(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027319
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】化合物の結晶形及び医学におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 7/64 20060101AFI20230221BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230221BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230221BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230221BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230221BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20230221BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/439 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/664 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/7056 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/4178 20060101ALI20230221BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C07K7/64
A61P43/00 121
A61P31/14
A61P31/12
A61P1/16
A61K38/12
A61K45/00
A61K31/439
A61K31/664
A61K31/7056
A61K31/4178
A61K38/21
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022202703
(22)【出願日】2022-12-20
(62)【分割の表示】P 2021509987の分割
【原出願日】2019-08-22
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/101674
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518339250
【氏名又は名称】中美華世通生物医薬科技(武漢)股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WATERSTONE PHARMACEUTICALS(WUHAN)CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】B3-4, Biolake, No.666 Gaoxin Road, Eastlake National High-Tech Development Zone, Wuhan, Hubei 430075, China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェン・ツゥイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ・ユー
(72)【発明者】
【氏名】ミンロン・フー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】C型肝炎ウイルス(HCV)感染症を予防、管理、治療、又は軽減するための化合物として、シクロスポリンAの経口で生物学的に利用可能な新規アナログである化合物SCY-635のより良好な溶解性、安定性、薬物動態特性などを有する結晶形を提供する。
【解決手段】2θ(°)で表される以下の特性粉末X線回折ピーク:8.66±0.2°、9.64±0.2°、10.36±0.2°、11.20±0.2°、及び18.39±0.2°を示し、143.8℃±3℃及び172.6℃±3℃に吸熱ピークを有する示差走査熱量測定サーモグラムを有することを特徴とする、SCY-635の結晶Aを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
を有する化合物の結晶Aであって、
前記結晶Aが、2θ(°)で表される以下の特性粉末X線回折ピーク:8.66±0.2°、9.64±0.2°、10.36±0.2°、11.20±0.2°、及び18.39±0.2°を示し、
前記結晶Aが、143.8℃±3℃及び172.6℃±3℃に吸熱ピークを有する示差走査熱量測定サーモグラムを有することを特徴とする結晶A。
【請求項2】
前記結晶Aが、2θ(°)で表される以下の特性粉末X線回折ピーク:6.08±0.2°、8.66±0.2°、9.64±0.2°、10.36±0.2°、11.20±0.2°、13.00±0.2°、14.14±0.2°、14.90±0.2°、18.39±0.2°、20.40±0.2°、及び22.04±0.2°を示す、請求項1に記載の結晶A。
【請求項3】
前記結晶Aが、2θ(°)で表される以下の特性粉末X線回折ピーク:6.08±0.2°、8.66±0.2°、9.64±0.2°、10.36±0.2°、11.20±0.2°、12.58±0.2°、13.00±0.2°、13.58±0.2°、14.14±0.2°、14.90±0.2°、15.36±0.2°、15.98±0.2°、16.71±0.2°、17.69±0.2°、18.39±0.2°、18.78±0.2°、19.38±0.2°、20.40±0.2°、21.71±0.2°、22.04±0.2°、22.49±0.2°、23.20±0.2°、23.88±0.2°、24.99±0.2°、25.82±0.2°、26.77±0.2°、27.61±0.2°、28.43±0.2°、29.62±0.2°、及び31.36±0.2°を示す、請求項1に記載の結晶A。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の結晶Aを含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が、更に、薬学的に許容される賦形剤又は賦形剤の組合せを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
更に、前記結晶A以外の抗HCV薬を含む、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記結晶A以外の抗HCV薬が、レジパスビル/ソホスブビル、ソホスブビル、リバビリン、ペグインターフェロンアルファ-2a、又はダクラタスビルである、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
患者におけるウイルス感染症によって引き起こされる障害又は疾患を予防、治療、又は軽減するための医薬の製造における、請求項1から3のいずれかに記載の結晶A又は請求項4から6のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項8】
前記ウイルス感染症が、C型肝炎感染症である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
