(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027677
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】床部及びダクトの施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 5/48 20060101AFI20230222BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
E04B5/48 Z
F24F13/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021132941
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 暢人
(72)【発明者】
【氏名】大▲崎▼ 智寛
(72)【発明者】
【氏名】藤▲崎▼ 実玲
(72)【発明者】
【氏名】山崎 将吾
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 俊祐
(72)【発明者】
【氏名】吉村 純哉
【テーマコード(参考)】
3L080
【Fターム(参考)】
3L080AA02
3L080AC02
(57)【要約】
【課題】床部及びダクトの全体を施工するに当たり、作業スペースの低減を図りながら、作業の簡素化を図ること。
【解決手段】床部及びその床部に配設するダクトを施工する床部及びダクトの施工方法において、床部及びダクト5の全体を、床部を構成する床部材32、33とダクト5とを有する複数の床ダクトユニット6に分割して、その分割された床ダクトユニット6単位で組み立てる地組工程と、その地組工程にて組み立てられた床ダクトユニット6を所定位置に設置する設置工程と、その設置工程にて設置された隣接する床ダクトユニット6における床部材32、33同士及びダクト5同士を接続して、隣接する床ダクトユニット6同士を接続する接続工程とを行う。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床部及びその床部に配設するダクトを施工する床部及びダクトの施工方法において、
前記床部及び前記ダクトの全体を、床部を構成する床部材とダクトとを有する複数の床ダクトユニットに分割して、その分割された床ダクトユニット単位で組み立てる地組工程と、
その地組工程にて組み立てられた床ダクトユニットを所定位置に設置する設置工程と、
その設置工程にて設置された隣接する床ダクトユニットにおける床部材同士及びダクト同士を接続して、隣接する床ダクトユニット同士を接続する接続工程とを行う床部及びダクトの施工方法。
【請求項2】
前記床部は、前記床部材として、水平方向に延びる複数の下地材、及び、水平方向に間隔を隔てて配設されて上下方向に延びる複数の束材とを有し、
前記地組工程では、前記床部の床下空間内に前記ダクトを収容配置させるように、前記下地材と前記束材との間隙に前記ダクトを配設させた前記床ダクトユニットが組み立てられている請求項1に記載の床部及びダクトの施工方法。
【請求項3】
前記床部及び前記ダクトの全体を複数の前記床ダクトユニットに分割するに当たり、隣接する床ダクトユニット同士の間に、隣接する束材同士の間の間隔以下の間隔を有する接続作業スペースを確保する状態で、床部及びダクトの全体を複数の床ダクトユニットに分割し、
前記接続工程では、確保された前記接続作業スペースにダクト用接続部材を挿入して、隣接する前記床ダクトユニットにおけるダクト同士を接続している請求項2に記載の床部及びダクトの施工方法。
【請求項4】
前記床ダクトユニットは、前記ダクトが前記床部材よりも外方側に所定量突出する長さを有している請求項3に記載の床部及びダクトの施工方法。
【請求項5】
前記床ダクトユニットは、前記ダクトが前記床部材に対して水平方向に移動自在に支持されている請求項1~4の何れか1項に記載の床部及びダクトの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床部及びその床部に配設するダクトの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床部及びその床部に配設するダクトを施工するに当たり、例えば、床部を構成する床部材を先に施工した後にダクトを施工すると、ダクト施工のために、先に施工した床部材との干渉を避けて足場を組み立てなければならず、足場の組み立て自体が難しくなる。
【0003】
