は、VWFのD’ドメインとD3ドメインとを含む。
【0350】
ヒトVWFの2813個の単量体アミノ酸配列は、Genbankに受託番号NP_000543.2として報告されている。ヒトVWFをコードするヌクレオチド配列は、GenbankにNM_000552.3として報告されている。
【0351】
ある特定の実施形態では、本明細書において有用なVWFタンパク質をさらに改変して、FVIIIとのその相互作用を改善する、例えば、FVIIIに対する結合親和性を改善することができる。他の実施形態では、本発明にとって有用なVWFタンパク質は、他の改変を有してもよく、例えば、タンパク質をペグ化、グリコシル化、ヘシル化、またはポリシアル化することができる。本開示の方法において有用な例示的なVWF配列は、例えば、米国特許出願公開第US2015/0023959号A1、第US2015/0266943号A1、および第US2015/0158929号に提供されている。ある特定の実施形態では、VWFタンパク質またはその断片は、FcRn結合パートナーに融合されるか、またはそれと同時投与される。一部の実施形態では、VWFタンパク質またはその断片は、Fcに融合されるか、またはFcもしくはFcを含むポリペプチドと同時投与される。一部の実施形態では、VWFタンパク質またはその断片は、アルブミンに融合されるか、またはアルブミンもしくはアルブミンを含むポリペプチドと同時投与される。
【0352】
II.B.4.CTP
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットの少なくとも1つのC末端ペプチド(CTP)またはその断片、バリアント、もしくは誘導体を含む。CTPペプチドは、そのタンパク質の半減期を増加させることが公知である。例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,712,122号を参照されたい。非限定的なCTPペプチドは、参照により組み入れられる、米国特許出願公開第US2009/0087411号A1に開示されている。
【0353】
II.B.5.PAS
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、少なくとも1つのPASペプチドまたはその断片、バリアント、もしくは誘導体を含む。本明細書で使用される場合、PASペプチドまたはPAS配列は、主にアラニンおよびセリン残基を含むか、または主にアラニン、セリン、およびプロリン残基を含むアミノ酸配列を意味し、そのアミノ酸配列は、生理的条件下でランダムコイルコンフォメーションを形成する。したがって、PAS配列は、キメラタンパク質において異種部分の一部として使用することができる、アラニン、セリン、およびプロリンを含む、それから本質的になる、またはそれからなる構成要素、アミノ酸ポリマー、または配列カセットである。アミノ酸ポリマーはまた、アラニン、セリン、およびプロリン以外の残基がPAS配列中のマイナーな構成要素として付加された場合、ランダムコイルコンフォメーションを形成することもできる。「マイナーな構成要素」とは、アラニン、セリン、およびプロリン以外のアミノ酸を、ある特定の程度まで、例えば、約12%まで、すなわち、PAS配列の100アミノ酸のうちの約12個まで、約10%まで、約9%まで、約8%まで、約6%、約5%、約4%、約3%、すなわち、約2%、または約1%のアミノ酸まで、PAS配列中に付加することができることを意味する。アラニン、セリンおよびプロリンとは異なるアミノ酸を
、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Thr、Trp、Tyr、およびValからなる群から選択することができる。生理的条件下で、PASペプチドは、ランダムコイルコンフォメーションを形成し、それによって、本発明の組換えタンパク質に対するin vivoおよび/またはin vitroでの安定性の増大を媒介し、凝固促進活性を有する。
【0354】
PASペプチドの非限定例は、例えば、米国特許出願公開第2010/0292130号A1;PCT出願公開第WO2008/155134号A1;および欧州特許第EP2173890号に開示されている。
【0355】
II.B.6.HAP
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、少なくとも1つのホモアミノ酸ポリマー(HAP)ペプチドまたはその断片、バリアント、もしくは誘導体を含む。HAPペプチドは、少なくとも50アミノ酸長、少なくとも100アミノ酸長、120アミノ酸長、140アミノ酸長、160アミノ酸長、180アミノ酸長、200アミノ酸長、250アミノ酸長、300アミノ酸長、350アミノ酸長、400アミノ酸長、450アミノ酸長、または500アミノ酸長を有する、グリシンの反復配列を含んでもよい。HAP配列は、HAP配列に融合された、または連結された部分の半減期を延長することができる。HAPPY配列の非限定例としては、限定されるものではないが、(Gly)(GlySer)またはS(GlySer)(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20である)が挙げられる。一実施形態では、nは、20、21、22、23、24、25、26、26、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40である。別の実施形態では、nは、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200である。例えば、Schlapschy Mら、Protein Eng.Design Selection、20:273~284頁(2007)を参照されたい。
【0356】
II.B.7.トランスフェリン
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、少なくとも1つのトランスフェリンペプチドまたはその断片、バリアント、もしくは誘導体を含む。任意のトランスフェリンを、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質と融合することができる。例として、野生型ヒトTf(Tf)は、遺伝子複製の結果生じると考えられる、2個の主なドメイン、N(約330アミノ酸)およびC(約340アミノ酸)を有する、約75kDa(グリコシル化を占めない)の679アミノ酸タンパク質である。GenBank受託番号NM001063、XM002793、M12530、XM039845、XM039847およびS95936(www.ncbi.nlm.nih.gov)を参照されたい(これらは全てその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0357】
