(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027731
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】電気抵抗溶接用電極
(51)【国際特許分類】
B23K 11/30 20060101AFI20230222BHJP
【FI】
B23K11/30 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021152624
(22)【出願日】2021-08-17
(71)【出願人】
【識別番号】512035918
【氏名又は名称】青山 省司
(72)【発明者】
【氏名】青山 好高
(72)【発明者】
【氏名】青山 省司
(57)【要約】
【課題】中実部の体積と摺動部材の体積を適正な値に設定するとともに、冷却能力の高い冷却通路構造によって、溶接熱を効果的に放熱すること。
【解決手段】プロジェクションボルト19が溶接の対象とされ、円形断面の電極本体1の端面から突出し、鋼板部品3の下孔10に挿入される断面円形のガイドピン12が、少なくとも中空部37と中空部37に連続している中実部38によって形成され、中実部38の長さは、中空部37の長さよりも長く設定してあり、ガイドピン12に一体化され、電極本体1のガイド孔6に摺動できる状態で嵌め込まれている断面円形の摺動部材13が形成され、中実部38は、その全長にわたって摺動部材13に密着した状態で包囲されており、摺動部材13を冷却する冷却通路32が、摺動部材13の外周面またはガイド孔6の内周面に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄ねじが形成された軸部と、軸部に一体的に設けられた円形のフランジと、軸部側のフランジ面に設けた複数の溶着用突起を有するプロジェクションボルトが溶接の対象とされ、
円形断面とされた電極本体の端面から突出し、鋼板部品の下孔に相対的に挿入される断面円形のガイドピンが、少なくとも軸部の受入孔を有する中空部と中空部に連続している中実部によって形成されているとともに、耐熱硬質材料で構成され、
中実部の長さは、中空部の長さよりも長く設定してあり、
ガイドピンに一体化され、電極本体のガイド孔に摺動できる状態で嵌め込まれている断面円形の摺動部材が、絶縁性合成樹脂材料で構成され、
中実部は、その全長にわたって摺動部材に密着した状態で包囲されており、
摺動部材を冷却する冷却空気の冷却通路が、摺動部材の外周面またはガイド孔の内周面に設けられていることを特徴とする電気抵抗溶接用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸部が長いプロジェクションボルトに適した電気抵抗溶接用電極に関している。
【背景技術】
【0002】
特開2015-074030号公報には、ガイドピンが受入孔を有する中空部とこれに連続している中実部を有していることが記載され、この中実部にねじ部を介して作動軸が結合されていることが記載されている。
【0003】
また、特開2015-062950号公報には、受入孔を有するガイドピンに、絶縁性合成樹脂材料で作られた摺動部材が一体化され、この摺動部材が電極本体のガイド孔に摺動可能な状態で嵌め込まれていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-074030号公報
【特許文献2】特開2015-062950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2に記載されている技術においては、つぎのような問題がある。つまり、長い軸部を有するプロジェクションボルトを鋼板部品に溶接するときには、長い受入孔を有する中空の電極ガイドピンに軸部を挿入するので、長い軸部から多くの溶接熱が中空部に伝熱される。中空部に伝わった溶接熱の放熱は、主に中空部に連なった中実部と、中実部と一体になっている摺動部材を経て行われるのであるが、中実部や摺動部材の体積、すなわちこれらの熱容量が適正な値に設定されていないために、中空部が過熱状態になるとともに、中実部や摺動部材も過熱状態になる。さらに、中実部や摺動部材の熱容量に見合った冷却手段が必要となる。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するために発案されたもので、中実部の体積と摺動部材の体積を適正な値に設定するとともに、冷却能力の高い冷却通路構造によって、溶接熱を効果的に放熱することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、
