(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027636
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】カードリーダ及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
G06K 13/077 20060101AFI20230222BHJP
G06K 13/06 20060101ALI20230222BHJP
G07D 11/00 20190101ALI20230222BHJP
【FI】
G06K13/077 A
G06K13/06 A
G07D11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132877
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 宗政
(72)【発明者】
【氏名】田中 穣
【テーマコード(参考)】
3E141
5B023
【Fターム(参考)】
3E141AA03
3E141BA07
3E141DA01
3E141FA01
5B023CA08
5B023GA07
(57)【要約】
【課題】不正なカードの抜き取りを防ぐためにモータで駆動されるロック部材を有するカードロック機構を備え、ノブを回転することによりロック部材によるカードのロック状態を手動で解除できるカードリーダにおいて、ノブの過回転によるロック部材やモータの破損を防ぐ。
【解決手段】ロック部材は、カードに接触してカードの引き抜きを阻止する阻止爪が形成されており、モータによって駆動されることによってカードに阻止爪が接触する接触位置とカードの搬送路から阻止爪が退避する退避位置との間で移動する。ロック部材が接触位置に移動するようにモータを駆動する第1の制御を行なったのちにロック部材が退避位置に移動したときを検知したときに、モータを駆動することによってノブに動きを与えてノブを操作している作業者に対して触覚的に注意を喚起する触覚刺激シーケンスを実行する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードが挿入及び排出される挿入口と、前記挿入口から挿入された前記カードが搬送される搬送路と、前記搬送路において前記カードが詰まったときに前記挿入口からの前記カードの引抜きを阻止するカードロック機構と、を備えるカードリーダにおいて、
前記カードロック機構は、
モータと、
前記カードに接触して前記カードの引き抜きを阻止する阻止爪が形成されており、前記モータによって駆動されることによって前記カードに前記阻止爪が接触する接触位置と前記搬送路から前記阻止爪が退避する退避位置との間で移動するロック部材と、
前記モータの出力軸に機械的に連結したノブと、
前記ロック部材が前記退避位置にあることを検出する検知機構と、を備え、
前記カードリーダは、前記モータを駆動することによって前記ロック部材の位置を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記ロック部材が前記接触位置に移動するように前記モータを駆動する第1の制御を行なったのちに前記検知機構によって前記ロック部材が退避位置に移動したときを検知したときに、前記モータを駆動することによって前記ノブに動きを与えて前記ノブを操作している作業者に対して触覚的に注意を喚起する触覚刺激シーケンスを実行することを特徴とするカードリーダ。
【請求項2】
前記触覚刺激シーケンスは、所定の角度で前記モータを正方向に回転させ、その後、前記所定の角度で前記モータを逆方向に回転させることを繰り返すことを含むシーケンスである、請求項1に記載のカードリーダ。
【請求項3】
前記モータはステッピングモータである請求項2に記載のカードリーダ。
【請求項4】
前記触覚刺激シーケンスは、前記第1の制御における前記モータの回転速度よりも遅い速度で、前記ロック部材を前記接触位置に向かわせる方向に前記モータを回転させることを含むシーケンスである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカードリーダ。
【請求項5】
前記検知機構は、前記ロック部材と連動する遮蔽部材と、前記遮蔽部材によって光路が遮られるセンサとを有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のカードリーダ。
