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特開2023-27728乳化組成物、化合物および化合物の製造方法
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  • 特開-乳化組成物、化合物および化合物の製造方法 図1
  • 特開-乳化組成物、化合物および化合物の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027728
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】乳化組成物、化合物および化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/54 20220101AFI20230222BHJP
   C08G 77/46 20060101ALI20230222BHJP
   A61K 8/894 20060101ALN20230222BHJP
   A61K 8/06 20060101ALN20230222BHJP
【FI】
B01F17/54
C08G77/46
A61K8/894
A61K8/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133044
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】山口 和夫
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 和夫
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋子
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 佳那
【テーマコード(参考)】
4C083
4D077
4J246
【Fターム(参考)】
4C083AD161
4C083DD31
4C083EE01
4C083FF01
4D077AA02
4D077AA09
4D077AB08
4D077AB11
4D077AC01
4D077BA13
4D077DC02X
4D077DC02Y
4D077DC27Y
4D077DC59Y
4D077DC67Y
4D077DC70Y
4J246AA03
4J246AB02
4J246BA02X
4J246BB021
4J246BB02X
4J246CA01E
4J246CA01U
4J246CA01X
4J246CA24X
4J246CA26E
4J246CA26X
4J246CA53M
4J246CA53X
4J246CA56M
4J246CA56X
4J246CA58M
4J246CA58X
4J246CA85M
4J246CA87M
4J246CA87X
4J246EA14
4J246EA17
4J246FA222
4J246FA432
4J246FC162
4J246FE04
4J246GA01
4J246GB02
4J246GC42
4J246HA42
(57)【要約】
【課題】油相の種類に関係なく、安定した乳化状態を維持できる乳化組成物、化合物および化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】油相と、水相と、自発的に閉鎖小胞体を形成し、下記式(1)で表される両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体とを含む乳化組成物。
【化1】
(前記式(1)中、xは8以上22以下、mは9以上60以下、nは10以上230以下、RはH、アルキル基、または炭素数1以上6以下のアルキレン基をスペーサーとするカルボン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホン酸基、硫酸基もしくはいずれかの塩を示す。)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油相と、
水相と、
自発的に閉鎖小胞体を形成し、下記式(1)で表される両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体と
を含む乳化組成物。
【化1】
(前記式(1)中、xは8以上22以下、mは9以上60以下、nは10以上230以下、RはH、アルキル基、または炭素数1以上6以下のアルキレン基をスペーサーとするカルボン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホン酸基、硫酸基もしくはいずれかの塩を示す。)
【請求項2】
前記閉鎖小胞体は、前記油相と前記水相との界面に介在する、請求項1に記載の乳化組成物。
【請求項3】
前記式(1)中、xは17、mは13.5以上24以下、nは20以上23以下、RはCHである、請求項1または2に記載の乳化組成物。
【請求項4】
前記式(1)中、xは17、mは23、nは19、RはCHCOOHまたはその塩である、請求項1または2に記載の乳化組成物。
【請求項5】
前記式(1)中、xは17、mは16以上26以下、nは18、RはCHCHPO(OH)またはその塩である、請求項1または2に記載の乳化組成物。
【請求項6】
前記式(1)中、xは17、mは12以上24以下、nは18以上20以下、RはHである、請求項1または2に記載の乳化組成物。
【請求項7】
下記式(1)で表され、水中で自発的に閉鎖小胞体を形成する化合物。
【化2】
(前記式(1)中、xは8以上22以下、mは9以上60以下、nは10以上230以下、RはH、アルキル基、または炭素数1以上6以下のアルキレン基をスペーサーとするカルボン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホン酸基、硫酸基もしくはいずれかの塩を示す。)
【請求項8】
前記式(1)中、xは17、mは13.5以上24以下、nは20以上23以下、RはCHである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
前記式(1)中、xは17、mは23、nは19、RはCHCOOHまたはその塩である、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
前記式(1)中、xは17、mは16以上26以下、nは18、RはCHCHPO(OH)またはその塩である、請求項7に記載の化合物。
【請求項11】
下記式(1)で表される化合物の製造方法であって、
ブロモアルカンを金属リチウムと反応させて得られるアルキルリチウムを開始剤としてヘキサメチルシクロトリシロキサンのアニオン開環重合を行い、停止剤としてのクロロジメチルシランと反応させ、末端にSi-H結合を持つポリジメチルシロキサンとアルカンのブロック共重合体を合成する工程1と、
末端にORを持つポリエチレングリコールのアリルエーテルを合成する工程2と、
前記工程1で得られた下記式(2)で表される前記ブロック共重合体のSi-H結合と、前記工程2で得られた下記式(3)で表される化合物の炭素-炭素二重結合の付加反応を行う工程3と
を有する、化合物の製造方法。
【化3】
【化4】
【化5】
(前記式(1)中、xは8以上22以下、mは9以上60以下、nは10以上230以下、RはH、アルキル基、または炭素数1以上6以下のアルキレン基をスペーサーとするカルボン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホン酸基、硫酸基もしくはいずれかの塩を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化組成物、化合物および化合物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
三相乳化に使用する親水性ナノ粒子として、閉鎖小胞体(ベシクル)や多糖類の単粒子などが用いられており、それらのナノ粒子が油水表面に付着することによって乳化安定化している。そのため、三相乳化は、従来の界面張力の低下による界面活性剤の乳化とは異なり、油剤の種類に関係なく乳化が可能である。
【0003】
例えば特許文献1には、自己組織能を有する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体を主成分とする乳化分散剤が記載されている。そして、この乳化分散剤を用いることで、機能性油性基剤と水、または機能性顆粒と水などの界面に対して、熱安定性などに優れた乳化分散系を形成することが可能となる。
