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  • 特開-電気部品の固定構造 図1
  • 特開-電気部品の固定構造 図2A
  • 特開-電気部品の固定構造 図2B
  • 特開-電気部品の固定構造 図3
  • 特開-電気部品の固定構造 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027426
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】電気部品の固定構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/12 20060101AFI20230222BHJP
   H05K 7/20 20060101ALN20230222BHJP
【FI】
H05K7/12 M
H05K7/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132490
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】301072650
【氏名又は名称】NECスペーステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】毛利 正宏
【テーマコード(参考)】
4E353
5E322
【Fターム(参考)】
4E353AA06
4E353AA09
4E353BB05
4E353BB20
4E353CC20
4E353DR24
4E353GG15
4E353GG40
5E322AA03
5E322AB06
5E322AB08
5E322FA06
(57)【要約】
【課題】接着剤のボイド発生を抑制しつつ、一種類の絶縁材料と接着剤とによる二重絶縁を確保できる、電気部品の固定構造を提供する。
【解決手段】電気部品の一表面が、電気伝導体の一主表面に絶縁層を介在して固定された電気部品の固定構造であって、上記絶縁層は、スリットを有した構造体と、上記スリットを有した構造体と上記電気伝導体の一主表面との間に介在すると共に、一部が上記スリットを有した構造体の上記スリットに流入している接着剤と、を含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品の一表面が、電気伝導体の一主表面に絶縁層を介在して固定された電気部品の固定構造であって、
前記絶縁層は、スリットを有した構造体と、前記スリットを有した構造体と前記電気伝導体の一主表面との間に介在すると共に、一部が前記スリットを有した構造体の前記スリットに流入している接着剤と、を含む、
電気部品の固定構造。
【請求項2】
前記スリットを有した構造体は、アレイ状に配列された複数のスリットを含む、
請求項1に記載の電気部品の固定構造。
【請求項3】
前記スリットを有した構造体は、千鳥状に配列された複数のスリットを含む、
請求項1に記載の電気部品の固定構造。
【請求項4】
電気部品の一表面を電気伝導体の一主表面に、スリットを有した構造体を少なくとも介在させて固定する電気部品の固定方法であって、
前記電気部品の一表面と前記電気伝導体の一主表面との間に、前記スリットを有した構造体および接着剤を介在させ、前記接着剤を毛細管現象により前記スリットへ流入させると共に前記接着剤を硬化させる、
電気部品の固定方法。
【請求項5】
前記スリットを有した構造体は、アレイ状に配列された複数のスリットを含む、
請求項4に記載の電気部品の固定方法。
【請求項6】
前記スリットを有した構造体は、千鳥状に配列された複数のスリットを含む、
請求項4に記載の電気部品の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品の固定構造に関し、特に二重絶縁を確保した固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙用電源機器の開発において、機器の絶縁信頼性確保のために電気部品の実装に対して、二重の絶縁処理が求められることがある。二重の絶縁処理とは、感電に対する異なる2つの方法を使用し、一方の絶縁方法が短絡した場合、その原因によって、もう一方は短絡しないように絶縁する方法である。
【0003】
例えば、図3に示すように、電気部品13を二種類の絶縁材料の一例としての絶縁材11および絶縁材12を介在させて、電気伝導体14に固定する。また図4に示すように、二種類の絶縁材料の一例としての絶縁材11および絶縁材12を介在させると共にさらに接着剤15を介在させて、電気伝導体14に固定する。
【0004】
なおここで上述した二種類の絶縁材料のうちの一つは、絶縁材料を設けることに代えて、導体間が短絡されない距離として1.0mm以上の空間距離を設けることで空間絶縁を利用した二重の絶縁処理としてもよい。
【0005】
このように背景技術の電気部品の固定構造では、二種類の絶縁材料(絶縁材11および絶縁材12)と接着剤15の利用などにより、機器の絶縁信頼性に関する要求を満足させていた。
【0006】
特許文献1は、航空宇宙用機器等に実装される電子回路基板に関するものであり、表面実装タイプICのパッケージ本体を、放熱ラバーを介して、接着剤で電子回路基板に接着した構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-031739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した背景技術の固定構造には以下のような課題がある。
【0009】
近年、大型電気部品の活用、部品の集積化・複雑化により、部品の高発熱化が進み、電気部品の固定構造に対しては、二重絶縁と同時に高い放熱性が求められている。しかしながら図3図4に示される、背景技術の電気部品の固定構造では、電気的・熱的に絶縁される二種の絶縁材料を使用しているため放熱性が悪い、という課題がある。放熱性の良い接着剤に厚みをもたせ1.0mm以上の空間距離と接着剤とで二重絶縁要求を満足させたいが、接着剤が十分に満たされず接着剤に気泡や空隙が発生(ボイドが発生)する不具合により実現が困難であった。特許文献1では、このようなボイド発生を抑止しつつ、二重絶縁を実現する構造は提案されていない。
【0010】
