(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027521
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】ブラスト加工用保持具 並びにこれを具えたブラスト加工用保護装置
(51)【国際特許分類】
B24C 3/06 20060101AFI20230222BHJP
B24C 5/02 20060101ALI20230222BHJP
B24C 9/00 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
B24C3/06 Z
B24C5/02 Z
B24C9/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132664
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】521363859
【氏名又は名称】岩崎 安男
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 安男
(57)【要約】
【課題】 ブラスト作業時、ブラストボックスの保護範囲から外れるような文字列等を加工する場合であっても、作業している手でブラストボックスを文字列に合わせて移動させていくだけで、ブラスト作業を中断することなくブラストボックスをずり降ろすことができる、新規なブラスト加工用保持具並びにこれを具えたブラスト加工用保護装置の開発を技術課題とした。
【解決手段】 本発明のブラスト加工用保持具Aは、ブラストボックス1Aに接続されている取付バンド4を被加工物3に回し掛けて、ブラストボックス1Aを被加工物3に対し緩保持状態に設置するための保持具であって、この保持具は、支持片51にガイドローラ52等の可動案内体が設けられ、この当該可動案内体は、挟み当て作用部55を具えるものであり、この挟み当て作用部55が被加工物3の角稜部3Aに位置するように、取付バンド4によって保持されることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラストボックスに接続されている取付バンドを被加工物に回し掛けて、ブラストボックスを被加工物に対し緩保持状態に設置するための保持具であって、
この保持具は、支持片に可動案内体が設けられ、更に当該可動案内体は、挟み当て作用部を具えるものであり、この挟み当て作用部が被加工物の角稜部に位置するように、取付バンドによって前記保持具が保持される構成であることを特徴とするブラスト加工用保持具。
【請求項2】
前記可動案内体は、一対のガイドローラによって構成され、且つ支持片に対して一対のガイドローラが互いに回転軸を交差するように構成され、各ガイドローラの内挟み側を挟み当て作用部としたことを特徴とする請求項1記載のブラスト加工用保持具。
【請求項3】
前記一対のガイドローラは、支持片に対して可動方向に複数組設けられていることを特徴とする請求項2記載のブラスト加工用保持具。
【請求項4】
前記支持片は、挟み当て作用部の反対側に取付バンド受け部を具えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のブラスト加工用保持具。
【請求項5】
ブラストボックスの内部を、ブラストガンと、これを操作する作業者の手とを受け入れる加工室とするとともに、ブラストボックスの一部には被加工物にブラストガンからの砥粒を当接させるための作業開口と、更に加工室内の作業状態を監視できる監視窓とを具えて成るブラスト加工用保護装置であって、
前記ブラストボックスには、このものを被加工物に緩保持させるための取付バンドが取り付けられ、この取付バンドは、被加工物の角稜部に添わせるように、請求項1から4のいずれか1項記載のブラスト加工用保持具を保持することを特徴とするブラスト加工用保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、墓碑等への文字、紋様等の彫り込みを行うためのブラスト作業に用いられる保護装置に関するものであって、特に連続した文字、紋様等を彫り込む際に掘り込み位置の移動に伴う保護装置の移動を円滑にするためのブラスト加工用保持具、並びにブラスト加工用保護装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
墓石等に墓碑銘等を彫り込む作業として、ブラスト作業が一般的に行われている。この作業は、彫り込む文字等をくり抜いた厚さ1mm以下程度のゴム製マスキングシートを被加工物に貼り付けた後、ブラストガンから砥粒を吹き付けて表面を彫り込むものである。このとき、砥粒と、削り取られた石片とが激しく舞うことから、多くの場合はブラストボックス内に被加工物を収めた後、保護カバーで手元を覆いながら作業を行っている。
