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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027434
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】水性塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 157/12 20060101AFI20230222BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20230222BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230222BHJP
【FI】
C09D157/12
C09D7/65
C09D7/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132512
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 健二
(72)【発明者】
【氏名】管本 圭司
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG051
4J038DA161
4J038GA03
4J038NA24
4J038PB06
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】本発明は、塗装スジの発生を抑制し、仕上がり性に優れた塗膜の形成や描画ができる水性塗料組成物を提供すること。
【解決手段】塗料が吐出される吐出口を有する吐出面に向けて移動可能に形成された弁体を押圧することにより前記塗料を被塗面に近接吐出する方法に使用される水性塗料組成物であって、(A)水酸基含有樹脂、(B)顔料、及び(C)メラミン樹脂を含有し、
前記メラミン樹脂(C)が、親水性である、水性塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料が吐出される吐出口を有する吐出面に向けて移動可能に形成された弁体を押圧することにより前記塗料を被塗面に近接吐出する方法に使用される水性塗料組成物であって、(A)水酸基含有樹脂、(B)顔料、及び(C)メラミン樹脂を含有し、
前記メラミン樹脂(C)が、親水性である、水性塗料組成物。
【請求項2】
前記メラミン樹脂(C)が、アルキルエーテル化メラミン樹脂であって、メチル基とブチル基の含有比が(メチル基)/(ブチル基)のモル比で10/90~100/0である請求項1に記載の水性塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式やディスペンサ方式の塗布は、非常に微細なノズルから液滴を直接吐出し、付着させて文字や画像を被塗面に形成するものであり、近年、この方式はオフィスや家庭用の出力機としてだけでなく、産業用途においても利用されつつある。
【0003】
例えば特許文献1では、住宅等の外装用や内装用の建築板の製造に活性エネルギー線硬化型インクの塗装及び/又は上塗り塗装がインクジェットで行われることが開示されている。また特許文献2では、車体等の塗装面に対し、粘調体を意匠状に噴出するインクジェット方法やディスペンサ方法により、塗膜の内部に意匠を表出させる方法が開示されている。このようにインクや塗料の液滴を近接で吐出する塗装に水性塗料組成物を用いると、液滴中の水や溶剤等の揮発成分が殆ど揮発せずに塗着するが、乾燥後、しばしば塗装ヘッドの走査方向に沿うスジムラが塗布面に発生したり、平滑性や光沢等の仕上がり性の低下等の不具合が生じる場合があった。このような現象は被塗面が金属やプラスチック等の平滑な基材の場合、塗装スジとして目立つものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5797314号公報
【特許文献2】特開平7-108216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、塗料が吐出される吐出口を有する吐出面に向けて移動可能に形成された弁体を押圧することにより前記塗料を被塗面に近接吐出する方法に使用される水性塗料組成物であって、塗装スジの発生を抑制し、仕上がり性に優れた塗膜の形成や描画ができる水性塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は下記<1>及び<2>に関するものである。
<1>塗料が吐出される吐出口を有する吐出面に向けて移動可能に形成された弁体を押圧することにより前記塗料を被塗面に近接吐出する方法に使用される水性塗料組成物であって、(A)水酸基含有樹脂、(B)顔料、及び(C)メラミン樹脂を含有し、
前記メラミン樹脂(C)が、親水性である、水性塗料組成物。
<2>前記メラミン樹脂(C)が、アルキルエーテル化メラミン樹脂であって、メチル基とブチル基の含有比が(メチル基)/(ブチル基)のモル比で10/90~100/0である<1>に記載の水性塗料組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水性塗料組成物によれば、インクジェット方式やディスペンサ方式で塗装スジの発生を抑制し、仕上がり性に優れた塗膜形成や描画ができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の態様について説明する。
【0009】
本発明の水性塗料組成物は、塗料が吐出される吐出口を有する吐出面に向けて移動可能に形成された弁体を押圧することにより前記塗料を被塗面に近接吐出する方法に使用される水性塗料組成物であり、特にピエゾ式ジェットディスペンサ用に好適である。
【0010】
一般にジェットディスペンサは、液体状の材料を滴状にして高速に連続して吐出する装置であり、吐出口を有した液室内において、弁体であるプランジャーを吐出口に向けて急速に前進させた後に急激に停止させることで、吐出口から液体状材料を液滴の状態で吐出するものである。これらのプランジャー部の駆動方式としては、エアー圧力やばね力、ピエゾ素子の変位によりプランジャーやロッド部の往復運動を利用するメカニカル式やピエゾジェット式が挙げられる。
【0011】
ここで、ピエゾ式とは、ピエゾ素子を駆動して素子内部のインクや塗料を微小液滴としてノズルから噴射させる電気機械変換方式あるいはピエゾ素子方式とよばれるものをいう。
【0012】
ジェットディスペンサとしては、例えば、「X JET」(商品名、SSI JAPAN社製、高粘度微量ピエゾジェットディスペンサー)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0013】
ディスペンサから液滴を吐出する際の周波数は、塗装スジ発生の抑制及び塗装効率等の観点から、10~10000Hzの範囲内であることが好ましく、30~5000Hzの範囲内であることがより好ましく、50~3000Hzの範囲内であることがさらに好ましい。
【0014】
ディスペンサから液滴を吐出する際の吐出口と被塗物との距離は、塗装スジ発生の抑制及び仕上がり性向上等の観点から、0.1~50mmの範囲内であることが好ましく、0.5~30mmの範囲内であることがより好ましく、1~10mmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0015】
