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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027503
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】牽引端内の光コネクタ収納構造
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/50 20060101AFI20230222BHJP
   G02B 6/40 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
G02B6/50
G02B6/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132634
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】木村 陽文
(72)【発明者】
【氏名】西村 顕人
【テーマコード(参考)】
2H036
2H038
【Fターム(参考)】
2H036JA02
2H036QA03
2H036QA32
2H036QA49
2H038CA37
2H038CA74
(57)【要約】
【課題】牽引端の内側で光ファイバに微小な曲げが生じることを抑制できる、牽引端内の光コネクタ収納構造を提供する。
【解決手段】牽引端内の光コネクタ収納構造は、複数の光ファイバが挿通された複数のフェルールと、前記複数のフェルールを収容するハウジングと、を有する光コネクタと、前記光コネクタを覆う牽引端と、を備え、前記牽引端の内側で、少なくとも1本の前記光ファイバがループを形成している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバが挿通された複数のフェルールと、前記複数のフェルールを収容するハウジングと、を有する光コネクタと、
前記光コネクタを覆う牽引端と、を備え、
前記牽引端の内側で、少なくとも1本の前記光ファイバがループを形成している、牽引端内の光コネクタ収納構造。
【請求項2】
前記複数のフェルールのうち、少なくとも1つのフェルールに取り付けられた全ての光ファイバが、前記牽引端の内側で前記ループを形成している、請求項1に記載の牽引端内の光コネクタ収納構造。
【請求項3】
前記複数の光ファイバには、テープ心線が含まれ、
前記牽引端の内側で前記テープ心線が前記ループを形成している、請求項1または2に記載の牽引端内の光コネクタ収納構造。
【請求項4】
前記牽引端の内部で、2本以上の前記光ファイバがそれぞれ、互いに異なる大きさのループを形成している、請求項1から3のいずれか1項に記載の牽引端内の光コネクタ収納構造。
【請求項5】
前記ループが形成された状態を保持する保持構造が、前記牽引端の内部に配置されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の牽引端内の光コネクタ収納構造。
【請求項6】
前記保持構造は、前記光ファイバの長手方向において異なる位置に配置された一対の保持部材を含み、
前記一対の保持部材はそれぞれ、前記光ファイバの非ループ部と前記ループとを結束している、請求項5に記載の牽引端内の光コネクタ収納構造。
【請求項7】
前記保持構造は、前記光ファイバの長手方向から見て前記ループを囲う囲繞部材を含む、請求項5または6に記載の牽引端内の光コネクタ収納構造。
【請求項8】
前記保持構造は、前記ループを収納する環状の収納空間が形成された収納部材を含む、請求項5から7のいずれか1項に記載の牽引端内の光コネクタ収納構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引端内の光コネクタ収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光ケーブルの端部に牽引端(pulling attachment)が設けられ、牽引端の内部に複数の光コネクタが配置された構造が開示されている。牽引端内における各光コネクタの長手方向における位置は互いに異なっており、これにより、牽引端が太くなることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0004273号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の光ケーブルに含まれる各光ファイバを接続する際には、多数の光コネクタを相手側のコネクタに接続する必要があり、接続作業に時間を要する。そこで本願の発明者らは、接続作業の時間短縮のため、1つのコネクタで多数の光ファイバを接続できるように構成することを検討した。その結果、牽引端の内側における光ファイバの長さのばらつきが、光ファイバの微小な曲げを生じさせ、伝送損失の増大や光ファイバの塑性変形を誘発する場合があることが判った。