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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027723
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】防火設備
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/04 20060101AFI20230222BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
F16L5/04
E04B1/94 F
E04B1/94 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133034
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】浅野 将巳
(72)【発明者】
【氏名】横田 知宏
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001DE04
2E001FA32
2E001GA66
2E001HA03
2E001HA21
2E001HA32
2E001HA33
2E001HF12
(57)【要約】
【課題】壁構造内部から開口部にわたって延焼することを効果的に抑制しつつ、サッシなどの開口部内部に取り付けられる部材が、開口部用枠材に強固に固定できる防火設備を提供する。
【解決手段】防火設備20は、建築物の壁構造10において開口部12を形成する開口部用枠材11Xと、開口部用枠材11Xの開口部12側とは反対側の位置に取り付けられた開口部用耐火材15とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の壁構造において開口部を形成する開口部用枠材と、
前記開口部用枠材の前記開口部側とは反対側の位置に取り付けられた開口部用耐火材と、
を備える防火設備。
【請求項2】
前記開口部用枠材が、木材及び軽量鉄骨の少なくともいずれかである請求項1に記載の防火設備。
【請求項3】
前記開口部用耐火材が、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、繊維系耐火材、熱膨張性耐火材、及び耐火パテからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の防火設備。
【請求項4】
前記開口部用耐火材が、熱膨張性耐火材である請求項3に記載の防火設備。
【請求項5】
前記開口部の内部には、前記開口部用枠材に固定される被固定部材が設けられる請求項1~4のいずれか1項に記載の防火設備。
【請求項6】
前記壁構造における屋外側、及び屋内側それぞれに設けられ、かつ耐火材から構成される屋外側被覆材及び屋内側被覆材を備え、前記屋外側被覆材及び屋内側被覆材の間に前記開口部用耐火材が配置される請求項1~5のいずれか1項に記載の防火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁構造の開口部に設けられる防火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築物において、壁構造には、窓、ダクト、扉などの建具を設けるための開口部が形成される。開口部には火災が発生した際に延焼を防止するための防火設備が設けられることが一般的である。防火設備とは、防火地域又は準防火地域内にある建築物で、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に設けられ、通常の火災時における火炎を遮るための性能を有する窓、扉、その他の設備をいう。木造建築物における防火設備は、準耐火構造とすることが多いが、近年、大規模建築物又は高層建築物としての木造建築物のニーズが高まっており、木造建築物においても耐火構造が求められることが多くなってきている。
【0003】
耐火構造を有する木造建築物の壁構造は、屋外側、及び屋内側の両方が石膏ボードなどの被覆材より被覆されるとともに、開口部には、屋外側、及び屋内側の被覆材を接続するように、石膏ボードなどの耐火材(開口部用耐火材)がさらに配置されることが知られている。開口部用耐火材は、ファイアーストップ材として機能し、壁構造内部から開口部にわたって延焼することを防止することができる。
開口部用耐火材は、開口部を形成するための枠材(開口部用枠材)が組み立てられた後に開口部用枠材に取り付けられるため、開口部用枠材の内側(すなわち、開口部用枠材の開口部側の面)に取り付けられることが一般的である。