供給圧は、塗料供給の安定等の観点から、0.001~10MPaの範囲内であることが好ましく、0.005~5.0MPaの範囲内であることがより好ましく、0.01~1.0MPaの範囲内であることがさらに好ましい。
【0016】
ディスペンサの走査速度は、塗装スジ発生の抑制及び塗装効率等の観点から、10~1500mm/sの範囲内であることが好ましく、50~1000mm/sの範囲内であることがより好ましく、100~800mm/sの範囲内であることがさらに好ましい。
【0017】
ディスペンサを走査する際のピッチは、塗装効率等の観点から、0.001~1.0mmの範囲内であることが好ましく、0.005~1.0mmの範囲内であることがより好ましく、0.01~1.0mmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0018】
本発明の水性塗料組成物は、水酸基含有樹脂(A)、顔料(B)、及びメラミン樹脂(C)を含有する。
【0019】
〔水酸基含有樹脂(A)〕
上記水酸基含有樹脂(A)としては、特に外装用途では耐候性や耐水性が良好である樹脂が好適であり、具体的には、水酸基含有アクリル樹脂(A1)、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)、水酸基含有ウレタン樹脂(A3)等が挙げられる。
【0020】
上記水酸基含有樹脂(A)は、所望される塗膜性能に応じて、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0021】
本発明の水性塗料組成物における水酸基含有樹脂(A)の含有量は、水性塗料組成物中の樹脂固形分量を基準として、40~90質量%の範囲内であることが好ましく、50~85質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0022】
水酸基含有アクリル樹脂(A1)
上記酸基含有アクリル樹脂(A1)としては、従来から水性塗料組成物に使用されているそれ自体既知の水溶性又は水分散性のアクリル樹脂を使用することができる。
【0023】
上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の方法により共重合せしめることによって製造することができる。
【0024】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体;N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。但し、本発明においては、後述する(xvii) 紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマーに該当するモノマーは、上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとして規定されるべきものであり、水酸基含有重合性不飽和モノマーからは除かれる。これらは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、下記モノマー(i)~(xx)等を使用することができる。これらの重合性不飽和モノマーは単独でもしくは2種以上で組み合わせて使用することができる。
(i) アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
(ii) イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii) アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv) トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v) 芳香環含有重合性不飽和モノマー:ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi) アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
(vii) フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii) マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
(ix) ビニル化合物:N-ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
(x) カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート等。
(xi) 含窒素重合性不飽和モノマー:(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等。
(xii) 重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
(xiii) エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
(xiv) 分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。
(xv) スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4-スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等。
(xvi) リン酸基を有する重合性不飽和モノマー:アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシエチレン)グリコール(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシプロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等。
(xvii) 紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:2-ヒドロキシ-4(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール等。
(xviii) 光安定性重合性不飽和モノマー:4-(メタ)アクリロイルオキシ1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等。
(xix) カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4~7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
(xx) 酸無水物基を有する重合性不飽和モノマー:無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等。
【0026】
本明細書において、重合性不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0027】
