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特開2023-27602破砕システムの制御器、破砕システムおよびその制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027602
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】破砕システムの制御器、破砕システムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B02C 2/04 20060101AFI20230222BHJP
   B02C 25/00 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
B02C2/04 Z
B02C25/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132812
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】503245465
【氏名又は名称】株式会社アーステクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 純
(72)【発明者】
【氏名】木島 崇
(72)【発明者】
【氏名】梶田 信之
(72)【発明者】
【氏名】石澤 基明
(72)【発明者】
【氏名】中島 健一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 守行
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳太
【テーマコード(参考)】
4D063
4D067
【Fターム(参考)】
4D063BB04
4D063BB17
4D063GA07
4D063GC02
4D063GC08
4D063GC17
4D063GC21
4D063GC29
4D063GD02
4D063GD04
4D063GD13
4D063GD15
4D067FF02
4D067FF13
4D067GA02
4D067GB04
(57)【要約】
【課題】所定粒度範囲内の産物について所望の生産量を得るための目標値を直感的に設定でき、所望の生産量となるように旋動式破砕機を安定的に制御することができる破砕システムの制御器、破砕システムおよびその制御方法を提供する。
【解決手段】破砕システムの制御器は、旋動式破砕機と、供給機とを備えた破砕システムの制御器である。制御器は、旋動式破砕機にかかる破砕負荷を直接または間接的に表す負荷指標を取得する負荷指標取得部と、旋動式破砕機によって破砕された被破砕物から得られる所定の粒度範囲の産物の生産量を所定の基準生産量に対する比率で表した粒度比を算出する粒度比算出部と、取得した負荷指標と負荷指標および粒度比の間の相関関係とに基づいて負荷指標目標値を生成する目標値生成部と、負荷指標および負荷指標目標値から制御指令値を生成する制御指令生成部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋動式破砕機および前記旋動式破砕機に被破砕物を供給する供給機を備えた破砕システムの制御器であって、
前記旋動式破砕機にかかる破砕負荷を直接または間接的に表す負荷指標を取得する負荷指標取得部と、
前記旋動式破砕機によって破砕された前記被破砕物から得られる所定の粒度範囲の産物の生産量を所定の基準生産量に対する比率で表した粒度比を算出する粒度比算出部と、
取得した前記負荷指標と前記負荷指標および前記粒度比の間の相関関係とに基づいて前記負荷指標目標値を生成する目標値生成部と、
前記負荷指標および前記負荷指標目標値から制御指令値を生成する制御指令生成部と、を備え、
前記負荷指標が負荷指標目標値に基づく基準範囲内になるように、前記旋動式破砕機または前記供給機のうちの少なくとも1つを制御する、制御器。
【請求項2】
前記破砕システムは、前記旋動式破砕機で破砕された前記被破砕物を粒度に応じて選別する選別機を備え、
前記制御器は、前記選別機で選別された前記所定の粒度範囲の産物の生産量を直接または間接的に表す粒度指標を取得する粒度指標取得部を備え、
前記粒度比算出部は、前記粒度指標を用いて前記粒度比を算出する、請求項1に記載の制御器。
【請求項3】
前記破砕システムは、前記選別機の下流側において、選別された前記所定の粒度範囲の産物を搬送する搬送コンベヤを備え、
前記粒度比算出部は、前記搬送コンベヤにおける前記産物の単位時間あたりの搬送量を前記所定の粒度範囲の産物の生産量として用いて前記粒度比を算出する、請求項2に記載の制御器。
【請求項4】
前記粒度指標取得部は、前記搬送コンベヤを駆動する電動モータに供給される電力を前記粒度指標として取得する、請求項3に記載の制御器。
【請求項5】
前記旋動式破砕機に供給される前記被破砕物の単位時間あたりの供給量を取得する供給量取得部を備え、
前記粒度比算出部は、前記供給量に対する前記搬送コンベヤにおける前記搬送量の割合を前記粒度比として算出する、請求項3または4に記載の制御器。
【請求項6】
前記粒度比算出部は、前記相関関係および取得した前記負荷指標から前記負荷指標における前記粒度比を算出する、請求項1に記載の制御器。
【請求項7】
前記目標値生成部は、取得した前記負荷指標と前記相関関係から制御ゲインを設定し、前記制御ゲインと所定の粒度比目標値から前記粒度比を差し引いた粒度比偏差とに基づいて前記負荷指標目標値を生成する、請求項1から6の何れかに記載の制御器。
【請求項8】
前記相関関係を記憶する記憶器を備え、
前記目標値生成部は、取得した前記負荷指標および前記記憶器に予め記憶された前記相関関係から前記制御ゲインを算出する、請求項7に記載の制御器。
【請求項9】
取得した前記負荷指標および算出された前記粒度比の履歴を記憶する記憶器を備え、
前記目標値生成部は、過去の2以上の前記負荷指標および前記粒度比の組み合わせから前記負荷指標に対する前記粒度比の変化率を算出することにより前記相関関係を算出し、取得した前記負荷指標および算出された前記相関関係から前記制御ゲインを算出する、請求項7に記載の制御器。
【請求項10】
前記目標値生成部は、前記粒度比偏差に前記制御ゲインを掛ける制御ゲイン乗算器と、前記制御ゲイン乗算器の出力を所定の制限範囲に制限するリミッタと、を含み、
前記制限範囲は、取得した前記負荷指標に応じて設定される、請求項7から9の何れかに記載の制御器。
【請求項11】
旋動式破砕機と、
前記旋動式破砕機に被破砕物を供給する供給機と、
請求項1から10の何れかに記載の制御器と、を備えた、破砕システム。
【請求項12】
前記旋動式破砕機は、
偏心旋回運動する主軸に固定されたマントルと、
内部に、前記マントルとの間に被破砕物を噛み込んで圧砕する破砕室を有するコーンケーブと、を備え、
前記マントルおよび前記コーンケーブの間のセットが機械的に保持され、
前記制御器は、前記被破砕物の前記旋動式破砕機への供給量を制御する、請求項11に記載の破砕システム。
【請求項13】
前記旋動式破砕機は、
偏心旋回運動する主軸に固定されたマントルと、
内部に、前記マントルとの間に被破砕物を噛み込んで圧砕する破砕室を有するコーンケーブと、
前記マントルおよび前記コーンケーブの間のセットを保持するように前記マントルまたは前記コーンケーブに破砕力に対抗する油圧力を与える油圧シリンダと、を備え、
前記制御器は、前記被破砕物の前記旋動式破砕機への供給量または前記セットの大きさのうちの少なくとも1つを制御する、請求項11に記載の破砕システム。
【請求項14】
旋動式破砕機および前記旋動式破砕機に被破砕物を供給する供給機を備えた破砕システムの制御方法であって、
前記旋動式破砕機にかかる破砕負荷を直接または間接的に表す負荷指標を検出し、
前記旋動式破砕機によって破砕された前記被破砕物から得られる所定の粒度範囲の産物の生産量を所定の基準生産量に対する比率で表した粒度比を算出し、
検出された前記負荷指標と前記負荷指標および前記粒度比の間の相関関係とに基づいて前記負荷指標目標値を生成し、
前記負荷指標が負荷指標目標値に基づく基準範囲内になるように、前記負荷指標および前記負荷指標目標値から前記旋動式破砕機または前記供給機のうちの少なくとも1つを制御するための制御指令値を生成する、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、旋動式破砕機を備えた破砕システムの制御器、破砕システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、円錐筒状のコーンケーブの内側に配置された円錐台状のマントルを偏心旋回運動させて、原石等の被破砕物をコーンケーブとマントルとの間に噛み込んで圧砕する旋動式破砕機が知られている。旋動式破砕機の上部から被破砕物が供給されると、旋動されるマントルとコーンケーブとの間の破砕室に捕捉された被破砕物が所定の粒度まで圧砕されて排出される。その際、旋動式破砕機に供給する供給量またはセットと呼ばれる破砕室の出口隙間を変更することで、生産量および旋動式破砕機から排出される産物の粒度を調整することができる。
【0003】
旋動式破砕機では、排出される産物が所定の粒度範囲ごとに選別される。粒度範囲ごとに選別された産物のそれぞれについて、被破砕物の供給量に対する割合を需要に応じて調整することが要求される。従来の旋動式破砕機では、粒度範囲ごとに選別された産物の比率を目視で確認し、それに基づいてオペレータが、被破砕物の供給量またはセットを変更していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-200079号公報