【0004】
また、開口部に設けられた窓などの建具を介して延焼することを防止するために、サッシなどの建具の一部に、火災時の加熱によって膨張する熱膨張性耐火材が取り付けられることも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-002278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるように、窓などの建具に熱膨張耐火材が取り付けられても、壁構造内部から開口部にわたって延焼することを十分に防止することができず、防火性能が不十分となる。
【0007】
また、上記の通り、開口部用耐火材が開口部用枠材の内側に取り付けられた構造とすると、サッシなどを開口部用枠材に取り付ける際、サッシと、開口部用枠材との間に開口部用耐火材が配置されることになり、サッシからサッシを支持する開口部用枠材までの距離が長くなる。そのため、サッシは、開口部用枠材に対する固定が弱くなってガタつきが生じるなどの問題が発生する。
【0008】
そこで、本発明は、壁構造内部から開口部にわたって延焼することを効果的に抑制しつつ、サッシなどの開口部内部に取り付けられる部材が、開口部用枠材に強固に固定できる防火設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、開口部を形成する開口部用枠材の開口部側とは反対側の位置に耐火材を取り付けることで、上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]を提供する。
[1]建築物の壁構造において開口部を形成する開口部用枠材と、
前記開口部用枠材の前記開口部側とは反対側の位置に取り付けられた開口部用耐火材と、
を備える防火設備。
[2]前記開口部用枠材が、木材及び軽量鉄骨の少なくともいずれかである上記[1]に記載の防火設備。
[3]前記開口部用耐火材が、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、繊維系耐火材、熱膨張性耐火材及び耐火パテからなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]又は[2]に記載の防火設備。
[4]前記開口部用耐火材が、熱膨張性耐火材である上記[3]に記載の防火設備。
[5]前記開口部の内部には、前記開口部用枠材に固定される被固定部材が設けられる上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の防火設備。
[6]前記壁構造における屋外側、及び屋内側それぞれに設けられ、かつ耐火材から構成される屋外側被覆材及び屋内側被覆材を備え、前記屋外側被覆材及び屋内側被覆材の間に前記開口部用耐火材が配置される上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の防火設備。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、壁構造内部から開口部にわたって延焼することを効果的に抑制しつつ、サッシなどの開口部内部に取り付けられる部材が、開口部用枠材に強固に固定される防火設備を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る防火設備を備える壁構造を示す斜視図である。
図2図1におけるII-II線における矢視断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施形態を参照しつつ図1、2を用いて詳細に説明する。
図1に示すとおり、壁構造10には、枠材が設けられ、枠材によって開口部12が形成される。枠材は、鉛直方向に沿っても設けられる縦枠材11Aと、水平方向に沿って設けられる横枠材11Bとを備える。本実施形態において壁構造10は、木造建築物の壁であり、各枠材は木材により形成される。
なお、在来軸組工法において、縦枠材11Aは、柱、方立、間柱などにより構成され、また、横枠材11Bは、梁、窓台、土台、桁、まぐさなどにより構成される。ただし、木造建築物は、在来軸組工法に限定されず、2×4工法などの枠組壁工法などにより建築されてもよい。
【0013】
開口部12は、例えば、互いに対向する1対の縦枠材11Aと、1対の横枠材11Bが四角枠を構成するように組み立てられることで形成される。なお、本明細書では、開口部12を形成する枠材(縦枠材11A及び横枠材11B)を総称して「開口部用枠材11X」ということがある。開口部12の内部に設けられる、窓などの建具(図1では図示しない)は、開口部用枠材11Xに固定される。