雄ねじが形成された軸部と、軸部に一体的に設けられた円形のフランジと、軸部側のフランジ面に設けた複数の溶着用突起を有するプロジェクションボルトが溶接の対象とされ、
円形断面とされた電極本体の端面から突出し、鋼板部品の下孔に相対的に挿入される断面円形のガイドピンが、少なくとも軸部の受入孔を有する中空部と中空部に連続している中実部によって形成されているとともに、耐熱硬質材料で構成され、
中実部の長さは、中空部の長さよりも長く設定してあり、
ガイドピンに一体化され、電極本体のガイド孔に摺動できる状態で嵌め込まれている断面円形の摺動部材が、絶縁性合成樹脂材料で構成され、
中実部は、その全長にわたって摺動部材に密着した状態で包囲されており、
摺動部材を冷却する冷却空気の冷却通路が、摺動部材の外周面またはガイド孔の内周面に設けられていることを特徴とする電気抵抗溶接用電極である。
【発明の効果】
【0008】
溶融部からの溶接熱は、鋼板部品から電極本体に伝えられる熱流と、フランジから軸部に伝熱され、さらに中空部から中実部へ伝えられる熱流に分流した状態になる。軸部が長いプロジェクションボルトであると、軸部から中空部への伝熱が積極的に進行するので、肉厚の薄い中空部は過熱状態になりやすいのであるが、中空部に連続している中実部の長さが中空部の長さよりも長くしてあることにより、中実部の体積を十分に大きくすることができ、中実部における吸熱が十分に果たされる。したがって、中空部に伝わった溶接熱は積極的に中実部へ吸熱されるので、肉厚の薄い中空部の過熱を回避することができる。
【0009】
同時に、中実部はその全長にわたって摺動部材に密着した状態で摺動部材に包囲されているので、中実部に流れた溶接熱の一部は、体積が増大化された摺動部材に吸熱される。このように長尺化された中実部を包囲する摺動部材は、必然的に体積が増大するので、吸熱量が多くなり、中実部から摺動部材にいたる領域全体にわたった熱分布がなされる。そして、摺動部材は、中実部の長尺化によって電極の中心軸線方向に長尺化されるので、そこに配置された冷却空気の冷却通路も長くすることができ、冷却通路における放熱面積が大きく設定でき、これによって、中実部から摺動部材に伝わった溶接熱が効果的に冷却され、溶接熱は冷却空気とともに電極外へ放熱される。
【0010】
本発明は、電気抵抗溶接用電極であるが、後述の熱流に注目した方法発明として存在させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】電極全体の断面図と部分箇所の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の電気抵抗溶接用電極を実施するための形態を説明する。
【実施例0013】
【0014】
最初に、プロジェクションボルトについて説明する。
【0015】
鉄製のプロジェクションボルト19は、雄ねじが形成された軸部20と、軸部20に一体的に設けられた円形で平板状のフランジ21と、軸部20側のフランジ面に設けた複数の溶着用突起22から構成されている。溶着用突起22は、疣状の小突起がフランジ21の外周近くに120度間隔で3個形成されている。溶着用突起22が鋼板部品3に押し付けられて、電気抵抗溶接がなされる。以下の説明において、プロジェクションボルトを単にボルトと表現する場合もある。
【0016】
つぎに、電極の基本構造を説明する。
【0017】
