(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027366
(43)【公開日】2023-03-01
(54)【発明の名称】チューブリン結合化合物およびその治療的使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/495 20060101AFI20230221BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230221BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/4152 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/4178 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/4245 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/427 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/416 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/501 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/42 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/422 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/421 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/4015 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/53 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/497 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/4155 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/541 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/4196 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/401 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/4184 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/433 20060101ALI20230221BHJP
A61K 31/5395 20060101ALI20230221BHJP
C07D 241/08 20060101ALN20230221BHJP
【FI】
A61K31/495
A61P35/00
A61P35/02
A61K31/4152
A61K31/4439
A61K31/4178
A61K31/4245
A61K31/517
A61K31/427
A61K31/416
A61K31/4985
A61K31/454
A61K31/496
A61K31/501
A61K31/506
A61K31/42
A61K31/422
A61K31/421
A61K31/4015
A61K31/53
A61K31/497
A61K31/5377
A61K31/4155
A61K31/541
A61K31/4196
A61K31/401
A61K31/4184
A61K31/433
A61K31/5395
C07D241/08
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206294
(22)【出願日】2022-12-23
(62)【分割の表示】P 2019536967の分割
【原出願日】2018-01-05
(31)【優先権主張番号】62/443,247
(32)【優先日】2017-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.macOS
(71)【出願人】
【識別番号】517282078
【氏名又は名称】ビヨンドスプリング ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ラン
(72)【発明者】
【氏名】ケードカル,サントッシュ アンバダース
(72)【発明者】
【氏名】スタインメッツ,マイケル オー.
(57)【要約】
【課題】チューブリン結合化合物およびその治療的使用を提供することを課題とする。
【解決手段】チューブリンに結合することができてGEF-H1を活性化することができる化合物、及びがんを治療するためのこれらの化合物の使用方法を見出したことにより本発明に想到した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブリン重合を阻害するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、L
A、L
B、L
C、L
DおよびL
Eから選択される少なくとも4個の部分を含む化合物または薬学的に許容可能なその塩を含み、
L
Aは、βT239、βL242、βL252、βI4、βY52、βF169、βY202およびβV238からなるリストより選択される1つ以上の第1のチューブリン残基と相互作用するよう配置された、任意に置換されたC
6-10アリールまたは任意に置換された5~10員環のヘテロアリールであり、
L
Bは、βL255、βM259、βA316、αT179、βI318からなるリストより選択される1つ以上の第2のチューブリン残基と相互作用するよう配置された、任意に置換されたC
6-10アリールまたは任意に置換された5~10員環のヘテロアリールであり、
L
Cは、βG237、βC241、βS241、βV238、βE200およびβY202から選択される1つ以上の第3のチューブリン残基と水素結合するよう構成された部分であり、
L
Dは、βG237、βC241、βS241、βV238、βE200およびβY202から選択される1つ以上の第4のチューブリン残基と水素結合するよう構成された部分であり、
L
Eは、αT179、βT353、βL248、βL255、βA354、βA316、βA317およびβI318から選択される1つ以上の第5のチューブリン残基と疎水性相互作用を形成するよう構成された部分であり、
前記化合物が、
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
から選択される、医薬組成物。
【請求項2】
増殖性疾患、障害または病状を治療するための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
がんを治療する又はがんの進行を抑制するための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記がんが、結腸がん、乳がん、肺がん、膵がん、前立腺がん、結腸直腸腺癌、非小細胞肺がん、メラノーマ、白血病、卵巣がん、胃がん、腎細胞がん、肝がん、リンパ腫および骨髄腫から選択されるがんである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
GEF-H1を活性化させるための、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記化合物が、
【化12】
【化13】
から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記化合物が、
【化14】
から選択される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記化合物が、
【化15】
から選択される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記化合物が、
【化16】
である、請求項8に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連技術
本願は、2017年1月6日に出願された米国特許仮出願第62/443,247号(この開示は全文を参照することにより本明細書に組み入れられるものとする)の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、増殖性障害を抑制するためのチューブリン結合化合物および化合物の使用方法に関する。具体的には、チューブリン結合化合物は、がん細胞または腫瘍細胞の増殖を抑制し、またはチューブリン脱重合を誘導しGEF-H1を活性化するために使用することができる。
【0003】
関連技術の記述
現在、がん治療は、患者の腫瘍細胞を根絶するための外科手術、化学療法、および/または放射線治療を含む。これらの手法の全ては、患者にとって重要な欠点をもたらす。外科手術は、例えば、患者の健康が原因で禁忌となりうるし、また患者に受け入れられないこともある。さらに、外科手術では、腫瘍細胞を完全に除去できないこともある。放射線治療は、照射される腫瘍組織が正常組織より放射線に対して高い感受性を示す場合にのみ効果があり、放射線治療はまたしばしば重大な副作用を誘発する可能性がある。化学療法に関しては、腫瘍疾患の治療に利用可能なさまざまな化学療法剤がある。しかし、さまざまな化学療法剤が利用可能であるにもかかわらず、化学療法には多くの欠点がある。多くの化学療法剤は、有毒であり、化学療法により重要でしばしば危険な副作用が引き起こされる。加えて、多くのがん細胞は、化学療法剤に対して耐性があったり、多剤耐性により化学療法剤に対する耐性を得たりする。したがって、さらなる化学療法剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの実施形態は、チューブリン重合の阻害に使用するための、化合物またはその薬学的に許容可能なその塩、プロドラッグもしくはエステルであって、化合物は、LA、LB、LC、LDおよびLEから選択される少なくとも4個の部分を含み、
LAは、βT239、βL242、βL252、βI4、βY52、βF169、βY202およびβV238からなるリストより選択される1つ以上の第1のチューブリン残基と相互作用するよう配置された、任意に置換されたC6-10アリールまたは任意に置換された5~10員環のヘテロアリールであり、第1のチューブリン残基の少なくとも1つの原子とLA部分のアリールまたはヘテロアリールの少なくとも1つの原子との間の距離は、5Åより小さく、
LBは、βL255、βM259、βA316、αT179、βI318からなるリストより選択される1つ以上の第2のチューブリン残基と相互作用するよう配置された、任意に置換されたC6-10アリールまたは任意に置換された5~10員環のヘテロアリールであり、第2のチューブリン残基の少なくとも1つの原子とLB部分のアリールまたはヘテロアリールの少なくとも1つの原子との間の距離は、5Åより小さく、
LCは、βG237、βC241、βS241、βV238、βE200およびβY202から選択される1つ以上の第3のチューブリン残基と水素結合するよう構成された部分であり、第3のチューブリン残基の少なくとも1つの原子とLC部分の水素結合原子の少なくとも1つの原子との間の距離は、5Åより小さく、
LDは、βG237、βC241、βS241、βV238、βE200およびβY202から選択される1つ以上の第4のチューブリン残基と水素結合するよう構成された部
分であり、第4のチューブリン残基の少なくとも1つの原子とLD部分の水素結合原子の少なくとも1つの原子との間の距離は、5Åより小さく、
LEは、αT179、βT353、βL248、βL255、βA354、βA316、βA317およびβI318から選択される1つ以上の第5のチューブリン残基と疎水性相互作用を形成するよう構成された部分であり、第5のチューブリン残基の少なくとも1つの原子とLE部分の少なくとも1つの原子との間の距離は、5Åより小さい、化合物またはその薬学的に許容可能な塩、プロドラッグもしくはエステルに関する。
【0005】
いくつかの実施形態は、LC、LD、LFまたはLGから選択される少なくとも3個の部分を含み、
LCは、チューブリンβE200の酸素原子と水素結合するよう構成された部分であり、チューブリンβE200の酸素原子とLC部分の水素結合原子との間の距離は、4Åより小さく、
LDは、チューブリンβV238の酸素原子と水素結合するよう構成された部分であり、チューブリンβV238の酸素原子とLD部分の水素結合原子との間の距離は、4Åより小さく、
LFは、チューブリンαT179の酸素原子と水素結合するよう構成された部分であり、チューブリンαT179の酸素原子とLFの水素結合原子との間の距離は、8Åより小さく、
LGは、チューブリンβG237の酸素原子と水素結合するよう構成された部分であり、チューブリンβG237の酸素原子とLGの水素結合原子との間の距離は、8Åより小さい、
化合物またはその薬学的に許容可能な塩、プロドラッグもしくはエステルに関する。
【0006】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載の化合物を含む医薬組成物に関する。
【0007】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載の化合物または組成物を投与することを含む、増殖性疾患、障害または病状を治療する方法に関する。
【0008】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載の化合物または組成物を投与することを含む、がんの治療方法に関する。
【0009】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載の化合物または組成物を投与することを含む、チューブリンの重合を阻害する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、チューブリン化合物をスクリーニングするために使用されるファルマコフォアモデルである。
【
図2】
図2は、ファルマコフォアモデルに基づいてチューブリンと結合することができる化合物をスクリーニングするステップを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、チューブリン-プリナブリン複合体に見られる相互作用残基を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
微小管は、ヘッドトゥーテール様式でプロトフィラメントを構築するαβ-チューブリンのヘテロダイマーから成り、直線状で平行なプロトフィラメントが側方に相互作用して微小管の中空円柱を形成する。本明細書において開示される化合物は、チューブリンに結合して微小管のダイナミクスに干渉することができる。微小管には、外因性の剤に対するチューブリン上の5個の結合部位、すなわちタキサン、ビンカアルカロイド、コルヒチン、ラウリマライドおよびメイタンシンドメインがありうる。本明細書において記載される
化合物は、一つ以上のこれらの結合部位を標的とすることができる。具体的には、本明細書において記載される化合物は、コルヒチン結合部位を標的とすることができる。
【0012】
本明細書において記載される化合物が結合しても、微小管の全体的な立体構造に影響を与えず、T2R複合体の全体的な立体構造にも影響を与えない。約2000Ca原子の平均二乗偏差は、微小管-リガンド複合体の全ての対比較で0.5Å未満である。主要な立体構造の変化は、コルヒチン結合部位近傍の2個のループ、bT7およびaT5を含む。微小管の二次構造要素とループの命名法は、Lowe J, Li H, Downing KH & Nogales E (2001),J Mol Biol 313, 1045-1057に記載され、その全文をこの目的で参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0013】
定義
「プロドラッグ」は、生体内で親薬物に変換される剤を表す。プロドラッグは、有用であることが多い、なぜなら、いくつかの状況においては、プロドラッグは親薬物より投与が容易でありうるからである。例えば、親が経口投与によって生体利用可能でない一方で、それらは生体利用しうる。プロドラッグは、また親薬物を越えて医薬組成物における溶解度が改善されうる。限定されないが、プロドラッグの例は、水溶性により移動度が害される細胞膜を越えた伝達を容易にするためにエステル(「プロドラッグ」)として投与されるが、その後、水溶性が有利である細胞内に入れば、活性実体である、カルボン酸に代謝的に加水分解される、化合物である。プロドラッグのさらなる例は、ペプチドが代謝されて活性部分を暴露する酸基に結合した短いペプチド(ポリアミノ酸)でありうる。適切なプロドラッグ誘導体を選択して調製する従来の手順は、例えば、「Design of