患者におけるウイルス感染症によって引き起こされる障害又は疾患の予防、治療、又は軽減における使用のための、請求項1から3のいずれかに記載の結晶A又は請求項4から6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記ウイルス感染症が、C型肝炎感染症である、請求項9に記載の結晶A又は医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学分野に属する。詳細には、本発明は、(3S,6S,9S,12R,15S,18S,21S,24S,27R,30S,33S)-27-((2-(ジメチルアミノ)エチル)チオ)-30-エチル-33-((1R,2R,E)-1-ヒドロキシ-2-メチルヘキサン-4-エン-1-イル)-24-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-6,9,18-トリイソブチル-3,21-ジイソプロピル-1,4,7,10,12,15,19,25,28-ナノメチル-1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31-ウンデカアザシクロトリトリアコンタン-2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32-ウンデカオン(undecaone)の結晶形A、及びその医薬組成物に関する。更に、本発明は、医薬の製造、特に、C型肝炎ウイルス(HCV)感染症を予防、管理、治療、又は軽減するための医薬の製造における結晶形A及びその医薬組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルス(HCV)はフラビウイルス科のメンバであり、フラビウイルス科は、フラビウイルス(黄熱病ウイルス、デングウイルス、西ナイルウイルス、日本脳炎ウイルスなど)、ペスティウイルス(ウシウイルス性下痢ウイルス及び古典的なブタ熱ウイルス)、及びヘパシウイルス(そのHCVが唯一のメンバである)を含む3種の異なる属を含む。HCVの慢性感染症は、現在、世界の主要な健康問題であり、世界中で約1億7000万人が感染している。
【0003】
SCY-635(式(I)を有する化合物)は、シクロフィリンAの可逆的、競合的、活性部位特異的阻害剤であり、ペプチジルプロリルイソメラーゼ(PPIase)触媒活性を低ナノモル(nM)濃度で阻害するシクロスポリンA(CsA)の経口で生物学的に利用可能な新規アナログである。SCY-635は、慢性C型肝炎及びC型肝炎感染症の治療のために研究されている。
【0004】
薬学的に活性な成分の固体形態が異なると、異なる性質を有し得る。異なる固体形態の性質の変化は、合成又は管理を容易にする、溶解速度又は安定性を改善する、及び保存寿命などが改善された製剤を提供することができる。例えば、そのような変化が曝露、生物学的利用性を上昇させる又は半減期を延長させることができれば、異なる固体形態によってもたらされる性質の変化により、最終剤形も改善することができる。薬学的に活性な成分の異なる固体形態はまた、多結晶又は他の結晶形態を生成することができ、それにより、固体の活性医薬成分の性質変化を評価するためのより多くの機会が提供される。
【発明の概要】
【0005】
より優れた創薬性を有する固体形態を見出すために、本発明者らは、多くの実験的研究を通して、式(I)を有する化合物の結晶形Aを得た。この生成物の調製純度は明らかに改善されており、物理的性質は組成物とってより良好である。式(I)を有する化合物の結晶形Aの調製、薬物代謝の性質及びその物理化学的性質などが研究され、式(I)を有する化合物の結晶形Aが、より良好な溶解性、安定性、薬物動態特性などを有することが見出された。
【0006】
本発明は、(3S,6S,9S,12R,15S,18S,21S,24S,27R,30S,33S)-27-((2-(ジメチルアミノ)エチル)チオ)-30-エチル-33-((1R,2R,E)-1-ヒドロキシ-2-メチルヘキサン-4-エン-1-イル)-24-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)-6,9,18-トリイソブチル-3,21-ジイソプロピル-1,4,7,10,12,15,19,25,28-ナノメチル-1,4,7,10,13,16,19,22,25,28,31-ウンデカアザシクロトリトリアコンタン-2,5,8,11,14,17,20,23,26,29,32-ウンデカオン(I)の遊離塩基の結晶形A、及びその医薬組成物に関する。更に、本発明は、医薬の製造、特に、HCV感染症を予防、管理、治療、又は軽減するための医薬の製造におけるその結晶形A及びその医薬組成物の使用に関する。
【0007】
一態様では、式(I)を有する化合物の結晶形Aが、本明細書に提供される。
【化1】
結晶形Aは、2θ(°)で表される以下の特性粉末X線回折ピーク:8.66±0.2°、9.64±0.2°、10.36±0.2°、11.20±0.2°、18.39±0.2°を示す。
【0008】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される結晶形Aは、2θ(°)で表される以下の特性粉末X線回折ピーク:6.08±0.2°、8.66±0.2°、9.64±0.2°、10.36±0.2°、11.20±0.2°、13.00±0.2°、14.14±0.2°、14.90±0.2°、18.39±0.2°、20.40±0.2°、22.04±0.2°を示す。
【0009】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される結晶形Aは、2θ(°)で表される以下の特性粉末X線回折ピーク:6.08±0.2°、8.66±0.2°、9.64±0.2°、10.36±0.2°、11.20±0.2°、12.58±0.2°、13.00±0.2°、13.58±0.2°、14.14±0.2°、14.90±0.2°、15.36±0.2°、15.98±0.2°、16.71±0.2°、17.69±0.2°、18.39±0.2°、18.78±0.2°、19.38±0.2°、20.40±0.2°、21.71±0.2°、22.04±0.2°、22.49±0.2°、23.20±0.2°、23.88±0.2°、24.99±0.2°、25.82±0.2°、26.77±0.2°、27.61±0.2°、28.43±0.2°、29.62±0.2°、31.36±0.2°を示す。
【0010】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される結晶形Aは、
図1と実質的に同一の粉末X線回折パターンを有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される結晶形Aは、143.8℃±3℃及び172.6℃±3℃に吸熱ピークを有する示差走査熱量測定サーモグラムを有する。
【0012】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される結晶形Aは、
図2と実質的に同一の示差走査熱量測定サーモグラムを有する。
【0013】
別の態様では、本明細書に開示される結晶形Aを含む医薬組成物が、本明細書に提供される。
【0014】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、更に、薬学的に許容される賦形剤又は賦形剤の組合せを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、更に、他の抗HCV薬を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物において、他の抗HCV薬が、レジパスビル/ソホスブビル、ソホスブビル、リバビリン、ペグインターフェロンアルファ-2a、又はダクラタスビルである。
【0017】
一態様では、患者におけるウイルス感染症によって引き起こされる障害又は疾患を予防、治療、又は軽減するための医薬の製造における、本明細書に開示される式(I)を有する化合物の結晶形A及び医薬組成物の使用が、本明細書に提供される。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される使用において、ウイルス感染症が、C型肝炎感染症である。
【0019】
別の態様では、患者におけるウイルス感染症によって引き起こされる障害又は疾患の予防、治療、又は軽減における使用のための、本明細書に開示される式(I)を有する化合物の結晶形A及び医薬組成物が、本明細書に提供される。
