(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027232
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】認知の健康および機能を向上させるための植物抽出物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/534 20060101AFI20230221BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/222 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
A61K36/534
A61P25/28
A61K31/222
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022196766
(22)【出願日】2022-12-09
(62)【分割の表示】P 2021001953の分割
【原出願日】2013-08-09
(31)【優先権主張番号】61/681,414
(32)【優先日】2012-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】500462328
【氏名又は名称】ケミン、インダストリーズ、インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】KEMIN INDUSTRIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】セディア,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ハーリンジャー,ケリー
(72)【発明者】
【氏名】ルイス,ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】フェン,ハリー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】認知の健康および/または機能を高める、向上させる、または維持するための組成物を提供する。
【解決手段】1.6~32mg/kg/日のスペアミント植物の水抽出物を含み、前記水抽出物が少なくとも5重量%のロスマリン酸を含み、通常の加齢認知変化を経験しアルツハイマー病を経験しない哺乳類において認知の健康および/または機能を高める、向上させる、または維持するための、該抽出物を少なくとも90日間にわたって投与する、経口投与組成物を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.6~32mg/kg/日のスペアミント植物の水抽出物を含み、前記水抽出物が少なくとも5重量%のロスマリン酸を含み、通常の加齢認知変化を経験しアルツハイマー病を経験しない哺乳類において認知の健康および/または機能を高める、向上させる、または維持するための、該抽出物を少なくとも90日間にわたって投与する、経口投与組成物。
【請求項2】
前記の哺乳類がヒトおよびコンパニオンアニマルからなるリストから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
認知の健康および/または認知機能が集中、注意、および警戒の向上による手続き学習を指す、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
認知の健康および/または認知機能が陳述記憶、短期および長期記憶の両方を指す、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
認知の健康および/または認知機能が実行機能を指す、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
認知の健康および/または機能を高める、向上させる、および維持することが学習を高める、向上させる、および維持することを含み、学習が陳述学習および手続き学習からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
認知の健康および/または機能を高める、向上させる、および維持することが記憶を高める、向上させる、および維持することを含み、記憶が陳述および手続き構成要素の両方を有する参照記憶、認識記憶、短期記憶、長期記憶および連想記憶からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
正常な加齢プロセスと関係する認知障害または欠陥の症状を軽減するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
正常な加齢プロセスと関係する認知障害または欠陥の症状を軽減するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
時差ボケ、時間帯変化、妊娠、薬物療法、ルーチンワークおよび交代制作業における変化からなるリストから選択される状態において起こるような概日リズムの混乱のようなストレスの多い条件下での正常な認知機能の維持のための、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
時間帯変化、妊娠、薬物療法、ルーチンワークおよび交代制作業における変化からなるリストから選択される状態において起こるような概日リズムの混乱のようなストレスの多い条件下での正常な認知機能の維持のための、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
1.6~32mg/kg/日のスペアミント植物の抽出物を含み、通常の加齢認知変化を経験しアルツハイマー病を経験しない哺乳類において認知の健康および/または機能における低下を処置または予防するための、該抽出物を少なくとも90日間にわたって投与する、経口投与組成物。
【請求項13】
前記の哺乳類がヒトおよびコンパニオンアニマルからなるリストから選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記の抽出物が少なくとも5重量%のロスマリン酸を含む、請求項12に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して認知の健康および機能を高める、向上させる、または維持する植物抽出物に、より具体的には学習、記憶、注意、警戒、実行機能、言語の流暢さ、処理速度、および/または認知の柔軟性および関係する行動を向上させるためのカルノシン酸および/またはロスマリン酸の投与に関する。
【背景技術】
【0002】
認知の健康または機能を向上させることができる製品に関する強い需要が存在し、これらの製品に関する市場は近年不利な経済的圧力にもかかわらず成長し続けてきた。この成長の一部は高齢人口の増大に帰することができ、それは特にアジアおよび米国において当てはまる。世界中での認知健康成分の売り上げは約4億5500万$である。Frost
and Sullivanは、2016年から2019年までのこの領域における年間成長率を12%と予測している。
【0003】
認知健康に関する主要な成分には、現在ホスファチジルセリン(PS)、CoQ10、オメガ-3(海洋生物の油/藻類の油)、シチコリン、イチョウおよびチョウセンニンジンが含まれる。最大の認知健康成分の内で、ホスファチジルセリンはFDAに認可された有資格強調表示(qualified claim)を有する唯一の認知健康成分である。その強調表示を支持する科学的証拠の増大により、その成分は売り上げにおける2桁の成長を享受してきた。2010年に、DHAおよびEPAの脳機能、心機能および視力に関する健康強調表示は欧州においてEFSAから勧告を得た。シチコリンは、ニューロンの変性を予防し、記憶を向上させる成分として推奨されている。
【0004】
カルノシン酸(CA)は、ロスマリヌス・オフィキナリス(Rosmarinus officinalis)(ローズマリー)およびサルビア・オフィキナリス(Salvia officinalis)(セージ)中に存在する最も豊富なポリフェノール化合物の1つである。現在、CAは既に市場で成分として、または完成した栄養補助食品として入手可能である。これらの製品の純度は25%~60%で様々であり、あるHPLCグレードの製品は98%として列挙されている。加えて、粉末形態で入手可能なCAに規格化された(5~30%CAに規格化された)、または栄養補助食品(1日あたり3カプセルの推奨用量での6%CAに規格化された300mgカプセル)としてのローズマリー抽出物が存在する。これらのローズマリー抽出物中のCAの百分率は5~60%で様々である。ローズマリーはフェノール性ジテルペン類(カルノシン酸およびカルノソール)、フェノール酸類(コーヒー酸およびローズマリー酸)、およびフラボノイド類の組み合わせを有する。ジテルペンは4個のイソプレン単位の組み合わせであり、抗微生物性かつ抗炎症性であることが知られている(Bisio et al. Antimicrobial activity of the ornamental species Salvia corrugata, a potential new crop for extractive purposes. J Agric Food Chem 56: 10468-10472, 2008; Sato et al. Antibacterial novel phenolic diterpenes from Podocarpus macrophyllus D. Don. Chem Pharm Bull (Tokyo) 56: 1691-1697, 2008; Su et al. Anti-inflammatory activities of furanoditerpenoids and other constituents from Fibraurea tinctoria. Bioorg Med Chem 16: 9603-9609, 2008; Wang
et al. Triptolide inhibits the differentiation of Th17 cells and suppresses collagen-induced arthritis. Scand J Immunol 68: 383-390, 2008)。これらのイソプレン単位は、線状鎖として一緒に連結されていることができ、または環形成するように配置されていることができる。CAはその誘導体であるカルノソールと共にロスマリヌス・オフィキナリス中の主な有効成分であると考えられている。
【0005】
【0006】
入手可能なインビトロ研究の大部分がCAを抗酸化保護に関して評価していた。実際、ローズマリーの抗酸化活性は主にCAに帰せられている(Aruoma et al. An evaluation of the antioxidant and antiviral action of extracts of rosemary and provencal herbs. Food and Chemical Toxicology 34: 449-456, 1996; Perez-Fons et al. Rosemary (Rosmarinus officinalis) diterpenes affect lipid polymorphism and fluidity in phospholipid membranes. Archives of Biochemistry and Biophysics 453: 224-236, 2006; Wang et al. Augmentation by Carnosic Acid of Apoptosis in Human Leukaemia Cells Induced by Arsenic Trioxide via Upregulation of the Tumour Suppressor PTEN. The Journal of International Medical Research 36: 682-690, 2008)。CAの神経保護
作用が酸化ストレスのグルタメートモデルを用いて評価された。その研究は、CAがインビボおよびインビトロの両方で重症のグルタメートによる損傷に対して神経細胞を保護することを実証した(Sato et al. Carnosic acid, a electrophilic compound, protects neurons both in vitro and in vivo through activation of the Keap1/Nrf2 pathway via alkylation of targeted cysteines on Keap1. Journal of Neurochemistry 104: 1116-1131, 2008)。CAに関するより最近の文献は、その可能性のある抗炎症特性を論じた。CAがNF-κB転写因子の下方制御により抗炎症活性を有することを示した研究に加えて、他の研究はCAの抗炎症特性に関する追加の機序を評価している(Laughton et al. Inhibition of mammalian 5-lipoxygenase and cyclo-oxygenase by flavonoids and phenolic dietary additives: Relationship to antioxidant activity and to iron ion-reducing ability. Biochemical Pharmacology 42: 1673-1681, 1991; Poeckel et al. Carnosic acid and carnosol potently inhibit human 5-lipoxygenase and suppress pro-inflammatory responses of stimulated human polymorphonuclear leukocytes. Biochem Pharmacol 76: 91-97, 2008; Rau et al. Carnosic Acid and Carnosol, Phenolic Diterpene Compounds of the Labiate Herbs Rosemary and Sage, are Activators of the Human Peroxisome Proliferator-Activated Receptor Gamma. Planta Med 72: 881-887, 2006)。