トランスフェリンは、トランスフェリン受容体(TfR)媒介性エンドサイトーシスを介して鉄を輸送する。鉄がエンドソーム区画中に放出され、Tf-TfR複合体が細胞表面に再循環した後、Tfは鉄輸送の次のサイクルのために細胞外空間に放出し戻される。Tfは、14~17日を上回る長い半減期を有する(Liら、Trends Pharmacol.Sci.23:206~209頁(2002))。トランスフェリン融合タンパク質は、半減期延長、がん療法のための標的送達、経口送達およびプロインスリンの持続的活性化について研究されている(Brandsmaら、Biotechnol.Adv.、29:230~238頁(2011);Baiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:7292~7296頁(2005);Kimら、J.Pha
rmacol.Exp.Ther.、334:682~692頁(2010);Wangら、J.Controlled Release 155:386~392頁(2011))。
【0358】
II.B.8.PEG
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、非ポリペプチド異種部分のための少なくとも1つの結合部位またはその断片、バリアント、もしくは誘導体を含む。例えば、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、凝固因子および/またはFc領域中の1つまたはそれ以上のアミノ酸残基に結合した1つまたはそれ以上のポリエチレングリコール(PEG)部分を含んでもよい。
【0359】
タンパク質のPEG化は、タンパク質と、少なくとも1つのポリエチレングリコール(PEG)分子との間に形成されるコンジュゲートを指してもよい。PEGは、様々な分子量および平均分子量範囲で商業的に入手可能である。PEG平均分子量範囲の典型例としては、限定されるものではないが、約200、約300、約400、約600、約1000、約1300~1600、約1450、約2000、約3000、約3000~3750、約3350、約3000~7000、約3500~4500、約5000~7000、約7000~9000、約8000、約10000、約8500~11500、約16000~24000、約35000、約40000、約60000、および約80000ダルトンが挙げられる。これらの平均分子量は、単に例として提供されるものであり、いかなる意味でも限定を意味するものではない。
【0360】
本開示の方法において使用されるキメラタンパク質を、モノ-またはポリ-(例えば、2~4個)PEG部分を含むようにPEG化することができる。PEG化は、当業界で公知の任意のPEG化反応によって実行することができる。PEG化されたタンパク質産物を調製するための方法は、一般に、(i)本発明のペプチドが1つまたはそれ以上のPEG基に結合するようになる条件下で、ポリペプチドと、ポリエチレングリコール(PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体など)と反応させること;および(ii)反応生成物を取得することを含むであろう。一般に、反応のための最適な反応条件は、公知のパラメータおよび所望の結果に基づいて、個別的に決定されるであろう。
【0361】
当業者には利用可能ないくつかのPEG結合法が存在し、例えば、Malik Fら、Exp.Hematol.20:1028~35頁(1992);Francis、Focus on Growth Factors 3(2):4~10頁(1992);欧州特許公開第EP0401384号、第EP0154316号、および第EP0401384号;ならびに国際特許出願公開第WO92/16221号および第WO95/34326号を参照されたい。非限定例として、FVIIIバリアントは、システイン置換を含有してもよく、システインをPEGポリマーにさらにコンジュゲートすることができる。全体が参照により本明細書に組み入れられる、Meiら、Blood 116:270~279頁(2010)および米国特許第7,632,921号を参照されたい。
【0362】
II.B.9.HES
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、少なくとも1つのヒドロキシエチルスターチ(HES)ポリマーを含む。HESは、天然に存在するアミロペクチンの誘導体であり、体内でアルファ-アミラーゼによって分解される。HESは、有意な生物学的特性を示し、診療所において血液量交換剤として、および血液希釈療法において使用される。例えば、Sommermeyerら、Krankenhauspharmazie 8:271~278頁(1987);およびWeidlerら、Arzneim.-Forschung/Drug Res.41:494~498頁(1991)を参照されたい。
【0363】
HESは、分子量分布および置換度によって主に特徴付けられる。HESは、1~300kD、2~200kD、3~100kD、または4~70kDの平均分子量(重量平均)を有する。ヒドロキシエチルスターチはさらに、0.1~3、0.1~2、0.1~0.9、または0.1~0.8のモル置換度、およびヒドロキシエチル基に関して2~20の範囲のC2:C6置換比を示してもよい。約130kDの平均分子量を有するHESは、FreseniusからのVOLUVEN(登録商標)である。VOLUVEN(登録商標)は、例えば、血液量減少の療法および予防のための治療適応において使用される体積交換のために用いられる、人工コロイドである。当業者に利用可能ないくつかのHES結合法、例えば、上記の同じPEG結合法が存在する。
【0364】
II.B.10.PSA
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、少なくとも1つのポリシアル酸(PSA)ポリマーを含む。PSAは、ある特定の細菌株によって、および哺乳動物において、ある特定の細胞中で産生されるシアル酸の天然に存在する非分枝ポリマーである。例えば、Roth J.ら(1993)Polysialic Acid:From Microbes to Man編、Roth J.,Rutishauser U.、Troy F.A.(BirkhauserVerlag、Basel、Switzerland)、335~348頁を参照されたい。PSAを、限定的酸加水分解またはノイラミニダーゼを用いた消化、または天然の細菌由来型のポリマーの分画によって、n=約80またはそれ以上のシアル酸残基からn=2までの様々な重合度で産生することができる。ある特定の態様では、活性化されたPSAを、凝固因子内、例えば、FVIII上、またはFc領域内のシステインアミノ酸残基に結合させることもできる。例えば、米国特許第5,846,951号を参照されたい。
