(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027716
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】防振装置の特性決定方法
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20230222BHJP
B61F 5/02 20060101ALI20230222BHJP
F16F 1/387 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
F16F15/02 B
B61F5/02 A
F16F1/387 C
F16F15/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133026
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100104064
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 岳人
(72)【発明者】
【氏名】船田 瞭
(72)【発明者】
【氏名】秋山 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】瀧上 唯夫
(72)【発明者】
【氏名】槇田 耕伸
(72)【発明者】
【氏名】間々田 祥吾
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA19
3J048CB01
3J048EA17
3J059AA09
3J059BA42
3J059BA73
3J059BC06
3J059GA04
(57)【要約】
【課題】走行抵抗を受けて高速で走行する車両であっても振動低減効果を図ることができる防振装置の特性決定方法を提供する。
【解決手段】特性決定方法#100は、車両の車体に伝達する加振力を抑制する防振装置の特性を決定する方法であり、車両が所定の速度で定速走行になって、防振装置に所定の荷重が作用するときに、この防振装置の特性が高剛性から低剛性に変化するように、この防振装置の最適な特性を決定する最適特性決定工程#170を含む。最適特性決定工程#170は、防振装置の特性を表す荷重-変位曲線の傾きが小さくなる領域であるプラトー領域を決定する。特性決定方法#100は、車両が所定の速度で定速走行しているときに、車体の前後方向に作用する定速走行時の荷重を演算する定速走行時荷重演算工程#120を含み、最適特性決定工程#170は、車体の前後方向に作用する定速走行時の荷重に基づいて、プラトー領域を決定する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体に伝達する加振力を抑制する防振装置の特性を決定する防振装置の特性決定方法であって、
前記車両が所定の速度で定速走行になって、前記防振装置に所定の荷重が作用するときに、この防振装置の特性が高剛性から低剛性に変化するように、この防振装置の最適な特性を決定する最適特性決定工程を含むこと、
を特徴とする防振装置の特性決定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の防振装置の特性決定方法において、
前記最適特性決定工程は、前記防振装置の特性を表す荷重-変位曲線の傾きが小さくなる領域であるプラトー領域を決定する工程を含むこと、
を特徴とする防振装置の特性決定方法。
【請求項3】
請求項2に記載の防振装置の特性決定方法において、
前記車両が所定の速度で定速走行しているときに、前記車体の前後方向に作用する定速走行時の荷重を演算する定速走行時荷重演算工程を含み、
前記最適特性決定工程は、前記車体の前後方向に作用する定速走行時の荷重に基づいて、前記プラトー領域を決定する工程を含むこと、
を特徴とする防振装置の特性決定方法。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の防振装置の特性決定方法において、
前記プラトー領域外の特性を設定するプラトー領域外特性設定工程と、
前記車体の前後方向に作用する定速走行時の荷重に基づいて、前記防振装置に作用する定速走行時の荷重を演算し、この防振装置に作用する定速走行時の荷重を、前記プラトー領域内の設定荷重中心として決定する設定荷重中心決定工程と、
前記プラトー領域内の前記設定荷重中心以外の特性を設定するプラトー領域内特性設定工程と、
前記プラトー領域外の特性と、前記プラトー領域内の設定荷重中心と、前記プラトー領域内の特性とに基づいて、前記車両の振動特性及び/又は走行安定性を評価する評価工程とを含み、
前記最適特性決定工程は、前記車両の振動特性及び/又は走行安定性の評価結果に基づいて、前記防振装置の最適な特性を決定する工程を含むこと、
を特徴とする防振装置の特性決定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の防振装置の特性決定方法において、
前記プラトー領域外特性設定工程は、前記プラトー領域外の剛性を設定パラメータとして設定する工程を含み、
前記設定荷重中心決定工程は、前記プラトー領域内の設定荷重中心を設定パラメータとして設定する工程を含み、
前記プラトー領域内特性設定工程は、前記プラトー領域内の剛性、変位幅及びヒステリシスを設定パラメータとして設定する工程を含み、
前記評価工程は、前記設定パラメータに基づいて、走行シミュレーションを実施して、前記車両の振動特性及び/又は走行安定性を評価する工程を含み、
前記最適特性決定工程は、前記車両の振動特性及び/又は走行安定性を両立する前記設定パラメータを前記防振装置の最適な特性として決定する工程を含むこと、
を特徴とする防振装置の特性決定方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の防振装置の特性決定方法において、
前記防振装置は、前記車両が鉄道車両であるときに、この鉄道車両の車体と台車とを連結するけん引装置に使用されること、
を特徴とする防振装置の特性決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の車体に伝達する加振力を抑制する防振装置の特性を決定する防振装置の特性決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の鉄道車両の車体に発生する振動は、主に台車からの加振力伝達に起因している。従来の防振装置(以下、従来技術1という)は、ピンの外周部とゴム筒の内周部との間に間隙部が形成されている(例えば、特許文献1参照)。従来の車両の防振装置(以下、従来技術2という)は、鉄道車両の台車と車体とを連結するけん引装置に使用される緩衝ゴムの内周部とピンの外周部との間に隙間が形成されている(例えば、特許文献2参照)。従来技術1,2では、鉄道車両の一本リンクやヨーダンパのゴムブシュ部に適用することによって、走行安定性を損なわずに、台車から車体への加振力伝達を絶縁している。変位依存性緩衝ゴムによる鉄道車両の車体上下振動抑制(ヨーダンパへの適用と特急車両走行試験結果)では、実際に在来線車両を対象に走行試験を実施し、輪軸の質量アンバランス及び軌道変位により発生する車体振動を低減させる効果があることを実証した(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