【特許文献2】特開2019-202245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対し、上記特許文献1には、複数の破砕機を用いて段階的に破砕を行う破砕システムにおいて、粒度範囲ごとの産物の生産量または生産割合の実績値とそのときの原石投入量および各破砕機の設定値から両者の関係を推定し、推定された関係を用いて、所望する産物の生産量または生産割合となるように、各破砕機の設定値を決定することが開示されている。しかし、所望する産物の生産量または生産割合となるように、各破砕機の設定値を決定しても、破砕機に投入される原石の大きさまたは付着水分量等の性状によって破砕結果が変化し得る。このため、上記構成においても、所定粒度範囲内の産物が所望の生産量となるように破砕機を安定的に制御するためには改善の余地がある。
【0006】
また、上記特許文献2には、旋動式破砕機における破砕負荷を表す負荷指標を測定し、負荷指標の測定値が所定の定常範囲外となった場合に負荷指標の目標値と測定値との偏差に基づいて新たな操作量を決定することが開示されている。本構成によれば、負荷を目標値に収束させるような操作量を決定することにより、安定的な生産を行うことができる。しかし、本構成においては負荷の目標値をオペレータが設定する必要がある。オペレータは、所定粒度範囲内の産物について所望の生産量を得るための負荷の目標値を、勘または経験測から推定する必要がある。すなわち、上記構成においても、所定粒度範囲内の産物について所望の生産量を得るための目標値を直感的に設定可能とするためには改善の余地がある。
【0007】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、所定粒度範囲内の産物について所望の生産量を得るための目標値を直感的に設定でき、所望の生産量となるように旋動式破砕機を安定的に制御することができる破砕システムの制御器、破砕システムおよびその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る破砕システムの制御器は、旋動式破砕機および前記旋動式破砕機に被破砕物を供給する供給機を備えた破砕システムの制御器であって、前記旋動式破砕機にかかる破砕負荷を直接または間接的に表す負荷指標を取得する負荷指標取得部と、前記旋動式破砕機によって破砕された前記被破砕物から得られる所定の粒度範囲の産物の生産量を所定の基準生産量に対する比率で表した粒度比を算出する粒度比算出部と、取得した前記負荷指標と前記負荷指標および前記粒度比の間の相関関係とに基づいて前記負荷指標目標値を生成する目標値生成部と、前記負荷指標および前記負荷指標目標値から制御指令値を生成する制御指令生成部と、を備え、前記負荷指標が負荷指標目標値に基づく基準範囲内になるように、前記旋動式破砕機または前記供給機のうちの少なくとも1つを制御する。
【0009】
また、本開示の他の態様に係る破砕システムは、旋動式破砕機と、前記旋動式破砕機に被破砕物を供給する供給機と、上記構成の制御器と、を備えている。
【0010】
また、本開示の他の態様に係る制御方法は、旋動式破砕機および前記旋動式破砕機に被破砕物を供給する供給機を備えた破砕システムの制御方法であって、前記旋動式破砕機にかかる破砕負荷を直接または間接的に表す負荷指標を検出し、前記旋動式破砕機によって破砕された前記被破砕物から得られる所定の粒度範囲の産物の生産量を所定の基準生産量に対する比率で表した粒度比を算出し、検出された前記負荷指標と前記負荷指標および前記粒度比の間の相関関係とに基づいて前記負荷指標目標値を生成し、前記負荷指標が負荷指標目標値に基づく基準範囲内になるように、前記負荷指標および前記負荷指標目標値から前記旋動式破砕機または前記供給機のうちの少なくとも1つを制御するための制御指令値を生成する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、所定粒度範囲内の産物について所望の生産量を得るための目標値を直感的に設定でき、所望の生産量となるように旋動式破砕機を安定的に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の一実施の形態に係る破砕システムの概略構成を示す図である。
図2図2は、図1に示す破砕システムに適用される旋動式破砕機の一例における概略構成を示す図である。
図3図3は、図1に示す破砕システムの制御系統の概略構成を示すブロック図である。
図4図4は、本実施の形態における制御器の制御ブロックの構成を示すブロック図である。
図5図5は、図4に示す目標値生成部の構成例を示すブロック図である。
図6図6は、本実施の形態における負荷指標および粒度比の間の相関関係を示すグラフである。
図7図7は、図4に示す制御指令生成部の構成例を示すブロック図である。
図8図8は、搬送コンベヤの電動モータに供給される電力と搬送コンベヤで搬送される産物の単位時間あたりの搬送量との関係を示すグラフである。
図9図9は、図5に示す粒度比算出部の構成例を示すブロック図である。
図10図10は、本実施の形態に基づいた制御態様のシミュレーション結果を示すグラフである。
図11図11は、図1に示す破砕システムに適用される旋動式破砕機の他の例における概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して本開示の一実施の形態を説明する。
【0014】
[破砕システムの概要]
図1は、本開示の一実施の形態に係る破砕システムの概略構成を示す図である。本実施の形態における破砕システム100は、旋動式破砕機1、供給機4、負荷指標検出器140および制御器9を備えている。供給機4は、旋動式破砕機1に被破砕物を供給する。負荷指標検出器140は、旋動式破砕機1にかかる破砕負荷を直接または間接的に表す負荷指標を検出する。制御器9は、負荷指標が負荷指標目標値に基づく基準範囲内になるように、旋動式破砕機1または供給機4のうちの少なくとも1つを制御する。
【0015】
供給機4は、例えば、コンベヤ40を含み、旋動式破砕機1への被破砕物の供給量が調整可能である。コンベヤ40は、可変速モータである電動モータ41により駆動される。後述する図2に示すように、電動モータ41は、モータドライバ43によって駆動される。
【0016】
破砕システム100は、旋動式破砕機1で破砕された被破砕物を粒度に応じて選別する選別機110と、旋動式破砕機1における被破砕物の出口から選別機110に破砕された被破砕物を搬送する中間コンベヤ113を備えている。中間コンベヤ113は、電動モータ114によって駆動される。
【0017】
本実施の形態において、選別機110は、粗目の第1篩111および細目の第2篩112を含む2段階の選別を行う。これにより、旋動式破砕機1で破砕された被破砕物は、第1篩111および第2篩112の何れも通過した第1粒度範囲の第1産物G1と、第1篩111を通過したが第2篩112を通過できない第2粒度範囲の第2産物G2と、第1篩111を通過できない第3粒度範囲の第3産物G3とに選別される。すなわち、これらの産物G1,G2,G3は、平均粒度が大きい順に並べるとG3>G2>G1となる。なお、選別機110は、1段階の選別を行うものであってもよいし、3段階以上の選別を行うものであってもよい。
【0018】
さらに、破砕システム100は、選別機110の下流側において、選別機110で選別された第1産物G1を搬送する第1搬送コンベヤ115と、選別機110で選別された第2産物G2を搬送する第2搬送コンベヤ116と、選別機110で選別された第3産物G3を搬送する第3搬送コンベヤ117と、を備えている。本実施の形態において、平均粒度が最も大きい第3産物G3は、第3搬送コンベヤ117で搬送された後、旋動式破砕機1に再度投入される。第1産物G1および第2産物G2が破砕システム100における最終生産物となる。すなわち、破砕システム100は、第1産物G1および第2産物G2を生産する生産装置である。
【0019】
このように、選別機110は、旋動式破砕機1で生成された産物を、粒度を基準として2種類以上の産物に選別する。さらに、搬送コンベヤは、2種類以上の産物をそれぞれ搬送する2以上の搬送コンベヤ115,116,117を含む。
【0020】
第1搬送コンベヤ115は、電動モータ118によって駆動される。第2搬送コンベヤ116は、電動モータ119によって駆動される。第3搬送コンベヤ117は、電動モータ120によって駆動される。
【0021】
破砕システム100は、選別機110で選別された所定の粒度範囲の産物Gj(j=1,2,3)の生産量を直接または間接的に表す粒度指標Pactを検出する粒度指標検出器130を備えている。本実施の形態において、粒度指標検出器130は、搬送コンベヤ115,116,117におけるGjの単位時間あたりの生産量を示す値を粒度指標Pactとして検出する。
【0022】
より具体的には、粒度指標検出器130は、第1搬送コンベヤ115を駆動する電動モータ118に供給される第1電力P1を計測する第1電力計測器131と、第2搬送コンベヤ116を駆動する電動モータ119に供給される第2電力P2を計測する第2電力計測器132と、第3搬送コンベヤ117を駆動する電動モータ120に供給される第3電力P3を計測する第3電力計測器133とを含む。なお、電力計測器131,132,133は、電力自体を計測する電力計であってもよいし、電流計および電圧計を有し、計測された電流および電圧から電力を算出してもよい。
【0023】
本実施の形態では、後述するように、第1電力計測器131で計測される第1電力P1が第1産物G1の粒度指標として用いられ得る。また、第2電力計測器132で計測される第2電力P2が第2産物G2の粒度指標として用いられ得る。また、第3電力計測器133で計測される第3電力P3が第3産物G3の粒度指標として用いられ得る。
【0024】
さらに、破砕システム100は、旋動式破砕機1に供給される被破砕物の単位時間あたりの供給量を示す値Pallを検出する供給量検出器150を備えている。本実施の形態において、供給量検出器150は、供給機4のコンベヤ40における被破砕物の単位時間あたりの供給量を示す値を検出する。より具体的には、供給量検出器150は、コンベヤ40を駆動する電動モータ41に供給される第4電力P4を計測する第4電力計測器134を含む。これに代えて、供給量検出器150は、中間コンベヤ113を駆動する電動モータ114に供給される第5電力を計測する第5電力計測器135を含んでもよい。あるいは、後述するように、第1産物G1の粒度指標、第2産物G2の粒度指標および第3産物G3の粒度指標を用いて供給量を算出する場合には、供給量検出器150は不要である。