【0365】
II.B.11.クリアランス受容体
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質の半減期を、キメラタンパク質の凝固因子がFVIIIおよびFVIIIクリアランス受容体の少なくとも1つの断片またはそのFVIII結合断片、バリアント、もしくは誘導体を含む場合、延長することができる。低密度リポタンパク質関連タンパク質受容体LRP1、またはその断片などの可溶型のクリアランス受容体の挿入は、FVIIIのクリアランス受容体への結合を遮断し、それによって、その半減期、例えば、in vivoでの半減期を延長することができる。LRP1は、FVIIIを含む、様々なタンパク質の受容体媒介性クリアランスに関与する600kDaの内在性膜タンパク質である。例えば、Lentingら、Haemophilia 16:6~16頁(2010)を参照されたい。他の好適なFVIIIクリアランス受容体は、例えば、LDLR(低密度リポタンパク質受容体)、VLDLR(超低密度リポタンパク質受容体)、およびメガリン(LRP-2)、またはその断片である。例えば、Bovenschenら、Blood 106:906~912頁(2005);Bovenschen、Blood 116:5439~5440頁(2010);Martinelliら、Blood 116:5688~5697頁(2010)を参照されたい。
【0366】
III.ポリヌクレオチド、ベクター、および宿主細胞
一部の態様では、本開示は、ヒトにおける免疫寛容の方法であって、ヒトに、凝固因子および/またはFc領域をコードする、例えば、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質をコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットの有効量を投与することを含み、ヒトが1つまたはそれ以上の以前の免疫寛容療法に反応しなかった、前記方法を提供する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットは、発現ベクターまたは発現ベクターのセットの中にある。ある特定の実施形態では、発現ベクターまたは発現ベクターのセットは、1つまたはそれ以上の宿主細胞の中にあ
る。
【0367】
本開示の方法において使用される、凝固因子および/またはFc領域をコードする、例えば、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、単一のヌクレオチド配列、2つのヌクレオチド配列、3つのヌクレオチド配列、またはそれ以上であってもよい。一実施形態では、単一のヌクレオチド配列は、凝固因子(例えば、FVIIIポリペプチド)とFc領域とを含むキメラタンパク質をコードする。別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、2つのヌクレオチド配列、凝固因子(例えば、FVIII)をコードする第1のヌクレオチド配列と、Fc領域をコードする第2のヌクレオチド配列とを含む。別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、2つのヌクレオチド、凝固因子(例えば、FVIII)とFc領域とをコードする第1のヌクレオチド配列と、第2のFc領域をコードする第2のヌクレオチド配列とを含む。ある特定の実施形態では、コードされたFcドメインは、発現後に共有結合を形成する。
【0368】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、コドン最適化される。
【0369】
本明細書で使用される場合、発現ベクターとは、適切な宿主細胞中に導入された場合、挿入されたコード配列の転写および翻訳のための必須エレメント、またはRNAウイルスベクターの場合、複製および翻訳のための必須エレメントを含有する任意の核酸構築物を指す。発現ベクターは、プラスミド、ファージミド、ウイルス、およびその誘導体を含んでもよい。
【0370】
本明細書で使用される遺伝子発現制御配列は、それが作動可能に連結されたコード核酸の効率的な転写および翻訳を容易にする、プロモーター配列またはプロモーター-エンハンサー組合せなどの、任意の調節ヌクレオチド配列である。遺伝子発現制御配列は、例えば、構成的または誘導的プロモーターなどの、哺乳動物またはウイルスプロモーターであってもよい。構成的哺乳動物プロモーターとしては、限定されるものではないが、以下の遺伝子のためのプロモーター:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ベータ-アクチンプロモーター、および他の構成的プロモーターが挙げられる。真核細胞中で構成的に機能する例示的なウイルスプロモーターとしては、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスの長い末端反復(LTR)、および他のレトロウイルスに由来するプロモーター、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。他の構成的プロモーターは、当業者には公知である。本発明の遺伝子発現配列として有用なプロモーターは、誘導的プロモーターも含む。誘導的プロモーターは、誘導剤の存在下で発現される。例えば、メタロチオネインプロモーターは、ある特定の金属イオンの存在下での転写および翻訳を促進するために誘導される。他の誘導的プロモーターは、当業者には公知である。
【0371】
本発明の目的のために、いくつかの発現ベクター系を用いることができる。これらの発現ベクターは、典型的には、エピソームまたは宿主染色体DNAの完全な部分として宿主細胞中で複製可能である。発現ベクターは、限定されるものではないが、プロモーター(例えば、天然で関連する、または異種性のプロモーター)、エンハンサー、シグナル配列、スプライスシグナル、エンハンサーエレメント、および転写終結配列を含む、発現制御配列を含んでもよい。好ましくは、発現制御配列は、真核宿主細胞を形質転換するか、またはトランスフェクトすることができるベクター中の真核プロモーター系である。発現ベクターはまた、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTVもしくはMOMLV)、サイトメガロウイルス(CMV)、またはSV40ウイルスなどの動物ウイルスに
