IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日鉄住金テクノロジー株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社日東電機エンジニアリングの特許一覧

<>
  • 特開-キノコの傘向き揃え装置 図1
  • 特開-キノコの傘向き揃え装置 図2
  • 特開-キノコの傘向き揃え装置 図3
  • 特開-キノコの傘向き揃え装置 図4
  • 特開-キノコの傘向き揃え装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027536
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】キノコの傘向き揃え装置
(51)【国際特許分類】
   A23N 15/00 20060101AFI20230222BHJP
   B65G 47/30 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
A23N15/00 F
B65G47/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132687
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】592244376
【氏名又は名称】日鉄テクノロジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502186198
【氏名又は名称】株式会社日東電機エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100142767
【弁理士】
【氏名又は名称】田ノ上 修二
(72)【発明者】
【氏名】石原 道章
(72)【発明者】
【氏名】春名 和幸
(72)【発明者】
【氏名】加東 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】安中 周平
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕茂
(72)【発明者】
【氏名】赤石 雅美
【テーマコード(参考)】
3F081
4B061
【Fターム(参考)】
3F081AA46
3F081BA03
3F081BC02
3F081CA22
3F081CC18
3F081DB04
4B061AA02
4B061AB01
4B061BA06
4B061BB05
4B061BB09
4B061BB10
4B061BB13
4B061BB14
(57)【要約】
【課題】投入されたキノコの傘を上向きの姿勢にして搬送するキノコの傘向き揃え装置を提供する。
【解決手段】キノコの傘向き揃え装置1は、キノコの傘下向き揃え手段であるボウルフィーダ2と、傘を下向きに揃えて搬送されるキノコの傘を上向きに反転させるキノコの傘上向き反転手段である直線フィーダ3と、キノコの傘が上向きに反転されたキノコMを受け止めて傘を上向きの姿勢で搬送する搬送手段であるベルトフィーダ4とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入されたキノコの傘を上向きの姿勢にして搬送するキノコの傘向き揃え装置であって、前記投入されたキノコの傘を下向きに揃えて搬送するキノコの傘下向き揃え手段と、傘を下向きに揃えて搬送されるキノコの傘を上向きに反転させるキノコの傘上向き反転手段と、傘が上向きに反転されたキノコを受け止めて傘を上向きの姿勢で搬送する搬送手段とを、備えることを特徴とするキノコの傘向き揃え装置。
【請求項2】
前記キノコの傘下向き揃え手段は、ボウル底面とその周壁に沿って幅が前記キノコの傘の直径の1~3倍の範囲のトラックがスパイラル状に前記ボウル底面からボウル出口まで形成されているボウルフィーダであることを特徴とする請求項1に記載のキノコの傘向き揃え装置。
【請求項3】
前記キノコの傘上向き反転手段は、直線フィーダであり、そのトラフの底面と側面が、上手側から下手側に徐々に鉛直方向から略80°のねじり角度を持ち、前記トラフの終端の側面には切り欠き部が設けられている構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のキノコの傘向き揃え装置。
【請求項4】
前記搬送手段は、2本の並行するベルトからなり、前記2本の並行するベルト間に前記キノコの傘を上向きの姿勢で搬送するベルトフィーダであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のキノコの傘向き揃え装置。
