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特開2023-273レーダシステム及びレーダ信号処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000273
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】レーダシステム及びレーダ信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/44 20060101AFI20221222BHJP
   G01S 13/58 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
G01S13/44
G01S13/58 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100997
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 陽介
(72)【発明者】
【氏名】栗原 秀輔
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 晋一
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB01
5J070AB07
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC12
5J070AC13
5J070AD02
5J070AD09
5J070AH12
5J070AH31
5J070AH35
5J070AK22
5J070BA01
(57)【要約】
【課題】クラッタや熱雑音の影響を抑圧し、小目標を検出して、測角精度を向上させる。
【解決手段】実施形態によれば、送信系統から送信される単パルスまたは変調したN(N≧1)パルスを用いて、受信系統でfast-time軸とslow-time軸のfast-slowデータを取得するレーダシステムであって、前記受信系統で、ΣビームとAZ軸、ΣビームとEL軸でそれぞれスクイントしたΣAZビーム、ΣELビームの受信信号について、各々fast-time軸(slow-time軸)でCS処理を行った後、slow-time軸(fast-time軸)でCS処理し、前記ΣビームによりCFARまたは極大値により目標を検出し、前記目標を検出したセルを用いて、ΣビームとAZ軸及びEL軸それぞれのスクイントビームを用いて測角処理を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信系統から送信される単パルスまたは変調したN(N≧1)パルスを用いて受信系統でfast-time軸とslow-time軸のfast-slowデータを取得するレーダシステムであって、
前記受信系統で、ΣビームとAZ(Azimuth)軸、ΣビームとEL(Elevation)軸でそれぞれスクイントしたΣAZビーム、ΣELビームの受信信号について、各々fast-time軸(slow-time軸)でCS(Compressed Sensing)処理を行った後、slow-time軸(fast-time軸)でCS処理し、前記ΣビームによりCFAR(Constant False Alarm Rate)または極大値により目標を検出し、前記目標を検出したセルを用いて、ΣビームとAZ軸及びEL軸それぞれのスクイントビームを用いて測角処理を行うレーダシステム。
【請求項2】
前記スクイントしたΣAZビーム、ΣELビームをサブアレイ型DBF(Digital Beam Forming)方式で形成し、
前記単パルスでは、slow-time軸で周波数領域に変換し、前記変調したパルスではfast-time軸で圧縮処理しslow-time軸で周波数領域に変換してRD(Range - Doppler)データを所得するノーマル処理と、前記CS処理後の結果について目標毎に信号対雑音比を比較して、大きい方のRDデータのセルを用いて、ノーマル処理では位相モノパルスによるスクイント測角を行い、CS処理後ではスクイント測角により測角処理を行う請求項1記載のレーダシステム。
【請求項3】
送信系統から送信される単パルスまたは変調したN(N≧1)パルスを用いて受信系統でfast-time軸とslow-time軸のfast-slowデータを取得するレーダ信号処理方法であって、
