(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027438
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】重力発電装置
(51)【国際特許分類】
F03G 3/00 20060101AFI20230222BHJP
【FI】
F03G3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132519
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】399048869
【氏名又は名称】株式会社神島組
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】神島 昭男
(72)【発明者】
【氏名】神島 充子
(57)【要約】
【課題】重力を利用して効率的に発電することができる重力発電装置を提供する。
【解決手段】この発明では、駆動プーリが回転軸に取り付けられて回転軸の軸心まわりに回転軸と一体的に回転する。また、第1従動プーリが、鉛直方向において駆動プーリよりも下方側で、かつ回転軸の軸心を通って鉛直方向に延びる仮想鉛直面に対して一方側に配置されている。さらに、少なくとも1つ以上の第2従動プーリが、鉛直方向において駆動プーリと第1従動プーリとの間で、かつ仮想鉛直面に対して他方側に配置されている。こうした配置関係にあるプーリに亘って無端状の索状体が循環移動自在に掛け渡されている。このため、重力の作用により錘体は索状体を周方向に移動させる力を与え、索状体を周方向に循環移動させ、これによって、回転軸を軸心まわりに回転させ、重力を利用した発電を効率的に行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平に延設される回転軸と、
前記回転軸に取り付けられて前記回転軸の軸心まわりに前記回転軸と一体的に回転する駆動プーリと、
鉛直方向において前記駆動プーリよりも下方側で、かつ前記回転軸の軸心を通って鉛直方向に延びる仮想鉛直面に対して一方側に配置される第1従動プーリと、
鉛直方向において前記駆動プーリと前記第1従動プーリとの間で、かつ前記仮想鉛直面に対して他方側に配置される、少なくとも1つ以上の第2従動プーリと、
前記駆動プーリ、前記第1従動プーリおよび前記第2従動プーリに亘って掛け渡される無端状の索状体と、
前記回転軸に連結されて前記回転軸を前記軸心まわりに回転駆動する回転手段と、
前記回転軸に連結され、前記駆動プーリ、前記第1従動プーリおよび前記第2従動プーリに沿った前記索状体の循環移動に伴う前記回転軸の回転を受けて発電する発電機と、を備え、
前記駆動プーリ、前記第1従動プーリおよび前記第2従動プーリは、前記回転軸の軸心方向から見て多角形状に配置され、
前記索状体には、前記索状体の周方向に複数の錘体が取り付けられていることを特徴とする、重力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、錘体に作用する重力を利用して発電する重力発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば特許文献1では、錘体を取り付けた回転板の振り子運動を利用して発電機を回して発電を行う装置が提案されている。この装置は、回転板の振り子運動から一方向への回転力を取り出してはずみ車を回転させ、さらにはずみ車の回転力によって発電機を回転駆動して発電を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来装置では、回転板の振り子運動の一部しか発電に利用していない。つまり、従来装置は、はずみ車に対して一方向性駆動フリーハブを装着することで、回転板の振り子運動のうちの一方向側の運動を回転運動に変換しているにすぎない。このため、発電効率が低いという問題がある。また、上記はずみ車を用いる必要があり、装置の部品点数が多くなり、この点が発電効率を低下させる主要因の一つとなっている。