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味する。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0028】
前記水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、得られる塗膜の硬化性及び仕上がり性向上等の観点から、水酸基価が、1~200mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、2~180mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、5~150mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
【0029】
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、塗料の貯蔵安定性、得られる塗膜の耐水付着性及び仕上がり性向上等の観点から、酸価が、1~150mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、5~100mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、5~80mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
【0030】
水性塗料組成物が上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)を含有する場合、該水酸基含有アクリル樹脂(A1)の含有量は、水性塗料組成物中の樹脂固形分量を基準として、2~70質量%の範囲内であることが好ましく、5~60質量%の範囲内であることがより好ましく、10~50質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0031】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)
上記水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)としては、従来から水性塗料組成物に使用されているそれ自体既知の水溶性又は水分散性のポリエステル樹脂を使用することができる。
【0032】
上記水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
【0033】
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物を使用することができる。かかる酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を挙げることができる。
【0034】
上記脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物である。脂肪族多塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の炭素数1~4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0035】
上記脂肪族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物を用いることが好ましい。
【0036】
上記脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。脂環式構造は、主として4~6員環構造である。脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の炭素数1~4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0037】
上記脂環族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物を用いることが好ましく、なかでも、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物を用いることがより好ましい。
【0038】
前記芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物であって、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の無水物;該芳香族多価カルボン酸の炭素数1~4程度の低級アルキルのエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0039】
上記芳香族多塩基酸としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸を使用することが好ましい。
【0040】
また、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分を使用することも出来る。かかる酸成分としては、特に限定されず、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10-フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-4-エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらの酸成分は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0041】
前記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。
【0042】
また、上記多価アルコール以外のアルコール成分を使用することもできる。かかるアルコール成分としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2-フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10P」(商品名、HEXION社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0043】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、150~250℃程度で、5~10時間程度加熱し、該酸成分とアルコール成分のエステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法により、ポリエステル樹脂を製造することができる。
【0044】
上記酸成分及びアルコール成分をエステル化反応又はエステル交換反応せしめる際には、反応容器中に、これらを一度に添加してもよいし、一方又は両者を、数回に分けて添加してもよい。また、先ず、水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られた水酸基含有ポリエステル樹脂に酸無水物を反応させてハーフエステル化させてカルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。また、先ず、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を付加させて水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。
