(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027301
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】キメラ凝固因子を使用して血友病性関節症を処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20230221BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20230221BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230221BHJP
A61K 38/36 20060101ALI20230221BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
A61K47/68
A61P7/04
A61P19/02
A61K38/36
A61K39/395 Y
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022200995
(22)【出願日】2022-12-16
(62)【分割の表示】P 2019529528の分割
【原出願日】2017-12-01
(31)【優先権主張番号】62/429,509
(32)【優先日】2016-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/529,896
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/550,488
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/558,793
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512147244
【氏名又は名称】バイオベラティブ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・デュモン
(72)【発明者】
【氏名】ニシャ・ジャイン
(72)【発明者】
【氏名】デシル・グレイズブルック
(57)【要約】 (修正有)
【課題】血友病を有するヒトにおける、関節の可逆性の血友病性関節症を処置する方法を提供する。
【解決手段】関節の可逆性の血友病性関節症を処置する方法における、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質または組成物の使用を提供する。好ましくは、前記Fc領域は、低親和性免疫グロブリンガンマFc領域受容体II-b(FcγRIIB)に特異的に結合する、使用である。より好ましくは、前記凝固因子は、第VII因子(FVII)、第VIIa因子(FVIIa)、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、第X因子(FX)、フォンヴィルブランド因子(VWF)、FIXおよびFXに特異的に結合するその抗原結合部分、またはその任意の組合せからなる群から選択される、使用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血友病を有するヒトにおける関節の可逆性の血友病性関節症を処置する方法における、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質または組成物の使用。
【請求項2】
可逆性の血友病性関節症は、滑膜炎、微小出血、または両方を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
血友病を有するヒトの関節における血管リモデリングの発生を低減させるか、または血管リモデリングを予防的に処置する方法における、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質または組成物の使用。
【請求項4】
血友病を有するヒトの関節周囲の軟部組織を改善する方法における、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質または組成物の使用。
【請求項5】
投与により、ヒトにおける関節健康スコア(HJHS)が改善される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
投与により、ヒトにおける関節痛が低減する、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
関節は、1つまたは両方の肘、1つまたは両方の膝、1つまたは両方の足首、1つまたは両方の肩、1つまたは両方の股関節、1つまたは両方の手首、1つまたは複数の手の関節、1つまたは複数の足の関節、およびその任意の組合せからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
Fc領域は、低親和性免疫グロブリンガンマFc領域受容体II-b(FcγRIIB)に特異的に結合する、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
X線撮影、磁気共鳴イメージング、超音波造影法、パワードップラー超音波検査、またはその任意の組合せからなる群から選択されるイメージングシステムを使用して、処置を必要とするヒトを特定することをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
凝固因子は、第VII因子(FVII)、第VIIa因子(FVIIa)、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、第X因子(FX)、フォンヴィルブランド因子(VWF)、FIXおよびFXに特異的に結合するその抗原結合部分、またはその任意の組合せからなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
キメラタンパク質は、FVIII-FcまたはFIX-Fcを含む、請求項5~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
FVIII-Fcを含むキメラタンパク質の有効量は、約20IU/kg~約300IU/kgである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
FVIII-Fcを含むキメラタンパク質は、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約15日間、約16日間、約17日間、約18日間、約19日間、約20日間、約21日間、約22日間、約23日間、または約24日間の投与間隔で投与される、請求項11または12に記載の使用。
【請求項14】
FIX-Fcを含むキメラタンパク質の有効量は、約20IU/kg~約100IU/kgである、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
FIX-Fcを含むキメラタンパク質は、約3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、または28日間の投与間隔で投与される、請求項11または14に記載の使用。
【請求項16】
凝固因子は、血漿区画外ならびに血漿区画内の組織に分布する、請求項1~15のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その各々の全体を参照によって本明細書に組み入れる、2016年12月2日に提出された米国特許仮出願第62/429,509号、2017年7月7日に提出された同第62/529,896号、2017年8月25日に提出された同第62/550,488号、および2017年9月14日に提出された同第62/558,793号の恩典を主張する。
【0002】
本開示は、全般的に止血障害の治療薬の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
血友病は、凝固タンパク質をコードする遺伝子、特にFVIII活性の欠乏を引き起こす(血友病A)第VIII因子(FVIII)遺伝子の変異および/もしくは欠失、またはFIX活性の欠乏を引き起こす(血友病B)第IX因子遺伝子の変異および/もしくは欠失によって引き起こされるX連鎖出血障害である(例えば、非特許文献1を参照されたい)。疾患は、特発性出血および外傷後の過剰な出血を特徴とする。血友病の処置は、特発性出血を予防するためにFVIIIおよび/またはFIX活性の回復を標的とする代替治療による(例えば、非特許文献2を参照されたい)。
【0004】
時間と共に、しばしば幼児期に始まる筋肉および関節への繰り返しの出血は、血友病性関節症および関節の損傷を引き起こす。血友病性関節症は、血友病に関連する一般的かつ重度の合併症であり、しばしば疼痛、変形、および無能力を引き起こす。血友病性関節症に罹患する最も一般的な患者は、年齢3~15歳の若い男性である。罹患する可能性が最も高い関節は膝であるが、血友病性関節症は、肘、足首、肩、および脊椎骨にも存在し得る。血友病性関節症は、非可逆的であることが知られている。このため、血友病性関節症の現在利用可能な処置は限られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Peyvandi,F.ら、Haemophilia 12:82~89頁(2006年)
【非特許文献2】Mannucci,P.M.ら、N.Engl.J.Med.344:1773~1779頁(2001年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、血友病性関節症を処置する新規方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、血友病を有するヒトにおける関節の可逆性の血友病性関節症を処置する方法であって、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質またはキメラタンパク質を含む組成物の有効量をヒトに投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、可逆性の血友病性関節症は滑膜炎を含む。ある特定の実施形態では、可逆性の血友病性関節症は、微小出血または無症状出血を含む。
【0008】
本開示の別の態様は、血友病を有するヒトにおける滑膜炎を処置する方法であって、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質または凝固因子とFc領域とを含む組成物の
有効量をヒトに投与することを含む方法を開示する。一部の実施形態では、滑膜炎は、血友病性関節症に関連している。
【0009】
本開示の別の態様は、血友病を有するヒトの関節における血管リモデリングの発生を低減させる方法であって、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量をヒトに投与することを含む方法を開示する。本開示の別の態様は、血友病を有するヒトの関節における血管リモデリングの予防処置であって、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質または凝固因子とFc領域とを含む組成物の有効量をヒトに投与することを含む処置を提供する。
【0010】
本開示の別の態様は、血友病を有するヒトの関節周囲の軟部組織を改善する方法であって、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質または凝固因子とFc領域とを含む組成物の有効量をヒトに投与することを含む方法を開示する。
【0011】
一部の実施形態では、投与により、ヒトにおける関節健康スコア(HJHS)が改善される。一部の実施形態では、投与により、ヒトにおける関節痛が低減する。
【0012】
ある特定の実施形態では、Fc領域は、低親和性免疫グロブリンガンマFc領域受容体II-b(FcγRIIB)に特異的に結合する。一部の実施形態では、Fc領域は、樹状細胞特異的細胞内接着分子-3結合ノンインテグリン(DC-SIGN))に特異的に結合する。
【0013】
一部の態様では、方法は、処置を必要とするヒトを特定することをさらに含む。一部の実施形態では、特定することは、イメージングシステムを使用することを含む。ある特定の実施形態では、イメージングシステムは、X線撮影、磁気共鳴イメージング、超音波造影法、パワードップラー超音波検査、またはその任意の組合せを含む。一部の実施形態では、ヒトは、関節の炎症に関連する1つまたは複数のバイオマーカーを発現する。
【0014】
一部の態様では、凝固因子は、第VII因子(FVII)、第VIIa因子(FVIIa)、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、第X因子(FX)、フォンヴィルブランド因子(VWF)、FIXおよびFXに特異的に結合するその抗原結合部分、またはその任意の組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、キメラタンパク質は、FVIII-Fcを含む。他の実施形態では、キメラタンパク質は、FIX-Fcを含む。一実施形態では、キメラタンパク質は、第VIII因子部分とVWF部分とを含み、FVIII部分はFVIIIポリペプチドまたはその断片を含み、VWF部分はVWFポリペプチドまたはその断片を含み、FVIII部分は第1のFc領域に連結され、VWF部分は第2のFc領域に連結され、および第1のFc領域と第2のFc領域は互いに会合している。
【0015】
一部の実施形態では、キメラタンパク質は、半減期延長部分をさらに含む。ある特定の実施形態では、半減期延長部分は、アルブミンもしくはその断片、アルブミン結合部分、PAS配列、HAP配列、トランスフェリンもしくはその断片、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリシアル酸、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、その誘導体、またはその任意の組合せを含む。
【0016】
一部の態様では、FVIIIとFc領域とを含む組成物、例えば、キメラタンパク質の有効量は、約20IU/kg~約300IU/kgである。一部の実施形態では、FVIII-Fcを含むキメラタンパク質は、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約15日間、約16日間、約17日間、約18日間、約19日間、約2
0日間、約21日間、約22日間、約23日間、または約24日間の投与間隔で投与される。
【0017】
他の態様では、FIX-Fcを含むキメラタンパク質の有効量は、約20IU/kg~約100IU/kgである。一部の実施形態では、FIX-Fcを含むキメラタンパク質は、約3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、または28日間の投与間隔で投与される。
【0018】
特定の一実施形態では、キメラタンパク質は、FVIII部分、VWF部分、第1のFc領域、および第2のFc領域を含み;FVIII部分はFVIIIポリペプチドもしくはその断片を含み;VWF部分はVWFポリペプチドもしくはその断片を含み;FVIII部分は第1のFc領域に連結され;VWF部分は第2のFc領域に連結され;および第1のFc領域と第2のFc領域は互いに会合している。
実施形態
【0019】
E1.血友病を有するヒトにおける関節の可逆性の血友病性関節症を処置する方法であって、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量をヒトに投与することを含む方法。
【0020】
E2.可逆性の血友病性関節症が滑膜炎を含む、E1に記載の方法。
【0021】
E3.可逆性の血友病性関節症が微小出血を含む、E1またはE2に記載の方法。
【0022】
E4.血友病を有するヒトにおける滑膜炎を処置する方法であって、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量をヒトに投与することを含む方法。
【0023】
E5.滑膜炎が、血友病性関節症に関連している、E4に記載の方法。
【0024】
E6.血友病を有するヒトの関節における血管リモデリングの発生を防止するかまたは低減させる方法であって、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量をヒトに投与することを含む方法。
【0025】
E7.血友病を有するヒトの関節周囲の軟部組織を改善する方法であって、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量をヒトに投与することを含む方法。
【0026】
E8.投与により、ヒトにおける関節健康スコア(HJHS)が改善される、E1~E7のいずれか一項に記載の方法。
【0027】
E9.関節健康スコアが、関節総スコアと全歩行スコア(Global Gait score)の合計
である、E8に記載の方法。
【0028】
E10.関節総スコアが、腫れ、腫れの持続期間、筋萎縮、関節摩擦音、屈曲の損失、伸展の損失、関節痛、および筋力に基づいて測定される、E9に記載の方法。
【0029】
E11.全歩行スコアが、歩行、階段、ランニング、または片足でのホッピングに基づいて測定される、E9に記載の方法。
【0030】
E12.投与により、ヒトにおける関節痛が低減される、E1~E11のいずれか一項
に記載の方法。
【0031】
E13.関節が、1つまたは両方の肘、1つまたは両方の膝、1つまたは両方の足首、1つまたは両方の肩、1つまたは両方の股関節、1つまたは両方の手首、1つまたは複数の手の関節、1つまたは複数の足の関節、およびその任意の組合せからなる群から選択される、E1~E12のいずれか一項に記載の方法。
【0032】
E14.関節が肘である、E1~E13のいずれか一項に記載の方法。
【0033】
E15.関節が膝である、E1~E13のいずれか一項に記載の方法。
【0034】
E16.関節が足首である、E1~E13のいずれか一項に記載の方法。
【0035】
E17.Fc領域が、低親和性免疫グロブリンガンマFc領域受容体II-b(FcγRIIB)に特異的に結合する、E1~E16のいずれか一項に記載の方法。
【0036】
E18.Fc領域が、樹状細胞特異的細胞内接着分子-3結合ノンインテグリン(DC-SIGN)に特異的に結合する、E1~E17のいずれか一項に記載の方法。
【0037】
E19.処置を必要とするヒトを特定することをさらに含む、E1~E18のいずれか一項に記載の方法。
【0038】
E20.特定することが、イメージングシステムを使用することを含む、E19に記載の方法。
【0039】
E21.イメージングシステムが、X線撮影、磁気共鳴イメージング、超音波造影法、パワードップラー超音波検査、またはその任意の組合せを含む、E20に記載の方法。
【0040】
E22.ヒトが、関節の炎症に関連する1つまたは複数のバイオマーカーを発現する、E21に記載の方法。
【0041】
E23.凝固因子が、第VII因子(FVII)、第VIIa因子(FVIIa)、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、第X因子(FX)、フォンヴィルブランド因子(VWF)、FIXおよびFXに特異的に結合するその抗原結合部分、またはその任意の組合せからなる群から選択される、E1~E22のいずれか一項に記載の方法。
【0042】
E24.キメラタンパク質が、FVIII-Fcを含む、E1~E23のいずれか一項に記載の方法。
【0043】
E25.キメラタンパク質が、FIX-Fcを含む、E1~E23のいずれか一項に記載の方法。
【0044】
E26.キメラタンパク質が第VIII因子部分とVWF部分とを含み、FVIII部分がFVIIIポリペプチドまたはその断片を含み、VWF部分がVWFポリペプチドまたはその断片を含み、FVIII部分が第1のFc領域に連結され、VWF部分が第2のFc領域に連結され、および第1のFc領域と第2のFc領域が互いに会合している、E1~E24いずれか一項に記載の方法。
【0045】
E27.FVIIIポリペプチドが完全長の成熟FVIIIを含む、E23、E24、
およびE26のいずれか一項に記載の方法。
【0046】
E28.FVIIIポリペプチドがBドメイン欠失FVIIIを含む、E23、E24、およびE26のいずれか一項に記載の方法。
【0047】
E29.Bドメイン欠失FVIIIが、FVIIIのBドメインの全てまたは一部の欠失を含む、E28に記載の方法。
【0048】
E30.Bドメイン欠失FVIIIが、成熟FVIIIのアミノ酸残基746~1648の欠失を含む、E28またはE29に記載の方法。
【0049】
E31.VWFポリペプチドがVWFのD’ドメインおよびD3ドメインを含むVWF断片を含む、E23、E24、およびE25~E30のいずれか一項に記載の方法。
【0050】
E32.キメラタンパク質が半減期延長部分をさらに含む、E1~E31のいずれか一項に記載の方法。
【0051】
E33.半減期延長部分が、アルブミンもしくはその断片、アルブミン結合部分、PAS配列、HAP配列、トランスフェリンもしくはその断片、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリシアル酸、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、その誘導体、またはその任意の組合せを含む、E32に記載の方法。
【0052】
E34.半減期延長部分が、凝固因子内に挿入される、E32またはE33に記載の方法。
【0053】
E35.半減期延長部分が、凝固因子とFc領域の間に挿入される、E32またはE33に記載の方法。
【0054】
E36.FVIIIとFc領域とを含むキメラタンパク質の有効量が、約20IU/kg~約300IU/kgである、E24およびE26~E35のいずれか一項に記載の方法。
【0055】
E37.FVIII-Fcを含むキメラタンパク質の有効量が、約20IU/kg~約275IU/kg、約20IU/kg~約250IU/kg、約20IU/kg~約200IU/kg、約20IU/kg~約175IU/kg、約20IU/kg~約150IU/kg、約20IU/kg~約125IU/kg、約20IU/kg~約100IU/kg、約20IU/kg~約90IU/kg、約20IU/kg~約80IU/kg、約20IU/kg~約70IU/kg、約20IU/kg~約60IU/kg、約20IU/kg~約50IU/kg、約20IU/kg~約40IU/kg、約20IU/kg~約30IU/kg、約30IU/kg~約100IU/kg、約40IU/kg~約100IU/kg、約50IU/kg~約100IU/kg、約60IU/kg~約100IU/kg、約70IU/kg~約100IU/kg、約80IU/kg~約100IU/kg、約90IU/kg~約100IU/kg、約100IU/kg~約200IU/kg、約150IU/kg~約200IU/kg、約200IU/kg~約300IU/kg、約225IU/kg~約300IU/kg、約250IU/kg~約300IU/kg、約275IU/kg~約300IU/kg、または約25IU/kg~約75IU/kgである、E36に記載の方法。
【0056】
E38.FVIII-Fcを含むキメラタンパク質の有効量が、約25IU/kg~約65IU/kgである、E36またはE37に記載の方法。
【0057】
E39.FVIII-Fcを含むキメラタンパク質が、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約15日間、約16日間、約17日間、約18日間、約19日間、約20日間、約21日間、約22日間、約23日間、または約24日間の投与間隔で投与される、E24、およびE26~E38のいずれか一項に記載の方法。
【0058】
E40.FVIII-Fcを含むキメラタンパク質が、約1~約14日間、約1~約13日間、約1~約12日間、約1~約11日間、約1~約10日間、約1~約9日間、約1~約8日間、約1~約7日間、約1~約6日間、約1~約5日間、約1~約4日間、約1~約3日間、約1~約2日間、約2~約14日間、約3~約14日間、約4~約14日間、約5~約14日間、約6~約14日間、約7~約14日間、約8~約14日間、約9~約14日間、約10~約14日間、約11~約14日間、約12~約14日間、約13~約14日間、または約5~約10日間の投与間隔で投与される、E24、およびE26~E38のいずれか一項に記載の方法。
【0059】
E41.FVIII-Fcを含むキメラタンパク質が、約3日間~約5日間の投与間隔で投与される、E24、およびE26~E40のいずれか一項に記載の方法。
【0060】
E42.FIX-Fcを含むキメラタンパク質の有効量が、約20IU/kg~約100IU/kgである、E25に記載の方法。
【0061】
E43.FIX-Fcを含むキメラタンパク質の有効量が、約20IU/kg~約100IU/kg、約30IU/kg~約100IU/kg、約40IU/kg~約100IU/kg、約50IU/kg~約100IU/kg、約60IU/kg~約100IU/kg、約70IU/kg~約100IU/kg、約80IU/kg~約100IU/kg、約90IU/kg~約100IU/kg、約20IU/kg~約90IU/kg、約20IU/kg~約80IU/kg、約20IU/kg~約70IU/kg、約20IU/kg~約60IU/kg、約20IU/kg~約50IU/kg、約20IU/kg~約40IU/kg、または約20IU/kg~約30IU/kgである、E25~E42に記載の方法。
【0062】
E44.FIX-Fcを含むキメラタンパク質の有効量が、約50IU/kg~100IU/kgである、E25およびE42~E44のいずれか一項に記載の方法。
【0063】
E45.FIX-Fcを含むキメラタンパク質が、約3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、または28日間の投与間隔で投与される、E25およびE42~E44のいずれか一項に記載の方法。
【0064】
E46.FIX-Fcを含むキメラタンパク質が、約1~約21日間、約1~約20日間、約1~約19日間、約1~約18日間、約1~約17日間、約1~約16日間、約1~約15日間、約1~約14日間、約1~約13日間、約1~約12日間、約1~約11日間、約1~約10日間、約1~約9日間、約1~約8日間、約1~約7日間、約1~約6日間、約1~約5日間、約1~約4日間、約1~約3日間、約1~約2日間、約2~約21日間、約3~約21日間、約4~約21日間、約5~約21日間、約6~約21日間、約7~約21日間、約8~約21日間、約9~約21日間、約10~約21日間、約11~約21日間、約12~約21日間、約13~約21日間、約14~約21日間、約15~約21日間、約16~約21日間、約17~約21日間、約18~約21日間、約1
9~約21日間、約20~約21日間、約5~約10日間、約10~約15日間、約15~約20日間の投与間隔で投与される、E25およびE42~E45のいずれか一項に記載の方法。
【0065】
E47.FIX-Fcを含むキメラタンパク質が、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、または約14日間の投与間隔で投与される、E25およびE42~E46のいずれか一項に記載の方法。
【0066】
E48.キメラタンパク質が、FVIII部分、VWF部分、第1のFc領域、および第2のFc領域を含み、FVIII部分がFVIIIポリペプチドまたはその断片を含み、VWF部分がVWFポリペプチドまたはその断片を含み、FVIII部分が第1のFc領域に連結され、VWF部分が第2のFc領域に連結され、および第1のFc領域と第2のFc領域が互いに会合している、E1~E32のいずれか一項に記載の方法。
【0067】
E49.キメラタンパク質のFc領域が、キメラタンパク質の関節への局在化を促進する、E1~E47のいずれか一項に記載の方法。
【0068】
E50.ヒトが、6歳未満である、E1~E49のいずれか一項に記載の方法。
【0069】
E51.ヒトが、6歳から12歳未満である、E1~E49のいずれか一項に記載の方法。
【0070】
