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特開2023-27610測位装置、プログラム、および測位方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027610
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】測位装置、プログラム、および測位方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/04 20060101AFI20230222BHJP
【FI】
G01S5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132822
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】517182918
【氏名又は名称】ピクシーダストテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】外園 喜大
(72)【発明者】
【氏名】飯野 卓見
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA08
5J062BB05
5J062CC14
5J062CC18
(57)【要約】
【課題】移動機器の測位精度を向上させる測位装置を提供する。
【解決手段】本発明の測位装置は、移動機器から送信された無線信号を受信した複数の通信装置の中から、前記無線信号の受信電力に基づいて、主幹通信装置を選択する手段と、前記主幹通信装置に対して予め関連付けられた通信装置を、補助通信装置として特定する手段と、前記主幹通信装置、および前記補助通信装置それぞれにおいて算出された前記無線信号の到来角情報を取得する手段と、複数の前記到来角情報から、前記移動機器の位置を推定する手段と、を備える。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動機器から送信された無線信号を受信した複数の通信装置の中から、前記無線信号の受信電力に基づいて、主幹通信装置を選択する手段と、
前記主幹通信装置に対して予め関連付けられた通信装置を、補助通信装置として特定する手段と、
前記主幹通信装置、および前記補助通信装置それぞれにおいて算出された前記無線信号の到来角情報を取得する手段と、
複数の前記到来角情報から、前記移動機器の位置を推定する手段と、
を備える測位装置。
【請求項2】
前記複数の通信装置から前記無線信号の受信電力を特定可能な情報を取得する手段をさらに具備し、
前記主幹通信装置を選択する手段は、
前記複数の通信装置のうち、前記受信電力が最大となる通信装置を、前記主幹通信装置として選択する、
請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記主幹通信装置を選択する手段は、
所定の評価期間における受信電力により、前記受信電力が最大となる通信装置を選択する、
請求項2に記載の測位装置。
【請求項4】
前記主幹通信装置を選択する手段は、
前記複数の通信装置のうち前記受信電力が最大となる通信装置とそれ以外の通信装置との位置関係について所定の条件が成立する場合に、前記受信電力が最大となる通信装置を除外して前記主幹通信装置を選択する、
請求項2又は3に記載の測位装置。
【請求項5】
前記移動機器の測位を実施する前にテスト位置から送信されたテスト無線信号について、前記主幹通信装置として選択される一の通信装置の他に基準を満たす受信電力を示した通信装置が、前記一の通信装置が前記主幹通信装置に選択された際の前記補助通信装置となるように、前記一の通信装置に関連付けられている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の測位装置。
【請求項6】
前記複数の通信装置の位置情報に基づいて、複数の通信装置のうち、一の通信装置から所定の範囲内に位置する通信装置が、前記一の通信装置が前記主幹通信装置に選択された際の前記補助通信装置となるように、前記一の通信装置に予め関連付けられている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の測位装置。
【請求項7】
前記複数の通信装置が配置される施設の空間情報に基づいて、複数の通信装置のうち、一の通信装置と同一の空間又は連続した空間に存在する通信装置が、前記一の通信装置が前記主幹通信装置に選択された際の前記補助通信装置となるように、前記一の通信装置に関連付けられている、
請求項1から6のいずれか1項に記載の測位装置。
【請求項8】
前記補助通信装置それぞれにおける前記受信電力が、所定の条件を満たすか否かを判定する手段を備え、
前記移動機器の位置を推定する手段は、前記補助通信装置のうち、前記受信電力が前記所定の条件を満たさない通信装置において算出された前記到来角情報を参照することなく前記移動機器の位置を推定する、
請求項1から7のいずれか1項に記載の測位装置。
【請求項9】
コンピュータに、請求項1~請求項8の何れかに記載の各手段を実現させるためのプログラム。
【請求項10】
コンピュータのプロセッサが、
移動機器から送信された無線信号を受信した複数の通信装置の中から、前記無線信号の受信電力に基づいて、主幹通信装置を選択することと、
前記主幹通信装置に対して予め関連付けられた通信装置を、補助通信装置として特定することと、
前記主幹通信装置、および前記補助通信装置それぞれにおいて算出された前記無線信号の到来角情報を取得することと、
複数の前記到来角情報から、前記移動機器の位置を推定することと、
を実行する測位方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位装置、プログラム、および測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象者、または対象物の正確な位置を把握する技術が求められている。
特許文献1には、天井に設置される機器から受信した無線信号の受信角度と、測定装置の設置位置とに基づいて機器の設置位置を推定する技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-082401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、機器の設置位置を精度良く推定することを企図されている。しかしながら、特許文献1の技術は、固定された機器を対象としており、時々刻々と位置が変化する可能性のある移動機器に対して直ちに適用することはできない。
