(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027304
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】イオン交換可能な混合アルカリアルミノケイ酸塩ガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 3/083 20060101AFI20230221BHJP
C03C 3/085 20060101ALI20230221BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20230221BHJP
C03C 3/097 20060101ALI20230221BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C03C3/083
C03C3/085
C03C3/091
C03C3/097
C03C21/00 101
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201015
(22)【出願日】2022-12-16
(62)【分割の表示】P 2021087509の分割
【原出願日】2018-11-29
(31)【優先権主張番号】62/591,958
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー マイケル グロス
(72)【発明者】
【氏名】シャオジュィ グォ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ジョセフ レッツィ
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンドラ ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】ロスティスラフ ヴァチェフ ルセフ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】イオン交換などによって強化でき、薄いガラス物品として成形できるようにする機械的性質を有するガラス組成物を提供する。
【解決手段】55.0モル%以上75.0モル%以下のSiO
2、13.0モル%以上20.0モル%以下のAl
2O
3、3.0モル%以上10.0モル%以下のLi
2O、5.0モル%以上15.0モル%以下のNa
2O、1.5モル%以下のK
2O、および0モル%以上3.0モル以下のB
2O
3を含むガラス組成物であり、Al
2O
3+Li
2Oは23.0モル%以上、R
2O+ROは18.0モル%以上、ここで、R
2Oはガラス組成物に存在するアルカリ酸化物、ROはガラス組成物に存在する二価陽イオン酸化物であり、R
2O/Al
2O
3は1.06以上、SiO
2+Al
2O
3+B
2O
3+P
2O
5は78.0モル%以上、(SiO
2+Al
2O
3+B
2O
3+P
2O
5)/Li
2Oは8.0以上、である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
55.0モル%以上から70.0モル%以下のSiO2、
13.0モル%以上から20.0モル%以下のAl2O3、
3.0モル%以上から10.0モル%以下のLi2O、
5.0モル%以上から15.0モル%以下のNa2O、および
1.5モル%以下のK2O
を含むガラス組成物であり、
Al2O3+Li2Oは22.5モル%以上であり、
R2O+ROは18.0モル%以上であり、ここで、R2Oは前記ガラス組成物に存在するアルカリ酸化物であり、ROは前記ガラス組成物に存在する二価陽イオン酸化物であり、
SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5は78.0モル%以上であり
(SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5)/Li2Oは9.0以上、
であるガラス組成物。
【請求項2】
Al2O3+Li2O+Na2Oが34.0モル%以上である、請求項1記載のガラス組成物。
【請求項3】
Li2Oが、3.0モル%以上から9.0モル%以下であり、
Al2O3+Li2Oが24.0モル%以上である、
である、請求項1記載のガラス組成物。
【請求項4】
P2O5が、0.0モル%以上から8.0モル%以下であり、
B2O3が、0.0モル%以上から3.0モル%以下であり、
(SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5)/Li2Oは10.50以上である、請求項1から3いずれか1項記載のガラス組成物。
【請求項5】
Al2O3が15.0モル%以上から20.0モル%以下であり、
Li2Oが、4.0モル%以上から9.0モル%以下であり、
P2O5が、0.0モル%以上から8.0モル%以下である、請求項1から3いずれか1項記載のガラス組成物。
【請求項6】
ガラス物品において、
第一面;
前記第一面と反対の第二面であって、該第一面と該第二面との間の距離として前記ガラス物品の厚さ(t)が測定される、第二面;および
前記第一面と前記第二面の少なくとも一方から前記ガラス物品の厚さ(t)中に延在する圧縮応力層;
を備えたガラス物品であって、
前記ガラス物品の中央張力は30MPa以上であり、
前記圧縮応力層は0.15t以上から0.25t以下の圧縮深さを有し、
前記ガラス物品は、
請求項1から3いずれか1項のガラスから形成される、ガラス物品。
【請求項7】
前記ガラス物品の中央張力が50MPa以上である、請求項6記載のガラス物品。
【請求項8】
前記ガラス物品の厚さ中の前記圧縮応力層のカリウムの層の深さが5μm超から45μm以下である、請求項6項記載のガラス物品。
【請求項9】
前記ガラスが、20kP以上から1000kP未満の液相粘度を有する、請求項6から8いずれか1項記載のガラス物品。
【請求項10】
前記圧縮応力層の表面圧縮応力が450MPa以上から800MPa以下である、請求項6から8いずれか1項記載のガラス物品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2017年11月29日に出願された米国仮特許出願第62/591958号の優先権の恩恵を主張するものである。
【0002】
また、本出願は、2021年5月25日に出願した特願2021-87509号を原出願として分割出願したものである。
【技術分野】
【0003】
本明細書は、広く、電子装置のカバーガラスとして使用するのに適したガラス組成物に関する。本明細書は、より詳しくは、フュージョンドロー法により電子装置用のカバーガラスに成形できる混合アルカリアルミノケイ酸塩ガラスに関する。
【背景技術】
【0004】
スマートフォン、タブレット、携帯型メディアプレーヤー、パーソナルコンピュータ、およびカメラなどの携帯型装置の携帯できる性質のために、これらの装置は、地面などの硬い表面に、特に、偶発的に落とされやすい。これらの装置は、典型的に、カバーガラスを備え、このカバーガラスは、硬い表面と衝突したときに、損傷を受けることがある。これらの装置の多くでは、カバーガラスはディスプレイカバーとしての機能を果たし、タッチ機能性を備えることがあり、よって、カバーガラスが損傷を受けた場合、装置の使用が悪影響を受ける。
【0005】
関連する携帯型装置が硬い表面に落とされた場合、カバーガラスの破壊様式が主に2つある。その様式の一方は屈曲破壊であり、これは、装置が硬い表面との衝突から生じる動荷重に曝されたときのガラスの曲げにより生じる。他方の様式は鋭利接触破壊であり、これは、ガラス表面への損傷の導入により生じる。アスファルト、花崗岩などのザラザラした硬い表面とガラスが衝突すると、ガラス表面に鋭利な圧痕が生じ得る。これらの圧痕は、ガラス表面の破壊部位となり、そこから亀裂が生じ、伝播することがある。
【0006】
ガラスは、ガラス表面への圧縮応力の導入を含むイオン交換技術によって、屈曲破壊により耐性にすることができる。しかしながら、イオン交換されたガラスは、それでも、鋭利な接触からのガラスの局所的圧痕により生じる高い圧縮集中のために、動的な鋭利接触を受けるであろう。
【0007】
ガラス製造社および手持ち式装置の製造業者は、鋭利接触破壊に対する手持ち式装置の耐性を改善する努力を継続的に行ってきた。解決策は、カバーガラス上のコーティングから、装置が硬い表面に落ちたときに、カバーガラスが硬い表面に直接衝突するのを防ぐベゼルにまで及ぶ。しかしながら、審美的要件と機能的要件の制約のために、カバーガラスが硬い表面に衝突するのを完全に防ぐことは非常に難しい。
【0008】
手持ち式装置ができるだけ薄いことも望ましい。したがって、強度に加え、手持ち式装置のカバーガラスとして使用すべきガラスをできるだけ薄く作ることも望ましい。それゆえ、カバーガラスの強度を増加させることに加え、ガラスが、薄いガラスシートなどの薄いガラス物品の製造を可能にする過程によって成形できるようにする機械的特徴を有することも望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、イオン交換などによって強化でき、薄いガラス物品として成形できるようにする機械的性質を有するガラスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の実施の形態によれば、ガラス組成物は、55.0モル%以上から75.0モル%以下のSiO2、8.0モル%以上から20.0モル%以下のAl2O3、3.0モル%以上から15.0モル%以下のLi2O、5.0モル%以上から15.0モル%以下のNa2O、および1.5モル%以下のK2Oを含み、Al2O3+Li2Oは22.5モル%超であり、R2O+ROは18.0モル%以上であり、R2O/Al2O3は1.06以上であり、SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5は78.0モル%以上であり、(SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5)/Li2Oは8.0以上である。
【0011】
