(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002754
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】盤交換型電力供給システム、電力供給システムの盤更新方法及び短絡盤
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20221227BHJP
【FI】
H02J9/06 120
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171392
(22)【出願日】2022-10-26
(62)【分割の表示】P 2018079391の分割
【原出願日】2018-04-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 竜汰
(72)【発明者】
【氏名】川出 大佑
(57)【要約】 (修正有)
【課題】少ないスペースであっても、電力の供給を継続しながら、盤の更新作業を容易且つ短期間に、低コストで行うことができる盤交換型電力供給システム、電力供給システムの盤更新方法及び短絡盤を提供する。
【解決手段】複数の電力の供給経路PS1、PSxと、各供給経路に設けられ、筐体を有するUPS盤B1、Bxに支持された筐体側接続部11に対して、電気的な接続の開閉を行う、外線端子盤O1、Oxに収容された経路側接続部21と、筐体が設置される領域であって、当該領域に設置された筐体の筐体側接続部11の一部と経路側接続部21の一部の少なくとも一方が、他方に対して相対移動することにより、電気的な接続の開閉が可能となる設置領域Fと、を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力の供給経路と、
各供給経路に設けられ、筐体を有する盤に支持された筐体側接続部に対して、電気的な接続の開閉を行う経路側接続部と、
前記筐体が設置される領域であって、当該領域に設置された前記筐体の前記筐体側接続部の一部と前記経路側接続部の一部の少なくとも一方が、他方に対して相対移動することにより、電気的な接続の開閉が可能となる設置領域と、
を有することを特徴とする盤交換型電力供給システム。
【請求項2】
前記供給経路の少なくとも2つは、前記盤であって、UPSを構成する少なくとも一部の電力機器が、前記筐体に収容されたUPS盤を、並列に接続する並列接続部を有することを特徴とする請求項1記載の盤交換型電力供給システム。
【請求項3】
電力の供給源を、前記供給経路のいずれかのUPS盤に選択的に切り替えることにより、選択されたUPS盤による電力の供給を継続しながら、他のいずれかのUPS盤を交換可能とする切替部を有することを特徴とする請求項2記載の盤交換型電力供給システム。
【請求項4】
電力の供給源を、少なくとも3つの供給経路のうちの少なくとも1つのUPS盤に選択的に切り替えることにより、選択されたUPS盤による電力の供給を継続しながら、他のいずれか2つのUPS盤の一方を交換可能とするとともに、双方の並列試験を可能とする切替部を有することを特徴とする請求項2記載の盤交換型電力供給システム。
【請求項5】
前記供給経路の少なくとも1つには、
前記盤であって、分断された供給経路を短絡する短絡部材が前記筐体に収容された短絡盤と、
前記盤であって、UPSを構成する少なくとも一部の電力機器が、前記筐体に収容されたUPS盤とが、
前記筐体側接続部及び前記経路側接続部を介して、選択的に接続可能に設けられていることを特徴とする請求項1の盤交換型電力供給システム。
【請求項6】
前記短絡盤を新設のUPS盤に交換した供給経路により、電力の供給を継続しながら、他のいずれかの供給経路のUPS盤を取り外し可能とする切替部を有することを特徴とする請求項5の盤交換型電力供給システム。
【請求項7】
前記短絡盤を、いずれかの供給経路から取り外した既設のUPS盤に交換した供給経路により、電力の供給を継続しながら、既設のUPS盤を取り外した供給経路に、新設のUPS盤を接続可能とする切替部を有することを特徴とする請求項5の盤交換型電力供給システム。
【請求項8】
複数の電力の供給経路と、各供給経路に設けられ、筐体を有する盤に支持された筐体側接続部に対して、電気的な接続の開閉を行う経路側接続部と、前記筐体が設置される領域であって、当該領域に設置された前記筐体の前記筐体側接続部の一部と前記経路側接続部の一部の少なくとも一方が、他方に対して相対移動することにより、電気的な接続の開閉が可能となる設置領域と、を有する電力供給システムの盤更新方法であって、
前記供給経路のうち、少なくとも1つの供給経路に接続された盤であって、UPSを構成する少なくとも一部の電力機器が、前記筐体に収容されたUPS盤によって電力の供給を継続しながら、
前記供給経路のうち、他の少なくとも1つの供給経路から、既設のUPS盤を取り外すことを特徴とする電力供給システムの盤更新方法。
【請求項9】
前記他の少なくとも1つの供給経路から、既設のUPS盤を取り外した後、新設のUPS盤を接続することを特徴とする請求項8記載の電力供給システムの盤更新方法。
【請求項10】
少なくとも1つの供給経路に接続されたUPS盤により電力の供給を継続しながら、
他の少なくとも2つの供給経路に接続された既設のUPS盤の一方を取り外した後、新設のUPS盤に交換し、双方の並列試験を行うことを特徴とする請求項8記載の電力供給システムの盤更新方法。
【請求項11】
少なくとも1つの供給経路に接続され、分断された前記供給経路を短絡する短絡部材が前記筐体に収容された短絡盤を、新設のUPS盤に交換し、
前記新設のUPS盤によって電力の供給を継続しながら、前記他の少なくとも1つの供給経路から、既設のUPS盤を取り外すことを特徴とする請求項8記載の電力供給システムの盤更新方法。
【請求項12】
少なくとも1つの供給経路に接続され、分断された前記供給経路を短絡する短絡部材が前記筐体に収容された短絡盤を、並列に電力を供給する少なくとも2つの供給経路に接続されたUPS盤のうち、いずれか1つの既設のUPS盤と交換し、
短絡盤と交換した既設のUPS盤によって電力の供給を継続しながら、短絡盤と交換した既設のUPS盤が取り外された供給経路に、新設のUPS盤を接続することを特徴とする請求項8記載の電力供給システムの盤更新方法。
【請求項13】
請求項1記載の盤交換型電力供給システムにおける前記供給経路の少なくとも1つに接続可能に設けられた盤であって、分断された前記供給経路を短絡する短絡部材が前記筐体に収容されていることを特徴とする短絡盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、盤交換型電力供給システム、電力供給システムの盤更新方法及び短絡盤に関する。
【背景技術】
【0002】
無停電電源システム(UPS)とは、電源トラブルが発生しても負荷に対して同一規格の電力を所定時間給電するシステムである。無停電電源システムは通常、UPS盤と、その周辺盤とを備えており、データセンターなどに設置されている。UPS盤は、無停電電源システムの主要部であって、交流を直流に変換するコンバータと、直流を交流に変換するインバータ等の電力機器を備えている。周辺盤とは、入力トランス盤や蓄電池盤などである。
【0003】
UPS盤および周辺盤は、一般的には、略直方体状の筐体に収容されている。これらの筐体は、電気室などの壁面に沿って一列に並べられることが多い。また、UPS盤の筐体と周辺盤の筐体は、美観上の観点などから、奥行き寸法および高さ寸法については統一されている。これらの筐体の大きさは、例えば奥行き寸法は1000mm弱程度、高さ寸法は、容量が500kVAの場合は1900mm程度、容量が1000kVAの場合は2300mm程度である。
【0004】
UPS盤などの筐体は、正面に扉を取り付けており、この扉を開けてUPS盤の内部あるいは周辺盤の内部の保守点検を行うようになっている。そのため、UPS盤および周辺盤の前方には作業用のスペースが設けられている。また、UPS盤および周辺盤は、それぞれの期待寿命が終わるころには更新を行っている。UPS盤および周辺盤などの盤の更新とは、既設の盤を、新設の盤に筐体ごと交換することである。
【0005】
UPS盤と周辺盤とでは期待寿命の長さが異なっており、UPS盤の交換工事と、周辺盤の交換工事とでは、その実施時期が大きくずれることになる。具体的には、UPS盤の期待寿命は15年ほどであって、UPS盤の交換は無停電電源システムの納入後15年を指標としている。一方、周辺盤の期待寿命は25年程度であり、UPS盤の交換時期よりも10年ほど遅い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、UPS盤の交換工事は、周辺盤より10年も早く実施しなくてはならない。そのため、UPS盤の交換工事を行うとき、UPS盤と周辺盤との接続は外すものの、周辺盤自体は設置されたままである。したがって、UPS盤の交換工事では、複数が並んだ筐体群の中から、交換対象であるUPS盤だけを、固定してあった設置場所から取り外し、新しいUPS盤を同じ場所に設置することになる。
