(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027739
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】建造物
(51)【国際特許分類】
F24S 20/60 20180101AFI20230222BHJP
F24S 10/70 20180101ALI20230222BHJP
F24S 70/25 20180101ALI20230222BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
F24S20/60
F24S10/70
F24S70/25
E04B1/76 200Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048867
(22)【出願日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2021132884
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】上松 康二
(72)【発明者】
【氏名】杉本 明男
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓記
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DD12
2E001FA01
2E001FA02
2E001GA66
2E001HB01
(57)【要約】
【課題】日射量の減少や日射ムラを抑制しつつ、太陽光による熱を集熱する建造物を提供する。
【解決手段】建築物1は、少なくとも一つの構造部材80Aを備える。構造部材80Aは、金属の押出成形ないし鋳造により成形され、太陽光が照射される受光面10aを備え、第1端部15から第2端部16に向かって延在する中空部20が内部に形成された構造部材本体10と、第1端部15と第2端部16とにそれぞれ配置され、中空部20を塞ぐ一対の蓋部40A,40Bと、一対の蓋部40A,40Bのいずれかに設けられ、熱媒が中空部20に流入する流入口42と、一対の蓋部40A,40Bのいずれかに設けられ、熱媒が中空部20から流出する流出口43とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの構造部材を備え、
前記構造部材は、
金属の押出成形ないし鋳造により成形され、太陽光が照射される受光面を備え、第1端部から第2端部に向かって延在する中空部が内部に形成された構造部材本体と、
前記第1端部と前記第2端部とにそれぞれ配置され、前記中空部を塞ぐ一対の蓋部と、
前記一対の蓋部のいずれかに設けられ、熱媒が前記中空部に流入する流入口と、
前記一対の蓋部のいずれかに設けられ、前記熱媒が前記中空部から流出する流出口と
を備える、建造物。
【請求項2】
前記中空部は、
前記第1端部から前記第2端部に向かって前記熱媒が流れる第1流路と、
前記第1流路に隔壁を介して隣り合うように配置され、前記第2端部から前記第1端部に向かって前記熱媒が流れる第2流路と
を備える、請求項1に記載の建造物。
【請求項3】
前記一対の蓋部のそれぞれには、前記熱媒が前記流入口から前記流出口に向かって蛇行して流れるように、前記第1流路と前記第2流路とを接続する接続流路が設けられている、
請求項2に記載の建造物。
【請求項4】
前記構造部材本体は、前記隔壁に設けられ、前記熱媒が前記流入口から前記流出口に向かって蛇行して流れるように、前記第1流路と前記第2流路とを接続する通液孔を有する、
請求項2に記載の建造物。
【請求項5】
前記中空部は、隔壁を介して互いに隣り合うように配置され、前記第1端部から前記第2端部に向かって前記熱媒が流れる複数の第1流路を備える、
請求項1に記載の建造物。
【請求項6】
前記一対の蓋部のそれぞれには、前記熱媒が前記流入口から前記複数の第1流路へと分流し、前記複数の第1流路から合流して前記流出口に向かって流れるように、前記複数の第1流路の開口端それぞれと連通する共通流路が設けられている、
請求項5に記載の建造物。
【請求項7】
前記構造部材本体は、前記第1端部および前記第2端部に設けられ、前記複数の第1流路の端部同士を連通させる凹部を有し、前記一対の蓋部のそれぞれには、前記流入口または前記流出口を前記凹部と連通させる流入出流路が設けられている、
請求項5に記載の建造物。
【請求項8】
前記構造部材本体には、前記中空部が延在する方向に沿ってリブが設けられている、請求項1から7のいずれか1項に記載の建造物。
【請求項9】
前記受光面には黒色の皮膜が被膜されている、請求項1から8のいずれか1項に記載の建造物。
【請求項10】
前記構造部材本体の前記受光面を除く外面に断熱材が配置されている、請求項1から9のいずれか1項に記載の建造物。
【請求項11】
前記構造部材は、地面に固定され縦方向に延びる柱材である、請求項1から10のいずれか1項に記載の建造物。
【請求項12】
前記構造部材は、前記地面を超えて延長され、地中に埋設される埋設部を備える、請求項11に記載の建造物。
【請求項13】
前記構造部材は、横方向に延びる梁材である、請求項1から12のいずれか1項に記載の建造物。
【請求項14】
前記構造部材は、斜め方向に延び、互いに接続されている一対の合掌梁材である、請求項1から13のいずれか1項に記載の建造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建造物に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光により得られる熱を熱媒に蓄熱する集熱部材を設置した建造物が知られている。特許文献1には、集熱部材が設置された農業ハウスが開示されている。日中、集熱部材に太陽光が照射することによって加熱された熱媒は、夜間に農業ハウス内を循環し、農場ハウス内の空気を温める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている農業ハウスでは、パネル型の集熱部材が農業ハウス内の上部空間に配置されているため、農業ハウス内の日射量の減少やムラが生じる。農業ハウス内で栽培する作物が日射量の減少やムラにより光合成が抑制され、作物の生育や収量に影響を与える恐れがある。
【0005】