ところで新設の墓碑等では、この彫り込み作業を工場で行うことができ、それに応じた設備を利用して作業条件を整えた上で、当該作業を行うことが可能である。しかしながら、墓地等に既に設けられている墓碑に対し、新たに物故者等の墓碑銘を追加する場合には、ほとんど現場での彫り込み作業を余儀なくされる。この場合でもサンドブラスト加工を行う以上、その保護対策は不可欠であるから、この作業のため、従来から可搬型の小型のブラストボックスを用いていた。
しかしながら、この従来の可搬型保護装置(可搬型の小型のブラストボックス)は、工場設置用に開発されたブラストボックスをそのまま小さくする程度の発想でしかなく、このため既設の墓碑等であって、しかも充分な作業スペースを確保できないような場合には極めて作業が行い難いものであった。
【0003】
このような従来手法を改善する一環として、本発明者は、既に特開2005-52922号「ブラスト加工用保護装置」を提案し、実機は斯界において好評裏に用いられている。
ところで、例えば墓石の場合、彫り込まれる墓碑銘等の文字は上下にわたって長いことが多い。このため、ブラストガンを用いて文字を彫り込む際には、加工位置に合わせて保護範囲を設定するブラストボックスを、例えば上から下へずらしながら作業する形態が採られている。また、このブラストボックスは、例えば墓石等に対し、取付バンドを回し掛けた緩保持状態に取り付けられるものであり、ブラストボックスを上から下へずらす場合には、その都度、ブラスボックスをずり降ろす作業とともに、これに合わせ取付バンドをずり降ろす作業を必要としていた。当然ながら、このような作業はブラスト作業を一旦中断して行うものであり、ブラストボックスの下方への移動作業の面倒さと、ブラスト作業を中断せざるを得ないこととが相まって、作業者にとっては、煩わしさを感じさせるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような背景を考慮してなされたものであって、ブラストボックスの保護範囲から外れるような文字列等を加工する場合であっても、作業している手でブラストボックスを文字列に合わせて移動させていくだけで、ブラスト作業を中断することなくブラストボックスをずり降ろすことができる、新規なブラスト加工用保持具並びにこれを具えたブラスト加工用保護装置の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち請求項1記載のブラスト加工用保持具は、
ブラストボックスに接続されている取付バンドを被加工物に回し掛けて、ブラストボックスを被加工物に対し緩保持状態に設置するための保持具であって、
この保持具は、支持片に可動案内体が設けられ、更に当該可動案内体は、挟み当て作用部を具えるものであり、この挟み当て作用部が被加工物の角稜部に位置するように、取付バンドによって前記保持具が保持される構成であることを特徴として成るものである。
【0007】
また請求項2記載のブラスト加工用保持具は、前記請求項1記載の要件に加え、
前記可動案内体は、一対のガイドローラによって構成され、且つ支持片に対して一対のガイドローラが互いに回転軸を交差するように構成され、各ガイドローラの内挟み側を挟み当て作用部としたことを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項3記載のブラスト加工用保持具は、前記請求項2記載の要件に加え、
前記一対のガイドローラは、支持片に対して可動方向に複数組設けられていることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項4記載のブラスト加工用保持具は、前記請求項1から3のいずれか1項記載の要件に加え、
前記支持片は、挟み当て作用部の反対側に取付バンド受け部を具えていることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項5記載のブラスト加工用保護装置は、
ブラストボックスの内部を、ブラストガンと、これを操作する作業者の手とを受け入れる加工室とするとともに、ブラストボックスの一部には被加工物にブラストガンからの砥粒を当接させるための作業開口と、更に加工室内の作業状態を監視できる監視窓とを具えて成るブラスト加工用保護装置であって、
前記ブラストボックスには、このものを被加工物に緩保持させるための取付バンドが取り付けられ、この取付バンドは、被加工物の角稜部に添わせるように、前記請求項1から4のいずれか1項記載のブラスト加工用保持具を保持することを特徴として成るものである。