【0008】
このような更新作業を行う際には、UPS本来の役割を考慮すると、給電、つまり電力の供給を継続させることが好ましい。これに対処するため、更新作業中だけ負荷にUPS給電を行うためのUPS本体を別途用意することが考えられる。しかし、更新作業中だけに使用するUPS本体を用意するとなると、作業コストが非常に高くなり、経済的な負担が大きくなる。
【0009】
また、UPS本体を設置するデータセンターなどはスペースにゆとりがあるわけではない。このため、更新作業中だけに使用するUPS本体を設置するスペースを確保することが難しい。
【0010】
また、UPSの役割である電力の継続供給を考慮すれば、UPS本体の交換工事の工期は短ければ短いほど良い。しかし、UPS盤の電力機器と周辺盤とは、ケーブルを介して電気的に接続されており、その接続部分は、UPS盤の内部に設けられている。このため、UPS盤だけを設置場所から取り外す場合には、複数のケーブルとの接続部分の離線作業をUPS盤の内部で行わなければならず、非常に手間がかかっていた。さらに、新しいUPS盤を設置する場合には、複数のケーブルの配線作業をUPS盤の内部で行わなければならず、作業が面倒であり、接続間違いも発生し易い状況であった。
【0011】
このように、接続部分の離線作業、接続作業に手間がかかると、更新コストが増大することになる。さらに、UPSの場合には、工期が長引くと停電に対する安全性が低下することにもなる。これに対処するためには、UPS本体の交換工事には多数の作業員を集中して投入する必要があり、人件費が高騰し、UPS本体の更新コストはさらに増大する。
【0012】
本実施形態は、上記の課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、少ないスペースであっても、電力の供給を継続しながら、盤の更新作業を容易且つ短期間に、低コストで行うことができる盤交換型電力供給システム、電力供給システムの盤更新方法及び短絡盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態の盤交換型電力供給システムは、複数の電力の供給経路と、各供給経路に設けられ、筐体を有する盤に支持された筐体側接続部に対して、電気的な接続の開閉を行う経路側接続部と、前記筐体が設置される領域であって、当該領域に設置された前記筐体の前記筐体側接続部の一部と前記経路側接続部の一部の少なくとも一方が、他方に対して相対移動することにより、電気的な接続の開閉が可能となる設置領域と、を有する。
【0014】
また、実施形態の電力供給システムの盤交換方法は、前記供給経路のうち、少なくとも1つの供給経路に接続された盤であって、UPSを構成する少なくとも一部の電力機器が、前記筐体に収容されたUPS盤によって電力の供給を継続しながら、前記供給経路のうち、他の少なくとも1つの供給経路から、既設のUPS盤を取り外す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】実施形態を含む無停電電源システムの回路図である。
【
図5】断路位置にある接続部と経路側接続部を示す側面図(A)、平面図(B)である。
【
図6】閉路位置にある接続部と経路側接続部を示す側面図(A)、平面図(B)である。
【
図7】第1の実施形態の電力供給システムの回路図である。
【
図8】第1の実施形態の常用のUPS盤の更新手順を示すフローチャートである。
【
図9】第1の実施形態の予備のUPS盤の更新手順を示すフローチャートである。
【
図10】実施形態の重量盤の設置位置からの引出準備を示す平面図である。
【
図11】実施形態の重量盤の設置位置からの引出途中を示す平面図である。
【
図12】実施形態の重量盤の設置位置からの引出完了直前を示す平面図である。
【
図13】実施形態の重量盤の搬出状態を示す平面図である。
【
図14】実施形態の重量盤の搬入状態を示す平面図である。
【
図15】実施形態の重量盤の設置位置への位置決めを示す平面図である。
【
図16】実施形態の重量盤の設置位置への挿入を示す平面図である。
【
図17】第2の実施形態の電力供給システムの回路図である。
【
図18】第2の実施形態のUPS盤の更新手順を示すフローチャートである。
【
図19】第3の実施形態の電力供給システムの回路図である。
【
図20】第3の実施形態のUPS盤の更新手順を示すフローチャートである。
【
図21】第4の実施形態の電力供給システムの回路図である。
【
図22】第4の実施形態のUPS盤の更新手順を示すフローチャートである。
【
図23】第4の実施形態の短絡盤の復帰手順を示すフローチャートである。
【
図24】第4の実施形態の並列数分のUPS盤の更新手順を示すフローチャートである。
【
図25】周辺盤に実施形態を適用した例を示す正面図である。
【
図27】接続部を側面に設けた変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
第1の実施形態の盤交換型電力供給システムを説明する。まず、本実施形態に適用される盤を、図面を参照して説明する。本実施形態の更新対象となる盤は、無停電電源システム(以下、UPSとする)に適用したUPS盤である。
[UPS盤]
UPS盤は、
図1の斜視図及び
図2の正面図に示すように、本体部1、筐体側接続部11を有する。本体部1は、電力機器が収容された筐体10を有し、設置面に直立する方向で設置される。本実施形態のUPS盤は、作業員が単独で設置することが難しい重さを有する盤であり、重量盤とも呼ぶ。この重さは、例えば、100kg~3000kg程度の重量である。なお、重量盤は「電力用盤」と呼ぶこともできる。
【0017】
筐体10は、略直方体形状の容器である。筐体10は、図中、白塗りの太矢印で示すように奥行方向に移動させることにより設置面における設置領域Fに設置される。設置領域Fは、筐体10が設置される面又は空間である。つまり、筐体10が載置される面、筐体10が収容される空間のいずれであってもよい。また、筐体10は、床、壁面、柱、隣接する他の盤等の面又は空間を構成する物体に直接接していても、直接接していなくてもよい。例えば、筐体10の底面と床面との間に後述するベース部BSが介在していてもよい。隣接する壁面、柱、盤との間にスペーサ等が介在してもよい。
【0018】
本実施形態の設置領域Fは、水平な床面である。設置領域Fに設置された筐体10の設置領域Fと反対側の水平面を、上面10aとする。筐体10の4つの垂直面のうち、いずれか1つの面を正面10b、その反対側の面を背面10c、それ以外の2面を側面10d、10eとする。
図1及び
図2では、手前側が正面である。筐体10は、正面に扉が設置されており、これらを開けて、内部の保守点検などを行うことができる。また、奥行方向は、正面10bと背面10cとの間の厚み方向である。
【0019】
筐体10内に収容される電力機器は、電力の供給を受けて機能を発揮する機器である。電力機器は、受変電システム又は給配電システム一部を構成する機器を含む。例えば、UPSを構成する機器、遮断器、断路器等の電路の開閉を行う開閉装置、変圧器、保護リレー等は電力機器に含まれる。また、設備の監視用の機器、例えば、PLC、リレー、アレスタ、ハブ、タイマ等も、電力機器に含まれる。また、電気的な接点を有する端子盤や回路基板も電力機器に含まれる。さらに、空調機、コンピュータ、表示装置等の電力消費機器も、電力機器に含まれる。
【0020】
本実施形態のUPS盤の筐体10に収容される電力機器は、UPSの一部を構成する機器である。UPSとしては、後述するように、常用予備無停電電源システムにも、並列冗長無停電電源システムにも適用できる。
【0021】
まず、本実施形態で筐体10に収容される電力機器は、
図3に示すように、コンバータ2、インバータ3、ACスイッチ4である。コンバータ2は、交流を直流に変換する装置である。インバータ3は、直流を交流に変換する装置である。コンバータ2及びインバータ3は、定常時の交流の入力から出力の主経路R1に接続されている。ACスイッチ4は、コンバータ2及びインバータ3を経由しないバイパス経路R2の開閉を行う装置である。バイパス経路R2は、保守点検時や故障時に、交流の入力から出力へ交流電力を直送する経路である。また、コンバータ2とインバータ3との間の主経路R1には、充放電経路R3が分岐接続されている。
【0022】
主経路R1の入力側及びバイパス経路R2の入力側は、入力トランス盤6のトランスに接続される。入力トランス盤6は、商用電源に接続された降圧用のトランスを収容した盤である。充放電経路R3は、蓄電池盤7の蓄電池に接続される。蓄電池盤7は、停電時の電源となる蓄電池を収容した盤である。主経路R1及びバイパス経路R2の出力側は、分岐盤8に接続される。分岐盤8は、電力を消費する接続機器に接続された盤である。以下、入力トランス盤6、蓄電池盤7、分岐盤8等を周辺盤と呼ぶ。周辺盤は、図示はしないが、本体部1が収容された電気室等に設置されている。本体部1の筐体10に隣接する位置に設置されていてもよい。