【0007】
上記のインビトロでのデータは、CAの抗酸化能力に関するインビボでのデータにより支持されている。最近のインビボでの文献は、CAの抗肥満および抗糖化(anti-glycative)作用を示している(Alarcon-Aguilar et al. Investigation on the hypoglycaemic effects of extracts of four Mexican medicinal plants in normal and
alloxan-diabetic mice. Phytother Res 16: 383-386, 2002; Hsieh et al. Low-density lipoprotein, collagen, and thrombin models reveal that Rosemarinus officinalis
L. exhibits potent antiglycative effects. J Agric Food Chem 55: 2884-2891, 2007; Ninomiya et al. Carnosic acid, a new class of lipid absorption inhibitor from
sage. Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 14: 1943-1946, 2004; Takahashi et
al. Carnosic acid and carnosol inhibit adipocyte differentiation in mouse 3T3-L1 cells through induction of phase 2 enzymes and activation of glutathione metabolism. Biochem Biophys Res Commun 382: 549-554, 2009)。
【0008】
ロスマリン酸(RA)はスペアミント中で見付かった主な構成要素の1つであり、その抗酸化能力への重要な寄与物質である(Fletcher et al. Heat stress reduces the accumulation of rosmarinic acid and the total antioxidant capacity in spearmint (Mentha spicata L). Journal of the Science of Food and Agriculture 85: 2429-2436, 2005)。天然に存在するフェノール化合物であるRAは、コーヒー酸および3,4-ジヒドロキシフェニル乳酸のエステルである。その構造は、2個のフェノール環の間のカルボニル基、不飽和二重結合、およびカルボン酸からなる。RAは、抗炎症、抗変異原性、抗細菌、抗鬱、HIV-1阻害、抗酸化、および抗ウイルス特性のようないくつかの生物学的活性を示してきた。これらの特性はRAを製薬産業および化粧品産業に関する魅力的な成分にしてきた。RAは欧州において非ステロイド系抗炎症薬として局所的に用いられてきた(Ritschel et al. Percutaneous absorption of rosmarinic acid in the rat. Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology 11: 345-352, 1989)。
食品産業におけるその香味料および保存剤としての広範囲にわたる使用のため、RAは毎日消費される安全な成分とみなされている(Alkam et al. A natural scavenger of peroxynitrites, rosmarinic acid, protects against impairment of memory induced by A
β25-35. Behavioural Brain Research 180: 139-145, 2007)。
【0009】
【0010】
RAの非特異的保護特性の証拠が脳内で見付かっている。脳の向上した抗酸化活性がRAの高齢のマウスへの投与後に実証され、それは結果として脳における向上したスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)およびカタラーゼ(CAT)の活性をもたらし、一方でマロンジアルデヒド(MDA)を減少させた(Shou et al. Rosmarinic acid attenuates
D-galactose induced behavior impairment in mice and its mechanism. 2010, p. 1723-1726)。これらのデータはRAの抗酸化剤としての非特異的保護特性を実証している;しかし、以前のデータは特定の領域において、または特定の臨床転帰において脳に影響を及ぼすRAの能力を実証していない。
【0011】
インビボにおいて、3つの研究がRAの投与を評価してきた。これらの研究は、特定の認知疾患状態を表すために用いられた頭蓋内損傷モデルまたはストレスモデルにおいて経口またはIPのどちらかでRAを投与している(Alkam et al. A natural scavenger of peroxynitrites, rosmarinic acid, protects against impairment of memory induced by Aβ25-35. Behavioural Brain Research 180: 139-145, 2007; Park et al. Subchronic administration of rosmarinic acid, a natural prolyl oligopeptidase inhibitor, enhances cognitive performances. Fitoterapia 81:644-648, 2010; Zhou et al. Rosmarinic acid attenuates D-galactose induced behavior impairment in mice and its mechanism. Intl Conf BMEI 4:1723-1726, 2010)。RAはこれらのモデルにおいて利益を
示したが、それらは(SAMP8におけるような)通常の加齢認知変化の評価のための検証されたモデルではない。加えて、その作用機序が特異的なのか抗酸化作用のために非特異的なのかは未知である。現在、RAの補給を単独で、またはスペアミント抽出物の使用を通して評価した公開されたヒトの研究は存在しない。
【0012】
学習および記憶は2つの主なカテゴリー:陳述および手続きに分けることができる。陳述は一過性、空間および連想記憶構成要素を有する。これは学習および記憶に関連し、それは注意および警戒を必要とする意識の構成要素を有する。ヒトではこれは別個の事象、場所、人々、および事実の獲得、認識および記憶に関する。陳述学習および記憶は現在T迷路獲得、T迷路保持、および物体認識を通した記載された動物試験において測定されている。手続き学習および記憶は、陳述記憶課題がルーチン的または習慣的になる際に形成される可能性があり、レバー押しを通した現行の動物試験において測定された。これは意識的構成要素を有しない学習および記憶に関し、それはヒトでは自転車に乗ることのような習慣または技能である。陳述課題は海馬で開始されると考えられ、一方で手続き課題は主に脳の尾状核領域に結びついている。
【0013】
加齢の結果もたらされる認知作用の評価に関して、老化促進マウス-易発症(prone)8(SAMP8)は、8月齢までに学習および記憶における欠陥を発現する、加速された加齢の証明されたモデルである(Yagi H, Katoh S, Akiguchi I, Takeda T (1988) Age-related deterioration of ability of acquisition in memory and learning in senescence accelerated mouse: SAM-P/8 as an animal model of disturbances in recent memory. Neurosci Biobehav Rev. 474, 86-93; Flood JF, Morley JE (1998) Learning and memory in the SAMP8 mouse. Neurosci Biobehav Rev. 22, 1-20)。SAMP8マウスは脳中のアミロイド前駆体タンパク質(AβPP)およびアミロイドベータ(Aβ)における年齢関連性の増大ならびに中枢神経系における増大したフリーラジカルの生成をもたらす自然突然変異を有し、それは結果として学習および記憶の欠陥をもたらす(Butterfield DA, Howard BJ, Yatin S, Akkeb KL, Carney JM (1997) Free radical oxidation of brain proteins in accelerated senescence and its modulation by N-tert-butyl-
α-phenylnitrone. Prac Natl Acad Sci USA. 94, 674-678; Sato E, Kurokawa T, Oda N, Ishibashi S (1996) Early appearance of abnormality of microperoxisomal enzymes
in the cerebral cortex of senescence-accelerated mouse. Mech Ageing Dev. 92, 175-184)。SAMP8モデルはその文献において様々な栄養成分、栄養補助剤および薬物
の認知的利益の評価のために用いられている。いくつかの例は、アルファ-リポ酸(alpha-lioic acid)、n-アセチルシステイン(Farr SA, Poon HF, Dogrukol-Ak D, Drake J, Banks WA, Eyerman E, Butterfield DA, Morley JE (2003) The antioxidants α-lipoic acid and N-acetylcysteine reverse memory impairment and brain
oxidative stress in aged SAMP8 mice. J Neurochemistry. 84, 1173-1183)、多価不
飽和脂肪酸(Petursdottir AL, Farr SA, Morley JE, Banks WA, Skuladottir GV (2008)
Effect of dietary n-3 polyunsaturated fatty acids on brain lipid fatty acid composition, learning ability, and memory of senescence-accelerated mouse. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 63, 1153-1160)、およびメマンチン(Zhou, M., Wang, M. -., & Wang, X. -. (2010). Effects of memantine combined with enriched environment therapy on learning and memory abilities and the mental behavior in senescence accelerated mouse. Journal of Clinical Neurology, 23(6), 438-441)であり、その全て
が追跡ヒト臨床試験においてプラスの認知的利益を示した(Volchegorskii, I. A., Rassokhina, L. M., Kolyadich, M. I., & Alekseev, M. N. (2011). Comparative study of alpha-lipoic acid and mexidol effects on affective status, cognitive functions and quality of life in diabetes mellitus patients. Eksperimental'Naya i Klinicheskaya Farmakologiya, 74(11), 17-23; Chan, A., Remington, R., Kotyla, E., Lepore, A., Zemianek, J., & Shea, T. B. (2010). A Vitamin/nutriceutical formulation impr
oves memory and cognitive performance in community-dwelling adults without dementia. Journal of Nutrition, Health and Aging, 14(3), 224-230; Small, G. W., Silverman, D. H. S., Siddarth, P., Ercoli, L. M., Miller, K. J., Lavretsky, H., Phelps, M. E. (2006). Effects of a 14-day healthy longevity lifestyle program on cognition and brain function. American Journal of Geriatric Psychiatry, 14(6), 538-545; Litvinenko, I. V., Odinak, M. M., Mogil'Naya, V. I., & Perstnev, S. V. (2010). Use of memantine (akatinol) for the correction of cognitive impairments in Parkinson’s disease complicated by dementia. Neuroscience and Behavioral Physiology, 40(2), 149-155)。認知成分および/または薬物を評価する神経科学者は、SAMP8は追跡ヒト臨床試験におけるそれらの有効性を予測するためにうまく利用されてきた有効な動物モデルであることを認めている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Bisio et al. Antimicrobial activity of the ornamental species Salvia corrugata, a potential new crop for extractive purposes. J Agric Food Chem 56: 10468-10472, 2008