【0005】
【非特許文献1】相田健一郎,外5名,「変位依存性緩衝ゴムによる鉄道車両の車体上下振動抑制(ヨーダンパへの適用と特急車両走行試験結果)」,第22回鉄道技術連合シンポジウム講演論文集, 一般社団法人日本機械学会, 2015年12月9日~11日,第22巻,1709
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図15は、従来品の変位依存性緩衝ゴムの荷重-変位特性を一例として示すグラフである。
図15に示す縦軸は荷重[kN]であり、横軸は変位[mm]である。
図15に示すように、従来品の変位依存性緩衝ゴムでは、固定用ピンと防振ゴムを非接着とし、製造過程で生じる微小隙間により、ゴムブシュが無負荷(中立)に近い状態では「低剛性」、負荷荷重を大きくなるにつれて「高剛性」となる特性を実現している。現在、新幹線(登録商標)向けの防振装置について開発を進めており、車両試験台では同様の構造の変位依存性緩衝ゴムを新幹線車両に適用することで振動低減効果が確認されている。しかし、
図15に示すように、在来線ではゴムブシュが無負荷に近い定速走行中は「低剛性」の領域に留まっているのに対し、新幹線では走行抵抗の影響で「高剛性」の領域で平衡状態となるため、振動絶縁性が発揮できない可能性が高い。このため、実際の走行状態を想定し、在来線と比較して新幹線では走行中の走行抵抗、特に空気抵抗が大きいこと考慮すると、従来構造のままでは新幹線車両では振動低減効果が得られない可能性があると考えられる。
【0007】
この発明の課題は、走行抵抗を受けて高速で走行する車両であっても振動低減効果を図ることができる防振装置の特性決定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、
図1、
図2及び
図4~
図7に示すように、車両(2)の車体(3)に伝達する加振力を抑制する防振装置の特性を決定する防振装置(7A,7B)の特性決定方法であって、前記車両が所定の速度で定速走行になって、前記防振装置に所定の荷重(F
rubber)が作用するときに、この防振装置の特性が高剛性から低剛性に変化するように、この防振装置の最適な特性を決定する最適特性決定工程(#150)を含むことを特徴とする防振装置の特性決定方法(#100)である。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の防振装置の特性決定方法において、
図6、
図9及び
図11に示すように、前記最適特性決定工程は、前記防振装置の特性を表す荷重-変位曲線の傾きが小さくなる領域であるプラトー領域(A
P)を決定する工程を含むことを特徴とする防振装置の特性決定方法である。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載の防振装置の特性決定方法において、
図8及び
図11に示すように、前記車両が所定の速度で定速走行しているときに、前記車体の前後方向に作用する定速走行時の荷重(F
C)を演算する定速走行時荷重演算工程(#120)を含み、前記最適特性決定工程は、前記車体の前後方向に作用する定速走行時の荷重に基づいて、前記プラトー領域を決定する工程を含むことを特徴とする防振装置の特性決定方法である。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載の防振装置の特性決定方法において、
図7、
図9、
図11及び
図12に示すように、前記プラトー領域外の特性を設定するプラトー領域外特性設定工程(#130)と、前記車体の前後方向に作用する定速走行時の荷重に基づいて、前記防振装置に作用する定速走行時の荷重(F
rubber)を演算し、この防振装置に作用する定速走行時の荷重を、前記プラトー領域内の設定荷重中心として決定する設定荷重中心決定工程(#140)と、前記プラトー領域内の前記設定荷重中心以外の特性を設定するプラトー領域内特性設定工程(#150)と、前記プラトー領域外の特性と、前記プラトー領域内の設定荷重中心と、前記プラトー領域内の特性とに基づいて、前記車両の振動特性及び/又は走行安定性を評価する評価工程(#160)とを含み、前記最適特性決定工程は、前記車両の振動特性及び/又は走行安定性の評価結果に基づいて、前記防振装置の最適な特性を決定する工程を含むことを特徴とする防振装置の特性決定方法である。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4に記載の防振装置の特性決定方法において、
図9、
図11及び
図12に示すように、前記プラトー領域外特性設定工程は、前記プラトー領域外の剛性を設定パラメータとして設定する工程を含み、前記設定荷重中心決定工程は、前記プラトー領域内の設定荷重中心を設定パラメータとして設定する工程を含み、前記プラトー領域内特性設定工程は、前記プラトー領域内の剛性、変位幅及びヒステリシスを設定パラメータとして設定する工程を含み、前記評価工程は、前記設定パラメータに基づいて、走行シミュレーションを実施して、前記車両の振動特性及び/又は走行安定性を評価する工程を含み、前記最適特性決定工程は、前記車両の振動特性及び/又は走行安定性を両立する前記設定パラメータを前記防振装置の最適な特性として決定する工程を含むことを特徴とする防振装置の特性決定方法である。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の防振装置の特性決定方法において、
図1及び
図2に示すように、前記防振装置は、前記車両が鉄道車両であるときに、この鉄道車両の車体(3)と台車(4A,4B)とを連結するけん引装置(5A,5B)に使用されることを特徴とする防振装置の特性決定方法である。
【発明の効果】
【0014】
この発明によると、走行抵抗を受けて高速で走行する車両であっても振動低減効果を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の実施形態に係る防振装置の特性決定方法によって決定される防振装置を備える鉄道車両の模式図である。
【
図2】この発明の実施形態に係る防振装置の特性決定方法によって決定される防振装置を備えるけん引装置の側面図である。
【
図3】この発明の実施形態に係る防振装置の特性決定方法によって決定される防振装置を備えるけん引装置の平面図である。
【
図4】この発明の実施形態に係る防振装置の特性決定方法によって決定される防振装置の外観図であり(A)は正面図であり、(B)は側面図であり、(C)は(B)のIV-IVC線で切断した状態を示す断面図である。
【
図5】この発明の実施形態に係る防振装置の特性決定方法によって決定される防振装置の緩衝ゴムが中立状態であるときの模式図であり、(A)は平面図であり、(B)は側面図である。