第2の実施の形態によれば、ガラス物品は、第一面;その第一面と反対の第二面であって、その第一面と第二面との間の距離としてガラス物品の厚さ(t)が測定される、第二面;およびその第一面と第二面の少なくとも一方からガラス物品の厚さ(t)中に延在する圧縮応力層を備え、そのガラス物品の中央張力は30MPa以上であり、その圧縮応力層は0.15t以上から0.25t以下の圧縮深さを有し、そのガラス物品は、55.0モル%以上から75.0モル%以下のSiO2、8.0モル%以上から20.0モル%以下のAl2O3、3.0モル%以上から15.0モル%以下のLi2O、5.0モル%以上から15.0モル%以下のNa2O、および1.5モル%以下のK2Oを含み、Al2O3+Li2Oは22.5モル%超であり、R2O+ROは18.0モル%以上であり、R2O/Al2O3は1.06以上であり、SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5は78.0モル%以上であり、(SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5)/Li2Oは8.0以上であるガラスから形成される。
【0012】
第3の実施の形態によれば、ガラス物品は、第一面;その第一面と反対の第二面であって、その第一面と第二面との間の距離としてガラス物品の厚さ(t)が測定される、第二面;およびその第一面と第二面の少なくとも一方からガラス物品の厚さ(t)中に延在する圧縮応力層を備え、そのガラス物品の中央張力は60MPa以上であり、その圧縮応力層は0.15t以上から0.25t以下の圧縮深さを有し、そのガラス物品は、55.0モル%以上から75.0モル%以下のSiO2、8.0モル%以上から20.0モル%以下のAl2O3、3.0モル%以上から15.0モル%以下のLi2O、5.0モル%以上から15.0モル%以下のNa2O、および1.5モル%以下のK2Oを含み、Al2O3+Li2Oは22.5モル%超であり、R2O+ROは18.0モル%以上であり、R2O/Al2O3は1.06以上であり、SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5は78.0モル%以上であり、(SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5)/Li2Oは8.0以上である組成をガラス物品の中心深さで有する。
【0013】
追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明白となるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む、ここに記載された実施の形態を実施することによって認識されるであろう。
【0014】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、様々な実施の形態を記載しており、請求項の主題の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供する目的であることが理解されよう。添付図面は、様々な実施の形態のさらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、ここに記載された様々な実施の形態を示し、説明と共に、請求項の主題の原理および作動を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ここに開示され記載された実施の形態による、その表面に圧縮応力層を有するガラスの断面図
【
図2A】ここに開示されたガラス物品のいずれかを備えた例示の電子装置の平面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、様々な実施の形態によるアルカリアルミノケイ酸塩ガラスを詳しく参照する。アルカリアルミノケイ酸塩ガラスは良好なイオン交換可能性を有し、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスにおいて高強度および高靱性を達成するために、化学強化過程が使用されてきた。ナトリウムアルミノケイ酸塩ガラスは、ガラスの成形性および品質が高い、高度にイオン交換可能なガラスである。ケイ酸塩ガラスの網目構造中にAl2O3を置換すると、イオン交換中の一価陽イオンの相互拡散性が増す。溶融塩浴(例えば、KNO3および/またはNaNO3)中の化学強化により、高強度、高靭性、および高い圧入亀裂形成抵抗を有するガラスを得ることができる。
【0017】
したがって、良好な物理的性質、化学的耐久性、およびイオン交換可能性を有するアルカリアルミノケイ酸塩ガラスが、カバーガラス用として注目を集めてきた。特に、徐冷温度と軟化温度が低く、熱膨張係数(CTE)値が低く、イオン交換可能性が高速であるリチウムを含有するアルミノケイ酸塩ガラスが、ここに提供される。異なるイオン交換過程により、より大きい中央張力(CT)、圧縮深さ(DOC)、および高い圧縮応力(CS)を達成することができる。しかしながら、アルカリアルミノケイ酸塩ガラスにリチウムを添加すると、そのガラスの融点、軟化点、または液相粘度が低下することがある。
【0018】
例えば、ガラスシートなどのガラス物品を成形するための延伸過程は、欠陥が少ない薄いガラス物品を成形できるので、望ましい。ガラス組成物は、例えば、フュージョンドロー法またはスロットドロー法などの延伸過程により成形できるためには、1000kP超、1100kP超、または1200kP超などの、比較的高い液相粘度を有する必要があると以前は考えられていた。しかしながら、延伸過程の発展により、延伸過程に液相粘度がより低いガラスを使用できるようになった。それゆえ、延伸過程に使用されるガラスは、以前に考えられていたよりも多くリチアを含むことができ、例えば、SiO2、Al2O3、B2O3、およびP2O5などのガラス網目構造形成成分をより多く含むことができる。したがって、ガラスが、ガラス組成物にリチウムおよびガラス網目構造形成材を添加する恩恵を実現できるようにするが、ガラス組成物に悪影響を与えない様々なガラス成分のバランスが、ここに与えられる。
【0019】
ここに記載されたガラス組成物の実施の形態において、構成成分(例えば、SiO2、Al2O3、Li2Oなど)の濃度は、特に明記のない限り、酸化物基準のモルパーセント(モル%)で与えられる。実施の形態によるアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物の成分は、下記に個別に論じられる。一成分の様々に列挙された範囲のいずれも、どの他の成分の様々に列挙された範囲のいずれとも個別に組み合わせられることを理解すべきである。
【0020】
ここに開示されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物の実施の形態において、SiO2は最大成分であり、それゆえ、SiO2は、ガラス組成物から形成されるガラス網目構造の主成分である。純粋なSiO2は、比較的低いCTEを有し、アルカリを含まない。しかしながら、純粋なSiO2は、高い融点を有する。したがって、ガラス組成物中のSiO2の濃度が高すぎると、SiO2の濃度が高くなるとガラスの溶融の難易度が増すので、ガラス組成物の成形性が損なわれ、これは、次に、ガラスの成形性に悪影響を及ぼす。実施の形態において、前記ガラス組成物は、一般に、55.0モル%以上から75.0モル%以下の量、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の量でSiO2を含む。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、60.0モル%以上、62.0モル%以上、64.0モル%以上、66.0モル%以上、68.0モル%以上、または70.0モル%以上など、58.0モル%以上の量でSiO2を含む。実施の形態において、そのガラス組成物は、70.0モル%以下、68.0モル%以下、66.0モル%以下、64.0モル%以下、または62.0モル%以下など、72.0モル%以下の量でSiO2を含む。実施の形態において、上述した範囲のいずれを、どの他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。実施の形態において、そのガラス組成物は、60.0モル%以上から68.0モル%以下、または62.0モル%以上から64.0モル%以下など、58.0モル%以上から70.0モル%以下の量、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の量でSiO2を含む。
【0021】
実施の形態のガラス組成物は、Al2O3をさらに含むことがある。Al2O3は、SiO2と似た、ガラス網目構造形成材として働くことができる。Al2O3は、ガラス組成物から形成されたガラス溶融物中の四面体配位のために、ガラス組成物の粘度を増加させることができ、Al2O3の量が多すぎると、ガラス組成物の成形性を低下させてしまう。しかしながら、Al2O3の濃度が、ガラス組成物中のSiO2の濃度およびアルカリ酸化物の濃度に対してバランスがとられた場合、Al2O3は、ガラス溶融物の液相温度を低下させることができ、それによって、液相粘度が高まり、フュージョン成形法などの特定の成形法とのガラス組成物の適合性が改善される。実施の形態において、そのガラス組成物は、一般に、8.0モル%以上から20.0モル%以下の濃度、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の濃度でAl2O3を含む。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、12.0モル%以上、14.0モル%以上、16.0モル%以上、17.0モル%以上、または19.0モル%以上など、10.0モル%以上の量でAl2O3を含む。実施の形態において、そのガラス組成物は、18.0モル%以下、17.0モル%以下、16.0モル%以下、15.0モル%以下、14.0モル%以下、または13.0モル%以下など、19.0モル%以下の量でAl2O3を含む。実施の形態において、上述した範囲のいずれを、どの他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。実施の形態において、そのガラス組成物は、12.0モル%以上から16.0モル%以下、または15.0モル%以上から17.0モル%以下など、10.0モル%以上から18.0モル%以下の量、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の量でAl2O3を含む。
【0022】