【非特許文献2】Sato et al. Antibacterial novel phenolic diterpenes from Podocarpus macrophyllus D. Don. Chem Pharm Bull (Tokyo) 56: 1691-1697, 2008
【非特許文献3】Su et al. Anti-inflammatory activities of furanoditerpenoids and other constituents from Fibraurea tinctoria. Bioorg Med Chem 16: 9603-9609, 2008
【非特許文献4】Wang et al. Triptolide inhibits the differentiation of Th17 cells and suppresses collagen-induced arthritis. Scand J Immunol 68: 383-390, 2008
【非特許文献5】Aruoma et al. An evaluation of the antioxidant and antiviral action of extracts of rosemary and provencal herbs. Food and Chemical Toxicology 34: 449-456, 1996
【非特許文献6】Perez-Fons et al. Rosemary (Rosmarinus officinalis) diterpenes affect lipid polymorphism and fluidity in phospholipid membranes. Archives of Biochemistry and Biophysics 453: 224-236, 2006
【非特許文献7】Wang et al. Augmentation by Carnosic Acid of Apoptosis in Human Leukaemia Cells Induced by Arsenic Trioxide via Upregulation of the Tumour Suppressor PTEN. The Journal of International Medical Research 36: 682-690, 2008
【非特許文献8】Sato et al. Carnosic acid, a electrophilic compound, protects neurons both in vitro and in vivo through activation of the Keap1/Nrf2 pathway via alkylation of targeted cysteines on Keap1. Journal of Neurochemistry 104: 1116-1131, 2008
【非特許文献9】Laughton et al. Inhibition of mammalian 5-lipoxygenase and cyclo-oxygenase by flavonoids and phenolic dietary additives: Relationship to antioxidant activity and to iron ion-reducing ability. Biochemical Pharmacology 42: 1673-1681, 1991
【非特許文献10】Poeckel et al. Carnosic acid and carnosol potently inhibit human 5-lipoxygenase and suppress pro-inflammatory responses of stimulated human polymorphonuclear leukocytes. Biochem Pharmacol 76: 91-97, 2008
【非特許文献11】Rau et al. Carnosic Acid and Carnosol, Phenolic Diterpene Compounds of the Labiate Herbs Rosemary and Sage, are Activators of the Human Peroxisome Proliferator-Activated Receptor Gamma. Planta Med 72: 881-887, 2006
【非特許文献12】Alarcon-Aguilar et al. Investigation on the hypoglycaemic effects of extracts of four Mexican medicinal plants in normal and alloxan-diabetic mice. Phytother Res 16: 383-386, 2002
【非特許文献13】Hsieh et al. Low-density lipoprotein, collagen, and thrombin models reveal that Rosemarinus officinalis L. exhibits potent antiglycative effects. J Agric Food Chem 55: 2884-2891, 2007
【非特許文献14】Ninomiya et al. Carnosic acid, a new class of lipid absorption inhibitor from sage. Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 14: 1943-1946, 2004
【非特許文献15】Takahashi et al. Carnosic acid and carnosol inhibit adipocyte differentiation in mouse 3T3-L1 cells through induction of phase 2 enzymes and activation of glutathione metabolism. Biochem Biophys Res Commun 382: 549-554, 2009
【非特許文献16】Fletcher et al. Heat stress reduces the accumulation of rosmarinic acid and the total antioxidant capacity in spearmint (Mentha spicata L). Journal of the Science of Food and Agriculture 85: 2429-2436, 2005
【非特許文献17】Ritschel et al. Percutaneous absorption of rosmarinic acid in the rat. Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology 11: 345-352, 1989
【非特許文献18】Alkam et al. A natural scavenger of peroxynitrites, rosmarinic acid, protects against impairment of memory induced by Aβ25-35. Behavioural Brain Research 180: 139-145, 2007
【非特許文献19】Shou et al. Rosmarinic acid attenuates D-galactose induced behavior impairment in mice and its mechanism. 2010, p. 1723-1726
【非特許文献20】Alkam et al. A natural scavenger of peroxynitrites, rosmarinic acid, protects against impairment of memory induced by Aβ25-35. Behavioural Brain Research 180: 139-145, 2007
【非特許文献21】Park et al. Subchronic administration of rosmarinic acid, a natural prolyl oligopeptidase inhibitor, enhances cognitive performances. Fitoterapia 81:644-648, 2010
【非特許文献22】Zhou et al. Rosmarinic acid attenuates D-galactose induced behavior impairment in mice and its mechanism. Intl Conf BMEI 4:1723-1726, 2010
【非特許文献23】Yagi H, Katoh S, Akiguchi I, Takeda T (1988) Age-related deterioration of ability of acquisition in memory and learning in senescence accelerated mouse: SAM-P/8 as an animal model of disturbances in recent memory. Neurosci Biobehav Rev. 474, 86-93
【非特許文献24】Flood JF, Morley JE (1998) Learning and memory in the SAMP8 mouse. Neurosci Biobehav Rev. 22, 1-20
【非特許文献25】Butterfield DA, Howard BJ, Yatin S, Akkeb KL, Carney JM (1997) Free radical oxidation of brain proteins in accelerated senescence and its modulation by N-tert-butyl-α-phenylnitrone. Prac Natl Acad Sci USA. 94, 674-678
【非特許文献26】Sato E, Kurokawa T, Oda N, Ishibashi S (1996) Early appearance of abnormality of microperoxisomal enzymes in the cerebral cortex of senescence-accelerated mouse. Mech Ageing Dev. 92, 175-184
【非特許文献27】Farr SA, Poon HF, Dogrukol-Ak D, Drake J, Banks WA, Eyerman E, Butterfield DA, Morley JE (2003) The antioxidants α-lipoic acid and N-acetylcysteine reverse memory impairment and brain oxidative stress in aged SAMP8 mice. J Neurochemistry. 84, 1173-1183
【非特許文献28】Petursdottir AL, Farr SA, Morley JE, Banks WA, Skuladottir GV (2008) Effect of dietary n-3 polyunsaturated fatty acids on brain lipid fatty acid composition, learning ability, and memory of senescence-accelerated mouse. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 63, 1153-1160
【非特許文献29】Zhou, M., Wang, M. -., & Wang, X. -. (2010). Effects of memantine combined with enriched environment therapy on learning and memory abilities and the mental behavior in senescence accelerated mouse. Journal of Clinical Neurology, 23(6), 438-441
【非特許文献30】Volchegorskii, I.A., Rassokhina, L. M., Kolyadich, M. I., & Alekseev, M. N. (2011). Comparative study of alpha-lipoic acid and mexidol effects on affective status, cognitive functions and quality of life in diabetes mellitus patients. Eksperimental'Naya i Klinicheskaya Farmakologiya, 74(11), 17-23
【非特許文献31】Chan, A., Remington, R., Kotyla, E., Lepore, A., Zemianek, J., & Shea, T. B. (2010). A Vitamin/nutriceutical formulation improves memory and cognitive performance in community-dwelling adults without dementia. Journal of Nutrition, Health and Aging, 14(3), 224-230