そこで、従来、床部を構成する床部材とダクトとを一体化させた床ユニット等のユニット化を図り、ダクトの施工等のために床部材との干渉を避けて足場を組み立てることなく、床部及びダクトを施工しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に記載の施工方法では、床部材としての鉄骨小梁とデッキプレート床材とを組み立てるとともに、デッキプレート床材の下面に空調ダクト等の設備機器を先付けして床ユニットを組み立てる地組工程と、鉄骨柱及び鉄骨大梁の建方を行う建方工程と、組み立てた床ユニットを所望位置に設置して床ユニットの鉄骨小梁と鉄骨大梁とを接合する設置工程とを行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の施工方法では、単に、床部材とダクトとを一体化させた床ユニットを地組する点が記載されているだけであり、床部及びその床部に配設されるダクトの全体を施工するに当たり、どのようにユニット化を図るのかについては記載されていない。
【0007】
例えば、床ユニットの大きさが大きくなれば、地組工程において、床ユニットを組み立てるための作業スペースとして、大きな作業スペースを確保する必要があるとともに、作業の煩雑化や複雑化を招くことになる。また、設置工程においても、大きな床ユニットを所定位置に設置しなければならず、設置作業の複雑化を招くことにもなる。
【0008】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、床部及びダクトの全体を施工するに当たり、作業スペースの低減を図りながら、作業の簡素化を図ることができる床部及びダクトの施工方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1特徴構成は、床部及びその床部に配設するダクトを施工する床部及びダクトの施工方法において、
前記床部及び前記ダクトの全体を、床部を構成する床部材とダクトとを有する複数の床ダクトユニットに分割して、その分割された床ダクトユニット単位で組み立てる地組工程と、
その地組工程にて組み立てられた床ダクトユニットを所定位置に設置する設置工程と、
その設置工程にて設置された隣接する床ダクトユニットにおける床部材同士及びダクト同士を接続して、隣接する床ダクトユニット同士を接続する接続工程とを行う点にある。
【0010】
本構成によれば、床部及びダクトの全体を複数の床ダクトユニットに分割しているので、床ダクトユニットの大きさを小さくすることができる。そのために、地組工程において、床ダクトユニットを組み立てるために確保する作業スペースの低減を図ることができるだけでなく、床ダクトユニットの組み立て作業の簡素化を図ることができる。しかも、設置工程における設置作業の簡素化を図ることができ、接続工程において、隣接する床ダクトユニットにおける床部材同士及びダクト同士を接続するだけで、隣接する床ダクトユニット同士の接続を適切に行うことができる。
【0011】
このようにして、地組工程と設置工程と接続工程とを行うことで、分割された床ダクトユニット単位で組み立て及び設置を行い、作業スペースの低減及び作業の簡素化を図りながら、床部及びダクトの全体を施工することができる。
【0012】
本発明の第2特徴構成は、前記床部は、前記床部材として、水平方向に延びる複数の下地材、及び、水平方向に間隔を隔てて配設されて上下方向に延びる複数の束材とを有し、
前記地組工程では、前記床部の床下空間内に前記ダクトを収容配置させるように、前記下地材と前記束材との間隙に前記ダクトを配設させた前記床ダクトユニットが組み立てられている点にある。
【0013】
床部は、複数の下地材と複数の束材との床部材を有しており、その床下空間にダクトが収容配置されている。このような床部及びダクトを施工するに当たり、床下空間には、下地材や束材の複数の床部材が存在することから、複数の床部材とダクトとの干渉を避けて施工することが求められる。よって、例えば、床部材を先に施工した後にダクトを施工すると、床部材とダクトとが干渉してしまい、長さの長いダクトを配設できない等、ダクトを配設する作業が複雑で手間のかかるものとなる。
【0014】
そこで、本構成によれば、地組工程では、床下空間内にダクトを収容配置させるように、下地材と束材との間隙にダクトを配設させた床ダクトユニットを組み立てている。これにより、分割された床ダクトユニット単位で、下地材や束材の床部材とダクトとを一緒に組み立てることができるので、床部材とダクトとの干渉を避けながら、効率よく組み立て作業を行うことができる。しかも、床部及びダクトの全体を複数の床ダクトユニットに分割するに当たり、床ダクトユニットの組み立て作業のし易さ等の施工性を考慮して、どのように分割するかを決定することも可能であり、床ダクトユニットの組み立て作業の簡素化を効果的に図ることができる。