【0005】
本発明の目的は、移動機器の測位精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、移動機器から送信された無線信号を受信した複数の通信装置の中から、前記無線信号の受信電力に基づいて、主幹通信装置を選択する手段と、前記主幹通信装置に対して予め関連付けられた通信装置を、補助通信装置として特定する手段と、前記主幹通信装置、および前記補助通信装置それぞれにおいて算出された前記無線信号の到来角情報を取得する手段と、複数の前記到来角情報から、前記移動機器の位置を推定する手段と、を備える測位装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の情報処理システムの構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態のロケータの構成を示すブロック図である。
図3】本実施形態のサーバの構成を示すブロック図である。
図4】本実施形態の管理端末の構成を示すブロック図である。
図5】本実施形態の概要の説明図である。
図6】本実施形態のロケータデータベースのデータ構造を示す図である。
図7】本実施形態の受信ログデータベースのデータ構造を示す図である。
図8】本実施形態のサーバによる測位処理のフローチャートである。
図9】本実施形態の管理端末及びサーバによる補助ロケータの設定処理のフローチャートである。
図10】本実施形態の補助ロケータの設定処理において表示される第1画面例を示す図である。
図11】本実施形態の補助ロケータの設定処理において表示される第2画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0009】
以降の説明において、各ロケータに共通の説明を述べる場合に、単に「10」の符号を用いることがある。他方、個別のロケータの説明を述べる場合に、「10-1」、または「10-2」のように「10」に添え字を付した符号を用いることがある。
【0010】
(1)情報処理システムの構成
情報処理システムの構成について説明する。図1は、本実施形態の情報処理システムの構成を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、測位システム1は、ロケータ10-1,10-2と、サーバ30と、管理端末70と、を備える。
ロケータ10は、サーバ30とネットワーク(例えば、インターネット又はイントラネット)NWを介して接続される。ここで、サーバ30に接続可能なロケータ10の数は2つに限られず、3つ以上であってもよい。ロケータ10は、移動機器50から送信される無線信号を受信可能に構成される。
サーバ30は、管理端末70とネットワークNWを介して接続される。
【0012】
ロケータ10は、測位装置または(無線)通信装置の一例である。ロケータ10は、移動機器50(例えば、無線タグ又はスマートフォン)から送信される無線信号(電波)を受信し、当該無線信号の受信電力(例えば、RSSI(Received Signal Strength Indicator))を測定し、かつ当該無線信号のロケータ10に対する到来角を推定する。ロケータ10は、受信電力に関する情報(以下、「受信電力情報」という)と、到来角に関する情報(以下、「到来角情報」という)とを含む受信ログをサーバ30へ送信する。
【0013】
サーバ30は、測位装置の一例である。サーバ30は、複数のロケータ10から送信された受信電力情報および到来角情報と複数のロケータ10の位置とを参照し、移動機器50の位置を推定する。サーバ30は、1以上の物理コンピュータによって構成され得る。
サーバ30は、管理端末70から送信されたリクエストに応じたレスポンスを管理端末70に提供する。
【0014】
移動機器50は、例えば、スマートフォン、無線タグ、または無線信号の送信機能を備えた任意のデバイスに相当する。移動機器50は、例えば、人間に所持され、または他の動体に備え付けられる。つまり、測位システム1によれば、人間または他の動体の測位が可能である。
なお、本実施形態では、測位システム1が移動機器50の位置を推定することで人間または他の動体の測位をする場合を中心に説明するが、測位システム1による測位対象はこれらに限定されない。例えば、測位システム1は、無線タグが設置された静止物の測位を行ってもよい。そして測位システム1は、その静止物の位置が変化したことに応じて所定の動作(例えばその物体の管理者への通知)を行ってもよい。
【0015】
管理端末70は、サーバ30にリクエストを送信する測位装置の一例である。管理端末70は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、又は、パーソナルコンピュータである。
【0016】
(1-1)ロケータの構成
ロケータの構成について説明する。図2は、本実施形態のロケータの構成を示すブロック図である。
【0017】
図2に示すように、ロケータ10は、記憶装置11と、プロセッサ12と、入出力インタフェース13と、通信インタフェース14とを備える。
【0018】
記憶装置11は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置11は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。
【0019】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OS(Operating System)のプログラム
・情報処理を実行するアプリケーションのプログラム
【0020】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理を実行することによって得られるデータ(つまり、情報処理の実行結果)
【0021】
プロセッサ12は、記憶装置11に記憶されたプログラムを起動することによって、ロケータ10の機能を実現するコンピュータである。プロセッサ12は、例えば、以下の少なくとも1つである。
・CPU(Central Processing Unit)
・GPU(Graphic Processing Unit)
・ASIC(Application Specific Integrated Circuit)
・FPGA(Field Programmable Array)
【0022】
入出力インタフェース13は、ロケータ10に接続される入力デバイスから情報(例えば、ユーザの指示)を取得し、かつ、ロケータ10に接続される出力デバイスに情報を出力させるように構成される。