【非特許文献32】Small, G. W., Silverman, D. H. S., Siddarth, P., Ercoli, L. M., Miller, K. J., Lavretsky, H., Phelps, M. E. (2006). Effects of a 14-day healthy longevity lifestyle program on cognition and brain function. American Journal of Geriatric Psychiatry, 14(6), 538-545
【非特許文献33】Litvinenko, I. V., Odinak, M. M., Mogil'Naya, V. I., & Perstnev, S. V. (2010). Use of memantine (akatinol) for the correction of cognitive impairments in Parkinson’s disease complicated by dementia. Neuroscience and Behavioral Physiology, 40(2), 149-155
【発明の概要】
【0015】
本発明は、学習、記憶、実行機能(すなわち作業記憶、タスク切替え、プランニング、柔軟性、視覚的注意、数学技能ならびに新しい変化する条件、環境および状況を認識して適応する人の能力)および認知関連行動(すなわち集中、注意、警戒、探索、動機付け等)を向上させるための、植物から抽出されたカルノシン酸および/またはロスマリン酸の投与からなる。カルノシン酸を含むローズマリーの抽出物は、向上した陳述記憶ならびに手続き学習および記憶を示す。哺乳類において、これは別個の事象、場所、人々、および事実の高められた、向上した、または維持された記憶として観察することができる。加えて、習慣的情報または技能を学習および維持する能力が、おそらく関係を作る向上した能力の結果として向上することを観察することができる。ロスマリン酸を含むスペアミントの抽出物は、陳述学習および記憶における向上を示す。哺乳類において、これは別個の事象、場所、人々、および事実の高められた、または向上した学習として、高められた、および維持されたこれらの事の記憶と共に観察することができる。
【0016】
酸化的損傷は、加齢プロセスの特徴の1つと考えられている。加齢と関係する認知障害において存在する神経細胞の機能障害は、大部分が酸化ストレスからのものであると考えられている。ミトコンドリアへの構造的および機能的損傷の両方が認知障害、例えばアルツハイマー病において存在し、これは細胞およびミトコンドリアの両方に浸透する抗酸化剤は酸化ストレスからの最大の保護を提供するであろうことを示唆している。本試験は、2種類の新規の専売の抗酸化物質に基づく成分である、それぞれカルノシン酸およびロスマリン酸に標準化されたローズマリー抽出物およびスペアミント抽出物が、促進された加齢のSAMP8マウスモデルにおいて学習および記憶を向上させることができるかどうかを試験するためにデザインされた。我々は以前に、SAMP8マウスにおける学習および記憶の欠陥を改善し、酸化的損傷の徴候を逆行させる抗酸化物質の能力を示しており;従って、そのSAMPマウスはこれらの抗酸化化合物を試験するための優秀なモデルである。SAMPマウスを3通りの抽出物の1つに配置した。2通りのローズマリー抽出物はカルノシン酸を含有し(60%カルノシン酸および10%カルノシン酸)、1通りのスペアミント抽出物は5%ロスマリン酸を含有していた。それぞれの抽出物の3通りの用量を試験した:32mg/kg、16mg/kg、1.6mg/kgの有効物質(ローズマリー
およびスペアミントの抽出物に関してそれぞれCAまたはRA)およびビヒクル対照。50% SAMP8戻し交配系統は対照の役目を果たし、それはビヒクルも与えられた。90日間の処置の後、マウスを3種類の行動試験:T迷路足ショック回避、物体認識およびレバー押しにおいて試験した。60%カルノシン酸を含有するローズマリー抽出物は、T迷路足ショック回避において、32mg/kg CAにおいて獲得を、そして3通りの有効物質の用量全てにおいて保持を向上させ、16および32mg/kg CAにおいて物体認識およびレバー押しを向上させることができた。10%カルノシン酸を有するローズマリー抽出物は、T迷路足ショック回避における保持(16mg/kg CA)ならびに16および32mg/kg CAにおいてレバー押しを向上させた。5%ロスマリン酸を含むスペアミントは、T迷路において獲得(16および32mg/kg RA)および保持(全てのRAの用量において)を向上させた。加えて、5%ロスマリン酸を含むスペアミントは、16および32mg/kg RAにおいて物体認識を向上させた。4-ヒドロキシノネナール(HNE)は大脳皮質において3通りの抽出物全てによる処置後にビヒクルで処置したSAMP8と比較して低減した。タンパク質カルボニルは海馬において10%カルノシン酸を含むローズマリーおよび5%ロスマリン酸を含有するスペアミントの投与後に低減した。最新の結果は、スペアミントからの抽出物(ロスマリン酸)およびローズマリーからの抽出物(カルノシン酸)はSAMP8マウスにおいて学習および記憶ならびに加齢と共に生じる脳組織の酸化のマーカーへの有益な作用を有することを示している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、T迷路獲得、T迷路保持、物体認識およびレバー押しへの60%カルノシン酸の作用のチャートを示す。
【
図2】
図2は、60%カルノシン酸を含有するローズマリー抽出物の投与後の脳の皮質における酸化ストレスマーカーのチャートを示し;その結果はSAMP8ビヒクル対照からのパーセント変化で表されており;
*はP<0.05を示し、
**はP<0.01を示す。
【
図3】
図3は、60%カルノシン酸を含有するローズマリー抽出物の投与後の脳の線条体における酸化ストレスマーカーのチャートを示し;その結果はSAMP8ビヒクル対照からのパーセント変化で表されており;
*はP<0.05を示し、
**はP<0.01を示す。
【
図4】
図4は、60%カルノシン酸を含有するローズマリー抽出物の投与後の脳の海馬における酸化ストレスマーカーのチャートを示し;その結果はSAMP8ビヒクル対照からのパーセント変化で表されており;
*はP<0.05を示し、
**はP<0.01を示す。
【
図5】
図5は、T迷路獲得、T迷路保持、物体認識およびレバー押しへの10%カルノシン酸の作用のチャートを示す。
【
図6】
図6は、10%カルノシン酸を含有するローズマリー抽出物の投与後の脳の皮質における酸化ストレスマーカーのチャートを示し;その結果はSAMP8ビヒクル対照からのパーセント変化で表されており;
*はP<0.05を示し、
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【
図7】
図7は、10%カルノシン酸を含有するローズマリー抽出物の投与後の脳の線条体における酸化ストレスマーカーのチャートを示し;その結果はSAMP8ビヒクル対照からのパーセント変化で表されており;
*はP<0.05を示し、
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【
図8】
図8は、10%カルノシン酸を含有するローズマリー抽出物の投与後の脳の海馬における酸化ストレスマーカーのチャートを示し;その結果はSAMP8ビヒクル対照からのパーセント変化で表されており;
*はP<0.05を示し、
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【
図9】
図9は、T迷路獲得、T迷路保持、物体認識およびレバー押しへの5%ロスマリン酸の作用のチャートを示す。
【
図10】
図10は、5%ロスマリン酸を含有するローズマリー抽出物の投与後の脳の皮質における酸化ストレスマーカーのチャートを示し;その結果はSAMP8ビヒクル対照からのパーセント変化で表されており;
*はP<0.05を示し、
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【
図11】
図11は、5%ロスマリン酸を含有するローズマリー抽出物の投与後の脳の線条体における酸化ストレスマーカーのチャートを示し;その結果はSAMP8ビヒクル対照からのパーセント変化で表されており;
*はP<0.05を示し、
**はP<0.01を示す。
【
図12】
図12は、5%ロスマリン酸を含有するローズマリー抽出物の投与後の脳の海馬における酸化ストレスマーカーのチャートを示し;その結果はSAMP8ビヒクル対照からのパーセント変化で表されており;
*はP<0.05を示し、
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【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本研究は、(CAを含む)ローズマリー抽出物および(RAを含む)スペアミント抽出物が、以下のものが含まれるがそれらに限定されない認知の健康および/または認知機能の全ての面を向上させることができるかどうかを試験するためにデザインされた:注意、警戒、認識、想起、反応時間、集中、動機付け、行動、実行機能、学習および記憶。CAおよびRA分子は、特にそれらの独特の特性により選択された:1)これらの分子の血液脳関門を横切る能力;2)異なる可溶性(油対水);および3)高められた抗酸化能力。その2種類の抽出物をSAMP8マウス系統(老化促進マウスモデル)において試験した。SAMP8マウス系統は、ベータアミロイド斑の発現および酸化ストレスの結果もたらされる認知症による学習および記憶の欠陥の早期発症を示す。50%SAMマウスは対照の役目を果たした。
【0019】
定義
この出願において用いられる際、以下の用語は下記で述べる意味を有する。
【0020】
警戒:隙のない(close)連続的な注意を払っており、危険もしくは緊急事態への遭遇に対して用心深く機敏であり、または迅速に気づき、行動する状態。
【0021】
認知の健康:認知の健康は、全体的な脳、組織および血液供給ならびに様々な条件下で適切に機能するその能力を指す。良好な認知の健康は、脳にとって全ての精神過程を最高の性能で実施するために必須であり;それは集合的に認知として知られており、以下のものが含まれるが、それらに限定されない:学習、直観、判断、言語、注意、警戒、集中および記憶(長期および短期の両方)。加齢、疾患および/または他の認知障害による不十分な認知の健康は適切に機能する脳の能力を低減し、それは結果として認知機能および性能における重大な低下をもたらす。
【0022】
認知機能:コミュニケーション、知覚、理解、推理、記憶、思考、自覚、集中、注意、警戒、動機付け、結論を引き出すこと、実行機能、心象の作成および判断に関する能力が含まれるがそれらに限定されない神経学的または記号的操作を含むあらゆる精神的または知的過程。動物モデル系において、認知機能は、モリス水迷路(MWM)、バーンズ円形迷路、高架式放射状アーム迷路、T迷路または動物が空間情報を用いるあらゆる他の迷路の使用が含まれる当該技術で既知の様々な一般に用いられる方法で測定することができる。当該技術で既知の他の試験を、認知機能、例えば新規物体認識および臭い認識課題を評価するために用いてもよい。
【0023】
実行機能:他の認知過程、例えばプランニング、作業記憶、注意、問題解決、言語による推論、数学能力、抑制、精神的柔軟性、課題の切り替え、開始、柔軟性、視覚的注意、数学技能、新しい変化する環境への適応力、および動作の監視を制御、統制、および管理する認知過程。
【0024】
学習:知識または技能を得る行動、プロセス、または経験;特に経験または条件付けによる心理的または行動的修正。
【0025】
記憶:人の精神の中に保管されている過去の学習または経験から得た情報の集合。記憶の中に保管されている情報の部分、例えば経験の心像。高度な精神過程、例えば学習、保持、想起、および認識が含まれ、海馬が含まれる脳のいくつかの異なる領域中の神経細胞の間の化学変化の結果もたらされる、過去の経験または学習した情報を思い出す能力。含まれるのは以下のものである:(1)意識して思い出すことができるもの、例えば事実および知識を指す、陳述学習または記憶、(2)精神中の多数の一時的な情報の部分を能動的に保持することを指し、そこでそれらを操作することができる、作業記憶、(3)以前の経験(最近または遠い昔のどちらも)から得られる情報を指す、参照記憶、(4)以前に遭遇した出来事、物、または人々を認識する能力である、認識記憶、ならびに無関係な物品の間の関係を学習し、思い出す能力である、連想記憶。これらのそれぞれは、即時、短期、および長期の構成要素を有する。即時記憶はほんの数秒間しか持続しない。短期記憶は最小限に処理された情報を保管し、電話番号をそれを用いるのに十分な長さの時間だけ記憶することにおけるように、数分間しか利用可能ではない。短期記憶はその情報の反復使用がそれが保持されることを可能にする神経化学的変化を促進する場合のみ長期記憶へと移行し、それは数年間持続し得る。
【0026】
療法上有効量:本発明の化合物またはその組成物もしくは誘導体の量は、対象に投与された際に意図された療法的作用を有するであろう量である。完全な療法的作用は1用量の投与によっては必ずしも起こらず、それは一連の用量の投与後にのみ起こり得る。従って、療法上有効量は1回以上の投与で投与されてよい。対象に必要とされる正確な有効量は、例えばその対象の大きさ、健康および年齢、その認知障害の性質および程度、ならびに投与に関して選択される療法の組み合わせ、ならびに投与の方式に依存するであろう。当業者は、所与の状況に関する有効量をルーチン的な実験法により容易に決定することができる。1態様において、本明細書で記載されるようなシソ科(Lamiaceae family)の植物の少なくとも1種類の抽出物、例えばCA、RAまたはそれらの様々な組み合わせは、1日1回の頻度、または1日1回より多く、例えば1日2、3または4回での投与のためのものである。
【0027】
