(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027629
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】複合分子
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6876 20180101AFI20230222BHJP
G01N 33/542 20060101ALI20230222BHJP
G01N 33/58 20060101ALI20230222BHJP
C07K 2/00 20060101ALN20230222BHJP
【FI】
C12Q1/6876 Z
G01N33/542 A ZNA
G01N33/58 A
C07K2/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132865
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】葛谷 明紀
(72)【発明者】
【氏名】高野 史章
(72)【発明者】
【氏名】乾 俊輝
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045FB13
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR48
4B063QR55
4B063QR66
4B063QS32
4B063QX02
4H045AA10
4H045AA30
4H045EA50
(57)【要約】
【課題】タンパク質に限られない様々な物質、及びこれらの物質間の相互作用を、より簡便に検出すること。
【解決手段】モノマー単位がホスホジエステル結合若しくはホスホロチオエート結合若しくはアミド結合で連結してなるポリマー、又は前記ポリマーのモノマー単位からなるドメイン1と、前記ドメイン1に連結してなる発光タンパク質又はその分割断片からなるドメイン2とを含む、複合分子。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー単位がホスホジエステル結合若しくはホスホロチオエート結合若しくはアミド結合で連結してなるポリマー、又は前記ポリマーのモノマー単位からなるドメイン1と、前記ドメイン1に連結してなる発光タンパク質又はその分割断片からなるドメイン2とを含む、複合分子。
【請求項2】
前記モノマー単位が、ヌクレオシド及び色素分子からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の複合分子。
【請求項3】
前記ドメイン1が前記ポリマーである、請求項1又は2に記載の複合分子。
【請求項4】
前記ポリマーにおける前記モノマー単位の数が5以上である、請求項3に記載の複合分子。
【請求項5】
前記ドメイン1が蛍光標識されていてもよい1本鎖ポリヌクレオチドである、請求項3又は4に記載の複合分子。
【請求項6】
前記ドメイン2が発光タンパク質の分割断片である、請求項1~5のいずれかに記載の複合分子。
【請求項7】
前記ドメイン2が基質依存性発光タンパク質の分割断片である、請求項1~6のいずれかに記載の複合分子。
【請求項8】
前記ドメイン2が5~30アミノ酸残基長のペプチドである、請求項1~7のいずれかに記載の複合分子。
【請求項9】
前記ドメイン1が蛍光標識されていてもよい1本鎖ポリヌクレオチドであり、且つ前記ドメイン2が基質依存性発光タンパク質の分割断片である、請求項1~8のいずれかに記載の複合分子。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の複合分子からなる、検出プローブ。
【請求項11】
請求項1~9のいずれかに記載の複合分子を含む、試薬。
【請求項12】
検出プローブとして用いるための、請求項11に記載の試薬。
【請求項13】
請求項1~9のいずれかに記載の複合分子(複合分子A)と、色素分子、発光タンパク質、及び発光タンパク質の分割断片からなる群より選択される少なくとも1種が連結されてなる複合分子(複合分子B)とが、近接した場合に起こる発光共鳴エネルギー移動のシグナルを検出することを含み、且つ前記複合分子A及び/又は前記複合分子Bが対象物質に連結している、対象物質を検出若しくは標識する方法。
【請求項14】
請求項1~9のいずれかに記載の複合分子(複合分子A)と、色素分子、発光タンパク質、及び発光タンパク質の分割断片からなる群より選択される少なくとも1種が連結されてなる複合分子(複合分子B)とが、近接した場合に起こる発光共鳴エネルギー移動のシグナルを検出することを含み、前記複合分子Aが対象物質Aに連結し、且つ前記複合分子Bが対象物質Bに連結している、対象物質Aと対象物質Bとの相互作用を検出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合分子に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸、タンパク質、ペプチド、低分子化合物、金属イオン等の物質の検出技術は、医療分野、環境分野等の各種分野で使用されている。例えば、特定の核酸等の生体分子の存在や量を指標として、疾患検査を行うことがある。また、近年、ライブセルイメージングに取り組む研究者が増加している。この方法は、細胞を固定しないことにより、細胞本来の構造の変化を観察できることがメリットである。