入力デバイスは、例えば、物理ボタン、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、又は、それらの組合せである。
出力デバイスは、例えば、ディスプレイ、スピーカ、ランプ、又は、それらの組合せである。
【0023】
通信インタフェース14は、ロケータ10と外部装置(例えば、サーバ30、移動機器50、またはそれらの組み合わせ)との間の通信を制御するように構成される。
具体的には、通信インタフェース14は、例えばBluetooth(登録商標)(特にBLE(Bluetooth Low Energy))モジュールを含む。通信インタフェース14は、さらに、Wi-Fi(登録商標)モジュール、イーサネットモジュール、移動体通信(例えば、LTE、4G、または5G等)用モジュール、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
なお、移動機器50のハードウェア構成も、上述のロケータ10の構成と同様である。ただし、移動機器50とロケータ10との具体的なハードウェア構成が異なっていてもよい。
【0024】
(1-2)サーバ30の構成
サーバ30の構成について説明する。図3は、本実施形態のサーバ30の構成を示すブロック図である。
【0025】
図3に示すように、サーバ30は、記憶装置31と、プロセッサ32と、入出力インタフェース33と、通信インタフェース34とを備える。
【0026】
記憶装置31は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置31は、例えば、ROM、RAM、及び、ストレージの組合せである。
【0027】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OSのプログラム
・情報処理を実行するアプリケーションのプログラム
【0028】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理の実行結果
【0029】
プロセッサ32は、記憶装置31に記憶されたプログラムを起動することによって、サーバ30の機能を実現するコンピュータである。プロセッサ32は、例えば、以下の少なくとも1つである。
・CPU
・GPU
・ASIC
・FPGA
【0030】
入出力インタフェース33は、サーバ30に接続される入力デバイスから情報(例えば、ユーザの指示)を取得し、かつ、サーバ30に接続される出力デバイスに情報を出力させるように構成される。
入力デバイスは、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、又は、それらの組合せである。
出力デバイスは、例えば、ディスプレイである。
【0031】
通信インタフェース34は、サーバ30と外部装置(例えば、ロケータ10、管理端末70、またはそれらの組み合わせ)との間の通信を制御するように構成される。
【0032】
(1-3)管理端末70の構成
管理端末70の構成について説明する。図4は、本実施形態の管理端末70の構成を示すブロック図である。
【0033】
図4に示すように、管理端末70は、記憶装置71と、プロセッサ72と、入出力インタフェース73と、通信インタフェース74とを備える。管理端末70は、ディスプレイ81に接続される。
【0034】
記憶装置71は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置71は、例えば、ROM、RAM、及び、ストレージの組合せである。
【0035】
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OSのプログラム
・情報処理を実行するアプリケーション(例えば、ウェブブラウザ)のプログラム
【0036】
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理の実行結果
【0037】
プロセッサ72は、記憶装置71に記憶されたプログラムを起動することによって、管理端末70の機能を実現するコンピュータである。プロセッサ72は、例えば、以下の少なくとも1つである。
・CPU
・GPU
・ASIC
・FPGA
【0038】
入出力インタフェース73は、管理端末70に接続される入力デバイスから情報(例えば、ユーザの指示)を取得し、かつ、管理端末70に接続される出力デバイスに情報を出力させるように構成される。
入力デバイスは、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、又は、それらの組合せである。
出力デバイスは、例えば、ディスプレイ81、スピーカ、又は、それらの組合せである。
【0039】
通信インタフェース74は、管理端末70と外部装置(例えばサーバ30)との間の通信を制御するように構成される。
【0040】
ディスプレイ81は、画像(静止画、または動画)を表示するように構成される。ディスプレイ81は、例えば、液晶ディスプレイ、または有機ELディスプレイである。
【0041】
(2)実施形態の概要
本実施形態の概要について説明する。図5は、本実施形態の概要の説明図である。
【0042】
複数のロケータ10は、例えば建物の内部空間に設置され得る。具体的には、図5に示すように、ロケータ10-1~10-13が、空間SP10の天井、壁又は床に設置される。空間SP10は、複数の領域、すなわち部屋A~Dと、廊下とに区分される。空間SPには、例えば、テーブルTb、壁、間仕切り、または扉、などの障害物が設置されている。障害物は、移動機器50の移動を阻む。障害物の一部は、領域間の電波の伝搬を遮断する遮蔽物としてもはたらく。
【0043】
各ロケータ10には、当該ロケータ10を主たる通信装置(主幹通信装置)とした場合に、主幹通信装置に対して補助的に協同するロケータ10(補助通信装置)が、予め設定されている。すなわち、各ロケータ10には、当該ロケータ10を主幹通信装置とするグループを構成する他のロケータ10が関連付けられる。それぞれのグループにおいて、一つの主幹通信装置となるロケータ10と、一又は複数の補助通信装置となるロケータ10と、が設定されている。
【0044】
主幹通信装置となるロケータ10は、移動機器50から送信された無線信号を受信した複数のロケータ10の中から、無線信号の受信電力に基づいてサーバ30により選択される。
そして、主幹通信装置となるロケータ10が選択されると、当該ロケータ10に対して補助通信装置として予め関連付けられていた一又は複数のロケータ10が、補助通信装置として特定される。
