(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027637
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】充電制御装置、充電制御方法及び推定モデル生成装置、
(51)【国際特許分類】
H02J 7/04 20060101AFI20230222BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230222BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20230222BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20230222BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20230222BHJP
B60L 53/62 20190101ALI20230222BHJP
B60L 53/63 20190101ALI20230222BHJP
B60L 53/67 20190101ALI20230222BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20230222BHJP
【FI】
H02J7/04 C
H02J7/00 P
H02J13/00 311T
B60L50/60
B60L53/14
B60L53/62
B60L53/63
B60L53/67
B60L58/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132878
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004411
【氏名又は名称】日揮ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153040
【弁理士】
【氏名又は名称】川井 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真二
(72)【発明者】
【氏名】谷川 圭史
(72)【発明者】
【氏名】木村 絵里子
(72)【発明者】
【氏名】西本 浩也
【テーマコード(参考)】
5G064
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G064CB21
5G064DA11
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA08
5G503FA06
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC05
5H125BC08
5H125BC12
5H125BC21
5H125BE02
5H125DD02
5H125EE22
5H125EE23
5H125EE27
5H125EE30
5H125EE51
5H125EE55
(57)【要約】
【課題】外部の充電設備からの車両の蓄電装置への充電における電力デマンドを調整する。
【解決手段】充電制御装置20は、第1の充電速度で充電する第1の制御状態で充電設備を制御する制御部21と、充電設備から電流値及び電圧値並びにSOCを取得する充電状態取得部22と、第1の制御状態において蓄電装置の充電が終了する充電終了予定時刻を算出する充電終了予定時刻算出部と、充電開始時のSOCを含む推定用データを取得する推定用データ取得部24と、充電の状態が解除されることにより充電が終了する充電終了時刻を推定するための推定モデルに推定用データを入力して、推定モデルから出力された充電終了時刻を取得する推定部25と、を備え、制御部21は、充電終了予定時刻が充電終了時刻より前の時刻である場合に、第1の充電速度より遅い第2の充電速度で充電する第2の制御状態で充電設備を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部に設けられた充電設備から供給される電力により前記車両に搭載された蓄電装置を充電するための前記充電設備を制御する充電制御装置であって、
第1の充電速度で前記蓄電装置が充電される第1の制御状態で前記充電設備を制御する制御部と、
前記充電設備から、充電中における電流値及び電圧値並びに前記蓄電装置のSOCを取得する充電状態取得部と、
前記第1の制御状態において前記蓄電装置の充電が終了する時刻である充電終了予定時刻を算出する充電終了予定時刻算出部であって、充電開始時以後の第1の時刻のSOCと該第1の時刻より後の時刻である第2の時刻のSOCとの差分値に基づいて、満充電となる時刻を前記充電終了予定時刻として算出する、充電終了予定時刻算出部と、
少なくとも充電開始時の前記蓄電装置のSOCを含む推定用データを取得する推定用データ取得部と、
前記充電設備による充電の状態が解除されることにより前記蓄電装置の充電が終了する時刻である充電終了時刻を推定するための学習済みの推定モデルに前記推定用データを入力して、前記推定モデルから出力された前記充電終了時刻を取得する推定部と、を備え、
前記制御部は、前記充電終了予定時刻が前記充電終了時刻より前の時刻である場合に、前記第1の充電速度より遅い充電速度である第2の充電速度で前記蓄電装置が充電される第2の制御状態で前記充電設備を制御し、
前記推定モデルは、前記推定用データに基づいて前記充電終了時刻を推定するモデルであって、少なくとも充電開始時のSOCを含む入力データと前記充電終了時刻からなる出力データとのペアからなる学習データを用いて、前記入力データを前記推定モデルに入力して得られたモデル出力値と前記出力データとの誤差に基づいて前記推定モデルのパラメータを更新する機械学習により構築される、
充電制御装置。
【請求項2】
前記推定用データは、前記充電設備が設置される駐車場の位置を特定する駐車場位置情報を含み、
前記入力データは、前記駐車場位置情報を含む、
請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項3】
前記推定用データは、前記駐車場内において前記車両が駐車する位置を特定する駐車位置情報を含み、
前記入力データは、前記駐車位置情報を含む、
請求項2に記載の充電制御装置。
【請求項4】
前記推定モデルは、ニューラルネットワークを含み、
前記機械学習は、前記入力データを前記ニューラルネットワークに入力して得られた前記モデル出力値と、前記出力データとの誤差に基づいて、前記ニューラルネットワークのパラメータを更新する処理を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の充電制御装置。
【請求項5】
前記推定用データは、充電が開始された時刻である充電開始時刻、前記蓄電装置の満充電容量、及び前記充電設備の定格容量のうちの少なくとも一つを更に含み、