【0003】
物質の検出技術としては、検出したい物質がタンパク質である場合は、レポータータンパク質(発光タンパク質等)との融合タンパク質を遺伝子組み換えにより作製し、細胞内でのレポーターシグナルを検出する技術が汎用されている。また、BRETやFRET等の発光共鳴エネルギー移動を利用して、対象物質間の相互作用を検出する技術も汎用されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、これらの技術は、対象物質とレポータータンパク質との融合タンパク質を作製することを必要とするので、その作製の手間を要し、またレポータータンパク質と融合した状態で対象物質を発現させるので、本来の対象物質の機能や挙動が損なわれてしまう虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、タンパク質に限られない様々な物質、及びこれらの物質間の相互作用を、より簡便に検出することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、モノマー単位がホスホジエステル結合若しくはホスホロチオエート結合若しくはアミド結合で連結してなるポリマー、又は前記ポリマーのモノマー単位からなるドメイン1と、前記ドメイン1に連結してなる発光タンパク質又はその分割断片からなるドメイン2とを含む、複合分子、により、上記課題を解決できることを見出した。本発明者はこの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0007】
項1. モノマー単位がホスホジエステル結合若しくはホスホロチオエート結合若しくはアミド結合で連結してなるポリマー、又は前記ポリマーのモノマー単位からなるドメイン1と、前記ドメイン1に連結してなる発光タンパク質又はその分割断片からなるドメイン2とを含む、複合分子。
【0008】
項2. 前記モノマー単位が、ヌクレオシド及び色素分子からなる群より選択される少なくとも1種を含む、項1に記載の複合分子。
【0009】
項3. 前記ドメイン1が前記ポリマーである、項1又は2に記載の複合分子。
【0010】
項4. 前記ポリマーにおける前記モノマー単位の数が5以上である、項3に記載の複合分子。
【0011】
項5. 前記ドメイン1が蛍光標識されていてもよい1本鎖ポリヌクレオチドである、項3又は4に記載の複合分子。
【0012】
項6. 前記ドメイン2が発光タンパク質の分割断片である、項1~5のいずれかに記載の複合分子。
【0013】
項7. 前記ドメイン2が基質依存性発光タンパク質の分割断片である、項1~6のいずれかに記載の複合分子。
【0014】
項8. 前記ドメイン2が5~30アミノ酸残基長のペプチドである、項1~7のいずれかに記載の複合分子。
【0015】
項9. 前記ドメイン1が蛍光標識されていてもよい1本鎖ポリヌクレオチドであり、且つ前記ドメイン2が基質依存性発光タンパク質の分割断片である、項1~8のいずれかに記載の複合分子。
【0016】
項10. 項1~9のいずれかに記載の複合分子からなる、検出プローブ。
【0017】
項11. 項1~9のいずれかに記載の複合分子を含む、試薬。
【0018】
項12. 検出プローブとして用いるための、項11に記載の試薬。
【0019】
項13. 項1~9のいずれかに記載の複合分子(複合分子A)と、色素分子、発光タンパク質、及び発光タンパク質の分割断片からなる群より選択される少なくとも1種が連結されてなる複合分子(複合分子B)とが、近接した場合に起こる発光共鳴エネルギー移動のシグナルを検出することを含み、且つ前記複合分子A及び/又は前記複合分子Bが対象物質に連結している、対象物質を検出若しくは標識する方法。
【0020】
項14. 項1~9のいずれかに記載の複合分子(複合分子A)と、色素分子、発光タンパク質、及び発光タンパク質の分割断片からなる群より選択される少なくとも1種が連結されてなる複合分子(複合分子B)とが、近接した場合に起こる発光共鳴エネルギー移動のシグナルを検出することを含み、前記複合分子Aが対象物質Aに連結し、且つ前記複合分子Bが対象物質Bに連結している、対象物質Aと対象物質Bとの相互作用を検出する方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、タンパク質に限られない様々な物質、及びこれらの物質間の相互作用を、より簡便に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例2において、相補DNAとして3’-FAM修飾DNAを用いた場合の、発光スペクトルを測定した結果を示す。Int
458 = 2587, Int
522 =7425, Int
522/Int
458 = 2.9
【
