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特開2023-273054-ピリミジンスルファミド誘導体の結晶形
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027305
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】4-ピリミジンスルファミド誘導体の結晶形
(51)【国際特許分類】
   C07D 239/47 20060101AFI20230221BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230221BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230221BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230221BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230221BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 15/10 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230221BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C07D239/47 Z CSP
A61K9/20
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/38
A61K31/513
A61P1/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P7/04
A61P7/06
A61P9/00
A61P9/04
A61P9/10
A61P9/12
A61P11/00
A61P11/06
A61P13/08
A61P13/12
A61P15/10
A61P19/04
A61P25/04
A61P25/06
A61P25/28
A61P27/02
A61P27/16
A61P29/00
A61P35/00
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201112
(22)【出願日】2022-12-16
(62)【分割の表示】P 2019546286の分割
【原出願日】2018-02-26
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2017/054489
(32)【優先日】2017-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2017/061487
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】517248845
【氏名又は名称】イドーシア ファーマシューティカルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IDORSIA PHARMACEUTICALS LTD
【住所又は居所原語表記】HEGENHEIMERMATTWEG 91, 4123 ALLSCHWIL, SWITZERLAND
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ボリ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ コーラー
(72)【発明者】
【氏名】イヴァン シンデルホルツ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス フォン ラウマー
(72)【発明者】
【氏名】マルク ベレ
(72)【発明者】
【氏名】マルティーヌ クローゼル
(72)【発明者】
【氏名】マルク イグラルツ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】良好な流動特性、低い吸湿性、製造における良好な再現性(例えば、より良好なろ過パラメータ、より良好な形成再現性及び/又はより良好な沈降性)を有する、{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドの新規な結晶形、その製造方法、当該結晶形を有する医薬組成物を提供する。
【解決手段】例えば、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:17.8°、20.0°及び23.5°におけるピークの存在;粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.7°、15.7°及び22.0°におけるピークの存在;により特徴づけられる結晶形である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:17.8°、20.0°及び23.5°におけるピークの存在;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.7°、15.7°及び22.0°におけるピークの存在;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.6°、16.8°及び20.1°におけるピークの存在;又は、
- 結晶形がアセトニトリル溶媒和物であり、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.5°、16.5°及び18.2°におけるピークの存在;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.0°、16.1°及び21.9°におけるピークの存在;又は、
- 結晶形がジメチルスルホキシド溶媒和物であり、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:16.9°、19.3°及び24.8°におけるピークの存在;
- 結晶形がエタノール溶媒和物であり、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:11.3°、16.4°及び20.3°におけるピークの存在;
により特徴づけられる、{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミド
【化1】
の結晶形であって、当該粉末X線回折ダイアグラムが、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いて得られ;上記2θ値の精度が2θ+/-0.2°の範囲内である、結晶形。
【請求項2】
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:17.8°、18.6°、20.0°、23.2°及び23.5°におけるピークの存在;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:7.8°、9.7°、15.7°、19.8°及び22.0°におけるピークの存在;
により特徴づけられる、請求項1に記載の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドの結晶形であって、当該粉末X線回折ダイアグラムが、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いて得られ;上記2θ値の精度が2θ+/-0.2°の範囲内である、結晶形。
【請求項3】
粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:17.8°、18.6°、20.0°、23.2°及び23.5°におけるピークの存在;により特徴づけられる、請求項
1に記載の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドの結晶形であって、当該粉末X線回折ダイアグラムが、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いて得られ;上記2θ値の精度が2θ+/-0.2°の範囲内である、結晶形。
【請求項4】
粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.8°、9.9°、11.7°、17.8°、18.6°、20.0°、21.5°、22.8°、23.2°及び23.5°におけるピークの存在;により特徴づけられる、請求項1に記載の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドの結晶形であって、当該粉末X線回折ダイアグラムが、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いて得られ;上記2θ値の精度が2θ+/-0.2°の範囲内である、結晶形。
【請求項5】
図1に示す粉末X線回折パターンを本質的に示す、請求項3又は4に記載の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミド又はその化合物の溶媒和物の結晶形。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドの結晶形であって、{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドをpH6.2~6.8において水溶液中で結晶化することにより得ることができる、結晶形。
【請求項7】
有効成分としての化合物、{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドを有し、さらに少なくとも1種の治療上不活性な賦形剤を有する医薬組成物の製造における使用のための、請求項1~6のいずれか1項に記載の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドの結晶形。
【請求項8】
請求項2~6のいずれか1項に記載の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドの結晶形を有効成分として有し、さらに少なくとも1種の治療上不活性な賦形剤を有する医薬組成物。
【請求項9】
微結晶セルロース、ラクトース、ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウムを治療上不活性な賦形剤として有する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
高血圧、肺高血圧、冠動脈疾患、心不全、腎若しくは心筋虚血、腎不全、脳虚血、認知症、偏頭痛、くも膜下出血、レイノー症候群、指潰瘍又は門脈圧亢進症の治療において使用するための、並びに、アテローム性動脈硬化、バルーン又はステント血管形成術後の再狭窄、炎症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、癌、黒色腫、前立腺癌、前立腺肥大、勃起不全、聴力損失、黒内障、慢性気管支炎、喘息、肺線維症、グラム陰性敗血症、ショック、鎌状赤血球貧血、糸球体腎炎、腎疝痛、緑内障、結合組織病、糖尿病合併症、血管若しくは心臓外科手術の、又は臓器移植後の合併症、シクロスポリン治療の合併症、疼痛又は高脂血症の治療又は予防において使用するための、請求項2~6のいずれか1項に記載の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エト
キシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドの結晶形。
【請求項11】
高血圧、肺高血圧、糖尿病性動脈疾患、心不全、勃起不全、狭心症及び慢性腎臓疾患からなる群より選択される疾患の治療において使用するための、請求項10に記載の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドの結晶形。
【請求項12】
本態性高血圧、抵抗性高血圧、肺高血圧及び肺動脈高血圧からなる群より選択される疾患の治療において使用するための、請求項10に記載の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドの結晶形。
【請求項13】
高血圧、肺高血圧、冠動脈疾患、心不全、腎若しくは心筋虚血、腎不全、脳虚血、認知症、偏頭痛、くも膜下出血、レイノー症候群、指潰瘍又は門脈圧亢進症の治療のための医薬の製造のための、並びに、アテローム性動脈硬化、バルーン又はステント血管形成術後の再狭窄、炎症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、癌、黒色腫、前立腺癌、前立腺肥大、勃起不全、聴力損失、黒内障、慢性気管支炎、喘息、肺線維症、グラム陰性敗血症、ショック、鎌状赤血球貧血、糸球体腎炎、腎疝痛、緑内障、結合組織病、糖尿病合併症、血管若しくは心臓外科手術の、又は臓器移植後の合併症、シクロスポリン治療の合併症、疼痛、高脂血症又は慢性腎臓疾患の治療又は予防のための医薬の製造のための、請求項2~6のいずれか1項に記載の化合物、{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドの結晶形の使用。
【請求項14】
治療上効果的な量の、請求項2~6のいずれか1項に記載の化合物、{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドの結晶形、又は、請求項7~9のいずれか1項に記載の医薬組成物を患者に投与する工程を有する、高血圧、肺高血圧、冠動脈疾患、心不全、腎若しくは心筋虚血、腎不全、脳虚血、認知症、偏頭痛、くも膜下出血、レイノー症候群、指潰瘍又は門脈圧亢進症の治療のための、並びに、アテローム性動脈硬化、バルーン又はステント血管形成術後の再狭窄、炎症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、癌、黒色腫、前立腺癌、前立腺肥大、勃起不全、聴力損失、黒内障、慢性気管支炎、喘息、肺線維症、グラム陰性敗血症、ショック、鎌状赤血球貧血、糸球体腎炎、腎疝痛、緑内障、結合組織病、糖尿病合併症、血管若しくは心臓外科手術の、又は臓器移植後の合併症、シクロスポリン治療の合併症、疼痛、高脂血症又は慢性腎臓疾患の治療又は予防のための、方法。
【請求項15】
慢性腎臓疾患(CKD)、糖尿病、糖尿病性ネフローゼ、糖尿病網膜症、糖尿病性脈管障害、慢性心不全及び拡張機能障害からなる群より選択される障害の治療において使用するための、請求項2~6のいずれか1項に記載の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドの結晶形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミド(以下、「化合物」とも記載する。)の新規な結晶形、その製造方法、当該結晶形を有する医薬組成物;そのような結晶形から製造される医薬組成物、並びに、エンドセリン受容体阻害剤及びエンドセリン受容体アンタゴニストとしてのそれらの使用に関する。本発明はまた、特定の疾患又は障害を治療するための、単独での又は他の有効成分若しくは治療剤と組み合わせた、「化合物」の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アプロシテンタン(Aprocitentan)、{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドは、式Iで表される。
【0003】
【化1】
ACT-132577の名称でも知られるアプロシテンタンは、エンドセリン受容体阻害剤であり、エンドセリン受容体アンタゴニストとして有用である。式Iの化合物は、以前にWO02/053557において包括的に開示された構造ファミリーのメンバーである。特に、式Iの化合物は、エンドセリン受容体アンタゴニスト活性を示す一方、イン ヴィヴォにおいて、対応するアルキル化誘導体と比較して、はるかに長い半減期及びはるかに短いクリアランスを示す。そのため、式Iの化合物は、WO2009/024906に開示されるように、持効性の医薬組成物として特に好適である。アプロシテンタンに関する特定の製造方法がWO2015/121397に開示されている。
【0004】
エンドセリンの結合を阻害するその能力により、「化合物」は、エンドセリンに起因する血管れん縮、増殖又は炎症の増大と関連するエンドセリン関連疾患の治療に使用することができる。そのようなエンドセリン関連疾患の例は、高血圧、肺高血圧、冠動脈疾患、心不全、腎若しくは心筋虚血、腎不全、脳虚血、認知症、偏頭痛、くも膜下出血、レイノー症候群、指潰瘍及び門脈圧亢進症である。それらはまた、慢性腎臓疾患(CKD)、糖尿病、糖尿病性ネフローゼ、糖尿病網膜症、糖尿病性脈管障害、慢性心不全及び拡張機能障害の治療又は予防においても使用することができる。さらに、それらは、アテローム性動脈硬化、バルーン又はステント血管形成術後の再狭窄、炎症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、
癌、黒色腫、前立腺癌、前立腺肥大、勃起不全、聴力損失、黒内障、慢性気管支炎、喘息、肺線維症、グラム陰性敗血症、ショック、鎌状赤血球貧血、糸球体腎炎、腎疝痛、緑内障、結合組織病、糖尿病合併症の治療及び予防、血管若しくは心臓外科手術の、又は臓器移植後の合併症、シクロスポリン治療の合併症、疼痛、高脂血症、並びに現在エンドセリンに関連のあることが知られている他の疾患の治療又は予防にも使用することができる。
【0005】