【0004】
このような三相乳化において、長期間に亘って安定した乳化状態を維持するためには、ナノ粒子が油相にも水相にも溶解せずに粒子として長期間維持することが求められる。しかし、香料やベンジルアルコールのような溶剤として用いられる油には三相乳化で用いられる閉鎖小胞体を溶解するものがあった。この場合、油相表面に閉鎖小胞体が付着しても、閉鎖小胞体は次第に油相に溶解されて粒子として維持できず、その結果、時間が経過するにつれて、乳化安定性が不十分となる。一方、ベンジルアルコールや香料などの油剤は、インク、塗料、ラッカー、エポキシ樹脂塗膜などの溶剤や化粧品原料として幅広く利用されており、その汎用性は高く、近年それらの溶剤を乳化系で扱うための乳化技術開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3855203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、油相の種類に関係なく、安定した乳化状態を維持できる乳化組成物、化合物および化合物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 油相と、水相と、自発的に閉鎖小胞体を形成し、下記式(1)で表される両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体とを含む乳化組成物。
【化1】
(前記式(1)中、xは8以上22以下、mは9以上60以下、nは10以上230以下、RはH、アルキル基、または炭素数1以上6以下のアルキレン基をスペーサーとするカルボン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホン酸基、硫酸基もしくはいずれかの塩を示す。)
[2] 前記閉鎖小胞体は、前記油相と前記水相との界面に介在する、上記[1]に記載の乳化組成物。
[3] 前記式(1)中、xは17、mは13.5以上24以下、nは20以上23以下、RはCHである、上記[1]または[2]に記載の乳化組成物。
[4] 前記式(1)中、xは17、mは23、nは19、RはCHCOOHまたはその塩である、上記[1]または[2]に記載の乳化組成物。
[5] 前記式(1)中、xは17、mは16以上26以下、nは18、RはCHCHPO(OH)またはその塩である、上記[1]または[2]に記載の乳化組成物。
[6] 前記式(1)中、xは17、mは12以上24以下、nは18以上20以下、RはHである、上記[1]または[2]に記載の乳化組成物。
[7] 下記式(1)で表され、水中で自発的に閉鎖小胞体を形成する化合物。
【化2】
(前記式(1)中、xは8以上22以下、mは9以上60以下、nは10以上230以下、RはH、アルキル基、または炭素数1以上6以下のアルキレン基をスペーサーとするカルボン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホン酸基、硫酸基もしくはいずれかの塩を示す。)
[8] 前記式(1)中、xは17、mは13.5以上24以下、nは20以上23以下、RはCHである、上記[7]に記載の化合物。
[9] 前記式(1)中、xは17、mは23、nは19、RはCHCOOHまたはその塩である、上記[7]に記載の化合物。
[10] 前記式(1)中、xは17、mは16以上26以下、nは18、RはCHCHPO(OH)またはその塩である、上記[7]に記載の化合物。
[11] 下記式(1)で表される化合物の製造方法であって、ブロモアルカンを金属リチウムと反応させて得られるアルキルリチウムを開始剤としてヘキサメチルシクロトリシロキサンのアニオン開環重合を行い、停止剤としてのクロロジメチルシランと反応させ、末端にSi-H結合を持つポリジメチルシロキサンとアルカンのブロック共重合体を合成する工程1と、末端にORを持つポリエチレングリコールのアリルエーテルを合成する工程2と、前記工程1で得られた下記式(2)で表される前記ブロック共重合体のSi-H結合と、前記工程2で得られた下記式(3)で表される化合物の炭素-炭素二重結合の付加反応を行う工程3とを有する、化合物の製造方法。
【化3】
【化4】
【化5】
(前記式(1)中、xは8以上22以下、mは9以上60以下、nは10以上230以下、RはH、アルキル基、または炭素数1以上6以下のアルキレン基をスペーサーとするカルボン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホン酸基、硫酸基もしくはいずれかの塩を示す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、油相の種類に関係なく、安定した乳化状態を維持できる乳化組成物、化合物および化合物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、ベンジルアルコールを乳化した実施例2~3、6~8および比較例2の乳化組成物の外観写真である。
図2図2は、実施例3の化合物から調整した閉鎖小胞体で各種の油剤を乳化した乳化組成物の外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ベシクルを形成するための、自己凝集する炭化水素部と、油相および水相に溶解しない部位としての、炭化水素および水になじまない疎油性部と、水中で安定分散させ、かつ油相となじまないようにするための親水基部とのABC型トリブロック共重合体である化合物を新たに合成し、この化合物が様々な油剤に対する耐溶解性に優れることを見出した。さらには、本発明者らは、この化合物が新規の閉鎖小胞体形成物質として三相乳化に適用できることに着目し、この化合物を用いた三相乳化組成物は、油相の種類に関係なく、安定した乳化状態を維持できることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて、完成させるに至った。
【0012】
実施形態の乳化組成物は、油相と、水相と、自発的に閉鎖小胞体を形成し、下記式(1)で表される両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体(以下、単に閉鎖小胞体ともいう)とを含む。
【0013】
【化6】
【0014】
上記式(1)中、xは8以上22以下、mは9以上60以下、nは10以上230以下、RはH、アルキル基、または炭素数1以上6以下のアルキレン基をスペーサーとするカルボン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホン酸基、硫酸基もしくはいずれかの塩を示す。
【0015】
実施形態の乳化組成物は、閉鎖小胞体を用いたいわゆる三相乳化法を適用した乳化組成物である。乳化組成物は、水中油滴型(O/W型)でも油中水滴型(W/O型)でもよい。
【0016】
乳化組成物がO/W型である場合、内相である油相の周囲には、複数の閉鎖小胞体が存在し、さらにその外側には、外相である水相が存在する。すなわち、複数の閉鎖小胞体が油相と水相との界面に介在すると共に、水相が連続相である。
【0017】
乳化組成物は、多数の閉鎖小胞体が粒子状の油相(滴状の油相)の周囲に存在する、乳化粒子(三相乳化粒子)を多数含有する。乳化粒子の周囲には水相が存在し、多数の乳化粒子は水相中に分散される。
【0018】
自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体は、水性成分中で自発的に閉鎖小胞体を形成する性質を有する。閉鎖小胞体は、いわゆる三相乳化能を有する粒子として知られている。閉鎖小胞体の表面は親水性であるため、閉鎖小胞体は互いに斥力が発生する。
【0019】
油相の表面に多数の閉鎖小胞体が存在する、すなわち油相の表面が多数の閉鎖小胞体で覆われることで、油相同士には斥力が発生する。油相間に発生する斥力は、油相間に発生する引力よりも大きい。そのため、水相中での油相同士の凝集、換言すると乳化粒子同士の凝集が抑制され、油相の分散性が維持および向上する。
【0020】
また、乳化組成物がW/O型である場合、内相である水相の周囲には、複数の閉鎖小胞体が存在し、さらにその外側には、外相である油相が存在する。すなわち、複数の閉鎖小胞体が油相と水相との界面に介在すると共に、油相が連続相である。
【0021】
乳化組成物は、多数の閉鎖小胞体が粒子状の水相(滴状の水相)の周囲に存在する、乳化粒子を多数含有する。乳化粒子の周囲には油相が存在し、多数の乳化粒子は油相中に分散される。
【0022】