【請求項5】
前記ボウルフィーダ及び直線フィーダの振動は偏芯モータによるもので、前記ボウルフィーダの振動周波数は10~30Hz、振動振幅は2~6mmであり、前記直線フィーダの振動周波数は10~30Hz、振動振幅は2~4mmであることを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載のキノコの傘向き揃え装置。
【請求項6】
前記トラフの底面の幅は前記投入されたキノコの傘の直径と同程度であり、側面の深さは前記投入されたキノコの全長より短く、キノコの傘の厚みより長いことを特徴とする請求項3に記載のキノコの傘向き揃え装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、椎茸等のキノコの傘の向きを一方向にして搬送するキノコの傘向き揃え装置に関し、特にキノコの傘を上にした姿勢で搬送するキノコの傘向き揃え装置に関する。
【背景技術】
【0002】
収穫された椎茸等のキノコは、傘の大きさや傘の開き具合によって、選別され、等級付けがされる。従来、このような選別作業は、熟練した作業者が移送コンベアから移送されてくるキノコを手に取り、選別し、等級別に仕分けをしていた。
【0003】
また、市場に出荷する際には、等級別に仕分けをされたキノコを見栄えが良くなるように、キノコの向きを揃えて、出荷用トレイに並べるなどの作業を人手で行い、その後に、機械による自動包装、ラベリングなどを行っていた。
【0004】
最近の選別作業では、カメラによる判別が可能になり、キノコの傘の向きはどちらか一方に揃えられれば問題はなくなりつつあるが、出荷作業の自動化では、キノコの傘が上向きであるとその後の搬送や選別保持(ピックアップ)する上で好都合である。そのため椎茸等のキノコの選別作業及び出荷作業等の省力化又は自動化のためには、その前の工程でキノコの傘を上向きの姿勢にして搬送する技術開発が望まれていた。
【0005】
特許文献1には、キノコの姿勢を、傘を下にして柄を立てた状態に矯正して送りだすことにより等級選別をしやすくしたキノコ選別装置の提供を目的として、搬送コンベアの搬送面に空気連通用の間隙を連続的に設けるとともに、搬送コンベア途中に、搬送面下側から上向きにエアノズルを設け、搬送コンベア上のキノコが、エアノズルの空気噴射流によって、傘を下向きにして柄を立てた姿勢に矯正されるようになる構成のキノコ選別装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、選別ラインにキノコを搬入する前に、キノコの姿勢を選別しやすい姿勢にするキノコ移送装置の提供を目的として、移送方向を同じ向きにして並列された2つの移送コンベアを移送方向と垂直な面がV字を構成するように並べて、移送コンベアの搬送ベルトも移送方向と垂直な面がV字を構成するようにして、且つ搬送ベルトの内側は、互いにキノコを保持できる程度に間隔を開けて配置されているキノコ移送装置が開示されている。これにより、搬送ベルト上に落下したキノコは、各搬送ベルトの傾斜に沿って転がる間に、キノコの傘が柄に比べて面積が大きいために安定し、キノコの傘が下向きとなり、キノコの柄が上向きとなる逆さ姿勢となるので、キノコの姿勢を選別しやすい姿勢とすることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6-169741号公報
【特許文献2】特開平7-285631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の場合は、搬送ベルトの下からのエアノズルの空気噴射流によって、キノコの傘が下向きの場合は、傘の周囲に沿って空気噴射流が逃げるため、向きは変化しないが、キノコの傘が上向きの場合は、傘の内側に空気噴射流が当たって、傘が押し上げられて反転するとされている。しかしながら、エアノズルの空気噴射流では、多様なキノコの傘の大きさ、形状、キノコの重さに対し、噴射量の調整が大変である。たとえ調整ができたとしても、一部はキノコの傘が上向きのキノコが残り、キノコの傘を全部下向きに揃えることは困難である。
【0009】
特許文献2の場合も、搬送ベルトに落下したキノコが、搬送ベルトの傾斜に沿ってキノコの傘の周で転がる場合には、キノコの傘が上向きの状態で、搬送ベルトの内側のキノコを保持できる程度の間隔にキノコが保持されるので、必ずしもキノコの傘を全部下向きに揃えることは困難である。
【0010】
また、いずれの特許文献もキノコの選別作業のためにキノコの傘を下向きにして、上方からキノコの傘の開き具合の観察をやり易くする搬送の発明であるが、搬送や選別保持(ピックアップ)を容易にするために、その前工程としてキノコの傘を全部上向きになるようにして搬送する観点がないと言う問題があった。