【
図6】この発明の実施形態に係る防振装置の特性決定方法によって決定される防振装置の荷重-変位特性を模式的に示すグラフである。
【
図7】この発明の実施形態に係る防振装置の特性決定方法を説明するための工程図である。
【
図8】この発明の実施形態に係る防振装置の特性決定方法の荷重演算工程を説明するための模式図である。
【
図9】この発明の実施形態に係る防振装置の特性決定方法のプラトー領域内特性設定工程を説明するための模式図である。
【
図10】この発明の実施形態に係る防振装置の特性決定方法においてプラトー領域設定荷重中心を決定するために使用される台車-車体間結合要素の前後方向の特性に着目したモデルを示す模式図である。
【
図11】この発明の実施形態に係る防振装置の特性決定方法のプラトー領域内特性設定工程を説明するための模式図であり、(A)は荷重-加速度の関係を一例として示すグラフであり、(B)は荷重-変位特性を一例として示すグラフである。
【
図12】この発明の実施形態に係る防振装置の特性決定方法による振動低減及び走行安定性の確保が両立する設定パラメータの探索手法を一例として示すグラフであり、(A)は蛇行動限界速度と加速度PSDとの関係を示すグラフであり、(B)はプラトー領域外剛性とプラトー領域変位幅との組み合わせを示すグラフである。
【
図13】この発明の実施形態に係る防振装置の特性決定方法により決定される防振装置の荷重-変位特性を一例として示すグラフである。
【
図14】この発明の実施形態に係る防振装置の特性決定方法によって決定される防振装置の効果を表すグラフである。
【
図15】従来の防振装置(従来品)の荷重-変位特性を一例として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳しく説明する。
図1に示す軌道1は、車両2が走行する通路(線路)である。軌道1は、車両2の車輪4aを支持し案内してこの車両2を走行させるレール1aなどを備えている。車両2は、軌道1に沿って走行する鉄道車両である。車両2は、例えば、電車、気動車、機関車、客車又は貨車などである。
図1に示す車両2は、例えば、新幹線の鉄道車両である。車両2は、
図1及び
図2に示す車体3と、
図1に示す台車4A,4Bと、
図1及び
図2に示すけん引装置5A,5Bと、
図1~
図3に示す防振装置7A,7Bなどを備えている。
【0017】
図1及び
図2に示す車体3は、鉄道車両の乗客又は貨物を積載し輸送するための構造物である。車体3は、
図1に示すように、けん引装置5A,5Bのけん引リンク6に連結される車体側連結部3aを備えており、
図2に示すようにこの車体側連結部3aは車体3の床構造物(台枠)に固定されている。
【0018】
図1に示す台車4A,4Bは、車体3を支持して走行する装置である。台車4Aは、車両2の進行方向前側の第1台車であり、台車4Bは車両2の進行方向後側の第2台車である。台車4A,4Bは、
図1に示す車輪4aと、台車枠4bと、空気ばね4cと、
図1及び
図2に示す台車側連結部4dなどを備えている。車輪4aは、レール1aと転がり接触する部材である。車輪4aは、この車輪4aと一体となって回転する車軸を有し、主電動機のような原動機が発生する駆動力によって、歯車を介してこの車軸を回転させることで回転駆動する。車輪4aは、この車輪4aと一体となって回転する車軸を回転自在に支持する軸箱支持装置によって、台車枠4bの所定の位置に保持されている。台車枠4bは、台車4A,4Bの主要構成部である。台車枠4bは、例えば、車輪4aを回転させる駆動力を発生する原動機、及び車両2を減速させるブレーキ力を発生するブレーキ装置などを搭載している。空気ばね4cは、車体3と台車枠4bとの間を結合し、車体3の垂直方向の荷重を支持しつつ、台車枠4bから車体3に伝わる振動を低減する装置である。空気ばね4cは、車体3と台車枠4bとの間を結合することによって、車体3と台車4A,4Bとの間の前後方向及び左右方向の荷重を伝達する。
図1~
図3に示す台車側連結部4dは、けん引装置5A,5Bのけん引リンク6に連結される部分である。台車側連結部4dは、
図1に示すように、台車枠4bに設けられている。
【0019】
図1に示すけん引装置5Aは、車体3と台車4Aとを連結する装置であり、けん引装置5Bは車体3と台車4Bとを連結する装置である。けん引装置5Aは、
図1~
図3に示すけん引リンク6と、
図1~
図4に示す防振装置7A,7Bなどを備えている。けん引装置5A,5Bは、車体3と台車4A,4Bとの間で上下、左右、前後及び回転方向に防振装置7A,7Bを介して弾性支持されている。
図1~
図3に示すけん引装置5A,5Bは、一本のけん引リンクによって車体3と台車4A,4Bとを緩衝ゴムを介して連結する一本リンク式けん引装置である。けん引装置5Aは、車体3と台車4Aとを防振装置7A,7Bを介して連結しており、車体3と台車4Aとの間で前後方向の力を伝達させる。けん引装置5Bは、車体3と台車4Bとを防振装置7A,7Bを介して連結しており、車体3と台車4Bとの間で前後方向の力を伝達させる。けん引装置5A,5Bは、いずれも同一構造であり、以下では車両2の進行方向前側のけん引装置5Aについて説明し、車両2の進行方向後側のけん引装置5Bについては詳細な説明を省略する。
【0020】
図1~
図3に示すけん引リンク6は、車体3と台車4Aとの間で駆動力及び制動力などの前後力を伝達する部材である。けん引リンク6は、車体3と台車4Aとの間で荷重を伝達するために、ピン9Aとピン9Bとを防振装置7A,7Bを介して連結する。
図1~
図3に示すけん引リンク6は、一本リンク式けん引装置の引張棒(リンク部材)であり、外観が棒状の金属製の部材でありけん引装置5Aの本体部分(一本リンク本体)を構成する。けん引リンク6は、台車4Aがモータ付き台車である場合には、車両2がエネルギーの供給を受けて進行する力行時の駆動力や、車両2が減速しつつ進行するブレーキ時の制動力を伝達する。けん引リンク6は、
図2及び
図3に示す保持部6a,6bと、
図2に示すブシュ孔6c,6dと、
図2及び
図3に示す連結部6eなどを備えている。
【0021】
図2及び
図3に示す保持部6aは、防振装置7Aを保持する部分であり、保持部6bは防振装置7Bを保持する部分である。保持部6a,6bは、
図2に示すように、けん引リンク6の両端部にそれぞれ形成されており、保持部6aはけん引リンク6の台車4A側に形成されており、保持部6bはこのけん引リンク6の車体3側に形成されている。ブシュ孔6c,6dは、けん引リンク6の両端部を貫通する貫通孔である。ブシュ孔6cは、保持部6aに形成されており、ブシュ孔6dは保持部6bに形成されている。
図2及び
図3に示す連結部6eは、保持部6aと保持部6bとを連結する部分である。
【0022】
図1~
図4に示す防振装置7A,7Bは、車両2の車体3に伝達する加振力を抑制する装置である。
図2に示すように、防振装置7Aはけん引リンク6のブシュ孔6cとピン9Aの軸部9aとの間で伝達する振動を緩和し、防振装置7Bはけん引リンク6のブシュ孔6dとピン9Bの軸部9aとの間で伝達する振動を緩和する。防振装置7Aは台車4A側のピン9Aと外筒8Aとの間に配置されており、防振装置7Bは車体3側のピン9Bと外筒8Bとの間に配置されている。防振装置7A,7Bは、けん引装置5Aの緩衝ゴム部分(一本リンクゴム)を構成している。防振装置7A,7Bは、