E52.ヒトが、12歳またはそれ以上である、E1~E49のいずれか一項に記載の方法。
【0071】
E53.凝固因子が、血漿区画外ならびに血漿区画内の組織に分布する、E1~E52のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1-1】
図1A~
図1Fは、ベースラインでの標的関節と共にFVIII-Fc試験(
図1Aおよび1B)および子供に関するFVIII-Fc試験(
図1C~1F)に由来する対象の試験前(
図1A、1C、および1E)および試験中の中央値(
図1B、1D、および1F)(IQR)年間出血回数(ABR)を示す図である。
図1C~1Dは、子供に関するFVIII-Fc試験に由来する合わせたデータを示すが、
図1E~1Fは、対象の年齢(6歳未満および6~12歳未満)に基づいて階層化された同じデータを示す。
【
図2】
図2A~2Bは、FVIII-Fc試験ベースラインから拡張試験2年目(
図2A;x軸)および拡張試験3年目(
図2B;x軸)までの総改変血友病関節健康スコアの平均変化(mHJHS;y軸)を示す。
図2Bは、ベースライン時の標的関節の存在(はい;三角)と非存在(いいえ;丸)とを区別する。
【
図3-1】
図3A~3Cは、FVIII-Fc試験ベースラインから拡張試験2年目まで(
図3A;x軸)および拡張試験3年目まで(
図3B)、ならびに子供に関するFVIII-Fc試験から、試験前予防処置を受けている対象および試験前出血時止血(オンデマンド)処置を受けている対象に関する延長2年目まで(
図3C;x軸)の総mHJHSの平均変化(y軸)を示す図である。
【
図4】FVIII-Fc試験ベースライン時に標的関節を有する対象(四角)およびFVIII-Fc試験ベースライン時に標的関節を有しない対象(菱形)に関する、FVIII-Fc試験ベースラインから2年目まで(x軸)の総mHJHSの平均変化(y軸)を示す図である。
【
図5】FVIII-Fc試験ベースライン時のmHJHSスコアにおける障害の最低四分位数(lowest quartile)(Q1;≧1~10)(菱形)、FVIII-Fc試験ベースライン時のmHJHSスコアにおける障害の第2最低四分位数(Q2;≧10~22)(四角);FVIII-Fc試験ベースライン時のmHJHSスコアにおける障害の第2最高四分位数(Q3;≧22~34)(三角)、およびFVIII-Fc試験ベースライン時のmHJHSスコアにおける障害の最高四分位数(Q4;≧34~37)(菱形)にある対象に関する、FVIII-Fc試験ベースラインから2年目まで(x軸)の総mHJHSの平均変化(y軸)を示す図である。
【
図6】FVIII-Fc試験ベースライン時に標的関節を有する対象に関する、FVIII-Fc試験ベースラインから2年目まで(x軸)の総mHJHSの平均変化(y軸)を示す図である。
【
図7】体重負荷関節(菱形)および非体重負荷標的関節(四角)に関する、FVIII-Fc試験ベースラインから2年目まで(x軸)の総mHJHSの平均変化(y軸)を示す図である。
【
図8】腫れ(菱形)、可動域(四角)、および筋力(三角)に関する、FVIII-Fc試験ベースラインから2年目まで(x軸)の総mHJHSの平均変化(y軸)を示す図である。
【
図9】関節不安定(暗灰色の四角)、腫れ(黒色の三角)、筋萎縮(明灰色の四角)、関節疼痛(明灰色の菱形)、関節摩擦音(黒色の四角)、および筋力(明灰色の丸)に関する、FVIII-Fc試験患者におけるmHJHSの平均(SEM)変化(y軸)を示す図である。各mHJHS測定に関する総ベースライン(BL)スコアを示す。
【
図10A】rFIXFc試験に由来する対象に関する、年間出血回数(ABR)の試験前(
図10A)および試験中中央値(
図10B)(IQR)を示す図である。
図10Bは、試験中全体のABR(暗い丸)、標的関節全体のABR(灰色の菱形)、および標的関節の自発的ABR(灰色の三角)をさらに示す。WP=毎週の予防;IP=個別化された間隔的予防;およびMP=改変された予防(
図10A~10B)。
【
図10B】rFIXFc試験に由来する対象に関する、年間出血回数(ABR)の試験前(
図10A)および試験中中央値(
図10B)(IQR)を示す図である。
図10Bは、試験中全体のABR(暗い丸)、標的関節全体のABR(灰色の菱形)、および標的関節の自発的ABR(灰色の三角)をさらに示す。WP=毎週の予防;IP=個別化された間隔的予防;およびMP=改変された予防(
図10A~10B)。
【
図11】フォローアップの開始以来12カ月以内に関節手術を受けていない、少なくとも12カ月の連続フォローアップを行った対象(n=37)において解消された、および解消されていない評価可能な標的関節(足首、膝、肘、臀部、手首、および肩)の数を示すグラフ表示である。各標的関節の数(n)を、関連データ上に重ね合わせ、合計93の標的関節を評価する。解消した(100%)および解消していない(0%)標的関節のパーセントを、x軸の下に示す。
【
図12-1】
図12A~12Cは、
125I-SIB標識されたFIX(
図12A)、
125I-SIB標識されたFIXFc(
図12B)、または
125I-SIB標識されたGlycoPEG化FIX(
図12C)を投与されたマウスの単一光子放出型コンピューター断層撮影(SPECT)画像である。
図12D~
図12Gは、様々な時点での、
125I-SIB標識されたFIX、
125I-SIB標識されたFIXFc、または
125I-SIB標識されたGlycoPEG化FIXを投与されたマウスの直接比較を示す。ヒートマップは、それぞれのマウスにおける
125I-SIB標識の相対濃度(%ID/g)を示す(
図12A~12G)。
【
図13】
図13A~13Bは、膝(
図13A)および肩(
図13B)における経時的な
125I-SIB標識されたFIX、
125I-SIB標識されたFIXFc、または
125I-SIB標識されたGlycoPEG化FIXの投与後の、
図12A~12Gに示されたマウスにおける
125I-SIB標識の局在化の強度を示すグラフである。データは、右膝と左膝および右肩と左肩の両方について収集し、これらを合わせて、示されたデータを生成した(それぞれ、
図13Aおよび13B)。
【
図14】
図14A~
図14Bは、
図14Aは、標識されていないFIXおよびFIXFcと比較した、また、発色アッセイまたは凝固1段法によって測定された、標識されたFIXおよび標識されたFIXFcの相対活性を示すグラフである。
図14Bは、HemBマウスにおける、標識された、および標識されていないFIX分子の薬物動態を示すグラフである。
【
図16】
図16は、FcγR結合に対するrFVIIIFcの効果、内在化、シグナル伝達およびサイトカイン産生、および遺伝子発現変化、ならびにin vitroでのその後の相互作用およびT細胞に対する効果を調査するために使用される方法を概略する流れ図である。
【
図17】
図17A~17Cは、西洋わさびペルオキシダーゼ免疫複合体(HRP-IC;陽性対照)、IgG1、組換えFVIII(rFVIII)、またはrFVIII Fc融合タンパク質(rFVIIIFc)を用いる処理後のFcγ受容体CD16(
図17A)、CD32(
図17B)、およびCD64(
図17C)の相対的なマクロファージおよび樹状細胞上での表面発現レベルのグラフ表示である。星印(
*)は、有意性の程度を示す(n=3;
*=P≦0.05、
**=P≦0.01、
***=P≦0.005、他の処理と比較したHRP-ICの有意性は示さない)。
【
図18-1】
図18A~18Cは、rFVIIIまたはrFVIIIFcを用いる処理後の相対的シグナル伝達を示すグラフ表示である。
図18Aは、HRP-IC、IgG1、rFVIIIまたはfRVIIIFcで15分間処理したTHP-1単球株(「THP-1」)、単球、末梢血単球由来マクロファージ(「マクロファージ」)、および末梢血単球由来樹状細胞中での、Sykリン酸化によって測定されたシグナル伝達を示す。
図18Bは、rFVIIIFc(「WT」)、新生児Fc受容体に結合することができないrFVIIIFc変異体(「FcRn変異体」)、またはFcγRに結合することができないrFVIIIFc変異体(「FcgR変異体」)で処理したマクロファージ中での相対的Sykリン酸化を示す。
図18Cは、HRP-IC、IgG1、rFVIIIまたはrFVIIIFcで処理した24時間後のマクロファージ中での炎症性サイトカインであるインターロイキン1b(IL-1b)、IL-6、IL-8、IL-10、および腫瘍壊死因子アルファ(TNFa)の相対的産生を示す。
【
図19】
図19は、rFVIIIまたはrFVIIIFcで処理した1分後、5分後、および30分後の、Src相同性領域2ドメイン含有ホスファターゼ-1(SHP1)、pSHP2、ホスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸5-ホスファターゼ1(SHIP1)、およびpSHIP2の相対的リン酸化状態を示す。星印(
*)は、有意性の程度を示す(n=3;
**P≦0.01、
***P≦0.005)。
【
図20-1】
図20A~20Mは、rFVIIIまたはrFVIIIFcで処理した後の寛容原性マクロファージの遺伝子発現パターンのグラフ表示である。
図20A~20Bは、IgG1、rFVIIIcで6時間処理した単球由来マクロファージ(n=3)中で、有意に下方調節された遺伝子の分布(
図20A)および有意に上方調節された遺伝子の分布(
図20B)を示すベン図である。
図20C~20Gは、rFVIIIまたはrFVIIIFcで処理した後に、定量的PCRによって測定された、様々なNRF2ならびにヘムオキシゲナーゼ1(Hmox1;
図20C)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARγ;
図20D)、リポタンパク質リパーゼ(LPL;
図20E)、初期増殖応答タンパク質2(EGR2;
図20F)、および溶質運搬有機アニオン輸送体ファミリーメンバー4A1(SLCO4A1;
図20G)などの脂質代謝経路遺伝子;処理後6時間(
図20I)および12時間(
図20J)でのCD206;ならびにアルギナーゼ1(ARG1;
図20L)の相対的発現を示すグラフである。星印(
*)は、有意性の程度を示す(n=8;
*P≦0.05、
**P≦0.01、
***P≦0.005;
図20C~20G)。
図20Kおよび20Mは、CD206を発現するフローサイトメトリーによって収集された細胞数を示すグラフである。さらに、rFVIIIFcにより教育されたマクロファージは、特徴的なM2様表現型を示すことがわかった(
図20I~20M)。特に、rFVIIIFcで処理したマクロファージは、6時間後(
図20I)および24時間後(
図20J)に、rFVIIIで処理した細胞よりも高い相対的CD206(マンノース受容体C-1型;MRC1としても知られる)発現を有し、rFVIIIFcで処理したマクロファージは、24時間後にrFVIIIで処理した細胞よりも高い相対的ARG1発現を有していた(
図20M)。
【
図21-1】
図21Aは、T細胞分化に対するrFVIIIFc処理の効果を決定するために使用される方法を示す流れ図である。
図21Bは、マクロファージまたは樹状細胞をIgG1(対照)、rFVIII、またはrFVIIIFcで24時間処理した後、ナイーブなCD4陽性T細胞との同時培養物中に入れた6日後の調節性T細胞のパーセントのグラフ表示である。
図21Cは、IgG1、rFVIII、またはrFVIIIFcで予備処理されたマクロファージまたは樹状細胞の条件化培地中でのナイーブなCD4陽性T細胞の培養後の調節性T細胞のパーセントを示すグラフ表示である。
【
図22】
図22は、rFVIIIFc調節性T細胞分化の提唱される機構を示す図である。
【
図23】
図23は、マクロファージに対するrFIXFcの提唱される効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本開示は、血友病を有するヒトにおける可逆性の血友病性関節症を処置する方法であって、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質または凝固因子とFc領域とを含む組成物の有効量をヒトに投与することを含む方法を提供する。本明細書に開示されるキメラタンパク質はまた、血友病を有するヒトの関節における滑膜炎、微小出血、1つもしくは複数の関節の炎症、血管リモデリング、またはその任意の組合せを処置するためにも使用することができる。ある特定の実施形態では、本発明の方法は、血友病を有するヒトの関節周囲の軟部組織を改善する。
【0074】
I.定義
用語「1つの(a)」または「1つの(an)」実体は、その実体の1つまたは複数を指す;例えば、「1つのヌクレオチド配列(a nucleotide sequence)」は、1つまたは
複数のヌクレオチド配列を表すと理解される。そのため、用語「1つ(a)」(または「1つ(an)」)、「1つまたは複数」、および「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用することができる。
【0075】
さらに、本明細書で使用される場合の「および/または」は、他の特色または構成要素の存在下または非存在下で、明記された2つの特色または構成要素の各々の具体的な開示として解釈すべきである。このため、本明細書における「Aおよび/またはB」などの語句で使用される場合の用語「および/または」は、「AとB」、「AまたはB」、「A」(単独)および「B」(単独)を含むと意図される。同様に、「A、B、および/またはC」などの語句で使用される場合の用語「および/または」は、以下の態様の各々を包含すると意図される:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)。
【0076】
態様が本明細書において「含む」という言語と共に記載される場合は常に、「からなる」および/または「本質的にからなる」に関して記載される類似の態様も同様に提供されると理解される。
【0077】
それ以外であると定義していない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本開示が関連する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology、Juo、Pei-Show、第2版、2002、CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology、第3版、1999、Academic Press;およびthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology、改訂版、2000、Oxford University Pressは、本開示で使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0078】
単位、接頭辞、および記号は、Systeme International de Unites(SI)が承認した書式で記される。数値範囲は、範囲を定義する数を含む。それ以外であると示していない限り、アミノ酸配列は、左から右にアミノからカルボキシ方向に書かれている。本明細書に提供する見出しは、開示の様々な態様の制限ではなく、本明細書を全体として参照することによって得ることができる。したがって、以下に定義する用語は、本明細書をその全体で参照することによってより十分に定義される。
【0079】
用語「約」は、本明細書において、およそ、ほぼ、おおよそ、またはその領域を意味するために使用される。用語「約」を数値範囲と共に使用する場合、これは記載の数値より上および下に境界を伸長させることによってその範囲を修飾する。このように、「約10~20」は、「約10~約20」を意味する。一般的に、用語「約」は、例えば10パーセント上または下の(高いまたは低い)分散によって、記載の数値の上および下の数値を修飾することができる。
【0080】
本明細書で使用される場合の「投与する」は、薬学的に許容される組成物、例えば本明細書に開示されるキメラタンパク質を、薬学的に許容される経路を介して対象に与えることを意味する。投与経路は、静脈内、例えば静脈内注射および静脈内輸注であり得る。さらなる投与経路には、例えば、皮下、筋肉内、経口、鼻、および肺投与が挙げられる。キメラタンパク質およびハイブリッドタンパク質を、少なくとも1つの賦形剤を含む医薬組成物の一部として投与することができる。
【0081】
一部の実施形態では、組成物、例えばキメラタンパク質は、遺伝子治療を通してヒトに投与され、例えば凝固因子および/またはFc領域をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドはヒトに投与され、凝固因子および/またはFc領域はヒトにおいて発現する。
【0082】
本明細書で使用される場合の「処置する」、「処置」、または「処置すること」は、例えば、疾患または状態の重症度の低減;疾患の経過期間の低減;疾患また状態に関連する1つまたは複数の症状の緩和または消失;疾患または状態を必ずしも治癒する必要なく疾患または状態を有する対象への有益な効果の提供を指すが、血友病性関節症またはその症状の予防または防止を含まない。一部の実施形態では、用語「処置すること」、または「処置」は、対象の血友病関節健康スコア(HJHS)または改変HJHS(mHJHS)を改善することを意味する。一部の実施形態では、全HJHSまたはmHJHSが改善される。一部の実施形態では、1つまたは複数の標的関節の個々のスコアが改善される。一部の実施形態では、用語「処置すること」または「処置」は、対象の生活の質(QoL)を改善することを意味する。ある特定の実施形態では、QoLスコアは、スポーツおよびレジャーに関連する患者の傾向、身体の健康、血友病への取り組み、家族計画、将来に対する感覚(血友病に対する)、パートナーシップおよび性欲、処置、考え方(人に対する)、仕事および学業、またはその任意の組合せを分析する。他の実施形態では、用語「処置すること」または「処置」は、1つまたは複数の微小出血の作用および/または重症度を低減させることを意味する。別の実施形態では、用語「処置すること」または「処置」は、1つまたは複数の標的関節における腫れおよび/または炎症および/または疼痛を低減させることを意味する。別の実施形態では、用語「処置すること」、または「処置」は、1つまたは複数の標的関節における血管リモデリングを低減させることを意味する。
【0083】
本明細書で使用される場合の「防止する」または「防止すること」は、特定のアウトカムの発生または重症度を減少または低減させることを指す。一部の実施形態では、アウトカムの防止は、予防処置を通して得られる。
【0084】
本明細書で使用される場合の用語「比較可能な」は、例えば、キメラポリペプチドを使用することに起因する比較される速度またはレベルが、基準の速度またはレベルと等しい、実質的に等しい、または類似であることを意味する。本明細書で使用される場合の用語「類似」は、比較される速度またはレベルが、基準の速度またはレベルから10%以下または15%以下の差を有することを意味する(例えば、2つのFc部分とプロセシングされたFVIIIから本質的になるまたはからなるキメラポリペプチドであって、プロセシングされたFVIIIが2つのFc部分のうちの1つのFcに融合しているキメラタンパク質によるFXa生成速度)。用語「実質的に等しい」は、基準の速度またはレベルから0.01%、0.5%、または1%以下の差を有することを意味する。
【0085】
本明細書で使用される場合の止血障害は、フィブリンクロット形成能の障害または形成不全による自然発生または外傷の結果としての出血傾向を特徴とする遺伝性または後天性状態を意味する。そのような障害の例には、血友病が挙げられる。3つの主な型は、血友病A(第VIII因子欠乏)、血友病B(第IX因子欠乏、または「クリスマス病」)、および血友病C(第XI因子欠乏、軽度の出血傾向)である。他の止血障害には、例えば、フォンヴィレブランド病、第XI因子欠乏(PTA欠乏)、第XII因子欠乏、フィブリノゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子、または第XIII因子の欠乏または構造異常、GPIbの欠損または欠乏であるベルナールスーリエ症候群が挙げられる。VWFの受容体であるGPIbは、正常に機能しない場合があり、一次クロット形成(一次止血)の欠如および出血傾向の増加、ならびにグランツマン-ネーゲリ血小板無力症(グランツマン血小板無力症)が起こり得る。肝不全(急性および慢性型)では、肝臓による凝固因子の産生が不十分であり、このことが出血リスクを増加させ得る。
【0086】
本明細書で使用される場合の「血漿中濃度対時間曲線下面積(AUC)」は、薬理学の技術分野の用語と同じであり、投与後のFVIIIの吸収の速度および程度に基づく。AUCは、12、18、24、36、48、もしくは72時間などの明記された期間に対して、または曲線の勾配に基づく外挿を使用して無限大で決定される。本明細書において特
に明記していない限り、AUCは、無限大で決定される。AUCの決定は、単一の対象について実行することができ、または平均を計算するために対象の集団について実行することができる。
【0087】
用語「凝固促進活性」は、本発明の凝固因子、例えばFVIIIまたはFIXタンパク質が、本来の凝固因子、例えば本来のFVIIIまたはFIXの代わりに、血液中の凝固カスケードに関与する能力を意味する。例えば、本発明の組換えFIXタンパク質は、例えば色素形成アッセイにおいて試験した場合に、第VIII因子(FVIII)の存在下で第X因子(FX)を活性化第X因子(FXa)に変換させることができることから、凝固促進活性を有する。別の実施形態では、FIX活性は、テナーゼ複合体を生成する能力である。他の実施形態では、FIX活性は、トロンビン(またはクロット)の生成能である。
【0088】
免疫グロブリンまたは免疫グロブリン断片または領域のアミノ酸ナンバリングに対する参照は全て、その全体を参照によって本明細書に組み入れる、Kabatら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、U.S.Department of Public Health、Bethesda;MDに基づく。FcRn受容体は、ヒトを含むいくつかの動物種から単離されている。ヒトFcRn、ラットFcRn、およびマウスFcRn配列は公知である(その全体を参照によって本明細書に組み入れる、Storyら、J.Exp.Med.180:2377(1994))。Fcは、免疫グロブリンのヒンジ領域を伴ってまたは伴わずに、免疫グロブリンのCH2およびCH3ドメインを含み得る。例示的なFcバリアントは、その全体を参照によって本明細書に組み入れる、国際公開第2004/101740号および国際公開第2006/074199号に提供される。
【0089】
本明細書で使用される場合の「ハイブリッド」ポリペプチドおよびタンパク質は、キメラポリペプチドと第2のポリペプチドとの組合せを意味する。ハイブリッド中のキメラポリペプチドと第2のポリペプチドは、タンパク質-タンパク質相互作用、例えば電荷-電荷または疎水性相互作用を介して互いに会合することができる。ハイブリッド中のキメラポリペプチドと第2のポリペプチドは、ジスルフィド結合または他の共有結合を介して互いに会合することができる。ハイブリッドは、その各々の全体を参照によって本明細書に組み入れる、国際公開第2004/101740号および国際公開第2006/074199号に記載されている。同様に、その各々の全体を参照によって本明細書に組み入れる、米国特許第7,404,956号および第7,348,004号も参照されたい。第2のポリペプチドは、同じキメラポリペプチドの第2のコピーであり得るか、または非同一のキメラポリペプチドであり得る。
【0090】
本明細書で使用される場合、タンパク質配列における「に対応するアミノ酸」、「に対応する部位」、または「同等のアミノ酸」は、第1のタンパク質配列、例えばFVIIIまたはFIX配列と、第2のタンパク質配列、例えば第2のFVIII配列または第2のFIXとの間の同一性または類似性を最大限にするためのアライメントによって同定される。第2のタンパク質配列における同等のアミノ酸を同定するために使用される番号は、第1のタンパク質配列における対応するアミノ酸を同定するために使用される番号に基づく。
【0091】
本明細書で使用される場合の用語「挿入部位」は、異種部分を挿入することができる位置の直ちに上流であるポリペプチド(典型的に成熟ポリペプチド、例えば成熟FVIIIポリペプチドまたは成熟FIXポリペプチド)、またはその断片、バリアント、もしくは誘導体におけるアミノ酸残基の番号を指す。「挿入部位」は、番号として明記され、番号は、挿入位置の直ちにN-末端である挿入部位が対応する、アミノ酸が明記されたタンパ
ク質配列の番号である。例えば、語句「EGF2ドメインは、所定の配列のアミノ酸105に対応する挿入位置で異種部分を含む」とは、異種部分が配列のアミノ酸105とアミノ酸106に対応する2つのアミノ酸の間に位置することを示している。しかし、当業者は、表記のタンパク質の任意のバリアントにおける対応する位置を容易に同定することができ、本開示は、本開示に具体的に開示されたバリアントのみになされた挿入に限定されない。むしろ、本明細書に開示される挿入は、本明細書に開示されるバリアントの位置に対応する位置で活性を有する任意の関連するバリアントまたはその断片に行うことができる。
【0092】
本明細書に使用される場合の語句「アミノ酸の直ちに下流」は、アミノ酸の末端カルボキシル基の右隣の位置を指す。同様に、語句「アミノ酸の直ちに上流」は、アミノ酸の末端アミン基の右隣の位置を指す。したがって、本明細書で使用される場合の「挿入部位の2つのアミノ酸の間」という語句は、2つの隣接するアミノ酸の間に異種部分(例えば、半減期延長部分)が挿入されている位置を指す。
【0093】
本明細書で使用される場合、用語「挿入された」、「挿入される」、「~に挿入された」、またはその文法的に関連する用語は、明記されたタンパク質(例えば、FVIIIタンパク質またはFIXタンパク質)における類似の位置と比較した、融合ポリペプチドにおける異種部分(例えば、半減期延長部分)の位置を指す。当業者は、他のポリペプチド配列、例えば他のFVIIIバリアントおよびFIXバリアントに関して対応する挿入位置を同定する方法を理解するであろう。本明細書で使用される場合、用語は、本明細書に開示される組換えポリペプチドの特徴を指し、融合ポリペプチドが作製される任意の方法または過程を示す、暗示する、または推論するものではない。例えば、本明細書に提供される融合ポリペプチドを参照して、語句「異種部分を、FIXポリペプチドの残基105の直ちに下流でEGF2ドメインに挿入する」という語句は、融合ポリペプチドが、例えばFIXバリアントのアミノ酸105と106に対応するアミノ酸に接している、特定のFIXバリアントにおけるアミノ酸105に対応するアミノ酸の直ちに下流で異種部分を含むことを意味する。
【0094】
「融合体」または「キメラ」タンパク質は、自然界で天然に連結されていない第2のアミノ酸配列に連結された第1のアミノ酸配列を含む。異なるタンパク質に通常存在するアミノ酸配列を、融合ポリペプチドにおいて共に結合させることができ、または同じタンパク質に通常存在するアミノ酸配列を、融合ポリペプチド、例えば本発明のFVIIIドメインまたはFIXドメインとIg Fcドメインとの融合体において新しい配置に置くことができる。融合タンパク質は、例えば化学合成によって、またはペプチド領域が所望の関係でコードされるポリヌクレオチドを作成および翻訳することによって作成される。融合タンパク質は、共有性の非ペプチド結合または非共有結合によって第1のアミノ酸配列に会合した第2のアミノ酸配列をさらに含み得る。
【0095】
用語「異種」および「異種部分」は、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、または他の部分が、それが比較される実体の部分とは別個の実体に由来することを意味する。例として、異種ポリペプチドは、合成であり得るか、または異なる種、個体の異なる細胞タイプ、または別個の個体の同じもしくは異なるタイプの細胞に由来し得る。一態様では、異種部分は、融合ポリペプチドまたはタンパク質を産生するために、別のポリペプチドに融合したポリペプチドである。別の態様では、異種部分は、ポリペプチドまたはタンパク質にコンジュゲートしたPEGなどの非ポリペプチドである。