【0025】
[旋動式破砕機の概要]
図2は、図1に示す破砕システムに適用される旋動式破砕機の一例における概略構成を示す図である。図2に例示される旋動式破砕機1は、後述する油圧回路7を通じて油圧シリンダ6の動作が制御可能な油圧式の旋動式破砕機である。本実施の形態に係る旋動式破砕機1は、ホッパ2、マントル13およびコーンケーブ14を備えている。マントル13は、偏心旋回運動する主軸5に固定されている。コーンケーブ14は、内部に破砕室16を有する。ホッパ2は、供給機4から供給される被破砕物を貯留する。ホッパ2から落下した被破砕物が破砕室16に投入される。破砕室16において、コーンケーブ14は、マントル13との間に被破砕物を噛み込んで圧砕する。
【0026】
さらに、旋動式破砕機1は、トップフレーム31およびボトムフレーム32からなるフレーム3を備えている。ホッパ2は、トップフレーム31の上部に配置されている。円錐筒状のコーンケーブ14は、トップフレーム31の内周に保持される。コーンケーブ14の内側には、円錐台状のマントル13が配置されている。破砕室16は、間隙を隔てて対峙するコーンケーブ14の破砕面とマントル13の破砕面との間の空間として定義され、楔状の鉛直断面を有している。
【0027】
マントル13は、主軸5の上部に固定されたマントルコア12を介して取り付けられている。主軸5は、その軸心が鉛直方向から傾いた状態で、フレーム3内に配置されている。主軸5の上端は、トップフレーム31の上端部に設けられた上部軸受34に、回転自在に支持されている。主軸5の下部は、インナーブッシュ51に嵌挿されている。インナーブッシュ51は偏心スリーブ52に固定されている。偏心スリーブ52は、ボトムフレーム32に取り付けられたアウターブッシュ53に嵌挿されている。偏心スリーブ52の下部は、油圧シリンダ6のシリンダチューブ63に取り付けられた滑り軸受66に支持されている。主軸5の下端は、油圧シリンダ6のラム61に取り付けられた滑り軸受62に支持されている。
【0028】
さらに、旋動式破砕機1は、電動モータである主軸用モータ8および動力伝達機構80を備えている。動力伝達機構80は、主軸用モータ8から主軸5へ回転動力を伝達する。これにより、主軸5に固定されたマントル13は、主軸用モータ8の回転動力により旋回駆動される。主軸用モータ8は、フレーム3の外に配置されている。旋動式破砕機1は、主軸用モータ8の回転数を検出する回転数センサ25および主軸用モータ8の出力トルクを検出するトルクセンサ26を備えている。主軸用モータ8は、モータドライバ88によって駆動される。
【0029】
動力伝達機構80は、主軸用モータ8からマントル13が固定された主軸5へ動力を伝達する。動力伝達機構80は、横軸83、主軸用モータ8の出力軸81から横軸83へ回転動力を伝達するベルト式またはチェーン式伝動機構82、偏心スリーブ52、および、横軸83から偏心スリーブ52へ回転動力を伝達する傘歯車伝動機構84を含む。主軸用モータ8の出力を受けて偏心スリーブ52が回転すると、偏心スリーブ52に挿嵌された主軸5が偏心旋回する。これにより、マントル13が位置固定されたコーンケーブ14に対して偏心旋回運動、いわゆる歳差運動を行う。マントル13の破砕面とコーンケーブ14の破砕面との間の開度は、セットと呼ばれる。セットは、マントル13の偏心旋回運動による主軸5の旋回位置に応じて変化する。
【0030】
本実施の形態における旋動式破砕機1は、マントル13をコーンケーブ14に対し昇降させることにより、セットを調整する油圧シリンダ6と、旋動式破砕機1の動作を制御する制御器9とを備えている。油圧シリンダ6の動作により、マントル13がコーンケーブ14に対して昇降移動して、コーンケーブ14とマントル13の二つの破砕面の間隙の最も狭い位置におけるセット、すなわち、クローズドセットを変化させる。この油圧シリンダ6は、マントル13に掛かる破砕圧を受ける受圧手段としての機能も有する。
【0031】
油圧シリンダ6は、シリンダチューブ63、シリンダチューブ63内を摺動するラム61、セットセンサ23、油タンク67、および、油圧回路7を含む。セットセンサ23は、例えば、ラム61の位置または変位を検出する接触式または非接触式の位置センサである。セットセンサ23で検出されたラム61の位置または変位からコーンケーブ14に対するマントル13の高さ方向の位置が求められ、コーンケーブ14とマントル13との相対的位置関係からセットが求められる。
【0032】
シリンダチューブ63内の油圧室65は、シリンダチューブ63の内壁とラム61とで区画される。油圧室65は、ラム61の変位によって容量が変化する。油圧室65には、油圧回路7が接続されている。油タンク67の作動油が油圧回路7を通じて油圧室65へ給油されることにより、ラム61が上昇する。また、油圧室65の作動油が油圧回路7を通じて油タンク67へ排油されることにより、ラム61が降下する。
【0033】
油圧回路7において、油圧室65の下部と連通された連通管71、連通管71にアキュムレータ72が接続される。アキュムレータ72の代わりにバランスシリンダが接続されてもよい。連通管71には、給油管73が接続される。給油管73には、排油管74が接続される。ただし、油圧回路7の構成は本実施の形態に限定されない。
【0034】
給油管73には、油タンク67から油圧室65への作動油の流れに沿って上流側から順に、ストレーナ75、ギヤポンプ76、チェックバルブ77、および、ノーマルクローズのシャットオフバルブ78が介装されている。ギヤポンプ76はポンプモータ68によって駆動される。ポンプモータ68は、電動モータであって、モータドライバ69によって駆動される。さらに油圧回路7は、油圧室65の作動油の圧力を検出する圧力センサ24を有する。圧力センサ24は、油圧室65、連通管71、または給油管73の何れに設置されてもよい。排油管74は、給油管73においてチェックバルブ77とシャットオフバルブ78との間に接続されている。排油管74には、ノーマルクローズのシャットオフバルブ79が接続されている。
【0035】
[破砕システムの制御系統]
図3は、図1に示す破砕システムの制御系統の概略構成を示すブロック図である。図3に示すように、制御器9は、負荷指標検出器140、粒度指標検出器130、供給機4および油圧回路7との間で信号を送信または受信可能に接続される。さらに、制御器9は、セットセンサ23からの信号を受信可能に接続される。なお、制御器9は、これ以外のセンサ等とも接続され得る。また、制御器9は、制御プログラムおよび種々のデータを記憶する記憶器90を含んでいる。
【0036】
制御器9は、例えばマイクロコントローラ、プログラマブルロジックコントローラ、パーソナルコンピュータ等のコンピュータを含んでいる。例えば、制御器9は、CPU、RAM等のメインメモリ、通信インターフェイス等を備えている。制御器9は、制御プログラムに従って各種センサからの検出信号を受信し、各制御対象へ制御指令を送信する。
【0037】
なお、本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、または、それらの組み合わせを含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路とみなされる。本明細書において、回路、ユニット、制御ブロックまたは手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、ユニット、または手段はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェアまたはプロセッサの構成に使用される。
【0038】
制御器9は、粒度比算出部91、目標値生成部92、制御指令生成部93、および、データ取得部94の各制御ブロックを含む。上述したように、これらの各制御ブロックは、何れも回路とみなされる。制御器9は、各制御ブロックの演算処理の結果として生成される制御指令を供給機4または旋動式破砕機1の油圧回路7に送信する。制御器9は、供給機4の電動モータ41に制御指令を送信することにより、被破砕物の旋動式破砕機1への供給量を制御する。また、制御器9は、油圧回路7に制御指令を送信することにより、旋動式破砕機1における油圧シリンダ6の動作を制御する。油圧シリンダ6の動作が制御されることにより、破砕室16におけるセットの大きさが調整される。なお、制御器9は単一のコンピュータによる集中制御により各処理を実行してもよいし、複数のコンピュータが協働する分散制御により各処理を実行してもよい。
【0039】
また、制御器9または後述する生産量算出器170の一部または全部の機能がクラウドサーバ等のサーバ装置に設けられてもよい。また、記憶器90がクラウドサーバ等のサーバ装置に設けられてもよい。この場合、各種検出器130,140,150,23および制御対象である供給機4または油圧回路7とサーバ装置とは、所定の通信ネットワークを介して通信接続される。
【0040】
[旋動式破砕機の運転方法]
ここで、上記構成の旋動式破砕機1の運転方法について説明する。旋動式破砕機1の運転を開始するにあたり、制御器9は、セット、すなわち、クローズドセットが初期設定値となるように油圧回路7を動作させる。セットの初期設定値は、被破砕物または破砕物の粒径等に応じて予め設定される。制御器9は、セットセンサ23の検出値に基づいて、セットが初期設定値となるように油圧回路7を制御する。制御器9は、セットが初期設定値より大きい場合には、シャットオフバルブ78を開放し、ポンプモータ68を稼働させて、油圧室65へ給油する。また、制御器9は、セットが初期設定値より小さい場合には、シャットオフバルブ78およびシャットオフバルブ79を開放して、油圧室65から排油する。
【0041】