本発明の目的は、接着剤のボイド発生を抑制しつつ、一種類の絶縁材料と接着剤とによる二重絶縁を確保できる、電気部品の固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明に係る電気部品の固定構造は、電気部品の一表面が、電気伝導体の一主表面に絶縁層を介在して固定された電気部品の固定構造であって、
上記絶縁層は、スリットを有した構造体と、上記スリットを有した構造体と上記電気伝導体の一主表面との間に介在すると共に、一部が上記スリットを有した構造体の上記スリットに流入している接着剤と、を含む。
【0012】
本発明に係る電気部品の固定方法は、電気部品の一表面を電気伝導体の一主表面に、スリットを有した構造体を少なくとも介在させて固定する電気部品の固定方法であって、
上記電気部品の一表面と上記電気伝導体の一主表面との間に、上記スリットを有した構造体および接着剤を介在させ、上記接着剤を毛細管現象により上記スリットへ流入させると共に上記接着剤を硬化させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接着剤のボイド発生を抑制しつつ、一種類の絶縁材料と接着剤とによる二重絶縁を確保して、電気部品を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態による電気部品の固定構造を説明するための断面図である。
図2A】複数のスリットがアレイ状に配列された、スリットを有した構造体の一例を示す平面図である。
図2B】複数のスリットが千鳥状に配列された、スリットを有した構造体の一例を示す平面図である。
図3】背景技術の電気部品の固定構造の一例を説明するための断面図である。
図4】背景技術の電気部品の固定構造の他の一例を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態による電気部品の固定構造について、説明する。図1は、本発明の第1実施形態による電気部品の固定構造を説明するための断面図である。
【0017】
(実施形態の構成)
図1の電気部品の固定構造は、電気部品1の一表面が、電気伝導体2の一主表面に絶縁層を介在して固定された電気部品の固定構造である。ここで上記絶縁層は、スリットを有した構造体3と、上記スリットを有した構造体3と上記電気伝導体2の一主表面との間に介在すると共に、一部が上記スリットを有した構造体3のスリット3sに流入している接着剤4と、を含む。
【0018】
ここで構造体3は、ガラスエポキシ樹脂などの絶縁材料からなる。1.0mm以上の厚みを有する構造体3に機械加工によりスリット3sを形成し、電気部品1の下に設置する。電気部品1は例えば、トランジスタやダイオード、バッテリーセルなどである。電気伝導体2は例えば、アルミやマグネシウム、チタンなどからなる。接着剤4は例えば、エポキシ系接着剤やウレタン系接着剤などである。
【0019】
図1の接着剤4は、毛細管現象によって構造体3のスリット3sに流入し、その後硬化している。これによって、スリット3sに入り込んだ接着剤に気泡や空隙が発生(ボイドが発生)することなく、電気部品1を電気伝導体2に固着する。また、毛細管現象により接着表面積が大きくなり、強度が増大する。
【0020】
これにより、1.0mm以上の空間距離による絶縁と、絶縁材料である構造体3の配置による絶縁との二重絶縁を実現すると共に、スリット3sに入り込んだ接着剤の内部のボイド発生を抑止することができる。
【0021】
なお、空間距離による絶縁とは、図1に示される、電気伝導体2と電気部品1との間に介在するスリットを有した構造体3および接着剤4の厚さで決まる距離による絶縁である。導電物間の距離が1.0mm以上あれば、宇宙機器の電源系絶縁設計に関する基本的な要求を満たす。
【0022】
(実施形態の効果)
本実施形態の電気部品の固定構造によれば、ボイドが発生しない一種類の絶縁材料と空間絶縁とによる二重絶縁が可能となる。その理由は、図1の接着剤4は毛細管現象によって、構造体3のスリット3sに流入し、これによって、スリット3sに入り込んだ接着剤の内部にボイドが発生することなく、電気部品1を電気伝導体2に固着することができるからである。なお、接着剤4の内部にボイドが発生しても、スリットを有した構造体3自体が1.0mm以上の厚みを有しているため、万が一気泡が入ったとしても、二重絶縁は確保される。
【0023】
また、図3図4に示される、背景技術の電気部品の固定構造のような、電気的・熱的に絶縁される二種の絶縁材料を使用するものと比較して、放熱性の良い接着剤を用いていることにより、高い放熱性を確保することができる。
【0024】
また、本実施形態によれば、二重絶縁の確保と高い放熱性を持つ固定構造を実現することができる。これにより、絶縁信頼性の高い宇宙用電源機器を提供することができる。
【0025】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態による電気部品の固定構造について、説明する。
【0026】
上述した第1実施形態では、二重の絶縁処理が要求される電気部品1と電気伝導体2の固着において、電気部品1と電気伝導体2のあいだにスリットを有した1.0mm以上の厚みの構造体3を設け、接着剤4によって電気部品1を固着する構造としている。
【0027】
スリット3sの形状は、直線形状およびある角度を持った斜めの形状でもよく、スリット3sの幅は固着する電気部品1に必要な接着強度を鑑み、調整してよい。図2Aは、複数のスリットがアレイ状に配列された、スリットを有した構造体の一例を示す平面図であり、図2Bは、複数のスリットが千鳥状に配列された、スリットを有した構造体の一例を示す平面図である。スリット3sの形状は、図2A図2Bに示すような直線形状でよく、図2Aのように複数のスリットがアレイ状に配列されてよく、図2Bのように複数のスリットが千鳥状に配列されてよい。また、電気部品1の発熱量に応じて、熱伝導率のより良い接着剤4を選定し、使用することが可能である。本構造は、電気部品1を1~3面固着する構造および接着剤の槽に部品を沈めて固着する構造等、電気部品全般の固着構造に適用してよい。
【0028】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、電気部品に対して二重の絶縁が要求される、宇宙機器において有効である。
【符号の説明】
【0030】
1 電気部品
2 電気伝導体
3 スリットを有した構造体
3s スリット
4 接着剤
図1
図2A
図2B
図3
図4