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  • 特開-表面保護フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027621
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/24 20180101AFI20230222BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230222BHJP
【FI】
C09J7/24
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132848
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000106151
【氏名又は名称】株式会社サンエー化研
(74)【代理人】
【識別番号】100148862
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179811
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】山下 祐司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕貴
【テーマコード(参考)】
4J004
【Fターム(参考)】
4J004AA05
4J004AA10
4J004AA14
4J004AA15
4J004AB01
4J004CA04
4J004CB03
4J004CC02
4J004DB02
4J004EA06
(57)【要約】
【課題】裂け性に優れ、貼合後も部分的に除去することが可能な表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】本発明に係る表面保護フィルム1は、基材層2と、粘着剤層3とを有する。基材層2は、ポリプロピレンと、ポリエチレンと、結晶核剤とを含んでなるものである。基材層2中におけるポリプロピレンの配合量をA質量%、ポリエチレンの配合量をB質量%としたとき、1≦A/B≦4の関係を満足することが好ましい。基材層2中における結晶核剤の配合量は、基材層2中におけるポリプロピレンとポリエチレンとの合計の配合量を100質量部としたとき、0.05質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、粘着剤層と、を有し、
前記基材層は、ポリプロピレンと、ポリエチレンと、結晶核剤と、を含む表面保護フィルム。
【請求項2】
前記基材層中における、前記ポリプロピレンの配合量をA質量%とし、前記ポリエチレンの配合量をB質量%としたとき、1≦A/B≦4の関係を満足する請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記基材層中における前記結晶核剤の配合量は、前記基材層中における前記ポリプロピレンと前記ポリエチレンとの合計の配合量を100質量部としたとき、0.05質量部以上2.0質量部以下である請求項1または2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
前記結晶核剤は、ポリプロピレン用の結晶核剤である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表面保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築部材や電気、電子部品、自動車などの加工、保管、輸送時に、被覆体表面の汚れや傷つきを防止するために、表面保護フィルムが用いられている。
このような表面保護フィルムは、フィルム基材(基材層)の片面に粘着剤層を積層した構造を有しており、被覆体表面に粘着剤層の粘着力を利用して貼合される。
【0003】
フィルム基材は、被着体を傷や汚れ等の損傷から保護する役割を担うものであり、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの樹脂材料で構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、建築部材などの被覆体は、施工作業時の汚れや傷を防止するため、建築が終了するまで表面保護フィルムが貼合されたままである場合が多い。このため、表面保護フィルムが貼合された建築部材の組み立てや加工を行う際には、施工場所の表面保護フィルムを一部除去し、作業が行われる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-014593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の表面保護フィルムは、容易に裂くことが困難であるため、カッター等の刃物を用いて一部を除去する必要があり、刃物を使用すると、被覆体に傷がついてしまう場合があった。