続いて、制御器9は、主軸用モータ8を起動し、供給機4を起動させる。供給機4の動作によって被破砕物はホッパ2を通って破砕室16へ投入され、コーンケーブ14と偏心旋回運動するマントル13との間で破砕されて、ボトムフレーム32の下方から破砕物として排出される。排出された破砕物が選別機110で粒度に応じて選別され、選別された所定の粒度範囲の産物G1,G2が最終生産物として回収される。
【0042】
上記のような旋動式破砕機1の運転中に、被破砕物の性状や水分量、ホッパ2内の被破砕物のレベルの変化などの外乱に起因して破砕負荷が変動する。ここで「破砕負荷」とは、被破砕物の破砕に伴って主軸用モータ8の出力軸81に掛かる負荷を意味する。なお、主軸用モータ8は、出力軸81に所定以上の過負荷が発生すると、出力軸81の回転がロックされ、過負荷保護回路の作動によって非常停止する。そこで、破砕システム100は、旋動式破砕機1の破砕負荷を直接的または間接的に表す負荷指標Lactを測定する負荷指標検出器140を備えている。制御器9は、破砕運転中に検出された負荷指標Lactを監視し、負荷指標Lactが負荷指標目標値Lrに基づく所定の基準範囲内に維持されるように供給機4による被破砕物の供給量または旋動式破砕機1におけるセットの少なくとも1つを制御する。
【0043】
破砕負荷は、主軸用モータの出力軸81の回転数と出力トルクとの積で表される。よって、破砕負荷を、回転数センサ25で検出された回転数とトルクセンサ26で検出された出力トルクの積として測定することができる。なお、出力軸81の回転数は、横軸83の回転数および偏心スリーブ52の回転数と対応しているので、回転数センサ25で検出された回転数に代えて、横軸83または偏心スリーブ52に設けられた回転数センサで検出された回転数が用いられてもよい。
【0044】
また、破砕負荷は、主軸用モータ8の駆動電流と相関関係がある。よって、破砕負荷の変化を、主軸用モータ8の駆動電流の変化に基づいて推定することができる。主軸用モータ8の駆動電流は、モータドライバ88に含まれる電流センサ88aの検出値として測定することができる。
【0045】
また、破砕負荷は、主軸用モータ8の消費電力と相関関係がある。よって、破砕負荷の変化を、主軸用モータ8の消費電力の変化に基づいて推定することができる。主軸用モータ8の消費電力は、モータドライバ88に含まれる電流センサ88aの検出値と電圧センサ88bの検出値との積として測定することができる。
【0046】
また、破砕負荷は、破砕圧と相関関係がある。よって、破砕負荷の変化を、破砕圧の変化に基づいて推定することができる。破砕圧は、圧力センサ24で検出された油圧室65の圧力として測定することができる。
【0047】
以上から、負荷指標Lactとして、回転数と出力トルクとの積の値、主軸用モータ8の駆動電流の値、主軸用モータ8の消費電力の値、または、破砕圧の値のうちの少なくとも1つを採用することができる。そして、採用された負荷指標Lactに応じて、対応するセンサが、負荷指標Lactを検出する負荷指標検出器140として選択される。
【0048】
[制御態様]
データ取得部94は、負荷指標取得部95、粒度指標取得部96および供給量取得部97を含む。負荷指標取得部95は、負荷指標検出器140から旋動式破砕機1にかかる破砕負荷を直接または間接的に表す負荷指標Lactを取得する。粒度指標取得部96は、粒度指標検出器130から選別機110で選別された所定の粒度範囲の産物の生産量を直接または間接的に表す粒度指標Pactを取得する。供給量取得部97は、供給量検出器150から旋動式破砕機1に供給される被破砕物の単位時間あたりの供給量を取得する。データ取得部94は、取得した各種データを記憶器90に記憶したり、各機能ブロック91,92,93に受け渡したりする。
【0049】
図4は、本実施の形態における制御器の制御ブロックの構成を示すブロック図である。粒度比算出部91は、破砕システム100から得られる粒度指標Pactを取得し、旋動式破砕機1によって破砕された被破砕物から得られる所定の粒度範囲の産物Gjの生産量を所定の基準生産量に対する比率で表した粒度比Ractを算出する。目標値生成部92は、算出された粒度比Ractを粒度比目標値Rrから差し引いた粒度比偏差ΔRに基づいて負荷指標目標値Lrを生成する。制御指令生成部93は、負荷指標検出器140で検出された負荷指標Lactおよび目標値生成部92で算出された負荷指標目標値Lrから制御指令値MVを生成する。破砕システム100は、制御指令値MVに基づいて負荷指標Lactが負荷指標目標値Lrに基づく所定の基準範囲内に維持されるように制御される。以下に、各制御ブロックについて詳しく説明する。
【0050】
[目標値生成部]
図5は、図4に示す目標値生成部の構成例を示すブロック図である。目標値生成部92は、減算器162、制御ゲイン乗算器163、リミッタ164、加算器165および保持回路166を含む。
【0051】
減算器162は、粒度比目標値Rrから後述する粒度比算出部91で算出された破砕システム100における現在の粒度比Ractを差し引いて粒度比偏差ΔRを算出する。
【0052】
制御ゲイン乗算器163は、粒度比偏差ΔRに制御ゲインKrを乗算し、負荷偏差ΔLrを算出する。なお、粒度比偏差ΔRが小さい場合、例えば0を含む所定範囲内である場合には、制御ゲイン乗算器163に入力される粒度比偏差ΔRを0としてもよいし、または、制御ゲイン乗算器163の出力である負荷偏差ΔLrを0としてもよい。目標値生成部92は、検出された負荷指標Lactと、負荷指標Lactおよび粒度比Ractの間の相関関係とから制御ゲインKrを設定する。このために、記憶器90には、旋動式破砕機1に応じた負荷指標Lactおよび粒度比Ractの間の相関関係を示すデータが予め記憶されている。
【0053】
図6は、本実施の形態における負荷指標および粒度比の間の相関関係を示すグラフである。図6に示すグラフは、横軸を負荷指標に対応する負荷圧[MPa]とし、縦軸を粒度比[%]としており、負荷圧の変化に対する粒度比の変化に非線形な相関関係があることを示している。すなわち、旋動式破砕機1における負荷圧は、破砕エネルギーとみなすことができ、負荷圧が低いと被破砕物は破砕され難くなり、産物の粒度が大きくなる一方、負荷圧が高いと被破砕物は破砕され易くなり、産物の粒度が小さくなるという関係を有する。
【0054】
本開示の開示者らは、鋭意研究の末、図6に示すグラフのように、負荷圧の変化に対する粒度比の変化にこのような相関関係があることを見出した。本開示は、当該相関関係を利用することにより、オペレータが直感的に設定可能な粒度比目標値Rrを、破砕負荷を安定化させるための負荷安定化制御に用いる負荷指標目標値Lrに変換することができるという知見に基づいている。すなわち、目標値生成部92は、検出された負荷指標と負荷指標および粒度比の間の相関関係とに基づいて負荷指標目標値Lrを生成する。
【0055】
なお、記憶器90に予め記憶される相関関係のデータは、図6における曲線A1で示されるような非線形の相関関係のデータそのものでもよいが、破砕システム100における常用負荷領域において線形近似した直線A2で示されるような線形の相関関係のデータであってもよい。
【0056】
相関関係のデータは、実際に破砕システム100を運転させた際の負荷圧を示す負荷指標Lactと、所定の粒度比の実績値とが対応付けられたデータである。所定の粒度比の実績値は、粒度比目標値Rrの対象となる粒度比に対応している。例えば、全生産量に対する第1産物G1の生産量の比率に着目し、粒度比目標値Rrを設定する場合、予め作成される相関関係のデータにおける粒度比の実績値として、全生産量に対する第1産物G1の生産量の比率の実績値が、負荷指標Lactに対応付けられる。
【0057】
目標値生成部92は、記憶器90に予め記憶される上記相関関係のデータから粒度比目標値Rrを負荷指標目標値Lrに変換するための制御ゲインKrを算出する。非線形の相関関係のデータが用いられる場合には、粒度比目標値Rrの位置における曲線A1の接線の傾きが制御ゲインKrとして算出される。また、線形の相関関係のデータが用いられる場合には、直線A2の傾きが制御ゲインKrとして算出される。算出された制御ゲインKrが制御ゲイン乗算器163において粒度比偏差補正値ΔRcに乗算させる制御ゲインKrとして設定される。本構成によれば、記憶器90に予め記憶された相関関係を用いて、粒度比についての値を負荷指標についての値に変換するため、簡単な演算で負荷指標目標値Lrを生成することができる。
【0058】
リミッタ164は、制御ゲイン乗算器163から出力される負荷偏差ΔLrを所定の制限範囲E内に制限する。例えば、負荷偏差ΔLrが制限範囲Eの0より大きい上限値を超える場合、リミッタ164は、当該上限値を負荷偏差補正値ΔLrcとして出力する。また、負荷偏差ΔLrが制限範囲Eの0より小さい下限値を下回る場合、リミッタ164は、当該下限値を負荷偏差補正値ΔLrcとして出力する。負荷偏差ΔLrが制限範囲E内である場合、リミッタ164は、負荷偏差ΔLrをそのまま負荷偏差補正値ΔLrcとして出力する。このようなリミッタ164により、負荷指標目標値Lrの急激な変化が抑制される。
【0059】
ここで、制限範囲Eは、検出された負荷指標Lactに応じて変更可能としてもよい。図5に示すように、曲線A1で示される相関関係において、負荷圧が小さい場合には、負荷圧の変化に対する粒度比の変動幅が大きい。一方、負荷圧が大きい場合には、負荷圧の変化に対する粒度比の変動幅が小さい。このため、非線形の相関関係のデータを用いて負荷指標目標値Lrが算出される場合、現在の負荷指標Lactが小さい場合には、制限範囲Eを小さく設定し、現在の負荷指標Lactが大きい場合には、制限範囲Eを大きく設定してもよい。これにより、粒度比の変動割合に応じて制限範囲Eを適切に設定することができる。
【0060】