図2及び
図4に示す外筒8A,8Bと、
図2~
図4に示すピン9A,9Bと、
図3に示す固定部材10A,10Bと、
図2~
図4に示す緩衝ゴム11A,11Bと、
図2~
図5に示す剛性変化部12などを備えている。防振装置7A,7Bは、
図1~
図4に示す構造に緩衝ゴム11A,11Bを用いることで、けん引装置5Aに本来求められるけん引力の伝達及び走行安定性の確保と車体振動の低減とを、この防振装置7A,7B全体として確保する。
【0023】
図2に示す外筒8Aは、防振装置7Aの外周部を構成する部材であり、外筒8Bは防振装置7Bの外周部を構成する部材である。外筒8Aは、ピン9A及び緩衝ゴム11Aと一体となった状態でけん引リンク6のブシュ孔6cに挿入され、外筒8Bはピン9B及び緩衝ゴム11Bと一体となった状態でけん引リンク6のブシュ孔6dに挿入される部材である。外筒8A,8Bは、いずれも同一構造であり、
図2及び
図3に示すように緩衝ゴム11A,11Bをそれぞれ収容する金属製の部材である。外筒8A,8Bは、
図2に示すように、この外筒8A,8Bの外周部がブシュ孔6c,6dの内周部に圧入されておりブシュ孔6c,6dと嵌合する。
【0024】
図2~
図4に示すピン9Aは、台車4Aに連結される部材であり、ピン9Bは車体3に連結される部材である。
図2及び
図3に示すように、ピン9Aは台車側連結部4dに連結されており、ピン9Bは車体側連結部3aに連結されている。ピン9A,9Bは、
図4(A)(C)に示すように、外観が棒状の金属製の部材(心棒)であり、
図4(B)(C)に示すように緩衝ゴム11A,11Bの内周部と接合している。ピン9A,9Bは、このピン9A,9Bの外周部が、緩衝ゴム11A,11Bの内周部と一体となって接合することによって、このピン9A,9Bの軸方向に荷重が作用したときに、緩衝ゴム11A,11Bから軸部9aが抜け出すのを防止する。ピン9A,9Bは、いずれも同一構造であり、
図2及び
図4に示す緩衝ゴム11A,11Bに収容される軸部9aと、
図2~
図4に示す固定部材10A,10Bを取り付ける取付部9bと、
図3及び
図4に示す取付部9bを貫通する取付孔9cなどを備えている。
【0025】
図3に示す固定部材10Aは、ピン9Aを台車4Aに固定する部材であり、固定部材10Bはピン9Bを車体3に固定する部材である。固定部材10Aは、台車側連結部4dにピン9Aを着脱自在に固定しており、固定部材10Bは車体側連結部3aにピン9Bを着脱自在に固定している。固定部材10A,10Bは、例えば、ボルト頭部10aを有する締結ボルトである。固定部材10Aは、
図2~
図4に示すピン9Aの取付孔9cに雄ねじ部を挿入して、台車側連結部4dの雌ねじ部にこの雄ねじ部の先端部がねじ込まれる。固定部材10Bは、ピン9Bの取付孔9cに雄ねじ部を挿入して、車体側連結部3aの雌ねじ部にこの雄ねじ部の先端部がねじ込まれる。
【0026】
図2~
図4に示す緩衝ゴム11Aは、外筒8Aとピン9Aとの間で伝達する振動を緩和するとともに、これらの間に作用する衝撃を緩和する部材である。緩衝ゴム11Bは、外筒8Bとピン9Bとの間で伝達する振動を緩和するとともに、これらの間に作用する衝撃を緩和する。緩衝ゴム11A,11Bは、この緩衝ゴム11A,11Bの外周部が外筒8A,8Bの内周部と接着しており、この緩衝ゴム11A,11Bの内周部がピン9A,9Bの外周部と接着している。緩衝ゴム11A,11Bは、外筒8A,8Bの内周部とピン9A,9Bの外周部との間にゴムを流し込むことによって略円筒状に成形されたゴム筒であり、外筒8A,8Bの内周部とピン9A,9Bの外周部とに加硫接着して一体となる。
【0027】
図6は、この発明の実施形態に係る防振装置の荷重-変位特性を一例として示すグラフである。
図6に示す縦軸は荷重[kN]であり、横軸は変位[mm]である。プラトー領域A
Pは、例えば、
図6に示すように、車両2の防振装置7A,7Bに作用する定速走行時の荷重F
rubberに合わせて設定されている。ここで、
図6に示す荷重-変位曲線のプラス側(第1象限)は、
図1に示すD方向の荷重に対する防振装置7Aの特性を表す。一方、
図6に示す荷重-変位曲線のマイナス側(第3象限)は、
図1に示すD方向とは逆方向の荷重に対する防振装置7Aの特性を表す。
【0028】
図2~
図5に示す剛性変化部12は、車両2が所定の速度で定速走行になって、防振装置7A,7Bに所定の荷重F
rubberが作用するときに、この防振装置7A,7Bの特性を高剛性から低剛性に変化させる手段の一例である。剛性変化部12は、
図6に示すように防振装置7A,7Bの特性を表す荷重-変位曲線の傾きが小さくなるプラトー領域A
Pで、この防振装置7A,7Bの特性を高剛性から低剛性に変化させる。ここで、プラトー領域A
Pは、
図6に示すように、緩衝ゴム11A,11Bの剛性が低剛性又はゼロの状態である領域である。剛性変化部12は、プラトー領域A
P内では荷重-変位曲線の傾きが小さくなるように、防振装置7A,7Bの特性を低剛性に変化させる。一方、剛性変化部12は、プラトー領域A
P外では荷重-変位曲線の傾きが大きくなるように、防振装置7A,7Bの特性を高剛性に変化させる。剛性変化部12は、緩衝ゴム11A,11Bの剛性が比較的高いプラトー領域A
P外であるときには、台車4Aと車体3との間に作用する駆動力及び制動力などの前後力である荷重を伝達させる。剛性変化部12は、緩衝ゴム11A,11Bの剛性が比較的低いプラトー領域A
P内であるときには、台車4Aから車体3への加振力の伝達を抑制することによって、車体3の弾性振動を低減させて乗り心地を向上させる。剛性変化部12は、
図2、
図4及び
図5に示す収容部13と、
図2~
図5に示す袋体部14と、
図3~
図5に示す流入部15と、流出部16などを備えている。
【0029】
図2、
図4及び
図5に示す収容部13は、袋体部14を収容する部分である。収容部13は、この収容部13の内部で袋体部14が膨張状態及び収縮状態になるように、緩衝ゴム11A,11Bに形成された間隙部(空隙部)である。収容部13は、
図4(B)に示すように、緩衝ゴム11A,11Bの周方向に所定の幅及び長さで、
図4(C)に示すように緩衝ゴム11A,11Bを貫通するように、スリット状に形成されている。収容部13は、
図2に示すように、けん引リンク6の中心線上に配置されており、緩衝ゴム11A,11Bの中心線を中心として対称に配置されている。収容部13は、緩衝ゴム11A,11Bに荷重が作用して、緩衝ゴム11A,11Bが弾性変形することによって隙間が変化する。
【0030】
図2~
図5に示す袋体部14は、緩衝ゴム11A,11Bの荷重条件に応じて、流体の流入及び流出を切り替えることにより、膨張状態又は収縮状態に変化する部分である。ここで、流体は、空気などの気体又は油などの液体である。袋体部14は、例えば、車両2の空気圧縮機が圧送する空気によって膨張及び収縮するエアバック、又は車両2の油圧ポンプが圧送する油によって膨張及び収縮する油圧アキュムレータなどである。袋体部14は、例えば、収容部13内に挿入された状態で、この袋体部14の外周部が収容部13の内周部に接着剤などによって接着されている。
