(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027578
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用集電体及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/66 20060101AFI20230222BHJP
C01B 32/225 20170101ALI20230222BHJP
【FI】
H01M4/66 A
C01B32/225
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132770
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】増田 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 友季
(72)【発明者】
【氏名】國澤 優奈
(72)【発明者】
【氏名】浦山 貴大
【テーマコード(参考)】
4G146
5H017
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA02
4G146AA19
4G146AB07
4G146AC02A
4G146AC07A
4G146AC07B
4G146AC17A
4G146AC17B
4G146AD22
4G146BA02
4G146BB03
4G146BB07
4G146BB10
4G146BC32B
4G146DA07
5H017AA03
5H017AA04
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5H017EE08
5H017HH00
5H017HH01
5H017HH03
5H017HH04
(57)【要約】
【課題】非水電解質二次電池の電池抵抗を低めることができ、しかも安全性を向上させることができる、非水電解質二次電池用集電体を提供する。
【解決手段】非水電解質二次電池の正極又は負極に用いられる集電体であって、樹脂と、グラフェン積層構造を有する炭素材料と、を備え、前記炭素材料は、前記炭素材料とSiとを重量比1:1で混合した際のX線回折測定において、2θ=24°以上、28°未満の範囲における最も高いピークの高さaと、2θ=28°以上、30°未満の範囲における最も高いピークの高さbとの比a/bが、0.2以上、10.0以下である、非水電解質二次電池用集電体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水電解質二次電池の正極又は負極に用いられる集電体であって、
樹脂と、
グラフェン積層構造を有する炭素材料と、
を含み、
前記炭素材料は、前記炭素材料とSiとを重量比1:1で混合した際のX線回折測定において、2θ=24°以上、28°未満の範囲における最も高いピークの高さaと、2θ=28°以上、30°未満の範囲における最も高いピークの高さbとの比a/bが、0.2以上、10.0以下である、非水電解質二次電池用集電体。
【請求項2】
前記炭素材料のBET比表面積が、20m2/g以上、300m2/g以下である、請求項1に記載の非水電解質二次電池用集電体。
【請求項3】
前記炭素材料が、端縁から部分的にグラファイトが剥離した構造を有する、部分剥離型薄片化黒鉛である、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用集電体。
【請求項4】
前記炭素材料の平均粒子径が、0.05μm以上、10.0μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用集電体。
【請求項5】
前記樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、エンジニアリングプラスチック、及びスーパーエンプラなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用集電体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用集電体を備える、非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用集電体及び該非水電解質二次電池用集電体を用いた非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器、ハイブリッド自動車、電気自動車、家庭用蓄電用途等に向けて、非水電解質二次電池の研究開発が盛んに行われている。このような非水電解質二次電池の正極や負極に用いられる集電体としては、アルミニウム箔や銅箔などの金属箔が知られている。
【0003】
近年、非水電解質二次電池の正極や負極に用いられる集電体として、樹脂集電体が検討されている。この樹脂集電体は、金属箔と比べて軽量であることから、電池重量を軽量化させることができる。そのため、この樹脂集電体を用いることにより、電池の単位重量当たりの出力、すなわち出力密度の向上が期待されている。
【0004】
例えば、下記の特許文献1には、樹脂組成物を成形した正極用樹脂集電体が開示されている。上記樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂と、ポリオレフィン樹脂中に分散させた導電性フィラーにより構成されている。また、特許文献1では、導電性フィラーとしてカーボンブラックなどの炭素材料が用いられることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、導電性フィラーとしてカーボンブラックを用いた樹脂集電体は、金属箔を用いた金属集電体と比較して抵抗が大きいことから、電池抵抗を十分に低められず、所望の電池特性を得ることが難しいという問題がある。一方で、金属集電体は、電池の安全性が十分でないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、非水電解質二次電池の電池抵抗を低めることができ、しかも安全性を向上させることができる、非水電解質二次電池用集電体及び該非水電解質二次電池用集電体を用いた非水電解質二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る非水電解質二次電池用集電体は、非水電解質二次電池の正極又は負極に用いられる集電体であって、樹脂と、グラフェン積層構造を有する炭素材料とを含み、前記炭素材料は、前記炭素材料とSiとを重量比1:1で混合した際のX線回折測定において、2θ=24°以上、28°未満の範囲における最も高いピークの高さaと、2θ=28°以上、30°未満の範囲における最も高いピークの高さbとの比a/bが、0.2以上、10.0以下である。