水相の表面に多数の閉鎖小胞体が存在する、すなわち水相の表面が多数の閉鎖小胞体で覆われることで、水相同士には斥力が発生する。水相間に発生する斥力は、水相間に発生する引力よりも大きい。そのため、油相中での水相同士の凝集、換言すると乳化粒子同士の凝集が抑制され、水相の分散性が維持および向上する。
【0023】
このような三相乳化法は、閉鎖小胞体が、ファンデルワールス力により内相に付着することで、油相と水相との界面(内相と外相との界面)に介在し、乳化を可能とするものである。三相乳化機構は、親水性部分および疎水性部分をそれぞれ水相および油相に向け、油水界面張力を下げることで乳化状態を維持する、界面活性剤による乳化機構とは全く異なる(例えば特許3855203号公報参照)。
【0024】
実施形態の乳化組成物は、上記のように、界面活性剤による乳化機構と全く異なる三相乳化技術を適用している。そのため、乳化組成物は、界面活性剤を含まなくても、安定した乳化状態を維持できる。このように、乳化組成物では、従来の界面活性剤を用いた組成物に比べて、界面活性剤の量を大幅に減少でき、場合によっては界面活性剤を含まない。
【0025】
乳化組成物における内相の平均粒径は、乳化組成物の用途などに応じて適宜選択される。乳化組成物は、三相乳化によるものであるため、界面活性剤を利用した従来の乳化組成物と比較して、内相の平均粒径を広い範囲内で選択することができる。例えば、内相の平均粒径は、0.1μm以上である。また、内相の平均粒径は、好ましくは50.0μm以下、より好ましくは25.0μm以下、さらに好ましくは10.0μm以下である。内相の平均粒径は、粒度分布測定装置FPAR(大塚電子(株)社製)を用いて動的光散乱法により測定し、Contin解析により得られることができる。
【0026】
乳化組成物を構成する油相に含まれる油は、固形油、液状油のいずれも好適であり、乳化組成物の用途などに応じて適宜選択される。固形油は常温(25℃)で固体状の油、液状油は常温で液体状の油である。油相に含まれる油は、固形油のみでもよいし、液状油のみでもよいし、固形油および液状油の混合油でもよい。
【0027】
例えば、固形油としては、固形油脂(水添パーム油、パーム油、硬化ヤシ油、カカオバター、ピーナッツバター、ラード、乳脂等)、固形パラフィン、ワックス、高級アルコール(ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、バチルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール等)、ロウ(カルナウバロウ、ミツロウ等)等が挙げられる。
【0028】
例えば、液状油としては、植物油(オリーブ油、アボガド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、月見草油、ホホバ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、茶実油、コメヌカ油、小麦胚芽油、胚芽油、落花生油、ヒマワリ油、アーモンド油、タートル油、トウモロコシ油、ミンク油、パーシック油、サザンカ油、アマニ油、エノ油、カヤ油等)、動物油(牛脂、豚脂、乳脂等)、中鎖脂肪酸トリグリセリド、炭化水素油(スクワレン、スクワラン、流動パラフィン等)、エステル油(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸オクチル、イソパルミチン酸オクチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ラウリル酸メチルヘプチル、ラウリン酸ヘキシル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン、ジカプリン酸ネオペンチルリコール、オクタン酸セチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル等)、シリコーン油(シクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)等が挙げられる。
【0029】
さらに、上記で挙げた従来の三相乳化で乳化できる油剤に加えて、有機物に対して大きな溶解性を持つような液状油、例えばベンジルアルコール、テルペン系油剤(シトロネラオイル、バラ油、ラベンダー油、タイム油、テレビン油、リモネン等)、パーフロロカーボン等が挙げられる。
【0030】
乳化組成物の全体の質量に対する油相の含有割合は、乳化組成物の用途などに応じて適宜選択される。油相の含有割合が多くても、乳化組成物の乳化状態を安定して維持することができる。例えば、上記油相の含有割合は、1.0質量%以上、5.0質量%以上、10.0質量%以上、20.0質量%以上、30.0質量%以上、40.0質量%以上、50.0質量%以上、60.0質量%以上、70.0質量%以上、80.0質量%以上であってもよい。また、上記油相の含有割合は、例えば、70.0質量%以下、60.0質量%以下、50.0質量%以下、40.0質量%以下、30.0質量%以下、20.0質量%以下、10.0質量%以下、5.0質量%以下であってもよい。
【0031】
乳化組成物を構成する水相は、水性成分であり、油相とは混ざり合わない。水相は、例えば水である。乳化組成物の全体の質量に対する水相の含有割合は、乳化組成物の用途などに応じて適宜選択される。例えば、上記水相の含有割合は、1.0質量%以上、5.0質量%以上、10.0質量%以上、20.0質量%以上、30.0質量%以上、40.0質量%以上、50.0質量%以上、60.0質量%以上、70.0質量%以上、80.0質量%以上であってもよい。また、上記水相の含有割合は、例えば、70.0質量%以下、60.0質量%以下、50.0質量%以下、40.0質量%以下、30.0質量%以下、20.0質量%以下、10.0質量%以下、5.0質量%以下であってもよい。
【0032】
乳化組成物を構成する閉鎖小胞体は、自発的に閉鎖小胞体を形成し、かつ、式(1)で表される両親媒性物質により形成される。
【0033】
【化7】
【0034】
式(1)中、xは8以上22以下、mは9以上60以下、nは10以上230以下、RはH、アルキル基、または炭素数1以上6以下のアルキレン基をスペーサーとするカルボン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホン酸基、硫酸基もしくはいずれかの塩を示す。
【0035】
式(1)で表される両親媒性物質は、従来の三相乳化で乳化できる油性成分に加えて、ベンジルアルコールのような有機物に対して大きな溶解性を持つ油性成分に対しても溶解されない。すなわち、式(1)で表される両親媒性物質は、油相に対して溶解されず、かつ、水相に対しても溶解されない。そのため、乳化組成物において、式(1)で表される両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体は油相および水相に溶解されずに粒子として安定して存在することから、乳化組成物の乳化状態は長期間に亘って安定して維持される。
【0036】
水中で自発的に閉鎖小胞体を形成する式(1)の両親媒性物質は、疎水性を有する自己凝集部のアルキル鎖部と、疎油性を有する、ポリジメチルシロキサン部または炭化水素と溶解しない炭化フッ素部と、親水性を有するポリエチレングリコール部とからなるABC型トリブロック共重合体である。三相乳化で用いられる閉鎖小胞体を構成する従来の両親媒性物質は、疎油性部を有しないAB型ジブロック共重合体である。
【0037】
xが8以上であると、式(1)で表される両親媒性物質は粒子状にベシクル形成しやすくなり、xが22以下であると、式(1)で表される両親媒性物質は水に分散しやすくなる。mが9以上であると、式(1)で表される両親媒性物質は油剤に溶解しにくくなり、mが60以下であると、内相に対する、式(1)で表される両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体の付着力を維持できる。また、nが10以上であると、式(1)で表される両親媒性物質は水に分散しやすくなり、nが230以下であると、式(1)で表される両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体の粒子径を維持できる。こうしたことから、x、mおよびnが上記数値範囲内であると、乳化組成物は、油相の種類に関係なく、乳化状態を長期間に亘って安定して維持できる。
【0038】