【0031】
図3~
図5に示す流入部15は、袋体部14に流体が流入する部分である。流入部15は、流体を供給する流体供給部から袋体部14にこの流体を流入させる流入口である。流入部15は、例えば、流体が空気の場合には空気圧縮機から袋体部14に空気を流入し、流体が油の場合には油圧ポンプから袋体部14に油を流入する。流出部16は、袋体部14から流体が流出する部分である。
【0032】
次に、この発明の実施形態に係る防振装置の特性決定方法について説明する。
以下では、
図1に示す車両2が駆動車(M車(モータ有))の場合を例に挙げて説明する。
図7に示す特性決定方法#100は、車両2の車体3に伝達する加振力を抑制する防振装置7A,7Bの特性を決定する方法である。特性決定方法#100では、
図6に示すように、プラトー領域A
Pを有する防振装置7A,7Bの荷重-変位特性を決定する。特性決定方法#100は、定速走行速度決定工程#110と、定速走行時荷重演算工程#120と、プラトー領域外特性設定工程#130と、プラトー領域設定荷重中心決定工程#140と、プラトー領域内特性設定工程#150と、評価工程#160と、最適特性決定工程#170などを含む。特性決定方法#100は、例えば、パーソナルコンピュータなどを利用して、防振装置7A,7Bの特性を決定するための特性決定プログラムに従って所定の処理を実行し、防振装置7A,7Bの特性を決定する。
【0033】
定速走行速度決定工程#110は、車両2が定速で走行するときの車両2の走行速度を決定する工程である。定速速度決定工程#110では、例えば、対象となる車両2の定速走行速度を240,320[km/h]などのように決定する。定速走行速度決定工程#110では、車両2が走行する線区毎に常用又は多用される定速走行速度が決定される。
【0034】
定速走行時荷重演算工程#120は、車両2が所定の定速走行しているときに、車体3の前後方向に作用する定速走行時の荷重F
Cを演算する工程である。定速走行時荷重演算工程#120では、台車-車体間結合要素(空気ばね4c及びけん引リンク6)による前後方向荷重(前後力)F
Cを演算する。定速走行時荷重演算工程#120では、
図8に示す車両2の定速走行時の台車-車体間結合要素による前後方向荷重(前後力)F
Cを、定速走行時の走行抵抗に基づく荷重として把握する。
【0035】
先ず、定速走行時荷重演算工程#120では、例えば、車両2が新車である場合などには、車両2の走行抵抗を計算により把握する。ここで、走行抵抗とは、車両2が平坦直線路を無風時に走行するときに、車両2の走行を妨げる向きの車両全体に作用する抵抗力であり、車両2の走行速度の増加に伴って増加する。以下では、走行抵抗の中でも特に影響が大きい空気抵抗に着目して、定速走行時の台車-車体間結合要素による前後方向荷重FCを演算する場合を例に挙げて説明する。定速走行時荷重演算工程#120では、1編成分の空気抵抗DAと1両分の空気抵抗Faeroとを以下の数1に示す予測式又はシミュレーションによって演算する。
【0036】
【0037】
ここで、数1に示すρ:空気密度、V:車両速度、A’:車体断面積、C
Dp:先頭部及び後尾部の圧力抵抗係数、λ’:広義の摩擦抵抗に対する水力的摩擦抵抗係数、l:車両長、d’:車体断面の水力直径、N
car:1編成の車両数である。定速走行時荷重演算工程#120では、次に、数1に示す1両分の空気抵抗F
aeroから、
図8に示す台車-車体間結合要素による前後方向荷重(車体3に対して台車4A,4Bからそれぞれ前後方向に作用する定速走行時の荷重)F
Cを演算する。車両2が駆動車(M車(モータ有))の場合、車両2が定速を維持するためには、数1に示す1両分の空気抵抗F
aeroと台車-車体間結合要素による前後方向荷重F
Cが釣り合う(逆向きで大きさが等しい)必要がある。台車-車体間結合要素は、車体3と前後の台車4A,4Bの間にそれぞれ設置されており、これらによる荷重が等しいとみなすと、1台車分の台車-車体間結合要素による前後方向荷重F
Cの大きさはF
c=F
aero/2の関係式で得られる。
【0038】
定速走行時荷重演算工程#120では、例えば、車両2が既存車両である場合などには、実車両を用いた走行試験によって、防振装置7A,7Bに作用する定速走行時の荷重(けん引リンク6に作用する定速走行時の前後方向荷重)Flinkを測定し、この測定結果に基づいて台車-車体間結合要素による前後方向荷重FCを把握する。先ず、定速走行時荷重演算工程#120では、例えば、けん引リンク6に作用する荷重を検出するひずみゲージのような荷重検出部をけん引リンク6に取り付けて、走行試験時に装着した防振装置7A,7Bに作用する定速走行時の荷重Flinkを実測によって把握する。次に、定速走行時荷重演算工程#120では、以下の数2に示すけん引リンク6の1本分の剛性klinkを導出する。
【0039】
【0040】
ここで、数2に示すkrubber:実車両を用いた走行試験を実施したときの実測条件における1本当たりのけん引リンク6の緩衝ゴム11A,11Bの剛性、ksupport:けん引リンク6の受け剛性である。ここで、けん引リンク6の受け剛性ksupportとは、けん引リンク6の受けとなる車体側連結部3a及び台車側連結部4dの剛性である。定速走行時荷重演算工程#120では、数2に示すけん引リンク6の1本分の剛性klinkを導出した後に、以下の数3によって空気ばね4cに作用する前後方向荷重Fairを演算する。
【0041】
【0042】
ここで、数3に示すk
air:空気ばね4cの前後剛性である。定速走行時荷重演算工程#120では、数3によって演算した空気ばね4cに作用する前後方向荷重(空気ばね1個当たりに作用する前後方向荷重)F
airにより、
図8に示すように以下の数4を用いて1台車分の台車-車体間結合要素による前後方向荷重F
Cを把握する。
【0043】
【0044】
図7に示すプラトー領域外特性設定工程#130は、プラトー領域A
P外の特性を設定する工程である。
図9は、プラトー領域A
Pを有する荷重-変位特性を一例として示すグラフの第1象限を表すものである。
図9に示す縦軸は荷重[kN]であり、横軸は変位[mm]である。プラトー領域外特性設定工程#130では、
図9に示すプラトー領域外剛性k
rubberの範囲を設定する。ここで、
図9に示すプラトー領域外剛性は、プラトー領域A
P外における荷重-変位曲線の傾きである。プラトー領域外特性設定工程#130では、例えば、現状のけん引リンクの緩衝ゴムの剛性と同等以上2倍以下の範囲内に適切な間隔で区切って、検討対象である緩衝ゴム11A,11Bのプラトー領域外剛性[kN/mm]の候補として設定する。プラトー領域外特性設定工程#130では、プラトー領域A
P外の剛性を設定パラメータ(設定条件)として設定する。プラトー領域外特性設定工程#130では、
図6に示すように、
図1に示すD方向の荷重に対するプラス側のプラトー領域A