2014年のAmerican Society of HypertensionとInternational Society of Hypertensionの共同声明[Weberら、「Clinical Practice Guidelines for the Management of Hypertension in the Community。A Statement by the American Society of Hypertension and the International Society of Hypertension.」J Clin Hypertens(2014)、16(1)、14-26]、2013年のEuropean Society of HypertensionとEuropean Society of Cardiologyの共同ガイドライン[Manciaら、J.Hypertens.(2013)、31、1281-1357]並びに幾つかの国内ガイドライン[Denolleら、J Hum Hypertens.(2016)、30(11)、657-663;McCormackら、Br J Cardiol(2013)、20(suppl 1)、S1-S16]によれば、抵抗性高血圧(rHT)(又は、治療困難性高血圧)は、利尿剤を含む異なる薬理学的クラス(pharmacological classes)の3種の降圧療法を最大又は最適用量で同時投与したにもかかわらず、制御できない血圧(BP)(すなわち、BPを予め決められたスレショルドに下げることができない)と定義される。すなわち、抵抗性高血圧の患者は、3種を超える医薬の使用により血圧が制御される患者を包含する。すなわち、血圧は制御されるが、そのためには4種以上の医薬を必要とする患者は、治療に抵抗性であると考えられるべきである(例えば、Manciaら、J.Hypertens.(2013)を参照されたい。)。
【0006】
高血圧及び/又は腎臓疾患を患う患者に対して、エンドセリン受容体アンタゴニスト(ERA)が顕著な治療効果を有するかもしれないことが、臨床試験により示された。しかしながら、治療による有益性が、催奇性作用の潜在リスク等の潜在的副作用を凌駕する必要がある。加えて、選択的ETアンタゴニスト並びにET及びETの両受容体のデュアルアンタゴニストは、過去に試験を行った多くのERAに関連する共通の副作用である体液貯留を引き起こすかもしれず、時には(例えば、利尿剤で対処できない場合には)心不全又は死等の重大な(exaggerated)主要有害心イベントに至る。危険性-有益性バランスは、(例えば、デュアルアンタゴニストであるボセンタン(bosentan)及びマシテンタン(macitentan)、ET選択的アンタゴニストであるアンブリセンタン(ambrisentan)等のERAに対する過去における連続的な承認に反映されているように)肺高血圧等の適応症については、ほとんどの場合、ERAを用いた治療に有利であるが、ERAは原発性高血圧の処置には適さず(Laffinら、Seminars in Nephrology 2015、35、168-175)、また、rHT、慢性腎臓疾患又は他の高血圧関連疾患をERAで治療する可能性を考える場合、体液貯留等の副作用の問題が残るであろう。
【0007】
ET選択的エンドセリン受容体アンタゴニストであるダルセンタン(darusentan)が、rHTの治療のために開発中である(Bakrisら、Hypertension 2010、56,824-830、WO2007/098390も参照されたい。)。rHTの患者における14週間の第3相試験において、ダルセンタンは、自由行動下血圧(ambulatory blood pressure)の減少に対して効果を示したが、主要エンドポイントである収縮期血圧に対する有意な治療効果を示すことがで
きなかった。患者は、利尿剤を含む異なる薬物クラス(drug classes)の3種以上の降圧薬による最適用量における治療にもかかわらず、抵抗性高血圧(140mmHgより高い収縮期血圧)の治療を受けている場合、参加する資格を有した。1日当たり25mgの最小用量のヒドロクロロチアジド(又は、等価の他のサイアザイド利尿薬)が必要であった。たとえ、試験の間に、体液貯留を処置するために、研究者の裁量で利尿療法を強化することができたとしても、ダルセンタンに関連して最も頻発する有害イベントは体液貯留/浮腫であり、他の群のそれぞれにおいて12%であったのに対し28%であった。プラセボと比べ、より多くの患者がダルセンタンの有害イベントのために試験を中止した。
【0008】
慢性腎臓疾患(CKD)及びrHTを含む種々の適応症に対してERAを試験した総括的要約が、WO2016/073846に記載されている。ダルセンタンに対する上記の観察と同様に、ET選択的ERAであるavosentanもまた、糖尿病患者のタンパク尿を減少させるためにavosentanの使用を試みる試験において、有意な治療効果を示したが、それは、主として水分過負荷及びうっ血性心不全に関連する有害イベントによる試験投薬の中止の有意な増大を伴った。上記試験は途中で打ち切られ、著者は、「25~50mgの用量において、ETA受容体に対するavosentanの選択性はより低く、従って、ナトリウム及び水の貯留並びに血管内から血管外空間への潜在的体液移動を伴う末梢血管拡張を引き起こすのかもしれない。avosentanがより高い用量でET受容体を遮断するという仮定は、ACEIで治療した人々における選択的ET受容体遮断のナトリウム利尿効果を示すデータによりさらに支持される(Mannら、J Am Soc Nephrol.2010、21(3):527-535。)」と結
論づけた。WO2016/073846には、体液貯留が、ERAであるボセンタン、tezosentan、アンブリセンタン及びアトラセンタン(atrasentan)の副作用の増大を引き起こした可能性があるさらなる例が記載されている。WO2016/073846は、結論として、体液貯留の予測装置を用いて、ERAで、特にETA選択的ERAであるアトラセンタンでCKDを治療する方法を提案しており;当該方法は、ERAを対象に投与した場合の体液貯留のリスクを決定する工程;及び、上記リスクが許容レベルである場合に、対象にERAを投与する工程を有する。
【0009】
前臨床及び臨床データは、ET選択的アンタゴニストであるsitaxentan及びアンブリセンタンは、デュアルERAであるボセンタン及びマシテンタンよりも体液貯留のリスクが高いことを示唆している(Vercauterenら、JPET 2017、361、322-333)。一方、前臨床データは、ACE阻害剤であるエナラプリル(enalapril)と併用したET選択的ERAの血圧に対する相乗効果は、ET受容体の同時遮断により消失することを示した(Goddardら、J.Am.Soc.Nephrol.2004、15、2601-2610)。両エンドセリン受容体を効果的に遮断するERAであるアプロシテンタンは、本態性高血圧を有する対象の血圧を効果的に制御するであろうことが第2相試験において示されている。(アプロシテンタンは単剤治療として、すなわち背景降圧療法(background anti-hypertensive therapy)なしで投与された)(Actelion Pharmaceuticals Ltd、2017年5月22日のプレスリリース)。体液貯留の可能性を示す所見がいくつか観察されたが(例えば、高用量における体重増加、ヘモグロビン濃度の用量と関連した減少、4例において高用量での抹消性浮腫)、有害イベントの全体的な頻度は、プラセボ群において観察されたものと同様であった。従って、WO2016/073846の方法とは異なり、アプロシテンタンに対しては、高血圧関連疾患、特に抵抗性高血圧の治療に使用する場合、体液貯留に関するリスク評価及び/又は副作用を軽減するための用量減少は不要であろう。従って、アプロシテンタンは、これまでに糖尿病及び非糖尿病患者の抵抗性高血圧又は慢性腎臓疾患において試験された主としてETA選択的なアンタゴニストとは異なる薬理学的プロファイルを有するであろう。
【0010】
「化合物」の特定の結晶形が特定の条件下で得られることが見いだされた。「化合物」の当該結晶形は、新規であり、薬学的有効成分としての「化合物」の使用可能性の観点から、有利な特性を有するであろう。そのような利点には、より良好な流動特性;より低い吸湿性;製造におけるより良好な再現性(例えば、より良好なろ過パラメータ、より良好な形成再現性及び/又はより良好な沈降性);及び/又は一定したモルフォロジーを含むであろう。「化合物」のそのような結晶形は、特定の医薬組成物の製造方法に特に向いているであろう。「化合物」又はその薬学的に許容される塩は、特に他の有効成分又は治療剤と併用した場合に、特定の障害の治療に特に有用であることも見いだされた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図の説明
図1は、例えば、実施例1から得られるような結晶形Aにおける「化合物」の粉末X線回折ダイアグラムを示す。上記X線回折ダイアグラムは、示した屈折角2シータにおける、ダイアグラムにおける最も強いピークと比較して、下記のパーセンテージの相対強度を有するピークを示す(相対的ピーク強度を括弧内に記載する。)(3-33°の範囲の2シータからの、10%より大きな相対強度を有する選択したピークを報告する。):
9.8°(18%)、9.9°(18%)、11.7°(14%)、14.5°(10%)、15.4°(14%)、15.6°(29%)、16.9°(19%)、17.2°(16%)、17.8°(100%)、18.6°(50%)、19.9°(54%)、20.0°(67%)、21.5°(24%)、21.9°(10%)、22.8°(18%)、23.2°(49%)、23.5°(83%)、24.9°(32%)、25.1°(20%)、25.3°(24%)、25.6°(33%)、25.9°(16%)、27.1°(23%)、27.3°(39%)、28.5°(13%)、29.0°(23%)、29.4°(15%)、30.1°(12%)及び30.6°(10%)。
【0012】
図2は、例えば、実施例2から得られるような結晶形Bにおける「化合物」のジクロロメタン溶媒和物の粉末X線回折ダイアグラムを示す。上記X線回折ダイアグラムは、示した屈折角2シータにおける、ダイアグラムにおける最も強いピークと比較して、下記のパーセンテージの相対強度を有するピークを示す(相対的ピーク強度を括弧内に記載する。)(3-33°の範囲の2シータからの、10%より大きな相対強度を有する選択したピークを報告する。):
11.2°(16%)、16.2°(57%)、18.0°(21%)、18.6°(71%)、18.8°(36%)、19.8°(19%)、20.3°(100%)、22.4°(45%)、22.9°(28%)、24.3°(44%)、24.8°(11%)、25.0°(41%)、25.7°(22%)、26.1°(31%)、27.4°(20%)、29.4°(16%)、29.8°(38%)及び32.4°(12%)。
【0013】
図3は、例えば、実施例3から得られるような結晶形Cにおける「化合物」の粉末X線回折ダイアグラムを示す。上記X線回折ダイアグラムは、示した屈折角2シータにおける、ダイアグラムにおける最も強いピークと比較して、下記のパーセンテージの相対強度を有するピークを示す(相対的ピーク強度を括弧内に記載する。)(3-33°の範囲の2シータからの、10%より大きな相対強度を有する選択したピークを報告する。):
7.8°(23%)、9.7°(42%)、15.7°(37%)、17.2°(16%)、17.8°(15%)、18.8°(26%)、19.8°(71%)、20.1°(51%)、20.6°(15%)、21.6°(15%)、22.0°(100%)、23.4°(27%)、23.6°(40%)、24.1°(23%)、24.5°(16%)、25.1°(13%)、25.3°(39%)、25.7°(28%)、26.8°(19%)、27.1°(16%)、28.5°(31%)、30.8°(13%)及び30.8°(13%)。
【0014】
図4は、例えば、実施例4から得られるような結晶形Dにおける「化合物」の粉末X線回折ダイアグラムを示す。上記X線回折ダイアグラムは、示した屈折角2シータにおける、ダイアグラムにおける最も強いピークと比較して、下記のパーセンテージの相対強度を有するピークを示す(相対的ピーク強度を括弧内に記載する。)(3-33°の範囲の2シータからの、10%より大きな相対強度を有する選択したピークを報告する。):
4.6°(27%)、8.4°(15%)、8.6°(11%)、16.4°(17%)、16.8°(26%)、17.2°(10%)、18.6°(11%)、18.9°(18%)、19.3°(40%)、19.6°(45%)、20.1°(100%)、20.6°(55%)、20.8°(26%)、22.0°(10%)、22.7°(14%)、23.0°(24%)、23.5°(32%)、23.8°(12%)、24.2°(17%)、24.7°(20%)、25.1°(55%)、25.4°(22%)、25.6°(14%)、26.2°(16%)、26.8°(17%)、27.2°(28%)、28.1°(21%)及び28.1°(19%)。
【0015】
図5は、例えば、実施例5から得られるような結晶形Eにおける「化合物」のアセトニトリル溶媒和物の粉末X線回折ダイアグラムを示す。上記X線回折ダイアグラムは、示した屈折角2シータにおける、ダイアグラムにおける最も強いピークと比較して、下記のパーセンテージの相対強度を有するピークを示す(相対的ピーク強度を括弧内に記載する。)(3-33°の範囲の2シータからの、10%より大きな相対強度を有する選択したピークを報告する。):
9.0°(21%)、9.5°(56%)、11.3°(61%)、14.5°(41%)、14.8°(15%)、15.6°(47%)、16.0°(26%)、16.5°(100%)、18.2°(84%)、18.7°(73%)、18.9°(56%)、20.2°(20%)、20.7°(56%)、22.8°(96%)、23.9°(22%)、24.5°(70%)、25.3°(77%)、25.6°(29%)、26.0°(14%)、26.6°(66%)、27.5°(27%)、29.6°(31%)、30.2°(66%)及び33.0°(13%)。
【0016】
図6は、例えば実施例6から得られるような結晶形Jにおける「化合物」の粉末X線回折ダイアグラムを示す。上記X線回折ダイアグラムは、示した屈折角2シータにおける、ダイアグラムにおける最も強いピークと比較して、下記のパーセンテージの相対強度を有するピークを示す(相対的ピーク強度を括弧内に記載する。)(3-33°の範囲の2シータからの、10%より大きな相対強度を有する選択したピークを報告する。):
4.0°(44%)、4.7°(14%)、6.5°(23%)、9.0°(27%)、16.1°(40%)、17.2°(11%)、18.7°(22%)、19.0°(58%)、19.4°(28%)、19.8°(46%)、20.7°(57%)、21.2°(17%)、21.9°(100%)、22.6°(14%)、23.2°(23%)、24.1°(37%)、24.8°(40%)、25.6°(42%)、27.0°(29%)、28.2°(27%)、29.0°(20%)、30.3°及び30.8°(10%)。
【0017】
図7は、例えば、実施例7から得られるような結晶形Kにおける「化合物」のジメチルスルホキシド溶媒和物の粉末X線回折ダイアグラムを示す。上記X線回折ダイアグラムは、示した屈折角2シータにおける、ダイアグラムにおける最も強いピークと比較して、下記のパーセンテージの相対強度を有するピークを示す(相対的ピーク強度を括弧内に記載する。)(3-33°の範囲の2シータからの、10%より大きな相対強度を有する選択したピークを報告する。):
10.9°(16%)、16.9°(18%)、18.2°(26%)、18.4°(30%)、18.6°(29%)、18.7°(55%)、19.3°(100%)、20
.8°(35%)、21.2°(47%)、21.9°(26%)、24.3°(21%)、24.8°(24%)、25.4°(29%)、25.8°(22%)、26.7°(34%)、27.7°(13%)、27.8°(14%)、28.6°(15%)、29.4°(18%)、31.5°(23%)及び31.8°(12%)。
【0018】
図8は、例えば、実施例8から得られるような結晶形Lにおける「化合物」のエタノール溶媒和物の粉末X線回折ダイアグラムを示す。上記X線回折ダイアグラムは、示した屈折角2シータにおける、ダイアグラムにおける最も強いピークと比較して、下記のパーセンテージの相対強度を有するピークを示す(相対的ピーク強度を括弧内に記載する。)(3-33°の範囲の2シータからの、10%より大きな相対強度を有する選択したピークを報告する。):
9.1°(31%)、9.3°(34%)、11.3°(49%)、12.2°(10%)、14.6°(17%)、14.8°(46%)、15.7°(16%)、16.1°(10%)、16.4°(80%)、17.9°(17%)、18.2°(19%)、18.7°(96%)、20.0°(38%)、20.3°(100%)、22.6°(11%)、22.8°(76%)、23.2°(50%)、24.1°(14%)、24.5°(56%)、24.7°(68%)、25.4°(46%)、25.9°(32%)、26.4°(14%)、26.8°(22%)、27.7°(38%)、28.2°(12%)、29.7°(11%)、29.5°(64%)、29.8°(14%)、30.3°(14%)、30.5°(13%)及び32.4°(16%)。
【0019】
いかなる疑義をも避けるために、上記のピークは、図1図8に示す粉末X線回折の実験結果を記述する。上記のピークのリストとは対照的に、本発明の各結晶形の「化合物」を完全に及び明確に特徴づけるためには、選択された特徴的なピークのみが必要であることが理解されるべきである。
【0020】
図1図8のX線回折ダイアグラムにおいては、屈折角2シータ(2θ)を横軸に、数値を縦軸にプロットする。
【0021】
図9は、覚醒雄性高血圧ダール食塩感受性ラット(conscious, male hypertensive Dahl salt sensitive rats)の平均動脈圧(「MAP」)に対する「化合物」の急性効果を示す。
【0022】
図10は、覚醒雄性高血圧デオキシコルチコステロンアセタート食塩ラット(conscious, male hypertensive deoxycorticosterone acetate salt rats)のMAPに対する「化合物」の急性効果を示す。
【0023】
図11は、覚醒雄性高血圧自然発症ラット(conscious, male spontaneaously hypertensive rats)のMAPに対する「化合物」の急性効果を示す。
【0024】
図12は、覚醒雄性高血圧自然発症ラットのMAPに対する、「化合物」を単独で使用した場合又はバルサルタン(valsartan)と組み合わせて使用した場合の急性効果を示す。
【0025】