前記入力データは、前記充電開始時刻、前記満充電容量、及び前記充電設備の前記定格容量のうちの少なくとも一つを更に含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の充電制御装置。
【請求項6】
前記推定用データ取得部は、前記第1の時刻から前記第2の時刻までの充電期間における、前記電流値及び前記電圧値に基づいて算出される充電電力の積算値である積算電力値を、前記第1の時刻のSOCと前記第2の時刻のSOCとの差分値で除することにより、前記満充電容量を算出し、
前記推定用データは、前記算出された前記満充電容量を含む、
請求項5に記載の充電制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記充電設備に対して予め設定された許容される最大の使用電力である第1の最大電力デマンドを超えない電力により、前記蓄電装置の充電をさせるように前記充電設備を制御する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の充電制御装置。
【請求項8】
前記充電制御装置は、複数の前記充電設備のそれぞれを制御し、
前記制御部は、前記複数の充電設備のそれぞれにおける充電時の電力の合計が、前記複数の充電設備の全体に対して予め設定された許容される最大の使用電力である第2の最大電力デマンドを超えないように、前記複数の充電設備のそれぞれを制御する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の充電制御装置。
【請求項9】
車両の外部に設けられた充電設備から供給される電力により前記車両に搭載された蓄電装置を充電するための前記充電設備を制御する充電制御装置における充電制御方法であって、
第1の充電速度で前記蓄電装置が充電される第1の制御状態で前記充電設備を制御する第1制御ステップと、
前記充電設備から、充電中における電流値及び電圧値並びに前記蓄電装置のSOCを取得する充電状態取得ステップと、
前記第1の制御状態において前記蓄電装置の充電が終了する時刻である充電終了予定時刻を算出する充電終了予定時刻算出ステップであって、充電開始時以後の第1の時刻のSOCと該第1の時刻より後の時刻である第2の時刻のSOCとの差分値に基づいて、満充電となる時刻を前記充電終了予定時刻として算出する、
充電終了予定時刻算出ステップと、
少なくとも充電開始時の前記蓄電装置のSOCを含む推定用データを取得する推定用データ取得ステップと、
前記充電設備による充電の状態が解除されることにより前記蓄電装置の充電が終了する時刻である充電終了時刻を推定するための推定モデルに前記推定用データを入力して、前記推定モデルから出力された前記充電終了時刻を取得する推定ステップと、
前記充電終了予定時刻が前記充電終了時刻より前の時刻である場合に、前記第1の充電速度より遅い充電速度である第2の充電速度で前記蓄電装置が充電される第2の制御状態で前記充電設備を制御する第2制御ステップと、を有し、
前記推定モデルは、前記推定用データに基づいて前記充電終了時刻を推定するモデルであって、少なくとも充電開始時のSOCを含む入力データと前記充電終了時刻からなる出力データとのペアからなる学習データを用いて、前記入力データを前記推定モデルに入力して得られたモデル出力値と前記出力データとの誤差に基づいて前記推定モデルのパラメータを更新する機械学習により構築される、
充電制御方法。
【請求項10】
車両の外部に設けられた充電設備から供給される電力により充電される前記車両に搭載された蓄電装置の、前記充電設備による充電の状態が解除されることにより充電が終了する時刻である充電終了時刻を推定するための推定モデルを生成する推定モデル生成装置であって、
少なくとも充電開始時の前記蓄電装置のSOCを含む入力データと、前記充電終了時刻からなる出力データとのペアからなる学習データを取得する学習データ取得部と、
前記学習データを用いて前記推定モデルを生成する推定モデル生成部であって、前記入力データを前記推定モデルに入力して得られたモデル出力値と、前記出力データとの誤差に基づいて前記推定モデルのパラメータを更新する、推定モデル生成部と、
前記推定モデル生成部により生成された前記推定モデルを出力するモデル出力部と、
を備える推定モデル生成装置。
【請求項11】
前記入力データは、前記充電設備が設置される駐車場の位置を特定する駐車場位置情報を含む、
請求項10に記載の推定モデル生成装置。
【請求項12】
前記入力データは、前記駐車場内において前記車両が駐車する位置を特定する駐車位置情報を含む、
請求項11に記載の推定モデル生成装置。
【請求項13】
前記推定モデルは、ニューラルネットワークを含み、
前記推定モデル生成部は、前記入力データを前記ニューラルネットワークに入力して得られた前記モデル出力値と、前記出力データとの誤差に基づいて、前記ニューラルネットワークのパラメータを更新する、
請求項10~12のいずれか一項に記載の推定モデル生成装置。
【請求項14】
前記入力データは、充電が開始された時刻である充電開始時刻、前記蓄電装置の満充電容量、及び前記充電設備の定格容量のうちの少なくとも一つを更に含む、
請求項10~13のいずれか一項に記載の推定モデル生成装置。
【請求項15】
前記入力データに含まれる前記満充電容量は、充電開始時以後の一定期間における充電電力の積算値である積算電力値を、前記一定期間の始期のSOCと終期のSOCとの差分値で除することにより算出される、
請求項14に記載の推定モデル生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、充電制御装置、充電制御方法及び推定モデル生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)及びプラグインハイブリッド車両(PHEV)等の車両では、車両の外部に設けられた充電設備から供給される電力により蓄電装置の充電が行われる。バッテリのSOC及び既知のバッテリ容量並びに車両の利用に関する時刻情報等に基づいて、充電スケジュールを生成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリ(蓄電装置)の容量は、車種により異なる。充電時にSOC(State of Charge)の情報を蓄電装置から取得することは可能である一方で、容量の情報を出力可能な蓄電装置は特殊なものであるので、容量が既知ではない場合には、充電に要する時間を精度良く算出することは困難であった。また、蓄電装置の容量を認識するためのセンサを充電設備に設けることはコスト等の面から現実的ではなかった。