【0015】
このように、床下空間に下地材や束材の複数の床部材が存在する床部に対して、その床下空間内にダクトを収容配置させる場合であっても、地組工程における床ダクトユニットの組み立て作業の簡素化を効果的に図り、床部及びダクトの全体を施工する際の施工性の向上を効果的に図ることができる。
【0016】
本発明の第3特徴構成は、前記床部及び前記ダクトの全体を複数の前記床ダクトユニットに分割するに当たり、隣接する床ダクトユニット同士の間に、隣接する束材同士の間の間隔以下の間隔を有する接続作業スペースを確保する状態で、床部及びダクトの全体を複数の床ダクトユニットに分割し、
前記接続工程では、確保された前記接続作業スペースにダクト用接続部材を挿入して、隣接する前記床ダクトユニットにおけるダクト同士を接続している点にある。
【0017】
接続工程において、隣接する床ダクトユニットにおける床部材同士及びダクト同士を接続するための作業スペースを確保する必要があるが、その作業スペースが大きくなると、接続する床部材やダクトの長さが長くなり、接続作業が複雑になる可能性がある。
【0018】
そこで、本構成によれば、床部及びダクトの全体を複数の床ダクトユニットに分割するに当たり、隣接する床ダクトユニット同士の間に接続作業スペースを確保しておくことができ、しかも、その接続作業スペースを隣接する束材同士の間の間隔以下の小さなスペースとすることができる。これにより、接続工程において、接続作業スペースを利用して隣接する床ダクトユニットにおけるダクト同士を適切に接続することができながら、その接続工程にて接続するダクトの長さを短くでき、接続工程での接続作業の簡素化を図ることができる。
【0019】
本発明の第4特徴構成は、前記床ダクトユニットは、前記ダクトが前記床部材よりも外方側に所定量突出する長さを有している点にある。
【0020】
例えば、床ダクトユニットにおいて、ダクトが床部材よりも内方側に所定量入り込んでいる場合には、接続工程において、隣接する床ダクトユニットにおけるダクト同士を接続する際に、ダクト用接続部材を床部材の下方側まで挿入させなければならず、その作業が複雑で手間のかかるものとなる。
【0021】
そこで、本構成によれば、床ダクトユニットでは、ダクトが床部材よりも外方側に所定量だけ突出しているので、接続工程では、ダクト用接続部材を床部材の下方側まで挿入させなくても、床部材よりも外方側に突出したダクト同士をダクト用接続部材にて接続すればよく、作業の簡素化を図ることができる。
【0022】
本発明の第5特徴構成は、前記床ダクトユニットは、前記ダクトが前記床部材に対して水平方向に移動自在に支持されている点にある。
【0023】
本構成によれば、床ダクトユニットにおいて、ダクトが床部材に対して水平方向に移動自在に支持されているので、ダクトを組み付けた状態において、ダクトを水平移動させることができる。これにより、ダクトに保温材を装着させる等の保温作業を行う際に、床部材等が邪魔になり、ダクトに保温材を装着できない場合でも、ダクトを水平移動させることで、床部材等との干渉を回避でき、ダクトの所望箇所に保温材を装着することができ、保温作業の簡素化を図ることができる。しかも、保温作業を行う場合だけでなく、例えば、床ダクトユニットにおけるダクト同士を接続する場合に、ダクトを水平移動させてダクトの位置調整を行うことで、施工誤差等を吸収しながら、ダクト同士の接続作業を行うことができ、施工性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る床部及びダクトの施工方法の実施形態について図面に基づいて説明する。
この床部及びダクトの施工方法は、例えば、屋内スポーツ施設、劇場、会館や映画館等の多目的なホールにおいて、床部とその床部に配設されるダクトとを施工する際に適用可能である。
【0026】
この実施形態では、
図1及び
図2に示すように、例えば、床部及びダクトの施工方法をホール1に適用した例を示している。
図1では、ホール1内において、左右の壁部11の間の空間に設置された床部3及びダクト5を示しており、床部3の床下空間4が見えるように、床面等を構成する合板材34を省略して図示している。また、
図1では、ダクト5を見え易くするために、グレーにて図示している。
図2では、ホール1内において、床部3及びその床部3の床下空間4に配設されるダクト5を示しており、
図1と同様に、床部3の床下空間4が見えるように、床面等を構成する合板材34を省略して図示している。
【0027】
このホール1は、
図2に示すように、その前方側端部(