【0009】
本発明に係る非水電解質二次電池用集電体のある特定の局面では、前記炭素材料のBET比表面積が、20m2/g以上、300m2/g以下である。
【0010】
本発明に係る非水電解質二次電池用集電体の他の特定の局面では、前記炭素材料が、端縁から部分的にグラファイトが剥離した構造を有する、部分剥離型薄片化黒鉛である。
【0011】
本発明に係る非水電解質二次電池用集電体のさらに他の特定の局面では、前記炭素材料の平均粒子径が、0.05μm以上、10.0μm以下である。
【0012】
本発明に係る非水電解質二次電池用集電体のさらに他の特定の局面では、前記樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、エンジニアリングプラスチック、及びスーパーエンプラからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0013】
本発明に係る非水電解質二次電池は、本発明に従って構成される非水電解質二次電池用集電体を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非水電解質二次電池の電池抵抗を低めることができ、しかも安全性を向上させることができる、非水電解質二次電池用集電体及び該非水電解質二次電池用集電体を用いた非水電解質二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、釘刺し試験の方法を説明するための模式図である。
【
図2】
図2は、部分剥離型薄片化黒鉛の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0017】
[非水電解質二次電池用集電体]
本発明の非水電解質二次電池用集電体は、非水電解質二次電池の正極又は負極に用いられる集電体である。上記集電体は、樹脂と、グラフェン積層構造を有する炭素材料とを含む、樹脂集電体である。
【0018】
本発明において、炭素材料がグラフェン積層構造を有するか否かは、炭素材料のX線回折スペクトルについて、CuKα線(波長1.541Å)を用いて測定したときに、2θ=26°付近のピーク(グラフェン積層構造に由来するピーク)が観察されるか否かにより確認することができる。X線回折スペクトルは、広角X線回折法によって測定することができる。X線回折装置としては、例えば、SmartLab(リガク社製)を用いることができる。
【0019】
特に、本発明においては、炭素材料とSiとを重量比1:1で混合した際のX線回折測定において、2θ=24°以上、28°未満の範囲における最も高いピークの高さaと、2θ=28°以上、30°未満の範囲における最も高いピークの高さbとの比a/bが、0.2以上、10.0以下である。なお、Siとしては、例えば、粒径が100nm以下のシリコン粉末を用いることができる。
【0020】
X線回折スペクトルにおいて、グラファイト構造に由来するピークは、2θ=26.4°付近に現れる。一方、シリコン粉末になどのSiに由来するピークは、2θ=28.5°付近に現れる。従って、上記比a/bは、2θ=26.4°付近のピークと2θ=28.5°付近のピークとのピーク比(2θ=26.4°付近のピーク/2θ=28.5°付近のピーク)により求めることができる。
【0021】
本発明の非水電解質二次電池用集電体は、上記の構成を備えるので、非水電解質二次電池の電池抵抗を低めることができ、しかも安全性を向上させることができる。
【0022】
従来、カーボンブラックを用いた樹脂集電体は、金属箔を用いた金属集電体と比較して抵抗が大きいことから、電池抵抗を十分に低められず、所望の電池特性を得ることが難しいという問題があった。一方で、金属集電体は、電池の安全性が十分でないという問題があった。
【0023】
これに対して、本発者らは、樹脂集電体に用いられる炭素材料に着目し、特にグラフェン積層構造を有し、しかもX線回折測定により得られた上記比a/bが上記特定の範囲にある炭素材料を用いることにより、非水電解質二次電池の電池抵抗を低めることができ、しかもその安全性を向上させ得ることを見出した。
【0024】
なお、上記比a/bが上記下限値以上である場合、グラフェン積層構造をより確実に形成することができるので、電子伝導性をより一層高めることができる。そのため、電池抵抗をより一層低めることができる。
【0025】
上記比a/bが上記上限値以下である場合、炭素材料の樹脂中への分散性を高めることができるので、電子伝導性をより一層高めることができる。そのため、電池抵抗をより一層低めることができる。
【0026】
また、安全性については、
図1に示す釘刺し試験により説明することができる。
【0027】
図1は、釘刺し試験の方法を説明するための模式図である。なお、
図1(a)は、釘刺し試験前の非水電解質二次電池1の模式図である。非水電解質二次電池1では、セパレータ2により正極3及び負極4が隔てられて設けられている。また、正極3及び負極4の上にはそれぞれ集電体5,6が設けられている。また、
図1(b)は、釘7を刺した直後の非水電解質二次電池1の模式図であり、
図1(c)は、釘7を刺して10秒経過した後の非水電解質二次電池1の模式図である。
【0028】
集電体5,6として金属集電体を用いた場合は、
図1(c)に示す面方向Xの電子伝導性が高くなるので、釘7を刺した後、電極全体に大電流が流れることがある。これにより、電池が異常発熱し、電池の暴発に繋がる恐れがある。
【0029】
これに対して、集電体5,6に本発明の非水電解質二次電池用集電体を用いた場合は、上記比a/bを上記上限値以下に調整することによって、
図1(c)に示す面方向Xの電子伝導性を適度に制御することができる。そのため、釘7を刺した後、電極全体に大電流が流れにくく、電池の異常発熱を抑制することができる。これにより、電池の安全性を向上させることができる。
【0030】
(グラフェン積層構造を有する炭素材料)
グラフェン積層構造を有する炭素材料の形状としては、特に限定されず、二次元に広がっている形状、球状、繊維状、又は不定形状等が挙げられる。上記炭素材料の形状としては、二次元に広がっている形状であることが好ましい。二次元に広がっている形状としては、例えば、鱗片状又は板状(平板状)が挙げられる。このような二次元的に広がっている形状を有する場合、カーボンブラックなどの粒子状炭素材料と比較して、電子伝導パスをより一層容易に形成することができる。そのため、電池抵抗をより一層低めることができる。
【0031】