Prodrugs,(ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985)」に見出され、その全文を参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0014】
「プロドラッグエステル」という語は、生理的条件下で加水分解される任意のいくつかのエステル形成基を付加することにより形成される本明細書において開示される化合物の誘導体を表す。プロドラッグエステル基の例はpivoyloxymethyl、アセトキシメチル、フタリジル、インダニルおよびメトキシメチル、ならびに(5-R-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチル基を含む、当技術分野において公知の他のそのような基を含む。プロドラッグエステルの他の例は、例えば、「T. Higuchi and V. Stella, in “Pro-drugs as Novel
Delivery Systems”, Vol. 14, A.C.S. Symposium Series, American Chemical Society (1975)」、および「“Bioreversible Carriers in Drug Design: Theory and Application”, edited by E. B. Roche, Pergamon Press: New York, 14-21 (1987)」に見出される(カルボキシル基を含む化合物のプロドラッグとして有用な例を提供する)。上述した参照の各々はその全文を参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0015】
本明細書において記載される化合物の「代謝物」は、化合物を生物学的環境に導入したときに生成される活性化学種を含む。
【0016】
「溶媒和化合物」は、溶媒と本明細書において記載される化合物、代謝物またはそれらの塩が相互作用することにより形成される化合物を表す。適切な溶媒和物は、水和物を含む薬学的に許容しうる溶媒和物である。
【0017】
「薬学的に許容可能な塩」という語は、化合物の生物学的効果および特性を保持し、生
物学的またはその他の意味において医薬品用途に有害でない塩を表す。ほとんどの場合、本明細書において開示された化合物は、アミノ基および/もしくはカルボキシル基またはそれと類似の基の存在によって酸塩および/または塩基塩を形成できる。薬学的に許容可能な酸付加塩は、無機酸および有機酸で生成できる。塩を誘導できる無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。塩を誘導できる有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等が挙げられる。薬学的に許容可能な塩基付加塩を無機塩基および有機塩基を用いて生成できる。塩を誘導できる無機塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム等が挙げられ;特に好ましいのは、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩である。塩を誘導できる有機塩基としては、例えば、第一級、第二級および第三級アミン、天然置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂等、特にイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンおよびエタノールアミンが挙げられる。1987年9月11日に公開されたJohnstonらの国際公開第87/05297号(その全文を参照することにより本明細書に組み入れられる)に記載されているように、多くのこのような塩は当技術分野で公知である。
【0018】
本明細書で使用するとき、「a」と「b」が整数である「Ca~Cb」または「Ca-b」は、特定の基の炭素原子数を表す。すなわち、基は、「a」から「b」を全て含んだ炭素原子を含むことができる。したがって、例えば、「C1~C4アルキル」または「C1-4アルキル」基は、1~4個の炭素を有する全てのアルキル基、すなわち、CH3-、CH3CH2-、CH3CH2CH2-、(CH3)2CH-、CH3CH2CH2CH2-、CH3CH2CH(CH3)-および(CH3)3C-を表す。
【0019】
「ハロゲン」または「ハロ」という語は、本明細書で使用するとき、元素の周期表の列7の放射線安定原子の任意の1つを意味し、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、フッ素と塩素が好ましい。
【0020】
本明細書で使用するとき、「アルキル」は、完全に飽和した(すなわち、二重結合や三重結合を含まない)直鎖または分岐鎖の炭化水素を表す。アルキル基は、1~20個の炭素原子を有してもよい(本明細書で現れるときはいつでも、「1~20」のような数値範囲は与えられた範囲の各整数を表す;本発明の定義は数値範囲が指定されていない用語「アルキル」が出現するときにも及ぶが、例えば「1~20個の炭素原子」は、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子等で20個又はそれ以下の炭素原子から構成されうる)。アルキル基は、また1~9個の炭素原子を有する中級アルキルであってもよい。アルキル基は、また1~4個の炭素原子を有する低級アルキルであることもある。化合物のアルキル基は、「C1-4アルキル」または類似の名称として指定されてもよい。例としてだけだが、「C1-4アルキル」は、アルキル鎖に1~4個の炭素原子があることを指し、すなわち、アルキル鎖は、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルからなる群より選択される。典型的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリ-ブチル、ペンチル、ヘキシルが挙げられるが、決して限定するものではない。
【0021】
本明細書で使用するとき、「アルコキシ」は、式-ORを指し、式中Rは上で定義したようなアルキルであり、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n-ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシおよびtert-ブトキシ等が挙げられるが、限定するものではない、「C1-9アルコキシ」などである。
【0022】
本明細書で使用するとき、「アルキルチオ」は、式-SRを指し、式中Rは上で定義したようなアルキルであり、限定するものではないが、メチルメルカプト、エチルメルカプト、n-プロピルメルカプト、1-メチルエチルメルカプト(イソプロピルメルカプト)、n-ブチルメルカプト、イソ-ブチルメルカプト、sec-ブチルメルカプト、tert-ブチルメルカプト等が挙げられるが、限定するものではない、「C1-9アルキルチオ」などである。
【0023】
本明細書で使用するとき、「アルケニル」は、一つ以上の二重結合を含む直鎖または分岐鎖の炭化水素を表す。本発明の定義は数値範囲が指定されていない用語「アルケニル」が出現するときにも及ぶが、アルケニル基は、2~20個の炭素原子を有してもよい。アルケニル基は、また2~9個の炭素原子を有する中級アルケニルであってもよい。アルケニル基は、また2~4個の炭素原子を有する低級アルケニルであることもある。化合物のアルケニル基は、「C2-4アルケニル」または類似の名称として指定されてもよい。例としてだけだが、「C2-4アルケニル」は、アルケニル鎖に2~4個の炭素原子があることを指し、すなわち、アルケニル鎖は、エテニル、プロペン-1-イル、プロペン-2-イル、プロペン-3-イル、ブテン-1-イル、ブテン-2-イル、ブテン-3-イル、ブテン-4-イル、1-メチル-プロペン-1-イル、2-メチル-プロペン-1-イル、1-エチル-エテン-1-イル、2-メチル-プロペン-3-イル、ブタ-1,3-ジエニル、ブタ-1,2-ジエニルおよびブタ-1,2-ジエン-4-イルからなる群より選択される。典型的なアルケニル基は、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニル等が挙げられるが、決して限定するものではない。
【0024】
本明細書で使用するとき、「アルキニル」は、一つ以上の三重結合を含む直鎖または分岐鎖の炭化水素を表す。本発明の定義は数値範囲が指定されていない用語「アルケニル」が出現するときにも及ぶが、アルキニル基は、また2~20個の炭素原子を有してもよい。アルキニル基は、また2~9個の炭素原子を有する中級アルキニルであってもよい。アルキニル基は、また2~4個の炭素原子を有する低級アルケニルであることもある。化合物のアルキル基は、「C2-4アルキニル」または類似の名称として指定されてもよい。例としてだけだが、「C2-4アルキニル」は、アルキニル鎖に2~4個の炭素原子があることを指し、すなわち、アルキニル鎖は、エチニル、プロピン-1-イル、プロピン-2-イル、ブチン-1-イル、ブチン-3-イル、ブチン-4-イルおよび2-ブチニルからなる群より選択される。典型的なアルキニル基は、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルおよびヘキシニル等が挙げられるが、決して限定するものではない。
【0025】
本明細書で使用するとき、「ヘテロアルキル」は、一つまたは複数のヘテロ原子を含む直鎖または分岐鎖の炭化水素を指し、ヘテロ原子は、すなわち、炭素以外の元素であり、限定するものではないが、窒素、酸素および硫黄を鎖の骨格に含む。本発明の定義は数値範囲が指定されていない用語「ヘテロアルキル」が出現するときにも及ぶが、ヘテロアルキル基は、1~20個の炭素原子を有してもよい。ヘテロアルキル基は、また1~9個の炭素原子を有する中級ヘテロアルキルであってもよい。ヘテロアルキル基は、また1~4個の炭素原子を有する低級ヘテロアルキルであることもある。化合物のヘテロアルキル基は、「C1-4ヘテロアルキル」または類似の名称として指定されてもよい。ヘテロアルキル基は、1つ以上のヘテロ原子を含んでもよい。例としてだけだが、「C1-4ヘテロアルキル」は、ヘテロアルキル鎖に1~4個の炭素原子があり、加えて鎖の骨格に一つ以上のヘテロ原子があることを表す。
【0026】
「芳香族」という語は、共役したパイ電子系を有する環または環系を指し、炭素環芳香族(例えば、フェニル)と複素環芳香族(例えば、ピリジン)の両方を含む。用語は、単環基または環系全体で芳香族性であるならば縮合環多環(すなわち、隣接する一対の原子
を共有する環)基を含む。
【0027】
本明細書で使用するとき、「アリール」は、環の骨格に炭素のみを含む芳香環または芳香環系(2個の隣接する炭素原子を共有する二つまたはそれ以上の縮合環)を表す。アリールが環系のとき、系内の全ての環は芳香族である。本発明の定義は数値範囲が指定されていない用語「アリール」が出現するときにも及ぶが、アリール基は、6~18個の炭素原子を有してもよい。いくつかの実施形態では、アリール基は、6~10個の炭素原子を有する。アリール基は、「C6-10アリール」、「C6~C10アリール」または類似の名称として指定されてもよい。アリール基の例は、フェニル、ナフチル、アズレニルおよびアントラセニルが挙げられるが、限定するものではない。
【0028】
本明細書で使用するとき、「アリールオキシ」または「アリールチオ」は、RO-およびRS-を指し、Rは上で定義したようなアリールであり、例えば「C6-10アリールオキシ」または「C6-10アリールチオ」などであり、フェニルオキシが挙げられるが、限定するものではない。
【0029】
「アラルキル」または「アリールアルキル」は、アルキレン基を介して、置換基として結合したアリール基であり、例えば「C7-14アラルキル」などであり、ベンジル、2-フェニルエチル、3-フェニルプロピルおよびナフチルアルキルが挙げられるが、限定するものではない。いくつかの場合では、アルキレン基は、低級アルキレン基(すなわち、C1-4アルキレン基)である。
【0030】
本明細書で使用するとき、「ヘテロアリール」は、一つ以上のヘテロ原子を含む芳香環または芳香環系(すなわち、2個の隣接する原子を共有する二つまたはそれ以上の縮合環)を指し、ヘテロ原子は、すなわち、炭素以外の元素であり、限定するものではないが、窒素、酸素および硫黄を環骨格に含む。ヘテロアリールが環系であるとき、系内の全ての環は芳香族である。本発明の定義は数値範囲が指定されていない用語「ヘテロアリール」が出現するときにも及ぶが、ヘテロアリール基は、5~18個の環の構成原子(すなわち、環の骨格を構成する原子の数であり、炭素原子とヘテロ原子を含む)を有してもよい。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、5~10個の環の構成原子または5~7個の環の構成原子を有する。ヘテロアリール基は、「5~7員環のヘテロアリール」、「5~10員環のヘテロアリール」または類似の名称として指定されてもよい。ヘテロアリール環の例は、フリル、チエニル、フタラジニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル(isoquinlinyl)、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、イソインドリルおよびベンゾチエニルが挙げられるが、限定するものではない。
【0031】
「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアリールアルキル」は、アルキレン基を介して、置換基として結合したヘテロアリール基である。例は、2-チエニルメチル、3-チエニルメチル、フリルメチル、チエニルエチル、ピロリルアルキル、ピリジルアルキル、イソキサゾリルアルキルおよびイミダゾリルアルキルが挙げられるが、限定するものではない。いくつかの場合では、アルキレン基は、低級アルキレン基(すなわち、C1-4アルキレン基)である。
【0032】
本明細書で使用するとき、「カルボシクリル」は、非芳香族性環状環または骨格に炭素原子のみを含む非芳香族性環状環系を意味する。カルボシクリルが環系であるとき、2個またはそれ以上の環は、縮合、架橋またはスピロ結合の様式で共に結合されてもよい。カルボシクリルは、環系の少なくとも1つの環が芳香族でないならば任意の飽和度を有して
もよい。したがって、カルボシクリルは、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニルを含む。本発明の定義は数値範囲が指定されていない用語「カルボシクリル」が出現するときにも及ぶが、カルボシクリル基は、3~20個の炭素原子を有してもよい。カルボシクリル基は、また3~10個の炭素原子を有する中級カルボシクリルであってもよい。カルボシクリル基は、また3~6個の炭素原子を有するカルボシクリルであることもある。カルボシクリル基は、「C3-6カルボキシル」または類似の名称として指定されてもよい。カルボシクリル環の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2,3-ジヒドロ-インデン、ビシクロ[2.2.2]オクタニル、アダマンチルおよびスピロ[4.4]ノナニルが挙げられるが、限定するものではない。
【0033】
「(カルボシクリル)アルキル」は、アルキレン基を介して、置換基として結合したカルボシクリル基であり、例えば「C4-10(カルボシクリル)アルキル」などであり、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロプロピルエチル、シクロプロピルブチル、シクロブチルエチル、シクロプロピルイソプロピル、シクロペンチルメチル、シクロペンチルエチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロヘプチルメチルが挙げられるが、限定するものではない。いくつかの場合では、アルキレン基は、低級アルキレン基である。
【0034】
本明細書で使用するとき、「シクロアルキル」は、完全に飽和したカルボシクリル環または環系を意味する。例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む。
【0035】
本明細書で使用するとき、「シクロアルケニル」は、少なくとも1つの二重結合を有するカルボキシル環または環系を意味し、環系内の環は芳香族ではない。例は、シクロヘキセニルである。
【0036】