【0014】
図1、2に示すとおり、壁構造10は、開口部12に防火設備20を備える。防火設備20は、上記した開口部用枠材11Xと、開口部用枠材11Xに取り付けられた耐火材(開口部用耐火材)15とを備える。開口部用耐火材15は、いわゆるファイアーストップ材として機能する。
ここで、開口部用耐火材15は、図1、2に示すように、開口部用枠材11Xの開口部12側とは反対側の位置に設けられる。すなわち、開口部用枠材11Xは、一般的に角材により構成されるが、開口部用耐火材15は、開口部12を形成する該角材(開口部用枠材11X)の内面11Eとは、反対側の面である外面11Fに取り付けられるとよい。
【0015】
なお、図2では、開口部12の下側を構成する開口部用枠材11Xの構成を具体的に示すが、他の開口部用枠材11Xの構成も同様である。また、図1では、開口部12を形成する各開口部用枠材11Xそれぞれに開口部用耐火材15が取り付けられるが、本発明では、少なくとも1つの開口部用枠材11Xに開口部用耐火材15が取り付けられればよく、ファイアーストップ材が必要ない位置においては、開口部用耐火材15は適宜省略されてもよい。
【0016】
開口部用耐火材15は、ケイ酸カルシウム板、石膏ボード、繊維系耐火材、熱膨張性耐火材及び耐火パテの少なくともいずれかであることが好ましい。繊維系耐火材としては、ロックウール、グラスウールなどの繊維状の不燃材料を使用できる。また、開口部用耐火材15は、開口部用枠材11Xが、四角枠状に組み立てられた後に、開口部用枠材11Xに取り付けられてもよいし、四角枠状に組み立てる前に開口部用枠材11Xに取り付けられてもよい。開口部用耐火材15は、組み立てる前に開口部用枠材11Xに取り付けられることで、開口部用枠材11Xの開口部12側とは反対側の位置に容易に取り付け可能となる。
【0017】
また、開口部用耐火材15は、各開口部用枠材11Xにおいて、1以上の耐火材から構成されてもよいし、2以上の耐火材から構成されてもよい。2以上の耐火材により構成される場合、図1の横枠材11Bにより構成される開口部用枠材11Xに取り付けられた開口部用耐火材15のように、枠材11Xの長手方向(すなわち、横方向)に沿って2つ並べられてもよい。また、図示しないが2以上の耐火材が積層されて積層体を構成してもよい。
【0018】
開口部用耐火材15は、後述する通り、取付容易性、枠材の組立容易性、耐火性の観点から、上記した中では熱膨張性耐火材であることがより好ましい。熱膨張性耐火材は、熱膨張性黒鉛などの熱膨張性材料を含有し、火災などの加熱により膨張する部材である。熱膨張性耐火材は、一般的にシート状である。なお、熱膨張性耐火材及び耐火パテの詳しい構成は、後述する。
【0019】
開口部用耐火材15の厚みは、特に限定されないが、例えば0.3~10mm、好ましくは2~5mmである。
開口部用耐火材15は、ネジ、釘、粘着剤、粘着テープ、接着剤などのいかなる固定手段で開口部用枠材11Xに固定されてもよい。ただし、開口部用耐火材15が熱膨張性耐火材である場合、熱膨張性耐火材は、取付容易性の観点から、粘着テープ、又は後述する熱膨張性層自体の自着力により開口部用枠材11Xに取り付けられることが好ましい。粘着テープは、基材がないいわゆる基材レス粘着テープであってよいし、基材の両面に粘着剤層が設けられた、基材を有する粘着テープであってもよい。
【0020】
開口部12の内部には、上記のとおり、開口部用枠材11Xに固定される、建具が設けられる。図2では、建具が窓の例を示すものであり、建具の一部を構成するサッシ17が示される。サッシ17は、開口部用枠材11Xに固定されるものであり、具体的には、留め具18によって開口部用枠材11Xに固定される。留め具18は、釘、ネジ、ビス、ボルトなど、軸部がねじ込まれ又は打ち込まれることにより、部材間を固定する部材である。
留め具18は、サッシ17から開口部用枠材11Xの内面11Eを介して開口部用枠材11Xの内部まで軸部が到達するように設けられるとよいが、開口部用枠材11X、又は開口部用枠材11X及び開口部用耐火材15を貫通するように設けられてもよい。なお、留め具18は、その軸方向が壁構造10の面方向(すなわち、壁構造10の厚さ方向Dに垂直な方向)に沿うように配置される。
【0021】
図1、2に示すとおり、本実施形態に係る壁構造10には、開口部12以外の部分において、屋外側、及び屋内側それぞれに屋外側被覆材21、屋内側被覆材22が設けられるとよい。屋外側被覆材21、及び屋内側被覆材22は、ケイ酸カルシウム板、石膏ボードなどの耐火材により構成される。なお、図2において、屋外側被覆材21、及び屋内側被覆材22それぞれは、2枚の耐火材が積層されて構成されるが、耐火材の枚数は特に限定されず、1枚以上であればよい。