P外の設定パラメータを設定するとともに、
図1に示すD方向とは逆方向の荷重に対するマイナス側のプラトー領域A
P外の設定パラメータも設定される。
【0045】
設定荷重中心決定工程#140は、防振装置7A,7Bに作用する定速走行時の荷重F
rubberを、プラトー領域A
P内の設定荷重中心として決定する工程である。設定荷重中心決定工程#140では、定速走行時荷重演算工程#120において演算した定速走行時の台車-車体間結合要素による前後方向荷重F
Cに基づいて、防振装置7A,7Bに作用する定速走行時の荷重F
rubberを演算し、この防振装置7A,7Bに作用する定速走行時の荷重F
rubberを、プラトー領域A
P内の設定荷重中心として決定する。
図10は、台車-車体間結合要素の前後方向の特性に着目したモデルを示す模式図である。設定荷重中心決定工程#140では、プラトー領域外特性設定工程#130において設定したプラトー領域外剛性k
rubberを使用して、けん引リンク6の1本分の剛性k
linkを数2によって演算する。設定荷重中心決定工程#140では、防振装置7A,7Bに作用する定速走行時の荷重(けん引リンク6に作用する定速走行時の前後方向荷重(けん引リンク荷重))F
rubberを計算により導出する。設定荷重中心決定工程#140では、けん引リンク6に装着された防振装置7A,7Bに作用する定速走行時の荷重F
rubberをプラトー領域設定荷重中心として以下の数5によって演算する。
【0046】
【0047】
設定荷重中心決定工程#140では、プラトー領域外特性設定工程#130において設定したプラトー領域外剛性krubber[kN/mm]の候補毎に空気ばね4cとのバランスを考慮し、けん引リンク6に設定するプラトー領域設定荷重中心を決定する。
【0048】
【0049】
表1は、プラトー領域外剛性k
rubber、空気ばね4cの前後剛性k
air、けん引リンク6の受け剛性k
support及び1両分の空気抵抗F
aeroに具体的な数値を設定したときに演算された防振装置7A,7Bに作用する定速走行時の前後方向の荷重F
rubberの各値の一例である。例えば、
図10及び表1に示すプラトー領域外剛性k
rubberを18,20,22,24,26,28のように区切って設定し、空気ばね4cの前後剛性k
airを車両2の諸元値から設定し、けん引リンク6の受け剛性k
supportを実車の測定値から設定する。次に、表1に示すプラトー領域外剛性k
rubber毎にけん引リンク6の1本分の剛性k
linkを数2によって演算する。最後に、けん引リンク6に装着された防振装置7A,7Bに作用する定速走行時の荷重F
rubberを数5によって演算して、この防振装置7A,7Bに作用する定速走行時の荷重F
rubberをプラトー領域設定荷重中心として設定する。
【0050】
図11は、設定荷重中心決定工程#140において設定されるプラトー領域設定荷重中心を模式的に示すグラフである。
図11(A)(B)に示す縦軸はけん引リンクにかかる荷重[kN]である。
図11(A)に示す横軸は加速度[km/h/s]であり、
図11(B)に示す横軸は変位[mm]である。
図11は、240km/hの走行時における車両2の加速度及びプラトー領域A
Pを有する荷重-変位特性における応答の関係を一例として示すグラフである。
図11に示すように、加速度ゼロ(定速走行)であるときにけん引リンク6の緩衝ゴム11A,11Bの荷重-変位応答がプラトー領域A
Pに対応する。なお、
図11(A)に示すグラフは、車両2の走行速度によって変化する。表1に示すプラトー領域外剛性k
rubber毎に防振装置7A,7Bに作用する定速走行時の荷重F
rubberが計算されて、
図11に示すようにプラトー領域設定荷重中心が決定される。プラトー領域外特性設定工程#130では、プラトー領域外剛性k
rubberを設定範囲内で区切って複数の値を設定しており、空気ばね4cの前後剛性k
airとけん引リンク6の1本分の剛性k
linkとの比がこの値によって変化する。この場合には、空気ばね4c及びけん引リンク6にかかる前後力の負担割合が変化するため、設定荷重中心決定工程#140においてプラトー領域設定荷重中心(防振装置7A,7Bに作用する定速走行時の荷重F
rubber)をそれぞれのプラトー領域外剛性k
rubberに対して演算する。設定荷重中心決定工程#140では、
図9に示すように、プラトー領域設定荷重中心を設定パラメータ(設定条件)として設定する。
【0051】
プラトー領域内特性設定工程#150は、プラトー領域A
P内の設定荷重中心以外の特性を設定する工程である。プラトー領域内特性設定工程#150では、プラトー領域設定荷重中心以外の他の設定パラメータの範囲が設定される。プラトー領域内特性設定工程#150では、
図9に示すプラトー領域内剛性の範囲、プラトー領域変位幅及びプラトー領域ヒステリシスを設定する。ここで、
図9に示すプラトー領域内剛性は、プラトー領域A
P内における荷重-変位曲線の傾きである。プラトー領域内剛性[kN/mm]は、例えば、0以上プラトー領域外剛性未満に設定される。プラトー領域変位幅とは、プラトー領域A
P内における緩衝ゴム11A,11Bの変位量である。プラトー領域変位幅[mm]は、例えば、0以上0.2以下に設定される。プラトー領域ヒステリシスは、負荷時の荷重値と除荷時の荷重値とのずれ量である。プラトー領域ヒステリシス[kN]は、例えば、0以上1未満に設定される。プラトー領域内特性設定工程#150では、
図9に示すように、プラトー領域内剛性、プラトー領域変位幅及びプラトー領域ヒステリシスを設定パラメータ(設定条件)として設定する。プラトー領域内特性設定工程#150では、
図11に示すように、
図1に示すD方向の荷重に対するプラス側のプラトー領域A
P内の設定パラメータを設定するとともに、
図1に示すD方向とは逆方向の荷重に対するマイナス側のプラトー領域A
P内の設定パラメータも同様に設定される。
【0052】
評価工程#160は、プラトー領域AP外の特性と、プラトー領域AP内の設定荷重中心と、プラトー領域AP内の特性とに基づいて、車両2の振動特性及び走行安定性を評価する工程である。評価工程#160では、プラトー領域外特性設定工程#130、設定荷重中心決定工程#140及びプラトー領域内特性設定工程#150において設定した設定パラメータに基づいて、走行シミュレーションを実施して、車両2の振動特性及び走行安定性を評価する。評価工程#160では、全てのプラトー領域APの設定条件(検討パラメータ)の組み合わせに対して振動特性及び走行安定性を検証する。先ず、区切られたプラトー領域外剛性と、その他のプラトー領域変位幅、プラトー領域ヒステリシス及びプラトー領域内剛性の3つのパラメータの範囲を、それぞれ適切な間隔で区切って値を選択し、それらの値を組み合わせたプラトー領域APを含む荷重-変位特性を作成する。
【0053】
【0054】