本明細書で使用するとき、「ヘテロシクリル」は、環の骨格に少なくとも1つのヘテロ原子を含む非芳香族環状環または環系を意味する。複数のヘテロシクリルは、縮合、架橋またはスピロ結合の様式で共に結合されてもよい。環系内の少なくとも1つの環が芳香族でないならば、ヘテロシクリルは、任意の飽和度を有してもよい。ヘテロ原子は、環系内の非芳香族環または芳香族環のいずれに存在してもよい。本発明の定義は数値範囲が指定されていない用語「ヘテロシクリル」が出現するときにも及ぶが、ヘテロシクリル基は、3~20個の環の構成原子(すなわち、環の骨格を構成する原子の数であり、炭素原子とヘテロ原子を含む)を有してもよい。ヘテロシクリル基は、また3~10個の環の構成原子を有する中級ヘテロシクリルであってもよい。ヘテロシクリル基は、また3~6個の環の構成原子を有するヘテロシクリルであることもある。ヘテロシクリル基は、「3-6員環のヘテロシクリル」または類似の名称として指定されてもよい。好ましい6員環の単環式ヘテロシクリルでは、ヘテロ原子は、O、NまたはSの1個から3個までから選択され、好ましい5員環の単環式ヘテロシクリルでは、ヘテロ原子は、O、NまたはSから選択される1個または2個のヘテロ原子から選択される。ヘテロシクリル環の例は、アゼピニル、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジオキソラニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、モルフォリニル、オキシラニル、オキセパニル、チエパニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ジオキソピペラジニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピロリジオニル、4-ピペリドニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、1,3-ジオキシニル、1,3-ジオキサニル、1,4-ジオキシニル、1,4-ジオキサニル、1,3-オキサチアニル、1,4-オキサチイニル、1,4-オキサチアニル、2H-1,2-オキサジニル、トリオキサニル、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジニル、1,3-ジオキソリル、1,3-ジオキソラニル、1,3-ジチオリル、1,3-ジチオラニル、イソキサゾリニル、イソキサゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、オキサゾリジノニル、チ
アゾリニル、チアゾリジニル、1,3-オキサチオラニル、インドリニル、イソインドリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロ-1,4-チアジニル、チアモルフォリニル、ジヒドロベンゾフラニル、ベンズイミダゾリジニルおよびテトラヒドロキノリンが挙げられるが、限定するものではない。
【0037】
「(ヘテロシクリル)アルキル」は、アルキレン基を介して、置換基として結合したヘテロシクリル基である。例は、イミダゾリニルメチルおよびインドリニルエチルが挙げられるが、限定するものではない。
【0038】
本明細書で使用するとき、「アシル」は、-C(=O)Rを指し、Rは、本明細書で定義したような、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、アリール、5~10員環のヘテロアリールおよび5~10員環のヘテロシクリルである。非限定的な例は、ホルミル、アセチル、プロパノイル、ベンゾイルおよびアクリルを含む。
【0039】
「O-カルボキシ」基は、「-OC(=O)R」基を指し、その中でRは、本明細書で定義したような、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、アリール、5~10員環のヘテロアリールおよび5~10員環のヘテロシクリルから選択される。
【0040】
「C-カルボキシ」基は、「-C(=O)OR」基を指し、その中でRは、本明細書で定義したような、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、アリール、5~10員環のヘテロアリールおよび5~10員環のヘテロシクリルから選択される。非限定的な例は、カルボキシル(すなわち、-C(=O)OH)を含む。
【0041】
「シアノ」基は、「-CN」基を表す。
【0042】
「シアナト」基は、「-OCN」基を表す。
【0043】
「イソシアナト」基は、「-NCO」基を表す。
【0044】
「チオシアナト」基は、「-SCN」基を表す。
【0045】
「イソチオシアナト」基は、「-NCS」基を表す。
【0046】
「スルフィニル」基は、「-S(=O)R」基を指し、その中でRは、本明細書で定義したような、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員環のヘテロアリールおよび5~10員環のヘテロシクリルから選択される。
【0047】
「スルホニル」基は、「-SO2R」基を指し、その中でRは、本明細書で定義したような、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員環のヘテロアリールおよび5~10員環のヘテロシクリルから選択される。
【0048】
「S-スルホンアミド」基は、「-SO2NRARB」基を指し、その中でRAおよびRBは、本明細書で定義したような、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員環のヘテ
ロアリールおよび5~10員環のヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される。
【0049】
「N-スルホンアミド」基は、「-N(RA)SO2RB」基を指し、その中でRAおよびRBは、本明細書で定義したような、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員環のヘテロアリールおよび5~10員環のヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される。
【0050】
「O-カルバミル」基は、「-OC(=O)NRARB」基を指し、その中でRAおよびRBは、本明細書で定義したような、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員環のヘテロアリールおよび5~10員環のヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される。
【0051】
「N-カルバミル」基は、「-N(RA)OC(=O)RB」基を指し、その中でRAおよびRBは、本明細書で定義したような、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員環のヘテロアリールおよび5~10員環のヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される。
【0052】
「O-チオカルバミル」基は、「-OC(=S)NRARB」基を指し、その中でRAおよびRBは、本明細書で定義したような、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員環のヘテロアリールおよび5~10員環のヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される。
【0053】
「N-チオカルバミル」基は、「-N(RA)OC(=S)RB」を指し、その中でRAおよびRBは、本明細書で定義したような、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員環のヘテロアリールおよび5~10員環のヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される。
【0054】
「C-アミド」基は、「-C(=O)NRARB」基を指し、その中でRAおよびRBは、本明細書で定義したような、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員環のヘテロアリールおよび5~10員環のヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される。
【0055】
「N-アミド」基は、「-N(RA)C(=O)RB」基を指し、その中でRAおよびRBは、本明細書で定義したような、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員環のヘテロアリールおよび5~10員環のヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される。
【0056】
「アミノ」基は、「-NRARB」基を指し、その中でRAおよびRBは、本明細書で定義したような、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7カルボシクリル、C6-10アリール、5~10員環のヘテロアリールおよび5~10員環のヘテロシクリルからそれぞれ独立して選択される。
【0057】
「アミノアルキル」基は、アルキレン基を介して結合したアミノ基を表す。
【0058】
「アルコキシアルキル」基は、「C2-8アルコキシアルキル」等の、アルキレン基を介して結合したアルコキシ基を表す。
【0059】
本明細書で使用するとき、置換基は、一つ以上の水素原子が他の原子または基に交換されている非置換親基から導出される。特に指示しない限り、基が「置換されている」とみなされるとき、基は、C1-C6アルキル、C1-C6アルケニル、C1-C6アルキニル、C1-C6ヘテロアルキル、C3-C7カルボシクリル(任意にハロ、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6ハロアルキルおよびC1-C6ハロアルコキシで置換される)、C3-C7-カルボシクリル-C1-C6-アルキル(任意にハロ、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6ハロアルキルおよびC1-C6ハロアルコキシで置換される)、5-10員環のヘテロシクリル(任意にハロ、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6ハロアルキルおよびC1-C6ハロアルコキシで置換される)、5-10員環のヘテロシクリル-C1-C6-アルキル(任意にハロ、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6ハロアルキルおよびC1-C6ハロアルコキシで置換される)、アリール(任意にハロ、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6ハロアルキルおよびC1-C6ハロアルコキシで置換される)、アリール(C1-C6)アルキル(任意にハロ、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6ハロアルキルおよびC1-C6ハロアルコキシで置換される)、5-10員環のヘテロアリール(任意にハロ、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6ハロアルキルおよびC1-C6ハロアルコキシで置換される)、5-10員環のヘテロアリール(C1-C6)アルキル(任意にハロ、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6ハロアルキルおよびC1-C6ハロアルコキシで置換される)、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルコキシ(C1-C6)アルキル(すなわち、エーテル)、アリールオキシ、スルフヒドリル(メルカプト)、ハロ(C1-C6)アルキル(例えば、-CF3)、ハロ(C1-C6)アルコキシ(例えば、-OCF3)、C1-C6アルキルチオ、アリールチオ、アミノ、アミノ(C1-C6)アルキル、ニトロ、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、S-スルホンアミド、N-スルホンアミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、アシル、シアナト、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、スルフィニル、スルホニルおよびオキソ(=O)から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されていることを意味する。基が「任意に置換される」と記載されている場合はいつでも、その基は上述した置換基で置換されることができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、置換基(複数も含む)は、C1-C4アルキル、アミノ、ヒドロキシおよびハロゲンから個別に独立して選択される1つ以上の置換基で置換される。
【0061】
特定のラジカル命名規則は、文脈に応じて、モノ-ラジカルまたはジ-ラジカルのいずれかを含むことができることを理解されたい。例えば、置換基が分子の残りに2つの場所で接続する必要がある場合、その置換基はジ-ラジカルであると理解される。例えば、2つの場所で接続する必要があるアルキルとして識別される置換基は、-CH2-、-CH2CH2-,-CH2CH(CH3)CH2-等のジ-ラジカルを含む。他のラジカル命名規則は、ラジカルは「アルキレン」または「アルケニレン」等のジ-ラジカルであると明確に示す。
【0062】
本明細書で使用するとき、「アルキレン」は、2つの場所で接続することにより分子の残りに接続した炭素と水素のみを含む、分岐鎖、または直鎖の完全に飽和したジーラジカル化学基を意味する(すなわち、アルカンジイル)。本発明の定義は数値範囲が指定されていない用語「アルキレン」が出現するときにも及ぶが、アルキレン基は、1~20個の炭素原子を有してもよい。アルキレン基は、また1~9個の炭素原子を有する中級アルキレンであってもよい。アルキレン基は、また1~4個の炭素原子を有する低級アルキレンであることもある。アルキレン基は、「C1-4アルキレン」または類似の名称として指定されてもよい。例としてだけだが、「C1-4アルキレン」は、アルキレン鎖に1~4
個の炭素原子があることを指し、すなわち、アルキレン鎖は、メチレン、エチレン、エタン-1,1-ジイル、プロピレン、プロパン-1,1-ジイル、プロパン-2,2-ジイル、1-メチルエチレン、ブチレン、ブタン-1,1-ジイル、ブタン-2,2-ジイル、2-メチル-プロパン-1,1-ジイル、1-メチル-プロピレン、2-メチル-プロピレン、1,1-ジメチル-エチレン、1,2-ジメチル-エチレンおよび1-エチル-エチレンからなる群より選択される。
【0063】
本明細書で使用するとき、「アルケニレン」は、2つの場所で接続することにより分子の残りに接続した炭素と水素のみを含み、さらに少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む、直鎖の、または分岐鎖のジ-ラジカル化学基を意味する。本発明の定義は数値範囲が指定されていない用語「アルケニレン」が出現するときにも及ぶが、アルキレン基は、2~20個の炭素原子を有してもよい。アルケニレン基は、また2~9個の炭素原子を有する中級アルケニレンであってもよい。アルケニレン基は、また2~4個の炭素原子を有する低級アルケニレンであることもある。アルケニレン基は、「C2-4アルケニレン」または類似の名称として指定されてもよい。例としてだけだが、「C2-4アルケニレン」は、アルケニレン鎖に2~4個の炭素原子があることを指し、すなわち、アルケニレン鎖は、エテニレン、エテン-1,1-ジイル、プロペニレン、プロペン-1,1-ジイル、プロパ-2-エン-1,1-ジイル、1-メチル-エテニレン、ブタ-1-エニレン、ブタ-2-エニレン、ブタ-1,3-ジエニレン、ブテン-1,1-ジイル、ブタ-1,3-ジエン-1,1-ジイル、ブタ-2-エン-1,1-ジイル、ブタ-3-エン-1,1-ジイル、1-メチル-プロパ-2-エン-1,1-ジイル、2-メチル-プロパ-2-エン-1,1-ジイル、1-エチル-エテニレン、1,2-ジメチル-エテニレン、1-メチル-プロペニレン、2-メチル-プロペニレン、3-メチル-プロペニレン、2-メチル-プロペン-1,1-ジイルおよび2,2-ジメチル-エテン-1,1-ジイルからなる群より選択される。
【0064】