【0096】
本明細書に使用される場合の用語「連結した」および「融合した」は、第2のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列にそれぞれ、共有結合または非共有結合した第1のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を指す。第1のアミノ酸またはヌクレオチド配列を、第2の
アミノ酸またはヌクレオチド配列に直接結合させるか、または並置することができ、あるいは介在配列によって、第1の配列と第2の配列とを共有結合させることができる。用語「連結された」は、C末端またはN末端での第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列の融合体のみならず、第2のアミノ酸配列(または第1のアミノ酸配列、それぞれ)における任意の2つのアミノ酸への第1のアミノ酸配列(または第2のアミノ酸配列)全体の挿入を含む。一実施形態では、第1のアミノ酸配列は、ペプチド結合またはリンカーによって第2のアミノ酸配列に連結される。第1のヌクレオチド配列は、ホスホジエステル結合またはリンカーによって第2のヌクレオチド配列に連結することができる。リンカーは、ペプチドもしくはポリペプチド(例えば、ポリペプチド鎖の場合)、またはヌクレオチドもしくはヌクレオチド鎖(ヌクレオチド鎖の場合)、または任意の化学部分(ポリペプチドとポリヌクレオチド鎖の両方の場合)であり得る。用語「連結された」はまた、ハイフン(-)によって示される。
【0097】
本明細書で使用される場合、用語「会合する」は、第1のアミノ酸鎖と第2のアミノ酸鎖との間で形成された共有結合または非共有結合を指す。一実施形態では、用語「会合する」は、共有性の非ペプチド結合または非共有結合を意味する。この会合は、コロン、すなわち(:)によって示すことができる。別の実施形態では、これはペプチド結合を除く共有結合を意味する。例えば、アミノ酸システインは、第2のシステイン残基上のチオール基とジスルフィド結合または架橋を形成することができるチオール基を含む。ほとんどの天然に存在するIgG分子では、CH1およびCL領域は、ジスルフィド結合によって会合し、2つの重鎖は、Kabatナンバリングシステムを使用して239および242に対応する位置(EUナンバリングシステム226または229位、)で2つのジスルフィド結合によって会合している。共有結合の例には、ペプチド結合、金属結合、水素結合、ジスルフィド結合、シグマ結合、パイ結合、デルタ結合、グリコシド結合、アゴニスト結合、曲がった結合、配位結合、π逆供与、二重結合、三重結合、四重結合、五重結合、六重結合、コンジュゲーション、ハイパーコンジュゲーション、芳香族性、ハプト数、または反結合が挙げられるがこれらに限定されない。非共有結合の非制限的な例には、イオン結合(例えば、カチオンπ結合または塩結合)、金属結合、水素結合(例えば、二水素結合、二水素複合体、低障壁水素結合、または対称性水素結合)、ファンデルワールス力、ロンドン分散力、機械的結合、ハロゲン結合、金親和性、インターカレーション、スタッキング、エントロピー力、または化学極性が挙げられる。
【0098】
本明細書で使用される場合、用語「切断部位」または「酵素切断部位」は、酵素によって認識される部位を指す。ある特定の酵素切断部位は、細胞内プロセシング部位を含む。一実施形態では、ポリペプチドは、そのような部位の切断が、クロット形成部位で起こるように、凝固カスケードの際に活性化される酵素によって切断される酵素切断部位を有する。例示的なそのような部位には、例えばトロンビン、第XIa因子、または第Xa因子によって認識される部位が挙げられる。他の酵素切断部位は、当技術分野で公知である。
【0099】
本明細書で使用される場合、用語「プロセシング部位」または「細胞内プロセシング部位」は、ポリペプチドの翻訳後に機能する酵素の標的であるポリペプチドにおける酵素切断部位の一種を指す。一実施形態では、そのような酵素は、ゴルジ体のルーメン側からトランスゴルジ区画に輸送される際に機能する。細胞内プロセシング酵素は、細胞からタンパク質が分泌される前にポリペプチドを切断する。そのようなプロセシング部位の例には、例えば、PACE/フューリン(PACEは、Paired basic Amino
acid Cleaving Enzymeの頭字語である)ファミリーエンドペプチダーゼによって標的とされる部位が挙げられる。これらの酵素は、ゴルジ膜に局在し、配列モチーフArg-[任意の残基]-(LysまたはArg)-Argのカルボキシ末端側でタンパク質を切断する。本明細書で使用される場合、「フューリン」ファミリー酵素には、例えばPCSK1(PC1/PC3としても知られる)、PCSK2(PC2とし
ても知られる)、PCSK3(フューリンまたはPACEとしても知られる)、PCSK4(PC4としても知られる)、PCSK5(PC5またはPC6としても知られる)、PCSK6(PACE4としても知られる)、またはPCSK7(PC7/LPC、PC8、またはSPC7としても知られる)が挙げられる。他のプロセシング部位は当技術分野で公知である。
【0100】
1つより多くのプロセシングまたは切断部位を含む構築物では、そのような部位は同じまたは異なり得ると理解される。
【0101】
本明細書で使用される「プロセシング可能なリンカー」は、本明細書において他所で記載される少なくとも1つの細胞内プロセシング部位を含むリンカーを指す。
【0102】
本明細書で使用される場合の「ベースライン」は、用量を投与前の対象において所定の検体、例えば凝固因子(例えば、FVIIIまたはFIX)について測定された最低の血漿中レベルである。血漿中レベルは、投与前の2回の時点:スクリーニング診察時、および投与直前で測定することができる。あるいは、(a)その処置前の凝固因子活性が<1%であり、検出可能な凝固因子抗原を有しないがナンセンス遺伝子型を有する対象のベースラインを、0%として定義することができ、(b)処置前の凝固因子活性が<1%であり、検出可能な凝固因子抗原を有する対象のベースラインを、0.5%に設定することができ、(c)その処置前の凝固因子活性が1~2%である対象のベースラインは、Cminであり(PK試験を通しての最低の活性)、および(d)その処置前の凝固因子活性が≧2%である対象のベースラインを、2%に設定することができる。
【0103】
本明細書で使用される場合の「同等量」は、当該ポリペプチドの分子量とは無関係な国際単位で表記される凝固因子活性、例えばFVIII活性またはFIX活性の同じ用量を意味する。例えば、FVIII活性の1国際単位(IU)は、通常のヒト血漿1ミリリットル中のFVIIIの量にほぼ対応する。欧州薬局方色素生成基質アッセイおよび凝固1段法を含む、凝固因子活性を測定するためのいくつかのアッセイが利用可能である。
【0104】
本明細書で使用する場合の「投与間隔」は、対象に投与される複数の用量間で経過する投与の時間を意味する。投与間隔の比較は、単一の対象または対象集団で行うことができ、集団で得られた平均値を計算することができる。
【0105】
本明細書で使用する場合の「対象」は、ヒト個体を意味する。対象は、出血性障害に現在罹患しているか、またはそのような処置を必要とすると予想される患者であり得る。一部の実施形態では、対象は、凝固因子によって過去に処置されていない(すなわち、対象は、過去に無処置の対象であるか、または過去に無処置の患者である)。一部の実施形態では、対象は胎児であり、方法は、組成物、例えばキメラポリペプチドを胎児の母親に投与する工程を含み、対象への投与は、母体から胎盤を通して起こる。一部の実施形態では、対象は小児または成人である。一部の実施形態では、対象は、1歳未満、2歳未満、3歳未満、4歳未満、5歳未満、6歳未満、7歳未満、8歳未満、9歳未満、10歳未満、11歳未満、または12歳未満の小児である。一部の実施形態では、小児は1歳未満である。ある特定の実施形態では、対象は6歳未満である。他の実施形態では、対象は6歳から12歳未満の間である。他の実施形態では、対象は12歳またはそれ以上である。一部の実施形態では、小児または成人は、出血性障害を発症しており、出血性障害の症状の開始は、1歳以降に起こる。一部の実施形態では、組成物、例えばキメラポリペプチドの対象への投与は、凝固因子に対する液性免疫応答、細胞性免疫応答、または液性免疫応答と細胞性免疫応答の両方から選択される免疫応答の発生を予防、阻害、または低減させるために十分である。
【0106】
本明細書で(互換的に)使用される場合の、「治療用量」、「用量」、「有効量」、または「投与量」は、本明細書に記載される治療目標を達成する用量を意味する。一部の実施形態では、「治療用量」は、処置前のHJHS、mHJHS、またはQoLスコアと比較してHJHS、mHJHS、またはQoLスコアを改善させる用量を意味する。一部の実施形態では、「治療用量」は、処置前の関節における腫れ、炎症、および/または疼痛のレベルと比較して対象の1つまたは複数の関節における腫れ、炎症、および/または疼痛を低減させる用量を意味する。一部の実施形態では、「治療用量」は、処置前の微小出血の作用および/または重症度と比較して、1つまたは複数の微小出血の作用および/または重症度を低減させる用量を意味する。別の実施形態では、「治療用量」は、処置前の血管リモデリングと比較して1つまたは複数の標的関節における血管リモデリングを低減させる用量を意味する。
【0107】
同様に、ポリペプチドの断片またはバリアント、およびその任意の組合せも本発明に含まれる。本開示の方法に使用されるポリペプチドについて言及する場合の用語「断片」または「バリアント」は、基準ポリペプチドの少なくとも一部の特性(例えば、FcバリアントまたはFVIIIもしくはFIXバリアントの凝固活性)を保持する任意のポリペプチドを含む。ポリペプチドの断片は、本明細書において他所で考察する特異的抗体断片に加えて、タンパク質分解断片、ならびに欠失断片を含むが、天然に存在する完全長のポリペプチド(または成熟ポリペプチド)を含まない。本開示の方法で使用されるポリペプチド結合ドメインまたは結合分子のバリアントは、上記の断片を含み、同様にアミノ酸の置換、欠失、または挿入により変化したアミノ酸配列を有するポリペプチドも含む。バリアントは、天然に存在する、または天然に存在しないバリアントであり得る。天然に存在しないバリアントを、当技術分野で公知の変異誘発技術を使用して産生することができる。バリアントポリペプチドは、保存的または非保存的アミノ酸置換、欠失、または付加を含み得る。本明細書に開示される1つの特定のFIXバリアントは、R338L FIX(Padua)バリアントである。例えば、その全体を参照によって本明細書に組み入れる、Simioni,P.ら、「X-Linked Thrombophilia with a Mutant Factor IX(Factor IX Padua)」、NEJM 361:1671~75頁(2009年10月)を参照されたい。
【0108】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基に交換されている置換である。塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当技術分野で定義されている。このように、ポリペプチド中のアミノ酸が同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸に交換されている場合、置換は保存的であると考えられる。別の実施形態では、一連のアミノ酸を、側鎖ファミリーメンバーの順序および/または組成が異なる構造的に類似の一連のアミノ酸に保存的に交換することができる。
【0109】
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列間の用語「パーセント配列同一性」は、2つの配列の最適なアライメントのために導入しなければならない付加または欠失(すなわち、ギャップ)を考慮に入れて、比較ウィンドウにわたって配列が共有する同一のマッチした位置の数を指す。マッチした位置は、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸が標的および基準配列の両方に存在する任意の位置である。標的配列に存在するギャップは、ギャップがヌクレオチドまたはアミノ酸ではないことから計数されない。同様に、基準配列に存在するギャップは、標的配列のヌクレオチドもしくはアミノ酸が計数されない、また
は基準配列のヌクレオチドもしくはアミノ酸ではないことから、計数されない。
【0110】
配列同一性のパーセンテージは、同一のアミノ酸残基または核酸塩基が両方の配列に存在する位置の数を決定して、マッチした位置の数を得る工程、マッチした位置の数を、比較ウィンドウにおける位置の総数で除算する工程、および結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを得る工程によって計算される。2つの配列間の配列の比較およびパーセント配列同一性の決定は、オンライン使用およびダウンロードの両方で容易に入手可能なソフトウェアを使用して行ってもよい。タンパク質およびヌクレオチド配列のアライメントのための適したソフトウェアプログラムは、様々な起源から入手可能である。パーセント配列同一性を決定するための1つの適したプログラムは、米国政府の国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology
Information、BLAST)のウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なBLASTプログラムスイートの一部であるbl2seqである。Bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムのいずれかを使用して2つの配列間の比較を実行する。BLASTNは、核酸配列を比較するために使用され、BLASTPは、アミノ酸配列を比較するために使用される。他の適したプログラムは、例えば、Needle、Stretcher、Water、またはMatcherであり、これらはバイオインフォマティクスプログラムのEMBOSSスイートの一部であり、同様に欧州バイオインフォマティクス研究所(EBI)のwww.ebi.ac.uk/Tools/psaから入手可能である。
【0111】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチド基準配列と整列する単一のポリヌクレオチドまたはポリペプチド標的配列内の異なる領域は、各々が、自身のパーセント配列同一性を有し得る。パーセント配列同一性の値は、最も近い十の位の値に四捨五入されることに注意されたい。例えば、80.11、80.12、80.13、および80.14は、80.1に切り捨てられるが、80.15、80.16、80.17、80.18、および80.19は、80.2に切り上げられる。同様に長さの値は常に整数であることにも注意されたい。
【0112】
当業者は、パーセント配列同一性の計算のための配列アライメントの生成が、一次配列データのみによって促進されるバイナリ配列-配列比較に限定されないことを認識する。配列アライメントは、複数の配列アライメントから誘導することができる。複数の配列アライメントを生成するための1つの適したプログラムは、www.clustal.orgから入手可能なClustalW2である。別の適したプログラムは、www.drive5.com/muscle/から入手可能なMUSCLEである。ClustalW2およびMUSCLEは、あるいは、例えばEBIからも入手可能である。
【0113】
配列アライメントは、配列データを、構造データ(例えば、結晶学的タンパク質構造)、機能データ(例えば、変異の位置)、または系統発生学データなどの異成分からなる起源からのデータと統合することによって生成することができることも認識されたい。異成分からなるデータを統合して複数の配列アライメントを生成する適したプログラムは、www.tcoffee.org、あるいはEBIからも入手可能なT-Coffeeである。同様に、パーセント配列同一性を計算するために使用される最終的なアライメントを、自動または手動のいずれかで精選してもよいと認識されたい。
【0114】
ポリヌクレオチドバリアントは、コード領域、非コード領域、またはその両方で変化を含み得る。一実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、サイレント置換、付加、または欠失を産生するが、コードされるポリペプチドの特性または活性を変化させない変化を含む。別の実施形態では、ヌクレオチドバリアントは、遺伝子コードの縮重によるサイレント置換によって産生される。他の実施形態では、バリアントは、5~10、1~5、
または1~2個のアミノ酸が、任意の組合せで置換、欠失、または付加されている。ポリヌクレオチドバリアントは、多様な理由から、例えば特定の宿主に関してコドン発現を最適化する(ヒトmRNAにおけるコドンを、他の宿主、例えば大腸菌(E.coli)などの細菌宿主のコドンに変化させる)ために産生することができる。
【0115】
天然に存在するバリアントは、「アレルバリアント」と呼ばれ、生物の染色体上の所定の座を占有する遺伝子のいくつかの代替型の1つを指す(Genes II、Lewin,B.編、John Wiley & Sons、New York(1985))。これらのアレルバリアントは、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドレベルで変化することができ、本開示に含まれる。あるいは、天然に存在しないバリアントを、変異誘発技術または直接合成によって産生することができる。
【0116】
タンパク質操作および組換えDNA技術に関する公知の方法を使用して、ポリペプチドの特徴を改善または変化させるためにバリアントを生成することができる。例として、生物機能を実質的に失うことなく、分泌されたタンパク質のN末端またはC末端から1つまたは複数のアミノ酸を欠失させることができる。その全体を参照によって本明細書に組み入れる、Ronら、J.Biol.Chem.268:2984~2988頁(1993年)は、3、8、または27個のアミノ末端アミノ酸残基を欠失させた後でもヘパリン結合活性を有するバリアントKGFタンパク質を報告した。同様に、インターフェロンガンマは、このタンパク質のカルボキシ末端から8~10個のアミノ酸残基を欠失させた後でも最大10倍高い活性を示した(その全体を参照によって本明細書に組み入れる、Dobeliら、J.Biotechnology 7:199~216頁(1988年))。
【0117】
その上、バリアントがしばしば、天然に存在するタンパク質と類似の生物活性を保持することは、十分な証拠により証明されている。例えば、Gayleとその共同研究者(その全体を参照によって本明細書に組み入れる、J.Biol.Chem 268:22105~22111頁(1993年))は、ヒトサイトカインIL-1aの広範な変異解析を実施した。彼らは、ランダム変異誘発を使用して、分子の全長にわたってバリアントあたり平均で2.5個のアミノ酸変化を有する3,500個を超える個々のIL-1a変異体を生成した。複数の変異を起こり得るあらゆるアミノ酸位置で調べた。研究者らは、「[結合または生物活性]のいずれにもほとんど影響を及ぼすことなく、分子のほとんどを変化させることができる」ことを見出した。(要約書を参照されたい)。実際に、野生型と活性が有意に異なるタンパク質を産生したのは、調べた3,500個を超えるヌクレオチド配列のうちわずか23個のユニークアミノ酸配列に過ぎなかった。
【0118】
上記のように、ポリペプチドバリアントは、例えば改変ポリペプチドを含む。改変には、例えばアセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化(その全体を参照によって本明細書に組み入れる、Meiら、Blood 116:270~79頁(2010年))、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化などのアミノ酸のタンパク質への転移-RNA媒介付加、およびユビキチン化が挙げられる。一部の実施形態では、FVIIIは、任意の簡便な位置で改変され、例えばペグ化される。一部の実施形態では、FVIIIは、FVIIIの表面露出アミノ酸、例えば操作されたシステインであり得る表面露出システインでペグ化される。同上。一部の実施形態では、改変FVIII、例えばペグ化FVIIIは、キメラまたは融合FVIIIである。
【0119】
用語「下流」は、基準ヌクレオチド配列の3’に位置するヌクレオチド配列を指す。「下流」はまた、基準ペプチド配列のC末端に位置するペプチド配列も指し得る。
【0120】
用語「上流」は、基準ヌクレオチド配列の5’に位置するヌクレオチド配列を指す。「上流」はまた、基準ペプチド配列のN末端に位置するペプチド配列も指し得る。
【0121】
本明細書で使用される場合、用語「調節領域」は、コード領域の上流(5’非コード配列)、領域内、または下流(3’非コード配列)に位置し、会合するコード領域の転写、RNAプロセシング、安定性、または翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。調節領域には、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステムループ構造が挙げられ得る。コード領域が、真核細胞での発現を意図する場合、ポリアデニル化シグナルおよび転写終止配列は通常、コード配列の3’に位置する。
【0122】
遺伝子産物、例えばポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、1つまたは複数のコード領域に作動可能に会合したプロモーターおよび/または他の転写もしくは翻訳制御エレメントを含み得る。プロモーター以外の他の転写制御エレメント、例えばエンハンサー、オペレーター、リプレッサー、および転写終止シグナルもまた、コード領域に作動可能に会合して、遺伝子産物の発現を指示することができる。
【0123】
多様な転写制御領域が当業者に公知である。これらには、サイトメガロウイルス(イントロンAと共に前初期プロモーター)、シミアンウイルス40(初期プロモーター)、およびレトロウイルス(例えば、ラウス肉腫ウイルス)のプロモーターおよびエンハンサーセグメントなどの、しかしこれらに限定されない脊椎動物細胞において機能する転写制御領域が挙げられるがこれらに限定されない。他の転写制御領域には、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモンおよびウサギβ-グロビンなどの脊椎動物遺伝子に由来する領域、ならびに真核細胞において遺伝子発現を制御することができる他の配列が挙げられる。さらに適した転写制御領域には、組織特異的プロモーターおよびエンハンサー、ならびにリンフォカイン誘導可能プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンによって誘導可能なプロモーター)が挙げられる。
【0124】
同様に、多様な翻訳制御エレメントが当業者に公知である。これらには、リボソーム結合部位、翻訳開始および終止コドン、ならびにピコルナウイルス由来のエレメント(特に、配列内リボソーム進入部位またはIRES、同様にCITE配列とも呼ばれる)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0125】
本明細書で使用される場合の用語「発現」は、それによってポリヌクレオチドが遺伝子産物、例えばRNAまたはポリペプチドを産生する過程を指す。
【0126】
「ベクター」は、核酸を宿主細胞にクローニングおよび/または移入するための任意の媒体を指す。ベクターは、結合したセグメントの複製をもたらすために別の核酸セグメントを結合させてもよいレプリコンであり得る。「レプリコン」は、in vivoで自律複製単位として機能する、すなわち、自身の制御下で複製することができる任意の遺伝子エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)を指す。用語「ベクター」は、核酸をin vitro、ex vivo、またはin vivoで細胞に導入するためのウイルスおよび非ウイルス媒体の両方を含む。例えばプラスミド、改変真核生物ウイルス、または改変細菌ウイルスを含む、多数のベクターが公知であり、当技術分野で使用される。ポリヌクレオチドの適したベクターへの挿入は、相補的付着末端を有する適切なポリヌクレオチド断片を選択したベクターにライゲートすることによっ
て行うことができる。
【0127】
用語「プラスミド」は、細胞の中心代謝の一部ではなく、通常、環状二本鎖DNA分子の形態である遺伝子をしばしば有する染色体外エレメントを指す。そのようなエレメントは、複数のヌクレオチド配列が、選択された遺伝子産物に関するプロモーター断片およびDNA配列を、適切な3’非翻訳配列と共に細胞に導入することができる独自の構成に結合または組換えされている、任意の起源に由来する、自律複製配列、ゲノム組込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列、直線、環状、もしくはスーパーコイルの一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAであり得る。
【0128】
使用することができる真核生物ウイルスベクターには、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、およびポックスウイルス、例えばワクシニアウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、またはヘルペスウイルスベクターが挙げられるがこれらに限定されない。非ウイルスベクターには、プラスミド、リポソーム、帯電した脂質(サイトフェクチン)、DNA-タンパク質複合体、およびバイオポリマーが挙げられる。
【0129】
「クローニングベクター」は、結合したセグメントの複製をもたらすために別の核酸セグメントを結合させてもよい、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどの、連続的に複製し、複製開始点を含む単位長さの核酸である「レプリコン」を指す。ある特定のクローニングベクターは、1つの細胞タイプ、例えば細菌において複製することができ、別の細胞、例えば真核細胞において発現することができる。クローニングベクターは典型的に、ベクターおよび/または目的の核酸配列を挿入するための1つもしくは複数のマルチクローニングサイトを含む細胞を選択するために使用することができる1つまたは複数の配列を含む。
【0130】
用語「発現ベクター」は、宿主細胞への挿入後に、挿入された核酸配列を発現させることができるように設計された媒体を指す。挿入された核酸配列は、上記の調節領域に作動可能に会合して配置される。
【0131】
ベクターは、当技術分野で周知の方法、例えばトランスフェクション、電気穿孔、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子銃の使用、またはDNAベクター輸送体によって宿主細胞に導入される。
【0132】
「単離された」ポリペプチド、またはその断片、バリアント、もしくは誘導体は、その天然の環境に存在していないポリペプチドを指す。特定の精製レベルは必要ではない。例えば、単離されたポリペプチドは、単純にその本来のまたは天然の環境から除去することができる。宿主細胞において発現された組換えによって産生されたポリペプチドおよびタンパク質は、任意の適した技術によって分離、分画、または部分的もしくは実質的に精製されている本来のまたは組換えポリペプチドと同様に、本発明の目的に関して単離されたと考えられる。
【0133】
本明細書で使用される場合、用語「宿主細胞」は、組換え核酸を有する、または有することができる細胞または細胞集団を指す。宿主細胞は、原核細胞(例えば、大腸菌(E.coli))であり得るか、あるいは宿主細胞は真核細胞、例えば真菌細胞(例えば、サッカロミセスセレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピチアパストリス(Pichia pastori)、またはシゾサッカロミセスポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などの酵母細胞)、および様々な動物細胞、例えば昆虫細胞(例えば、Sf-9)、または哺乳動物細胞(例えば、HEK