SiO2およびAl2O3のように、P2O5は、網目構造形成材としてガラス組成物に加えられ、それによって、ガラス組成物の溶融性および成形性を低下させることがある。それゆえ、P2O5は、これらの性質を過度に低下させない量で加えられるであろう。P2O5を添加すると、イオン交換処理中にガラス組成物中のイオンの拡散性が増加し、それによって、これらの処理の効率を増加させることもできる。実施の形態において、前記ガラス組成物は、0.0モル%以上から8.0モル%以下の量、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の量でP2O5を含むことができる。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、0.5モル%以上、1.0モル%以上、1.5モル%以上、2.0モル%以上、2.5モル%以上、3.0モル%以上、3.5モル%以上、4.0モル%以上、または4.5モル%以上の量でP2O5を含むことがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、7.5モル%以下、7.0モル%以下、6.5モル%以下、6.0モル%以下、5.5モル%以下、5.0モル%以下、4.5モル%以下、4.0モル%以下、3.5モル%以下、3.0モル%以下、2.5モル%以下、2.0モル%以下、1.5モル%以下、1.0モル%以下、または0.5モル%以下の量でP2O5を含むことがある。実施の形態において、上述した範囲のいずれを、どの他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。実施の形態において、そのガラス組成物は、0.5モル%以上から7.5モル%以下、1.0モル%以上から7.0モル%以下、1.5モル%以上から6.5モル%以下、2.0モル%以上から6.0モル%以下、2.5モル%以上から5.5モル%以下、または3.0モル%以上から5.0モル%以下の量、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の量でP2O5を含むことがある。
【0023】
SiO2、Al2O3、およびP2O5のように、B2O3は、網目構造形成材としてガラス組成物に加えられ、それによって、ガラス組成物の溶融性および成形性を低下させることがある。それゆえ、B2O3は、これらの性質を過度に低下させない量で加えられるであろう。実施の形態において、前記ガラス組成物は、0.0モル%以上から3.0モル%以下の量、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の量でB2O3を含むことができる。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、0.5モル%以上、1.0モル%以上、1.5モル%以上、2.0モル%以上、または2.5モル%以上の量でB2O3を含むことがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、2.5モル%以下、2.0モル%以下、1.5モル%以下、1.0モル%以下、または0.5モル%以下の量でB2O3を含むことがある。実施の形態において、上述した範囲のいずれを、どの他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。実施の形態において、そのガラス組成物は、0.5モル%以上から2.5モル%以下、または1.0モル%以上から2.0モル%以下の量、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の量でB2O3を含む。
【0024】
いくつかの実施の形態において、前記ガラス組成物は、ガラス網目構造形成要素として、B2O3およびP2O5の少なくとも一方を含む。したがって、実施の形態において、B2O3+P2O5は、0.5モル%以上、1.0モル%以上、1.5モル%以上、2.0モル%以上、2.5モル%以上、3.0モル%以上、3.5モル%以上、4.0モル%以上、4.5モル%以上、5.0モル%以上、5.5モル%以上、6.0モル%以上、6.5モル%以上、7.0モル%以上、7.5モル%以上、または8.0モル%以上など、0.0モル%超、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にある。実施の形態において、B2O3+P2O5は、7.0モル%以下、6.5モル%以下、6.0モル%以下、5.5モル%以下、5.0モル%以下、4.5モル%以下、4.0モル%以下、3.5モル%以下、3.0モル%以下、2.5モル%以下、2.0モル%以下、1.5モル%以下、1.0モル%以下、または0.5モル%以下など、7.5モル%以下である。実施の形態において、上述した範囲のいずれを、どの他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。実施の形態において、そのガラス組成物は、0.5モル%以上から7.5モル%以下、1.0モル%以上から7.0モル%以下、1.5モル%以上から6.5モル%以下、2.0モル%以上から6.0モル%以下、2.5モル%以上から5.5モル%以下、または3.0モル%以上から5.0モル%以下の量、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の量でB2O3+P2O5を含む。
【0025】
ガラス組成物中のLi2Oの効果が、先に述べられ、以下にさらに詳しく述べられている。一部には、ガラスにリチウムを添加すると、イオン交換過程をよりよく制御でき、ガラスの軟化点がさらに低下する。実施の形態において、そのガラス組成物は、一般に、3.0モル%以上から15.0モル%以下の量、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の量でLi2Oを含む。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、3.5モル%以上、4.0モル%以上、4.5モル%以上、5.0モル%以上、5.5モル%以上、6.0モル%以上、6.5モル%以上、7.0モル%以上、7.5モル%以上、8.0モル%以上、8.5モル%以上、9.0モル%以上、9.5モル%以上、10.0モル%以上、10.5モル%以上、11.0モル%以上、11.5モル%以上、12.0モル%以上、12.5モル%以上、13.0モル%以上、13.5モル%以上、14.0モル%以上、または14.5モル%以上の量でLi2Oを含む。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、14.5モル%以下、14.0モル%以下、13.5モル%以下、13.0モル%以下、12.5モル%以下、12.0モル%以下、11.5モル%以下、11.0モル%以下、10.5モル%以下、10.0モル%以下、9.5モル%以下、9.0モル%以下、8.5モル%以下、8.0モル%以下、7.5モル%以下、7.0モル%以下、6.5モル%以下、6.0モル%以下、5.5モル%以下、5.0モル%以下、4.5モル%以下、4.0モル%以下、または3.5モル%以下の量でLi2Oを含む。実施の形態において、上述した範囲のいずれを、どの他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。実施の形態において、そのガラス組成物は、4.0モル%以上から14.0モル%以下、4.5モル%以上から13.5モル%以下、5.0モル%以上から13.0モル%以下、5.5モル%以上から12.5モル%以下、6.0モル%以上から12.0モル%以下、6.5モル%以上から11.5モル%以下、または7.0モル%以上から10.0モル%以下など、3.5モル%以上から14.5モル%以下の量、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の量でLi2Oを含む。
【0026】
Al2O3は、ガラス網目構造形成成分であることに加え、ガラス組成物のイオン交換可能性を増加させることにも役立つ。したがって、実施の形態において、Al2O3およびイオン交換されることがある他の成分の量は、比較的多いことがある。例えば、Li2Oはイオン交換可能な成分である。いくつかの実施の形態において、ガラス組成物中のAl2O3+Li2Oの量は、23.0モル%以上、23.5モル%以上、24.0モル%以上、24.5モル%以上、25.0モル%以上、25.5モル%以上、または26.0モル%以上など、22.5モル%超、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にあることがある。いくつかの実施の形態において、Al2O3+Li2Oの量は、26.0モル%以下、25.5モル%以下、25.0モル%以下、24.5モル%以下、24.0モル%以下、23.5モル%以下、または23.0モル%以下など、26.5モル%以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にある。実施の形態において、上述した範囲のいずれを、どの他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。実施の形態において、Al2O3+Li2Oの量は、23.0モル%以上から26.5モル%以下、23.5モル%以上から26.0モル%以下、24.0モル%以上から25.5モル%以下、または24.5モル%以上から25.0モル%以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にある。
【0027】
実施の形態によれば、前記ガラス組成物は、Na2Oなど、Li2O以外のアルカリ金属酸化物も含むことがある。Na2Oは、ガラス組成物のイオン交換可能性に役立ち、また、ガラス組成物の融点を増加させ、ガラス組成物の成形性を改善する。しかしながら、ガラス組成物に加えられるNa2Oが多すぎると、CTEが低すぎることがあり、融点が高すぎることがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、一般に、5.0モル%以上から15.0モル%以下の量、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の量でNa2Oを含む。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、5.5モル%以上、6.0モル%以上、6.5モル%以上、7.0モル%以上、7.5モル%以上、8.0モル%以上、8.5モル%以上、9.0モル%以上、9.5モル%以上、10.0モル%以上、10.5モル%以上、11.0モル%以上、11.5モル%以上、12.0モル%以上、12.5モル%以上、13.0モル%以上、13.5モル%以上、14.0モル%以上、または14.5モル%以上の量でNa2Oを含む。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、14.5モル%以下、14.0モル%以下、13.5モル%以下、13.0モル%以下、12.5モル%以下、12.0モル%以下、11.5モル%以下、11.0モル%以下、10.5モル%以下、10.0モル%以下、9.5モル%以下、9.0モル%以下、8.5モル%以下、8.0モル%以下、7.5モル%以下、7.0モル%以下、6.5モル%以下、6.0モル%以下、5.5モル%以下、5.0モル%以下、または4.5モル%以下の量でNa2Oを含む。実施の形態において、上述した範囲のいずれを、どの他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。実施の形態において、そのガラス組成物は、6.0モル%以上から14.0モル%以下、6.5モル%以上から13.5モル%以下、7.0モル%以上から13.0モル%以下、7.5モル%以上から12.5モル%以下、8.0モル%以上から12.0モル%以下、8.5モル%以上から11.5モル%以下、または9.0モル%以上から10.0モル%以下など、5.5モル%以上から14.5モル%以下の量、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の量でNa2Oを含む。