【0011】
本発明は、かかる従来技術の問題に鑑み、投入されたキノコの傘を上向きの姿勢にして搬送するキノコの傘向き揃え装置を提供することにある。キノコの傘の向きが上向きに揃えられるため、それ以降の工程であるキノコの選別作業と出荷作業等に対する自動化と省力化を図ることが容易となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1のキノコの傘向き揃え装置は、投入されたキノコの傘を上向きの姿勢にして搬送するキノコの傘向き揃え装置であって、前記投入されたキノコの傘を下向きに揃えて搬送するキノコの傘下向き揃え手段と、傘を下向きに揃えて搬送されるキノコの傘を上向きに反転させるキノコの傘上向き反転手段と、傘が上向きに反転されたキノコを受け止めて傘を上向きの姿勢で搬送する搬送手段とを、備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項2の発明は、前記キノコの傘下向き揃え手段が、ボウル底面とその周壁に沿って幅が前記キノコの傘の直径の1~3倍の範囲のトラックがスパイラル状に前記ボウル底面からボウル出口まで形成されているボウルフィーダであることを特徴とする請求項1に記載のキノコの傘向き揃え装置である。
【0014】
また、請求項3の発明は、前記キノコの傘上向き反転手段が、直線フィーダであり、そのトラフの底面と側面が、上手側から下手側に徐々に鉛直方向から略80°のねじり角度を持ち、前記トラフの終端の側面には切り欠き部が設けられている構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のキノコの傘向き揃え装置である。
【0015】
また、請求項4の発明は、前記搬送手段が、2本の並行するベルトからなり、前記2本の並行するベルト間に前記キノコの傘を上向きの姿勢で搬送するベルトフィーダであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のキノコの傘向き揃え装置である。
【0016】
また、請求項5の発明は、前記ボウルフィーダ及び直線フィーダの振動は偏芯モータによるもので、前記ボウルフィーダの振動周波数は10~30Hz、振動振幅は2~6mmであり、前記直線フィーダの振動周波数は10~30Hz、振動振幅は2~4mmであることを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載のキノコの傘向き揃え装置である。
【0017】
また、請求項6の発明は、前記トラフの底面の幅は前記投入されたキノコの傘の直径と同程度であり、側面の深さは前記投入されたキノコの全長より短く、キノコの傘の厚みより長いことを特徴とする請求項3に記載のキノコの傘向き揃え装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、投入されたキノコのランダムな傘の向きを一旦全部下向きに揃えて搬送するキノコの傘下向き揃え手段と、傘を下向きに揃えて搬送されるキノコの傘を徐々に横向きにして最後は上向きに反転させるキノコの傘上向き反転手段と、傘が上向きに反転されたキノコを受け止めて傘を上向きの姿勢で搬送する搬送手段とを備えるようにしたキノコの傘向き揃え装置であるので、投入されたキノコの傘をすべて上向きの姿勢にして搬送することができ、それ以降の工程であるキノコの選別作業と出荷作業等に対する自動化と省力化を図ることが容易となる。
【0019】
請求項2の発明によれば、キノコの傘下向き揃え手段が、ボウル底面とその周壁に沿って幅が前記キノコの傘の直径の1~3倍の範囲のトラックがスパイラル状に前記ボウル底面からボウル出口まで形成されているボウルフィーダであるため、キノコは傘が下向きでトラックを登っていくが、トラック幅がキノコの傘の直径1個~3個分であるため、ボウル振動によりキノコは重複することなく傘を下向きの姿勢で一列になってトラックを搬送される。
【0020】
請求項3の発明によれば、キノコの傘上向き反転手段は、直線フィーダであり、そのトラフの底面と側面が、上手側から下手側に徐々に鉛直方向から略80°のねじり角度を持ち、前記トラフの終端の側面には切り欠き部が設けられているため、傘を下向きに揃えて搬送されるキノコは、トラフのねじり角度に沿ってキノコの傘が下向きから徐々に横向きに変化して、上手側から下手側に直線振動によりトラフを搬送され、トラフ終端の切り欠き部で回転して反転し、傘が上向きの姿勢で落下する。
【0021】