クロム銅のような銅合金製導電性材料で作られた電極本体1は、円筒状の形状であり、断面円形とされ、静止部材11に差し込まれる円筒状の固定部2と、鋼板部品3が載置される円筒状のキャップ部4がねじ部5において結合されて、断面円形の電極本体1が形成されている。電極本体1には、断面円形のガイド孔6が形成され、このガイド孔6は、固定部2に形成された大径孔7と、この大径孔7よりも小径でキャップ部4に形成された中径孔8、この中径孔8よりも小径の小径孔9が形成され、大径孔7、中径孔8、小径孔9は、電極本体1の中心軸線O-O上に整列した同軸状態で配置されている。
【0018】
図示の電極は、固定電極であり、これと対をなす可動電極の図示は省略してある。
【0019】
つぎに、ガイドピンについて説明する。
【0020】
鋼板部品3が載置される電極本体1の端面から突出し、鋼板部品3の下孔10内に進入する断面円形のガイドピン12が、ステンレス鋼のような金属材料またはセラミック材料などの耐熱硬質材料で構成されている。ここでは、ステンレス鋼が使用されている。ガイドピン12には、軸部20が挿入される受入孔35が設けてあり、その深さ寸法は
図1(A)に示すように、軸部20の長さよりも短く設定してある。このため、可動電極がフランジ21を加圧する前には、軸部20の先端が受入孔35の底面に突き当たっており、
図1(A)に示すように、溶着用突起22と鋼板部品3の間に空隙が存在している。
【0021】
ガイドピン12は、上述の受入孔35が形成されたパイプ状の中空部37と、中空部37に連続している中実部38によって構成されている。中空部37に連続した状態で中実部38が一体化されている。一つの製作事例としては、1本のステンレス鋼製丸棒材に片側から受入孔35を機械加工で開けることによって、簡単に製作することができる。したがって、ガイドピン12は、全長にわたって継ぎ目がなく同じ直径とされた断面円形の部材となっている。そして、中実部38の長さL1は、中空部37の長さL2よりも長く設定してある。
【0022】
ガイドピン12に一体化され、電極本体1のガイド孔6(大径孔7)に摺動できる状態で嵌め込まれている断面円形の摺動部材13が、絶縁性合成樹脂材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(商品名=テフロン・登録商標)によって構成されている。別の材料として、ポリアミド樹脂の中から、耐熱性、耐摩耗性にすぐれた樹脂を採用することも可能である。
【0023】
摺動部材13は、中実部38をその全長にわたって密着した状態で包囲している。このような密着状態は、中実部38から摺動部材13に対する熱流をできるだけ多くするためである。このような中実部38と摺動部材13の一体化は、摺動部材13のインジェクション成型時に、ガイドピン12を一緒にモールドインする方法や、ガイドピン12に結合ボルト構造部を設ける方法など、種々なものが採用できる。ここでは、後者の結合ボルト構造部のタイプである。
【0024】
すなわち、ガイドピン12の下端部にこれと一体的にボルト14が形成され、摺動部材13の底部材15にボルト14を貫通し、ワッシャ16を組み付けてロックナット17で締め付けてある。摺動部材13は、電極本体1と対をなす可動電極が進出動作をして溶接電流が通電されたときに、電流がフランジ21の溶着用突起22から鋼板部品3にのみ流れるように、絶縁機能を果たしている。
【0025】
可動電極の進出動作で溶着用突起22が鋼板部品3の表面に接触するときには、中空部37の先端部が下孔10から抜け出して、中空部37と下孔10の内面とは離隔されている。このような離隔は、中空部37が下孔10に進入している長さの方が、前述の溶着用突起22と鋼板部品3の表面間の寸法よりも、短く設定してあるためである。
【0026】
前述のように、中実部38の長さL1は、中空部37の長さL2よりも長く設定してある。そして、中実部38は、その全長にわたって摺動部材13に包囲されている。このような構造とすることによって、中空部37の金属体積よりも中実部38の金属体積の方がはるかに大きくなり、中実部38における吸熱作用が向上する。長尺化された中実部38を摺動部材13が包囲しているので、摺動部材13の合成樹脂体積を大きくすることができ、吸熱性の面で好適となる。
【0027】