図13は、覚醒雄性高血圧デオキシコルチコステロンアセタート食塩ラットのMAPに対する、「化合物」を単独で使用した場合又はバルサルタンと組み合わせて使用した場合の急性効果を示す。
【0026】
図14は、覚醒雄性高血圧自然発症ラットのMAPに対する、「化合物」を単独で使用した場合又はエナラプリルと組み合わせて使用した場合の急性効果を示す。
【0027】
図15は、覚醒雄性高血圧デオキシコルチコステロンアセタート食塩ラットのMAPに対する、「化合物」を単独で使用した場合又はアムロジピン(amlodipine)と組み合わせて使用した場合の急性効果を示す。
【0028】
図16は、覚醒雄性高血圧デオキシコルチコステロンアセタート食塩ラットのMAPに対する「化合物」の長期経口投与の効果を示す。
【0029】
図17は、覚醒雄性高血圧デオキシコルチコステロンアセタート食塩ラットの腎血管抵抗に対する「化合物」の長期経口投与の効果を示す。
【0030】
図18は、雄性Wistar系ラットのヘマトクリット(Hct)に対する「化合物」の単回経口投与の効果を示す。
【0031】
図19は、実施例1から得られるような結晶形Aの「化合物」の重量測定蒸気吸着ダイアグラム(gravimetric vapour sorption diagram)を示す。
【0032】
図20は、実施例3から得られるような結晶形Cの「化合物」の重量測定蒸気吸着ダイアグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の詳細な記述
1) 本発明の第1の態様は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:17.8°、20.0°及び23.5°におけるピークの存在を有する「化合物」のA形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.7°、15.7°及び22.0°におけるピークの存在を有する「化合物」のC形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.6°、16.8°及び20.1°におけるピークの存在を有する「化合物」のD形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.5°、16.5°及び18.2°におけるピークの存在を有する「化合物」のアセトニトリル溶媒和物のE形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.0°、16.1°及び21.9°におけるピークの存在を有する「化合物」のJ形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:16.9°、19.3°及び24.8°におけるピークの存在を有する「化合物」のジメチルスルホキシド溶媒和物のK形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:11.3°、16.4°及び20.3°におけるピークの存在を有する「化合物」のエタノール溶媒和物のL形;
により特徴づけられる、「化合物」、{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミド又はこの化合物の溶媒和物の結晶形に関し、
当該粉末X線回折ダイアグラムは、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いて得られ;上記2θ値の精度は2θ+/-0.2°の範囲内である。
【0034】
態様1)に従う結晶形は、遊離塩基の結晶形における(すなわち塩の形態ではない)「化合物」を含むものとする。さらに、当該結晶形は非配位及び/又は配位溶媒を有しても
よい。配位溶媒は、本明細書において、結晶性溶媒和物についての用語として使用される。同様に、非配位溶媒は、本明細書において、物理吸着又は物理補足溶媒についての用語として使用される(Polymorphism in the Pharmaceutical Industry(Ed.R.Hilfiker、VCH、2006)、Chapter 8:U.J.Griesser:The Importance of Solvatesによる定義)。結晶形A及びCは無水和物又は非溶媒和物形態であり、すなわち、これらは配位水を有さないが、イソプロパノール、メタノール、エタノール及び/又は水等の非配位溶媒を有してもよく、結晶形BはDCM溶媒和物であり、結晶形EはMeCN溶媒和物であり、結晶形KはDMSO溶媒和物であり、結晶形Lはエタノール溶媒和物である。
【0035】
本発明は、A、C、D、E、J、K及びL形のそれぞれを個々に包含し、さらに、2、3、4、5、6又は7種の個別の形態を包含するものとする。好ましくは、A形及び/又はC形であり、特にA形である。
【0036】
2) 別の態様は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:17.8°、18.6°、20.0°、23.2°及び23.5°におけるピークの存在を有する「化合物」のA形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:7.8°、9.7°、15.7°、19.8°及び22.0°におけるピークの存在を有する「化合物」のC形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.6°、16.8°、19.6°、20.1°及び20.6°におけるピークの存在を有する「化合物」のD形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.5°、15.6°、16.5°、18.2°及び26.6°におけるピークの存在を有する「化合物」のアセトニトリル溶媒和物のE形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.0°、16.1°、19.0°、20.7°及び21.9°におけるピークの存在を有する「化合物」のJ形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:16.9°、19.3°、20.8°、21.2°及び24.8°におけるピークの存在を有する「化合物」のジメチルスルホキシド溶媒和物のK形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.3°、11.3°、16.4°、20.0°及び20.3°におけるピークの存在を有する「化合物」のエタノール溶媒和物のL形;
により特徴づけられる、「化合物」又はこの化合物の溶媒和物の結晶形に関し、
当該粉末X線回折ダイアグラムは、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いて得られ;上記2θ値の精度は2θ+/-0.2°の範囲内である。好ましくは、A形及び/又はC形であり、特にA形である。
【0037】
3) 別の態様は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.8°、9.9°、11.7°、17.8°、18.6°、20.0°、21.5°、22.8°、23.2°及び23.5°におけるピークの存在を有する「化合物」のA形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:7.8°、9.7°、15.7°、17.2°、17.8°、18.8°、19.8°、22.0°、23.6°及び25.3°におけるピークの存在を有する「化合物」のC形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.6°、16.4°、16
.8°、19.3°、19.6°、20.1°、20.6°、23.0°、23.5°及び25.1°におけるピークの存在を有する「化合物」のD形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.5°、15.6°、16.0°、16.5°、18.2°、18.7°、25.3°、26.6°、29.6°及び30.2°におけるピークの存在を有する「化合物」のアセトニトリル溶媒和物のE形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.0°、6.5°、9.0°、16.1°、19.0°、19.8°、20.7°、21.9°、24.1°及び24.8°におけるピークの存在を有する「化合物」のJ形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:10.9°、13.7°、16.9°、18.2°、19.3°、20.8°、21.2°、24.3°、24.8°及び26.7°におけるピークの存在を有する「化合物」のジメチルスルホキシド溶媒和物のK形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.1°、9.3°、11.3°、14.8°、16.4°、20.0°、20.3°、22.8°、24.5°及び24.7°におけるピークの存在を有する「化合物」のエタノール溶媒和物のL形;
により特徴づけられる、「化合物」又はこの化合物の溶媒和物の結晶形に関し、
当該粉末X線回折ダイアグラムは、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いて得られ;上記2θ値の精度は2θ+/-0.2°の範囲内である。好ましくは、A形及び/又はC形であり、特にA形である。
【0038】
4) 別の態様は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.8°、9.9°、11.7°、14.5°、15.4°、15.6°、16.9°、17.2°、17.8°、18.6°、19.9°、20.0°、21.5°、21.9°、22.8°、23.2°、23.5°、24.9°、25.1°、25.3°、25.6°、25.9°、27.1°、27.3°、28.5°、29.0°、29.4°、30.1°及び30.6°におけるピークの存在を有する「化合物」のA形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:7.8°、9.7°、15.7°、17.2°、17.8°、18.8°、19.8°、20.1°、20.6°、21.6°、22.0°、23.4°、23.6°、24.1°、24.5°、25.1°、25.3°、25.7°、26.8°、27.1°、28.5°、30.8°及び30.8°におけるピークの存在を有する「化合物」のC形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.6°、8.4°、8.6°、16.4°、16.8°、17.2°、18.6°、18.9°、19.3°、19.6°、20.1°、20.6°、20.8°、22.0°、22.7°、23.0°、23.5°、23.8°、24.2°、24.7°、25.1°、25.4°、25.6°、26.2°、26.8°、27.2°、28.1°及び28.1°におけるピークの存在を有する「化合物」のD形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.0°、9.5°、11.3°、14.5°、14.8°、15.6°、16.0°、16.5°、18.2°、18.7°、18.9°、20.2°、20.7°、22.8°、23.9°、24.5°、25.3°、25.6°、26.0°、26.6°、27.5°、29.6°、30.2°及び33.0°におけるピークの存在を有する「化合物」のアセトニトリル溶媒和物のE形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.0°、4.8°、6.5°、9.0°、16.1°、17.2°、18.7°、19.0°、19.4°、19.8°、20.7°、21.2°、21.9°、22.6°、23.2°、24.1°、24.8°、25.6°、27.0°、28.2°、29.0°、30.4°及び30.8°におけるピークの存在を有する「化合物」のJ形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:10.9°、16.9°、18.2°、18.4°、18.6°、18.7°、19.3°、20.8°、21.2°、21.9°、24.3°、24.8°、25.4°、25.8°、26.7°、27.7°、27.8°、28.6°、29.4°、31.5°及び31.8°におけるピークの存在を有する「化合物」のジメチルスルホキシド溶媒和物のK形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.1°、9.3°、11.3°、12.2°、14.6°、14.8°、15.7°、16.1°、16.4°、17.9°、18.2°、18.7°、20.0°、20.3°、22.6°、22.8°、23.2°、24.1°、24.5°、24.7°、25.5°、25.9°、26.4°、26.8°、27.7°、28.2°、29.7°、29.5°、29.8°、30.3°、30.5°及び32.4°におけるピークの存在を有する「化合物」のエタノール溶媒和物のL形;
により特徴づけられる、「化合物」又はその溶媒和物の結晶形に関し、
当該粉末X線回折ダイアグラムは、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いて得られ;上記2θ値の精度は2θ+/-0.2°の範囲内である。好ましくは、A形及び/又はC形であり、特にA形である。
【0039】
5) 別の態様は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.8°(18%)、9.9°(18%)、11.7°(14%)、14.5°(10%)、15.4°(14%)、15.6°(29%)、16.9°(19%)、17.2°(16%)、17.8°(100%)、18.6°(50%)、19.9°(54%)、20.0°(67%)、21.5°(24%)、21.9°(10%)、22.8°(18%)、23.2°(49%)、23.5°(83%)、24.9°(32%)、25.1°(20%)、25.3°(24%)、25.6°(33%)、25.9°(16%)、27.1°(23%)、27.3°(39%)、28.5°(13%)、29.0°(23%)、29.4°(15%)、30.1°(12%)及び30.6°(10%)におけるピークの存在を有する「化合物」のA形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:7.8°(23%)、9.7°(42%)、15.7°(37%)、17.2°(16%)、17.8°(15%)、18.8°(26%)、19.8°(71%)、20.1°(51%)、20.6°(15%)、21.6°(15%)、22.0°(100%)、23.4°(27%)、23.6°(40%)、24.1°(23%)、24.5°(16%)、25.1°(13%)、25.3°(39%)、25.7°(28%)、26.8°(19%)、27.1°(16%)、28.5°(31%)、30.8°(13%)及び30.8°(13%)におけるピークの存在を有する「化合物」のC形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.6°(27%)、8.4°(15%)、8.6°(11%)、16.4°(17%)、16.8°(26%)、17.2°(10%)、18.6°(11%)、18.9°(18%)、19.3°(40%)、19.6°(45%)、20.1°(100%)、20.6°(55%)、20.8°(26%)、22.0°(10%)、22.7°(14%)、23.0°(24%)、23.5°(32%)、23.8°(12%)、24.2°(17%)、24.7°(20%)、25.1°(55%)、25.4°(22%)、25.6°(14%)、26.2°(16%)、26.8°(17%)、27.2°(28%)、28.1°(21%)及び28.1°(19%)におけるピークの存在を有する「化合物」のD形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.0°(21%)、9.5°(56%)、11.3°(61%)、14.5°(41%)、14.8°(15%)、15.6°(47%)、16.0°(26%)、16.5°(100%)、18.2°(84%)、18.7°(73%)、18.9°(56%)、20.2°(20%)、20.7°(56%)、22.8°(96%)、23.9°(22%)、24.5°(70%
)、25.3°(77%)、25.6°(29%)、26.0°(14%)、26.6°(66%)、27.5°(27%)、29.6°(31%)、30.2°(66%)及び33.0°(13%)におけるピークの存在を有する「化合物」のアセトニトリル溶媒和物のE形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.0°(44%)、4.8°(14%)、6.5°(23%)、9.0°(27%)、16.1°(40%)、17.2°(11%)、18.7°(22%)、19.0°(58%)、19.4°(28%)、19.8°(46%)、20.7°(57%)、21.2°(17%)、21.9°(100%)、22.6°(14%)、23.2°(23%)、24.1°(37%)、24.8°(40%)、25.6°(42%)、27.0°(29%)、28.2°(27%)、29.0°(20%)、30.4°及び30.8°(10%)におけるピークの存在を有する「化合物」のJ形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:10.9°(16%)、16.9°(18%)、18.2°(26%)、18.4°(30%)、18.6°(29%)、18.7°(55%)、19.3°(100%)、20.8°(35%)、21.2°(47%)、21.9°(26%)、24.3°(21%)、24.8°(24%)、25.4°(29%)、25.8°(22%)、26.7°(34%)、27.7°(13%)、27.8°(14%)、28.6°(15%)、29.4°(18%)、31.5°(23%)及び31.8°(12%)におけるピークの存在を有する「化合物」のジメチルスルホキシド溶媒和物のK形;又は、