【請求項6】
前記制御回路は、前記搬送路における前記カードの詰まりを検知したときに前記第1の制御を実行する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のカードリーダ。
【請求項7】
カードが挿入及び排出される挿入口と、前記挿入口から挿入された前記カードが搬送される搬送路と、前記搬送路において前記カードが詰まったときに前記挿入口からの前記カードの引抜きを阻止するカードロック機構と、を備えるカードリーダの制御方法において、
前記カードロック機構は、モータと、前記カードに接触して前記カードの引き抜きを阻止する阻止爪が形成されており、前記モータによって駆動されることによって前記カードに前記阻止爪が接触する接触位置と前記搬送路から前記阻止爪が退避する退避位置との間で移動するロック部材と、前記モータの出力軸に機械的に連結したノブとを備えており、
前記ロック部材が前記接触位置に移動するように前記モータを駆動する第1の制御を行なったのちに前記ロック部材が退避位置に移動したときを検知したときに、前記モータを駆動することによって前記ノブに動きを与えて前記ノブを操作している作業者に対して触覚的に注意を喚起する触覚刺激シーケンスを実行することを特徴とするカードリーダの制御方法。
【請求項8】
前記触覚刺激シーケンスは、所定の角度で前記モータを正方向に回転させ、その後、前記所定の角度で前記モータを逆方向に回転させることを繰り返すことを含むシーケンスである、請求項7に記載の制御方法。
【請求項9】
前記触覚刺激シーケンスは、前記第1の制御における前記モータの回転速度よりも遅い速度で、前記ロック部材を前記接触位置に向かわせる方向に前記モータを回転させることを含むシーケンスである、請求項7または8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記搬送路における前記カードの詰まりを検知したときに前記第1の制御を実行する、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードロック機構を備えるカードリーダとその制御方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
カードに記録されたデータの読み出しやカードへのデータの書き込みを行うカードリーダは、例えば、現金自動預け払い機などのような上位装置に組み込まれて広く使用されている。カードリーダは、カードそのものあるいはカードに記録されている情報を窃取しようとする犯罪の脅威にさらされている。このような犯罪の一形態として、カードリーダ内で意図的にカード詰まりを発生させてカードをカードリーダ内に残留させ、その後、犯罪者がカードリーダからカードを不正に抜き取るという、いわゆるフィッシングがある。フィッシングを防止する技術として例えば特許文献1は、カードリーダからのカードの不正な抜き取りを防止するために、カードロック機構をカードリーダに設けることを開示している。カードロック機構は、モータと、カードに接触してカードの引抜きを阻止する阻止爪が形成されるとともにモータから伝達される動力によってカードに阻止爪が接触する接触位置とカード搬送路から阻止爪が退避する退避位置との間で移動するロック部材と、モータの動力をロック部材に伝達する動力伝達機構とを備えている。ロック部材はモータによって駆動されて接触位置と退避位置との間で移動するが、上位装置のメンテナンスを行うときや、カードリーダに詰まったカードを正規の作業者が取り出すときに、ロック部材によるカードのロック状態を解除する必要が生じることがある。そのような場合に備え特許文献1に示されるカードロック機構では、モータの駆動軸(出力軸)に機械的に連結する回転可能なノブを設け、ノブを手指で回転することによってもロック部材を退避位置に移動できるようにしている。また特許文献1に記載されるカードロック機構は、ロック部材が退避位置にあることを検出するためのセンサを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるカードロック機構では、ノブの手指で回転させることにロック部材を動かし、ロック部材を退避位置とすることができる。