処置または処置すること:処置されている個体、動物または細胞の自然経過を変化させるための試みにおける臨床的介入であり、予防のためにまたは臨床病理の過程の間にのどちらでも実施することもできる。望ましい作用には、疾患の発生または再発の予防、症状の軽減、その疾患のあらゆる直接的または間接的な病理学的結果の減弱、疾患進行の速度の低下、疾患状態の改善または緩和、および寛解または向上した予後が含まれる。状態または対象は、臨床結果が含まれる有益な結果または所望の結果を得るために対策を施すことを指す。有益な、または所望の臨床結果には、認知の健康および/または機能を高める、向上させる、または維持すること、軽度の認知障害または年齢関連性認知障害と関係する1以上の症状の軽減または改善、その障害の遅延または低速化(slowing)、その障害の改善、緩和または安定化、ならびに他の有益な結果、例えば年齢関連性認知障害を有する、またはその危険に晒されている対象における認知機能の向上または認知機能の低下の速度の低減が含まれるが、それらに限定されない。好ましい態様において、これらの用語には、認知障害、例えば失読症、失行症(aspraxia)、注意欠陥・多動性障害、注意欠陥障害、自閉症、アルツハイマー病、パーキンソン病もしくは卒中、または
他の実行機能の障害が含まれる。
【実施例0028】
酸化的損傷は加齢プロセスの特徴の1つであると考えられている[Harman D (2002) Alzheimer’s disease: role of aging in pathogenesis. Ann N Y Acad Sci. 959, 384-395]。加齢と関係する疾患、例えばアルツハイマー病において存在する神経細胞の機能障害
は、大部分が酸化ストレスからのものであると考えられている[Markesbery WR (1997) Oxidative stress hypothesis in Alzheimer’s disease. Free Radic Biol Med. 23, 134-147; Polidori MC, Griffiths HR, Mariani E, Mecocci P (2007) Hallmarks of protein
oxidative damage in neurodegenerative diseases: focus on Alzheimer’s disease. Amino Acids. 32, 553-559]。ミトコンドリアに対する構造的および機能的損傷がアルツ
ハイマー病において存在しており、これは細胞およびミトコンドリアの両方に容易に浸透する抗酸化剤は酸化ストレスからの最大の保護を提供するであろうことを示唆している[Skulachev VP, Anisimov VN, Antonenko YN, Bakeeva LE, Chernyak BV, Erichev VP, Filendo OF, Kalinia NI, Kapelko VI, Kolosova NG, Kopin BP, Korshunova GA, Lichinitser MR, Obukhova LA, Pasyukova EG, Pisarenko OI, Roginsky VA, Ruuge EK, Senin II,
Severina II, Skulachev MV, Spivak IM, Tashlitsky VN, Tkachuk VA, Vyssokikh MY, Yaguzhinsky LS, Zorov DB (2009) An attempt to prevent senescence: a mitochondrial approach. Biochim Biophys Acta. 1787, 437-461; Suh JH, Shigeno ET, Morrow JD, Cox B, Rocha AE, Frei B, Hagen TM (2001) Oxidative stress in the aging rat heart
is reversed by dietary supplementation with (R)-(alpha)-lipoic acid. FASEB J. 15, 700-706]。老化促進マウス-易発症8(SAMP8)は、8月齢までに学習および記
憶における欠陥を発現する、加速された加齢のモデルである[Yagi, et al., 1988; Flood, et al., 1998]。SAMP8マウスは、脳中のアミロイド前駆体タンパク質(AβPP
)およびアミロイドベータ(Aβ)における年齢関連性の増大、学習および記憶の欠陥ならびに酸化的ストレスをもたらす自然突然変異を有する。さらに、AβPPに対するアンチセンスはこれらのマウスにおいて記憶および学習を高める[Morley JE, Farr SA, Flood
JF (2002) Antibody to amyloid beta protein alleviates impaired acquisition, retention, and memory processing in SAMP8 mice. Neurobiol Learn Mem. 78, 125-38; Kumar VB, Farr SA, Flood JF, Kamelesh V, Franko M, Banks WA, Morley JE (2000) Site-directed antisense oligonucleotide decreases the expression of amyloid precursor protein and reverses deficits in learning and memory in aged SAMP8 mice. Peptides. 21, 1769-1775]。加えて、SAMP8マウスは中枢神経系において増大したフリー
ラジカル生成を有し[Butterfield, et al., 1997; Sato, et al., 1996]、それはミトコ
ンドリアの機能不全と関係している[Fujibayashi Y, Yamamoto S, Waki A, Jibusgu Hm Yonekura Y (1998) Increased mitochondrial DNA deletion in the brain of SAMP8, a mouse model for spontaneous oxidative stress brain. Neurosci Lett. 254, 109-112]
。
【0029】
抗酸化剤はSAMP8マウスにおいて学習および記憶の欠陥を逆行させることが分かっている。アルファ-リポ酸およびn-アセチルシステインは、これらのマウスにおいて記憶を高め、酸化ストレスの指標を逆行させる[Farr, et al., 2003]。アルファ-リポ酸は乳酸デヒドロゲナーゼB、ジヒドロピリミンダーゼ(dihydro pyrimindase)様タンパク質およびアルファエノラーゼのカルボニルレベルを有意に低下させた[Poon HF, Farr SA, Thongboonkerd V, Lynn BC, Banks WA, Morley JE, Klein JB, Butterfield DA (2005) Proteomic analysis of specific brain proteins in aged SAMP8 mice treated with alpha-lipoic acid: implications for aging and age-related neurodegenerative disorders. Neurochem Int. 45, 159-68]。ポリフェノール系抗酸化剤もS
AMP8マウスにおいて学習および記憶を向上させ、酸化ストレスの指標を逆行させることが分かっている[Farr SA, Price TO, Domnguez LJ, Motisi A, Saiano F, Niehoff ML,
Morley JE, Banks WA, Ercal N, Barbagallo M (2012) Extra virgin olive oil improves learning and memory in SAMP8 mice. J Alzheimer’s Dis 28, 81-92]。
【0030】
カルノシン酸(CA)およびロスマリン酸(RA)は酸化ストレスに対して神経保護的および予防的であることが分かっている[Fadel O, El Kirat K, Morandat S (2011) The natural antioxidant rosmarinic acid spontaneously penetrates membranes to inhibit lipid peroxidantion in situ. Biochim Biophys Acta 1808, 2973-2980; Fallarini S, Miglio G, Paoletti T, Minassi A, Amoruso A, Bardelli C, Brunelleschi S, Lombardi G (2009) Clovamide and rosmarinic acid induce neuroprotective effects in invitro models of neuronal death. Br J Pharmacol 157, 1072-1084; Hou CW, Lin YT, Chen YL, Wang YH, Chou JL, Ping LY, Jeng KC (2012) Neuroprotective effects of carnosic acid on neuronal cells under ischemic and hypoxic stress. Nutr Neurosci [Epub]]。カルノシン酸はまた、LPSの投与後に抗炎症作用を有する[19]。酸化ストレスお
よび炎症に対する保護は、加齢の疾患における向上した記憶と関連付けられている[Farr,
et al., 2012]。ロスマリン酸はモリス水迷路の空間的課題において記憶を向上させた[Park DH, Park SJ, Kim JM, Jung WY, Ryu JH (2010) Subchronic administration of rosmarinic acid, a natural prolyl oligopeptidase inhibitor, enhances cognitive performance. Fitoterapia 81, 644-648]。
【0031】
記憶は2つの主なカテゴリー:陳述(または顕在記憶)および手続き(または潜在記憶)に分けられる。陳述記憶はさらに意味記憶(事実または意味)およびエピソード記憶(特定の経験)に細分される。意味記憶は一般にエピソード記憶に由来する。陳述記憶は海馬によりコード化されていると考えられており、一方で手続き記憶は線条体内の構造物である尾状核によりコード化されていると考えられている。手続きまたは潜在記憶は反応および報酬の間の関係を学習することから来ている。手続き記憶はしばしば、それらが深く染み込む、または習慣になるまで陳述記憶として始まる。
【0032】
T迷路足ショック回避課題は、陳述エピソード記憶を表す。それは時間的、空間的および連想型記憶構成要素を有する。そのマウスは、ブザーおよびおよびドアの開放をショックの開始と関連付けることを学習しなければならない[Farr SA, Banks WA, La Scola ME,
Flood JF, Morley JE (2000) Permanent and temporary inactivation of the hippocampus impairs T-maze footshock avoidance acquisition and retention. Brain Res. 872, 242-249]。それらは、それらがそのショックを逃れる、または回避するために左に曲がるか右に曲がるかも学習しなければならない。最後に、それらはドアの開放および同時のブザーの開始の際にそれらはショックを回避するために(その廊下の終点において左または右にある)ゴールボックスへと走るために5秒間を有することを学ぶ点で、それは時間的構成要素を有する。
【0033】
物体認識記憶は、陳述または顕在記憶の形態である。それは以前に遭遇した出来事、物または人々を認識する能力である[Medina JH, Bekinschtein P, Commarota M, Izquierdo
I (2008) Do memories consolidate to persist or do they persist to consolidate? Behav Br Res 192:61-69]。この課題において、それらが見たことがある以前の物を覚え
ているマウスは、その保持試験において新しい、または新規の物を調べるのにより長い時間を費やすであろう。この試験は海馬の試験でもある。研究は、海馬内の病変は結果として最初の暴露の24時間後に記憶における欠陥をもたらすことを示している[Hammond RS,
Tull LE, Stachman RW (2004) On the delay-dependent involvement of the hippocampus in object recognition. Neurbiol Learn Mem 82, 26-34]。認識を評価するヒトの試
験は、対象に単語のリストまたは物を見せ、次いで保持試験の際にその単語または物の一部を変え、対象に彼らが以前に遭遇したことがある単語または物を同定するよう求める。
【0034】
レバー押しは操作的課題である。マウスはレバーを押すことを餌の報酬と関連付けることを学習する。最初に、この試験はその関係を形成するために陳述記憶を利用するが、一度その関係が形成されたら、それは主に脳の尾状核領域が関わる手続き課題になる[Beninger RJ, Ranaldi R (1993) Microinjectiosn of flupenthixol into the caudate-putamen but not the nucleus accumbens, amygdala or frontal cortex of rats produce intra-session declines in food-rewarded operant responding Behav Brain Res 55, 203-212]。時々、レバー押しはその発明者の名前にちなんでスキナー箱と呼ばれる。
【0035】
本研究は、ローズマリー抽出物およびスペアミント抽出物中で見付かったこれらの2種類の新規の抗酸化物質(それぞれカルノシン酸およびロスマリン酸)が促進された加齢のSAMP8マウスモデルにおいて学習および記憶を向上させることができるかどうかを試験するためにデザインされた。我々は以前に、SAMP8マウスにおける学習および記憶の欠陥を改善し、酸化的損傷の徴候を逆行させる抗酸化物質の能力を示しており[Farr, et al., 2003; Morley JE, Armbrecht HJ, Farr SA, Kumar VB (2012) The senescence accelerated mouse (SAMP8) as a model for oxidative stress and Alzheimer’s disease. Biochim Biophy Acta 1822];従って、そのSAMPマウスはこれらの抗酸化化合物を