本発明は、農業ハウス内の日射量の減少やムラの原因でもある影の発生範囲の増加を抑制しつつ、太陽光による熱を集熱する建造物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも一つの構造部材を備え、前記構造部材は、金属の押出成形ないし鋳造により成形され、太陽光が照射される受光面を備え、第1端部から第2端部に向かって延在する中空部が内部に形成された構造部材本体と、前記第1端部と前記第2端部とにそれぞれ配置され、前記中空部を塞ぐ一対の蓋部と、前記一対の蓋部のいずれかに設けられ、熱媒が前記中空部に流入する流入口と、前記一対の蓋部のいずれかに設けられ、前記熱媒が前記中空部から流出する流出口とを備える、建造物を提供する。
【0007】
本発明に係る建造物によれば、構造部材本体の受光面に照射された太陽光が構造部材本体において熱に変換され、その熱が熱媒に蓄えられ得る。すなわち、構造部材において太陽光から集熱できる。ここで、構造部材とは、建造物がある構造で建造され、その構造が維持されるために必須の部材である。例えば、農業ハウスは、農業ハウス内の光量を確保するために、構造部材及び透明なシート以外の構成が最小となるように建造されている。換言すると、農業ハウスにおいて、構造部材及び透明なシート以外の構成を備えることは、日射量を減少させるため望ましくない。本発明では、構造部材において太陽光から集熱できるため、他に集熱部材を設置することを抑制でき、農業ハウス内の日射量の減少を抑制できる。
【0008】
前記中空部は、前記第1端部から前記第2端部に向かって前記熱媒が流れる第1流路と、前記第1流路に隔壁を介して隣り合うように配置され、前記第2端部から前記第1端部に向かって前記熱媒が流れる第2流路とを備えてもよい。
【0009】
前記の構成によれば、中空部が2つの流路を備えるため、熱媒が流れる流路が長くなり、構造部材本体と熱媒とが接する面積が増加し得る。そのため、太陽光により加熱された構造部材本体の熱を効率的に熱媒に伝えることができる。
【0010】
前記一対の蓋部のそれぞれには、前記熱媒が前記流入口から前記流出口に向かって蛇行して流れるように、前記第1流路と前記第2流路とを接続する接続流路が設けられていてもよい。
【0011】
前記の構成によれば、熱媒は蛇行して流れるため、構造部材本体と熱媒とが接する面積を大きく確保することができる。また、構造部材本体と熱媒とが接する時間が長くなり得る。従って、太陽光による熱を効率的に熱媒に蓄えることができる。また、蓋部を加工し接続流路を設けることで、熱媒が蛇行して流れる流路が成形され得る。そのため、構造部材本体に蛇行流路を成形するための加工を必要とせず、構造部材本体の製造が容易になり得る。
【0012】
前記隔壁には、前記熱媒が前記流入口から前記流出口に向かって蛇行して流れるように、前記第1流路と前記第2流路とを接続する通液孔が設けられていてもよい。
【0013】
前記の構成によれば、熱媒は蛇行して流れるため、構造部材本体と熱媒とが接する面積を大きく確保することができる。また、構造部材本体と熱媒とが接する時間が長くなり得る。従って、太陽光による熱を効率的に熱媒に蓄えることができる。また、構造部材本体を加工し通液孔を設けることで、熱媒が蛇行して流れる流路が成形され得る。そのため、蓋部に蛇行流路を成形するための加工を必要とせず、蓋部の製造が容易になり得る。
【0014】
前記中空部は、隔壁を介して互いに隣り合うように配置され、前記第1端部から前記第2端部に向かって前記熱媒が流れる複数の第1流路を備えてもよい。
【0015】
前記の構成によれば、熱媒が複数の第1流路を通って一方向に流れるため、流量を確保することができる。
【0016】
前記一対の蓋部のそれぞれには、前記熱媒が前記流入口から前記複数の第1流路へと分流し、前記複数の第1流路から合流して前記流出口に向かって流れるように、前記複数の第1流路の開口端それぞれと連通する共通流路が設けられていてもよい。
【0017】
前記の構成によれば、複数の第1流路を利用して熱媒の流量を確保する構造を容易に実現することができる。
【0018】
前記構造部材本体は、前記第1端部および前記第2端部に設けられ、前記複数の第1流路の端部同士を連通させる凹部を有し、前記一対の蓋部のそれぞれには、前記流入口または前記流出口を前記凹部と連通させる流入出流路が設けられていてもよい。
【0019】
前記の構成によれば、複数の第1流路を利用して熱媒の流量を確保する構造を容易に実現することができる。
【0020】
前記構造部材本体には、前記中空部が延在する方向に沿ってリブが設けられていてもよい。
【0021】
前記の構成によれば、リブが設けられていることで、構造部材本体と熱媒とが接する面積が増加する。そのため、構造部材本体に照射され変換された太陽光による熱が、効率的に熱媒に伝わり蓄えられ得る。
【0022】
前記受光面には黒色の皮膜が被膜されていてもよい。
【0023】
前記の構成によれば、受光面における輻射率が向上し得るため、太陽光による熱媒の加熱効率が向上し得る。
【0024】
前記構造部材の前記受光面を除く外面に断熱材が配置されていてもよい。
【0025】
前記の構成によれば、加熱された熱媒又は構造部材の熱が、大気に放出されることを抑制ないし防止できる。そのため、熱媒の加熱効率が向上し得る。
【0026】
前記構造部材は、地面に固定され縦方向に延びる柱材であってもよい。
【0027】
前記の構成によれば、日の出や日の入り時の太陽高度が低い時間帯において、熱媒の加熱効率が向上され得る。太陽高度が低い時間帯では、太陽光は柱材に対して小さい入射角で照射するため、日射量が多くなり得る。そのため、柱材が太陽光から受ける熱量も多くなり、熱媒の加熱効率が向上し得る。
【0028】
前記構造部材は、前記地面を超えて延長され、地中に埋設される埋設部を備えてもよい。
【0029】
前記の構成によれば、太陽光による熱に加え、地中熱を熱媒加熱に利用できる。
【0030】
前記構造部材は、横方向に延びる梁材であってもよい。
【0031】
前記の構成によれば、昼時の太陽が南に位置し太陽高度が高い時間帯において、熱媒の加熱効率が向上され得る。太陽高度が高い時間帯では、太陽光は梁材に対して小さい入射角で照射するため、日射量が多くなり得る。そのため、梁材が太陽光から受ける熱量も多くなり、熱媒の加熱効率が向上し得る。
【0032】
前記構造部材は、斜め方向に延び、互いに接続されている一対の合掌梁材であってもよい。
【0033】