【0045】
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるための触媒として、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することができる。
【0046】
また、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、該樹脂の調製中又は調製後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、アクリル樹脂等で変性することができる。
【0047】
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられ、上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10P」(商品名、HEXION社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を好適に用いることができる。
【0048】
また、前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,6-ジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート化合物;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;リジントリイソシアネートなどの3価以上のポリイソシアネート等の有機ポリイソシアネートそれ自体;これらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、水等との付加物;これらの各有機ポリイソシアネート同士の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独でもしくは2種以上混合して使用することができる。
【0049】
また、前記ポリエステル樹脂をアクリル樹脂で変性する方法としては、既知の方法を用いることができ、例えば、重合性不飽和基含有ポリエステル樹脂及び重合性不飽和モノマーとの混合物を重合させる方法、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂の樹脂同士の反応による方法等を挙げることができる。
【0050】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、得られる塗膜の硬化性及び仕上がり性向上等の観点から、水酸基価が1~250mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、2~200mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、5~200mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
【0051】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)は、得られる塗膜の耐水付着性及び仕上がり性向上等の観点から、酸価が1~150mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、2~100mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、3~80mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
【0052】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の重量平均分子量は、得られる塗膜の耐水付着性及び仕上がり性向上等の観点から、1,000~100,000の範囲内であることが好ましく、2,000~50,000の範囲内であることがより好ましく、3,000~30,000の範囲内であることがさらに好ましい。
【0053】
なお、本明細書において、平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」、「TSKgel G-2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1mL/min、検出器;RIの条件で行った。
【0054】
本発明の水性塗料組成物が前記水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)を含有する場合、該水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の含有量は、水性塗料組成物中の樹脂固形分量を基準として、2~70質量%の範囲内であることが好ましく、5~50質量%の範囲内であることがより好ましく、10~40質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0055】
水酸基含有ポリウレタン樹脂(A3)
上記水酸基含有ポリウレタン樹脂(A3)としては、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得られるポリウレタン樹脂を挙げることができる。
【0056】
上記ポリオールとしては、例えば、低分子量のものとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の2価のアルコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価アルコール等を挙げることができる。高分子量のものとして、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール等を挙げることができる。ポリエーテルポリオールとしてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等があげられる。ポリエステルポリオールとしては前記の2価のアルコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のアルコールとアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の2塩基酸との重縮合物、ポリカプロラクトン等のラクトン系開環重合体ポリオール、ポリカーボネートジオール等を挙げることができる。また、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ポリオールも使用することができる。
【0057】