【0023】
筐体側接続部11は、
図1及び
図2に示すように、筐体10の外部に設けられた経路側接続部21に対応する位置に設けられている。筐体10が設置領域Fに設置されると、筐体側接続部11は、経路側接続部21に向かい合う位置に来る。このとき、後述するように、筐体側接続部11と経路側接続部21との電気的な接合部分が接合可能な位置に来る。但し、筐体10が押し込まれて設置領域Fに設置されただけでは、筐体側接続部11と経路側接続部21との電気的な接続は解除されている。
【0024】
筐体側接続部11の一部及び経路側接続部21の一部の少なくとも一方は、他方に対して相対移動することにより、電気的な接続の開閉が可能となる。つまり、筐体側接続部11は筐体10に支持され、経路側接続部21は所定の取付場所に支持されているが、それぞれの一部である導体部分の少なくとも一方が、他方に接離する方向に移動することにより、電気的な接続の開閉が可能となる。この導体部分の移動は、筐体側接続部11及び経路側接続部21のいずれか一方であっても、双方であってもよい。なお、この移動は、後述するガイド部等により特定の方向にガイドされるものであり、フレキシブルな導体の端部を手で把持して、端子に接続するような自由度の高い移動とは異なる。
【0025】
本実施形態の筐体側接続部11は、本体部1が設置面に設置された状態で、筐体10の正面側から見て外周縁よりも外方に支持され、電力機器と外部とを電気的に接続する。外周縁とは、上面10a、両側面10d、10eの外表面に沿う枠である。正面側から見て外周縁よりも外方に支持とは、筐体側接続部11が支持されている部分が背面に隠れることなく、上面10a、両側面10d、10eよりも外方に突出していることをいう。電気的な接続部分が、外周縁よりも外方に位置していることが、作業者が正面側から確認、把握、操作する上で好ましい。但し、筐体側接続部11の一部、電気的な接続部分の一部が、筐体10の背面側に隠れていてもよい。
【0026】
筐体側接続部11は、本体部1が設置面に設置された状態で、筐体10の外部の設備に固定された経路側接続部21の位置に応じて、一部の導体部分が可動に設けられた可動側接続部である。本実施形態の筐体側接続部11は、
図3に示すように複数設けられ、それぞれ主経路R1の入力側、バイパス経路R2の入力側、充放電経路R3、主経路R1及びバイパス経路R2の出力側に接続されている。なお、筐体側接続部11の経路側接続部21との電気的な接続部分は、筐体側接続部11が上記のような位置に支持されているため、作業員が筐体10の正面側から見て把握しやすい。
【0027】
経路側接続部21は、筐体10の外部の設備に固定された構成部である。ここでいう外部の設備とは、筐体10が設置された場所を構成する設備又はこの場所に設置された設備をいう。本実施形態の設備は、電気室を構成する設備、電気室に設置された設備であって、電気室の壁面、電気室に設置された盤、筐体10を囲む枠等を含む。例えば、経路側接続部21は、後述する外線端子盤のように、筐体10とは別の筐体に収容され、筐体10の上部、左右等において隣接する盤に収容される態様も含む。
【0028】
経路側接続部21は、ケーブルCを介して、周辺盤に電気的に接続されている。例えば、上記の入力トランス盤6、蓄電池盤7、分岐盤8からのケーブルCが、バスダクト等を通して延長され、経路側接続部21に接続されている。
図3に示すように、経路側接続部21は、筐体側接続部11に対応して複数設けられていて、経路側接続部21に筐体側接続部11が接続されることにより、主経路R1の入力側、バイパス経路R2の入力側に入力トランス盤6が接続され、充放電経路R3に蓄電池盤7が接続され、主経路R1及びバイパス経路R2の出力側に分岐盤8が接続される。
【0029】
また、筐体側接続部11の経路側接続部21との電気的な接続部分E(
図5及び
図6参照)は、筐体10が設置面に設置された状態で、経路側接続部21から離隔した断路位置と、経路側接続部21に電気的に接続される閉路位置との間を移動可能に設けられている。さらに、筐体側接続部11は、交流の各相に分けて複数設けられている。また、筐体側接続部11は、交流と直流に分けて複数設けられている。
【0030】
筐体側接続部11は、
図4~
図6に示すように、導体11aを有する。導体11aは、図示はしないが、フレキシブルなケーブル等を介して、電力機器に接続されている。導体11aは、筐体10の奥行方向に平行な一対の平板を備えている。
【0031】
以下、筐体側接続部11及び経路側接続部21のより具体的な構成を説明する。
(筐体側接続部)
筐体側接続部11は、支持部101に支持されている。支持部101は、
図1及び
図2に示すように、筐体10の上面10aに設けられ、正面10bに平行な方向で固定された板状の部材である。このため、筐体側接続部11は、筐体10の上面10aに支持されている。
【0032】
支持部101に支持される筐体側接続部11は、ガイド部111、可動部112、操作部113を有する。ガイド部111は、経路側接続部21に対する導体11aの位置を調節するために、導体11aの移動をガイドする部材である。ガイド部111は、ガイドレール111a、スライダ111bを有する。ガイドレール111aは、筐体10の背面側が開口となる断面が略コ字形状の細長い部材である。ガイドレール111aは、筐体10の幅方向、つまり水平方向に取り付けられている。スライダ111bは、ガイドレール111aに挿入された角筒形状の細長い部材であり、ガイドレール111aに沿って、筐体10の幅方向にスライド移動する。
【0033】
可動部112は、導体11aを支持しつつ移動する部材である。可動部112は、移動板112a、支持板112bを有する。移動板112aは、スライダ111bに取り付けられ、スライダ111bとともに筐体10の幅方向に移動する平板である。支持板112bは、奥行き方向に平行に突出した一対の平板形状であり、移動板112aの背面側に取り付けられている。支持板112bは、奥行き方向のガイド溝112cを有する。一対の導体11aは、それぞれ支持板112bのガイド溝112cに沿って移動可能に支持されている。
【0034】
このため、導体11aは、ガイドレール111aに沿って移動するスライダ111bとともに、筐体10の幅方向に移動可能となる。また、導体11aは、ガイド部111とは別のガイド部である直線状のガイド溝112cに挿入された突出部分であるスライド部11cを有する。このため、導体11aは、ガイド溝112cに沿って、筐体10の奥行方向に移動可能となる。導体11aに接続されたケーブルは、フレキシブルであるため、このような移動が生じても、ケーブルとの導通は確保される。つまり、筐体側接続部11は、ガイド部(ガイド溝112c)によってガイドされることにより、直線方向に移動可能な導体11aを有している。この導体11aの直線方向の移動により、経路側接続部21との電気的な接続の開閉が可能となる。
【0035】
操作部113は、導体11aの位置を手動により操作するための部材である。操作部113は、付勢板113a、取手113bを有する。付勢板113aは、筐体10の正面に平行で、幅方向に長い長方形状である。付勢板113aには、一対の導体11aを連結する略コの字状の連結部11bが取り付けられている。つまり、支持部101の奥側に設けられた導体11aに取り付けられた連結部11bが、支持部101に形成された穴101aを貫通して、支持部101の正面側に設けられた付勢板113aに、絶縁を確保して取り付けられている。付勢板113aは、導体11aの挿入状態を視認できるように、透明な材質により形成されている。取手113bは、略U字形の棒状部材である。取手113bは、長手方向が筐体10の幅方向となるように、両端が付勢板113aの前面に固定されている。
【0036】
(経路側接続部)
経路側接続部21は、筐体側接続部11を介して、ケーブルCとの電気的な接続を行う部材である。経路側接続部21は、固定板211、端子板212、コネクタ部213を有する。
【0037】
固定板211は、筐体10の外部の設備に固定された長方形状のプレートである。端子板212は、固定板211に固定された導電性のプレートである。端子板212の上端は、ケーブルCの端子との接続用の端部となっている。例えば、図示はしないが、接続用の穴が形成されている。
【0038】
コネクタ部213は、導体11aが挿脱される部材である。つまり、導体11a及びコネクタ部213は、導体11aが筐体側接続部11から経路側接続部21に向かって移動して互いに嵌り合うことにより、電気的に接続される嵌合部を構成している。コネクタ部213は、凹部213a、接触電極213bを有する。凹部213aは、導体11aが挿入される窪み形状の部分である。接触電極213bは、凹部213aに設けられ、端子板212に電気的に接続された部材である。