- 粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.1°(31%)、9.3°(34%)、11.3°(49%)、12.2°(10%)、14.6°(17%)、14.8°(46%)、15.7°(16%)、16.1°(10%)、16.4°(80%)、17.9°(17%)、18.2°(19%)、18.7°(96%)、20.0°(38%)、20.3°(100%)、22.6°(11%)、22.8°(76%)、23.2°(50%)、24.1°(14%)、24.5°(56%)、24.7°(68%)、25.5°(46%)、25.9°(32%)、26.4°(14%)、26.8°(22%)、27.7°(38%)、28.2°(12%)、29.7°(11%)、29.5°(64%)、29.8°(14%)、30.3°(14%)、30.5°(13%)及び32.4°(16%)におけるピークの存在を有する「化合物」のエタノール溶媒和物のL形;
により特徴づけられる、「化合物」又はその溶媒和物の結晶形に関し、
当該粉末X線回折ダイアグラムは、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いて得られ;上記2θ値の精度は2θ+/-0.2°の範囲内である。好ましくは、A形及び/又はC形であり、特にA形である。
【0040】
本データは、示した屈折角2シータにおける、ダイアグラムにおける最も強いピークと比較して、下記のパーセンテージの相対強度を有するピークを示す(相対的ピーク強度を括弧内に記載する。)(3-33°の範囲の2シータからの、10%より大きな相対強度を有する選択したピークを報告する。)。
【0041】
6) 別の態様は、図1、3、4、5、6、7及び8のいずれか1つに示す粉末X線回折パターンを本質的に示す「化合物」又はその溶媒和物の結晶形に関し、当該粉末X線回折ダイアグラムは、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いて得られ;上記2θ値の精度は2θ+/-0.2°の範囲内である。
【0042】
この文脈において、「本質的に」という用語は、当該図に表されるダイアグラムの少なくとも主要なピーク、すなわち、ダイアグラムにおいて最も強いピークと比べ、10%を超える、特に20%を超える相対強度を有するピークが存在しなければならないことを意味する。しかしながら、粉末X線回折技術の当業者は、粉末X線回折ダイアグラムの相対
強度が、好ましい配向効果に起因する強い強度変動に付され得ることを認識しているはずである。
【0043】
7) 態様6)の特定の副態様は、図1に示す粉末X線回折パターンを本質的に示す「化合物」の結晶形に関し、当該粉末X線回折ダイアグラムは、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いて得られ;上記2θ値の精度は2θ+/-0.2°の範囲内である。
【0044】
8) 本発明の別の態様は、
(a) A形は、pH6.2~6.8において水溶液中で「化合物」を結晶化することにより得ることができ;
(b) B形は、pH7におけるDCMからの「化合物」の結晶化により得ることができ;
(c) C形は、MeOH、EtOH又はプロパン-2-オールからの「化合物」の結晶化により得ることができ;
(d) D形は、メチル-エチルケトンからのA形の結晶化により得ることができ;
(e) E形は、MeCNからのA形の結晶化により得ることができ;
(j) J形は、DMSO及び水からのB形の結晶化により得ることができ;
(k) K形は、水溶液中で「化合物」を結晶化することにより得ることができ;
(l) L形は、EtOHからのK形の結晶化により得ることができる;
「化合物」又はその溶媒和物の結晶形に関する。
【0045】
9) 本発明の別の態様は、無水和物又は非溶媒和物形態である、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:17.8°、20.0°及び23.5°におけるピークの存在を有する「化合物」の結晶形Aに関する。上記粉末X線回折ダイアグラムは、態様2)、3)、4)、5)又は6)に開示するピークをさらに有してもよいものとする。当該結晶形は、例えば、実験の部において開示する方法を用いて、DSCにより測定される約159℃において観察される吸熱ピークを有する吸熱イベントによりさらに特徴づけられてもよいものとする。
【0046】
10) 本発明の別の態様は、pH6.2~6.8において水溶液中で結晶化することにより得ることができる無水和物又は非溶媒和物形態である、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:17.8°、20.0°及び23.5°におけるピークの存在を有する「化合物」の結晶形Aに関する。上記粉末X線回折ダイアグラムは、態様2)、3)、4)、5)又は6)に開示するピークをさらに有してもよいものとする。
【0047】
11) 本発明の別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:16.2°、18.6°及び20.3°(特に、16.2°、18.6°、20.3°、22.4°及び24.3°、とりわけ9.0°、11.2°、16.2°、18.0°、18.6°、19.8°、20.3°、22.4°、22.9°及び24.3°)におけるピークの存在を有する「化合物」のジクロロメタン溶媒和物の結晶形Bに関する。
【0048】
12) 本発明の別の態様は、pH7においてジクロロメタンからの結晶化により得ることができる、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:16.2°、18.6°及び20.3°(特に、16.2°、18.6°、20.3°、22.4°及び24.3°、とりわけ9.0°、11.2°、16.2°、18.0°、18.6°、19.8°、20.3°、22.4°、22.9°及び24.3°)におけるピークの存在を有する「化合物」のジクロロメタン溶媒和物の結晶形Bに関する。
【0049】
13) 本発明の別の態様は、無水和物又は非溶媒和物形態である、粉末X線回折ダイ
アグラムにおける以下の屈折角2θ:9.7°、15.7°及び22.0°におけるピークの存在を有する「化合物」の結晶形Cに関する。上記粉末X線回折ダイアグラムは、態様2)、3)、4)、5)又は6)に開示するピークをさらに有してもよいものとする。当該結晶形は、例えば、実験の部において開示する方法を用いて、DSCにより測定される約153℃において観察される吸熱ピークを有する吸熱イベントによりさらに特徴づけられてもよいものとする。
【0050】
14) 本発明の別の態様は、MeOH、EtOH又はプロパン-2-オールからの結晶化により得ることができる無水和物又は非溶媒和物形態である、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.7°、15.7°及び22.0°におけるピークの存在を有する「化合物」の結晶形Cに関する。上記粉末X線回折ダイアグラムは、態様2)、3)、4)、5)又は6)に開示するピークをさらに有してもよいものとする。
【0051】
15) 本発明の別の態様は、メチル-エチルケトンからのA形の結晶化により得ることができる、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.6°、16.8°及び20.1°におけるピークの存在を有する「化合物」の結晶形Dに関する。上記粉末X線回折ダイアグラムは、態様2)、3)、4)、5)又は6)に開示するピークをさらに有してもよいものとする。
【0052】
16) 本発明の別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.5°、16.5°及び18.2°におけるピークの存在を有する「化合物」のアセトニトリル溶媒和物の結晶形Eに関する。上記粉末X線回折ダイアグラムは、態様2)、3)、4)、5)又は6)に開示するピークをさらに有してもよいものとする。
【0053】
17) 本発明の別の態様は、アセトニトリルからのA形の結晶化により得ることができる、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:9.5°、16.5°及び18.2°におけるピークの存在を有する「化合物」のアセトニトリル溶媒和物の結晶形Eに関する。上記粉末X線回折ダイアグラムは、態様2)、3)、4)、5)又は6)に開示するピークをさらに有してもよいものとする。
【0054】
18) 本発明の別の態様は、「化合物」のジクロロメタン溶媒和物のB形のDMSO及び水からの結晶化により得ることができる、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:4.0°、16.1°及び21.9°におけるピークの存在を有する「化合物」の結晶形Jに関する。上記粉末X線回折ダイアグラムは、態様2)、3)、4)、5)又は6)に開示するピークをさらに有してもよいものとする。
【0055】
19) 本発明の別の態様は、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:16.9°、19.3°及び24.8°におけるピークの存在を有する「化合物」のジメチルスルホキシド溶媒和物の結晶形Kに関する。上記粉末X線回折ダイアグラムは、態様2)、3)、4)、5)又は6)に開示するピークをさらに有してもよいものとする。
【0056】
20) 本発明の別の態様は、水溶液中で結晶化することにより得ることができる、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:16.9°、19.3°及び24.8°におけるピークの存在を有する「化合物」のジメチルスルホキシド溶媒和物の結晶形Kに関する。上記粉末X線回折ダイアグラムは、態様2)、3)、4)、5)又は6)に開示するピークをさらに有してもよいものとする。
【0057】
21) 本発明の別の態様は、エタノールからのK形の結晶化により得ることができる、粉末X線回折ダイアグラムにおける以下の屈折角2θ:11.3°、16.4°及び20.3°におけるピークの存在を有する「化合物」のエタノール溶媒和物の結晶形Lに関
する。上記粉末X線回折ダイアグラムは、態様2)、3)、4)、5)又は6)に開示するピークをさらに有してもよいものとする。
【0058】
いかなる疑義をも避けるために、上記態様の1つが、「粉末X線回折ダイアグラムにおける、以下の屈折角2θにおけるピーク」に言及する場合は常に、当該粉末X線回折ダイアグラムは、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いて得られるものであり;そして本明細書で提供される2θ値の精度は+/-0.1~0.2°の範囲内であることが理解されるべきである。特に、本発明の態様及び請求項中でピークに対する屈折角2シータ(2θ)を特定する場合、記載された当該2θ値は、当該値-0.2°から当該値+0.2°(2θ+/-0.2°)の間;そして好ましくは当該値-0.1°から当該値+0.1°(2θ+/-0.1°)の間と理解されるべきである。
【0059】
例えば、粉末X線回折ダイアグラムにおけるピークの存在を定義する場合、通常の方法は、示されたダイアグラムについてこれを行うことである(S=シグナル、N=ノイズ)。この定義に従えば、粉末X線回折ダイアグラムにピークが存在しなければならないと述べる場合、粉末X線回折ダイアグラムのピークは、x(xは1より大きい数値である。)より大きい、通常は2より大きい、特に3より大きいS/N比(S=シグナル、N=ノイズ)を持つことにより定義されるものと理解される。
【0060】
温度に関して使用されていない場合には、数値「X」の前に置かれる「約」という用語は、本出願において、X-Xの10%からX+Xの10%の間、好ましくはX-Xの5%からX+Xの5%の間を表す。温度の特定の場合には、温度「Y」の前に置かれる「約」の用語は、本出願において、Y-10℃からY+10℃にわたる間、好ましくはY-5℃からY+5℃にわたる間、特にY-3℃からY+3℃にわたる間を表す。室温は、約25℃の温度を意味する。本出願において、n当量(nは数である。)の用語が使用される場合、本出願の範囲内において、nは約nを意味し、好ましくはnは正確にnを意味するものとする。
【0061】
数値範囲を記述するために「間」又は「から(~)」の語が使用される場合は常に、示された範囲の末端の点は明示的にその範囲に含まれると解される。これは、例えば、温度範囲が40℃から80℃の間(又は40℃から(~)80℃)であると記述される場合、末端の点である40℃と80℃はその範囲に含まれることを意味し、あるいは、可変数が1から4の間(又は1から(~)4)の整数であると定義される場合、可変数は整数の1、2、3又は4であることを意味する。
【0062】
22) 本発明の別の態様は、「化合物」、{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドの非晶質形に関する。従って、上記非晶質形は、A形を粉砕すること(milling)により得てもよい。例えば、非晶質形はボールミル(MM200 Retsch Ball Mill、2メノウビーズ)内で、周囲温度において30Hzで30min粉砕することにより得ることができる。
【0063】
23) 態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形、特に本質的に純粋な結晶形は、医薬として、例えば、経腸又は非経口投与のための医薬組成物の形態で使用することができる。
【0064】
「本質的に純粋な」という用語は、本発明の文脈において、特に、「化合物」の少なくとも90、好ましくは少なくとも95、そして最も好ましくは少なくとも99重量パーセントが、上記各結晶形で存在することを意味するものと理解される。
【0065】
24) 従って、別の態様は、医薬として使用するための、態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形に関する。
【0066】
態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶性固体、特に本質的に純粋な結晶性固体は、単独の成分として、又は、「化合物」の他の結晶形若しくは非晶質形との混合物として使用してよい。
【0067】
医薬組成物の製造は、いずれの当業者にもよく知られた方法で(例えば、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、21st Edition(2005)、Part 5、「Pharmaceutical Manufacturing」[published by Lippincott Williams & Wilkins]を参照されたい。)、本発明の結晶形を、任意にその他の治療的に有益な物質と組み合わせて、適切な無毒の不活性な薬学的に許容される固体又は液体の担体材料及び必要に応じて、通常の薬学的アジュバントと共に、製剤投与形態とすることにより遂行することができる。
【0068】
25) 本発明の別の態様は、医薬組成物の製造における使用のための、態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形又はその化合物の溶媒和物の結晶形に関し、当該医薬組成物は、有効成分としての化合物、{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドを有し、さらに少なくとも1種の治療上不活性な賦形剤を有する。
【0069】
態様25)に従うそのような医薬組成物は、高血圧、肺高血圧、冠動脈疾患、心不全、腎若しくは心筋虚血、腎不全、脳虚血、認知症、偏頭痛、くも膜下出血、レイノー症候群、指潰瘍又は門脈圧亢進症の治療、並びに、アテローム性動脈硬化、バルーン又はステント血管形成術後の再狭窄、炎症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、癌、黒色腫、前立腺癌、前立腺肥大、勃起不全、聴力損失、黒内障、慢性気管支炎、喘息、肺線維症、グラム陰性敗血症、ショック、鎌状赤血球貧血、糸球体腎炎、腎疝痛、緑内障、結合組織病、糖尿病合併症、血管若しくは心臓外科手術の、又は臓器移植後の合併症、シクロスポリン治療の合併症、疼痛又は高脂血症の治療又は予防のために特に有用である。態様25)に従う医薬組成物はまた、慢性腎臓疾患(CKD)、特に、Kidney Disease Improving Global Outcomes(KDIGO)Guidelinesに定義されるステージ1~4のCKD(特に、ステージ3のCKD)、とりわけ、本態性高血圧に起因する(特に、これらのステージの)CKDの治療にも有用である。
【0070】
好ましくは、これらは、高血圧、肺高血圧、糖尿病性動脈疾患、心不全、勃起不全、狭心症及びCKD(特に、Kidney Disease Improving Global Outcomes(KDIGO)Guidelinesに定義されるステージ1~4のCKD(特に、ステージ3のCKD)、とりわけ本態性高血圧に起因する(特に、これらのステージの)CKD)からなる群より選択される疾患の治療に有用である。
【0071】
さらに、これらは、本態性高血圧、抵抗性高血圧、肺高血圧及び肺動脈高血圧からなる群より選択される疾患の治療に(特に、抵抗性高血圧の治療に)有用である。
【0072】
(原発性高血圧又は突発性高血圧とも呼ばれる)本態性高血圧は、定義により、特定可能な原因を有さない高血圧の形態であり、血管系及び腎系病態並びに心血管死亡率に影響する世界的な公衆衛生上の大きな懸念である。2又はそれを超える連続的な通院における複数回の収縮期血圧測定の平均が一貫して特定のスレショルド値TSBPと同じであるか又はそれを上回る場合に、本態性高血圧と診断される。正常血圧が高い個体は、一般集団の平均を上回る血圧を維持する傾向があり、確定的な高血圧及び心血管イベントが進行す
るリスクが一般集団より高い。上回った場合に治療が推奨されるスレショルド値TSBPについては、臨床医の間で定期的に議論されている(例えば、Manciaら、J.Hypertens.(2013)、31、1281-1357を参照されたい。);従って、患者の全般的な状況及び年齢により、TSBPは140又は130mmHg、又は別の適正な値を取りえる。
【0073】