前記受信系統で、ΣビームとAZ(Azimuth)軸、ΣビームとEL(Elevation)軸でそれぞれスクイントしたΣAZビーム、ΣELビームの受信信号について、各々fast-time軸(slow-time軸)でCS(Compressed Sensing)処理を行った後、slow-time軸(fast-time軸)でCS処理し、前記ΣビームによりCFAR(Constant False Alarm Rate)または極大値により目標を検出し、前記目標を検出したセルを用いて、ΣビームとAZ軸及びEL軸それぞれのスクイントビームを用いて測角処理を行うレーダ信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、レーダシステム及びレーダ信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーダシステムでは、クラッタや熱雑音が多い環境下において、小目標を検出する際には、SN(信号対雑音電力比)が小さいため、検出不可や誤検出が発生する問題があり、測角誤差も大きくなってしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】パルス圧縮、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp. 278-280(1996)
【非特許文献2】CFAR(Constant False Alarm Rate:定誤警報率)、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp.87-89 (1996)
【非特許文献3】モノパルス、吉田、‘改訂レーダ技術’、電子情報通信学会、pp. 260-264(1996)
【非特許文献4】圧縮センシング,Toyoki Hoshikawa,’Performance Comparison of Compressed Sensing Algorithms for DOA Estimation of Multi-band Signals’,2018 15TH WORKSHOP ON POSITIONING NAVIGATION AND COMMUNICATIONS(2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上述べたように、従来のレーダシステムでは、クラッタや熱雑音が多い環境下において、小目標を検出する際には、SN(信号対雑音電力比)が小さいため、検出不可や誤検出が発生する問題があり、測角誤差も大きくなってしまう。
【0005】
本実施形態の課題は、クラッタや熱雑音の影響を抑圧し、小目標を検出して、測角精度を向上させることのできるレーダシステム及びレーダ信号処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本実施形態に係るレーダシステムは、送信系統から送信される単パルスまたは変調したN(N≧1)パルスを用いて、受信系統でfast-time軸とslow-time軸のfast-slowデータを取得するレーダシステムであって、前記受信系統で、ΣビームとAZ(Azimuth)軸、ΣビームとEL(Elevation)軸でそれぞれスクイントしたΣAZビーム、ΣELビームの受信信号について、各々fast-time軸(slow-time軸)でCS(Compressed Sensing)処理を行った後、slow-time軸(fast-time軸)でCS処理し、前記ΣビームによりCFAR(Constant False Alarm Rate)または極大値により目標を検出し、前記目標を検出したセルを用いて、ΣビームとAZ軸及びEL軸それぞれのスクイントビームを用いて測角処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係るレーダシステムの送信系統の構成を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るレーダシステムの受信系統の構成を示すブロック図である。
図3図3は、第1の実施形態において、受信系統のCS(Compressed Sensing:圧縮センシング)処理の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、図3に示すCS処理を具体的に説明するための図である。
図5図5は、第1の実施形態において、CS処理によって目標以外の誤検出を抑圧する例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態において、ΣビームとΔビームにより誤差電圧εを算出し、予め取得した誤差電圧テーブルを用いて測角する手法を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態において、ΣビームとΣ2ビームのスクイント測角により誤差電圧εを算出し、予め取得した誤差電圧テーブルを用いて測角する手法を示す図である。
図8図8は、第1の実施形態において、Σビーム、ΣAZビーム、ΣELビームの各々について、CS処理を行う例を示す図である。
図9図9は、第2の実施形態に係るレーダシステムの受信系統の構成を示すブロック図である。
図10図10は、第2の実施形態において、アンテナ開口をサブアレイに分割した例を示す図である。