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、重力を利用して効率的に発電することができる重力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、略水平に延設される回転軸と、回転軸に取り付けられて回転軸の軸心まわりに回転軸と一体的に回転する駆動プーリと、鉛直方向において駆動プーリよりも下方側で、かつ回転軸の軸心を通って鉛直方向に延びる仮想鉛直面に対して一方側に配置される第1従動プーリと、鉛直方向において駆動プーリと第1従動プーリとの間で、かつ仮想鉛直面に対して他方側に配置される、少なくとも1つ以上の第2従動プーリと、駆動プーリ、第1従動プーリおよび第2従動プーリに亘って掛け渡される無端状の索状体と、回転軸に連結されて回転軸を軸心まわりに回転駆動する回転手段と、回転軸に連結され、駆動プーリ、第1従動プーリおよび第2従動プーリに沿った索状体の循環移動に伴う回転軸の回転を受けて発電する発電機と、を備え、駆動プーリ、第1従動プーリおよび第2従動プーリは、回転軸の軸心方向から見て多角形状に配置され、索状体には、索状体の周方向に複数の錘体が取り付けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明によれば、駆動プーリが回転軸に取り付けられて回転軸の軸心まわりに回転軸と一体的に回転する。また、第1従動プーリが、鉛直方向において駆動プーリよりも下方側で、かつ回転軸の軸心を通って鉛直方向に延びる仮想鉛直面に対して一方側に配置されている。さらに、少なくとも1つ以上の第2従動プーリが、鉛直方向において駆動プーリと第1従動プーリとの間で、かつ仮想鉛直面に対して他方側に配置されている。そして、これらのプーリに亘って無端状の索状体が循環移動自在に掛け渡されている。この索状体には、複数の錘体が索状体の周方向に取り付けられている。このため、重力の作用により錘体は索状体を周方向に移動させる力を与える。これを受けて索状体は周方向に移動して回転軸を軸心まわりに回転させる。その結果、重力を利用した発電を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る重力発電装置の第1実施形態を示す図である。
【
図3】本発明に係る重力発電装置の第2実施形態を示す図である。
【
図4】本発明に係る重力発電装置の第3実施形態を示す図である。
【
図5】本発明に係る重力発電装置の第4実施形態を示す図である。
【
図6】本発明に係る重力発電装置の第4実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明に係る重力発電装置の第1実施形態を示す図である。
図2は、
図1中のII-II線矢視断面図である。以下、これらの図を参照しつつ重力発電装置の構成および動作について説明する。なお、これらの図面では、理解容易の目的で、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0010】
重力発電装置1では、
図1に示すように、一対の水平梁3aと一対の垂直柱3bとが組み合わせることで、ボックス状の筐体3が構築されている。一対の垂直柱3bに対し、同一高さ位置にベアリング(図示省略)がそれぞれ装着されている。そして、両ベアリングに水平回転軸5が挿通され、各端部がベアリングで支持されている。このため、水平回転軸5は、その軸心5aが水平方向Xと平行な状態で、筐体3に対して軸心5aまわりに回転自在に支持される。
【0011】
水平回転軸5の中央部には、駆動プーリ7が固着されて水平回転軸5と一体的に軸心5aまわりに回転方向Rに回転可能となっているとともに、水平回転軸5の回転から独立してプーリ支持フレーム9が水平回転軸5の軸心5aを中心として水平回転軸5に対して揺動自在に軸支される。プーリ支持フレーム9は、一対の筒状部材11を有している。一対の筒状部材11は、
図1に示すように、水平回転軸5の中央部において駆動プーリ7を挟み込むように、互いに離間して配置されている。そして、各筒状部材11は、その内周面と水平回転軸5の外周面との間に介在するベアリング13(
図2)により水平回転軸5に対して揺動自在に支持されている。また、
図2に示すように、各筒状部材11に対して2本のアーム部材15a、15bの一方端部が取り付けられ、アーム部材15a、15bは軸心方向、つまりX方向からの側面視で略ハ字状に垂設されている。アーム部材15a、15bの他方端部は、別のアーム部材15cにより相互に接続されている。このため、アーム部材15a~15cは三角形状を有するフレーム構造体17を構成しており、
図1に示すように、一対のフレーム構造体17はX方向において上記距離だけ互いに離間しながら対向配置されている。
【0012】
また、