試験するための優秀なモデルである[Farr SA, Yamada KA, Butterfield DA, Abdul HM, Xu L, Miller NE, Banks WA, Morley JE (2008) Obesity and hypertriglyceridemia produce cognitive impairment. Endocrinology 149, 2628-2636]。
【0036】
材料および方法
マウス
処置の開始時に、実験に関する対象は9月齢のSAMP8マウスであった。対照群は9月齢の50%SAMマウスであり、これはオスのSAMP8と学習および記憶において年齢関連性障害を示さないメスのCD-1マウスの間の交配である。これらの研究は、VAメディカルセンター(ミズーリ州セントルイス)の動物実験委員会の認可により実施された。
【0037】
処置
9月齢のSAMP8マウスに、(ヒマワリ油中)60%もしくは10%CAのどちらかを含有するローズマリー抽出物または(水中)5%RAを含有するスペアミント抽出物を、経口強制栄養法により1日1回12週間与えた。
【0038】
マウスは7つの群において設定された:
1. 60%CAを含有するローズマリー抽出物を投与されたSAMP8(CA60);
2. 10%CAを含有するローズマリー抽出物を投与されたSAMP8(CA10);
3. 5%RAを含有するスペアミント抽出物を投与されたSAMP8(RA5);
4. 群1および2に関する陰性対照としてのヒマワリ油を投与されたSAMP8;
5. 群3に関する陰性対象としての水を投与されたSAMP8;
6. 群1および2に関する陽性対照としてのヒマワリ油を投与されたSAMP 50%戻し交配;ならびに
7. 群3に関する陽性対象としての水を投与されたSAMP 50%戻し交配。
【0039】
試験したそれぞれの抽出物に関して用量反応曲線を実施した。評価した用量は、1.6mg/kg、16mg/kg、32mg/kgの有効物質(CAまたはRAのどちらか、それぞれローズマリーおよびスペアミントからのもの)および上記で列挙した3通りの抽出物のそれぞれに関するビヒクル群であった。体重をその試験の全体を通して毎週記録し、給餌の12週目において行動試験を開始した。
【0040】
行動試験
処置の12週目において行動試験を開始した。マウスをまず12週目の間にT迷路足ショック回避において訓練し(T迷路獲得)、この課題のT迷路保持を13週目において試験し、続いて13週目において物体認識を行った。レバー押しを14および15週目の間に実施した。
【0041】
T迷路訓練および試験の手順
T迷路は、作業記憶および陳述参照記憶課題に基づく学習課題の両方である。T迷路は、Tの形状の腕の一方の端にスタートボックスを有し、他方の端に2個のゴールボックスを有する黒色のプラスチックの路地(alley)で構成されていた。そのスタートボックスは、訓練の開始時にそれが上げられるまでそのアレイを下る動きを妨げるプラスチックのギロチンドアによりそのアレイから隔てられていた。軽度のスクランブルされた(scrambled)足ショックを送達するために、ステンレス鋼の棒の電気を流せる床がその迷路全体にわたって走っていた。
【0042】
マウスは訓練の前にその迷路を探索することを許されなかった。訓練試行は、マウスがそのスタートボックスの中に置かれた際に始まり、そのギロチンドアが上げられ、同時に合図のブザーが鳴り;5秒後に足ショックが適用された。最初の試行においてマウスが入った迷路の腕は“不正解の”箱に指定され、マウスが他方のゴールボックスに入るまで軽度の足ショックが続いた。このゴールボックスはその特定のマウスに関して全てのその後の試行において“正解”として指定された。それぞれの試行の終了時に、そのマウスは次の試行までそのホームケージに戻された。
【0043】
マウスをそれらが1通りの回避を行うまで訓練した(T迷路獲得)。訓練は試行の間に35秒間の間隔を空けて実施され、そのブザーは55dBで鳴るドアベル型のものであり、ショックは0.35mAに設定された(Coulbourn Instrumentsスクランブル化グリッド床ショッカーモデルE13-08)。T迷路保持を、訓練を続けることにより1週間後に試験した。その結果を、その保持試験に関する基準に達するまでの試行(trials to criterion)の数として報告した。基準は6回の連続した試みにおいて軽度の足ショックを5回回避することとして定義されている。
【0044】
物体-位置認識
物体-位置認識は、本明細書で実施される場合、保持曝露間隔が最初の物体への曝露の24時間後である場合の海馬が関わる陳述記憶課題である[Farr, et al., 2012]。物体を入れる前にマウスを空の装置に3日間1日5分間慣れさせた。訓練期間の間、マウスを2個の類似の物体(プラスチックのカエル)に晒し、それを5分間調べさせた。その装置および物体は、それぞれのマウスの間で清掃した。24時間後、そのマウスを新しい位置の元の物体および新規の物体の一方に晒した。その物体を調べるのに費やされた時間の百分率を記録した。その新規の物体は元の物体と同じ材料で、かつ同じ大きさで作られていたが、異なる形状であった。これは、特定の物体と関係する臭いが混乱させる要因である可能性を排除した。その課題の基礎をなす概念は、見慣れた物体ではなく新しい新規の物体を調べるのにより多くの時間を費やすマウスの傾向に基づいている。従って、24時間の時点での保持/記憶がより大きいほど、その新しい物体により多くの時間が費やされる。
【0045】
ミルク補強(Milk Reinforcement)のためのレバー押し
レバー押しは、手続き(操作的)連想学習および記憶課題である。マウスを完全に自動化されたレバー押し室の中に入れる。その区画の1つの壁上のレバーを押すことは、光および100μlのミルクを有する液体ディッパー(liquid dipper)を反対側の壁上に出現させる。1日目に、そのマウスはその報酬を得るために11秒を有し;そ
の後の全ての日において、マウスはその報酬を得るために6秒を有していた。マウスに2週間の間M、W、Fにおいて40分間の訓練期間を与えた。マウスは、課題を実施する動機付けを提供するために、その試験の開始前に16時間餌を取り上げられた。セッションが完了したらすぐに餌を戻した。獲得を、報酬が与えられたレバー押しの数として測定した[Farr SA, Yamada KA, Butterfield DA, Abdul HM, Xu L, Miller NE, Banks WA, Morley JE (2008) Obesity and hypertriglyceridemia produce cognitive impairment. Endocrinology 149, 2628-2636]。
【0046】
脳の酸化ストレス
試料の調製
脳試料を、Wheaton組織ホモジナイザーを用いて、320mMスクロース、1%
mMトリス-HCl(pH8.8)、0.098mM MgCl2、0.076mM EDTA、ならびにプロテイナーゼ阻害剤であるロイペプチン(0.5mg/mL)、ペプスタチン(0.7μg/ml)、アプロチニン(0.5mg/ml)およびPMSF(40μg/ml)、ならびにホスファターゼ阻害剤カクテルを含有する氷冷した溶解緩衝液(pH7.4)中で短時間ホモジナイズした。次いでそのホモジナイズした試料を溶解緩衝液で2倍希釈した。ホモジナイゼーション後、ホモジナイズした試料の少量の分割量(aliquot)をFisher 550 Sonic Dismembrator(米国ペンシルバニア州ピッツバーグ)を用いて20%の動力で10秒間超音波処理し、凍結させた。残りのホモジネートを3000gで5分間遠心分離し、上清の細胞質および膜の画分を出して別のチューブのセットの中に移した。400μlの溶解緩衝液の添加後、残りのペレット(核画分)を3,000gで5分間遠心分離し、上清を除去した。ペレットを20μlの溶解緩衝液および阻害剤中で懸濁させた。上清の細胞質および膜の画分を10,000gで10分間遠心分離し、得られた上清の細胞質画分を、ペレット(膜画分)を残して別のチューブのセットの中に移した。全ての超音波処理した試料および画分を、さらなる実験のために用いるまで-70℃で保管した。タンパク質の濃度をPierceビシンコニン酸(BCA)により測定した。
【0047】
スロットブロット分析
タンパク質カルボニル
タンパク質カルボニルの検出のため、カルボニル類の2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン(DNP)シッフ塩基付加物のスロットブロット分析を利用した。試料の5μlの分割量を、5μlの12%ドデシル硫酸ナトリウムおよび10μlの2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(OxyBlottmタンパク質酸化キットからのもの、Chemicon-millipore、米国マサチューセッツ州ビレリカ)と共に室温で20分間保温し、続いて30%グリセロール中にトリス(2M)を含有する中和溶液7.5μlをそれぞれの試料に添加した。誘導体化後、試料を塩化ナトリウム、一および二塩基性リン酸ナトリウムを含有する1×リン酸緩衝溶液(PBS)を用いて1μg/mLに希釈した。対応する試料溶液(250μl)を、水真空圧(water vacuum pressure)によりニトロセルロース膜上に2通りで(as duplicates)迅速に装填した。次いで得られたタンパク質の結合したニトロセルロース膜を25mlのウォッシュブロット(wash blot)(35.2gの塩化ナトリウム、1.77gの一塩基性リン酸ナトリウム、9.61gの二塩基性リン酸ナトリウムおよび1.6mLのTWEENを含有、脱イオン水で4Lに希釈)中に750mgのウシ血清アルブミン(BSA)を含有する新しいブロッキング溶液で90分間ブロッキングした。次いでその膜をウォッシュブロット中でポリクローナルRbxDNP(OxyBlottmタンパク質酸化キット、Chemicon-millipore、米国マサチューセッツ州ビレリカ、1:100希釈)と共に2時間保温した。新しいウォッシュブロットを用いた3回の5分間の洗浄の後、次いでその膜をポリクローナル抗ウサギIgGアルカリホスファターゼ(Chemicon、米国カリフォルニア州テメキュラ、1:8000希釈)と共に1時間保温し、新しいウォッシュ
ブロットを用いて5、10および10分間の3通りの増分で洗浄した。洗浄後、その膜をアルカリホスファターゼ二次抗体に関する5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-ホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム試薬溶液を用いて比色定量的に現像した。現像後、ブロットを乾燥させ、Adobe Photoshopを用いてCanoScan8800F(Canon)スキャナー上で走査し、Scion Imageソフトウェア(Scion Corporation)を用いて分析した。
【0048】
4-ヒドロキシ-2-トランス-ノネナール(4-Hydroxy-2-trans-noneal)(HNE)
タンパク質に結合したHNEのレベルを脂質過酸化のマーカーとして用いて、それを以前に記載されたように決定した[29]。タンパク質に結合したHNEの検出のスロットブロット分析に関して、試料の5μlの分割量を、5μlの12%ドデシル硫酸ナトリウムおよび10μlのLaemmli緩衝液と共に室温で20分間保温し、続いて塩化ナトリウム、一および二塩基性リン酸ナトリウムを含有する1×リン酸緩衝溶液(PBS)を用いて1μg/mLに希釈した。対応する試料溶液(250μl)を、水真空圧によりニトロセルロース膜上に2通りで迅速に装填した。次いで得られたタンパク質の結合したニトロセルロース膜を新しいブロッキング溶液を用いて90分間ブロッキングした。次いでその膜をウォッシュブロット中でポリクローナル抗HNE(Alpha diagnostic、米国テキサス州サンアントニオ、1:5000希釈)と共に2時間保温した。新しいウォッシュブロットを用いた3回の5分間の洗浄の後、次いでその膜をポリクローナル抗ウサギIgGアルカリホスファターゼ(Chemicon、米国カリフォルニア州テメキュラ、1:8000希釈)と共に1時間保温し、新しいウォッシュブロットを用いて5、10および10分間の3通りの増分で洗浄した。洗浄後、その膜をアルカリホスファターゼ二次抗体に関する5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-ホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム試薬溶液を用いて比色定量的に現像した。現像後、ブロットを乾燥させ、Adobe Photoshopを用いてCanoScan8800F(Canon)スキャナー上で走査し、Scion Imageソフトウェア(Scion Corporation)を用いて分析した。
【0049】
3-ニトロチロシン(3-NT)
3-NTのレベルをタンパク質の酸化損傷の追加のマーカーとして用いた[Suh, et al., 2001; Butterfield DA, Stadtman ER (1997) Protein oxidation processes in aging brain. Adv Cell Aging Gerontol 2, 161-191]。試料(5μL)を5μLの12% SDSおよび10μLのLaemmli緩衝液(0.125M Trizma塩基、4% SDS、20%グリセロール)中で室温で20分間保温した。スロットごとの試料(250ngのタンパク質)をニトロセルロース膜上にブロットした。3-NTに特異的な一次ウサギ抗体(Sigma-Aldrich)(1:1000)を用いた。次いで同じ二次ヤギ抗ウサギ(Sigma-Aldrich)抗体をそれぞれの一次抗体の検出のために用いた。ブロットを上記でタンパク質カルボニルに関して記載したように現像し、定量化した。現像および検出を上記でタンパク質カルボニルに関して記載したように実施した。
【0050】
トリグリセリド類