一方、充電設備には、充電時の電力の上限としての定格電力が規定されているため、可能な場合には充電時の充電電力(電力デマンド)を低下させることの要請があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、外部の充電設備からの車両の蓄電装置への充電における電力デマンドを調整することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る充電制御装置は、車両の外部に設けられた充電設備から供給される電力により車両に搭載された蓄電装置を充電するための充電設備を制御する充電制御装置であって、第1の充電速度で蓄電装置が充電される第1の制御状態で充電設備を制御する制御部と、充電設備から、充電中における電流値及び電圧値並びに蓄電装置のSOCを取得する充電状態取得部と、第1の制御状態において蓄電装置の充電が終了する時刻である充電終了予定時刻を算出する充電終了予定時刻算出部であって、充電開始時以後の第1の時刻のSOCと該第1の時刻より後の時刻である第2の時刻のSOCとの差分値に基づいて、満充電となる時刻を充電終了予定時刻として算出する、充電終了予定時刻算出部と、少なくとも充電開始時の蓄電装置のSOCを含む推定用データを取得する推定用データ取得部と、充電設備による充電の状態が解除されることにより蓄電装置の充電が終了する時刻である充電終了時刻を推定するための学習済みの推定モデルに推定用データを入力して、推定モデルから出力された充電終了時刻を取得する推定部と、を備え、制御部は、充電終了予定時刻が充電終了時刻より前の時刻である場合に、第1の充電速度より遅い充電速度である第2の充電速度で蓄電装置が充電される第2の制御状態で充電設備を制御し、推定モデルは、推定用データに基づいて充電終了時刻を推定するモデルであって、少なくとも充電開始時のSOCを含む入力データと充電終了時刻からなる出力データとのペアからなる学習データを用いて、入力データを推定モデルに入力して得られたモデル出力値と出力データとの誤差に基づいて推定モデルのパラメータを更新する機械学習により構築される。
【0007】
本開示の一側面に係る充電制御方法は、車両の外部に設けられた充電設備から供給される電力により車両に搭載された蓄電装置を充電するための充電設備を制御する充電制御装置における充電制御方法であって、第1の充電速度で蓄電装置が充電される第1の制御状態で充電設備を制御する第1制御ステップと、充電設備から、充電中における電流値及び電圧値並びに蓄電装置のSOCを取得する充電状態取得ステップと、第1の制御状態において蓄電装置の充電が終了する時刻である充電終了予定時刻を算出する充電終了予定時刻算出ステップであって、充電開始時以後の第1の時刻のSOCと該第1の時刻より後の時刻である第2の時刻のSOCとの差分値に基づいて、満充電となる時刻を充電終了予定時刻として算出する、充電終了予定時刻算出ステップと、少なくとも充電開始時の蓄電装置のSOCを含む推定用データを取得する推定用データ取得ステップと、充電設備による充電の状態が解除されることにより蓄電装置の充電が終了する時刻である充電終了時刻を推定するための推定モデルに推定用データを入力して、推定モデルから出力された充電終了時刻を取得する推定ステップと、充電終了予定時刻が充電終了時刻より前の時刻である場合に、第1の充電速度より遅い充電速度である第2の充電速度で蓄電装置が充電される第2の制御状態で充電設備を制御する第2制御ステップと、を有し、推定モデルは、推定用データに基づいて充電終了時刻を推定するモデルであって、少なくとも充電開始時のSOCを含む入力データと充電終了時刻からなる出力データとのペアからなる学習データを用いて、入力データを推定モデルに入力して得られたモデル出力値と出力データとの誤差に基づいて推定モデルのパラメータを更新する機械学習により構築される。
【0008】
このような側面によれば、第1の制御状態において、第1の時刻から第2の時刻までの間のSOCの差分値に基づいて充電終了予定時刻が算出される。従って、充電終了予定時刻の算出のために蓄電装置の容量が充電設備に予め認識される必要はない。そして、充電設備による充電状態が解除される時刻である充電終了時刻が推定モデルを用いて推定され、充電終了予定時刻が充電終了時刻より前の時刻である場合に、充電設備の制御状態が第1の充電速度より遅い第2の充電速度で充電される第2の制御状態に変更される。従って、不必要に高速に充電されることが防止されることにより、充電出力を低下させることが可能となるので、適切に電力デマンドが調整される。
【0009】
他の側面に係る充電制御装置では、推定用データは、充電設備が設置される駐車場の位置を特定する駐車場位置情報を含み、入力データは、駐車場位置情報を含むこととしてもよい。
【0010】
このような側面によれば、駐車場位置情報が入力データに含まれることにより、車両の当該駐車場における運用特性に応じた学習データが構成される。そして、駐車場位置情報を含む推定用データに基づいて推定された充電終了時刻に基づいて充電速度が制御されることにより、電力デマンドの平準化が可能となる。
【0011】
他の側面に係る充電制御装置では、推定用データは、駐車場内において車両が駐車する位置を特定する駐車位置情報を含み、入力データは、駐車位置情報を含むこととしてもよい。
【0012】
このような側面によれば、駐車位置情報が入力データに含まれることにより、車両の当該駐車位置における運用特性に応じた学習データが構成される。そして、駐車位置情報を含む推定用データに基づいて推定された充電終了時刻に基づいて充電速度が制御されることにより、電力デマンドの平準化が可能となる。
【0013】
他の側面に係る充電制御装置では、推定モデルは、ニューラルネットワークを含み、機械学習は、入力データをニューラルネットワークに入力して得られたモデル出力値と、出力データとの誤差に基づいて、ニューラルネットワークのパラメータを更新する処理を含むこととしてもよい。
【0014】
このような側面によれば、充電終了時刻の推定に好適な推定モデルが充電設備の制御に用いられる。
【0015】
他の側面に係る充電制御装置は、推定用データは、充電が開始された時刻である充電開始時刻、蓄電装置の満充電容量、及び充電設備の定格容量のうちの少なくとも一つを更に含み、入力データは、充電開始時刻、満充電容量、及び充電設備の定格容量のうちの少なくとも一つを更に含むこととしてもよい。
【0016】
このような側面によれば、高精度に充電終了時刻を推定することが可能な推定モデルが充電設備の制御に用いられる。
【0017】
他の側面に係る充電制御装置では、推定用データ取得部は、第1の時刻から第2の時刻までの充電期間における、前記電流値及び前記電圧値に基づいて算出される充電電力の積算値である積算電力値を、第1の時刻のSOCと第2の時刻のSOCとの差分値で除することにより、満充電容量を算出し、推定用データは、算出された満充電容量を含むこととしてもよい。
【0018】
このような側面によれば、充電設備が取得可能な情報であるSOC及び積算電力値に基づいて、推定用データとしての満充電容量を算出できる。
【0019】