由来するDNAエレメントを利用することもできる。その他は、内部リボソーム結合部位を有する多シストロン系の使用を含む。
【0372】
一般に、発現ベクターは、所望のDNA配列をトランスフェクトされた細胞の検出を可能にするための選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性、ヒグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性またはネオマイシン耐性)を含有する(例えば、Itakuraら、米国特許第4,704,362号)。トランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能にする1つまたはそれ以上のマーカーを導入することによって、DNAをその染色体中に組み込んだ細胞を選択することができる。マーカーは、栄養要求性宿主に対する原栄養性、殺生物剤耐性(例えば、抗生物質)または銅などの重金属に対する耐性を提供することができる。選択マーカー遺伝子を、発現させようとするDNA配列に直接連結するか、または同時形質転換によって同じ細胞中に導入することができる。
【0373】
本開示の方法において使用されるキメラタンパク質の最適化された発現にとって有用なベクターの例は、NEOSPLAである(米国特許第6,159,730号)。このベクターは、サイトメガロウイルスプロモーター/エンハンサー、マウスベータグロビン主要プロモーター、SV40複製起点、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼエクソン1およびエクソン2、ジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子およびリーダー配列を含有する。このベクターは、可変および定常領域遺伝子の組込み、細胞中へのトランスフェクション、次いで、G418含有培地中での選択およびメトトレキサート増幅の際に、抗体の非常に高レベルの発現をもたらすことがわかっている。ベクター系は、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,736,137号および第5,658,570号にも教示されている。この系は、高い発現レベル、例えば、30pg/細胞/日を超える発現レベルを提供する。他の例示的なベクター系は、例えば、米国特許第6,413,777号に開示されている。
【0374】
他の実施形態では、本発明のポリペプチドを、多シストロン性構築物を使用して発現させる。これらの発現系では、多量体結合タンパク質の複数のポリペプチドなどの目的の複数の遺伝子産物を、単一の多シストロン性構築物から産生させることができる。これらの系は、真核宿主細胞中での比較的高いレベルのポリペプチドを提供するために、内部リボソーム進入部位(IRES)を有利に使用する。適合性のIRES配列は、本明細書にも組み入れられる米国特許第6,193,980号に開示される。
【0375】
より一般には、一度、ポリペプチドをコードするベクターまたはDNA配列が調製されたら、発現ベクターを適切な宿主細胞中に導入することができる。すなわち、宿主細胞を形質転換することができる。プラスミドの宿主細胞中への導入を、上記で考察されたような、当業者には周知の様々な技術によって達成することができる。形質転換された細胞を、キメラタンパク質の産生にとって適切な条件下で増殖させ、キメラタンパク質合成についてアッセイする。例示的なアッセイ技術としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または蛍光活性化細胞選別分析(FACS)、免疫組織化学などが挙げられる。
【0376】
ここで本発明を詳細に説明してきたが、同じことは、例示のみのために本明細書に含まれ、本発明の限定を意図するものではない、以下の実施例を参照することによってより明確に理解されるであろう。
【実施例0377】
血友病A(「第VIII因子[FVIII]欠損」)は、稀な出血障害であり、最も一般的な型の血友病である。血友病Aを有する患者の最も重篤な処置合併症は、FVIIIに対する阻害IgG抗体の発生である。インヒビターは、輸注されたFVIIIの急速な
クリアランスおよび効能の顕著な低下または非存在をもたらす。FVIIIインヒビターバイパス剤が、インヒビターを有する患者における急性出血を処置するために使用されるが、インヒビターの根絶が長期的管理の目標である。
【0378】
高用量のFVIIIの頻繁な投与を使用する免疫寛容誘導(「ITI」)療法は、抗原特異的寛容を達成することが示されている唯一の戦略である。ITIは通常、高応答性FVIIIインヒビター(≧5BU力価)を除去するために試みられる。いくつかの研究が、様々な用量および注射頻度を用いてITIの成功を達成する際の様々なFVIII産物の効能を精査し、臨床実務においてITI手法を支援するための国際コンセンサス推奨が発行されている。国際ITI研究では、高用量群(「HD」)(200IU/Kg/日)の患者は、低用量群(「LD」)の患者よりも有意に迅速に陰性力価および正常回復を達成した。HayおよびDiMichele、Blood 119(6):1335~44頁(2012)。HD患者はまた、LD患者よりも有意に少ない出血を経験し、この理由から、データ安全性モニタリング委員会(「DSMB」)は、彼らが安全性問題として出血を同定したため、試験終結を推奨した。高用量の200IU/Kg/日は、「高リスク」患者(ピーク履歴力価>200BU、プレITI力価>10BUおよび/またはインヒビター診断以来5年を超えるものと定義される)における推奨用量である。ITIにおける延長半減期(「EHL」)rFVIIIFcの使用の精査にますます関心が高まっている。rFVIIIFcは、ELOCTATE(登録商標)の名称で2014年に米国で、また、ELOCTA(登録商標)の名称で2015年に欧州で認可された。
【0379】