血清トリグリセリドを、線形エンドポイント呈色反応を組み込んだPointe Scientific, Inc.(ミシガン州キャントン)からの酵素アッセイシステムを用いて定量化した。試料中のトリグリセリド類をリパーゼにより加水分解してグリセロールにする。次いでそのグリセロールをグリセロールキナーゼおよびATPによりリン酸化してグリセロール-3-リン酸(G3P)およびADPにする。そのG3Pがジヒドロキシアセトンホスフェート(DAP)および過酸化水素に変換される。その過酸化水素がペルオキシダーゼにより触媒される反応において4-アミノアンチピリン(4-AAP)および3-ヒドロキシ-2,4,6-トリブロモ安息香酸(3-hydroxy-2,4,
6-tribomobenzoic acid)(TBHB)と反応して赤色のキノンイミン色素を生じる。生じた色の強度をBio-Radマイクロプレートリーダー(カリフォルニア州ハーキュリーズ)を用いて540nmにおいて測定した。
【0051】
統計学
結果を分散分析(ANOVA)を用いて分析し、群の間の差を調べた。T迷路における獲得および保持の尺度は、基準に達するまでの試行の数であった。物体認識に関する結果を、総探索時間の内の新規の物体を調べるのに費やされた時間の百分率で示す。レバー押しを二元配置反復測定ANOVAにより分析した。結果を平均プラス/マイナス標準誤差として表す。TukeyまたはBonferroniの事後分析を用いて、群の間の平均を比較した。Dunnett法をSAMP8ビヒクル対照群に対する比較のために用いた。脳組織の酸化ストレスのパラメーターを、マン・ホイットニーのU検定を用いて分析した。
【0052】
結果
60% CAを含有するローズマリー抽出物(CA60):下記で論じる結果を
図1において示す。
【0053】
行動試験
T迷路:T迷路獲得試験における基準に達するまでの試行に関する一元配置ANOVAは、有意な処置作用F(4,48)8.98、p<0.001を示した。Bonferroniの事後検定は、32mg/kgのCAを与えられたSAMP8マウスはビヒクルを与えられたマウスよりも有意に少ない試行で基準に達することを示した。加えて、32mg/kgのCAを与えられたマウスは50% SAM対照マウスと有意に異なっていなかった。T迷路保持試験における基準に達するまでの試行に関する一元配置ANOVAは、有意な処置作用F(4,47)=7.25、p<0.001を示した。Bonferroniの事後検定は、32、16および1.6mg/kgのCAを与えられたSAMP8マウスはビヒクルを与えられたSAMP8マウスよりも有意に少ない試行で基準に達することを示した。32、16および1.6mg/kgのCAを与えられたマウスは50% SAMマウスと有意に異なっていなかった。
【0054】
物体認識:24時間保持試験における新規の物体を調べるのに費やされた時間に関する一元配置ANOVAは、有意な処置作用F(4,46)=4.88、p<0.003をもたらした。Bonferroniの事後検定は、32および16mg/kgのCAを与えられたSAMP8マウスはビヒクルを与えられたSAMP8マウスよりも新規の物体を調べるのに有意に長い時間を費やすことを示した。32および16mg/kgのCAを与えられたSAMP8マウスは50% SAM対照と有意に異なっていなかった。
【0055】
レバー押し:処置および日、報酬を与えられたレバー押しの数の評価に関する二元配置反復測定ANOVAは、処置F(4,257)=17.27、p<0.001および日F(5,257)=15.31、p<0.001に関する有意な作用をもたらした。処置×日の交互作用は有意ではなかった:F(20,257)=3.78、NS。Tukeyの事後分析は、3、4、5および6日目に、32mg/kgのCAを与えられたSAMP8マウスはビヒクル対照を与えられたSAMP8マウスよりも有意に多い報酬を与えられたことを示した。16mg/kgのCAを与えられたSAMP8マウスは、ビヒクル対照を与えられたSAMP8マウスと比較して、4、5、および6日目に有意に多い報酬を与えられた。
【0056】
トリグリセリドレベル
トリグリセリドレベルに関する一元配置ANOVAは、CA60を投与されたマウスに
関して有意ではなかった:F(4,50)=2.42。
【0057】
脳酸化ストレス
マン・ホイットニーのU検定は、CA60が1.6および32mg/kg CAにおいてビヒクル対照としてのヒマワリ油を投与されたSAMP8と比較して皮質において4-ヒドロキシノネナール(HNE)を有意に減少させることを示した。皮質内でCA60の3-ニトロチロシン(3-NT)またはタンパク質カルボニルへの有意な作用はなかった(
図2参照)。CA60は線条体において16mg/kg CAにおいてタンパク質カルボニルを有意に増大させたが、HNEまたは3-NTには作用を有しなかった(
図3参照)。CA60は海馬において16mg/kg CAにおいてタンパク質カルボニルを有意に増大させた。CA60は海馬において3-NTには作用を有しなかった(
図4参照)。
【0058】
10% CAを含有するローズマリー抽出物(CA10):下記で論じる結果を
図2において示す。
【0059】
行動試験
T迷路:T迷路獲得の間の基準に達するまでの試行に関する一元配置ANOVAは、群に関して有意な作用をもたらした:F(4,44) F=5.914、p<0.001。Bonferroniの事後検定は、ビヒクルを与えられた50% SAMマウスは32、1.6mg/kgのCAまたはビヒクルを与えられたSAMP8マウスよりも有意に少ない試行で基準に達することを示した。16mg/kgのCAを与えられたマウスは、ビヒクルを与えられた50% SAMまたはビヒクルを与えられたSAMP8マウスと有意に異なっていなかった。T迷路保持試験における基準に達するまでの試行に関するANOVAは、有意な処置の作用F(4,44)=4.04、p<0.007を示した。Dunnettの事後検定は、16mg/kgのCAを与えられたマウスはビヒクルを与えられたSAMP8マウスよりも有意に少ない試行で基準に達することを示した。
【0060】
物体認識:新規の物体を調べるのに費やされた時間に関する一元配置ANOVAは有意ではなかった:F(4,44)=2.249;p<0.08。
【0061】
レバー押し:処置および日に関する、報酬を与えられたレバー押しの数の評価に関する二元配置反復測定ANOVAは、処置F(4,253)=6.74、p<0.001および日F(5,253)=7.53、p<0.001に関する有意な作用をもたらした。処置×日の交互作用は有意ではなかった:F(20,253)=1.83。Tukeyの事後分析は、3、4、5および6日目に、32mg/kgおよび16mg/kgのCAを与えられたマウスはビヒクルを与えられたマウスよりも有意に多い報酬を与えられたことを示した。
【0062】
トリグリセリドレベル
トリグリセリドレベルに関する一元配置ANOVAは、CA10の投与後に有意な作用:F(4,47)=3.11、p<0.02を示した。Tukeyの事後検定は、50%
SAMマウスは1.6mg/kgのCAを与えられたSAMP8マウスよりも有意に高いトリグリセリドレベルを有することを示した。その他の群のいずれの間にも他の有意な差はなかった。
【0063】
脳酸化ストレス
マン・ホイットニーのU検定は、CA10がSAMP8のビヒクルで処置された対照と比較して32mg/kg CAにおいて皮質においてHNE、16mg/kg CAにおいて皮質において3-NTを有意に減少させ、16および32mg/kg CAにおいてタンパク質カルボニルを有意に増大させることを示した(
図6参照)。加えて、CA10
は線条体においてHNE、3-NTまたはタンパク質カルボニルへの作用を有しなかった(
図7参照)。最後に、CA10は16mg/kg CAにおいて海馬においてビヒクルで処置されたSAMP8対照と比較して3-NTおよびタンパク質カルボニルを有意に減少させた(
図8参照)。
【0064】
5% RAを含有するスペアミント抽出物(RA5):下記で論じる結果を
図3において示す。
【0065】
行動試験
T迷路:T迷路獲得試験における基準に達するまでの試行に関する一元配置ANOVAは、有意な処置作用F(4,52)6.38、p<0.001を示した。Bonferroniの事後検定は、32および16mg/kgのRAを与えられたSAMP8マウスはビヒクルを与えられたマウスよりも有意に少ない試行で基準に達することを示した。T迷路保持試験における基準に達するまでの試行に関する一元配置ANOVAは、有意な処置作用F(4,50)=12.77、p<0.001を示した。Bonferroniの事後分析は、32、16および1.6mg/kgのRAを与えられたSAMP8マウスはビヒクルを与えられたSAMP8マウスよりも有意に少ない試行で基準に達することを示した。32、16および1.6mg/kgのRAを与えられたマウスは50% SAM対照マウスと有意に異なっていなかった。
【0066】
物体認識:新規の物体を調べるのに費やされた時間に関する一元配置ANOVAは、有意な処置作用F(4,47)=2.79;p<0.03をもたらした。Dunnettの事後検定は、32および16mg/kgのRAを与えられたマウスはビヒクルを与えられたSAMP8マウスよりも新規の物体を調べるのに有意に長い時間を費やすことを示した。
【0067】
レバー押し:処置および日に関する、報酬を与えられたレバー押しの数の評価に関する二元配置反復測定ANOVAは、処置F(4,257)=6.18、p<0.001および日F(5,257)=40.98、p<0.001に関する有意な作用をもたらした。処置×日の交互作用は有意ではなかった:F(20,257)=2.44。Tukeyの事後分析は、RA5を与えられたSAMP8マウスおよびビヒクルを与えられたSAMP8マウスの間で有意な差がないことを示した。
【0068】
トリグリセリドレベル
処置後のトリグリセリドレベルに関する一元配置ANOVAは、有意な作用:F(4,44)=4.06、p<0.006をもたらした。Tukeyの事後分析は、50% SAM対照マウスはビヒクルを与えられたSAMP8マウスおよび1.6mg/kgのRAを与えられたSAMP8マウスと比較して有意に高いトリグリセリドレベルを有することを示した。他の群間の差はなかった。
【0069】
脳酸化ストレス
マン・ホイットニーのU検定は、RA5が16および32mg/kg RAを与えられたマウスの皮質においてHNEを有意に減少させ、32mg/kg RAにおいて3-NTを減少させることを示した。RA5は皮質においてタンパク質カルボニルへの作用を有しなかった(
図10参照)。加えて、RA5は線条体内でHNEまたは3-NTへの作用を有しなかった。RA5を与えられたマウスは、1.6および16mg/kg RAにおいてビヒクルで処置された対照SAMP8マウスと比較して線条体内で有意に高いタンパク質カルボニルレベルを有していた(
図11参照)。RA5は海馬において16mg/kg RAにおいて3-NTおよびタンパク質カルボニルのレベルを有意に低減した(
図12参照)。
【0070】
論考:
本研究において、CAまたはRAを含有する抽出物は学習および記憶を向上させた。全体として、CAは陳述および手続き記憶の両方への作用を有していた。T迷路および物体認識は両方とも陳述記憶を試験し、一方で操作的なレバー押しは手続き学習および記憶を試験した。我々は、60%CAを含有するローズマリー抽出物は陳述および手続き学習および記憶の両方において向上させることを見出した。10%CAを含むローズマリー抽出物は、レバー押し操作課題で評価した際に陳述記憶ならびに手続き学習および記憶の両方を向上させた。5%RAを含むスペアミント抽出物は、陳述学習および記憶の両方を向上させた。体重への作用を有する化合物はなかった。
【0071】
CAおよびRAは両方とも用量反応様式で作用した。これは、ほとんどの記憶を高める化合物は、その下ではその化合物は有効ではなく、その上ではその化合物は障害をもたらす記憶増進に関する最適用量が存在し、従っていわゆる“逆U”の形状の用量反応曲線をもたらす現象である閾下増進効果を示すため、驚くべきことではない。これは以前にロスマリン酸を用いた水迷路試験において、そして高架十字迷路において試験した場合のその抗不安能力において報告された[Park, et al., 2010; Butterfield, et al., 1997]。こ
の以前の研究は正常な健康な高齢でないマウスモデルにおいて“ストレス”条件を用いて、認知増進能力を見出した。ロスマリン酸はAβを注射したマウスにおいてAβの毒性に対して保護した[Pereira P, Tysca D, Oliveria P, da Silva Brum LF, Picada JN, Ardenghi P (2005) Neurobehavioral and genotoxic aspects of rosmarinic acid. Pharmacol Res 52, 199-203]。本研究において、我々はロスマリン酸が自然にAβを過剰産生するマウスモデルにおいて記憶を予防することを見出した。
【0072】
本研究における発見は、SAMP8マウスにおける抗酸化剤の補給を追跡した以前の発見と類似している。アルファリポ酸は、12月齢のSAMP8マウスにおいて1週間のみの処置後に、そして18月齢のSAMP8マウスにおいてちょうど2週間後に学習および記憶を向上させた[Farr, et al., 2003; Pereira, et al., 2005]。魚油中で見付かった
抗酸化物質ドコサヘキサエン酸(docosahexaenic acid)もSAMP8マウスにおいて学習および記憶を向上させた[Alkam, et al., 2007]。抗酸化物質アン
トシアニンに富むクワの抽出物の補給は、結果としてSAMP8マウスにおいて向上した回避学習および記憶、低減したコレステロールならびに低減した酸化ストレスの指標をもたらした[Farr SA, Price TO, Banks WA, Ercal N, Morley JE (2012) Effect of Alpha-Lipoic Acid on Memory, Oxidation and Lifespan in SAMP8 Mice. J Alzheimer’s Dis (In Press)]。加えて、これらの発見は、上記で言及した分子/抽出物のいくつかは認知
に関する追跡ヒト臨床試験においてプラスの作用を示しており、これはこのモデルの齧歯類からヒトへの予測的かつ変換可能な性質を示しているため、励みになる[Petursdottir,
