(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027617
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/08 20060101AFI20230222BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
E02D1/08
E02D3/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132839
(22)【出願日】2021-08-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第30回調査・設計・施工技術報告会論文集 2021年6月、公益社団法人地盤工学会中部支部、「薬液注入改良体の電気比抵抗を用いた出来高確認 -沿岸部埋立地における現地実証実験-」、令和3年6月10日(頒布日)
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519232068
【氏名又は名称】NPO法人地盤防災ネットワーク
(71)【出願人】
【識別番号】596164652
【氏名又は名称】太洋基礎工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】下坂 賢二
(72)【発明者】
【氏名】村田 芳信
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 敬三
(72)【発明者】
【氏名】八嶋 厚
(72)【発明者】
【氏名】花田 有紀
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】大野 康年
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝芳
【テーマコード(参考)】
2D040
2D043
【Fターム(参考)】
2D040AB01
2D040GA02
2D043AB02
2D043AB06
2D043AC03
(57)【要約】
【課題】改良後の電気比抵抗の計測によって、改良体の一軸圧縮強さを評価可能とした地盤改良効果の評価方法を提供する。
【解決手段】事前に、シリカ濃度(SiO
2)と一軸圧縮強さ(qu)との第1相関図を得るとともに、シリカ濃度(SiO
2)と電気比抵抗(R)との第2相関図を得る1手順と、前記第1相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)から目標とするシリカ濃度(SiO
2)を求め、次いで前記第2相関図に基づいて、前記目標とするシリカ濃度(SiO
2)から目標とする電気比抵抗(Rk)を設定する第2手順と、地盤改良後に、地盤に縦方向に形成した貫入孔を用いて電気検層による電気比抵抗(Rimp)を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)が前記目標とする電気比抵抗(Rk)以下である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する第3手順からなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法であって、
事前に、シリカ濃度(SiO2)と一軸圧縮強さ(qu)との第1相関図を得るとともに、シリカ濃度(SiO2)と電気比抵抗(R)との第2相関図を得る1手順と、
前記第1相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)から目標とするシリカ濃度(SiO2)を求め、次いで前記第2相関図に基づいて、前記目標とするシリカ濃度(SiO2)から目標とする電気比抵抗(Rk)を設定する第2手順と、
地盤改良後に、地盤に縦方向に形成した貫入孔を用いて電気検層による電気比抵抗(Rimp)を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)が前記目標とする電気比抵抗(Rk)以下である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する第3手順とからなることを特徴とする薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法。
【請求項2】
薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法であって、
事前に、シリカ濃度(SiO2)と液状化強度比(RL)又は粘着力(c)との第1相関図を得るとともに、シリカ濃度(SiO2)と電気比抵抗(R)との第2相関図を得る1手順と、
前記第1相関図に基づいて、目標とする液状化強度比(RL)又は粘着力(c)から目標とするシリカ濃度(SiO2)を求め、次いで前記第2相関図に基づいて、前記目標とするシリカ濃度(SiO2)から目標とする電気比抵抗(Rk)を設定する第2手順と、
地盤改良後に、地盤に縦方向に形成した貫入孔を用いて電気検層による電気比抵抗(Rimp)を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)が前記目標とする電気比抵抗(Rk)以下である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する第3手順とからなることを特徴とする薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法。
【請求項3】
薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法であって、
事前に、シリカ濃度(SiO2)と一軸圧縮強さ(qu)との第1相関図を得るとともに、シリカ濃度(SiO2)と導電率(σ)との第2相関図を得る1手順と、
前記第1相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)から目標とするシリカ濃度(SiO2)を求め、次いで前記第2相関図に基づいて、前記目標とするシリカ濃度(SiO2)から目標とする導電率(σc)を設定する第2手順と、