図11図11は、第2の実施形態に適用されるサブアレイ型DBFの構成例を示すブロック図である。
図12図12は、第2の実施形態において、サブアレイの受信信号のビーム走査のための位相を説明するための座標系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)CS処理
図1は第1の実施形態に係るレーダシステムの送信系統の構成を示すブロック図、図2はその受信系統の構成を示すブロック図である。
【0010】
図1に示す送信系統では、信号生成器11で送信種信号を生成し、変調器12で送信種信号に伝送情報を変調多重し、周波数変換器13で変調信号を高周波信号に変換し、パルス変調器14で高周波信号をパルス変調して送信パルス列を生成し、送信アンテナ15でN(N≧2)ヒットのパルスを送信する。
【0011】
次に図2に示す受信系統について説明する。受信系統では、受信アンテナ21でΣビームとAZ軸でスクイントしたΣAZビーム、ΣビームとEL軸でスクイントしたΣELビームの信号を受信し、それぞれの受信信号を周波数変換器22で周波数変換し、AD変換器23でディジタル信号に変換する。続いて、CS処理器24で、Σビーム、ΣAZビーム、ΣELビームそれぞれの受信信号についてfast-time軸とslow-time軸でCS(Compressed Sensing:圧縮センシング)処理(非特許文献2参照)を施し、検出処理器25でΣビームによりCFAR(Constant False Alarm Rate:定誤警報率、非特許文献4参照)または極大値等を比較して目標を検出し、観測値出力器26に送る。一方、検出処理器25の目標検出結果をセル抽出器27に送り、このセル抽出器27でΣビーム、ΣAZビーム、ΣELビームそれぞれのCS処理結果と比較して目標を検出したセルを抽出し、CS測角器28でΣビーム、ΣAZビーム、ΣELビームを用いて測角処理を行い、その測角処理結果を観測値出力器26に送り、観測値出力器26で目標検出の観測値を出力する。
【0012】
上記構成によるレーダ装置において、図3乃至図8を参照してその処理動作を説明する。
【0013】
図3は、第1の実施形態において、受信系統のCS処理の流れを示すフローチャート、図4は、図3に示すCS処理を具体的に説明するための図、図5は、第1の実施形態において、CS処理によって目標以外の誤検出を抑圧する例を示す図、図6は、第1の実施形態において、ΣビームとΔビームにより誤差電圧εを算出し、予め取得した誤差電圧テーブルを用いて測角する手法を示す図、図7は、第1の実施形態において、ΣビームとΣ2ビームのスクイント測角により誤差電圧εを算出し、予め取得した誤差電圧テーブルを用いて測角する手法を示す図、図8は、第1の実施形態において、Σビーム、ΣAZビーム、ΣELビームの各々について、CS処理を行う例を示す図である。
【0014】
まず、レーダ装置では、図3に示すように、観測行列の算出が開始されると(ステップS11)、fast-time軸のFFTを行う(ステップS12)。ここで、レーダ信号がパルス圧縮の場合、レンジ-周波数軸で参照信号との乗算を行う(ステップS13)。
【0015】
続いて、fast-time軸CS処理を行い(ステップS14)、その結果を保存する(ステップS15)。全てのfast-time軸のCS処理の終了を判断し(ステップS16)、CS処理が終了していないfast-time軸がある場合には、fast-time軸を変更して(ステップS17)、ステップS12に戻り、fast-time軸のFFT処理、CS処理を継続する。
【0016】
ステップS16で全てのfast-time軸のCS処理が終了したと判断した場合には、slow-time軸のCS処理を行い(ステップS18)、その結果を保存する(ステップS19)。全てのslow-time軸のCS処理の終了を判断し(ステップS20)、CS処理が終了していないslow-time軸がある場合には、slow-time軸を変更して(ステップS21)、ステップS18に戻り、slow-time軸のFFT処理、CS処理を継続する。ステップS20で全てのslow-time軸のCS処理が終了したと判断した場合には、出力処理を行い(ステップS22)、一連の処理を終了する。
【0017】
上記の処理において、パルス圧縮(非特許文献1参照)信号等のようにパルス内で変調している場合は、次式で示すように、変調信号である参照信号をFFTによって周波数領域に変換した信号を周波数軸の信号に乗算して、レンジ-周波数軸の信号Sigr(f)を得る(ステップS12,S13)(非特許文献4参照)。
【0018】
【数1】
【0019】
次に、レンジ-周波数軸におけるCS処理(非特許文献4)を考える。入力信号をYrとし、波源をXrとすると、次式で表すことができる。
【0020】
【数2】
【0021】
また、観測行列Arは、次式で表すことができる。
【0022】
【数3】
【0023】