293F、CHO、COS-7、NIH-3T3)であり得る。
【0134】
本明細書で使用される場合の「定常状態での分布容積(Vss)」は、薬理学で使用される用語と同じ意味を有し、薬物が分布する見かけの空間(容積)である。Vss=定常状態での血漿中濃度によって除算した体における薬物量。
【0135】
II.本発明の方法
本開示は、Fc領域に融合させた凝固因子を使用して血友病性関節症を逆転させることができるという発見に基づいている。血友病性関節症は、軟部組織の変化を可視化できるのがMRIのみであったことから、一度発症すると非可逆的であることがこれまで知られていた。血友病性関節症を有する個体に関して現在公知の選択肢は、肥大した滑膜を除去するための手術または硬化剤を含む。放射活性材料または化学材料のいずれかである硬化剤は、軟骨および骨のさらなる悪化を妨害することができる;しかし、これは血友病性関節症を逆転させることはできない。膝および股関節の関節症では、滑膜の肥大を制御する他の試みが失敗する中で、疼痛および可動性の損失の低減に成功している。Hilgartner M.、Current Opinion in Pediatrics:2002年2月、V14、1号、46~49頁。
【0136】
したがって本開示は、血友病を有するヒトにおける関節の血友病性関節症を処置する方法であって、凝固因子とFc領域とを含む組成物、例えばキメラタンパク質、またはキメラタンパク質をコードするポリヌクレオチドの有効量をヒトに投与することを含む方法を提供する。血友病性関節症の処置は、血友病性関節症(例えば、血友病性関節症の1つまたは複数の症状)を部分的または完全に逆転させることができる。したがって、一実施形態では、本開示は、血友病性関節症、例えば滑膜炎を既に発症している、血友病を有するヒトを処置する方法を提供する。
【0137】
一般的に、血友病性関節症は、対象の関節への繰り返しの出血の長期間の結末として、血友病に罹患しているヒト対象に起こる関節疾患を指す。1つまたは複数の関節への特発性出血は、血友病患者では一般的である。6カ月以内にいくつかの連続する出血を有する関節はしばしば「標的関節」と呼ばれ、これらの関節は、しばしば血友病性関節症へと進行する。
【0138】
血友病性関節症は、滑膜肥大、慢性炎症(滑膜炎を含む)、線維症、血鉄症、関節下嚢胞形成、疼痛、可動域の低減、筋萎縮、関節強直、骨粗鬆、関節裂隙の圧潰を伴う軟骨変性、およびその任意の組合せを含むがこれらに限定されない様々な症状を呈し得る。血友病性関節症は、様々なステージを含む:(i)軟部組織の腫れを含むが骨格異常を含まないステージI;(ii)骨端の過増殖および骨粗鬆を含むが、関節の完全性が維持されているステージII。骨嚢胞は存在せず、関節軟骨裂隙の狭窄も存在しない。X線によるステージIIは、亜急性血友病性関節症の臨床ステージと類似である;(iii)軟骨下嚢胞を伴う最小から中等度の関節裂隙狭窄を含むステージIII。膝の顆間切痕および尺骨の滑車切痕の拡大。膝では、膝蓋骨の辺縁の先鋭化が存在してもよい。関節軟骨はなおも保存され、血友病性関節症はなお可逆的である;(iv)関節裂隙の重度の狭窄を伴う関節軟骨の破壊を含むステージIV。ステージIIIにおいて見出される他の骨変化がより顕著である;ならびに(v)関節の線維性強直炎を伴う関節裂隙の完全な喪失を含むステージV。骨端の重度の不規則な肥大を伴う関節構造の顕著な不適合が存在する。
【0139】
本開示は、凝固因子とFc領域とを含む組成物、例えばキメラタンパク質による処置が、可逆性の血友病性関節症の症状を低減するおよび/または緩和することができることを提供する。一部の実施形態では、組成物、例えばキメラタンパク質は、血友病性関節症の1つまたは複数のステージ、例えばステージI、II、および/またはIIIを処置する
ことができる。本明細書で使用される場合の「可逆性の」血友病性関節症は、処置後にその元の健康な状態へと部分的または完全に逆転することができる血友病性関節症の発現である。これに対し、「非可逆性の」血友病性関節症は、永続的で処置後に改善しない血友病性関節症の発現である。したがって、本発明の方法は、血友病性関節症の1つまたは複数の症状、例えば滑膜過形成、慢性炎症(滑膜炎を含む)、血鉄症、関節下嚢胞形成、疼痛、可動域の低減、腫れ、血管リモデリング、またはその任意の組合せを改善、低減、または緩和する(または部分的もしくは完全に逆転させる)ことができる。
【0140】
本開示の方法を使用して処置される血友病性関節症(可逆性)は、体の任意の関節に影響を及ぼし得る。一部の実施形態では、関節は荷重負荷関節、例えば1つまたは両方の膝、1つまたは両方の足首、1つまたは両方の股関節、1つまたは複数の足の関節、およびその任意の組合せからなる群から選択される関節である。別の実施形態では、関節は、非荷重負荷関節、例えば、1つもしくは両方の肘、1つもしくは両方の肩、1つもしくは両方の手首、1つもしくは複数の手の関節、またはその任意の組合せからなる群から選択される関節である。別の実施形態では、関節は膝である。
【0141】
一部の実施形態では、可逆性の血友病性関節症は、滑膜炎を含む。滑膜炎は、関節周囲の滑膜の炎症を指す。一部の実施形態では、滑膜炎は体の任意の関節の滑膜炎である。一部の実施形態では、滑膜炎は、関節の腫れとして出現し、本開示の方法は関節の腫れを低減させる。一部の実施形態では、滑膜炎は関節の疼痛として出現し、本開示の方法は関節の疼痛を低減させる。他の実施形態では、滑膜炎は関節の可動域の減少として出現し、本発明の方法は関節の可動域を増大させる。
【0142】
他の実施形態では、可逆性の血友病性関節症は、関節の微小出血を含む。一部の実施形態では、可逆性の血友病性関節症は、微小出血の結果である。微小出血は、1つまたは複数の関節における非常に少量の出血を指し、これが繰り返し発生すると、血友病性関節症をもたらし得る。一部の実施形態では、可逆性の血友病性関節症は、急性の関節出血を含む。一部の実施形態では、可逆性の血友病性関節症は、急性の関節出血の結果である。急性の関節出血は、1つまたは複数の関節におけるより実質的な出血エピソードを指す。
【0143】
ある特定の実施形態では、可逆性の血友病性関節症は、1つまたは複数の関節の炎症を含む。一部の実施形態では、炎症は、体の任意の関節に存在する。一部の実施形態では、炎症は関節の腫れとして出現し、本開示の方法は関節の腫れを低減させる。一部の実施形態では、炎症は関節の疼痛として出現し、本開示の方法は関節の疼痛を低減させる。他の実施形態では、炎症は関節の可動域の減少として出現し、本発明の方法は関節の可動域を増大させる。ある特定の実施形態では、方法は、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の有効量の投与前に1つまたは複数の関節の炎症を測定することをさらに提供する。一部の実施形態では、方法は、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の有効量の投与後に1つまたは複数の関節の炎症を測定することをさらに含む。
【0144】
他の実施形態では、血友病性関節症は、関節の炎症および/または関節の損傷に関連する1つまたは複数のバイオマーカーの発現によって証明される。一部の実施形態では、関節の炎症および/または関節の損傷の増大を示す1つまたは複数のバイオマーカーがヒトにおいてアップレギュレートされている。一部の実施形態では、関節の炎症および/または関節の損傷の増大を示す1つまたは複数のバイオマーカーがヒトにおいてダウンレギュレートされている。一部の実施形態では、処置を必要とするヒトは、本開示の方法を使用する処置に対する反応性の増大に関連する1つまたは複数のバイオマーカーの発現に基づいて特定される。
【0145】
一部の実施形態では、本発明の方法は、1つまたは複数の標的関節への凝固因子の局在化を増加させる。ある特定の実施形態では、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質は、投与後に、凝固因子単独より多く標的関節に局在化する。ある特定の実施形態では、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質は、投与後に凝固因子単独より長期間、1つまたは複数の標的関節に局在化し続ける。
【0146】
なお他の実施形態では、本発明の方法は、可逆性の血友病性関節症の1つまたは複数のマーカーを示す対象を特定することと、次いで凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を投与することとをさらに含む。
【0147】
一部の実施形態では、本発明の方法は、血友病を有するヒトの関節における血管リモデリングの発生を防止するかまたは低減させる。血友病性関節症に関連する一般的な要素は、関節、特に標的関節周囲の血管系のリモデリングである。血管リモデリングは、血管新生の増加および関節への微小出血の発生の増加によって特徴付けることができる。一部の実施形態では、本開示は、血友病を有するヒトの関節における血管リモデリングの発生の予防処置または低減の方法であって、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の有効量をヒトに投与することを含む方法を提供する。他の実施形態では、本開示は、血友病を有するヒトの関節における血友病性関節症に関連する既存の血管リモデリングを逆転させる方法であって、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の有効量をヒトに投与することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、血管リモデリングは体の任意の関節に存在する。ある特定の実施形態では、血管リモデリングは標的関節に存在する。他の実施形態では、血管リモデリングは標的関節以外の関節に存在する。他の実施形態では、血管リモデリングは、荷重負荷関節、例えば1つまたは両方の膝、1つまたは両方の足首、1つまたは両方の股関節、1つまたは複数の足の関節、およびその任意の組合せからなる群から選択される関節に存在する。別の実施形態では、血管リモデリングは、非荷重負荷関節、例えば、1つもしくは両方の肘、1つもしくは両方の肩、1つもしくは両方の手首、1つもしくは複数の手の関節、またはその任意の組合せからなる群から選択される関節に存在する。別の実施形態では、血管リモデリングは膝に存在する。一部の実施形態では、血管リモデリングは筋肉に存在する。一部の実施形態では、血管リモデリングは脾臓および/または肝臓に存在する。
【0148】
ある特定の実施形態では、本発明の方法は、血友病を有するヒトの関節周囲の軟部組織を改善する。血友病性関節症の別の一般的な病態は、関節の軟部組織の過増殖である。一部の実施形態では、本開示の方法によって改善される軟部組織は、体の任意の関節に存在する。ある特定の実施形態では、本開示の方法によって改善される軟部組織は、標的関節に存在する。他の実施形態では、本開示の方法によって改善される軟部組織は、標的関節以外の関節に存在する。
【0149】
一部の実施形態では、本発明の方法は、関節の軟部組織の過増殖に関連する1つまたは複数の症状の重症度を低減させる。一部の実施形態では、関節の軟部組織の過増殖は、関節の腫れとして出現し、本開示の方法は関節の腫れを低減させる。一部の実施形態では、関節の軟部組織の過増殖は関節の疼痛として出現し、本開示の方法は関節の疼痛を低減させる。他の実施形態では、関節の軟部組織の過増殖は、関節の可動域の減少として出現し、本発明の方法は関節の可動域を増大させる。
【0150】
本明細書に開示される方法は、1つまたは複数の関節の血友病性関節症のさらなる発生を防止するために、処置されていて血友病性関節症の減少を示している対象について実践することができる。一部の実施形態では、本開示の方法は、1つまたは複数の関節の既存の血友病性関節症を処置するために、および同じまたは異なる関節におけるさらなる血友病性関節症の発生を防止するために対象に適用される。
【0151】
一部の実施形態では、本開示の方法は、血漿区画外ならびに血漿区画内の組織への凝固因子の分布を可能にする。
【0152】
本開示の方法は、血友病を有するヒトにおける1つまたは複数の関節の関節健康を改善する。関節の健康は、当技術分野で公知の任意の測定方法を使用して測定することができる。一部の実施形態では、関節の健康は、血友病関節健康スコア(HJHS)システム(Feldmanら、「Hemophilia Joint Health Score(HJHS)2.1」を参照されたい、http://www.wfh.org/en/page.aspx?pid=885で入手可能(最終アクセス2016年11月18日、その全体を参照によって本明細書に組み入れる)を使用して測定する。HJHSは、血友病における出血によって最も一般的に影響を受ける関節:膝、足首、および肘の、体構造領域および機能(すなわち、障害)に関する関節健康を測定する。これは、軽度の関節障害(例えば、予防的に処置される)を有する年齢4~18歳の血友病を有する小児のために主として設計されたが、任意の集団に応用することができる。一部の実施形態では、HJHSは、血友病を有するヒトの左右の肘、左右の膝、および左右の足首の各々に関する腫れ、(腫れの)持続期間、筋萎縮、関節摩擦音、屈曲の損失、伸展の損失、関節痛、ならびに筋力を測定する。一部の実施形態では、各パラメータを、数値スコアに割付する。特定の一実施形態では、標準的なHJHS、バージョン2.1を使用して関節の健康を測定する。一部の実施形態では、腫れを0から3で採点し、0は腫れなしであり、3は重度の腫れである。一部の実施形態では、腫れの持続期間を0から1で採点し、0は腫れなしであるかまたは6カ月未満の腫れであり、1は6カ月を超えるまたは6カ月に等しい期間の腫れである。一部の実施形態では、筋萎縮を0から2で採点し、0は萎縮なしであり、2は重度の萎縮である。一部の実施形態では、関節摩擦音を0から2で採点し、0は関節摩擦音なしであり、2は重度の関節摩擦音である。一部の実施形態では、屈曲の損失を0から3で採点し、0は5°未満の屈曲の損失であり、3は20°を超える屈曲の損失である。一部の実施形態では、伸展の損失を0から3で採点し、0は5°未満の伸展の損失であり、3は20°を超える伸展の損失である。一部の実施形態では、関節痛を0から2で採点し、0は、能動的可動域を通して疼痛なしであり、2は能動的可動域を通して疼痛ありである。一部の実施形態では、全歩行を以下のように採点し、0は全てのスキルが正常範囲内であることを反映し;1、2、および3は、1、2、および3のスキルがそれぞれ、正常範囲内にないことを反映し;ならびに4は、スキルが正常範囲内にないことを反映している。ある特定の実施形態では、全歩行スコアは、歩行、階段を上る、ランニング、および/または片足でのホッピングに基づいて測定される。一部の実施形態では、スコアを組み合わせて、総スコアを作成する。他の実施形態では、1つまたは複数の関節の個々のスコアを、1つまたは複数の関節の健康の指標として評価する。
【0153】
他の実施形態では、改変HJHSシステムを使用して関節の健康を測定する。一部の実施形態では、mHJHSは、標準的なHJHS、バージョン2.1と、関節痛と歩行の反応の選択肢をより少ないカテゴリに集約した点、不安定性の評価を追加した点、および総スコアが標準的なHJHS(範囲、0~124)より低い(範囲0~116;0は正常な関節機能を示し、116は重度の疾患を示す)という点が異なる。出血後2週間以内のスコアを除外した。外科的介入を受けた関節のスコアは、最後の観察の延長を使用することによって補完した。年毎の変化を評価するために、4つの時点(rFVIIIFcのピボタル第3相臨床試験のベースライン、rFVIIIFc継続試験のベースライン、rFVIIIFc継続試験の1年目、およびrFVIIIFc継続試験の2年目)でmHJHSデータを有するrFVIIIFc継続試験の対象を、この事後分析に含めた。rFVIIIFcのピボタル第3相臨床試験のベースラインからrFVIIIFc継続試験の2年目までのmHJHSスコアの変化(負の値は改善を示す)を、記述統計値を使用して要約した。rFVIIIFcのピボタル第3相臨床試験のベースラインから追跡時診察までのm
HJHSスコアの変化を、(1)総スコア(範囲、0~116;試験前レジメン(予防と出血時止血(episodic)の比較)による;初回mHJHSに基づく機能障害の重症度による、およびベースラインでの標的関節の存在による;(2)標的関節(範囲、0~19:単一の標的関節に関する全ての質問の合計);(3)荷重負荷(例えば、足首および膝)および非荷重負荷(例えば、肘)関節(範囲、0~38:単一の位置の左右関節の合計);ならびに(4)個々の構成要素(可動域(範囲、0~36:全ての関節に関する質問「伸展の損失[足首の背屈]」および「屈曲の損失[足首の底屈]」の組合せ);腫れ(範囲、0~24:全ての関節に関する質問「腫れ」および「腫れの持続期間」の組合せ);および筋力(範囲、0~6:全ての関節の合計))に関して要約した。
【0154】
一部の実施形態では、関節の採点は、6つの関節(左足首-LA、右足首-RA、左肘-LE、右肘-RE、左膝-LK、右膝-RK)に関して個別に行う。一部の実施形態では、腫れを以下に従って採点する:0=なし;1=軽度;2=中等度;3=重度。一部の実施形態では、腫れの持続期間を以下に従って採点する:0=腫れなしまたは6カ月以下;1=6カ月超。一部の実施形態では、筋萎縮を以下に従って採点する:0=なし;1=軽度;2=重度。一部の実施形態では、関節摩擦音を以下に従って採点する:0=なし;1=あり。一部の実施形態では、足首の底屈の損失を含む屈曲の損失を以下に従って採点する:0=なし;1=軽度;2=中等度;3=重度。一部の実施形態では、足首の背屈の損失を含む伸展の損失を以下に従って採点する:0=なし;1=軽度;2=中等度;3=重度。一部の実施形態では、不安定性を以下に従って採点する:0=なし;1=有意に病的な関節弛緩。一部の実施形態では、関節痛を以下に従って採点する:0=可動域または最終可動域のいずれかでの痛みなし;1=あり。一部の実施形態では、筋力を以下に従って採点する:0=正常(重力および最大抵抗に対して位置を保持する);1=最小の減少(重力および中等度の抵抗に対して位置を保持するが、最大抵抗では保持しない);2=軽度の減少(重力または最小の抵抗に対して位置を保持する);3=中等度の減少(重力がなければ関節を動かすことができる);4=重度の減少(わずかな筋収縮または筋収縮なし)。ある特定の実施形態では、膝および肘での屈曲の損失および伸展の損失の採点に関して、以下を適用する:なし=およそ0~5°;軽度=およそ5~10°;中等度=およそ11~20°;および重度=およそ>20°。
【0155】
一部の実施形態では、歩行を1回(範囲は0~2)採点し、0=歩行または階段の昇降に問題なし;1=歩行に問題ないが、階段は困難であり;および2=歩行および階段が困難である。
【0156】
ある特定の実施形態では、関節の採点は、以下のカテゴリおよびスケール(範囲は各関節に関して0~19および6個全ての関節に関して0~114)に従って、6つの関節(左足首-LA、右足首-RA、左肘-LE、右肘-RE、左膝-LK、右膝-RK)に関して個別に行う:腫れ(0=なし;1=軽度;2=中等度;3=重度);腫れの持続期間(0=腫れなしまたは6カ月以下;1=6カ月超);筋萎縮(0=なし;1=軽度;2=重度);関節摩擦音(0=なし;1=あり);足首の底屈の損失を含む屈曲の損失(0=なし;1=軽度;2=中等度;3=重度);足首の背屈の損失を含む伸展の損失(0=なし;1=軽度;2=中等度;3=重度);不安定性(0=なし;1=有意に病的な関節弛緩);関節痛(0=可動域または最終可動域のいずれかでの痛みなし;1=あり);筋力(0=正常(重力および最大抵抗に対して位置を保持する);1=最小の減少(重力および中等度の抵抗に対して位置を保持するが、最大抵抗では保持しない);2=軽度の減少(重力または最小の抵抗に対して位置を保持する);3=中等度の減少(重力がなければ関節を動かすことができる);4=重度の減少(わずかな筋収縮または筋収縮なし));膝および肘での屈曲の損失および伸展の損失の採点に関して、以下を適用する:なし=およそ0~5°;軽度=およそ5~10°;中等度=およそ11~20°;および重度=およそ>20°。
【0157】
一部の実施形態では、本開示は、血友病を有するヒトにおける関節の可逆性の血友病性関節症を処置する方法であって、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の有効量をヒトに投与することを含み、投与によって、投与前のHJHSスコアと比較してヒトのHJHSスコアが改善される方法を提供する。一部の実施形態では、HJHSスコアは、測定した全ての関節スコアの合計に加えて全歩行スコアを含む総HJHSスコアである。一部の実施形態では、HJHSスコアは、測定した全ての関節スコアの合計を含むが、全歩行スコアを含まない総HJHSスコアである。他の実施形態では、HJHSスコアは、1つまたは両方の肘、1つまたは両方の膝、1つまたは両方の足首、またはその任意の組合せのスコアである。特定の一実施形態では、HJHSスコアは肘のスコアである。別の実施形態では、HJHSスコアは膝のスコアである。別の実施形態ではHJHSスコアは足首のスコアである。別の実施形態では、HJHSスコアは全歩行を反映する。
【0158】
一部の実施形態では、本開示は、血友病を有するヒトにおける関節の可逆性の血友病性関節症を処置する方法であって、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の有効量をヒトに投与することを含み、投与によってヒトにおける関節痛が低減する方法を提供する。一部の実施形態では、関節痛は、投与前の関節痛と比較して低減される。ある特定の実施形態では、方法は、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の有効量の投与前に1つまたは複数の関節における関節痛を測定することをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、凝固因子とFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の有効量の投与後に1つまたは複数の関節における関節痛を測定することをさらに含む。
【0159】
ある特定の実施形態では、本発明の方法の効果は、ヒトの1つまたは複数の関節において観察される。一部の実施形態では、本発明の方法の効果は、少なくとも1つの関節において観察される。一部の実施形態では、本発明の方法の効果は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個の関節において観察される。
【0160】
一部の実施形態では、本開示の方法は、処置を必要とするヒトを特定すること、例えば血友病性関節症を有する対象を特定することをさらに含む。血友病性関節症は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して検出および/またはモニターすることができる。一部の実施形態では、イメージングシステムを使用して対象における血友病性関節症を検出および/またはモニターする。一部の実施形態では、イメージングシステムは、関節を特徴付けるために使用される当技術分野で公知の任意のイメージングシステムを含む。例えば、ある特定の実施形態では、イメージングシステムは、X線撮影、磁気共鳴イメージング、超音波造影法、パワードップラー超音波検査、またはその任意の組合せを含む。
【0161】
一部の実施形態では、対象は、Fc部分に融合されていない凝固因子タンパク質によって過去に処置されている。この凝固因子は、完全長または成熟凝固因子であり得る。一部の実施形態では、そのような凝固因子は、ADVATE(登録商標)、RECOMBINATE(登録商標)、KOGENATE FS(登録商標)、HELIXATE FS(登録商標)、XYNTHA(登録商標)/REFACTO AB(登録商標)、HEMOFIL-M(登録商標)、MONARC-M(登録商標)、MONOCLATE-P(登録商標)、HUMATE-P(登録商標)、ALPHANATE(登録商標)、KOATE-DVI(登録商標)、AFSTYLA(登録商標)、およびHYATE:C(登録商標)、IDELVION(登録商標)であり得る。
【0162】
II.A.キメラタンパク質
本明細書に開示される可逆性血友病性関節症を処置する方法は、凝固因子とFc領域とを含む一般的に適用可能なキメラタンパク質または組成物であって、凝固因子が任意の公知の凝固因子、その断片、またはそのバリアントであってよく、Fc領域が任意の公知のFc領域、その断片、またはそのバリアントであってよい、前記キメラタンパク質または組成物である。一部の実施形態では、組成物は、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質を含む。一部の実施形態では、凝固因子は、第VII因子(FVII)、第VIIa因子(FVIIa)、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、第X因子(FX)、フォンヴィレブランド因子(VWF)、またはその任意の組合せからなる群から選択される。したがって、FVIIIFcおよびFIXFcキメラポリペプチド、およびその使用に関する本開示は、凝固因子部分と、Fc部分とを含む他のキメラポリペプチドにも同等に適用可能である。任意の凝固因子または任意のその断片または任意のそのバリアントを、本開示の方法において使用することができる。
【0163】
いかなる理論によっても束縛されるものではないが、凝固因子に融合されたFc領域は、可逆性血友病性関節症の処置において有用であると考えられる。血友病における炎症は、関節への出血の間に起こる。血友病性関節症に関与する炎症性サイトカインであるTNF-αは、NF-κBシグナル伝達を誘導し、それによって、ヒト単球中でのFcRn発現を上方調節する(Liuら、J Immunol、2007、179(5):2999~3011頁)。かくして、FcRnは、炎症部位で上方調節され、炎症プロセスの調節の一部として、受容体であるFc受容体への結合によってFc含有タンパク質を炎症部位に局在化させることができる。凝固因子に融合されたFc領域はまた、免疫調節および炎症経路の下方調節を引き起こし得る阻害的Fc受容体と相互作用することもできる。例えば、rFVIIIFcは、Fc新生児受容体(FcRn)を遮断し、Fcγ受容体(FcγR)を活性化して、炎症性および抗炎症性分子のレベルの変化をもたらすことができる。かくして、一部の実施形態では、キメラタンパク質のFc領域は、キメラタンパク質の、関節、例えば、炎症および/または傷害および/または損傷の部位への局在化を容易にする。
【0164】
他の実施形態では、凝固因子は、凝固因子模倣体であってよい。凝固因子模倣体は、1つまたはそれ以上の凝固因子活性を示すことができる。例えば、抗体またはその抗原結合部分は、第IX因子と第X因子との両方に結合することによって、FVIIIのように作用することができる。抗体またはその抗原結合部分がFc領域を含有する場合、そのような抗体またはその抗原結合部分を本発明の方法のために使用することができる。別の実施形態では、凝固因子は、FVIII活性を有するペプチドである。
【0165】
これに関して、本開示は、一般的には、それと必要とする対象における可逆性血友病性関節症を処置する方法であって、対象に、凝固因子部分とFc部分とを含むキメラタンパク質を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0166】
II.A.1.第VIII因子
本明細書で使用される場合、本出願を通して「FVIII」と省略される「第VIII因子」は、別途特定しない限り、凝固におけるその通常の役割において機能的なFVIIIポリペプチドを意味する。かくして、FVIIIという用語は、機能的であるポリペプチドバリアントを含む。「FVIIIタンパク質」は、FVIIIポリペプチド(もしくはタンパク質)またはFVIIIと互換的に使用される。FVIII機能の例としては、限定されるものではないが、凝固を活性化する能力、第IX因子のためのコファクターとして作用する能力、またはCa2+およびリン脂質の存在下で第IX因子とのテンナーゼ複合体を形成した後、第X因子を活性化型Xaに変換する能力が挙げられる。FVIIIタンパク質は、ヒト、ブタ、イヌ、ラット、またはマウスFVIIIタンパク質であってもよい。さらに、ヒトおよび他の種に由来するFVIII間の比較により、機能にとって