制限範囲Eの変更態様は、特に限定されないが、例えば、負荷指標Lactが所定の基準値未満の場合に制限範囲Eを第1の範囲に設定し、負荷指標Lactが所定の基準値以上の場合に制限範囲Eを第1の範囲に含まれ、かつ第1の範囲より狭い範囲の第2の範囲に設定する。2以上の基準値を設けることにより、制限範囲Eを3つ以上の範囲に設定することができる。また、例えば、負荷指標Lactに応じた制限範囲Eの上限値または下限値の値が所定の関数を用いて算出されてもよい。この場合、負荷指標Lactの変化に対して連続的に制限範囲Eの大きさが変化する。
【0061】
なお、直線A2で示されるような線形の相関関係を用いて負荷指標目標値Lrが算出される場合には、リミッタ164における制限範囲Eの大きさは固定されていてもよい。
【0062】
保持回路166は、目標値生成部92から出力される負荷指標目標値Lrを所定時間保持する。加算器165は、リミッタ164から出力される負荷偏差補正値ΔLrcを保持回路166で保持された過去の負荷指標目標値Lrpに加算する。すなわち、目標値生成部92は、過去の負荷指標目標値Lrpに対する目標値の変化量として負荷偏差補正値ΔLrcを算出し、当該過去の負荷指標目標値Lrpに負荷偏差補正値ΔLrcを加算することで、新たな負荷指標目標値Lrを生成する。
【0063】
[制御指令生成部]
制御指令生成部93は、目標値生成部92で生成された負荷指標目標値Lrおよび負荷指標検出器140で検出された負荷指標Lactに基づいて破砕システム100に対する制御指令値MVを生成する。
【0064】
図7は、図4に示す制御指令生成部の構成例を示すブロック図である。制御指令生成部93は、減算器168および制御演算器169を含む。減算器168は、負荷指標目標値Lrから現在の負荷指標Lactを差し引いた負荷偏差実績値ΔLを算出する。なお、減算器168に入力される負荷指標Lactは、所定のフィルタによりノイズが除去された後の負荷指標Lactであってもよい。
【0065】
制御演算器169は、負荷偏差実績値ΔLに対して所定の制御アルゴリズムを適用し、制御指令値MVを生成する。例えば、制御演算器169は、比例要素、積分要素および微分要素を有するPIDコントローラを含む。あるいは、制御演算器169は、比例要素を有するPコントローラ、比例要素および積分要素を有するPIコントローラ、または、比例要素および微分要素を有するPDコントローラ等を含んでもよい。
【0066】
制御指令生成部93は、上記制御アルゴリズムに従って生成される制御指令値MVを出力する。なお、負荷偏差実績値ΔLが小さい場合、例えば0を含む所定範囲内である場合には、制御演算器169に入力される負荷偏差実績値ΔLを0としてもよいし、または、制御演算器169が前回の制御指令値MVと同じ制御指令値MVを出力するようにしてもよい。また、制御指令生成部93は、制御演算器169で生成された制御指令値MVを所定の制限範囲内に制限するリミッタを含んでいてもよい。
【0067】
制御器9は、制御指令生成部93が生成した制御指令値MVに対して制御対象を動作させる。制御対象が油圧回路7である場合には、油圧シリンダ6へ供給される作動油の量が制御指令値MVに応じて制御され、破砕室16におけるセットの大きさが調整される。また、制御対象が供給機4である場合には、コンベヤ40による被破砕物の旋動式破砕機1への供給量が制御指令値MVに応じて制御される。
【0068】
[粒度比算出部]
粒度比算出部91は、粒度指標検出器130により検出された粒度指標Pactに基づいて粒度比Ractを算出する。粒度比Ractは、旋動式破砕機1によって破砕された被破砕物から得られる所定の粒度範囲の産物Gjの生産量を所定の基準生産量に対する比率で表した値として定義される。
【0069】
まず、一例として、産物Gjの全生産量、すなわち、供給量を基準生産量とし、第1産物G1の生産量の基準生産量に対する比率を制御対象の粒度比Ractとする破砕システム100の制御態様を例示する。
【0070】
本例では、第1電力計測器131が粒度指標検出器130である。第1電力計測器131は、上述したように、選別機110で選別された第1産物G1を搬送する第1搬送コンベヤ115を駆動する電動モータ118に供給される電力P1を計測する。
【0071】
図8は、搬送コンベヤの電動モータに供給される電力と搬送コンベヤで搬送される産物の単位時間あたりの搬送量との関係を示すグラフである。図8に示すグラフは、実機において所定量の産物を搬送コンベヤで搬送させたときの電動モータに供給される電力を計測するとともに、そのときの実際の搬送量を計測し、計測された電力および搬送量の組み合わせのデータをグラフ上にプロットしたものである。さらに、図8に示すグラフには、搬送量を変化させたときの複数のプロット位置について近似された直線が表されている。
【0072】
第1搬送コンベヤ115は、第1産物G1を一定速度で搬送する。第1産物G1が第1搬送コンベヤ115上を搬送されると、第1搬送コンベヤ115を駆動する電動モータ118への負荷が増大する。第1搬送コンベヤ115を定速で運転するためには、電動モータ118に供給される第1電力P1を増大させる必要がある。図8の例では、電動モータ118に供給され得る第1電力P1の変化に対する単位時間あたり搬送量の変化は、図8の近似直線で示されるように、線形的な特性を有している。
【0073】
このような特性を利用し、第1搬送コンベヤ115を駆動する電動モータ120に供給される第1電力P1から第1搬送コンベヤ115で搬送される第1産物G1の単位時間あたりの搬送量、すなわち、第1粒度範囲の第1産物G1の単位時間あたりの生産量を求めることができる。このため、本例において、粒度比算出部91は、第1電力P1を粒度指標Pactとして取得する。
【0074】
図9は、図5に示す粒度比算出部の構成例を示すブロック図である。図9に示すように、粒度比算出部91は、生産量算出器170、フィルタ171、平均値算出部172および計算実行部173を含む。記憶器90には、電動モータ120に供給される電力と第1搬送コンベヤ115が単位時間あたりに搬送する搬送量との相関関係が予め記憶される。本実施の形態における破砕システム100は、旋動式破砕機1、第1搬送コンベヤ115、第1電力計測器131、生産量検出装置として機能する制御器9を備え、旋動式破砕機1により生産される第1産物G1の生産量を検出する生産量検出システムを含んでいる。生産量検出装置として機能する制御器9は、記憶器90および生産量算出器170を含む。
【0075】
生産量算出器170は、記憶器90から対応する相関関係を読み出し、粒度指標Pactとして取得した第1電力P1に対応する搬送量を、第1産物G1の生産量、すなわち、対象産物生産量Sactとして算出する。このような構成によれば、第1搬送コンベヤ115を駆動する電動モータ118に供給される第1電力P1を計測することにより、記憶器90に記憶された第1電力P1と第1搬送コンベヤ115の搬送量との相関関係を用いて、第1搬送コンベヤ115の搬送量を第1搬送コンベヤ115で搬送される産物の生産量として算出することができる。したがって、第1搬送コンベヤ115に、搬送量が計量可能なベルトスケールを設けたり、別途搬送量を検出する手段を設けたりすることなく、第1搬送コンベヤ115で搬送される産物の生産量を安価かつ容易に算出することができる。
【0076】
また、粒度比算出部91は、供給量検出器150が検出した値Pallを取得する。上述したように、供給量検出器150は、例えば、供給機4のコンベヤ40を駆動する電動モータ41に供給される第4電力P4を検出する。生産量算出器170は、対象産物生産量Sactを算出する場合と同様に、記憶器90から対応する相関関係を読み出し、第4電力P4に対応する搬送量を旋動式破砕機1への供給量として算出する。本例において、粒度比算出部91は、基準生産量Sallを、第1産物G1、第2産物G2および第3産物G3の全生産量とする。また、本実施の形態において、全生産量は、旋動式破砕機1への供給量に等しいとみなすことができる。したがって、本例において、粒度比算出部91は、算出された供給量を基準生産量Sallとして扱う。
【0077】
なお、供給量を求める際に使用する相関関係は、第1産物G1の生産量を求める際に使用する相関関係と同じでもよいし異なっていてもよい。すなわち、第1搬送コンベヤ115と供給機4のコンベヤ40との間で、互いに同じ搬送能力および互いに同じ大きさを有する場合等、同じ特性を有する場合には、双方のコンベヤ40,115について共通する1つの相関関係が記憶器90に記憶されてもよい。これに代えて、供給機4のコンベヤ40に対応する相関関係および第1搬送コンベヤ115に対応する相関関係を含む複数の相関関係が記憶器90に記憶されてもよい。
【0078】
粒度指標検出器130が粒度指標Pactを連続的または所定のタイミングごとに検出することにより、生産量算出器170で得られる対象産物生産量Sactは、時間経過に対して変化し得るデータとなる。同様に、供給量検出器150が供給量を示す値Pallを連続的または所定のタイミングごとに検出することにより、生産量算出器170で得られる供給量、すなわち、基準生産量Sallは、時間経過に対して変化し得るデータとなる。
【0079】
フィルタ171は、対象産物生産量Sactおよび基準生産量Sallを平滑化する。例えばフィルタ171は、移動平均フィルタを含む。フィルタ171により、サイズまたは圧縮硬さ等の産物Gjのばらつきによる外乱が除去される。
【0080】
平均値算出部172は、フィルタ後の対象産物生産量Sfactおよび基準生産量Sfallの所定の単位期間ごとの平均値を算出する。例えば、平均値算出部172は、フィルタ後の対象産物生産量Sfactの時間的な変化が基準範囲内である期間のうちの所定の単位期間を抽出し、当該抽出した単位期間における対象産物生産量の平均値を算出する。すなわち、平均値算出部172は、フィルタ後の対象産物生産量Sfactの時間的な変化が急峻な期間を除外して、フィルタ後の対象産物生産量Sfactの単位期間ごとの平均値を算出する。平均値算出部172は、フィルタ後の基準生産量Sfallについても同様にして平均値を算出する。
【0081】