「剤」または「試験剤」という語は、任意の物質、分子、元素、化合物、実体またはそれらの組合せを含む。それは、限定するものではないが、例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたは模倣物、有機小分子、多糖類、ポリヌクレオチド等を含む。それは天然物、合成化合物もしくは化学物質、または2つ以上の物質の組合せであってもよい。特に特定しない限り、用語「剤」、「物質」および「化合物」は、本明細書において区別しないで使用される。
【0065】
「類似体」または「誘導体」という語は、本明細書において参照分子に構造的に似ているが、参照分子の特定の置換基を代わりの置換基と置換することにより、標的を絞って制御された方法で修飾されている分子を表す。参照分子と比較して、類似体は、当業者によって、同一の、類似するまたは改善された有用性を示すことを予測されるであろう。特性(標的分子に対する高い結合親和性など)が改善された既知の化合物の変異体を同定するために、類似体を合成してスクリーニングすることは、製薬化学において周知のアプローチである。
【0066】
「哺乳類」という語は、その通常の生物学上の意味で使用される。従って、詳細には、サル(チンパンジー、類人猿、サル)を含む霊長類およびヒト、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス等を含むが、これに限定されず、他の多くの種も含む。
【0067】
「薬学的に許容可能な担体」または「薬学的に許容可能な賦形剤」という語は、いずれかおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を包含する。医薬作用物質のためのこのような媒体および剤の使用は当技術分野で周知である。従来の媒体または剤が有効成分と相溶性がない場合を除き、治療組成物で
の使用が期待される。加えて、当技術分野で共通に使用されるような様々なアジュバントを含有してもよい。医薬組成物中への様々な成分の含有についての考察は、例えば、Gilman et al. (Eds.) (1990); Goodman and Gilman’s: The Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th Ed., Pergamon Pressに記載され、その全文を参照することにより本明細書に組み入れる。薬学的に許容可能な賦形剤は、単糖または単糖誘導体であり得る。
【0068】
本明細書で使用するとき、「対象」は、ヒトまたは非ヒト哺乳類、例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、雌ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、非ヒト霊長類または鳥類、例えば、ニワトリ、ならびにその他の脊椎動物または無脊椎動物を意味する。
【0069】
本明細書で使用するとき、「効果量」または「治療効果量」は、疾病もしくは病状の1つ以上の徴候をある程度軽減する、またはその発症の可能性を減らす効果がある治療薬の量を表し、疾患もしくは病状を治癒することを含む。「治癒」は、疾病もしくは病状の徴候を除去することを意味する、しかしながら、治癒した後に特定の長期間または持続的な効果(広範囲な組織障害)が存在しうる。
【0070】
本明細書で使用するとき、「治療する」、「治療」、または「治療すること」は、予防および/または治療目的のために医薬組成物を投与することを表す。用語「予防的治療」は、疾病もしくは病状の徴候をまだ示していないが特定の疾病もしくは病状に罹患し易い、さもなければそのリスクがある対象を治療して、それにより、治療が、患者が該疾病もしくは病状にかかる可能性を減らすことを表す。用語「治療処置」は、既に疾病または病状に罹患している対象への投与治療を表す。
【0071】
化合物とファルマコフォア
微小管は、非共有結合で結合したα-とβ-チューブリンヘテロダイマーにより形成されるポリマーであり、細胞形状の維持、細胞内輸送、極性、細胞シグナリングおよび有糸分裂等の各種細胞機能において重要な役割を有する細胞骨格の主要成分である。プリナブリンなどの、チューブリン脱重合活性を有する化合物は、有効な抗腫瘍/抗がん剤として認識された。チューブリン脱重合の効果により、血液の供給がなくなり結果として腫瘍を縮小させることができる。本明細書に記載の化合物は、チューブリンに結合して、チューブリン脱重合を生じることができ、したがってがんおよび腫瘍を有効に治療するために使用することができる。
【0072】
ヒトβ-チューブリンは、TUBB1、TUBB2a、TUBB2b、TUBB3、TUBB4a、TUBB4b、TUBB5(TUBB)、TUBB6、TUBB8を含む、9種類のアイソフォームを有することができる。ヒトβ-チューブリンTUBB1、TUBB3およびTUBB6は、プリナブリン結合にきわめて近接してセリン残基を含み、一方TUBB2A、TUBB2B、TUBB4A、TUBB4BおよびTUBB5は、システイン残基を含む。セリンをシステインアミノ酸残基で置換すると、スルフィド結合残基の有無により結合親和性に差が生じる。いくつかの実施形態では、ヒトβ-チューブリンは、241位にシステインを有するチューブリンアイソフォームであることができる。いくつかの実施形態では、ヒトβ-チューブリンは、TUBB2a、TUBB2b、TUBB4a、TUBB4bまたはTUBB5アイソフォームであることができる。いくつかの実施形態では、ヒトβ-チューブリンは、241位にセリンを有する。いくつかの実施形態では、ヒトβ-チューブリンは、TUBB1、TUBB3またはTUBB6アイソフォームである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、チューブリンアイソフォーム(例えば、TUBB1、TUBB3またはTUBB6など)により強く結合することができ、C241は、S241で置換されている。
【0073】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、LC部分またはLD部分の1つのみを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、LC部分と LD部分の両方を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、第1のチューブリン残基の少なくとも1つの原子とLA部分のアリールまたはヘテロアリールの少なくとも1つの原子との間の距離は、4Åより小さい。いくつかの実施形態では、第1のチューブリン残基の少なくとも1つの原子とLA部分のアリールまたはヘテロアリールの少なくとも1つの原子との間の距離は、3Åより小さい。
【0075】
いくつかの実施形態では、第2のチューブリン残基の少なくとも1つの原子とLB部分のアリールまたはヘテロアリールの少なくとも1つの原子との間の距離は、4Åより小さい。いくつかの実施形態では、第2のチューブリン残基の少なくとも1つの原子とLB部分のアリールまたはヘテロアリールの少なくとも1つの原子との間の距離は、3Åより小さい
【0076】
いくつかの実施形態では、第3のチューブリン残基の少なくとも1つの原子とLC部分の水素結合原子の少なくとも1つの原子との間の距離は、4Åより小さい。いくつかの実施形態では、第3のチューブリン残基の少なくとも1つの原子とLC部分の水素結合原子の少なくとも1つの原子との間の距離は、3Åより小さい。
【0077】
いくつかの実施形態では、第3のチューブリン残基の少なくとも1つの原子とLD部分の水素結合原子の少なくとも1つの原子との間の距離は、4Åより小さい。いくつかの実施形態では、第3のチューブリン残基の少なくとも1つの原子とLD部分の水素結合原子の少なくとも1つの原子との間の距離は、3Åより小さい。
【0078】
第5のチューブリン残基の少なくとも1つの原子とLE部分の少なくとも1つの原子との間の距離は、4Åより小さい、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。第5のチューブリン残基の少なくとも1つの原子とLE部分の少なくとも1つの原子との間の距離は、3Åより小さい、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【0079】
いくつかの実施形態では、LA部分の少なくとも1つの原子は、βN167、βQ136およびβE200から選択される一つ以上のチューブリン残基の少なくとも1つの原子から4Å内に配置される。いくつかの実施形態では、LB部分の少なくとも1つの原子は、βN258とβK352から選択される一つ以上のチューブリン残基の少なくとも1つの原子から4Å内に配置される。いくつかの実施形態では、LC部分の少なくとも1つの原子は、βI318、βL255、βL242、βM259、βF268、βA316およびβI378から選択される一つ以上のチューブリン残基の少なくとも1つの原子から4Å内に配置される。いくつかの実施形態では、LD部分の少なくとも1つの原子は、βI318、βL255、βL242、βM259、βF268、βA316およびβI378から選択される一つ以上のチューブリン残基の少なくとも1つの原子から4Å内に配置される。いくつかの実施形態では、LE部分の少なくとも1つの原子は、βS241、βI376、βT239およびβK352から選択される一つ以上のチューブリン残基の少なくとも1つの原子から4Å内に配置される。
【0080】
いくつかの実施形態では、LAの部分と第1の残基との間の相互作用は、π結合相互作用である。いくつかの実施形態では、LBの部分と第2の残基との間の相互作用は、π結合相互作用である。
【0081】
いくつかの実施形態では、LEは、任意に置換された-C1-C6アルキル、ハロゲン化C1-C6アルキル、C3-10カルボシクリル、3~10員環のヘテロシクリル、-O-C1-C6アルキル、-O-ハロゲン化C1-C6アルキル、-C1-C6アルキル-O-C1-C6アルキル、-C(O)H、-CO-C1-C6アルキルまたはシアノを含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、表1の化合物A-1~A-51から選択される構造を有することができる。いくつかの実施形態では、化合物は、L
A、L
B、L
C、L
DおよびL
E部分を含む。いくつかの実施形態では、表1の化合物は、L
A、L
B、L
C、L
DおよびL
E部分を含む。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、表2の化合物B-1~B-293から選択される構造を有することができる。いくつかの実施形態では、列挙された化合物は、L
A、L
B、L
CおよびL
E部分を含むが、L
C部分を含まない。いくつかの実施形態では、化合物は、L
A、L
B、L
DおよびL
E部分を含むが、L
D部分を含まない。いくつかの実施形態では、表2の化合物は、L
A、L
B、L
EおよびL
CとL
Eの1つのみの部分を含む。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
【表2-14】
【表2-15】
【表2-16】
【表2-17】
【表2-18】
【表2-19】
【表2-20】
【表2-21】
【表2-22】
【表2-23】
【表2-24】
【表2-25】
【表2-26】
【表2-27】
【表2-28】
【表2-29】
【表2-30】
【表2-31】
【表2-32】
【表2-33】
【表2-34】
【表2-35】
【表2-36】
【表2-37】
【表2-38】
【表2-39】
【表2-40】
【表2-41】
【表2-42】
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、表3のC-1からC-9の化合物から選択される構造を有することができる。いくつかの実施形態では、化合物は、L
A、L
B、L
C、およびL
D部分を含むが、L
E部分は含まない。いくつかの実施形態では
、表3の化合物は、L
A、L
B、L
C、およびL
D部分は含むが、L
E部分は含まない。
【表3-1】
【表3-2】
【0085】
いくつかの実施形態は、LC、LD、LFまたはLGから選択される少なくとも3個の部分を含む、化合物またはその薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、エステルに関し、
LCは、チューブリンβE200の酸素原子と水素結合するよう構成された部分であり、その酸素原子とそのLC部分のその水素結合原子との間の距離は、4Åより小さく、
LDは、チューブリンβV238の酸素原子と水素結合するよう構成された部分であり、そのチューブリンβV238の側鎖とそのLD部分のその水素結合原子との間の距離は、4Åより小さく、
LFは、チューブリンαT179の酸素原子と水素結合するよう構成された部分であり、そのチューブリンαT179アミドのその酸素とLFのその水素結合原子との間の距離は、8Åより小さく、
LGは、チューブリンβG237の酸素原子と水素結合するよう構成された部分であり、そのチューブリンβG237のその酸素とLGのその水素結合原子との間の距離は、8Åより小さい。
【0086】
いくつかの実施形態は、L
C、L
D、L
FまたはL
Gから選択される少なくとも3個の部分を含む、化合物またはその薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、エステルに関し、
L
Cは、チューブリンβE200の酸素原子と水素結合するよう構成された部分であり、その酸素原子とそのL
C部分のその水素結合原子との間の距離は、4Åより小さく、
L
Dは、チューブリンβV238の側鎖と水素結合するよう構成された部分であり、そのチューブリンβV238の側鎖とそのL
D部分のその水素結合原子との間の距離は、4Åより小さく、
L
Fは、水分子と水素結合するよう構成された部分であり、その水分子は次にチューブリンαT179の酸素原子と水素結合し、そのチューブリンαT179アミドのその酸素とL
Fのその水素結合原子との間の距離は、8Åより小さく、好ましくは4Åより小さく、
L
Gは、水分子と水素結合するよう構成された部分であり、その水分子は次にチューブリンβG237の酸素原子と水素結合し、そのチューブリンβG237のその酸素とL
Gのその水素結合原子との間の距離は、8Åより小さく、好ましくは4Åより小さい。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、式(I)
【化1】
の構造を含み、
式中、
L
Aは、任意に置換されたC
5-10アリールまたは任意に置換された5~10員環のヘテロアリールであり、
X
1は、C、O、NおよびSから選択される1つ以上の鎖原子を有する有機スペーサーであり、前記鎖の3個以上の隣接原子は、任意に置換されたC
5-10アリールまたは任意に置換された5~10員環のヘテロアリールを任意に形成するか、A
1上に前記原子を有する4~10員環のヘテロシクリル環を形成し、
X
2は、欠けているかまたはC、O、NおよびSから選択される1~4個の鎖原子を含む有機リンカーであり、
L
Bは、置換されたC
5-10アリールまたは置換された5~10員環のヘテロアリールである。
【0087】
いくつかの実施形態では、LAは、任意に置換されたC5-10アリールまたはピリミジン、ピロリジン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリノ、ヘキサヒドロアゼピン、シクロヘキセン、ピペリジノ、テトラヒドロキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ジヒドロ
ピロール、フェニル、ナチフル、フラン、ピロール、チオフェン、オキサゾール、イソキサゾール、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、およびベンゾオキサゾールからなる群より選択される任意に置換された5~10員環のヘテロアリールである。
【0088】
いくつかの実施形態では、LBは、任意に置換されたC5-10アリールまたはピリミジン、ピロリジン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリノ、ヘキサヒドロアゼピン、シクロヘキセン、ピペリジノ、テトラヒドロキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ジヒドロピロール、フェニル、ナチフル、フラン、ピロール、チオフェン、オキサゾール、イソキサゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、イソインドリン、1、3-ジヒドロイソベンゾフランおよびベンゾオキサゾールからなる群より選択される任意に置換された5~10員環のヘテロアリールである
【0089】