他の側面に係る充電制御装置では、制御部は、充電設備に対して予め設定された許容される最大の使用電力である第1の最大電力デマンドを超えない電力により、蓄電装置の充電をさせるように充電設備を制御することとしてもよい。
【0020】
このような側面によれば、最大需要電力に基づいて電力の使用に対する料金が設定される場合が多いところ、充電時の電力が所定の第1の最大電力デマンドを超えないように制御されるので、電気料金の低減が可能となる。
【0021】
他の側面に係る充電制御装置では、充電制御装置は、複数の充電設備のそれぞれを制御し、制御部は、複数の充電設備のそれぞれにおける充電時の電力の合計が、複数の充電設備の全体に対して予め設定された許容される最大の使用電力である第2の最大電力デマンドを超えないように、複数の充電設備のそれぞれを制御することとしてもよい。
【0022】
このような側面によれば、充電制御装置が複数の充電設備を制御する場合において、各充電設備の充電時における電力の合計が所定の第2の最大電力デマンドを超えないように、各充電設備が制御されるので、電気料金の上昇が防止される。
【0023】
本開示の一側面に係る推定モデル生成装置は、車両の外部に設けられた充電設備から供給される電力により充電される車両に搭載された蓄電装置の、充電設備による充電の状態が解除されることにより充電が終了する時刻である充電終了時刻を推定するための推定モデルを生成する推定モデル生成装置であって、少なくとも充電開始時の蓄電装置のSOCを含む入力データと、充電終了時刻からなる出力データとのペアからなる学習データを取得する学習データ取得部と、学習データを用いて推定モデルを生成する推定モデル生成部であって、入力データを推定モデルに入力して得られたモデル出力値と、出力データとの誤差に基づいて推定モデルのパラメータを更新する、推定モデル生成部と、推定モデル生成部により生成された推定モデルを出力するモデル出力部と、を備える。
【0024】
このような側面によれば、充電開始時のSOCと充電終了時刻とのペアを含んで構成される学習データを用いた機械学習により推定モデルが構築される。従って、蓄電装置の容量の情報を要することなく充電終了時刻の推定が可能な推定モデルを得ることが可能となる。
【0025】
他の側面に係る推定モデル生成装置では、入力データは、充電設備が設置される駐車場の位置を特定する駐車場位置情報を含むこととしてもよい。
【0026】
このような側面によれば、駐車場位置情報が入力データに含まれることにより、車両の当該駐車場における運用特性に応じた学習データが構成される。このように構成された学習データにより生成された推定モデルにより、運用特性に応じた充電終了時刻の推定が可能となる。
【0027】
他の側面に係る推定モデル生成装置では、入力データは、駐車場内において車両が駐車する位置を特定する駐車位置情報を含むこととしてもよい。
【0028】
このような側面によれば、駐車位置情報が入力データに含まれることにより、車両の当該駐車位置における運用特性に応じた学習データが構成される。このように構成された学習データにより生成された推定モデルにより、運用特性に応じた充電終了時刻の推定が可能となる。
【0029】
他の側面に係る推定モデル生成装置では、推定モデルは、ニューラルネットワークを含み、推定モデル生成部は、入力データをニューラルネットワークに入力して得られたモデル出力値と、出力データとの誤差に基づいて、ニューラルネットワークのパラメータを更新することとしてもよい。
【0030】
このような側面によれば、充電終了時刻の推定に好適な推定モデルを構築することが可能となる。
【0031】
他の側面に係る推定モデル生成装置では、入力データは、充電が開始された時刻である充電開始時刻、蓄電装置の満充電容量、及び充電設備の定格容量のうちの少なくとも一つを更に含むこととしてもよい。
【0032】
このような側面によれば、高精度に充電終了時刻を推定することが可能な推定モデルが構築される。
【0033】
他の側面に係る推定モデル生成装置では、入力データに含まれる満充電容量は、充電開始時以後の一定期間における充電電力の積算値である積算電力値を、一定期間の始期のSOCと終期のSOCとの差分値で除することにより算出されることとしてもよい。
【0034】
このような側面によれば、充電設備が取得可能な情報であるSOC及び積算電力値に基づいて、学習データにおける入力データとしての満充電容量を算出できる。
【発明の効果】
【0035】
本開示の一側面によれば、外部の充電設備からの車両の蓄電装置への充電における電力デマンドを調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】実施形態に係る充電制御装置を含む需要家設備の構成の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る充電制御装置及び推定モデル生成装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る充電制御装置及び推定モデル生成装置に関するハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】学習データ記憶部に記憶されている学習データの構成の例を示す図である。
【
図5】駐車場ID及びロケーションIDの例を示す図である。
【
図6】充電開始時刻及び充電終了時刻の一例を示す図である。
【
図7】推定モデルの構成並びに推定モデルの入力データ及び出力データの例を示す図である。
【
図8】実施形態に係る推定モデル生成装置における推定モデル生成方法の処理内容の例を示すフローチャートである。
【
図9】充電終了予定時刻及び蓄電装置の容量の算出方法の例を示す図である。
【
図10】充電終了予定時刻と推定された充電終了時刻との比較に基づく制御状態の変更の例を示す図である。
【
図11】実施形態に係る充電制御装置における充電制御方法の処理内容の例を示すフローチャートである。
【
図12】一の充電制御装置により複数の充電設備が制御される例の装置構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0038】
図1は、実施形態に係る充電制御装置を含む需要家設備の構成の一例を示す図である。
図1に示される例では、充電制御装置20は需要家設備CEに設けられており、充電設備Cを制御する。充電制御装置20は、プロセッサ101を含む。
【0039】
充電設備Cは、車両Vに搭載された蓄電装置Bを充電するための設備である。充電設備Cは、電力供給網ENから供給された電力により蓄電装置Bの充電を行う。充電設備Cは、充電時の電流値及び電圧値をそれぞれ検知する電流計AM及び電圧計VMを有する。充電時に検知された電流値及び電圧値に基づいて電力値の算出が可能である。また、充電設備Cは、蓄電装置BのSOCを、例えば、CHAdeMO(登録商標)などの充電規格を通して取得する。充電設備Cは、充電時における電流値及び電圧値並びにSOCを、充電制御装置20に送出する。