図2に示すように、フレーム構造体17の下方側頂部では、それぞれアーム部材15aの他方端部とアーム部材15cの一方端部とを連結した連結部位19aが設けられるとともに、アーム部材15bの他方端部とアーム部材15cの他方端部とを連結した連結部位19bが設けられている。そして、互いに対向する一対の連結部位19aの間に従動プーリ21がフレーム構造体17に対して回転自在に軸支されるとともに、互いに対向する一対の連結部位19bの間に従動プーリ23がフレーム構造体17に対して回転自在に軸支されている。このため、駆動プーリ7および従動プーリ21、23は、
図2に示すように、軸心方向、つまりX方向から見て三角形状に配置されたままプーリ支持フレーム9に支持されており、その配置状態のまま軸心5aまわりにプーリ支持フレーム9、従動プーリ21、23が揺動自在となっている。なお、駆動プーリ7は上記したように水平回転軸5に固定されているため、その配設位置は変動しない。
【0013】
このように構成されたプーリ支持フレーム9では、連結部位19aの近傍に錘部材25が取り付けられている。このため、プーリ支持フレーム9は揺動可能となっているものの、基本的には従動プーリ21、23は次のように位置している。すなわち、
図2に示すように、従動プーリ21は、鉛直方向Zにおいて駆動プーリ7よりも下方側で、かつ水平回転軸5の軸心5aを通って鉛直方向Zに延びる仮想鉛直面(XZ平面)27に対して一方側(+Y方向側)に配置される。一方、従動プーリ23は、鉛直方向Zにおいて駆動プーリ7と従動プーリ21との間で、かつ仮想鉛直面27に対して他方側(-Y方向側)に配置される。なお、このような配置関係に駆動プーリ7および従動プーリ21、23が配置された構造を、「特定配置構造」と称する。
【0014】
これら駆動プーリ7および従動プーリ21、23には、無端状のベルト29が掛け渡されており、ベルト29の内周面が駆動プーリ7および従動プーリ21、23の外周面に当接している。このため、ベルト29は、駆動プーリ7および従動プーリ21、23に沿って循環移動可能となっている。このベルト29の外周面には、複数の錘体31がベルト29の周方向に等間隔で配置されており、ベルト29と一体的に循環移動可能となっている。
【0015】
このベルト循環移動は水平回転軸5の軸心5aまわりの回転に連動する。つまり、
図1に示すように、筐体3の(+X)方向側の内底面に設けられたモータなどの回転機33から回転駆動力が一対のプーリ35、37およびベルト39を介して水平回転軸5に与えられると、当該回転駆動力を受けて錘体31付のベルト29が駆動プーリ7および従動プーリ21、23に沿って循環移動する。
【0016】
また、各錘体31は重力を受けて、
図2に示すように、その現在位置に応じた方向および大きさの力Fをベルト29に与える。同図では、各錘体31がベルト29に与える力Fの方向と大きさを矢印で示している。同図から明らかなように、駆動プーリ7から従動プーリ23を介して従動プーリ21に至る区間に存在する錘体31では、ベルト29を同図において時計回りに回転させる方向に作用する力Fが作用する。一方、従動プーリ21から駆動プーリ7に至る区間に存在する錘体31では、ベルト29を同図において反時計回りに回転させる方向に作用する力Fが作用する。この実施形態では、上記特定配置構造を採用しているため、各錘体31によってベルト29に作用する力Fを総合すると、ベルト29を同図において時計回りに回転させる方向に作用する力が大きく、ベルト29は時計回りに循環移動し、水平回転軸5を軸心5aまわりに回転させる。
【0017】
この水平回転軸5の(-X)方向側の端部は、
図1に示すように、プーリ41、43およびベルト45を介して発電機47と連結されている。この発電機47は、筐体3の(-X)方向側の内底面に設けられており、プーリ41、43およびベルト45を介して伝達されてくる水平回転軸5の回転力を受けて発電する。
【0018】
このように構成された重力発電装置1では、ベルト29の循環移動が停止されている状態で回転機33が作動することで、水平回転軸5が軸心5aまわりにゆっくりと回転し始め、それに応じてベルト29も
図2の紙面において時計回りに循環移動し始める。また、各錘体31からベルト29に与える力Fによって、ベルト29の循環移動が加速され、水平回転軸5の回転速度が上昇する。その結果、発電機47により効率的に電力を発生させることができる。
【0019】
また、従来の振り子運動する錘付きの回転板から回転力を取り出す場合に比べて、機構が簡単になる。錘体31が取り付けられたベルト29が循環移動しながら連続的に電力を発生させることができるため、従来技術に比べて効率の良い重力発電装置を実現することができる。