計算実行部173は、平均値算出部172で算出された平均対象産物生産量Svactおよび平均基準生産量Svallに基づいて第3産物G3の生産量を基準生産量に対する比率で表した粒度比Ractを算出する。
【0082】
計算実行部173は、平均対象産物生産量Svactの平均供給量に対する比率を粒度比Ractとして算出する。すなわち、粒度比Ractは、以下の式(1)を用いて算出される。
【0083】
【数1】
【0084】
算出された粒度比Ractは、目標値生成部92に入力される。なお、上記式(1)は、以下の式(2)のように一般化することができる。
【0085】
【数2】
S1:第1産物G1の生産量
S2:第2産物G2の生産量
S3:第3産物G3の生産量
S4:供給量
S5:中間コンベヤの搬送量
=0または1(i=1,2,…,8)
【0086】
着目する粒度比Ractによってkの値が0または1に切り替えられる。式(2)においても、各生産量S1,S2,S3および供給量S4,S5は、平均値算出部172から出力された値である。上記例、すなわち、第1産物G1の生産量を供給量に対する比率で表した粒度比Ractは、式(2)におけるkおよびkを1とし、その他の係数kを0とした場合に相当する。
【0087】
上記例では、被破砕物の供給量を基準生産量とし、第1産物G1の生産量の基準生産量に対する比率を制御対象の粒度比Ractとするための基準生産量として、供給機4のコンベヤ40を駆動する電動モータ41に供給される第4電力P4を供給量検出器150が検出した値Pallとする代わりに、中間コンベヤ113を駆動する電動モータ114に供給される第5電力P5を供給量検出器150が検出した値Pallとしてもよい。すなわち、上記例において、式(2)に示すkを1とする代わりに、kを1としてもよい。
【0088】
あるいは、生産量算出器170が第1産物G1の生産量と、第2産物G2の生産量と、第3産物G3の生産量とを算出し、これらの生産量を足し合わせた値を基準生産量Sallとしてもよい。すなわち、上記例において、式(2)に示すkを1とする代わりに、k,k,kを1としてもよい。
【0089】
また、上記例では、被破砕物の供給量を基準生産量とし、第1産物G1の生産量の基準生産量に対する比率を制御対象の粒度比Ractとする例を示したが、粒度比Ractは、オペレータが設定する粒度比目標値、すなわち、監視対象の粒度比に応じて種々の粒度比を採用し得る。
【0090】
例えば、対象産物生産量Sactは、第2産物G2の生産量であってもよいし、第1産物G1および第2産物G2の生産量の合計値であってもよい。例えば、式(2)において、kおよびkを1とする、またはk,k,kを1とし、他のkを0としてもよい。あるいは、対象産物生産量Sactは、第3産物G3の生産量であってもよい。例えば、式(2)において、kおよびkを1とし、他のkを0としてもよい。対象産物生産量Sactが第3産物G3の生産量である場合、粒度比Ractは、供給量に対して破砕された被破砕物が旋動式破砕機1に再度供給される割合、すなわち、被破砕物のリターン比率を表す。これらの変形例においてもkを1とする代わりにkまたはk,k,kを1としてもよい。
【0091】
また、粒度比Ractは、複数の選別範囲に含まれる生産量に対するそのうちの一部の選別範囲における生産量の比率としてもよい。例えば、第1産物G1および第2産物G2の生産量の合計値に対する第1産物G1または第2産物G2の生産量の比率としてもよい。例えば、式(2)において、kまたはkと、kおよびkとを1とし、他のkを0としてもよい。
【0092】
このように、式(2)における係数kのうち、1にする係数と0にする係数との好適な組み合わせを選択することにより、粒度比算出部91は、オペレータが着目する産物Gjに基づく所望の粒度比Ractを算出することができる。なお、係数kの選択に合わせて、粒度比目標値Rrがプリセットされるようにしてもよい。すなわち、記憶器90に、想定される係数kの組み合わせに応じた粒度比目標値Rrのプリセット値が記憶され、オペレータによる係数kの選択に応じたプリセット値が読み出され、読み出されたプリセット値に対してオペレータが所望の粒度比目標値Rrに調整できるようにしてもよい。
【0093】
生産量算出器170は、第2産物G2の生産量、第3産物G3の生産量、中間コンベヤ113の搬送量も、第1産物G1の生産量と同様に、対応するコンベヤ116,117,113を駆動する電動モータ119,120,114に供給される電力に基づいて算出することができる。この際、複数の搬送コンベヤ115,116,117および電動モータ118,119,120が互いに同じ搬送能力および互いに同じ大きさ等を有する場合には、複数の搬送コンベヤ115,116,117について共通する1つの相関関係が記憶器90に記憶されてもよい。これに代えて、搬送コンベヤ115,116,117に応じた複数の相関関係が記憶器90に記憶されてもよい。
【0094】
何れの粒度範囲における産物Gjに着目する場合であっても、産物Gjの生産量は、生産量算出器170により、同様に算出される。また、旋動式破砕機1から得られる複数種類の産物Gjの生産量を容易に算出することができるため、複数種類の産物Gjにおける生産バランスを容易に確認することができる。
【0095】
[本実施の形態の効果]
上記構成によれば、負荷指標Lactが負荷指標目標値Lrに基づく基準範囲内になるように、旋動式破砕機1または供給機4のうちの少なくとも1つが制御される。これにより、短い時間における負荷変動を抑えて安定的な破砕システム100の運転を行うことができる。また、上記構成によれば、着目する粒度範囲の産物Gjの生産量Sactを所定の基準生産量Sallに対する比率で表した粒度比Ractと、負荷指標Lactおよび粒度比Ractの相関関係とを用いて、負荷指標目標値Lrが算出される。
【0096】
このため、オペレータは、着目する粒度範囲の産物の生産量Sactに基づいて直感的に破砕システム100の制御目標値を設定することができる。また、産物の生産量Sactは、比較的長い時間で平均して得られる。したがって、着目する産物の生産量Sactに基づいて得られる粒度比Ractが粒度比目標値Rrとなるような負荷指標目標値Lrを生成することにより、破砕システム100の安定性と最適な生産バランスとを両立した運転を行うことができる。
【0097】
以上より、所定粒度範囲内の産物Gjについて所望の生産量を得るための目標値を直感的に設定でき、所望の生産量となるように旋動式破砕機1を安定的に制御することができる。
【0098】
また、上記実施の形態によれば、所定の粒度範囲の産物Gjの生産量を直接または間接的に表す粒度指標Pactを検出し、当該粒度指標Pactを用いて粒度比Ractが算出される。産物Gjの粒度そのものを計測する代わりに、選別後の産物Gjの生産量を計測または推定することにより、複数の粒度範囲の産物Gjの生産バランスの評価を容易に行うことができる。また、着目する粒度範囲の産物Gjの粒度比Ractを容易に算出することができる。さらに、所定の粒度範囲の産物Gjを搬送する搬送コンベヤ115,116,117における産物Gjの単位時間当たりの搬送量が、粒度比Ractを算出するための産物Gjの生産量として用いられる。したがって、着目する産物Gjを、別途計量器を設けることなく検出することができる。
【0099】
[シミュレーション結果]
図10は、本実施の形態に基づいた制御態様のシミュレーション結果を示すグラフである。図10の下のグラフは、負荷圧の時間変化を示すグラフであり、上のグラフは、粒度比の時間変化を示すグラフである。本例のシミュレーションでは、時刻T1に粒度比目標値Rrが第1目標値Rr1から第1目標値Rr1より低い第2目標値Rr2に変更されている。
【0100】
図10に示すように、粒度比目標値Rrの変更に伴い、時刻T1以降の負荷指標目標値Lrが時刻T1以前に比べて高く変化している。負荷指標目標値Lrが段階的に変化しているのは、リミッタ164によって負荷指標目標値Lrの急激な変化が制限されるからである。負荷指標目標値Lrによって破砕システム100が制御されることにより、旋動式破砕機1から検出される負荷指標Lactが負荷指標目標値Lrに追従するように変化する。この結果、旋動式破砕機1で被破砕物が破砕されることにより得られる産物Gjの粒度比Ractも粒度比目標値Rrに追従するように変化している。このように、本実施の形態において、粒度比目標値Rrを用いて負荷圧の制御を行うことにより、所望の粒度比が得られることが、本シミュレーションにおいても示されている。
【0101】
[変形例]
以上、本開示の実施の形態について説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0102】
例えば、上記実施の形態では、粒度指標検出器130が第1産物G1、第2産物G2および第3産物G3の何れの粒度指標も検出可能な構成としているが、粒度指標検出器130は、少なくとも何れか1種類の産物の粒度指標を検出可能としてもよい。すなわち、破砕システム100において、着目する粒度比Ractを算出するために用いない粒度指標を検出する手段は備えていなくてもよい。例えば、着目する粒度比Ractがリターン比率である場合、粒度指標検出器130は、第3産物G3の粒度指標が検出可能であればよい。この場合、上記実施の形態では、破砕システム100は、粒度指標検出器130として第3電力計測器133を備えていればよく、第1電力計測器131および第2電力計測器132は備えていなくてもよい。同様に、着目する粒度比Ractが第1産物G1または第2産物G2の粒度比Ractの何れか一方である場合、破砕システム100は、粒度指標検出器130として第1電力計測器131または第2電力計測器132の何れか一方を備えていればよい。
【0103】
また、上記実施の形態では、粒度指標検出器130が粒度指標Pactとして産物Gjを搬送する搬送コンベヤ115,116,117を駆動する電動モータ118,119,120に供給される電力を検出することにより、産物Gjの生産量を算出する態様を例示したが、粒度指標の検出態様はこれに限られない。
【0104】