図2中右側端部)に舞台部2が配設され、その舞台部2側から後方側に延び、後方側ほど上方側に位置する階段状の床部3が配設されている。図示は省略するが、階段状の床部3の各段部(踏み面)上には、客席が備えられ、多数の観客を収容可能なホール1として備えられている。
【0028】
床部3は、
図1及び
図2に示すように、床部材31として、水平方向に延びる複数の下地材32と、水平方向に間隔を隔てて配設されて上下方向に延びる複数の束材33と、床面を構成する合板材34(
図2中、右上方側参照)とが備えられている。下地材32及び束材33は、例えば、鉄骨にて構成され、合板材34は、例えば、木製の板状体にて構成されている。
【0029】
下地材32は、
図1及び
図2に示すように、ホール1の前後方向に複数の下地材32が一直線上に並ぶ列を形成し、その列がホール1の左右方向に間隔を隔てて複数列存在するように配設され、ホール1の前後方向に間隔を隔てて配設された下地材32により隣接する列同士が連結されている。ホール1の前後方向では、後方側に配設される下地材32ほど上段の床面(踏み面)に相当する位置に存在するように、後方側ほど上方側に位置する状態でホール1の前後方向に延びる姿勢で下地材32が配設されている。ホール1の左右方向では、間隔を隔てて配設された下地材32同士を連結するように、ホール1の左右方向に延びる姿勢で下地材32が配設されている。
【0030】
束材33は、
図1及び
図2に示すように、ホール1の前後方向やホール1の左右方向に、所定ピッチ(例えば、900~2000mmピッチ)の間隔を隔てる状態で配設されている。合板材34は、
図2の右上方側に示すように、下地材32同士や束材33同士に亘る状態で配設され、階段状の床部3の床面(踏み面や蹴上げ部)を構成している。
【0031】
ダクト5として、ホール1内に空調空気を給気する給気部(例えば、給気チャンバー)に空調装置からの空調空気を供給する給気系統、ホール1内の空気を還元する還気部(例えば、還気チャンバー)から空調装置に戻す還気系統、2階等の他階に供給する空調空気を通流させる他階給気系統、2階等の他階からの還気を通流させる他階還気系統等、複数の系統が備えられている。
【0032】
複数系統のダクト5の全てが、
図1及び
図2に示すように、下地材32と束材33との間隙に配設される状態で、床部3の床下空間4内に収容配置されている。ダクト5は、ホール1の前後方向及び左右方向に延びるだけでなく、階段状の床部3に合わせて、後方側ほど上方側に位置するように、上下方向でも異なる位置に存在させる状態で配設されている。
【0033】
ちなみに、この実施形態では、給気部として給気チャンバーが備えられ、ダクト5を通して空調装置から給気チャンバーに空調空気を供給して、その給気チャンバーからホール1内に空調空気を給気するチャンバー方式の給気形態を採用しているが、給気形態については他の方式を採用することもできる。例えば、給気部として、各座席に対応して給気口を備え、ダクト5を通して空調装置から各給気口に空調空気を供給して、各給気口からホール1内に空調空気を給気することもできる。
【0034】
床部3の床下空間4には、
図1及び
図2に示すように、下地材32や束材33の多数の床部材31が所定ピッチにて存在しており、しかも、ダクト5については、ホール1の前後方向や左右方向に延びるだけでなく、ダクト5の長さ方向において上下方向で異なる位置に(高さを変えて)配設させる必要がある。よって、例えば、下地材32や束材33等の床部材31を先に施工した後にダクト5を施工しようとすると、床部材31とダクト5とが干渉してしまい、長さの長いダクト5を配設できない等、ダクト5を配設する作業が複雑で手間のかかるものとなる。
【0035】
そこで、床部3及びダクト5の全体を施工するに当たり、床部材31とダクト5とを組み合わせた床ダクトユニット6を組み立ててユニット化を図り、施工手順等を工夫して、作業の簡素化を図ることができる施工方法を採用している。
【0036】
この施工方法では、
図3及び
図4に示すように、床部3及びダクト5の全体を、床部材31とダクト5とを有する複数の床ダクトユニット6に分割して、その分割された床ダクトユニット6単位で組み立てる地組工程と、その地組工程にて組み立てられた床ダクトユニット6を所定位置に設置する設置工程と、その設置工程にて設置された隣接する床ダクトユニット6における床部材31同士及びダクト5同士を接続して、隣接する床ダクトユニット6同士を接続する接続工程とを行う。
【0037】
ここで、
図3は、床部3及びダクト5の全体のうち一部分を示す模式的な平面図であり、上下方向に延びる束材33を、「■」にて示している。