【0028】
上述したように、Al2O3は、ガラス組成物のイオン交換可能性に役立つ。したがって、実施の形態において、Al2O3およびイオン交換されることがある他の成分の量は、比較的多いことがある。例えば、Li2OおよびNa2Oはイオン交換可能な成分である。いくつかの実施の形態において、ガラス組成物中のAl2O3+Li2O+Na2Oの量は、25.5モル%以上、26.0モル%以上、26.5モル%以上、27.0モル%以上、27.5モル%以上、28.0モル%以上、28.5モル%以上、29.0モル%以上、または29.5モル%以上など、25.0モル%超、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にあることがある。いくつかの実施の形態において、Al2O3+Li2O+Na2Oの量は、29.5モル%以下、29.0モル%以下、28.5モル%以下、28.0モル%以下、27.5モル%以下、27.0モル%以下、26.5モル%以下、26.0モル%以下、または25.5モル%以下など、30.0モル%以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にある。実施の形態において、上述した範囲のいずれを、どの他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。実施の形態において、Al2O3+Li2O+Na2Oの量は、25.0モル%以上から30.0モル%以下、25.5モル%以上から29.5モル%以下、26.0モル%以上から29.0モル%以下、26.5モル%以上から28.5モル%以下、または27.0モル%以上から28.0モル%以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にある。
【0029】
K2Oも、Na2Oのように、イオン交換を促進し、圧縮応力層のDOCを増加させる。しかしながら、K2Oを加えると、CTEが低すぎることがあり、融点が高すぎることがある。実施の形態において、前記ガラス組成物は、1.0モル%以下、または0.5モル%以下など、1.5モル%以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲でK2Oを含む。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、カリウムを実質的に含まない、または含まない。ここに用いられているように、「実質的に含まない」という用語は、その成分が、0.01モル%未満など、汚染物質として非常に少量で最終的なガラス中に存在することがあっても、その成分はバッチ材料の一成分として加えられないことを意味する。
【0030】
MgOはガラスの粘度を低下させ、これにより、成形性、歪み点およびヤング率が向上し、イオン交換能力が改善されることがある。しかしながら、ガラス組成物に加えられるMgOが多すぎると、ガラス組成物の密度およびCTEが増加してしまう。実施の形態において、前記ガラス組成物は、一般に、0.0モル%以上から4.0モル%以下の濃度、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の濃度でMgOを含む。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、0.2モル%以上、0.5モル%以上、1.0モル%以上、1.5モル%以上、2.0モル%以上、2.5モル%以上、3.0モル%以上、または3.5モル%以上の量でMgOを含む。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、3.5モル%以下、3.0モル%以下、2.5モル%以下、2.0モル%以下、1.5モル%以下、1.0モル%以下、0.5モル%以下、0.4モル%以下、または0.2モル%以下の量でMgOを含む。実施の形態において、上述した範囲のいずれを、どの他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。実施の形態において、そのガラス組成物は、0.5モル%以上から3.0モル%以下、1.0モル%以上から2.5モル%以下、または1.5モル%以上から2.0モル%以下など、0.2モル%以上から3.5モル%以下の量、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の量でMgOを含む。
【0031】
CaOはガラスの粘度を低下させ、これにより、成形性、歪み点およびヤング率が向上し、イオン交換能力が改善されることがある。しかしながら、ガラス組成物に加えられるCaOが多すぎると、ガラス組成物の密度およびCTEが増加してしまう。実施の形態において、前記ガラス組成物は、一般に、0.0モル%以上から2.0モル%以下の濃度、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の濃度でCaOを含む。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、0.2モル%以上、0.4モル%以上、0.6モル%以上、0.8モル%以上、1.0モル%以上、1.2モル%以上、1.4モル%以上、1.6モル%以上、または1.8モル%以上の量でCaOを含む。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、1.8モル%以下、1.6モル%以下、1.4モル%以下、1.2モル%以下、1.0モル%以下、0.8モル%以下、0.6モル%以下、0.4モル%以下、または0.2モル%以下の量でCaOを含む。実施の形態において、上述した範囲のいずれを、どの他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。実施の形態において、そのガラス組成物は、0.4モル%以上から1.6モル%以下、0.6モル%以上から1.4モル%以下、または0.8モル%以上から1.2モル%以下など、0.2モル%以上から1.8モル%以下の量、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の量でCaOを含む。
【0032】
実施の形態において、前記ガラス組成物は、必要に応じて、1種類以上の清澄剤を含むことがある。いくつかの実施の形態において、その清澄剤の例としては、SnO2が挙げられる。そのような実施の形態において、SnO2は、0.0モル%以上から0.1モル%以下など、0.2モル%以上の量、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の量でガラス組成物中に存在することがある。実施の形態において、SnO2は、0.0モル%以上から0.2モル%以下、または0.1モル%以上から0.2モル%以下の量、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の量でガラス組成物中に存在することがある。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、SnO2を実質的に含まない、または含まないことがある。
【0033】
ZnOは、ガラスの圧縮応力を増加させることなどによって、ガラスのイオン交換性能を向上させる。しかしながら、ZnOを多く加えすぎると、密度が増し、相分離が生じることがある。実施の形態において、前記ガラス組成物は、0.2モル%以上から2.0モル%以下、または0.5モル%以上から1.5モル%以下などの0.0モル%以上から2.5モル%以下の量、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の量でZnOを含むことがある。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、0.3モル%以上、0.5モル%以上、または0.8モル%以上の量でZnOを含むことがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、1.5モル%以下、または1.0モル%以下など、2.0モル%以下の量でZnOを含むことがある。実施の形態において、上述した範囲のいずれを、どの他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。
【0034】
ここに開示された実施の形態によるガラス組成物は、先の個々の成分に加え、0.0モル%以上から5.0モル%以下の量、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の量で二価陽イオン酸化物(ここではROと称される)を含むことがある。ここに用いられているように、二価陽イオン酸化物(RO)としては、以下に限られないが、MgO、CaO、SrO、BaO、FeO、およびZnOが挙げられる。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、0.5モル%以上、1.0モル%以上、1.5モル%以上、2.0モル%以上、2.5モル%以上、3.0モル%以上、3.5モル%以上、4.0モル%以上、または4.5モル%以上など、0.2モル%以上の量でROを含むことがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、4.0モル%以下、3.5モル%以下、3.0モル%以下、2.5モル%以下、2.0モル%以下、1.5モル%以下、1.0モル%以下、または0.5モル%以下など、4.5モル%以下の量でROを含むことがある。実施の形態において、上述した範囲のいずれを、どの他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。実施の形態において、そのガラス組成物は、0.5モル%以上から4.0モル%以下、1.0モル%以上から3.5モル%以下、1.5モル%以上から3.0モル%以下、または2.0モル%以上から2.5モル%以下など、0.2モル%以上から4.5モル%以下の量、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の量でROを含むことがある。