地盤改良後に、地盤に縦方向に形成した貫入孔を用いて電気検層による電気比抵抗(Rimp)を計測し、これから地盤改良後の導電率(σimp)を算出し、改良地盤の導電率(σimp)が前記目標とする導電率(σc)以上である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する第3手順とからなることを特徴とする薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法。
【請求項4】
地盤改良前後において、小型動的コーン貫入試験により深度とNd値との関係を示したNd値の深度分布図を得て、地盤改良前後における前記Nd値の増分量から地盤改良効果を評価する1次的効果確認を行い、
前記1次的効果確認によって地盤改良効果が明確でない場合に、2次的効果確認として、前記小型動的コーン貫入試験の貫入孔を用いて電気比抵抗(Rimp)を計測し、請求項1~3いずれかに記載の方法によって地盤改良効果を評価することを特徴とする薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化対策を主目的とした薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、埋立て地等の軟弱地盤の地盤強化のために、水ガラス(珪酸ナトリウム)などからなる薬液を地盤に注入する薬液注入工法によって地盤改良工事が行われている。前記薬液注入工法による地盤改良工事では、施行後に、薬液が対象地盤に満遍なく行き渡っているかを確認する施工確認調査が行われる。
【0003】
薬液注入工法の施工確認調査として最も一般的な方法は、改良土を一軸圧縮強さ(qu)により評価する方法である。しかし、薬液注入による改良土の一軸圧縮強さは、qu=50~100kPa程度と小さく、対象地盤によっては強度のバラツキが生じ適正に評価されない場合があった。すなわち、前記一軸圧縮強さquによる評価において、quが50~100kPa程度の小さな地盤の場合、事後調査における試料採取時や供試体作成時に、強度低下に繋がる乱れが生じやすい。また、対象地盤によっては供試体内に貝殻、木片、シルト、有機質土等が混入することにより、強度のバラツキが生じて適正に評価できない場合があった。
【0004】
このような一軸圧縮強さ試験以外の方法により改良地盤の品質を直接的に評価する方法として、国土交通省の埋立地等における薬液注入工法による地盤改良工事に関する検討委員会等において、ピエゾドライブコーン(PDC)などのように間隙水圧が測定できる動的コーン貫入試験が提唱されている。前記ピエゾドライブコーンは、圧力センサを内蔵したコーンをハンマーの打撃で地盤に貫入し、1打撃毎の貫入量と貫入時の間隙水圧の応答値を計測するものである。貫入量からは、標準貫入試験のN値に相当する地盤の動的な貫入抵抗値(Nd値)が1打撃毎に算出される。また、打撃貫入で生ずる地盤内の間隙水圧から、細粒分含有率Fcが推定されるとともに、この間隙水圧を用いて得られる累積過剰間隙水圧比が薬液の地盤への浸透を評価する指標となり得ることなどが上記の検討委員会等で提案されている。
【0005】
また、薬液注入工法の施工確認調査の他の方法として、電気検層が挙げられる。電気検層は、薬液注入工法では地盤の間隙水が薬液に置き換えられ地盤の圧縮率が変化するとともに、薬液が固化することで地盤の強度が増加することから、改良後の地盤は電気伝導度の特性が変化することを利用したものである。この電気検層では、施工前後における電気比抵抗値の低下によって、改良効果の定性的判断が可能になる。前記電気検層の測定手順は、ボーリング孔内に、上下方向に所定の間隔で複数の電極が備えられた測定プローブを挿入した後、電流電極に通電し、電極間の電位差から比抵抗を求める。
【0006】
このような電気検層による地盤改良工事の品質確認方法として、下記特許文献1においては、外面に環状の電極が取り付けられた電極取付体を改良体内に挿入し、電極取付体の周囲に造成された改良体に通電し、かかる状態で計測された電流電極間の電流及び電位電極間の電位差を用いて比抵抗を求める方法が開示されている。また、非特許文献1においては、薬液注入前後の電気比抵抗の変化から、薬液充填率を求める方法が開示されている。
【0007】
本出願人等においても、下記特許文献2において、バラツキが少なく、改良地盤の品質が直接的に確認できる地盤改良効果の確認方法として、薬液注入工法による地盤改良効果の確認方法であって、地盤改良後において、小型動的コーン貫入試験により深度とNd値との関係を示したNd値の深度分布図を得て、地盤改良前後における前記Nd値の増分量から地盤改良効果を確認する1次的効果確認を行い、前記1次的効果確認によって地盤改良効果が認められない場合に、前記小型動的コーン貫入試験の貫入孔に電極を備えた測定プローブを挿入して比抵抗を測定する電気検層を行い、深度と比抵抗との関係を示した比抵抗の深度分布図を得て、地盤改良前後における前記比抵抗の減分量から地盤改良効果を確認する2次的効果確認を行うようにする地盤改良効果の確認方法を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-46510号公報
【特許文献2】特開2021-4473号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】小峯秀雄、「電気比抵抗による薬液注入改良部の充填率の評価方法」、土木学会論文集、No.463/III-22、p.153-162、1993年3月
【非特許文献2】菅野高弘等、「液状化対策として薬液を注入した地盤の原位置調査による強度評価法」、港湾空港技術研究所資料、No.1366,pp.2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記特許文献1に係る方法は、計測した比抵抗から改良体の出来高、すなわち断面積、大きさ、直径等を算出するものであり、前記非特許文献1に係る方法は、電気比抵抗から薬液充填率を算出するものであり、前記特許文献2に係る方法は、Nd値の増分量だけでは地盤改良効果が判断できない場合でも、比抵抗の減量分から地盤改良固結体の存在を確認できるようにしたものである。
【0011】