上記のポリオールと反応させるポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネ-ト、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン-2,4-(又は-2,6-)ジイソシアネート、1,3-(又は1,4-)ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,2-シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、4,4-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、(m-又はp-)フェニレンジイソシアネート、4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4-フェニルイソシアネート)等の芳香族ジイソシアネート化合物;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン、4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート等の1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート類;及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;等を挙げることができる。
【0058】
前記水酸基含有ポリウレタン樹脂(A3)の水酸基価は、得られる塗膜の硬化性及び仕上がり性向上等の観点から、1~150mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、1~100mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、1~50mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
【0059】
上記水酸基含有ポリウレタン樹脂(A3)の酸価は、得られる塗膜の耐水性付着性及び仕上がり性向上等の観点から、3~90mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、4~70mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、5~50mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
【0060】
上記水酸基含有ポリウレタン樹脂(A3)の数平均分子量は、得られる塗膜の耐水付着性及び仕上がり性向上等の観点から、10000以上であることが好ましく、50000以上であることがより好ましく、100000以上であることがさらに好ましい。
【0061】
本発明の塗料組成物が上記水酸基含有ポリウレタン樹脂(A3)を含有する場合、該水酸基含有ポリウレタン樹脂(A3)の含有量は、水性塗料組成物中の樹脂固形分量を基準として、3~60質量%の範囲内であることが好ましく、5~40質量%の範囲内であることがより好ましく、7~30質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0062】
〔顔料(B)〕
上記顔料(B)としては、例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等が挙げられる。着色顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ビスマスバナデート系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料、酸化鉄等が挙げられる。体質顔料としては、例えば、タルク、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ及びアルミナホワイト等が挙げられる。光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタンや酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタンや酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク及びホログラム顔料等が挙げられ、なかでも、着色顔料を使用することが好ましい。これらの顔料は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0063】
上記顔料(B)の含有量は水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、1~100質量部の範囲内であることが好ましく、2~80質量部の範囲内であることがより好ましく、2~50質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0064】
〔メラミン樹脂(C)〕
本発明では、メラミン樹脂(C)が親水性であることが、塗装スジ発生の抑制及び得られる塗膜の仕上がり性向上等の観点から必要である。
【0065】
上記メラミン樹脂(C)としては、トリアジン核1個あたり平均3個以上のメチロール基を有するメチロール化メラミン樹脂又はそのメチロール基の一部をアルコキシ基に置きかわったアルキルエーテル化メラミン樹脂が使用可能であって、さらにイミノ基を有することが可能である。
【0066】
本明細書において、親水性のメラミン樹脂とは、メチロール化メラミン樹脂及びアルキル基の炭素数が少ないアルキルエーテル化メラミン樹脂である。
【0067】
上記アルキルエーテル化メラミン樹脂は、メチル基とブチル基の含有比が、(メチル基)/(ブチル基)のモル比で10/90~100/0であると、親水性が高くなり、水酸基含有樹脂(A)等の塗料成分との相溶性やメラミン樹脂の水分散性が向上するため、好ましい。
【0068】
なかでも、アルキルエーテル化メラミン樹脂の、(メチル基)/(ブチル基)のモル比は、塗装スジ発生の抑制、得られる塗膜の仕上がり性向上及び耐水付着性向上等の観点から、30/70~80/20であることが好ましく、35/65~60/40であることがより好ましく、37/63~50/50であることがさらに好ましい。
【0069】
上記のメチル基とブチル基のモル比の調整は、変性に使用するメチルアルコール、n-ブチルアルコール及びイソブチルアルコールの種類及び使用量を調整することにより行うことができる。
【0070】
前記メラミン樹脂(C)の重量平均分子量は、400~6,000の範囲内であることが好ましくは500~4,000の範囲内であることがより好ましく、600~3,000の範囲内であることがさらに好ましい。
【0071】
本発明の水性塗料組成物における上記メラミン樹脂(C)の含有量は、塗装スジ発生の抑制、得られる塗膜の仕上がり性向上及び耐水付着性等の観点から、水性塗料組成物中の樹脂固形分量を基準として、10~60質量%の範囲内であることが好ましく、15~45質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0072】
また、本発明の水性塗料組成物が、(メチル基)/(ブチル基)のモル比が10/90~100/0のアルキルエーテル化メラミン樹脂を含有する場合、該(メチル基)/(ブチル基)のモル比が10/90~100/0のアルキルエーテル化メラミン樹脂の含有割合は、塗装スジ発生の抑制、得られる塗膜の仕上がり性向上及び耐水付着性等の観点から、メラミン樹脂(C)の合計固形分量を基準として、50~100質量%の範囲内であることが好ましく、70~100質量%の範囲内であることがより好ましく、80~100質量%の範囲内であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0073】