観測行列Arのn番目の縦列の要素は、次式に示すように、波源xnが存在するときの距離に対応するベクトルである。
【0024】
【数4】
【0025】
上式の位相φは次式で表される。
【0026】
【数5】
【0027】
次に、(2)式において、Xがスパースであることを用いると、次式を最小化する波源Xrを算出することができる(非特許文献4参照)。
【0028】
【数6】
【0029】
目標距離を出力する場合は、波源Xrに対応するnを算出できれば、次式により距離Rを算出することができる。
【0030】
【数7】
【0031】
次に、slow-time軸でCS処理することを考える。slow-time軸の信号をYsとし、ドップラ軸の波源をXsとすると、次式で表すことができる。
【0032】
【数8】
【0033】
また、観測行列Asは、次式で表すことができる。
【0034】
【数9】
【0035】
観測行列Asのn番目の縦列の要素は、波源Xsがドップラxnに存在するときのレンジ周波数軸の信号ベクトルである。
【0036】
【数10】
【0037】
上式の位相φは次式で表される。
【0038】
【数11】
【0039】
ここで、(8)式を用いて、波源Xsがスパースであることを用いると、次式を最小化する波源Xsを算出することができる(非特許文献3参照)。
【0040】
【数12】
【0041】
目標ドップラを出力する場合は、波源Xsに対応するnを算出できれば、次式によりドップラを算出することができる。
【0042】
【数13】
【0043】
目標速度は次式で算出できる。
【0044】
【数14】
【0045】
以上により、fast-time軸とslow-time軸の2次元のCS処理(24)を実施することができる。これにより、図5(a)に示すノーマル処理に対してCS処理を行うことで、図5(b)に示すように、目標以外の誤検出を抑圧することができる。これは、(2)式及び(8)式の観測行列を、目標信号をモデル化して作成しているため、目標は抽出するが、それ以外の成分を抑圧するように作用するからである。
【0046】
このデータを用いて、所定のスレショルドを超える極大値を抽出して目標検出(25)を行う。ここで、極値検出の代わりにCFAR(非特許文献2)を用いてもよいのは言うまでもない。
【0047】
以上は、受信アンテナ11によるΣビーム(和ビーム)の処理である。次に、測角について述べる。測角を行うためには、通常は、アンテナ開口をAZ軸またはEL軸で開口2分割して形成したΔビームまたは差ビームを用いた位相モノパルス測角を用いる(非特許文献3)。これは、図6(a)に示すように、ΣビームとΔビームにより、次式で示す誤差電圧εを算出し、図6(b)に示すように、予め取得した誤差電圧テーブルを用いて、測角する手法である。
【0048】
【数15】
【0049】
【数16】
【0050】
ここで、CS処理を行うと、位相成分が失われるため、この位相モノパルス処理を適用できない。対策として、Σビームに対して、AZ軸またはEL軸で、ビーム幅内で角度をずらせたスクイントビームΣAZまたはΣELによる振幅成分のみを用いたスクイント測角を適用する。これを図7(a)、図7(b)に示す。
【0051】
【数17】
【0052】
【数18】
【0053】
この誤差電圧と、予め取得した誤差電圧テーブルを用いて測角する。
【0054】
この処理を行うためには、図8(a),(b),(c)に示すように、Σビーム、ΣAZビーム、ΣELビームの各々について、CS処理を行う。CS処理後のΣビームの出力により、検出処理(15)を行って、Σビーム、ΣAZビーム、ΣELビームより、目標を検出したセルを抽出(17)して、(17)式及び(18)式を用いて測角処理(18)を行う。さらに、(7)式の目標距離、(14)式の目標速度、測角値による観測値を出力する(16)。この観測値出力16では、(X,Y,Z)の3次元の位置、速度に変換してもよいのは言うまでもない。
【0055】
以上のCS処理を用いた手法により、不要信号を抑圧した信号で測角ができ、角度精度を向上することができる。
【0056】
(第2の実施形態)サブアレイDBF
第1の実施形態では、Σビーム、ΣAZビーム、ΣELビームを形成して、スクイント測角する手法について述べた。第2の実施形態では、サブアレイ型のDBF(Digital Beam Forming)を用いることで、位相モノパルスビームとスクイントビームの両者を同一のハードウェアで構成して、統合処理をする手法について、図9乃至図12を参照して説明する。
【0057】
図9は、第2の実施形態に係るレーダシステムの受信系統の構成を示すブロック図、図10は、第2の実施形態において、アンテナ開口をサブアレイに分割した例を示す図、図11は、第2の実施形態に適用されるサブアレイ型DBFの構成例を示すブロック図、図12は、第2の実施形態において、サブアレイの受信信号のビーム走査のための位相を説明するための座標系を示す図である。
【0058】