図2】実施例2において、相補DNAとして3’-Alexa594修飾DNAを用いた場合の、発光スペクトルを測定した結果を示す。Int
460 = 146244, Int
620 =265030, Int
522/Int
458 = 1.8
【
図3】実施例2において、暗箱中のプレートを撮影し、発光色を確認した結果を示す。左が相補鎖として対照DNAを用いた場合を示し、右が相補鎖として相補DNAを用いた場合を示す。左は青色に発光しており、右は緑色に発光している。
【
図4】実施例2において、発光スペクトルを測定した結果を示す。複数FAM導入相補DNAを用いた場合(非連続FAM)は、Int
460 = 3843, Int
520 =24810, Int
520/Int
460 = 6.5
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.定義
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0024】
アミノ酸配列の「同一性」とは、2以上の対比可能なアミノ酸配列の、お互いに対するアミノ酸配列の一致の程度をいう。従って、ある2つのアミノ酸配列の一致性が高いほど、それらの配列の同一性又は類似性は高い。アミノ酸配列の同一性のレベルは、例えば、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて決定される。若しくは、Karlin及びAltschulによるアルゴリズムBLAST(S. Karlin,S. F. Altschul.“Methods for assessing the statistical significance of molecular sequence features by using general scoringschemes.”Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 2264-2268 (1990)、S. Karlin,S. F. Altschul.“Applications and statistics for multiple high-scoring segments in molecular sequences.”Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 5873-5877 (1993))を用いて決定できる。このようなBLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている。これらの解析方法の具体的な手法は公知であり、National Center of Biotechnology Information(NCBI)のウェエブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照すればよい。また、塩基配列の『同一性』も上記に準じて定義される。
【0025】
本明細書中において、「保存的置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されることを意味する。例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジンといった塩基性側鎖を有するアミノ酸残基同士で置換されることが、保存的な置換にあたる。その他、アスパラギン酸、グルタミン酸といった酸性側鎖を有するアミノ酸残基;グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システインといった非帯電性極性側鎖を有するアミノ酸残基;アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンといった非極性側鎖を有するアミノ酸残基;スレオニン、バリン、イソロイシンといったβ-分枝側鎖を有するアミノ酸残基;チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンといった芳香族側鎖を有するアミノ酸残基同士での置換も同様に、保存的な置換にあたる。
【0026】
本明細書において、DNA、RNAなどのヌクレオチドには、次に例示するように、公知の化学修飾が施されていてもよい。ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)を、例えば、ホスホロチオエート(PS)、メチルホスホネート、ホスホロジチオネート等の化学修飾リン酸残基に置換することができる。また、各リボヌクレオチドの糖(リボース)の2位の水酸基を、-OR(Rは、例えばCH3(2´-O-Me)、CH2CH2OCH3(2´-O-MOE)、CH2CH2NHC(NH)NH2、CH2CONHCH3、CH2CH2CN等を示す)に置換してもよい。さらに、塩基部分(ピリミジン、プリン)に化学修飾を施してもよく、例えば、ピリミジン塩基の5位へのメチル基やカチオン性官能基の導入、あるいは2位のカルボニル基のチオカルボニルへの置換などが挙げられる。さらには、リン酸部分やヒドロキシル部分が、例えば、ビオチン、アミノ基、低級アルキルアミン基、アセチル基等で修飾されたものなどを挙げることができるが、これに限定されない。また、ヌクレオチドの糖部の2´酸素と4´炭素を架橋することにより、糖部のコンフォーメーションをN型に固定したものであるBNA(LNA)等もまた、用いられ得る。さらに、ペプチド核酸(例えばPNA等)等も用いることができる。また、ヌクレオシドについても上記に準じる。