前述したように、薬液注入工法による地盤改良効果の1次的評価方法は、一軸圧縮強さquにより評価する方法であるにも拘わらず、前述の従来技術はいずれも固結体の強度を直接的な評価対象とするものではない。また、前記特許文献2では、地盤改良前後における電気比抵抗の計測を行って改良効果を評価しているが、改良前の比抵抗の計測値は、場所毎の誤差が大きくなることがあり、改良前後の電気比抵抗の差では正確に改良効果を判断することができないこともあった。
【0012】
そこで、本発明の主たる課題は、改良後の電気比抵抗の計測によって、改良体の一軸圧縮強さを評価可能とした電気検層を用いた薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法であって、
事前に、シリカ濃度(SiO2)と一軸圧縮強さ(qu)との第1相関図を得るとともに、シリカ濃度(SiO2)と電気比抵抗(R)との第2相関図を得る1手順と、
前記第1相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)から目標とするシリカ濃度(SiO2)を求め、次いで前記第2相関図に基づいて、前記目標とするシリカ濃度(SiO2)から目標とする電気比抵抗(Rk)を設定する第2手順と、
地盤改良後に、地盤に縦方向に形成した貫入孔を用いて電気検層による電気比抵抗(Rimp)を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)が前記目標とする電気比抵抗(Rk)以下である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する第3手順とからなることを特徴とする薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法が提供される。
【0014】
上記請求項1記載の発明では、薬液注入工法による地盤改良効果(一軸圧縮強さ)を評価するに当たって、原位置土を用いた室内実験によって、事前に、シリカ濃度(SiO2)と一軸圧縮強さ(qu)との第1相関図を得るとともに、シリカ濃度(SiO2)と電気比抵抗(R)との第2相関図を得るようにする(第1手順)。
【0015】
次に、前記第1相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)から目標とするシリカ濃度(SiO2)を求め、次いで前記第2相関図に基づいて、前記目標とするシリカ濃度(SiO2)から目標とする電気比抵抗(Rk)を設定する(第2手順)。すなわち、シリカ濃度(SiO2)を介して、目標とする一軸圧縮強さ(quck)を得るための電気比抵抗(Rk)を設定するようにする。測定した電気比抵抗(Rimp)が電気比抵抗(Rk)よりも小さい場合は、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されていることになる。
【0016】
あとは、地盤改良を行った後に、地盤に縦方向に形成した貫入孔を用いて電気検層による電気比抵抗(Rimp)を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)が前記目標とする電気比抵抗(Rk)以下である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する(第3手順)。
【0017】
本発明では、地盤改良後の電気比抵抗の計測値のみをもって所定の一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかどうかを判断できる。すなわち、従来は改良前後の電気比抵抗の比較により薬液が充填されているかどうかの定性的な評価であったが、本発明によれば、改良後の電気比抵抗から改良後の一軸圧縮強さを把握することが可能になり、改良効果を定量的に評価することが可能になる。また、誤差の原因となる地盤改良前の電気比抵抗を用いることなく、地盤改良効果の確認を行うため、その分、作業(計測)の省力化が図れるとともに、効果確認の精度向上を図ることが可能になる。
【0018】
請求項2に係る本発明として、薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法であって、
事前に、シリカ濃度(SiO2)と液状化強度比(RL)又は粘着力(c)との第1相関図を得るとともに、シリカ濃度(SiO2)と電気比抵抗(R)との第2相関図を得る1手順と、
前記第1相関図に基づいて、目標とする液状化強度比(RL)又は粘着力(c)から目標とするシリカ濃度(SiO2)を求め、次いで前記第2相関図に基づいて、前記目標とするシリカ濃度(SiO2)から目標とする電気比抵抗(Rk)を設定する第2手順と、
地盤改良後に、地盤に縦方向に形成した貫入孔を用いて電気検層による電気比抵抗(Rimp)を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)が前記目標とする電気比抵抗(Rk)以下である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する第3手順とからなることを特徴とする薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法が提供される。
【0019】
上記請求項2記載の発明では、一軸圧縮強さ(qu)と液状化強度比(RL)とは一定の換算式によって変換が可能であること、一軸圧縮強さ(qu)と粘着力(c)とは一定の換算式によって変換が可能であることに鑑み、前記第1相関図の一軸圧縮強さの軸を液状化強度比(RL)又は粘着力(c)に代えた相関図とし、これに基づいて、地盤改良効果を評価するものである。
【0020】
請求項3に係る本発明として、薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法であって、
事前に、シリカ濃度(SiO2)と一軸圧縮強さ(qu)との第1相関図を得るとともに、シリカ濃度(SiO2)と導電率(σ)との第2相関図を得る1手順と、
前記第1相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)から目標とするシリカ濃度(SiO2)を求め、次いで前記第2相関図に基づいて、前記目標とするシリカ濃度(SiO2)から目標とする導電率(σc)を設定する第2手順と、