図3(A)は、地組工程及び設置工程にて、複数の床ダクトユニット6を所定位置に設置した状態を示しており、
図3(B)は、接続工程においてダクト同士を接続した状態を示しており、
図3(C)は、床ダクトユニット6を太い点線にて囲む状態で図示しており、下地材32や束材33等の床部材31同士も含めて床ダクトユニット6同士を接続し、その周囲の下地材32や束材33等の床部材31も設置した状態を示している。
図4は、1つの床ダクトユニット6を示す模式的な側面図である。
【0038】
床部3及びダクト5の全体を複数の床ダクトユニット6に分割するに当たり、
図3に示すように、隣接する床ダクトユニット6同士の間に隙間を設けずに分割するのではなく、隣接する床ダクトユニット6同士の間に間隙を確保する状態で分割している。これにより、隣接する床ダクトユニット6同士の間の間隙を接続作業スペース7として確保することができ、接続工程において、接続作業スペース7を利用して、床部材31やダクト5等の接続作業を行うことができる。
【0039】
また、床部3及びダクト5の全体を複数の床ダクトユニット6に分割するに当たり、床ダクトユニット6の組み立て作業のし易さ等の施工性を考慮して、床ダクトユニット6の形状や大きさ等、どのように分割するかを決定することも可能であり、分割の仕方については適宜変更が可能である。
図3に示すものでは、平面視において、1つの床ダクトユニット6が、所定ピッチで配設された束材33及びその束材33同士を繋ぐ下地材32にて外周囲を囲む矩形状になるように分割されている。
【0040】
ここで、
図3に示すものでは、平面視において複数の床ダクトユニット6に分割した例を示しているが、例えば、上下方向において複数の床ダクトユニット6に分割することもでき、ダクト5の配設方向であれば、複数の床ダクトユニット6に分割することができる。この実施形態では、
図2に示すように、ホール1の後方側の床部3において、ダクト5が、後方側ほど上方側に位置するように、上下方向で異なる位置に存在させる状態で配設されている。よって、このように、床部3において、ダクト5が上下方向で異なる位置に配設されている部位において、上下方向で複数の床ダクトユニット6に分割することで、好適な床ダクトユニット6に分割することができる。
【0041】
床部3及びダクト5の全体を複数の床ダクトユニット6に分割しているので、床ダクトユニット6の大きさを小さくすることができ、組み立てのための作業スペースの低減を図ることができる。
図2に示すように、ホール1内には舞台部2が備えられているので、床ダクトユニット6の設置箇所に近い舞台部2を組み立て作業スペースとして利用して、床ダクトユニット6の組み立て作業を行っている。これにより、設置工程における床ダクトユニット6の搬送距離を短くすることができ、床ダクトユニット6の設置作業の簡素化を図ることができる。
【0042】
地組工程では、舞台部2を作業スペースとして利用して、床部材31とダクト5とを組み合わせて分割された床ダクトユニット6を1つずつ組み立てている。各床ダクトユニット6は、
図3(A)及び
図4に示すように、床部3の床下空間4内にダクト5を収容配置させるように、下地材32と束材33との間隙にダクト5を配設させて組み立てている。分割された床ダクトユニット6単位で組み立てているので、長さの長いダクト5を組み合わせる等、下地材32や束材33等の床部材31とダクト5との干渉を避けながら、下地材32や束材33等の床部材31とダクト5とを一緒に効率よく組み立てることができる。
【0043】
地組工程では、下地材32と束材33とダクト5とを一緒に組み立てた床ダクトユニット6を地組すればよく、合板材34については、必ずしも一緒に組み立てる必要がない。よって、施工状況等に応じて、合板材34を取り付けるタイミングは適宜変更が可能である。例えば、接続工程や接続工程の完了後において、全ての床ダクトユニット6が施工されたのち、それらの床ダクトユニット6に対して合板材34を取り付ける作業を集中して行うことができる。また、例えば、地組工程において、下地材32及び束材33に加えて、合板材34も取り付けて、下地材32と束材33と合板材34とダクト5とを一緒に組み立てた床ダクトユニット6を地組することもできる。
【0044】
床ダクトユニット6は、
図4に示すように、ダクト5が床部材31に対して水平方向に移動自在に支持されている。ダクト5は、支持部材35にて床部材31の下地材32に対して吊り下げ支持されている。支持部材35は、上下方向に延びる姿勢にて備えられ、その上端部が下地材32に枢支連結され、その下端部がダクト5に枢支連結されている。
【0045】
地組工程では、床ダクトユニット6において、