【0045】
例えば、部屋Dに存在する移動機器50が、無線信号を送信する。この無線信号を、ロケータ10―1~10-13が受信する。
次に、ロケータ10-1~10-13それぞれは、無線信号の受信電力を測定し、当該無線信号の到来角(到来方向)を推定する。ロケータ10-1~10-13は、受信電力情報と到来角情報とを含む受信ログをサーバ30へ送信する。
【0046】
サーバ30は、受信電力情報を参照して、無線信号の受信電力が最も大きいロケータ10-1を、主幹通信装置として選択する。この例において、ロケータ10-1を主幹通信装置とした場合の補助通信装置として、ロケータ10-2およびロケータ10-3が予め関連付けられているものとする。
この場合、サーバ30は、主幹通信装置である10-1に対して、ロケータ10-2およびロケータ10-3を補助通信装置として特定する。サーバ30は、主幹通信装置(ロケータ10-1)および補助通信装置(10-2、10-3)から取得した到来角情報を参照して、移動機器50の位置を推定する。つまり、サーバ30は、予め設定されたロケータ10のグループを用いて、到来角情報を参照する対象のロケータ10を選択する。このため、サーバ30は、壁や障害物によりノイズが発生しやすい位置関係にあるロケータ10からの到来角情報を用いず、信頼性の高い到来角情報を用いて、移動機器50の位置を推定することができる。
つまり、本実施形態のサーバ30によれば、移動機器50の測位精度を向上させることができる。
【0047】
(3)データベース
本実施形態のデータベースについて説明する。以下のデータベースは、記憶装置31に記憶される。
【0048】
(3-1)ロケータデータベース
本実施形態のロケータデータベースについて説明する。図6は、本実施形態のロケータデータベースのデータ構造を示す図である。
【0049】
ロケータデータベースには、ロケータ情報が格納される。ロケータ情報は、ロケータ10に関する情報である。
【0050】
図6に示すように、ロケータデータベースは、「ロケータID」フィールドと、「設置位置」フィールドと、「補助ロケータ」フィールドと、「電波強度が相対的に高いロケータ」フィールドと、「近傍に位置するロケータ」フィールドと、「空間が連続するロケータ」フィールドと、を含む。各フィールドは、互いに関連付けられている。
【0051】
「ロケータID」フィールドには、ロケータIDが格納される。ロケータIDは、ロケータ情報に対応するロケータ10を識別する情報である。ロケータIDは、ロケータ情報の主キーとして用いることができる。
【0052】
「空間ID」フィールドには、空間IDが格納される。空間IDは、ロケータIDに対応するロケータ10が設置されている空間を識別する情報である。空間IDは、様々な粒度で付与することができる。第1例として、空間IDは、建物ごとに付与される。第2例として、空間IDは、建物のフロアごとに付与される。第3例として、空間IDは、建物のフロア内の区画(例えば、部屋、または廊下)ごとに付与される。
【0053】
「設置位置」フィールドには、設置位置情報が格納される。設置位置情報は、ロケータIDによって識別されるロケータ10の設置位置に関する情報である。設置位置情報は、例えば何らかの基準座標系における2次元または3次元の座標である。例えばロケータ10の高さが既定である場合に、設置位置情報は、高さを含まない2次元座標で表現可能である。
【0054】
「補助ロケータ」フィールドには、ロケータIDが主幹通信装置として選択された際に、補助通信装置として特定されるロケータ10のロケータIDが格納されている。補助ロケータには、一つ又は複数の他のロケータIDが格納されている。補助ロケータとして設定するロケータの選定方法については後述する。
【0055】
「電波強度が相対的に高いロケータ」フィールドは、ロケータIDによって識別されるロケータ10を基準として、電波強度が相対的に高いロケータのロケータIDが格納されている。すなわち、移動機器50の測位を実施する前にテスト位置(例えばロケータIDに対応するロケータ10の近傍の位置)から送信されたテスト無線信号について、基準とされるロケータ10の他に閾値を超える受信電力を示したロケータのロケータIDが格納されている。
【0056】
「近傍に位置するロケータ」フィールドは、ロケータIDによって識別されるロケータ10を基準として、近くに位置するロケータのロケータIDが格納されている。すなわち、複数のロケータの位置情報に基づいて、基準とされたロケータから所定の範囲内に位置するロケータのロケータIDが格納されている。
【0057】
「空間が連続するロケータ」フィールドは、ロケータIDによって識別されるロケータ10を基準として、連続する空間に配置されたロケータのロケータIDが格納されている。すなわち、複数のロケータが配置される施設の空間情報に基づいて、基準とされたロケータと同一の空間又は連続した空間に存在するロケータのロケータIDが格納されている。例えば異なる部屋であっても、天井と鴨居との間に設けられる開口部である欄間が開放されたパーテーションにより、部屋が区画されている場合には、開口部をとおして電波が通過しやすくなる。このような場合には、廊下と部屋の内部とは連続する空間として扱われてもよい。
【0058】
(3-2)受信ログデータベース
本実施形態の受信ログデータベースについて説明する。図7は、本実施形態の受信ログデータベースのデータ構造を示す図である。
【0059】
受信ログデータベースには、受信ログ情報が格納される。受信ログ情報は、サーバ30によって各ロケータ10から収集される受信ログに関する情報である。
【0060】
図7に示すように、受信ログデータベースは、「ログID」フィールドと、「日時」フィールドと、「ロケータID」フィールドと、「移動機器ID」フィールドと、「受信電力」フィールドと、「到来角」フィールドとを含む。各フィールドは、互いに関連付けられている。
【0061】
「ログID」フィールドには、ログIDが格納される。ログIDは、受信ログを識別する情報である。ログIDは、受信ログ情報の主キーとして用いることができる。
【0062】
「日時」フィールドには、日時情報が格納される。日時情報は、受信ログに関連付けられる日時に関する情報である。一例として、日時情報は、ロケータ10による無線信号の受信日時、サーバ30における受信ログの取得日時、または移動機器50による無線信号の送信日時であり得る。
【0063】
「ロケータID」フィールドには、ロケータIDが格納される。ロケータIDは、受信ログの情報源であるロケータ10を識別する情報である。ロケータIDは、ロケータデータベース(図6)に登録されるロケータIDと1対1対応する。