【0022】
ここで、開口部12の周囲に設けられる屋外側被覆材21、及び屋内側被覆材22それぞれは、開口部用枠材11X、及び開口部用枠材11X以外の枠材に固定される。屋外側被覆材21、及び屋内側被覆材22は、釘、ネジなどの固定手段(図示しない)により枠材に固定されるとよい。屋外側被覆材21、及び屋内側被覆材22は、開口部用枠材11X及び開口部用耐火材15とともに防火設備20を構成する。
【0023】
また、図2に示すとおり、壁構造10において、屋外側被覆材21及び屋外側被覆材21の間には、断熱材25が配置されるとよい。断熱材25としては、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバーなどの繊維系断熱材、ウレタンフォームなどの発泡体系断熱材が挙げられる。発泡体系断熱材は、板状、もしくは吹き付けなどにより被覆材21、22上に積層するように形成されてもよい。本実施形態では、壁構造10内部に断熱材25が設けられることで、建築物の断熱性を良好にできる。
【0024】
以上の一実施形態によれば、開口部用耐火材15は、開口部用枠材11Xの開口部12側とは反対側の位置に配置されるので、開口部用枠材11Xに固定されるサッシ17などの部材(被固定部材)と、開口部用枠材11Xの間には、開口部用耐火材15が設けられない。そのため、開口部用枠材11Xの内面11Eと、サッシ17などの被固定部材との距離(例えば、後述する距離L)を短くできる。したがって、サッシ17などの被固定部材は、ガタつくことなく固定部用枠材11Xに強固に固定できるようになる。
なお、図2の構成では、留め具18が設けられる位置において、サッシ17などの被固定部材と開口部用枠材11Xは、距離Lだけ離間しているが、開口部用枠材11Xの内面11Eとサッシ17は接触していてもよく、したがって距離Lは0であってもよい。なお、距離Lとは、留め具18が設けられる位置における、固定部用枠材11Xとサッシ17などの被固定部材との距離を意味する。
【0025】
また、本実施形態では、開口部用耐火材15が、開口部用枠材11Xに取り付けられ、ファイアーストップ材として機能するので、壁構造10内部から開口部12にわたって延焼することを有効に防止することができる。加えて、防火設備20は、耐火材から構成される屋外側被覆材21、及び屋内側被覆材22を備えることで、防火性能、耐火性能がより一層向上して、例えば、防火設備20を建築基準法上の耐火構造などとすることも可能になる。
【0026】
なお、本実施形態において、開口部用耐火材15は、図2に示すとおり、開口部用枠材11Xの開口部12側とは反対側の位置において、屋外側被覆材21及び屋内側被覆材22の間に配置されることなるが、このような構成により、壁構造10内部から開口部12にわたって延焼することをより一層効果的に防止できる。
また、開口部用耐火材15は、図2に示すとおり、屋外側被覆材21、及び屋内側被覆材22のいずれにも接触するように配置されてもよいが、必ずしも被覆材21、22に接触する必要はない。開口部用耐火材15が、屋外側被覆材21、屋内側被覆材22、又はこれらの両方に接触しなくても、防火設備20は、開口部用耐火材15に加えて開口部用枠材11Xを有することで延焼をある程度防止できる。
【0027】
さらに、本実施形態では、開口部用耐火材15として熱膨張性耐火材を使用する場合には、熱膨張性耐火材の自着力や、粘着テープなどによって、開口部用耐火材15を開口部用枠材11Xに容易に取り付けることができる。加えて、熱膨張性耐火材は、薄くても十分な耐火性能を有するので、組み立て前の開口部用枠材11Xに開口部用耐火材15として取り付け、その後、開口部用枠材11Xを四角枠状に組み立てる場合であっても、開口部用耐火材15が開口部用枠材11の組み立てを阻害することはなく、枠材の組み立てを容易にすることができる。
【0028】
(防火設備の施工方法)
次に、本発明の防火設備の施工方法を説明する。本発明の一実施形態に係る防火設備の施工方法は、以下の工程1、工程2を備えるとよい。
工程1:開口部用枠材に開口部用耐火材を取り付ける工程
工程2:開口部用枠材を含む枠材を組み立てて、開口部を形成する工程
【0029】
工程1における、開口部用枠材11Xへの開口部用耐火材15の取付方法は、特に限定されないが、上記した固定手段により開口部用枠材11Xの外面11Fに相当する面に開口部用耐火材15を固定させるとよい。
また、工程2では、開口部を形成するための開口部用耐火材11X、及び必要に応じて開口部用耐火材11X以外の枠材を組み立てて、開口部12を形成するとよい。