いくつかの実施形態では、LAとLBの少なくとも1つは、-C1-C6アルキル、-C2-C6アルケニル、-C2-C6アルキニル、C1-C6ヘテロアルキル、C6-C10アリール、5~10員環のヘテロアリール、ハロゲン化C1-C6アルキル、C3-10カルボシクリル、3-10員環のヘテロシクリル、-O-C1-C6アルキル、-O-ハロゲン化C1-C6アルキル、-C1-C6アルキル-O-C1-C6アルキル、-S-C1-C6アルキル、アミノ、-C1-C6アルキレン-アミノ、-C(O)H、-CO-C1-C6アルキル、-C(O)-アミノ、-S(O)2-アミノ、-COO-C1-C6アルキル、-C1-C6アルキレン-アミド、-N(C1-C6アルキル)(CO-C1-C6アルキル)、-NH(CO-C1-C6アルキル)、ヒドロキシ、シアノ、アジド、ニトロ、-CH2CH(CH3)2OCH2-、-OCH2O-、-O(CH2)2O-、およびハロゲンからなる群より選択される1つ以上の置換基で任意に置換される。
【0090】
いくつかの実施形態では、LAとLBの少なくとも1つは、1つ以上の置換基で任意に置換され、その1つ以上の置換基は、LAまたはLBの原子と共にC3-10シクロアルキル環または3~10員環のヘテロシクリル環を形成する。
【0091】
いくつかの実施形態では、X1は、分子量が250g/mol未満である環状または非環状リンカーである。
【0092】
いくつかの実施形態では、X1は、-C(O)-NH-、-C1-6アルキレン、-S-、-O-、-(CH2)0-6-NH-、-CH(OH)-、-C(CN)=CH-、-CH=N-、任意に置換されたフェニレン、任意に置換された4~10員環のヘテロシクリレン、および任意に置換された5~10員環のヘテロアリーレンからなる群より選択される1つまたは複数のフラグメントを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、X2は、-C(O)-NH-、-C1-6アルキレン、-S-、-O-、-(CH2)0-6-NH-、-CH(OH)-、-C(CN)=CH-および-CH=N-からなる群より選択される1つ以上のフラグメントを含み、X2には10g/mol~約250g/molの分子量がある。
【0094】
本明細書に記載の化合物には、微小管脱重合活性があり、有効な化学療法剤となることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、S6のβE200およびH7のβV238と水素結合を形成し、またH7のβG237およびT5のαT179と水分子を介して相互作用して、チューブリンのより深い位置に存在することができる。
【0095】
コルヒチンドメインは、βサブユニットの2個のα-ヘリックス(H7およびH8)および2個のチューブリンβ-シート(S1-S4-S5-S6およびS7-S10-S8-S9)に囲まれたビッグポケットであり、2個のループ(βT7およびαT5)によりキャップされている。いくつかの実施形態では、βS7は、そのN-末端およびC-末端によりβS6およびβS10の両方と、それぞれ対になり、したがってその2個のβ-シートを1個のスーパーβ-シートに架橋する。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、2個または3個の疎水性部分と少なくとも2個の水素結合部分LCおよびLF(水素結合のアクセプターかドナーのいずれかである)を含むファルマコフォアを包含する。いくつかの実施形態では、化合物は、コルヒチンドメインの疎水性コアに適合する大きな疎水性基を含む。いくつかの実施形態では、コルヒチンドメインの2個の拡張疎水性ポケットは、2個の他の疎水性部分を収容する。1つは、βチューブリン内に深く埋まり、他の1つは、α/βチューブリンヘテロダイマーの界面に位置する。いくつかの実施形態では、親水性基(例えば、LCおよびLF)は、チューブリンと水素結合を形成してもよい。いくつかの実施形態では、ファルマコフォアは、チューブリンと水素結合を形成しうる2個のさらなる水素結合部分LDおよびLGを包含することができる。
【0097】
本明細書に記載の化合物は、βチューブリンに結合してもよく、βチューブリンのアイソタイプは、異なる細胞型では分布が変動し、化学療法剤に対する細胞感受性を調節する。癌細胞は、チューブリンアイソタイプの発現に差異を示しうる。チューブリンを標的とする本明細書に記載の化合物は、異なる細胞型の間で区別しうる、したがって、現在の化学療法的治療に関連する望ましくない副作用を減少しうる。
【0098】
微小管によるアクチン細胞骨格の調節は、RhoファミリーGTPアーゼにより媒介される。Rhoグアニンヌクレオチド交換因子(GEF-H1)は、微小管との相互作用により調節される。微小管との結合が欠損しているGEF-H1変異体は、微小管が結合した型よりも活性レベルが高い。これらの変異体は、また細胞形態やアクチン構成にRho-依存性変化を誘導する。さらに、薬剤が誘導する微小管脱重合は、GEF-H1の活性型の発現によって誘導される変化と類似する細胞形態と遺伝子発現の変化を誘導する。その上、これらの効果は、ドミナント-ネガティブバージョンのGEF-H1によって抑制されうる。したがって、GEF-H1が連結するとアクチン細胞骨格のRho-依存性調節に対する微小管の完全性を変化させうる。
【0099】
GEF-H1は、Dblファミリーのタンパク質のメンバーである微小管関連のヌクレオチド交換因子である。GEF-H1のN-またはC-末端部は、微小管および/またはMAPとの相互作用に関与しうる。N-またはC-末端のタンパク質ドメインの組合せは、微小管との結合に必要でありうる。いくつかの実施形態では、ジンクフィンガードメインは、GEF-H1と微小管との相互作用に関与しうる。いくつかの実施形態では、PHドメインは、GEF-H1と微小管との相互作用に関与しうる。
【0100】
いくつかの実施形態では、GEF-H1は、微小管またはチューブリンと結合するとき、不活性で、本来の不安定性の結果としてまたは微小管-脱重合薬剤を用いた治療後に、微小管またはチューブリンが脱重合するとき、活性化される。活性化されたGEF-H1は、GTPがRhoに結合するのを促進し、その結果Rhoが活性化され、次にミオシンIIの収縮性、ストレスファイバーアセンブリおよびSRE調節遺伝子発現の上方制御を誘導する。
【0101】
微小管結合が欠損したGEF-H1構築物の発現は、細胞退縮およびアクチンストレス
ファイバーの形成を含む、細胞形態に変化を誘導する。これは、構成的活性型のRhoAによって誘導される変化を暗示しうる。非微小管誘導GEF-H1の発現は、RhoAの活性化を生じうる。GEF-H1は、GEF-H1構築物が発現している細胞内で、RacまたはCdc4ではなく、RhoAのヌクレオチド交換を促進できる。GEF-H1は、Rhoのヌクレオチド交換因子であり、GEF-H1のマウスホモログである、Lfcもまた、Rho25に特異的であるという知見と良く一致する。細胞形態と遺伝子発現でのGEF-H1の効果は、RacまたはCdc42でなく、Rhoによって仲介される。
【0102】
微小管脱重合は、遊離の、活性型のGEF-H1の量を増加することによりRhoを活性化することができ、一方、微小管アセンブリは、GEF-H1を捕捉して不活性化することによりRhoを下方制御する。遊走細胞では、微小管脱重合は、細胞体でRhoを局所的に活性化し、結果としてミオシンII活性が高まり、したがって自発運動中のテールの退縮を促進する。最先端近くの微小管の成長が進むと、細胞前部でのRhoの活性が低下し、ミオシンの収縮力によって妨害されることなく最先端の伸長が進行する。本明細書に記載の化合物に起因した微小管脱重合によりGEF-H1が不活性化されることは、細胞増殖性障害や本明細書に記載の他の種類の疾患または障害を治療するのに有用でありうる。
【0103】
いくつかの実施形態では、チューブリンβE200酸素原子とLC部分の水素結合原子との間の距離は、約2Å、2.5Å、2.8Å、3Å、3.2Å、3.5Å、4Å、5Å、6Å、7Å、8Å、9Åまたは10Å未満である。いくつかの実施形態では、チューブリンβE200酸素原子とLC部分の水素結合原子との間の距離は、約0.5Å、1Å、1.25Å、1.5Å、1.8Å、2Å、2.5Å、2.8Å、3Å、3.2Å、3.5Å、4Å、5Åまたは6Åより大きい。いくつかの実施形態では、チューブリンβE200酸素原子とLC部分の水素結合原子との間の距離は、約2Å、2.1Å、2.2Å、2.3Å、2.4Å、2.5Å、2.6Å、2.7Å、2.8Å、2.9Å、3Å、3.2Å、3.5Å、4Å、5Å、6Åまたは7Åである。いくつかの実施形態では、チューブリンβE200酸素原子とLC部分の水素結合原子との間の距離は、約0.5~10Å、0.5~9Å、0.5~8Å、0.5~7Å、0.5~6Å、0.5~5Å、0.5~4Å、0.5~3Å、0.5~2.8Å、0.5~2.5Å、0.5~2Å、1~10Å、1~9Å、1~8Å、1~7Å、1~6Å、1~5Å、1~4Å、1~3Å、1~2.8Å、1~2.5Å、1~2Å、1.5~10Å、1.5~9Å、1.5~8Å、1.5~7Å、1.5~6Å、1.5~5Å、1.5~4Å、1.5~3Å、1.5~2.8Å、1.5~2.5Å、1.5~2Å、2~10Å、2~9Å、2~8Å、2~7Å、2~6Å、2~5Å、2~4Å、2~3Å、2~2.8Å、2~2.5Å、2.5~10Å、2.5~9Å、2.5~8Å、2.5~7Å、2.5~6Å、2.5~5Å、2.5-4Å、2.5~3Åまたは2.5~2.8Åである。いくつかの実施形態では、チューブリンβE200酸素原子は、グルタミン酸側鎖のカルボキシル基の酸素である。
【0104】
いくつかの実施形態では、チューブリンβV238酸素とLD部分の水素結合原子との間の距離は、約2Å、2.5Å、2.8Å、3Å、3.2Å、3.5Å、4Å、5Å、6Å、7Å、8Å、9Åまたは10Å未満である。いくつかの実施形態では、チューブリンβV238酸素とLD部分の水素結合原子との間の距離は、約0.5Å、1Å、1.25Å、1.5Å、1.8Å、2Å、2.5Å、2.9Å、3Å、3.2Å、3.5Å、4Å、5Åまたは6Åより大きい。いくつかの実施形態では、チューブリンβV238酸素とLD部分の水素結合原子との間の距離は、約2Å、2.1Å、2.2Å、2.3Å、2.4Å、2.5Å、2.6Å、2.7Å、2.8Å、2.9Å、3Å、3.2Å、3.5Å、4Å、5Å、6Åまたは7Åである。いくつかの実施形態では、チューブリンβV238酸素とLD部分の水素結合原子との間の距離は、約0.5~10Å、0.5~9Å、0.5~8Å、0.5~7Å、0.5~6Å、0.5~5Å、0.5~4Å、0.5~3Å
、0.5~2.9Å、0.5~2.5Å、0.5~2Å、1~10Å、1~9Å、1~8Å、1~7Å、1~6Å、1~5Å、1~4Å、1~3Å、1~2.9Å、1~2.5Å、1~2Å、1.5~10Å、1.5~9Å、1.5~8Å、1.5~7Å、1.5~6Å、1.5~5Å、1.5~4Å、1.5~3Å、1.5~2.9Å、1.5~2.5Å、1.5~2Å、2~10Å、2~9Å、2~8Å、2~7Å、2~6Å、2~5Å、2~4Å、2~3Å、2~2.9Å、2~2.5Å、2.5~10Å、2.5~9Å、2.5~8Å、2.5~7Å、2.5~6Å、2.5~5Å、2.5~4Å、2.5~3Åまたは2.5~2.9Åである。いくつかの実施形態では、チューブリンβV238酸素原子は、アミド基の酸素原子である。いくつかの実施形態では、アミド基は、ペプチド骨格の一部である。
【0105】
いくつかの実施形態では、チューブリンαT179の酸素とLFの水素結合原子との間の距離は、8Å未満である。いくつかの実施形態では、チューブリンαT179の酸素とLFの水素結合原子との間の距離は、約2Å、2.5Å、2.8Å、3Å、3.2Å、3.5Å、3.8Å、4Å、4.2Å、4.5Å、4.8Å、5Å、5.2Å、5.5Å、5.8Å、6Å、6.2Å、6.5Å、6.8Å、7Å、8Å、9Åまたは10Å未満である。いくつかの実施形態では、チューブリンαT179の酸素とLFの水素結合原子との間の距離は、約0.5Å、1Å、1.25Å、1.5Å、1.8Å、2Å、2.5Å、2.9Å、3Å、3.2Å、3.5Å、4Å、5Åまたは6Åより大きい。いくつかの実施形態では、チューブリンαT179の酸素とLFの水素結合原子との間の距離は、約0.5~10Å、0.5~9Å、0.5~8Å、0.5~7Å、0.5~6Å、0.5~5Å、0.5~4.5Å、0.5~4Å、0.5~3.5Å、0.5~3Å、0.5~2Å、1~10Å、1~9Å、1~8Å、1~7Å、1~6Å、1~5.5Å、1~5Å、1~4.5Å、1~4Å、1~3Å、1~2Å、1.5~10Å、1.5~9Å、1.5~8Å、1.5~7Å、1.5~6Å、1.5~5.5Å、1.5~5Å、1.5~4.5Å、1.5~4Å、1.5~3Å、1.5~2Å、2~10Å、2~9Å、2~8Å、2~7Å、2~6Å、2~5.5Å、2~5Å、2~4.5Å、2~4Å、2~3.5Å、2~3Å、2.5~10Å、2.5~9Å、2.5~8Å、2.5~7Å、2.5~6Å、2.5~5.5Å、2.5~5Å、2.5~4Å、2.5~3Å、3~10Å、3~9Å、3~8Å、3~7Å、3~6Å、3~5.5Å、3~5Å、3~4.5Å、3~4Å、3~3.5Å、3.5~10Å、3.5~9Å、3.5~8Å、3.5~7Å、3.5~6Å、3.5~5.5Å、3.5~5Å、3.5~4Å、3.5~3Å、4~10Å、4~9Å、4~8Å、4~7Å、4~6Å、4~5.5Å、4~5Åまたは4~4.5Åである。いくつかの実施形態では、チューブリンαT179の酸素は、アミド基の酸素である。いくつかの実施形態では、アミド基は、ペプチド骨格の一部である。
【0106】
いくつかの実施形態では、チューブリンβG237の酸素とLGの水素結合原子との間の距離は、8Å未満である。いくつかの実施形態では、チューブリンβG237の酸素とLGの水素結合原子との間の距離は、約2Å、2.5Å、2.8Å、3Å、3.2Å、3.5Å、3.8Å、4Å、4.2Å、4.5Å、4.8Å、5Å、5.2Å、5.5Å、5.8Å、6Å、6.2Å、6.5Å、6.8Å、7Å、8Å、9Åまたは10Åである。いくつかの実施形態では、チューブリンβG237の酸素とLGの水素結合原子との間の距離は、約0.5Å、1Å、1.25Å、1.5Å、1.8Å、2Å、2.5Å、2.9Å、3Å、3.2Å、3.5Å、4Å、5Åまたは6Åより大きい。いくつかの実施形態では、チューブリンβG237の酸素とLGの水素結合原子との間の距離は、約0.5~10Å、0.5~9Å、0.5~8Å、0.5~7Å、0.5~6Å、0.5~5Å、0.5~4.5Å、0.5~4Å、0.5~3.5Å、0.5~3Å、0.5~2Å、1~10Å、1~9Å、1~8Å、1~7Å、1~6Å、1~5.5Å、1~5Å、1~4.5Å、1~4Å、1~3Å、1~2Å、1.5~10Å、1.5~9Å、1.5~8Å、1.5~7Å、1.5~6Å、1.5~5.5Å、1.5~5Å、1.5~4.5Å、
1.5~4Å、1.5~3Å、1.5~2Å、2~10Å、2~9Å、2~8Å、2~7Å、2~6Å、2~5.5Å、2~5Å、2~4.5Å、2~4Å、2~3.5Å、2~3Å、2.5~10Å、2.5~9Å、2.5~8Å、2.5~7Å、2.5~6Å、2.5~5.5Å、2.5~5Å、2.5~4Å、2.5~3Å、3~10Å、3~9Å、3~8Å、3~7Å、3~6Å、3~5.5Å、3~5Å、3~4.5Å、3~4Å、3~3.5Å、3.5~10Å、3.5~9Å、3.5~8Å、3.5~7Å、3.5~6Å、3.5~5.5Å、3.5~5Å、3.5~4Å、3.5~3Å、4~10Å、4~9Å、4~8Å、4~7Å、4~6Å、4~5.5Å、4~5Åまたは4~4.5Åである。いくつかの実施形態では、チューブリンβG237の酸素は、アミド基の酸素である。いくつかの実施形態では、アミド基は、ペプチド骨格の一部である。
【0107】
いくつかの実施形態では、LCは、親水性原子または分子量が200、150、100もしくは80未満または14~200g/molである親水性官能基である。いくつかの実施形態では、LCは、窒素原子または少なくとも1つの窒素原子を含む官能基である。
【0108】
いくつかの実施形態では、LDは、親水性原子または分子量が200、150、100もしくは80未満または14~200g/molである親水性官能基である。いくつかの実施形態では、LDは、酸素原子または少なくとも1つの酸素原子を含む官能基である。
【0109】
いくつかの実施形態では、LFは、親水性原子または分子量が200、150、100もしくは80未満または14~200g/molである親水性官能基である。いくつかの実施形態では、LFは、窒素原子または少なくとも1つの窒素原子を含む官能基である。
【0110】
いくつかの実施形態では、LGは、親水性原子または分子量が200、150、100もしくは80未満または14~200g/molである親水性官能基である。いくつかの実施形態では、LGは、窒素原子または少なくとも1つの窒素原子を含む官能基である。
【0111】
いくつかの実施形態では、LC、LD、LFまたはLG内の親水性原子または官能基は、C(O)、NH、N、CHX、CH2X、CX2、CX3、OH、SO2、SH、C(S)、SO3およびPO3から選択され、各Xは、独立してハロゲンである。