rFVIIIFcは、ヒトIgGのFcドメインに融合された組換えBドメイン欠失(「BDD」)第VIII因子としてヒト細胞株(「HE293」)中で産生される。HEKにより産生されたタンパク質は、ハムスター(例えば、CHO細胞)などの他の種に由来する細胞株において産生されたタンパク質とは対照的に、天然のヒトタンパク質と類似する翻訳後改変を有する。そのようなタンパク質では、翻訳後改変の結果生じる非ヒトグリカン(N-グリコリルノイラミン酸、NGNAおよびガラクトース-アルファ-1,3-ガラクトース、アルファ-Galなど)は、潜在的に免疫原性であり得る。NGNAも、アルファ-Galも、rFVIIIFc中には認められない。マウスモデルにより、rFVIIIFcがFVIIIに対する調節性T細胞応答を誘導することが示された(Batsuli、Hemophilia(2016)、22(Suppl.5)、31~35頁を参照されたい)が、これは、一部の調査者に、rFVIIIFcが、rFVIIIよりも有効なITI、具体的には、ITIの短縮を提供することができたことを示唆している。
【0380】
目的
本試験の主な目的は、ITI処置後の患者におけるrFVIIIFcを用いた寛容までの時間を記述することである。本試験はまた、ITI処置の転帰を記述すること;rFVIIIFcを用いて実施されたITIの成功後の一定期間にわたる再発率を記述すること;ITIの間およびrFVIIIFcを用いて実施されたITIの成功後の期間の間の併発出血を記述すること;ITIのために使用した場合のrFVIIIFcの安全性および寛容性を記述すること;特定の生活の質(QoL)問題を記述すること;およびrFVIIIFc消費を証明することも目的とする。
【実施例0381】
本試験は、以前のITI療法に失敗したインヒビターを用いて重篤な血友病Aを有する患者におけるITIのためのrFVIIIFcの使用を記述することを目的とする。具体的には、本試験の主な目的は、ITI処置後の免疫抑制剤の使用などの、寛容化の以前の試みに失敗した患者における、rFVIIIFcを用いて実施されたITI処置の転帰を記述することである。第2の目的およびその評価項目は、(1)ITIの成功までの時間
の評価項目と共に、免疫抑制剤の使用などの、寛容化の以前の試みに失敗した患者における、rFVIIIFcを用いて実施されたITIの寛容化までの時間を記述すること;(2)再発の発生の評価項目と共に、rFVIIIFcを用いて実施されたITIの成功後の再発率を記述すること;(3)ITIの間およびrFVIIIFcを用いて実施されたITIの成功後の期間の間の併発出血を記述すること;(4)有害事象および/または注射部位反応の評価項目と共に、ITIのために使用した場合、rFVIIIFcの安全性および寛容性を記述すること;ならびに(5)rFVIIIFcの評価項目と共に、ELOCTA(登録商標)を用いて実施されたITIにおけるrFVIIIFcの消費を記述することを含む。
【実施例0382】
本試験では、重篤な血友病Aおよび高力価のインヒビター(履歴ピーク≧5ベセスダ単位[BU]/mL)を有する全年齢の男性対象は、抗凝固因子VIII(FVIII)同種抗体を根絶および中和するために、第1回の免疫寛容誘導(ITI)療法を受けるための、組換え凝固因子FVIII Fc融合タンパク質(rFVIIIFc)を受ける。
【0383】
参加者は、ベースライン訪問時に開始して、ITI期間に最大48週まで、1日1回の注射として、または調査者の裁量で1日あたり数回の注射に分割して、200国際単位(IU)/キログラム(kg)の用量のrFVIIIFcを受けた。免疫寛容誘導(ITI)の成功の基準を満たす参加者は、漸減期間に入り、第1週から第6週までは1日1回、その後、第16週までは1日おきに1回、調査者の判断に従って調整された用量(50または100IU/kg)のrFVIIIFc(静脈内投与される注射用粉末として)を受ける。
【0384】
本試験の主要転帰尺度は、12カ月までの時間枠でrFVIIIFcによる寛容化までの時間を記述することである。寛容化は、<0.6VU/mlのインヒビター力価、FVIII回復率>66%、および7時間以上のt1/2と定義される。
【0385】
副次的転帰尺度は、免疫寛容誘導(ITI)が成功した参加者の数である。ITIの成功は、ナイメゲン変法型ベセスダアッセイによる0.6BU/mL未満のインヒビターに関する陰性力価;IU/kgあたり予想されるIR 2IU/dLの66%を表す、2回の連続する決定におけるIU/kgあたり1.3国際単位/デシリットル(IU/dL)を超えるFVIII増分回復(IR);7時間以上の半減期(t1/2)と定義される。ITIの成功を、48週までの時間枠にわたってモニタリングする。
【0386】
別の副次的転帰尺度は、再発を経験する参加者の数である。再発の基準(0.6BU/mLを超えるインヒビター力価または寛容後の異常回復が達成されることと定義される)に達するITIが成功した参加者のパーセンテージを評価する。再発を、48週までの時間枠にわたってモニタリングする。
【0387】
別の副次的転帰尺度は、出血エピソードの数である。72時間未満またはそれに等しい時間をおいた同じ位置または注射での出血の任意の症状の中で、出血の最初の兆候から開始して、出血のための最後の処置後72時間以内に終了した出血エピソードを、同じ出血エピソードと考えた。出血エピソードを、104週までの時間枠にわたってモニタリングする。
【0388】
別の副次的転帰尺度は、処置中に発生した有害反応(AE)および処置中に発生した重大な有害反応(SAE)を示した参加者の数である。AEは、この処置との因果関係を必ずしも有しない任意の望ましくない医学的出来事である。SAEは、任意の用量で:死をもたらす;調査者の所見において、参加者を死の差し迫ったリスクに置く(生命を脅かす
事象);入院患者の入院または現行の入院の延長を要する;持続的または有意な身体障害/無能力をもたらす;先天性異常/出生異常をもたらす、任意の望ましくない医学的出来事;調査者の見解において、参加者を危険にさらし得る、または定義に列挙された他の転帰の1つを防止するために介入を必要とし得る、任意の他の医学的に重要な事象である。AEおよびSAEを、約2年の時間枠にわたって測定する。
【0389】
別の副次的転帰尺度は、仕事または学校から離れた日数である。学校または仕事を欠席した日数を、104週までの時間枠にわたって、記述的にまとめる。
【0390】
別の副次的転帰尺度は、入院日数である。入院日数を、104週までの時間枠にわたって、記述的にまとめ、モニタリングする。
【0391】
別の副次的転帰尺度は、計画された用量に対する投与された用量のパーセンテージとして定義される、処置レジメンの順守であり、104週までの時間枠にわたってモニタリングする。
【0392】
別の副次的転帰尺度は、rFVIIIFcの消費量である。消費量を、投与された試験処置の量に基づいて評価し、消費量を、104週までの時間枠にわたってモニタリングする。
【0393】