【0030】
本施工方法では、工程2の後に工程1を行ってもよいが、工程1の後に工程2を行うことが好ましい。すなわち、開口部用耐火材15を予め取り付けた開口部用枠材11Xを含む枠材を組み立てて、開口部12を形成することが好ましい。以上の工程順により防火設備20を施工すると、枠組される前に開口部用耐火材15が開口部用枠材11Xに取り付けられることになるので、他の枠材などにより阻害されることなく、開口部用耐火材15を開口部用枠材11Xの所定の位置に容易に取り付けることができる。また、工程1の後に工程2を行っても、上述したとおり、開口部用耐火材15として熱膨張性耐火材を使用することで枠材の組み立ても容易となる。
【0031】
また、本施工方法では、以下の工程3及び工程4の一方又は両方を備えてもよい。
工程3:屋外側被覆材及び屋内側被覆材を壁構造に取り付ける工程
工程4:開口部の内部に配置されるサッシなどの被固定部材を開口部用枠材に固定する工程
工程3は、上記の通り、屋外側被覆材21及び屋内側被覆材22を、開口部用枠材11Xを含む枠材に固定させることで行うとよい。工程4では、留め具18などを使用して、サッシ17などの被固定部材を開口部用枠材15に固定するとよい。
工程3、4は、工程1、2の後に行うとよい。また、工程3、4の両方を行う場合、工程3の後に工程4を行ってもよいし、工程4の後に工程3を行ってもよい。
【0032】
(熱膨張性耐火材)
次に、開口部用耐火材として使用される熱膨張性耐火材についてより詳細に説明する。
熱膨張性耐火材は、熱膨張性樹脂組成物より形成される熱膨張性層を備える。熱膨張性樹脂組成物は、樹脂成分と、熱膨張性材料を含有する。熱膨張性材料としては、加熱することにより発泡する発泡剤、バーミキュライト、熱膨張性黒鉛などの熱膨張性層状無機物が挙げられ、中でも熱膨張性黒鉛が好ましい。熱膨張性黒鉛を使用することで、火災の加熱により適切に膨張され、また、膨張後の膨張残渣の機械強度が優れ、耐火性を良好にしやすくなる。なお、熱膨張性材料は、後述する成形などによって膨張せず、または膨張しても部分的であり、熱膨張性樹脂組成物は、熱膨張性層において熱膨張性が維持される。
【0033】
熱膨張性材料の膨張開始温度は、特に限定されないが、例えば、150~350℃であることが好ましく、170~300℃であることがより好ましく、180~280℃であることが更に好ましい。これら下限値以下とすることで、火災以外の加熱により、熱膨張性材料が誤って膨張することを防止する。また、上限値以下とすることで、火災の加熱により確実に熱膨張性材料を膨張させやすくなる。
また、熱膨張性材料の膨張開始温度は、所定量(例えば、100mg)の熱膨張性材料を一定の昇温速度(例えば、10℃/分)で昇温させ、法線方向の力が立ち上がる温度を計測することにより測定可能である。測定装置としては測定温度制御が可能であり、かつ法線方向の応力を測定できるものであればよく、例えばレオメーターを使用すればよい。
【0034】
熱膨張性層の膨張倍率は3倍以上であることが好ましく、10倍以上が好ましい。膨張倍率の上限は、特に限定されないが、例えば50倍である。なお、膨張倍率は、熱膨張性層を電気炉に供給し、600℃で30分間加熱した後、試験片の厚さを測定し、(加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ)により算出するとよい。
【0035】
以下、熱膨張性材料が、熱膨張性黒鉛である場合の熱膨張性樹脂組成物について詳細に説明する。熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマーが挙げられる。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(CPVC)、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル(EVA)等のポリオレフィン、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、クロロプレン(CR)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリロニトリル共重合体(ASA)、アクリロニトリル/エチレン-プロピレン-ジエン/スチレン共重合体(AES)等が挙げられる。
硬化性樹脂の例としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
【0036】