「抵抗性高血圧」という用語は、本発明において、異なるクラスの3種の降圧剤の同時使用にもかかわらず、目標よりも高く留まったままである血圧と定義される。上記3種の薬剤の1つは利尿剤であるべきであり、すべての薬剤は最適/最大用量で処方されるべきである。定義した通り、抵抗性高血圧の患者には、血圧が3種を超える医薬の使用により制御される患者が包含される。すなわち、血圧は制御されるが、そのためには4種以上の医薬を必要とする患者は、治療に抵抗性であると考えられるべきである(例えば、Manciaら、J.Hypertens.(2013)、31、1281-1357を参照されたい。)。
【0074】
「利尿剤」は、本出願において、特にクロルタリドン、ヒドロクロロチアジド、クロロチアジド、インダパミド又はメトラゾン等のサイアザイドクラスの利尿剤(サイアザイド様利尿剤)を特に意味する。好ましい利尿剤は、クロルタリドン又はヒドロクロロチアジドである。
【0075】
従って、本発明はさらに、「化合物」/当該結晶形が、医薬、特に抵抗性高血圧の治療のための医薬として使用される;「化合物」/当該結晶形が、単独で、又は、(好ましくは)(好ましくは、固定用量合剤を包含する同時投与のために)利尿剤、特にヒドロクロロチアジド(HCTZ又はHCT)と組み合わせて使用される、「化合物」、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形(特に結晶形A又はC)に関する。副態様において、抵抗性高血圧の治療のための、「化合物」/態様1)~21)のいずれか1つに従う当該結晶形(特に結晶形A又はC)の、利尿剤、特にヒドロクロロチアジド(HCTZ又はHCT)との当該組み合わせ(合剤)は;異なるクラスの降圧剤(特にCCB及び/又はARB)、特にバルサルタンである1又は2種以上のさらなる有効成分との(好ましくは、固定用量合剤を包含する同時投与のための)さらなる組み合わせを必要とするかもしれない。従って、本発明は特に、「化合物」/下記の態様26)~31)のいずれか1つに定義する「化合物」の前記各結晶形を有し;有効成分として、「化合物」/「化合物」の前記各結晶形に加えて、利尿剤、特にヒドロクロロチアジド(HCTZ又はHCT)を有し;かつ、任意で、異なるクラスの降圧剤(特にCCB及び/又はARB)である1又は2種の有効成分をさらに有し;特にバルサルタンをさらに有する、医薬組成物に関する。
【0076】
26) 本発明の別の態様は、態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形を有効成分として有し、さらに少なくとも1種の治療上不活性な賦形剤を有する、医薬組成物に関する。
【0077】
27) 従って、本発明はまた、「化合物」、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形(特に、態様1)~7)のいずれか1つに記載する「化合物」の固体形A)、微結晶セルロース、ラクトース、ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウムを有する(特に錠剤の形態の)固体医薬組成物に関し;特に、態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形(特に、態様1)~7)のいずれか1つに記載するその固体形A)、微結晶セルロース、ラクトース、ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム及びステアリン酸マグネシウムからなる(特に錠剤の形態の)固体医薬組成物に関する。
【0078】
28) 好ましくは、態様27)の固体医薬組成物は、「化合物」、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形(とりわけ、態様1)~7)のいずれか1つに記載する「化合物」の固体形A)を、医薬組成物の全重量に対して、重量にして全量で1~25%(特に5~25%)、微結晶セルロースを、医薬組成物の全重量に対して、重量にして全量で20~35%(特に20~30%)、ラクトースを、医薬組成物の全重量に対して、重量にして全量で40~65%、ヒドロキシプロピルセルロースを、医薬組成物の全重量に対して、重量にして全量で1~3%、クロスカルメロースナトリウムを、医薬組成物の全重量に対して、重量にして全量で2~8%及びステアリン酸マグネシウムを、医薬組成物の全重量に対して、重量にして全量で0.2~2%有し、固体医薬組成物の全重量パーセントは常に100であり;上記固体医薬組成物は特に錠剤の形態である。
【0079】
態様26)~28)のいずれかに従うそのような医薬組成物は、エンドセリン関連疾患及び障害、特に態様25)の疾患及び障害の治療のために特に有用である。
【0080】
29) 本発明のさらなる態様は、当該医薬組成物が錠剤の形態である、態様26)~28)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0081】
30) 特に、態様29)の医薬組成物は、医薬組成物の全重量に対して、重量にして全量で1~25%(特に5~25%)の(態様1)~7)のいずれか1つに記載する)「化合物」の固体形A、医薬組成物の全重量に対して、重量にして全量で20~35%(特に20~30%)の微結晶セルロース、医薬組成物の全重量に対して、重量にして全量で40~65%のラクトース、医薬組成物の全重量に対して、重量にして全量で1~3%のヒドロキシプロピルセルロース、医薬組成物の全重量に対して、重量にして全量で2~8%のクロスカルメロースナトリウム及び医薬組成物の全重量に対して、重量にして全量で0.2~2%のステアリン酸マグネシウムからなる錠剤の形態であり、上記固体医薬組成物の全重量パーセントは常に100である。
【0082】
態様29)又は30)に従う錠剤は、任意で、適切な保護薄膜(protective
pellicle)により被覆されてもよい。当該保護薄膜は、特に、医薬組成物が湿気と直接的に接触するのを防止し;また、上記医薬組成物を他と区別するために好ましく使用されるインプリントを容易にする。
【0083】
そのような保護薄膜を形成する被覆材は、(ポリビニルアルコール(例えば、製造元BiogrundのAquapolish(登録商標)白色PVA)又はジメチルアミノエチル メタクリレート(例えば、EUDRAGIT(登録商標)E PO)等の)低水蒸気透過性ポリマーを含んでもよい。上記被覆材はさらに、可塑剤(例えば、プロピレングリコール、トリアセチン(triacetyne)、フタル酸ジブチル又はセバチン酸ジブチル)、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム又はTween(登録商標)等のポリソルベート)及び/又は潤滑剤/滑剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム若しくはカルシウム又はタルク)を含んでもよい。さらに、被覆材は、錠剤を着色するために、色素(例えば、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)又は酸化チタン)を含んでもよい。
【0084】
31) 本発明のさらなる態様は、カプセル剤の形態である、態様26)~28)のいずれか1つに従う医薬組成物に関する。
【0085】
いかなる疑義をも避けるために、態様25)、26)、27)、28)、29)、30)又は31)は特に、態様1)~21)のいずれか1つに従う結晶形に関し、そのような結晶形は、(例えば、医薬製造の純度要件に適合させるために)「化合物」の最終単離工程として適し/使用されるが、(例えば、「化合物」の上記元の結晶形は、製造過程の間
にさらに変換され、及び/又は、医薬的に許容される担体材料中に溶解されるため;すなわち、最終医薬組成物中において、「化合物」は、非結晶形、別の結晶形又は溶解形態等で存在し得るため)態様25)、26)、27)、28)、29)、30)又は31)に従う最終医薬組成物は、当該結晶形を含んでもよく、含まなくてもよい。
【0086】
32) 本発明のさらなる態様は、高血圧、肺高血圧、冠動脈疾患、心不全、腎若しくは心筋虚血、腎不全、脳虚血、認知症、偏頭痛、くも膜下出血、レイノー症候群、指潰瘍又は門脈圧亢進症の治療において使用するための、並びに、アテローム性動脈硬化、バルーン又はステント血管形成術後の再狭窄、炎症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、癌、黒色腫、前立腺癌、前立腺肥大、勃起不全、聴力損失、黒内障、慢性気管支炎、喘息、肺線維症、グラム陰性敗血症、ショック、鎌状赤血球貧血、糸球体腎炎、腎疝痛、緑内障、結合組織病、糖尿病合併症、血管若しくは心臓外科手術の、又は臓器移植後の合併症、シクロスポリン治療の合併症、疼痛、高脂血症又はCKD(特に、Kidney Disease Improving Global Outcomes(KDIGO)Guidelinesに定義されるステージ1~4のCKD(特に、ステージ3のCKD)、とりわけ、本態性高血圧に起因する(特に、これらのステージの)CKD)の治療又は予防のための、「化合物」又はその薬学的に許容される塩、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形に関する。
【0087】
33) 本発明のさらなる態様は、高血圧、肺高血圧、糖尿病性動脈疾患、心不全、勃起不全、狭心症及びCKD(特に、Kidney Disease Improving
Global Outcomes(KDIGO)Guidelinesに定義されるステージ1~4のCKD(特に、ステージ3のCKD)、とりわけ本態性高血圧に起因する(特に、これらのステージの)CKD)からなる群より選択される疾患の治療において使用するための、「化合物」又はその薬学的に許容される塩、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形に関する。
【0088】
34) 本発明のさらなる態様は、本態性高血圧、抵抗性高血圧、肺高血圧及び肺動脈高血圧からなる群より選択される疾患の治療において使用するための(特に、抵抗性高血圧の治療において使用するための)、「化合物」又はその薬学的に許容される塩、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形に関する。
【0089】
いかなる疑義をも避けるために、「化合物」の特定の結晶形がある疾患の予防(prevention/prophylaxis)又は治療について有用であると記載されている場合には、そのような化合物は、同様に当該疾患の予防又は治療のための医薬の製造における使用にも適している。同様に、そのような化合物はまた、効果的な量のそのような化合物をそれを必要とする対象(哺乳動物、特にヒト)に投与することを有する、そのような疾患の予防又は治療方法に適切である。
【0090】
35) 本発明のさらなる態様は、態様32)に記載の疾患又は障害のいずれか1つの治療を意図する医薬の製造のための、「化合物」又はその薬学的に許容される塩、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形の使用に関する。
【0091】
36) 本発明のさらなる態様は、態様33)に記載の疾患又は障害のいずれか1つの治療を意図する医薬の製造のための、「化合物」又はその薬学的に許容される塩、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形の使用に関する。
【0092】
37) 本発明のさらなる態様は、態様34)に記載の疾患又は障害のいずれか1つの治療を意図する医薬の製造のための、「化合物」又はその薬学的に許容される塩、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形の使用に関する。
【0093】
38) 本発明のさらなる態様は、効果的な量の「化合物」又はその薬学的に許容される塩、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形又は態様26)~31)のいずれか1つに従う医薬組成物を患者に投与する工程を有する、態様32)に記載の疾患又は障害のいずれか1つの治療のための方法に関する。
【0094】
39) 本発明のさらなる態様は、効果的な量の「化合物」又はその薬学的に許容される塩、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形又は態様26)~31)のいずれか1つに従う医薬組成物を患者に投与する工程を有する、態様33)に記載の疾患又は障害のいずれか1つの治療のための方法に関する。
【0095】
40) 本発明のさらなる態様は、効果的な量の「化合物」又はその薬学的に許容される塩、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形又は態様26)~31)のいずれか1つに従う医薬組成物を患者に投与する工程を有する、態様34)に記載の疾患又は障害のいずれか1つの治療のための方法に関する。
【0096】
41) 本発明のなお別の態様は、慢性腎臓疾患(CKD)、糖尿病、糖尿病性ネフローゼ、糖尿病網膜症、糖尿病性脈管障害、慢性心不全及び拡張機能障害からなる群より選択される障害の治療において使用するための、「化合物」又はその薬学的に許容される塩、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形に関する。
【0097】
42) 態様41)の副態様の1つは、CKD、特に、Kidney Disease
Improving Global Outcomes(KDIGO)Guidelinesに定義されるステージ1~4のCKD(特に、ステージ3のCKD)、とりわけ本態性高血圧に起因する(特に、これらのステージの)CKDの治療において使用するための、「化合物」又はその薬学的に許容される塩、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形に関する。
【0098】
43) 態様41)の別の副態様は、糖尿病(すなわち、1型又は2型糖尿病)の治療において使用するための、「化合物」又はその薬学的に許容される塩、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形に関する。
【0099】
44) 態様41)の別の副態様は、糖尿病性ネフローゼの治療において使用するための、「化合物」又はその薬学的に許容される塩、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形に関する。
【0100】
45) 態様41)の別の副態様は、糖尿病網膜症の治療において使用するための、「化合物」又はその薬学的に許容される塩、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形に関する。
【0101】
46) 態様41)の別の副態様は、糖尿病性脈管障害の治療において使用するための、「化合物」又はその薬学的に許容される塩、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形に関する。
【0102】
47) 態様41)の別の副態様は、慢性心不全の治療において使用するための、「化合物」又はその薬学的に許容される塩、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形に関する。
【0103】
48) 副態様47)の変形の1つに従えば、副態様47)の慢性心不全は、駆出率が保たれた心不全(heart failiur with preserved eje
ction fraction)である。
【0104】
49) 副態様47)の別の変形に従えば、副態様47)の慢性心不全は、拡張期心不全(diastolic heart failure)である。
【0105】
50) 態様41)の別の副態様は、拡張機能障害の治療において使用するための、「化合物」又はその薬学的に許容される塩、特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形に関する。
【0106】
51) 好ましくは、態様41)~50)のいずれか1つに従う「化合物」又はその薬学的に許容される塩[特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形]は、1日当たり2.5~100mg(特に、5又は10~50mg、とりわけ25又は50mg)の「化合物」、{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミド又はその薬学的に許容される塩の経口投与に適切な医薬単位投薬量剤型中に含有される。
【0107】
52) 好ましくは、態様41)~50)のいずれか1つに従う「化合物」又はその薬学的に許容される塩[特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形]は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシン受容体ブロッカー(ARB)若しくはカルシウムチャンネルブロッカー(CCB)又はこれらの1つの薬学的に許容される塩と組み合わせて使用するためのものである。
【0108】
「アンジオテンシン変換酵素阻害剤」又は「ACE阻害剤」は、本出願において、カプトプリル(captopril)、エナラプリル、ラミプリル(ramipril)、キナプリル(quinapril)、ペリンドプリル(perindopril)、リシノプリル(lisinopril)、イミダプリル(imidapril)若しくはシラザプリル(cilazapril)又はこれらの1つの薬学的に許容される塩を特に意味する。好ましいACE阻害剤は、エナラプリル又はその薬学的に許容される塩である。
【0109】
「アンジオテンシン受容体ブロッカー」又は「ARB」は、本出願において、バルサルタン、ロサルタン(losartan)、テルミサルタン(telmisartan)、イルベサルタン(irbesartan)、カンデサルタン(candesartan)、オルメサルタン(olmesartan)、アジルサルタン(azilsartan)又はこれらの1つの薬学的に許容される塩を特に意味する。好ましいARBは、バルサルタン又はその薬学的に許容される塩である。