【0007】
そこで、本発明では、裂け性に特に優れ、貼合後も部分的に除去することが可能な表面保護フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る表面保護フィルムは、基材層と、粘着剤層と、を有し、
前記基材層は、ポリプロピレンと、ポリエチレンと、結晶核剤と、を含む。
また、本発明に係る表面保護フィルムでは、前記基材層中における、前記ポリプロピレンの配合量をA質量%とし、前記ポリエチレンの配合量をB質量%としたとき、1≦A/B≦4の関係を満足することが好ましい。
また、本発明に係る表面保護フィルムでは、前記基材層中における前記結晶核剤の配合量は、前記基材層中における前記ポリプロピレンと前記ポリエチレンとの合計の配合量を100質量部としたとき、0.05質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。
また、本発明に係る表面保護フィルムでは、前記結晶核剤は、ポリプロピレン用の結晶核剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、裂け性に優れ、貼合後も部分的に除去することが可能な表面保護フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る表面保護フィルムの一実施形態を示す断面図である。
図2】裂け性評価方法及び装置の一実施形態を示す断面図である。
図3図2の裂け性評価装置の一実施形態を示す正面図である。
図4】引張試験で得られる応力-ひずみ曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の表面保護フィルムの好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る表面保護フィルムの一実施形態を示す断面図である。
表面保護フィルム1は、図1に示すように、基材層2と、粘着剤層3とを有している。
基材層2は、被着体を傷や汚れ等の損傷から保護する機能を備えた層である。
【0012】
基材層2は、ポリプロピレンと、ポリエチレンと、結晶核剤とを含んでなるものである。
このように、本発明では、互いに相溶性の低いポリプロピレンとポリエチレンとを用いるとともに、結晶核剤をさらに添加することにより、表面保護フィルム1は、特に優れた裂け性を有するものとなる。
【0013】
ポリプロピレンとしては、例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等が挙げられ、これらの内、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ホモポリプロピレンを用いるのが好ましい。
【0014】
ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)等が挙げられ、これらの内、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)を用いるのが好ましい。
【0015】
基材層2中におけるポリプロピレンの配合量をA質量%、ポリエチレンの配合量をB質量%としたとき、1≦A/B≦4の関係を満足することが好ましく、1.5≦A/B≦2.5の関係を満足することがより好ましい。これにより、表面保護フィルム1はさらに高い裂け性を備えるものとなり、貼合後にさらに容易に表面保護フィルム1の一部を除去することができる。
【0016】
結晶核剤は、樹脂の結晶化を著しく促進し、均一で微細な結晶を生成させる成分であり、透明性や剛性等を向上する成分として用いられている。
ところで、ポリプロピレンとポリエチレンとは相溶性が低いため、このような相溶性の低い成分を配合したフィルムは裂け性が高い傾向があるが、本発明では、さらに結晶核剤を添加することにより、さらに高い裂け性を得ることができる。その結果、表面保護フィルム1の貼合後に容易に表面保護フィルム1の一部を除去することができる。
【0017】
結晶核剤としては、特に、ポリプロピレン用結晶核剤を用いるのが好ましい。ポリプロピレン用結晶核剤を用いることにより、ポリプロピレンの結晶が大きく成長して、ポリプロピレン-ポリエチレン間の相分離がより顕著になり、裂け性をさらに向上させることができる。
【0018】
ポリプロピレン用結晶核剤としては、例えば、タルク、マイカ、カーボンブラック、シリカ、ドロマイト粉、ケイ酸塩、石英粉、珪藻土、アルミナ等の無機系結晶核剤、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー等の有機系結晶核剤が挙げられ、これらの内、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特に、有機系結晶核剤を用いるのが好ましい。有機系結晶核剤は、ポリプロピレンへの溶解性が高いため、ポリプロピレン中で均一に分散し、均一に結晶化を促進させることができる。