本試験は、重篤な血友病Aと診断された(医療記録から確認された)任意の年齢の男性参加者に向けられたものである。対象は、高力価のインヒビター(医療記録により、5生物学的単位/ミリリットル(BU/mL)より高いか、またはそれと等しい履歴ピーク)と診断され、対象は、任意の血漿由来または組換えの従来の、または半減期が延長されたFVIIIで以前に処置されている。除外基準は、血友病Aに加えて、任意の他の凝固障害;任意の以前のITI療法;任意の組換え凝固因子VIII Fc(rFVIIIFc)投与と関連する過敏症もしくはアナフィラキシーの履歴;ローカルラボにより評価された、任意の腎機能異常(2.0ミリグラム/デシリットル[mg/dL]より高い血清クレアチニン);および/またはローカルラボにより評価された、正常値上限(ULN)の5倍を超える血清アラニンアミノトランスフェラーゼもしくはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼを有する対象を含む。
【実施例0394】
重篤な血友病Aおよび高力価のインヒビター(HTI;≧5BU)を有する患者における、rFVIIIFcを用いたITIの非介入性遡及的カルテ審査を、2014年7月1日と2017年6月1日の間に米国およびカナダにおける10箇所にわたって行った。一次療法または救援療法として、ITIのためにrFVIIIFcを用いた処置を開始した、HTIと共に重篤な血友病Aを有する全年齢の男性患者を、反応に関係なく、含有させた。
【0395】
規制当局の承認後、非特定化された臨床情報を、電子調査を介して収集した。ITIで初めて処置された患者を、以前に列挙した基準に従ってITI失敗の高いリスクがあると考えた。陰性のベセスダ力価を、0.6BU/mL以下と定義した。寛容化を、陰性のベセスダ力価および正常なFVIII回復(≧66%)および半減期(≧6時間)と定義した。本試験の主要な目的は、rFVIIIFcを使用するITIの臨床特性および転帰を報告することであった。結果を、記述統計学を使用してまとめる;推測統計分析は行わなかった。
【0396】
結果
試験集団
19人の患者を同定した。これらのうち、7人は、ITIを初めて受け、12人は救援ITIを受けていた(表1および表2)。rFVIIIFcITIの開始時の年齢中央値は、初めてのITIについては1.3歳(範囲:0.8~4.3歳)であり、救援ITI患者については6.4歳(範囲:1.6~12.6歳)であった。
【0397】
初回ITI患者は、151BUの中央ピーク履歴インヒビター(ITI前)力価(範囲:11~1126BU)を有していた;rFVIIIFc ITIの開始時の中央インヒビター力価は、52BUであった(範囲:3~1126BU)。ITIの開始時に、7人の初回ITI患者のうちの6人は、10BUを超える力価を有していた;これらの6人のうちの4人は、50BUを超える力価を有していた。インヒビター診断からrFVIIIFc ITIの開始までの中央時間は、4.4週(範囲:0~41週)であった。
【0398】
救援ITI患者については、他のFVIII産物を用いた以前のITI経過の平均数は、2.6(範囲:1~5)であり、インヒビター診断からrFVIIIFc ITIの開始までの中央時間は、5.5年(範囲:0.8~12年)であった。19人の患者のうちの18人に関するFVIII遺伝子型を、表1および表2に示す。
【0399】
初回ITI患者の転帰
データ収集の時間で、初回ITIを受けている7人の患者のうちの4人(表1)が寛容化され、rFVIIIFcを用いる予防に移行した。これらの4人の患者のうちの3人は、陰性のベセスダ力価および正常なFVIIIの回復および半減期を達成した;そのようなものとして、彼らは、5、7、および9カ月で寛容化の標準的な定義を満たした。4番目の患者は、患者がrFVIIIFc ITIの完了後13カ月であり、彼がrFVIIIFc予防上で陰性のインヒビターを継続的に有していたデータ収集の時点で、陰性のインヒビター力価および予防に移行したことに基づいて14.8カ月で処置する医師によって寛容化されたと考えられた。正常な半減期もその時点で報告された。
【0400】
【表1】
【0401】
4人の患者のうち、陰性のベセスダ力価を達成する中央時間は、27.7週(範囲:4.1~64週)であった。4人の寛容化された患者のうちの3人に関するITIレジメンは、4番目の患者に関する週3回の投薬(50IU/kg)と比較して、毎日のrFVIIIFc(85~200IU/kg)からなっていた(表1)。寛容化の報告までの中央時間は、4人全ての患者について33.9週(7.8カ月;範囲:21~64週)であった。毎日のrFVIIIFc(85~200IU/kg)で処置された3人の患者について、寛容化は29週(6.7カ月;範囲:20.6~38週)かかったが、週あたり3回、50IU/kgで処置された4番目の患者は、64週(14.8カ月)で寛容化した。
【0402】
残りの患者(n=3)のうち、2人は、ベセスダ力価が低下した(それぞれ、ITIの18および58週後に、32BUから18BUへの低下、および378BUから23BUへの低下)。この評価の時点で、1人の患者は、ベセスダ力価が増加した(ITIの15週後に3BUから16BUに増加した);この患者は、処置する医師の報告に従って、ITIを行ったか、中止し、rFVIIIFcを中断し、コンプライアンスが低かった(表1)。7人全ての初回ITI患者が、rFVIIIFc ITIまたは予防を継続する。
【0403】
救援ITI患者の転帰
救援ITIを受けている12人の患者のうちの7人(表2)が、rFVIIIFc ITIに関してベセスダ陰性を最初に達成した。陰性力価を達成する中央時間は、14.1週(範囲:3~67.6週)であった。これらの7人の患者のうちの3人は、ベセスダ陰性のままであり、rFVIIIFc ITIを継続するか、またはrFVIIIFcをやめて予防に移行する。陰性力価を最初に達成した他の4人の患者は、後に0.6BUを超
える力価を生じた。これらのうち、2人は、rFVIIIFc ITIを継続し、2人は他の因子を用いるITIに移行した(表2)。
【0404】
【表2】
【0405】
ベセスダ陰性を達成する7人の患者のうち、3人はまた、3、14、および65週で正常なFVIIIの回復を達成し、4番目の患者は27週で正常なFVIII半減期に達した。回復および半減期は、他者においては利用可能ではなかった(表2)。残りの5人の患者のうち、1人はベセスダ力価が低下し(10週後に36BUから22BUに低下した)、4人のベセスダ力価はITIにありながら未変化のままであるか、または増加した(表2)。これらの5人の患者のうち、4人はrFVIIIFc ITIを継続し、1人はITIから除外され、バイパス療法のみに置かれた。