地盤改良後に、地盤に縦方向に形成した貫入孔を用いて電気検層による電気比抵抗(Rimp)を計測し、これから地盤改良後の導電率(σimp)を算出し、改良地盤の導電率(σimp)が前記目標とする導電率(σc)以上である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する第3手順とからなることを特徴とする薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法が提供される。
【0021】
上記請求項3記載の発明では、電気比抵抗(R)と導電率(σ)とは換算式(R=1/σ)によって変換が可能であることに鑑み、前記第2相関図の電気比抵抗(R)の軸を導電率(σ)に代えた相関図とし、これに基づいて、地盤改良効果を評価するものである。
【0022】
請求項4に係る本発明として、地盤改良前後において、小型動的コーン貫入試験により深度とNd値との関係を示したNd値の深度分布図を得て、地盤改良前後における前記Nd値の増分量から地盤改良効果を評価する1次的効果確認を行い、
前記1次的効果確認によって地盤改良効果が明確でない場合に、2次的効果確認として、前記小型動的コーン貫入試験の貫入孔を用いて電気比抵抗(Rimp)を計測し、請求項1~3いずれかに記載の方法によって地盤改良効果を評価することを特徴とする薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法が提供される。
【0023】
上記請求項4記載の発明では、小型動的コーン貫入試験による1次的効果確認と、電気比抵抗による2次的効果確認とによる段階的評価としたものである。すべてのケースにおいて、電気比抵抗による効果確認を行うのではなく、前記一次的効果確認を行った上で、それでは地盤改良効果が明確に確認できないケースに限って前記2次的効果確認を行うことで、全体の作業工程を省力化することが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり本発明によれば、改良後の電気比抵抗の計測によって、改良体の一軸圧縮強さを評価可能とした電気検層を用いた薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る地盤改良効果の評価方法のフロー図である。
【
図2】電気検層に用いる測定機器の概略を示す縦断面図である。
【
図3】外装スリーブ8が取り付けられた測定プローブ2の正面図である。
【
図4】外装スリーブ本体12を示す、(A)は正面図、(B)はB-B断面図、(C)は裏面図、(D)はD-D断面図である。
【
図5】外装スリーブ先端13を示す、(A)は正面図、(B)は上面図である。
【
図7】実施例における改良体の平面図、断面図及び調査位置図である。
【
図10】地下水の塩分濃度・電気比抵抗を示す図である。
【
図11】電気比抵抗と間隙水の塩分濃度の関係を示す図である。
【
図14】一軸圧縮強さ(qu)と薬液シリカ濃度(SiO
2)との関係を示す相関図である。
【
図15】電気比抵抗(R)と薬液シリカ濃度(SiO
2)との関係を示す相関図である。
【
図16】改良体No.3のNd値の深度分布図である。
【
図17】改良体No.3の電気比抵抗Rの深度分布図である。
【
図18】改良体No.4のNd値の深度分布図である。
【
図19】改良体No.4の電気比抵抗Rの深度分布図である。
【
図20】一軸圧縮強さ(qu)と液状化強度比(RL)との間の相関式を示す図である。
【
図21】一軸圧縮強さ(qu)と粘着力(c)との間の相関式を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0027】
本発明は、埋立地等の軟弱地盤の地盤強化のために、水ガラス(珪酸ナトリウム)などからなる薬液を地盤に注入する薬液注入工法による地盤改良効果の評価方法であり、具体的には以下の手順によるものである。
【0028】
図1に示されるように、地盤改良前後において、小型動的コーン貫入試験により深度とNd値との関係を示したNd値の深度分布図を得て、地盤改良前後における前記Nd値の増分量から地盤改良効果を評価する1次的効果確認を行い、
前記1次的効果確認によって地盤改良効果が明確でない場合に、2次的効果確認として、前記小型動的コーン貫入試験の貫入孔を用いた電気検層を行って目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断するものである。
【0029】
前記2次的効果確認は、事前に、シリカ濃度(SiO2)と一軸圧縮強さ(qu)との第1相関図を得るとともに、シリカ濃度(SiO2)と電気比抵抗(R)との第2相関図を得る1手順と、
前記第1相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)から目標とするシリカ濃度(SiO2)を求め、次いで前記第2相関図に基づいて、前記目標とするシリカ濃度(SiO2)から目標とする電気比抵抗(Rk)を設定する第2手順と、
地盤改良後に、地盤に縦方向に形成した貫入孔を用いて電気検層による電気比抵抗(Rimp)を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)が前記目標とする電気比抵抗(Rk)以下である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する第3手順とからなるものである。
【0030】
以下に、具体的に詳述する。
【0031】
<1次的効果確認>
前記小型動的コーン貫入試験は、いわゆるPENNYと呼ばれるイタリアのTecnotest社製の小型動的コーン貫入試験機を用いて行う貫入試験である。試験方法は、質量294N(30kgf)のハンマーを油圧モータを利用して自動で高さ20cmの位置から自由落下させて、断面積10cm2、先端角60°の先端コーンを10cm貫入するのに必要な打撃回数(Nd値)を連続的に測定する。1mごとにロッドの回転トルクを測定し、ロッドに作用する摩擦力の影響を補正することで、標準貫入試験のN値と等価なNd値に換算できるようになっている。標準貫入試験と対比した場合の小型動的コーン貫入試験の利点としては、以下の点が挙げられる。
(1)標準貫入試験では測定点が1mピッチであるため、薬液注入の層厚が1~2m程度だと計測点を確保できないのに対して、小型動的コーン貫入試験は10cm毎に計測できる。
