(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027558
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】ジッパー、開封構造および包装箱
(51)【国際特許分類】
B65D 5/54 20060101AFI20230222BHJP
【FI】
B65D5/54 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132729
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】長原 耕太郎
【テーマコード(参考)】
3E060
【Fターム(参考)】
3E060AA03
3E060AB05
3E060BA03
3E060BC02
3E060CE04
3E060CE05
3E060CE07
3E060CE18
3E060CE19
3E060CE22
3E060CE23
3E060CF05
3E060DA14
3E060DA30
3E060EA06
(57)【要約】
【課題】意図しない破断を抑制しながら破断後の美粧性を良好にすることができるジッパーを提供する。
【解決手段】
第1切目22と一対の第2切目23とが開封方向に間隔をあけて紙材に切り込まれて切目群21を形成し、切目群21から構成されるジッパー20である。第1切目22は、脱線方向の一方に突出し、第1中心線CL1を基準に線対称となる山型に形成され、一対の第2切目23は、第1切目22を挟んで開封方向の両側に配置され、第1切目22を中心に線対称となる形状とされ、それぞれ脱線方向の一方に突出し、且つ第2中心線CL2を基準に非対称となる山型に形成され、第1切目22の両端部25と、一対の第2切目23の内端部26とは、開封方向に離間した位置に形成され、第1切目22の両端部25と、一対の第2切目23の内端部26と、一対の第2切目23の外端部27とは、互いに脱線方向にずれた位置に形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1切目(22)と一対の第2切目(23)とが開封方向に間隔をあけて紙材に切り込まれて切目群(21)を形成し、少なくとも1つの前記切目群から構成されるジッパー(20)であって、
前記第1切目は、開封方向に平面上で直交する脱線方向の一方に突出し、脱線方向に沿って延びた第1中心線(CL1)を基準に線対称となる山型に形成され、
一対の前記第2切目は、前記第1切目を挟んで開封方向の両側に配置され、前記第1切目を中心に線対称となる形状とされ、それぞれ脱線方向の一方に突出し、且つ脱線方向に沿って延びた第2中心線(CL2)を基準に非対称となる山型に形成され、
前記第1切目の両端部(25)と、前記第1切目の両端に隣り合う一対の前記第2切目の内端部(26)とは、開封方向に離間した位置に形成され、
前記第1切目の前記両端部と、一対の前記第2切目の前記内端部と、開封方向の両端となる一対の前記第2切目の外端部(27)とは、互いに脱線方向にずれた位置に形成されていることを特徴とするジッパー。
【請求項2】
一対の前記第2切目の前記内端部は、前記第1切目の前記両端部よりも脱線方向の一方にずれ、且つ前記第1切目の頂部(T1)よりも脱線方向の他方にずれた位置に形成され、
一対の前記第2切目の前記外端部は、前記第1切目の前記両端部よりも脱線方向の他方にずれた位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のジッパー。
【請求項3】
前記第1切目の頂部(T1)は、各々の前記第2切目の頂部(T2)よりも脱線方向の一方にずれた位置に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のジッパー。
【請求項4】
前記第1切目は、円弧状に湾曲し、
各々の前記第2切目は、
頂部(T2)を含んで円弧状に形成される曲線部(23A)と、
前記曲線部の両端から互いに離れるように脱線方向の他方に傾斜しながら直線状に延設される一対の傾斜部(23B)と、を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のジッパー。
【請求項5】
複数の前記切目群を有し、隣り合う一対の前記切目群の前記外端部は、開封方向に離間した位置に形成され、且つ脱線方向に一致した位置に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のジッパー。
【請求項6】
前記第1切目と前記第2切目との頂部(T1,T2)を内側に向け、脱線方向に間隔をあけて前記紙材に一対形成される請求項1ないし5のいずれか1項に記載のジッパーと、