【0406】
投薬の転帰、バイパス剤の使用、および現在の処置状態
本試験において評価された患者集団は、広範囲/広いタイミングの用量を受けた(表1および表2)。毎日投与した高用量については、急速な陰性インヒビター力価に向かう傾向が見られた。130IU/kg以上の1日のrFVIIIFc用量を受けた5人の患者のうちの5人(1人の初回ITIおよび4人の救援ITI)は、28週の中央値で陰性ベ
セスダ力価を達成した。19人の患者のうちの18人は、rFVIIIFc ITIと同時にバイパス剤を使用した;14人は主に予防にあり(9人はaPCCを使用し、5人はrFVIIaを使用した)、4人は要求に応じてrFVIIaを用いて処置した。
【0407】
全体として、19人の患者のうちの16人は、依然としてデータ収集の時点でrFVIIIFc(予防またはITI)にあった(表1および表2)。
【0408】
安全性
血栓塞栓症などの有害事象は報告されなかった。6回の手術を実施し、それらの全てにおいて、rFVIIIFc ITIの中断はなかった(膝滑膜切除術、頭蓋内神経外科的除去、および4回の留置ポート交換)。全てにおいてバイパス療法を使用した。手術中のインヒビター力価は、本試験については収集しなかった。
【0409】
結論
まとめると、これらの結果は、rFVIIIFcを用いるITIが可能であり、初回ITIを受けている多くの(ITIの失敗について高リスクである)患者において、および救援ITIを受けている一部の患者において、インヒビター根絶およびITIの成功をもたらすことができることを示している。さらに、rFVIIIFc ITIは、そのリスクプロファイルにも拘わらず、初回ITIを受けている患者の大部分において、ベセスダ力価の急速な低下および寛容化までの迅速な時間を示した。救援ITIについては、これらの患者の多くがデータ収集の時点でrFVIIIFcを用いるITIを依然として受けていたため、結論付けることがより困難である。しかしながら、救援処置を受けている一部の患者は、彼らがベセスダ陰性を達成したか、またはインヒビター力価の有意な低下を示したという点で、治療利益を誘導すると考えられた。これは、より高いrFVIIIFc用量(≧130IU/kg)を毎日投与した場合に特に当てはまった。
【実施例0410】
血友病Aにおける因子を用いた交換療法の主な合併症は、重篤な血友病Aを有する患者の約30%におけるインヒビター(中和抗第VIII因子抗体)の形成である。インヒビターの発生は、処置の効能ならびに罹患した個体の生活の質に影響する。免疫系が組換え第VIII因子(rFVIII)にどのように応答するかのさらなる理解は、インヒビターを効率的に根絶するための血友病研究における進行中の努力である。半減期が延長されたrFVIII Fc融合タンパク質(rFVIIIFc)は、出血エピソードを防止し、制御するための有効かつ良好に許容された療法である。この分子のFc領域は、前臨床動物モデル(Krishnamoorthy S.ら、Cell Immunol.301:30~39頁(2016))において示されたように、また、免疫寛容誘導症例報告(Groomes CLら、Pediatr Blood Cancer 63(5):922~24頁(2016);Malec LMら、Haemophilia 22(6):e552~e554頁(2016);Ragni MVら、Haemophilia
22(5):e462~e464頁(2016))によって示唆されたように、rFVIII半減期の増加の原因となるだけでなく、抗原特異的寛容も促進することができる。
【0411】
方法
末梢血由来ヒトAPCまたはTHP-1単球を使用して、FcγR結合、内在化、シグナル伝達およびサイトカイン産生に対するrFVIIIFcの効果、および遺伝子発現変化、ならびにin vitroでのその後の相互作用およびT細胞に対する効果を精査した(図1)。
【0412】
結果
FcγRの細胞表面発現の減少は、rFVIIIFc処置の際の内在化を示す(図2A
~2C)。単球由来マクロファージおよび樹状細胞を、陽性対照としての西洋わさびペルオキシダーゼ免疫複合体(HRP-IC)、陰性対照としてのヒト免疫グロブリンG1(IgG1)、および等モル濃度(200nM)の組換え第VIII因子(rFVIII)またはrFVIII Fc融合タンパク質(rFVIIIFc)で24時間処理した。Fcγ受容体(FcγR)CD16(図2A)、CD32(図2B)、およびCD64(図2C)の細胞表面発現を、フローサイトメトリーにより測定した(n=3;**P≦0.01、***P≦0.005、他の処理に対するHRP-ICの有意性は示さない)。rFVIIIFcによる処理は、rFVIIIによる処理後の細胞表面と比較して、CD16(図2A)、CD32(図2B)、およびCD64(図2C)の細胞表面発現の減少と相関していた。
【0413】
rFVIIIFcは、FcγRと係合し、その後の炎症性サイトカイン産生なしに、単球およびマクロファージにおけるシグナル伝達を誘導する(図3A~3C)。THP-1単球細胞株、単球、末梢血単球由来マクロファージ、および末梢血単球由来樹状細胞を、HRP-IC、IgG1、rFVIIIまたはrFVIIIFcで15分間処理した(図3A)。Sykリン酸化を、MSDプラットフォームを使用して、細胞溶解物中で測定した(n=3~7、P≦0.05)。Sykリン酸化を、rFVIIIFc(WT)、新生児Fc受容体に結合することができないrFVIIIFc変異体(FcRn変異体)、またはFcγRに結合することができないrFVIIIFc変異体(FcγR変異体)でマクロファージを処理した後に測定した(n=4、P≦0.05)(図3B)。24時間処理したマクロファージの炎症性サイトカイン産生を、MSD ELISAによって測定した(n=4、有意性は示さない)(図3C)。
【0414】
rFVIIIFcは、活性化および炎症性サイトカイン産生において役割を果たしている分子よりもむしろ、免疫調節に関与する分子をリン酸化する(表3および図4)。rFVIIIFcで15分間処理した単球由来マクロファージに由来する溶解物中のリン酸化されたタンパク質を、プロテオームプロファイラーホスホキナーゼおよびホスホ免疫受容体アレイを使用して問い合わせた。プロテオームプロファイラーアレイによって同定されたrFVIIIFcで処理されたマクロファージ中のリン酸化された分子の一覧を、表3に示す。阻害的シグナル伝達を担うホスファターゼのリン酸化を、MSDプラットフォームを使用して測定した(n=3;**P≦0.01、***P≦0.005)(図4)。
【0415】
【表3】
【0416】