しかしながら、ノブを回し過ぎたときにロック部材やモータの破損がもたらされるおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、モータで駆動されるロック部材を有するカードロック機構を備えるとともにノブを回転することによりロック部材によるカードのロック状態を手動で解除できるカードリーダであって、ノブの過回転によるロック部材やモータの破損を防ぐことができるカードリーダと、そのようなカードリーダの制御方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカードリーダは、カードが挿入及び排出される挿入口と、挿入口から挿入されたカードが搬送される搬送路と、搬送路においてカードが詰まったときに挿入口からのカードの引抜きを阻止するカードロック機構と、を備えるカードリーダにおいて、カードロック機構は、モータと、カードに接触してカードの引き抜きを阻止する阻止爪が形成されており、モータによって駆動されることによってカードに阻止爪が接触する接触位置と搬送路から阻止爪が退避する退避位置との間で移動するロック部材と、モータの出力軸に機械的に連結したノブと、ロック部材が退避位置にあることを検出する検知機構と、を備え、カードリーダは、モータを駆動することによってロック部材の位置を制御する制御部を備え、制御部は、ロック部材が接触位置に移動するようにモータを駆動する第1の制御を行なったのちに検知機構によってロック部材が退避位置に移動したときを検知したときに、モータを駆動することによってノブに動きを与えてノブを操作している作業者に対して触覚的に注意を喚起する触覚刺激シーケンスを実行することを特徴とする。
【0007】
本発明のカードリーダでは、カードロック機構のロック部材を接触位置に移動させる制御を行なったのちに作業者が手指でノブを操作してロック部材を退避位置まで移動させたことを検出した場合にノブに動きを与える触覚刺激シーケンスを実行することにより、作業者はノブの回転の許容範囲の限界に近付いていることを認識することができ、ノブの回し過ぎによるロック部材やモータの破損などを防ぐことができる。
【0008】
本発明のカードリーダでは、触覚刺激シーケンスは、例えば、所定の角度でモータを正方向に回転させ、その後、その所定の角度でモータを逆方向に回転させることを繰り返すことを含むシーケンスであってよい。このような触覚刺激シーケンスではノブが振動するので、作業員はその触覚刺激シーケンスを確実に認識することができる。またこの場合、モータをステッピングモータで構成すると、所定のステップ数でモータを正転及び逆転させる制御を繰り返せばよいことになるから、触覚刺激シーケンスを実行するための制御が容易なものになる。
【0009】
本発明のカードリーダでは、触覚刺激シーケンスは、第1の制御におけるモータの回転速度よりも遅い速度で、ロック部材を接触位置に向かわせる方向にモータを回転させることを含むシーケンスであってもよい。この触覚刺激シーケンスでは、接触位置に向かってロック部材がゆっくりと動くので、ノブの過回転をより確実に防止できる。
【0010】
本発明のカードリーダでは、検知機構は、ロック部材と連動する遮蔽部材と、遮蔽部材によって光路が遮られるセンサとからなっていてもよい。このような検知機構によれば、ロック部材が退避位置にあることを簡単な構成で確実に検知することができる。
【0011】
本発明のカードリーダでは、制御回路は、搬送路におけるカードの詰まりを検知したときに第1の制御を実行することが好ましい。これによりいわゆるフィッシング行為を防ぐことが可能になる。
【0012】
本発明の制御方法は、カードが挿入及び排出される挿入口と、挿入口から挿入されたカードが搬送される搬送路と、搬送路においてカードが詰まったときに挿入口からのカードの引抜きを阻止するカードロック機構と、を備えるカードリーダの制御方法において、カードロック機構は、モータと、カードに接触してカードの引き抜きを阻止する阻止爪が形成されており、モータによって駆動されることによってカードに阻止爪が接触する接触位置と搬送路から阻止爪が退避する退避位置との間で移動するロック部材と、モータの出力軸に機械的に連結したノブとを備えており、ロック部材が接触位置に移動するようにモータを駆動する第1の制御を行なったのちにロック部材が退避位置に移動したときを検知したときに、モータを駆動することによってノブに動きを与えてノブを操作している作業者に対して触覚的に注意を喚起する触覚刺激シーケンスを実行することを特徴とする。
【0013】