【0064】
「移動機器ID」フィールドには、移動機器IDが格納される。移動機器IDは、受信ログの情報源であるロケータ10によって受信された無線信号の送信元である移動機器50を識別する情報である。移動機器IDの特定は、ロケータ10によって行われてもよいし、サーバ30によって行われてもよい。
【0065】
「受信電力」フィールドには、ロケータ10から収集された受信電力情報が格納される。
【0066】
「到来角」フィールドには、ロケータ10から収集された到来角情報が格納される。
【0067】
移動機器50は、無線信号を繰り返し送信する。この無線信号を受信したロケータ10は、当該無線信号の受信電力を測定し、かつ当該無線信号の到来角を推定する。ロケータ10は、受信電力情報および到来角情報を含む受信ログをサーバ30へ送信する。サーバ30は、受信ログをバックグラウンドで受信し、受信ログデータベース(図7)を更新する。
【0068】
(4)情報処理
本実施形態の情報処理について説明する。
【0069】
(4-1)測位処理
本実施形態の測位処理について説明する。図8は、本実施形態のサーバによる測位処理のフローチャートである。
【0070】
測位処理は、以下の開始条件のいずれかの成立に応じて開始する。
・他の処理によって測位処理が呼び出された(例えば、サーバ30が管理端末70から測位リクエストを受信した)。
・管理端末70のユーザが測位処理を呼び出すための操作を行った。
・サーバ30が所定の状態(例えば電源投入)になった。
・所定の日時が到来した。
・所定のイベント(例えば、サーバ30の起動、または測位処理の前回の実行)から所定の時間が経過した。
【0071】
図8に示すように、サーバ30は、各種情報の取得(S130)を実行する。
具体的には、サーバ30は、対象となる移動機器50(以下、「対象機器」という)の対象日時における位置を測定するために必要な各種情報を取得する。対象機器は、管理端末70のユーザによって指定されてもよいし、アルゴリズムによって決定されてもよい。対象日時は、管理端末70のユーザによって指定されてもよいし、アルゴリズムによって決定されてもよい。
一例として、サーバ30は、対象機器によって送信された無線信号を対象日時付近に受信したロケータ10から収集されたログ情報を取得する。例えば、サーバ30は、抽出条件を満足する受信ログ情報を受信ログデータベース(図7)から抽出する。抽出条件は、対象機器を識別する移動機器IDを備え、かつ対象日時付近の日時に関する日時情報を備えること、であってよい。
【0072】
ステップS130の後に、サーバ30は、主幹通信装置の選択(S131)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS130において取得した受信電力情報を参照して、対象機器から送信された無線信号を対象日時付近に受信した複数のロケータ10のうちのいずれかを主幹通信装置として選択する。一例として、サーバ30は、受信電力が最大であったロケータ10を主幹通信装置として選択する。受信電力は、例えば、所定の評価期間における最大値、平均値、又は総和により評価される。評価期間は数秒であってもよいし、数十秒であってもよく、任意に設定することができる。
例えば、移動機器50が高速で移動しない場合には、長めの評価期間で評価したほうが、精度を向上することができる。
【0073】
サーバ30は、受信電力が最大であったロケータ10を主幹通信装置として選択しなくてもよい。例えば、障害物での反射等のノイズの影響により、移動機器50の近くに位置しないロケータ10が、変則的に高い受信電力を示すことがある。このようなノイズを除去するために、予め所定の条件を設定し、所定の条件が成立する場合に、受信電力が最大となるロケータ10を除外して、主幹通信装置を選択してもよい。このような所定の条件としては、最大値を示すロケータ10と、それ以下の値を示す複数のロケータ10との位置関係に基づく条件が挙げられる。例えば、受信電力が高い一群のロケータ10のうち、最大値を示すロケータ10の位置と、他のロケータ10との距離が閾値を超えている場合には、最大値を示すロケータ10を主幹通信装置の候補から除外して、次に大きな受信電力を示すロケータを主幹通信装置としてもよい。
【0074】
ステップS131の後に、サーバ30は、補助通信装置の特定(S132)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS131において選択した主幹通信装置に関連付けられる補助通信装置を特定する。一例として、サーバ30は、ロケータデータベース(図6)を参照して、主幹通信装置を識別するロケータIDに関連付けられている補助ロケータを、補助通信装置として特定する。
【0075】
ステップS132の後に、サーバ30は、位置の推定(S133)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS130において取得した到来角情報のうち、主幹通信装置、および補助通信装置から取得した到来角情報を参照して、対象機器の位置を推定する。
ここで、サーバ30は、主幹通信装置を識別するロケータIDに関連付けられている各補助ロケータについて、受信電力が所定の条件を満たすか否かを判定してもよい。そして、サーバ30は、移動機器50の位置を推定する際に、補助通信装置のうち、受信電力が所定の条件を満たさない(例えば受信電力が閾値未満である)ロケータ10において算出された到来角情報を参照することなく移動機器50の位置を推定してもよい。
【0076】
ステップS133の後に、サーバ30は、位置の提示(S134)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS133において推定した対象機器の対象日時における位置を管理端末70のユーザに提示する。一例として、サーバ30は、この位置に関する情報を含むレスポンスを管理端末70へ送信する。管理端末70は、レスポンスに基づく画面をディスプレイ81に表示する。一例として、管理端末70は、空間を表現するマップ画像に、対象機器を表現するアイコンを重畳した画像をディスプレイに表示する。マップ画像におけるアイコンの位置は、対象機器の対象日時における位置に対応するように定められる。
なお、サーバ30によるS134における位置の提示処理のタイミングは、S133における位置の推定処理の直後に限定されない。例えば、サーバ30は、S130~S133の処理を定期的に行うことで対象機器の位置情報を継続的に更新し、位置情報の提示の要求を受け付けたタイミングで最新の位置情報を提示してもよい。