【0020】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される結晶形A又は及び医薬組成物において、ウイルス感染症が、C型肝炎感染症である。
【0021】
一態様では、患者におけるウイルス感染症によって引き起こされる障害又は疾患を予防、治療、又は軽減する方法であって、前記患者に、本明細書に開示される式(I)を有する化合物の結晶形A及び医薬組成物の治療有効量を投与することを含む方法が、本明細書に提供される。
【0022】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法において、ウイルス感染症が、C型肝炎感染症である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれ得る、あらゆる変更、修正、及び等価物を包含することが意図される。当業者であれが、本発明の実施において使用され得る、本明細書に記載されたものと類似又は等価な多くの方法及び材料を認識しよう。本発明は、本明細書に記載される方法及び材料に、何ら限定されない。限定するものではないが、定義した語句、語句の用法、記載した技法などが、援用した文献、特許、及び類似資料の1以上と、本願とで異なる又は矛盾する場合、本願の定義にしたがう。
【0024】
本発明において、式(I)を有する化合物の結晶形Aは、溶媒を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書における含まれる溶媒は、式(I)を有する化合物の結晶形Aの内部安定性に貢献する。一般的な溶媒としては、水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトン、イソプロピルエーテル、エチルエーテル、酢酸イソプロピル、n-ヘプタン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、酢酸エチルなどが挙げられる。ある量の水又はその他の溶媒を有する前記結晶形は、本発明に係る式(I)で表される化合物の結晶形Aの特性を有し、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0025】
分かり易さのために別々の実施形態の文脈で記載される本発明の特徴を、1つの実施形態に組み合わせて提供することもできることが更に理解される。反対に、簡潔性のために1つの実施形態の文脈で記載される本発明の様々な特徴を、別々に又は任意の好適なサブコンビネーションとして提供することもできる。
【0026】
特段の断りがない限り、本明細書に使用される技術用語及び科学用語はいずれも、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書中で参照される特許及び刊行物はいずれも、その全体を参照により援用する。本明細書に記載されるものと類似又は等価な多くの方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法、機器、及び材料を、本発明において記載する。
【0027】
定義及び一般的な用語
「含む(comprise)」という用語はオープンな表現であり、本明細書に開示される内容を含むことを意味するが、他の内容を排除しない。
【0028】
本明細書においては、「室温」は、約10℃~約40℃までの温度を意味する。いくつかの実施形態では、「室温」は、約20℃~約30℃の温度を意味する。他の実施形態では、「室温」は、約25℃~約30℃の温度を意味する。
【0029】
本明細書に使用される「薬学的に許容される」という用語は、医薬用途の毒物学観点から許容でき、有効成分に対して不利益な相互作用をしない物質を意味する。
【0030】
多形物質は、公知の技術によって検出、同定、分類、及び特性評価することができる。公知の技術としては、限定されるものではないが、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、粉末X線回折(XRPD)、X線単結晶回折、振動分光法、溶液熱量測定、固体核磁気共鳴(SSNMR)、フーリエ変換赤外分光法(FT-IRスペクトル)、ラマン分光法、ホットステージ光学顕微鏡法、走査型電子顕微鏡法(SEM)、電子線結晶解析、及び定量分析、粒子サイズ分析(PSA)、表面積分析、溶解度、及び溶解速度が挙げられる。当業者であれば、データのそのようなグラフィック表現が、当業者によく知られているように、例えば、機器応答の変動及びサンプル濃度及び純度の変動などの要因によるピーク相対強度及びピーク位置の僅かな変動の影響を受け得ることを理解しよう。それにもかかわらず、当業者であれば、本明細書中の図面のグラフィックデータを、未知の結晶形で生成されたグラフィックデータと容易に比較することができ、2つセットのグラフィックデータが同一の結晶形又は2つの異なる結晶形を特徴付けているかどうかを確認することができる。
【0031】
グラフィック形式(例えば、XRPD)で示されるスペクトル又はデータに言及するために本明細書で使用される「ピーク」という用語は、特段の断りがない限り、当業者が、バックグラウンドノイズに起因しないものとして認識するピーク又は他の特別な特徴を意味する。
【0032】
「XRPD」は、粉末X線回折を意味する。
【0033】
結晶形の変化、結晶化度、結晶構造状態などのいくつかの情報は、結晶形を同定するために使用される一般的な方法である粉末X線回折(XRPD)の検出によって得ることができる。「粉末X線回折パターン」又は「XRPDパターン」という用語は、実験的に観察された回折図又はそれから導き出されたパラメータを意味する。粉末X線回折(XRPD)は、ピーク位置(横軸)とピーク強度(縦軸)によって特徴付けられる。XRPDパターンのピーク位置は、主に結晶構造に依存し、結晶構造は、実験の詳細からは比較的影響を受けず、相対的なピーク高さは、サンプル調製と機器のジオメトリに関連する多くの要因に依存する。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される結晶形態は、特定の位置にいくつかのピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられ、このパターンは、本発明の添付図面に示されるXRPDパターンと実質的に同一である。一方、XRPDパターンの2θの測定値は、実験誤差が伴うことがあり、例えば、XRPDパターンの2θの測定値は、機器やサンプルが異なると異なることがある。したがって、2θの値は絶対的なものではない。本明細書に開示される実験用の機器の状態によれば、回折ピークの2θにおける許容誤差は、±0.1°、±0.2°、±0.3°、±0.4°、又は±0.5°である。いくつかの実施形態では、回折ピークの2θにおける許容誤差は、±0.2°である。
【0034】
「2シータ値」又は「2θ」という用語は、X線回折実験の実験のセットアップに基づく、度を単位とするピーク位置を指し、回折パターンの一般的な横軸単位である。実験のセットアップでは、入射ビームが特定の格子面と角度シータ(θ)を形成するときに反射が回折される場合、反射されたビームが角度2シータ(2θ)で記録されることを必要とする。本明細書における特定の固体形態の特定の2θ値への言及は、本明細書に記載されるX線回折実験条件を使用して測定された2θ値(単位:度)を意味することが意図されると理解されたい。
【0035】
本明細書で使用するとき、粉末X線回折パターンに記載される2θの値は、度(°)で記録される。
【0036】
本明細書で使用するとき、「相対強度」という用語は、100%と見なされる粉末X線回折(XRPD)パターンにおける最も強いピークの強度に対するピークの強度を意味する。
【0037】