表2は、各パラメータの組み合わせによって構成される荷重-変位特性の一例である。先ず、表2に示すように、プラトー領域変位幅、プラトー領域ヒステリシス及びプラトー領域内剛性の範囲をそれぞれ決定し、これらの範囲を適切な間隔で区切り、これらの組み合わせ毎に、プラトー領域APを有する荷重-変位特性を決定する。例えば、表2に示すように、プラトー領域外特性設定工程#130において設定した6通りのプラトー領域外剛性に対して、プラトー領域変位幅を10通り設定し、プラトー領域ヒステリシスを5通り設定し、プラトー領域内剛性を4通り設定し、6×10×5×4=1200通りの荷重-変位特性が作成される。
【0055】
次に、作成したプラトー領域APを有する防振装置7A,7Bを備えるけん引リンク6を装着した車両モデルを全ての条件毎に構築し、走行シミュレーションを実施する。走行シミュレーションの結果から加速度パワースペクトル密度(Power spectral density(以下、PSDという))を演算して振動特性を評価するとともに、蛇行動限界速度を演算して走行安定性を評価する。ここで、振動特性は、例えば、車両2の走行予定軌道の模擬走行を行って、着目する車体床面の加速度を出力し、出力した加速度に基づいて加速度PSDを把握して評価する。走行安定性は、レール1aと車輪4aとの接触などを含む非線形性を考慮した車両2の蛇行動限界速度によって評価する。蛇行動限界速度とは、車両2がレール1a上を走行するときに起きる左右動、ローリング運動及びヨーイング運動が連成した自励振動である蛇行動が発生する限界速度である。
【0056】
最適特性決定工程#170は、防振装置7A,7Bの最適な特性を決定する工程である。最適特性決定工程#170では、車両2の振動特性及び走行安定性の評価結果に基づいて、防振装置7A,7Bの最適な特性を決定する。最適特性決定工程#170では、車両2が所定の速度で定速走行になって、防振装置7A,7Bに所定の荷重F
rubberが作用するときに、防振装置7A,7Bの特性が高剛性から低剛性に変化するように、防振装置7A,7Bの最適な特性が決定される。最適特性決定工程#170では、
図6、
図9及び
図11に示すように、防振装置7A,7Bの特性を表す荷重-変位曲線の傾きが小さくなる領域であるプラトー領域A
Pが決定される。最適特性決定工程#170では、車体3の前後方向に作用する定速走行時の荷重F
Cに基づいて、プラトー領域A
Pを決定する。最適特性決定工程#170では、車両2の振動特性及び走行安定性を両立する設定パラメータを防振装置7A,7Bの最適な特性として決定する。
【0057】
最適特性決定工程#170では、車両2の弾性振動の低減と走行安定性の確保とが両立する設定パラメータを把握する。
図12(A)は、蛇行動限界速度と加速度PSDとの関係を示すグラフである。
図12(A)に示す縦軸は加速度PSD(13.3Hz)[(m/s
2)
2/Hz]であり、横軸は蛇行動限界速度[km/h]である。
図12は、プラトー領域内剛性0kN/mm及びプラトー領域ヒステリシス0.5kNを固定値にして、プラトー領域外剛性を20~28kN/mmの範囲で変更させ、プラトー領域変位幅を0.02~0.20mmの範囲で変更した場合のグラフである。
図12(A)に示す加速度PSDは、けん引リンクを介した車体上下弾性振動が発生している周波数の車体床面中央の結果である。
図12(B)は、プラトー領域外剛性とプラトー領域変位幅との組み合わせを示すグラフである。
図12(B)に示す縦軸はプラトー領域変位幅[mm]であり、横軸はプラトー領域外剛性[kN/mm]である。
【0058】
図12(A)に示す黒点は、既存品の緩衝ゴムの加速度PSD及び蛇行動限界速度である。ここで、既存品は、一般の車両で使用されている現状品の隙間のない緩衝ゴムである。濃色の領域は、既存品の通常の緩衝ゴムを装着した場合よりも、車体上下弾性振動が低減し、蛇行動限界速度が大きくなる。このため、
図12(A)の濃色の範囲内の設定パラメータ(プロット形状)が、
図12(B)に示す濃色の範囲内の組み合わせの設定パラメータであり、濃色の範囲内の設定パラメータについては振動低減と走行安定性とを両立することができる。例えば、プラトー領域変位幅が小さい領域では、プラトー領域外剛性を小さくし、プラトー領域変位幅が大きい領域では、プラトー領域外剛性を大きくすることによって、振動低減と走行安定性とを両立することができる。
【0059】
図13は、発明品の荷重-変位特性を一例として示すグラフである。
図13に示す縦軸は荷重[kN]であり、横軸は変位[mm]である。ここで、発明品は、この実施形態に係るプラトー領域A
Pを有する防振装置7A,7Bであり、新幹線の変位依存性緩衝ゴムである。
図14は、床面上下加速度PSDを一例として示すグラフである。
図14に示す縦軸は、加速度PSD[(m/s
2)
2/Hz]であり、横軸は周波数[Hz]である。
図13及び
図14に示すグラフは、いずれもシミュレーションモデルによる検証結果である。
図13に示すように、新幹線の定速走行時の荷重(走行抵抗負荷時の荷重)にプラトー領域A
Pを設定し、振動解析モデルによって振動低減効果を予測した。
図14に示すように、既存品及び従来品に比べて発明品では車体上下振動が低減して乗り心地の向上効果が確認された。
【0060】
この発明の実施形態に係る防振装置の特性決定方法は、以下に記載するような効果を奏する。
(1) この実施形態では、車両2が所定の速度で定速走行になって、防振装置7A,7Bに所定の荷重Frubberが作用するときに、防振装置7A,7Bの特性が高剛性から低剛性に変化するように、防振装置7A,7Bの最適な特性を決定する。このため、走行抵抗を受けて高速で走行する車両であっても振動低減効果を図ることができる。例えば、走行中の空気抵抗が大きい新幹線などの高速鉄道に適用することで、台車4A,4Bから車体3への加振力の伝達が抑制されるため、車体振動を低減することができるとともに、固体伝搬音の低減を期待することができ、快適性を向上させることができる。
【0061】
(2) この実施形態では、防振装置7A,7Bの特性を表す荷重-変位曲線の傾きが小さくなる領域であるプラトー領域APを決定する。このため、想定される車両2の速度に対応した走行抵抗に合わせて、荷重-変位曲線の傾きが小さくなるプラトー領域APを持たせて、振動絶縁効果を持たせることができる。また、走行速度がより高い領域では、既存品と同様に荷重-変位曲線の傾きが大きくなり、走行安定性への影響を最小限に抑えることができる。
【0062】
(3) この実施形態では、車両2が所定の速度で定速走行しているときに、車体3の前後方向に作用する定速走行時の荷重FCを演算し、車体3の前後方向に作用する定速走行時の荷重FCに基づいて、プラトー領域APを決定する。このため、例えば、定速走行時の台車-車体間結合要素に作用する前後方向の荷重FCを把握し、車両2の走行速度に対応する走行抵抗値に基づいてプラトー領域APを設定する荷重域(プラトー領域設定荷重中心)を決定することができる。
【0063】