本発明の制御方法では、カードロック機構のロック部材を接触位置に移動させる制御を行なったのちに作業者が手指でノブを操作してロック部材を退避位置まで移動させたことを検出した場合にノブに動きを与える触覚刺激シーケンスを実行することにより、作業者はノブの回転の許容範囲の限界に近付いていることを認識することができ、ノブの回し過ぎによるロック部材やモータの破損などを防ぐことができる。
【0014】
本発明の制御方法において触覚刺激シーケンスは、例えば、所定の角度でモータを正方向に回転させ、その後、所定の角度でモータを逆方向に回転させることを繰り返すことを含むシーケンスである。このような触覚刺激シーケンスではノブが振動するので、作業員はその触覚刺激シーケンスを確実に認識することができる。
【0015】
また本発明の制御方法において触覚刺激シーケンスは、第1の制御におけるモータの回転速度よりも遅い速度で、ロック部材を接触位置に向かわせる方向にモータを回転させることを含むシーケンスであってもよい。この触覚刺激シーケンスでは、接触位置に向かってロック部材がゆっくりと動くので、ノブの過回転をより確実に防止できる。
【0016】
本発明の制御方法では、搬送路における前記カードの詰まりを検知したときに第1の制御を実行することが好ましい。これによりいわゆるフィッシング行為を防ぐことが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、モータで駆動されるロック部材を有するカードロック機構を備えるとともにノブを回転することによりロック部材によるカードのロック状態を手動で解除できるカードリーダにおいて、ノブの過回転によるロック部材やモータの破損を防ぐことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の一形態のカードリーダの概略構成を示す模式断面図である。
【
図2】カードロック機構の構成を示す側面図である。
【
図3】カードロック機構の構成を示す斜視図である。
【
図4】カードロック機構における動力伝達機構を示す斜視図である。
【
図5】ロック部材と遮蔽部材の動きを示す図である。
【
図6】カードリーダの回路構成を示すブロック図である。
【
図7】カードリーダの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施の一形態のカードリーダの概略構成を示す模式断面図である。
図1に示すカードリーダ1は、磁気カードあるいはICカードなどであるカード2に対して、データの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を含む各種の処理を実行するものである。このカードリーダ1は、機械的な構成としては特許文献1に開示されたものと同様のものであり、例えば現金自動預け払い機などの上位装置に組み込まれる。
【0020】
カードリーダ1は、利用者によってカード2が挿し込まれる挿入部3と、挿入部3に接続し、挿入部3に挿し込まれたカード2を引き込んでそのカード2に対する各種の処理を実行する本体部4とを備えている。挿入部3は、カード2が実際に挿入されまたカード2を排出する開口である挿入口31を備えるとともに、挿入口31を介して挿入部3にカード2が挿し込まれたかどうかを検出する挿入検出センサ32が取り付けられている。挿入検出センサ32は、例えば発光部と受光部との間の光路がカード2によって遮断されることによってカード2が挿入されたことを検知するものであってもよいし、他の形式のものであってもよい。本体部4の内部には、カード2に対する処理を実行するときにカード2が搬送されることなる搬送路41と、カード2を搬送するために搬送路41に沿って設けられた搬送ローラ42と、搬送路41の長さ方向のほぼ中央に設けられた磁気ヘッド43と、搬送路41に沿って設けられてカード2などの物体を検出する複数個のカード検出センサ45とが設けられている。搬送ローラ42は、搬送モータ52(
図6参照)によって駆動され、搬送モータ52が回転することによって搬送ローラ42も回転し、それにより、本体部4内でカード2が図示左右方向に搬送される。図示したものでは3対の搬送ローラ42が設けられるとともに3個のカード検出センサ45が設けられている。カード検出センサ45としては、例えば、物体によって光路が遮断されることによりその物体を検知する光学式のものや、静電容量変化を検出して物体を検知する静電容量型のものを使用することができる。
【0021】