【0040】
充電設備Cは、充電制御装置20から受信した制御信号に基づいて、蓄電装置Bの充電を実施する。具体的には、充電設備Cは、蓄電装置Bに対する充電の制御状態を示す情報を受信する。制御状態を示す情報は、例えば、充電時の電力の情報を含んでもよい。充電設備Cは、蓄電装置Bに対する充電時の電力を制御されることにより、充電速度が制御されることになる。
【0041】
需要家設備CEは、電力供給網ENから電気の供給を受けて使用している者である需要家が管理する設備であり、充電制御装置20及び充電設備Cを含む。
【0042】
車両Vは、電力を蓄える蓄電装置Bを有し、電力により走行する車両であって、例えば、電気自動車(EV)及びプラグインハイブリッド車両(PHEV)等である。蓄電装置Bは、車両Vの外部に設けられた充電設備Cから供給される電力により充電される。
【0043】
図2は、推定モデル生成装置10及び充電制御装置20の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3は、推定モデル生成装置10及び充電制御装置20に関するハードウェア構成の一例を示す図であって、推定モデル生成装置10及び充電制御装置20として機能しうるコンピュータ100を示す。
【0044】
推定モデル生成装置10は、車両Vの外部に設けられた充電設備Cから供給される電力により充電される車両Vに搭載された蓄電装置Bの充電終了時刻を推定するための推定モデルを生成する装置である。充電終了時刻は、充電設備Cによる充電の状態が解除されることにより充電が終了する時刻である。充電設備Cによる充電の状態が解除されることの一例は、車両Vが充電設備Cから切り離されること、即ち、車両Vの蓄電装置Bに対する充電設備Cからの接続が解除されることである。
【0045】
充電制御装置20は、車両Vの外部に設けられた充電設備Cから供給される電力により車両Vに搭載された蓄電装置Bを充電するための充電設備Cを制御する装置である。
【0046】
一例として、コンピュータ100はハードウェア構成要素として、プロセッサ101、主記憶部102、補助記憶部103、および通信部104を備える。
【0047】
プロセッサ101は、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを実行する演算装置である。プロセッサの例としてCPU(Central Processing Unit)およびGPU(Graphics Processing Unit)が挙げられるが、プロセッサ101の種類はこれらに限定されない。例えば、プロセッサ101はセンサおよび専用回路の組合せでもよい。専用回路はFPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラム可能な回路でもよいし、他の種類の回路でもよい。
【0048】
主記憶部102は、推定モデル生成装置10及び充電制御装置20等を実現するためのプログラム(推定モデル生成プログラムP1、充電制御プログラムP2)、プロセッサ101から出力された演算結果などを記憶する装置である。主記憶部102は例えばROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)のうちの少なくとも一つにより構成される。
【0049】
補助記憶部103は、一般に主記憶部102よりも大量のデータを記憶することが可能な装置である。補助記憶部103は例えばハードディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性記憶媒体によって構成される。補助記憶部103は、コンピュータ100を推定モデル生成装置10及び充電制御装置20等として機能させるためのプログラムP1,P2と各種のデータとを記憶する。
【0050】
通信部104は、通信ネットワークNを介して他のコンピュータとの間でデータ通信を実行する装置である。通信部104は例えばネットワークカードまたは無線通信モジュールにより構成される。
【0051】
推定モデル生成装置10及び充電制御装置20の各機能要素は、プロセッサ101または主記憶部102の上に、対応するプログラムP1,P2を読み込ませてプロセッサ101にそのプログラムを実行させることで実現される。プログラムP1,P2は、対応するサーバの各機能要素を実現するためのコードを含む。プロセッサ101はプログラムP1,P2に従って通信部104を動作させ、主記憶部102または補助記憶部103におけるデータの読み出しおよび書き込みを実行する。このような処理により、対応する推定モデル生成装置10及び充電制御装置20の各機能要素が実現される。
【0052】
プログラムP1,P2は、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、これらのプログラムの少なくとも一つは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0053】
推定モデル生成装置10及び充電制御装置20のそれぞれは、一つまたは複数のコンピュータにより構成され得る。複数のコンピュータにより推定モデル生成装置10及び充電制御装置20が構成される場合には、通信ネットワークを介して複数のコンピュータが互いに接続されることで、論理的に一つの装置が構成される。
【0054】
推定モデル生成装置10は、学習データ取得部11、推定モデル生成部12及びモデル出力部13を備える。これらの各機能部11~13は、プロセッサ101A(101)に推定モデル生成プログラムP1が読み込まれて、推定モデル生成プログラムP1が実行されることにより実現される。推定モデル生成プログラムP1は、コンピュータを推定モデル生成装置10として機能させるための命令を含む。
【0055】
推定モデル生成装置10の各機能部は、学習データ記憶部30及び推定モデル記憶部40にアクセス可能に構成されている。学習データ記憶部30は、学習データを記憶及び管理させるための記憶手段であって、例えば主記憶部102または補助記憶部103に構成される。なお、本実施形態では、学習データ記憶部30は、推定モデル生成装置10からアクセス可能な他の装置に構成されるが、推定モデル生成装置10内に構成されてもよい。
【0056】
推定モデル記憶部40は、推定モデル生成装置10により生成及び出力された推定モデルを記憶及び管理させるための記憶手段であって、例えば主記憶部102または補助記憶部103に構成される。なお、本実施形態では、推定モデル記憶部40は、推定モデル生成装置10及び充電制御装置20からアクセス可能な他の装置に構成されるが、推定モデル生成装置10内または充電制御装置20内に構成されてもよい。
【0057】