【0039】
このようなコネクタ部213は、導体11aに対して複数配置されている。本実施形態では、3つのコネクタ部213が設けられている。このコネクタ部213の接触電極213bは、それぞれ定格電流を等しく分担する。例えば、定格電流が300Aである場合には、100A程度の電流を流すことができる。但し、定格電流を担う単一のコネクタ部213としてもよい。なお、電気的な接続のために移動する部材は、筐体側接続部11、経路側接続部21の一方又は双方に設けることができる。例えば、筐体側接続部11にコネクタ部が設けられ、経路側接続部21に移動する導体が設けられていてもよい。また、コネクタ部と導体との双方が接続する方向に移動可能に設けられていてもよい。
【0040】
上記のような筐体側接続部11、経路側接続部21は、
図1及び
図2に示すように、入出力用の区分に分けて、複数組用意されている。例えば、筐体側接続部11及び経路側接続部21は、交流入力AN、直流入力DN、バイパス入力BN、交流出力AОに分けて設けられている。これらの筐体側接続部11は、互いに間隔を空けて配置され、絶縁距離を確保している。また、経路側接続部21も、筐体側接続部11に対応する位置に、互いに間隔を空けて並べて配置され、絶縁距離を確保している。さらに、このように筐体側接続部11及び経路側接続部21を複数組に分けることにより、嵌合部分の挿抜荷重を低減している。
【0041】
[盤交換型電力供給システム]
図7は、本実施形態の盤交換型電力供給システムの回路図である。本実施形態の盤交換型電力供給システムは、常用予備無停電電源システムとして構成されている。また、
図7は、電気回路として、商用系統の電源CSと負荷Lとの間の電力の供給経路PS1、PSxに、UPS盤B1、Bxが接続される態様を示したものであり、
図3で示した蓄電池盤7、分岐盤8は、図示を省略している。また、以下の説明では、供給経路PS1、PSxを区別しない場合には、単に供給経路PSとし、UPS盤B1、Bxを区別しない場合には、単にUPS盤Bとする場合がある。
【0042】
すなわち、本実施形態の盤交換型電力供給システムは、2つの電力の供給経路PS1、PSxを有する。供給経路PS1、PSxは、ケーブル等を含み構成され、それぞれが商用系統等の交流の電源CS1、CSxに接続され、交流の電力の供給を受けることができる。供給経路PS1、PSxは、並列接続部PCを介して、負荷Lに対して並列に接続されている。負荷Lは、供給された電力を変換又は消費して各種の仕事を行う設備である。並列接続部PCは、ケーブル等により構成されている。並列接続部PCは、周辺盤の筐体に収容されていてもよい。
【0043】
供給経路PS1、PSxには、上述のような経路側接続部21が設けられ、この経路側接続部21の近傍に、設置領域Fが設けられている。各供給経路PS1、PSxに対応する設置領域Fには、それぞれ上記のようなUPS盤B1、Bxの本体部1が設置され、経路側接続部21には、筐体側接続部11を介して筐体10に収容された電力機器が接続される。この接続は、設置領域Fへの筐体10の設置と、筐体側接続部11と経路側接続部21との接続という2段階で行われる。なお、設置領域Fは、回路図に適用させて便宜的に図示したものであり、その大きさ、形状を特定するものではない。
【0044】
供給経路PS1のUPS盤B1は、平常時に、電源CS1から供給された交流を直流に変換して、負荷Lに供給する常用の盤である。供給経路PSxのUPS盤Bxは、供給経路PS1から負荷Lへの供給ができないときに、電源CSxから供給された交流を直流に変換して、負荷Lに供給する予備の盤である。
【0045】
切替部は、負荷Lへの電力の供給源を、2つの供給経路PS1、PSxのUPS盤B1、Bxのいずれかに選択的に切り替えることにより、選択されたUPS盤B1又はUPS盤Bxによる電力の供給を継続しながら、他のいずれかのUPS盤B1又はUPS盤Bxを交換可能とする。
【0046】
切替部は、複数の遮断器52C、52R、52RC、52MC、52M、52Lを含み構成される。以下の説明では、複数の遮断器を区別しない場合には、単に遮断器52とする場合がある。遮断器52は、リレーからの信号、現場における手操作、コンピュータ等の制御装置のプログラム及び入力部からの入力に従った遠隔操作などに応じて、開閉される。
【0047】
遮断器52C、52Rは、電源CSx、CS1と供給経路PSx、PS1との接続を開閉する。遮断器52RCは、電源CSxとUPS盤Bxとの接続を開閉する。遮断器52MCは、UPS盤Bxと並列接続部PCとの接続を開閉する。遮断器52Mは、並列接続部PCとUPS盤B1との接続を開閉する。供給経路PSxのUPS盤Bxは、常時、電源CSxからの電力の供給を受けて、負荷Lへ電力を供給可能な状態である。但し、UPS盤Bxは、遮断器52M(又は遮断器52MC)が開いて待機しているホットスタンバイ状態にある。遮断器52Lは、UPS盤B1と負荷Lとの接続を開閉する。
【0048】
遮断器52Rは、入力盤I1(入力トランス盤6)の筐体に収容されている。遮断器52Cは、入力盤Ix(入力トランス盤6)の筐体に収容されている。遮断器52MCは、外線端子盤Оxの筐体に収容されている。遮断器52RC、52M、52Lは、外線端子盤О1の筐体に収容されている。外線端子盤Оx、O1は、経路側接続部21を筐体に収容した盤である。なお、以下の説明では、入力盤を区別しない場合には、単に入力盤Iとし、外線端子盤を区別しない場合には、外線端子盤Оとする場合がある。
【0049】
[更新作業]
以上のような盤交換型電力供給システムの更新作業を、
図8及び
図9のフローチャートを参照して説明する。本実施形態の更新作業は、1つの供給経路PSによって電力の供給を継続しながら、他の1つの供給経路PSから、既設のUPS盤Bを取り外すものである。つまり、複数の供給経路PS1、PSxのうちの1つの供給経路PS1又はPSxに接続されたUPS盤B1又はBxによって、電力の供給を継続しながら、他の1つの供給経路PS1又はPSxから、UPS盤B1又はBxを取り外す。そして、取り外したUPS盤B1又はBxに替えて、新設のUPS盤を接続する。
【0050】
(常用のUPS盤の更新)
常用のUPS盤B1を更新する作業を、
図8に従って説明する。なお、通常の運転時においては、遮断器52R、52RC、52Lは投入されていて、UPS盤B1によって負荷Lへの電力の供給を行っている。また、遮断器52C、52MCは投入されているが、遮断器52Mは開放されているので、UPS盤Bxは無負荷で運転を継続して待機しているものとする。
【0051】
すなわち、遮断器52Mを投入し、遮断器52Lとオーバーラップ切替を行う(ステップS101)。オーバーラップ切替とは、複数の供給電力の位相を一致させたタイミングで、一方の遮断器の開放前に、他方の遮断器を投入した後、一方の遮断器を開放する切替方法である。本実施形態では、UPS盤B1とUPS盤Bxとの位相が合ったタイミングで、遮断器52Lの開放前に、遮断器52Mを投入した後、遮断器52Lを開放する。これにより、負荷Lに対する電力の供給源が、「UPS盤B1のみ」→「UPS盤B1及びUPS盤Bx」→「UPS盤Bxのみ」に切り替わるが、電力の供給が止まることはない。
【0052】
次に、遮断器52RC、52Rを開放し、既設のUPS盤B1を停止する(ステップS102)。そして、既設のUPS盤B1の筐体側接続部11と経路側接続部21との接続を解除して、設置領域Fから撤去する(ステップS103)。筐体側接続部11と経路側接続部21との接続の解除作業、UPS盤B1の撤去作業については、後述する。
【0053】
既設のUPS盤B1が撤去された設置領域Fに、新設のUPS盤B1を設置して、筐体側接続部11と経路側接続部21との接続を行う(ステップS104)。新設のUPS盤B1の設置作業、筐体側接続部11と経路側接続部21との接続作業については、後述する。
【0054】
そして、遮断器52R、52RCを投入し、新設のUPS盤B1の単体試験を行う(ステップS105)。さらに、遮断器52Lを投入し、遮断器52Mとオーバーラップ切替を行う(ステップS106)。つまり、新設のUPS盤B1とUPS盤Bxとの位相が合ったタイミングで、遮断器52Mの開放前に、遮断器52Lを投入した後、遮断器52Mを開放する。これにより、負荷Lに対する電力の供給源が、「UPS盤Bxのみ」→「UPS盤Bx及び新設のUPS盤B1→「新設のUPS盤B1のみ」に切り替わるが、電力の供給が止まることはない。
【0055】
(予備のUPS盤の更新)
次に、予備のUPS盤Bxの更新作業を、
図9に従って説明する。まず、遮断器52C、52MCを開放し、既設のUPS盤Bxを停止する(ステップS201)。そして、既設のUPS盤Bxの筐体側接続部11と経路側接続部21との接続を解除して、設置領域Fから撤去する(ステップS202)。
【0056】