前記の構成によれば、昼時の太陽が南に位置し太陽高度が高い時間帯において、熱媒の加熱効率が向上され得る。太陽高度が高い時間帯では、太陽光は合掌梁材に対して小さい入射角で照射するため、日射量が多くなり得る。そのため、合掌梁材が太陽光から受ける熱量も多くなり、熱媒の加熱効率が向上し得る。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る建造物によれば、農業ハウス内の日射量の減少やムラの原因でもある影の発生範囲の増加を抑制しつつ、太陽光による熱を集熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の第1実施形態における農業ハウスの概略図。
【
図2】本発明の第1実施形態における農業ハウスの概略構成図。
【
図3】本発明の第1実施形態における構造部材の分解斜視図。
【
図6】本発明の第1実施形態における蓋部の斜視図。
【
図7】本発明の第1実施形態における蓋部の斜視図。
【
図8】
図1の線VIII-VIIIにおける部分断面図。
【
図11】本発明の第1実施形態における変形例を示す図。
【
図12】本発明の第2実施形態における農業ハウスの
図5と同様の断面図。
【
図13】本発明の第3実施形態における農業ハウスの
図4と同様の断面図。
【
図14】本発明の第4実施形態における農業ハウスの
図4と同様の断面図。
【
図15】本発明の第5実施形態における農業ハウスの概略構成図。
【
図16】本発明の第5実施形態における農業ハウスの
図8と同様の部分断面図。
【
図17】本発明の第6実施形態における農業ハウスの
図5と同様の部分断面図。
【
図18】本発明の第6実施形態における農業ハウスの
図6と同様の蓋部の斜視図。
【
図19】本発明の第6実施形態における農業ハウスの
図7と同様の蓋部の斜視図。
【
図20】本発明の第6実施形態における農業ハウスの
図8と同様の部分断面図。
【
図21】本発明の第6実施形態における農業ハウスの
図9と同様の部分断面図。
【
図22】本発明の第6実施形態における農業ハウスの
図10と同様の部分断面図。
【
図23】本発明の第7実施形態における農業ハウスの
図12と同様の部分断面図。
【
図24A】本発明の第1変形例における
図4と同様の構造部材の断面図。
【
図24B】本発明の第2変形例における
図4と同様の構造部材の断面図。
【
図25A】本発明の第3変形例における
図4と同様の構造部材の断面図。
【
図25B】本発明の第4変形例における
図4と同様の構造部材の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(第1実施形態)
図1を参照すると、本実施形態における農業ハウス(建造物)1は、地面2に対して設置領域が長方形となるように設置された建物で、柱材(構造部材)80A,80B、梁材(構造部材)81、一対の合掌梁材(構造部材)82A,82B、及びそれらを覆う透光性ビニルシートやガラス板(図示せず)を備える。
【0037】
本実施形態では、柱材80A,80B、梁材81、及び合掌梁材82A,82Bはそれぞれ、農業ハウス1の構造を維持するために必須の部材で、農業ハウス1の自重や、風などの農業ハウス1に外部から負荷される荷重などに耐え得る剛性を有する。
【0038】
また、本実施形態では、柱材80A,80B、梁材81、及び合掌梁材82A,82Bはそれぞれ、後述の面(受光面)10aが太陽に面するように配置されている。具体的には、柱材80A,80B、梁材81、及び合掌梁材82A,82Bはそれぞれ、面10aが南を向くように配置されている。後に詳述するが、面10aに太陽光を集熱することで、柱材80A,80B、梁材81、及び合掌梁材82A,82Bのそれぞれの内部を流れる熱媒が温められる。
【0039】
以下の説明では、地面2に平行な農業ハウス1の短手方向をX方向とし、地面2に平行な農業ハウス1の長手方向をY方向とし、地面2に垂直な農業ハウス1の高さ方向をZ方向とする。
【0040】
農業ハウス1は、平面視においてY方向に長い建物である。柱材80A,80B、梁材81、及び合掌梁材82A,82Bはそれぞれ、Y方向に一定のピッチで設けられ、Y方向に延びる連結部材83によって接続されている。
【0041】
農業ハウス1内には、栽培空間64と上部空間65とがある。栽培空間64は梁材81より下側の空間で、上部空間65は梁材81より上側の空間である。
【0042】
図2を参照すると、農業ハウス1は、タンク58、ポンプ59、制御部60、三方弁62、及び放熱器61を備える。本実施形態では、1組の柱材80A,80B、梁材81、及び合掌梁材82A,82Bに対して、1組のタンク58、ポンプ59、制御部60、三方弁62、及び放熱器61が設けられている。農業ハウス1全体で、1組のタンク58、ポンプ59、制御部60、三方弁62、及び放熱器61が設けられていてもよい。
【0043】
タンク58は、配管66aを介して柱材80Bと接続され、配管66bを介してポンプ59と接続され、配管66cを介して放熱器61と接続されている。ポンプ59は配管66dを介して三方弁62に接続されている。三方弁62は、配管66eを介して柱材80Aに接続され、配管66fを介して放熱器61に接続されている。
【0044】
三方弁62は、制御部60によって制御され、配管66dから流入した熱媒を、配管66eに流すか、又は配管66fに流すかを切り替える。
【0045】
タンク58には、熱媒が貯蔵されている。熱媒は、ポンプ59によって圧送され、三方弁62を介して、柱材80A又は放熱器61に送られる。具体的には、熱媒は、日中には集熱部である柱材80Aに送られ、夜間には放熱器61に送られる。
【0046】
後に詳述するが、柱材80Aに送られた熱媒は、梁材81、合掌梁材82A,82B、及び柱材80Bを介して、タンク58に戻る。その間、熱媒は太陽光によって温められる。また、放熱器61に送られた熱媒は、配管66cを介してタンク58に戻る。
【0047】
放熱器61では、加熱された熱媒が流れ、農業ハウス1内の空気と熱交換する。そのため、農業ハウス1内の空気が温められ、熱媒が冷やされる。放熱器61は、内部を流れる熱媒と熱交換する公知のものを使用でき、例えば、チューブを農業ハウス1内の地面に這わせたものであってもよい。
【0048】