【0020】
上記において、水平回転軸5が本発明の「回転軸」の一例に相当し、従動プーリ21、23がそれぞれ本発明の「第1従動プーリ」および「第2従動プーリ」の一例に相当している。ベルト29が本発明の「索状体」の一例に相当している。
【0021】
ところで、上記第1実施形態では、錘体31が取り付けられたベルト29の弛みを考慮していないが、ベルト29の弛みによってフレーム構造体17との干渉が問題となる場合がある。第1実施形態では、特に駆動プーリ7と従動プーリ23との間を走行するベルト29が鉛直下方に大きく弛むと、アーム部材15bと干渉する可能性がある。そこで、例えば
図3に示すように、アーム部材15bの上面からベルト29の内周面に向けて回転支持部材49を一定間隔だけアーム部材15bの延設方向に離間しながら設けてもよい。各回転支持部材49では、アーム部材15bの上面からローラ支持部位がベルト29に向けて立設され、ローラ支持部位の上端に対し、ベルト29の内周面に当接して下方から支持する支持ローラが回転自在に取り付けられている。したがって、各支持ローラはベルト29の内周面を支持しながら回転し、ベルト29が大きく撓んでアーム部材15bと干渉するのを効果的に防止する。これによって、錘体31が取り付けられたベルト29を安定して循環移動させることができる。その結果、発電を安定的に行うことができる。
【0022】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記第1実施形態(
図2)および第2実施形態(
図3)では、駆動プーリ7と、本発明の第1従動プーリに相当する従動プーリ21と、本発明の第2従動プーリに相当する従動プーリ23とを水平回転軸5の軸心方向から見て三角形状に配置しながら、それら3つのプーリ7、21、23にベルト29を掛け渡しているが、第2従動プーリの個数は「1」に限定されるものではない。例えば
図4に示すように、第2従動プーリとして、従動プーリ51をさらに追加し、駆動プーリ7と従動プーリ21、51、23とが軸心方向から見て四角形状に配置されるように構成してもよい(第3実施形態)。すなわち、アーム部材15a、15bの間に、それらと同程度の長さを有するアーム部材15dを追加的に筒状部材11から延設させ、その下端部をアーム部材15e、15fによりアーム部材15a、15bとそれぞれ連結した上で、アーム部材15dの下端部に従動プーリ51を追加配置してもよい。そして、駆動プーリ7および従動プーリ21、51、23に対し、無端状のベルト29を掛け渡してもよい。もちろん、第2従動プーリをさらに追加してもよく、要は軸心方向から見て多角形状を形成するように構成してもよい。
【0023】
また、上記第1実施形態ないし第3実施形態では、プーリ支持フレーム9の揺動軸を水平回転軸5の軸心5aと一致させ、水平回転軸5に対して揺動自在に軸支しているが、例えば
図5に示すように、水平回転軸5から分離した位置Pでプーリ支持フレーム9を筐体3に対して揺動自在に設けてもよい。つまり、例えば
図5では、第1実施形態に対して上記分離構造を適用している。もちろん、上記分離構造については、第2実施形態(
図3)に対しても適用可能である。また、例えば
図6では、第3実施形態に対して上記分離構造を適用しており、同図中の符号15gはフレーム構造体17を補強するためのアーム連結部材を示している。
【0024】
また、上記実施形態では、水平回転軸5を軸心5aまわりに回転駆動する回転手段として、モータ等の回転機33を用いているが、ガソリンエンジン等の内燃機関、風車および水車等から適宜選択することができる。また、回転機33の回転軸と水平回転軸5との間に、回転速度を調整する変速ギヤ等を設けてもよい。発電機47と水平回転軸5との間にも、回転速度を調整する変速ギヤ等を設けてもよい。
【0025】
さらに、上記実施形態では、本発明の「索状体」としてベルト29を用いているが、これ以外にチェーンやロープなどが上記「索状体」に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明は、錘体に作用する重力を利用して発電する重力発電装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1…重力発電装置
5…水平回転軸
5a…軸心
7…駆動プーリ
21…(第1)従動プーリ
23…(第2)従動プーリ
27…仮想鉛直面
29…ベルト(索状体)
31…錘体
33…回転機(回転手段)
47…発電機
R…回転方向
X…水平方向(軸心方向)
Z…鉛直方向