一対の前記ジッパーの間に形成される引裂帯(31)と、を備えていることを特徴とする開封構造。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のジッパー、または請求項6に記載の開封構造を備えていることを特徴とする包装箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙材に切り込まれた複数の切目から成るジッパー、開封構造および包装箱に関する。
【背景技術】
【0002】
2本の切目列を並行させた紙材の引裂帯が知られている(特許文献1)。各切目列は、長辺部の一端に短辺部を、長辺部の他端に跳上部をジグザグに連設した切目を断続させて構成されている。隣り合う切目において、短辺部の先端は、跳上部の先端よりも内側に位置している。具体的には、隣り合う短辺部と跳上部とは互いに平行に形成され、それらの一部は僅かな継ぎ目を挟んで対向している。これにより、引裂帯を開封方向の一方と他方のどちらからでも引き裂くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した切目列では、隣り合う短辺部と跳上部とが近接した位置で重なるように対向し、継ぎ目が非常に狭くなるため、例えば輸送時の衝撃等で裂けてしまう虞があった。また、切目列を構成する切目はジグザグに形成されているため、破断した跡(破断面)もジグザグになるため、破断後の美粧性が低いという問題もあった。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮し、意図しない破断を抑制しながら破断後の美粧性を良好にすることができるジッパー、開封構造および包装箱を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1切目と一対の第2切目とが開封方向に間隔をあけて紙材に切り込まれて切目群を形成し、少なくとも1つの前記切目群から構成されるジッパーであって、前記第1切目は、開封方向に平面上で直交する脱線方向の一方に突出し、脱線方向に沿って延びた第1中心線を基準に線対称となる山型に形成され、一対の前記第2切目は、前記第1切目を挟んで開封方向の両側に配置され、前記第1切目を中心に線対称となる形状とされ、それぞれ脱線方向の一方に突出し、且つ脱線方向に沿って延びた第2中心線を基準に非対称となる山型に形成され、前記第1切目の両端部と、前記第1切目の両端に隣り合う一対の前記第2切目の内端部とは、開封方向に離間した位置に形成され、前記第1切目の前記両端部と、一対の前記第2切目の前記内端部と、開封方向の両端となる一対の前記第2切目の外端部とは、互いに脱線方向にずれた位置に形成されている。
【0007】
この場合、一対の前記第2切目の前記内端部は、前記第1切目の前記両端部よりも脱線方向の一方にずれ、且つ前記第1切目の頂部よりも脱線方向の他方にずれた位置に形成され、一対の前記第2切目の前記外端部は、前記第1切目の前記両端部よりも脱線方向の他方にずれた位置に形成されてもよい。
【0008】
この場合、前記第1切目の頂部は、各々の前記第2切目の頂部よりも脱線方向の一方にずれた位置に形成されてもよい。
【0009】
この場合、前記第1切目は、円弧状に湾曲し、各々の前記第2切目は、頂部を含んで円弧状に形成される曲線部と、前記曲線部の両端から互いに離れるように脱線方向の他方に傾斜しながら直線状に延設される一対の傾斜部と、を有してもよい。
【0010】
この場合、複数の前記切目群を有し、隣り合う一対の前記切目群の前記外端部は、開封方向に離間した位置に形成され、且つ脱線方向に一致した位置に形成されてもよい。
【0011】
本発明に係る開封構造は、前記第1切目と前記第2切目との頂部を内側に向け、脱線方向に間隔をあけて前記紙材に一対形成される請求項1ないし5のいずれか1項に記載のジッパーと、一対の前記ジッパーの間に形成される引裂帯と、を備えている。
【0012】
本発明に係る包装箱は、上記したいずれかのジッパー、または上記した開封構造を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、意図しないジッパーの破断を抑制しながら破断後の美粧性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る包装箱を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る包装箱のブランクを示す平面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る包装箱のブランクの一部(ジッパー)を拡大して示す平面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る