【0027】
2.複合分子
本発明は、その一態様において、モノマー単位がホスホジエステル結合若しくはホスホロチオエート結合若しくはアミド結合で連結してなるポリマー、又は前記ポリマーのモノマー単位からなるドメイン1と、前記ドメイン1に連結してなる発光タンパク質又はその分割断片からなるドメイン2とを含む、複合分子(本明細書において、「本発明の複合分子」と示すこともある。)、に関する。以下、これについて説明する。
【0028】
ドメイン1は、ポリマー、又はポリマーのモノマー単位からなる。
【0029】
ポリマーは、モノマー単位がホスホジエステル結合若しくはホスホロチオエート結合若しくはアミド結合で連結してなるポリマーであり、この限りにおいて特に制限されない。好ましくは、ポリマーは、モノマー単位がホスホジエステル結合若しくはホスホロチオエート結合で連結してなるポリマーである。
【0030】
モノマー単位としては、ホスホジエステル結合若しくはホスホロチオエート結合で連結し得るモノマー単位であり、この限りにおいて特に制限されない。好ましくは、モノマー単位としては、ホスホロアミダイトモノマーを用いたホスホロアミダイト法によるポリマー合成によって形成されるモノマー単位であることができる。モノマー単位としては、例えばヌクレオシド、色素分子、N-(2-アミノエチル)グリシン、官能基を導入したオリゴエチレングリコール鎖あるいはアルキル鎖、PNAのモノマー単位(塩基を含むモノマー単位)等が挙げられる。
【0031】
ヌクレオシドを構成する塩基には、RNA、DNA等の天然核酸中の典型的な塩基(アデニン(A)、チミン(T)、ウラシル(U)、グアニン(G)、シトシン(C)等)のみならず、これ以外の塩基、例えばヒポキサンチン(I)、修飾塩基等も包含される。修飾塩基としては、例えば、シュードウラシル、3-メチルウラシル、ジヒドロウラシル、5-アルキルシトシン(例えば、5-メチルシトシン)、5-アルキルウラシル(例えば、5-エチルウラシル)、5-ハロウラシル(5-ブロモウラシル)、6-アザピリミジン、6-アルキルピリミジン(6-メチルウラシル)、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5’-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、1-メチルアデニン、1-メチルヒポキサンチン、2,2-ジメチルグアニン、3-メチルシトシン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、N6-メチルアデニン、7-メチルグアニン、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メチルカルボニルメチルウラシル、5-メチルオキシウラシル、5-メチル-2-チオウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸、2-チオシトシン、プリン、2-アミノプリン、イソグアニン、インドール、イミダゾール、キサンチン、シアヌル酸等が挙げられる。
【0032】
色素分子としては、例えばAlexa Fluor色素、Bodipy色素、Cy色素、フルオレセイン、ダンシル、ウンベリフェロン、蛍光性ミクロスフェア、発光性ミクロスフェア、蛍光性ナノ結晶、マリーナブルー、カスケードブルー、カスケードイエロー、パシフィックブルー、オレゴングリーン、テトラメチルローダミン、ローダミン、テキサスレッド、希土類元素キレート、またはこれらの任意の組み合わせもしくは誘導体が挙げられる。また、上記のより詳細な具体例として、或いは上記とは別の例として、618 fluorescent Ligand、7-AAD、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)633、Alexa Fluor(登録商標)647、CyTM 2、DsRED、EGFP、EYFP、FITC、PerCPTM、R-Phycoerythrin、Propidium Iodide、AMCA、DAPI、ECFP、MethylCoumarin、Allophycocyanin、CyTM 3、CyTM 5、SYBR(登録商標) Green、 Rhodamine-123、Tetramethylrhodamine、Texas Red(登録商標)、PE、PE-CyTM5、PE-CyTM5.5、PE-CyTM7、APC、APC-CyTM7、オレゴングリーン、カルボキシフルオレセイン、カルボキシフルオレセインジアセテート、ピレン、HyLite等も挙げられる。
【0033】