【0035】
前記ガラス組成物中のアルカリ金属酸化物(ここでは「R2O」とも称される)およびROの量は、ガラス組成物の粘度に影響をもたらすことがある、すなわち、3D成形法をより容易にできるようにR2O+ROの含有量を増加させると、軟化点が低下する。ここに用いられているように、R2Oとしては、Li2O、Na2O、K2O、Rb2O、Cs2O、およびFr2Oが挙げられる。実施の形態において、R2OおよびROの合計(すなわち、R2O+RO)は、18.5モル%以上、19.0モル%以上、19.5モル%以上、20.0モル%以上、20.5モル%以上、21.0モル%以上、21.5モル%以上、22.0モル%以上、22.5モル%以上、または23.0モル%以上など、18.0モル%以上である。実施の形態において、R2OおよびROの合計は、22.0モル%以下、21.5モル%以下、21.0モル%以下、20.5モル%以下、20.0モル%以下、19.5モル%以下、19.0モル%以下、または18.5モル%以下など、22.5モル%以下である。実施の形態において、上述した範囲のいずれを、どの他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。実施の形態において、R2OおよびROの合計は、18.5モル%以上から22.5モル%以下、19.0モル%以上から22.0モル%以下、19.5モル%以上から21.5モル%以下、または20.0モル%以上から21.0モル%以下など、18.0モル%以上から23.0モル%以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にある。
【0036】
実施形態において、R2O/Al2O3のモル%で表される関係が、1.06以上である。Al2O3に対するR2Oの比を、1.06を超えるようにすると、ガラスの溶融性が改善される。ガラス製造の当業者には、Al2O3を上回るR2Oは、ガラス溶融物中のSiO2の溶解を大幅に改善することが知られている。この値は、シリカの節などの含有物による損失を減少させることによって、収率を改善するために、ガラス設計において厳密に制御される。いくつかの実施の形態において、R2O/Al2O3のモル比は、1.20以上、1.30以上、1.40以上、1.50以上、1.60以上、1.70以上、1.80以上、1.90以上、または2.00以上など、1.10以上である。R2O/Al2O3比が高過ぎると、ガラスは、劣化を受けやすくなるであろう。実施の形態において、R2O/Al2O3のモル比は、2.00以下、1.90以下、1.80以下、1.70以下、1.60以下、1.50以下、1.40以下、1.30以下、1.20以下、または1.10以下など、2.10以下である。実施の形態において、上述した範囲のいずれを、どの他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。実施の形態において、R2O/Al2O3のモル比は、1.10以上から1.90以下、1.20以上から1.80以下、または1.30以上から1.70以下など、1.06以上から2.10以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にある。
【0037】
実施の形態において、網目構造形成成分の総量(例えば、Al2O3+SiO2+B2O3+P2O5)は、78.5モル%以上、79.0モル%以上、78.5モル%以上、80.0モル%以上、80.5モル%以上、81.0モル%以上、81.5モル%以上、82.0モル%以上、82.5モル%以上、83.0モル%以上、83.5モル%以上、または84.0モル%以上など、78.0モル%以上である。多量の網目構造形成成分を有すると、ガラスの連結性と自由体積が増し、これにより、ガラスがそれほど脆くなくなり、損傷抵抗が改善される。実施の形態において、網目構造形成成分の総量は、84.5モル%以下、84.0モル%以下、83.5モル%以下、83.0モル%以下、82.5モル%以下、82.0モル%以下、81.5モル%以下、81.0モル%以下、80.5モル%以下、80.0モル%以下、79.5モル%以下、または79.0モル%以下など、85.0モル%以下である。実施の形態において、上述した範囲のいずれを、どの他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。実施の形態において、網目構造形成成分の総量は、78.0モル%以上から83.0モル%以下、80.0モル%以上から82.0モル%以下、または80.5モル%以上から81.5モル%以下など、78.0モル%以上から85.0モル%以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にある。
【0038】
1つ以上の実施の形態において、SiO2、Al2O3、B2O3、およびP2O5などのガラス網目構造形成成分の量は、ガラス組成物中のLi2Oの量に対して釣り合わされることがある。どの特定の理論にも束縛されないが、Li2Oは、他のアルカリイオンと比べて、ガラス中の自由体積を減少させ、それゆえ、圧入亀裂抵抗を低下させると考えられる。Li2Oは、Li+のNa+とのイオン交換に必要であるので、自由体積を減少させるLi2Oは、適切な鋭利接触損傷抵抗を維持するために、自由体積を増加させる網目構造形成材、すなわち、SiO2、Al2O3、B2O3、およびP2O5に対して、管理されるべきである。それゆえ、実施の形態において、Li2Oに対するガラス網目構造形成材のモル%の比(すなわち、(SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5)/Li2O)は、8.5以上、9.0以上、9.5以上、10.0以上、10.5以上、11.0以上、11.5以上、12.0以上、12.5以上、1.30以上、13.5以上、14.0以上、14.5以上、15.0以上、15.5以上、16.0以上、または16.5以上など、8.0以上である。他の実施の形態において、比(SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5)/Li2Oは、16.5以下、16.0以下、15.5以下、15.0以下、14.5以下、14.0以下、13.5以下、13.0以下、12.5以下、12.0以下、11.5以下、11.0以下、10.5以下、10.0以下、9.5以下、9.0以下、または8.5以下など、17.0以下である。実施の形態において、上述した範囲のいずれを、どの他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。実施の形態において、比(SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5)/Li2Oは、9.0以上から16.0以下、10.0以上から15.0以下、11.0以上から14.0以下、または12.0以上から13.0以下など、8.0以上から17.0以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にある。
【0039】
Al2O3+Li2Oの合計は、23.5モル%以上、24.0モル%以上、24.5モル%以上、25.0モル%以上、25.5モル%以上、26.0モル%以上、26.5モル%以上、27.0モル%以上、27.5モル%以上、28.0モル%以上、28.5モル%以上、29.0モル%以上、29.5モル%以上、または30.0モル%以上など、23.0モル%以上であるべきである。Al2O3+Li2Oの合計は、イオン交換プロファイルの末尾について所定の深さでの最大圧縮応力を高めるために、できるだけ多いべきである。
【0040】
実施の形態において、前記ガラス物品は、ヒ素およびアンチモンの一方または両方を実質的に含まないことがある。他の実施の形態において、そのガラス物品は、ヒ素およびアンチモンの一方または両方を含まないことがある。
【0041】
先に開示されたようなアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物の物理的性質をここに論じる。これらの物理的性質は、実施例に関してより詳しく論じられるように、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物の成分量を変えることによって達成できる。
【0042】
実施の形態によるガラス組成物は、2.25g/cm3以上から2.60g/cm3以下、2.30g/cm3以上から2.60g/cm3以下、2.35g/cm3以上から2.60g/cm3以下、2.40g/cm3以上から2.60g/cm3以下、または2.45g/cm3以上から2.60g/cm3以下など、2.20g/cm3以上から2.60g/cm3以下の密度を有することがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、2.20g/cm3以上から2.40g/cm3以下、2.20g/cm3以上から2.35g/cm3以下、2.20g/cm3以上から2.30g/cm3以下、または2.20g/cm3以上から2.25g/cm3以下など、2.20g/cm3以上から2.45g/cm3以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の密度を有することがある。一般に、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物において、Na+またはK+などのより大きく、より緻密なアルカリ金属陽イオンが、Li+などのより小さいアルカリ金属陽イオンと置換されるほど、そのガラス組成物の密度は減少する。したがって、ガラス組成物中のリチウムの量が多いほど、ガラス組成物はそれほど緻密ではなくなる。本開示に挙げられる密度値は、ASTM C693-93(2013)の浮力法により測定されるような値を称する。
【0043】