【0112】
いくつかの実施形態では、LFとチューブリンαT179との間の水素結合は、水架橋(LFは水分子と水素結合し、その水分子が次にチューブリンαT179と水素結合する)を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、LGとチューブリンβG237との間の水素結合は、水架橋(LGは水分子と水素結合し、その水分子が次にチューブリンβG237と水素結合する)を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、LDとチューブリンβV238との間の水素結合は、水架橋を含む。いくつかの実施形態では、LDの水素結合は、水架橋を有さない。
【0115】
いくつかの実施形態では、LDとチューブリンβE200との間の水素結合は、水架橋を含む。いくつかの実施形態では、LDの水素結合は、水架橋を含まない。
【0116】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、さらに疎水性部分を含む。いくつかの実施形態では、疎水性部分は、各々が1つまたは複数の置換基で任意に置換された、C1-20アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6ヘテロアルキル、C3-7カルボシクリル、4-10員環のヘテロシクリル、C6-10アリール、3-10員環のヘテロアリールであることができる。いくつかの実施形態では、疎水性部
分は、1つ以上の置換基で任意に置換されたC6-10アリールであることができる。いくつかの実施形態では、疎水性部分は、任意に置換されたフェニル基であることができる。いくつかの実施形態では、疎水性部分は、C3-10アルキル、C3-10カルボシクリル、フェニル、ベンジルおよびベンジリデンから選択される。
【0117】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、さらにGEF-H1の一つまたは複数のドメインと相互作用する第1の部分を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、チューブリンは、化合物と結合するとき、GEF-H1の一つまたは複数のドメインと相互作用する第2の部分を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、チューブリンは、化合物と結合するとき、GEF-H1を活性化する。
【0120】
いくつかの実施形態では、化合物の第1の部分は、GEF-H1のN-末端ジンクフィンガードメインと相互作用する。いくつかの実施形態では、化合物は、GEF-H1のC53と相互作用する。
【0121】
いくつかの実施形態では、チューブリンの第2の部分は、GEF-H1のN-末端ジンクフィンガードメインと相互作用する。いくつかの実施形態では、チューブリンは、GEF-H1のC53と相互作用する。
【0122】
いくつかの実施形態では、化合物の第1の部分は、GEF-H1のC-末端と相互作用する。
【0123】
いくつかの実施形態では、チューブリンの第2の部分は、GEF-H1のC-末端と相互作用する。
【0124】
いくつかの実施形態では、式(II)
【化2】
の構造を有する化合物またはその薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、エステルであって、式中、
Y
1は、L
Cまたは
【化3】
であり、
Y
2は、L
Dまたは
【化4】
であり、
Y
3は、L
Fまたは
【化5】
であり、
Y
4は、L
Gまたは
【化6】
であり、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
6、R
7、R
9、R
10、R
12、R
13、R
15、およびR
16の各々は、独立して結合か分子量が14g/molと200g/molの間である有機部分であり、ならびに、
R
5、R
8、R
11、およびR
14の各々は、独立して分子量が14g/molと200g/molの間である有機部分である、請求項1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、エステル。
いくつかの実施形態では、式(II)
【化7】
の構造を有する化合物またはその薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、エステル。
【0125】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、R6、R7、R9、R10、R12、R13、R15、およびR16の1つ以上は、疎水性部分である。いくつかの実施形態では、R4およびR16は、疎水性部分である。
【0126】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、R6、R7、R9、R10、R12、R13、R15、およびR16の1つ以上は、GEF-H1の1つ以上のドメインと相互作用する部分である。いくつかの実施形態では、1つ以上のドメインは、ジンクフィンガードメインである。いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、R6、R7、R9、R10、R12、R13、R15、およびR16の1つまたは複数は、GEF-H1のC53と相互作用する部分である。
【0127】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、化合物が、式(III)
【化8】
式中:
R’
2およびR’
3は、水素原子、ハロゲン原子、以下の残基:C
1-C
12アルキル、C
2-C
12アルケニルおよびアルコキシのモノ置換、ポリ置換または非置換の、直鎖または分岐鎖の変異体、ならびに以下の残基:シクロアルキル、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアリール、アミノ、およびニトロのモノ置換、ポリ置換または非置換の変異体、からなる群より各々個別に選択され、
R’
4およびR’
6は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、以下の残基:C
1-C
24アルキル、C
2-C
24アルケニル、C
2-C
24アルキニル、アルコキシ、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルオキシカルボニルオキシ、アルキルカルボニルオキシアルキル、アリールカルボニルオキシアルキル、アリールアルコキシ、アルコキシ、およびアルキルチオのモノ置換、ポリ置換または非置換の、直鎖または分岐鎖の変異体、以下の残基:アリールオキシカルボニルオキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロシクロアルキル、アミノ、アミノカルボニル、アミド、アミノカルボニルオキシ、ニトロ、アジド、フェニル、ヒドロキシ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、チオフェニル、カルボキシ、およびシアノのモノ置換、ポリ置換または非置換の変異体、からなる群より各々個別に選択され、X
1およびX
2は、酸素原子、硫黄原子、およびR’
5で置換された窒素原子からなる群より個別に選択され、
R’
5は、水素原子、ハロゲン原子、および飽和C
1-C
12アルキル、不飽和C
2-C
12アルケニル、シクロアルキル、アルコキシ、シクロアルコキシ、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、アミノ、置換アミノ、ニトロ、置換ニトロ基からなる群より選択され、
Yは、酸素原子、硫黄原子、酸化された硫黄原子、およびR’
5基で置換された窒素原子からなる群より選択され、
nは、0、1、2、3または4であり、ならびに
Arは、単環式または多環式のアリールまたは1と3の間の環を含むヘテロアリール環系であり、
式中、
前記系内の各環は、個別に5、6、7または8員環であり、
前記系内の各環は、酸素、硫黄および窒素からなる群より選択される0、1、2、3または4個のヘテロ原子を個別に含み、
前記系内の各環は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、以下の残基:C
1-C
24アルキル
、C
2-C
24アルケニル、C
2-C
24アルキニル、アルコキシ、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルオキシカルボニルオキシ、アルキルカルボニルオキシアルキル、アリールカルボニルオキシアルキル、アリールアルコキシ、アルコキシ、およびアルキルチオのモノ置換、ポリ置換または非置換の、直鎖または分岐鎖の変異体、以下の残基:アリールオキシカルボニルオキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルコキシ、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、アリールカルボニル、ヘテロシクロアルキル、アミノ、アミノカルボニル、アミド、アミノカルボニルオキシ、ニトロ、アジド、フェニル、ヒドロキシ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、チオフェニル、カルボキシ、およびシアノのモノ置換、ポリ置換または非置換の変異体、からなる群より選択される1つ以上の置換基で任意に置換され、ならびに、ジオキソール、ジチオール、オキサチオール、ダイオキシン、ジチインおよびオキサチインから成る群より選択される任意に置換された縮合環である、の構造を有する化合物ではないという条件を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、プリナブリンではない。いくつかの実施形態では、化合物は、デヒドロフェニルアヒスチン、フェニルアヒスチンまたはt-ブチルフェニルアヒスチンではない。いくつかの実施形態では、化合物は、デヒドロフェニルアヒスチンまたはフェニルアヒスチンの誘導体ではない。
【0129】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、以下の表Aまたは表Bに列挙された化合物のいずれでもない。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
【表4-7】
【表4-8】
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【0130】
フェニルアヒスチンおよびデヒドロフェニルアヒスチン誘導体の多くの例は、US 20050090667に見られ、その全文をこの目的で参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0131】
いくつかの実施形態は、式(IV)
【化9】
の構造を有する化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、エステルに関し、Aは、C
1-20アルキル、C
2-6アルケニル、C
2-6アルキニル、C
1-6ヘテロアルキル、C
3-7カルボシクリル、4-10員環のヘテロシクリル、C
6-10ア
リール、3-10員環のヘテロアリール、C
1-C
6アルコキシ(C
1-C
6)アルキル、アリールオキシまたはスルフヒドリルから選択され、各々は1つまたは複数の置換基で任意に置換される。
【0132】
医薬組成物および投与
いくつかの実施形態は、本明細書に記載の化合物を含む医薬組成物に関する。
【0133】
化合物は、治療効果のある用量で投与される。本明細書に記載の化合物についてのヒト投与量レベルは、まだ最適化されていないが、一般的には、一日当たりの投与量は、約0.25mg/体重kg~約120mg/体重kg以上、約0.5mg/体重kg以下~約70mg/体重kg、約1.0mg/体重kg~約50mg/体重kgまたは約1.5mg/体重kg~約10mg/体重kgであり得る。従って、70kgの人に投与するため、投与範囲は、約17mg/日~約8000mg/日、約35mg/日以下~約7000mg/日以上、約70mg/日~約6000mg/日、約100mg/日~約5000mg/日、または約200mg/日~約3000mg/日であり得る。投与される活性化合物の量は、もちろん対象ならびに治療する病状、苦痛の重症度、投与方法とスケジュールおよび処方する医師の判断に依存するだろう。
【0134】
本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の投与は、これに限定されないが、経口、皮下、静脈内、鼻腔内、局所、経皮、腹腔内、筋肉内、肺内、腟内、直腸内、または眼内を含む同様な有用性を果たす剤の投与の許容された方法のいずれでもよい。経口および非経口投与は、好ましい実施形態の対象である徴候を治療する際にお決まりのことである。
【0135】
上記有用な化合物を、これらの病状の治療に使用するための医薬組成物に製剤化してもよい。標準的製剤化技術を、Remington’s The Science and
Practice of Pharmacy, 21st Ed., Lippincott Williams & Wilkins (2005)(その全文を参照することにより本明細書に組み入れられる)に記載のものなど、使用できる。従って、いくつかの実施形態は:(a)本明細書に記載の化合物(その鏡像異性体、ジアステレオ異性体、互変異性体、多形および溶媒和化合物を含む)またはその薬学的に許容可能な塩の安全かつ治療効果のある量;および(b)薬学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤またはその組合せを含む医薬組成物を含む。
【0136】
上記有用な選択された化合物に加えて、いくつかの実施形態は、薬学的に許容可能な担体を含有する組成物を包含する。「薬学的に許容可能な担体」または「薬学的に許容可能な賦形剤」という語は、いずれかおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を包含する。医薬作用物質のためのこのような媒体および剤の使用は当技術分野で周知である。従来の媒体または剤が有効成分と相溶性がない場合を除き、治療組成物での使用が期待される。加えて、当技術分野で共通に使用されるような様々なアジュバントを含有してもよい。医薬組成物中への様々な成分の含有についての考察は、例えば、Gilman et al. (Eds.) (1990);
Goodman and Gilman’s: The Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th Ed., Pergamon Press(その全文を参照することにより本明細書に組み入れられる)に記載されている。
【0137】
薬学的に許容可能な担体またはその成分の役割ができる物質のいくつかの例は、ラクトース、グルコースおよびショ糖などの糖類;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン類;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、お
よびメチルセルロースなどのセルロースおよびその誘導体;トラガント粉末;麦芽;ゼラチン;タルク;ステアリン酸およびステアリン酸マグネシウムなどの固形潤滑剤;硫酸カルシウム;ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびカカオ油などの植物油;プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール類;アルギン酸;ツイーンなどの乳化剤;ラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤;着色剤;香味料;打錠剤、安定剤;酸化防止剤;防腐剤;発熱物質なしの水;等張食塩水;およびリン酸緩衝液である。
【0138】
対象化合物と共に使用される薬学的に許容可能な担体の選択は、化合物が投与される方法によって基本的に決定される。
【0139】
本明細書に記載の組成物を好ましくは単位剤形で提供する。本明細書で使用するとき、「単位剤形」は、適正な医療行為に従って、1回の投与で動物、好ましくは哺乳類対象に投与するのに適切な化合物または組成物の量を含有する組成物である。しかしながら、1回または単位剤形の製剤は、該剤形を1日1回または治療過程当たり1回投与することを意味しない。このような剤形は、1日1回、2回、3回またはそれ以上投与されると考えられ、ある期間(例えば、約30分から約2~6時間まで)にわたって点滴で投与してもよく、または持続点滴として投与してもよく、1回の投与を特に除外しないが、治療過程中に1回より多く与えられてもよい。製剤形態が治療全過程を特に予期せず、このような決定は製剤形態よりむしろ治療の当業者に委ねられると当業者は認識するだろう。