包装箱を開封した状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る包装箱のジッパーの作用を説明する正面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る包装箱を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る包装箱のブランクを示す平面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る包装箱のブランクの一部(開封構造)を拡大して示す平面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る包装箱を開封した状態を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第2実施形態の変形例に係る包装箱のブランクの一部(開封構造)を拡大して示す平面図である。
【
図11】本発明の変形例に係るジッパーの一部を拡大して示す平面図である。
【
図12】本発明の他の変形例に係るジッパーの一部を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図面に示すFr、Rr、L、R、U、Dは、前、後、左、右、上、下を示している。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、方向や位置を示す用語は、包装箱を使用する状態における方向や位置を基準にしている。
【0016】
[第1実施形態に係る包装箱]
図1および
図2を参照して、第1実施形態に係る包装箱1について説明する。
図1は包装箱1を示す斜視図である。
図2は包装箱1のブランク1Aを示す平面図である。
【0017】
図1に示すように、包装箱1は、略直方体状に形成され、周壁Wの上下両端面を閉塞することで封緘されるA式の箱である。包装箱1は、
図2に示すブランク1Aを組み立てることで形成されている。ブランク1Aは、1枚の紙製の段ボールシートを抜型等で打ち抜いて形成されている。段ボールシートは、例えば、波状の中しん9Aに表ライナ9Bと裏ライナ9C(
図4も参照)とを貼り合せた両面段ボールシートである。なお、
図2は、表ライナ9B側(包装箱1の外面)を示している。本明細書では、段ボールシートの中しん9Aと平行な方向を「段方向」と呼び、段方向に直交する方向を「流れ方向」と呼ぶこととする。図面に示す「X」は「段方向」を示し、「Y」は「流れ方向」を示している。
【0018】
[ブランク]
図2に示すように、ブランク1Aは、一対の第1側壁10と、一対の第2側壁11と、一対の下内フラップ12と、一対の下外フラップ13と、一対の上内フラップ14と、一対の上外フラップ15と、を備えている。なお、一対の第1側壁10は略同一形状であるため、以下、主に1つの第1側壁10に着目して説明する。これと同様に、一対の第2側壁11、一対の下内フラップ12、一対の下外フラップ13、一対の上内フラップ14および一対の上外フラップ15についても、以下、主に1つの部位に着目して説明する。
【0019】
<第1側壁、第2側壁>
一対の第1側壁10と一対の第2側壁11とは、第1折曲線L1を介して流れ方向に交互に並設されている。第1側壁10と第2側壁11とは、略長方形状に形成されている。詳細には、第1側壁10は、第2側壁11よりも流れ方向に短い略長方形状に形成されている。流れ方向の一方(
図2の左方)に位置する第2側壁11の一端には、第1折曲線L1を介して継代片16が連設されている。なお、継代片16は、流れ方向の他方(
図2の右方)に位置する第1側壁10の流れ方向の他端に連設されてもよい(図示せず)。また、一対の第1側壁10と一対の第2側壁11との並び順が入れ替わってもよい(図示せず)。
【0020】
<下内フラップ、下外フラップ>
下内フラップ12は、第2折曲線L2を介して第1側壁10の段方向の他端(下端)に連設されている。下内フラップ12は略長方形状に形成され、その段方向の寸法(延出寸法)は第1側壁10の流れ方向の寸法の略半分に設定されている。下外フラップ13は、第2折曲線L2を介して第2側壁11の段方向の他端(下端)に連設されている。下外フラップ13は略長方形状に形成され、その延出寸法は下内フラップ12の延出寸法と略同一である。
【0021】
<上内フラップ、上外フラップ>
上内フラップ14は、ジッパー20を介して第1側壁10の段方向の一端(上端)に連設されている。上内フラップ14は、下内フラップ12と略同一形状に形成されている。上外フラップ15は、ジッパー20を介して第2側壁11の段方向の一端(上端)に連設されている。上外フラップ15は、下外フラップ13と略同一形状に形成されている。