実施の形態において、前記ガラス組成物の液相粘度は、800kP以下、600kP以下、400kP以下、200kP以下、100kP以下、75kP以下、60kP以下、50kP以下、40kP以下、または30kP以下など、1000kP以下である。実施の形態において、そのガラス組成物の液相粘度は、40kP以上、60kP以上、80kP以上、100kP以上、120kP以上、140kP以上、または160kP以上など、20kP以上である。実施の形態において、上述した範囲のいずれを、どの他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。実施の形態において、そのガラス組成物の液相粘度は、40kP以上から900kP以下、60kP以上から800kP以下、または80kP以上から700kP以下など、20kP以上から1000kP以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にある。液相粘度は、以下の方法によって決定される。最初に、ガラスの液相温度が、「Standard Practice for Measurement of Liquidus Temperature of Glass by the Gradient Furnace Method」と題する、ASTM C829-81(2015)にしたがって測定される。次に、その液相温度でのガラスの粘度は、「Standard Practice for Measuring Viscosity of Glass Above the Softening Point」と題する、ASTM C965-96(2012)にしたがって測定される。
【0044】
前記ガラス組成物にリチウムを加えると、そのガラス組成物のヤング率、剛性率、およびポアソン比にも影響が生じる。実施の形態において、そのガラス組成物のヤング率は、67GPa以上から82GP以下、70GPa以上から80GP以下、72GPa以上から78GP以下、または74GPa以上から76GP以下など、65GPa以上から85GP以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にあることがある。実施の形態において、そのガラス組成物のヤング率は、68GPa以上から85GPa以下、70GPa以上から85GPa以下、72GPa以上から85GPa以下、74GPa以上から85GPa以下、76GPa以上から85GPa以下、78GPa以上から85GPa以下、80GPa以上から85GPa以下、または82GPa以上から85GPa以下など、66GPa以上から85GPa以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にあることがある。実施の形態において、そのヤング率は、65GPa以上から82GPa以下、65GPa以上から80GPa以下、65GPa以上から78GPa以下、65GPa以上から76GPa以下、65GPa以上から74GPa以下、65GPa以上から72GPa以下、65GPa以上から70GPa以下、65GPa以上から68GPa以下、または65GPa以上から10GPa以下など、65GPa以上から84GPa以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にあることがある。本開示に列挙されたヤング率の値は、「Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non-metallic Parts」と題するASTM E2001-13に述べられた一般型の共鳴超音波スペクトロスコピー技術により測定されたような値を称する。
【0045】
前記ガラス組成物の軟化点は、そのガラス組成物にリチウムを添加することにより影響を受ける。1つ以上の実施の形態によれば、前記ガラス組成物の軟化点は、705℃以上から925℃以下、710℃以上から920℃以下、715℃以上から915℃以下、720℃以上から910℃以下、725℃以上から905℃以下、730℃以上から900℃以下、735℃以上から895℃以下、740℃以上から890℃以下、745℃以上から885℃以下、750℃以上から880℃以下、755℃以上から875℃以下、760℃以上から870℃以下、765℃以上から865℃以下、770℃以上から860℃以下、775℃以上から855℃以下、780℃以上から850℃以下、785℃以上から845℃以下、790℃以上から840℃以下、795℃以上から835℃以下、800℃以上から830℃以下、805℃以上から825℃以下、または810℃以上から820℃以下など、700℃以上から930℃以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にあることがある。軟化点は、ASTM C1351M-96(2012)の平行板粘度法を使用して決定した。
【0046】
上記から、実施の形態によるガラス組成物は、スロット成形法、フロート成形法、圧延法、フュージョン成形法など、どの適切な方法によって成形してもよい。
【0047】
前記ガラス物品は、それを成形する様式によって特徴付けられることがある。例えば、そのガラス物品は、フロート成形可能(すなわち、フロート法により成形される)、ダウンドロー可能、および特に、フュージョン成形可能またはスロット成形可能(すなわち、フュージョンドロー法またはスロットドロー法などのダウンドロー法により成形される)であると特徴付けられることがある。
【0048】
ここに記載されたガラス物品のいくつかの実施の形態は、ダウンドロー法により成形されることがある。ダウンドロー法により、比較的無垢な表面を備えた、均一な厚さを有するガラス物品が製造される。そのガラス物品の平均曲げ強度は、表面傷の量とサイズにより制御されるので、接触が最小の無垢な表面は、より高い初期強度を有する。その上、ダウンドロー法により製造されたガラス物品は、費用のかかる研削および研磨を行わずに最終用途に使用できる、非常に平坦で滑らかな表面を有する。
【0049】
そのガラス物品のいくつかの実施の形態は、フュージョン成形可能(すなわち、フュージョンドロー法を使用して成形できる)と記載することができる。フュージョン法では、溶融したガラス原材料を受け取るための通路を有する延伸タンクが使用される。その通路は、通路の両側に通路の長さに沿って上部で開いた堰を有する。通路が溶融材料で満たされると、その溶融ガラスは堰から溢れる。溶融ガラスは、重力のために、延伸タンクの外面を2つの流れるガラス膜として流下する。延伸タンクのこれらの外面は、延伸タンクの下のエッジで接合するように、下方かつ内方に延在する。2つの流れるガラス膜はこのエッジで接合して、融合し、1つの流れるガラス物品を形成する。このフュージョンドロー法は、通路を越えて流れる2つのガラス膜が互いに融合するので、得られるガラス物品の外面はいずれも、その装置のどの部分とも接触しないという利点を与える。それゆえ、フュージョンドロー法により形成されたガラス物品の表面特性は、そのような接触の影響を受けていない。
【0050】
ここに記載されたガラス物品のいくつかの実施の形態は、スロットドロー法により成形できる。スロットドロー法は、フュージョンドロー法とは異なる。スロットドロー法において、溶融原材料ガラスが延伸タンクに供給される。その延伸タンクの底部に、開けられたスロットであって、スロットの長さに亘り延在するノズルを有するスロットがある。その溶融ガラスは、スロット/ノズルを通って流れ、連続ガラス物品として、徐冷領域へと下方に延伸される。
【0051】
1つ以上の実施の形態において、ここに記載されたガラス物品は、非晶質微細構造を示すことがあり、結晶または晶子を実質的に含まないことがある。言い換えると、そのガラス物品は、いくつかの実施の形態において、ガラスセラミック材料を除く。
【0052】
先に述べたように、実施の形態において、前記アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物は、イオン交換などによって強化して、以下に限られないが、ディスプレイカバー用のガラスなどの用途のために損傷抵抗であるガラスを製造することができる。
図1を参照すると、ガラスは、ガラスの表面から圧縮深さ(DOC)まで延在する圧縮応力下にある第1の領域(例えば、
図1の第1と第2の圧縮層120、122)およびガラスのDOCから中央または内部領域に延在する引張応力または中央張力(CT)下にある第2の領域(例えば、
図1の中央領域130)を有する。ここに用いられているように、DOCは、ガラス物品内の応力が圧縮から引張に変化する深さを称する。DOCでは、応力は正の(圧縮)応力から負の(引張)応力へと交差し、それゆえ、ゼロの応力値を示す。
【0053】
当該技術分野に通常用いられる慣例にしたがうと、圧縮応力は負の(<0)応力として表され、引張応力は正の(>0)応力として表される。しかしながら、本記載中ずっと、CSは正のまたは絶対値として表される-すなわち、ここに述べられているように、CS=|CS|。圧縮応力(CS)は、ガラスの表面で、またはその近くで最大値を有し、CS値は、ある関数にしたがって表面からの距離dにより変化する。再び
図1を参照すると、第1の区域120は、第一面110から深さd
1まで延在し、第2の区域122は第二面112から深さd
2まで延在する。これらの区域は、共に、ガラス100の圧縮またはCSを規定する。圧縮応力(表面CSを含む)は、折原製作所(日本国)により製造されているFSM-6000などの市販の計器を使用する表面応力測定器(FSM)によって測定される。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関連する、応力光学係数(SOC)の精密測定に依存する。次に、SOCは、その内容がここに全て引用される、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題する、ASTM基準C770-16に記載の手順C(ガラスディスク法)に述べられたように測定される。
【0054】
いくつかの実施の形態において、CSは、475MPa以上から775MPa以下、500MPa以上から750MPa以下、525MPa以上から725MPa以下、550MPa以上から700MPa以下、575MPa以上から675MPa以下、または600MPa以上から650MPa以下など、450MPa以上から800MPa以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にある。
【0055】