本実施形態では、放熱器61は栽培空間64に配置されている。栽培空間64と上部空間65とは図示しないカーテンによって区切られていてもよい。カーテンにより、栽培空間64と上部空間65との間で熱の移動が妨げられ、栽培空間64の保温性が向上する。
【0049】
図3を参照して、柱材80Aの構成を説明する。本実施形態では、柱材80A,80B、梁材81、及び合掌梁材82A,82Bはそれぞれ、同一の構成を有しているため、柱材80B、梁材81、及び合掌梁材82A,82Bのそれぞれの構成の説明は省略する。
【0050】
柱材80Aは、柱材本体(構造部材本体)10、及び一対の蓋部40A,40Bを備える。
【0051】
柱材本体10は、金属の押出成形ないし鋳造によって成形され、第1端部15から第2端部16に向かって任意の長さで延びる長尺部材である。本実施形態では、柱材本体10はアルミニウム合金によって成形されている。柱材本体10は、他の金属材料、例えば鉄鋼、アルミニウム、銅、銅合金、又は銀等であってもよい。なお、柱材本体10の熱伝導率は200w/m・K以上であるとなお好ましい。
【0052】
図4を参照すると、柱材本体10は、延在方向に垂直な断面において、略矩形で、面10a、面10aに対向する面10b、及び面10aと面10bとを接続する面10c,10dを備える。前述したように、本実施形態では、面10aには、太陽光が照射される。
【0053】
柱材本体10の内部には、中空部20と空洞11とが形成されている。中空部20と空洞11とはそれぞれ、第1端部15から第2端部16に向かって延在し、両端が開口している。
【0054】
図5を併せて参照すると、中空部20は、熱媒が第1端部15から第2端部16に向けて流れる2つの第1流路17A,17Cと、熱媒が第2端部16から第1端部15に向けて流れる1つの第2流路17Bとを備える。第1流路17Aと第2流路17Bとは隔壁21Aを介して隣り合うように配置され、第1流路17Cと第2流路17Bとは隔壁21Bを介して隣り合うように配置されている。第1流路17A,17C及び第2流路17Bはそれぞれ、柱材本体10の延在方向に対して平行に延びている。
【0055】
第1流路17Aは、第2流路17Bに対して面10d側に配置されている。第1流路17Aは、第1端部15に第1開口18Aを有し、第2端部16にも第2開口19Aを有する。
【0056】
第2流路17Bは、第1端部15に第1開口18Bを有し、第2端部16にも第2開口19Bを有する。
【0057】
第1流路17Cは、第2流路17Bに対して面10c側に配置されている。第1流路17Cは、第1端部15に第1開口18Cを有し、第2端部16にも第2開口19Cを有する。
【0058】
図4を参照すると、本実施形態では、第1流路17A,17C及び第2流路17Bは空洞11に対して、面10a側に配置され、面10aから距離L1だけ離間している。また、第1流路17A,17C及び第2流路17Bはそれぞれ、柱材本体10の延在方向に垂直な断面において丸形で、一定の断面積Sを有する。
【0059】
空洞11は、第1流路17A,17C及び第2流路17Bに対して、面10b側に配置されている。本実施形態では、空洞11には熱媒は流れず、柱材本体10の重量を軽減するために設けられている。そのため、空洞11の形状、位置、及び大きさは、柱材本体10の延在方向に垂直な断面における柱材本体10の断面性能を確保しつつ柱材本体10の重量を軽減するように、設定されている。空洞11は設けられていなくてもよい。
【0060】
図3及び
図5を参照すると、柱材本体10の第1端部15には中空部20を塞ぐように、蓋部40Aが固定されている。また、柱材本体10の第2端部16には中空部20を塞ぐように、蓋部40Bが固定されている。
【0061】
本実施形態では、蓋部40A,40Bは、アルミニウム合金を切削加工することによって成形されている。蓋部40A,40Bは、他の金属材料、例えば鉄鋼、アルミニウム、銅、銅合金、又は銀等であってもよい。蓋部40A,40Bの熱伝導率は200w/m・K以上であるとなお好ましい。
【0062】
図6を併せて参照すると、蓋部40Aは、直方体状の部材で、頂面47a、頂面47aに対向する底面47b、及び頂面47aと底面47bとを接続する側面47c,47d,47e,47fを有する。頂面47aは、柱材本体10に面している。側面47c,47d,47e,47fはそれぞれ、柱材本体10の面10a,10b,10c,10dに対して面一状に延びている。
【0063】
蓋部40Aは、中空構造の窪部41Aと中実構造の基礎部44Aとを有する。窪部41Aは、頂面47aに開口49Aを形成するように設けられている。基礎部44Aは底面47b側に配置されている。
【0064】
側面47fには、熱媒が第1流路17Aに流入する流入口42が設けられている。
【0065】
窪部41Aの開口49Aの形状は、柱材本体10の延在方向に垂直な断面形状の外形と同一、すなわち略矩形である。窪部41Aには柱材本体10の第1端部15側が嵌合し、窪部41Aの当接面50Aに第1端部15が密着している。蓋部40Aは溶接等の任意の固定方法によって柱材本体10に固定されている。
【0066】
基礎部44Aには、接続流路45Aが設けられている。接続流路45Aは、両端に開口51A,51Bを有するU字状の流路である。開口51Aは第1開口18Cと位置合わせされており、開口51Bは第1開口18Bと位置合わせされている。そのため、接続流路45Aは、第2流路17Bと第1流路17Cとを連通し、熱媒の流れ方向を180度曲げる。
【0067】
また、基礎部44Aには、流入出流路46Aが設けられている。流入出流路46Aは、両端に開口51C,51Dを有する流路である。開口51Cは第1開口18Aと位置合わせされており、開口51Dは流入口42と位置合わせされている。そのため、流入出流路46Aは、第1流路17Aと流入口42とを連通する。
【0068】
図3、
図5、及び
図7を参照すると、蓋部40Bは、直方体状の部材で、頂面48a、頂面48aに対向する底面48b、及び頂面48aと底面48bとを接続する側面48c,48d,48e,48fを有する。頂面48aは、柱材本体10に面している。側面48c,48d,48e,48fはそれぞれ、柱材本体10の面10a,10b,10d,10cに対して面一状に延びている。
【0069】
蓋部40Bは、中空構造の窪部41Bと中実構造の基礎部44Bとを有する。窪部41Bは、頂面48aに開口49Bを形成するように設けられている。基礎部44Bは底面48b側に配置されている。
【0070】