必要とされる可能性がある保存された残基が同定された(Cameronら、Thromb.Haemost.79:317~22頁(1998);米国特許第6,251,632号)。多くの機能的断片、変異体および改変型と同様、完全長ポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列が公知である。様々なFVIIIアミノ酸およびヌクレオチド配列が、例えば、米国特許出願公開第2015/0158929号A1、第2014/0308280号A1、および第2014/0370035号A1ならびに国際公開第WO2015/106052号A1に開示されており、その各々の全体が参照により本明細書に組み入れられる。FVIIIポリペプチドとしては、例えば、完全長FVIII、完全長FVIII-N末端のMet、成熟FVIII(-シグナル配列)、N末端に追加のMetを有する成熟FVIII、および/またはBドメインが完全もしくは部分的に欠失したFVIIIが挙げられる。FVIIIバリアントは、部分的欠失であるにしろ、完全な欠失であるにしろ、Bドメインの欠失を含む。
【0167】
一部の実施形態では、本開示のキメラタンパク質または組成物のFVIIIは、Bドメイン欠失FVIIIを含む。本明細書で使用される場合、FVIIIの「Bドメイン」は、内部アミノ酸配列同一性およびトロンビンによるタンパク質分解的切断部位によって定義される、当業界で公知のBドメインと同じであり、例えば、成熟ヒトFVIIIの残基Ser741~Arg1648である。他のヒトFVIIIドメインは、成熟ヒトFVIIIと比較した、以下のアミノ酸残基:成熟FVIIIのA1、残基Ala1~Arg372;A2、残基Ser373~Arg740;A3、残基Ser1690~Ile2032;C1、残基Arg2033~Asn2172;C2、残基Ser2173~Tyr2332によって定義される。配列番号を参照せずに本明細書で使用される配列の残基番号は、別途指摘しない限り、シグナルペプチド配列(19アミノ酸)を含まないFVIII配列に一致する。FVIII重鎖としても知られる、A3-C1-C2配列は、残基Ser1690~Tyr2332を含む。残りの配列、残基Glu1649~Arg1689は、通常、FVIII軽鎖活性化ペプチドと呼ばれる。ブタ、マウスおよびイヌFVIIIに関する、Bドメインを含む、全てのドメインの境界の位置も、当業界で公知である。一実施形態では、FVIIIのBドメインは欠失している(「Bドメイン欠失FVIII」または「BDD FVIII」)。BDD FVIIIの例は、REFACTO(登録商標)(組換えBDD FVIII)である。1つの特定の実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIバリアントは、成熟FVIIIのアミノ酸残基746~1648の欠失を含む。
【0168】
「Bドメイン欠失FVIII」は、米国特許第6,316,226号、第6,346,513号、第7,041,635号、第5,789,203号、第6,060,447号、第5,595,886号、第6,228,620号、第5,972,885号、第6,048,720号、第5,543,502号、第5,610,278号、第5,171,844号、第5,112,950号、第4,868,112号、および第6,458,563号ならびに国際公開第WO2015106052号A1(PCT/US2015/010738)に開示された完全な、または部分的な欠失を有してもよい。一部の実施形態では、本開示の方法において使用されるBドメイン欠失FVIII配列は、米国特許第6,316,226号(米国特許第6,346,513号にも)の4列目、第4行~5列目、第28行および実施例1~5に開示された欠失のいずれか1つを含む。別の実施形態では、Bドメイン欠失第VIII因子は、S743/Q1638 Bドメイン欠失第VIII因子(SQ BDD FVIII)(例えば、アミノ酸744~アミノ酸1637の欠失を有する第VIII因子、例えば、成熟FVIIIのアミノ酸1~743およびアミノ酸1638~2332を有する第VIII因子)である。一部の実施形態では、本開示の方法において使用されるBドメイン欠失FVIIIは、米国特許第5,789,203号(米国特許第6,060,447号、米国特許第5,595,886号、および米国特許第6,228,620号)の2列目、第26~51行および実施例5~8に開示された欠
失を有する。一部の実施形態では、Bドメイン欠失第VIII因子は、米国特許第5,972,885号の1列目、第25行~第2列、第40行;米国特許第6,048,720号の6列目、第1~22行および実施例1;米国特許第5,543,502号の2列目、第17~46行;米国特許第5,171,844号の4列目、第22行~5列目、第36行;米国特許第5,112,950号の2列目、第55~68行、
図2、および実施例1;米国特許第4,868,112号の2列目、第2行~19列目、第21行および表2;米国特許第7,041,635号の2列目、第1行~3列目、第19行、3列目、第40行~4列目、第67行、7列目、第43行~8列目、第26行、および11列目、第5行~13列目、第39行;または米国特許第6,458,563号の4列目、第25~53行に記載された欠失を有する。一部の実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIは、WO91/09122に記載されたように、Bドメインの多くの欠失を有するが、2つのポリペプチド鎖への一次翻訳産物のin vivoでのタンパク質分解的プロセッシングにとって必須であるBドメインのアミノ末端配列を依然として含有する。一部の実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIは、アミノ酸747~1638の欠失、すなわち、実質的にBドメインの完全な欠失を用いて構築される。Hoeben R.C.ら、J.Biol.Chem.265(13):7318~7323頁(1990)。Bドメイン欠失第VIII因子はまた、FVIIIのアミノ酸771~1666またはアミノ酸868~1562の欠失を含有してもよい。Meulien P.ら、Protein Eng.2(4):301~6頁(1988)。本発明の一部であるさらなるBドメイン欠失としては、アミノ酸982~1562または760~1639(Tooleら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1986)83、5939~5942頁))、797~1562(Eatonら、Biochemistry(1986)25:8343~8347頁))、741~1646(Kaufman(PCT公開第WO87/04187))、747~1560(Sarverら、DNA(1987)6:553~564頁))、741~1648(Pasek(PCT公開88/00831))、または816~1598または741~1648(Lagner(Behring Inst.Mitt.(1988)82:16~25頁、EP295597))の欠失が挙げられる。1つの特定の実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIは、成熟FVIIIのアミノ酸残基746~1648の欠失を含む。別の実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIは、成熟FVIIIのアミノ酸残基745~1648の欠失を含む。
【0169】
他の実施形態では、BDD FVIIIは、1つまたはそれ以上のN結合グリコシル化部位、例えば、完全長FVIII配列のアミノ酸配列に対応する、残基757、784、828、900、963、または場合により、943を保持するBドメインの断片を含有するFVIIIポリペプチドを含む。Bドメイン断片の例は、Miao,H.Z.ら、Blood 103(a):3412~3419頁(2004)、Kasuda,Aら、J.Thromb.Haemost.6:1352~1359頁(2008)、およびPipe,S.W.ら、J.Thromb.Haemost.9:2235~2242頁(2011)に開示されたBドメインの226アミノ酸または163アミノ酸を含む(すなわち、Bドメインの最初の226アミノ酸または163アミノ酸が保持される)。さらに他の実施形態では、BDD FVIIIは、BDD FVIIIタンパク質の発現を改善するために残基309に点突然変異(PheからSerへの)をさらに含む。さらに他の実施形態では、BDD FVIIIは、Bドメインの一部を含有するが、1つまたはそれ以上のフリン切断部位(例えば、Arg1313およびArg1648)を含有しないFVIIIポリペプチドを含む。Pipe,S.W.ら、J.Thromb.Haemost.9:2235~2242頁(2011)を参照されたい。一部の実施形態では、BDD
FVIIIは、成熟完全長FVIIIに対応するアミノ酸765~1652中に欠失を含有する一本鎖FVIIIを含む(rVIII-SingleChainおよびAFSTYLA(登録商標)としても知られる)。米国特許第7,041,635号を参照されたい。前記欠失のそれぞれを、任意のFVIII配列中で作製することができる。
【0170】
上記および下記に考察されるように、多くの機能的FVIIIバリアントが公知である。さらに、FVIIIにおける数百個の非機能的変異が血友病患者において同定されており、FVIII機能に対するこれらの変異の効果が、それらが、置換の性質というよりはむしろ、FVIIIの3次元構造内にあることにより多く起因することが決定された(全体が参照により本明細書に組み入れられるCutlerら、Hum.Mutat.19:274~8頁(2002))。さらに、ヒトと他の種に由来するFVIII間の比較により、機能にとって必要とされる可能性がある保存された残基が同定された(全体が参照により本明細書に組み入れられるCameronら、Thromb.Haemost.79:317~22頁(1998);米国特許第6,251,632号)。
【0171】
一部の実施形態では、FVIIIとFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の有効量は、Fc領域を含まないFVIIIの有効量と同等である。ある特定の実施形態では、有効量は、約10IU/kg~約300IU/kgである。一部の実施形態では、有効量は、約20IU/kg~約300IU/kgである。一部の実施形態では、有効量は、約20IU/kg~約250IU/kg、約20IU/kg~約200IU/kg、約20IU/kg~約190IU/kg、約20IU/kg~約180IU/kg、約20IU/kg~約170IU/kg、約20IU/kg~約160IU/kg、約20IU/kg~約150IU/kg、約20IU/kg~約140IU/kg、約20IU/kg~約130IU/kg、約20IU/kg~約120IU/kg、約20IU/kg~約110IU/kg、約20IU/kg~約100IU/kg、約20IU/kg~約90IU/kg、約20IU/kg~約80IU/kg、約20IU/kg~約70IU/kg、約20IU/kg~約60IU/kg、約25IU/kg~約100IU/kg、約25IU/kg~約90IU/kg、約25IU/kg~約80IU/kg、約25IU/kg~約70IU/kg、約25IU/kg~約65IU/kgである。1つの特定の実施形態では、有効量は、約20IU/kg~約100IU/kgである。別の実施形態では、有効量は、約25IU/kg~約65IU/kgである。他の実施形態では、有効量は、約20IU/kg~約100IU/kg、約30IU/kg~約100IU/kg、約40IU/kg~約100IU/kg、約50IU/kg~約100IU/kg、約60IU/kg~約100IU/kg、約70IU/kg~約100IU/kg、約80IU/kg~約100IU/kg、約90IU/kg~約100IU/kg、約20IU/kg~約90IU/kg、約20IU/kg~約80IU/kg、約20IU/kg~約70IU/kg、約20IU/kg~約60IU/kg、約20IU/kg~約50IU/kg、約20IU/kg~約40IU/kg、または約20IU/kg~約30IU/kgである。
【0172】
一部の実施形態では、有効量は、約10IU/kg、約15IU/kg、約20IU/kg、約25IU/kg、約30IU/kg、約35IU/kg、約40IU/kg、約45IU/kg、約50IU/kg、約55IU/kg、約60IU/kg、約65IU/kg、約70IU/kg、約75IU/kg、約80IU/kg、約85IU/kg、約90IU/kg、約95IU/kg、約100IU/kg、約105IU/kg、約110IU/kg、約115IU/kg、約120IU/kg、約125IU/kg、約130IU/kg、約135IU/kg、約140IU/kg、約145IU/kg、約150IU/kg、約155IU/kg、約160IU/kg、約165IU/kg、約170IU/kg、約175IU/kg、約180IU/kg、約185IU/kg、約190IU/kg、約195IU/kg、約200IU/kg、約225IU/kg、約250IU/kg、約275IU/kg、または約300IU/kgである。1つの特定の実施形態では、有効量は、約50IU/kg/kgである。別の実施形態では、有効量は、約100IU/kgである。別の実施形態では、有効量は、約200IU/kgである。
【0173】
FVIIIと、Fc領域またはその断片とを含む組成物またはキメラタンパク質を投与する場合の投薬間隔は、Fcドメインを含まない凝固因子の等量にとって必要とされる投薬間隔よりも少なくとも約1.5倍長いものであってもよい。投薬間隔は、Fcドメインを含まないFVIIIの等量にとって必要とされる投薬間隔よりも、少なくとも約1.5~6倍長い、1.5倍~5倍長い、1.5倍~4倍長い、1.5倍~3倍長い、または1.5倍~2倍長いものであってもよい。
【0174】
一部の実施形態では、FVIIIとFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の有効用量は、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日、約21日、約22日、約23日、または約24日の投薬間隔でヒトに投与される。一部の実施形態では、FVIIIとFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の有効用量は、約25日、約26日、約27日、約28日、約29日、約30日、約45日、または約60日の投薬間隔でヒトに投与される。
【0175】
一部の実施形態では、FVIIIと、Fc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質は、約1~約14日、約1~約13日、約1~約12日、約1~約11日、約1~約10日、約1~約9日、約1~約8日、約1~約7日、約1~約6日、約1~約5日、約1~約4日、約1~約3日、約1~約2日、約2~約14日、約3~約14日、約4~約14日、約5~約14日、約6~約14日、約7~約14日、約8~約14日、約9~約14日、約10~約14日、約11~約14日、約12~約14日、約13~約14日、または約5~約10日の投薬間隔で投与される。他の実施形態では、FVIIIと、Fc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質は、約1~約21日、約1~約20日、約1~約19日、約1~約18日、約1~約17日、約1~約16日、約1~約15日、約1~約14日、約1~約13日、約1~約12日、約1~約11日、約1~約10日、約1~約9日、約1~約8日、約1~約7日、約1~約6日、約1~約5日、約1~約4日、約1~約3日、約1~約2日、約2~約21日、約3~約21日、約4~約21日、約5~約21日、約6~約21日、約7~約21日、約8~約21日、約9~約21日、約10~約21日、約11~約21日、約12~約21日、約13~約21日、約14~約21日、約15~約21日、約16~約21日、約17~約21日、約18~約21日、約19~約21日、約20~約21日、約5~約10日、約10~約15日、約15~約20日の投薬間隔で投与される。ある特定の実施形態では、FVIIIと、Fc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質は、約2~約6日の投薬間隔で投与される。別の実施形態では、FVIIIと、Fc領域とを含むキメラタンパク質は、約3~約5日の投薬間隔で投与される。
【0176】
一実施形態では、有効量は、25~65IU/kg(25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、62、64、または65IU/kg)であり、投薬間隔は、3~5、3~6、3~7、3、4、5、6、7、または8日もしくはそれ以上の日数毎に1回、または週に3回、または週に3回以下である。別の実施形態では、有効量は、65IU/kgであり、投薬間隔は週に1回、または6~7日毎に1回である。用量は、それらが必要である限り、反復的に投与することができる(例えば、少なくとも10、20、28、30、40、50、52、または57週、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10年)。1つの特定の実施形態では、有効用量は、約25~65IU/kgであり、投薬間隔は、3~5日毎に1回である。
【0177】
FVIIIとFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を、例えば、局所(例え
ば、経皮もしくは眼内)、経口、頬、経鼻、経膣、直腸または非経口投与を含む、任意の適切な投与様式のために製剤化することができる。
【0178】
本明細書で使用される非経口という用語は、皮下、皮内、血管内(例えば、静脈内)、筋肉内、脊髄、頭蓋内、髄腔内、眼内、眼周囲、眼窩内、滑液嚢内および腹腔内注射、ならびに任意の類似する注射または輸注技術を含む。組成物はまた、例えば、懸濁液、エマルジョン、持続放出製剤、クリーム、ゲルまたは粉末であってもよい。組成物を、伝統的な結合剤およびトリグリセリドなどの担体と共に、坐剤として製剤化することができる。
【0179】
一例では、医薬製剤は、液体製剤、例えば、緩衝化された等張性の水性溶液である。別の例では、医薬組成物は、生理的であるか、または生理条件に近いpHを有する。他の例では、水性製剤は、生理的であるか、または生理状態に近い浸透圧および塩分濃度を有する。それは、塩化ナトリウムおよび/または酢酸ナトリウムを含有してもよい。
【0180】
一部の実施形態では、本発明の方法において使用されるFVIIIとFc領域とを含むキメラタンパク質は、(a)キメラポリペプチド;(b)スクロース、トレハロース、ラフィノース、アルギニン、またはその混合物から選択される1つまたはそれ以上の安定化剤;(c)塩化ナトリウム(NaCl);(d)L-ヒスチジン;(e)塩化カルシウム;および(f)ポリソルベート20またはポリソルベート80を含む医薬組成物中で製剤化される。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、(a)50IU/ml~2500IU/mlのキメラポリペプチド;(b)10mg/ml~25mg/mlのスクロース;(c)8.8mg/ml~14.6mg/mlの塩化ナトリウム(NaCl);(d)0.75mg/ml~2.25mg/mlのL-ヒスチジン;(e)0.75mg/ml~1.5mg/mlの塩化カルシウム二水和物;および(f)0.08mg/ml~0.25mg/mlのポリソルベート20またはポリソルベート80を含む。一部の例では、本開示の方法において使用される医薬組成物は、凍結乾燥される。
【0181】
一部の実施形態では、医薬組成物は、免疫細胞を含まない。一部の実施形態では、医薬組成物は、細胞を含まない。
【0182】
II.A.2.第IX因子
ヒト第IX因子(FIX)は、血液凝固カスケードの内在性経路の重要成分であるセリンプロテアーゼである。本明細書で使用される場合、「第IX因子」または「FIX」とは、凝固因子タンパク質および種およびその配列バリアントを指し、限定されるものではないが、ヒトFIX前駆体ポリペプチドの461個の一本鎖アミノ酸配列(「プレプロ」)、成熟ヒトFIXの415個の一本鎖アミノ酸配列、およびR338L FIX(Padua)バリアントを含む。FIXは、血液凝固の典型的な特徴を有する任意の形態のFIX分子を含む。本明細書で使用される場合、「第IX因子」および「FIX」は、ドメインGla(γ-カルボキシグルタミン酸残基を含有する領域)、EGF1およびEGF2(ヒト上皮増殖因子と相同な配列を含有する領域)、活性化ペプチド(成熟FIXの残基R136~R180によって形成される「AP」)、およびC末端プロテアーゼドメイン(「Pro」)、もしくは当業界で公知のこれらのドメインのシノニムを含むポリペプチドを包含することが意図されるか、または天然タンパク質の生物活性の少なくとも一部を保持するトランケートされた断片または配列バリアントであってもよい。
【0183】
FIXまたは配列バリアントは、米国特許第4,770,999号および第7,700,734号に記載のようにクローニングされており、ヒト第IX因子をコードするcDNAは、単離され、特性評価され、発現ベクター中にクローニングされている(例えば、Chooら、Nature、299:178~180頁(1982);Fairら、Blood 64:194~204頁(1984);およびKurachiら、Proc.Na
tl.Acad.Sci.U.S.A. 79:6461~6464頁(1982)を参照されたい)。Simioniら、2009によって特徴付けられた、FIXの1つの特定のバリアントである、R339L FIX(Padua)バリアントは、機能獲得変異を含み、天然FIXと比較したPaduaバリアントの活性のほぼ8倍の増加と相関する。FIXバリアントはまた、FIXポリペプチドのFIX活性に影響しない、1つまたはそれ以上の連続するアミノ酸置換を有する任意のFIXポリペプチドを含んでもよい。
【0184】
一部の実施形態では、FIXは、凝固因子IX(組換え体)、アルブミン融合タンパク質(rIX-FPおよびIDELVION(登録商標)としても知られる)を含む。
【0185】
FIXポリペプチドは、55kDaであり、3つの領域:28アミノ酸のシグナルペプチド(アミノ酸1~28)、グルタミン酸残基のガンマカルボキシル化にとって必要とされる18アミノ酸のプロペプチド(アミノ酸29~46)、および415アミノ酸の成熟第IX因子から構成されるプレプロポリペプチド鎖として合成される。プロペプチドは、ガンマ-カルボキシグルタミン酸ドメインのN末端の18アミノ酸残基の配列である。プロペプチドは、ビタミンK依存的ガンマカルボキシラーゼに結合した後、内因性プロテアーゼ、十中八九、フーリンまたはPCSK3としても知られる、PACE(対形成塩基性アミノ酸切断酵素)によってFIXの前駆体ポリペプチドから切断される。ガンマカルボキシル化がない場合、Glaドメインは、カルシウムに結合して、タンパク質を負に荷電したリン脂質表面に固定するのに必要な正確なコンフォメーションを取ることができず、それによって、第IX因子を非機能的なものにする。たとえ、それがカルボキシル化されるとしても、保持されたプロペプチドはカルシウムおよびリン脂質への最適な結合にとって必要なGlaドメインのコンフォメーション変化を阻害するため、Glaドメインはまた、適切な機能のためにプロペプチドの切断に依存する。ヒトにおいては、得られる成熟第IX因子は、約17重量%の炭水化物を含有する415アミノ酸残基の一本鎖タンパク質である、不活性ザイモゲンとして肝臓細胞から血流中に分泌される(Schmidt,A.E.ら(2003)Trends Cardiovasc Med、13:39頁)。
【0186】
成熟FIXは、NからC末端の構成で、GLAドメイン、EGF1ドメイン、EGF2ドメイン、活性化ペプチド(AP)ドメイン、およびプロテアーゼ(または触媒)ドメインである、いくつかのドメインから構成される。短いリンカーが、EGF2ドメインと、APドメインとを接続する。FIXは、それぞれ、R145-A146およびR180-V181によって形成される2つの活性化ペプチドを含有する。活性化の後、一本鎖FIXは、2個の鎖がジスルフィド結合によって連結された、2鎖分子になる。活性化特異性の変化をもたらすそれらの活性化ペプチドを置き換えることにより、凝固因子を操作することができる。哺乳動物においては、成熟FIXは活性化された第XI因子によって活性化され、第IXa因子を得ると予想される。プロテアーゼドメインは、FIXからFIXaへの活性化の際に、FIXの触媒活性を提供する。活性化された第VIII因子(FVIIIa)は、FIXa活性の完全な発現のための特異的コファクターである。
【0187】
他の実施形態では、FIXポリペプチドは、血漿由来第IX因子のThr148対立遺伝子形態を含み、内因性第IX因子と類似する構造的および機能的特徴を有する。
【0188】
非常に多くの機能的FIXバリアントが公知である。国際公開第WO02/040544号A3は、4頁、第9~30行および15頁、第6~31行において、ヘパリンによる阻害に対する耐性の増大を示す変異体を開示している。国際公開第WO03/020764号A2は、表2および表3(14~24頁)、ならびに12頁、第1~27行において、T細胞免疫原性が低下したFIX変異体を開示している。国際公開第WO2007/149406号A2は、4頁、第1行~19頁、第11行において、タンパク質安定性の増
加、in vivoおよびin vitroでの半減期の増大、およびプロテアーゼに対する耐性の増大を示す機能的FIX分子変異体を開示している。WO2007/149406A2もまた、19頁、第12行~20頁、第9行において、キメラおよび他のバリアントFIX分子を開示している。国際公開第WO08/118507号A2は、5頁、第14行~6頁、第5行において、凝固活性の増大を示すFIX変異体を開示している。国際公開第WO09/051717号A2は、9頁、第11行~20頁、第2行において、半減期および/または回復の増加をもたらす、N結合および/またはO結合グリコシル化部位の数が増加したFIX変異体を開示している。国際公開第WO09/137254号A2もまた、2頁、段落[006]~5頁、段落[011]および16頁、段落[044]~24頁、段落[057]において、グリコシル化部位の数が増加した第IX因子変異体を開示している。国際公開第WO09/130198号A2は、4頁、第26行~12頁、第6行において、半減期の増加をもたらす、グリコシル化部位の数が増加した機能的FIX分子変異体を開示している。国際公開第WO09/140015号A2は、11頁、段落[0043]~13頁、段落[0053]において、ポリマー(例えば、PEG)コンジュゲーションのために使用することができる、Cys残基の数が増加した機能的FIX変異体を開示している。2011年7月11日に出願され、2012年1月12日にWO2012/006624として公開された、国際出願第PCT/US2011/043569号に記載されたFIXポリペプチドも、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0189】
さらに、FIX中の数百個の非機能的変異が血友病対象において同定されており、その多くは、国際公開第WO09/137254号A2の11~14頁の表5に開示されている。そのような非機能的変異は、本発明に含まれないが、どの変異が多かれ少なかれ機能的FIXポリペプチドをもたらす可能性があるかのさらなる指針を提供する。
【0190】
第IX因子凝固活性は、国際単位(IU)として表される。1IUのFIX活性は、正常ヒト血漿1ミリリットル中のFIXの量にほぼ一致する。凝固1段法(活性化部分トロンボプラスチン時間;aPTT)、トロンビン生成時間(TGA)、および回転トロンボエラストメトリー(ROTEM(登録商標))などの、いくつかのアッセイが、第IX因子活性を測定するために利用可能である。本発明は、FIX配列、ヒト、非ヒト霊長類、哺乳類(家畜など)に由来するものなどの天然である配列断片、およびFIXの生物活性もしくは生物学的機能の少なくとも一部を保持する非天然配列バリアントに対する相同性を有する、ならびに/または凝固因子関連疾患、欠損、障害もしくは状態(例えば、凝固因子の欠損の、外傷、手術と関連する出血エピソード)を防止する、処置する、媒介する、または改善するのに有用である配列を企図する。ヒトFIXに対する相同性を有する配列を、NCBI BLASTなどの標準的な相同性検索技術によって見出すことができる。