示差走査熱量測定(DSC)は、サンプルと不活性参照化合物(通常、α-Al2O3)とのエネルギー差を温度の関数として測定するために使用される技術であり、プログラム制御下で一定の加熱又は冷却によって行われる。DSCサーモグラムの融解ピーク高さは、サンプル調製と機器のジオメトリに関連する多くの要因に依存し、ピーク位置は実験の詳細からは比較的影響を受けない。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される結晶形態は、特定の位置にいくつかのピークを有するDSCサーモグラムによって特徴付けられ、このサーモグラムは、本発明の添付図面に提供されるDSCサーモグラムと実質的に同一である。一方、DSCサーモグラムの測定値は、実験誤差を伴うことがあり、例えば、DSCサーモグラムのピーク位置とピーク値の測定値は、機器やサンプルが異なると、異なることがある。したがって、DSCサーモグラムのピーク位置の数値と吸熱ピークのピーク値は、絶対的なものではない。本明細書に開示された実験用の機器の状態によれば、融解ピークの許容誤差は、±1℃、±2℃、±3℃、±4℃、又は±5℃である。いくつかの実施形態では、融解ピークの許容誤差は、±3℃である。示差走査熱量測定(DSC)は、結晶変態又は結晶形態の混合粒子現象が存在するかどうかの検出と分析にも使用される。
【0038】
同一化学組成を有する固体は、通常、異なる熱力学的条件下で異なる結晶構造を有する多形又はバリアントを形成し、この現象は多形又は多相と呼ばれる。温度と圧力の条件が変化すると、結晶転移と呼ばれるバリアント間の変化が生じる。結晶形態の性質は、結晶転移のために力学的性質、電気的性質、磁気的性質などを大きく変化させる。結晶転移プロセスは、示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムで、遷移温度が測定可能な範囲内にある場合に観察することができる。これは、この変換を反映する発熱ピークと、それぞれ変換前後の異なる結晶形の特徴的な吸熱ピークである2つ以上の吸熱ピークとを有するDSCサーモグラムによって特徴付けられる。
【0039】
熱重量分析(TGA)は、プログラム制御下の物質の温度によって変化する物質の性質変化を測定するために使用される技術であり、サンプルの結晶中の溶媒損失、昇華、及び解離のプロセスの検出に適用できる。検出結果の分析により、結晶水と結晶に含まれる結晶溶媒を推測することができる。TGA曲線に記載される性質変化の測定値は、サンプル調製と機器のジオメトリなどの多くの要因に依存する。これらの要因は、機器とサンプルが異なると、異なることがある。本明細書に開示された実験用の機器の状態によれば、性質変化の許容誤差は、±0.1%である。
【0040】
「アモルファス」又は「アモルファス形態」とは、3次元空間に周期的にではなく配置された粒子(分子、原子、イオンなど)によって形成される物質を意味し、シャープなピークがない拡散粉末X線回折パターンを特徴とする。アモルファスは、固体物質の特殊な物理的形態であり、アモルファス物質の一部における規則正しい構造特性は、アモルファス物質と結晶物質との間に無数の結合が存在することを示唆する。アモルファス形態の物質は、当技術分野で公知の多くの方法によって得ることができる。これらの方法としては、限定するものではないが、急速冷凍法、逆溶媒凝集法、ボールミル法、噴霧乾燥法、凍結乾燥法、湿式造粒法、及び固体分散法などが挙げられる。
【0041】
本明細書で使用される「溶媒」という用語は、別の物質、典型的には固体を完全に又は部分的に溶解することができる物質、典型的には液体を意味する。本発明の実施のための溶媒としては、限定するものではないが、水、酢酸、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、石油エーテル、酢酸イソプロピル、メチルtert-ブチルエーテル、n-ヘプタン、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、n-ブタノール、tert-ブタノール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ギ酸、ヘキサン、イソプロパノール、メタノール、メチルエチルケトン、1-メチル-2-ピロリドン、メシチレン、ニトロメタン、ポリエチレングリコール、n-プロパノール、2-アセトン、ピリジン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、それらの混合物などが挙げられる。
【0042】
「逆溶媒(anti-solvent)」という用語は、生成物(又は生成物の前駆体)の溶媒からの析出を促進する流体を意味する。逆溶媒は、低温ガス、又は化学反応を介して析出を促進する流体、又は溶媒中の生成物の溶解度を低下させる流体を含むことができる。逆溶媒は、溶媒と温度が異なる同一液体であることができる、又は溶媒とは異なる液体であることができる。
【0043】
本明細書で使用される「溶媒和物」という用語は、表面上、格子内、又は表面上且つ格子内に、本発明の実施のための溶媒を有することを意味し、前記溶媒としては、限定するものではないが、水、酢酸、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、エタノール、酢酸エチル、ブタノール、tert-ブタノール、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、ギ酸、ヘプタン、ヘキサン、イソプロパノール、メタノール、メチルエチルケトン、1-メチル-2-ピロリドン、メシチレン、ニトロメタン、ポリエチレングリコール、プロパノール、2-アセトン、ピリジン、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、それらの混合物などが挙げられる。溶媒和物の具体例は水和物であり、表面上、格子内、又は表面上且つ格子内の溶媒が水である。水和物は、物質の表面上、格子内、又は表面上且つ格子内に水以外の溶媒を含んでも含まなくてもよい。
【0044】
「当量」又は「eq」という用語は、化学反応の当量関係にしたがって必要とされる他の原料の当量であり、基本原料が各工程のベース(1当量)として使用される。
【0045】
結晶形又はアモルファスは、粉末X線回折(XRPD)、赤外分光法(IR)、融点、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、核磁気共鳴、ラマン分光法、単結晶X線回折、溶液熱量測定、走査型電子顕微鏡(SEM)、定量分析、溶解度、溶解速度などの複数の技術的手段によって同定できる。
【0046】
本明細書に使用するとき、「図と実質的に同一」という用語は、図示されたピークの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%を有する粉末X線回折(XRPD)パターン、又は示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム、又はラマンスペクトログラム、又はフーリエ変換赤外スペクトログラムを意味する。
【0047】
本明細書で使用するとき、グラフに示されるスペクトル及び/又はデータに言及する場合、「ピーク」という用語は、当業者がバックグラウンドノイズに起因しないと認識するであろうフィーチャーを意味する。
【0048】
本明細書で使用するとき、「実質的に純粋」である結晶形は、1以上の他の結晶形態を実質的に含まない結晶形を意味する。即ち、結晶形が、結晶形と1以上の他の結晶形の総体積又は総重量に基づき、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、少なくとも約99.6%、少なくとも約99.7%、少なくとも約99.8%、又は少なくとも約99.9%の純度を有する;又は、結晶形中の1以上の他の結晶形が、20%未満、10%未満、5%未満、3%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、又は0.01%未満である。
【0049】
本明細書で使用するとき、1以上の他の結晶形を「実質的に含まない」結晶形は、結晶形と1以上の他の結晶形の総体積又は総重量に基づき、1以上の他の結晶形が、20%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、又は0.01%未満である結晶形を意味する。