エラストマーの例としては、天然ゴム、シリコーンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、およびフッ素ゴム等のゴムが挙げられる。また、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、および塩化ビニル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーも挙げられる。
熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分は、1種であってもよいし2種以上を組み合わせてもよい。
【0037】
熱膨張性樹脂組成物は、可塑剤を含有してもよい。可塑剤は、樹脂成分がポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂である場合に好ましく使用される。可塑剤の具体的としては、例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等のアジピン酸エステルや、アジピン酸ポリエステルなどの脂肪酸エステル可塑剤、エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、トリー2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)等の燐酸エステル可塑剤、鉱油等のプロセスオイルなどが挙げられる。可塑剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
熱膨張性樹脂組成物が可塑剤を含有する場合、熱膨張性樹脂組成物における可塑剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば0.3質量部以上150質量部以下の範囲であり、好ましくは10質量部以上100質量部以下の範囲である。可塑剤は、これら下限値以上とすると、成形性が良好になりやすく、上限値以下となると、熱膨張性層に適度な強度が付与される。
【0038】
樹脂成分と可塑剤の合計含有量は、樹脂組成物全量基準で、10質量%以上90質量%以下が好ましく、25質量%以上80質量%以下がより好ましく、40質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。これら下限値以上とすることで、熱膨張性層の成形性などを良好にできる。また、上限値以下とすることで、熱膨張性黒鉛、無機充填剤などの成分を十分な量配合することが可能になる。
なお、樹脂成分と可塑剤の合計含有量とは、樹脂成分と可塑剤の両方が含有される場合には、これらの合計含有量を意味し、可塑剤を含有しない場合には樹脂成分単独の含有量を意味する。
【0039】
熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗片状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とにより処理してグラファイト層間化合物を生成させたものである。生成された熱膨張性黒鉛は炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
熱膨張性黒鉛は、酸処理して得られた熱膨張性黒鉛がアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和されたものなども使用することもできる。
脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
熱膨張性黒鉛の粒度は、特に限定されないが、20~200メッシュの範囲のものが好ましい。粒度は、下限値以上となると黒鉛の膨張度が大きくなりやすく、発泡性が良好になる。また、上限値以下とすることで、樹脂と混練する際の分散性が良好となり、成形性が向上する。
【0040】
熱膨張性樹脂組成物における熱膨張性黒鉛の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば3質量部以上300質量部以下である。熱膨張性黒鉛の含有量は、3質量部以上となることで、熱膨張性が良好となる。また、300質量部以下となることで、成形性、機械的物性なども良好となる。これら観点から、熱膨張性黒鉛の含有量は、好ましくは10質量部以上200質量部以下の範囲であり、より好ましくは15質量部以上100質量部以下の範囲である。
【0041】