グラフェン積層構造を有する炭素材料としては、例えば、黒鉛又は薄片化黒鉛などが挙げられる。
【0032】
黒鉛とは、複数のグラフェンシートの積層体である。黒鉛のグラフェンシートの積層数は、通常、10万層~100万層程度である。黒鉛としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛又は膨張黒鉛などを用いることができる。
【0033】
薄片化黒鉛とは、元の黒鉛を剥離処理して得られるものであり、元の黒鉛よりも薄いグラフェンシート積層体をいう。薄片化黒鉛におけるグラフェンシートの積層数は、元の黒鉛より少なければよい。なお、薄片化黒鉛は、酸化薄片化黒鉛であってもよい。
【0034】
薄片化黒鉛において、グラフェンシートの積層数は、特に限定されないが、好ましくは2層以上、より好ましくは5層以上、好ましくは3000層以下、より好ましくは1000層以下、さらに好ましくは500層以下である。グラフェンシートの積層数が上記下限以上である場合、薄片化黒鉛の導電性をより一層高めることができる。グラフェンシートの積層数が上記上限以下である場合、薄片化黒鉛の比表面積をより一層大きくすることができる。
【0035】
また、薄片化黒鉛は、端縁から部分的にグラファイトが剥離されている構造を有する、部分剥離型薄片化黒鉛であることが好ましい。部分剥離型薄片化黒鉛では、カーボンブラックなどの粒子状炭素材料と比較して、電子伝導パスをより一層容易に形成することができる。また、部分剥離型薄片化黒鉛が、樹脂残存型の部分剥離型薄片化黒鉛である場合、カーボンブラックなどのように樹脂中で凝集しにくく、樹脂中に電子伝導パスをより均一に形成することができる。また、部分剥離型薄片化黒鉛は、カーボンブラックなどと比較して、それ自体が電子伝導性に優れている。そのため、グラフェン積層構造を有する炭素材料として、部分剥離型薄片化黒鉛を用いた場合、電池抵抗をより一層低めることができる。
【0036】
「部分的にグラファイトが剥離されている」構造の一例としては、グラフェンの積層体において、端縁からある程度内側までグラフェン層間が開いており、すなわち端縁にてグラファイトの一部が剥離しており、中央側の部分ではグラファイト層が元の黒鉛又は一次薄片化黒鉛と同様に積層している構造が挙げられる。この場合、端縁にてグラファイトの一部が剥離している部分は、中央側の部分に連なっている。さらに、部分剥離型薄片化黒鉛には、端縁のグラファイトが剥離され薄片化されたものが含まれていてもよい。
【0037】
部分剥離型薄片化黒鉛は、中央側の部分において、グラファイト層が元の黒鉛又は一次薄片化黒鉛と同様に積層している。そのため、従来の酸化グラフェンやカーボンブラックより黒鉛化度が高く、導電性に優れている。また、部分的にグラファイトが剥離されている構造を有することから、比表面積が大きい。
【0038】
図2は、部分剥離型薄片化黒鉛の一例を示す模式図である。
図2に示すように、部分剥離型薄片化黒鉛10では、エッジ部11が剥離されている構造を有する。一方、中央部12では、元の黒鉛又は一次薄片化黒鉛と同様のグラファイト構造を有する。また、エッジ部11において、剥離されているグラフェン層間に樹脂13が配置されている。なお、樹脂13は、完全除去されていてもよい。もっとも、樹脂中に電子伝導パスをより均一に形成する観点からは、
図2に示すように、樹脂残存型の部分剥離型薄片化黒鉛であることが好ましい。
【0039】
部分剥離型薄片化黒鉛におけるグラフェン積層数は、2層以上、3000層以下であることが好ましく、5層以上、1000層以下であることがより好ましく、10層以上、500層以下であることがさらに好ましい。グラフェン積層数が上記範囲内にある場合、非水電解質二次電池の電池抵抗をより一層低めることができる。
【0040】
グラフェン積層数の算出方法は、特に限定されないが、透過型電子顕微鏡(TEM)等で目視観察することによって算出することができる。
【0041】
部分剥離型薄片化黒鉛は、例えば、黒鉛または一次薄片化黒鉛と、樹脂とを含み、樹脂が黒鉛または一次薄片化黒鉛にグラフトまたは吸着により固定されている組成物を用意し、該組成物中に含まれている樹脂を、熱分解することにより得ることができる。なお、樹脂を熱分解させる際には、樹脂の一部を残存させながら熱分解してもよいし、樹脂を完全に熱分解してもよい。
【0042】
部分剥離型薄片化黒鉛は、例えば、国際公開第2014/034156号に記載の薄片化黒鉛・樹脂複合材料の製造方法と同様の方法で製造することができる。また、黒鉛としては、より一層容易にグラファイトを剥離することが可能であることから、膨張黒鉛を使用することが好ましい。あるいは、黒鉛化度が高いことによって、導電性がより一層高いという観点からは、人造黒鉛を用いることが好ましい。また、樹脂を熱分解させる際には、樹脂の一部を残存させながら熱分解してもよいし、樹脂を完全に熱分解してもよい。
【0043】
また、一次薄片化黒鉛とは、各種方法により黒鉛を剥離することにより得られた薄片化黒鉛を広く含むものとする。一次薄片化黒鉛は、部分剥離型薄片化黒鉛であってもよい。一次薄片化黒鉛は、黒鉛を剥離することにより得られるものであるため、その比表面積は、黒鉛よりも大きいものであればよい。
【0044】
使用する黒鉛又は一次薄片化黒鉛は、薄層化処理を施したものであってもよい。薄層化処理に用いる装置の例としては、乾式微粒化装置、湿式微粒化装置、高圧乳化装置、真空乳化装置、真空ビーズミル、撹拌装置が挙げられる。
【0045】
上記樹脂の熱分解における加熱の温度としては、樹脂の種類にもより特に限定されないが、例えば、250℃~1000℃とすることができる。加熱時間としては、例えば、10分~5時間とすることができる。また、上記加熱は、大気中で行ってもよく、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。もっとも、得られる部分剥離型薄片化黒鉛の導電性をより一層高める観点からは、上記加熱を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。
【0046】
樹脂としては、特に限定されないが、ラジカル重合性モノマーの重合体であることが好ましい。この場合、1種のラジカル重合性モノマーの単独重合体であってもよく、複数種のラジカル重合性モノマーの共重合体であってもよい。ラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合性の官能基を有するモノマーである限り、特に限定されない。
【0047】
ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、α-エチルアクリル酸メチル、α-ベンジルアクリル酸メチル、α-[2,2-ビス(カルボメトキシ)エチル]アクリル酸メチル、イタコン酸ジブチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジシクロヘキシル、α-メチレン-δ-バレロラクトン、α-メチルスチレン、α-アセトキシスチレンからなるα-置換アクリル酸エステル、グリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレートなどのグリシジル基や水酸基を持つビニルモノマー;アリルアミン、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートのようなアミノ基を有するビニルモノマー、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸、クロトン酸、2-アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2-メタクリロイロキシエチルフタル酸などのカルボキシル基を有するモノマー;ユニケミカル社製、ホスマー(登録商標)M、ホスマー(登録商標)CL、ホスマー(登録商標)PE、ホスマー(登録商標)MH、ホスマー(登録商標)PPなどのリン酸基を有するモノマー;ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシリル基を有するモノマー;アルキル基やベンジル基などを有する(メタ)アクリレート系モノマーなどが挙げられる。
【0048】
用いられる樹脂の例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリシジルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール(ブチラール樹脂)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリエステルなどが挙げられる。
【0049】
上記樹脂の中でも、好ましくはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール(ブチラール樹脂)を用いることができる。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール(ブチラール樹脂)を用いた場合、部分剥離型薄片化黒鉛の比表面積をより一層大きくすることができる。なお、樹脂種は使用する溶媒との親和性を鑑み、適宜選定を行うことが可能である。
【0050】
黒鉛または一次薄片化黒鉛に固定されている熱分解前の樹脂の含有量は、樹脂分を除く黒鉛または一次薄片化黒鉛100重量部に対し、好ましくは1重量部以上、より好ましくは10重量部以上、好ましくは1000重量部以下、より好ましくは500重量部以下である。熱分解前の樹脂の含有量が上記下限値以上である場合、熱分解後の残存樹脂の含有量をより一層制御しやすい。また、熱分解前の樹脂の含有量が上記上限値以下である場合、コスト的により一層有利である。
【0051】
熱分解後の残存樹脂の含有量は、樹脂分を含む部分剥離型薄片化黒鉛100重量部に対し、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、好ましくは800重量部以下、より好ましくは400重量部以下である。残存樹脂の含有量が上記下限値以上である場合、樹脂中に電子伝導パスをより均一に形成することができる。また、残存樹脂の含有量が上記上限値以下である場合、部分剥離型薄片化黒鉛そのものの電子伝導性をより一層高めることができる。
【0052】
なお、熱分解前の樹脂の含有量及び熱分解後の残存樹脂の含有量は、例えば熱重量分析(以下、TG)によって加熱温度に伴う重量変化を測定し、算出することができる。
【0053】
部分剥離型薄片化黒鉛を製造するに際しては、さらにガス賦活処理を施し、細孔を形成してもよい。ガス賦活処理により、残存樹脂が炭化していてもよい。ガス賦活処理の例としては、水蒸気賦活、二酸化炭素賦活、酸素賦活が挙げられる。
【0054】
ガス賦活処理の温度としては、例えば、400℃~950℃とすることができる。また、その温度における保持時間は、例えば、15分~3時間とすることができる。なかでも、ガス賦活処理の温度としては、低酸素雰囲気下の場合は400℃~600℃であることが好ましく、二酸化炭素雰囲気下の場合は800℃~1000℃であることが好ましい。また、その温度における保持時間は、30分~2時間であることが好ましい。
【0055】
また、得られた部分剥離型薄片化黒鉛は、例えば、ミルミキサー、ブレンダーミル、ジェットミルやボールミルなどのミルによる粉砕、分級、あるいは、水や、メタノール、エタノール、N-メチルピロリドン(NMP)に代表される有機溶媒に入れた後に超音波処理をして用いてもよい。例えば、ミキサーで粉砕する場合は、粉砕時間により粒径を調整することができる。
【0056】
なお、グラフェン積層構造を有する炭素材料が、部分剥離型薄片化黒鉛である場合、X線回折法により測定される上記比a/bは、例えば、熱分解前の樹脂の量や、熱分解に用いる樹脂の種類、熱分解時の加熱温度及び加熱時間、酸素濃度などにより調整することができる。具体的には、熱分解前の樹脂の量を少なくしたり、熱分解時の加熱時間を短くしたり、加熱温度を低くしたり、酸素濃度を多くすることにより、上記比a/bを大きくすることができる。
【0057】
本発明において、グラフェン積層構造を有する炭素材料のBET比表面積は、特に限定されないが、好ましくは20m2/g以上、より好ましくは30m2/g以上、好ましくは300m2/g以下、より好ましくは200m2/g以下である。グラフェン積層構造を有する炭素材料のBET比表面積が上記範囲内にある場合、電池抵抗をより一層低めることができる。
【0058】
上記BET比表面積は、BET法に準拠して、窒素の吸着等温線から測定することができる。測定装置としては、例えば、島津製作所社製、品番「ASAP-2000」を用いることができる。
【0059】
本発明において、グラフェン積層構造を有する炭素材料の平均粒子径は、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、好ましくは10.0μm以下、より好ましくは7.0μm以下である。グラフェン積層構造を有する炭素材料の平均粒子径が上記範囲内にある場合、電池抵抗をより一層低めることができる。なお、炭素材料の平均粒子径は、例えば、マイクロトラックベル社製、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により測定した体積平均粒子径(D50)により求めることができる。