中空部37の長さL2に対する中実部38の長さL1の比は、1.2~1.8に設定するのが良好である。上記比が1.2未満であると、中実部38の体積を十分に大きくすることができないので、中空部37からの熱が中実部38に十分に吸熱されず、中空部37が過熱状態になり、好ましくない。また、上記比が1.8を超えると、摺動部材13の長さも長くなり、最終的には、電極本体1の全長に影響し、電極の設置スペースの問題を招くことになる。
【0028】
圧縮コイルスプリング23は、ワッシャ16とガイド孔6の内底面の間に嵌め込まれており、その張力が摺動部材13に作用している。なお、符号24は、ガイド孔6の内底面に嵌め込んだ絶縁シートを示している。圧縮コイルスプリング23の張力が、後述の静止内端面に対する可動端面の加圧密着を成立させている。圧縮コイルスプリング23は、加圧手段であり、これに換えて圧縮空気の圧力を利用することも可能である。
【0029】
つぎに、摺動部材の各部とガイド孔各部の対応関係を説明する。
【0030】
摺動部材13には、大径部26と中径部27が形成され、中径部27よりも小径のガイドピン12が一体化されている。大径部26が、大径孔7の内面との間に実質的に隙間がなくて摺動できる状態で大径孔7に嵌め込んであり、中径部27が、中径孔8の内面との間に冷却空気の通気隙間28を残して挿入されている。上述の「・・実質的に隙間がなくて摺動できる状態・・」というのは、摺動部材13に電極本体1の直径方向の力を作用させても、隙間感覚のあるカタカタといったがたつき感触がなく、しかも中心軸線O-O方向の摺動が可能な状態を意味している。小径孔9を貫通してガイドピン12が電極本体1の上面から突き出ている。ガイドピン12が押し下げられたとき、冷却空気が通過する通気隙間29が、小径孔9とガイドピン12の間に形成してある。
【0031】
図1(A)からも明らかなように、摺動部材13による中実部38の包囲は、実質的に大径部26によって行われている。
【0032】
つぎに、冷却空気の通気構造について説明する。
【0033】
冷却空気をガイド孔6に導く通気口30が固定部2に形成してある。大径部26と大径孔7の摺動箇所の空気通路を確保するために、大径部26の外周面に中心軸線O-O方向の凹溝を形成することもできるが、ここでは
図1(B)に示すように、大径部26の外周面に中心軸線O-O方向の平面部31を形成して、平面部31と大径孔7の円弧型内面で構成された冷却通路32が形成されている。このような平面部31を90度間隔で形成して、4箇所に冷却通路32を設けている。
【0034】
ガイド孔6の中径孔8と大径孔7の境界部に環状の静止内端面33が形成されている。また、摺動部材13の中径部27と大径部26の境界部に環状の可動端面34が形成されている。静止内端面33と可動端面34は電極本体1の中心軸線O-Oが垂直に交わる仮想平面上に配置してあり、圧縮コイルスプリング23の張力によって可動端面34が静止内端面33に対して環状状態で密着し、この密着によって冷却空気流通の封止がなされている。
【0035】
なお、静止内端面33と可動端面34や、その近辺の通気構造は、その拡大図を
図1(C)に図示してある。
【0036】
つぎに、冷却空気の流通状態を説明する。
【0037】
可動電極の進出動作で可動端面34が静止内端面33から離れるので、冷却通路32から可動端面34と静止内端面33との離隔隙間、通気隙間28、通気隙間29を経た一連の通気流路が形成される。この通気流路の成立と同時に、通気口30からガイド孔6内に流入した冷却空気は、ガイド孔6の残留空間6aに滞留している熱気を、上記通気流路を経て追い出すようにして排出し、それに引き続いて冷気が冷却通路32へ流入してゆく。冷却通路32は、上記のように長尺化されて放熱面積も拡大されているので、摺動部材13やガイドピン12に蓄熱されている溶接熱を下孔10から放熱する。また、この空冷時にスパッタを外部へ排除する機能も果たされている。溶着用突起22が完全に溶融してフランジ21が鋼板部品3の表面に密着すると、上記の空気流は停止する。
【0038】