【0022】
なお、第1折曲線L1および第2折曲線L2は、段ボールシートを裏ライナ9C側から厚み方向に潰した汎用罫線である。汎用罫線は、主に裏ライナ9Cを内側に向けるように段ボールシートを折り曲げる(正折りする)機能を有している。第1および第2折曲線L1,L2は、汎用罫線に限らず、汎用罫線上にミシン目を入れたリード罫等、段ボールシートを折り曲げるための構造であれば如何なるものでもよい。
【0023】
[ジッパー]
次に、
図2および
図3を参照して、ジッパー20について説明する。
図3はブランク1Aの一部(ジッパー20)を拡大して示す平面図である。
【0024】
各ジッパー20は、上方の各フラップ14,15を、各側壁10,11に対して折り曲げる機能と各側壁10,11から分断する機能とを有する。このジッパー20は、流れ方向の一方と他方のどちらからでも破断可能とされている。なお、請求項で言う「開封方向」の一例が流れ方向(横方向)であり、開封方向に平面上で直交する「脱線方向」の一例が段方向(縦方向)である。
【0025】
図2に示すように、ジッパー20は、複数の切目群21から構成されている。第1側壁10と上内フラップ14との境界に形成されたジッパー20は2つの切目群21で構成され、第2側壁11と上外フラップ15との境界に形成されたジッパー20は3つの切目群21で構成されている。なお、複数の切目群21はそれぞれ同一構造であるため、以下の説明では、主に1つの切目群21に着目して説明する。
【0026】
切目群21は、第1切目22と一対の第2切目23とを流れ方向(開封方向)に間隔をあけて段ボールシート(紙材)に切り込むことで形成されている。なお、ジッパー20は、その流れ方向の両側に流れ方向に平行に切り込まれた一対の直線切目24を有しているが、一対の直線切目24は省略されてもよい。
【0027】
<第1切目>
図3に示すように、第1切目22は、上方の各フラップ15(14)の先端側(脱線方向の一方)に突出した円弧状に湾曲している。また、第1切目22は、段方向(脱線方向)に沿って延びた第1中心線CL1(第1切目22を流れ方向に二等分する線)を基準に線対称となる山型に形成されている。
【0028】
<第2切目>
一対の第2切目23は、第1切目22を挟んで流れ方向(開封方向)の両側に配置され、第1切目22を中心に線対称となる形状とされている。一対の第2切目23は、それぞれ上方の各フラップ15(14)の先端側(脱線方向の一方)に突出し、且つ段方向(脱線方向)に沿って延びた第2中心線CL2(第2切目23を流れ方向に二等分する線)を基準に非対称となる山型に形成されている。換言すると、各々の第2切目23は、略「へ」字状に形成されている。
【0029】
各々の第2切目23は、曲線部23Aと、一対の傾斜部23Bと、を有している。曲線部23Aは、頂部T2を含んで円弧状に形成されている。一対の傾斜部23Bは、曲線部23Aの両端から互いに離れるように各側壁11(10)側(脱線方向の他方)に傾斜しながら直線状に延設されている。詳細には、第1切目22から離れた傾斜部23Bは、第1切目22に近い傾斜部23Bよりも長く形成され、各側壁11(10)に食い込むように伸長している。また、第1切目22から離れた傾斜部23Bの先端側(後述する外端部27)は、略水平(流れ方向と平行)になるように屈曲している。
【0030】
<第1切目と第2切目との位置関係>
第1切目22の両端部25と、第1切目22の両端に隣り合う一対の第2切目23の内端部26とは、流れ方向(開封方向)に離間した位置に形成されている。また、隣り合う一対の切目群21(一対の第2切目23)の外端部27は、流れ方向(開封方向)に離間した位置に形成されている。つまり、各切目22,23の間には、上方の各フラップ15(14)と各側壁11(10)とを繋ぐ継ぎ目28が形成されている。なお、各直線切目24と各第2切目23との間、各フラップ15(14)の縦縁と各直線切目24との間にも、継ぎ目28が形成されている。
【0031】
また、第1切目22の両端部25と、一対の第2切目23の内端部26と、流れ方向(開封方向)の両端となる一対の第2切目23の外端部27とは、互いに段方向(脱線方向)にずれた位置に形成されている。具体的には、一対の第2切目23の内端部26は、第1切目22の両端部25よりも段方向の一方(上方の各フラップ15(14)の先端側)にずれ、且つ第1切目22の頂部T1よりも段方向の他方(各側壁11(10)側)にずれた位置に形成されている。つまり、各第2切目23の内端部26は、第1切目22の端部25から段差D1の分だけ上方に(頂部T1に接近して)配置されている。一方で、一対の第2切目23の外端部27は、第1切目22の両端部25よりも段方向の他方(各側壁11(10)側)にずれた位置に形成されている。つまり、各第2切目23の外端部27は、第1切目22の端部25から段差D2の分だけ下方に(頂部T1から離間して)配置されている。