図4(B)に示すように、ダクト5を組み付けた状態でも、作業者等がダクト5を水平方向に移動させながら、ダクト5に保温材を装着させる等の保温作業を行うことができる。例えば、束材33等の床部材31が邪魔になる場合でも、ダクト5を水平移動させることで、床部材31等との干渉を回避でき、ダクト5の所望箇所に保温材を装着することができ、保温作業の簡素化を図ることができる。
【0046】
設置工程(据付工程)では、舞台部2にて組み立てられた床ダクトユニット6を吊り上げ機等を用いて吊り上げて、床ダクトユニット6の設置箇所に相当する所定位置まで床ダクトユニット6を搬送し、床ダクトユニット6を吊り下ろして下地材32や束材33等の床部材31を設置面等に固定することで、
図3(A)に示すように、床ダクトユニット6を所定位置に設置(据付)している。地組工程では、床ダクトユニット6単位で1つずつ組み立てているので、設置工程でも、組み立てられた床ダクトユニット6単位で1つずつ所定位置に設置している。
【0047】
接続工程では、
図3(B)に示すように、隣接する床ダクトユニット6同士の間に確保された間隙を接続作業スペース7として、隣接する床ダクトユニット6における床部材31同士及びダクト5同士を接続して、隣接する床ダクトユニット6同士を接続している。
【0048】
接続工程では、ダクト5同士を接続するに当たり、
図3(B)に示すように、接続作業スペース7にダクト用接続部材8を挿入して、隣接する床ダクトユニット6におけるダクト5同士をダクト用接続部材8にて接続している。ここで、床部3及びダクト5の全体を複数の床ダクトユニット6に分割するに当たり、接続作業スペース7の間隔K1として、隣接する束材33同士の間の間隔以下の間隔が確保されている。よって、その接続作業スペース7に挿入するダクト用接続部材8の長さを、隣接する束材33同士の間の間隔以下の長さとすることができる。そのために、長さの短いダクト用接続部材8を扱うだけで、接続作業スペース7を利用して、ダクト用接続部材8の接続作業の簡素化を図ることができる。
【0049】
しかも、床ダクトユニット6では、
図3(A)、
図3(B)及び
図4に示すように、ダクト5が下地材32や束材33等の床部材31よりも外方側に所定量突出する長さを有している。これにより、床ダクトユニット6を設置した状態で、ダクト5が下地材32や束材33等の床部材31よりも外方側に所定量突出しているので、ダクト用接続部材8を下地材32や束材33等の床部材31の下方側まで挿入させなくても、下地材32や束材33等の床部材31よりも外方側に突出したダクト5同士をダクト用接続部材8にて接続するだけでよく、作業の簡素化をより一層図ることができる。
【0050】
また、ダクト5が床部材31に対して水平方向に移動自在に支持されているので、床ダクトユニット6におけるダクト5とダクト用接続部材8とを接続する接続作業等を行う場合に、ダクト5を水平移動させてダクト5の位置調整を行うことで、施工誤差等を吸収しながら、接続作業を行うことができる。
【0051】
ここで、
図4に示すものでは、支持部材35によって、床部材31に対してダクト5を
図4中左右方向(ホール1の前後方向)に移動自在に支持している例を示しているが、例えば、床部材31に対してダクト5を、
図4中左右方向(ホール1の前後方向)に加えて、
図4中紙面の垂直方向(ホール1の左右方向)にも移動自在に支持することもできる。このような支持構成を採用することで、床部材31に対してダクト5を、ホール1の前後方向だけでなく、ホール1の左右方向にも移動させる微調整を行うことができ、ダクト5の位置調整を適切に行うことができる。
【0052】
このようにして、ダクト5同士等の接続作業を行うことで、最終的には、床ダクトユニット6における支持部材35の枢支連結箇所を下地材32及びダクト5に対して固定し、床部材31に対してダクト5を移動不可となるように固定する固定作業を行うことができる。
【0053】
ダクト5同士を接続するに当たり、ダクト5同士をダクト用接続部材8にて接続する作業を行った後、ダクト5の接続部とダクト用接続部材8とに対して保温材を装着させる等の保温作業を行っている。これにより、床ダクトユニット6同士の接続部分についても、適切に保温材を装着することができ、ダクト5の全長に亘って保温機能を適切に備えさせることができる。
【0054】
接続工程では、
図3(C)に示すように、ダクト5同士だけでなく、下地材32や束材33等の床部材31同士も接続することで、隣接する床ダクトユニット6同士を接続している。この実施形態では、床ダクトユニット6が、所定ピッチで配設された束材33及びその束材33同士を繋ぐ下地材32にて外周囲を囲む矩形状になるように分割されているので、床部材31としては、束材33同士を繋ぐように下地材32を接続するだけで、隣接する床ダクトユニット6同士を接続することができる。