ポリマーにおけるモノマー単位の数は、特に制限されないが、例えば2以上、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上、よりさらに好ましくは20以上である。モノマー単位の数の上限は、特に制限されず、例えば2000、1000、500、200、100、又は50である。
【0034】
ポリマーは、モノマー単位とホスホジエステル結合若しくはホスホロチオエート結合若しくはアミド結合とが交互に並べられた構造を有する。具体的には、ポリマーは、例えば以下の一般式(1)又は一般式(2)で示される構造を採ることができる。
【0035】
【0036】
[一般式(1)中:R1はO-又はS-を示す。R2はO又はSを示す。R3はモノマー単位を示す。nは2以上の整数を示す。]
[一般式(2)中:R4はモノマー単位を示す。nは2以上の整数を示す。]
本発明の一態様において、R1がS-であり且つR2がOである。また、本発明の別の一態様において、R1がO-であり且つR2がSである。
【0037】
ドメイン1は、ポリマーであることが好ましい。ドメイン1が一定以上の長さのポリマーであることにより、リンカーとして機能し、ドメイン2からの発光が他の物質により阻害されにくくなり、好ましい。
【0038】
ドメイン1は、特に好ましくは、蛍光標識されていてもよい1本鎖ポリヌクレオチドである。この場合、ポリマーは、モノマー単位としてヌクレオシド及び色素分子を含む。ドメイン1は、複数の色素分子を含むことができる。この場合、デクスター機構による消光と、共鳴エネルギー移動に起因するフェルスター機構による消光を抑制するという観点から、モノマー単位である色素分子と、他のモノマー単位である色素分子とは、一定以上離れていること(間に、例えば2モノマー単位以上、好ましくは3モノマー単位以上、4モノマー単位以上が介在すること)が好ましく、或いは二重らせんの反対側に位置する(間に、例えばモノマー単位が4±1(好ましくは4)の倍数個介在すること)が好ましい。
【0039】
ドメイン2は、発光タンパク質又はその分割断片からなる。
【0040】
発光タンパク質は、それ自身が発光可能なタンパク質に加えて、他の発光分子(色素分子等)に結合性を有するタンパク質も包含する。発光タンパク質としては、例えば基質依存性発光タンパク質、蛍光タンパク質、色素分子結合性タンパク質等が挙げられる。発光タンパク質としては、基質依存性発光タンパク質が好ましい。基質依存性発光タンパク質を利用することにより、光毒性、光退色等の蛍光励起に伴う問題を回避しつつ、シグナルを検出することができる。
【0041】
基質依存性発光タンパク質としては、例えばルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ラクタマーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-グルクロニダーゼ、β-グルコシダーゼ等が挙げられ、中でも好ましくはルシフェラーゼが挙げられる。ルシフェラーゼとしては、例えばトゲオキヒオドシエビ由来ルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、腔腸動物ルシフェラーゼ、北アメリカツチボタルルシフェラーゼ、コメツキムシルシフェラーゼ、レイルロードワームルシフェラーゼ、細菌ルシフェラーゼ、ガウシアルシフェラーゼ、エクオリン、ヒカリキノコバエルシフェラーゼ等が挙げられる。基質依存性発光タンパク質は基質(例えばルシフェリン(甲虫ルシフェリン等)、カルシウム、セレンテラジン、セレンテラジンの誘導体もしくは類似体等)の存在下で発光することができる。基質依存性発光タンパク質は、アミノ酸の置換、欠失、付加、挿入等の変異が導入されたものであってもよい。
【0042】
蛍光タンパク質としては、例えばGFP、Azami-Green、ZsGreen、GFP2、EGFP、HyPer、Sirius、BFP、CFP、Cerulean、Turquoise、Cyan、TFP1、YFP、Venus、ZsYellow、Banana、KusabiraOrange、RFP、mRuby、DsRed、AsRed、Strawberry、Jred、KillerRed、Cherry、HcRed、mPlum等、或いはこれらの変異蛍光タンパク質が挙げられる。変異蛍光タンパク質としては、例えばアミノ酸の置換、欠失、付加、挿入等の変異のみならず、円順列変異させた蛍光タンパク質も挙げられる。
【0043】
色素分子結合性タンパク質は、色素分子に対して生理的条件下で(例えば細胞内で)結合可能なタンパク質である限り、特に制限されない。特定の色素分子を担体に固定し、候補となるタンパク質を接触させた後、必要に応じて洗浄し、結合したタンパク質を同定することにより、色素分子結合性タンパク質又はその候補を容易にスクリーニングすることができる。また、Halo Tag等の市販品を利用することもできる。
【0044】
発光タンパク質の分割断片は、単独では発光することができず、当該分割断片と対となる他の分割断片と会合することにより発光活性を回復することができる限り、特に制限されない。分割タンパク質の分割断片のアミノ酸配列は、発光タンパク質の種類、目的の解離定数等に応じて、公知の情報(例えば、国際公開第2014/151736号等)に従って又は準じて、決定することができる。当該分割断片としては、例えば、NanoLuc(Promega)の分割断片であるLgBiT(Promega)又はSmBiT(Promega)を利用することができる。LgBiTは約18 kDaの大サブユニットであり、SmBiTは、11アミノ酸残基の小サブユニットである。