そして、これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0011】
まず請求項1または5記載の発明によれば、ブラスト作業中にブラストボックスの加工室に入れた手で、そのままずり動かすようにすれば、取付バンドが回し掛けされたブラスト加工用保持具の作用によって、ブラストボックスを円滑にずり動かすことができる。従って、ブラスト作業を中断することによる煩わしさが結果的に解消され、且つ効率的にブラスト作業を行うことができる。
【0012】
また請求項2または5記載の発明によれば、被加工物に当接する可動案内体は、一対のガイドローラによって構成されるため、被加工物に対して回し掛けた取付バンドの移動ひいてはブラストボックスの移動を円滑に行うことができる。
【0013】
また請求項3または5記載の発明によれば、前記一対のガイドローラは、移動方向に対して複数組設けられているため、より一層、安定した移動状態が得られる。
【0014】
また請求項4または5記載の発明によれば、ガイドローラ等の可動案内体を支持する支持片は、取付バンドの受け部(取付バンド受け部)を具えているため、ブラスト加工用保持具を取付バンドに対し確実に係止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のブラスト加工用保持具の使用状態(一例)を示す斜視図、並びにブラスト作業中の断面図、並びにブラスト加工用保持具を拡大して示す斜視図である。
【
図2】ブラスト作業中の保護装置本体たるブラストボックスを前方斜め上方から示す斜視図である。
【
図4】本発明のブラスト加工用保持具の使用状態を、墓石の背面側から示す斜視図(a)、並びに平面断面図(b)である。
【
図5】本発明のブラスト加工用保持具を拡大して示す平面断面図(a)、並びに本図(a)のV方向から視たブラスト加工用保持具の投影図(b)、並びに斜視図(c)である。
【
図6】ブラスト加工用保持具の改変例を三種示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、以下の実施例に述べる通りであるが、この実施例に対して本発明の技術思想の下に種々の改変が可能である。
【実施例0017】
本発明のブラスト加工用保持具Aと、これを具えたブラスト加工用保護装置1とについて以下説明する。ここでブラスト加工用保護装置1の具体的な説明に先立ち、まずブラスト作業の作業環境と、その際に用いるブラスト装置2等について
図1に基づき概略的に説明する。
本発明に係るブラスト加工は、被加工物の一例たる墓碑3に対し、その側面等に適宜の彫り込み31を形成する場合に好適である。以下、被加工物にも墓碑3と同じ符号「3」を付す。
【0018】
ブラスト装置2は、従来からの既存の装置を適用するものであって、加工動力としては適宜エンジンまたはモータにより駆動されるコンプレッサ21の圧搾空気を利用する。すなわち、コンプレッサ21からのホース22が砥粒ホッパ24へ接続されて、砥粒ホッパ24の内部が加圧された状態で砥粒26と圧搾空気とが混合され、砥粒パイプ25を経てブラストガン23に導かれるように構成されている。なお、詳細な図示は省略するが、ブラストガン23は、トリガーを引くことによって砥粒26が混じった圧搾空気を噴射し、この砥粒26が被加工物3に当接して、彫り込み31を形成するものである。
彫り込み31の形状は、例えば厚さ1mm以下のゴム製マスキングシート27に、予め適宜の形状をくり抜いておくことにより、所望の文字・紋様等に形成するものである。
【0019】
このようなブラスト作業を行うにあたり、砥粒26と、被加工物3たる墓碑3の表面の削り取られた石片との飛散を防止し、作業者を保護するために、例えばボックス状のブラストボックス1A内で当該作業が行われる。
因みに、このようなブラスト加工用保護装置1が、被加工物3に対し取り付けた状態で使用できる場合は、この取り付けた状態でブラスト作業を行うものであるが、例えば上記
図1に示すように、ブラスト加工用保護装置1を被加工物3の高さ方向の途中位置に設ける場合には、取付バンド4を被加工物3に回し掛けて、被加工物3に対しブラスト加工用保護装置1を緩保持状態に取り付けるものである。そして、この取付バンド4に対し、本発明のブラスト加工用保持具Aが組み合わされて用いられる。
【0020】
以下、ブラスト加工用保護装置1について具体的に説明する。
符号10は、ブラスト加工用保護装置1(ブラストボックス1A)の内部空間である加工室であって、この加工室10は、一例として直方体状の空間として構成される。