(2)改良土の一軸圧縮強さquは50~100kPa程度であるため、標準貫入試験だと打撃エネルギーが大きすぎて精度が出ないのに対して、小型動的コーン貫入試験は打撃エネルギーが小さく(対象の強度レンジに対して丁度良く)、測定精度が確保できる。標準貫入試験の場合ハンマー質量63.5kg、落下高さ76cmの自由落下エネルギーは473Jであるのに対し、小型動的コーン貫入試験ではハンマー質量30kg、落下高さ20cmの自由落下エネルギーが58.8Jと、およそ12%の打撃エネルギーとなっている。
(3)落下作業が全自動のため、打撃エネルギーにバラツキが少ない。
(4)試験機が軽く、ハンドリング性が良い。
【0032】
このように、小型動的コーン貫入試験を用いてNd値を測定することにより、標準貫入試験に比べて、狭小な設置スペースで、可搬性に優れ、全自動のため打撃エネルギーのバラツキが少なく、そのためバラツキの生じやすい不均一な埋立て地盤等でも地盤改良効果が確実に確認できる。
【0033】
前記小型動的コーン貫入試験によって、深度とNd値との関係を示したNd値の深度分布図が得られる(
図16及び
図18参照。)。
【0034】
上記小型動的コーン貫入試験によって得られたNd値の深度分布図を用いて、地盤改良効果を確認する1次的効果確認を行う。この1次的効果確認における地盤改良効果の確認方法は、
図16及び
図18に示されるように、Nd値-深度のグラフに地盤改良前Nd値を書き込むとともに、地盤改良後Nd値を重ねて書き込んで、地盤改良前後におけるNd値の増分量を確認することにより行う。
1次的効果確認の判断は、
図1に示されるように、Nd値の増分が確認されて改良後のNd値から液状化しないと判断できる場合や、改良地盤の物理特性より粘土層或いは粘土が多い等の理由により液状化しないと判断できる土層である場合などが挙げられる。
【0035】
Nd値の増分量は、地盤改良前のNd値が目標改良強度に近い地盤などでは、あまり大きくなく、このNd値による地盤の改良効果が認められない場合がある。その場合には、次述の電気検層による2次的効果確認が行われる。
【0036】
<2次的効果確認>
2次的効果確認では、先ず、前記小型動的コーン貫入試験の後、その貫入孔Hを利用して電気検層を行う。前記電気検層は、
図2に示される圧入装置1によって、前記小型動的コーン貫入試験の貫入孔Hに、
図2及び
図3に示されるように、1つの電流電極3及び2つの電位電極4、4を備えた測定プローブ2を挿入し、孔壁にこれらの電極3、4を接触させながら、電流電極3に電流を流したときの電位を電位電極4によって検出し、孔壁近傍の地盤の電気比抵抗Rを深度方向に連続的に測定する物理探査手法である。
【0037】
前記圧入装置1は、
図2に示されるように、貫入孔Hの直上の地表面に、貫入孔Hの両側にそれぞれ上下方向に沿って伸縮自在とされたピストン20、20が配置され、これらピストン20、20の上端同士に跨設された架台21の中央部に、下端に測定プローブ2が連結された貫入ロッド5を挟持するチャック22が備えられるとともに、前記ピストン20、20の動作を制御するコントロールユニット23が備えられたものである。また、前記コントロールユニット23には、エンジン及び油圧ポンプからなる油圧ユニット24が接続されている。
【0038】
前記圧入装置1では、両側のピストン20、20が同調して伸縮し、前記架台21が上下方向に移動することにより、前記チャック22によって挟持された貫入ロッド5が上下方向に移動し、測定プローブ2の貫入孔Hへの押し込み及び引き抜きが行われるようになっている。
【0039】
電気検層に用いる測定装置は、
図3に示されるように、前記電極3、4…が備えられた測定プローブ2と、この測定プローブ2の上端から延び、前記測定プローブ2の内部において先端が前記電極3、4…に接続された電気ケーブル7と、前記測定プローブ2が着脱可能に挿嵌される中空状の外装スリーブ8とを含んでいる。前記電気ケーブル7は、中空円筒状に形成された貫入ロッド5の中空部を通って地上まで延出され、地上において、先端が測定装置に接続されるようになっている。
【0040】
前記測定プローブ2は、断面略円形の棒状の外観を成し、上端部には、貫入ロッド5を連結するための雄ねじ部6が形成され、貫入ロッド5の下端部に設けられた雌ねじ部が螺合できるようになっている。また、前記雄ねじ部6の下端に連続して、中間部を介して、複数の電極が軸方向(上下方向)に所定の間隔を空けて配列された本体部10が設けられるとともに、この本体部10の下端に連続して、前記本体部10より小径の先端部11が設けられている。
【0041】
前記電気検層の電極配置は、4極法や3極法でもよいが、2極法とするのが好ましい。2極法の電極配置は、
図2及び
図3に示されるように、上下方向に所定の間隔を空けて1つの電流電極3及び2つの電位電極4、4を配置し、地表付近に設置した電流遠電極(図示せず)に電流のリターンをとり、同じく地表付近に設置した電位遠電極(図示せず)を基準として、電流電極3から一定電流を流しながら電位電極4、4で電位を測定するものである。4極法や3極法の電極配置に比べて、地盤の改良効果がより明確に把握できるようになる。
【0042】
図3に示されるように、測定プローブ2の本体部10に設けられた3つの電極のうち、最上部に配置された電極が電流電極3であり、その下側に配置された2つの電極がそれぞれ電位電極4である。前記電流電極3と上側の電位電極4との電極間隔aは2.5cm、電流電極3と下側の電位電極4との電極間隔bは5cmとするのが好ましい。このように、電流電極3との電極間隔が異なる2つの電位電極4、4を配置することにより、電極間隔が異なる2つの電位差を同時に測定することができるため、測定精度が向上するとともに、測定時間が短縮化できる。
【0043】
前記電極3、4…は導電性の金属材からなり、測定プローブ2の内部から外面まで貫通して設けられ、測定プローブ2の内部でそれぞれ電気ケーブル7の先端が接続している。
【0044】
次いで、前記測定プローブ2を貫入孔Hに貫入する際、前記測定プローブ2の先端側に取り付けられる外装スリーブ8について説明する。前記外装スリーブ8は、製作を容易化するため、
図4に示されるように、測定プローブ2の本体部10に外嵌される外装スリーブ本体12と、測定プローブ2の先端部11に外嵌される外装スリーブ先端13とに分割して構成するのが好ましい。
【0045】