さらに本体部4には、カード2が搬送路41において詰まったとき(ジャムしたとき)に挿入口31からのカード2の引き抜きを阻止するために、搬送路41の上側に配置されたカードロック機構6を備えている。カードロック機構6は、カード2の詰まりが発生したとき以外にも、例えば、挿入口31に設けられているシャッター(不図示)のこじ開けを検知したとき、搬送路41におけるカード2の外部からの強制的な移動を検知したとき、搬送路41などに設けられた各種のセンサにおいて異常な変化を検知したときなどにも、挿入口31からのカード2の引き抜きを阻止する。カードロック機構6は、搬送路41内に突出することによりカード2に接触してカード2の引抜きを阻止する阻止爪が形成されているロック部材65を備えている。ロック部材65は、カード2に阻止爪が接触する接触位置と搬送路41から阻止爪が退避する退避位置との間で移動できるように設けられている。
図1は、ロック部材65が接触位置にあるものとして描かれている。
【0022】
本実施形態のカードリーダ1で用いられるカードロック機構6は、特許文献1において「実施の形態2」として示されているカードリーダで用いられているカードロック機構と同じものであり、その詳細な構成は特許文献1に記載される通りである。特許文献1の内容は、引用によってここに組み込まれる。
図2はカードロック機構6の側面図であり、
図3はカードロック機構6の斜視図であり、
図4はカードロック機構6における動力伝達機構66を示す斜視図であって、いずれも特許文献1に開示されたものである(符号等は変えてある)。
図4では、モータ64の回転軸64aに取り付けられるノブ71は示されていない。以下、カードロック機構6について説明する。以下の説明において、左右方向とは、搬送路41におけるカード2の搬送面内においてカード2の搬送方向とは直交する方向、すなわち搬送路41の幅方向のことである。高さ方向とは、搬送路41におけるカード2の搬送面に直交する方向のことである。前端側(手前側)、奥側などというときは、カード2の搬送方向に沿って挿入口31に近い側が前端側(手前側)であり、挿入口31に遠い側が奥側であるものとする。
【0023】
カードロック機構6は、ロック部材65のほかに、ロック部材65を接触位置と退避位置との間で移動させるためにロック部材65を駆動するモータ64と、モータ64の動力をロック部材65に伝達する動力伝達機構16とを備えている。ロック部材65は、平板状に形成された2枚のロック板85によって構成されており、2枚のロック板85は、その厚さ方向が左右方向を向くようにして、左右方向に配列している。ロック板85の各々には、カード2に接触してカード2の引抜きを阻止する2個の阻止爪85a,85bが形成されるとともに、後述する平歯車75と噛み合う扇形歯車85cが形成されている。
【0024】
ロック板85の前端側部分は、カードロック機構6の支持フレームに固定されて左右方向に延びる固定軸76に回動可能に保持されている。阻止爪85a,85bは、ロック板85の下端側に形成されており、固定軸76よりも奥側に配置されている。阻止爪85aは、阻止爪85bよりも奥側に配置されている。阻止爪85a,85bは、左右方向から見たときに先端側に向かうにしたがってその幅が狭くなる三角形状に形成されており、先端側が尖っている。扇形歯車85cは、ロック板85の奥端側に形成されている。ロック部材65は、阻止爪85a,85bが上側からカード2に接触するように、搬送路41の上側に配置されている。上述したようにロック部材65は、動力伝達機構16を介してモータ64によって駆動されることによって、カード2に阻止爪85a,85bが接触する接触位置と、搬送路41から阻止爪85a,85bが退避する退避位置との間で移動可能である。退避位置では、阻止爪85a,85bは搬送路41よりも上方に移動するので、阻止爪85a,85bがカード2に接触することはない。
【0025】
モータ64からの動力をロック部材65に伝達する動力伝達機構66について説明する。モータ64は、その出力軸64aの軸方向が高さ方向を向くように取り付けられている。動力伝達機構66は、モータ64の出力軸64aに取り付けられたねじ歯車68と、ねじ歯車68に噛み合うはす歯歯車69とからなるウォームギヤ70を備えている。はす歯歯車69は回転軸78に取り付けられており、回転軸78は、左右方向に延びている。この回転軸78には、平歯車72が取り付けられている。平歯車72に対して平歯車73が噛み合っている。平歯車73は、ピンクラッチ(不図示)を介して回転軸74に取り付けられている。回転軸74も左右方向に延びており、回転軸74には、ロック板85の上述した扇形歯車85cと噛み合う平歯車75も取り付けられている。このような駆動伝達機構66を用いることにより、モータ64の回転は回転軸74に伝達され、さらに、回転軸74に取り付けられている平歯車75を介してロック板85の扇形歯車85cに伝達される。その結果、モータ64の回転方向に応じてロック部材65が固定軸76を中心にして回動し、ロック部材65は退避位置から接触位置へあるいは接触位置から退避位置へと移動する。ロック部材が65が接触位置に移動するときは阻止爪85a,85bは下方に移動し、退避位置に移動するときは阻止爪85a,85bは上方に移動する。