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、牽引端の内側で光ファイバに微小な曲げが生じることを抑制できる、牽引端内の光コネクタ収納構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る牽引端内の光コネクタ収納構造は、複数の光ファイバが挿通された複数のフェルールと、前記複数のフェルールを収容するハウジングと、を有する光コネクタと、前記光コネクタを覆う牽引端と、を備え、前記牽引端の内側で、少なくとも1本の前記光ファイバがループを形成している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、牽引端の内側で光ファイバに微小な曲げが生じることを抑制可能な、牽引端内の光コネクタ収納構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る牽引端付光ケーブルの構造を説明する、部分断面図である。
図2図1の光コネクタの斜視図である。
図3図2の光コネクタの分解斜視図である。
図4図3のフェルールユニットの拡大図である。
図5】牽引端の内側でループを形成する光ファイバの模式図である。
図6A】保持構造の第1の例を示す図である。
図6B】保持構造の第2の例を示す図である。
図6C】保持構造の第3の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態に係る牽引端内の光コネクタ収納構造を採用した、牽引端付光ケーブルについて、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、牽引端付光ケーブル200は、光ケーブルCと、光コネクタ1と、牽引端100と、を備える。光コネクタ1および牽引端100は、光ケーブルCの端部に取り付けられる。光コネクタ1は、光ケーブルCに含まれる複数の光ファイバ11を、他の光コネクタに接続するように構成されている。牽引端100は、光コネクタ1を覆っている。牽引端100は、光ケーブルCを建物のダクト等に通す際に、光コネクタ1を保護する役割を有する。牽引端100は、光ケーブルCを上記ダクト等に通す際に、引っ張られる部位でもある。光ケーブルCがダクト等に通された後、牽引端100は光ケーブルCから取り外され、光コネクタ1が露出する。
【0010】
光ケーブルCは、シースS、複数の光ファイバ11、およびテンションメンバ(不図示)等を有する。複数の光ファイバ11およびテンションメンバは、シースSの内側に収容されている。
牽引端100は、インナーチューブ110と、アウターチューブ120と、ヘッド130と、接続部材140と、保持具150と、を有している。
ヘッド130は、コーン形状の金属製の部材であり、先端にプーリングアイ131を備えている。プーリングアイ131にロープ等を結んで引っ張ることで、牽引端付光ケーブル200をダクト等に挿通しやすくなる。なお、プーリングアイ131が無くても、例えば空気圧送等によって牽引端付光ケーブル200をダクトに挿通することが可能である。ヘッド130は、例えば溶接によってインナーチューブ110と接合されている。
【0011】
保持具150は管状であり、内側に光ファイバ11が通される。保持具150は例えば金属製である。保持具150は、光ケーブルCが備えるテンションメンバに固定されている。また、保持具150は接続部材140を介してインナーチューブ110の後端部に固定されている。さらに、インナーチューブ110の前端部はヘッド130に固定されている。このため、ヘッド130が引っ張られたときに、牽引力がテンションメンバへと伝わる。これにより、牽引力が光ファイバ11等の強度の低い部材に印加されることを抑制できる。
【0012】
インナーチューブ110は、可撓性を有しており、かつ、牽引力によって破損しない程度の強度を有している。インナーチューブ110としては、例えば金属製のスパイラル管を用いることができる。アウターチューブ120は、インナーチューブ110の外周面に設けられ、可撓性を有している。アウターチューブ120の材質は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン樹脂、フッ素系ポリマー、熱可塑性エラストマー等の弾性体である。アウターチューブ120が設けられていることで、牽引端100内に水や埃等が入り込むことを抑制できる。インナーチューブ110の内側には、光コネクタ1の少なくとも一部が収容されている。
【0013】
図2図3に示すように、光コネクタ1は、複数のフェルールユニット2と、スプリングプッシュ3と、ハウジング4と、支持部材5と、中間部材6と、を備える。図4に示すように、各フェルールユニット2は、フェルール21と、2本のガイドピン23と、ピンクランプ24と、スプリング25と、を有する。