【0060】
グラフェン積層構造を有する炭素材料の含有量は、非水電解質二次電池用集電体全量に対し、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは5.0重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。グラフェン積層構造を有する炭素材料の含有量が上記範囲内にある場合、電池抵抗をより一層低めることができる。
【0061】
(他の炭素材料)
本発明の非水電解質二次電池用集電体は、上記グラフェン積層構造を有する炭素材料を第1の炭素材料としたときに、第1の炭素材料とは異なる第2の炭素材料を含んでいてもよい。
【0062】
第2の炭素材料としては、特に限定されないが、例えば、グラフェン、粒状黒鉛化合物、繊維状黒鉛化合物、カーボンブラック、又は活性炭が挙げられる。なかでも、電池抵抗をより一層低める観点から、第2の炭素材料は、カーボンブラックであることが好ましい。
【0063】
上記グラフェンは、酸化グラフェンであってもよいし、酸化グラフェンを還元したものであってもよい。
【0064】
上記粒状黒鉛化合物としては、特に限定されず、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、又は膨張黒鉛などが挙げられる。
【0065】
上記カーボンブラックとしては、特に限定されず、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、又はアセチレンブラックなどが挙げられる。
【0066】
これらの第2の炭素材料は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0067】
第2の炭素材料のBET比表面積は、好ましくは5m2/g以上、より好ましくは10m2/g以上、好ましくは2500m2/g以下、より好ましくは2000m2/g以下である。第2の炭素材料のBET比表面積が上記範囲内にある場合、電池抵抗をより一層低めることができる。
【0068】
第2の炭素材料の平均粒子径は、好ましくは30nm以上、より好ましくは50nm以上、好ましくは1000nm以下、より好ましくは800nm以下である。第2の炭素材料の平均粒子径が上記範囲内にある場合、電池抵抗をより一層低めることができる。なお、第2の炭素材料の平均粒子径は、SEM(走査型電子顕微鏡)から各粒子の大きさを測定し、平均粒子径を算出した値である。
【0069】
第2の炭素材料の含有量は、非水電解質二次電池用集電体全量に対し、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。第2の炭素材料の含有量が上記範囲内にある場合、電池抵抗をより一層低めることができる。
【0070】
なお、第1の炭素材料と、第2の炭素材料とは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などにより区別することができる。
【0071】
(樹脂)
本発明の非水電解質二次電池用集電体は、樹脂を含む。なお、ここでいう樹脂は、非水電解質二次電池用集電体のマトリクスとなる樹脂である。本発明においては、この樹脂中にグラフェン積層構造を有する炭素材料が分散されていることが望ましい。
【0072】
樹脂としては、1族又は2族のイオン伝導性を有さない樹脂であれば、特に限定はされず、例えば、ポリオレフィン系樹脂、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンプラ等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0073】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンが挙げられる。
【0074】
エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタラート、超高分子量ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0075】
スーパーエンプラとしては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0076】
これらの樹脂のうち、シート状により成形しやすいことから、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンエーテル、超高分子量ポリエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミドであることが好ましい。また、これらの樹脂のうち、コスト的により優位であることから、ポリプロピレン、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンであることがより好ましい。
【0077】
樹脂の含有量は、非水電解質二次電池用集電体全量に対し、好ましくは20重量%以上、より好ましくは40重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは95重量%以下である。樹脂の含有量が上記下限値以上である場合、電池重量をより一層軽量化させることができる。また、樹脂の含有量が上記上限値以下である場合、電池抵抗をより一層低めることができる。
【0078】
(非水電解質二次電池用集電体)
非水電解質二次電池用集電体は、例えば、樹脂と、グラフェン積層構造を有する炭素材料とを含む、樹脂組成物を溶融混錬させ、成形することにより製造することができる。例えば、押出機を用いて、上記樹脂組成物を溶融混錬させ、フィルム状に成形することにより得ることができる。また、溶剤に溶解させた樹脂と、グラフェン積層構造を有する炭素材料とを含む、樹脂組成物のスラリーをキャスト法にて、フィルム状に成形することにより得ることができる。上記溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、メタノール等のアルコール類、水等が挙げられる。
【0079】
溶融混錬の温度は、樹脂が溶融する温度以上、分解する温度以下であればよく、例えば、100℃以上、300℃以下とすることができる。また、溶融混錬の時間は、例えば、1分以上、5時間以下とすることができる。
【0080】
非水電解質二次電池用集電体の厚みは、特に限定されないが、例えば、5μm以上、100μm以下とすることができる。
【0081】
[非水電解質二次電池]