et al., 2008; Shih PH, Chan YC, Liao JW, Wang MF, Yen GC (2010) Antioxidant and
cognitive promotion effects of anthocyanin-rich mulberry (Morus atropurpurea L.) on senescence-accelerated mice and prevention of Alzheimer’s disease. J Nutr Biochem 21, 598-605]。
【0073】
タンパク質および脂質酸化がSAMP8マウスの脳において年齢と共に起こる[Butterfield, et al., 1997; Poon, et al., 2005; Pereira, et al., 2005]。タンパク質および脂質は細胞の正常な構造および機能において重要な役割を果たしている[Butterfield DA,
Reed T, Sultana R (2011) Roles of 3-nitrotyrosine- and 4-hydroxynonenal-modified brain proteins in the progression and pathogensis of Alzheimer’s disease. Free Radic Res 45, 59-72]。異常な細胞機能および最終的な細胞死が細胞中のタンパク質の酸化的修飾により起こり得る[Lee HC, Wei YH (2012) Mitochondria and aging. Adv Exp
Med Biol 942, 311-327]。本研究において、高感度な免疫化学的方法を用いて抗酸化剤
がタンパク質カルボニルレベルへの何らかの作用を有するかどうかを決定した。我々の結果は、海馬においてタンパク質酸化(10%CAを含むローズマリー抽出物または5%RAを含むスペアミント抽出物の投与後)および皮質において脂質酸化(全ての抽出物の投与後)における減少を示した。海馬および皮質は、T迷路の学習および記憶に関する重要な領域であることが分かっている[Farr SA, Banks WA, La Scola ME, Flood JF, Morley
JE (2000) Permanent and temporary inactivation of the hippocampus impairs T-maze footshock avoidance acquisition and retention . Brain Res 872, 242-249; Farr SA, Uezu K, Creonte TA, Flood JF, Morley JE (2000) Modulation of memory processing in the cingulate cortex of mice. Pharmacol Biochem Behav 65, 363-368]。加えて
、研究は、海馬は24時間保持遅延を用いた際に物体認識における記憶に関して重要であることを見出している[Hammond, et al., 2004]。我々のデータは、カルノシン酸を含む
ローズマリー抽出物およびロスマリン酸を含むスペアミント抽出物は両方ともSAMP8マウスにおいて加齢および認知低下を引き起こす酸化的変化の逆行を助けることができることを示している。
【0074】
本研究において、抗酸化物質であるカルノシン酸を含むローズマリー抽出物およびロスマリン酸を含むスペアミント抽出物を経口補給して、それらが認知機能障害のSAMP8マウスモデルにおいて学習および記憶に有益な作用を有するかどうか決定した。その抽出物は結果としてほとんどの記憶増進化合物により示されるような逆Uの形状の用量反応曲線をもたらし、両方の抽出物の有効な用量が同定された。試験した抽出物は陳述および手続き記憶の両方において有益な作用を示し、その両方が加齢および疾患により影響を受けることが報告されている。我々の知る限りでは、これは促進された加齢による認知低下のマウスモデルにおけるカルノシン酸を含むローズマリー抽出物またはロスマリン酸を含むスペアミント抽出物のどちらかの投与後の認知低下の予防を示す最初の研究である。これらの発見は、カルノシン酸を含むローズマリー抽出物およびロスマリン酸を含むスペアミント抽出物は年齢関連性認知低下に関する可能性のある処置であることを示唆している。
【0075】
3通りの抽出物は全て、その3種類の課題の少なくとも2種類において学習および記憶を向上させた。ローズマリー抽出物(CAを含有する)は陳述および手続き記憶の両方への作用を有していた。T迷路および物体認識は両方とも陳述記憶を試験した。操作的レバー押しは手続き学習および記憶を試験する。スペアミント抽出物(RAを含有する)は試験した全ての陳述記憶課題(T迷路獲得および学習ならびに物体認識)を向上させたが、手続き操作学習および記憶には作用を有しなかった。体重への作用を有する化合物はなかった。CAおよび/またはRAの使用はここで認知の結果尺度に直接結び付けられる。エネルギーおよび認知を論じるローズマリーの栄養補助剤は存在するが、科学的研究により支持されているものはなく、原因をカルノシン酸に直接結び付けているものもない。これは我々の研究において、カルノシン酸の含有量の増大がその抽出物の有効性を増大させたため、示されている。
【0076】
学習または記憶に関連する認知行動結果尺度はCAに結び付けられておらず、さらに学習結果尺度はRAに結び付けられていなかった。
【0077】
これらの結果は、どのように異なる化学構造および極性を有する2種類の完全に異なる分子が血液脳関門を横切って脳の異なる領域に浸透することができるのかの性質のため、驚くべきものである。一度これらの化合物が脳の様々な領域に浸透すると、それらは結果として認知性能における重大な性能変化をもたらす。この研究の前は、これらの分子は脳中で一般的な非特異的抗酸化作用を有するだけであると考えられていた。以前にはこれらの分子は脳の異なる領域からもたらされる特定の認知機能作用と関連付けられていなかった。初めて、この研究は、それらが行動認知性能結果に影響を及ぼし得ることを実証している。加えて、その2種類の化合物は、それらの認知結果の原因である特定の脳の領域と
の非常に特異的な相互作用を異なる方式で実証する異なる性能結果に影響を及ぼす。これらの結果は、他の分子に起因する一般的な非特異的抗酸化作用とは独立して作用するこれらの分子の能力の特異性を実証している。
【0078】
実施例2
カルノシン酸の90日間毒性試験
この研究の目的は、試験物:おおよそ10%のカルノシン酸(有効成分)を含有するローズマリー抽出物の(ヒマワリ油中の)懸濁液の、1日1回または2回経口強制栄養法によりラットに少なくとも90日間投与した場合の毒性を評価することであった。
【0079】
オスおよびメスのHsd:Sprague Dawley SDラットを群に割り当て、用量を以下の表において示した通りに投与した。動物は経口強制栄養法により投与された。
【0080】
【0081】
毒性の評価は、死亡率、臨床徴候、体重、体重変化、餌の消費、眼科検査、機能観察バッテリー(FOB)、ならびに臨床および解剖病理学に基づいていた。
【0082】
ヒマワリ油中におおよそ10%カルノシン酸を含有するローズマリー抽出物のSprague Dawleyラットへの経口投与は、180mg/kg/日未満の用量レベルで十分に許容された。130mg/kg/日を与えられた動物における投与の頻度(SIDまたはBID)は、作用の性質または大きさへの実質的な違いを有するようでは一切なかった。65mg/kg/日より大きい用量は、結果として血液学および臨床化学パラメーター;器官重量変化;および肝臓、腎臓、腺性ではない胃、結腸、および盲腸における顕微鏡的所見への有害ではない試験物に関連する作用をもたらした。この所見のパターンに基づいて、180mgカルノシン酸/kg/日は連続した90日間経口で与えた場合の最大無毒性量(NOAEL)であると考えられる。180mg/kg/日のカルノシン酸のNOAELおよび正確に11.55%の抽出物内のCA濃度を用いて、そのNOAELは1,558mg/kg/日のローズマリー抽出物に換算されるであろう。100倍安全率を用いて、これは15.58mg/kg/日のヒト等価用量、または70kgのヒトに関
して1091mgに換算されるであろう。
【0083】
実施例3
ロスマリン酸の90日間毒性試験
この研究の目的は、試験物:蒸留水中で溶解させたおおよそ15%(w/w)のロスマリン酸(有効成分)を含有するローズマリーの乾燥抽出物の、1日1回経口強制栄養法によりラットに少なくとも90日間投与した場合の毒性を評価することであった。
【0084】
オスおよびメスのHsd:Sprague Dawley SDラットを群に割り当て、用量を以下の表において示した通りに投与した。動物は経口強制栄養法により投与された。
【0085】
【0086】
毒性の評価は、死亡率、臨床徴候、体重、体重変化、餌の消費、眼科検査、機能観察バッテリー(FOB)、ならびに臨床および解剖病理学に基づいていた。
【0087】
乾燥スペアミント抽出物(有効成分としておおよそ15%のRAを含有する)のオスおよびメスのSprague Dawleyラットへの300mg RA/kg体重/日までの用量での90日間の毎日の経口投与は十分に許容された。処置に関連する臨床徴候または有害な作用は、体重、餌の消費、神経学的パラメーター、血液学、臨床化学、肉眼および組織病理が含まれる研究されたパラメーターのいずれにおいても観察されなかった。下垂体および甲状腺(thyroid lands)において重量の増大が観察されたが、それらは年齢および系統に関する歴史的な標準的な状態(historical norms)の範囲内であり、対応する組織病理学変化を有しなかった。従って、用いた試験条件および用量下でのその試験項目に関する“最大無毒性量(NOAEL)”は、300mg RA/kg体重/日(1948.2mg/kg体重/日の乾燥スペアミント抽出物に対応する)であることが分かった。100倍安全率を用いて、これはヒト等価用量に関する19.48mg/kg/日の乾燥スペアミント抽出物のNOAELに対応し、それは70kgのヒトに関して1363.74mg/日に相当するであろう。
【0088】
前記の記載および図面は、本発明の説明的な態様を含む。本明細書で記載される前記の態様および方法は、当業者の能力、経験、および選好に基づいて様々であってよい。単にその方法の工程を特定の順序で列挙することは、その方法の工程の順序への一切の制限を構成しない。前記の記載および図面は単に本発明を説明および図説するものであり、特許請求の範囲がそのように限定されている場合を除いて、本発明はそれに限定されない。それらの前の開示を有する当業者は、本発明の範囲から逸脱することなくそれにおいて改変および変更を行うことができるであろう
[1]有効量のシソ科の植物の抽出物の経口投与を含む、哺乳類において認知の健康およ
び/または機能を高める、向上させる、または維持するための方法。
[2]前記の哺乳類がヒトおよびコンパニオンアニマルからなるリストから選択される、[1]に記載の方法。
[3]前記の抽出物の前記の有効量が0.01~50mg/kg/日である、[2]に記載の方法。
[4]前記の抽出物がカルノシン酸を含む、[1]に記載の方法。
[5]認知の健康および/または認知機能が手続き学習(集中、注意、および警戒の向上による)および記憶を指し、かつここで記憶が陳述および手続き構成要素の両方を有する参照記憶、認識記憶、短期記憶、長期記憶および連想記憶からなる群から選択される、[4]に記載の方法。
[6]認知の健康および/または認知機能が実行機能を指す、[4]に記載の方法。
[7]前記の抽出物がロスマリン酸を含む、[2]に記載の方法。
[8]前記の抽出物の前記の有効量が0.01~50mg/kg/日である、[7]に記載の方法。
[9]ロスマリン酸に関する認知の健康および/または認知機能が集中、注意、および警戒の向上による陳述学習を指す、[7]に記載の方法。
[10]ロスマリン酸に関する認知の健康および/または認知機能が陳述記憶、短期および長期記憶の両方を指す、[7]に記載の方法。
[11]認知の健康および/または認知機能が実行機能を指す、[7]に記載の方法。
[12]前記の抽出物がカルノシン酸およびロスマリン酸を含む、[1]に記載の方法。[13]認知の健康および/または機能を高める、向上させる、および維持することが学習を高める、向上させる、および維持することを含み、学習が陳述学習および手続き学習からなる群から選択される、[12]に記載の方法。
[14]認知の健康および/または機能を高める、向上させる、および維持することが記憶を高める、向上させる、および維持することを含み、記憶が陳述および手続き構成要素の両方を有する参照記憶、認識記憶、短期記憶、長期記憶および連想記憶からなる群から選択される、[12]に記載の方法。
[15]前記の植物がバジル、ミント、セージ、セイボリー、マヨラマ、オレガノ、タイム、ラベンダー、スペアミント、およびローズマリーからなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[16]認知障害、例えば失読症、失行症(aspraxia)、注意欠陥・多動性障害、注意欠陥障害、自閉症、アルツハイマー病、パーキンソン病もしくは卒中、または他の実行機能の障害の予防または処置のための、[4]に記載の方法。
[17]認知障害、例えば失読症、失行症(aspraxia)、注意欠陥・多動性障害、注意欠陥障害、自閉症、アルツハイマー病、パーキンソン病もしくは卒中、または他の実行機能の障害の予防または処置のための、[7]に記載の方法。
[18]正常な加齢プロセスと関係する認知障害または欠陥の予防または処置のための、[4]に記載の方法。
[19]正常な加齢プロセスと関係する認知障害または欠陥の予防または処置のための、[7]に記載の方法。
[20]時差ボケ、時間帯変化、妊娠、薬物療法、ルーチンワークおよび交代制作業における変化からなるリストから選択される状態において起こるような概日リズムの混乱のようなストレスの多い条件下での正常な認知機能の維持のための、[4]に記載の方法。
[21]時間帯変化、妊娠、薬物療法、ルーチンワークおよび交代制作業における変化からなるリストから選択される状態において起こるような概日リズムの混乱のようなストレスの多い条件下での正常な認知機能の維持のための、[7]に記載の方法。
[22]有効量のシソ科の植物の抽出物の経口投与を含む、哺乳類において認知の健康および/または機能における低下を処置または予防するための方法。