【0014】
フェルール21は、接続端面211と、複数のファイバ孔212と、2つのガイド孔213と、を有する。ファイバ孔212及びガイド孔213は、接続端面211に開口している。各ガイド孔213には、ガイドピン23が挿通可能である。各ファイバ孔212には、光ファイバ11の端部が挿通可能である。フェルール21には、複数の光ファイバ11の端部を取り付けることができる。
【0015】
以下の説明においては、同一のフェルール21に取り付けられる複数の光ファイバ11を「ファイバ束10」と呼ぶことがある。一部の図面においては、フェルール21から後方に延びる複数の光ファイバ11を、ファイバ束10として記載している。ファイバ束10は、例えば1つまたは複数のテープ心線であってもよい。テープ心線は、並列配置された複数の光ファイバ11と、これらの光ファイバを一括して覆う被覆層と、を有する。1つのフェルール21に対し、1つのテープ心線が取り付けられていてもよいし、複数のテープ心線が取り付けられていてもよい。
【0016】
(方向定義)
本実施形態では、光ファイバ11やファイバ孔212、ガイド孔213の長手方向を単に「長手方向X」と呼ぶ。2つのガイド孔213あるいは2本のガイドピン23が並べられた方向を左右方向Yと呼ぶ。左右方向Yは、長手方向Xに直交している。長手方向X及び左右方向Yの双方に直交する方向を上下方向Zと呼ぶ。また、長手方向Xにおいて接続端面211に向かう方向を前方(+X側)又は先端側と呼ぶ。前方の反対側を後方(-X側)又は基端側と呼ぶ。また、上下方向Zにおける上方を+Zで示す。上方の反対側である下方を-Zで示す。
【0017】
フェルール21のファイバ孔212及びガイド孔213は、それぞれフェルール21を長手方向Xに貫通している。複数のファイバ孔212は、左右方向Y及び上下方向Zに並べられている。本実施形態では、接続端面211において複数のファイバ孔212を形成した領域が、接続端面211の中央に位置し、左右方向Y及び上下方向Zに延びる辺を有する矩形状に形成されている。フェルール21の接続端面211には、各ファイバ孔212に挿入された光ファイバ11の端面が露出する。
【0018】
本実施形態のフェルール21は、2つの位置決め凹部214を有する。各位置決め凹部214は、フェルール21の上端面および下端面に形成されている。これら2つの位置決め凹部214は、いずれも前方に開口する。位置決め凹部214は、フェルール21をフロントプレート42に位置決めするために用いられる。
【0019】
ピンクランプ24は、筒状に形成され、フェルール21の後方に配される。ピンクランプ24の内側には、フェルール21の後方に延出する複数の光ファイバ11(ファイバ束10)が挿通される。また、ピンクランプ24は、フェルール21から後方に突出するガイドピン23の後端部を保持する。
【0020】
スプリング25は、フェルール21やピンクランプ24の後方に配され、長手方向Xに弾性変形可能となっている。具体的に、スプリング25は、長手方向Xに弾性的に伸縮する筒状のコイルスプリングである。スプリング25の内側には、ピンクランプ24の後方において、複数の光ファイバ11(ファイバ束10)が挿通される。
【0021】
スプリングプッシュ3は、複数のフェルールユニット2の後方に配される。具体的に、スプリングプッシュ3は、長手方向Xにおいて複数のフェルール21との間に複数のスプリング25を挟むように配される。
スプリングプッシュ3には、スプリングプッシュ3を長手方向Xに貫通する複数の貫通孔31が形成されている。複数の貫通孔31には、複数のフェルールユニット2から後方に延びる複数のファイバ束10が個別に挿通される。貫通孔31の数は、フェルールユニット2の数に対応している。
【0022】
本実施形態のスプリングプッシュ3は、円板状あるいは円柱状に形成されている。また、スプリングプッシュ3の外周面には、キー32が突出して形成されている。
スプリングプッシュ3には、複数の保持部33が設けられている。複数の保持部33は、それぞれ複数の貫通孔31に隣接する位置に配されている。具体的に、複数の保持部33は、スプリングプッシュ3から前方に突出している。各保持部33は、スプリング25の後端部の内側に嵌め入れられる。これにより、スプリング25の後端が保持部33に保持される。
【0023】
図3に示すように、本実施形態のハウジング4は、長手方向Xに延びる筒状のハウジング本体41と、ハウジング本体41の前端側の開口を塞ぐフロントプレート42と、を有する。ハウジング4は、複数のフェルールユニット2及びスプリングプッシュ3を収容する。ハウジング4は、フェルール21及びスプリングプッシュ3を長手方向Xに移動可能に保持する。
【0024】