本発明において、水酸基含有樹脂(A)、顔料(B)、及び親水性であるメラミン樹脂(C)を含む水性塗料組成物によって、インクジェット方式やディスペンサ方式で塗装スジの発生を抑制し、仕上がり性に優れた塗膜形成や描画ができる理由としては、水酸基含有樹脂(A)との相溶性が高い親水性のメラミン樹脂(C)を用いることで、塗着固形分が低い液滴内での塗料成分の分離が抑制され、吐出された液滴同士が重なる部分においてもメラミン成分が偏在しにくくなるため、表面粗度が大きくなりにくく、その結果、顔料(B)由来の色の濃淡である塗装スジの発生を抑制し、仕上がり性に優れた塗膜形成や描画ができることが推察される。
【0074】
本発明の水性塗料組成物には、水あるいは有機溶剤等の溶媒を含有することができ、さらに必要に応じて、水酸基を含有しない樹脂、メラミン樹脂(C)以外の架橋剤、顔料分散剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、表面調整剤等の各種添加剤を適宜含有することができる。
【0075】
上記メラミン樹脂(C)以外の架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、カルボジイミド化合物などを挙げることができる。
【0076】
紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等を使用できる。また、上記紫外線吸収剤は、重合性不飽和基を有するものであってもよい。
【0077】
上記ベンゾトリアゾール系吸収剤の具体例としては、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-{2’-ヒドロキシ-3’-(3’’,4’’,5’’,6’’-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0078】
前記トリアジン系吸収剤の具体例としては、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソオクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4((2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)-オキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンン、2-[4-((2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)-オキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0079】
前記サリチル酸誘導体系吸収剤の具体例としては、フェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート、4-tert-ブチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0080】
前記ベンゾフェノン系吸収剤の具体例としては、4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノントリヒドレート、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、ナトリウム2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-クロロ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジベンゾイルレゾルシノール、4,6-ジベンゾイルレゾルシノール、ヒドロキシドデシルベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0081】
また、前記紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「TINUVIN 900」、「TINUVIN 928」、「TINUVIN 384-2」、「TINUVIN 479」、「TINUVIN 405」、「TINUVIN 400」、(BASF社製、商品名、TINUVIN/チヌビンは登録商標)、「RUVA 93」(大塚化学社製、商品名)等が挙げられる。
【0082】
本発明の塗料組成物が、上記紫外線吸収剤を含有する場合、該紫外線吸収剤の含有量は、該塗料組成物の総量に対して、0.3~10質量%の範囲内であることが好ましく、0.4~9質量%の範囲内であることがより好ましく、0.5~8質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0083】
上記水性塗料組成物の塗装時の固形分濃度は、塗装スジ発生の抑制等の観点から、5~50質量%の範囲内であることが好ましく、10~40質量%の範囲内であることがより好ましく、15~30質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0084】
また、上記水性塗料組成物の粘度は、温度20℃においてB型粘度計で測定する60rpmで1分後の粘度(本明細書では「B60値」ということがある)が、塗装スジ発生の抑制等の観点から、100~3000mPa・sの範囲内であることが好ましく、300~2000mPa・sの範囲内であることがより好ましく、500~1500mPa・sの範囲内であることがさらに好ましい。このとき、使用する粘度計は、「LVDV-I」(商品名、BROOKFIELD社製、B型粘度計)である。
【0085】
本発明の水性塗料組成物は、前述のとおり液滴を被塗面に近接吐出された後、必要に応じて加熱することができる。加熱温度は、80~180℃の範囲内であることが好ましく、100~160℃の範囲内であることがさらに好ましい。また加熱時間は、10~60分間の範囲内であることが好ましく、15~40分間の範囲内であることがさらに好ましい。必要に応じて、加熱硬化を行う前に、プレヒート、エアブロー等により、約50~約110℃の範囲内、好ましくは約60~約90℃の範囲内温度で1~60分間程度、直接的又は間接的に加熱を行ってもよい。
【実施例0086】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づくものである。
【0087】
水酸基含有アクリル樹脂(A1)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水130部及び「アクアロンKH-10」(商品名、第一工業製薬社製、乳化剤、有効成分97%)0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%量と6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部とを反応容器内に導入し、80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%ジメチルエタノールアミン水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、固形分濃度30%の水酸基含有アクリル樹脂(A1-1)エマルションを得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂(A1-1)エマルションは、酸価が33mgKOH/g、水酸基価が25mgKOH/gであった。