請求項4の発明によれば、搬送手段は、2本の並行するベルトからなり、前記2本の並行するベルト間に前記キノコの傘を上向きの姿勢で搬送するベルトフィーダである。トラフ終端の切り欠き部で回転して反転し、傘が上向きの姿勢で落下したキノコは、ベルトフィーダの2本の並行するベルトの間に落下するが、この2本の並行するベルトでキノコの傘を受け止めて、キノコの傘を上向きの姿勢で次工程に搬送することができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、ボウルフィーダ及び直線フィーダの振動は偏芯モータによるもので、ボウルフィーダの振動周波数は10~30Hz、振動振幅は2~6mmであり、直線フィーダの振動周波数は10~30Hz、振動振幅は2~4mmであることを特徴とする。キノコは水分を多く含み柔らかいため、振動がキノコに伝達され、移動をするためには、上記のような低振動周波数、大振動振幅が必要なためである。
【0023】
請求項6の発明によれば、トラフの底面の幅は前記投入されたキノコの傘の直径と同程度であり、側面の深さは前記投入されたキノコの全長より短く、キノコの傘の厚みより長いことを特徴とする。底面の幅をキノコの傘の直径を超えて大きくしても、トラフの重量が増えるだけで、効果もなく、また側面の深さもキノコの全長より短く、キノコの傘の厚みより長くすることで、効率的にキノコの姿勢を反転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係るキノコの傘向き揃え装置の一実施形態を模式的に示す正面図である。
図2】本発明に係るキノコの傘向き揃え装置の一実施形態を模式的に示す平面図である。
図3】本発明に用いたボウルフィーダの作動状態の斜視図を示すもので、(a)は投入された直後キノコの姿勢状態、(b)はボウルフィーダ作動時のキノコの姿勢状態の模式図である。
図4】本発明に用いた直線フィーダのトラフの各断面A~Dにおける断面形状とキノコの姿勢状態を模式的に示す図面である。
図5】本発明に用いたベルトフィーダのトラフ終端部からのキノコの搬送を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明に係るキノコの傘向き揃え装置の一実施形態を模式的に示す正面図であり、図2は本発明に係るキノコの傘向き揃え装置の一実施形態を模式的に示す平面図である。キノコの傘向き揃え装置1は、キノコの傘下向き揃え手段であるボウルフィーダ2と、傘を下向きに揃えて搬送されるキノコの傘を上向きに反転させるキノコの傘上向き反転手段である直線フィーダ3と、キノコの傘が上向きに反転されたキノコMを受け止めて傘を上向きの姿勢で搬送する搬送手段であるベルトフィーダ4とを備えている。
【0027】
ボウルフィーダ2のトラック23のボウル出口24が、直線フィーダ3のトラフ31の入口に近接され、トラフ終端の切り欠き部36の下にはトラフ31と直交する向きに2本の並行するベルト41を備えるベルトフィーダ4が設置されている。
【0028】
ボウルフィーダ2は架台27の上に4本のバネ25で円形のボウル21を支持し、ボウル底面22には円筒が接続され、その円筒には、ねじれ振動を生成する偏芯モータ26が互いにX字状に交差して取り付けられている。なお、円形のボウル21のボウル底面22は円形で中央部にかけて凸状になっており、ボウル21の周壁に沿って、ここでは幅がキノコの傘の直径と同程度のトラック23がスパイラル状にボウル底面22からボウル出口24まで形成されている。なお、キノコの傘の直径とは、キノコの傘が円形でなく楕円等の場合は、長径を意味している。
【0029】
本発明者らが鋭意検討した結果、図3(a)に示すように、投入された直後のキノコの傘の姿勢はランダムであったが、図3(b)のようにボウルフィーダ2の偏芯モータ26を起動させるとねじれ振動により、キノコの傘がランダムの姿勢からキノコの傘が下向きになる姿勢に転じ、キノコの傘が下向きのまま反時計周りにボウル21の内側の側壁に沿って移動を開始し、トラック23を登ることを見出した。
【0030】
また、トラック23の幅が前記キノコの傘の直径の1~3倍の範囲であれば、ボウル振動によりキノコMは重複することなく傘を下向きの姿勢で一列になってトラックを搬送されることを見出した。
【0031】
更に検討を進めると、キノコMは水分を多く含み柔らかいため、振動がキノコMに伝達され、移動をするためには、振動周波数は10~30Hzの低周波数が必要であり、振動振幅も2~6mmの大きさが必要であることが解った。
【0032】