前記外装スリーブ本体12は、
図4に示されるように、軸方向の両端に開放した略円筒状に形成され、
図3に示されるように、測定プローブ2に挿嵌した状態で、外径が測定プローブ2の外径より大きくなるように形成されている。外装スリーブ8の外径を測定プローブ2の外径より大きくすることにより、貫入孔Hに貫入した際、外装スリーブ8が孔壁に接触しやすくなり、測定精度が向上するとともに、測定プローブ2の損傷が抑制できる。前記外装スリーブ8の外径は、小型動的コーン貫入試験に使用される先端コーンの外径とほぼ同等とするのが好ましい。
【0046】
前記外装スリーブ先端13は、
図5に示されるように、上側部分が上方に開放した有底円筒形に形成され、下側部分の外形が下方に向けて尖った円錐形(コーン形)に形成されている。上側の有底円筒形部分の外径は、前記外装スリーブ本体12の外径とほぼ同等に形成されている。コーン先端角は45°~90°程度が好ましく、60°がより好ましい。
【0047】
前記外装スリーブ8は、
図4及び
図5に示されるように、前記測定プローブ2が貫入孔1への挿入先端側から電極3、4…の取付位置を含む範囲に亘って挿嵌される中空部14と、前記測定プローブ2の電極3、4…に対応する位置に、前記中空部14内から外面まで連続して貫通するとともに、前記測定プローブ2を前記中空部14に挿嵌した状態で内側の先端がそれぞれ前記電極3、4…に接触する外側電極15、16、16とが備えられている。測定プローブ2に備えられた電極3、4…と、外装スリーブ8に備えられた外側電極15、16…とは対応しており、最も上側に配置された外側電極15が電流電極であり、その下側に配置された2つの外側電極16、16が電位電極である。
【0048】
前記外装スリーブ8が取り付けられた測定プローブ2を前記圧入装置1によって貫入孔Hに貫入して電気検層を行った後、貫入孔Hから測定プローブ2を引き抜くことが困難になった場合に、引抜き抵抗により前記測定プローブ2が外装スリーブ8から抜けて、測定プローブ2が回収できるようになっている。このように、測定プローブ2を引き抜く際の引抜き抵抗により、外装スリーブ8が抜けて地中に残置されるとともに、外装スリーブ8から抜けた測定プローブ2が確実に回収できるため、電気検層における高価な測定プローブ2の回収不能リスクが無くなる。前述の通り、前記測定プローブ2は、前記外装スリーブ8より外径が小さく形成されているため、外装スリーブ8を取り付けた状態で圧入された貫入孔Hから比較的スムーズに引き抜くことができるようになる。
【0049】
前記外装スリーブ8は、貫入孔Hに挿入した際、外側電極15、16…を孔壁に接触させるため、外側電極15、16…の反対側の外面に、外方に突出した接触促進用凸部17が設けられるようにするのが好ましい。前記接触促進用凸部17は、外装スリーブ8の軸方向に対して外側電極15、16…の配置区間の全長を含む範囲に形成された縦長の凸部である。高さは1~8mmが好ましく、3~5mmがより好ましい。前記接触促進用凸部17を設けることによって、外装スリーブ8に備えられた外側電極15、16…が貫入孔1の孔壁により確実に接触でき、電気検層の測定精度が更に向上できる。
【0050】
図4に示されるように、測定プローブ2の周面に周方向固定用凸部18が設けられ、この周方向固定用凸部18が外装スリーブ8に設けられた嵌合部19に嵌合することにより、外装スリーブ8と測定プローブ2との周方向への回転が固定されるようにするのが好ましい。前記周方向固定用凸部18は、測定プローブ2の本体部10の上端部に形成され、前記嵌合部19は、外装スリーブ8の外装スリーブ本体12の上端部に形成されている。前記周方向固定用凸部18を嵌合部19に嵌合することにより、測定プローブ2と、外装スリーブ8のうち外装スリーブ本体12との周方向の回転が防止され、測定プローブ2を貫入孔1に貫入する際などにおいて、測定プローブ2の電極3、4…と外装スリーブ8の外側電極15、16…との位置ずれが生じなくなる。
【0051】
前記電気検層の手順は、前記小型動的コーン貫入試験を行った後、その貫入孔Hの直上の地表面に、
図2に示される圧入装置1を設置し、前記外装スリーブ8が取り付けられた測定プローブ2を貫入孔Hに挿入し、測定プローブ2を徐々に圧入しながら深度方向に連続的に電気比抵抗Rの測定を行う。電気比抵抗Rの測定間隔は任意であるが、10cm以下、好ましくは5cm以下、より好ましくは1cmとするのがよい。所定の深度まで測定が終了したら、測定プローブ2を貫入孔Hから引き抜いて回収する。
【0052】
前記電気検層に先立って、本発明では、事前に、シリカ濃度(SiO
2)と一軸圧縮強さ(qu)との第1相関図を得るとともに、シリカ濃度(SiO
2)と電気比抵抗(R)との第2相関図を得るようにする(第1手順)。具体的には、現地土砂を用いた改良砂の配合試験、すなわち薬液シリカ濃度を変えながら一軸圧縮強さ試験を行って、
図6(A)に示されるシリカ濃度(SiO
2)と一軸圧縮強さ(qu)との第1相関図を得るとともに、薬液シリカ濃度を変えながら電気比抵抗試験を行って、
図6(B)に示されるシリカ濃度(SiO
2)と電気比抵抗(R)との第2相関図を得るようにする。
【0053】
なお、これら第1相関図と第2相関図とは、横軸のシリカ濃度(SiO
2)のスケールを合わせると、
図6(C)に示されるように、両相関図を合体させることができる。この合体図によれば、一軸圧縮強さ(qu)と、電気比抵抗(R)と、シリカ濃度(SiO
2)との関係が一目で理解できるように図化することができる。
【0054】
そして、前記第1相関図に基づいて、目標とする一軸圧縮強さ(quck)から目標とするシリカ濃度(SiO2)を求める。次いで、前記第2相関図に基づいて、前記目標とするシリカ濃度(SiO2)から目標とする電気比抵抗(Rk)を設定する(第2手順)。
【0055】
すなわち、前記第1相関図と第2相関図とから、目標とする一軸圧縮強さ(quck)を満足させるための電気比抵抗(Rk)の数値が設定される。仮に、測定した電気比抵抗(Rimp)が電気比抵抗(Rk)よりも小さい場合は、目標とする一軸圧縮強さ(quck)よりも大きい一軸圧縮強さ(q)が確保されていることになり、測定した電気比抵抗(R)が電気比抵抗(Rimp)よりも大きい場合は、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されていないことになる。