側面48fには熱媒が第1流路17Cから流出する流出口43が設けられている。
【0071】
窪部41Bの開口49Bの形状は、柱材本体10の延在方向に垂直な断面形状の外形と同一、すなわち略矩形である。窪部41Bには柱材本体10の第2端部16側が嵌合し、窪部41Bの当接面50Bに第2端部16が密着している。蓋部40Bは溶接等の任意の固定方法によって柱材本体10に固定されている。
【0072】
基礎部44Bには、接続流路45Bが設けられている。接続流路45Bは、両端に開口52A,52Bを有するU字状の流路である。開口52Aは第2開口19Aと位置合わせされており、開口52Bは第2開口19Bと位置合わせされている。そのため、接続流路45Bは、第1流路17Aと第2流路17Bとを連通し、熱媒の流れ方向を180度曲げる。
【0073】
また、基礎部44Bには、流入出流路46Bが設けられている。流入出流路46Bは、両端に開口52C,52Dを有する流路である。開口52Cは第2開口19Cと位置合わせされており、開口52Dは流出口43と位置合わせされている。そのため、流入出流路46Bは、第1流路17Cと流出口43とを連通する。
【0074】
図5を参照すると、流入口42から流入した熱媒は、蓋部40Aの流入出流路46Aを介して第1流路17Aに流入し、第1流路17Aを第1端部15から第2端部16に向かって流れ、蓋部40Bの接続流路45Bを介して第2流路17Bに流入する。第2流路17Bに流入した熱媒は、第2端部16から第1端部15に向かって流れ、蓋部40Aの接続流路45Aを介して第1流路17Cに流入する。第1流路17Cに流入した熱媒は、第1端部15から第2端部16に向かって流れ、蓋部40Bの流入出流路46Bと流出口53とを介して柱材80Aの外部に流出する。つまり、熱媒は、第1流路17A,17C、第2流路17B、接続流路45A,45B、及び流入出流路46A,46Bを介して、流入口42から流出口43に向かって蛇行して流れる。
【0075】
柱材80B、梁材81、及び合掌梁材82A,82Bはそれぞれ、前述したように柱材80Aと同様の構成である。すなわち、柱材80B、梁材81、及び合掌梁材82A,82Bのそれぞれにおいて、流入口42から流入した熱媒は、流出口43に向かって蛇行して流れる。
【0076】
図8及び
図9を参照すると、柱材80Aは、蓋部40Aが地面2に固定されZ方向(縦方向)に延びる。また、柱材80Bは、蓋部40Bが地面2に固定されZ方向(縦方向)に延びる。
【0077】
梁材81は、柱材80Aの蓋部40Bと柱材80Bの蓋部40Aとを接続するようにX方向(横方向)に延びる。梁材81の蓋部40Aは、柱材80Aの蓋部40Bに固定され、梁材81の蓋部40Bは、柱材80Bの蓋部40Aに溶接などによって固定されている。
【0078】
合掌梁材82Aは、柱材80Aの蓋部40Bから農業ハウス1の中央に向かって斜め上方に延びる。合掌梁材82Bは、柱材80Bの蓋部40Aから農業ハウス1の中央に向かって斜め上方に延びる。合掌梁材82Aの蓋部40Aは、柱材80Aの蓋部40Bと梁材81の蓋部40Aとに溶接などによって固定されている。合掌梁材82Bの蓋部40Bは、柱材80Bの蓋部40Aと梁材81の蓋部40Bとに溶接などによって固定されている。
【0079】
図10を併せて参照すると、合掌梁材82Aの蓋部40Bは、合掌梁材82Bの蓋部40Aに接続している。合掌梁材82Aの蓋部40Bは、合掌梁材82Bの蓋部40Aに溶接などによって固定されている。
【0080】
本実施形態では、合掌梁材82A,82Bのそれぞれの蓋部40A,40Bの先端はそれぞれ、傾斜角であり、それによって、合掌梁材82A,82Bはそれぞれ、斜めに延びる。
【0081】
図2を参照すると、柱材80Aの流入口42は、配管66eを介して、三方弁62に接続されている。
【0082】
柱材80Aの流出口43は、外部配管63aを介して、梁材81の流入口42と合掌梁材82Aの流入口42とに接続されている。
【0083】
合掌梁材82Aの流出口43は、外部配管63bを介して、合掌梁材82Bの流入口42に接続されている。
【0084】
梁材81の流出口43と合掌梁材82Bの流出口43とはそれぞれ、外部配管63cを介して、柱材80Bの流入口42に接続されている。
【0085】
柱材80Bの流出口43は、配管66aを介して、タンク58に接続されている。
【0086】
図2を参照して、農業ハウス1における熱媒の流れについて説明する。
【0087】
本実施形態における農業ハウス1では、熱媒は、アルミニウム合金が錆びないように中性から弱アルカリ性のものが用いられる。具体的には熱媒はpH6~pH11のものが用いられる。
【0088】
日中の太陽光が農業ハウス1に照射している間は、制御部60によって三方弁62が制御され、熱媒は、タンク58、柱材80A,80B、梁材81、及び合掌梁材82A,82Bを循環するように流れる。具体的には、熱媒は、ポンプ59によって、タンク58から柱材80Aの流入口42に向かって、配管66b,66d,66eと三方弁62とを介して圧送される。柱材80Aに流入した熱媒は、柱材80Aの内部を蛇行して流れ、柱材80Aの流出口43から流出する。柱材80Aから流出した熱媒は、外部配管63aを介して梁材81と合掌梁材82Aとに流入する。梁材81に流入した熱媒は、梁材81の内部を蛇行して流れ、梁材81の流出口43から流出する。合掌梁材82Aに流入した熱媒は、合掌梁材82Aの内部を蛇行して流れ、合掌梁材82Aの流出口43から流出し、外部配管63bを介して合掌梁材82Bに流入する。合掌梁材82Bに流入した熱媒は、合掌梁材82Bの内部を蛇行して流れ、合掌梁材82Bの流出口43から流出する。合掌梁材82Bから流出した熱媒は、外部配管63cを介して、梁材81から流出した熱媒と合流し、柱材80Bに流入する。柱材80Bに流入した熱媒は、柱材80Bの内部を蛇行して流れ、柱材80Bの流出口43から流出し、配管66aを介してタンク58に戻る。この間、熱媒は、柱材80A,80B、梁材81、及び合掌梁材82A,82Bのそれぞれで加熱され、昇温する。
【0089】
夜間の太陽光が農業ハウス1に照射していない間は、制御部60によって三方弁62が制御され、タンク58に貯蔵された熱媒は、放熱器61を循環するように流れる。具体的には、熱媒は、ポンプ59によって、タンク58から放熱器61に向かって配管66b,66d,66fと三方弁62とを介して圧送される。放熱器61では、加熱された熱媒が栽培空間64内の空気と熱交換し、栽培空間64内の温度が上昇する。放熱器61で熱交換し冷やされた熱媒は、配管66cを介してタンク58に戻る。