1つ以上の実施の形態において、Na+およびK+イオンは前記ガラス物品中に交換され、そのNa+イオンはK+イオンよりもガラス物品中のより深い深さまで拡散する。K+イオンの侵入深さ(「カリウムDOL」)は、イオン交換過程の結果としてのカリウム侵入深さを表すので、DOCとは区別される。カリウムDOLは、典型的に、ここに記載された物品のDOCより小さい。カリウムDOLは、CS測定に関して先に記載されたような、応力光学係数(SOC)の精密測定に依存する、折原製作所(日本国)により製造されている市販のFSM-6000表面応力測定器などの表面応力測定器を使用して測定される。第1と第2の圧縮層120、122の各々のカリウムDOLは、6μm以上から40μm以下、7μm以上から35μm以下、8μm以上から30μm以下、または9μm以上から25μm以下など、5μm以上から45μm以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にある。実施の形態において、第1と第2の圧縮層120、122の各々のカリウムDOLは、6μm以上から45μm以下、10μm以上から45μm以下、15μm以上から45μm以下、20μm以上から45μm以下、または25μm以上から45μm以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にある。実施の形態において、第1と第2の圧縮層120、122の各々のカリウムDOLは、5μm以上から35μm以下、5μm以上から30μm以下、5μm以上から25μm以下、または5μm以上から15μm以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲にある。
【0056】
両主面(
図1の110、112)の圧縮応力は、ガラスの中央領域(130)に貯蔵された張力により釣り合わされる。最大中央張力(CT)およびDOCの値は、当該技術分野で公知の散乱光偏光器(SCALP)技術を使用して測定される。屈折近視野(RNF)法またはSCALPを使用して、応力プロファイルを測定してもよい。応力プロファイルを測定するために、RNF法が使用される場合、SCALPにより与えられる最大CT値がRNF法に利用される。詳しくは、RNFにより測定される応力プロファイルは、SCALP測定により与えられる最大CT値に対して力平衡され、較正される。このRNF法は、ここに全てが引用される、「Systems and methods for measuring a profile characteristic of a glass sample」と題する米国特許第8854623号明細書に記載されている。詳しくは、RNF法は、基準ブロックに隣接してガラス物品を配置する工程、1Hzと50Hzの間の率で直交偏光の間で切り換えられる偏光切替光線を生成する工程、その偏光切替光線の出力量を測定する工程、および偏光切替基準信号を生成する工程を含み、直交偏光の各々の出力の測定量は互いの50%以内にある。この方法は、偏光切替光線を、ガラス試料中の異なる深さについて、ガラス試料および基準ブロックに透過させ、次いで、リレー光学系を使用して、透過した偏光切替光線を信号光検出器に中継する工程をさらに含み、その信号光検出器は偏光切替検出器信号を生成する。この方法は、検出器信号を基準信号で割って、正規化検出器信号を形成する工程、およびその正規化検出器信号からガラス試料のプロファイル特徴を決定する工程も含む。
【0057】
実施の形態において、前記ガラス組成物は、35MPa以上、40MPa以上、45MPa以上、50MPa以上、55MPa以上、60MPa以上、65MPa以上、70MPa以上、75MPa以上、80MPa以上、または85MPa以上など、30MPa以上の最大CTを有することがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、95MPa以下、90MPa以下、85MPa以下、80MPa以下、75MPa以下、70MPa以下、65MPa以下、60MPa以下、55MPa以下、50MPa以下、45MPa以下、または40MPa以下など、100MPa以下の最大CTを有することがある。実施の形態において、上述した範囲のいずれを、どの他の範囲と組み合わせてもよいことを理解すべきである。実施の形態において、そのガラス組成物は、35MPa以上から95MPa以下、40MPa以上から90MPa以下、45MPa以上から85MPa以下、50MPa以上から80MPa以下、55MPa以上から75MPa以下、または60MPa以上から70MPa以下など、30MPa以上から100MPa以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の最大CTを有することがある。
【0058】
上述したように、DOCは、当該技術分野で公知の散乱光偏光器(SCALP)技術を使用して測定される。そのDOCは、ここでのいくつかの実施の形態において、ガラス物品の厚さ(t)の一部として与えられる。実施の形態において、前記ガラス組成物は、0.18t以上から0.22t以下、または0.19t以上から0.21t以下など、0.15t以上から0.25t以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の圧縮深さ(DOC)を有することがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、0.17t以上から0.25t以下、0.18t以上から0.25t以下、0.19t以上から0.25t以下、0.20t以上から0.25t以下、0.21t以上から0.25t以下、0.22t以上から0.25t以下、0.23t以上から0.25t以下、または0.24t以上から0.25t以下など、0.16t以上から0.20t以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲のDOCを有することがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、0.15t以上から0.23t以下、0.15t以上から0.22t以下、0.15t以上から0.21t以下、0.15t以上から0.20t以下、0.15t以上から0.19t以下、0.15t以上から0.18t以下、0.15t以上から0.17t以下、または0.15t以上から0.16t以下など、0.15t以上から0.24t以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲のDOCを有することがある。
【0059】
圧縮応力層は、ガラスをイオン交換溶液に暴露することによって、ガラスに形成することができる。実施の形態において、そのイオン交換溶液は溶融硝酸塩であることがある。いくつかの実施の形態において、イオン交換溶液は、溶融KNO3、溶融NaNO3、またはそれらの組合せであることがある。実施の形態において、イオン交換溶液は、約80%の溶融KNO3、約75%の溶融KNO3、約70%の溶融KNO3、約65%の溶融KNO3、または約60%の溶融KNO3を含むことがある。実施の形態において、イオン交換溶液は、約20%の溶融NaNO3、約25%の溶融NaNO3、約30%の溶融NaNO3、約35%の溶融NaNO3、または約40%の溶融NaNO3を含むことがある。実施の形態において、イオン交換溶液は、約80%の溶融KNO3と約20%の溶融NaNO3、約75%の溶融KNO3と約25%の溶融NaNO3、約70%の溶融KNO3と約30%の溶融NaNO3、約65%の溶融KNO3と約35%の溶融NaNO3、または約60%の溶融KNO3と約40%の溶融NaNO3、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲を含むことがある。実施の形態において、例えば、ナトリウムまたはカリウムの硝酸塩、リン酸塩、または硫酸塩などの他のナトリウムとカリウムの塩をイオン交換溶液に使用してもよい。いくつかの実施の形態において、イオン交換溶液は、LiNO3などのリチウム塩を含むことがある。
【0060】
前記ガラス組成物は、そのガラス組成物から製造されたガラス物品をイオン交換溶液の浴中に浸漬することにより、そのガラス組成物から製造されたガラス物品上にイオン交換溶液を吹き付けることにより、またはそのガラス組成物から製造されたガラス物品にイオン交換溶液を別のやり方で物理的に施すことにより、イオン交換溶液に暴露することができる。そのイオン交換溶液は、ガラス組成物に暴露される際に、実施の形態によれば、410℃以上から490℃以下、420℃以上から480℃以下、430℃以上から470℃以下、または440℃以上から460℃以下など、400℃以上から500℃以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の温度であることがある。実施の形態において、そのガラス組成物は、8時間以上から44時間以下、12時間以上から40時間以下、16時間以上から36時間以下、20時間以上から32時間以下、または24時間以上から28時間以下など、4時間以上から48時間以下、並びに先の値の間の全ての範囲と部分的な範囲の期間に亘り、イオン交換溶液に暴露されることがある。
【0061】
イオン交換過程は、例えば、ここに全てが引用される、米国特許出願公開第2016/0102011号明細書に開示されているように、改善された圧縮応力プロファイルを与える工程条件下において、イオン交換溶液中で行うことができる。
【0062】
イオン交換過程が行われた後、ガラス物品の表面での組成は、形成されたままのガラス物品(すなわち、イオン交換過程を経る前のガラス物品)の組成とは異なるであろうことを理解すべきである。これは、例えば、Li+またはNa+などの、形成されたままのガラス中のあるタイプのアルカリ金属イオンが、それぞれ、例えば、Na+またはK+などのより大きいアルカリ金属イオンと交換されたことにより生じる。しかしながら、そのガラス物品の深さの中心での、またはその近くでのガラス組成は、実施の形態において、ガラス物品を形成するために使用された形成されたままの(イオン交換されていない)ガラスの組成をまだ有する。
【0063】
ここに開示されたガラス物品は、ディスプレイ(またはディスプレイ物品)を有する物品(例えば、携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステムなどを含む家庭用電化製品)、建築物品、輸送物品(例えば、自動車、列車、航空機、船舶など)、電化製品、もしくはある程度の透明性、耐引掻性、耐摩耗性またはその組合せを必要とする任意の物品などの別の物品に組み込まれることがある。ここに開示されたガラス物品のいずれかを含む例示の物品が、
図2Aおよび2Bに示されている。詳しくは、
図2Aおよび2Bは、前面204、背面206、および側面208を有する筐体202;その筐体内に少なくとも部分的に内側にまたはその中に完全にある電気部品(図示せず)であって、少なくとも制御装置、メモリ、およびその筐体の前面に、またはその近くにあるディスプレイ210を含む電気部品;およびディスプレイ上にあるように筐体の前面にあるまたはそれを覆うカバー基板212を備える家庭用電子装置200を示している。いくつかの実施の形態において、カバー基板212の一部および/または筐体202の一部が、ここに開示されたガラス物品のいずれを含んでもよい。
【0064】