【0032】
また、隣り合う一対の切目群21(第2切目23)の外端部27は、段方向(脱線方向)に一致した位置に形成されている。また、各直線切目24は、第2切目23の内端部26と段方向に一致した位置に形成されている。なお、本明細書において「一致」とは、完全に一致することを要求する意味ではなく、製造上の僅かな誤差を許容する意味である。
【0033】
第1切目22は第2切目23よりも突出量が大きく、第1切目22の頂部T1は各々の第2切目23の頂部T2よりも段方向の一方(上方の各フラップ15(14)の先端側)にずれた位置に形成されている。つまり、第1切目22の頂部T1は、第2切目23の頂部T2から段差D3の分だけ上方に配置されている。
【0034】
[包装箱の封緘]
次に、
図1を参照して、包装箱1の組立手順(封緘手順)について説明する。なお、包装箱1は、作業者によって手作業で封緘されてもよいし、自動製函機(図示せず)によって自動または半自動で封緘されてもよい。ここでは、一例として、作業者が手作業で包装箱1を封緘する場合について説明する。また、包装箱1の初期状態として、ブランク1Aの流れ方向の両外側に位置する第1側壁10と第2側壁11とが第1折曲線L1で折り返され、継代片16が折り返された第1側壁10の裏ライナ9Cに接着され、包装箱1は二重に折り畳まれていることとする(図示せず)。
【0035】
作業者は、一対の第1側壁10と一対の第2側壁11とを第1折曲線L1に沿って略直角に折り曲げ、四角筒状の周壁Wを形成する。続いて、作業者は、一対の下内フラップ12を第2折曲線L2に沿って内向きに折り曲げた後、一対の下外フラップ13を第2折曲線L2に沿って内向きに折り曲げる。一対の下内フラップ12の先端部は離間し、一対の下外フラップ13の先端部は突き合わせられている。一対の下外フラップ13は、一対の下内フラップ12の表ライナ9Bに接着剤を介して固定される。
【0036】
以上によって、一対の下内フラップ12と一対の下外フラップ13とが周壁Wの底壁を構成する。作業者は周壁Wの上面開口から内部に物品(図示せず)を収容する。
【0037】
次に、作業者は、一対の上内フラップ14をジッパー20に沿って内向きに折り曲げた後、一対の上外フラップ15をジッパー20に沿って内向きに折り曲げる。一対の上内フラップ14の先端部は離間し、一対の上外フラップ15の先端部は突き合わせられている。一対の上外フラップ15は、一対の上内フラップ14の表ライナ9Bに接着剤を介して固定される。
【0038】
以上によって、一対の上内フラップ14と一対の上外フラップ15とが周壁Wの天壁を構成する。包装箱1は封緘された状態になる(
図1参照)。なお、上記では、上下の外フラップ13,15が接着剤で内フラップ12,14に固定されていたが、これに限らず、外フラップ13,15の突き合わせ部に沿って粘着テープを貼付することで固定されてもよい(図示せず)。
【0039】
[包装箱の開封]
次に、
図4および
図5を参照して、包装箱1の開封手順について説明する。
図4は包装箱1を開封した状態を示す斜視図である。
図5はジッパー20の作用を説明する正面図である。
【0040】
図4に示すように、ユーザは、一対の上外フラップ15を一対の上内フラップ14から引き剥がし、一対の上外フラップ15および一対の上内フラップ14を開いて起立姿勢にする。この状態で、包装箱1は開封されているが、この包装箱1では上方の各フラップ14,15をジッパー20に沿って分離することができる。
【0041】
なお、一対の上内フラップ14および一対の上外フラップ15は、同様の手順で分離することができるため、以下の説明では、一例として、前方の上外フラップ15を分離する手順について説明する。また、既に説明したが、このジッパー20は横方向(開封方向)の一方と他方のどちらからでも破断することができるが、どちらから破断したとしても破断作用(現象)は同一であるため、一例として左方から右方へ破断する場合について説明する。
【0042】
ユーザは、上外フラップ15の左側を把持し、上外フラップ15を左方から右方へ引っ張る。すると、ジッパー20に形成された複数の継ぎ目28は、左方から右方に向かって順番に破断されて行く。ここで、各継ぎ目28の破断によって生じる裂け目Gは、左方から右方に向かって分離される上外フラップ15の先端側に逸れようとする。つまり、裂け目Gは、右斜め上方に向かって脱線する傾向がある(
図5に示す破線参照)。
【0043】