【0045】
ドメイン2は、基質依存性発光タンパク質の分割断片であることが好ましい。また、ドメイン2は、比較的アミノ酸残基長が短いペプチドであることが好ましく、例えば5~30、好ましくは6~20アミノ酸残基長のペプチドであることが好ましい。
【0046】
ドメイン2は、ドメイン1に連結している。連結の態様は特に制限されない。ドメイン1とドメイン2とは、例えば同一又は異なる2つの反応性基が反応して形成される結合を介して連結している。反応性基としては、例えばアミノ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、ケトン基、エチニル基、ビニル基、アジド基、エポキシ基、アルデヒド基、オキシルアミノ基、チオール基、イソシアネート基、イソチオシアネート基等が挙げられる。
【0047】
反応性基間の反応の例は以下のとおりである:
アミノ基はカルボキシ基(或いはカルボキシ基をN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)でエステル化してなる基)と反応してアミド結合を形成することが知られている。エチニル基は、アジド基と1,3‐双極子付加環化反応することにより、1,2,3‐トリアゾール環を形成することが知られている。ビニル基は、チオール基と反応して結合を形成する。エポキシ基はアミノ基やチオール基と反応し結合を形成する。アルデヒド基はアミノ基と反応し、シッフ塩基を形成し、それを還元すると結合を形成する。オキシルアミノ基はケトン基、アルデヒド基と反応し、オキシムを形成する。アジド基は、エチニル基又はエチニレン基と1,3‐双極子付加環化反応することにより、1,2,3‐トリアゾール環を形成することが知られている。
【0048】
ドメイン1が一本鎖ポリヌクレオチドである場合は、ドメイン2は、一本鎖ポリヌクレオチドの末端(5´末端又は3´末端)に連結していることが好ましい。
【0049】
ドメイン1とドメイン2との連結部分においては、2つの反応性基が反応して形成される結合以外にも、リンカー部分、ホスホエステル結合、ホスホチオエステル結合等が含まれていてもよい。
【0050】
本発明の複合分子においては、他の分子が連結されていてもよい。他の分子としては、例えばタンパク質、核酸、ペプチド、低分子化合物、金属イオン等が挙げられる。他の分子としては、好ましくは対象物質への結合性を有する分子(結合性分子)が挙げられる。
【0051】
対象物質の具体例としては、例えば抗体、タンパク質、核酸、生理活性物質、ベシクル、細菌、ウイルス、ポリペプチド、ハプテン、治療薬剤、治療薬剤の代謝物などが挙げられる。結合性分子は、対象物質の種類に応じて異なり得る。例えば、対象物質が抗原性を有する物質である場合であれば結合性分子としては該物質に対する抗体が挙げられる。対象物質が抗体である場合は、結合性分子として抗原を用いることができる。対象物質が核酸である場合であれば結合性分子としては該核酸に対して相補鎖形成可能な核酸が挙げられる。対象物質が受容体又はリガンドである場合であれば結合性分子としてはリガンド又は受容体が挙げられる。したがって、結合性分子の具体例としては、抗体、抗原、核酸、受容体、受容体に結合するリガンド、アプタマー等が挙げられる。また、その他にも、特定の分子に結合性を有する低分子化合物(例えばビオチン等)も、結合性分子として採用できる。
【0052】
本発明の複合分子における他の分子の連結態様については、ドメイン1とドメイン2との連結態様と同様の説明が適用される。
【0053】
3.用途
本発明の複合分子は、検出プローブとして使用することができる。このため、本発明は、その一態様において、本発明の複合分子からなる、検出プローブ、本発明の複合分子を含む、試薬(好ましくは、検出プローブとして用いるための試薬)、等に関する。
【0054】
検出プローブは、対象物質を検出するためのプローブである。対象物質としては、上述の説明が適用される。検出プローブとしての使用方法の詳細については、後述の「4.検出方法1」及び「5.検出方法2」のとおりである。
【0055】
本発明の試薬には、必要に応じて他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、キレート剤等が挙げられる。
【0056】
本発明の試薬は、キットを構成するものであってもよい。キットには、後述の検出方法の実施に用いられ得る器具、試薬などが含まれていてもよい。器具としては、例えば試験管、マイクロタイタープレート、担体粒子、精製用カラム、エポキシコーティングスライドガラス、金コロイドコーティングスライドガラス、マイクロチューブなどが挙げられる。試薬としては、例えば陽イオンを含む緩衝液、標準試料(陽性対照、陰性対照)などが挙げられる。
【0057】
4.検出方法1