第1の態様は、55.0モル%以上から75.0モル%以下のSiO2、8.0モル%以上から20.0モル%以下のAl2O3、3.0モル%以上から15.0モル%以下のLi2O、5.0モル%以上から15.0モル%以下のNa2O、および1.5モル%以下のK2Oを含み、Al2O3+Li2Oは22.5モル%超であり、R2O+ROは18.0モル%以上であり、R2O/Al2O3は1.06以上であり、SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5は78.0モル%以上であり、(SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5)/Li2Oは8.0以上であるガラス組成物を含む。
【0065】
第2の態様は、Al2O3+Li2Oが23.0モル%以上である、第1の態様によるガラス組成物を含む。
【0066】
第3の態様は、Al2O3+Li2Oが23.0モル%以上から26.5モル%以下である、第1と第2の態様のいずれか1つによるガラス組成物を含む。
【0067】
第4の態様は、R2O+ROが18.0モル%以上から23.0モル%以下である、第1から第3の態様のいずれか1つによるガラス組成物を含む。
【0068】
第5の態様は、R2O+ROが19.0モル%以上から22.0モル%以下である、第1から第4の態様のいずれか1つによるガラス組成物を含む。
【0069】
第6の態様は、R2O/Al2O3が1.06以上から2.10以下である、第1から第5の態様のいずれか1つによるガラス組成物を含む。
【0070】
第7の態様は、R2O/Al2O3が1.10以上から1.90以下である、第1から第6の態様のいずれか1つによるガラス組成物を含む。
【0071】
第8の態様は、SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5が78.0モル%以上から85.0モル%以下である、第1から第7の態様のいずれか1つによるガラス組成物を含む。
【0072】
第9の態様は、SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5が78.0モル%以上から83.0モル%以下である、第1から第8の態様のいずれか1つによるガラス組成物を含む。
【0073】
第10の態様は、(SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5)/Li2Oが8.0以上から17.0以下である、第1から第9の態様のいずれか1つによるガラス組成物を含む。
【0074】
第11の態様は、(SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5)/Li2Oが10.0以上から15.0以下である、第1から第10の態様のいずれか1つによるガラス組成物を含む。
【0075】
第12の態様は、B2O3+P2O5が0.0モル%超である、第1から第11の態様のいずれか1つによるガラス組成物を含む。
【0076】
第13の態様は、ガラス物品において、第一面;その第一面と反対の第二面であって、その第一面と第二面との間の距離としてガラス物品の厚さ(t)が測定される、第二面;およびその第一面と第二面の少なくとも一方からガラス物品の厚さ(t)中に延在する圧縮応力層を備えたガラス物品であって、そのガラス物品の中央張力は30MPa以上であり、その圧縮応力層は0.15t以上から0.25t以下の圧縮深さを有し、そのガラス物品は、55.0モル%以上から75.0モル%以下のSiO2、8.0モル%以上から20.0モル%以下のAl2O3、3.0モル%以上から15.0モル%以下のLi2O、5.0モル%以上から15.0モル%以下のNa2O、および1.5モル%以下のK2Oを含み、Al2O3+Li2Oは22.5モル%超であり、R2O+ROは18.0モル%以上であり、R2O/Al2O3は1.06以上であり、SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5は78.0モル%以上であり、(SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5)/Li2Oは8.0以上であるガラスから形成される、ガラス物品を含む。
【0077】
第14の態様は、ガラス物品の中央張力が50MPa以上である、第13の態様によるガラス物品を含む。
【0078】
第15の態様は、ガラス物品の中央張力が80MPa以上である、第13と第14の態様のいずれか1つのガラス物品を含む。
【0079】
第16の態様は、ガラス物品の厚さ中の圧縮応力層のカリウムの層の深さが5μm超から45μm以下である、第13から第15の態様のいずれか1つによるガラス物品を含む。
【0080】
第17の態様は、ガラスが、20kP以上から1000kP未満の液相粘度を有する、第13から第16の態様のいずれか1つによるガラス物品を含む。
【0081】
第18の態様は、前記圧縮応力層の表面圧縮応力が450MPa以上から800MPa以下である、第13から第17の態様のいずれか1つによるガラス物品を含む。
【0082】
第19の態様は、前面、背面、および側面を有する筐体;その筐体内に少なくとも部分的に内部にある電気部品であって、少なくとも制御装置、メモリ、およびその筐体の前面に、またはその近くにあるディスプレイを含む電気部品;およびディスプレイ上に配置されたカバー基板を備える家電製品であって、筐体およびカバー基板の少なくとも一方の少なくとも一部が、第13から第18の態様のいずれか1つによるガラス物品を含む、家電製品を含む。
【0083】
第20の態様は、ガラス物品において、第一面;その第一面と反対の第二面であって、その第一面と第二面との間の距離としてガラス物品の厚さ(t)が測定される、第二面;およびその第一面と第二面の少なくとも一方からガラス物品の厚さ(t)中に延在する圧縮応力層を備えたガラス物品であって、そのガラス物品の中央張力は60MPa以上であり、その圧縮応力層は0.15t以上から0.25t以下の圧縮深さを有し、そのガラス物品は、55.0モル%以上から75.0モル%以下のSiO2、8.0モル%以上から20.0モル%以下のAl2O3、3.0モル%以上から15.0モル%以下のLi2O、5.0モル%以上から15.0モル%以下のNa2O、および1.5モル%以下のK2Oを含み、Al2O3+Li2Oは22.5モル%超であり、R2O+ROは18.0モル%以上であり、R2O/Al2O3は1.06以上であり、SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5は78.0モル%以上であり、(SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5)/Li2Oは8.0以上である組成をガラス物品の中心深さで有する、ガラス物品を含む。
【0084】
第21の態様は、ガラス組成物において、55.0モル%以上から70.0モル%以下のSiO2、10.0モル%以上から20.0モル%以下のAl2O3、3.0モル%以上から15.0モル%以下のLi2O、5.0モル%以上から15.0モル%以下のNa2O、および1.5モル%以下のK2Oを含み、Al2O3+Li2Oは22.5モル%超であり、R2O+ROは18.0モル%以上であり、SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5は78.0モル%以上であり、(SiO2+Al2O3+B2O3+P2O5)/Li2Oは10.50以上である、ガラス組成物を含む。
【0085】
第22の態様は、ガラス物品において、第一面;その第一面と反対の第二面であって、その第一面と第二面との間の距離としてガラス物品の厚さ(t)が測定される、第二面;およびその第一面と第二面の少なくとも一方からガラス物品の厚さ(t)中に延在する圧縮応力層を備えたガラス物品であって、そのガラス物品の中央張力は30MPa以上であり、その圧縮応力層は0.15t以上から0.25t以下の圧縮深さを有し、そのガラス物品は、第21の態様によるガラス組成物から形成される、ガラス物品を含む。
【0086】
第23の態様は、ガラス物品の中央張力が50MPa以上である、第22の態様のガラス物品を含む。
【0087】
第24の態様は、ガラス物品の中央張力が80MPa以上である、第22と第23の態様のいずれか1つのガラス物品を含む。
【0088】
第25の態様は、ガラス物品の厚さ中の圧縮応力層のカリウムの層の深さが5μm超から45μm以下である、第22から第24の態様のいずれか1つのガラス物品を含む。
【0089】
第26の態様は、ガラス組成物が、20kP以上から1000kP未満の液相粘度を有する、第22から第25の態様のいずれか1つのガラス物品を含む。
【0090】
第27の態様は、圧縮応力層の表面圧縮応力が450MPa以上から800MPa以下である、第22から第26の態様のいずれか1つのガラス物品を含む。
【0091】
第28の態様は、前面、背面、および側面を有する筐体;その筐体内に少なくとも部分的に内部にある電気部品であって、少なくとも制御装置、メモリ、およびその筐体の前面に、またはその近くにあるディスプレイを含む電気部品;およびディスプレイ上に配置されたカバー基板を備える家電製品であって、筐体およびカバー基板の少なくとも一方の少なくとも一部が、第22から第27の態様のいずれか1つのガラス物品を含む、家電製品を含む。
【実施例0092】
以下の実施例により、実施の形態をさらに明白にする。これらの実施例は、先に記載された実施の形態に対する限定ではないことを理解すべきである。
【0093】
下記の表1に列挙された成分を有するガラス組成物を、従来のガラス形成方法によって調製した。表1において、全成分はモル%で表され、ガラス組成物の様々な性質は、本明細書に開示された方法にしたがって測定した
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
本明細書に記載された全ての組成成分、関係、および比は、特に明記のない限り、モル%で与えられている。本明細書に開示された全ての範囲は、範囲が開示される前または後に明白に述べられているか否かにかかわらず、広く開示された範囲により包含される任意と全ての範囲および部分的な範囲を含む。
【0106】
請求項の主題の精神および範囲から逸脱せずに、ここに記載された実施の形態に様々な改変および変更を行えることが、当業者に明白であろう。それゆえ、本明細書は、ここに記載された様々な実施の形態の改変および変更を、そのような改変および変更が、付随の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内に入るという条件で包含することが意図されている。
【0107】
ここに用いられているように、数に続く0は、その数の有効桁を表すことを意図している。例えば、「1.0」という数は、二桁の有効桁を示し、「1.00」という数は、三桁の有効桁を表す。