本発明の非水電解質二次電池は、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンの挿入及び脱離反応が進行する化合物を用いられたものであればよい。アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンが例示される。アルカリ土類金属イオンとしては、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンが例示される。特に、リチウムイオンを用いたリチウムイオン二次電池を好適に用いることができる。
【0082】
(集電体)
本発明の非水電解質二次電池は、上述した本発明の非水電解質二次電池用集電体を備える。そのため、本発明の非水電解質二次電池では、電池抵抗を低めることができ、しかも電池の安全性を向上させることができる。なお、本発明の非水電解質二次電池用集電体は、非水電解質二次電池の正極及び負極のうち少なくとも一方に設けられればよいが、正極及び負極の双方に設けられることが望ましい。
【0083】
(正極)
本発明の非水電解質二次電池に用いられる正極は、特に限定されず、例えば、正極活物質と、導電助剤とを含む電極を用いることができる。
【0084】
本発明の非水電解質二次電池がリチウムイオン二次電池である場合、正極活物質としては、例えば、リチウム金属酸化物、リチウム硫化物、又は硫黄が挙げられる。
【0085】
リチウム金属酸化物としては、スピネル構造、層状岩塩構造、若しくはオリビン構造を有するもの、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0086】
スピネル構造を有するリチウム金属酸化物としては、マンガン酸リチウムなどが例示される。
【0087】
層状岩塩構造を有するリチウム金属酸化物としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、三元系などが例示される。
【0088】
オリビン構造を有するリチウム金属酸化物としては、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガンリチウムなどが例示される。
【0089】
導電助剤としては、特に限定されず、グラフェン、粒状黒鉛化合物、繊維状黒鉛化合物、カーボンブラック、又は活性炭等を用いることができる。また、導電助剤として、黒鉛、薄片化黒鉛、又は上述した部分剥離型薄片化黒鉛を用いてもよい。
【0090】
(負極)
本発明の非水電解質二次電池に用いる負極は、特に限定されないが、天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボン、金属酸化物、チタン酸リチウム、又はシリコン系などの負極活物質を含むものを用いることができる。
【0091】
(セパレータ)
本発明の非水電解質二次電池に用いるセパレータは、正極と負極との間に設置され、絶縁性かつ後述の非水電解質を含むことができる構造であればよい。このようなセパレータとしては、例えば、ナイロン、セルロース、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリポロピレン、ポリブテン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンテレフタラートが挙げられる。また、これらを2種類以上複合したものの織布、不織布、微多孔膜などが挙げられる。
【0092】
セパレータには、各種可塑剤、酸化防止剤、難燃剤が含まれてもよいし、金属酸化物等で被覆されていてもよい。
【0093】
セパレータの厚みは、特に限定されないが、5μm以上、100μm以下であることが好ましい。セパレータの厚みが上記下限値以上である場合、正極と負極とをより接触し難くすることができる。セパレータの厚みが上限値以下である場合、電池抵抗をより一層低めることができる。なお、経済性、取り扱い性の観点から、セパレータの厚みは、10μm以上、50μm以下であることがさらに好ましい。
【0094】
(非水電解質)
本発明の非水電解質二次電池に用いる非水電解質としては、特に限定されないが、例えば、非水溶媒に溶質を溶解させた電解液を用いることができる。また、非水溶媒に溶質を溶解させた電解液を高分子に含浸させたゲル電解質、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどの高分子固体電解質、又はサルファイドガラス、オキシナイトライドなどの無機固体電解質を用いてもよい。
【0095】
非水溶媒としては、後述の溶質をより一層溶解させやすいことから、環状の非プロトン性溶媒及び/又は鎖状の非プロトン性溶媒を含むことが好ましい。
【0096】
環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート、環状エステル、環状スルホン又は環状エーテルなどが例示される。
【0097】
鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル又は鎖状エーテルなどが例示される。
【0098】
また、アセトニトリルなどの一般的に非水電解質の溶媒として用いられる溶媒を用いてもよい。より具体的には、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチルラクトン、1,2-ジメトキシエタン、スルホラン、ジオキソラン、プロピオン酸メチルなどを用いることができる。これら溶媒は単独で用いてもよいし、2種類以上の溶媒を混合しても用いてもよい。もっとも、後述の溶質をより一層容易に溶解させ、リチウムイオンなどのイオン伝導性をより一層高める観点から、2種類以上の溶媒を混合した溶媒を用いることが好ましい。
【0099】
溶質としては、特に限定されないが、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiCF3SO3、LiBOB(Lithium Bis (Oxalato) Borate)、又はLiN(SO2CF3)2を用いることが好ましい。この場合、非水溶媒により一層容易に溶解させることができる。電解液に含まれる溶質の濃度は、0.5mol/L以上、2.0mol/L以下であることが好ましい。溶質の濃度が上記下限値以上である場合、所望のリチウムイオン伝導性をより一層確実に得ることができる。一方、溶質の濃度が上記上限値以下である場合、溶質をより一層溶解し易くすることができる。
【0100】
また、非水電解質には、難燃剤、安定化剤などの添加剤がさらに含まれていてもよい。
【0101】
(非水電解質二次電池)