ハウジング本体41は、円筒状に形成されている。ハウジング本体41の内周面には、長手方向Xに延びる複数のキー溝43が形成されている。スプリングプッシュ3をハウジング本体41に収容した状態においては、スプリングプッシュ3の複数のキー32がハウジング本体41の複数のキー溝43に個別に挿入される。ハウジング本体41の前端には、複数の規制用突起44が形成されている。
【0025】
フロントプレート42は、円板状に形成されている。フロントプレート42は、フロントプレート42を長手方向Xに貫通する複数の挿通孔45を有する。複数の挿通孔45には、複数のフェルール21が、個別に後方から挿通される。挿通孔45に挿通されたフェルール21は、フロントプレート42(ハウジング4)に対して長手方向Xに移動可能な状態で、フロントプレート42に保持される。各フェルール21にはスプリング25による前方に向けた付勢力が作用する。この付勢力によってフェルール21が脱落しないように、フェルール21はフロントプレート42に係止される。
【0026】
本実施形態のフロントプレート42には、フロントプレート42の前端面421から前方に突出する複数の第二ガイドピン46が設けられている。フロントプレート42は、ハウジング本体41に対して後方から挿入され、ハウジング本体41の内側に収容される。フロントプレート42をハウジング本体41の内側に収容した状態では、フロントプレート42のキー47がハウジング本体41のキー溝43に挿入される。また、ハウジング本体41の内側に収容されたフロントプレート42をハウジング本体41の前端部に到達させた状態では、フロントプレート42が、ハウジング本体41の規制用突起44に突き当たる。フロントプレート42には、フロントプレート42の前端面421の外周縁の領域から後方に窪む収容溝49が形成されている。収容溝49には、ハウジング本体41の規制用突起44が収容される。
【0027】
支持部材5は、筒状に形成され、スプリングプッシュ3の後方に配される。筒状とされた支持部材5の内側には、スプリングプッシュ3の後方に延びる複数の光ファイバ11(ファイバ束10)が挿通される。本実施形態の支持部材5は、ハウジング本体41と同様の円筒状に形成されている。
【0028】
支持部材5は、ハウジング4の後端部4Rに係止される。本実施形態では、ハウジング本体41の内周面の後端部分に形成された雌ねじ48が、支持部材5の外周面の前端部分に形成された雄ねじ51に噛み合う。雄ねじ51を雌ねじ48に噛み合わせた状態では、支持部材5の前端部分が、ハウジング本体41の後端部分の内側に挿入され、保持される。
【0029】
中間部材6は、筒状に形成され、長手方向Xにおいてスプリングプッシュ3と支持部材5との間に配される。中間部材6は、支持部材5がハウジング4(ハウジング本体41)に係止された状態でスプリングプッシュ3と支持部材5との間に挟まれる。この状態では、複数のスプリング25が弾性変形し、複数のスプリング25の弾性力によって複数のフェルール21がそれぞれ前方に付勢される。中間部材6の外周面には、複数のキー62が突出して形成されている。各キー62はハウジング本体41のキー溝43に挿入される。
【0030】
以上のように構成される光コネクタ1では、フロントプレート42、複数のフェルールユニット2、スプリングプッシュ3及び中間部材6が、前方から後方に向けて順番に並ぶように、ハウジング本体41の内側に収容される。この状態において、複数のフェルール21及びフロントプレート42が、複数のスプリング25によって後方から支持される。これにより、複数のフェルール21及びフロントプレート42が、ハウジング本体41に対して後方に移動可能となるようなフローティング状態で保持される。
以上のことから、光コネクタ1を相手方コネクタに接続した状態において、相手方コネクタとの接続状態を良好に保つことが可能となる。
【0031】
ここで、光コネクタ1は複数の光ファイバ11を備えているが、牽引端100の内部に収容された各光ファイバ11の長さは均等であるとは限らない。牽引端100の内部において、光ファイバ11の長さにバラつきがあると、長い光ファイバ11に微小な曲げが生じる場合がある。また、光コネクタ1を他のコネクタに接続する際に、フェルール21が後退することに起因して、光ファイバ11に微小な曲げが生じる場合もある。光ファイバ11の曲げ半径が所定の値以下になると、光の伝送損失が増大したり、光ファイバ11の塑性変形が生じたりする。
【0032】
そこで本実施形態では、図5に示すように、牽引端100の内部において光ファイバ11にループLを形成する。ループLが予め形成されていることで、牽引端100内の光ファイバ11の長さのバラつきを、ループLの大きさの違いによって吸収することができる。より具体的には、相対的に長い光ファイバ11について、余長部分をループLに含ませることができる。その結果、光ファイバ11に微小な曲げが生じることを抑制できる。
図5では、図面を見やすくするため、光コネクタ1が備える複数の光ファイバ11を代表させて2本の光ファイバ11A、11Bを表示している。図5に示したループLの形状はあくまで一例である。