【0056】
従って、地盤改良後に、地盤に縦方向に形成した貫入孔Hを用いて電気検層による電気比抵抗(Rimp)を計測し、改良地盤の電気比抵抗(Rimp)が前記目標とする電気比抵抗(Rk)以下である条件を満たすかどうかで、目標とする一軸圧縮強さ(quck)が確保されているかを判断する(第3手順)。
【0057】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、小型動的コーン貫入試験による1次的効果確認を行い、この次的効果確認によって地盤改良効果が明確でない場合に、前記2次的効果確認を行う2段階の効果確認方法を説明したが、前記1次的効果確認を省略して、2次的効果確認のみで地盤改良効果を確認するようにしてもよい。
【0058】
(2)上記形態例では、第1相関図としてシリカ濃度(SiO
2)と一軸圧縮強さ(qu)との相関図を用いたが、一軸圧縮強さ(qu)と液状化強度比(RL)とは一定の換算式によって変換が可能である。また、一軸圧縮強さ(qu)と粘着力(c)とも一定の換算式によって変換が可能である。具体的に、一軸圧縮強さ(qu)と液状化強度比(RL)との相関式を
図20に示し(出典:浸透固化処理方法 技術マニュアル改訂版 R2年7月 一般財団法人沿岸技術研究センター)、一軸圧縮強さ(qu)と粘着力(c)との相関式を
図21に示す(出典:浸透固化処理方法 技術マニュアル改訂版 R2年7月 一般財団法人沿岸技術研究センター)。従って、第1相関図として、シリカ濃度(SiO
2)と液状化強度比(RL)又は粘着力(c)との相関図を用いて、前記2次的効果確認を行うようにしてもよい。
【0059】
(3)上記形態例では、第2相関図として、シリカ濃度(SiO2)と電気比抵抗(R)との相関図を用いたが、電気比抵抗と導電率とは換算式によって変換が可能である。具体的に、電気比抵抗(R)と導電率(σ)とは、R(Ω・m)=1/σ(S/m)の関係にある。従って、第2相関図として、シリカ濃度(SiO2)と導電率(σ)との相関図を用いて、前記2次的効果確認を行うようにしてもよい。
【実施例0060】
以下に、地盤改良効果の評価方法に関して、現場で行った具体的な実施例を用いて説明する。
【0061】
現地実験は、某埋立地にて行った。実験は、岸壁から約25m背後位置に直径2.5mの薬液改良体を4体(改良土量:8m
3×4体 = 32m
3)を造成し、本手法により改良体の改良効果確認を行った。
図7に改良体の平面・断面図および調査位置を示す。改良体の仕様は、特殊シリカ液濃度9wt%、注入率40.5%、設計基準強度qu=100kPa(平均値)である。
【0062】
1. 実験サイトの概要
図8にBor.事前-1~3の土質柱状図とN値を示し、
図9にBor.事前-1の深度毎の粒径加積曲線を示す。地層は地表面から礫混り砂、砂質シルト、礫混り砂、シルト質細砂が堆積する。薬液改良対象層の礫混じり砂は、平均粒径D
50=0.89mm、細粒分含有率Fc=3.8%、均等係数Uc=5.14の粗砂で、GL-3m以深には粘土およびシルト層を層状に含む。
【0063】
図10に地下水の塩分濃度および電気比抵抗の深度分布を示す。地下水の塩分濃度は、
図11に示されるように、実験ヤード近くで採取した海水の塩分濃度24,500ppmに対して、700~7,400ppmの範囲にある。
【0064】
2. 実験方法
実験は、
図7に示す測定位置にて未改良、薬液注入直後(材令0日)および注入後14日(材令14日)に小型動的コーン貫入試験と電気検層を実施した。また、試験終了後、改良体をGL-2.0mまで発掘し、出来形形状を確認するとともに、改良体をブロックサンプリングし、一軸圧縮試験、繰返し三軸試験、三軸CUB試験等を実施し、改良強度を確認した。
【0065】
本手法による改良効果確認は、
図1に示すフローに従って行った。具体的には、室内試験(配合試験(一軸圧縮強さ試験)、電気比抵抗試験)により、
図6に示されるように、事前に、シリカ濃度(SiO
2)と一軸圧縮強さ(qu)との第1相関図を得るとともに、シリカ濃度(SiO
2)と電気比抵抗(R)との第2相関図を得るようにする。
【0066】
そして、改良体の一軸圧縮強さ(qu)~薬液シリカ濃度(SiO2)の関係(第1相関図)から設計基準強度(quck)に相当する薬液シリカ濃度(SiO2)を求めた後、電気比抵抗~薬液シリカ濃度(SiO2)の関係(第2相関図)より設計基準強度(quck)に相当する薬液シリカ濃度(SiO2)に相当する電気比抵抗値(Rk)を求める。
すなわち、電気比抵抗(Rk)は、設計基準強度(quck)を満足する電気比抵抗値に相当する。したがって、現地で測定される改良体の電気比抵抗(Rimp)が電気比抵抗(Rk)以下であることが設計基準強度(quck)を満足する改良体であると判断する。本実験では、Bor.事前-3より採取した礫混り砂を用いて、薬液シリカ濃度3,5,7,9wt%の改良砂を現地盤の密度条件にて作製し、配合試験および電気比抵抗試験を実施した。
【0067】
3. 実験結果
(1) 発掘改良体
図12に未改良砂の粒径加積曲線を示す。GL-2m深度での改良体は箇所によって砂の粒径が異なり、改良体No.1,3は礫混り砂(D
50=0.62~0.82mm, Fc=3.8~4.2%)を主体とした改良体、改良体No.2,4はシルト質砂(D
50=0.12mm, Fc=38.4%)を主体とした改良体であった。
【0068】
(2) 採取試料の一軸圧縮試験、繰返し三軸試験結果
改良体の一軸圧縮強さ(qu)は、礫混り砂を主体とした改良体(No.1,3)にて、qu = 50~128kPa [平均値:qu=101kPa]、シルト質砂を主体とした改良体(No.4)にて、qu = 82~85 [平均値:qu=83kPa]であった。また、
図13のNo.3試料の繰返し三軸試験結果に示すように、改良体No.3の液状化強度比R
L20(imp)は、R
L20(imp)=1.07で、未改良砂(礫混り砂)の約6倍であった。
【0069】
(3) 配合試験・電気比抵抗試験結果
図14に配合試験より得られた改良砂の一軸圧縮強さ(qu)と薬液シリカ濃度(SiO
2)の関係を示し、
図15に電気比抵抗試験より得られた改良砂の電気比抵抗(R)と薬液シリカ濃度(SiO
2)の関係を示す。
【0070】
図14に示す配合試験結果は、成形時の試料の乱れを考慮し、破壊ひずみε