式(1)で表される両親媒性物質の油相および水相に対する非溶解性や、式(1)で表される両親媒性物質の製造容易性などの観点から、下記式(1-1)~式(1-4)のいずれか1つで表される両親媒性物質であることが好ましい。式(1-1)で表される両親媒性物質では、xは17、mは13.5以上24以下、nは20以上23以下、RはCHである。式(1-2)で表される両親媒性物質では、xは17、mは23、nは19、RはCHCOOHまたはその塩である。式(1-3)で表される両親媒性物質では、xは17、mは16以上26以下、nは18、RはCHCHPO(OH)またはその塩である。式(1-4)で表される両親媒性物質では、xは17、mは12以上24以下、nは18以上20以下、RはHである。
【0039】
【化8】
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】
【化11】
【0043】
乳化組成物の全体の質量に対する閉鎖小胞体の含有割合は、乳化組成物の用途などに応じて適宜選択される。従来の界面活性剤と異なり、乳化組成物を構成する閉鎖小胞体が少量でも、乳化組成物の乳化状態を安定して維持することができる。例えば、上記閉鎖小胞体の含有割合は、0.10質量%以上、0.30質量%以上、0.50質量%以上、1.00質量%以上、2.00質量%以上であってもよい。また、上記閉鎖小胞体の含有割合は、例えば、5.00質量%以下、4.00質量%以下、3.00質量%以下、2.00質量%以下、1.00質量%以下、0.75質量%以下であってもよい。上記の量は、固形分含量である。
【0044】
乳化組成物における閉鎖小胞体の平均粒子径は、例えば、8nm以上2000nm以下程度であってもよいが、粒径が小さいほうが、乳化性は向上する。このことから、閉鎖小胞体の平均粒子径は、好ましくは8nm以上800nm以下、より好ましくは8nm以上500nm以下である。閉鎖小胞体の平均粒子径は、粒度分布測定装置FPAR(大塚電子(株)社製)を用いて動的光散乱法により測定し、Contin解析により求められる値である。式(1)で表される両親媒性物質により形成され、上記数値範囲内の平均粒子径を有する閉鎖小胞体の調製方法は、特許第3855203号など、三相乳化能を有する粒子の既知の調製方法と同様であるため、ここでは便宜上省略する。
【0045】
なお、後述の乳化組成物に対して光散乱測定を行い、混合溶液中に存在する閉鎖小胞体の平均粒子径が、例えば、8nm以上400nm以下であると、閉鎖小胞体は三相乳化可能であると判断できる。さらに、乳化組成物に含まれる乳化粒子について、原子間力顕微鏡(AFM)観察を行い、閉鎖小胞体が内相の表面に付着していることを確認することで、確認することができる。
【0046】
また、実施形態の乳化組成物は、安定した乳化状態を阻害しない限りにおいて、上記の油相、水相および閉鎖小胞体に加えて、各種の機能性成分をさらに含んでもよい。機能性成分は、例えば、乳化組成物を食品や化粧品・工業用製品などに使用するために、乳化組成物に所望の機能を付加するための成分である。
【0047】
次に、実施形態の乳化組成物の製造方法について説明する。
【0048】
乳化組成物の製造方法は、ナノ粒子分散液調製工程と乳化工程とを有する。
【0049】
O/W型の乳化組成物の製造方法では、ナノ粒子分散液調製工程において、水などの水性成分を撹拌機などで撹拌しながら、所定量の式(1)で表される両親媒性物質を水性成分に添加することによって、式(1)で表される両親媒性物質により形成された複数の閉鎖小胞体が形成され、複数の閉鎖小胞体と水性成分とが混合される。この混合溶液では、ナノ粒子状の複数の閉鎖小胞体が水性成分中に分散している。水性成分が水の場合、水の温度が60℃以上であると、閉鎖小胞体が良好に撹拌される。
【0050】
ナノ粒子分散液調製工程における水性成分の撹拌速度は1000rpm以上であることが好ましい。撹拌速度が1000rpm以上であると、閉鎖小胞体は水性成分中に十分に撹拌される。
【0051】
また、混合溶液中の閉鎖小胞体の分散性を維持するために、乳化工程を実施するまで、混合溶液をナノ粒子分散液調製工程の上記撹拌速度よりも低速で撹拌し続けてもよい。
【0052】
ナノ粒子分散液調製工程の後に行われる乳化工程では、混合溶液を撹拌機などで撹拌しながら、融点以上の油性成分を混合溶液に添加することによって、乳化粒子が形成され、水相中に分散している複数の乳化粒子を含有する乳化組成物が得られる。乳化粒子について、滴状の油相の表面が複数の閉鎖小胞体で覆われている。上記の機能性成分を油相に含ませる場合には、機能性成分を含む油性成分を撹拌中の混合溶液に添加することによって、油相に機能性成分を含んだ乳化粒子が得られる。混合溶液に添加する油性成分の温度が融点未満であると、油剤の剪断が困難になる場合がある。そのため、混合溶液に添加する油性成分の温度が融点未満である場合、油性成分を融点以上に加熱して、融点以上の油性成分を混合溶液に添加する。
【0053】
また、W/O型の乳化組成物の製造方法では、上記と同様にしてナノ粒子分散液調製工程を行うことによって、複数の閉鎖小胞体と水性成分とが混合される。上記の機能性成分を水相に含ませる場合には、混合溶液に機能性成分をさらに添加して混合する。
【0054】
ナノ粒子分散液調製工程の後に行われる乳化工程では、融点以上の油性成分を撹拌機などで撹拌しながら、油性成分にナノ粒子分散液を添加することによって、乳化粒子が形成され、油相中に分散している複数の乳化粒子を含有する乳化組成物が得られる。乳化粒子について、滴状の水相の表面が複数の閉鎖小胞体で覆われている。
【0055】
次に、実施形態の化合物について説明する。実施形態の化合物は、式(1)で表され、水中で自発的に閉鎖小胞体を形成する。
【0056】
【化12】
【0057】
式(1)中、xは8以上22以下、mは9以上60以下、nは10以上230以下、RはH、アルキル基、または炭素数1以上6以下のアルキレン基をスペーサーとするカルボン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホン酸基、硫酸基もしくはいずれかの塩を示す。
【0058】
式(1)で表される化合物は、乳化組成物に好適に用いられる。式(1)で表される化合物は、自発的に閉鎖小胞体を形成する両親媒性物質であり、乳化組成物中では、閉鎖小胞体として油相と水相(内相と外相)の界面に介在する。
【0059】
式(1)で表される化合物は、水相に対して溶解されない。さらには、式(1)で表される化合物は、一般的な油性成分に加えて、ベンジルアルコールのような溶剤性能の高い油性成分を含む油相に対しても溶解されない。そのため、油相と水相と式(1)で表される化合物(両親媒性物質)により形成された閉鎖小胞体とを含む乳化組成物では、式(1)で表される化合物により形成された閉鎖小胞体は油相および水相に溶解されずに安定して存在することから、乳化組成物の乳化状態は長期間に亘って安定して維持される。このように、式(1)で表される化合物は、乳化組成物用化合物に好適である。
【0060】
式(1)で表される化合物は、疎水性を有する自己凝集部のアルキル鎖部と、疎油性を有する、ポリジメチルシロキサン部または炭化水素と溶解しない炭化フッ素部と、親水性を有するポリエチレングリコール部とからなるABC型トリブロック共重合体である。三相乳化で用いられる閉鎖小胞体を構成する従来の両親媒性物質は、疎油性部を有しないAB型ジブロック共重合体である。
【0061】
xが8以上であると、式(1)で表される両親媒性物質は粒子状にベシクル形成しやすくなり、xが22以下であると、式(1)で表される両親媒性物質は水に分散しやすくなる。mが9以上であると、式(1)で表される化合物は油剤に溶解しにくくなり、mが60以下であると、内相に対する、式(1)で表される両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体の付着力を維持できる。また、nが10以上であると、式(1)で表される化合物は水に分散しやすくなり、nが230以下であると、式(1)で表される化合物により形成された閉鎖小胞体の粒子径を維持できる。こうしたことから、x、mおよびnが上記数値範囲内であると、乳化組成物は、油相の種類に関係なく、乳化状態を長期間に亘って安定して維持できる。
【0062】