充電制御装置20は、制御部21、充電状態取得部22、充電終了予定時刻算出部23、推定用データ取得部24及び推定部25を備える。これらの各機能部21~25は、プロセッサ101B(101)に充電制御プログラムP2が読み込まれて、充電制御プログラムP2が実行されることにより実現される。充電制御プログラムP2は、コンピュータを充電制御装置20として機能させるための命令を含む。充電制御装置20の各機能部は、推定モデル記憶部40にアクセス可能に構成されている。
【0058】
続いて、推定モデル生成装置10の各機能部について説明する。学習データ取得部11は、推定モデルの機械学習のための学習データを取得する。学習データは、推定モデルの入力変数を構成する入力データと、出力変数を構成する出力データとのペアからなる。本実施形態では、学習データ取得部11は、学習データ記憶部30に予め記憶された学習データを取得する。
【0059】
図4は、学習データ記憶部30に記憶されている学習データの構成の例を示す図である。
図4に示されるように、各学習データはデータIDにより識別されており、各学習データは、入力データと出力データとのペアからなる。
【0060】
入力データは、少なくとも充電開始時の蓄電装置BのSOCである充電開始時SOCを含む。出力データは、充電終了時刻からなる。充電終了時刻は、前述のとおり、充電設備Cによる充電の状態が解除されることにより充電が終了した時刻である。
【0061】
入力データは、充電が開始された時刻である充電開始時刻、蓄電装置Bの満充電容量(実力容量、Full Charge Capacity)、充電設備Cの定格容量、充電設備Cが配置される駐車場の駐車場ID及び駐車場におけるロケーションIDのうちの少なくとも一つを更に含んでもよい。即ち、充電開始時刻、満充電容量、定格容量、駐車場ID及びロケーションIDは、入力データにおいて非必須の要素である。なお、
図4に示される例のように、入力データは、充電開始時SOCに加えて、充電開始時刻、満充電容量、定格容量、駐車場ID及びロケーションIDの全てを含んでもよい。なお、駐車場ID及びロケーションIDはそれぞれ、駐車場の位置を特定する駐車場位置情報及び駐車場内の位置を特定する駐車位置情報の一例であって、それぞれ位置を特定可能な情報であればIDに限定されない。
【0062】
図5は、駐車場ID及びロケーションIDの一例を示す図である。
図6は、充電開始時刻及び充電終了時刻の一例を示す図である。
図5に示す駐車場PAは、駅の近くに位置する駐車場であり、駐車場PBは、店舗に設けられた駐車場である。
図5に示されるように、駐車場PAには、駐車場内の位置関係を示すロケーションID(L1~Ln)が設定されている。例えば、駐車場PAのロケーションID(L1)により識別される位置は、月極め駐車設置スペースであるため、
図6に示す例e1のように、午前の8時に充電が開始され、19時に充電状態が解除される場合がある。つまり、駐車場内に複数の充電設備C装置が設置される場合は、その充電設備Cが設置される位置(ロケーションID:L1~Ln)により、充電終了時刻(学習データにおける出力データ)が異なる。このような充電のケースを示す学習データが得られる場合には、充電設備Cの定格容量による充電は、不要に高い電力デマンドによる運用になるため、後述の第2の充電速度により、低い電力デマンドで充電されることが好ましい。
【0063】
また、
図6に示される駐車場PBにおいて、例えば、日中の午前中に車両Vを駐車して充電を開始し、満充電前に充電状態を解除して駐車場PBから離れるケース(例e2)がある。また、例えば、夜間に駐車して充電を開始し、満充電時刻より後に充電状態を解除して駐車場PBから離れるケース(例e3)がある。このような充電のケースを示す学習データが得られれば、夜間の電力デマンドを大きく抑えることができ、この抑制された電力デマンドの時間中に、例えば、定置式電池の充電に電力デマンドを振り分けることにより、受電電力の平準化が可能となる。
【0064】
図5及び6を参照して説明したように、駐車場IDおよびロケーションIDを入力データに含ませることにより、車両Vの運用特性に合わせた学習データが構成される。このような学習データを用いた機械学習により構築された推定モデルでは、運用特性に応じた充電終了時刻の推定が可能となり、更に第2の充電速度を適用すべき充電のケースの推定が可能になる。これにより、電力デマンドの平準化に貢献する充電設備Cの運用が可能になる。
【0065】
蓄電装置Bの満充電容量は、学習データの蓄積時に当該蓄電装置Bに関する既知の値として取得されてもよい。また、蓄電装置Bの満充電容量は、充電開始時以後の一定期間における充電電力の積算値である積算電力値を、当該一定期間の始期のSOCと終期のSOCとの差分値で除することにより算出された値であってもよい。このように、蓄電装置Bの容量の取得が不可能な場合であっても、充電設備Cにおいて取得可能な情報であるSOC及び積算電力値に基づいて、満充電容量を算出及び取得できるので、機械学習のための学習データの蓄積が可能となる。
【0066】
推定モデル生成部12は、学習データ取得部11により取得された学習データを用いて、充電終了時刻を推定するための推定モデルを生成する。具体的には、推定モデル生成部12は、学習データに含まれる入力データを推定モデルに入力して得られたモデル出力値と、学習データに含まれる出力データとの誤差に基づいて推定モデルのパラメータを更新する機械学習により、推定モデルを構築する。
【0067】
図7は、推定モデルの構成並びに推定モデルの入力データ及び出力データの例を示す図である。
図7に示されるように、推定モデルMは、ニューラルネットワークNNを含む。本実施形態において適用されるニューラルネットワークNNの種類は限定されず、周知の種々のニューラルネットワークを適用できる。
【0068】
入力データD1は、前述のとおり、少なくとも充電開始時のSOCである入力データd11を含む。入力データは、充電開始時刻である入力データd12、蓄電装置Bの満充電容量である入力データd13及び充電設備Cの定格容量である入力データd14を更に含んでもよい。また、入力データD1は、駐車場ID(d15)及びロケーションID(d16)を更に含んでもよい。
【0069】
推定モデル生成部12は、入力データD1を推定モデルMのニューラルネットワークNNに入力して、ニューラルネットワークNNからの出力であるモデル出力値d21を得る。モデル出力値d21は、充電終了時刻を表す。
【0070】
推定モデル生成部12は、入力データD1をニューラルネットワークNNに入力して得られたモデル出力値d21と、入力データD1に対応する出力データとの誤差に基づいて、例えば誤差逆伝搬法等によりニューラルネットワークNNのパラメータを更新する。
【0071】
ニューラルネットワークNNのパラメータは、入力層に入力された入力データに対する重み付け係数を含む。学習済みの推定モデルMは、コンピュータにより読み込まれ又は参照され、コンピュータに所定の処理を実行させ及びコンピュータに所定の機能を実現させるプログラムモジュールとして捉えることができる。