【0077】
(4-2)補助ロケータの設定処理
本実施形態の補助ロケータの設定処理について説明する。図9は、本実施形態の管理端末及びサーバによる補助ロケータの設定処理のフローチャートである。図10は、本実施形態の補助ロケータの設定処理において表示される第1画面例を示す図である。図11は、本実施形態の補助ロケータの設定処理において表示される第2画面例を示す図である。
【0078】
図9の補助ロケータの設定処理は、以下の開始条件のいずれかに応じて開始する。
・他の処理によって補助ロケータの設定処理が呼び出された。
・管理端末70のユーザが補助ロケータの設定処理を呼び出すための操作を行った。
・管理端末70が所定の状態(例えばアプリ起動)になった。
・所定の日時が到来した。
・所定のイベントから所定の時間が経過した。
【0079】
図9に示すように、管理端末70は、指示の受付(S170)を実行する。
具体的には、管理端末70は、ユーザ(つまり、オペレータ)からロケータ情報の閲覧または変更を希望する空間(以下、「対象空間」という)を選択する指示を受け付ける。
【0080】
一例として、管理端末70は、ディスプレイに画面P10(図10)を表示する。
図10の画面P10は、デジタルオブジェクト(操作オブジェクトB10a、および操作オブジェクトB10b)を含む。操作オブジェクトB10aは、選択可能な空間のいずれかに関連付けられている。
【0081】
管理端末70は、入力デバイスが受け付けたユーザ指示に応じて、対象空間を特定する。ユーザ指示は、例えば、タップ、クリック、キー入力、音声入力、および、ジェスチャ入力の少なくとも1つであってよい。管理端末70は、操作オブジェクトB10bが選択されたことに応じて、操作オブジェクトB10aの選択状態に対応する対象空間を特定する。
【0082】
ステップS170の後に、管理端末70は、リクエスト(S171)を実行する。
具体的には、管理端末70は、ステップS170において受け付けた指示に応じてリクエストを生成する。管理端末70は、生成したリクエストをサーバ30へ送信する。
一例として、管理端末70は、ステップS170において受け付けた指示によって特定された対象空間を識別する情報(例えば空間ID)を含むリクエストをサーバ30へ送信する。
【0083】
ステップS171の後に、サーバ30は、各種情報の取得(S230)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS171において送信されたリクエストを取得する。サーバ30は、上記リクエストに応じて、管理端末70が対象空間に関連付けられるロケータ10(例えば対象空間に設置されたロケータ10)のロケータ情報をユーザに閲覧させるために必要な情報を取得する。例えば、サーバ30は、以下の情報の少なくとも1つを取得してもよい。
・ロケータデータベース(図6)に格納されたロケータ情報
・対象空間の環境に関する情報
【0084】
対象空間の環境は、対象空間(例えば、建物)の構造を含む。一例として、対象空間の構造は、以下の少なくとも1つを含む。
・対象空間の形状
・対象空間に含まれる領域同士の関係
・対象空間における地理
・領域間の境界を構成する建築部材の数量もしくは特性
【0085】
対象空間の環境に関する情報は、対象空間の構造に関する情報を含む。対象空間の構造に関する情報は、例えば、空間モデル情報(一例として、BIM(Building Information Modeling)データ)、設計図情報、マップ情報、またはそれらの組み合わせである。
【0086】
ステップS230の後に、サーバ30は、レスポンス(S231)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS230において取得した情報を含むレスポンスを生成する。サーバ30は、生成したレスポンスを管理端末70へ送信する。
【0087】
ステップS231の後に、管理端末70は、指示の受付(S172)を実行する。
具体的には、管理端末70は、ユーザから補助ロケータ情報の編集に関する指示を受け付ける。
【0088】
一例として、管理端末70は、ステップS231において送信されたレスポンスを取得する。管理端末70は、取得したレスポンスを参照して、画面P11(図11)を生成する。管理端末70は、ディスプレイに画面P11を表示する。これにより、ユーザは、対象空間に関連付けられるロケータ10のロケータ情報(特に、補助ロケータ情報)を閲覧することができる。
【0089】
画面P11は、表示オブジェクトA11a~A11bを含む。
表示オブジェクトA11aは、対象空間の環境に関する情報と、当該対象空間におけるロケータ10の配置に関する情報とを表示するオブジェクトである。表示オブジェクトA11a上では、対象空間の地理を表すマップ画像上に、各ロケータ10を表すロケータアイコンA11a1~A11a13が配置される。ロケータアイコンA11a1~A11a13の位置は、対応するロケータ10の設置位置に対応する。画面P11では、選択されているロケータアイコンは点滅しており、選択されていないロケータアイコンは点滅せずに、それぞれ描かれている。ロケータアイコンA11a1~A11a13は、それぞれの位置関係により、図示のとおりアイコンの形状が異なっていてもよい。ただし、アイコンの表示はこの例に限定されず、各ロケータ10のアイコンが同一種別であってもよい。また例えば、選択されている対象ロケータと、対象ロケータに対応する補助ロケータと、それ以外のロケータとが、アイコンの色又は形により識別可能に表示されてもよい。
【0090】
管理端末70は、ユーザ指示に応じて、ロケータアイコンA11a1~A11a13のいずれかを選択する。管理端末70は、選択されたロケータアイコンを点滅させる。さらに、管理端末70は、選択された対象ロケータの補助ロケータ情報を参照し、表示オブジェクトA11bおよび表示オブジェクトA11cを表示する。
【0091】
表示オブジェクトA11bは、対象ロケータの補助ロケータ情報に関する設定を表示するオブジェクトである。表示オブジェクトA11bは、操作オブジェクトB11a~B11bおよびフィールドオブジェクトF11を含む。
【0092】
操作オブジェクトB11aは、対象ロケータとの関係において、補助ロケータとしての候補となるロケータ情報を表示し、補助ロケータを切り替えるためのユーザ指示を受け付けるオブジェクト(チェックボックス)である。チェックボックスを選択することで、該当するロケータが、補助ロケータとして選択される。