既設のUPS盤Bxが撤去された設置領域Fに、新設のUPS盤Bxを設置して、筐体側接続部11と経路側接続部21との接続を行う(ステップS203)。そして、遮断器52C、52MCを投入し、新設のUPS盤Bxの単体試験を行う(ステップS204)。その後、UPS盤Bxは無負荷で運転を継続して待機する。
【0057】
[電気的接続作業]
次に、以上のような筐体側接続部11と経路側接続部21との電気的な接続作業及び接続解除作業を説明する。なお、電気的接続作業及び接続解除作業に先立って、遮断器等によって充電部分を解除して、安全性を確保する作業については、上記の通りであるため、説明を省略する。
図4、
図5(A)、(B)に示すように、本体部1を設置領域Fに設置すると、導体11aと、コネクタ部213の凹部213aとが離隔して対向する。つまり、このとき、筐体側接続部11は断路位置にある。
【0058】
作業者は、操作部113の取手113bを持ち、
図5(B)に示すように、幅方向に移動させることにより、付勢板113aに取り付けられた導体11aと凹部213aとの幅方向の位置を調整してから、
図5(A)に示すように、付勢板113aを背面側へ押し込む。すると、
図6(A)、(B)に示すように、導体11aの接続部分Eが、奥行き方向に直線状に移動して、コネクタ部213の凹部213aに嵌り、接触電極213bに接触して電気的に接続される。これにより、筐体側接続部11は閉路位置となり、筐体10の内部の電力機器に、筐体側接続部11及び経路側接続部21を介して、ケーブルCが接続される。ケーブルCとの接続により、周辺盤と筐体10の内部の電力機器とが接続される。
【0059】
[電気的接続解除作業]
筐体側接続部11と経路側接続部21の接続を解除する場合には、
図6(A)、(B)に示すように、操作部113の取手113bを持って、正面側に引く。すると、導体11aが、コネクタ部213の凹部213aから外れて、接触電極213bとの電気的な接続が解除される。これにより、筐体側接続部11は、
図5(A)、(B)に示すように、断路位置となる。
【0060】
[本体部の交換作業]
次に、本体部1の交換作業の作業を説明する。
【0061】
(本体部の搬出作業)
本体部1の搬出作業について、
図10~
図13を参照して説明する。なお、設置領域Fには、ベース部BSが載置されている。ベース部BSは、本体部1と設置面との間に介在して、本体部1を支持する方形の枠状のプレートである。なお、設置面に設置されるとは、筐体10が設置面に直接接して設置される場合も、ベース部BSのような部材を介して設置される場合も含まれる。
【0062】
まず、作業員は、
図10に示すように、レール部M1を平行に2本、筐体10が設置された設置領域Fの正面の前に設置する。筐体10の正面の図示しない取付穴には、アイボルトM2を取り付ける。また、搬出入用スペースSの床面近くに、アンカーM3を固定し、アンカーM3にレバーブロック(登録商標)M4を取り付ける。そして、レバーブロックM4のフック部を、取付穴に取り付けたアイボルトM2に引っ掛け、レバーブロックM4を操作して、筐体10を設置領域Fから引き出す。
【0063】
図11に示すように、筐体10の引出しにより筐体10の側面の図示しない取付穴が現れた時点で、筐体10の引出し作業を一旦停止する。そして、レバーブロックM4のフック部を正面の取付穴のアイボルトM2から外し、側面の取付穴にアイボルトM2を取り付ける。このアイボルトM2にレバーブロックM4のフック部を引っ掛け、レバーブロックM4を操作することで、筐体10をさらに引き出す。
【0064】
図12に示すように、筐体10の更なる引出しにより筐体10の側面の背面寄りの取付穴が現れた時点で、引出し作業を一旦停止する。そして、レバーブロックM4のフック部をアイボルトM2から外し、背面寄りの取付穴にアイボルトM2を取り付ける。このアイボルトM2にレバーブロックM4のフック部を引っ掛け、レバーブロックM4を操作することで、筐体10をさらに引き出す。その結果、ベース部BSから筐体10を完全に下ろし、筐体10全体を搬出入用スペースSに引き出す。
【0065】
図13に示すように、搬出入用スペースSに引き出した筐体10をジャッキなどで持ち上げてハンドリフトM5を潜り込ませる。最後に、ハンドリフトM5を用いて、作業員Hが搬出入用スペースSを通って筐体10を外部に運び出し、本体部1の搬出作業が終了する。
【0066】
(本体部の搬入作業)
次に、本体部1の搬入作業を、
図14~
図16を参照して説明する。
図14に示すように、複数の作業員HがハンドリフトM5を用いて、本体部1の筐体10を、設置領域Fの前方にまで運び入れる。
【0067】
図15に示すように、筐体10の正面の前に4つの角材M6を設置しておき、筐体10をジャッキなどで持ち上げて筐体10の下からハンドリフトM5を引き抜き、角材M6の上に載せる。そして、角材M6の間に平行な2本のレール部M1を配置してレール部M1上に筐体10を載せる。
【0068】
図16に示すように、筐体10の側面の図示しない取付穴に、アイボルトM2を取り付ける。また、搬出入用スペースSの床面近くに、アンカーM3を固定し、アンカーM3にレバーブロックM4を取り付ける。そして、レバーブロックM4のフック部を、取付穴に取り付けたアイボルトM2に引っ掛け、レバーブロックM4を操作して、筐体10を設置領域Fに押込んでいく。そして、ベース部BSに筐体10のほぼ全体が載った時点で、レバーブロックM4のフック部をアイボルトM2から取り外し、アイボルトM2を取付穴から取り外した後、筐体10を押し込むことにより、本体部1の搬入作業が終了する。
【0069】
[作用効果]
以上のような本実施形態の盤交換型電力供給システムでは、複数の電力の供給経路PSと、各供給経路PSに設けられ、筐体10を有する盤に支持された筐体側接続部11に対して、電気的な接続の開閉を行う経路側接続部21と、筐体10が設置される領域であって、当該領域に設置された筐体10の筐体側接続部11の一部と経路側接続部21の一部の少なくとも一方が、他方に対して相対移動することにより、電気的な接続の開閉が可能となる設置領域Fと、を有する。
【0070】
このため、既存の盤が設置された設置領域Fを活用することにより、更新用の盤を新たに用意することなく、少ないスペースであっても、電力の供給を継続しながら、盤の更新作業を行うことができる。また、既設の盤の取り外しは、筐体側接続部11及び経路側接続部21の電気的な接続の解除、筐体10の設置領域Fからの撤去という2段階で済む。さらに、新設の盤の設置は、筐体10を設置した後、筐体側接続部11、経路側接続部21とを電気的に接続するという2段階での作業で済む。このため、複数のケーブルの離線、配線作業に手間がかからず、盤の更新作業が容易且つ短期間に、低コストで行うことができる。これは、配線作業の人為的なミスを防ぐことにつながる。また、更新作業が短時間なので、停電のリスクを軽減することができる。
【0071】
以上のような作用効果は、本実施の形態のように、交換する盤が重量盤である場合には、より一層有効となる。つまり、一つ一つの重量盤の移動は、上記のように多大な労力を必要とするため、電気的な接続作業については簡略化できることにより、全体の更新作業の容易化、作業時間の短縮化、低コスト化を実現できる。これは、交換する盤が3つ以上となるような大きなシステムであっても同様である。さらに、供給経路PSの充電を解除する切替部(遮断器52)が、更新する盤とは別の筐体内、区画、部屋、建屋のように、更新の作業者が視認により確認できない場所にある場合がある。この場合、切替部が誤操作等により投入されることにより、更新の作業者が意図していない充電状態となっている場合でも、筐体側接続部11、経路側接続部21によって、盤の近傍において供給経路PSを開閉可能となっているので、安全に作業ができる。
【0072】
また、供給経路PSの少なくとも2つは、UPS盤Bを並列に接続する並列接続部PCを有する。そして、電力の供給源を、供給経路PSのいずれかのUPS盤Bに選択的に切り替えることにより、選択されたUPS盤Bによる電力の供給を継続しながら、他のいずれかのUPS盤Bを交換可能とする切替部を有する。
【0073】
このため、少なくとも1つの供給経路PSに接続されたUPS盤Bによって電力の供給を継続しながら、他の少なくとも1つの供給経路から、既設のUPS盤Bを取り外すことができる。しかも、商用系統からの直接の電力ではなく、UPS盤Bによって電力の供給を継続できるので、信頼性も確保できる。
【0074】
[第2の実施形態]
[構成]
第2の実施形態の盤交換型電力供給システムを説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。本実施形態は、電力の供給源を、少なくとも3つの供給経路PSのうちの少なくとも1つのUPS盤Bに選択的に切り替えることにより、選択されたUPS盤Bによる電力の供給を継続しながら、他のいずれか2つのUPS盤Bを交換可能とするとともに、双方の並列試験を可能にする切替部を有する。並列試験とは、複数のUPS盤Bの電力の位相の同期をとる試験である。
【0075】