【0055】
上述の如く、床部3及びダクト5の全体を施工するに当たり、地組工程、設置工程、接続工程を行うことで、床ダクトユニット6単位で作業を行うようにしている。例えば、地組工程によって1つの床ダクトユニット6を組み立てると、設置工程によってその組み立てた床ダクトユニット6を所定位置に設置することができ、地組工程と設置工程とを連続的に行うことができる。そして、設置工程を行っている間に、地組工程によって次の床ダクトユニット6を組み立てることができるので、地組工程と設置工程とを併行して行うこともできる。また、接続工程では、隣接して床ダクトユニット6が設置されていれば、地組工程や設置工程を行っている最中に、その隣接する床ダクトユニット6同士を接続することができることから、地組工程と設置工程だけでなく、接続工程をも併行して行うことができる。
【0056】
このように、地組工程と設置工程と接続工程は併行して行うこともできるが、例えば、地組工程と設置工程とを併行して行い、全ての床ダクトユニット6を所定位置に設置したのち、接続工程を集中的に行うこともできる。よって、どのような手順や順序にて各工程を行うかは、施工状況等に応じて適宜変更することができる。
【0057】
この実施形態では、
図3(C)に示すように、床部3において、その全体にダクト5が配設されているのではなく、ダクト5が配設されているダクト配設部位3aとダクト5が配設されていないダクト非配設部位3bとを有している。
【0058】
そこで、床部3及びダクト5の全体を複数の床ダクトユニット6に分割するに当たり、ダクト配設部位3aとダクト非配設部位3bとを含めた全体を複数のユニット(床ダクトユニット6を含む)に分割することができる。この場合には、ダクト配設部位3aについて、床部材31とダクト5とを有する複数の床ダクトユニット6に分割し、ダクト非配設部位3bについて、床部材31のみを有する複数の床ユニットに分割することができる。このように、ダクト配設部位3aとダクト非配設部位3bとを含めた全体を複数のユニットに分割した場合には、床ユニットを床ダクトユニット6と同様に取り扱うことができるので、地組工程、設置工程、接続工程を行うことで、ダクト配設部位3aとダクト非配設部位3bとを含めた床部3の全体を施工することができる。
【0059】
また、ダクト配設部位3aのみ複数の床ダクトユニット6に分割して、ダクト非配設部位3bについては床ダクトユニット6とは別に施工することもできる。この場合には、ダクト配設部位3aに床ダクトユニット6を設置する前又は後に、ダクト非配設部位3bにおいて、下地材32、束材33、合板材34等の床部材31を設置することで、ダクト非配設部位3bの床部3を、ダクト配設部位3aの床部3とは別に施工することができる。
【0060】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0061】
(1)上記実施形態では、床部材31として、水平方向に延びる下地材32と上下方向に延びる束材33とが備えられているが、床部材31をどのような部材にて構成するかは適宜変更が可能であり、床部3を構成できるものであればよい。
【0062】
(2)上記実施形態では、本発明に係る床部及びダクトの施工方法を、階段状の床部3に適用した例を示したが、例えば、平坦状の床部でもよく、どのような床部に適用するかは適宜変更可能である。
【0063】
(3)上記実施形態では、床部3及びダクト5の全体を複数の床ダクトユニット6に分割するに当たり、隣接する床ダクトユニット6同士の間に間隙を確保する状態で分割しているが、隣接する床ダクトユニット6同士の間に隙間を設けずに分割することもできる。
【0064】
(4)上記実施形態では、床ダクトユニット6が、ダクト5が床部材31よりも外方側に所定量突出する長さを有しているが、例えば、ダクト5の外端部と床部材31の外端部とが同一又は略同一位置になるように、ダクト5の長さを設定することもでき、床ダクトユニット6において床部材31に対するダクト5の長さについては適宜変更が可能である。
【0065】
(5)上記実施形態では、床ダクトユニット6において、ダクト5が床部材31に対して支持部材35にて水平方向に移動自在に支持されているが、例えば、床部材31に対してダクト5をスライド移動自在に支持することで、水平方向に移動自在に支持することもできる。
【符号の説明】
【0066】
3 床部
4 床下空間
5 ダクト
6 床ダクトユニット
7 接続作業スペース
8 ダクト用接続部材
31 床部材
32 下地材
33 束材