【0093】
操作オブジェクトB11aにおいて、「電波強度」タグをクリックすると、ロケータデータベースにおいて、対象ロケータのロケータIDを主キーとした「電波強度が相対的に高いロケータ」フィールドに設定されているロケータが選択される。既に説明した通り、「電波強度が相対的に高いロケータ」は、対象ロケータの近傍のテスト位置から送信されたテスト無線信号の受信電力が閾値を超えたロケータである。図示の例では、アイコンA11a2とアイコンA11a3のアイコンが選択される。画面上はアイコンの形状で現しているが、アイコンに付された符号により表示してもよい。
【0094】
操作オブジェクトB11aにおいて、「近傍」タグをクリックすると、ロケータデータベースにおいて、対象ロケータのロケータIDを主キーとした「近傍に位置するロケータ」フィールドに設定されているロケータが選択される。図示の例では、アイコンA11a2と、アイコンA11a3と、アイコンA11a11と、アイコンA11a12のアイコンが選択される。画面上はアイコンの形状で現しているが、アイコンに付された符号により表示してもよい。
【0095】
操作オブジェクトB11aにおいて、「空間連続」タグをクリックすると、ロケータデータベースにおいて、対象ロケータのロケータIDを主キーとした「空間が連続するロケータ」フィールドに設定されているロケータが選択される。図示の例では、アイコンA11a2と、アイコンA11a3と、アイコンA11a10~アイコンA11a13のアイコンが選択される。なお、本例においては、部屋Dと廊下とが空間的に連続するものとしている。画面上はアイコンの形状で現しているが、アイコンに付された符号により表示してもよい。
このように、ユーザは、補助ロケータを選択するための条件を指定することで、条件に合致するロケータ10を容易に選択することができる。なお、条件に合致するロケータ10のうち、ユーザにより指定された一部のロケータ10を、補助ロケータから除外できるようにしてもよい。
【0096】
操作オブジェクトB11bは、対象ロケータの補助ロケータ情報の編集を確定するためのユーザ指示を受け付けるオブジェクトである。
【0097】
フィールドオブジェクトF11は、ユーザが操作オブジェクトB11aのいずれかのタグを選択せずに、補助ロケータとして設定するロケータ10を手動で指定する場合に、指定するロケータに対応する番号を入力するためのフィールドである。ユーザが手動で補助ロケータを選択できるようにすることで、壁が天井までつながってない場合や、壁が電波透過しやすい場合等、特殊な環境に応じた調整を行うことができる。
【0098】
ステップS172の後に、管理端末70は、リクエスト(S173)を実行する。
具体的には、管理端末70は、ステップS172において受け付けた指示に応じてリクエストを生成する。管理端末70は、生成したリクエストをサーバ30へ送信する。
一例として、管理端末70は、操作オブジェクトB11bの選択を受け付けると、その時点でのフィールドオブジェクトF11、又は操作オブジェクトB11aの入力内容に基づく情報(補助ロケータとして選択されたロケータのロケータID)と、対象ロケータを識別する情報(例えば対象ロケータのロケータID)を含むリクエストを生成する。
【0099】
ステップS173の後に、サーバ30は、補助ロケータ情報の更新(S232)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS173において送信されたリクエストを取得する。サーバ30は、上記リクエストに応じて、ロケータデータベース(図6)に格納された補助ロケータ情報を更新する。
【0100】
ステップS232の後に、サーバ30は、レスポンス(S233)を実行する。
具体的には、サーバ30は、ステップS232における補助ロケータ情報の更新結果を含むレスポンスを生成する。サーバ30は、生成したレスポンスを管理端末70へ送信する。
【0101】
ステップS233の後に、管理端末70は、レスポンスの取得(S174)を実行する。
具体的には、管理端末70は、ステップS173において送信したリクエストに対するレスポンスを取得する。管理端末70は、レスポンスの取得に応じて画面P11を更新してもよい。一例として、管理端末70は、対象ロケータに対応するロケータアイコンの選択状態を解除してもよい。つまり、管理端末70は、このロケータアイコンの点滅を止め、表示オブジェクトA11bおよび表示オブジェクトA11cを非表示にしてもよい。
ステップS174の終了を以て、管理端末70は補助ロケータの設定処理を終了する。
【0102】
(5)小括
本実施形態のサーバ30は、複数のロケータ10の中から、無線信号の受信電力に基づいて、主幹通信装置を選択し、主幹通信装置に対して予め関連付けられたロケータ10を、補助通信装置として特定する。そして、主幹通信装置、および補助通信装置それぞれにおいて算出された無線信号の到来角情報から移動機器50の位置を推定する。このため、壁や障害物によりノイズが発生しやすい位置関係にあるロケータ10からの到来角情報を用いず、信頼性の高い到来角情報を用いて、移動機器50の位置を推定することができ、移動機器50の測位精度を向上させることができる。
【0103】
また、サーバ30は、複数のロケータ10のうち、受信電力が最大となるロケータ10を、主幹通信装置として選択する。このため、複数のロケータ10のうち、移動機器50に最も近く、到来角情報の精度が高いロケータを主幹通信装置として選択することができる。
【0104】
また、サーバ30は、所定の評価期間における受信電力により、受信電力が最大となるロケータ10を主幹通信装置として選択する。このため、ノイズの影響などにより一時的に高い受信電力を示したロケータ10を主幹通信装置として選択することを防ぎ、精度よく適切な主幹通信装置を選択することができる。
【0105】
また、サーバ30は、複数のロケータ10のうち受信電力が最大となるロケータ10とそれ以外のロケータ10との位置関係について所定の条件が成立する場合に、受信電力が最大となるロケータ10を除外して主幹通信装置を選択する。このため、変則的に高い受信電力を示したロケータを除外して、適切な主幹通信装置を選択することができる。
【0106】
また、サーバ30は、一のロケータに対して事前のテストにより確認された相対的な受信電力の高いロケータを、補助通信装置として特定する。このため、受信電力の高さの再現性を利用して、適切な補助ロケータを設定することができる。
【0107】
また、サーバ30は、一のロケータに対して位置情報に基づいて予め設定されたロケータを、補助通信装置として特定する。このため、複数のロケータ10の位置情報を利用して、適切な補助ロケータを設定することができる。