1.2~1.8の上記「比」の条件で100本のボルト19を鋼板部品3に溶接した後、電極本体1を分解した結果、中空部37の内外表面に過熱による異常色は認められなかった。また、摺動部材13の外表面にも異常色は認められなかった。
【0039】
つぎに、別形式の冷却空気の通気構造について説明する。
【0040】
上記冷却通路32は、摺動部材の外周面に形成されたものであるが、
図2に示した変形例は、ガイド孔6の内周面に設けたものである。大径孔7の内周面に中心軸線O-Oと平行に伸びている通気溝36が90度間隔で4本設けられ、この通気溝36によって冷却通路32が構成されている。
【0041】
摺動部材13は、その中心軸線O-O方向の長さが中実部38の長尺化によって長くなっているので、平面部31による冷却通路32、通気溝36による冷却通路32は、いずれも長い通路構造になっている。
【0042】
以上に説明した実施例の作用効果は、つぎのとおりである。
【0043】
溶融部からの溶接熱は、鋼板部品3から電極本体1に伝えられる熱流と、フランジ21から軸部に20伝熱され、さらに中空部37から中実部38へ伝えられる熱流に分流した状態になる。軸部20が長いプロジェクションボルト19であると、軸部20から中空部37への伝熱が積極的に進行するので、肉厚の薄い中空部37は過熱状態になりやすいのであるが、中空部37に連続している中実部38の長さが中空部37の長さよりも長くしてあることにより、中実部38の体積を十分に大きくすることができ、中実部38における吸熱が十分に果たされる。したがって、中空部37に伝わった溶接熱は積極的に中実部38へ吸熱されるので、肉厚の薄い中空部37の過熱を回避することができる。
【0044】
同時に、中実部38はその全長にわたって摺動部材13に密着した状態で包囲されているので、中実部38に流れた溶接熱の一部は、体積が増大化された摺動部材13に吸熱される。このように長尺化された中実部38を包囲する摺動部材13は、必然的に体積が増大するので、吸熱量が多くなり、中実部38から摺動部材13にいたる領域全体にわたった熱分布がなされる。そして、摺動部材13は、中実部38の長尺化によって電極の中心軸線O-O方向に長尺化されるので、そこに配置された冷却空気の冷却通路32も長くすることができ、冷却通路32における放熱面積が大きく設定でき、これによって、中実部38から摺動部材13に伝わった溶接熱が効果的に冷却され、溶接熱は冷却空気とともに電極外へ放熱される。
【0045】
中実部38の長さの方が中空部37の長さよりも長くしてあり、摺動部材13は中実部38を密着した状態で包囲しているから、電極本体1のガイド孔6として残された残留空間6aが少なくなり、電極本体1内の熱気量も少なくなる。このため、ガイド孔6内に流入してきた冷却空気は、短時間でガイド孔6内の残留熱気を、冷却通路32を経て排出することができ、電極本体端部側の冷却にとって好都合であるとともに、電極内の空気通路全域が気温の低い冷却空気で満たされ、電極全体の冷却促進にとって好適である。
【0046】
中実部38の長さの方が中空部37の長さよりも長くしてあり、摺動部材13は中実部38を密着した状態で包囲する状態であるから、摺動部材13の電極の中心軸線O-O方向の寸法が長く確保でき、ガイド孔6における摺動部材13の摺動長さが長くなる。これにより、ガイドピン12の傾き角度を最小化でき、プロジェクションボルト19と鋼板部品3の相対位置を、正確に求めることができる。
【0047】
中空部37から中実部38にかけては、継ぎ目のない状態で連続した構造とされているので、熱流が淀むことなく確実に熱量の大きな中実部38へ伝熱され、冷却性の向上が行える。例えば、中実部38の途中に継ぎ目が存在すると、この継ぎ目部分における熱流が滞るために、中実部38が十分に冷却されない、という問題がある。本発明ではこのような熱流阻害の問題が発生しない、という利点がある。
上述のように、本発明の電極によれば、中実部の体積と摺動部材の体積を適正な値に設定するとともに、冷却能力の高い冷却通路構造によって、溶接熱を効果的に放熱する。したがって、自動車の車体溶接工程や、家庭電化製品の板金溶接工程などの広い産業分野で利用できる。