【0050】
本明細書で使用するとき、本明細書に開示される数はいずれも、所定値又は範囲の10%以内、好適には5%以内、特に1%以内を意味する「約」という用語がそれに伴って使用されているかどうかにかかわらず、近似値である。或いは、「約」という用語は、当業者によって考慮される、平均の許容可能な標準誤差範囲内を意味する。したがって、値Nを有する数が開示されるときは常に、値N+/-1%、N+/-2%、N+/-3%、N+/-5%、N+/-7%、N+/-8%、又はN+/-10%を有する任意の数が具体的に開示されており、「+/-」はプラス又はマイナスを意味する。
【0051】
本明細書で使用するとき、「患者」は、ヒト(成人及び小児を含む)又は他の動物を意味する。一実施形態では、「患者」はヒトを意味する。
【0052】
本明細書で使用するとき、任意の疾患又は障害を「治療する」、を「治療すること」又はの「治療」という用語は、一実施形態では、疾患又は障害を改善すること(即ち、疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの疾患の発症を遅らせる、阻止する、又は緩和すること)を意味する。別の実施形態では、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、患者が識別し得ないものを含む得る少なくとも1つの物理的パラメータを軽減又は改善することを意味する。更に別の実施形態では、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、物理的(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理学的(例えば、身体的パラメータの安定化)のいずれか、又は両方で、疾患又は障害を調節することを意味する。更に別の実施形態では、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、疾患又は障害の発症又は発展若しくは進行を防ぐ又は遅らさせることを意味する。
【0053】
前記のように、本明細書に開示される薬学的に許容される組成物は、更に、薬学的に許容される賦形剤を含む。薬学的に許容される賦形剤は、本明細書で使用されるとき、所望の特定の剤形に適した任意のあらゆる溶媒、固体賦形剤、希釈剤、接着剤、崩壊剤又は他の液体ビヒクル、分散液、香味剤又は懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、保存剤、固体結合剤、流動促進剤、潤滑剤などを含む。Troyら, Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st ed., 2005, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia及びSwarbrickら, Encyclopedia of Pharmaceutical Technology, eds. 1988-1999, Marcel Dekker, New York(これらの内容全体を、参照により本明細書に援用する)は、薬学的に許容される組成物を処方する際に使用される様々な賦形剤及びその調製のための公知技術を開示している。望ましくない生物学的効果をもたらす又は薬学的に許容される組成物の他の成分と相互作用し不利益をもたらすことなどによって、本明細書に開示される化合物と相溶しない従来の賦形剤を除き、その使用は本発明の範囲内であると考えられる。
【0054】
薬学的に許容される賦形剤として作用し得る材料のいくつかの非限定的な例としては、イオン交換体;アルミニウム;ステアリン酸アルミニウム;レシチン;ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質;リン酸塩などの緩衝物質;グリシン;ソルビン酸;ソルビン酸カリウム;飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物;水;硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、及び亜鉛塩などの塩又は電解質;コロイダルシリカ;三ケイ酸マグネシウム;ポリビニルピロリドン;ポリアクリレート;ワックス;ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー;羊毛脂;ラクトース、グルコース、及びスクロースなどの糖;コーンスターチ及びジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロース並びにナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、エチルセルロース、及びセルロースアセテートなどのその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバター及び坐剤ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、大豆油などの油;プロピレングリコール及びポリエチレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルやラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;及びリン酸緩衝液、並びにラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの他の非毒性相溶性潤滑剤、並びに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、及び芳香剤、防腐剤、及び抗酸化剤が挙げられる。
【0055】
本明細書に開示される結晶形又は医薬組成物は、以下の経路のいずれかで投与することができる:経口、噴霧により吸入、局所、直腸、鼻、膣、非経口、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、髄腔内、脳室内、胸骨内、又は口頭蓋内注射又は注入;又は外植されたリザーバを用いて投与することができる。経口、筋肉内、腹腔内、又は静脈内注射による投与経路が好ましい。
【0056】
結晶形態又はその薬学的に許容される組成物は、単位剤形で投与することができる。剤形は、液体形態又は固体形態であることができる。液体形態としては、真溶液、コロイド、粒子、懸濁液が挙げられる。他の剤形としては、錠剤、カプセル、滴下ピル、エアロゾル、ピル、粉末、溶液、懸濁液、乳濁液、顆粒、坐剤、凍結乾燥粉末注射剤などが挙げられる。
【0057】
経口錠剤及びカプセルは、賦形剤、例えば、シロップ、アラビアガム、ソルビトール、トラガカント、又はポリビニルピロリドンなどの結合剤;ラクトース、スクロース、コーンスターチ、リン酸カルシウム、ソルビトール、グリシンなどのフィラー;ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカなどの潤滑剤;ジャガイモデンプンなどの崩壊剤;又はラウリル硫酸ナトリウムなどの許容可能な保湿剤を含むことができる。錠剤は、薬剤学における公知の方法を用いてコーティングすることができる。
【0058】
経口液剤は、水と油の懸濁液、溶液、乳濁液、シロップ、又はエリキシルとして調製できる、又は使用前に、水又は他の好適な培地を添加する乾燥製品として調製することができる。この液体製剤は、従来の添加剤、例えば、懸濁剤、ソルビトール、セルロースメチルエーテル、グルコースシロップ、ゲル、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、水素化食用グリース;レシチン、ソルビタンモノオレエート、アラビアガムなどの乳化剤;又は、アーモンド油などの非水性担体(食用油を含むこともある)、グリセリン、エチレングリコール、又はエタノールなどのグリース;メチル又はプロピルp-ヒドロキシ安息香酸、ソルビン酸などの防腐剤を含むことができる。必要に応じて、香味剤又は着色剤を添加することができる。