f<2%の試験結果を用いて、一軸圧縮強さ(qu)と薬液シリカ濃度(SiO
2)の相関関係を求めた。
図14より、設計基準強度(quck)=100kPaに相当する薬液シリカ濃度は、SiO
2 =5wt%程度となる。また、
図15より、SiO
2 =5wt%に相当する改良体の電気比抵抗値(Rk)は、Rk =5Ω・mとなった。これらの結果より、現地で測定される改良体の電気比抵抗値(平均値)が、Rk (=5Ω・m)以下であれば、改良体の設計基準強度(quck)を満足しているものと判断する。
【0071】
(4) 小型動的コーン貫入試験・電気検層結果
調査は、
図7の調査位置に示すように改良体No.3およびNo.4の改良体中心より、中心近傍位置、中心+60cm位置(改良体半径の1/2)および中心+100cm位置にて行った。改良体の材令は、0日と14日である。
図16及び
図17に改良体No.3のNd値の深度分布、電気比抵抗(R)の深度分布を示し、
図18及び
図19に改良体No.4のNd値の深度分布、電気比抵抗(R)の深度分布を示す。
【0072】
(a)改良体No.3
計画改良深度(GL-1.75m~-3.75m 層厚2m)におけるNd値は、改良体の強度発現が安定する材令14日においてもバラツキが大きい。同材令にて、50cm毎のNd値増分は、概ね1~12の範囲にあるが、GL-3.5m以深では、1程度であった。これは、事前Bor-3等で確認されたGL-3.25m以深に分布する粘性土層の影響が考えられる。
【0073】
電気比抵抗(Rimp)は、Nd値と比較してバラツキは小さい。前述したように本手法では、25mmと50mmの二種類の電極間隔にて抵抗値を測定し、両電気比抵抗値(Rimp)に大きな差異が無いことで孔壁周辺の乱れがないこと、電極が孔壁へ圧着していることを確認している。材令0日および材令14日の測点No.4では, 二種類の電極間隔から得られる電気比抵抗(Rimp)の差異が大きく、電極の孔壁への圧着不良または測定孔壁周辺の乱れが考えられるため、本改良効果の評価から除外することとする。
【0074】
材令14日測定No.3(改良体中心+100cm)とNo.5(改良体中心近傍)の結果より、GL-1.75m~-3.75mの計画改良深度では、未改良と比較して電気比抵抗(Rimp)が大きく低下していることがわかる。また、GL-1.75m~-3.5mの電気比抵抗(Rimp)は、Rimp=3.1~6.8Ω・mの範囲にあり、平均値は5Ω・mであった。
【0075】
一方、GL-3.5m以深の電気比抵抗値(Rimp)は、粘土層の影響を受け、10Ω・m程度であった。前述した設計規準強度を満足する電気比抵抗値(Rk)より、一軸圧縮強さ(qu)を推定すると、GL-1.75m~-3.5m範囲では一軸圧縮強さ(qu)≧100kPaとなり、目標改良強度を満足すると評価できる。これらの結果は、改良体より採取したブロックサンプリング試料の一軸圧縮強さ(qu)と比較しても概ね妥当である。
【0076】
(b)改良体No.4
計画改良深度(GL-1.75m~-3.75m 層厚2m)におけるNd値は、改良体No.3と同様に、材令14日にてバラツキが大きい。また、同材令にて50cm毎のNd値増分は、概ね1~15の範囲にあるが、GL-3.25m以深では、1~2程度であった。これは、粘性土層、シルト質砂層の影響が考えられる。
【0077】
電気比抵抗(Rimp)は、材令0測点No.5,6,7および材令14日測点No.7では、改良天端からGL-2.5m~3.0m程度までは、電気比抵抗(Rimp)=5Ω・m程度(平均値)であった。また、電気比抵抗値(Rimp)は材令による差異はほとんどない。
一方、材令0測点No.5,6,7では、GL-3m以深にて改良前後の変化は見られない。また、材令14日測点No.7では、GL-3.25m以深にて改良前後の変化は小さい結果であった。同箇所の改良体は、発掘写真およびブロックサンプリングした試料より、シルト質砂層(Fc=40%程度)を層状に含むことから、これらの影響が考えられる。
【0078】
なお、前記2次的効果確認でも明確に改良効果が確認できない場合は、別孔で再度電気検層を行ったり、繰り返し三軸試験等を行うことなどを別途検討する。
【0079】
4. まとめ
本実験では、沿岸域埋立地の薬液改良体を対象に小型動的コーンと電気検層を組み合わせた本手法を適用し、電気検層の適用範囲の検証と本手法による改良効果の評価を行った。以下に結論を示す。
(1)小型動的コーン貫入試験より得られた改良後のNd値は、バラツキが大きいものの、計画改良深度にてNd値の増分が確認された。また、材令0日と14日の差異はほとんど見られず、バラツキの影響は大きいと考えられる。
【0080】
(2)押込型マイクロ電気検層法(点電極、二極法、電極間隔25,50mmの二種類)より得られた改良地盤の電気比抵抗(Rimp)は、地下水の塩分濃度が700~7,400ppmの範囲にある当該地にて、薬液注入前後の比抵抗変化が明確に見られた。
【0081】
(3)本手法による改良効果の評価は、現地砂を用いた配合試験および電気比抵抗試験より得られる一軸圧縮強さ~薬液シリカ濃度関係(第1相関図)および電気比抵抗~薬液シリカ濃度関係(第2相関図)に基づき、本電気検層より得られる電気比抵抗値(Rimp)から改良効果の評価が可能である。
【0082】
(4)本電気検層法は、間隔の異なる電極を用いることで測定データの検証を行う。本実験の測定データにおいても、一部、異なる電極間隔の測定結果に乖離がある箇所も見られたが、多くの測定値は、本チェック機能によりデータの信頼性は高いと考えられる。
【0083】
以上より、小型動的コーン試験と押込型マイクロ検層を併用した本改良効果確認手法は、電気検層に測定データのチェック機能を備えることで、データの信頼性が高く、薬液注入工法の改良効果確認に有効であることがわかった。
1…圧入装置、2…測定プローブ、3…電流電極、4…電位電極、5…貫入ロッド、6…雄ねじ部、7…電気ケーブル、8…外装スリーブ、9…中間部、10…本体部、11…先端部、12…外装スリーブ本体、13…外装スリーブ先端、14…中空部、15…外側電極(電流電極)、16…外側電極(電位電極)、17…接触促進用凸部、18…周方向固定用凸部、19…嵌合部、20…ピストン、21…架台、22…チャック、23…コントロールユニット、24…油圧ユニット、H…貫入孔