【0191】
一部の実施形態では、FIXとFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の有効量は、Fc領域を含まないFIXの有効量と同等である。ある特定の実施形態では、有効量は、約0.1IU/kg~約500IU/kgである。一部の実施形態では、有効量は、約10IU/Kg~約400IU/kgである。一部の実施形態では、有効量は、約20IU/Kg~約300IU/kgである。一部の実施形態では、有効量は、約20IU/kg~約275IU/kg、約20IU/kg~約250IU/kg、約20IU/kg~約225IU/kg、約20IU/kg~約200IU/kg、約20IU/kg~約175IU/kg、約20IU/kg~約150IU/kg、約20IU/kg~約100IU/kg、約20IU/kg~約90IU/kg、約20IU/kg~約80IU/kg、約20IU/kg~約70IU/kg、約20IU/kg~約60IU/kg、約20IU/kg~約50IU/kg、約20IU/kg~約40IU/kg、約20IU/kg~約30IU/kg、約30IU/kg~約100IU/kg、約40IU/k
g~約100IU/kg、約50IU/kg~約100IU/kg、約60IU/kg~約100IU/kg、約70IU/kg~約100IU/kg、約80IU/kg~約100IU/kg、約90IU/kg~約100IU/kg、約100IU/kg~約200IU/kg、約150IU/kg~約200IU/kg、または約25IU/kg~約75IU/kgである。1つの特定の実施形態では、有効量は、約20IU/kg~約100IU/kgである。
【0192】
一部の実施形態では、有効量は、約10IU/kg、約15IU/kg、約20IU/kg、約25IU/kg、約30IU/kg、約35IU/kg、約40IU/kg、約45IU/kg、約50IU/kg、約55IU/kg、約60IU/kg、約65IU/kg、約70IU/kg、約75IU/kg、約80IU/kg、約85IU/kg、約90IU/kg、約95IU/kg、約100IU/kg、約105IU/kg、約110IU/kg、約115IU/kg、約120IU/kg、約125IU/kg、約130IU/kg、約135IU/kg、約140IU/kg、約145IU/kg、約150IU/kg、約155IU/kg、約160IU/kg、約165IU/kg、約170IU/kg、約175IU/kg、約180IU/kg、約185IU/kg、約190IU/kg、約195IU/kg、または約200IU/kgである。1つの特定の実施形態では、有効量は、約50IU/kgである。別の実施形態では、有効量は、約100IU/kgである。
【0193】
FIXとFc領域またはその断片を含む組成物またはキメラタンパク質を投与する場合の投与間隔は、Fcドメインを含まない前記FIXの同等の用量にとって必要とされる投与間隔よりも少なくとも約1.5倍長くてもよい。投与間隔は、Fcドメインを含まない前記FIXの同等の用量にとって必要とされる投与間隔よりも少なくとも約1.5~6倍、1.5~5倍、1.5~4倍、1.5~3倍、または1.5~2倍長くてもよい。一部の実施形態では、投与間隔は、Fcドメインを含まない前記FIXの同等の用量にとって必要とされる投与間隔よりも少なくとも約1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍または6倍長い。投与間隔は、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14日毎、またはそれより長くてもよい。投与間隔は、少なくとも約1.5~5日、1.5日、2日、3日、4日、もしくは5日、またはそれより長くてもよい。オンデマンド処置のために、前記キメラポリペプチドまたはハイブリッドの投与間隔は、24~36、24~48、24~72、24~96、24~120、24~144、24~168、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、もしくは72時間、またはそれより長い時間毎に約1回である。
【0194】
一部の実施形態では、FIXと、Fc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の有効用量は、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日、約21日、約22日、約23日、または約24日の投与間隔でヒトに投与される。一部の実施形態では、FVIIIとFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の有効用量は、約25日、約26日、約27日、約28日、約29日、約30日、約45日、または約60日の投与間隔でヒトに投与される。ある特定の実施形態では、FVIIIとFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の有効用量は、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、または約14日の投与間隔でヒトに投与される。1つの特定の実施形態では、FVIIIとFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の有効用量は、約2日(例えば、約48時間)の投与間隔でヒトに投与される。別の実施形態では、FVIIIとFc領域とを含む組成物またはキメ
ラタンパク質の有効用量は、約7日の投与間隔でヒトに投与される。別の実施形態では、FVIIIとFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の有効用量は、約10日の投与間隔でヒトに投与される。一部の実施形態では、FVIIIとFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の有効用量は、6~10時間毎の投与間隔でヒトに投与される。ある特定の実施形態では、FVIIIとFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質の有効用量は、毎日の投与間隔でヒトに投与される。
【0195】
一部の実施形態では、FVIIIとFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質は、約1~約21日、約1~約20日、約1~約19日、約1~約18日、約1~約17日、約1~約16日、約1~約15日、約1~約14日、約1~約13日、約1~約12日、約1~約11日、約1~約10日、約1~約9日、約1~約8日、約1~約7日、約1~約6日、約1~約5日、約1~約4日、約1~約3日、約1~約2日、約2~約21日、約3~約21日、約4~約21日、約5~約21日、約6~約21日、約7~約21日、約8~約21日、約9~約21日、約10~約21日、約11~約21日、約12~約21日、約13~約21日、約14~約21日、約15~約21日、約16~約21日、約17~約21日、約18~約21日、約19~約21日、約20~約21日、約5~約10日、約10~約15日、約15~約20日の投与間隔で投与される。
【0196】
一実施形態では、有効用量は、1~50IU/dLの循環FIX(例えば、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50IU/dL)を維持することができる用量である。別の実施形態では、有効用量は、50IU/kgであり、投与間隔は、週1回である。別の実施形態では、有効用量は、100IU/kgであり、投与間隔は、10日毎に1回である。用量が必要である限り(例えば、少なくとも10、20、28、30、40、50、52、または57週、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10年)、それらを反復的に投与することができる。
【0197】
FIXとFc領域とを含む組成物またはキメラタンパク質を、例えば、局所(例えば、経皮もしくは眼内)、経口、頬、経鼻、経膣、直腸または非経口投与を含む、任意の適切な投与様式のために製剤化することができる。
【0198】
本明細書で使用される非経口という用語は、皮下、皮内、血管内(例えば、静脈内)、筋肉内、脊髄、頭蓋内、鞘内、眼内、眼周囲、眼窩内、滑液嚢内および腹腔内注射、ならびに任意の同様の注射または輸注技術を含む。組成物は、例えば、懸濁剤、エマルジョン、持続放出製剤、クリーム、ゲルまたは粉末であってもよい。組成物を、伝統的な結合剤およびトリグリセリドなどの担体を用いて、坐剤として製剤化することができる。
【0199】
一例では、医薬製剤は、液体製剤、例えば、緩衝化、等張性、水性溶液である。別の例では、医薬組成物は、生理的であるか、または生理的に近いpHを有する。他の例では、水性製剤は、生理的な、または生理的に近い浸透圧および塩分濃度を有する。それは、塩化ナトリウムおよび/または酢酸ナトリウムを含有してもよい。
【0200】
一部の実施形態では、本発明の方法において使用されるFIXとFc領域とを含むキメラタンパク質は、(a)キメラポリペプチド;(b)スクロースおよびマンニトールを含む炭水化物混合物;(c)塩化ナトリウム(NaCl);(d)L-ヒスチジン;ならびに(e)ポリソルベート20またはポリソルベート80を含む医薬組成物中で製剤化される。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、(a)約25IU/ml~約700IU/mlの第IX因子ポリペプチド;(b)約10mg/ml~約20mg/mlのスクロー
ス;(c)約20mg/ml~約40mg/mlのマンニトール;(d)約3mg/ml~約4mg/mlのNaCl;(e)約3mg/ml~約6mg/mlのL-ヒスチジン;(f)約0.08mg/ml~約0.2mg/mlのポリソルベート20もしくはポリソルベート80;または(g)その任意の組合せを含む。一部の例では、本開示の方法において使用される医薬組成物は、凍結乾燥される。
【0201】
一部の実施形態では、医薬組成物は、免疫細胞を含まない。一部の実施形態では、医薬組成物は、細胞を含まない。
【0202】
II.A.3 Fc
本開示の組成物またはキメラタンパク質は、FcドメインまたはFcRn、FcγRIIBおよび/もしくはFC-SIGNに結合するその部分を含む。一部の実施形態では、Fcドメインは、例えば、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質の部分として、凝固因子に融合される。他の実施形態では、Fcドメインは、凝固因子以外のポリペプチドに融合され、ここで、組成物は、(1)凝固因子および(2)Fcドメインとさらなるポリペプチドとを含むキメラタンパク質を含む。一部の実施形態では、Fcドメインは、凝固因子と共に同時投与される。Fcドメインまたはその一部は、キメラタンパク質の薬物動態または薬力学特性を改善することができる。ある特定の実施形態では、Fcドメインまたはその一部は、Fcドメインまたはその一部に融合された分子の半減期を延長させる。一部の実施形態では、キメラタンパク質のFc領域は、キメラタンパク質の関節への局在化を容易にする。
【0203】
本明細書で使用される用語「Fcドメイン」または「Fc領域」とは、その2つの重鎖のそれぞれのFcドメインの二量体結合によって形成される、天然のIgのFcドメインに対応するポリペプチドの機能的部分を意味する。天然のFcドメインは、別のFcドメインとホモ二量体を形成する。対照的に、本明細書で使用される場合、用語「遺伝的に融合されたFc領域」または「一本鎖Fc領域」(scFv領域)とは、単一のポリペプチド鎖内に遺伝的に連結された(すなわち、単一の連続する遺伝子配列中にコードされた)Fcドメインを含む合成二量体Fc領域を指す。
【0204】
一実施形態では、「Fc領域」とは、パパイン切断部位のすぐ上流のヒンジ領域(すなわち、重鎖定常領域の最初の残基が114であるとした場合、IgG中の残基216)で始まり、抗体のC末端で終わる単一のIgG重鎖の部分を指す。したがって、完全なFcドメインは、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む。
【0205】
Ig定常領域のFc領域は、Igアイソタイプに応じて、CH2、CH3、およびCH4ドメイン、ならびにヒンジ領域を含んでもよい。IgのFc領域を含むキメラタンパク質は、安定性の増大、血清半減期の増大(Caponら、1989、Nature 337:525頁)ならびに新生児Fc受容体(FcRn)などのFc受容体への結合(米国特許第6,086,875号、第6,485,726号、第6,030,613号;WO03/077834;US2003-0235536A1)を含む、キメラタンパク質上でのいくつかの望ましい特性を付与する(これらの文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0206】
一部の実施形態では、Fc領域は、FcRnに特異的に結合する。FcRn受容体は、ヒトを含むいくつかの哺乳動物種から単離されている。ヒトFcRn、サルFcRn、ラットFcRn、およびマウスFcRnの配列が公知である(Storyら、1994、J.Exp.Med.180:2377頁)。FcRn受容体は、比較的低いpHでIgGに結合し(IgA、IgM、IgD、およびIgEなどの他のIgクラスではなく)、内腔
中のIgGを漿膜方向に活発に細胞間輸送し、次いで、間質液中に見出される比較的高いpHでIgGを放出する。それは、肺および腸上皮(Israelら、1997、Immunology 92:69頁)、腎近位尿細管上皮(Kobayashiら、2002、Am.J.Physiol.Renal Physiol.282:F358頁)ならびに鼻上皮、膣表面、および胆道系表面を含む、成体上皮組織(米国特許第6,485,726号、第6,030,613号、第6,086,875号;WO03/077834;US2003-0235536A1)中で発現される。
【0207】
本発明において有用なFc領域は、全IgG、IgGのFc断片、およびFcRn受容体の完全な結合領域を含む他の断片を含む、FcRn、FcγRIIB、および/またはDC-SIGNに特異的に結合することができる分子を包含する。FcRn、FcγRIIB、および/またはDC-SIGNに結合するIgGのFc部分の領域は記載されている。
【0208】
1つの特定の実施形態では、Fc領域は、低親和性免疫グロブリンガンマFc領域受容体II-b(FcγRIIB)に特異的に結合する。FcγRIIBは、炎症応答の態様を制御する、阻害的Fc受容体である。特に、FcγRIIBの活性化は、炎症をもたらす活性化シグナルを阻害する。かくして、実質的に、FcγRIIBの活性化は、炎症を阻害する。
【0209】
別の実施形態では、Fc領域は、樹状細胞特異的細胞間接着分子-3捕捉非インテグリン(DC-SIGN)に特異的に結合する。CD209としても知られる、DC-SIGNは、ある特定の単球、樹状細胞、およびマクロファージを含む、多くの骨髄由来細胞によって発現されるC型レクチン受容体である。マウスにおける研究により、DC-SIGNの活性化が炎症を阻害することができることが示されている。Nimerjahn、Chapter 5、Molecular and Cellular Pathways
Involved in the Anti-inflammatory Activity of IgG、Molecular Mechanisms of Antibody Activity、New York、NY 2013:113~138頁を参照されたい。
【0210】
特異的結合とは、生理的条件下で比較的安定的である複合体を形成する2つの分子を指す。特異的結合は、通常は中程度から高い能力と共に低い親和性を有する非特異的結合から区別されるように、高い親和性および低いから中程度の能力を特徴とする。典型的には、結合は、親和性定数KAが106M-1より高いか、または108M-1より高い場合、特異的であると考えられる。必要に応じて、結合条件を変化させることにより、特異的結合に実質的に影響することなく、非特異的結合を減少させることができる。当業者であれば、日常的な技術を使用して、分子の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合させる時間、ブロッキング剤(例えば、血清アルブミン、ミルクカゼイン)の濃度などの適切な結合条件を最適化することができる。
【0211】
ある特定の実施形態では、本発明のキメラタンパク質は、それにも拘わらずFc領域に対してFcRn、FcγRIIBおよび/またはDC-SIGN結合特性を付与するのに十分である1つまたはそれ以上のトランケートされたFc領域を含む。例えば、FcRn、FcγRIIBおよび/またはDC-SIGNに結合するFc領域の部分(すなわち、FcRn、FcγRIIBおよび/またはDC-SIGN結合部分)は、EUナンバリングによる、IgG1のおよそアミノ酸282~438を含む(主な接触部位は、CH2ドメインのアミノ酸248、250~257、272、285、288、290~291、308~311、および314ならびにCH3ドメインのアミノ酸残基385~387、428、および433~436である)。かくして、本発明のFc領域は、FcRn、F
cγRIIBおよび/またはDC-SIGN結合部分を含むか、またはそれからなってもよい。FcRn、FcγRIIBおよび/またはDC-SIGN結合部分は、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意のアイソタイプの重鎖に由来してもよい。一実施形態では、ヒトアイソタイプIgG1の抗体に由来するFcRn、FcγRIIBおよび/またはDC-SIGN結合部分が使用される。別の実施形態では、ヒトアイソタイプIgG4の抗体に由来するFcRn、FcγRIIBおよび/またはDC-SIGN結合部分が使用される。
【0212】
別の実施形態では、「Fc領域」は、Fcドメインの、またはFcドメインに由来するアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、Fc領域は、ヒンジ(例えば、上、中央、および/もしくは下ヒンジ領域)ドメイン(EUナンバリングによる抗体Fc領域のおよそアミノ酸216~230)、CH2ドメイン(EUナンバリングによる抗体Fc領域のおよそアミノ酸231~340)、CH3ドメイン(EUナンバリングによる抗体Fc領域のおよそアミノ酸341~438)、CH4ドメイン、またはそのバリアント、部分、もしくは断片のうちの少なくとも1つを含む。他の実施形態では、Fc領域は、完全なFcドメイン(すなわち、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン)を含む。一部の実施形態では、Fc領域は、CH3ドメイン(またはその一部)に融合したヒンジドメイン(またはその一部)、CH2ドメイン(またはその一部)に融合したヒンジドメイン(またはその一部)、CH3ドメイン(またはその一部)に融合したCH2ドメイン(またはその一部)、ヒンジドメイン(またはその一部)とCH3ドメイン(またはその一部)の両方に融合したCH2ドメイン(またはその一部)を含む、それらから本質的になる、またはそれらからなる。さらに他の実施形態では、Fc領域は、CH2ドメインの少なくとも一部(例えば、CH2ドメインの全部または部分)を欠く。特定の実施形態では、Fc領域は、EU番号221~447に対応するアミノ酸を含むか、またはそれからなる。
【0213】
本明細書でF、F1、またはF2と示されるFc領域を、いくつかの異なる供給源から取得することができる。一実施形態では、ポリペプチドのFc領域は、ヒトIgに由来する。しかしながら、Fc領域は、例えば、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、もしくはモルモット)または非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー、マカク)種を含む、別の哺乳動物種のIgに由来してもよいことが理解される。さらに、Fcドメインまたはその部分のポリペプチドは、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む任意のIgクラスならびにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意のIgアイソタイプに由来してもよい。別の実施形態では、ヒトアイソタイプIgG1が使用される。
【0214】
ある特定の実施形態では、Fcバリアントは、野生型Fcドメインを含むFc領域によって付与される少なくとも1つのエフェクター機能の変化(例えば、Fc受容体(例えば、FcγRIもしくはFcγRIIIへの結合の減少またはFcRnもしくはFcγRIIへの結合の改善)、補体タンパク質(例えば、C1q)、または他のFc結合パートナー(例えば、DC-SIGNへの結合の改善)に結合する、または抗体依存的細胞傷害性(ADCC)、食作用、もしくは補体依存的細胞傷害性(CDCC)を誘発するFc領域の能力の改善または減少)を提供する。他の実施形態では、Fcバリアントは、操作されたシステイン残基を提供する。
【0215】
本発明のFc領域は、エフェクター機能および/またはFcR結合の変化(例えば、増強または低下)を与えることが知られる当業界で認識されたFcバリアントを用いてもよい。具体的には、本発明の結合分子は、、その各々が参照により本明細書に組み込まれる、例えば、国際PCT公開WO88/07089A1、WO96/14339A1、WO98/05787A1、WO98/23289A1、WO99/51642A1、WO9
9/58572A1、WO00/09560A2、WO00/32767A1、WO00/42072A2、WO02/44215A2、WO02/060919A2、WO03/074569A2、WO04/016750A2、WO04/029207A2、WO04/035752A2、WO04/063351A2、WO04/074455A2、WO04/099249A2、WO05/040217A2、WO04/044859、WO05/070963A1、WO05/077981A2、WO05/092925A2、WO05/123780A2、WO06/019447A1、WO06/047350A2、およびWO06/085967A2;米国特許出願公開第2007/0231329号、第2007/0231329号、第2007/0237765号、第2007/0237766号、第2007/0237767号、第2007/0243188号、第20070248603号、第20070286859号、第20080057056号;または米国特許第5,648,260号;第5,739,277号;第5,834,250号;第5,869,046号;第6,096,871号;第6,121,022号;第6,194,551号;第6,242,195号;第6,277,375号;第6,528,624号;第6,538,124号;第6,737,056号;第6,821,505号;第6,998,253号;第7,083,784号;第7,404,956号、および第7,317,091号に開示された1つまたはそれ以上のアミノ酸位置に変化(例えば、置換)を含んでもよい。一実施形態では、特異的変化(例えば、当業界で開示された1つまたはそれ以上のアミノ酸の特異的置換)を、1つまたはそれ以上の開示されたアミノ酸位置に作製することができる。別の実施形態では、1つまたはそれ以上の開示されたアミノ酸位置での異なる変化(例えば、1つまたはそれ以上の当業界で開示されたアミノ酸位置の異なる置換)を作製することができる。
【0216】
Fc領域を、部位特異的突然変異誘発などのよく認識された手順に従って改変して、FcRn、FcγRIIBおよび/またはDC-SIGNが結合する改変されたFc断片またはその部分を得ることができる。そのような改変は、FcRn、FcγRIIBおよび/またはDC-SIGN接触部位から離れた改変ならびにFcRn、FcγRIIBおよび/またはDC-SIGNへの結合を保存する、またはさらには増強する接触部位内の改変を含む。例えば、ヒトIgG1 Fc(Fcγ1)中の以下の単一のアミノ酸残基:P238A、S239A、K246A、K248A、D249A、M252A、T256A、E258A、T260A、D265A、S267A、H268A、E269A、D270A、E272A、L274A、N276A、Y278A、D280A、V282A、E283A、H285A、N286A、T289A、K290A、R292A、E293A、E294A、Q295A、Y296F、N297A、S298A、Y300F、R301A、V303A、V305A、T307A、L309A、Q311A、D312A、N315A、K317A、E318A、K320A、K322A、S324A、K326A、A327Q、P329A、A330Q、P331A、E333A、K334A、T335A、S337A、K338A、K340A、Q342A、R344A、E345A、Q347A、R355A、E356A、M358A、T359A、K360A、N361A、Q362A、Y373A、S375A、D376A、A378Q、E380A、E382A、S383A、N384A、Q386A、E388A、N389A、N390A、Y391F、K392A、L398A、S400A、D401A、D413A、K414A、R416A、Q418A、Q419A、N421A、V422A、S424A、E430A、N434A、T437A、Q438A、K439A、S440A、S444A、およびK447Aを、FcRn、FcγRIIBおよび/またはDC-SIGNに対するFc結合親和性の有意な喪失なく置換することができ、ここで、例えば、P238Aは、位置番号238でアラニンによって置換された野生型プロリンを表す。
【0217】
例として、特定の実施形態は、高度に保存されたN-グリコシル化部位を除く、N297A変異を含む。アラニンに加えて、他のアミノ酸を、上記で特定された位置で野生型ア
ミノ酸に置換することができる。変異を、Fc中に単一に導入して、天然のFcと異なる100個を超えるFc領域を生じさせることができる。さらに、2個、3個、またはそれ以上のこれらの個々の変異の組合せを一緒に導入して、さらに数百個のFc領域を生じさせることができる。さらに、本発明の構築物のFc領域の1つを変異させ、構築部の他のFc領域を全く変異させないか、またはその両方を、異なる変異を用いるが変異させることができる。
【0218】
一実施形態では、Fcドメインまたはその一部は、米国特許第5,739,277号の配列番号3を含み、場合により、米国特許第5,739,277号の配列番号11、1、2および31から選択される配列をさらに含むポリペプチドである。
【0219】
ある特定の実施形態では、Fcドメインまたはその一部は、ヘミグリコシル化される。例えば、2つのFc領域を含むキメラタンパク質は、第1の、グリコシル化されたFc領域(例えば、グリコシル化されたCH2領域)と、第2の、無グリコシル化されたFc領域(例えば、無グリコシル化されたCH2領域)とを含有してもよい。一実施形態では、グリコシル化されたFc領域と無グリコシル化されたFc領域との間に、リンカーを置くことができる。別の実施形態では、Fc領域は完全にグリコシル化される、すなわち、Fc領域の全てがグリコシル化される。他の実施形態では、Fc領域は無グリコシル化されてもよい、すなわち、Fc部分はいずれもグリコシル化されない。
【0220】
ある特定の実施形態では、本発明のキメラタンパク質は、Fcドメインの抗原非依存的エフェクター機能、特に、タンパク質の循環半減期を変化させる、Fcドメインまたはその一部(例えば、Fcバリアント)に対するアミノ酸置換を含む。
【0221】
本発明において使用されるFc領域はまた、キメラタンパク質のグリコシル化を変化させる当業界で認識されたアミノ酸置換を含んでもよい。例えば、FVIIIタンパク質またはFXIタンパク質に連結されたキメラタンパク質のFc領域は、グリコシル化(例えば、N-もしくはO-結合グリコシル化)の減少をもたらす変異を有するFc領域を含んでもよいか、または野生型Fc部分の糖型の変化(例えば、低フコースもしくは無フコースグリカン)を含んでもよい。