図17は、本実施形態の盤交換型電力供給システムの回路図である。
図17に示したシステムは、並列冗長無停電電源システムとして構成されている。
【0076】
すなわち、本実施形態の盤交換型電力供給システムは、4つの電力の供給経路PS1、PS2、PS3、PSxを有する。各供給経路PSは、第1の実施形態と同様である。供給経路PS1、PS2、PS3は、並列接続部PCを介して、負荷Lに対して並列に接続されている。また、供給経路PS1、PS2、PS3は、試験用接続部TCを介して、並列に接続されている。試験用接続部TCは、ケーブル等を含み構成されている。
【0077】
供給経路PS1、PS2、PS3のUPS盤B1、B2、B3は、平常時に、電源CS1、CS2、CS3から供給された交流を直流に変換して、負荷Lに並列に供給する常用の盤である。なお、本実施形態では、UPS盤B1、B2、B3のいずれか1つであっても電力を供給可能なところ、3つのUPS盤B1、B2、B3によって電力を分担して供給している。
【0078】
供給経路PSxは、供給経路PS1、PS2、PS3から負荷Lへの供給ができないときに、電源CSxから供給された交流を負荷Lに供給する予備の盤である。供給経路PSxは、並列接続部PCから負荷Lへの経路に対して、バイパス接続部BPによって並列に接続されている。
【0079】
切替部は、負荷Lへの電力の供給源を、3つの供給経路PS1、PS2、PS3のUPS盤Bのいずれか1つに選択的に切り替えることにより、選択されたUPS盤Bによる電力の供給を継続しながら、他の2つのUPS盤Bを交換可能、且つ並列試験可能とする。切替部は、複数の遮断器52C、52R1、52R2、52R3、52I1、52I2、52I3、52T1、52T2、52T3、52M、52Lを含み構成される。
【0080】
遮断器52C、52R1、52R2、52R3は、電源CSx、CS1、CS2、CS3と供給経路PSx、PS1、PS2、PS3との接続を開閉する。遮断器52I1、I2、I3は、並列接続部PCに設けられ、UPS盤B1、B2、B3と、負荷Lとの接続を開閉する並列切替部である。遮断器52T1、T2、T3は、試験用接続部TCに設けられ、UPS盤B1、B2、B3を相互に接続する試験用切替部である。遮断器52Mは、供給経路PSxと、並列接続部PCとの接続を開閉する。遮断器52Lは、並列接続部PCと負荷Lとの接続を開閉する。
【0081】
遮断器52R1、52R2、52R3は、入力盤I1、I2、I3(入力トランス盤6)の筐体に収容されている。遮断器52Cは、入力盤Ix(入力トランス盤6)の筐体に収容されている。遮断器52I1、52I2、52I3、52T1、52T2、52T3は、並列盤PBの筐体に収容されている。遮断器52L、52Mは、保守バイパス盤MBの筐体に収容されている。
【0082】
[更新作業]
以上のような盤交換型電力供給システムの更新作業を、
図18のフローチャートを参照して説明する。なお、フローチャートにおける変数の初期化やインクリメントは、作業者が自らの判断で行う仮想的なものであってもよいし、電力供給システムを制御するコンピュータである制御装置が行って、管理者が視認可能となるように表示装置に表示してもよい。電気的接続作業、本体部の交換作業については、第1の実施形態と同様である。
【0083】
本実施形態の更新作業は、1つの供給経路PSに接続されたUPS盤Bにより電力の供給を継続しながら、他の2つの供給経路PSに接続された既設のUPS盤Bの一方を取り外した後、新設のUPS盤Bに交換し、双方の並列試験を行うものである。
【0084】
なお、通常運転時においては、遮断器52R1、52R2、52R3、52I1、52I2、52I3、52Lは投入されていて、UPS盤B1、B2、B3により、負荷Lに並列に電力を供給しているものとする。
【0085】
まず、UPS盤Bの並列接続数である3で変数Nが初期化され、カウンタ変数Xが1で初期化される(ステップS301)。遮断器52I1を開放し、既設のUPS盤B1を停止する(ステップS302)。既設のUPS盤B1の筐体側接続部11と経路側接続部21との接続を解除して、設置領域Fから撤去する(ステップS303)。このとき、UPS盤B2、B3による負荷Lへの電力の供給は継続している。
【0086】
既設のUPS盤B1が撤去された設置領域Fに、新設のUPS盤B1を設置して、筐体側接続部11と経路側接続部21との接続を行う(ステップS304)。そして、遮断器52R1を投入し、新設のUPS盤B1の単体試験を行う(ステップS305)。
【0087】
次に、遮断器52I2を解放し、既設のUPS盤B2の停止及び並列運転の解除を行い、遮断器52T1、52T2を投入し、新設のUPS盤B1と、既設のUPS盤B2との並列試験を行う(ステップS306)。このとき、UPS盤B3により、負荷Lに電力を供給しているものとする。
【0088】
この段階では、カウンタ変数Xが2以上ではなく(ステップS307のNО)、並列接続数Nに一致していないため(ステップS309のNО)、変数Xをインクリメントする(ステップS310)。そして、上記のUPS盤B1と同様に、既設のUPS盤B2の停止、解除・撤去、新設のUPS2の設置・接続、単体試験、並列試験を行う(ステップS302~S306)。なお、ここでの並列試験は、遮断器52T1、52T2を投入して、新設のUPS盤B1と新設のUPS盤B2によって行う。
【0089】
この段階では、カウンタ変数Xが2以上となるため(ステップ307のYES)、遮断器52T1、52T2を開放し、遮断器52I2を投入することにより、既設のUPS盤B3と並列に、新設UPS盤B2による負荷Lへの電力の供給を開始する(ステップS308)。カウンタ変数Xは、並列接続数Nとなっていないため(ステップS309のNО)、変数Xをインクリメントする(ステップS310)。そして、上記のUPS盤B2と同様に、既設のUPS盤B3の停止、解除・撤去、新設のUPS3の設置・接続、単体試験、並列試験を行う(ステップS302~S306)。なお、ここでの並列試験は、遮断器52T1、52T3を投入して、新設のUPS盤B1と新設のUPS盤B3によって行う。このとき、UPS盤B2により、負荷Lに電力を供給している。
【0090】
この段階では、カウンタ変数Xが2以上であるため(ステップS307のYES)、並列試験のために投入していた遮断器52T3を開放し、開放していた遮断器52I3を投入することにより、新設のUPS盤B2と並列に、新設のUPS盤B3による負荷Lへの電力の供給を開始する(ステップS308)。なお、遮断器52T1も開放し、遮断器52I1も投入することにより、新設のUPS盤B2、B3と並列に、新設のUPS盤B1による負荷Lへの電力の供給も開始する。
【0091】
そして、カウンタ変数Xが、並列接続数Nに達したため、(ステップS309のYES)、更新を終了する。なお、例えば、制御装置によって、並列に接続された盤が何台か(N)、更新済の盤が何台か(X-1)、未更新の盤が何台か(N-(X-1))を表示装置に表示してもよい。
【0092】
以上のように、本実施形態では、負荷Lに対する電力の供給源が、「既設のUPS盤B1、B2、B3」→「既設のUPS盤B2、B3」→「既設のUPS盤B3のみ」→「新設のUPS盤B2及び既設のUPS盤B3」→「新設のUPS盤B2のみ」→「新設のUPS盤B2及び新設のUPS盤B3」→「新設のUPS盤B1、B2、B3」に切り替わるが、電力の供給が止まることはない。
【0093】
[作用効果]
以上のような本実施形態は、電力の供給源を、少なくとも3つの供給経路PSのうちの少なくとも1つのUPS盤Bに選択的に切り替えることにより、選択されたUPS盤Bによる電力の供給を継続しながら、他のいずれか2つのUPS盤Bの一方を交換可能とするとともに、双方の並列試験を可能とする切替部を有する。
【0094】
このため、並列に運転された複数台のUPS盤B及びその設置領域Fを活用して、更新用のUPS盤Bを新たに用意することなく、少ないスペースであっても、電力の供給を継続しながら、UPS盤Bの更新作業を行うことができる。更新作業中においても、並列に運転された複数台のUPS盤Bによって電力を分担することができる場合があるので、負荷Lの需要変動にも柔軟に対応できる。
【0095】
[第3の実施形態]
[構成]
第3の実施形態の盤交換型電力供給システムを、
図19を参照して説明する。なお、第1及び第2の実施形態と同様の構成については、説明を省略する。本実施形態は供給経路PSの1つに、分断された供給経路PSを短絡する短絡部材SCが筐体に収容された短絡盤SBと、UPS盤B1とが、筐体側接続部11及び経路側接続部21を介して、選択的に接続可能に設けられている。
【0096】
そして、短絡盤SBを新設のUPS盤Bに交換した供給経路PSにより、電力の供給を継続しながら、他のいずれかの供給経路PSのUPS盤Bを取り外し可能とする切替部を有する。このように、本実施形態の盤交換型電力供給システムは、非冗長の単機システムとして構成されている。
【0097】