乳化組成物における油相および水相に対する式(1)で表される化合物の非溶解性や、式(1)で表される化合物の製造容易性などの観点から、下記式(1-1)~式(1-4)のいずれか1つで表される化合物(両親媒性物質)であることが好ましい。式(1-1)で表される化合物では、xは17、mは13.5以上24以下、nは20以上23以下、RはCHである。式(1-2)で表される化合物では、xは17、mは23、nは19、RはCHCOOHまたはその塩である。式(1-3)で表される化合物では、xは17、mは16以上26以下、nは18、RはCHCHPO(OH)またはその塩である。式(1-4)で表される化合物では、xは17、mは12以上24以下、nは18以上20以下、RはHである。
【0063】
【化13】
【0064】
【化14】
【0065】
【化15】
【0066】
【化16】
【0067】
次に、実施形態の化合物の製造方法について説明する。実施形態の(1)式で表される化合物の製造方法は、ブロモアルカンを金属リチウムと反応させて得られるアルキルリチウムを開始剤としてヘキサメチルシクロトリシロキサンのアニオン開環重合を行い、停止剤としてのクロロジメチルシランと反応させ、末端にSi-H結合を持つポリジメチルシロキサンとアルカンのブロック共重合体を合成する工程1と、末端にORを持つポリエチレングリコールのアリルエーテルを合成する工程2と、前記工程1で得られた下記式(2)で表される前記ブロック共重合体のSi-H結合と、前記工程2で得られた下記式(3)で表される化合物の炭素-炭素二重結合の付加反応を行う工程3とを有する。
【0068】
【化17】
【0069】
【化18】
【0070】
【化19】
【0071】
式(1)中、xは8以上22以下、mは9以上60以下、nは10以上230以下、RはH、アルキル基、または炭素数1以上6以下のアルキレン基をスペーサーとするカルボン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、スルホン酸基、硫酸基もしくはいずれかの塩を示す。
【0072】
このような製造方法により、上記のABC型トリブロック共重合体である(1)式で表される化合物を製造できる。ポリエチレングリコール部の末端は、酸性で解離可能なカルボン酸、ホスホン酸、アルコール、またはエーテルである。最終工程である工程3の付加反応であるヒドロシリル化反応により、性質の異なるブロック間の結合が生成する。そのため、工程3で得られた最終生成物を再沈殿とカラムクロマトグラフィーを組み合わせることで、式(1)で表される化合物を容易に精製できる。
【0073】
上記(1)式で表される化合物の製造方法は、Rが異なる4つのタイプの化合物、上記式(1-1)~(1-4)いずれの場合でも、工程1は共通である。すなわちステップ1-1―1、1-2-1,1-3-1,1-4-1として1-bromooctadecaneを出発原料とし、リチオ化、Hexamethylcyclotrisiloxaneの開環重合により得られるポリシロキサンの末端をchlorodimethylsilaneでキャッピングし、式(21)で表される化合物を得る。なお、式(21)の重合度mは、用いるHexamethylcyclotrisiloxaneの仕込み比などによって変動する値である。
【0074】
【化20】
【0075】
その後の上記式(1-1)の製造方法は次の通りである。ステップ1-1-2として、Polyethylene Glycol Monomethyl Ether(Mn:1000)をNaHと反応させナトリウムアルコキシドした後、allyl bromideと反応させ、末端のRがメチルのPolyethylene Glycol Allyl Etherを得る。
【0076】
【化21】
【0077】
続いて、ステップ1-1-3として、Polyethylene Glycol Allyl Etherのヒドロシリル化をKarstedt’s catalyst存在下、式(21)で表される化合物を用いて行う。
【0078】
【化22】
【0079】
また、上記(1)式で表される化合物のなかでも、上記式(1-2)のように、RがCHCOOHまたはその塩である化合物の製造方法は次の通りである。
【0080】
ステップ1-1-1と同様の方法で、ステップ1-2-1として式(21)を得る。続いてステップ1-2-2として、Polyethylene Glycol Allyl Ether(Mn:750)を原料としてカルボン酸を導入し、式(20)で表される化合物を得る。そして、ステップ1-2-3として、式(21)で表される化合物を用いて、式(20)で表される化合物のヒドロシリル化を行い、化合物を得ることができる。
【0081】
【化23】
【0082】
【化24】
【0083】
【化25】
【0084】
また、上記(1)式で表される化合物のなかでも、上記式(1-3)のように、RがCHCHPO(OH)またはその塩である化合物の製造方法は次の通りである。
【0085】
ステップ1-1-1と同様の方法で、ステップ1-3-1として式(21)を得る。続いてステップ1-3-2として、Polyethylene Glycol Allyl Ether(PEG,Mn:850)を原料としてブロモ化反応、引き続きdi-t-butyl phosphonateとの反応を行い、式(30)で表される化合物を得る。そして、ステップ1-3-3として、式(30)の式(21)によるヒドロシリル化反応により式(31)の化合物が得られる。最後に、ステップ1-3-4として、式(31)で表される化合物の脱保護により、式(32)の化合物を得ることができる。
【0086】
【化26】
【0087】
【化27】
【0088】
【化28】
【0089】
【化29】
【0090】
また、上記(1)式で表される化合物のなかでも、上記式(1-4)のように、RがHである化合物の製造方法は次の通りである。
【0091】
ステップ1-4-1で使用するAllyl-PEGはdryBenzeneで凍結乾燥したものを使用し、合成ゼオライトは脱水目的で加えた。50mL二口ナスフラスコにAllyl-PEG 1.05g(1.23mmol,1.0eq.)、PDMS 1.62g(1.2mmol,1.2eq.)、合成ゼオライトA-3 2.1gを入れ真空乾燥した。その後、dryTHF 8mLを加え窒素雰囲気下室温で6時間撹拌した。次にKarstedt’s catalystを加え、窒素雰囲気下室温で1日撹拌し、H-NMRより反応を確認した。次に吸引ろ過にて合成ゼオライトを取り除き、濃縮、真空乾燥によりcrude 2.90gを得た。このcrudeをchloroform約5mLに溶かし、氷浴下のHexane約150mLに滴下し再沈殿を行い遠心分離した。得られたろ液を濃縮、真空乾燥しcrudeを得た。このcrudeをchloroform 約5mLに溶かし、氷浴下のMethanol約100mLに滴下し再沈殿を行った。遠心分離し、得られたろ液を濃縮、真空乾燥し、1.8gを得た。次にカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,h=15cm,φ=3cm,chloroform:methanol=19:1)により、単離精製を行い、化合物(黄色粘体428mg)を得ることができる。
【0092】
【化30】
【0093】
【化31】
【0094】
以上説明した実施形態によれば、自発的に閉鎖小胞体を形成し、かつ、式(1)で表される両親媒性物質により形成された閉鎖小胞体を用いて三相乳化法を適用することで、乳化組成物は、油相の種類に関係なく、安定した乳化状態を長期間に亘って維持できる。また、乳化組成物に好適な式(1)で表される化合物を提供できる。
【実施例0095】
次に、実施例および比較例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下では、まず、各実施例および各比較例で製造した化合物について説明する。次に、各実施例および各比較例の化合物を用いて製造した乳化組成物について説明する。
【0096】
(実施例1)
式(1)で表され、xが17、mが9、nが22、RがCHである化合物(両親媒性物質)を製造した。
【0097】
まず、30 mL二口ナスフラスコ内においてdry THFで溶解したHexamethylcyclotrisiloxane 2.58 g(11.6 mmol, 3.5 eq.)を200 mL三口ナスフラスコ内から分取した反応溶液 (2-4-1)5 mL(3.26 mmol, 1.0 eq.)に10分かけて滴下し、窒素雰囲気下、室温で5h撹拌した。その後、chlorodimethylsilane 365μL(3.29 mmol, 1.0 eq.)、を加え30分撹拌し反応を止めた。反応溶液にsat. NHCl aq. 50 mLを加え、ethyl acetate 50 mLで3回抽出した。得られた有機層をsat. NaCl aq. 50 mLで2回洗浄、anhydrous MgSOで乾燥、濾過、濃縮、減圧留去(150℃)を行い、白色液体2.73 gを得た。以下に示すH-NMRよりシロキサン鎖長(m)を算出したところ、m=16となった。しかし、生成物には、出発物質や副生成物も含まれており、NMRのシグナルにはそれらのCH3Siも含まれており、ここで求めたm=16は、目的物のものより大きい値となっていると推測される。これらのステップを下に示す。