【0033】
図5に示すように、各光ファイバ11のループLの大きさは互いに異なっていてもよい。また、図5に示すループLはいずれも楕円形状であるが、一部あるいは全部のループLが円形状であってもよい。光ケーブルCが備える複数の光ファイバ11の一部が、牽引端100内でループLを形成していなくてもよい。言い換えると、少なくとも1本の光ファイバ11が牽引端100内でループLを形成していればよい。
【0034】
図5の例では、光ファイバ11AのループLは2箇所において牽引端100(インナーチューブ110の内周面)に接している。この場合、光ファイバ11Aを牽引端100に接触させることで、ループLの形状を保持することができる。また、楕円形のループLの短径(あるいは円形のループLの直径)は、牽引端100の内径と同等になる。
ただし、光ファイバ11Bのように、ループLが牽引端100に接していなくてもよい。光ファイバ11Bにおいては、楕円形のループLの短径(あるいは円形のループLの直径)は、牽引端100の内径より小さくなる。図5に示すように、ループL同士は重ならないように配置されていることが、より好ましい。ただし、ループL同士が重なっていても、光ファイバ11に微小な曲げが生じるのを抑制することは可能である。
【0035】
図6A図6Cに示すように、牽引端100の内部に、ループLを保持する保持構造300が設けられていてもよい。保持構造300を用いることで、光ファイバ11が牽引端100の内面に接していなくても、ループLの形状を保持することができる。
【0036】
図6Aに示す保持構造300は、長手方向Xにおいて異なる位置に配置された一対の保持部材301を含んでいる。各保持部材301は、光ファイバ11のループLと非ループ部Nとを結束している。非ループ部Nとは、光ファイバ11のうち、ループLを形成していない部分である。保持部材301は環状または筒状であり、内側にループLおよび非ループ部Nが通されている。一対の保持部材301のそれぞれの内面にループLが接することで、ループLが形成された状態が保持される。また、保持部材301の内側で、非ループ部NおよびループLは移動することができる。したがって、ループLの形状は変化可能である。保持部材301としては、結束バンド、紐、熱収縮チューブ等を用いることができる。
【0037】
図6Bに示す保持構造300は、囲繞部材302を含んでいる。囲繞部材302は、環状または筒状であり、長手方向Xから見てループLを囲っている。ループLは囲繞部材302の内面に2箇所で接しており、これによりループLが形成された状態が保持される。また、囲繞部材302の内側で、ループLの形状は変化可能である。囲繞部材302としては、楕円形のループLの短径(あるいは円形のループLの直径)よりも内径が大きい熱収縮チューブ等を用いることができる。
【0038】
図6Cに示す保持構造300は、環状の収納空間303aが形成された収納部材303を含んでいる。収納部材303の材質としては、例えば樹脂(シリコン樹脂など)を採用できる。図6Cにおける収納空間303aは、収納部材303の側面に形成された環状の溝である。この溝(収納空間303a)の内側に、ループLが収納されている。これにより、ループLが形成された状態が保持される。また、収納空間303aの幅は光ファイバ11の線径より大きいため、この幅の範囲内で、ループLの形状は変化可能である。
【0039】
収納部材303には、光ファイバ11を収納空間303aに導くための一対の導入路303bが形成されている。図6Cの例における導入路303bは、収納部材303の側面に形成された溝である。導入路303bは収納空間303aに接続されるとともに、前方または後方に向けて開口している。導入路303b内に、光ファイバ11の非ループ部Nの一部が収納される。
なお、導入路303bが無くても、光ファイバ11を収納空間303a内に導入することは可能である。したがって導入路303bは必須ではない。
【0040】
図6Cに示す収納空間303aは環状の溝であるが、その他の形態を採用してもよい。例えば、収納部材303は環状の中空容器であってもよい。この場合、中空容器が有する環状の内部空間を、収納空間303aとして用いることができる。また、導入路303bとして、中空容器に一対の貫通孔を形成してもよい。
【0041】
図6A図6Cに示すいずれの保持構造300についても、ループLが形成された状態は保持されるが、ループLの形状は変化可能である。したがって、例えばフェルール21が後退したときには、ループLが大きくなるように各光ファイバ11が変形し、光ファイバ11に微小な撓みが生じることが抑制される。
なお、上記した保持構造300はあくまで一例であり、その他の形態を採用してもよい。
【0042】