供給経路PS1のUPS盤B1は、平常時に、電源CS1から供給された交流を直流に変換して、負荷Lに供給する常用の盤である。短絡盤SBは、供給経路PS1から負荷Lへの供給ができないときに、電源CSxから供給された交流を負荷Lに供給する予備の盤である。短絡盤SBは、UPS盤Bと同様に、設置領域Fに設置可能な筐体及び筐体側接続部11を有する。例えば、UPS盤Bの筐体10と同等のサイズの筐体に、UPS盤Bと同じ位置に筐体側接続部11が設けられている。供給経路PSxには、供給経路PS1と同様の設置領域F、経路側接続部21が設けられている。つまり、設置領域Fは、UPS盤B、短絡盤SBが選択的に設置可能なサイズであり、筐体側接続部11が接続される位置に経路側接続部21が設けられている。
【0098】
筐体に収容された短絡部材SCは、ケーブル、金属製の棒状体、板状体等の導体を含み構成される。より具体的には、短絡部材SCは、筐体側接続部11の主経路R1の入力側及びバイパス経路R2の入力側と、主経路R1の出力側及びバイパス経路R2の出力側とを短絡する。供給経路PSxは、バイパス接続部BPによって、負荷Lに対して供給経路PS1と並列に接続されている。
【0099】
切替部は、短絡盤SBを新設のUPS盤B1に交換した供給経路PSxにより、電力の供給を継続しながら、他の供給経路PS1のUPS盤B1を取り外し可能とする。切替部は、複数の遮断器52C、52R、52M、52Lを含み構成される。遮断器52C、52Rは、電源CSx、CS1と供給経路PSx、PS1との接続を開閉する。遮断器52Mは、短絡盤SBと負荷Lとの接続を開閉する。遮断器52Lは、UPS盤B1と負荷Lとの接続を開閉する。バイパス接続部BP、遮断器52L、52Mは、保守バイパス盤MBの筐体に収容されている。
【0100】
[更新作業]
以上のような本実施形態の更新作業を、
図20のフローチャートに従って説明する。電気的接続作業、本体部の交換作業については、第1の実施形態と同様である。
【0101】
本実施形態の更新作業は、供給経路PSxに接続された短絡盤SBを、新設のUPS盤Bに交換し、新設のUPS盤Bによって電力の供給を継続しながら、他の供給経路PS1から、既設のUPS盤B1を取り外す。
【0102】
なお、通常運転時においては、遮断器52R、52Lは投入されていて、UPS盤B1によって、負荷Lへの電力の供給を行っている。また、遮断器52Cは投入されているが、遮断器52Mは投入されていない。
【0103】
まず、遮断器52Cを開放し、短絡盤SBの筐体側接続部11と経路側接続部21との接続を解除して、設置領域Fから撤去する(ステップS401)。
【0104】
そして、短絡盤SBが撤去された設置領域Fに、新設のUPS盤B1を設置して、筐体側接続部11と経路側接続部21との接続を行う(ステップS402)。そして、遮断器52Cを投入して、新設のUPS盤B1の単体試験を行う(ステップS403)。
【0105】
次に、遮断器52Mを投入後、52Lを開放し、新設のUPS盤B1による負荷Lへの給電を開始する(ステップS404)。この切替は、上記のオーバーラップ切替とする。そして、既設のUPS盤B1を停止して、筐体側接続部11と経路側接続部21との接続を解除して、設置領域Fから撤去する(ステップS405)。
【0106】
さらに、供給経路PS1のUPS盤B1を撤去した設置領域Fに、短絡盤SBを設置して、筐体側接続部11と経路側接続部21とを接続し、遮断器52Rを投入する(ステップS406)。以上の作業により、負荷Lに対する電力の供給源が、「既設UPS盤B1」→「新設UPS盤B1及び既設UPS盤B1」→「新設UPS盤B1」に切り替わるが、電力の供給が止まることはない。
【0107】
[作用効果]
以上のような本実施形態は、短絡盤SBを新設のUPS盤Bに交換した供給経路PSにより、電力の供給を継続しながら、他のいずれかの供給経路PSのUPS盤Bを取り外し可能とする切替部を有する。
【0108】
そして、予備の電力の供給経路PSxには、供給経路PS1と共通の設置領域F及び経路側接続部21が設けられ、UPS盤Bと構造を共通化した短絡盤SBが接続されている。このため、短絡盤SBを新設のUPS盤Bに交換することにより、更新用のUPS盤Bのためのスペースを用意しなくても、既存のUPS盤Bによる電力の供給を継続しながら、新設のUPS盤Bに交換することができる。
【0109】
さらに、本実施形態では、短絡盤SBを、供給経路PSxから供給経路PS1へと移し替えることになるが、この移し替えの作業も、共通化した設置領域F、経路側接続部21に対して簡単に短時間で行うことができる。
【0110】
[第4の実施形態]
[構成]
第4の実施形態の盤交換型電力供給システムを説明する。なお、第1、第2及び第3の実施形態と同様の構成については説明を省略する。本実施形態の盤交換型電力供給システムは、並列冗長システムとして構成されている。本実施形態は、短絡盤SBを、供給経路PSから取り外した既設のUPS盤Bに交換した供給経路PSにより、電力の供給を継続しながら、既設のUPS盤Bを取り外した供給経路PSに、新設のUPS盤Bを接続可能とする切替部を有する。
【0111】
まず、
図21に示すように、供給経路PS1、PS2、…PSnのUPS盤B1、B2、…Bnは、平常時に、電源CS1、CS2、…CSnから供給された交流を直流に変換して、負荷Lに並列に電力を供給する常用の盤である。供給経路PSxの短絡盤SBは、供給経路PS1から負荷Lへの供給ができないときに、電源CSxから供給された交流を、負荷Lに供給する予備の盤である。この供給経路PSx、短絡盤SBは、第3の実施形態と同様である。
【0112】
切替部は、複数の遮断器52C、52R1、52R2、…52Rn、52I1、52I2、…52In、52T1、52T2、…52Tn、52M、52Lを含み構成される。遮断器52C、52R1、52R2、…52Rnは、電源CSx、CS1、CS2、…CSnと供給経路PSx、PS1、PS2、…PSnとの接続を開閉する。遮断器52I1、I2、…52Inは、並列接続部PCに設けられ、UPS盤B1、B2、Bnと、負荷Lとの接続を開閉する並列切替部である。遮断器52T1、T2、…Tnは、試験用接続部TCに設けられ、UPS盤B1、B2、…Bnを相互に接続する試験用切替部である。遮断器52Mは、供給経路PSxと、バイパス接続部BPとの接続を開閉する。遮断器52Lは、並列接続部PCと負荷Lとの接続を開閉する。
【0113】
[更新手順]
以上のような本実施形態の更新作業を、
図22のフローチャートを参照して説明する。電気的接続作業、本体部の交換作業については、第1の実施形態と同様である。
【0114】
本実施形態の更新作業は、供給経路PSxに接続された短絡盤SBを、並列に電力を供給している複数の供給経路PSに接続されたUPS盤Bのうち、いずれか1つの既設のUPS盤Bと交換し、短絡盤SBと交換した既設のUPS盤Bによって電力の供給を継続しながら、既設のUPS盤Bが取り外された供給経路PSに、新設のUPS盤Bを接続することにより行う。
【0115】
なお、通常運転時においては、遮断器52R1、52R2、…52Rn、52I1、52I2、…52In、52Lは投入されていて、UPS盤B1、B2、…Bnによって、負荷Lへの電力の供給を並列に行っている。また、遮断器52Cは投入されているが、遮断器52Mは投入されていない。
【0116】
(UPS盤B1、B2の更新)
UPS盤B1、B2の更新手順を、
図22のフローチャートに従って説明する。まず、遮断器52R1、52I1を開放し、既設のUPS盤B1を停止する(ステップS501)。そして、既設のUPS盤B1の筐体側接続部11と経路側接続部21との接続を解除して、供給経路PS1の設置領域Fから撤去する(ステップS502)。
【0117】
次に、遮断器52Cを開放し、短絡盤SBの筐体側接続部11と経路側接続部21との接続を解除して、設置領域Fから撤去する(ステップS503)。そして、短絡盤SBが撤去された設置領域Fに、供給経路PS1から撤去した既設のUPS盤B1を設置して、筐体側接続部11と経路側接続部21との接続を行う(ステップS504)。その後、遮断器52C、52Mを投入することにより、既設のUPS盤B1による電力の供給を開始する(ステップS505)。
【0118】
供給経路PS1の既設のUPS盤B1を撤去した設置領域Fに、新設のUPS盤B1を設置して、筐体側接続部11と経路側接続部21との接続を行う(ステップS506)。そして、遮断器52R1を投入して、新設のUPS盤B1の単体試験を行う(ステップS507)。
【0119】
次に、遮断器52I2を開放し、既設のUPS盤B2による負荷Lへの電力の供給を停止する(ステップS508)。そして、遮断器52T1、52T2を投入して、新設のUPS盤B1と既設のUPS盤B2の並列試験を行う(ステップS509)。
【0120】
遮断器52R2、52T2を開放して、既設のUPS盤B2を停止する(ステップS510)。そして、既設のUPS盤B2の筐体側接続部11と経路側接続部21との接続を解除して、設置領域Fから撤去する(ステップS511)。