【0140】
上記有用な組成物は、様々な投与経路、例えば、経口、鼻腔、直腸、局所(経皮を含む)、眼、脳内、頭蓋内、くも膜下腔内、動脈内、静脈内、筋肉内、または他の非経口投与経路用に適切な形態のいずれでもよい。経口および鼻腔用組成物は、吸入により投与され、利用可能な方法により製造される組成物を含むと当業者は認識するだろう。所望の特定の投与経路に応じて、当技術分野で周知の様々な薬学的に許容可能な担体を使用してもよい。薬学的に許容可能な担体としては、例えば、固形または液体充填剤、希釈剤、ヒドロトロピー剤、界面活性剤、およびカプセル化物質が挙げられる。必要に応じて、化合物の阻害活性と実質的に干渉しない医薬活性物質を含有してもよい。化合物と共に使用する担体の量は、化合物の単位用量当たり投与する物質の実用量を提供するのに充分なものである。本明細書に記載の方法で有用な剤形を製剤化するための技術および組成物は、以下の参考文献(全て参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている:Modern
Pharmaceutics, 4th Ed., Chapters 9 and 10 (Banker & Rhodes, editors, 2002); Lieberman et al., Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets (1989); and Ansel, Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms 8th Edition (2004)。
【0141】
錠剤、カプセル剤、顆粒剤および混合散剤などの固体形態を含む様々な経口用剤形を使用できる。錠剤は、適切な結合剤、潤滑剤、希釈剤、崩壊剤、着色剤、香味料、流動誘導剤、および溶融剤を含み、圧縮錠剤、粉薬錠剤、腸溶錠剤、糖衣錠剤、フィルムコート錠剤、または多重圧縮錠剤であり得る。液体経口用剤形としては、適切な溶媒、防腐剤、乳化剤、懸濁剤、希釈剤、甘味料、溶融剤、着色剤および香味料を含有する、水性液剤、乳剤、懸濁剤、非発泡性顆粒剤から再構成した液剤および/または懸濁剤、ならびに発泡性顆粒剤から再構成した発泡性製剤が挙げられる。
【0142】
経口投与用単位剤形の製剤に適切な薬学的に許容可能な担体は、当技術分野で周知である。錠剤は、通常、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、マンニトール、ラクトースおよびセルロースなどの不活性希釈剤;デンプン、ゼラチンおよびショ糖などの結合剤;デンプ
ン、アルギン酸およびクロスカルメロースなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびタルクなどの潤滑剤として従来の薬学的に適合するアジュバントを含む。二酸化ケイ素などの流動促進剤を使用して、粉末混合物の流動特性を改良できる。FD&C染料などの着色剤を外観のために使用できる。アスパルテーム、サッカリン、メントール、ペパーミント、および果実フレーバーなどの甘味料および香料はチュアブル錠用に有用なアジュバントである。カプセル剤は、通常、上記に開示の1つ以上の固体希釈剤を含む。担体成分の選択は、味、費用、および保存性など、重要でない二次的考察に依存し、当業者により容易に製造できる。
【0143】
経口用組成物としては、液剤、乳剤、懸濁剤等も挙げられる。このような組成物の製剤に適切な薬学的に許容可能な担体は、当技術分野で周知である。シロップ剤、エリキシル剤、乳剤および懸濁剤用担体の典型的成分としては、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、液状ショ糖、ソルビトールおよび水が挙げられる。懸濁剤のため、典型的懸濁剤としては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、AVICEL RC-591、トラガントおよびアルギン酸ナトリウムが挙げられ;典型的な湿潤剤としては、レクチンおよびポリソルベート80が挙げられ;典型的防腐剤としては、メチルパラベンおよび安息香酸ナトリウムが挙げられる。経口用液体組成物は、上記開示の甘味料、香料および着色剤などの1つ以上の成分を含有してもよい。
【0144】
このような組成物を、対象化合物が所望の局所用途の近傍の胃腸管内で、または所望の作用が広がる様々な時間において放出されるように、通常、pHまたは時間依存性コーティングを用いた従来方法によりコーティングしてもよい。このような剤形としては、典型的には、酢酸フタル酸セルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、オイドラギットコーティング、ワックスおよびシェラックの1つ以上が挙げられるが、これに限定されない。
【0145】
本明細書に記載の組成物は、必要に応じて他の薬効成分を含んでもよい。
【0146】
対象化合物の全身送達を達成するために有用な他の組成物としては、舌下、口腔および鼻腔用剤形が挙げられる。このような組成物は、典型的には、ショ糖、ソルビトールおよびマンニトールなどの可溶充填物質;およびアカシア、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの結合剤の1つ以上を含む。上記開示の流動促進剤、潤滑剤、甘味料、着色料、酸化防止剤および香料も含んでもよい。
【0147】
局所用眼科用途に製剤化された液体組成物を、眼に局所投与できるように製剤化する。製剤化検討(例えば、薬剤安定性)は、時にはあまり最適な快適さを必要としなくてもよいが、快適さを可能な限り最大化すべきである。快適さが最大化できない場合、局所眼科用途の患者に受け入れられるように液体を製剤化すべきである。加えて、眼科的に許容可能な液体を、単回使用用に包装すべきであり、または複数回の使用にわたって汚染を防止するために防腐剤を含有してもよい。
【0148】
眼科用途のため、液剤または薬剤を多くの場合主要な媒体として生理食塩水を用いて製剤化する。好ましくは、眼科用液剤を適切な緩衝系を用いて快適なpHに維持すべきである。製剤は、従来の薬学的に許容可能な防腐剤、安定剤および界面活性剤も含有してもよい。
【0149】
本明細書に開示の医薬組成物中に使用してもよい防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、PHMB、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、および硝酸フェニ
ル水銀が挙げられるが、これに限定されない。有用な界面活性剤は、例えば、ツイーン80である。同様に、様々な有用な媒体を、本明細書に開示の眼科用製剤で使用してもよい。これらの媒体としては、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロキサマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよび精製水が挙げられるが、これに限定されない。
【0150】
等張調整剤を必要に応じてまたは都合に応じて添加してもよい。等張調整剤としては、塩、特に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールおよびグリセリン、または他の適切な眼科的に許容可能な等張調整剤が挙げられるが、これに限定されない。
【0151】
得られた製剤が眼科的に許容可能である限り、様々な緩衝液およびpHを調節するための手段を使用してもよい。多くの組成物では、pHは、4~9であるだろう。従って、緩衝液としては、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液およびホウ酸緩衝液が挙げられる。酸または塩基を使用して、必要に応じて、これらの製剤のpHを調節してもよい。
【0152】
同じように、眼科的に許容可能な酸化防止剤としては、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソールおよびブチル化ヒドロキシトルエンが挙げられるが、これに限定されない。
【0153】
眼科用製剤に含有してもよい他の賦形剤成分は、キレート剤である。他のキレート剤も代わりにまたはこれと共に使用してもよいが、有用なキレート剤はエデト酸二ナトリウムである。
【0154】
局所用途のため、本明細書に開示の化合物を含有するクリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、液剤または懸濁剤、他を使用する。局所用製剤は、概して、医薬用担体、共溶媒、乳化剤、浸透促進剤、防腐剤系、および皮膚軟化薬から成り得る。
【0155】
静脈内投与のため、本明細書に記載の化合物および組成物を、食塩水またはブドウ糖液などの薬学的に許容可能な希釈剤中に溶解または分散してもよい。適切な賦形剤を含有して、所望のpHを達成してもよく、NaOH、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、HCl、およびクエン酸が挙げられるが、これに限定されない。様々な実施形態では、最終組成物のpHは、2~8、または好ましくは4~7の範囲である。酸化防止賦形剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、アセトン-重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、チオ尿素、およびEDTAが挙げられ得る。最終静脈内組成物中に見られる適切な賦形剤の他の非限定的な例としては、リン酸ナトリウムまたはカリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、およびブドウ糖、マンニトール、およびデキストランなどの炭水化物が挙げられ得る。さらに許容可能な賦形剤は、Powell, et al., Compendium of Excipients for Parenteral Formulations, PDA J Pharm Sci and Tech 1998, 52 238-311および Nema et al., Excipients and Their Role in Approved Injectable Products: Current Usage and Future Directions, PDA J Pharm Sci and Tech 2011, 65
287-332(これら両方ともその全文を参照することにより本明細書に組み入れられる)に記載されている。抗菌剤を含有して、静菌性または静真菌性溶液を達成してもよく、硝酸フェニル水銀、チメロサール、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール、およびクロロブタノールが挙げられるが、これに限定されない。
【0156】
静脈内投与用組成物を、投与のすぐ前に滅菌水、食塩水またはブドウ糖水溶液などの適切な希釈剤で再構成するもう1つの固体の形態で医療提供者に提供してもよい。他の実施
形態では、組成物をすぐに非経口投与できる液剤で提供する。さらに他の実施形態では、組成物を投与前にさらに希釈する液剤で提供する。本明細書に記載の化合物および別の剤の組合せを投与することを含む実施形態では、この組合せを混合物として医療提供者に提供してもよく、または医療提供者が投与前に2つの剤を混合してもよく、2つの剤を別々に投与してもよい。
【0157】
本明細書に記載の活性化合物の実際の用量は具体的な化合物、および治療する病状に依存し;適切な用量の選択は充分に熟練技術者の知見の範囲内である。
【0158】
いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上の薬学的に許容可能な希釈剤をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容可能な希釈剤は、コリフォールHS15(登録商標)(ポリオキシル(15)-ヒドロキシステアレート)を含むことができる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容可能な希釈剤は、プロピレングリコールを含むことができる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容可能な希釈剤は、コリフォールおよびプロピレングリコールを含むことができる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容可能な希釈剤は、コリフォールおよびプロピレングリコールを含むことができ、希釈剤の総重量に対してコリフォールは約40重量%であり、プロピレングリコールは約60重量%である。いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上の他の薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含むことができる。
【0159】
標準的製剤化技術を、Remington’s The Science and Practice of Pharmacy, 21st Ed., Lippincott Williams & Wilkins (2005)(その全文を参照することにより本明細書に組み入れられる)に記載のものなど、本明細書に記載の医薬組成物を製造するために使用できる。従って、いくつかの実施形態は:(a)本明細書に記載の化合物またはその薬学的に許容可能な塩の安全かつ治療効果のある量;および(b)薬学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤またはその組合せを含む医薬組成物を含む。
【0160】
本明細書に記載の活性化合物の実際の用量は具体的な化合物、および治療する病状に依存し;適切な用量の選択は充分に熟練技術者の知見の範囲内である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物の一日当たりの用量は、約0.01mg/体重kg~250mg/体重kg、約0.1mg/体重kg~約200mg/体重kg、約0.25mg/体重kg~約120mg/体重kg、約0.5mg/体重kg~約70mg/体重kg、約1.0mg/体重kg~約50mg/体重kg、約1.0mg/体重kg~約15mg/体重kg、約2.0mg/体重kg~約15mg/体重kg、約3.0mg/体重kg~約12mg/体重kg、約5.0mg/体重kg~約10mg/体重kgであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物の一日当たりの用量は、約15mg/体重kg、約12mg/体重kg、10mg/体重kg、約8mg/体重kg、約5mg/体重kg、約2.5mg/体重kg、約1.5mg/体重kg、約1.0mg/体重kg、約0.8mg/体重kg、約0.5mg/体重kg、または約0.1mg/体重kgであり得る。従って、70kgの人に投与するため、投与範囲は、約17mg/日~約8000mg/日、約35mg/日以下~約7000mg/日以上、約70mg/日~約6000mg/日、約70mg/日~約1000mg/日、約70mg/日~約800mg/日、約350mg/日~約700mg/日であり得る。
【0161】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物の一日当たりの用量は、約0.25mg/体重kg~約120mg/体重kg以上、約0.5mg/体重kg以下~約70mg/体重kg、約1.0mg/体重kg~約50mg/体重kg、または約1.5mg/体重kg~約10mg/体重kgであり得る。従って、70kgの人に投与するため、投与範囲は、約17mg/日~約8000mg/日、約35mg/日以下~約7000mg
/日以上、約70mg/日~約6000mg/日、約100mg/日~約5000mg/日、または約200mg/日~約3000mg/日であり得る。
【0162】
治療方法
いくつかの実施形態は、本明細書に記載の化合物または組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、増殖性疾患、障害または病状を治療する方法に関する。
【0163】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載の化合物または組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、がんの治療方法に関する。
【0164】
いくつかの実施形態は、がんを治療するまたは進行を抑制する治療薬の調製における、治療有効量の本明細書に記載の化合物または組成物の使用に関する。
【0165】
いくつかの実施形態は、がんの治療または進行抑制に使用するための治療有効量の化合物または組成物に関する。