ループLは、光ファイバ11ごとに形成されていてもよい。あるいは、ファイバ束10ごとに形成されていてもよい。例えばファイバ束10の態様がテープ心線である場合は、テープ心線自体でループLを形成してもよい。より具体的には、図6Aの例において、一対の保持部材301は、テープ心線のループLと非ループ部Nとを結束してもよい。図6Bの例において、囲繞部材302は、長手方向Xから見てテープ心線のループLを囲っていてもよい。図6Cの例において、収納空間303a内に、テープ心線のループLが収納されていてもよい。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る牽引端内の光コネクタ収納構造は、複数の光ファイバ11が挿通された複数のフェルール21と、複数のフェルール21を収容するハウジング4と、を有する光コネクタ1と、光コネクタ1を覆う牽引端100と、を備え、牽引端100の内側で、少なくとも1本の光ファイバ11がループLを形成している。この構成によれば、ループLの大きさを変化させることにより、牽引端100の内側における光ファイバ11の長さのばらつきを吸収することができる。したがって、牽引端100内における長さが長い光ファイバ11に、微小な曲げが発生することを抑制できる。また、フェルール21が後退した際に、ループLが大きくなるように光ファイバ11が変形することで、光ファイバ11に微小な曲げが発生することを抑制できる。結果として、微小な曲げに起因する光ファイバ11の伝送損失の増大や塑性変形の発生などを抑制できる。
【0044】
また、光コネクタ1が備える複数のフェルール21のうち、少なくとも1つのフェルール21に取り付けられた全ての光ファイバ11(またはファイバ束10)が、牽引端100の内側でループLを形成していてもよい。この場合、フェルール21が後退したときに、当該フェルール21に取り付けられた全ての光ファイバ11のループLが変形することで、各光ファイバ11に微小な曲げが発生することを抑制できる。
【0045】
また、複数の光ファイバ11にはテープ心線が含まれ、牽引端100の内側でテープ心線がループLを形成していてもよい。この場合、光ファイバ11が個別にループLを形成する場合と比較して、光ファイバ11に微小な曲げが生じることをより確実に抑制できる。さらに、1つのフェルール21に取り付けられた全ての光ファイバ11が牽引端100の内側でループLを形成する構造を、容易に実現できる。
【0046】
また、牽引端100の内部で、2本以上の光ファイバ11がそれぞれ、互いに異なる大きさのループLを形成していてもよい。この場合、牽引端100内における各光ファイバ11の長さが互いに異なっても、各光ファイバ11のループLの大きさが異なることで、長さの違いを吸収することができる。
【0047】
また、光ファイバ11にループLが形成された状態を保持する保持構造300が、牽引端100の内部に配置されていてもよい(図6A図6C参照)。この場合、光ファイバ11が牽引端100の内面に接していなくても、ループLが形成された状態を保持できる。
【0048】
また、保持構造300は、光ファイバ11の長手方向Xにおいて異なる位置に配置された一対の保持部材301を含み、一対の保持部材301はそれぞれ、光ファイバ11の非ループ部NとループLとを結束していてもよい(図6A参照)。
あるいは、保持構造300は、長手方向Xから見てループLを囲う囲繞部材302を含んでもよい(図6B参照)。
あるいは、保持構造300は、ループLを収納する環状の収納空間303aが形成された収納部材303を含んでもよい(図6C参照)。
これらの場合、ループLの形状が変化可能な状態でループLを保持することができる。したがって、例えばフェルール21が後退したときに、ループLが大きくなるように光ファイバ11を変形させ、光ファイバ11に微小な撓みが生じることを抑制できる。
【0049】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0050】
例えば、前記実施形態の光コネクタ1の構造は一例である。複数のフェルール21が前方に付勢され、かつ後退可能な構成であれば、光コネクタ1の構造を適宜変更してもよい。同様に、牽引端100の構造を適宜変更してもよい。
【0051】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
例えば、牽引端100の内部に、図6A図6Cに示すような互いに異なる種類の複数の保持構造300が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…光コネクタ 4…ハウジング 11…光ファイバ 21…フェルール 100…牽引端 300…保持構造 301…保持部材 302…囲繞部材 303…収納部材 303a…収納空間 L…ループ N…非ループ部 X…長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C