【0026】
ロック部材65には、左右方向の両側へ突出するガイドピン87が固定されており、ガイドピン87は、カードロック機構6のフレームに形成されるガイド溝89に係合している。ロック部材65は、ガイド溝89とガイドピン87とによって案内されて、接触位置と退避位置との間で移動する。
図2に示すように、ロック部材65が接触位置にあるときは、阻止爪85aは奥下側に向かって突出し、阻止爪85bは手前下側に向かって突出している。いずれの阻止爪85a,85bも先端が尖るように三角形状に形成されているので、阻止爪85a,85bが接触している状態のカード2に手前側への引抜き力が作用すると、ロック部材65において
図2での反時計方向の回動力が生じて、阻止爪85aの先端がカード2に突き刺さる。一方、阻止爪85a,85bが接触している状態のカード2に奥側への押込み力が作用すると、ロック部材65において
図2での時計方向の回動力が生じて、阻止爪85bの先端がカード2に突き刺さる。これにより、搬送路41内に詰まっている状態のカード2が挿入口31から引き抜かれることが防止される。ここでの説明から明らかなように、ひとたびロック部材65が接触位置に移動すれば、そののちは、モータ64が駆動されていなくても(すなわちトルクを発生させていなくても)接触位置の状態が維持され、カード2の移動に伴って阻止爪85a,85bのいずれかがカード2に突き刺さるので、挿入口31を介したカード2の引き抜きを防止することができる。
【0027】
さらにカードロック機構6には、ロック部材65が退避位置にあることを検知する検知機構を備えている。この検知機構は、退避検出センサ90と遮蔽部材91とによって構成されている。退避検出センサ90は、例えば、発光素子とこの発光素子からの光を受光する受光素子とを有する透過型の光学式センサであり、センサ基板93を介してカードロック機構6の支持フレームに固定されている。遮蔽部材91は、板状の部材であって、その厚さ方向が左右方向と一致し、かつ、ロック部材65と連動して左右方向に直交する面内で動くように、カードロック機構6の支持フレームに固定された固定軸92に回動可能に保持されている。遮蔽部材91には、ロック部材65に設けられているガイドピン87の先端部が挿通されるカム溝91aが形成されており、これによって遮蔽部材91はロック部材65と連動して移動する。具体的には、ロック部材65が固定軸76を周りを回動することにより、遮蔽部材41は、固定軸42を中心に回動する。回動による遮蔽部材41の移動範囲を挟むように退避検出センサ90が設けられており、ロック部材65が退避位置にあるときに遮蔽部材91は退避検出センサ90の発光素子から受光素子へ向かう光を遮る。これにより、カードリーダ1ではロック部材65が退避位置にあることを検知することができる。
【0028】
図5は、ここで説明した、ロック部材65が退避位置にあるかどうかの検出を説明する図である。
図5では、
図2から
図4までに示したものとは遮蔽部材41の形状や支持フレームにおける退避検出センサ90の取り付け位置が異なっているが、退避位置であるかどうかの検出原理は
図5に示すものと、
図2から
図4に示したものとでは同じである。
図5では、ロック部材65が固定軸76の周りを反時計回りに回動することによって接触位置から退避位置へと移動するのにつれて、遮蔽部材91が固定軸92の周りを時計回りに回動し、その結果、遮蔽部材91の先端部が退避検出センサ90の光路を遮ることが示されている。
【0029】
図2及び