図5に示すように、上外フラップ15の分断開始直後、直線切目24から進行する裂け目G(1)は、右斜め上方に逸れながら隣接する第2切目23の外側の傾斜部23Bに達する。続いて、第2切目23の内端部26から進行する裂け目G(2)は右斜め上方に逸れながら隣接する第1切目22(頂部T1よりも左側)に達する。次に、第1切目22の端部25から進行する裂け目G(3)は右斜め上方に逸れながら隣接する第2切目23の内側の傾斜部23B(内端部26)に達する。さらに、第2切目23の外端部27から進行する裂け目G(4)は、右斜め上方に逸れながら隣接する他の切目群21の第2切目23に達する。
【0044】
以上のように、継ぎ目28を進行する裂け目Gが隣り合う切目22,23に到達することで、裂け目Gの脱線が中断される。これにより、上外フラップ15は、ジッパー20に沿って第2側壁11から分断される(
図4参照)。なお、ユーザは、上記と同様の手順で、残りのフラップ14,15を側壁10,11から分断する(図示せず)。
【0045】
以上説明した第1実施形態に係る包装箱1では、ジッパー20の第1切目22と第2切目23とが横方向(開封方向)に間隔をあけ、且つ縦方向に段違いに配置されていた。この構成によれば、第1切目22と第2切目23との間の継ぎ目28を広く確保することができる。これにより、例えば、輸送時の衝撃等で継ぎ目28が裂ける等、意図しない破断を抑制することができる。また、一対の第2切目23が第1切目22を中心に線対称に配置されているため、ジッパー20を横方向の一方と他方のどちらからでも破断することができる。
【0046】
仮に、隣り合う切目が近接した位置で重なるように対向したジッパーの場合、継ぎ目が非常に狭く破断し易いため、各側壁10,11と各フラップ14,15との境界で折曲線代わりに使用することができない。これに対し、上記したジッパー20では、継ぎ目28を広く確保することができるため、ジッパー20を各フラップ14,15の折曲線の代わりに使用することができる。
【0047】
また、上記したジッパー20では、第1切目22と第2切目23とが同一方向に凸となる山型に形成されているため、ジッパー20に沿って破断させた跡(破断面)は略波状になる(
図4参照)。これにより、ジグザグに破断した破断面に比べて、破断面の凹凸を緩やかにすることができ、破断後の美粧性を良好にすることができる。
【0048】
ところで、このようなジッパー20は、合板に刃を固定した抜型(図示せず)を段ボールシートに押し当てる(プレスする)ことで形成される。仮に、隣り合う第1切目22と第2切目23との一部が近接して重なるように対向している場合、第1切目22と第2切目23とを切り込む刃と刃の間の合板部分が細くなるため、刃を支持するために必要な剛性(強度)を確保できないことがある。これに対し、上記したジッパー20では、継ぎ目28を広く確保することができるため、第1切目22と第2切目23とを切り込む刃と刃の間の合板部分の幅も広くすることができる。これにより、刃を確りと保持した適正な抜型を製造することが可能になる。
【0049】
また、上記したジッパー20では、第2切目23の内端部26が第1切目22の頂部T1と端部25との間に位置していた。この構成によれば、例えば、継ぎ目28を左方から右方に破断させる場合、左方の第2切目23の内端部26から右斜め上方に逸れようとする裂け目G(2)は第1切目22に達し、第1切目22の端部25から右斜め上方に逸れようとする裂け目G(3)は右方の第2切目23に達する(
図5参照)。これにより、裂け目Gが各切目22,23から脱線して進行することを有効に阻止することができる。
【0050】
また、上記したジッパー20によれば、第1切目22を第2切目23よりも高く突出させているため、第2切目23の内端部26から斜め上方に逸れた裂け目G(2)を第1切目22に到達させ易くなっている(
図5参照)。これにより、裂け目Gの脱線を有効に阻止することができる。
【0051】
ここで、仮に、第1切目22の頂部T1や第2切目23の頂部T2が、湾曲しておらず、直線を折り曲げたように屈曲している場合、開封の際、各頂部T1,T2に力が集中し易くなるため、段ボールシートが各頂部T1,T2から裂けてしまうことがある。これに対し、上記したジッパー20によれば、各頂部T1,T2が湾曲しているため、各頂部T1,T2に作用する力が分散され、各頂部T1,T2からの段ボールシートの破断を抑制することができる。また、破断面を丸みを帯びた自然な波状にすることができる(
図4参照)。
【0052】
また、上記したジッパー20では、各第2切目23が山型に形成され、隣り合う一対の切目群21の外端部27が横方向に間隔をあけ、且つ縦方向に段差無く配置されていた。この構成によれば、例えば、ジッパー20を左方から右方に破断させる場合、左方の切目群21の外端部27から右斜め上方に逸れようとする裂け目G(4)は右方の切目群21の第2切目23に達するため、裂け目Gの脱線を阻止することができる(
図5参照)。
【0053】