また、ボウル底面22の面積に対し、投入されたキノコMの上方からの投影面積の比率が50%を超えるとキノコMが密になって互いに干渉し、なかなかキノコの傘が下向きになる姿勢にならないことが解った。そのため投入されるキノコMの量はボウル底面22の面積に対し、本発明の装置の効率も考慮すると10~50%程度が良好であることが解った。
【0033】
以上のようにボウルフィーダ2の適切な振動周波数と振動振幅の選択及びキノコMの投入量の適切な管理を行えば、投入したキノコの傘を下向きに揃えて搬送できることを見出した。キノコMを自動で投入する装置を付随させる場合は、ボウル21の上方にカメラを設置して、画像解析により、ボウル底面22の面積に対し投入されたキノコMの上方からの投影面積の比率を測定し、それに対応して投入するキノコMの量を制御するようにしても良い。
【0034】
傘を下向きに揃えて搬送されるキノコの傘を上向きに反転させるキノコの傘上向き反転手段である直線フィーダ3は、架台35の上に4本のバネ33でトラフ支え32を支持している。トラフ支え32には上部でトラフ31を連結し、後部には、斜め前方への振動を生成するため偏芯モータ34が互いに逆向きに取り付けられている。これにより、ボウルフィーダ2から搬送されたキノコMをベルトフィーダ4に搬送することができる。この振動周波数と振動振幅もキノコMの特性を反映して、振動周波数は10~30Hzの低周波数が必要であり、振動振幅も2~4mmの大きさが必要である。
【0035】
トラフ31は、キノコの傘が下向きを徐々に横向きに変え、最後は反転させて傘が上向きとなって落下させるために、ねじり構造と終端部に切り欠き部36を有している。図1に示されるトラフ31のA-A断面、B-B断面、C-C断面とD-D断面に対応する断面形状とキノコの姿勢状態を図4の(a)、(b)、(c)と(d)にそれぞれ模式的に示す。
【0036】
トラフ31の断面は溝形状形で上方が開放されている。トラフ31の底面の幅Wはキノコの傘の直径と同程度であり、側面の深さH1とH2は、キノコMの全長より短く、キノコの傘の厚みより長いことが重要である。なお、ここで、トラフ31の底面の幅Wはキノコの傘の直径と同程度とは、キノコの傘の直径の1倍超~2倍程度との意味である。A-A断面の位置の図4(a)では、キノコMは傘を下にしたままの姿勢で搬送される。B-B断面の位置の図4(b)では、トラフ31が角度α1だけねじられているため、キノコMは傘を下にしたまま角度α1だけ傾いた姿勢で搬送される。C-C断面の位置の図4(c)では、トラフ31の角度α2が図4(b)より更に大きな角度でねじられているため、キノコMは自立ができず、キノコの柄を深さH2の側面上部に当てながら、キノコMは横向きに倒れ込む姿勢で搬送される。D-D断面の位置の図4(d)では、トラフ31の角度α3が図4(c)より更に大きな角度でねじられているため、キノコMは自立ができず、横向きに倒れた姿勢で、キノコの柄を深さH2の側面上部で支えられながら搬送されるが、側面の深さがH3になる切り欠き部36があるため、切り欠き部36の位置を過ぎるとキノコの柄は支えを失い、キノコMは柄を回転させてベルトフィーダ4の2本の並行するベルト41の上に落下することになる。
【0037】
上記の図4(a)~(c)実施形態の説明では、キノコの柄を支える側面の深さH2はH1と同じ深さであったが、側面の深さH2を最初から深さH1に対して浅くしておけば、C-C断面の位置での図4(c)のキノコMの姿勢をC-C断面の位置より、B-B断面に近い位置で取ることができるので、ねじり角度の設定や、トラフ31の必要な長さの点で優位である。
【0038】
また、本実施形態では、トラフ31の断面は3面の溝形状形を用いたが、図4(a)で示すように、ボウル出口24と近接するトラフ31の上手側では、深さH1を持つ側面はガイドとして必要であるが、図4(b)~図4(d)の部分では、深さH1を持つ側面は、キノコの傘を下向きから横向きに変え、最後は反転させて上向きに落下させる機構では不要であり、底面と深さH2を持つ側面の2面のL字形の断面形状でも十分であり、また2面のL字形の断面形状の方が3面の溝形状形よりねじり易いという利点がある。
【0039】
また、トラフ31は、ねじり角度が全体で80°近く必要であるので、素材として可撓性のあるテフロン(登録商標)樹脂などが好ましい。可撓性の低い材料の場合は、トラフ31を例えば、長さ方向に6分割して、16°ずつねじれ角度を増やして連結すれば良い。
【0040】
また、トラフ31を所定の角度にねじるために、トラフ支え32にトラフ31の底面のねじり角度に合わせたねじり角度補助具を装着して、それにトラフ31の底面を合わせるように固定しても良い。
【0041】