【0098】
H-NMR(日本電子株式会社、400MHz)の測定結果を以下に示す。
H-NMR (400 MHz, CDCl):δ0.03-0.34 (107H, m) 、0.52 (2H, t, J=8.0 Hz)、0.88 (6H, t, J=7.2 Hz)、1.03-1.26 (54H, m)、4.70(1H, sept, J=2.8 Hz)。
【0099】
【化32】
【0100】
次に、50 mL二口ナスフラスコにPolyethylene Glycol Monomethyl Ether Mn=1000 6.03 g(6.03 mmol, 1.0 eq.)を入れ、DMF 28 mLで溶解した。別の300 mL二口ナスフラスコにNaH(油性) 6.45 g(1.90×10-1 mol, 30 eq.)を入れdry hexaneで3 回洗浄、濃縮を行い、50 mL二口ナスフラスコ内で溶かしたPEG23を入れ1時間攪拌した。さらにallyl bromide 7.30 g(0.60 mmol,10 eq.)、dry DMF 40 mLを加えた。固まった反応物をスパチュラで崩し、撹拌子が回っていることを確認し、80℃で17時間還流した。その後、反応溶液にwater 100 mLを加え、dichloromethane 100 mLで3 回抽出した。得られた有機層をsat. NaCl aq. 100 mLで2 回洗浄、anhydrous MgSOで乾燥、濾過、濃縮、減圧留去(80℃)を行い、黄色の粘固体を5.92 g 得た。TLCを確認したところ、2スポット確認できたため、カラムクロマトグラフィー(hexane : ethyl acetate=2:1→chloroform : methanol=9:1, Φ=4.2 cm, h=10 cm)により単離精製を行った。その後、濃縮、真空乾燥を行い、薄黄色粘固体6.09 g (5.86 mmol) を得た。収率は97%であった。これらのステップを下に示す。
【0101】
H-NMR(日本電子株式会社、400MHz)の測定結果を以下に示す。
H-NMR (400 MHz, CDCl):δ 3.38 (3H, s)、3.45-3.83(91H, m)、4.02 (2H, dt, J=1.4, 5.7 Hz)、5.17 (1H, ddt, J=1.4, 1.7, 10.4 Hz) 、5.27 (1H, ddt, J=1.7, 1.7, 17.3 Hz)、5.91 (1H, ddt, J= 5.7, 10.4, 17.3 Hz)
【0102】
【化33】
【0103】
次に、30 mL二口ナスフラスコにPEG23-Allyl 1.82 g(1.75 mmol, 1.0 eq.)を入れ、真空乾燥を行った後、dry THF 4.6 mLで溶解した。この反応溶液にdry THF 8.7 mLで溶解したPDMS-b-alkane dicopolymer 2.73 g (1.74 mmol, 1.0 eq.)を5分間かけて滴下し、Karstedt’s catalyst 10 滴を加え、窒素雰囲気下、室温で21h攪拌した。その後、濃縮、カラムクロマトグラフィー(hexane:ethyl acetate=2:1→chloroform:methanol=9:1, Φ=4.2 cm, h=10 cm)により単離精製を行った。その後、濃縮、真空乾燥を行い、薄黄色粘固体2.75gを得た。収率は54%であった。以下に示すH-NMRスペクトルから生成物のシロキサン鎖長を求めたところ、m=9となった。これらのステップを下に示す。
【0104】
H-NMR(日本電子株式会社、400MHz)の測定結果を以下に示す。
H-NMR(400 MHz,CDCl):δ 0.01-0.22(91H,m)、0.49-0.53(4H,m)、0.88 (3H,t,J=7.2 Hz)、1.25-1.30(32H,m)、1.53-1.63 (13H,m)、3.38(5H,s)、3.41(3H,t, J=7.6 Hz)、3.45-3.89(147H,m)
【0105】
【化34】
【0106】
こうして、実施例1の化合物を得た。
【0107】
(実施例2)
式(1)で表され、xが17、mが10、nが22、RがCHである化合物(両親媒性物質)を製造した。
【0108】
具体的には、実施例1において、反応後のカラムクロマトグラフィーによる分離精製でわずかに高分子量の成分を分取した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の化合物を得た。
【0109】
(実施例3)
式(1)で表され、xが17、mが13.5、nが23、RがCHである化合物(両親媒性物質)を製造した。
【0110】
具体的には、実施例1において、分子量の異なるシランを反応に用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3の化合物を得た。
【0111】
(実施例4)
式(1)で表され、xが17、mが24、nが20、RがCHである化合物(両親媒性物質)を製造した。
【0112】
具体的には、実施例1において、分子量の異なるシランを反応に用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4の化合物を得た。
【0113】
(実施例5)
式(1)で表され、xが17、mが24、nが23、RがCHである化合物(両親媒性物質)を製造した。
【0114】
具体的には、実施例1において、分子量の異なるシランを反応に用いた以外は、実施例1と同様の方法で、実施例5の化合物を得た。
【0115】
(実施例6)
式(1)で表され、xが17、mが23、nが19、RがCHCOOHである化合物(両親媒性物質)を製造した。
【0116】
まず、300mL二口ナスフラスコにAllyl-PEG750 3.39g(3.79mmol,1.0eq.)/dryTHF 50mL、NaH in oil60% 6.02g(0.15mol,39.6eq.)を加え、窒素雰囲気下室温で二時間撹拌した。その系に対して、Bromoacetic acid 5.24g(37.7mmol,9.9eq.)/dryTHF 20mLを、シリンジを用いて滴下し、窒素雰囲気下60℃で二日間撹拌し、H-NMRで反応を確認した。撹拌後、反応物を純水200mLに溶かし、ヘキサン100mLで3回抽出した。得られた水層をchloroform 100mL×3回で抽出、得られた水層に2N HCl 90.0mLを加え、chloroform 100mL×6回で抽出、有機層を回収し、計600mLの有機層を得た。得られた有機層をsat. NaCl aq. 100mLで3回洗浄、anhydrous MgSOで乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥、凍結乾燥を行い、黄色粘体1.84gを得た。これらのステップを下に示す。
【0117】
【化35】
【0118】
次に、300mL三口ナスフラスコにLi dispersion 0.693g(32mmol,5.0eq.)を入れdryEtO 15mLを加えた。50mL二口ナスフラスコに1-bromooctadecane 2.15g(6.4mmol,1.0eq.)EtO 15mLを加え撹拌した後、滴下漏斗に入れ窒素雰囲気下0℃で撹拌しながら30分かけて滴下し、合計1時間撹拌した。50mL二口ナスフラスコにHexamethylcyclotrisiloxane 8.67g(39.0mmol,6.1eq.)とdryTHF 20mLを入れ撹拌した後、滴下漏斗に移して滴下し、その後窒素雰囲気下室温で一日撹拌した。撹拌後、chlorodimethylsilane 2.1mL(19.2mmol,3.0eq.)加え2時間撹拌した。氷浴下でsat. NHCl aq. 100mL、酢酸エチルを50mL加え吸引ろ過を行ってから抽出を行った。さらに酢酸エチル100mL×2回で抽出した。得られた有機層300mLをsat. NaCl aq. 100mL×3回で洗浄、anhydrous MgSOで乾燥、ろ過、濃縮真空乾燥によりcrude 9.13g得た。これらのステップを下に示す。
【0119】
【化36】
【0120】