なお、第1実施形態に係る包装箱1では、4つの側壁10,11と4つのフラップ14,15との境界にジッパー20が形成されていたが、本発明はこれに限定されない。ジッパー20は、4つの側壁10,11と4つのフラップ14,15との少なくとも何れか1つの境界に形成されていればよい(図示せず)。この場合、他のフラップ14,15は汎用罫線を介して側壁10,11に連設されてもよい。また、各側壁10,11と下方の各フラップ12,13との境界にジッパー20が形成されてもよい(図示せず)。
【0054】
[第2実施形態に係る包装箱]
次に、
図6ないし
図9を参照して、第2実施形態に係る包装箱2(ブランク2A)について説明する。
図6は包装箱2を示す斜視図である。
図7はブランク2Aを示す平面図である。
図8はブランク2Aの一部(開封構造30)を拡大して示す平面図である。
図9は包装箱2を開封した状態を示す斜視図である。なお、以下の説明では、第1実施形態に係る包装箱1(ジッパー20)と同様または対応する構成には同一の符号を付し、同様または対応する説明は省略する。
【0055】
図6および
図7に示すように、第2実施形態に係る包装箱2(ブランク2A)では、上方の各フラップ14,15が第3折曲線L3(例えば汎用罫線)を介して各側壁10,11に連設され、一対のジッパー20を含む開封構造30が各側壁10,11に形成されている。
【0056】
開封構造30は、一対のジッパー20と、引裂帯31と、を備えている。一対のジッパー20は、一対の第1側壁10および一対の第2側壁11に段方向(脱線方向)に間隔をあけて形成されている。一対のジッパー20は、各側壁10,11の段方向の中央よりも若干下方においてブランク2A全体を流れ方向に横断するように形成されている。一対のジッパー20は、各切目22,23の頂部T1,T2を互いに対向させた姿勢とされ、互いに略平行に配置されている(
図8も参照)。引裂帯31は、一対のジッパー20の間に形成されている。各第2側壁11に形成された引裂帯31の流れ方向の中央には、上下一対の第1切目22の間を結ぶように縦切目32が切り込まれている。なお、継代片16には、一対のジッパー20から連続して延びるように一対のミシン目33が切り込まれている(
図7参照)。
【0057】
包装箱2は、第1実施形態に係る包装箱1と同様の手順で組み立てられる(封緘される)。引裂帯31(一対のジッパー20)は、周壁Wの全周に形成されている。また、包装箱2を開封する場合、ユーザは、第2側壁11の引裂帯31に形成された縦切目32に指を差し込み、縦切目32で分断された引裂帯31の端部を把持し、引裂帯31を横方向に引っ張る。そして、ユーザは、引裂帯31を一対のジッパー20に沿って各側壁10,11から分断する。
【0058】
ここで、各継ぎ目28の破断によって生じる裂け目Gは、引裂帯31側に逸れようとする(
図8に示す破線参照)。つまり、上下一対の裂け目Gは、互いに接近する方向に脱線する傾向がある。例えば、引裂帯31を左方から右方に破断させる場合、
図8に示すように、第1切目22の端部25から内側に逸れようとする裂け目G(3)は第2切目23に達し、第2切目23の外端部27から内側に逸れようとする裂け目G(4)は他の切目群21の第2切目23に達し、第2切目23の内端部26から内側に逸れようとする裂け目G(2)は第1切目22に達する。これにより、裂け目Gが各切目22,23から脱線して進行することで、引裂帯31が千切れることが阻止される。
【0059】
図9に示すように、引裂帯31が各側壁10,11から分離されることで、包装箱2は上下に二分割にされる。包装箱2の上部は取り除かれ、物品が収容されたトレイ状の包装箱2の下部が店頭等に陳列される。なお、包装箱2は、上方の各フラップ14,15を開くことで開封されてもよい(図示せず)。
【0060】
以上説明した第2実施形態に係る包装箱2(開封構造30)によれば、によれば、意図しない破断を抑制しながら破断後の美粧性を良好にする等、上記した第1実施形態に係る包装箱1(ジッパー20)と同様の効果を得ることができる。
【0061】
なお、第2実施形態に係る包装箱2では、上下一対のジッパー20が、横方向に同ピッチで配置され、各切目22,23の頂部T1,T2を互いに対向させていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図10に示すように、上下一対のジッパー20が、横方向に半ピッチずれていてもよい。詳細には、一方のジッパー20の頂部T1,T2が、他方のジッパー20の継ぎ目28に対向していてもよい。
【0062】
また、第2実施形態に係る包装箱2では、上下一対のジッパー20が互いに略平行に配置されていたが、これに限らず、互いに傾斜して配置されてもよい(図示せず)。また、引裂帯31(一対のジッパー20)が略水平に形成されていたが、これに限らず、斜めに形成されてもよい(図示せず)。