【0222】
一実施形態では、本発明のプロセッシングされていないキメラタンパク質は、本明細書に記載のIg定常領域またはその一部から独立に選択される、2つまたはそれ以上のその構成要素Ig定常領域またはその一部を有する遺伝的に融合されたFc領域(すなわち、scFc領域)を含んでもよい。一実施形態では、二量体Fc領域のFc領域は同じである。別の実施形態では、少なくとも2つのFc領域は異なる。例えば、本発明のタンパク質のFc領域は、同じ数のアミノ酸残基を含むか、またはそれらは1つもしくはそれ以上のアミノ酸残基(例えば、約5個のアミノ酸残基(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸残基)、約10個の残基、約15個の残基、約20個の残基、約30個の残基、約40個の残基、もしくは約50個の残基)によって長さが異なってもよい。さらに他の実施形態では、本発明のタンパク質のFc領域は、1つまたはそれ以上のアミノ酸位置において配列が異なっていてもよい。例えば、少なくとも2つのFc領域は、約5個のアミノ酸位置(例えば、1、2、3、4もしくは5個のアミノ酸位置)、約10個の位置、約15個の位置、約20個の位置、約30個の位置、約40個の位置、または約50個の位置で異なっていてもよい。
【0223】
一部の実施形態では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、1個より多いポリペプチド鎖を含む。一部の実施形態では、キメラタンパク質は、2個のポリペプチド鎖を含む。ある特定の実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、凝固因子と第1のFc領域とを含み、第2のポリペプチド鎖は、第2のFc領域を含む。ある特定の実施形態
では、第1のFc領域と第2のFc領域は、共有結合によって結合する。一実施形態では、第1のFc領域と第2のFc領域は、ペプチド結合によって結合する。別の実施形態では、第1のFc領域と第2のFc領域は、ジスルフィド結合によって結合する。
【0224】
1つの特定の実施形態では、キメラタンパク質は、第VIII因子部分およびフォンヴィレブランド因子(VWF)部分を含み、ここで、FVIII部分は、FVIIIポリペプチドまたはその断片を含み、VWF部分は、VWFポリペプチドまたはその断片を含み、FVIII部分は、第1のFc領域に連結され、VWF部分は、第2のFc領域に連結され、第1のFc領域と第2のFc領域は、互いに結合する。ある特定の実施形態では、VWF部分は、VWFのD’およびD3ドメインを含む。一実施形態では、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド、または第1のポリペプチドと第2のポリペプチドの両方は、1つまたはそれ以上の半減期延長部分をさらに含む。
【0225】
本開示の方法において使用されるキメラタンパク質を産生するためのFc領域またはその一部を、いくつかの異なる供給源から取得することができる。一部の実施形態では、Fc領域またはその一部は、ヒトIgに由来する。しかしながら、Fc領域またはその一部は、例えば、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、もしくはモルモット)または非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー、マカク)種を含む、別の哺乳動物種のIgに由来してもよいことが理解される。さらに、Fc領域またはその一部は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む任意のIgクラスならびにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意のIgアイソタイプに由来してもよい。一実施形態では、ヒトアイソタイプIgG1が使用される。
【0226】
様々なFc領域遺伝子配列(例えば、ヒトFc遺伝子配列)が、公共的にアクセス可能な寄託物の形態で利用可能である。特定のエフェクター機能を有する(もしくは特定のエフェクター機能を欠く)、または免疫原性を低下させる特定の改変を有するFc配列を選択することができる。抗体および抗体コード遺伝子の多くの配列が公開されており、好適なFc領域配列を、当業界で認識された技術を使用してこれらの配列から誘導することができる。次いで、前記方法のいずれかを使用して得られた遺伝子材料を変化させるか、または合成して、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質を取得することができる。さらに、本発明の範囲は、定常領域DNA配列の対立遺伝子、バリアントおよび変異を包含することが理解される。
【0227】
Fcまたはその一部の配列を、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応および目的のドメインを増幅するように選択されるプライマーを使用してクローニングすることができる。抗体に由来するFc領域またはその一部の配列をクローニングするために、mRNAをハイブリドーマ、脾臓、またはリンパ細胞から単離し、DNAに逆転写し、抗体遺伝子をPCRによって増幅することができる。PCR増幅法は、米国特許第4,683,195号;第4,683,202号;第4,800,159号;第4,965,188号;および例えば、「PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications」、Innisら(編)、Academic Press、San Diego、CA(1990);Hoら、1989.Gene 77:51頁;Hortonら、1993.Methods Enzymol.217:270頁に詳細に記載されている。コンセンサス定常領域プライマーによって、または公開された重鎖および軽鎖のDNAおよびアミノ酸配列に基づくより特異的なプライマーによって、PCRを開始することができる。上記で考察された通り、PCRを使用して、抗体軽鎖および重鎖をコードするDNAクローンを単離することもできる。この場合、コンセンサスプライマーまたはマウス定常領域プローブなどのより大きい相同なプローブによってライブラリーをスクリーニングすることができる。抗体遺伝子の増幅にとって好適ないくつかのプライマーセットが当業界で公知である(例えば、精製された抗体のN末端配列に基づく5’プラ
イマー(BenharおよびPastan、1994、Protein Engineering 7:1509頁);cDNA末端の急速増幅(Ruberti,F.ら、1994、J.Immunol.Methods 173:33頁);抗体リーダー配列(Larrickら、1989、Biochem.Biophys.Res.Commun.160:1250頁))。抗体配列のクローニングは、参照により本明細書に組み入れられる、1995年1月25日に出願されたNewmanらの米国特許第5,658,570号にさらに記載されている。
【0228】
II.B.半減期延長部分
一部の実施形態では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、1つまたはそれ以上の半減期延長部分をさらに含む。凝固因子の半減期を、当業者には公知の任意の方法、例えば、血漿FVIII活性を検出するためのFVIII活性アッセイ(発色アッセイもしくは1段階凝固aPTTアッセイ)または血漿FVIII/FIX抗原レベルを検出するためのFVIII/FIX ELISAによって決定することができる。特定の実施形態では、凝固因子の凝固活性の半減期は、凝固1段法によって決定される。より特定の実施形態では、凝固因子の凝固活性の半減期は、HemAマウスまたはFVIIIとフォンヴィレブランド因子二重ノックアウト(DKO)マウスにおいて決定される。
【0229】
ある特定の態様では、本発明の凝固因子の半減期を増加させる異種部分は、限定されるものではないが、アルブミン、免疫グロブリンFc領域、XTEN配列、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、PAS配列、HAP配列、トランスフェリン、アルブミン結合部分などの異種ポリペプチド、またはこれらのペプチドの任意の断片、誘導体、バリアント、もしくは組合せを含む。他の関連する態様では、半減期延長部分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルスターチ(HES)、ポリシアル酸などの非ポリペプチド部分、またはこれらの部分の任意の誘導体、バリアント、もしくは組合せのための結合部位を含んでもよい。ある特定の実施形態では、半減期延長部分は、アルブミンもしくはその断片、アルブミン結合部分、PAS配列、HAP配列、トランスフェリンもしくはその断片、またはその任意の組合せを含む。一部の実施形態では、半減期延長部分は、XTENを含まない。他の実施形態では、半減期延長部分は、XTENを含む。
【0230】
他の実施形態では、本発明のキメラタンパク質は、1つまたはそれ以上のポリマーにコンジュゲートされる。ポリマーは、水溶性または非水溶性であってもよい。ポリマーを、凝固因子、Fcまたは凝固因子もしくはFcにコンジュゲートされた他の部分に共有的または非共有的に結合することができる。ポリマーの非限定例は、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリオキサゾリン、またはポリ(アクリロイルモルホリン)であってもよい。例えば、ポリマーにコンジュゲートしたFVIIIのさらなる型は、その全体が参照により開示される、米国得特許第7,199,223号に開示されている。
【0231】
ある特定の態様では、本発明のキメラタンパク質は、それぞれ同じか、または異なる分子であってもよい、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の半減期延長部分を含んでもよい。
【0232】
一部の実施形態では、半減期延長部分は、キメラポリペプチドのN末端またはC末端に融合される。一部の実施形態では、半減期延長部分は、凝固因子のN末端またはC末端に融合される。一部の実施形態では、半減期延長部分は、FcのN末端またはC末端に融合される。ある特定の実施形態では、半減期延長部分は、キメラタンパク質の凝固因子内に挿入される。
【0233】
一部の実施形態では、キメラタンパク質は、FVIIIまたはその一部を含み、半減期
延長部分は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2015-0158929号A1および/または国際公開第WO2015106052号A1に開示された1つまたはそれ以上の位置でFVIII内に挿入される。1つの特定の実施形態では、半減期延長部分は、FVIIIのBドメイン(またはその断片)内に挿入される。1つの特定の実施形態では、半減期延長部分は、成熟FVIIIのアミノ酸残基745のすぐ下流でFVIII内に挿入される。
【0234】
他の実施形態では、キメラタンパク質は、FIXまたはその一部を含み、半減期延長部分は、国際出願第PCT/US16/045401号に開示された1つまたはそれ以上の位置でFIX内に挿入される。1つの特定の実施形態では、半減期延長部分は、成熟Padua FIXのアミノ酸103、アミノ酸105、アミノ酸142、アミノ酸149、アミノ酸162、アミノ酸166、アミノ酸174、アミノ酸224、アミノ酸226、アミノ酸228、アミノ酸413からなる群から選択されるアミノ酸残基のすぐ下流の挿入部位でFIX内に挿入される。一実施形態では、キメラタンパク質は、FIXとFc領域とを含み、FIXは、FIXの活性化ペプチド(AP)ドメイン内に挿入された半減期延長部分を含む。1つの特定の実施形態では、キメラタンパク質は、FIXとFc領域とを含み、FIXは、成熟Padua FIXのアミノ酸残基166のすぐ下流でFIX内に挿入された半減期延長部分を含む。
【0235】
II.B.1.アルブミン
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、少なくとも1つのアルブミンポリペプチドまたはその断片、バリアント、もしくは誘導体を含む。ヒト血清アルブミン(HSA、またはHA)、その完全長形態で609アミノ酸のタンパク質は、血清の浸透圧の有意な割合を占め、内因性および外因性リガンドの担体としても機能する。本明細書で使用される用語「アルブミン」は、完全長アルブミンまたはその機能的断片、バリアント、誘導体、もしくは類似体を含む。アルブミンまたはその断片もしくはバリアントの例は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許公開第2008/0194481号A1、第2008/0004206号A1、第2008/0161243号A1、第2008/0261877号A1、もしくは第2008/0153751号A1またはPCT出願公開第2008/033413号A2、第2009/058322号A1、もしくは第2007/021494号A2に開示されている。
【0236】
アルブミン結合ポリペプチド(ABP)は、限定されるものではないが、アルブミンに結合することができる、細菌アルブミン結合ドメイン、アルブミン結合ペプチド、またはアルブミン結合抗体断片を含んでもよい。Kraulisら、FEBS Lett.378:190~194頁(1996)およびLinhultら、Protein Sci.11:206~213頁(2002)によって開示された、連鎖球菌プロテインGに由来するドメイン3は、細菌アルブミン結合ドメインの例である。アルブミン結合ペプチドの例は、Dennisら、J.Biol.Chem.2002、277:35035~35043頁(2002)に開示されている。アルブミン結合抗体断片の例は、MullerおよびKontermann、Curr.Opin.Mol.Ther.9:319~326頁(2007);Rooversら、Cancer Immunol.Immunother.56:303~317頁(2007)、およびHoltら、Prot.Eng.Design Sci.、21:283~288頁(2008)に開示されており、これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0237】
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、非ポリペプチド低分子、アルブミンに結合することができるそのバリアント、または誘導体のための少なくとも1個の結合部位を含む。例えば、キメラタンパク質は、1つまたはそれ以上の有機アルブミン結合部分を含んでもよい。そのようなアルブミン結合部分の例は、Tr
usselら、Bioconjugate Chem.20:2286~2292頁(2009)によって開示されたような、2-(3-マレイミドプロパンアミド)-6-(4-(4-ヨードフェニル)ブタンアミド)ヘキサノエート(「Albu」タグ)である。
【0238】
II.B.2.XTEN
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、少なくとも1つのXTENポリペプチドまたはその断片、バリアント、もしくは誘導体を含む。本明細書で使用される場合、「XTEN配列」とは、生理的条件下で低い程度の構造を有するか、または二次もしくは三次構造を有さない配列と共に、主に小さい親水性のアミノ酸を含む、天然には存在しない、実質的に非反復的な配列を有する伸長した長さのポリペプチドを指す。キメラタンパク質パートナーと同様、XTENは、例えば、キメラタンパク質の凝固因子と融合した場合、またはその中に挿入された場合、ある特定の望ましい薬物動態特性、物理化学特性および薬学特性を提供する担体として働くことができる。そのような望ましい特性としては、限定されるものではないが、薬物動態パラメータおよび溶解度特性の増強が挙げられる。
【0239】
本開示の方法において有用なキメラタンパク質の凝固因子と融合した、またはその中に挿入されたXTEN配列は、キメラタンパク質に、1つまたはそれ以上の以下の有意な特性:コンフォメーションの可撓性、水性溶解度の増強、高い程度のプロテアーゼ耐性、低い免疫原性、哺乳動物受容体への低い結合、または水力学(またはStokes)半径の増大を提供することができる。ある特定の態様では、XTEN配列は、キメラタンパク質がin vivoに留まり、XTENを含まないキメラタンパク質と比較して長期間にわたって凝血促進活性を有するように、より長い半減期(例えば、in vivoでの半減期)または曲線下面積(AUC)の増大などの薬物動態特性を増大させることができる。
【0240】
本発明の組換えFVIIIタンパク質中に挿入することができるXTEN配列の例は、例えば、米国特許出願公開第2010/0239554号A1、第2010/0323956号A1、第2011/0046060号A1、第2011/0046061号A1、第2011/0077199号A1、もしくは第2011/0172146号A1、または国際特許出願公開第WO2010091122号A1、第WO2010144502号A2、第WO2010144508号A1、第WO2011028228号A1、第WO2011028229号A1、第WO2011028344号A2、もしくは第WO2015106052号A1に開示されており、それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0241】
II.B.3.VWFまたはその断片
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、少なくとも1つのVWFポリペプチドまたはその断片、バリアント、もしくは誘導体を含む。VWF(F8VWFとしても公知である)は、血漿中に存在する大きい、多量体糖タンパク質であり、内皮(バイベル-パラーデ小体)、巨核球(血小板のα-顆粒)、および内皮下結合組織中で構成的に産生される。塩基性VWF単量体は、2813アミノ酸のタンパク質である。全ての単量体は、特異的機能を有するいくつかの特異的ドメイン、D’/D3ドメイン(第VIII因子に結合する)、A1ドメイン(血小板GPIb-受容体、ヘパリン、および/またはおそらくコラーゲンに結合する)、A3ドメイン(コラーゲンに結合する)、C1ドメイン(RGDドメインが、血小板インテグリンαIIbβ3が活性化された場合にこれに結合する)、およびタンパク質のC末端の「システインノット」ドメイン(VWFが血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子-β(TGFβ)およびβ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(βHCG)と共有する)を含有する。
【0242】
一実施形態では、VWFポリペプチドは、VWF断片である。本明細書で使用される用
語「VWF断片」としては、限定されるものではないが、内因性VWFのFVIIIへの結合を阻害することができる、D’ドメインとD3ドメインとを含む機能的VWF断片が挙げられる。一実施形態では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、凝固因子、Fc領域、およびVWF断片を含み、ここで、凝固因子はFVIIIを含み、VWF断片はFVIIIタンパク質に結合する。別の実施形態では、VWF断片は、FVIIIタンパク質上のVWF結合部位を遮断することによって、FVIIIタンパク質と、内因性VWFとの相互作用を阻害する。VWF断片は、VWFのこれらの活性を保持する誘導体、バリアント、変異体、または類似体を含む。ある特定の実施形態では、VWF断片は、VWFのD’ドメインとD3ドメインとを含む。
【0243】
ヒトVWFの2813個の単量体アミノ酸配列は、Genbankに受託番号NP_000543.2として報告されている。ヒトVWFをコードするヌクレオチド配列は、GenbankにNM_000552.3として報告されている。
【0244】
ある特定の実施形態では、本明細書において有用なVWFタンパク質をさらに改変して、FVIIIとのその相互作用を改善する、例えば、FVIIIに対する結合親和性を改善することができる。他の実施形態では、本発明にとって有用なVWFタンパク質は、他の改変を有してもよく、例えば、タンパク質をペグ化、グリコシル化、ヘシル化、またはポリシアル化することができる。本開示の方法において有用な例示的なVWF配列は、例えば、米国特許出願公開第US2015/0023959号A1、第US2015/0266943号A1、および第US2015/0158929号に提供されている。ある特定の実施形態では、VWFタンパク質またはその断片は、FcRn結合パートナーに融合されるか、またはそれと同時投与される。一部の実施形態では、VWFタンパク質またはその断片は、Fcに融合されるか、またはFcもしくはFcを含むポリペプチドと同時投与される。一部の実施形態では、VWFタンパク質またはその断片は、アルブミンに融合されるか、またはアルブミンもしくはアルブミンを含むポリペプチドと同時投与される。
【0245】
II.B.4.CTP
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットの少なくとも1つのC末端ペプチド(CTP)またはその断片、バリアント、もしくは誘導体を含む。CTPペプチドは、そのタンパク質の半減期を増加させることが公知である。例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,712,122号を参照されたい。非限定的なCTPペプチドは、参照により組み入れられる、米国特許出願公開第US2009/0087411号A1に開示されている。
【0246】
II.B.5.PAS
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、少なくとも1つのPASペプチドまたはその断片、バリアント、もしくは誘導体を含む。本明細書で使用される場合、PASペプチドまたはPAS配列は、主にアラニンおよびセリン残基を含むか、または主にアラニン、セリン、およびプロリン残基を含むアミノ酸配列を意味し、そのアミノ酸配列は、生理的条件下でランダムコイルコンフォメーションを形成する。したがって、PAS配列は、キメラタンパク質において異種部分の一部として使用することができる、アラニン、セリン、およびプロリンを含む、それから本質的になる、またはそれからなる構成要素、アミノ酸ポリマー、または配列カセットである。アミノ酸ポリマーはまた、アラニン、セリン、およびプロリン以外の残基がPAS配列中のマイナーな構成要素として付加された場合、ランダムコイルコンフォメーションを形成することもできる。「マイナーな構成要素」とは、アラニン、セリン、およびプロリン以外のアミノ酸を、ある特定の程度まで、例えば、約12%まで、すなわち、PAS配列の100アミノ酸のうちの約12個まで、約10%まで、約9%まで、約8%まで、約6%、約5%、約
4%、約3%、すなわち、約2%、または約1%のアミノ酸まで、PAS配列中に付加することができることを意味する。アラニン、セリンおよびプロリンとは異なるアミノ酸を、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Thr、Trp、Tyr、およびValからなる群から選択することができる。生理的条件下で、PASペプチドは、ランダムコイルコンフォメーションを形成し、それによって、本発明の組換えタンパク質に対するin vivoおよび/またはin vitroでの安定性の増大を媒介し、凝固促進活性を有する。
【0247】
PASペプチドの非限定例は、例えば、米国特許出願公開第2010/0292130号A1;PCT出願公開第WO2008/155134号A1;および欧州特許第EP2173890号に開示されている。
【0248】
II.B.6.HAP
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、少なくとも1つのホモアミノ酸ポリマー(HAP)ペプチドまたはその断片、バリアント、もしくは誘導体を含む。HAPペプチドは、少なくとも50アミノ酸長、少なくとも100アミノ酸長、120アミノ酸長、140アミノ酸長、160アミノ酸長、180アミノ酸長、200アミノ酸長、250アミノ酸長、300アミノ酸長、350アミノ酸長、400アミノ酸長、450アミノ酸長、または500アミノ酸長を有する、グリシンの反復配列を含んでもよい。HAP配列は、HAP配列に融合された、または連結された部分の半減期を延長することができる。HAPPY配列の非限定例としては、限定されるものではないが、(Gly)n(Gly4Ser)nまたはS(Gly4Ser)n(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20である)が挙げられる。一実施形態では、nは、20、21、22、23、24、25、26、26、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40である。別の実施形態では、nは、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200である。例えば、Schlapschy Mら、Protein Eng.Design Selection、20:273~284頁(2007)を参照されたい。
【0249】
II.B.7.トランスフェリン
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、少なくとも1つのトランスフェリンペプチドまたはその断片、バリアント、もしくは誘導体を含む。任意のトランスフェリンを、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質と融合することができる。例として、野生型ヒトTf(Tf)は、遺伝子複製の結果生じると考えられる、2個の主なドメイン、N(約330アミノ酸)およびC(約340アミノ酸)を有する、約75kDa(グリコシル化を占めない)の679アミノ酸タンパク質である。GenBank受託番号NM001063、XM002793、M12530、XM039845、XM039847およびS95936(www.ncbi.nlm.nih.gov)を参照されたい(これらは全てその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。
【0250】
トランスフェリンは、トランスフェリン受容体(TfR)媒介性エンドサイトーシスを介して鉄を輸送する。鉄がエンドソーム区画中に放出され、Tf-TfR複合体が細胞表面に再循環した後、Tfは鉄輸送の次のサイクルのために細胞外空間に放出し戻される。Tfは、14~17日を上回る長い半減期を有する(Liら、Trends Pharmacol.Sci.23:206~209頁(2002))。トランスフェリン融合タンパク質は、半減期延長、がん療法のための標的送達、経口送達およびプロインスリンの持続的活性化について研究されている(Brandsmaら、Biotechnol.Ad
v.、29:230~238頁(2011);Baiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:7292~7296頁(2005);Kimら、J.Pharmacol.Exp.Ther.、334:682~692頁(2010);Wangら、J.Controlled Release 155:386~392頁(2011))。
【0251】
II.B.8.PEG
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、非ポリペプチド異種部分のための少なくとも1つの結合部位またはその断片、バリアント、もしくは誘導体を含む。例えば、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、凝固因子および/またはFc領域中の1つまたはそれ以上のアミノ酸残基に結合した1つまたはそれ以上のポリエチレングリコール(PEG)部分を含んでもよい。
【0252】