rFVIIIFcは、寛容原性マクロファージに特徴的な遺伝子発現パターンを誘導する(図5A~5G)。探索的RNA配列決定を、有意に下方調節された遺伝子(図5A
について、および有意に上方調節された遺伝子(図5B)について、IgG1、rFVIII、またはrFVIIIFcで6時間処理した単球由来マクロファージ上で実施し(n=3)、rFVIIIで処理された細胞と比較した、これらの細胞中で選択性を示した分子経路を精査するために、rFVIIIFcにより上方調節された遺伝子に対して経路分析を行った(表4)。NRF2およびPPAR-ガンマ経路の様々な遺伝子、ならびに様々な他の免疫調節因子が上方調節されることがわかった(図5H)。NRF2および脂質代謝経路の選択された遺伝子を、Q-PCRによって検証した(n=8;P≦0.05、**P≦0.01、***P≦0.005)(図5C~5G)。さらに、rFVIIIFcにより教育されたマクロファージは、特徴的なM2様表現型を示すことがわかった(図5I~5M)。特に、rFVIIIFcで処理されたマクロファージは、6時間後(図5I)および24時間後(図5J)にrFVIIIで処理された細胞よりも高い相対的CD206発現を有し、rFVIIIFcで処理されたマクロファージは、24時間後(図5M)にrFVIIIで処理された細胞よりも高い相対的ARG1発現を有していた。
【0417】
【表4】
【0418】
rFVIIIFcで処理された抗原提示細胞は、APC-T細胞の細胞接触を必要とする調節性T細胞分化に影響する(図6A~6C)。末梢血単球由来マクロファージを、IgG1、rFVIII、またはrFVIIIFcで処理した後、同じドナーに由来する末梢血から単離されたナイーブなCD4陽性T細胞と共に同時培養物に入れた。同時培養物中で6日後(図6A)、調節性T細胞のパーセント(CD4+CD25+FoxP3+)を、フローサイトメトリーを使用して定量した(n=4)(図6B)。ナイーブなT細胞を、IgG1、rFVIII、またはrFVIIIFcで予備処理したAPCの条件化培地中で培養した場合の調節性T細胞のパーセントも定量した(n=4)(図6C)。
【0419】
結論
rFVIIIFcは、APC上のFcγ受容体を介して結合し、内在化およびシグナル伝達を誘導すると考えられる。このシグナル伝達は、炎症性サイトカイン産生に変換されず、APCを活性化しない(データは示さない)。rFVIIIFc処理の際に、免疫調節性シグナル伝達事象が開始される。これらの事象は、NRF2およびPPARγ経路の上方調節(図5H)ならびにCD206およびアルギナーゼ1分子の上方調節を特徴とするM2様表現型に向かうマイクロファージ分化を駆動すると考えられる。様々な他の免疫調節因子も、発現の増加を示したが、少なくともグアニル酸シクラーゼ1可溶性サブユニットベータ(2GUCY1B2)、プロトポルフィリノゲンオキシダーゼ(PPOX)、およびサイトカインシグナル伝達の抑制因子3(SOCS3)は、rFVIIIFc処理された細胞における発現の減少を示した(図5H)。これらのマクロファージは、調節性
T細胞分化、FVIII寛容化、および抗FVIIIインヒビター減少などの、以前に報告された有益な免疫学的効果を実行することができる(図7)。
【実施例0420】
初期の前臨床および臨床データは、rFVIIIFcが、おそらく分子のFcドメインに帰する免疫調節効果に起因して、ITI処置のために使用された場合に陰性のインヒビター力価までの比較的短い時間を可能にすることを示している。よりロバストな臨床データを得るために、標準化されたプロトコールを開発した。ここで、試験設計を提示する。
【0421】
ReITIrate(NCT03103542)、予測、介入、多施設、非盲検試験は、以前のITIの試みに失敗した、全年齢の、20人の重篤なHAインヒビター患者を登録することを目的とする。この試験の主な目的は、60週の時間枠内でrFVIIIFcを用いて実施されたITIの転帰を記述することである。主要評価項目は、ITIの成功であり;ITI処置中に評価された副次的評価項目は、ITIの成功までの時間、再発の発生、出血の回数、rFVIIIFcの消費量、学校または仕事の欠席日数、入院および順守を含む。ITI処置は、最大で60週にわたる、rFVIIIFc 200IU/kg/日(1日1回または2回日用量に分割)を含む。寛容が達成された後、16週の漸減期間および予防的に与えられるrFVIIIFcを用いた32週のフォローアップを行う。成功の基準は、陰性のインヒビター力価(<0.6ベセスダ単位)、予想の66%を超える増分回復、および7時間以上の終末半減期を含む。
【0422】
図8は、マクロファージに対するrFIXFcの提唱される効果を示す。rFVIIIFcは、APC上のFcγ受容体を介して結合し、内在化およびシグナル伝達を誘導すると考えられる。このシグナル伝達は、炎症性サイトカイン産生に変換されず、APCを活性化しない。むしろ、免疫調節シグナル伝達事象は、rFVIIIFc処置の際に開始される。これらの事象は、NRF2およびPPARγ経路の上方調節を特徴とする「Mox/M2様」表現型に向かうマクロファージ分化を駆動すると考えられる。
【0423】
特定の実施形態の前記記載は、他者が、当業界の技術の範囲内にある知識を適用することによって、過度の実験なく、本発明の一般的概念から逸脱することもなく、そのような特定の実施形態を容易に改変する、および/または様々な適用に適合させることができる、本発明の一般的性質を完全に示すものである。したがって、そのような適合化および改変は、本明細書に提示される教示および指針に基づいて、開示された実施形態の等価物の意味および範囲の中にあることが意図される。本明細書における表現または用語は、説明のためのものであり、限定するためのものではないことが理解されるべきであり、本明細書の用語または表現は、教示および指針を考慮して当業者によって解釈されるべきである。
【0424】
本発明の他の実施形態は、本明細書および本明細書に開示された本発明の実施の考慮から当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は、例示のみとして考慮され、本発明の真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【0425】
本明細書に開示される全ての刊行物、特許、および特許出願は、あたかもそれぞれ個々の刊行物、特許または特許出願が具体的かつ個別的に参照により組み入れられると示されたのと同程度に、参照により組み入れられる。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図5-5】
図5-6】
図6A
図6B
図6C
図7
図8
【外国語明細書】