【0063】
また、第2実施形態に係る包装箱2では、引裂帯31(一対のジッパー20)が、周壁Wを一周するように形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、引裂帯31(一対のジッパー20)は1つの第2側壁11にのみ形成され、他の側壁10,11には、引裂帯31の下方のジッパー20に連続するように1つのジッパー20が形成されてもよい(図示せず)。
【0064】
なお、第1および第2実施形態に係る包装箱1,2では、ジッパー20が複数の切目群21で構成されていたが、これに限らず、1つの切目群21で構成されてもよい(図示せず)。また、ジッパー20(引裂帯31)が横方向に延設されていたが、これに限らず、縦方向に延設されてもよいし、斜めに延設されてもよい(図示せず)。
【0065】
また、第1および第2実施形態に係る包装箱1,2では、各第2切目23の内端部26は第1切目22の端部25と頂部T1との間となる高さに配置され、各第2切目23の外端部27は第1切目22の端部25よりも下方(または引裂帯31の外側)に配置されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、各第2切目23の外端部27は、各第2切目23の内端部26および第1切目22の端部25よりも上方(または引裂帯31の内側)に配置されてもよい(図示せず)。また、例えば、各第2切目23の内端部26は第1切目22の端部25よりも下方(または引裂帯31の外側)に配置され、各第2切目23の外端部27は当該内端部26と第1切目22の端部25との間となる高さに配置されてもよい(図示せず)。これら以外でも、第1切目22の両端部25と、一対の第2切目23の内端部26と、一対の第2切目23の外端部27とは、互いに段方向(上下方向)に段違いとなるように配置されていればよい。
【0066】
また、第1および第2実施形態に係る包装箱1,2では、第1切目22の頂部T1が各第2切目23の頂部T2よりも上方(引裂帯31の内側)に配置されていたが、本発明はこれに限定されない。第1切目22の頂部T1は、各第2切目23の頂部T2よりも下方(引裂帯31の外側)に配置されてもよい(図示せず)。
【0067】
また、第1および第2実施形態に係る包装箱1,2では、第1切目22が円弧状に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1切目22は、頂部T1で屈曲した折線状(略三角形状)に形成されてもよいし(
図11参照)、頂部T1を含む直線を有する略台形状に形成されてもよい(
図12参照)。第1切目22と同様に、第2切目23も頂部T2付近を円弧状に形成されていたが、これに限らず、例えば、略三角形状に形成されてもよいし(
図11参照)、略台形状に形成されてもよい(
図12参照)。また、円弧状、三角形状または台形状等の第1および第2切目22,23を組み合わせて切目群21を構成してもよい(図示せず)。また、これらの第1および第2切目22,23を有するジッパー20を開封構造30に適用してもよい(図示せず)。
【0068】
また、第1および第2実施形態に係る包装箱1,2では、第2切目23の外端部27が略水平になるように屈曲していたが、これに限らず、内端部26と同様に、傾斜した直線部分の先端部が外端部27とされてもよい(図示せず)。
【0069】
また、第1および第2実施形態に係る包装箱1,2では、隣り合う一対の切目群21の外端部27が段方向(上下方向)に一致していたが、これに限らず、段方向(上下方向)に僅かにずれていてもよい(図示せず)。
【0070】
また、本実施形態に係る包装箱1,2は、紙製の両面段ボールシートで形成されていたが、本発明はこれに限定されない。包装箱1,2は、片面段ボール、複両面段ボール、複々両面段ボール等で形成されてもよいし、単紙(厚紙)等で形成されていてもよい。また、本実施形態に係る包装箱1,2は、A式の段ボール箱であったが、箱の型式は自由に変更してもよい。
【0071】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係るジッパー、開封構造および包装箱における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0072】
1,2 包装箱
20 ジッパー
21 切目群
22 第1切目
23 第2切目
23A 曲線部
23B 傾斜部
25 (第1切目の)端部
26 (第2切目の)内端部
27 (第2切目の)外端部
30 開封構造
31 引裂帯
CL1 第1中心線
CL2 第2中心線
T1 (第1切目の)頂部
T2 (第2切目の)頂部