本発明の非水電解質二次電池の正極及び負極は、集電体の両面に同じ電極を形成させた形態であってもよく、集電体の片面に正極、他方の面に負極を形成させた形態、すなわち、バイポーラ電極であってもよい。
【0102】
上記非水電解質二次電池は、正極側と負極側との間にセパレータを配置したものを倦回したものであってもよいし、積層したものであってもよい。正極、負極及びセパレータには、リチウムなどのイオン伝導を担う非水電解質が含まれている。
【0103】
上記非水電解質二次電池は、上記積層体を倦回、又は複数積層した後にラミネートフィルムで外装してもよいし、角形、楕円形、円筒形、コイン形、ボタン形、又はシート形の金属缶で外装してもよい。外装には発生したガスを放出するための機構が備わっていてもよい。積層体の積層数は、特に限定されず、所望の電圧値、電池容量を発現するまで積層させることができる。
【0104】
上記非水電解質二次電池は、所望の大きさ、容量、電圧によって、適宜直列、並列に接続した組電池とすることができる。上記組電池においては、各電池の充電状態の確認、安全性向上のため、組電池に制御回路が付属されていることが好ましい。
【0105】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明の効果を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0106】
(炭素材料の製造例1)
最初に、膨張黒鉛16gと、カルボキシメチルセルロース0.48gと、水530gとの混合物に、超音波処理装置で5時間超音波を照射した後に、ポリエチレングリコール80gを加え、ホモミクサーで30分間混合することによって、原料組成物を作製した。
【0107】
なお、膨張黒鉛は、東洋炭素社製、商品名「PFパウダー8F」(BET比表面積=22m2/g)を用いた。カルボキシメチルセルロースは、アルドリッチ社製のもの(重量平均分子量=250,000)を用いた。ポリエチレングリコールは、三洋化成工業社製、商品名「PG600」を用いた。超音波処理装置は、SMT.CO.,LTD社製、型番「UH-600SR」を用いた。また、ホモミクサーは、TOKUSHU KIKA社製、型番「T.K.HOMOMIXER MARKII」を用いた。
【0108】
次に、作製した原料組成物を150℃で加熱処理(第1の加熱処理)することによって、水を除去した。その後、水を除去した組成物を、380℃の温度で、1時間加熱処理(第2の加熱処理)することよって、ポリエチレングリコールの一部が残存している炭素材料を作製した。
【0109】
最後に、作製した炭素材料を400℃で30分、350℃で2時間の順に加熱処理(第3の加熱処理)することによって、グラファイト構造を有し、端縁から部分的にグラファイトが剥離されている、炭素材料を得た。
【0110】
得られた炭素材料とシリコン粉末(Nano Powder、純度≧98%、粒径≦100nm、アルドリッチ社製)とを重量比1:1の割合でサンプル瓶中にて混合することにより、測定試料としての混合粉末を作製した。作製した混合粉末を無反射Si試料台に入れ、X線回折装置(リガク社製、品番「Smart Lab」)に設置した。その後に、X線源:CuKα(波長1.541Å)、測定範囲:3°~80°、スキャンスピード:5°/分の条件で、広角X線回折法によりX線回折スペクトルを測定した。得られた測定結果から、2θ=28°以上、30°未満の範囲における最も高いピークの高さbを1として規格化し、そのときの2θ=24°以上、28℃未満の範囲における最も高いピークの高さaを算出した。最後にaとbとの比、すなわち、比a/bを算出した。その結果、2θ=24°以上、28℃未満の範囲における最も高いピークの高さaと、2θ=28°以上、30°未満の範囲における最も高いピークの高さbとの比a/bは、0.65であった。
【0111】
また、得られた炭素材料のBET比表面積を、比表面積測定装置(島津製作所社製、品番「ASAP-2000」、窒素ガス)を用いて測定した結果、95m2/gであった。
【0112】
(炭素材料の製造例2)
第3の加熱処理の条件を、420℃で30分としたこと以外は、製造例1と同様にして炭素材料を得た。また、製造例1と同様にして測定した比a/bは、0.80であり、BET比表面積は、38m2/gであった。
【0113】
(炭素材料の製造例3)
第3の加熱処理の条件を、400℃で10分としたこと以外は、製造例1と同様にして炭素材料を得た。また、製造例1と同様にして測定した比a/bは、0.32であり、BET比表面積は、155m2/gであった。
【0114】
(炭素材料の製造例4)
製造例1で作製した炭素材料の代わりに、未処理の膨張黒鉛(東洋炭素社製、商品名「PFパウダー8F」、BET表面積=22m2/g)をそのまま用いた。
【0115】
また、未処理の膨張黒鉛について、製造例1と同様にして測定した比a/bは、2.20であり、BET比表面積は、22m2/gであった。
【0116】
(実施例1)
樹脂集電体の作製;
製造例1の樹脂集電体は次の通りに作製した。最初に、ホモポリプロピレン(重量平均分子量=413,000、融点163℃)を80重量部と、製造例1の炭素材料(比a/b:0.65、BET比表面積:95m2/g)を20重量部とを、押出機に供給して樹脂温度200℃にて溶融混練した。次に、押出機の先端に取り付けられたTダイからフィルム状に押出し、表面温度が30℃となるまで冷却することにより、樹脂集電体として、製造例1の炭素材料を含むホモポリプロピレンフィルム(厚み50μm)を得た。
【0117】
正極の作製;
最初に、正極活物質としてのLiNi0.5Mn0.3Co0.2O2を、非特許文献(Journal of PowerSources,Vol.146,pp.636-639(2005))に記載されている方法で作製した。すなわち、水酸化リチウムと、コバルト、ニッケル及びマンガンのmol比がCo:Ni:Mn=2:5:3の3元水酸化物とを混合した後に、この混合物を空気雰囲気下において、1000℃で加熱することによって正極活物質を作製した。
【0118】
次に、上記正極活物質(LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2)93gと、カーボンブラック(デンカブラック、デンカ社製)5gと、バインダー(ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、固形分濃度8重量%、N―メチル―2―ピロリドン(NMP)溶液)25gと、NMP30gとを混合し、スラリーを作製した。このスラリーを上記で得られた樹脂集電体の片面(表面)に塗工し、送風オーブンにて80℃で10分間加熱した後に、150℃で12時間真空乾燥した。次に、上記樹脂集電体の裏面にも同様にしてスラリーを塗工し、乾燥させた。最後に、ロールプレス機にて、上記樹脂集電体をプレスし、実施例1に用いる正極を作製した。正極の容量は、単位面積当たりの電極重量及び正極活物質の理論容量(160mAh/g)から算出した。その結果、正極の容量(片面あたり)は、2mAh/cm2であった。