【0059】
坐剤は、カカオバター又は他のグリセリドなどの従来の坐剤ベースを含むことができる。
【0060】
非経口投与の場合、液体剤形は、通常、化合物と滅菌担体から調製される。好ましい担体は、水である。選択した担体と薬剤濃度の違いに応じて、化合物を担体に溶解する又は上清液にすることができる。注射用溶液にする場合、化合物を最初に水に溶解させ、次いで、ろ過及び滅菌してから、密封されたボトル又はアンプルにパッケージする。
【0061】
皮膚に局所的に塗布するために、本明細書に開示される化合物は、有効成分が、1以上の担体に懸濁又は溶解された軟膏、ローション、又はクリームの好適な形態に調製することができる。軟膏調製物に使用される担体としては、限定するものではないが、鉱油、液体ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、乳化ワックス、及び水が挙げられ;ローション及びクリームに使用される担体としては、限定するものではないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、Tween60、セチルエステルワックス、ヘキサデシレン芳香族アルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、及び水が挙げられる。
【0062】
本明細書に開示される活性化合物の総投与量は、治療対象の種類及び体重、疾患の性質及び重篤度、製剤の種類及び薬剤の投与方法、並びに投与期間又は時間間隔に応じて変わる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】
図1は、式(I)を有する化合物の結晶形AのXRPDパターンを示す。
【
図2】
図2は、式(I)を有する化合物の結晶形AのTGA/DSC曲線を示す。
【
図3】
図3は、式(I)を有する化合物の結晶形AのHPLCクロマトグラフを示す。
【
図4】
図4は、加熱前後の式(I)を有する化合物の結晶形AのXRPDパターンを示す。
【
図5】
図5は、式(I)を有する化合物のアモルファス形態のXRPDパターンを示す。
【0064】
好ましい実施形態の説明
本発明の実施形態を詳細に記載すると共に、実施形態の一例を図面に示す。図面を参照して以下に記載する実施形態は例示的なものであり、本発明を解釈するために使用されることが意図されており、本発明に対する限定として理解することはできない。
【0065】
結晶形態は、様々な方法によって調製することができ、例えば、限定するものではないが、好適な溶媒混合物からの結晶化又は再結晶化、昇華、別の相からの固体状態変換、超臨界流体からの結晶化、及びジェット噴霧が挙げられる。溶媒混合物からの結晶形の結晶化又は再結晶化のための技術としては、例えば、限定するものではないが、溶媒の蒸発、溶媒混合物の温度の低下、分子及び/又は塩の過飽和溶媒混合物の種結晶化、溶媒混合物の凍結乾燥、及び溶媒混合物への逆溶媒(カウンター溶媒)の添加が挙げられる。ハイスループット結晶化技術を使用して、多形を含む結晶形を調製することができる。
【0066】
多形を含む薬剤の結晶、調製方法、及び薬剤結晶の特性評価については、Solid-State Chemistry of Drugs, S. R. Byrn, R. R. Pfeiffer, and J. G. Stowell, 2nd Edition, SSCI, West Lafayette, Ind. (1999)に述べられている。
【0067】
溶媒を使用する結晶化技術の場合、1種以上の溶媒の選択は、通常、化合物の溶解度、結晶化技術、及び溶媒の蒸気圧などの1以上の要因に依存する。溶媒を組み合わせて使用することができ、例えば、化合物を第1の溶媒に可溶化させ溶液を得、続いて逆溶媒を添加して溶液中の化合物の溶解度を低下させ、結晶を形成することができる。逆溶媒は、化合物の溶解度が低い溶媒である。
【0068】
種結晶は、結晶化を促進するために任意の結晶化混合物に添加することができる。シーディングは、特定の多形の成長を制御するために、又は結晶性生成物の粒子サイズ分布を制御するために使用することができる。したがって、例えば、“Programmed Cooling Batch Crystallizers”, J. W. Mullin and J. Nyvlt, Chemical Engineering Science, 1971, 26, 369-377に記載されるように、必要なシードの量の計算は、利用可能なシードのサイズと平均的な生成物粒子の所望サイズに依存する。一般に、バッチ内の結晶の成長を効果的に制御するには、小さなサイズのシードが必要である。小さなサイズのシードは、大きな結晶の篩分け、粉砕、若しくは微粉化、又は溶液の微結晶化によって生成させることができる。結晶の粉砕又は微粉化が、所望の結晶形の結晶化度に変化(即ち、アモルファス又は別の多形に変化させること)をもたらさないように注意する必要がある。
【0069】
冷却した結晶化混合物を真空下にてろ過し、単離した固体を冷再結晶化溶媒などの好適な溶媒で洗浄し、窒素パージ下にて乾燥させて、所望の結晶形を得ることができる。単離した固体を、好適な分光学的技法又は分析技法、例えば、限定するものではないが、示差走査熱量測定(DSC)、粉末X線回折(XRPD)、熱重量分析(TGA)などによって分析することができ、生成物の好ましい結晶形の形成を確実にする。得られる結晶形は、典型的には、結晶化手順で最初に使用された化合物の重量に基づいて、約70重量パーセント超の単離収率、好ましくは90重量パーセント超の単離収率で生成される。必要に応じて、生成物を共粉砕する又はメッシュスクリーンに通して凝塊を取り除くことができる。
【0070】
本発明の特徴及び利点は、以下の詳細な説明を読むことにより当業者に明らかとなろう。分かり易さのために別々の実施形態の文脈で記載される本発明の特徴を、1つの実施形態に組み合わせて提供することもできることが理解される。反対に、簡潔性のために1つの実施形態の文脈で記載される本発明の様々な特徴を、任意の好適なサブコンビネーションとして提供することもできる。本明細書に開示される以下の実施例は、本発明を更に説明するために示される。しかし、これらの実施例は、本発明の範囲又は精神を実施例に記載される特定の工程に限定するために使用すべきではない。
【0071】
以下に説明する実施例では、特段の断りがない限り、記載される温度はいずれも摂氏(℃)で示される。
【0072】
試薬は、Aldrich Chemical Company、Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltdなどの商業的サプライヤから購入し、特段の断りがない限り、更に精製することなく使用した。一般的な溶媒は、Wuhan ZhongTian Chemical Factoryなどの商業的サプライヤから購入した。
【0073】
1H NMRスペクトルは、Bruker Avance 400分光計又はBruker Avance III HD 600分光計で、CDCl3、DMSO-d6、CD3OD、又はアセトン-d6(ppm単位で報告)を溶媒として用い、TMS(0ppm)又はクロロホルム(7.26ppm)を参照標準として用いて記録した。ピーク多重度を報告するとき、以下の略語が使用される:s(シングレット)、s,s(シングレット,シングレット)、d(ダブレット)、t(トリプレット)、m(マルチプレット)、br(ブロード)、dd(ダブレットのダブレット)、ddd(ダブレットのダブレットのダブレット)、dt(トリプレットのダブレット)、ddt(トリプレットのダブレットのダブレット)、td(ダブレットのトリプレット)、br.s(ブロードシングレット)。カップリング定数Jが与えられた場合には、ヘルツ(Hz)で報告した。
【0074】
使用した溶媒の略称を表1に示す。
表1:溶媒の略称
【表1】
【0075】
本発明で調製した結晶形は、以下の方法で同定した。
【0076】