この加工室10を構成する外殻部材としては、被加工物3に密着状態にセットされる矩形状の背面板11と、その上方から手前側から伸びる矩形状の天板12と、背面板11の両側端から手前側に伸びる左右の側板14と、下方に配設される底板13と、更に背面板11と対向状態に設けられる正面板15とにより構成される。
【0021】
背面板11は、被加工物3たる墓碑3に直接あてがうように設けられる板部材である。この背面板11には、ブラストガン23の砥粒26が被加工物3に吹き付けられるように、作業開口110が開口形成されている。また、この作業開口110については、一例として
図1の断面図に示すように、下端縁を底板13の位置まで開口させることが好ましく、これは被加工物3たる墓碑3の下方に位置する彫り込み31を加工する際に、その作業が行い易いためである。なお、作業開口110の周縁部等には、気密性を高めるゴムストリップS等を張設して取り付けることが望ましい。
【0022】
また背面板11の上端部から手前側に延びる天板12も矩形の板状に形成され、本実施例では、ここに監視窓16が開口される。なお、これと同様の監視窓16が正面板15にも開口され、これらによって作業状態がより観察し易いように構成される。ここでこれらの監視窓16について説明すると、一例として
図2に示すように、監視窓16は窓枠部160を具えるとともに、その窓枠部160の内側を一部相対的に凹ませて案内凹部161とし、そこに交換自在のガラス板等を用いた透視板Gを嵌め込むように構成される。
【0023】
次に、天板12に対向する底板13について説明する。
底板13も、天板12と同様、矩形の板状に形成され、その下方に排出部131が形成される。この排出部131には、柔軟な材料によって構成された捕集ブーツ18が取り付けられる。
【0024】
次に、左右の側板14と正面板15とについて説明する。
まず側板14には、正面板15にも形成される作業切欠17の一部を共有するように側部作業切欠174が形成される。また正面板15については、その全幅にわたり一連の正面部作業切欠175を具える。そして、この作業切欠17には保護ブーツ19がその周縁を密閉するように取り付けられる。
保護ブーツ19は、一例として作業者の両手が入るような差込口191を少なくとも一対具えるものであり、この差込口191に作業者の手を差し込んだ状態において、前記作業切欠17が側板14側にも延長して形成されていることから、作業者の手の自由可動範囲Zを正面板15の範囲のみならず、その側方範囲まで確保し得る構造となっている(
図1・
図2参照)。
【0025】
更に側板14には、通気作用を確保するための通気口140を設けるとともに、取り付け等に利用するハンドルフック141を設ける。通気口140には、砥粒26等の多くが外部に噴出しないように、金網等のフィルター構造を具えることが望ましい。また、側板14には、取付バンド4を固定するためのアイボルト142を設けるものである。
また、加工室10の内側には、一例として
図3に示すように、砥粒26や被加工物3たる墓碑3の表面の削り取られた石片の衝突から保護ブーツ19を保護するために緩衝フラップ192が設けられることが好ましい。この緩衝フラップ192は、例えばゴム製シートから成る短冊状部材を、加工室10内において作業切欠17の上縁部から垂れ下がるような、のれん状に設けて成る。
【0026】
またブラスト加工用保護装置1は、上述したように、その左右両側板14から取付バンド4が設けられ、取付バンド4は被加工物3に回し掛けするように設けられる。取付バンド4は、一例として伸縮性を有するゴムバンド等から成り、作用長を調整自在として構成され、ブラスト加工用保護装置1を緩保持状態で保持する。
【0027】
次に、本発明のブラスト加工用保持具Aについて詳細に説明する。
ブラスト加工用保持具Aは、一例として
図4・
図5に示すように、前記取付バンド4の途中に係止するように取り付けられるものであって、支持片51と、これに支持される可動案内体たるガイドローラ52とを具える。すなわち支持片51は、一例として平面視アングル形断面を形成する適宜の高さ寸法を有する強度部材であり、互いに直角に形成された翼板部53の両外側に張り出すように、一対の回転軸54が交差するように設けられる。この一対の回転軸54は、例えば支持片51に対し上下に二組設けられている。
【0028】
この回転軸54に対し可動案内体たるガイドローラ52が回転自在に支持されている。ガイドローラ52は、被加工物3の角稜部(出隅部)3Aにあてがわれるように設けられ、且つ被加工物3に接触したガイドローラ52が回転することにより、ブラスト加工用保持具A全体を、上下方向に移動自在としている。また、一対の回転軸54を交差させたガイドローラ52の挟み側ゾーン、つまり回転軸54同士の角度が90度を成す方を、挟み当て作用部55とする。当然ながら、挟み当て作用部55を形成するガイドローラ52の配置にあたっては、一例として