【0088】
モノマー乳化物(1): 脱イオン水42部、「アクアロンKH-10」0.72部、メチレンビスアクリルアミド2.1部、スチレン2.8部、メチルメタクリレート16.1部、エチルアクリレート28部及びn-ブチルアクリレート21部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
【0089】
モノマー乳化物(2): 脱イオン水18部、「アクアロンKH-10」0.31部、過硫酸アンモニウム0.03部、メタクリル酸5.1部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5.1部、スチレン3部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート1.8部及びn-ブチルアクリレート9部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
【0090】
製造例2
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器にプロピレングリコールモノプロピルエーテル35部を仕込み85℃に昇温後、メチルメタクリレート30部、2-エチルヘキシルアクリレート20部、n-ブチルアクリレート29部、2-ヒドロキシエチルアクリレート15部、アクリル酸6部、プロピレングリコールモノプロピルエーテル15部及び2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)2.3部の混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。その後さらにプロピレングリコールモノプロピルエーテル10部及び2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)1部の混合物を1時間かけて滴下し、滴下終了後1時間熟成した。さらにジエタノールアミン7.4部及びプロピレングリコールモノプロピルエーテル13部を加え、固形分濃度55%の水酸基含有アクリル樹脂(A1-2)溶液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂(A1-2)は酸価が47mgKOH/g、水酸基価が72mgKOH/g、重量平均分子量が58,000であった。
【0091】
水酸基含有ポリエステル樹脂(A2)の製造
製造例3
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン109部、1,6-ヘキサンジオール141部、ヘキサヒドロ無水フタル酸126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃~230℃の間を3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、さらに無水トリメリット酸38.3部を加え、170℃で30分間反応させた後、2-エチル-1-ヘキサノールで希釈し、固形分濃度70%である水酸基含有ポリエステル樹脂(A2-1)溶液を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂(A2-1)は、酸価が46mgKOH/g、水酸基価が150mgKOH/g、固形分濃度70%、重量平均分子量が6,400であった。
【0092】
水酸基含有ポリウレタン樹脂(A3)の製造
製造例4
温度計、撹拌機及び還流コンデンサーを備えた反応槽に、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量1000)211.9部、2,2-ジメチロールプロピオン酸11.5部、トリメチロールプロパン6.9部、イソホロンジイソシアネート112.2部及びメチルエチルケトン298.5部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換した後、撹拌下80℃で反応させ遊離イソシアネート基含有量3.2%のNCO末端ウレタンプレポリマーを得た。得られた該メチルエチルケトン溶液を40℃に冷却し、トリエチルアミン8.6部を含む脱イオン水493.2gを加えて乳化した後、これに5%N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン水溶液275.9部を添加し、60分間撹拌後、メチルエチルケトンを減圧加熱下に留去し、脱イオン水で濃度調整して、固形分35%、酸価14mgKOH/g、水酸基価12mgKOH/g、平均粒子径120nmの水酸基含有ポリウレタン樹脂(A3-1)分散液を得た。
【0093】
顔料分散液の製造
製造例5
撹拌装置を備える容器に、製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂(A1-2)溶液9.1部(固形分5部)、「カーボンMA-100」(商品名、三菱ケミカル社製、カーボンブラック)4部及び脱イオン水50部を入れ、均一に混合し、混合溶液に2-(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH7.5に調整した。次いで、得られた混合溶液を広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて4時間分散して、顔料分散液(P-1)を得た。
【0094】
製造例6
撹拌装置を備える容器に、製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂(A1-1)溶液9.1部(固形分5部)、「塩素化銅シアニンブルーG-314」(商品名、山陽色素社製、フタロシアニンブルー顔料)7部及び脱イオン水50部を入れ、均一に混合し、混合溶液に2-(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH7.5に調整した。次いで、得られた混合溶液を広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて4時間分散して、顔料分散液(P-2)を得た。
【0095】
製造例7
撹拌装置を備える容器に、製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂(A1-1)溶液9.1部(固形分5部)、「PERRIND MAROON179 229-6440」(商品名、サンケミカル社製、有機ペリレン顔料)10部及び脱イオン水50部を入れ、均一に混合し、混合溶液に2-(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH7.5に調整した。次いで、得られた混合溶液を広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて4時間分散して、顔料分散液(P-3)を得た。
【0096】
製造例8