タンパク質のPEG化は、タンパク質と、少なくとも1つのポリエチレングリコール(PEG)分子との間に形成されるコンジュゲートを指してもよい。PEGは、様々な分子量および平均分子量範囲で商業的に入手可能である。PEG平均分子量範囲の典型例としては、限定されるものではないが、約200、約300、約400、約600、約1000、約1300~1600、約1450、約2000、約3000、約3000~3750、約3350、約3000~7000、約3500~4500、約5000~7000、約7000~9000、約8000、約10000、約8500~11500、約16000~24000、約35000、約40000、約60000、および約80000ダルトンが挙げられる。これらの平均分子量は、単に例として提供されるものであり、いかなる意味でも限定を意味するものではない。
【0253】
本開示の方法において使用されるキメラタンパク質を、モノ-またはポリ-(例えば、2~4個)PEG部分を含むようにPEG化することができる。PEG化は、当業界で公知の任意のPEG化反応によって実行することができる。PEG化されたタンパク質産物を調製するための方法は、一般に、(i)本発明のペプチドが1つまたはそれ以上のPEG基に結合するようになる条件下で、ポリペプチドと、ポリエチレングリコール(PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体など)と反応させること;および(ii)反応生成物を取得することを含むであろう。一般に、反応のための最適な反応条件は、公知のパラメータおよび所望の結果に基づいて、個別的に決定されるであろう。
【0254】
当業者には利用可能ないくつかのPEG結合法が存在し、例えば、Malik Fら、Exp.Hematol.20:1028~35頁(1992);Francis、Focus on Growth Factors 3(2):4~10頁(1992);欧州特許公開第EP0401384号、第EP0154316号、および第EP0401384号;ならびに国際特許出願公開第WO92/16221号および第WO95/34326号を参照されたい。非限定例として、FVIIIバリアントは、システイン置換を含有してもよく、システインをPEGポリマーにさらにコンジュゲートすることができる。全体が参照により本明細書に組み入れられる、Meiら、Blood 116:270~279頁(2010)および米国特許第7,632,921号を参照されたい。
【0255】
II.B.9.HES
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、少なくとも1つのヒドロキシエチルスターチ(HES)ポリマーを含む。HESは、天然に存在するアミロペクチンの誘導体であり、体内でアルファ-アミラーゼによって分解される。HESは、有意な生物学的特性を示し、診療所において血液量交換剤として、および血液希釈療法において使用される。例えば、Sommermeyerら、Krankenhauspharmazie 8:271~278頁(1987);およびWeidlerら、
Arzneim.-Forschung/Drug Res.41:494~498頁(1991)を参照されたい。
【0256】
HESは、分子量分布および置換度によって主に特徴付けられる。HESは、1~300kD、2~200kD、3~100kD、または4~70kDの平均分子量(重量平均)を有する。ヒドロキシエチルスターチはさらに、0.1~3、0.1~2、0.1~0.9、または0.1~0.8のモル置換度、およびヒドロキシエチル基に関して2~20の範囲のC2:C6置換比を示してもよい。約130kDの平均分子量を有するHESは、FreseniusからのVOLUVEN(登録商標)である。VOLUVEN(登録商標)は、例えば、血液量減少の療法および予防のための治療適応において使用される体積交換のために用いられる、人工コロイドである。当業者に利用可能ないくつかのHES結合法、例えば、上記の同じPEG結合法が存在する。
【0257】
II.B.10.PSA
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質は、少なくとも1つのポリシアル酸(PSA)ポリマーを含む。PSAは、ある特定の細菌株によって、および哺乳動物において、ある特定の細胞中で産生されるシアル酸の天然に存在する非分枝ポリマーである。例えば、Roth J.ら(1993)Polysialic Acid:From Microbes to Man編、Roth J.,Rutishauser U.、Troy F.A.(BirkhauserVerlag、Basel、Switzerland)、335~348頁を参照されたい。PSAを、限定的酸加水分解またはノイラミニダーゼを用いた消化、または天然の細菌由来型のポリマーの分画によって、n=約80またはそれ以上のシアル酸残基からn=2までの様々な重合度で産生することができる。ある特定の態様では、活性化されたPSAを、凝固因子内、例えば、FVIIIまたはFIX上、またはFc領域内のシステインアミノ酸残基に結合させることもできる。例えば、米国特許第5,846,951号を参照されたい。
【0258】
II.B.11.クリアランス受容体
ある特定の態様では、本開示の方法において使用されるキメラタンパク質の半減期を、キメラタンパク質の凝固因子がFVIIIおよびFVIIIクリアランス受容体の少なくとも1つの断片またはそのFVIII結合断片、バリアント、もしくは誘導体を含む場合、延長することができる。低密度リポタンパク質関連タンパク質受容体LRP1、またはその断片などの可溶型のクリアランス受容体の挿入は、FVIIIのクリアランス受容体への結合を遮断し、それによって、その半減期、例えば、in vivoでの半減期を延長することができる。LRP1は、FVIIIを含む、様々なタンパク質の受容体媒介性クリアランスに関与する600kDaの内在性膜タンパク質である。例えば、Lentingら、Haemophilia 16:6~16頁(2010)を参照されたい。他の好適なFVIIIクリアランス受容体は、例えば、LDLR(低密度リポタンパク質受容体)、VLDLR(超低密度リポタンパク質受容体)、およびメガリン(LRP-2)、またはその断片である。例えば、Bovenschenら、Blood 106:906~912頁(2005);Bovenschen、Blood 116:5439~5440頁(2010);Martinelliら、Blood 116:5688~5697頁(2010)を参照されたい。
【0259】
III.ポリヌクレオチド、ベクター、および宿主細胞
一部の態様では、本開示は、血友病を有するヒトにおける関節の可逆性血友病性関節症を処置する方法であって、ヒトに、凝固因子および/またはFc領域をコードする、例えば、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質をコードする、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットの有効量を投与することを含む、前記方法を提供する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットは、発現ベクターま
たは発現ベクターのセットの中にある。ある特定の実施形態では、発現ベクターまたは発現ベクターのセットは、1つまたはそれ以上の宿主細胞の中にある。
【0260】
本開示の方法において使用される、凝固因子および/またはFc領域をコードする、例えば、凝固因子とFc領域とを含むキメラタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、単一のヌクレオチド配列、2つのヌクレオチド配列、3つのヌクレオチド配列、またはそれ以上であってもよい。一実施形態では、単一のヌクレオチド配列は、凝固因子(例えば、FVIIIまたはFIXポリペプチド)とFc領域とを含むキメラタンパク質をコードする。別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、2つのヌクレオチド配列、凝固因子(例えば、FVIII)をコードする第1のヌクレオチド配列と、Fc領域をコードする第2のヌクレオチド配列とを含む。別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、2つのヌクレオチド、凝固因子(例えば、FVIIIまたはFIX)とFc領域とをコードする第1のヌクレオチド配列と、第2のFc領域をコードする第2のヌクレオチド配列とを含む。ある特定の実施形態では、コードされたFcドメインは、発現後に共有結合を形成する。
【0261】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、コドン最適化される。
【0262】
本明細書で使用される場合、発現ベクターとは、適切な宿主細胞中に導入された場合、挿入されたコード配列の転写および翻訳のための必須エレメント、またはRNAウイルスベクターの場合、複製および翻訳のための必須エレメントを含有する任意の核酸構築物を指す。発現ベクターは、プラスミド、ファージミド、ウイルス、およびその誘導体を含んでもよい。
【0263】
本明細書で使用される遺伝子発現制御配列は、それが作動可能に連結されたコード核酸の効率的な転写および翻訳を容易にする、プロモーター配列またはプロモーター-エンハンサー組合せなどの、任意の調節ヌクレオチド配列である。遺伝子発現制御配列は、例えば、構成的または誘導的プロモーターなどの、哺乳動物またはウイルスプロモーターであってもよい。構成的哺乳動物プロモーターとしては、限定されるものではないが、以下の遺伝子のためのプロモーター:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ベータ-アクチンプロモーター、および他の構成的プロモーターが挙げられる。真核細胞中で構成的に機能する例示的なウイルスプロモーターとしては、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスの長い末端反復(LTR)、および他のレトロウイルスに由来するプロモーター、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。他の構成的プロモーターは、当業者には公知である。本発明の遺伝子発現配列として有用なプロモーターは、誘導的プロモーターも含む。誘導的プロモーターは、誘導剤の存在下で発現される。例えば、メタロチオネインプロモーターは、ある特定の金属イオンの存在下での転写および翻訳を促進するために誘導される。他の誘導的プロモーターは、当業者には公知である。
【0264】
本発明の目的のために、いくつかの発現ベクター系を用いることができる。これらの発現ベクターは、典型的には、エピソームまたは宿主染色体DNAの完全な部分として宿主細胞中で複製可能である。発現ベクターは、限定されるものではないが、プロモーター(例えば、天然で関連する、または異種性のプロモーター)、エンハンサー、シグナル配列、スプライスシグナル、エンハンサーエレメント、および転写終結配列を含む、発現制御配列を含んでもよい。好ましくは、発現制御配列は、真核宿主細胞を形質転換するか、またはトランスフェクトすることができるベクター中の真核プロモーター系である。発現ベクターはまた、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTVもしくはMOML
V)、サイトメガロウイルス(CMV)、またはSV40ウイルスなどの動物ウイルスに由来するDNAエレメントを利用することもできる。その他は、内部リボソーム結合部位を有する多シストロン系の使用を含む。
【0265】
一般に、発現ベクターは、所望のDNA配列をトランスフェクトされた細胞の検出を可能にするための選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性、ヒグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性またはネオマイシン耐性)を含有する(例えば、Itakuraら、米国特許第4,704,362号)。トランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能にする1つまたはそれ以上のマーカーを導入することによって、DNAをその染色体中に組み込んだ細胞を選択することができる。マーカーは、栄養要求性宿主に対する原栄養性、殺生物剤耐性(例えば、抗生物質)または銅などの重金属に対する耐性を提供することができる。選択マーカー遺伝子を、発現させようとするDNA配列に直接連結するか、または同時形質転換によって同じ細胞中に導入することができる。
【0266】
本開示の方法において使用されるキメラタンパク質の最適化された発現にとって有用なベクターの例は、NEOSPLAである(米国特許第6,159,730号)。このベクターは、サイトメガロウイルスプロモーター/エンハンサー、マウスベータグロビン主要プロモーター、SV40複製起点、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼエクソン1およびエクソン2、ジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子およびリーダー配列を含有する。このベクターは、可変および定常領域遺伝子の組込み、細胞中へのトランスフェクション、次いで、G418含有培地中での選択およびメトトレキサート増幅の際に、抗体の非常に高レベルの発現をもたらすことがわかっている。ベクター系は、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,736,137号および第5,658,570号にも教示されている。この系は、高い発現レベル、例えば、30pg/細胞/日を超える発現レベルを提供する。他の例示的なベクター系は、例えば、米国特許第6,413,777号に開示されている。
【0267】
他の実施形態では、本発明のポリペプチドを、多シストロン性構築物を使用して発現させる。これらの発現系では、多量体結合タンパク質の複数のポリペプチドなどの目的の複数の遺伝子産物を、単一の多シストロン性構築物から産生させることができる。これらの系は、真核宿主細胞中での比較的高いレベルのポリペプチドを提供するために、内部リボソーム進入部位(IRES)を有利に使用する。適合性のIRES配列は、本明細書にも組み入れられる米国特許第6,193,980号に開示される。
【0268】
より一般には、一度、ポリペプチドをコードするベクターまたはDNA配列が調製されたら、発現ベクターを適切な宿主細胞中に導入することができる。すなわち、宿主細胞を形質転換することができる。プラスミドの宿主細胞中への導入を、上記で考察されたような、当業者には周知の様々な技術によって達成することができる。形質転換された細胞を、キメラタンパク質の産生にとって適切な条件下で増殖させ、キメラタンパク質合成についてアッセイする。例示的なアッセイ技術としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または蛍光活性化細胞選別分析(FACS)、免疫組織化学などが挙げられる。
【0269】
ここで本発明を詳細に説明してきたが、同じことは、例示のみのために本明細書に含まれ、本発明の限定を意図するものではない、以下の実施例を参照することによってより明確に理解されるであろう。
【実施例0270】
標的関節および重篤な血友病Aを有する小児、青年、および成人対象におけるrFVIIIFc予防の長期効能
血友病を有する人々にとって、同じ関節(標的関節)への頻繁な出血は、血友病性関節症(慢性関節疾患)に寄与し得る。rFVIIIFcは、従来のFVIII産物と比較して第VIII因子(FVIII)の半減期を延長するために開発された(Petersら、J.Thromb.Haemost.11(1):132~41頁(2013))。完了したrFVIIIFcピボタル第3相試験(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT01181128;Mahlanguら、Blood 123(3):317~25頁(2014))および子供のrFVIIIFcピボタル第3相試験(NCT01458106;Youngら、J.Thromb.Haemost.13(6):967~77頁(2015))は、それぞれ、重篤な血友病Aを有する、成人/青年(12歳またはそれ以上の患者)および小児(12歳未満の患者)間でのrFVIIIFcの安全性および効能を確立した。rFVIIIFcの長期安全性および効能は、進行中のrFVIIIFc拡張試験(NCT01454739;Nolanら、Haemophilia 22(1):72~80(2016))において評価されている。
【0271】
本試験の目的は、2回目のrFVIIIFc拡張試験中間データカット(2014年12月8日)現在で、rFVIIIFcピボタル第3相試験および小児rFVIIIFcピボタル第3相試験への登録時に標的関節を有する対象におけるrFVIIIFcの持続可能な効能およびQOLに関する累積データを報告することである。
【0272】
方法
利用可能な試験前(すなわち、親試験前)および試験中のデータ(標的関節-特定および全体)を有していた親試験(すなわち、rFVIIIFcピボタル第3相試験または小児rFVIIIFcピボタル第3相試験)への登録時に1つ以上の標的関節(6カ月間で3回以上の出血エピソードを有する主要関節(World Federation of
Hemophilia、Guidelines for the Management of Hemophilia 2nd ed.、Blackwell Publishing:Montreal、Canada(2012)を参照されたい))を有する対象を評価した。rFVIIIFc拡張試験には4つの処置群がある(表1)。
【0273】
【0274】
標的関節を有する対象のアウトカムを、2回目のrFVIIIFc拡張試験中間データカットまで親試験の累積期間にわたってポストホックで分析した。アウトカムは、ABR、標的関節出血エピソードの回数および解消、ならびに予防的用量および投与頻度を含んでいた。標的関節における解消の分析を、12カ月以上の連続フォローアップ時間を有し
、フォローアップ期間の開始以来、標的関節に大きな手術(すなわち、交換または除去)を受けていない対象について実施した。連続する12カ月の期間に標的関節において2回以下の自発的な出血エピソードがあった場合、標的関節は臨床的に解消されたと考えた(Blanchetteら、J Thromb Haemost.12(11):1935~39頁(2014))。
【0275】
QOL尺度を、17歳以上の年齢であり、試験中に1つ以上の解消した標的関節を有し、rFVIIIFcピボタル第3相試験ベースライン時とrFVIIIFc拡張試験の2年目との両方においてHaem-A-QOLスコアを有していた予防対象においてHaem-A-QOL指数によって評価した。小児rFVIIIFcピボタル第3相試験に由来する対象の中で、Canadian Hemophilia Outcomes-Kids Life Assessment Tool(CHO-KLAT)によってQOLを測定した。
【0276】
結果
試験集団
ベースライン時に標的関節を有していたrFVIIIFcピボタル第3相試験に由来する113人の対象のうち、試験前予防または出血時止血レジメンおよび試験中データを有する111人の対象は、ベースライン時に287の標的関節を有していた(中央値年齢、31.0歳;四分位範囲(IQR)、24.0~44.0歳;表2)。小児rFVIIIFcピボタル第3相試験に由来する13人の対象は、ベースライン時に15の標的関節を有し、試験前および試験中データを有していた(中央値年齢、6.0歳;IQR、5.0~8.0歳;表2)。
【0277】
【0278】
出血回数
rFVIIIFc予防を有する中央値(IQR)試験中全ABRは、成人/青年および12歳またはそれより若い小児に関する試験前予防に関する出血速度よりも低かった(
図1A~1D)。小児rFVIIIFcピボタル第3相試験データを、患者の年齢によってさらに階層化し、中央値試験前および試験中ABRを、
図1Eおよび1Fに示す。試験前に、6歳未満の患者は、6~12歳の患者よりも低い中央値(IQR)ABRを有していた(
図1E)。試験中に、6歳未満の患者は、6~12歳の患者よりも高い全試験中ABR、全標的関節ABR、および標的関節自発的ABRを有していた(
図1F)。
【0279】
rFVIIIFcピボタル第3相試験中、個別化された予防の46.3%、毎週の予防の40.7%、および改変された予防の21.4%の対象は、標的関節出血エピソードを有していたが、小児rFVIIIFcピボタル第3相試験における個別化された予防の53.8%の対象は、標的関節出血エピソードを有していなかった。
【0280】
臨床標的関節における解消
ベースライン時および12カ月のフォローアップ時に標的関節を有していた予防中の対象のうち、rFVIIIFcピボタル第3相試験の100%(93/93)および小児rFVIIIFcピボタル第3相試験の100%(7/7)の対象が、1つ以上の解消した標的関節を有していた(すなわち、連続する12カ月の間に2回以下の自発的出血エピソ
ード);また、rFVIIIFcピボタル第3相試験および小児rFVIIIFcピボタル第3相試験の対象における標的関節の、それぞれ、98.3%(231/235)および100%(9/9)(全ての出血に基づく)が解消した。
【0281】
予防因子消費量
rFVIIIFcピボタル第3相試験(n=105)および小児rFVIIIFcピボタル第3相試験(n=13)の、ベースライン時に標的関節を有する予防対象間の中央値(IQR)毎週の予防因子消費量は、それぞれ、76.0(68.0~90.9)IU/kgおよび83.5(79.9~111.6)IU/kgであった。
【0282】
消費量は、rFVIIIFcピボタル第3相試験/小児rFVIIIFcピボタル第3相試験の両方の前ならびにrFVIIIFcピボタル第3相試験/小児rFVIIIFcピボタル第3相試験およびrFVIIIFc拡張試験の間に予防にあり、利用可能な試験前および試験中投与データを有していた親試験における対象と類似していた(rFVIIIFcピボタル第3相試験、n=79、75.0[70.0~113.8]IU/kg;小児rFVIIIFcピボタル第3相試験、n=54、95.0[75.0~113.0]IU/kg)。
【0283】
両方の患者集団について、中央値(IQR)投与間隔も、ベースライン時に標的関節を有する予防対象(rFVIIIFcピボタル第3相試験、n=105、3.8[3.5~5.6]日;小児rFVIIIFcピボタル第3相試験、n=13、3.5[3.5~3.5]日)と、利用可能な試験前および試験中投与データを有していた親試験における予防対象(rFVIIIFcピボタル第3相試験、n=79、3.5[3.0~5.0]日;小児rFVIIIFcピボタル第3相試験、n=54、3.5[3.5~3.5]日)との間で類似していた。
【0284】
小児rFVIIIFcピボタル第3相試験データを、患者年齢によってさらに階層化した。6歳より下の患者における平均週消費量は、3.5(3.5~3.5)日の投与間隔で89.6(75.3~97.5;n=6)IU/kgであった。6~12歳の年齢の患者については、平均週消費量は、3.5(3.0~3.6)日の投与間隔で82.2(79.4~113.2)IU/kgであった。
【0285】
生活の質
QOLは、rFVIIIFcピボタル第3相試験ベースラインと比較して、成人/青年(n=48)間でrFVIIIFc拡張試験2年目において18%改善した(表3)。小児rFVIIIFcピボタル第3相試験ベースラインおよびrFVIIIFc拡張試験1年目(n=6)において自己報告されたCHO-KLATスコアを有していた小児rFVIIIFcピボタル第3相試験の対象のうち、平均(標準偏差[SD])ベースラインスコアは、85.5(12.1)であった;rFVIIIFc拡張試験1年目において、CHO-KLATスコアは、28%改善した(24.1[15.3]の平均[SD]の改善)。
【0286】
【0287】
結論
第3相rFVIIIFcピボタル第3相試験および小児rFVIIIFcピボタル第3相治験および進行中のrFVIIIFc拡張試験に由来する効能データは、長期的なrFVIIIFc予防された重篤な血友病Aを有する小児、青年、および成人の対象における、持続的な低い年間標的関節出血回数(ABR)および有効な標的関節における解消を示す。ベースライン時に標的関節を有する対象のこの分析における毎週の予防因子消費量は、以前に公開されたrFVIIIFcピボタル第3相試験および小児rFVIIIFcピボタル第3相治験の全集団におけるものと一致していた。生活の質(QOL)の改善は、予防因子消費量または投与間隔の変化なしにrFVIIIFc予防を用いて標的関節における解消を示した対象において見られた。
重篤な血友病Aを有する対象における、組換え第VIII因子Fc融合タンパク質(rFVIIIFc)予防を用いた長期的改変血友病関節健康スコア(mHJHS)のアウトカム
血友病性関節症は、依然として血友病の管理における課題である(Knobeら、J Comorbidity.2011;1(1):51~59頁;Simpsonら、Expert Rev Hematol.2012;5(4):459~68頁)。血友病関節健康スコア(HJHS)は、血友病性関節症の発生を検出するために使用することができる第1選択の手段である(Oymakら、J Pediatr Hematol Oncol.2015;37(2):e80~5頁)。骨格筋アウトカムの改善は、血友病Aのための予防処置の有効性の重要な尺度である(Blanchetteら、Haemop
hilia.2004;10(Suppl.S4):97~104頁)。それぞれ、rFVIIIFcピボタル第3相試験(Mahlanguら、Blood.2014;123(3):317~325頁)および小児rFVIIIFcピボタル第3相治験(Youngら、J Thromb Haemost.2015;13(6):967~977頁)を完了した成人/青年および小児間でのrFVIIIFcの長期安全性および効能が、進行中のrFVIIIFc拡張試験に由来する中間データを使用して確立されている(Nolanら、Haemophilia.2016;22(1):72~80頁)。骨格筋アウトカムに対するrFVIIIFcの長期的影響の決定には、さらなる試験を必要とするであろう。
本試験の目的は、改変血友病関節健康スコア(mHJHS)を使用して、rFVIIIFcピボタル第3相試験およびrFVIIIFc拡張試験に由来する長期的関節健康データを報告することである。
mHJHSは、関節疼痛および歩行に関する応答選択肢を、より少ないカテゴリーに要約し、不安定性に関する評価を加え、総スコアが標準的なHJHS(範囲、0~124)と比較して低い(範囲、0~116;0は正常な関節機能を示し、116は重篤な疾患を示す)という点で、標準的なHJHSと異なる(表4を参照されたい)。2週間以内の出血の前のスコアは除外した。外科的介入を受けた関節に関するスコアを、最後の観察の繰り越しを使用して帰属させた。年々の変化を評価するために、4つの時点(rFVIIIFcピボタル第3相試験ベースライン、rFVIIIFc拡張試験ベースライン、rFVIIIFc拡張試験1年目、およびrFVIIIFc拡張試験2年目)でmHJHSデータを有していたrFVIIIFc拡張試験の対象を、このポストホック分析に含有させた。rFVIIIFcピボタル第3相試験ベースラインからrFVIIIFc拡張試験2年目までのmHJHSスコアの変化(負の値は改善を示す)を、記述統計値を使用してまとめた。rFVIIIFcピボタル第3相試験ベースラインからフォローアップ訪問までのmHJHSスコアの変化を、(1)総スコア(範囲、0~116;試験前レジメン(予防と出血時止血)による;初期mHJHSに基づく機能障害の重篤度による;およびベースライン時の標的関節の存在による);(2)標的関節(範囲、0~19:単一の標的関節に関する全ての質問の合計);(3)体重負荷(例えば、足首および膝)および非体重負荷(例えば、肘)関節(範囲、0~38:単一の位置での左右の関節の合計);ならびに(4)個々の構成要素(可動域(範囲、0~36:全ての関節の「伸展喪失[足首の背屈]」および「屈曲喪失[足首の底屈]の質問の組合せ);腫れ(範囲、0~24:全ての関節の「腫れ」および「腫れの持続期間」の質問の組合せ);および筋力(範囲、0~6:全ての関節の合計))についてまとめた。
rFVIIIFcピボタル第3相試験ベースラインと、rFVIIIFc拡張試験2年目との差異を、対応のあるt検定を使用して分析した。この分析はアドホックであったため、統計的有意性を推測するためにP値を使用しなかった。サブグループ分析のために、記述統計値のみを提供する。