次に、100mL二口ナスフラスコにPDMS 2.61g(1.30mmol,1.5eq.)、dryTHF 2ml、Karstedt’s catalyst 5滴加えた。その系に対して、Allyl-PEG-CHCOOH 0.831g(0.872mmol,1.0eq.)/dryTHF 2mLを加え、窒素雰囲気下室温で一日撹拌し、H-NMR、TLCより反応を確認した。茶色粘体のcrude 3.42gを得た。これらのステップを下に示す。また、このcrudeをそれぞれ[A]、[B]、[C]に分け、精製を行った。
【0121】
【化37】
【0122】
[A]
crude 482mgを少量のchloroformに溶解させ、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル;methanolで洗浄したもの),h=15cm,ψ=3cm,chloroform:methanol=9:1)により、単離精製を行った。その後、濃縮、凍結乾燥を行い、茶色粘体190mgを得た。
【0123】
[B]
crude 1.02gから上記[A]と同様な操作で、茶色粘体281mgを得た。
【0124】
[C]
crude 1.56gをセライトろ過し、濃縮、真空乾燥しH-NMRで確認した。その後、このcrudeをchloroform約5mLに溶かし、氷浴下のMethanol約100mLに滴下し再沈殿を行った。遠心分離し、ろ液を濃縮、真空乾燥して黄色粘体を得た。これをchloroform約5mLに溶かし、氷浴下のHexane約100mLに滴下し再沈殿を行い遠心分離した。得られたろ液を濃縮、真空乾燥し黄色粘体を得た。その後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル(methanolで洗浄したもの),h=15cm,ψ=3cm,chloroform:methanol=9:1)により、単離精製を行った。その後、濃縮、凍結乾燥を行い、黄色粘体F1(前半)305mg、F1(後半)89mgを得た。[A]―[C]で得られた目的物は、3.50g、収率 74%であった。
【0125】
H-NMR(日本電子株式会社、400MHz)の測定結果を以下に示す。
H-NMR(400 MHz,CDCl):δ =0.04 - 0.14(132H,m)、0.49 - 0.54(4H,m)、0.88(3H,t,J = 6.8 Hz)、1.25(32H,m)、1.56 - 1.64(2H,m)、3.39 - 3.43(2H,t,J = 7.1 Hz)、3.57-3.77(66H,m)、4.15(2H,s)
【0126】
こうして、実施例6の化合物を得た。
【0127】
(実施例7)
式(1)で表され、xが17、mが26、nが19、RがCHCHPO(OH)である化合物(両親媒性物質)を用いて乳化組成物を製造した。
【0128】
まず、300mL二口ナスフラスコ(A)にAllyl-PEG 3.78g(4.2mmol,1.0eq.)とdryBenzeneをいれ凍結乾燥した。その後、dryTHF 20mL入れた。50mL二口フラスコ(B)にTriphenylphosphine 4.58g(17.5mmol,4.2eq.)を入れて脱気しN下にした。また、50mL二口フラスコ(C)にCarbon Tetrabromide 5.51g(16.6mmol,4.0eq.)を入れ脱気しN下にした。次にそれぞれにdryTHF 10mL入れた。(A)を氷浴下にし、(B)および(C)の溶液を、シリンジを用いて滴下した。その後氷浴を外した。N雰囲気下室温で20時間撹拌し、H-NMRで反応を確認した。撹拌後、溶液を吸引ろ過、濃縮、真空乾燥し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル,h=6cm,φ=4.5cm,ethylacetate:Hexane=4:1→methanol)により、単離精製を行い、黄色粘体3.37gを得た。収率は87%であった。これらのステップを下に示す。
【0129】
H-NMR(日本電子株式会社、400MHz)の測定結果を以下に示す。
H-NMR (400 MHz, CDCl):δ3.48(2H,t,J =6.4 Hz)、3.60-3.67(92 H,m)、3.81(2H, t,J=6.4 Hz)、4.03(2H,d,J =5.7 Hz) 、5.16 - 5.19 (1H,dd,J=1.4 and 10.4 Hz)、5.25-5.29(1H,dd,J=1.4 and 17.4 Hz)、5.87-5.97(1H,m)
【0130】
【化38】
【0131】
次に、30mL二口ナスフラスコ(A)にdryDMF(A)にdryDMF 2mL、Di-tert-butyl Phosphonate 210μL(1.03mmol,3.0eq.)、NaH in oil60% 22mg(0.55mmol,1.6eq.)を入れ、窒素下室温で1時間撹拌した。撹拌後、20mL二口ナスフラスコ(B)にAllyl-PEG-Br 0.330g(0.344mmol,1.0eq.)、dryDMF 1mLを入れ溶解し、ナスフラスコ(A)に入れ、窒素下室温で一晩撹拌した。その後70℃で減圧留去した後、chloroform 20mL、純水20mLを入れ抽出し、更にchloroform 20mL×2回抽出した。得られた有機層をsat. NaCl aq.で洗浄、anhydrous MgSOで乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥し、黄色粘体291mgを得た。収率は73%であった。これらのステップを下に示す。
【0132】
H-NMR(日本電子株式会社、400MHz)の測定結果を以下に示す。
H-NMR(400 MHz,CDCl):δ1.49 (18H, s)、2.06 (2H)、3.59 - 3.66 (82H, m)、4.02 (2H, d, J = 5.7 Hz)、5.18 (1H, dd, J = 1.6, 10.5 Hz) 、5.25 (1H, dd, J = 1.6, 17.3 Hz)、5.88 - 5.96 (1H, m)
31P{H}-NMR(160 MHz,CDCl/85% HPO):δ29.6
【0133】
【化39】
【0134】
次に、30mL二口ナスフラスコにAllyl-PEG-PO(OBu) 249mg(0.22mmol,1.0eq.)、PDMS 809mg(0.373mmol,1.7eq.)、合成ゼオライトA-3 700mgを入れ真空乾燥した。Allyl-PEG-PO(OBu)はdrybenzeneで凍結乾燥してから使用し、合成ゼオライトは脱水目的で加えた。その後、dryTHF 3mLを加え窒素雰囲気下室温で一晩撹拌(脱水)した。次にKarstedt’s catalystを加え、窒素雰囲気下室温で終夜撹拌し、H-NMRより反応を確認した。次にゼオライトろ過、濃縮、真空乾燥により、crude 982mgを得た。これをChloroform 5mLに溶かし、氷浴下のMethanol 100mLに加えて再沈殿を行い、遠心分離、得られたろ液を濃縮、真空乾燥を行い、crudeを得た。その後Chloroform 5mLに溶かし氷浴下のHexane 100mLに加えて再沈殿、遠心分離、得られたろ液を濃縮、真空乾燥し、crude 549mg得た。そしてカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,h=18cm,φ=3cm, Chloroform:Methanol=15:1)によって黄色粘体359mgを得た。目的物をdrybenzeneで凍結乾燥し目的物339mg得た。収率は68%であった。これらのステップを下に示す。
【0135】
H-NMR(日本電子株式会社、400MHz)の測定結果を以下に示す。
H-NMR(400 MHz,CDCl)δ:0.04 - 0.14(160H, m)、0.49 - 0.54(4H,m)、0.87(12H, t)、1.25 (64H, m)、1.49(18H, s)、1.56‐1.64(2H, m )、2.01 - 2.10(2H)、3.40(2H, t)、3.64(72H, m )
31P{H}-NMR(160 MHz,CDCl/85% HPO)δ:
19.2
【0136】
【化40】
【0137】
次に、20mL二口ナスフラスコにC18-PDMS-PEG-P(=O)(OtBu) 399mg(0.150mmol,1.0eq.)、dry 1.4-dioxane 2mL、4N HCl/dioxane 135μL(0.536mmol,3.6eq.)入れ、窒素雰囲気下室温で撹拌した。4時間、8時間でNMRより反応確認したところ、原料が見られたため、4N HCl/dioxane 33.5μL(0.134mmol,0.9eq.)加え一晩撹拌した。その後濃縮した後、dry 1,4-dioxaneで凍結乾燥し、黄色粘体320mg得た。収率は88%であった。これらのステップを下に示す。