【0108】
また、サーバ30は、一のロケータに対して空間情報に基づいて予め設定されたロケータを、補助通信装置として特定する。このため、複数のロケータ10が配置される空間特性を考慮して、例えば別の部屋のロケータを除外するなど、適切な補助ロケータを設定することができる。
【0109】
また、サーバ30は、補助通信装置それぞれにおける受信電力が、所定の条件を満たすか否かを判定する手段を備え、補助通信装置のうち、受信電力が所定の条件を満たさないロケータ10において算出された到来角情報を参照することなく移動機器50の位置を推定する。このため、ノイズとなりえる弱い受信電力を示した補助通信装置からの情報を用いず、より一層効果的に、移動機器50の測位制度を向上させることができる。
【0110】
(6)変形例
本実施形態の変形例について説明する。
【0111】
(6-1)変形例1
変形例1について説明する。変形例1は、管理端末70のユーザの入力を必要とすることなく、ロケータ10に関連付けられる補助ロケータを決定する例である。
【0112】
サーバ30は、対象ロケータ10の設置位置と、対象ロケータ10の設置された空間の環境に関する情報とを参照して、対象ロケータに関連付けられる補助ロケータを決定する。
【0113】
サーバ30は、補助ロケータ10を決定する際に、以下の少なくとも1つを考慮してもよい。
・移動機器50による無線信号の送信電力
・対象ロケータ10の受信感度
・対象ロケータ10と他の各ロケータ10との間の距離
【0114】
サーバ30は、ロケータデータベース(図6)に格納されたロケータ情報に基づいて、ロケータ10の設置位置を特定可能である。
【0115】
空間の環境に関する情報は、空間(例えば建物)の構造に関する情報を含む。具体的には、空間の構造に関する情報は、ロケータ10の周囲に存在する障害物の位置および特性を特定可能な情報である。
【0116】
例えば、サーバ30は、対象ロケータ10からの距離が閾値以下である他のロケータ10を、暫定的な補助ロケータとして特定する。そしてサーバ30は、暫定的な補助ロケータの中から、対象ロケータが設置された空間と連続していない空間に設置されたロケータ10を除外することで、対象ロケータ10に関連付けられる補助ロケータを決定する。すなわち、対象ロケータ10が設置された空間と同一又は連続する空間に存在し、かつ対象ロケータ10から所定の範囲内に位置するロケータ10が、補助ロケータとして決定される。
ただし、補助ロケータの決定方法はこれに限定されない。例えば、対象ロケータ10と同一又は連続する空間に存在する他のロケータ10の全てを補助ロケータとして決定してもよいし、対象ロケータ10から所定の範囲内に位置する他のロケータ10の全てを補助ロケータとして決定してもよい。対象ロケータ10と補助ロケータとして決定されるべきロケータ10との間の距離の閾値は、移動機器50による無線信号の送信電力と対象ロケータ10の受信感度との少なくとも何れかに基づいて設定されてもよい。また例えば、ユーザにより事前に空間内の複数の領域が指定されており、ある領域に含まれる位置の対象ロケータ10に対して、当該領域に含まれる他の全てのロケータ10が補助ロケータとして設定されてもよい。
【0117】
以上説明したように、変形例1のサーバ30は、ロケータ10の設置位置と、当該ロケータ10の設置された空間の環境に関する情報(例えば、当該ロケータ10が設置された建物の構造に関する情報)とを参照して、当該ロケータに関連付けられる補助ロケータを決定する。これにより、管理端末70のユーザの入力を必要とせずに、ロケータ10に対して環境を考慮した妥当な補助ロケータを関連付けることができる。
なお、上述した実施形態と変形例1とが組み合わせて実施されてもよい。例えば、サーバ30は、変形例1に従って自動で補助ロケータの関連付けの初期設定を行い、その後ユーザによる入力に応じて、補助ロケータの関連付けを変更してもよい。
【0118】
(7)変形例
記憶装置11は、ロケータ10の外部に存在し、ネットワークNWを介して、ロケータ10と接続されてもよい。記憶装置31は、サーバ30の外部に存在し、ネットワークNWを介して、サーバ30と接続されてもよい。記憶装置71は、管理端末70の外部に存在し、ネットワークNWを介して、管理端末70と接続されてもよい。ディスプレイ81は、管理端末70に組み込まれてもよい。
【0119】
上記の情報処理の各ステップは、ロケータ10、サーバ30、及び管理端末70の何れでも実行可能である。
上記説明では、各処理において各ステップを特定の順序で実行する例を示したが、各ステップの実行順序は、依存関係がない限りは説明した例に制限されない。
【0120】
変形例1は、サーバ30によって決定された補助ロケータを、ユーザ指示に応じて変更できるようにさらに変形されてもよい。つまり、サーバ30は、補助ロケータの候補を決定してもよい。
【0121】
上述の実施形態では、1つの主幹通信装置(対象ロケータ)に対して1又は複数の補助通信装置(補助ロケータ)が設定されるものとした。ただし、測位対象の空間に設置された複数のロケータ10のうち一部のロケータ10には、補助ロケータが設定されていなくてもよい。このロケータ10が主幹通信装置として選択された場合、サーバ30は、当該ロケータ10から取得した到来角情報と受信電力情報を用いて移動機器50の位置を推定すればよい。また、測位対象の空間に設置された複数のロケータ10のうち一部のロケータ10には、当該空間に設置された他のロケータ10すべてが補助ロケータとして設定されていてもよい。このロケータ10が主幹通信装置として選択された場合、サーバは、当該空間内の全てのロケータ10から取得した到来角情報を用いて移動機器50の位置を推定すればよい。
【0122】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。また、上記の実施形態及び変形例は、組合せ可能である。
【符号の説明】
【0123】
1 :情報処理システム
10 :ロケータ
11 :記憶装置
12 :プロセッサ
13 :入出力インタフェース
14 :通信インタフェース
30 :サーバ
31 :記憶装置
32 :プロセッサ
33 :入出力インタフェース
34 :通信インタフェース
50 :移動機器
70 :管理端末
71 :記憶装置
72 :プロセッサ
73 :入出力インタフェース
74 :通信インタフェース
81 :ディスプレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11