図5(a)に示すように、挟み当て作用部55の最奥部において被加工物3の角稜部3Aが支持片51に当接しないように配置される。
【0029】
更にブラスト加工用保持具Aを取付バンド4に係止させるため、支持片51には取付バンド受け部56が形成される。すなわち前記支持片51における翼板部53は、上下の回転軸54の中間部位が一部凹陥状態に形成され、ここを取付バンド受け部56とする。
なお、取付バンド受け部56を設けるために、支持片51の一部を凹陥状に形成した場合には、図中符号57で示す補強体を支持片51に溶接などで一体的に取り付け、凹陥状に形成した部位(取付バンド受け部56)の剛性を補うことが好ましい。
【0030】
本発明は、以上のような基本構造を有するものであって、次のように用いられる。
既に説明したようにブラスト加工用保護装置1は、被加工物3である墓碑3等の所定の位置に据え付けられる。なお、これに先立ち、彫り込み31の文字形状等が切り抜かれたマスキングシート27を墓碑3等に貼り付けておく。また当然ながら、ブラスト装置2も稼働状態にしておくものであって、コンプレッサ21の圧搾空気も充分な圧力にまで高め、且つ砥粒ホッパ24には砥粒26を充填しておくものである。
【0031】
ブラスト加工用保護装置1を墓碑3に据え付けるにあたっては、ブラスト加工する面に、ブラスト加工用保護装置1の背面板11をあてがうように設置するとともに、取付バンド4を墓碑3に回し掛けて、ブラスト加工用保護装置1を緩保持状態に設置する。ここで緩保持状態とは自然状態では移動、すなわち重力によるずり落ちが生じないものの、人偽的に移動させようとすると小さい力で移動できるような保持状態を言う。
また、墓碑3に回し掛けられた取付バンド4には、加工面と反対面の墓碑3の角稜部3Aにおいて、前記ブラスト加工用保持具Aが添うように保持される。すなわち取付バンド4は、ブラスト加工用保持具Aにおける取付バンド受け部56に係止するように設けられ、取付バンド4の弾性によってブラスト加工用保持具Aの挟み当て作用部55を角稜部3Aにあてがうように設けられる。
【0032】
このような状態で常法に従い、作業者はブラスト加工用保護装置1(ブラストボックス1A)内でブラストガン23を操作して、マスキングシート27の抜き型に砥粒26を吹き付け、所望の彫り込み作業を行う。
このとき彫り込み位置が上下に長い場合には、例えば上方から作業を進めて行くと、それに伴い順次、ブラスト加工用保護装置1を下方にずらして行く必要が生ずる。本発明では、このとき墓碑3に対し、回し掛けられた取付バンド4が、加工面と反対側の面における両角稜部3Aに移動自在のブラスト加工用保持具Aを具えている。このため作業者は、ブラスト加工用保護装置1に挿入した作業中の腕によってそのままブラスト加工用保護装置1を下方に押し下げるような力を加えると、取付バンド4もそれに伴い下方にずれるように移動する。結果的にブラスト作業を中断することなくブラスト加工用保護装置1を加工位置に移動させることができる。因みに、従来はブラスト加工用保護装置1を移動させる都度、ブラスト作業を中断し、後方に回し掛けた取付バンド4を下方に移動させなければならなかった。
【0033】
〔他の実施例〕
本発明は以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。
まず、上述した基本の実施例では、ブラスト加工用保持具Aとして、挟み当て作用部55を形成する一対のガイドローラ52を上下に二組、計四基のガイドローラ52を設ける構造を基本とした。しかしながら、ガイドローラ52は、必ずしもこのような形態である必要はなく、上下に三組以上設けても構わない。あるいは例えば
図6(a)に示すように、一方の支持片51には上下に二基のガイドローラ52を設け、他の支持片51にはこの二基のガイドローラ52の中間位置に一基のガイドローラ52を設ける構成例(つまり計三基のガイドローラ52を設ける構成例)も可能である。
またブラスト加工用保持具Aは、例えば
図6(b)に示すように、上記ガイドローラ52に代えて、上下の回転体にクローラベルト58を張設することも可能であり、このようなクローラベルト58も、本明細書に記載する「可動案内体」に包含される。
また例えば
図6(c)に示すように、支持片51に対し鼓状のローラ59を上下に二基配することも可能である。要は、各改変例とも、被加工物3の角稜部3Aを確実に保持するように挟み当て作用部55が形成されていればよいものである。