【0138】
H-NMR(日本電子株式会社、400MHz)の測定結果を以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ0.04-0.14(161H,m)、0.49 -0.54(4H,m)、0.87(11H,t)、1.25(67H,m)、1.56- 1.64(2H, m)、2.01-2.10(3H)、3.41(2H,t,J=7.1 Hz)、3.64-3.84(76H,m)
【0139】
【化41】
【0140】
こうして、実施例7の化合物を得た。
【0141】
(実施例8)
式(1)で表され、xが17、mが12、nが18、RがHである化合物(両親媒性物質)を製造した。
【0142】
ここで使用するAllyl-PEGはdry Benzeneで凍結乾燥したものを使用し、合成ゼオライトは脱水目的で加えた。 50 mL二口ナスフラスコにAllyl-PEG 1.05 g (1.23 mmol, 1.0 eq)、PDMS 式(3-2) 1.62 g (1.2 mmol, 1.2 eq)、合成ゼオライトA-3 2.1gを入れ真空乾燥した。その後、dry THF 8 mLを加え窒素雰囲気下室温で6時間攪拌した。次にKarstedt’s catalystを加え、窒素雰囲気下室温で1日攪拌し、H-NMRより反応を確認した。次に吸引ろ過にて合成ゼオライトを取り除き、濃縮、真空乾燥によりcrude 2.90 g得た。このcrudeをchloroform 約5mLに溶かし、氷浴下のHexane 約150 mLに滴下し再沈殿を行い遠心分離した。得られたろ液を濃縮、真空乾燥しcrudeを得た。このcrudeをchloroform 約5mLに溶かし、氷浴下のMethanol 約100 mLに滴下し再沈殿を行った。遠心分離し、得られたろ液を濃縮、真空乾燥し、1.8 gを得た。次にカラムクロマトグラフィー(シリカゲル,h=15 cm,φ=3 cm, chloroform : methanol = 19 : 1)により、単離精製を行い、黄色粘体 428 mgを得た。収率は15%であった。
【0143】
H-NMR(日本電子株式会社、400MHz)の測定結果を以下に示す。
H-NMR(400 MHz,CDCl):δ 0.04 - 0.14 (77H,m)、0.49 - 0.54 (4H,m)、0.87(3H,t,J = 6.6 Hz)、1.25(35H,m)、1.56 - 1.64(2H,m)、3.41(2H,t,J = 7.2 Hz)、3.59-3.72(91H,m)
【0144】
【化42】
【0145】
こうして、実施例8の化合物を得た。
【0146】
(比較例1)
式(1)で表され、xが3、mが7、nが22、RがCHである化合物(両親媒性物質)を製造した。
【0147】
具体的には、実施例1において、市販のx=3,m=12に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1の化合物を得た。得られた化合物は、x=3,m=7,n=22である。
【0148】
(比較例2)
比較例2の化合物は、下記式(l+m+n+x+y+z=40)で表されるポリオキシエチレン硬化ひまし油(HCO-40)とした。
【0149】
【化43】
【0150】
次に、実施例1および比較例1の化合物を用いてO/W型の乳化組成物を製造した。
【0151】
まず、水に上記化合物を添加して撹拌し、化合物をナノ粒子状の閉鎖小胞体として、0.5wt%の閉鎖小胞体分散液を調製した。続いて、閉鎖小胞体分散液に融点以上のヘキサデカン(和光純薬)を20wt%となるように添加し、超音波撹拌機(OHTAKE WORKS Sonicator)で3分間攪拌し、O/W型の乳化組成物を製造した。結果を表1に示す。
【0152】
なお、表1に示す乳化安定性では、以下のランク付けを行った。
〇:乳化が安定
△:油水の一部が分離
×:油水が分離
【0153】
自己凝集部であるアルキル鎖(x)および疎油性部であるポリジメチルシロキサン部(m)の鎖長の異なる実施例1および比較例1の化合物を用いて閉鎖小胞体分散液を調製した結果、閉鎖小胞体の平均粒子径について、実施例1は20.5nm、比較例1は31.1nmであり、閉鎖小胞体はいずれもナノ粒子であった。
【0154】
また、得られた乳化組成物を目視で観察した結果、実施例1の乳化組成物では、乳化状態が安定していた。一方、比較例1の乳化組成物では、時間が経過すると、油相の一部が分離した。比較例1では、用いた化合物の自己凝集部(x)が小さいために、閉鎖小胞体の油相への付着性が弱く、さらに疎油性部(m)が小さいために、油剤に溶解してしまい、その結果、乳化が不安定化したと考えられる。
【0155】
よって、一般的に炭化水素が8未満であると、炭化水素同士の凝集力が発現せずミセル形成が出来ないといわれているため、式(1)で表される化合物について、炭化水素同士の凝集力が保持できる点で、xは8以上であり、油剤への溶解性が低くなる点で、mは9以上であると、乳化組成物の乳化安定性は良好であると考えられる。
【0156】
【表1】
【0157】
次に、実施例1~8および比較例2の化合物を用いてO/W型の乳化組成物を製造した。
【0158】
まず、水に上記化合物を添加して撹拌し、化合物をナノ粒子状の閉鎖小胞体として、0.5wt%の閉鎖小胞体分散液を調製した。続いて、閉鎖小胞体分散液に融点以上のベンジルアルコールを20wt%となるように添加し、超音波撹拌機(OHTAKE WORKS Sonicator)で3分間攪拌し、O/W型の乳化組成物を製造した。結果を表2に示す。
【0159】
なお、表2に示す乳化安定性では、以下のランク付けを行った。
〇:乳化が安定
△:油水の一部が分離
×:油水が分離
【0160】
表2に示すように、実施例1~8および比較例2の閉鎖小胞体はいずれもナノ粒子であった。
【0161】
また、図1は、ベンジルアルコールを乳化した実施例2~3、6~8および比較例2の乳化組成物の外観写真である。
【0162】
図1および表2に示すように、実施例1~8の乳化組成物の一部では、油滴の一部が分離したが、比較例2の乳化組成物と比較して、実施例1~8の乳化組成物は、優れた乳化性を示した。一方、比較例2の乳化組成物では、油水分離が起こり、乳化ができなかった。比較例2で用いた化合物で得られた閉鎖小胞体は、ベンジルアルコールに溶解しナノ粒子を維持できなかったため、比較例2の閉鎖小胞体は乳化できなかったと考えられる。
【0163】
実施例1~8で用いた化合物で得られた閉鎖小胞体は、ベンジルアルコールに溶解しない疎油性部および親水性部によりナノ粒子の状態が維持できたことから、乳化が可能であったと考えられる。さらに、実施例1~8で用いた化合物では、疎油性部が長く、親水性部にイオン性官能基を付加しても、水中でのナノ粒子形成が可能であり、ベンジルアルコールへの非溶解性が高くなり、乳化性が向上した。
【0164】
【表2】
【0165】
次に、実施例3~6の化合物および様々な種類の油剤を用いて、O/W型の乳化組成物を製造した。
【0166】
まず、水に上記化合物を添加して撹拌し、化合物をナノ粒子状の閉鎖小胞体として、0.5wt%の閉鎖小胞体分散液を調製した。続いて、表3に示す融点以上の油剤を20wt%となるように閉鎖小胞体分散液に添加し、超音波撹拌機(OHTAKE WORKS Sonicator)で3分間攪拌し、O/W型の乳化組成物を製造した。油剤には、ヘキサデカン(和光純薬)、シトロネラオイル、シリコーン油(東レ・ダウコーニング、SH200 2CS)、オリーブ油(EXTRA VIRGIN OLIVE OIL、スペイン産)を用いた。結果を表3に示す。
【0167】
なお、表3に示す乳化安定性では、以下のランク付けを行った。
〇:乳化が安定
△:油水の一部が分離
×:油水が分離
-:未実施
【0168】
また、図2は、実施例3の化合物から調製した閉鎖小胞体で各種の油剤を乳化した乳化組成物の外観写真である。図2および表3に示すように、各種の油剤を乳化した実施例3の乳化組成物は、いずれも優れた乳化性を示した。また、各種の油剤を乳化した実施例4~6の乳化組成物についても、優れた乳化性を示した。よって、炭化水素油、テルペン系油、シリコーン油、植物油など油種を問わずに、安定した乳化が可能であることがわかった。
【0169】
【表3】
図1
図2