【0090】
本実施形態に係る農業ハウス1によれば、構造部材本体10の面10aに照射された太陽光が構造部材本体10において熱に変換され、その熱が熱媒に蓄えられ得る。すなわち、柱材80A,80B、梁材81、及び合掌梁材82A,82Bのそれぞれにおいて太陽光から集熱できる。農業ハウス1は、農業ハウス1内の光量を確保するために、構造部材及び透明なシート以外の構成が最小となるように建造されている。換言すると、農業ハウス1において、構造部材及び透明なシート以外の構成を備えることは、農業ハウス内の日射量の減少やムラが生じるため望ましくない。本実施形態では、柱材80A,80B、梁材81、及び合掌梁材82A,82Bのそれぞれにおいて太陽光から集熱できるため、他に集熱部材を設置することを抑制でき、農業ハウス内の日射量の減少やムラの原因でもある影の範囲の増加を抑制できる。
【0091】
また、中空部20が第1流路17A,17Cと第2流路17Bとを備えるため、熱媒が流れる流路が長くなり、構造部材本体10と熱媒とが接する面積が増加し得る。そのため、太陽光により加熱された構造部材本体10の熱を効率的に熱媒に伝えることができる。
【0092】
さらに、熱媒は蛇行して流れるため、構造部材本体10と熱媒とが接する面積を大きく確保することができる。また、構造部材本体10と熱媒とが接する時間が長くなり得る。従って、太陽光による熱を効率的に熱媒に蓄えることができる。また、蓋部40A,40Bを加工し接続流路45A,45Bを設けることで、熱媒が蛇行して流れる流路が成形され得る。そのため、構造部材本体10に蛇行流路を成形するための加工を必要とせず、構造部材本体10の製造が容易になり得る。
【0093】
柱材80A,80Bが設けられているため、日の出や日の入り時の太陽高度が低い時間帯において、熱媒の加熱効率が向上され得る。太陽高度が低い時間帯では、太陽光は柱材80A,80Bに対して小さい入射角で照射するため、日射量が多くなり得る。そのため、柱材80A,80Bが太陽光から受ける熱量も多くなり、熱媒の加熱効率が向上し得る。ここで、入射角とは、太陽光が照射される面の法線と、太陽光線とがなす角度である。
【0094】
梁材81が設けられているため、昼時の太陽が南に位置し太陽高度が高い時間帯において、熱媒の加熱効率が向上され得る。太陽高度が高い時間帯では、太陽光は梁材81に対して小さい入射角で照射するため、日射量が多くなり得る。そのため、梁材81が太陽光から受ける熱量も多くなり、熱媒の加熱効率が向上し得る。
【0095】
合掌梁材82A,82Bが設けられているため、昼時の太陽が南に位置し太陽高度が高い時間帯において、熱媒の加熱効率が向上され得る。太陽高度が高い時間帯では、太陽光は合掌梁材82A,82Bに対して小さい入射角で照射するため、日射量が多くなり得る。そのため、合掌梁材82A,82Bが太陽光から受ける熱量も多くなり、熱媒の加熱効率が向上し得る。
【0096】
太陽光により加熱された熱媒が放熱器61で熱交換し栽培空間64内の空気を温めるため、夜間の温度低下による植物の生育阻害が緩和され、植物の成長率が向上し得る。
【0097】
図11を参照すると、本実施形態の変形例によれば、農業ハウス1は接続蓋部90を備える。接続蓋部90は、柱材80Aの蓋部40B、梁材81の蓋部40A、及び合掌梁材82Aの蓋部40Aを一部品として一体に成形したものである。また、外部配管63a(
図2に示す)に代えて、接続蓋部90の内部に蓋部流路91が設けられている。蓋部流路91は、柱材80Aの第2開口19Cを梁材81の第1開口18Aと合掌梁材82Aの第1開口18Aとに接続している。外部配管63aが配置されていないため、農業ハウス1の組立が容易になり得る。
【0098】
また、本実施形態の変形例によれば、柱材80A、梁材81、及び合掌梁材82Aはそれぞれ、ねじ92によって接続蓋部90に固定されている。そのため、農業ハウス1の組立が容易になり得る。
【0099】
(第2実施形態)
図12を参照すると、第2実施形態に係る農業ハウス1の構成は、以下の点で第1実施形態と異なる。第2実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0100】
第2実施形態では、蓋部40A,40Bには接続流路45A,45B(
図5に示す)が設けられておらず、柱材本体10に通液孔22A、22Bが設けられている。
【0101】
通液孔22Aは、第2流路17Bと第1流路17Cとを隔てる隔壁21Bの第1端部15側に設けられ、第2流路17Bと第1流路17Cとを連通させる。通液孔22Bは、第1流路17Aと第2流路17Bとを隔てる隔壁21Aの第2端部16側に設けられ、第1流路17Aと第2流路17Bとを連通させる。
【0102】
流入口42と流入出流路46Aを介して柱材本体10の内部に流入した熱媒は、第1流路17Aを第1端部15から第2端部16に向かって流れ、通液孔22Bを介して第2流路17Bに流入する。第2流路17Bに流入した熱媒は、第2端部16から第1端部15に向かって流れ、通液孔22Aを介して第1流路17Cに流入する。第1流路17Cに流入した熱媒は、第1端部15から第2端部16に向かって流れ、流入出流路46Bと流出口43とを介して柱材本体10の外部に流出する。つまり、熱媒は、第1流路17A,17C、第2流路17B、通液孔22A,22B、及び流入出流路46A,46Bを介して、流入口42から流出口43に向かって蛇行して流れる。
【0103】
第2実施形態に係る農業ハウス1では、熱媒は蛇行して流れるため、構造部材本体10と熱媒とが接する面積を大きく確保することができる。また、構造部材本体10と熱媒とが接する時間が長くなり得る。従って、太陽光による熱を効率的に熱媒に蓄えることができる。また、構造部材本体10を加工し通液孔を設けることで、熱媒が蛇行して流れる流路が成形され得る。そのため、蓋部40A,40Bに蛇行流路を成形するための加工を必要とせず、蓋部40A,40Bの製造が容易になり得る。
【0104】
(第3実施形態)
図13を参照すると、第3実施形態に係る農業ハウス1の構成は、以下の点で第1実施形態と異なる。第3実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0105】