【0019】
基材層2中における結晶核剤の配合量は、基材層2中におけるポリプロピレンとポリエチレンとの合計の配合量を100質量部としたとき、0.05質量部以上2.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上2.0質量部以下であることがより好ましい。結晶核剤の配合量が少なすぎると、結晶核剤の種類によっては、十分な裂け性向上効果を得ることができない場合がある。これに対して、結晶核剤の配合量が多すぎると、基材層2の表面粗さが高くなり、表面保護フィルム1を巻き取って保存した際に、基材層2の表面粗さが粘着剤層3の表面に転写され、粘着力が低下してしまう場合がある。
【0020】
基材層2の厚みは、特に限定されないが、10μm~500μmであるのが好ましく、10μm~300μmであるのがより好ましい。
粘着剤層3は、表面保護フィルム1を被着体に貼合する機能を備えている。
粘着剤層3を構成する材料としては、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、スチレン-ジエンブロック共重合体系粘着剤等を用いることができる。
【0021】
粘着剤層3の厚みは、5~20μm程度が好ましい。粘着剤層3の厚みが5μm未満では被着体への密着・馴染み不足となる恐れがあり、また、粘着剤層3の厚みが20μmを超えると粘着力が強過ぎ、剥離作業性に劣る可能性がある。
なお、被着体への貼合前には、粘着剤層3の基材層2とは反対側の面に、剥離フィルムが貼合されていてもよい。
【0022】
上述したような表面保護フィルム1は、例えば、以下に示すような裂け性評価装置及び裂け性評価方法で裂け性を評価することができる。
【0023】
図2は、裂け性評価方法及び装置の一実施形態を示す断面図、図3は、図2の裂け性評価装置の一実施形態を示す正面図、図4は、引張試験で得られる応力-ひずみ曲線を示す図である。
【0024】
本実施形態の裂け性評価方法に用いられる裂け性評価装置10は、図2及び3に示すように、第一固定部材Aと、第一固定部材Aと対向するように配置された第二固定部材Bと、引張試験機(図示せず)とを有している。
【0025】
第一固定部材A及び第二固定部材Bは、板状の部材で構成されている。
第二固定部材Bは、第一固定部材Aよりも主面の面積が小さい構成となっている。
第一固定部材Aと第二固定部材Bとは、固定手段Cによって、これらの間に表面保護フィルム1の一部を挟持した状態を維持することが可能となっている。
さらに、第一固定部材Aは、引張試験機に固定できるよう構成されている。
【0026】
本実施形態の裂け性評価方法は、このような裂け性評価装置10を用いて、表面保護フィルム1の裂け性評価を行う。
具体的には、第一固定部材Aを引張試験機に固定する。
次に、図2に示すように、長尺状の表面保護フィルム1の一部(固定部11)を第一固定部材Aと第二固定部材Bとの間に挟持する。そして、固定手段Cで挟持状態を維持することで、表面保護フィルム1の一部(固定部11)を固定する(固定工程)。
【0027】
次に、引張試験機によって、表面保護フィルム1の固定されていない非固定部12の端部121を、固定されている端部(固定端13)を中心軸として30°以上180°以下の角度で折り曲げた方向(例えば、図2中の矢印の180°方向)に5m/min以上100m/min以下の速度で引張る(引張工程)。
【0028】
なお、折り曲げ角度は、30°以上180°以下であるが、30°、60°、90°、180°のいずれかであることが好ましい。30°又は60°であると、表面保護フィルム1を手で剥離する場合に対応した評価を行うことができる。また、90°又は180°であると、JIS Z 0237で規定される、粘着力測定と対応した評価を行うことができる。
また、引張速度は、5m/min以上100m/min以下であるが、5m/min以上80m/min以下であることが好ましく、10m/min以上60m/min以下であることがより好ましい。これにより、より実使用現場に近い状態で評価することができる。
【0029】
次に、表面保護フィルム1に破断が生じるまでの破壊エネルギー(N/mm)を、引張試験(引張工程)で得られる図4に示すような応力-ひずみ(粘着フィルムの伸び)曲線から算出する(第一算出工程)。具体的には、図4に示すような応力-ひずみ曲線の塗りつぶし部分の面積を求めることで、破壊エネルギー(N/mm)を算出する。
【0030】