図3に示すようにカードロック機構6において、ねじ歯車68の上端側には、モータ64の出力軸64aを手動で回転させるためのノブ71が固定されており、ノブ71はモータ64の出力軸64aに機械的に接続している。本実施形態のカードリーダ1では、カードロック機構6のロック部材65はモータ64からの動力によって接触状態と退避状態との間を移動する。したがってモータ64を制御することにより、ロック部材65を接触位置から退避位置に移動させることができる。しかしながら、カードリーダ1においてカード2の詰まりが発生し正規の作業者がカード2を取り出すときなどに、手動でロック部材65を退避状態とすることが必要となることがある。ノブ71は、手動でロック部材65の接触状態を解除して退避状態とするために設けられており、ノブ71に刻印されている矢印の方向へ手指によってノブ71を回転することによって、モータ64の回転軸64aも回転し、ロック部材65を退避状態とすることができる。
【0030】
図6は、本実施形態のカードリーダ1の電気的な構成を示すブロック図である。電気的構成としてカードリーダ1は、カードリーダ1の動作の制御を行うとともに上位装置との間でデータの入出力を行う制御回路50と、磁気ヘッド43と制御回路50との間に設けられた読み出し・書き込み回路51と、搬送ローラ42を駆動する搬送モータ52を備えている。制御回路50には、上位装置からのコマンドも入力する。カード検出センサ45と挿入検出センサ31と退避検出センサ90の検出出力は制御回路50に入力する。制御回路50は、読み出し・書き込み回路51と磁気ヘッド43とを介してカード2に対するデータの読み出し及び書き込みの処理を行うとともに、搬送モータ53とカードロック機構6に設けられた上述したモータ64とを制御する。
【0031】
カードリーダ1によりカード2に対してなんらかの処理を行うときは、カード2は本体部4の中に取り込まれ、処理の内容に応じ、本体部4の内部で搬送路41に沿って搬送される。磁気ヘッド43を介してカード2に対してデータの読み出しや書き込みを行うときは、カード2は搬送中である必要がある。制御回路50は所定の処理シーケンスにしたがって搬送モータ52を駆動してカードリーダ1内でカード2を移動させるが、搬送モータ52への駆動の内容と実際にカード検出センサ45やカード挿入センサ31からの検出結果が矛盾することがある。例えば、搬送路41に沿ってカード2を手前側に移動させるように搬送モータ52を駆動したにも関わらず、奥側のカード検出センサ45ではカード2を検出しているが手前側のカード検出センサ45ではカード2を検出していない、ということが起こることがある。このようなときは、搬送路41におけるカード2の詰まりが発生したと判断することができる。カード検出センサ43を用いずに、カード2の詰まりを検出する専用のセンサを設けてこのセンサからの検出出力を用いてカード2の詰まりの有無を判定してもよい。制御回路50は、搬送路41においてカード2の詰まりが発生したと判断したときは、モータ64を駆動してロック部材65を接触位置に移動させる。これにより、カード2の移動がロック部材65により阻止されて、挿入口31を介してカード2が不正に引き抜かれることを防止できる。
【0032】
ロック部材65を接触位置に移動させたのち制御回路50は、上位装置などからのコマンドの入力があったときにモータ46を駆動してロック部材65を退避位置に移動させる。また、コマンドの入力がない場合であっても作業者がその手指でカードロック機構6のノブ71を回転させることにより、ロック部材65を退避位置に戻すことができる。しかしながら、ノブ7を手指で回転させることによってロック部材65を退避位置とするときに、ノブ71を回し過ぎると、ロック部材65やモータ64、さらには駆動伝達機構66の破損をもたらすおそれがある。そこで本実施形態カードリーダ1では、ノブ71の回し過ぎを防ぐために、作業者がノブ71を操作しているときにノブ71の回し過ぎが発生しそうになったら、制御回路50がモータ64を駆動することによりノブ71を介して触覚的な信号を作業者に与えてその作業者の注意を喚起するようにしている。より具体的には制御回路50は、モータ64を駆動してロック部材65を接触位置に移動させたのちに、上位装置などからのコマンドの入力がないにも関わらずロック部材65が退避位置に移動したことを退避検出センサ90が検出したときに、ノブ71において振動を発生させるあるいはノブ71をゆっくり回転させるようにモータ64を駆動する触覚刺激シーケンスを実行する。
【0033】