【0166】
いくつかの実施形態では、がんは、頭頚部がん、肺がん、胃がん、結腸がん、膵がん、前立腺がん、乳がん、腎がん、膀胱がん、卵巣がん、子宮頚がん、メラノーマ、グリオブラストーマ、骨髄腫、リンパ腫、または白血病である。いくつかの実施形態では、がんは、腎細胞がん、悪性黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、卵巣がん、ホジキンリンパ腫または扁平上皮がんである。いくつかの実施形態では、がんは、乳がん、結腸がん、直腸がん、肺がん、前立腺がん、メラノーマ、白血病、卵巣がん、胃がん、腎細胞がん、肝がん、膵がん、リンパ腫および骨髄腫から選択される。いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍または血液がんである。
【0167】
いくつかの実施形態では、がんは、乳がん、結腸がん、直腸がん、肺がん、前立腺がん、メラノーマ、白血病、卵巣がん、胃がん、腎細胞がん、肝がん、膵がん、リンパ腫および骨髄腫から選択される。いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍または血液がんである。いくつかの実施形態は、がんは、結腸がん、乳がん、肺がん、膵がん、前立腺がん、結腸直腸腺癌、非小細胞肺がん、メラノーマ、膵がん、白血病、卵巣がん、胃がん、腎細胞がん、肝がん、膵がん、リンパ腫および骨髄腫から選択されるがんである。
【0168】
いくつかの実施形態では、対象は、哺乳類である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【実施例0169】
実施例1
スクリーニングプロトコル:分子モデリングおよびスクリーニング操作を、macOS
v10.13を動作させるiMacワークステーション上で動作させる、Maestroモデリングスイート(v11.4;Schrodinger)で実行した。MCULE(https://mcule.com)から購入可能な3500万をこえる一組の化合物を薬らしさ(5個のパラメータのルール)と構造多様性基準に基づいてキュレートした。キュレーション後、約100万個の化合物が残り(Mcule_Purchasable_In_Stock_Ro5_Diverse_1M_8Dec-2016_v1)、その半分を第1のバーチャルスクリーニングキャンペーンに使用した。LigPrepプログラムを使用して水素を加え、エネルギーを最適化した後、化合物の2D SMILESを3D構造に変換した。このプロセスにより約1500万個の配座異性体を生成した。このファルマコフォアに基づく化合物をスクリーニングするステップは、
図2に示される。
【0170】
バーチャルスクリーニングにおいて、既知の活性化合物から抽出したこれらの「活性な相互作用」にスクリーニングを偏らせるためのバーチャルスクリーニングにおける使用のために、ファルマコフォアクエリを作成して一組の既知の活性化合物(プリナブリンとより強力な類似体)に存在する部位または特徴(結合相互作用)を取り込んだ。
【0171】
図1は、スクリーニングに使用したファルマコフォアの構造を示す。
図1において、R11(プリナブリンのフェニル基)周りの残基周辺の残基は、3Å残基:N167、T239、L242、L252および4Å残基:I4、Y52、Q136、F169、E200、Y202、V238を含み、R10(プリナブリンのイミダゾール環)周りの残基は、3Å残基:L255、M259、A316、および4Å残基:T179(A鎖)、N258、I318、K352を含み、H8(プリナブリンのイミダゾール環のt-ブチル)周りの残基は、3Å残基:T179(A鎖)、T353および4Å残基:S241、L248、L255、K352、A354、A316、A317、I318を含み、D4/D6 H-結合ドナー部位(プリナブリンの中央のピペラジンジオン環)周りの残基は、3Å残基:S241、V238(骨格)、I318、L255、E200、Y202および4Å残基:L242、M259、F268、A316、I378を含む。太字の残基は、特定のファルマコフォア部分との疎水性(パイ-を含む)及びH結合相互作用の可能性がある残基を示す。
【0172】
プリナブリン類似体を、1.5Åの解像度の結晶構造からチューブリンのプリナブリン/コルヒチン結合部位内にスケッチし(実施例2参照)、エネルギーを最適化して結合ポケット内のコアプリナブリン構造の追加の官能基を緩和した。チューブリン-プリナブリン複合体構造の目視検査から、チューブリンはベータCys241がセリン残基と置換されたベータ3-チューブリンにより強く結合し、241位のセリンの側鎖によりシステインの1つと比較してプリナブリンのO20原子とより強く水素結合を形成できることが示された。さらに、実際の受容体の結合部位の残基に基づいた排除容積を、ヒットの探索空間を実際のリガンド結合部位境界に制限するのを助けるために使用し、それは構造ベースのスクリーニングワークフローの次のステップで役に立つことができる。DDHRRファルマコフォアクエリを使用して、ファルマコフォアスクリーニング中にすべての分子の配座異性体を急いで生成し、それは、2個の末端芳香族環(RR)、2個の水素結合ドナー(DD)、および疎水性部位(H)を表した。ファルマコフォアスクリーンからの「適合スコア」は、アラインメントスコア、ベクトルスコアおよび容積スコアからなるランキングパラメータとして使用された。5個の部位の少なくとも4個に一致するヒット(より多くの部位に一致するヒットがより良い)、および1.6以上の適合スコアを構造ベースのドッキングスクリーンについて考慮した。ファルマコフォアスクリーニングから、上記の基準を満たしチューブリン結合ポケット内に評価された約9,000ヒットがもたらされた。
【0173】
構造ベースバーチャルスクリーニング(SBVS)を約9,000ヒットに実行した。
スクリーニングされたドッキングを入力座標から各リガンドを迅速に最適化するGlideの超精密(XP)スコアリングにおいてリガンドサンプリング方法として「精密化のみ」を使用して実行した。これを、結合部位残基との「ファルマコフォアアラインメントリガンドポーズ」の任意の立体的衝突を軽減し、近くの残基との追加の水素結合および疎水性相互作用を形成するために使用した。この工程において、リガンドは自由に動くことができたが、タンパク質は、柔軟であるセリン残基中のヒドロキシル基を除いて、剛性として扱った。次に、エネルギーを最適化したリガンド-受容体複合体を、偽陽性ヒットを排除し、スクリーニングキャンペーンの成功を高めると報告されている、より正確なGlide XPスコアリング関数を使用してスコア化した(Glideスコアは結合親和性の推定であるが、それは数kcal/molまで正確なだけである)。このステップで評価された9,000のファルマコフォアヒットのうち、ドッキングスコアが-10.3より
高い1,212ヒットがあり、これは4または5個のファルマコフォア部位のいずれかに一致するか、ドッキングスコアが-10.3と-7.0の間にあるが、5個すべてのファルマコフォア部位に一致した。
【0174】
潜在的ヒットのランク付けのための結合エネルギー予測:第1のMM-GBSAは、リガンド-タンパク質複合体の分子力学最適化に関与し、リガンドおよび5Å結合部位残基はエネルギー最適化中に柔軟である。MM-GBSAdG結合スコアは、実験的な結合親和性に基づく順位付けに合理的に良く一致すると期待され、ランク付け同族系列のリガンド用に開発された(MM-GBSA結合エネルギーは、ほぼ結合の自由エネルギーであり、より負の値だとより強い結合を示す)。プリナブリンとその2個のナノモルの類似体をこの評価に陽性対象として含ませ、プリナブリンのdG結合スコアより良好なdG結合スコアを有する全てのヒットをさらなる分析のために選択した。この計算的なコストの高いステップで1,212個のヒットのうち、353ヒットがプリナブリンより良いランク付けがなされ、その結合ポーズを目視検査した。353ヒットをさらに分析した結果、表1に示されるような51ヒットのみが5個の(DHRR)ファルマコフォア部位全てに一致し、表2に示されるような293ヒットは4個の(DDHRR)ファルマコフォア部位のみに一致し(H結合ドナーの1つが失われた)、表3に示されるような9ヒットが(DDRR)部位に一致した(疎水性部位が失われた)。
【0175】
最終的に、適合スコアに基づくコンセンサススコア(CSCORE)、GlideXPドッキングスコア、およびMM-GBSAdG結合スコアを0.5、0.5および1.0の重みづけでそれぞれ開発し、その結果より正確なdG結合スコアは完全な重みづけがなされたが、一方で固有に重要性があるがあまり正確でないファルマコフォアとドッキングスコアが半分の重みづけがなされた:
CSCORE=(0.5*ドッキングスコア)-(0.5*適合スコア)+(1.0*dG結合スコア)。
【0176】
注記:適合スコアは、スコアのなかで唯一の+veスコアであるので(+veスコアが良いほど、順位付けが高い)、スコア値が低いほど(すなわち、より-veなほど)順位づけが高いという全体の分析を維持するために適合スコアに負の符号を適用した。
【0177】
実施例2
1.5Åの解像度のチューブリン-プリナブリン複合体の結晶構造を解析した。Pecqueur, L., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (2012) 109, 12011-12016(タンパク質データバンクに座標を蓄積(PDB ID 4DRX))に記載された、両者はその全体を本明細書に参照により組み込まれる、タンパク質およびTDI複合体(1個のαβチューブリンダイマーとチューブリン結合ダルピン、D1を含むタンパク質複合体)の結晶を調製した(本明細書において使用されるβチューブリンのアミノ酸残基の番号づけは、PDB ID 4DRXの番号づけと比較して2個異なる)。簡単に説明すると、結晶化溶液(100mM ビストリスメタンpH5.5、200mM硫酸アンモニウム、25%PEG3350)に新たに調製した50mMプリナブリンストック溶液(100%DMSO中)を5mMに希釈することによって共結晶化実験を行った。15mg/mLのTDI1μLを5mMのプリナブリン溶液1μLと混合して、400μLの結晶化溶液に対して平衡化した(ハンギングドロップ法)。
【0178】
結晶を一晩出現させ、液体窒素中で急速凍結し、Swiss Light Source(Paul Scherrer Institut、Villigen、Switzerland)のX06DAビームラインで、
100KでX線回折実験に直接使用した。データ処理を、XDSソフトウェアパッケージを使用して実行した。TD1-プリナブリン複合体を、非対称単位に単一の複合体を有する空間群P1211中で結晶化した。構造解析は、PHENIXソフトウェアパッケージ
のPHASERプログラムを使用して、モデルとしてリガンドおよび溶媒の非存在下でチューブリン-ダルピン複合体構造(PDB ID 4DRX)を使用する分子置換法によって行った。プリナブリンを、PHENIXのeLBOWを使用してモデルに追加した。結果として生じたモデルを、Cootでのモデルの再構築、PHENIXでの改良を反復回行うことにより改善した。構造の品質は、MolProbityを用いて評価した。データ収集と精密化統計を表4に提示する。図を、PyMOL(PyMOL Molecular Graphics
System, Version 1.4.1. Schrodinger)を使用して調製した。
【表6】
【0179】
TD1-プリナブリン複合体の構造を1.5Åの解像度で決定した。TD1-プリナブリン複合体のβ-チューブリンサブユニットで、プリナブリンのモデリングを可能にするプリナブリンの明確な電子密度差が観測された。プリナブリンは、αおよびβチューブリンの界面に位置する、チューブリン上のコルヒチン部位に結合する。それは、β-チュー
ブリンのストランドβS1、βS4、βS6、βS7、βS8、βS9、およびβS10、ループβT7、ならびにヘリックスβH7およびβH8、ならびにα-チューブリンのループαT5によって形成された。TD1プリナブリン複合体のチューブリンの全体構造は、いかなるリガンドの非存在下で得られたものと容易に重ね合わせることができた(PDB ID 4DRX、684個のCα原子にわたって0.28Åのrmsd)。この結果から、プリナブリンの結合がチューブリンダイマーの全体的立体配座に影響を及ぼさないことが示唆された。チューブリン-プリナブリン複合体に見られる相互作用残基を
図3に示す。
【0180】
プリナブリンの結合は、水分子を介したβE200およびβV238およびβG237、βC241およびαT179との水素結合相互作用により構築される。興味深いことに、βC241の側鎖は2つの別の立体配座で存在し、その1つはプリナブリンと水素結合を形成する。プリナブリン結合部位を裏打ちする追加のβ-チューブリン残基(プリナブリンの4Å以内の残基)は:βI4、βY52、βQ136、βY202、βF169、βN167、βL252、βL255、βM259、βF268、βI376、βL242、βT239、βA316、βA317、βI318、βA354、βL248、βT353、βI378およびβK352である。
【0181】
アポTD1とTD1-プリナブリンの間のβ-チューブリンサブユニットの比較から、βT7ループの残基βL248とβN249が、アポ構造中のプリナブリン結合部位を占めていることが示される。したがって、プリナブリンを結合部位に収容するためには、βT7ループは外側に反転する必要がある。同様の立体配座の変化は、他のコルヒチン部位リガンドがチューブリンに結合するときに観測された。しかしながら、チューブリンに結合したコルヒチンとは対照的に、TD1-プリナブリン複合体構造中のαチューブリンのαT5ループは、アポチューブリンと同様の立体配座を維持する。プリナブリンは、コルヒチンと構造的に関係のないコルヒチン部位結合子の分類に属するので、T2R-TTLコルヒチン構造(PDB ID 4O2B)由来のベータチューブリンは、TD1-プリナブリン構造に重ね合わせた。2つの構造の間でベータチューブリンの全体の立体配座は変化せずに残った(370個のCα原子にわたって0.37のrmsd)。同じ結合ポケットを共有するにもかかわらず、プリナブリンは、コルヒチンと重なりがほとんどなくノコダゾールと部分的に重なる部位で結合する。本発明者らは、LigPlotを用いて、プリナブリンとチューブリンとの結合様式を他の既知のコルヒチン部位結合リガンドの結晶構造と比較した。TD1-プリナブリン構造中のチューブリンダイマーを裏打ちするほとんどすべてのチューブリン残基は、微小管に見られる「直線状」チューブリン構造とは対照的に、「湾曲」立体配座を仮定する。プリナブリンの結合が微小管に存在する直線状チューブリン立体配座と互換性があるかを評価するために、本発明者らは、湾曲および直線状立体配座状態のチューブリンの構造を比較した。
【0182】
直線状チューブリンでは、プリナブリン結合部位はβT7ループで塞がれて、その結果直線状チューブリン構造中のβT7ループ残基とプリナブリン分子との間に重大な衝突が生じていた。従って、プリナブリン結合部位は、微小管格子に組み込まれた直線状チューブリンサブユニットにはアクセスできなかった。プリナブリンは、従って、溶液中の湾曲チューブリンおよび/または微小管の末端に結合して微小管の形成に必要とされる「湾曲から直線状への」構造変換を阻害することにより微小管非安定剤として働く。表5において、チューブリン構造中のプリナブリンの4Å以内の結合距離を列挙する。
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【0183】
実施例3
表1、2および3に列挙された化合物等の本明細書に記載のチューブリン結合化合物の直接的な効果を生体外で試験するために、微小管ペレットアッセイを使用した。表1、2、および3の試験化合物の効果をいくつかの微小管脱重合剤(MDA)(プリナブリン、コルヒチンおよびアンサミトシン)および一つのMSA(タキソール)と比較した。新たに重合した/脱重合したウシ脳チューブリンに34%グリセロールおよび1mMGTPを添加して4mg/mLの濃度に調整する。微小管への重合を、チューブリンを37℃で3
0分間培養することで達成した。
【0184】
試験された化合物の効果を評価するために、100μMの最終濃度を2mg/mLに希釈した温かい微小管に加え、37℃で30分間培養した後、反応混合物をグリセロールクッションの上部に加えた。80,000rpmで15分間高速遠心分離した後、微小管ベレット画分を上清画分から分離してSDS-PAGEで分析した。3個のMDAの存在下では、チューブリンバンドは、ペレット画分に観測され、それによりこれらの化合物の脱重合効果が示される。対照的に、タキソールは、強力な微小管の安定化効果を有するので、ペレット画分に観測されるチューブリンの量は増加する。試験化合物は、一般的に微小管に脱重合効果を示す。