さらに、上記のようにして得られた破壊エネルギーから下記式(1)により破壊強度(N/mm)を算出することもできる(第二算出工程)。
破壊強度=破壊エネルギー/非固定部の長さ(mm)…(1)
【0031】
また、さらに、表面保護フィルム1の幅を25mmとし、前記破壊強度から下記式(2)により破壊荷重(N/25mm)を算出することもできる(第三算出工程)。
破壊荷重=破壊強度×[前記粘着フィルムの厚み(mm)×25(mm)]…(2)
【0032】
また、さらに、表面保護フィルム1の粘着力(N/25mm)を測定し、下記式(3)により見かけ界面強度(N/25mm)を算出することもできる(第四算出工程)。
見かけ界面強度=粘着力-破壊荷重 …(3)
【0033】
ここで、破壊荷重と見かけ界面強度とを比較し、見かけ界面強度>破壊荷重となった場合には、表面保護フィルム1の剥離の際に、表面保護フィルム1に裂けが生じると判断することができる。
【0034】
以上、本発明の表面保護フィルムの好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【実施例0035】
以下、具体的な実施例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0036】
1.表面保護フィルムの作成
(実施例1~4、比較例1~4)
・基材層
各実施例及び各比較例において、表1に示すフィルムを使用した。フィルムの厚みは40μmで統一した。
なお、表中、PP-PE(1)は、ポリプロピレンとポリエチレンの混合比が5:5、PP-PE(2)は、ポリプロピレンとポリエチレンの混合比が6:4、PP-PE(3)は、ポリプロピレンとポリエチレンの混合比が7:3、PP-PE(4)は、ポリプロピレンとポリエチレンの混合比が8:2のフィルムである。
また、結晶核剤としては、有機系のポリプロピレン用の結晶核剤である、住化カラー社製、キノプラスCYPP-Y1598を用いた。
【0037】
・粘着剤層
各実施例及び各比較例において、天然ゴム系粘着剤(コニシ社製、商品名G6150)を使用して、基材層上に粘着剤層を形成した。粘着剤層の厚みは、10μmとした。
【0038】
2.評価試験
(1)表面粗さ
白色干渉顕微鏡を用いて、各実施例及び各比較例の基材層表面の凹凸(粗さ)を測定した。
【0039】
(2)ポリプロピレン融解熱量
示差走査熱量計(DSC)を用いて、各実施例及び各比較例の表面保護フィルムを加熱し、ポリプロピレンが融解する際に吸収する熱量を測定した。
なお、ポリプロピレンの含有量が多いフィルムほど吸収熱量は多くなったが、ポリプロピレン含有率が同じフィルムへ結晶核剤を添加しても吸収熱量に変化は見られなかった。すなわち、裂け性の向上は結晶核が大きくなり、相分離が激しくなることが原因と推察される。
【0040】
(3)引裂き強度
JIS K 7128-1 トラウザー引裂法に準じて、各実施例及び各比較例の表面保護フィルムの引裂き強度を測定し、以下の基準に従い評価した。
〇 :引裂き強度が0.5N未満。
△ :引裂き強度が0.5N以上1.0N未満。
× :引裂き強度が1.0N以上。
【0041】
(4)破壊荷重(フィルム強度)
各実施例及び各比較例の表面保護フィルムを25mm幅×100mmにカットし、図2及び図3に示す装置にセットした。引張試験機として高速剥離試験機TE-70(テスター産業社製)を用い、表面保護フィルムを20m/minにて180°方向へ引張試験実施した。測定された破壊エネルギーから破壊荷重を算出し、以下の基準に従い評価した。
〇 :破壊荷重が2.0N/25mm未満。
△ :破壊荷重が2.0N/25mm以上3.0N/25mm未満。
× :破壊荷重が3.0N/25mm以上。
【0042】
(5)保護フィルムの除去の簡便さ
各実施例及び各比較例の表面保護フィルムをSUS304鋼板(表面仕上げBA)へ貼合し、素手で部分的に除去する際の作業性を以下の基準に従い評価した。
〇 :表面保護フィルムを裂き、容易に除去が可能であった。
× :表面保護フィルムが裂きづらく除去が困難であった。
【0043】
(6)総合評価
上記(3)~(5)の評価で×が全くない場合は〇、×が1つでもある場合は×と評価した。
これらの結果を、表面保護フィルムの構成とともに、表1に示した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1から明らかなように、本発明の表面保護フィルムでは、裂け性が高く、貼合した後に、その一部を容易に除去することが可能であった。これに対して、比較例では、満足な結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0046】
1 表面保護フィルム
2 基材層
3 粘着剤層
11 固定部
12 非固定部
13 固定端
121 端部
A 第一固定部材
B 第二固定部材
C 固定手段

図1
図2
図3
図4