XRPD分析には、PANalytical Empyrean 粉末X線回折計を使用した。使用したパラメータを表2に示す。
表2:XRPD試験のパラメータ
【表2】
【0077】
TGAデータは、TA InstrumentsのTA Q500/Q5000 TGAを使用して集めた。DSCは、TA InstrumentsのTA Q200/Q2000 DSCを用いて行った。使用される詳細なパラメータを表3に示す。
表3:TGA及びDSC試験のパラメータ
【表3】
【0078】
Agilent 1100 HPLCを使用して、溶解度と純度を測定した。方法は、それぞれ表4と表5に記載した。
表4:溶解度試験のためのHPLC法
【表4】
表5:純度試験のHPLC法
【表5】
【0079】
SCY-635遊離塩基(形態A)を、50℃で96の溶媒組成物で平衡化し、スラリー、蒸発、冷却、沈殿の4つの結晶化技術に付した。この自動化されたプレートベースのスクリーニングワークフローにより、SCY-635遊離塩基を合計384回の結晶化実験に付した。
【0080】
結晶性物質を、ヘプタン、シクロヘキサン、及び水中でのスラリー結晶化からのみ観察した。これらの実験から単離された形態は、この研究に使用した結晶性SCY-635遊離塩基の提供されたロットと一致した(形態A)。その他の結晶化条件はいずれも、ガラスを生成した。
【0081】
本明細書に開示される以下の実施例は、本発明を更に記載するために与えられる。しかし、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するために使用されるべきではない。
【0082】
A:調製と同定の実施例
【化2】
1.式(I)の化合物の結晶形Aの調製
不活性雰囲気中において、-35℃でリチウムジイソプロピルアミドのテトラヒドロフラン反応混合物に、[4’-ヒドロキシ-N-メエチルロイシン]
4-シクロスポリンA(2.4g,2.0mmol)のテトラヒドロフラン溶液をゆっくりと投入し、反応混合物を-35℃で1時間撹拌し、その時点で、内部温度を-35℃未満に維持しながら、N,N-ジメチルシステアミンを投入した。反応物を-35℃で撹拌しながら2時間維持し、その時点で氷酢酸を添加し、反応物を室温に加温した。混合物を第三級ブチルメチルエーテルで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を真空下で留去し、残渣を、酢酸エチル/ヘプタンで溶出させ、次にメタノール/酢酸エチルで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、式(I)の化合物(SCY-635)を560mg得た。
【0083】
式(I)の化合物200mg、続いてアセトニトリル30mLを反応器に投入する。攪拌しながら混合物を65℃に加熱し、20分間~1時間維持する。焼結ガラス漏斗で混合物をろ過し、ろ液を反応器に戻し、1.5~2.0時間かけて10℃に冷却し、10℃で最低15分間維持する。混合物を、1.5~2.0時間かけて-10℃に冷却する。混合物をろ過し、固体を窒素下にてアセトニトリルで洗浄して、式(I)の化合物の結晶形Aを153.2mg得る。
【0084】
2.結晶形Aの同定
結晶形Aは、Empyrean粉末X線回折(XRPD)によって分析、同定した。XRPD回折スペクトログラムを
図1に示した。具体的なデータは表6に示した。特徴的なピークの2θの許容誤差は、±0.2であった。
表6:結晶形AのXRPDデータ
【表6】
【0085】
TGA/DSC曲線を
図2に示した。TGAでは、無視できる程度の重量損失(130℃まで0.7%)が見られた。DSCデータは、分解前に2つの吸熱ピーク(143.8℃と172.6℃)を示し、吸熱ピークの許容誤差は±3℃であった。また、100面積%の純度がHPLCによって検出され、その結果を
図3に示した。
【0086】
図2のDSC曲線の2つの吸熱ピークに示されるように、結晶形が異なる遊離塩基が高温で存在するかどうかを調べるために、結晶形Aの加熱実験を行い、加熱したサンプルのHPLC純度も検出した。結果が
図3、
図4、及び表7に示されるように、結晶形Aは、160℃に加熱された後にアモルファスに変換され、加熱中、100%から97.6%に純度が低下したことが観察された。また、160℃と比較して150℃での純度が低いことは、等温時間の増加に関連すると推測された。前記データに基づくと、2番目のシャープなシグナルは主に分解によって引き起こされ、異なる形態は高温で単離されなかった。
表7:加熱された結晶形AのHPLC純度
【表7】
【0087】
B:特性試験の実施例
1.溶解度試験
結晶形Aの溶解度を、RTにて6種の溶媒中で推定した。約2mgの固体を、それぞれ3mLのガラスバイアルに秤量し、このバイアルに、表8の各溶媒を100μLの増分で、固体が完全に溶解する又は総量が2mLに達するまで添加した。
表8:RTにおける結晶形Aの溶解度の推定
【表8】
表8のデータ分析に見られるように、結晶形Aの溶解度は、EtOH、THF、アセトン、及びEtOAcでより良好である。
【0088】
2.安定性試験
結晶形Aの安定性は、25℃/60%RHで少なくとも24ヶ月間の長期条件下、及び40℃/75%RHで最大6ヶ月の加速条件下で推定した。外観、結晶化度、関連物質、含水量、アッセイなどの試験パラメータのいずれにも、大きな変化は見られなかった。
【0089】
結晶形Aの安定性は、室温にて水中及びFaSSIF中でも推定した。両条件下で24時間後に固体形態の変化は見られなかった。
【0090】
更に、式(I)を有する化合物の結晶形Aは、他の結晶形及びアモルファス形態よりも優れた安定性を有することが分かった。
【0091】
SCY-635遊離塩基のアモルファス形態及び結晶形Aの両方の、(高温及び光分解条件下での)応力試験実験結果を比較すると、SCY-635遊離塩基の結晶形Aの総不純物及び主要不純物は増加せず、その安定性は、明らかにアモルファス形態よりも優れていた。具体的な結果を以下の表9及び表10に示す。
表9:高温下(60℃)
【表9】
【0092】
結論:
前記表9の分析から、SCY-635遊離塩基のアモルファス形態の純度は、高温試験における60℃の条件下で低下し続けたが、SCY-635遊離塩基の結晶形Aの純度は変化しなかったことが分かり、このことは、アモルファス形態の安定性が、結晶形態Aの安定性よりも劣っていることを示す。
表10:高光分解下(4500Lux)
【表10】
【0093】
結論:
前記表10の分析から、SCY-635遊離塩基のアモルファス形態の純度は、高光分解試験における4500Luxの条件下で低下し続けたが、SCY-635遊離塩基の結晶形Aの純度は変化しなかったことが分かり、このことは、アモルファス形態の安定性が、結晶形Aの安定性よりも劣っていることを示す。
【0094】
3.薬物動態特性試験
(1)ビーグル犬における結晶形Aの薬物動態試験
ビーグル犬(体重:10~12kg、雄、年齢:10~12月齢、各経口群及び静脈内群に3頭ずつ)における化合物の薬物動態試験を以下に示す。
【0095】
試験方法
ビーグル犬に、試験化合物を、経口胃管栄養法により2.5mg/kg又は5mg/kgの用量で、又は静脈内注射により1mg/kg又は2mg/kgの用量で投与した。
【0096】
静脈の血液サンプルを、投与後0.083、0.25、0.5、1、2、4、6、8、及び24時間で採取し、EDTA-K2を含む抗凝固管に回収した。試験化合物を、液-液抽出によって血漿サンプルから抽出した。次に、多重反応モニタリング(MRM)を使用して、トリプル四重極タンデム質量分析計で定量分析を行った。薬物動態パラメータは、WinNonLin6.3ソフトウェアによる非コンパートメント法を用いて計算した。
【0097】
結論:薬物動態データは、式(I)を有する化合物の結晶形Aが、他の結晶形及びアモルファス形態よりも、ビーグル犬でインビボにおいて優れた薬物動態特性を有し、抗HCVウイルスにおいて良好な適用可能性を有することを示す。
【0098】
(2)マウスにおける薬物動態試験
マウス(体重:20~25g、雄、年齢:45~60日齢、各経口群及び静脈内群に3頭ずつ)における化合物の薬物動態試験を以下に示した。