(4) この実施形態では、プラトー領域AP外の特性を設定し、車体3の前後方向に作用する定速走行時の荷重FCに基づいて、防振装置7A,7Bに作用する定速走行時の荷重Frubberを演算し、この防振装置7A,7Bに作用する定速走行時の荷重Frubberをプラトー領域内の設定荷重中心として決定し、プラトー領域AP内の特性を設定する。また、この実施形態では、プラトー領域AP外の特性と、プラトー領域内の設定荷重中心と、プラトー領域AP内の特性とに基づいて、車両の振動特性及び走行安定性を評価する。さらに、この実施形態では、車両2の振動特性及び走行安定性の評価結果に基づいて、防振装置7A,7Bの最適な特性を決定する。このため、例えば、シミュレーション結果から振動特性及び走行安定性を両立するプラトー領域APを有する防振装置7A,7Bの最適な特性を決定することができる。
【0064】
(5) この実施形態では、プラトー領域外剛性を設定パラメータとして設定し、プラトー領域内設定荷重中心、プラトー領域内剛性、プラトー領域変位幅及びプラトー領域ヒステリシスを設定パラメータとして設定する。また、この実施形態では、これらの設定パラメータに基づいて、走行シミュレーションを実施して、車両2の振動特性及び走行安定性を評価し、車両2の振動特性及び走行安定性を両立する設定パラメータを防振装置7A,7Bの最適な特性として決定する。このため、最適化で得られた荷重-変位特性を実現可能な構造を有する防振装置7A,7Bを実装することができる。
【0065】
(6) この実施形態では、鉄道車両の車体3と台車4A,4Bとを連結するけん引装置5A,5Bに防振装置7A,7Bが使用される。このため、台車4A,4Bから車体3への振動の伝達を抑制することによって、車体3の弾性振動を低減し、乗り心地を向上させることができるとともに、走行安定性を実現することができる。
【0066】
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、車両2が新幹線を走行する新幹線車両である場合を例に挙げて説明したが、在来線を走行する在来線車両、又は新幹線と在来線とを相互に走行可能な新在直通運転用の車両などについても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、鉄道車両の防振装置7A,7Bに使用される緩衝ゴム11A,11Bを例に挙げて説明したが、自動車、機械類などの移動体のサスペンション装置、ダンパ装置、免振装置、制振装置などに使用される緩衝ゴムについても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、けん引装置5A,5Bの緩衝ゴム11A,11Bを例に挙げて説明したが、このようなけん引装置5A,5Bの緩衝ゴム11A,11Bにこの発明を限定するものではない。例えば、
図1に示す車両2のまくらばりと車体3又は台車枠4bとをリンク部材によって連結するボルスタアンカ装置、車両2の車体3と台車枠4bとをリンク部材によって連結するヨーダンパ装置、軸箱と一体の軸ばりと台車枠4bとをリンク部材によって連結する軸ばり式の軸箱支持装置、一方の車体3の妻面と他方の車体3の妻面とをリンク部材によって連結する車端ダンパ装置、一方の車体3と他方の車体3とを左右のレール1a方向にリンク部材によって連結する車体間ヨーダンパ装置などの緩衝ゴムについても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、緩衝ゴム11A,11Bを用いてプラトー領域A
Pを有する防振装置7A,7Bを構成する場合を例に挙げて説明したが、緩衝ゴム11A,11B以外を用いてプラトー領域A
Pを有する防振装置を構成する場合についても、この発明を適用することができる。例えば、ダンパ自体の特性でプラトー領域A
Pを有する防振装置を実現したり、防振ゴムの外側に別の部材を付加してプラトー領域A
Pを有する防振装置を実現したり、アクティブに変位-荷重特性を制御することによってプラトー領域A
Pを有する防振装置を実現する場合についても、この発明を適用することができる。
【0067】
(2) この実施形態では、けん引装置5A,5Bとして一本リンク式けん引装置を例に挙げて説明したが、Z形のリンク機構によって車体3と台車4A,4Bとを連結するZリンク式けん引装置についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、緩衝ゴム11A,11Bがピン付きゴムブシュである場合を例に挙げて説明したが、ピン付きゴムブシュ以外の緩衝ゴムについてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、走行抵抗として空気抵抗を主要因として例に挙げて説明したが、軸受/車軸間及び車輪/レール間に発生する摩擦抵抗による機械抵抗についても空気抵抗とともに走行抵抗として考慮する場合についても、この発明を適用することができる。
【0068】
(3) この実施形態では、緩衝ゴム11A,11Bの内部に収容部13を形成する場合を例に挙げて説明したが、緩衝ゴム11A,11Bの内周部とピン9A,9Bの軸部9aの外周部との間に収容部を形成する場合についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、車体3の車体振動を弾性振動の例に挙げて説明したが、車体3のねじり振動や車体3の弾性変形を伴わない車体3の前後、上下、左右軸方向への並進又はこれらの軸まわりの回転運動などについてもこの発明を適用することができる。
【0069】
(4) この実施形態では、評価工程#160において、走行シミュレーションの結果から加速度PSDを演算して振動特性を評価する場合を例に挙げて説明したが、乗り心地レベルを演算して振動特性を評価する場合についても、この発明を適用することができる。ここで、乗り心地レベルとは、車両の上下及び左右振動加速度についてフィルタにより感覚補正して一定時間の実効値を求め、基準振動加速度との比を対数表示して評価する方法である。また、この実施形態では、評価工程#160において、車両2の振動特性及び走行安定性を評価する場合を例に挙げて説明したが、車両2の振動特性又は走行安定性のいずれか一方を評価する場合についても、この発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 軌道
1a レール
2 車両
3 車体
3a 車体側連結部
4A,4B 台車
4a 車輪
4b 台車枠
4c 空気ばね
4d 台車側連結部
5A,5B けん引装置
6 けん引リンク
7A,7B 防振装置
8A,8B 外筒
9A,9B ピン
11A,11B 緩衝ゴム
12 剛性変化部
13 収容部
14 袋体部
15 流入部
16 流出部
FC 台車-車体間結合要素による前後方向荷重(車体の前後方向に作用する定速走行時の荷重)
Frubber 防振装置に作用する定速走行時の荷重(プラトー領域設定荷重中心(所定の荷重))
Faero 1両分の空気抵抗
Fair 空気ばねに作用する前後方向荷重
Flink 防振装置に作用する定速走行時の荷重(けん引リンクに作用する定速走行時の前後方向荷重)
klink けん引リンクの1本分の剛性
krubber プラトー領域外剛性(1本当たりのけん引リンクの緩衝ゴムの剛性)
ksupport けん引リンクの受け剛性
kair 空気ばねの前後剛性
AP プラトー領域
D 方向(進行方向)