【0110】
「カルシウムチャンネルブロッカー」又は「CCB」は、本出願において、アムロジピン、アラニジピン(aranidipine)、アゼルニジピン(azelnidipine)、バルニジピン(barnidipine)、ベニジピン(benidipine)、シルニジピン(cilnidipine)、クレビジピン(clevidipine)、イスラジピン(isradipine)、エフォニジピン(efonidipine)、フェロジピン(felodipine)、ラシジピン(lacidipine)、レルカニジピン(lercanidipine)、マニジピン(manidipine)、ニカルジピン(nicardipine)、ニフェジピン(nifedipine)、ニルバジピン(nilvadipine)、ニモジピン(nimodipine)、ニソルジピン(nisoldipine)、ニトレンジピン(nitrendipine)、プラニジピン(pranidipine)、ベラパミル(verapamil)若しくはジルチアゼム(diltiazem)又はこれらの1つの薬学的に許容される塩を特に意味する。好ましいCCBは、アムロジピン又はその薬学的に許容される塩である。
【0111】
従って、態様41)~51)のいずれか1つに従う「化合物」又はその薬学的に許容される塩[特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形]は、ACE阻害剤、ARB及び/又はCCBと組み合わせて使用するためのものであってもよい。対応する併用療法は、同時に、別々に又はある期間に渡って(特に、同時に)行われてよい。
【0112】
投与形態に関連する場合の、「同時に」という用語は、本出願において、該当する投与形態が、2種又はより多くの有効成分及び/又は治療のほぼ同時投与であることを意味し;同時投与により、対象は2種又はより多くの有効成分及び/又は治療に同時に暴露されることになるものと理解される。同時に投与される場合、当該2種又はより多くの有効成分は、固定用量合剤(a fixed dose combination)として、又は、(例えば、同じ投与経路によりほぼ同時に投与されるべき2種又はより多くの異なる薬学的組成物を使用することにより)同等の非固定用量合剤(a non-fixed dose combination)として、又は、2種又はより多くの異なる投与経路を用いる非固定用量合剤により投与されてもよく、当該投与により、対象は2種又はより多くの有効成分及び/又は治療に本質的に同時に暴露されることになる。例えば、ACE阻害剤、ARB及び/又はCCBと組み合わせて使用する場合、「化合物」は場合によっては「同時に」使用されるであろう。同様に、利尿剤と組み合わせて使用する場合、「化合物」は場合によっては「同時に」使用されるであろう。
【0113】
「固定用量合剤」は、投与形態に関連する場合、本出願においては、該当する投与形態が、2種又はより多くの有効成分を有する1種の薬学的組成物の投与であることを意味する。
【0114】
投与形態に関連する場合の、「別々に」という用語は、本出願において、該当する投与形態が、2種又はより多くの有効成分及び/又は治療の異なる時点における投与であることを意味し;別々の投与は、対象が2種又はより多くの有効成分及び/又は治療に同時に暴露される治療相(例えば、少なくとも1時間、特に少なくとも6時間、とりわけ少なくとも12時間)に導くが、別々の投与は、対象が一定の時間の間(例えば、少なくとも12時間、特に少なくとも1日)、2種又はより多くの活性成分及び/又は治療の1つにのみ暴露される治療相に導いてもよいものと理解される。別々の投与は、特に、少なくとも1種の有効成分及び/又は治療を、(1日に1回又は2回等の)連日投与とは実質的に異なる周期で与える状況(例えば、1種の有効成分及び/又は治療を1日に1回又は2回与え、別のものを、例えば、隔日、又は1週間に1回、又はより長い間隔で与える。)を意味する。
【0115】
「ある期間に渡る」投与は、本出願において、2種又はそれ以上の有効成分及び/又は治療を異なる時に続けて投与することを意味する。この用語は、特に、一の活性成分及び/又は治療の全投与が完結した後に、1又は2種以上の他方の投与を開始する投与法を意味する。この場合、有効成分及び/又は治療の1種を数カ月間投与した後に、他の活性成分及び/又は治療を投与することが可能である。
【0116】
53) また、好ましくは、態様41)~51)のいずれか1つに従う「化合物」又はその薬学的に許容される塩[特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形]は、利尿剤と組み合わせて使用するためのものである(特に、ヒドロクロロチアジド(HCT)と組み合わせて使用するためのものである)。
【0117】
従って、態様41)~51)のいずれか1つに従う「化合物」又はその薬学的に許容される塩[特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形]は、利尿剤と組み合わせて使用するためのものであってよい(特に、HCTと組み合わせて使用するためのものであってよい)。対応する併用療法は、前記部分に定義した通り、同時に、別々
に又はある期間に渡って(特に、同時に)行われてよい。
【0118】
54) 本発明のなお別の態様は、慢性腎臓疾患(CKD)、糖尿病、糖尿病性ネフローゼ、糖尿病網膜症、糖尿病性脈管障害、慢性心不全及び拡張機能障害からなる群より選択される障害の治療において使用するための医薬の製造のための、「化合物」又はその薬学的に許容される塩[特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形]の使用に関する。
【0119】
55) 態様54)の副態様の1つは、CKD、特に、Kidney Disease
Improving Global Outcomes(KDIGO)Guidelinesに定義されるステージ1~4のCKD(特に、ステージ3のCKD)、とりわけ本態性高血圧に起因する(特に、これらのステージの)CKDの治療において使用するための医薬の製造のための、態様54)に従う使用に関する。
【0120】
56) 態様54)の別の副態様は、糖尿病(すなわち、1型又は2型糖尿病)の治療において使用するための医薬の製造のための、態様54)に従う使用に関する。
【0121】
57) 態様54)の別の副態様は、糖尿病性ネフローゼの治療において使用するための医薬の製造のための、態様54)に従う使用に関する。
【0122】
58) 態様54)の別の副態様は、糖尿病網膜症の治療において使用するための医薬の製造のための、態様54)に従う使用に関する。
【0123】
59) 態様54)の別の副態様は、糖尿病性脈管障害の治療において使用するための医薬の製造のための、態様54)に従う使用に関する。
【0124】
60) 態様54)の別の副態様は、慢性心不全の治療において使用するための医薬の製造のための、態様54)に従う使用に関する。
【0125】
61) 副態様60)の変形の1つに従えば、副態様60)の慢性心不全は、駆出率が保たれた心不全である。
【0126】
62) 副態様60)の別の変形に従えば、副態様60)の慢性心不全は、拡張期心不全である。
【0127】
63) 態様54)の別の副態様は、拡張機能障害の治療において使用するための医薬の製造のための、態様54)に従う使用に関する。
【0128】
64) 好ましくは、態様54)~63)のいずれか1つに従う使用は、1日当たり2.5~100mg(特に5又は10~50mg、とりわけ25mg又は50mg)の「化合物」又はその薬学的に許容される塩[特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形]の経口投与に適切な医薬単位投薬量剤型の製造のためのものである、使用である。
【0129】
65) 好ましくは、態様54)~64)のいずれか1つに従う使用は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシン受容体ブロッカー(ARB)若しくはカルシウムチャンネルブロッカー(CCB)又はこれらの1つの薬学的に許容される塩と組み合わせて使用するための医薬の製造のためのものである。
【0130】
従って、態様54)~64)のいずれか1つに従う使用は、ACE阻害剤、ARB若し
くはCCB又はこれらの1つの薬学的に許容される塩と組み合わせて使用するための医薬の製造のためのものであってよい。対応する併用療法は、同時に、別々に又はある期間に渡って(特に、同時に)行われてよい。
【0131】
66) また好ましくは、態様54)~64)のいずれか1つに従う使用は、利尿剤と組み合わせて使用するための医薬の製造のためのものである(特に、ヒドロクロロチアジド(HCT)と組み合わせて使用するための医薬の製造のためのものである)。
【0132】
従って、態様54)~64)のいずれか1つに従う使用は、利尿剤と組み合わせて使用するための医薬の製造のためのものであってよい(特に、HCTと組み合わせて使用するための医薬の製造のためのものであってよい)。対応する併用療法は、前記部分に定義した通り、同時に、別々に又はある期間に渡って(特に、同時に)行われてよい。
【0133】
67) 本発明のなお別の態様は、治療上効果的な量の「化合物」又はその薬学的に許容される塩[特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形]をそれを必要とする患者に投与する工程を有する、患者における慢性腎臓疾患(CKD)、糖尿病、糖尿病性ネフローゼ、糖尿病網膜症、糖尿病性脈管障害、慢性心不全及び拡張機能障害からなる群より選択される障害の治療のための方法に関する。
【0134】
68) 態様67)の副態様の1つは、患者におけるCKD、特に、Kidney Disease Improving Global Outcomes(KDIGO)Guidelinesに定義されるステージ1~4のCKD(特に、ステージ3のCKD)、とりわけ本態性高血圧に起因する(特に、これらのステージの)CKDを治療するための、態様67)に従う方法に関する。
【0135】
69) 態様67)の別の副態様は、糖尿病(すなわち、1型又は2型糖尿病)を治療するための、態様67)に従う方法に関する。
【0136】
70) 態様67)の別の副態様は、糖尿病性ネフローゼを治療するための、態様67)に従う方法に関する。
【0137】
71) 態様67)の別の副態様は、糖尿病網膜症を治療するための、態様67)に従う方法に関する。
【0138】
72) 態様67)の別の副態様は、糖尿病性脈管障害を治療するための、態様67)に従う方法に関する。
【0139】
73) 態様67)の別の副態様は、慢性心不全を治療するための、態様67)に従う方法に関する。
【0140】
74) 副態様73)の変形の1つに従えば、副態様73)の慢性心不全は、駆出率が保たれた心不全である。
【0141】
75) 副態様73)の別の変形に従えば、副態様73)の慢性心不全は、拡張期心不全である。
【0142】
76) 態様67)の別の副態様は、拡張機能障害を治療するための、態様67)に従う方法に関する。
【0143】
77) 好ましくは、態様67)~76)のいずれか1つに従う方法は、1日当たり2
.5~100mg(特に5又は10~50mg、とりわけ25mg又は50mg)の「化合物」又はその薬学的に許容される塩[特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形]をそれを必要とする患者に経口投与する、方法である。
【0144】
78) 好ましくは、態様67)~77)のいずれか1つに従う方法は、治療上効果的な量の「化合物」又はその薬学的に許容される塩[特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形]を、治療上効果的な量のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシン受容体ブロッカー(ARB)若しくはカルシウムチャンネルブロッカー(CCB)又はこれらの1つの薬学的に許容される塩と組み合わせて投与する、方法である。
【0145】
従って、態様67)~77)のいずれか1つに従う方法は、治療上効果的な量の「化合物」又はその薬学的に許容される塩[特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形]を、治療上効果的な量のACE阻害剤、ARB若しくはCCB又はこれらの1つの薬学的に許容される塩と組み合わせて投与する、方法であってもよい。対応する併用療法は、同時に、別々に又はある期間に渡って(特に、同時に)行われてよい。
【0146】
79) また好ましくは、態様67)~77)のいずれか1つに従う方法は、治療上効果的な量の「化合物」又はその薬学的に許容される塩[特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形]を、治療上効果的な量の利尿剤と組み合わせて(特に、治療上効果的な量のヒドロクロロチアジド(HCT)と組み合わせて)投与する、方法である。
【0147】
従って、態様67)~77)のいずれか1つに従う方法は、治療上効果的な量の「化合物」又はその薬学的に許容される塩[特に態様1)~21)のいずれか1つに従う「化合物」の結晶形]を、治療上効果的な量の利尿剤と組み合わせて(特に、治療上効果的な量のHCTと組み合わせて)投与する、方法であってよい。対応する併用療法は、同時に、別々に又はある期間に渡って(特に、同時に)行われてよい。
【0148】
本発明の特定の態様を以下の実施例に記載するが、それは、本発明をより詳細に説明するために供されるものであり、その範囲をいかなる意味においても限定するものではない。
【0149】
実験手順
略語:
明細書及び実施例を通して以下の略語が使われる:
Ac アセチル
AcOH 酢酸
aq. 水溶液
DCM ジクロロメタン
DMSO ジメチルスルホキシド
EtOAc 酢酸エチル
eq. 当量
FTIR フーリエ変換赤外分光法又はスペクトル
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
iPrOAc 酢酸イソプロピル
MeOH メタノール
MIBK メチルイソブチルケトン
org. 有機
rt 室温
THF テトラヒドロフラン
vol. 体積
w/w 重量/重量比
wt. 重量単位
XRPD 粉末X線回折
【0150】
実施例
XRPDパターンの取得方法
本明細書に記載の固体形のすべてのXRPDパターンは、以下に記載の通りに取得した。粉末X線回折パターンは、反射モード(結合2シータ/シータ)においてCuKα-照射で作動するLynxeye検出器を備えたBruker D8 AdvanceX線回折計上で収集した。典型的には、X-線チューブを40kV/40mAで走査させた。3~50°の2θの走査範囲にわたって、0.02°(2θ)のステップサイズ及び76.8秒のステップタイムを適用した。発散スリットは固定的に0.3に設定した。粉末を、0.5mmの深さのシリコン単結晶サンプルホルダー内にわずかにプレスし、測定の間、サンプルをそれ自体のプレイン中で回転させた。回折データは、Kα2を除去することなく、結合Cu Kα1及びKα2照射を用いてレポートされる。これまでに記録された粉末X線回折パターンが一般的にそうであるように、本明細書で提供される2θ値の精度は、+/-0.1~0.2°の範囲内である。
【0151】
重量測定蒸気吸着(GVS)
測定は、25℃においてステッピングモードで作動するマルチサンプル装置SPS-100n(Projekt Messtechnik、ウルム、ドイツ)上で行う。予め規定された湿度プログラム(40-0-95-0-95-40%RH、5%のΔRHステップを適用し、各ステップ毎に最大24時間の平衡化時間を設ける。)を開始する前に、試料を40%RHで平衡化する。各試料を約20~30mg使用する。
【0152】
吸湿性の分類は、the European Pharmacopea Technical Guide(1999、86頁)(例えば、わずかに吸湿性:質量増加が2%未満で0.2%mass/mass以上;吸湿性:質量増加が15%未満で2%mass/mass以上)に従って行う。最初の吸着スキャンにおける40%相対湿度と80%相対湿度との間の質量変化を考慮する。
【0153】
示差走査熱量測定(DSC)
DSCデータは、34ポジションのオートサンプラーを備えたMettler Toledo STARe System(DSC822eモジュール、セラミックセンサー付きの測定用セル及びSTAR ソフトウェア version 9.20)上で収集する。装置は、インジウム標品を用いてエネルギー及び温度について平衡化する。典型的には、1.5mgの各サンプルを、自動的に削孔されるアルミニウムパン内で、特に断らない限り、-20℃から280℃に、10℃ min-1で加熱する。サンプル上で窒素パージを20ml min-1で維持する。融点についてピーク温度をレポートする。
【0154】
熱重量分析(TGA)
TGAデータは、34ポジションのオートサンプラーを備えたMettler Toledo STARe System(TGA851eモジュール及びSTARソフトウェア
version 9.20)上で収集する。典型的には、約5mgのサンプルを、自動的に削孔されるアルミニウムパン内で、特に断らない限り、30℃から250℃に、10℃ min-1で加熱する。サンプル上で窒素パージを10ml min-1で維持する。
【0155】
実施例1:A形:
1.1. 3L二重ジャケットリアクター(double jacketed reactor)に、5-(4-ブロモフェニル)-4-(2-((5-ブロモピリミジン-2-イル)オキシ)エトキシ)-6-フルオロピリミジン(100g、0.213mol、1eq.(WO2015/121397))、スルファミド(40.9g、0.425mol、2.0eq.)、KCO(147g、1.06mol、5eq.)及び水(2mL、0.111mol、0.5eq.)を混ぜたDMSO(500mL、5vol.)を仕込んだ。不均一な混合物を70℃に約3hの間加熱した後、完全な変換が観察された。20℃に冷却した後、無機塩の大部分をろ過により除いた。フィルターケークをEtOAc/iPrOAc 1:1(300mL、3vol.)で洗浄した。チャコール層(20g、0.2wt.)を載せたCelite(100g、1wt.)をEtOAc/iPrOAc 1:1(500mL、5vol.)で前処理した(ろ液は廃棄した)。反応混合物をこのケーク上でろ過し、EtOAc/iPrOAc 1:1(300mL、3vol.)でリンスした。次いで、温度を25~35℃に維持しながら、1M NaOAc水溶液(500mL、0.5mol、2.3eq、5vol.)を添加した。水相をEtOAc/iPrOAc 1:1(500mL、5vol.)で2回洗浄した。水相に、1M HSO(200mL、0.2mol、1eq.、2vol.)を、25-30℃にて1hの間添加した。pH8.5-8.0で結晶化が始まった。粗生成物を、XRPDパターンK形(DMSO溶媒和物)又はA形とK形の混合物としてろ過した。それを水で2回洗浄した(2x1000mL、2x10vol.)。固体を、rtにて3h、水(1000mL、10vol.)中でスラリー化した。固体をろ過し、rtにて3h、水(1000mL、10vol.)中で2回目のスラリー化を行った。水(1000mL、10vol.)で洗浄した後、純粋な生成物を40℃にて真空下で乾燥して、{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドを白色から灰白色の固体として得た(75g、収率65%、XRPDパターンA形)。
【0156】
1.2. リアクター(200L Hastelloy)に、5-(4-ブロモフェニル)-4-(2-((5-ブロモピリミジン-2-イル)オキシ)エトキシ)-6 フルオロピリミジン(24.2kg、51.5mol)、スルファミド(9.7kg、100.9mol、1.96eq.)、炭酸カリウム(35.5kg、256.9mol、5.0eq.)、DMSO(133kg、5vol.)及び水(490g、27.2mol、0.53eq.)を仕込んだ。リアクターの内容物を70-75℃に加熱した。HPLCによるモニターが4時間後に完全な変換を示した。内容物を20-25℃に冷却し、固体を遠心分離した。各ロードをEtOAc/iPrOAc 1:1(65kg、3vol.)で洗浄した。ろ液をリアクター内に再度仕込み、チャコール(2.4kg、10%w/w)とCelite(登録商標)(4.8kg、20%w/w)を添加した。内容物を15-20℃にて1h撹拌し、カートリッジフィルターを通してろ過し、リアクター内に戻した。フィルターをEtOAc/iPrOAc 1:1(43kg、2vol.)でリンスした。温度を25℃未満に維持しながら、NaOAc(8%水溶液)(124kg、5vol.)を2hにわたって添加した。相を分離した後、水層を、20-25℃にてEtOAc/iPrOAc 1:1(109kg、5vol.)で洗浄した。硫酸(5%水溶液;64L、32.6mol、0.63eq.)を、25-30℃にて2時間にわたって水層に添加して、pHを6.4にした。次いで、内容物を15-20℃に1h冷却した。固体をろ過し、水で2回洗浄した(2x24L、2x1vol.)。固体を、15-20℃にて、水中で、それぞれ3時間2回スラリー化し(2x242kg、2x10vol.)、ろ過し、乾燥して、5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドを白色の固体として得た(21.6kg、収率77%、XRPDパターンA形)。
【0157】
実施例2: B形(「化合物」のDCM溶媒和物):
5-(4-ブロモフェニル)-4-(2-((5-ブロモピリミジン-2-イル)オキシ)エトキシ)-6 フルオロピリミジン(10.0g、21.3mmol、1.00eq.)、スルファミド(4.1g、42.5mmol、2.0eq.)及びKCO(14.7g、106mmol、5.0eq.)をDMSO(50mL、5vol.)中に懸濁し、70℃に5h加熱した。混合物をrtに冷却し、EtOAc(40mL、4vol.)、次いで水(100mL、10vol.)を添加した。層を分離した後(有機相は廃棄した。)、水相をDCM(100mL、10vol.)で抽出した。DCM層をpH11.5からpH7.0に、濃AcOH(3mL、52mmol、2.5eq.)で酸性化して、生成物の結晶化を行った。懸濁液を、0℃に1h、次いで-5℃に15min冷却した。固体をろ過し、冷DCMで洗浄し(10mL、1vol.)、乾燥して、B形の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドのDCM溶媒和物を白色の固体として得た(9.8g、収率84%)。
【0158】
実施例3: C形:
{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドをTHF中に50mg/mLにて溶解した0.2mLの保存溶液を、3本のバイアルに分注した。溶媒を、35℃、200mbarで作動させたHettich AG(Baech、スイス)製のCombidancer装置内で、90min蒸発させた。その後速やかに、0.015mLのMeOHを第1のバイアルに、EtOHを第2のバイアルに、iPrOHを第3のバイアルに添加し、蓋をして3日間放置した。C形の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドの固体残差を、これらの溶媒のそれぞれについて得た。
【0159】
実施例4: D形:
4.1. リアクターに、スルファミド(2.00eq.)、KCO(5.00eq.)、5-(4-ブロモフェニル)-4-(2-((5-ブロモピリミジン-2-イル)オキシ)エトキシ)-6-フルオロピリミジン(1.00eq.)、DMSO(5.0vol.)及び水(0.02vol.)を仕込んだ。混合物を75℃に2h加熱した。23℃に冷却した後、懸濁液をろ過し、リアクター内をEtOAc/iPrOAc 1:1(5.5vol.)でリンスした。ろ液をインラインフィルターを通して再びろ過し、EtOAc/iPrOAc 1:1(1.5vol.)でリンスした。1M NaOAc水溶液(5.0vol.)を27℃にて添加し、層を分離した。水相をEtOAc/iPrOAc 1:1(5.0vol.)で洗浄した。水相を、0.5M HSO水溶液(2.35vol.)を用いて2.5hにわたってpH5.8に酸性化し、結晶化させた。20℃にて1h撹拌した後、懸濁液をろ過し、水(2x10vol.)で洗浄した。固体を、20℃にて、水中で、それぞれ3時間2回スラリー化し(2x10vol.)、ろ過し、水(10vol.)で洗浄し、乾燥して、D形の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドを得た。
【0160】
4.2. A形の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミド、50mgを、新しい7mLガラスバイアル内で3mLのメチル-エチルケトン中に溶解した。超音波浴内で1min超音波処理した後、バイアルを開口したまま、rtにて3日間放置した。固体残差は、D形の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドであった。
【0161】
実施例5: E形(「化合物」のMeCN溶媒和物):
A形の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドを、10体積のMeCN中で加熱還流した。10min後、(加熱浴を除いて)それを1h以内に20℃に冷却した。ろ過し、減圧下、45℃で乾燥した。固体残差は、E形の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドのMeCN溶媒和物であった。
【0162】
実施例6: J形:
{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドのDCM溶媒和物、B形(9.4g、17.2mmol、1.00eq.)を、DMSO(19mL、2vol.)中に溶解した。溶液をHO(94mL、10vol.)中に添加し、rtにて5min撹拌した。得られた懸濁液をろ過し、HOで2回洗浄し(2x94mL、2x10vol.)、乾燥して、J形の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドを白色の固体として得た(6.8g、収率72%)。
【0163】
実施例7: K形(「化合物」のDMSO溶媒和物):
7.1. {5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミド、A形(1.00g、1.83mmol、1.00eq.)をDMSO(2mL、2vol.)中に溶解した。この溶液に、DMSO中の10%HO(10mL、10vol.)をゆっくりと添加し、次いで純粋なHO(2mL、2vol.)を添加した。K形でシードすることにより、化合物の結晶化が始まった。懸濁液をろ過し、HO(5x10mL、5x10vol.)で洗浄し、乾燥して、K形の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミド、DMSO溶媒和物を白色の固体として得た(0.95g、収率95%)。
【0164】
7.2. 5-(4-ブロモフェニル)-4-(2-((5-ブロモピリミジン-2-イル)オキシ)エトキシ)-6-フルオロピリミジン(10.0g、21.3mmol、1.00eq.)、スルファミド(4.1g、42.5mmol、2.0eq.)及びKCO(14.7g、106mmol、5.0eq.)を、DMSO(50mL、5vol.)中に懸濁し、50℃に20h加熱した。混合物をrtに冷却し、MIBK(100mL、10vol.)、次いで水(100mL、10vol.)を添加した。層を分離した後(有機相は廃棄した。)、水相を濃AcOH(4mL、70mmol、3.3eq.)でpH11.4からpH6.5に酸性化すると、生成物が結晶化した。固体をろ過し、水で洗浄し(4x50mL、4x5vol.)、乾燥して、K形の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドのDMSO溶媒和物をベージュ色の固体として得た(10.4g、収率90%)。
【0165】
実施例8: L形(「化合物」のEtOH溶媒和物):
K形の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドのDMSO溶媒和物(100mg、0.183mmol、1.00eq.)を、EtOH(0.5mL、5vol.)中で、rtにて4hスラリー化した。懸濁液をろ過し、HOで2回洗浄し(2x0.5mL、2x5vol.)、乾燥して、L形の{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-
イル}-スルファミドのEtOH溶媒和物を白色の固体として得た(40mg、収率40%)。
【0166】
実施例9: ACT-132577の錠剤:
それぞれが50mgの「化合物」を含有する錠剤は、湿式造粒法を用いて製造することができる。錠剤の組成は下記の通りである:
【0167】
【表1】
好ましくは、(本明細書に記載の)結晶形Aの「化合物」を錠剤の製造に使用する。
【0168】
実施例10: ACT-132577の錠剤:
実施例9の錠剤は、Aquapolish(登録商標)、白色MS又はAquapolish(登録商標)、白色PVA(被覆材製造元:Biogrund)の層で被覆することができる。
【0169】
実施例11: ACT-132577の錠剤:
それぞれが50mgの「化合物」を含有する錠剤は、湿式造粒法を用いて製造することができる。錠剤の組成は下記の通りである:
【0170】
【表2】
好ましくは、(本明細書に記載の)結晶形Aの「化合物」を錠剤の製造に使用する。
【0171】
実施例12
実施例11の錠剤は、Aquapolish(登録商標)、白色MS又はAquapolish(登録商標)、白色PVA(被覆材製造元:Biogrund)の層で被覆することができる。
【0172】
実施例13: ACT-132577の錠剤:
それぞれが12.5mgの「化合物」を含有する錠剤は、湿式造粒法を用いて製造することができる。錠剤の組成は下記の通りである:
【0173】
【表3】
好ましくは、(本明細書に記載の)結晶形Aの「化合物」を錠剤の製造に使用する。
【0174】
実施例14: ACT-132577の錠剤:
実施例13の錠剤は、Aquapolish(登録商標)、白色MS又はAquapolish(登録商標)、白色PVA(被覆材製造元:Biogrund)の層で被覆することができる。
【0175】
実施例15: ACT-132577の錠剤:
それぞれが12.5mgの「化合物」を含有する錠剤は、湿式造粒法を用いて製造することができる。錠剤の組成は下記の通りである:
【0176】
【表4】
好ましくは、(本明細書に記載の)結晶形Aの「化合物」を錠剤の製造に使用する。
【0177】
実施例16: ACT-132577の錠剤:
実施例15の錠剤は、Aquapolish(登録商標)、白色MS又はAquapolish(登録商標)、白色PVA(被覆材製造元:Biogrund)の層で被覆することができる。
【0178】
結晶形の特性
室温での貯蔵
(上記実施例1に従って得られた)「化合物」のA形結晶のサンプルを、20~25℃の温度、92%の相対湿度で2か月間貯蔵した。2か月の終了時にサンプルに対して行った粉末X線回折により、サンプルはなお「化合物」のA形結晶のみからなることがわかった。上記の条件下で8週間貯蔵した後においても同じ結果が得られた。8週間貯蔵した後のサンプルのHPLCコントロールにより、ピーク面積%の有意な変化は観られず、すなわち、そのような条件下において有意な劣化は観察されなかった。
【0179】
(上記実施例2に従って得られた)「化合物」のジクロロメタン溶媒和物のB形結晶のサンプルを、蓋をしたバイアル内に、20~25℃の温度で約3週間貯蔵した(20mgのB形結晶を蓋をした4mLバイアルに入れた)。3週間の終了時にサンプルに対して行った粉末X線回折により、B形結晶は「化合物」のA形結晶に変換したことが示された。
【0180】
(上記実施例7に従って得られた)「化合物」のジメチルスルホキシド溶媒和物のK形結晶のサンプルを、蓋をしたバイアル内に、20~25℃の温度で約3週間貯蔵した(20mgのK形結晶を蓋をした4mLバイアルに入れた)。3週間の終了時にサンプルに対して行った粉末X線回折により、K形結晶は「化合物」のA形結晶に変換したことが示された。
【0181】
DSC
(実施例1により得られる)「化合物」のA形は、同時に融解し分解する。DSCにより、約159℃にて観察される吸熱ピークを有する吸熱/発熱シグナルが観察される。
【0182】
(実施例3により得られる)「化合物」のC形は、同時に融解し分解する。DSCにより、約153℃にて観察される吸熱ピークを有する吸熱/発熱シグナルが観察される。
【0183】
吸湿性
例えば、実施例1から得られるA形は、重量測定蒸気吸着(GVS)により測定されるように、非吸湿性であると考えられる(図19を参照されたい。)。
【0184】
例えば、実施例3から得られるC形は、重量測定蒸気吸着(GVS)により測定されるように、わずかに吸湿性であると考えられる(図20を参照されたい。)。
【0185】
アプロシテンタンの治療における使用の実施例
実施例A: ダール食塩感受性ラットにおける「化合物」の急性効果
血圧、特に平均動脈圧(以下、「MAP」と記載する。)、及び心拍数(以下、「HR」と記載する。)に対する「化合物」の急性効果を、覚醒雄性高血圧ダール食塩感受性ラット(以下、「Dahl-Sラット」と記載する。このモデルの詳細については、Rapp、Hypertension(1982)、4、753-763を参照されたい。)内における遠隔測定(telemetry)により評価した。
【0186】
飲料水中に1%の塩化ナトリウムを供給することにより、Dahl-Sラットに血圧上昇を誘発する。ベヒクル(7.5%ゼラチン水溶液)及び「化合物」の試験用量(0.3、1、3、10、30、100及び300mg/kg)のそれぞれについて、6~7匹のDahl-Sラットの群を用いた。「化合物」のHR及びMAPに対する効果は、投与前の24hの間に対して、個々の動物について算出した。MAPに関して得られた結果(連続する6時間にわたって観察された最大MAP減少)を図9に要約する(データは平均±平均の標準誤差として示す。)。要約すると、10mg/kgの用量で、「化合物」は、Dahl-SラットにおいてMAPを19±4mmHg減少させた。MAPとは対照的に、HRは影響を受けなかった。
【0187】
実施例B: デオキシコルチコステロンアセタート食塩ラットにおける「化合物」の急性効果:
血圧、特に平均動脈圧(以下、「MAP」と記載する。)、及び心拍数(以下、「HR」と記載する。)に対する「化合物」の急性効果を、覚醒雄性高血圧デオキシコルチコステロンアセタート食塩ラット(以下、「DOCA塩ラット」と記載する。このモデルの詳細については、Gavrasら、Circ.Res.(1975)、36、300-309を参照されたい。)内における遠隔測定により評価した。
【0188】
片側腎摘出、鉱質コルチコイドアナログであるDOCAのペレットの移植及び飲料水中への1%の塩化ナトリウムの供給を併用することにより、DOCA塩ラットに高血圧を誘発する。ベヒクル(7.5%ゼラチン水溶液)及び「化合物」の試験用量(0.3、1、3、10、30、100及び300mg/kg)のそれぞれについて、6~11匹のDOCA塩ラットの群を用いた。「化合物」のHR及びMAPに対する効果は、投与前の24hの間に対して、個々の動物について算出した。MAPに関して得られた結果(連続する6時間にわたって観察された最大MAP減少)を図10に要約する(データは平均±平均の標準誤差として示す。)。要約すると、10mg/kgの用量で、「化合物」は、DOCA塩ラットにおいてMAPを29±6mmHg減少させた。MAPとは対照的に、HRは影響を受けなかった。
【0189】
実施例C: 高血圧自然発症ラットにおける「化合物」の急性効果:
血圧、特に平均動脈圧(以下、「MAP」と記載する。)、及び心拍数(以下、「HR」と記載する。)に対する「化合物」の急性効果を、覚醒雄性高血圧自然発症ラット(以下、「SHR」と記載する。このモデルの詳細については、Atanurら、Genome
Res.(2010)、20、791-803を参照されたい。)内における遠隔測定により評価した。
【0190】