熱膨張性樹脂組成物は、さらに無機充填材を含有してもよい。無機充填材は、一般に熱膨張性樹脂組成物に使用されている無機充填材であれば、特に限定はない。具体的には、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイ力、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカバルン、窒化アルミニウム、亜リン酸アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコニア鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。無機充填材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
無機充填剤を含有する場合、熱膨張性樹脂組成物における無機充填材の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましく3質量部以上200質量部以下の範囲であり、より好ましくは10質量部以上150質量部以下の範囲である。
【0042】
熱膨張性樹脂組成物は、公知の粘着付与剤を含有してもよい。粘着付与剤を含有することで、熱膨張性層自体に粘着性を付与しやすくなり、自着性を有することも可能である。
また本発明に使用する熱膨張性樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、必要に応じて、難燃剤、吸熱剤、熱安定剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤、架橋促進剤等の熱膨張性樹脂組成物に一般的に使用される添加剤が添加されてもよい。これらの中では加工助剤を使用することが好ましい。
【0043】
熱膨張性耐火材は、熱膨張性層単層からなってもよいが、熱膨張性層に加えて基材を有する積層体であってもよい。積層体は、熱膨張性層と基材の2層構造であってもよいし、熱膨張性層と基材の間には、接着剤層が設けられてもよい。また、熱膨張性層と基材の少なくともいずれかが2層以上設けられた積層体であってもよい。
基材は、不燃材料から構成されることが好ましく、不燃材料としては、アルミニウム箔などの金属シート、ガラスクロス、アルミガラスクロスなどの金属シートとガラスクロスの複合体などが挙げられ、中でもアルミガラスクロスが好ましい。
また、熱膨張性耐火材としては、市販品も使用でき、例えば積水化学工業株式会社製の「フィブロック」なども使用できる。
【0044】
また、熱膨張性耐火材は、パテ状であってもよい。パテ状である熱膨張性耐火材及び後述する耐火パテは、施工時に形状を適宜調整でき、所望の形状にして開口部用枠材に取り付けることができる。パテ状である熱膨張性耐火材は、上記した熱膨張性樹脂組成物からなるものでもよい。この場合、樹脂成分を適宜選択などすることで、熱膨張性耐火材をパテ状とすることができる。また、パテ状である熱膨張性耐火材は、熱膨張性材料を含有する粘土からなるものでもよい。パテ状の熱膨張性耐火材は、硬化タイプであってもよいし、非硬化タイプであってもよい。パテ状の熱膨張性耐火材としては、日東化成工業株式会社製の「プラシール」シリーズなどが挙げられる。
【0045】
また、耐火パテとしては、熱により膨張しない非膨張性のパテが挙げられ、樹脂成分に各種無機充填材が配合されたものでもよく、粘土タイプのパテでもよい。耐火パテは、硬化タイプであってもよいし、非硬化タイプであってもよい。耐火パテとしては、市販品も使用でき、因幡電機産業株式会社製の「耐火パテ 硬化型不燃タイプIPF」、株式会社古河テクノマテリアル製の「ダンシール-P」、「ダンシール-KP」、積水化学工業株式会社製の「セキスイ耐火パテ」、「セキスイ耐火パテII」などが挙げられる。
【0046】
以上の説明では、本発明を実施形態を示して詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない限り様々な改良ないし変更をしてもよいし、各構成を適宜組み合わせてもよい。
例えば、以上の実施形態では、建築物に使用される枠材が木材であり木造建築物の例を示して説明したが、枠材は軽量鉄骨であってもよく、軽量鉄骨と木材の組み合わせであってもよい。また、建築物は木造建築物に限定されず、枠材が軽量鉄骨である場合には軽量鉄骨造の建築物であってよい。
また、開口部内部に設けられる建具は、窓の例を示したが、窓以外でも、扉、ダクト、障子などであってもよい。
【符号の説明】
【0047】
10 壁構造
11A 縦枠材
11B 横枠材
11E 内面
11F 外面
11X 開口部用枠材
12 開口部
15 開口部用耐火材
17 サッシ(被固定部材)
18 留め具
20 防火設備
21 屋内側被覆材
22 屋外側被覆材
25 断熱材
図1
図2