【0072】
即ち、本実施形態の学習済みの推定モデルMは、CPU及びメモリを備えるコンピュータにおいて用いられる。具体的には、コンピュータのCPUが、メモリに記憶された学習済みの推定モデルMからの指令に従って、ニューラルネットワークNNの入力層に入力された特徴量(入力データ)に対し、各層に対応する学習済みの重み付け係数と応答関数等に基づく演算を行い、出力層からモデル出力値d21を出力するよう動作する。モデル出力値d21は、充電終了時刻を定量化した値である。
【0073】
モデル出力部13は、推定モデル生成部12により生成された推定モデルMを出力する。具体的には、モデル出力部13は、学習済みの推定モデルMを、充電制御装置20における充電終了時刻の推定に供するために、推定モデル記憶部40に記憶させる。
【0074】
図8は、推定モデル生成装置10における推定モデル生成方法の処理内容の例を示すフローチャートである。
【0075】
ステップS1において、学習データ取得部11は、入力データと出力データとのペアからなる学習データを取得する。
【0076】
ステップS2において、推定モデル生成部12は、学習データに含まれる入力データを推定モデルMに入力して得られたモデル出力値を取得する。
【0077】
ステップS3において、推定モデル生成部12は、モデル出力値と、学習データに含まれる出力データとの誤差に基づいて推定モデルのパラメータを更新する機械学習により、推定モデルを構築する。
【0078】
ステップS4において、推定モデル生成部12は、全ての学習データによる学習が終了したか否かを判定する。全ての学習データによる学習が終了したと判定された場合には、処理はステップS5に進む。一方、全ての学習データによる学習が終了したと判定されなかった場合には、処理はステップS2に戻り、学習が繰り返される。
【0079】
ステップS5において、モデル出力部13は、推定モデル生成部12により生成された推定モデルMを出力する。
【0080】
再び
図2を参照しながら、充電制御装置20の各機能部について説明する。制御部21は、所定の制御状態で充電設備Cを制御する。具体的には、制御部21は、制御状態を示す情報を充電設備Cに送信することにより、充電設備Cによる蓄電装置Bに対する充電の状態を制御する。制御状態を示す情報は、前述のとおり、充電時の電力(又は、電流値及び電圧値)の情報を少なくとも含む。制御部21は、充電時の電力を制御することにより、充電速度を制御できる。従って、制御部21は、第1の充電速度で蓄電装置Bが充電される第1の制御状態で充電設備を制御することができる。
【0081】
充電状態取得部22は、充電設備Cから、充電中における電流値及び電圧値並びに蓄電装置BのSOCを充電状態情報として取得する。充電中における電流値及び電圧値が取得されることにより、充電中の電力値である充電電力を算出できる。
【0082】
充電終了予定時刻算出部23は、第1の制御状態において蓄電装置Bの充電が終了する時刻である充電終了予定時刻を、充電状態取得部22により取得された充電状態情報に基づいて算出する。
図9を参照して、充電終了予定時刻の算出について説明する。
【0083】
図9は、充電終了予定時刻及び蓄電装置Bの容量の算出方法の例を示す図である。充電終了予定時刻算出部23は、充電開始時以後の第1の時刻t1におけるSOC(SOC(t1))及び第1の時刻t1より後の時刻である第2の時刻t2におけるSOC(SOC(t2))を取得する。なお、第1の時刻t1は、充電開始時の時刻であってもよい。
【0084】
充電終了予定時刻算出部23は、SOC(t2)とSOC(t1)との差分値を第1の時刻t1から第2の時刻t2までの時間で除することにより、第1の制御状態における単位時間あたりのSOCの増加量を算出できるので、以下の式により、満充電となる時刻である充電終了予定時刻を算出する。
充電終了予定時刻=t2+(100-SOC(t2))÷((SOC(t2)-SOC(t1))/(t2-t1))
蓄電装置Bが満充電となることは、例えば、SOCが100%となることである。
【0085】
推定用データ取得部24は、少なくとも充電開始時の蓄電装置のSOCを含む推定用データを取得する。具体的には、充電設備Cにより充電中の蓄電装置BのSOCが取得されるので、推定用データ取得部24は、充電設備Cから充電開始時のSOCを推定用データとして取得する。
【0086】
なお、推定モデルMが、充電開始時のSOCに加えて、充電が開始された時刻である充電開始時刻、蓄電装置Bの満充電容量、及び充電設備Cの定格容量等を入力データとするように構成されている場合には、推定用データ取得部24は、推定モデルMの構成に応じて、充電開始時刻、満充電容量及び定格容量を取得してもよい。
【0087】
推定用データ取得部24は、第1の時刻t1から第2の時刻t2までの充電期間における充電電力の積算値である積算電力値と、第1の時刻t1のSOC(t1)と第2の時刻t2のSOC(t2)との差分値に基づいて、満充電容量を算出及び取得してもよい。具体的には、推定用データ取得部24は、以下の式により満充電容量を算出してもよい。
蓄電装置Bの満充電容量(kwh)=積算電力値(t1→t2)÷((SOC(t2)-SOC(t1))
充電時の電力は、前述のとおり、充電中に電流計AMにより取得される電流値及び電圧計VMにより取得される電圧値の積として算出可能である。
【0088】
推定部25は、学習済みの推定モデルMに推定用データを入力して、推定モデルMから出力されたモデル出力値を取得することにより、充電終了時刻を推定する。充電終了時刻は、前述のとおり、充電設備Cによる充電の状態が解除されることにより充電が終了する時刻である。
【0089】
ここで、
図10を参照して、推定された充電終了時刻に基づく充電設備の制御について説明する。
図10は、充電終了予定時刻と推定された充電終了時刻との比較に基づく制御状態の変更の例を示す図である。制御部21は、充電終了予定時刻が充電終了時刻より前の時刻である場合に、第1の充電速度より遅い充電速度である第2の充電速度で蓄電装置Bが充電される第2の制御状態で充電設備Cを制御する。
【0090】
即ち、制御部21は、第1の制御状態においては、グラフcs1に示される第1の充電速度で蓄電装置Bが充電されるように制御していたところ、充電終了予定時刻が充電終了時刻より前の時刻である場合には、グラフcs2に示されるような、第1の充電速度より遅い第2の充電速度で蓄電装置Bが充電される第2の制御状態により充電設備Cを制御する。
【0091】
このように、充電終了予定時刻が充電終了時刻より前の時刻である場合に、制御部21は、推定された充電終了時刻以前に蓄電装置Bが満充電となるように第2の充電速度を設定してもよい。また、制御部21は、推定された充電終了時刻に蓄電装置Bが満充電となるように第2の充電速度を設定してもよい。
【0092】
図11は、充電制御装置20における充電制御方法の処理内容の例を示すフローチャートである。