例えば、搬送コンベヤ115,116,117は、単位時間あたりの搬送量を検出可能なベルトスケールであってもよい。この場合、ベルトスケールの計測値が粒度指標として検出される。すなわち、粒度指標は、産物Gjの単位時間あたりの搬送量、言い換えると、産物Gjの生産量である。また、搬送コンベヤ115,116,117の搬送面上にカメラを設置し、当該カメラが撮影した画像に対して画像処理を行うことにより、単位時間あたりの搬送量、すなわち、産物Gjの生産量を粒度指標として検出してもよい。例えば、カメラが撮影した産物の画像から搬送される産物の断面積を求め、断面積と搬送速度とから産物の搬送量が推定され得る。また、供給量検出器150において検出する値も、粒度指標と同様の変形例を採用できる。すなわち、供給機4のコンベヤ40および中間コンベヤ113において、ベルトスケールの計測値または画像処理による検出値から供給量を算出してもよい。
【0105】
あるいは、粒度指標検出器130はなくてもよい。例えば、旋動式破砕機1で破砕され、選別機110で選別される前の被破砕物、すなわち、第1産物G1、第2産物G2および第3産物G3の混成状態にある産物をカメラで撮影し、撮影画像を画像処理することにより、画像処理後の撮影画像から所定の粒度範囲の産物Gjの全体に対する比率を推定してもよい。すなわち、粒度比算出部91は、撮影画像から所望の粒度比Ractを直接取得してもよい。このためのカメラは、例えば、中間コンベヤ113の搬送面上に設置されてもよい。
【0106】
粒度指標を用いずに粒度比Ractを算出するために、粒度比算出部91は、負荷指標Lactおよび粒度比Ractの間の相関関係と、負荷指標検出器140で検出された負荷指標Lactとから負荷指標Lactにおける粒度比Ractを算出してもよい。例えば、粒度比算出部91は、図6の直線A2で示される線形の相関関係を読み出し、当該相関関係において、検出された負荷指標Lactに対応する粒度比Ractを出力してもよい。本構成によれば、別途粒度指標検出器130を設けることなく粒度比Ractを算出することができる。
【0107】
また、上記実施の形態では、目標値生成部92において用いられる制御ゲインKrを、記憶器90に予め記憶されている相関関係と、負荷指標検出器140で検出された負荷指標Lactとから算出する態様を例示したが、これに限られない。例えば、記憶器90は、負荷指標Lactおよび粒度比Ractの履歴を記憶し、目標値生成部92は、過去の2以上の負荷指標および粒度比Ractの組み合わせから負荷指標Lactに対する粒度比Ractの変化率を算出することにより相関関係を算出し、算出した相関関係を用いて制御ゲインKrを算出してもよい。
【0108】
例えば、図6のグラフと同様に、横軸を、負荷圧を示す負荷指標とし、縦軸を粒度比とすると、過去の第1時点における負荷指標La1および粒度比Ra1の組み合わせを示す第1座標Q1(La1,Ra1)と過去の第2時点における負荷指標La2および粒度比Ra2の組み合わせを示す第2座標Q2(La2,Ra2)とを結んだ直線が、負荷指標に対する粒度比の相関関係を示す直線となる。また、過去の3つ以上の時点における3つ以上の座標を直線または曲線により近似したものを相関関係としてもよい。
【0109】
目標値生成部92は、このようにして得られた相関関係を用いて制御ゲインKrを算出してもよい。すなわち、目標値生成部92は、検出された負荷指標Lactにおける相関関係の傾きまたは接線の傾きを制御ゲインKrとして算出してもよい。本構成によれば、負荷指標および粒度比の実測値から制御ゲインKrを算出することにより、実際の運転時における旋動式破砕機1の特性を抽出することができ、より高い精度の負荷指標目標値Lrを生成することができる。
【0110】
また、上記実施の形態では、油圧式の旋動式破砕機1を備えた破砕システム100を例示したが、旋動式破砕機1は、これに限られず、例えば、機械式の旋動式破砕機も適用可能である。
【0111】
図11は、図1に示す破砕システムに適用される旋動式破砕機の他の例における概略構成を示す図である。図2に示す油圧式の旋動式破砕機1と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0112】
図11に示すように、旋動式破砕機1Aも、油圧式の旋動式破砕機1と同様に、破砕室16へ被破砕物を投入するホッパ2と、ホッパ2へ被破砕物を供給する供給機4と、ホッパ2から落下した被破砕物を噛み込んで破砕するマントル13およびコーンケーブ14と、マントル13が固定される主軸5の旋回駆動手段である主軸用モータ8と、主軸用モータ8からマントル13へ回転動力を伝達する動力伝達機構80と、制御器9と、を備えている。
【0113】
図11に示す機械式の旋動式破砕機1Aは、油圧式の旋動式破砕機1とは異なり、油圧回路7および油圧回路7を通じて破砕室16におけるセットを制御するための油圧シリンダ6を備えていない。すなわち、旋動式破砕機1Aは、セットが機械的に保持される。
【0114】
ただし、旋動式破砕機1Aは、機械的なセットの調整が可能である。このため、旋動式破砕機1Aは、トップフレーム31の内周面に内ねじ31aが形成され、コーンケーブサポート35の外周面に外ねじ35aが形成され、内ねじ31aおよび外ねじ35aが螺合している。さらに、コーンケーブサポート35に外歯35bが形成され、この外歯35bは駆動歯車45と噛合している。駆動歯車45は、電動モータ46の回転動力を受けて回転する。電動モータ46は、トップフレーム31に支持されている。電動モータ46の動作は、制御器9と接続されたモータドライバ47によって制御される。
【0115】
駆動歯車45が回転するとコーンケーブサポート35がトップフレーム31に対して回転する。コーンケーブサポート35が回転すると、トップフレーム31の内ねじ31aとコーンケーブサポート35の外ねじ35aとの螺合により、トップフレーム31に対してコーンケーブサポート35が昇降し、セットが変化する。ただし、機械式の旋動式破砕機1Aにおいて、セットは、破砕運転中に変更されない。
【0116】
トップフレーム31またはコーンケーブサポート35には、トップフレーム31に対するコーンケーブサポート35の変位を検出する接触式または非接触式のセットセンサ23Aが設けられている。制御器9は、セットセンサ23Aの検出値からセットを求めることができる。制御器9は、セットセンサ23Aで検出されたセットの値に基づいて電動モータ46を動作させる。
【0117】
マントル13は、主軸5の上部に固定されたマントルコア12に取り付けられている。主軸5は、その軸心が鉛直方向から傾いた状態で、フレーム3内に配置されている。主軸5の下部は、インナーブッシュ51に嵌挿されている。インナーブッシュ51は偏心スリーブ52に固定されている。偏心スリーブ52は、ボトムフレーム32に設けられたアウターブッシュ53に嵌挿されている。偏心スリーブ52の下部は、滑り軸受66に支持されている。マントルコア12は、ボトムフレーム32に設けられたスラスト軸受(静圧軸受)55に支持されている。マントルコア12とスラスト軸受55との間には潤滑油による油膜が形成されている。スラスト軸受55の潤滑回路7Aには、潤滑油の給油圧力を検出する圧力センサ24Aが設けられている。マントル13に破砕圧が掛かると、マントルコア12とスラスト軸受55との間に潤滑油を送り出すために更に高い圧力が必要となり、スラスト軸受55へ供給される潤滑油の油圧が上昇する。したがって、圧力センサ24Aで検出されるスラスト軸受55の給油圧力は、破砕負荷を間接的に表す測定値であって、負荷指標Lactとして用いられ得る。
【0118】
上記構成の旋動式破砕機1Aでは、前述の旋動式破砕機1と同様に、破砕負荷を直接的または間接的に表す負荷指標Lactを検出する負荷指標検出器140を備えている。制御器9は、破砕運転中に検出された負荷指標Lactを監視し、負荷指標Lactが負荷指標目標値Lrに基づく所定の基準範囲内に維持されるように供給機4による被破砕物の供給量を制御する。
【0119】
また、上記実施の形態において、破砕システム100を、産物を生産する生産装置として例示したが、生産量検出システムおよび生産量検出方法は、破砕システム100以外の生産装置にも適用可能である。生産装置は、産物を搬送コンベヤで搬送可能な産物を生産する生産装置であればよい。例えば、生産装置は、セメント原料を焼成してクリンカを産物として生成するセメント製造プラント等を含む。また、検出対象の産物は、その後廃棄等されるものであってもよい。例えば、生産装置は、ごみ処理施設等において排出される灰の灰処理装置を含んでもよい。また、生産装置が生産する産物は1種類のみでもよい。
【0120】
[本開示のまとめ]
本開示の一態様に係る破砕システムの制御器は、旋動式破砕機および前記旋動式破砕機に被破砕物を供給する供給機を備えた破砕システムの制御器であって、前記旋動式破砕機にかかる破砕負荷を直接または間接的に表す負荷指標を取得する負荷指標取得部と、前記旋動式破砕機によって破砕された前記被破砕物から得られる所定の粒度範囲の産物の生産量を所定の基準生産量に対する比率で表した粒度比を算出する粒度比算出部と、取得した前記負荷指標と前記負荷指標および前記粒度比の間の相関関係とに基づいて前記負荷指標目標値を生成する目標値生成部と、前記負荷指標および前記負荷指標目標値から制御指令値を生成する制御指令生成部と、を備え、前記負荷指標が負荷指標目標値に基づく基準範囲内になるように、前記旋動式破砕機または前記供給機のうちの少なくとも1つを制御する。
【0121】
上記構成によれば、負荷指標が負荷指標目標値に基づく基準範囲内になるように、旋動式破砕機または供給機のうちの少なくとも1つが制御される。これにより、短い時間における負荷変動を抑えて安定的な破砕システムの運転を行うことができる。また、上記構成によれば、着目する粒度範囲の産物の生産量を所定の基準生産量に対する比率で表した粒度比と、負荷指標および粒度比の相関関係とを用いて、負荷指標目標値が算出される。
【0122】