柱材本体10には、第1流路17Aに向けて突出したリブ30が設けられている。リブ30は、柱材本体10の延在方向に沿って、第1端部15(
図3に示す)から第2端部16(
図3に示す)まで延びている。第2流路17Bと第1流路17Cとのそれぞれについても同様に、リブ30が設けられている。リブ30は、柱材本体10と一体に押出成形ないし鋳造により成形されている。
【0106】
第3実施形態における農業ハウス1によれば、リブ30が設けられていることで、構造部材本体10と熱媒とが接する面積が増加する。そのため、構造部材本体10に照射され変換された太陽光による熱が、効率的に熱媒に伝わり蓄えられ得る。また、構造部材本体10は押出成形物ないし鋳造物であるため、このようなリブ30を有する構造も容易に成形され得る。
【0107】
(第4実施形態)
図14を参照すると、第4実施形態に係る農業ハウス1の構成は、以下の点で第1実施形態と異なる。第4実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0108】
柱材本体10の面10aには、黒色の皮膜36が被膜されている。黒色の皮膜36は、例えば、アルミニウム合金を電解処理した高輻射率皮膜であり、太陽光のほとんど全ての波長の光を吸収する。
【0109】
また、柱材本体10の外面38のうち、面10aを除く外面38に断熱材37A,37B,37Cが配置されている。断熱材37Aは、面10bに接するように配置され、断熱材37Bは、面10cに接するように配置されている。また、断熱材37Cは、面10dに接するように配置されている。
【0110】
第4実施形態における集熱部材1によれば、面10aにおける輻射率が向上し得るため、太陽光による熱媒の加熱効率が向上し得る。
【0111】
また、断熱材37A~37Cが設けられているため、加熱された熱媒又は構造部材本体10の熱が、大気に放出されることを抑制ないし防止できる。そのため、熱媒の加熱効率が向上し得る。
【0112】
(第5実施形態)
図15及び
図16を参照すると、第5実施形態に係る農業ハウス1の構成は、以下の点で第1実施形態と異なる。第5実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0113】
図15を参照すると、柱材80Aは、地面2を超えて延長され、地中4に埋設される埋設部12Aを備える。また、柱材80Bは、地面2を超えて延長され、地中4に埋設される埋設部12Bを備える。埋設部12A,12Bの長さL2は任意であるが、好ましくは10m以上である。
【0114】
図16を併せて参照すると、柱材80Aの流入口42は蓋部40Aに設けられておらず、柱材本体10の地面2より上側に設けられている。また、蓋部40Aは、流入出流路46A(
図5に示す)を有していない。すなわち、第1流路17Aの第1開口18Aは蓋部40Aで密閉されている。そのため、熱媒が農業ハウス1を循環している際、柱材80Aの第1流路17Aにおける第1端部15と流入口42との間では、熱媒が溜まっている状態となり、熱媒は流れない。柱材80Aに流入した熱媒は、第1流路17Aを流入口42から第2端部16に向かって流れる。
【0115】
図示は省略するが、柱材80Bも同様の構成である。すなわち、柱材80Bの第1流路17Cにおける第2端部16と流出口43との間では、熱媒が溜まっている状態となり、熱媒は流れない。柱材80Bに流入した熱媒は、第1流路17Cを第1端部15から流出口43に向かって流れる。
【0116】
第5実施形態に係る農業ハウス1によれば、太陽光による熱に加え、埋設部12A,12Bを介して得られる地中熱を利用した熱媒利用が可能である。特に冬季では、地中の温度が気温より高くなるため、地中熱を利用して農業ハウス1の内部を温めることができる。
【0117】
(第6実施形態)
図17~
図22を参照すると、第6実施形態に係る農業ハウス1の構成は、以下の点で第1実施形態と異なる。第6実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0118】
本実施形態に係る柱材80Aにおいては、柱材本体10が第1実施形態(
図3および
図4を参照)と同じ構造を有する一方で、一対の蓋部40A,40Bが第1実施形態と異なる構造を有する。そのため、柱材80A内における熱媒の流路構造も第1実施形態と異なる。
【0119】
図18を参照すると、蓋部40Aの基礎部44Aには、共通流路45Aと、流入出流路46Aとが設けられている。共通流路45Aは、窪部41Aの当接面50Aから底面47b側へ凹設された溝により構成される。流入出流路46Aの開口51Dは、第1実施形態と同様に流入口42と位置合わせされる一方、開口51Cは共通流路45Aに開放されている。
【0120】
図19を参照すると、蓋部40Bも蓋部40Aと同様に構成される。蓋部40Bの基礎部44Bには、共通流路45Bと、流入出流路46Bとが設けられている。共通流路45Bは、窪部41Bの当接面50Bから底面48b側へ凹設された溝により構成される。流入出流路46Bの開口52Dは、第1実施形態と同様に流出口43と位置合わせされる一方、開口52Cは共通流路45Bに開放されている。
【0121】
図17を参照すると、柱材本体10の第1端部15は、蓋部40Aの窪部41Aに嵌合され、当接面50Aに当接し、柱材本体10の第2端部16は、蓋部40Bの窪部41Bに嵌合され、当接面50Bに当接する。柱材本体10の中空部20は、隔壁21A,21Bを介して互いに隣り合うように配置された3つの長孔によって構成され、各長孔が、第1端部15で開放された第1開口18D,18E,18Fと、第2端部16で開放された第2開口19D,19E,19Fとを有している。第1開口18D,18E,18Fはいずれも、蓋部40Aの共通流路45Aと連通する。第2開口19D,19E,19Fはいずれも、蓋部40Bの共通流路45Bと連通する。
【0122】
流入口42から流入した熱媒は、蓋部40Aの流入出流路45Aを介し、共通流路45Aに流入する。熱媒は、共通流路44Aから3つの第1開口18D,18E,18Fを介し、3つの長孔内に流入する。熱媒は、3つの長孔の各々において第1端部15から第2端部16に向けて流れる。すなわち、これら長孔はいずれも、熱媒を第1端部15から第2端部16に向けて流す第1流路17D,17E,17Fとしての役割を果たす。各第1流路17D,17E,17F内の熱媒は、第2開口19D,19E,19Fを介し、蓋部40Bの共通流路45Bで合流する。熱媒は、共通流路45Bから流入出流路46Bを介して流出口42へ向かって流れ、流出口42から流出する。