更に、キノコMは水分を含み柔らかく摩擦係数が大きくなり、搬送速度が上がらないためトラフ31との摩擦係数をできるだけ小さくすることが重要である。そのため例えば、トラフ31を線材を組み合わせてかご状に形成することで摩擦係数を相対的に小さくすることも好ましい形態である。
【0042】
キノコの傘が上向きに反転されたキノコMを受け止めて傘を上向きの姿勢で搬送する搬送手段であるベルトフィーダ4は、架台49の上に、駆動軸44に2個のプーリー42が固定され、従動軸45に2個のプーリー42が固定されて、駆動軸44と従動軸45が軸支持体43で回転可能に支持されている。駆動軸44には、スプロケット46が取り付けられ、モータ48からの回転をチェーン47でスプロケット46に伝動する。
【0043】
駆動軸44のプーリー42と従動軸45のプーリー42との間には2本のベルト41が並行して掛けられている。2本の並行するベルト41の間隔は、キノコの傘の直径より小さく、且つキノコの柄の直径より大きく調整される。また2本の並行するベルト41の上側は、トラフ終端の切り欠き部36の直下に近接してトラフ31と直交する向きに設置される。なお、プーリー42とベルト41の組み合わせを歯付きプーリーと歯付きベルトの組み合わせにすると滑りが発生しないため、回転センサー等と組み合わせると位置の制御が容易になるため好ましい。
【0044】
図5には、ベルトフィーダのトラフ終端部からのキノコの搬送を模式的に示す斜視図を示す。なお、本図では軸支持体や架台等は省略してある。キノコMがトラフ31を横向きに倒れた姿勢で、キノコの柄をトラフ31の側面上部で支えられながら振動搬送されてくるが、トラフ31の切り欠き部36まで移動してくるとその位置で、キノコMは柄の支えを失い、キノコMは柄を回転させて、キノコの傘を上向きにしてベルトフィーダ4の2本の並行するベルト41の間に落下する。この2本の並行するベルト41でキノコの傘を受け止めて、キノコの傘を上向きの姿勢で次工程に搬送する。
【0045】
次工程としてキノコの選別工程、出荷工程等があるが、これらの工程を本発明に係るベルトフィーダ4の搬送工程の中に組み込むことも可能である。
【0046】
キノコの選別工程では、傘を上向きにした姿勢でベルトフィーダ4で搬送されるキノコMを上方又は下方からカメラで撮像して、その傘の直径及び形状の測定を行い、その情報を次の出荷工程と共有して、等級別に仕分けることもできる。なお、キノコMの下方からカメラの撮影の場合は、キノコの傘の開き具合が測定できるが、ベルト41がキノコMと重なるため、ベルト41の径又は幅は小さい方が測定の誤差が小さくなり好ましい。
【0047】
キノコの出荷工程では、傘を上向きにした姿勢でベルトフィーダ4で搬送されるキノコMを真空吸着装置付きのロボットハンドで、キノコの傘を吸着して、選別工程で得られた情報に応じて、等級別に用意された出荷用トレイに仕分けることができる。
【0048】
また、キノコの選別工程とキノコの出荷工程の間に、傘を上向きにした姿勢で搬送されるキノコMを超音波カッターで一定の長さにキノコの柄を切断する工程を入れることも可能である。キノコの長さを揃えることで、仕分けた出荷用トレイの包装作業もやり易くなり、商品の見栄えも良くなるからである。
【0049】
なお、本実施形態では、ボウルフィーダ2と直線フィーダ3の振動生成に偏芯モータ26、偏芯モータ34をそれぞれ用いたが、偏芯モータに変えて、モータの回転軸に偏芯して連結されたリンク機構により、振動を生成する手法を適用しても良い。
【0050】
以上、本発明のキノコの傘向き揃え装置について、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構造や形状に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、適宜その構造や形状を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のキノコ傘向き揃え装置は、投入されたキノコの傘の向きを上向きの姿勢にして搬送することができる装置であり、キノコの傘の向きが上向きに揃えられるため、それ以降の工程であるキノコの選別作業と出荷作業等に対する自動化と省力化を図ることが容易となる。
【符号の説明】
【0052】
1 キノコ傘向き揃え装置
2 ボウルフィーダ
3 直線フィーダ
4 ベルトフィーダ
21 ボウル
22 ボウル底面
23 トラック
24 ボウル出口
25 バネ
26 偏芯モータ
27 架台
31 トラフ
32 トラフ支え
33 バネ
34 偏芯モータ
35 架台
36 切り欠き部
41 ベルト
42 プーリー
43 軸支持体
44 駆動軸
45 従動軸
46 スプロケット
47 チェーン
48 モータ
49 架台
M キノコ
図1
図2
図3
図4
図5