このため、オペレータは、着目する粒度範囲の産物の生産量に基づいて直感的に破砕システムの制御目標値を設定することができる。また、産物の生産量は、比較的長い時間で平均して得られる。したがって、着目する産物の生産量に基づいて得られる粒度比が粒度比目標値となるような負荷指標目標値を生成することにより、破砕システムの安定性と最適な生産バランスとを両立した運転を行うことができる。
【0123】
以上より、所定粒度範囲内の産物について所望の生産量を得るための目標値を直感的に設定でき、所望の生産量となるように旋動式破砕機を安定的に制御することができる。
【0124】
前記破砕システムは、前記旋動式破砕機で破砕された前記被破砕物を粒度に応じて選別する選別機を備え、前記制御器は、前記選別機で選別された前記所定の粒度範囲の産物の生産量を直接または間接的に表す粒度指標を取得する粒度指標取得部を備え、前記粒度比算出部は、前記粒度指標を用いて前記粒度比を算出してもよい。
【0125】
上記構成によれば、所定の粒度範囲の産物の生産量を直接または間接的に表す粒度指標を検出し、当該粒度指標を用いて粒度比が算出される。これにより、着目する粒度範囲の産物の粒度比を容易に算出することができる。
【0126】
さらに、前記破砕システムは、前記選別機の下流側において、選別された前記所定の粒度範囲の産物を搬送する搬送コンベヤを備え、前記粒度比算出部は、前記搬送コンベヤにおける前記産物の単位時間あたりの搬送量を前記所定の粒度範囲の産物の生産量として用いて前記粒度比を算出してもよい。
【0127】
上記構成によれば、所定の粒度範囲の産物を搬送する搬送コンベヤにおける産物の単位時間当たりの搬送量が、粒度比を算出するための産物の生産量として用いられる。したがって、着目する産物の生産量を、別途計量器を設けることなく検出することができる。
【0128】
前記粒度指標取得部は、前記搬送コンベヤを駆動する電動モータに供給される電力を前記粒度指標として取得してもよい。これによれば、搬送コンベヤを駆動する電動モータに供給される電力を取得することにより、搬送コンベヤの搬送量を算出することができる。したがって、上記構成によれば、搬送コンベヤを、搬送量が計量可能なベルトスケールとしたり、別途搬送量を検出する手段を設けたりすることなく、搬送コンベヤの単位時間あたりの搬送量を安価かつ容易に算出することができる。
【0129】
前記制御器は、前記旋動式破砕機に供給される前記被破砕物の単位時間あたりの供給量を取得する供給量取得部を備え、前記粒度比算出部は、前記供給量に対する前記搬送コンベヤにおける前記搬送量の割合を前記粒度比として算出してもよい。
【0130】
前記粒度比算出部は、前記相関関係および取得した前記負荷指標から前記負荷指標における前記粒度比を算出してもよい。本構成によれば、別途粒度指標検出器を設けることなく粒度比を算出することができる。
【0131】
前記目標値生成部は、取得した前記負荷指標と前記相関関係から制御ゲインを設定し、前記制御ゲインと所定の粒度比目標値から前記粒度比を差し引いた粒度比偏差とに基づいて前記負荷指標目標値を生成してもよい。これによれば、制御ゲインを用いて粒度比偏差から負荷指標目標値が生成されるため、簡単な構成で粒度比目標値から負荷指標目標値への変換を容易に実現できる。
【0132】
前記破砕システムは、前記相関関係を記憶する記憶器を備え、前記目標値生成部は、取得した前記負荷指標および前記記憶器に予め記憶された前記相関関係から前記制御ゲインを算出してもよい。本構成によれば、記憶器に予め記憶された相関関係を用いて、粒度比についての値を負荷指標についての値に変換するため、簡単な演算で負荷指標目標値を生成することができる。
【0133】
前記破砕システムは、取得した前記負荷指標および算出された前記粒度比の履歴を記憶する記憶器を備え、前記目標値生成部は、過去の2以上の前記負荷指標および前記粒度比の組み合わせから前記負荷指標に対する前記粒度指標の変化率を算出することにより前記相関関係を算出し、取得した前記負荷指標および算出された前記相関関係から前記制御ゲインを算出してもよい。本構成によれば、負荷指標および粒度比の実測値から制御ゲインを算出することにより、実際の運転時における旋動式破砕機の特性を抽出することができ、より高い精度の負荷指標目標値を生成することができる。
【0134】
前記目標値生成部は、前記粒度比偏差に前記制御ゲインを掛ける制御ゲイン乗算器と、前記制御ゲイン乗算器の出力を所定の制限範囲に制限するリミッタと、を含み、前記制限範囲は、取得した前記負荷指標に応じて設定されてもよい。これにより、粒度比の変動割合に応じて制限範囲を適切に設定することができる。
【0135】
本開示の他の態様に係る破砕システムは、旋動式破砕機と、前記旋動式破砕機に被破砕物を供給する供給機と、上記構成の制御器と、を備えている。
【0136】
前記旋動式破砕機は、偏心旋回運動する主軸に固定されたマントルと、内部に、前記マントルとの間に被破砕物を噛み込んで圧砕する破砕室を有するコーンケーブと、を備え、前記マントルおよび前記コーンケーブの間のセットが機械的に保持され、前記制御器は、前記被破砕物の前記旋動式破砕機への供給量を制御してもよい。
【0137】
前記旋動式破砕機は、偏心旋回運動する主軸に固定されたマントルと、内部に、前記マントルとの間に被破砕物を噛み込んで圧砕する破砕室を有するコーンケーブと、前記マントルおよび前記コーンケーブの間のセットを保持するように前記マントルまたは前記コーンケーブに破砕力に対抗する油圧力を与える油圧シリンダと、を備え、前記制御器は、前記被破砕物の前記旋動式破砕機への供給量または前記セットの大きさのうちの少なくとも1つを制御してもよい。
【0138】
本開示の他の態様に係る制御方法は、旋動式破砕機および前記旋動式破砕機に被破砕物を供給する供給機を備えた破砕システムの制御方法であって、前記旋動式破砕機にかかる破砕負荷を直接または間接的に表す負荷指標を検出し、前記旋動式破砕機によって破砕された前記被破砕物から得られる所定の粒度範囲の産物の生産量を所定の基準生産量に対する比率で表した粒度比を算出し、検出された前記負荷指標と前記負荷指標および前記粒度比の間の相関関係とに基づいて前記負荷指標目標値を生成し、前記負荷指標が負荷指標目標値に基づく基準範囲内になるように、前記負荷指標および前記負荷指標目標値から前記旋動式破砕機または前記供給機のうちの少なくとも1つを制御するための制御指令値を生成する。
【0139】
本開示の他の態様に係る生産量検出装置は、投入した原料に所定の処理を行って所定の産物を生産する生産装置における生産量検出装置であって、前記生産装置は、生産された前記産物を搬送する搬送コンベヤを備え、前記生産量検出装置は、前記搬送コンベヤを駆動する電動モータに供給される電力と前記搬送コンベヤが単位時間あたりに搬送する搬送量との相関関係が予め記憶された記憶器と、前記電動モータに供給される電力を取得し、取得した前記電力および前記電力と前記搬送量との前記相関関係から、取得した前記電力に対応する前記搬送量を前記生産装置の生産量として算出する生産量算出器と、を備えている。
【0140】
上記構成によれば、搬送コンベヤを駆動する電動モータに供給される電力を取得することにより、記憶器に記憶された電力と搬送量との相関関係を用いて、搬送コンベヤの搬送量を搬送コンベヤで搬送される産物の生産量として算出することができる。したがって、搬送コンベヤに、搬送量が計量可能なベルトスケールを設けたり、別途搬送量を検出する手段を設けたりすることなく、産物の生産量を安価かつ容易に算出することができる。
【0141】
前記生産装置は、生産された前記産物を所定の基準に応じて少なくとも第1種類の産物と第2種類の産物とに選別する選別機を備え、前記搬送コンベヤは、前記第1種類の産物を搬送する第1コンベヤと前記第2種類の産物を搬送する第2コンベヤとを含み、前記生産量算出器は、前記第1コンベヤを駆動する電動モータに供給される第1電力および前記第2コンベヤを駆動する電動モータに供給される第2電力を取得してもよい。
【0142】
上記構成によれば、生産装置から得られる複数種類の産物の生産量を容易に算出することができるため、複数種類の産物における生産バランスを容易に確認することができる。
【0143】
前記生産装置は、被破砕物を破砕する旋動式破砕機を備え、前記選別機は、破砕された前記被破砕物を所定の粒度範囲に応じて選別してもよい。
【0144】
本開示の他の態様に係る生産量検出システムは、投入した原料に所定の処理を行って所定の産物を生産する生産装置における生産量検出システムであって、前記生産装置は、生産された前記産物を搬送する搬送コンベヤを備え、前記生産量検出システムは、前記搬送コンベヤを駆動する電動モータに供給される電力を計測する電力計測器と、上記構成の生産量検出装置と、を備えている。
【0145】
本開示の他の態様に係る生産量検出方法は、投入した原料に所定の処理を行って所定の産物を生成し、生成した前記産物を搬送得る搬送コンベヤを備えた生産装置における生産量検出方法であって、前記生産量検出方法は、前記搬送コンベヤを駆動する電動モータに供給される電力を検出し、前記電力と前記搬送コンベヤが単位時間あたりに搬送する搬送量との相関関係を取得し、検出された前記電力および前記電力と前記搬送量との前記相関関係から、検出された前記電力に対応する前記搬送量を生産量として算出する。
【符号の説明】
【0146】
1,1A 旋動式破砕機
4 供給機
6 油圧シリンダ
9 制御器
13 マントル
14 コーンケーブ
16 破砕室
90 記憶器
91 粒度比算出部
92 目標値生成部
93 制御指令生成部
95 負荷指標取得部
96 粒度指標取得部
97 供給量取得部
100 破砕システム
110 選別機
115,116,117 搬送コンベヤ
118,119,120 電動モータ
130 粒度指標検出器
131,132,133 電力計測器
140 負荷指標検出器
150 供給量検出器
163 制御ゲイン乗算器
164 リミッタ
170 生産量算出器
図1
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