【0123】
熱媒が蛇行して流れる第1実施形態とは異なり、本実施形態では、柱材40が、流出口43が配置される第2端部16から流入口42が配置される第1端部15に向けて熱媒を流す第2流路(例えば、
図5に示す流路17B)を備えない。柱材本体10の中空部20は、共通流路44A,45Bに対して並列に接続された複数の第1流路17D,17E,17Fである。熱媒は、これら第1流路17D,17E,17Fに分流されて第1端部15から第2端部16に向かって一方通行で流れていく。
【0124】
図20~22に示すように、他の構造部材(梁材81および合掌梁材82A,82B)も上記同様である。梁材81および合掌梁材82A,82Bも、熱媒が第1端部15から第2端部16に向けて一方通行で流れる第1流路17D,17E,17Fを有する。
【0125】
本実施形態においても、農業ハウス内の日射量の減少やムラの原因でもある影の発生範囲の増加を抑制しつつ、太陽光による熱を集熱する建造物を提供することができる。更に、複数の第1流路が並列接続されて熱媒が一方通行で流れることで、熱媒の流量を確保しやすい。流量が多くなると、室内が過剰に温度上昇した際には、熱媒で室温を下げることも可能となり、冷房設備の補助装置として利用することも可能となる。また、熱媒の滞留時間が短くなるためポンプ59の負荷を下げることができる。
【0126】
(第7実施形態)
図23を参照すると、第7実施形態に係る農業ハウス1の構成は、以下の点で第1実施形態と異なる。第7実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0127】
本実施形態の第6実施形態に対する相違は、第2実施形態の第1実施形態に対する相違と同様である。本実施形態では、蓋部40A,40Bには、共通流路45A,45B(
図17を参照)が設けられておらず、柱材本体10に凹部23A,23Bが設けられている。
【0128】
凹部23Aは、第1端部15の端面から第2端部16側へ凹設されている。凹部23Aの底面24Aには、第1開口18D,18E,18Fが開口している。第1流路17D,17E、17Fはいずれも、第1端部15側で凹部23Aと連通する。凹部23Bは、第2端部16の端面から第1端部15側へ凹設されている。凹部23Bの底面24Bには、第2開口19D,19E,19Fが開口している。第1流路17D,17E,17Fはいずれも、第2端部16側で凹部23Bと連通する。蓋部40Aの流入出流路46Aは、流入口42を凹部23Aと連通させる。蓋部40Bの流入出流路46Bは、凹部23Bを流出口43と連通させる。
【0129】
本実施形態では、凹部23A,23Bが、第6実施形態における共通流路45A,45Bと同等の機能を果たす。すなわち、熱媒は、流入口42から流入出流路46Aを介して凹部23Aに流入し、凹部23Aから複数の第1流路17D,17E,17Fに分流し、各第1流路17D,17E,17Fを通流して凹部23Bで合流し、流入出流路46を介して流出口43向かって流れる。これにより、第6実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0130】
(変形例)
上記実施形態では、構造部材本体が、矩形状の断面を有していたが、構造部材本体の断面形状は特に限定されない。
図24Aおよび
図24Bに示すように、柱材本体10は、C状またはU状の断面を有していてもよい。
図25Aおよび
図25Bに示すように、柱材本体10は、H状の断面を有していてもよい。素材はアルミニウム合金に限定されず、他の金属材料、例えば鉄鋼、アルミニウム、銅、銅合金、又は銀等でもよい。その他の構造部材(例えば、梁材および合掌梁材)の本体もこれと同様に変更可能である。
【0131】
図24Aおよび24Bを参照して、C状の柱材本体10は、ウェブ10Wと、ウェブ10Wの両端部それぞれから垂直に延びる一対のフランジ10F,10Fとを備え、全体としてC字形状の断面を有する。中空部20(複数の長孔)は、ウェブ10Wおよび一対のフランジ10Fの3つの部分のうち少なくともいずれかに設けられる。
図24Aに示すように、3つの部分の全てに設けられていてもよく、
図24Bに示すように、ウェブ10Wにのみ設けられていてもよい。3つの部分の各々に設けられる長孔の個数は特に限定されない。第1実施形態のように蛇行型であれば、長孔の総数が3以上の奇数であればよく、第6実施形態のような一方通行型であれば、長孔の総数が複数であればよい。
【0132】
図25Aおよび25Bを参照して、H状の柱材本体10は、ウェブ10Wと、ウェブ10Wの両端部それぞれから垂直に延びる一対のフランジ10Fとを備え、全体としてH字形状の断面を有する。中空部20はいずれの部分に設けられるのか、および中空部20を構成する長孔の個数については、上記のC状の柱材本体10と同様である。
図25Bに示すように、長孔は、ウェブ10Wの板厚方向に並ぶように配列されてもよい。
【符号の説明】
【0133】
1 農業ハウス(建造物)
2 地面
4 地中
10 柱材本体(構造部材本体)
10a 面(受光面)
10b,10c,10d 面
11 空洞
12A,12B 埋設部
15 第1端部
16 第2端部
17A,17C 第1流路
17B 第2流路
18A,18B,18C 第1開口
19A,19B,19C 第2開口
20 中空部
21A,21B 隔壁
22A,22B 通液孔
30 リブ
36 黒色の皮膜
37A,37B,37C 断熱材
40A,40B 蓋部
41A,41B 窪部
42 流入口
43 流出口
44A,44B 基礎部
45A,45B 接続流路
46A,46B 流入出流路
47a 頂面
47b 底面
47c,47d,47e,47f 側面
48a 頂面
48b 底面
48c,48d,48e,48f 側面
49A,49B 開口
50A,50B 当接面
51A,51B,51C,51D 開口
52A,52B,52C,52D 開口
58 タンク
59 ポンプ
60 制御部
61 放熱器
62 三方弁
63a,63b,63c 外部配管
64 栽培空間
65 上部空間
66a,66b,66c,66d,66e,66f 配管
80A,80B 柱材(構造部材)
81 梁材(構造部材)
82A,82B 合掌梁材(構造部材)
83 連結部材
90 接続蓋部
91 蓋部流路
92 ねじ