本発明は、その一態様において、本発明の複合分子(複合分子A)と、色素分子、発光タンパク質、及び発光タンパク質の分割断片からなる群より選択される少なくとも1種が連結されてなる複合分子(複合分子B)とが、近接した場合に起こる発光共鳴エネルギー移動のシグナルを検出することを含み、且つ前記複合分子A及び/又は前記複合分子Bが対象物質に連結している、対象物質を検出若しくは標識する方法(本明細書において、「本発明の検出方法1」と示すこともある。)、に関する。以下、これについて説明する。
【0058】
複合分子Bにおける色素分子、発光タンパク質、及び発光タンパク質の分割断片については、本発明の複合分子におけるこれらについての説明が適用される。対象物質としては、上述の説明が適用される。
【0059】
複合分子Aにおけるドメイン2と、複合分子Bにおいて採用される色素分子、発光タンパク質、及び発光タンパク質の分割断片からなる群より選択される少なくとも1種とは、近接した場合に発光共鳴エネルギー移動(BRET、FRET等)が起こる組合せである限り、特に制限されない。このような組み合わせは、色素分子の励起波長、色素分子の蛍光波長、発光タンパク質の励起波長、発光タンパク質の発光波長等に基づいて、適宜決定することが可能である。
【0060】
複合分子Bは、好ましくは複合分子Aと同様の構造を有することができる。すなわち、複合分子Bは、好ましくは複合分子Aにおけるドメイン1と同様のドメインを含むことが好ましく、また複合分子Aにおける他の分子と同様の分子を含むことができる。
【0061】
複合分子A及び/又は複合分子Bにおいて発光タンパク質の分割断片を採用している場合は、本発明の検出方法1において、系内(通常、複合分子A及び複合分子Bを含む溶液内)に、上記分割断片と対となる他の分割断片であって、上記分割断片と会合することにより発光活性を回復することができる分割断片を添加する、或いは複合分子A及び複合分子Bそれぞれの分割断片同士を会合させることにより発光活性を回復させる。
【0062】
複合分子Bは、特に好ましくは、蛍光標識された1本鎖ポリヌクレオチドである。この場合、複合分子Bは、モノマー単位としてヌクレオシド及び色素分子を含むポリマーである。複合分子Bは、複数の色素分子を含むことができる。この場合、デクスター機構による消光と、共鳴エネルギー移動に起因するフェルスター機構による消光を抑制するという観点から、モノマー単位である色素分子と、他のモノマー単位である色素分子とは、一定以上離れていること(間に、例えば2モノマー単位以上、好ましくは3モノマー単位以上、4モノマー単位以上が介在すること)が好ましく、或いは二重らせんの反対側に位置する(間に、例えばモノマー単位が4±1(好ましくは4)の倍数個介在すること)が好ましい。
【0063】
また、基質依存性発光ドメイン、色素分子結合性ドメイン等を採用する場合、本発明の検出方法1において、系内(通常、複合分子A及び複合分子Bを含む溶液内)に、基質や色素分子を添加する。
【0064】
複合分子Aと複合分子Bとを近接させる方法は、特に制限されない。本発明の好ましい態様においては、複合分子Aのドメイン1及び複合分子Bのドメイン1に対応するドメインの両方が一本鎖ポリヌクレオチドを含み、複合分子Aにおける一本鎖ポリヌクレオチドと複合分子Bにおける一本鎖ポリヌクレオチドとを相補塩基対形成させることにより近接させる方法、或いは複合分子Aにおける一本鎖ポリヌクレオチドと複合分子Bにおける一本鎖ポリヌクレオチドとをDNAオリガミにおけるステープル核酸として利用して、DNAオリガミ上で近接させる方法(例えば、DNAオリガミが対象物質の有無で構造変化する場合には、対象物質の存在下又は非存在下で複合分子Aと複合分子Bとが近接する態様)等が挙げられる。
【0065】
発光共鳴エネルギー移動シグナル検出は、公知の方法に従って又は準じて行うことができる。例えば、ドナー発光ドメインが発光した状態で検出されるアクセプター発光ドメインの蛍光波長光の強度を測定することによって、行われる。
【0066】
本発明の検出方法1においては、複合分子A及び/又は複合分子Bが対象物質に連結しているので、複合分子Aと複合分子Bとの近接時の発光共鳴エネルギー移動のシグナルは、対象物質の存在を示すこととなる。このため、シグナル検出により、対象物質の位置、動き、量、濃度等を測定することが可能である。
【0067】
複合分子A及び/又は複合分子Bの対象物質への連結の態様は特に制限されず、例えばこれらの複合分子が有していてもよい対象物質への結合性分子(抗体等)を介した連結であることができる。また、別の例としては、複合分子Aにおける一本鎖ポリヌクレオチドと複合分子Bにおける一本鎖ポリヌクレオチドとをDNAオリガミにおけるステープル核酸として利用する場合において、構成されるDNAオリガミ自身が対象物質である場合であれば、1本鎖環状核酸とステープル核酸との相補塩基対形成により連結することができ、またDNAオリガミに結合する物質が対象物質である場合であれば、DNAオリガミを介して間接的に対象物質に連結することができる。
【0068】
5.検出方法2