【0119】
負極の作製;
最初に、負極活物質(人造黒鉛)93gと、カーボンブラック(デンカブラック、デンカ社製)5gと、バインダー(PVdF、固形分濃度重量%、NMP溶液)25g、NMP30gとを混合し、スラリーを作製した。次に、上記スラリーを上記で得られた樹脂集電体の片面(表面)に塗工し、送風オーブンにて80℃で10分間加熱した。また、溶媒を除去した後、100℃で12時間真空乾燥した。次に、上記樹脂集電体の裏面にも同様にしてスラリーを塗工し、乾燥させた。最後に、ロールプレス機にて、プレスし、負極を作製した。負極の容量は、単位面積当たりの電極重量及び負極活物質の理論容量(350mAh/g)から算出した。その結果、負極の容量(片面あたり)は、2.5mAh/cm2であった。
【0120】
非水電解質二次電池の製造;
最初に、作製した正極(電極部分:50mm×100mm)、負極(電極部分:55mm×105mm)、及びセパレータ(ポリオレフィン系の微多孔膜、厚さ:25μm、60mm×100mm)を、負極/セパレータ/正極/セパレータ/負極の順に、正極の容量が1000mAh(正極5枚、負極6枚)となるように積層した。次に、両端の正極及び負極にそれぞれアルミニウムタブ及びニッケルめっき銅タブを、それぞれ、アルミニウム製の針及び銅製の針をホッチキスを用いて接続させた。
【0121】
その後、袋状のアルミラミネートシートに入れ、3方を熱溶着させ、電解液封入前の非水電解質二次電池を作製した。さらに、上記電解液封入前の非水電解質二次電池を60℃で3時間真空乾燥させ、非水電解質(LiPF6 1mol/Lのエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート溶液、体積比でエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート=1:2)を20g入れ、減圧しながら封止することによって非水電解質二次電池を作製した。なお、ここまでの工程は、露点が-40℃以下の雰囲気(ドライボックス)で実施した。最後に、非水電解質二次電池を、4.25Vまで充電させた後に、25℃で100時間放置し、露点が-40℃以下の雰囲気(ドライボックス)にて発生したガス、及び過剰な電解液を除去した後に、再度減圧しながら封止することによって、実施例1の非水電解質二次電池を作製した。
【0122】
(実施例2)
製造例1の炭素材料の代わりに、製造例2の炭素材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、非水電解質二次電池を作製した。
【0123】
(実施例3)
製造例1の炭素材料の代わりに、製造例3の炭素材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、非水電解質二次電池を作製した。
【0124】
(実施例4)
製造例1の炭素材料の代わりに、製造例4の炭素材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、非水電解質二次電池を作製した。
【0125】
(比較例1)
製造例1の炭素材料の代わりに、アセチレンブラックをそのまま用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。なお、アセチレンブラックの比a/bは、0.09であり、BET比表面積は、65m2/gであった。
【0126】
(比較例2)
実施例1で用いた樹脂集電体の代わりに、正極側の集電体にアルミニウム箔(厚み:15μm)を用い、負極側の集電体に銅箔(厚み:15μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、非水電解質二次電池を作製した。
【0127】
(比較例3)
製造例1の炭素材料の代わりに、市販の高配向性熱分解グラファイト(HOPG)をそのまま用いたこと以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。なお、HOPGの比a/bは、11.90であり、BET比表面積は、3m2/gであった。
【0128】
[評価]
非水電解質二次電池の電池抵抗評価;
電池抵抗評価は、次の通り実施した。最初に、電池を充放電試験機(TOSCAT3100、東洋システム社製)に接続し、電流を流さずに、12時間放置した。次に、0.2C CCCV充電(充電終止電圧:4.25V、CV STOP:3時間、あるいは電流値が0.02C到達、充電後休止時間:1分)、及び0.2C CC放電(放電終止電圧:2.5V、放電後休止時間:1分)の条件で充放電を5回繰り返した。これにより、電池として機能するかどうかを確認した。続けて、抵抗測定は、満充電状態から0.2Cで50%放電した状態から、それぞれ、0.5C、1.0C、及び2.0Cで10秒間放電した際の電圧値を記録した。これらの値を用いて,X軸:レートの電流値,Y軸:記録した電圧値のグラフを作成し、オームの法則「V(電圧)=I(電流)×R(抵抗)」から、傾きを算出することで、電池抵抗を算出した。なお、電池抵抗は、30mΩ未満を〇とし、30mΩ以上を×とした。
【0129】
非水電解質二次電池の安全性評価;
非水電解質二次電池の安全性評価は、次の通り、釘刺し試験で評価した。最初に、電池を充放電試験機(TOSCAT3100、東洋システム社製)に接続し、電流を流さずに、12時間放置した。その後、0.2C CCCV充電(充電終止電圧:4.25V、CV STOP:3時間、あるいは電流値が0.02C到達、充電後休止時間:1分)した。次に、充電した電池をドラフト内のアルミ製の専用箱に設置し、釘(釘径:3mmφ、先端の角度60度)を貫通速度:100mm/secで電池の中央に貫通させ、そのときの電池の温度上昇を測定した。なお、温度計は、釘の貫通箇所から、1cm離れた箇所で測定した。なお、安全性評価は、50℃未満を〇とし、50℃以上を×とした。
【0130】
結果を下記の表1に示す。
【0131】
【0132】
実施例1~4の樹脂集電体を用いた電池では、比較例1~3の集電体を用いた電池と比較して、電池抵抗が低く、かつ安全性に優れることが確認できた。
【符号の説明】
【0133】
1…非水電解質二次電池
2…セパレータ
3…正極
4…負極
5,6…集電体
7…釘
10…部分剥離型薄片化黒鉛
11…エッジ部
12…中央部
13…樹脂