ベヒクル(7.5%ゼラチン水溶液)及び「化合物」の試験用量(1、3、10、30、100及び300mg/kg)のそれぞれについて、4~6匹のSHRの群を用いた。「化合物」のHR及びMAPに対する効果は、投与前の24hの間に対して、個々の動物について算出した。MAPに関して得られた結果(連続する6時間にわたって観察された最大MAP減少)を図11に要約する(データは平均±平均の標準誤差として示す。)。要約すると、100mg/kgの用量で、「化合物」は、SHRにおいてMAPを18±4mmHg減少させた。MAPとは対照的に、HRは影響を受けなかった。
【0191】
実施例D: 高血圧自然発症ラットにおける「化合物」単独又はバルサルタンとの併用の急性効果
100mg/kgの用量で単回経口投与した場合の、血圧、特に平均動脈圧(以下、「MAP」と記載する。)、及び心拍数(以下、「HR」と記載する。)に対する「化合物」の急性効果を、「化合物」を単独で使用した場合、又は、10mg/kgの用量で単回経口投与したバルサルタンと組み合わせて使用した場合について、覚醒雄性高血圧自然発症ラット(以下、「SHR」と記載する。このモデルの詳細については、Atanurら、Genome Res.(2010)、20、791-803を参照されたい。)内における遠隔測定により評価した。
【0192】
各処置群当たり6匹のSHRをこの試験に使用した。MAPに関して得られた結果を図12に要約する。データの各点は6時間の平均である(注記:2種の薬剤の併用について期待される相加効果は、「予想相加効果」と記載し、各化合物を別々に投与した後に得られる血圧値の減少を加算することにより算出した);ベヒクル(7.5%ゼラチン水溶液)による処置は、MAP又はHRに対して効果を示さなかったため、得られた結果を図中に表示していない。簡単に述べると、「化合物」とバルサルタンの同時投与は、予想(算出)値を超えてMAPを減少させており、2種の分子間の相乗作用を示す。MAPとは対照的に、処置群のいずれにおいても、HRは影響を受けなかった。
【0193】
実施例E: デオキシコルチコステロンアセタート食塩ラットにおける「化合物」単独又はバルサルタンとの併用の急性効果
10mg/kgの用量で単回経口投与した場合の、血圧、特に平均動脈圧(以下、「MAP」と記載する。)、及び心拍数(以下、「HR」と記載する。)に対する「化合物」の急性効果を、「化合物」を単独で使用した場合、又は、30mg/kgの用量で単回経口投与したバルサルタンと組み合わせて使用した場合について、覚醒雄性高血圧デオキシコルチコステロンアセタート食塩ラット(以下、「DOCA塩ラット」と記載する。このモデルの詳細については、Gavrasら、Circ.Res.(1975)、36、300-309を参照されたい。)内における遠隔測定により評価した。
【0194】
片側腎摘出、鉱質コルチコイドアナログであるDOCAのペレットの移植及び飲料水中への1%の塩化ナトリウムの供給を併用することにより、DOCA塩ラットに高血圧を誘発する。各処置群当たり7~8匹のDOCA塩ラットをこの試験に使用した。MAPに関して得られた結果を図13に要約する。データの各点は6時間の平均である(注記:2種の薬剤の併用について期待される相加効果は、「予想相加効果」と記載し、各化合物を別
々に投与した後に得られる血圧値の減少を加算することにより算出した);ベヒクル(4%ゼラチン水溶液)による処置は、MAP又はHRに対して効果を示さなかったため、得られた結果を図中に表示していない。簡単に述べると、「化合物」とバルサルタンの同時投与は、予想(算出)値を超えてMAPを減少させており、2種の分子間の相乗作用を示す。MAPとは対照的に、処置群のいずれにおいても、HRは影響を受けなかった。
【0195】
実施例F:高血圧自然発症ラットにおける「化合物」単独又はエナラプリルとの併用の急性効果:
100mg/kgの用量で単回経口投与した場合の、血圧、特に平均動脈圧(以下、「MAP」と記載する。)、及び心拍数(以下、「HR」と記載する。)に対する「化合物」の急性効果を、「化合物」を単独で使用した場合、又は、3mg/kgの用量で単回経口投与したエナラプリルと組み合わせて使用した場合について、覚醒雄性高血圧自然発症ラット(以下、「SHR」と記載する。このモデルの詳細については、Atanurら、Genome Res.(2010)、20、791-803を参照されたい。)内における遠隔測定により評価した。
【0196】
各処置群当たり7匹のSHRをこの試験に使用した。MAPに関して得られた結果を図14に要約する。データの各点は6時間の平均である(注記:2種の薬剤の併用について期待される相加効果は、「予想相加効果」と記載し、各化合物を別々に投与した後に得られる血圧値の減少を加算することにより算出した);ベヒクル(4%ゼラチン水溶液)による処置は、MAP又はHRに対して効果を示さなかったため、得られた結果を図中に表示していない。簡単に述べると、「化合物」とエナラプリルの同時投与は、予想(算出)値を超えてMAPを減少させており、2種の分子間の相乗作用を示す。MAPとは対照的に、処置群のいずれにおいても、HRは影響を受けなかった。
【0197】
実施例G: デオキシコルチコステロンアセタート食塩ラットにおける「化合物」単独又はアムロジピンとの併用の急性効果:
10mg/kgの用量で単回経口投与した場合の、血圧、特に平均動脈圧(以下、「MAP」と記載する。)、及び心拍数(以下、「HR」と記載する。)に対する「化合物」の急性効果を、「化合物」を単独で使用した場合、又は、1mg/kgの用量で単回経口投与したアムロジピンと組み合わせて使用した場合について、覚醒雄性高血圧デオキシコルチコステロンアセタート食塩ラット(以下、「DOCA塩ラット」と記載する。このモデルの詳細については、Gavrasら、Circ.Res.(1975)、36、300-309を参照されたい。)内における遠隔測定により評価した。
【0198】
片側腎摘出、鉱質コルチコイドアナログであるDOCAのペレットの移植及び飲料水中への1%の塩化ナトリウムの供給を併用することにより、DOCA塩ラットに高血圧を誘発する。各処置群当たり6~8匹のDOCA塩ラットをこの試験に使用した。MAPに関して得られた結果を図15に要約する。データの各点は6時間の平均である(注記:2種の薬剤の併用について期待される相加効果は、「予想相加効果」と記載し、各化合物を別々に投与した後に得られる血圧値の減少を加算することにより算出した);ベヒクル(4%ゼラチン水溶液)による処置は、MAP又はHRに対して効果を示さなかったため、得られた結果を図中に表示していない。簡単に述べると、「化合物」とアムロジピンの同時投与は、予想(算出)値を超えてMAPを減少させており、2種の分子間の相乗作用を示す。MAPとは対照的に、処置群のいずれにおいても、HRは影響を受けなかった。
【0199】
実施例H: デオキシコルチコステロンアセタート食塩ラットにおける「化合物」の慢性効果:
「化合物」を1、10及び100mg/kg/日の用量で繰り返し投与した場合の慢性効果、特に平均動脈圧(以下、「MAP」と記載する。)及び心拍数(以下、「HR」と記
載する。)を、覚醒雄性高血圧デオキシコルチコステロンアセタート食塩ラット(以下、「DOCA塩ラット」と記載する。このモデルの詳細については、Gavrasら、Circ.Res.(1975)、36、300-309を参照されたい。)において評価した。片側腎摘出、鉱質コルチコイドアナログであるDOCAのペレットの移植及び飲料水中への1%の塩化ナトリウムの供給を併用することにより、DOCA塩ラットに高血圧を誘発する。「化合物」で処置したDOCA塩ラットの結果を、ベヒクル(4%ゼラチン水溶液)のみを与えられたWistar系ラット又はDOCA塩ラットについて得られた結果と比較した。
【0200】
a) MAPに関して得られた結果を図16に要約する。データの各点は24時間の平均である。5つの試験群のそれぞれに6匹のラットを使用した(Wistar系対照ラット[最下部のライン]、DOCA塩対照ラット[第28日における上から2番目のライン]並びに1mg/kg/日[第28日における1番上のライン]、10mg/kg/日[第28日における上から3番目のライン]及び100mg/kg/日[第28日における上から4番目のライン]の用量の「化合物」を繰り返し投与されたDOCA塩ラット)。簡単に述べると、「化合物」を4週間経口投与すると、HRを変えることなく、MAPのDOCA塩誘発上昇が用量依存的に緩和された。
【0201】
b) 腎血管抵抗について得られた結果を図17に要約する。
【0202】
- DOCA O 2wは、「化合物」による処置を開始する直前に犠牲に供されたDO
CA塩ラットを示し;
- 「」は、一元配置分散分析(one way ANOVA)、次いでNewmal-Keuls多重比較事後検定(Newmal-Keuls multiple comparisons post-hoc test)を用いた場合の、統計的有意性因子(statistical significance factor)、p<0.05を示す。
【0203】
要約すると、これらの試験に基づいて、DOCA塩ラットに「化合物」を慢性的に経口投与すると、用量依存的に、腎血流が増大し、腎血管抵抗が減少した。N末端プロ脳ナトリウム利尿ペプチド(NTproBNP)の血漿濃度の用量依存的減少から示唆されるように、「化合物」はまた、左室肥大を減少させる傾向もあった。
【0204】
実施例I: 「化合物」単独又はACE阻害剤若しくはARBとの併用の、糖尿病の動物モデルにおける効果:
「化合物」の効果は糖尿病のげっ歯類モデルで評価することができる(これに関しては、下記の参考文献に記載のモデルを参照されたい:Senら、Life Sci.(2012)、91(13-14)、658-668;Janiakら、Eur.J.Pharmacol.(2006)、534、271-279;及びIglarzら、J.Pharmacol.Exp.Ther.(2008)、327(3)、736-745)。特に、「化合物」を単独又は組み合わせて使用した場合の、耐糖能、インスリン血症及び終末器官損傷に対する効果を調べることができる。終末器官損傷は:血管機能、腎機能(例えば、タンパク尿)、心機能及びリモデリング並びに糖尿病により影響を受けるいかなる他の標的器官(例えば、眼)をも包含する。
【0205】
実施例J: 体液貯留に対する「化合物」の効果の評価
ヘマトクリット(Hct)又はヘモグロビンの減少が、血漿体積の増大に続いて2次的に起こり、体液貯留のマーカーとして使用することができる。アプロシテンタン(1-30mg/kg)又はベヒクル(ゼラチン)を、雄性Wistar系ラットに、胃管(gavage)により単回経口投与した。投与から24時間後に、イソフルラン誘発麻酔下で、
舌下血を採取した。ヘマトクリットを血液分析器を用いて測定した。「化合物」はヘマトクリット(Hct)に影響を与えなかったため、体液貯留を引き起こす傾向が低いことが示唆される(図18)。
【0206】
比較実施例1: バルサルタンと組み合わせて使用した場合の、高血圧自然発症ラットにおけるスピロノラクトンの急性効果:
血圧、特に平均動脈圧(以下、「MAP」と記載する。)、及び心拍数(以下、「HR」と記載する。)に対する、バルサルタンと組み合わせた場合のスピロノラクトンの急性効果も、それぞれを単回経口投与した場合について、覚醒雄性高血圧自然発症ラット(以下、「SHR」と記載する。このモデルの詳細については、Atanurら、Genome
Res.(2010)、20、791-803を参照されたい。)内における遠隔測定により、実施例Dに記載したものと同様のプロトコルを用いて評価した。
【0207】
「化合物」と異なり、スピロノラクトン処置のバルサルタン処置との併用については、MAP減少に関して相乗効果は見られなかった。
【0208】
比較実施例2: バルサルタンと組み合わせて使用した場合の、デオキシコルチコステロンアセタート食塩ラットにおけるスピロノラクトンの急性効果:
血圧、特に平均動脈圧(以下、「MAP」と記載する。)、及び心拍数(以下、「HR」と記載する。)に対する、バルサルタンと組み合わせた場合のスピロノラクトンの急性効果も、それぞれを単回経口投与した場合について、覚醒雄性高血圧デオキシコルチコステロンアセタート食塩ラット(以下、「DOCA塩ラット」と記載する。このモデルの詳細については、Gavrasら、Circ.Res.(1975)、36、300-309を参照されたい。)内における遠隔測定により、実施例Eに記載したものと同様のプロトコルを用いて評価した。
【0209】
「化合物」と異なり、スピロノラクトン処置のバルサルタン処置との併用については、MAP減少に関して相乗効果は見られなかった。
【0210】
比較実施例3: エナラプリルと組み合わせて使用した場合の、高血圧自然発症ラットにおけるスピロノラクトンの急性効果:
血圧、特に平均動脈圧(以下、「MAP」と記載する。)、及び心拍数(以下、「HR」と記載する。)に対する、バルサルタンと組み合わせた場合のスピロノラクトンの急性効果も、それぞれを単回経口投与した場合について、覚醒雄性高血圧自然発症ラット(以下、「SHR」と記載する。このモデルの詳細については、Atanurら、Genome
Res.(2010)、20、791-803を参照されたい。)内における遠隔測定により、実施例Fに記載したものと同様のプロトコルを用いて評価した。
【0211】
「化合物」と異なり、スピロノラクトン処置のエナラプリル処置との併用については、MAP減少に関して相乗効果は見られなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【手続補正書】
【提出日】2023-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性腎臓疾患(CKD)、糖尿病、糖尿病性ネフローゼ、糖尿病網膜症、糖尿病性脈管障害、慢性心不全又は拡張機能障害の治療において使用するための治療剤であって
前記治療剤は、有効成分として化合物{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミド
【化1】
又はその薬学的に許容される塩を含み、
前記治療剤は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤若しくはアンジオテンシン受容体ブロッカー(ARB)、又は、これらの1つの薬学的に許容される塩と組み合わせて投与される、
治療剤。
【請求項2】
前記使用が、慢性腎臓疾患(CKD)又は糖尿病性ネフローゼの治療における使用である、請求項1に記載の治療剤。
【請求項3】
前記使用が、慢性腎臓疾患(CKD)の治療における使用である、請求項1に記載の治療剤。
【請求項4】
前記使用が、本態性高血圧に起因するKidney Disease Improving Global Outcomes(KDIGO)Guidelinesに定義されるステージ1~4のCKDの治療における使用である、請求項1に記載の治療剤。
【請求項5】
前記使用が、糖尿病性ネフローゼの治療における使用である、請求項1に記載の治療剤。
【請求項6】
前記使用が、駆出率が保たれた慢性心不全の治療における使用である、請求項1に記載の治療剤。
【請求項7】
前記使用が、拡張期心不全である慢性心不全の治療における使用である、請求項1に記載の治療剤。
【請求項8】
前記使用が、拡張機能障害の治療における使用である、請求項1に記載の治療剤。
【請求項9】
前記治療剤は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤又はその1つの薬学的に許容される塩と組み合わせて使用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項10】
前記アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤又はその薬学的に許容される塩は、カプトプリル、エナラプリル、ラミプリル、キナプリル、ペリンドプリル、リシノプリル、イミダプリル若しくはシラザプリル又はこれらの1つの薬学的に許容される塩である、請求項9に記載の治療剤。
【請求項11】
前記アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤又はその薬学的に許容される塩は、エナラプリル又はその薬学的に許容される塩である、請求項9に記載の治療剤。
【請求項12】
前記治療剤は、アンジオテンシン受容体ブロッカー(ARB)又はその1つの薬学的に許容される塩と組み合わせて使用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項13】
前記アンジオテンシン受容体ブロッカー(ARB)又はその薬学的に許容される塩は、バルサルタン、ロサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン若しくはアジルサルタン又はこれらの1つの薬学的に許容される塩である、請求項12に記載の治療剤。
【請求項14】
前記アンジオテンシン受容体ブロッカー(ARB)又はその薬学的に許容される塩は、バルサルタン又はその薬学的に許容される塩である、請求項12に記載の治療剤。
【請求項15】
前記治療剤は、錠剤の形態で投与され、
前記錠剤は、医薬組成物からなり、
前記医薬組成物は、
前記医薬組成物の全重量に対して、重量にして全量で5~25%の、化合物{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミド、
前記医薬組成物の全重量に対して、重量にして全量で20~30%の、微結晶セルロース、
前記医薬組成物の全重量に対して、重量にして全量で40~65%の、ラクトース、
前記医薬組成物の全重量に対して、重量にして全量で1~3%の、ヒドロキシプロピルセルロース、
前記医薬組成物の全重量に対して、重量にして全量で2~8%の、クロスカルメロースナトリウム、及び、
前記医薬組成物の全重量に対して、重量にして全量で0.2~2%の、ステアリン酸マグネシウム、
を含み、
固体の前記医薬組成物の全重量パーセントは100である、
請求項9~11及び12~14のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項16】
前記治療剤は、1日当たり10~50mgの{5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル}-スルファミドの経口投与に適切な医薬単位投薬量剤型で投与できるように製剤される、請求項15に記載の治療剤。