【0099】
試験方法
ICRマウスに、試験化合物を、経口胃管栄養法により10mg/kgの用量で、又は尾部静脈内注射により2mg/kg又は10mg/kgの用量で投与した。眼窩静脈の血液サンプルを、投与後0.083、0.25、0.5、1、2、4、6、8、及び24時間で採取し、EDTA-K2を含む抗凝固管に回収した。試験化合物を、液-液抽出によって血漿サンプルから抽出した。次に、多重反応モニタリング(MRM)を使用して、トリプル四重極タンデム質量分析計で定量分析を行った。薬物動態パラメータは、WinNonLin6.1ソフトウェアによる非コンパートメント法を用いて計算した。
【0100】
結論:薬物動態データは、式(I)を有する化合物の結晶形Aが、他の結晶形及びアモルファス形態よりも、マウスでインビボにおいて優れた薬物動態特性を有し、抗HCVウイルスにおいて良好な適用可能性を有することを示す。
【0101】
(3)SDラットにおける薬物動態試験
SDラット(体重:200~250g、雄、年齢:2~3月齢、各経口群及び静脈内群に3頭ずつ)における化合物の薬物動態試験を以下に示した。
【0102】
試験方法
ラットに、試験結晶Aを、経口胃管栄養法により2.5mg/kg又は5mg/kgの用量で、又は静脈内注射により1mg/kgの用量で投与した。
【0103】
静脈の血液サンプルを、投与後0.083、0.25、0.5、1、2、5、7、及び24時間で採取し、EDTA-K2を含む抗凝固管に回収した。試験化合物を、液-液抽出によって血漿サンプルから抽出した。次に、多重反応モニタリング(MRM)を使用して、トリプル四重極タンデム質量分析計で定量分析を行った。薬物動態パラメータは、WinNonLin6.3ソフトウェアによる非コンパートメント法を用いて計算した。
【0104】
結論:薬物動態データは、式(I)を有する化合物の結晶形Aが、他の結晶形及びアモルファス形態よりも、SDラットでインビボにおいて優れた薬物動態特性を有し、抗HCVウイルスにおいて良好な適用可能性を有することを示す。
【0105】
4.SCY-635遊離塩基結晶形Aのバイオアベイラビリティ、薬物動態、及びインビトロ/インビボ活性
レプリコンアッセイにおけるSCY-635の抗HCV活性
この研究の目的は、十分に特徴付けられた遺伝子型-1レプリコンにおけるSCY-635(遊離塩基結晶形A)の潜在的な抗HCV活性を評価することとした。細胞培養(Huh7肝細胞癌細胞系統)における再現可能なHCV複製系は、1999年に初めて報告された(Lohmannら、1999)。このアッセイは、非構造タンパク質をコードし、自律複製に必要なシスRNAエレメントを有するバイシストロン性サブゲノムウイルスRNA又はレプリコンを利用する。レプリコンは、HCVの複製、転写、翻訳に必要な全てのヌクレオチド配列を含む自己複製RNA分子であるが、感染性ではない。
【0106】
SCY-635(遊離塩基結晶形A)は、HCVゲノム複製の阻害能を評価するために、HCVレプリコンアッセイで試験した。Kriegerら、(2001)及びPietschmannら(2002)により記載された方法に適合させた方法を使用して、且つ米国特許第6,630,343号明細書に記載されたHCV RNA構築物を使用して、HCVに対する活性を試験した。
【0107】
方法
SCY-635(遊離塩基結晶形A)は、安定したルシフェラーゼ(LUC)レポーターを含むHCV RNAレプリコンであるヒト肝細胞癌細胞系統ET(lub ubi neo/ET)で試験した。HCV RNAレプリコンETは、ホタルルシフェラーゼ(LUC)、ユビキチン、及びネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(NeoR)融合タンパク質の生成を引き起こすHCVの5’末端を(HCV内部リボソーム侵入部位(IRES)及びHCVコアタンパク質の最初の数アミノ酸を含む)を含む。ユビキチンの切断により、LUC及びNeoRタンパク質が放出される。EMCV IRESエレメントは、HCV構造タンパク質NS3-NS5の翻訳を制御する。NS3タンパク質は、HCVポリタンパク質を切断して、HCV複製に必要な成熟したNS3、NS4A、NS4B、NS5A、及びNS5Bタンパク質を放出する。レプリコンの3’末端は、HCVの本来の3’NTRを含む。LUCレポーターの活性は、HCV複製レベルに正比例し、陽性対照の抗ウイルス化合物は、LUCエンドポイントを使用して再現性のある抗ウイルス応答を生じる。
【0108】
化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、0.02~2.0μM(SCY-635の場合)又は0.2~20μM(CsAの場合)の範囲の5つの半対数濃度で培養培地に希釈した。ET系統のサブコンフルエントな培養物を、細胞数(細胞毒性)又は抗ウイルス活性の分析専用の96ウェルプレートにプレーティングし、翌日、化合物を適切なウェルに添加した。細胞が依然としてサブコンフルエントであった72時間後に細胞を処理した。抗ウイルス活性は、EC50及びEC90で表した。これは、それぞれ、ウイルス複製を50%及び90%低下させる化合物の有効濃度である。EC50及びEC90の各値は、HCV RNAレプリコン由来のLUC活性として評価されるHCV RNAレベルから得た。細胞毒性は、細胞生存率をそれぞれ50%及び90%阻害した化合物の濃度であるIC50及びIC90で表した。IC50及びIC90は、それぞれ、細胞の生存を50%及び90%阻害する化合物の濃度である。IC50及びIC90の各値は、細胞数及び細胞毒性の指標として比色分析を使用して計算した。LUCレポーターの活性は、ヒト細胞系統のHCV RNAレベルに正比例する。HCV-レプリコンアッセイは、陽性対照としてインターフェロン-アルファ-2bを使用した並行実験で検証した。
【0109】
結果及び条件
レプリコンアッセイで試験した場合、SCY-635遊離塩基結晶形Aは、細胞毒性を伴わずに強力な抗HCV活性を示す。これは、con1b由来のバイシストロン性及び全長レプリコンに対して、それぞれ100nM(132ng/mL)及び170nM(225ng/mL)のEC50値を示す。バイシストロン性レプリコン及び全長レプリコンにおけるSCY-635遊離塩基結晶形Aの対応するEC90値は、それぞれ350nM(463ng/mL)及び690nM(912ng/mL)である。H77レプリコン(遺伝子型1a)で試験した場合、SCY-635遊離塩基結晶形Aは、それぞれ150nM(198ng/mL)及び1380nM(1,824ng/mL)のEC50及びEC90の各値を示す。
【0110】
SCY-635遊離塩基結晶形Aは、マウス、ラット、イヌ、サル、及びヒトにおいて経口で生物学的に利用可能である。薬物動態試験の結果、SCY-635遊離塩基の結晶形Aは経口投与後、体循環に吸収されることが示された。全血と血漿コンパートメントへの浸透性は、全ての用量レベルで異なっており、薬剤の大部分は全血画分に移行した。また、これは、用量依存性薬物動態挙動を示し、健常ボランティアと慢性HCV感染症被験者とで同様であった。
【0111】
本明細書全体を通して、「実施形態」、「いくつかの実施形態」、「一実施形態」、「別の実施例」、「実施例」、「特定の実施例」、又は「いくつかの実施例」という表現は、前記実施形態又は実施例に関して記載される具体的な特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態又は実施例に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な場所で使用される「いくつかの実施形態では」、「一実施形態では」、「実施形態では」、「別の実施例では」、「実施例では」、「特定の実施例では」、又は「いくつかの実施例では」などの表現は、必ずしも本開示の同一の実施形態又は実施例を意味するとは限らない。更に、具体的な特徴、構造、材料、又は特性は、1以上の実施形態又は実施例において任意の好適な方法で組み合わせることができる。