モータ64の回転方向について、ロック部材65を接触位置に向けて移動させる回転方向を正方向とし、退避位置に向けて移動させる回転方向を逆方向とする。具体的な触覚刺激シーケンスとして、モータ64を所定の角度だけ正方向に駆動し、その後、同じ角度だけ逆方向に駆動することを繰り返すものがある。モータ64がステッピングモータである場合には、1あるいは数ステップだけモータ64を正方向に駆動し、続いて同じステップ数で逆方向に駆動すればよい。このような触覚刺激シーケンスを実施すれば、ノブ71が正方向及び逆方向に交互に微小な角度だけ回転するすなわち振動することとなる。このようなノブ71の振動は、ノブ71を手指で操作している作業者がその触覚で感じることができ、その作業者は、ノブ71を回し過ぎていることについての注意を喚起される。別の触覚刺激シーケンスとして、ロック部材65を実際に接触位置に移動させるときの回転速度よりは低い回転速度でモータ64を正方向に回転させるものがある。このようなノブ71の回転も作業者の触覚によって感知される。ここで回転速度を低速とするのは、作業者に対する安全確保のためである。さらに、上述した振動と正方向への低速回転とを組み合わせ、ある一定の時間だけ振動を発生し、それに引き続いて別の一定の時間だけ正方向へモータ64を低速で回転させることを繰り返すようにしてもよい。ここでは触覚刺激シーケンスの例を説明したが、モータ64を駆動することによって作業者がその触覚で感知できる動きをノブ71において発生させるものであれば、任意の触覚刺激シーケンスを用いることができる。
【0034】
図7は、カードリーダ1の動作を示すフローチャートであって、ロック部材65に関連して制御回路50が実行する処理を示している。初期状態ではロック部材65は退避位置にあり、挿入口31を介してカード2をカードリーダ1に挿入でき、また、カードリーダ1からカード2を排出することができる。制御回路50は、ステップ101において、搬送モータ52の駆動状態や、カード検出センサ45及び挿入検出センサ32の検出出力に基づいて、搬送路41におけるカード2の詰まりが発生したかどうかを判定する。カード2の詰まりの発生を検知しないときは、そのままステップ101の処理を繰り返す。一方、カード2の詰まりを検知したときは、制御回路50は、ステップ102において、モータ64を駆動してロック部材65を接触位置に移動させ、その後、ステップ103において、上位装置からの、ロック部材65を退避位置へ移動させるコマンドの入力の有無を判定する。ここで上位装置からのコマンドの入力があれば、制御回路50は、ステップ104において、モータ64を駆動してロック部材65を退避位置に移動させ、その後、一連の処理を終了する。
【0035】
ステップ103において上位装置からのコマンドが入力していない場合、制御回路50は、ステップ105において、退避検出センサ90によってロック部材65が退避位置へ移動したことが検知されたかどうかを判定する。退避位置への移動が検知されない場合には、制御回路50は、ステップ103からの処理を繰り返す。一方ステップ105において退避位置への移動を検知した場合には、制御回路50は、上述した触覚刺激シーケンスを実行した上でステップ105からの処理を繰り返す。その結果、作業者が手指によりノブ71が操作されてロック部材65が退避位置に動かされているときは、連続して触覚刺激シーケンスが実行され、作業者に対してノブ71の回し過ぎに対する注意を促すことができる。上述したように制御回路50は例えばマイクロプロセッサで構成されているので、ここで述べた処理はカードリーダ1においてファームウエアによって実現することができる。
【0036】
以上説明した本実施形態のカードリーダ1によれば、カードロック機構6のモータ64の回転軸64aに機械的に連結しているノブ71を作業者が操作することによってカード2のロック状態(ロック部材65が接触位置にある状態)を解除するときに、ノブ71に動きをもたらす触覚刺激シーケンスを実行することによって作業者に対してノブ71の回し過ぎに対する注意を喚起することができ、ノブ71の過回転によるロック部材65を含むカードロック機構6やモータ64の損傷を防止することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…カードリーダ;2…カード;3…挿入部;4…本体部;6…カードロック機構;31…挿入口;41…搬送路;50…制御回路;64…モータ;64a…回転軸;65…ロック部材;66…駆動伝達機構;68…ねじ歯車;69…はす歯歯車;70…ウォームギヤ;71…ノブ;72,73,75…平歯車;74,78…回転軸;76,92…固定軸;85…ロック板;85a,85b…阻止爪;87…ガイドピン;89…ガイド溝;90…退避検出センサ;91…遮蔽部材;91a…カム溝。