撹拌装置を備える容器に、製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂(A1-1)溶液9.1部(固形分5部)、「YELLOW 2GLMA」(商品名、Dominion Colour Corporation社製、ビスマスバナデート系黄色顔料)10部及び脱イオン水50部を入れ、均一に混合し、混合溶液に2-(ジメチルアミノ)エタノールを添加して、pH7.5に調整した。次いで、得られた混合溶液を広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて4時間分散して、顔料分散液(P-4)を得た。
【0097】
水性塗料組成物の調製
実施例1
撹拌混合容器に、製造例5得た顔料分散液(P-1)63.1部(固形分9部)、製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂(A1-1)エマルション116.7部(固形分35.0部)、製造例3で得た水酸基含有ポリエステル樹脂(A2-1)溶液21.4部(固形分15部)、製造例4で得た水酸基含有ポリウレタン樹脂(A3-1)分散液42.9部(固形分15部)、「メラミン樹脂(C-1)(アルキルエーテル化メラミン樹脂、(メチル基/(ブチル基)のモル比は40/60、固形分濃度80%)37.5部(固形分30部)及び「TINUVIN 384-2」(商品名、BASF社製、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、固形分濃度95%)1.1部(固形分1部)を均一に混合し、「UH-752」(商品名、ADEKA社製、増粘剤、固形分濃度28%)、2-(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を加えてpH8.0、塗料固形分濃度20%、温度20℃においてB型粘度計で測定する60rpmで1分後の粘度が800mPa・sの水性塗料組成物No.1を得た。
【0098】
実施例2~10、比較例1及び2
実施例1において、配合組成を表1に示すものとする以外は、実施例1と同様にして、水性塗料組成物No.2~No.12を得た。
【0099】
試験用被塗物の作製
脱脂及びりん酸亜鉛処理した鋼板(JISG3141、大きさ400mm×300mm×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロンGT-10」(商品名:関西ペイント株式会社製、エポキシ樹脂ポリアミン系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚が20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させた後、その上に中塗り塗料「TP-65」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系溶剤中塗り塗料)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚35μmになるように静電塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させて被塗物とした。
【0100】
試験用塗装板の作成
仕上がり性試験用塗装板及び塗装スジ試験用塗装板の作製
水性塗料組成物No.1~No.12を「X JET」(商品名、SSI JAPAN社製、高粘度微量ピエゾジェットディスペンサー、吐出口径100μm)に充填した。次いで、被塗物上に、周波数350Hz、供給圧0.03MPa、速度230mm/s、ピッチ1mm、吐出口と被塗物との距離10mm、23℃、相対湿度68%の条件で塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させて仕上がり性試験用塗装板及び塗装スジ試験用塗装板とした。
【0101】
耐水付着性試験用塗装板の作製
水性塗料組成物No.1~No.12を「X JET」(商品名、SSI JAPAN社製、高粘度微量ピエゾジェットディスペンサー、吐出口径100μm)に充填した。次いで、被塗物上に、周波数350Hz、供給圧0.03MPa、速度230mm/s、ピッチ1mm、吐出口と被塗物との距離10mmの条件で塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させた。
【0102】
次いで、クリヤー塗料「マジクロンKINO-1210」(商品名、関西ペイント社製、アクリル樹脂系溶剤型上塗りクリヤー塗料)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、硬化膜厚35μmになるように静電塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させて、耐水付着性試験用塗装板とした。
【0103】
試験方法
仕上がり性
上記で得られた仕上がり性試験用塗装板を目視で観察し、仕上がり性の評価を、以下の評価基準に従い行った。◎及び○が合格である。評価結果を表1に示す。
-評価基準-
◎:平滑であり、光沢感が認められる、
○:平滑であるが、光沢感に劣る、
×:平滑でなく、光沢感に劣る。
【0104】
塗装スジ
上記で得られた塗装スジ試験用塗装板を目視で観察し、塗装スジの評価を、以下の評価基準に従い行った。◎及び○が合格である。評価結果を表1に示す。
-評価基準-
◎:塗装スジが全く認められない、
〇:塗装スジがわずかに認められるが、実用上の問題がない、
×:塗装スジがハッキリと認められ、実用上問題がある。
【0105】
耐水付着性
上記で得られた耐水付着性試験用塗装板を40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、20℃で12時間乾燥した後、塗面にJIS K 5600-5-6(1990)に準じて塗膜に2mm×2mmのゴバン目100個を作り、その面に粘着テープを貼着し、急激に剥がした後に、塗面に残ったゴバン目塗膜の数を評価した。◎及び○が合格である。評価結果を表1に示す。
-評価基準-
◎:残存個数/全体個数=100個/100個で縁欠けなし、
○:残存個数/全体個数=100個/100個で縁欠けあり、
×:残存個数/全体個数=99個以下/100個。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
なお、表中の(注1)~(注7)は以下を意味する。
(注1)メラミン樹脂(C-2):アルキルエーテル化メラミン樹脂、(メチル基/(ブチル基)のモル比は100/0、固形分濃度80%、
(注2)メラミン樹脂(C-3):アルキルエーテル化メラミン樹脂、(メチル基/(ブチル基)のモル比は60/40、固形分濃度80%、
(注3)メラミン樹脂(C-4):アルキルエーテル化メラミン樹脂、(メチル基/(ブチル基)のモル比は35/65、固形分濃度80%、
(注4)メラミン樹脂(C-5):アルキルエーテル化メラミン樹脂、(メチル基/(ブチル基)のモル比は30/70、固形分濃度70%、
(注5)メラミン樹脂(C-6):アルキルエーテル化メラミン樹脂、(メチル基/(ブチル基)のモル比は10/90、固形分濃度70%、
(注6)メラミン樹脂(C-7):アルキルエーテル化メラミン樹脂、(メチル基/(ブチル基)のモル比は0/100、固形分濃度60%、
(注7)「デュラネートSBN-70D」:商品名、旭化成ケミカル社製、ピラゾールブロックポリイソシアネート化合物、固形分濃度70%。