【0121】
既設のUPS盤B2が撤去された設置領域Fに、新設のUPS盤B2を設置して、筐体側接続部11と経路側接続部21との接続を行う(ステップS512)。遮断器52R2を投入して、新設のUPS盤B2の単体試験を行う(ステップS513)。さらに、遮断器52T2を投入して、新設のUPS盤B1とB2の並列試験を行う(ステップS514)。その後、遮断器52T1、52T2を開放して、遮断器52I2を投入することにより、新設のUPS盤B2による負荷Lへの電力の供給を開始する(ステップS515)。
【0122】
(UPS盤Bnの更新)
次に、UPS盤B1、B2以外のUPS盤Bnの更新の手順を説明する。なお、この更新は、上記のステップS511~ステップ515と同様である。つまり、既設のUPS盤Bnの筐体側接続部11と経路側接続部21との接続を解除して、設置領域Fから撤去する。
【0123】
既設のUPS盤Bnが撤去された設置領域Fに、新設のUPS盤Bnを設置して、筐体側接続部11と経路側接続部21との接続を行う。遮断器52Rnを投入して、新設のUPS盤Bnの単体試験を行う。さらに、遮断器52Tnを投入して、新設のUPS盤B1とBnの並列試験を行う。その後、遮断器52Tnを開放して、遮断器52Inを投入することにより、新設のUPS盤Bnによる負荷Lへの電力の供給を開始する。
【0124】
(短絡盤の復帰)
さらに、短絡盤SBを元に戻して、通常の運転状態に復帰させる手順を、
図23のフローチャートに従って説明する。まず、遮断器52T1を解放して、遮断器52I1を投入しておく。これにより、新設のUPS盤B1による負荷Lへの電力の供給が開始する。そして、遮断器52C、52Mを開放して、既設のUPS盤B1を停止する(ステップ601)。既設のUPS盤B1の筐体側接続部11と経路側接続部21との接続を解除して、設置領域Fから撤去する(ステップS602)。既設のUPS盤B1が撤去された設置領域Fに、短絡盤SBを設置して、筐体側接続部11と経路側接続部21との接続を行う(ステップS603)。
【0125】
(全体の更新手順)
なお、上記のような更新手順を含み、複数のUPS盤Bの数に応じた更新手順の全体を、
図24のフローチャートに従って説明する。なお、フローチャートにおける変数の初期化やインクリメントは、作業者が自らの判断で行う仮想的なものであってもよいし、電力供給システムを制御するコンピュータである制御装置が行って、管理者が視認可能となるように表示装置に表示してもよいことは、第2の実施形態と同様である。
【0126】
まず、変数Nは並列台数で初期化される(ステップS701)。そして、上記の
図22で示した手順によって、既設のUPS盤B1、B2を更新する(ステップS702)。
【0127】
並列台数が3以上でない場合には(ステップS703のNО)、上記の
図23で示した手順によって、短絡盤を復帰させる(ステップS708)。並列台数が3以上の場合には(ステップS703のYES)、変数Xが3で初期化される(ステップS704)。そして、上記の手順によって既設のUPS盤Bnを更新する(ステップS705)。変数Xが並列台数に達していない場合には(ステップS706のNО)、変数Xをインクリメントして(ステップS707)、次の既設のUPS盤Bnを更新する(ステップS705)。
【0128】
以上を繰り返し、変数Xが並列台数に達した場合には(ステップS706のYES)、上記の
図23で示した手順によって、短絡盤を復帰させる(ステップS708)。以上により、既設のUPS盤B1により負荷Lへの電力の供給を継続しながら、複数のUPS盤Bの更新ができる。なお、例えば、制御装置によって、並列に接続された盤が何台か(N)、更新済の盤が何台か(X-1)、未更新の盤が何台か(N-(N-X))を表示装置に表示してもよい。
【0129】
[作用効果]
以上のような本実施形態では、短絡盤SBを、いずれかの供給経路PSから取り外した既設のUPS盤Bに交換した供給経路PSにより、電力の供給を継続しながら、既設のUPS盤Bを取り外した供給経路PSに、新設のUPS盤Bを接続可能とする切替部を有する。
【0130】
このため、複数並列に接続されたUPS盤Bについて、既設のUPS盤Bによる負荷Lへの電力の供給を継続しながら、新設のUPS盤と既設のUPS盤との並列試験も行い、順次、UPS盤を更新していくことができる。
【0131】
さらに、本実施形態では、既設のUPS盤B1を、供給経路PS1から供給経路PSxへと移し替えることになるが、この移し替えの作業も、共通化した設置領域F、経路側接続部21に対して簡単に短時間で行うことができる。
【0132】
[変形例]
(1)供給経路PS、UPS盤B、短絡盤SBの数は、上記の態様で例示した数には限定されない。また、UPS盤Bに収容される電力機器は、一般的には、コンバータ及びインバータであるが、UPSを構成する電力機器のいずれかが収容されていればよい。また、UPS盤でない盤にも、本実施形態は適用可能である。
【0133】
(2)
図25に示すように、入力トランス盤6、蓄電池盤7、分岐盤8、外線端子盤О、並列盤PB、保守バイパス盤MB等の周辺盤についても、上記の同様の筐体側接続部11を設け、バスダクトBDを通るケーブルC等を介して接続することにより、交換作業を容易としてもよい。この場合、周辺盤についても、重量盤として捉えることができる。
【0134】
(3)筐体側接続部11の数は、単数であっても複数であってもよく、上記の態様には限定されない。1つの筐体側接続部11が開閉する電気的な接続部分の数も、複数であっても単数であってもよい。例えば、
図26に示すように、筐体側接続部11を1つとして、多数の接続部分を1つの操作で開閉できるようにしてもよい。
【0135】
(4)筐体側接続部11は、
図27及び
図28に示すように、筐体10の側面10d、10eの双方又は一方に設け、これに応じて経路側接続部21を配置してもよい。つまり、支持部101を、筐体10の側面10d、10eに設け、正面10bに平行な方向で固定された板状の部材とする。これにより、上部のスペースに十分な空きがない場合にも、上記と同様に正面側から筐体側接続部11と経路側接続部21との接続及び離脱作業を行うことができる。この場合にも、経路側接続部21及び筐体側接続部11は、外線端子盤Оの筐体に収容される態様であってもよい。
【0136】
また、各筐体側接続部11及び経路側接続部21が負担する電流値が大きくなる場合には、交流入力のR相、S相、T相、直流入力のP、N、バイパス入力のR相、S相、T相、交流出力のR相、S相、T相に分けて設けることができる。これらの筐体側接続部11は、互いに間隔を空けて配置され、絶縁距離を確保している。また、経路側接続部21も、筐体側接続部11に対応する位置に、互いに間隔を空けて並べて配置され、絶縁距離を確保している。
【0137】
(5)上記の態様では、筐体側接続部11の一部を、経路側接続部21の一部に対して可動としたが、経路側接続部21の一部を可動としても、筐体側接続部11の一部と経路側接続部21の一部の双方を可動してもよい。可動部分の可動方向は、奥行き方向の直線状には限らない。例えば、高さ方向の直線状であっても、幅方向の直線状であっても、これらの直線に斜交する直線状であってもよい。可動部分の可動経路は、ガイド部によりガイドされていればよく、クランク状、曲線状であってもよい。
【0138】
(6)上記の各実施形態、各態様は、本明細書において一例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図するものではない。すなわち、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことが可能である。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0139】
1…本体部
2…コンバータ
3…インバータ
4…ACスイッチ
6…入力トランス盤
7…蓄電池盤
8…分岐盤
10…筐体
10a…上面
10b…正面
10c…背面
10d、10e…側面
101…支持部
101a…穴
11…筐体側接続部
11a…導体
11b…連結部
11c…スライド部
111…ガイド部
111a…ガイドレール
111b…スライダ
112…可動部
112a…移動板
112b…支持板
112c…ガイド溝
113…操作部
113a…付勢板
113b…取手
21…経路側接続部
211…固定板
212…端子板
213…コネクタ部
213a…凹部
213b…接触電極
52…遮断器
F…設置領域
R1…主経路
R2…バイパス経路
R3…充放電経路
M1…レール部
M2…アイボルト
M3…アンカー
M4…レバーブロック
M5…ハンドリフト
M6…角材
B…UPS盤
I…入力盤
L…負荷
О…外線端子盤
BS…ベース部
PS…供給経路
CS…電源
MB…保守バイパス盤
BP…バイパス接続部
PB…並列盤
PC…並列接続部