【0093】
ステップS11において、制御部21は、第1の充電速度で蓄電装置Bが充電される第1の制御状態で充電設備Cを制御する。
【0094】
ステップS12において、充電状態取得部22は、充電設備Cから、充電中における電流値及び電圧値並びに蓄電装置BのSOCを充電状態情報として取得する。具体的には、充電状態取得部22は、第1の時刻t1及び第2の時刻t2のそれぞれにおけるSOC、並びに、電流値及び電圧値に基づいて算出可能な充電電力値の第1の時刻t1から第2の時刻t2に至る積算電力値を取得する。
【0095】
ステップS13において、充電終了予定時刻算出部23は、充電状態情報に基づいて充電終了予定時刻を算出する。
【0096】
ステップS14において、推定用データ取得部24は、少なくとも充電開始時の蓄電装置のSOCを含む推定用データを取得する。
【0097】
ステップS15において、推定部25は、学習済みの推定モデルMに推定用データを入力して、推定モデルMから出力されたモデル出力値を取得することにより、充電終了時刻を推定する。
【0098】
ステップS16において、制御部21は、充電終了予定時刻が充電終了時刻より前の時刻であるか否かを判定する。充電終了予定時刻が充電終了時刻より前の時刻であると判定された場合には、処理はステップS17に進む。一方、充電終了予定時刻が充電終了時刻より前の時刻であると判定されなかった場合には、処理はステップS18に進む。
【0099】
ステップS17において、制御部21は、第1の充電速度より遅い充電速度である第2の充電速度で蓄電装置Bが充電される第2の制御状態で充電設備Cを制御する。
【0100】
ステップS18において、制御部21は、第1の制御状態による充電設備Cの制御を維持する。
【0101】
次に、需要家設備CEまたは充電設備Cに対して設定された、許容される最大の使用電力である最大電力デマンドに関する制御について説明する。制御部21は、充電設備Cに対して予め設定された許容される最大の使用電力である第1の最大電力デマンドを超えない電力により、蓄電装置Bの充電をさせるように充電設備Cを制御する。具体的には、制御部21は、いわゆるピークカット処理と呼ばれる処理により、充電電力のピーク値が第1の最大電力デマンドを超えないように蓄電装置Bに対する充電が実施されるような制御信号を充電設備Cに送信する。
【0102】
このような制御により、最大需要電力に基づいて電力の使用に対する料金が設定される場合が多いところ、充電時の電力が所定の第1の最大電力デマンドを超えないように制御されるので、電気料金の低減が可能となる。
【0103】
図12は、充電制御装置による充電設備の制御における装置構成の例を示す図である。
図12に示されるように、一の充電制御装置20により複数の充電設備C1,C2,C3が制御される場合がある。かかる場合に、制御部21は、複数の充電設備C1,C2,C3のそれぞれにおける充電時の電力の合計が、複数の充電設備C1,C2,C3の全体に対して予め設定された許容される最大の使用電力である第2の最大電力デマンドを超えないように、複数の充電設備C1,C2,C3のそれぞれを制御する。
【0104】
具体的には、制御部21は、充電設備C1,C2,C3のそれぞれの所定の充電電力の合計値が第2の最大電力デマンドを超える場合に、複数の充電設備のうちの少なくともいずれか一つの充電電力を低下させて、充電電力の合計値が第2の最大電力デマンド以下となるように制御を実施する。
【0105】
制御部21は、例えば、第2の最大電力デマンドを制御下の充電設備の数で除した充電電力値により各充電設備による充電を実施させるように制御してもよい。また、制御部21は、例えば、第2の最大電力デマンドを、複数の充電設備に対して予め設定された優先順位に従って傾斜配分した充電電力値により各充電設備による充電を実施させるように制御してもよい。また、制御部21は、例えば、第2の最大電力デマンドを、充電終了予定時刻までの残余の時間の短さに応じて傾斜配分した充電電力値により各充電設備による充電を実施させるように制御してもよい。
【0106】
このように充電制御装置20が複数の充電設備Cを制御する場合において、各充電設備Cの充電時における電力の合計が所定の第2の最大電力デマンドを超えないように、各充電設備が制御されるので、電気料金の上昇が防止される。
【0107】
以上説明した本実施形態の充電制御装置20及び充電制御方法によれば、第1の制御状態において、第1の時刻から第2の時刻までの間の積算電力値及びSOCの差分値に基づいて充電終了予定時刻が算出される。従って、充電終了予定時刻の算出のために蓄電装置の容量が充電設備に予め認識される必要はない。そして、充電設備による充電状態が解除される時刻である充電終了時刻が推定モデルを用いて推定され、充電終了予定時刻が充電終了時刻より前の時刻である場合に、充電設備の制御状態が第1の充電速度より遅い第2の充電速度で充電される第2の制御状態に変更される。従って、不必要に高速に充電されることが防止されることにより、充電出力を低下させることが可能となるので、適切に電力デマンドが調整される。
【0108】
また、以上説明した本実施形態の推定モデル生成装置10によれば、充電開始時のSOCと充電終了時刻とのペアを含んで構成される学習データを用いた機械学習により推定モデルが構築される。従って、蓄電装置の容量の情報を要することなく充電終了時刻の推定が可能な推定モデルを得ることが可能となる。
【0109】
充電制御装置20及び推定モデル生成装置10の内部の構成は上記実施形態に限定されず、任意の方針で設計されてよい。例えば、機能部21~25及び機能部11~13のそれぞれを実現させる主体(すなわちプロセッサ)は、本開示の例に限定されず、機能部ごとに異なってもよい。
【0110】
プロセッサにより実行される方法の処理手順は上記実施形態での例に限定されない。例えば、上述したステップ(処理)の一部が省略されてもよいし、別の順序で各ステップが実行されてもよい。また、上述したステップのうちの任意の2以上のステップが組み合わされてもよいし、ステップの一部が修正又は削除されてもよい。あるいは、上記の各ステップに加えて他のステップが実行されてもよい。
【符号の説明】
【0111】
10…推定モデル生成装置、11…学習データ取得部、12…推定モデル生成部、13…モデル出力部、20…充電制御装置、21…制御部、22…充電状態取得部、23…充電終了予定時刻算出部、24…推定用データ取得部、25…推定部、30…学習データ記憶部、40…推定モデル記憶部、100…コンピュータ、101,101A,101B…プロセッサ、102…主記憶部、103…補助記憶部、104…通信部、B…蓄電装置、C,C1,C2,C3…充電設備、CE…需要家設備、EN…電力供給網、M…推定モデル、N…通信ネットワーク、NN…ニューラルネットワーク、P1…推定モデル生成プログラム、P2…充電制御プログラム、V…車両。