図9に示す受信系統では、アンテナ開口を図10(a)または図10(b)に示すようにサブアレイに分割し、サブアレイ内はアナログ合成とし、サブアレイ間はDBFにより合成する。図9に示す受信系統では、サブアレイ311~31nで、それぞれΣビームとAZ軸でスクイントしたΣAZビーム、ΣビームとEL軸でスクイントしたΣELビームの信号を受信し、それぞれの受信信号を周波数変換器321~32nで周波数変換し、AD変換器331~33nでディジタル信号に変換する。
【0059】
続いて、サブアレイごとの受信出力を、それぞれFFT/PC(Fast Fourier Transform/Pulse Compression)341~34nでFFT演算して周波数領域に変換した後、DBF35でΣビーム、ΣAZビーム、ΣELビームの受信信号について指定方向にDBF演算し、CFAR検出器36及びCS検出器37でそれぞれ目標検出を行い、統合処理器38で各ビームの目標検出結果を統合し、観測値出力器39から目標の観測値を出力する。
【0060】
一方、統合処理器38の出力をセル抽出器401~40nに順次入力し、セル抽出器401~40nで、FFT/PC341~34nからのサブアレイごとの周波数信号と統合処理器38からの処理信号とを照らし合わせて目標検出セルを抽出し、それぞれDBFモノパルスビーム形成器41、AZ/EL位相モノパルスビーム形成器42で目標の振幅・位相情報を取得する。また、セル抽出器40nの出力について、さらにセル抽出器40n+1に入力して目標が存在する全セルを抽出し、その抽出結果をDBF35に送ってDBF形成の方向を指定するとともに、CS測角器43でΣビーム、ΣAZビーム、ΣELビームそれぞれのCS測角を行い、AZ/EL位相モノパルスビーム形成器42からの目標の振幅・位相情報とともに、統合処理器44に送る。統合処理器44は、検出目標それぞれの振幅、位相、測角値を統合し、目標情報として観測値出力器39に送り、統合処理器38からの目標検出結果と共に観測値出力器39から出力される。
【0061】
ここで、上記サブアレイ311~31nそれぞれの内部系統は、図11に示すように、アンテナ素子511~514の受信信号を低雑音増幅器521~524で低雑音増幅し、移相器531~534によりビーム走査のための位相制御を受信ビーム制御器55により設定した後、合成器54により合成して、サブアレイ出力を得る。
【0062】
図10(a)は開口をAZ4×EL4に分割した場合、図10(b)は開口をAZ2×EL2に分割した場合であり、偶数分割であれば、他の分割手法でもよいのは言うまでもない。各サブアレイ311~31n内の位相は、所定のAZ角度方向、EL角度方向にそれぞれビームを形成するように設定する。これにより、開口2分割による和ビームΣと差ビームΔAZ(ΔEL)を形成することができ、(15)式と(16)式を用いて位相モノパルス測角ができる。
【0063】
一方、サブイアレイ内の各アンテナ素子の位相はそのままで、サブアレイ間のDBFにより、スクイントビームΣAZ(ΣEL)を形成できる。
【0064】
これを定式化する。サブアレイの信号のビーム走査のための位相は、図12の座標系を参照して、Σビーム、ΣAZビーム、ΣELビームにおいて、次式で与えられる。
【0065】
【数19】
【0066】
これらの位相設定によるビームを用いて、第1の実施形態のCS処理により、スクイント測角を行うことができる。
【0067】
以上の処理により、まず検出については、統合処理(38)において、ノーマル処理のΣビームとCS処理後のΣビームのうち、SNが高い方の結果を選定する。これにより、目標のレンジ・ドップラセルを抽出することができる。測角については、統合処理(44)により、ノーマル処理の方が、SNが高い場合には、位相モノパルスを、逆の場合は、CS処理後のスクイント測角値を用いて、観測値を出力する(39)。これにより、CS処理による検出結果または測角結果のばらつきを抑えることができる。
【0068】
その他、本発明は上記実施形態をそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0069】
11…信号生成器、12…変調器、13…周波数変換器、14…パルス変調器、15…送信アンテナ、
21…受信アンテナ、22…周波数変換器、23…AD変換器、24…CS処理器、25…検出処理器、26…観測値出力器、27…セル抽出器、28…CS測角器、
311~31n…サブアレイ、22…周波数変換器、23…AD変換器、341~34n…FFT/PC、35…ΣビームDBF、36…CFAR検出器、37…CS検出器、38…統合処理器、39…観測値出力器、401~40n,40n+1…セル抽出器、41…DBFモノパルスビーム形成器、42…AZ/EL位相モノパルスビーム形成器、43…CS測角器、44…統合処理器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12