本発明は、その一態様において、本発明の複合分子(複合分子A)と、色素分子、発光タンパク質、及び発光タンパク質の分割断片からなる群より選択される少なくとも1種が連結されてなる複合分子(複合分子B)とが、近接した場合に起こる発光共鳴エネルギー移動のシグナルを検出することを含み、前記複合分子Aが対象物質Aに連結し、且つ前記複合分子Bが対象物質Bに連結している、対象物質Aと対象物質Bとの相互作用を検出する方法(本明細書において、「本発明の検出方法2」と示すこともある。)、に関する。以下、これについて説明する。
【0069】
複合分子A、複合分子B、近接させる方法、シグナルの検出、複合分子と対象物質との連結については、本発明の検出方法1における説明が適用される。
【0070】
本発明の検出方法2においては、複合分子Aが対象物質Aに連結し、且つ前記複合分子Bが対象物質Aとは異なる対象物質Bに連結しているので、複合分子Aと複合分子Bとの近接時の発光共鳴エネルギー移動のシグナルは、対象物質Aと対象物質Bとが相互作用(例えば、結合)していることを示す。このため、シグナル検出により、対象物質Aと対象物質Bとの相互作用の位置、動き、量、濃度等を測定することが可能である。
【実施例0071】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0072】
実施例1.ペプチド修飾DNAの合成
まず、C末端アジド化ペプチド(配列:VSGWRLFKKISX(配列番号1、NanoLuc(発光タンパク)を構成する11残基のペプチド鎖(HiBit)であり、残りの断片(LgBit)と会合することにより発光活性を発揮する。))を化学合成した。本実施例では、Xが、側鎖がアジド化したornithineであるペプチド(脱塩グレード)を、受託ペプチド合成により得た。
【0073】
【0074】
次に、DBCO(ジベンゾシクロオクチン基)修飾DNAを化学合成した。DNA配列はTAAGAGGCTGGGTTTTGCTC(配列番号2)である。ホスホロアミダイト法によるDNA自動合成機での反応において、市販の5'-DBCO-TEG Phosphoramidite(米Glen Research社)を使用して、5'-末端にDBCO基を導入した。DNA簡易精製カラムで処理した後に、逆相HPLCで分取精製、MALDI-TOF/MSにより目的物が生成されていることを確認した。
【0075】
【0076】
続いて、C末端アジド化ペプチドとDBCO修飾DNAをCuイオンフリークリック反応で連結した。具体的には、C末端アジド化ペプチド 2.5 nmolとDBCO修飾DNA 2.5 nmolとを1X PBS(-) 50 μL内で混合し、室温で16時間反応させた後、逆相HPLCで分取精製した。得られた生成物はMALDI-TOF/MSにより目的物であることを確認した。
【0077】
実施例2.相補的なDNA二重らせん末端におけるBRET
ペプチド修飾DNA (VSGWRLFKKIS(配列番号3)-5'-TAAGAGGCTGGGTTTTGCTC(配列番号2)-3')を実施例1の方法に準じて合成した。
【0078】
相補DNA(5'-GAGCAAAACCCAGCCTCTTA(配列番号4)-X-3')を実施例1の方法に準じてホスホロアミダイト法により合成した。Xは蛍光色素(FAMもしくはAlexa594)を示す。また、対照DNAとして、X未導入のものも合成した。
【0079】
【0080】
ペプチド修飾DNAと相補DNA又は対照DNAとをハイブリダイゼーションさせた。具体的には、ペプチド修飾DNA 1 pmolと相補DNA又は対照DNA 1 pmolとを1X PBS(-) 30 μL内で混合し、アルミバスで90℃まで加熱してから、室温まで徐冷した。LgBiT Protein溶液(Promega、Nano-Glo HiBiT Blotting System)10 μLを加え、室温で15分放置した。その後、Nano-Glo Luciferase Assay Substrate(フリマジン)の500倍希釈液を1 μL加え、マルチモードプレートリーダー(Molecular Devices社製Spectramax iD5)にて発光スペクトルを測定した。発光スペクトルを測定後、iPhone(登録商標) 12の純正カメラアプリで暗箱中のプレートを撮影し、発光色を確認した。
【0081】
結果を
図1~3に示す。
図1~3に示されるように、BRETが観察された。
【0082】
実施例3.相補鎖に複数のFAMを導入した場合のBRET
複数FAM導入相補DNA(5'-GAGCAAAACCCAGCC Y CTTA(配列番号4)-X-3')を実施例1の方法に準じてホスホロアミダイト法により合成した。YはFluorescein-dTを示し、XはFAMを示す。
【0083】
実施例2と同様にして、ペプチド修飾DNA(実施例2で合成)と相補DNA(実施例2で合成)又は複数FAM導入相補DNA(本実施例で合成)とをハイブリダイゼーションさせた後、発光スペクトルを測定した。
【0084】
結果を
図4に示す。
図4に示されるように、BRETが観察された。また、複数FAM導入相補DNAを使用することにより、アクセプター蛍光/ドナー発光強度比6.5という、非常に効率的なBRETを実現できた。