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▶ リングシュパン・ゲー・エム・ベー・ハーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023027761
(43)【公開日】2023-03-02
(54)【発明の名称】ケージフリーホイール
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/07 20060101AFI20230222BHJP
   F16C 19/26 20060101ALI20230222BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20230222BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
F16D41/07 Z
F16C19/26
F16C17/02 Z
F16C17/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022124202
(22)【出願日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】10 2021 121 373.8
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】10 2022 114 386.4
(32)【優先日】2022-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591073924
【氏名又は名称】リングシュパン・ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】RINGSPANN GESELLSCHAF MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
【住所又は居所原語表記】SCHABERWEG 30-34,D-61348 BAD HOMBURG,BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ホイバッハ
【テーマコード(参考)】
3J011
3J701
【Fターム(参考)】
3J011BA02
3J701AA13
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA77
3J701FA15
3J701FA31
3J701FA53
(57)【要約】
【課題】本発明は、特に電動自転車の駆動部においてシャフトとハブとの間のクランプギャップに設置されるための、スプラグケージを有するケージフリーホイールに関する。
【解決手段】ケージフリーホイールには、第一の実施形態において周方向に連続してスプラグケージにおいて回転可能に配置された各スプラグが設けられており、各スプラグはクラッチイン方向に弾力的に付勢されている。ここで重要なのは、スプラグケージの軸方向に隣接して軌道盤が設けられていることである。第二の実施形態においてケージリングには周方向に連続して各軸受ローラ(4)のみならず各スプラグ(5)が設けられている。さらに本発明は、シャフト・ハブ構造と、前述の各特徴を有するケージフリーホイールを有する電動自転車の駆動部とに関する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に電動自転車の駆動部においてシャフトとハブとの間のクランプギャップに設置されるためのケージフリーホイールであって、スプラグケージ(3)を有し、前記スプラグケージには周方向に前記スプラグケージ(3)において回転可能に配置された各スプラグ(5)が設けられており、前記各スプラグ(5)は、クラッチイン方向に弾力的に付勢されている前記ケージフリーホイールにおいて、
前記スプラグケージ(3)に軸方向に隣接して軌道盤(7)が配置されていることを特徴とするケージフリーホイール。
【請求項2】
前記スプラグケージ(3)には、周方向に連続して前記スプラグケージ(3)において回転可能に配置された各スプラグ(5)が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のケージフリーホイール。
【請求項3】
前記軌道盤(7)と前記スプラグケージ(3)とは、少なくとも部分的に相補係合的に互いに入り組む係合継ぎを介して連結されていることを特徴とする、請求項2に記載のケージフリーホイール。
【請求項4】
前記軌道盤(7)は、前記スプラグケージ(3)に対して回転可能であるものの軸方向に対して固定されていることを特徴とする、請求項3に記載のケージフリーホイール。
【請求項5】
前記係合継ぎは、燕尾状、フック状、またはキノコ状に周方向に延伸する係合プロファイルを有することを特徴とする、請求項3または4に記載のケージフリーホイール。
【請求項6】
前記係合プロファイルは、同心円状に連続したリングあるいは部分的に中断されたリングとして形成されることを特徴とする、請求項5に記載のケージフリーホイール。
【請求項7】
前記係合継ぎは、前記軌道盤(7)に形成されて前記軌道盤(7)の周方向を連続するまたは周方向に分割するように形成される凹部を有することを特徴とする、請求項5または6に記載のケージフリーホイール。
【請求項8】
前記係合プロファイルは、前記スプラグケージ(3)に形成され、前記軌道盤(7)の凹部の後ろに半径方向内側から外側に係合することを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載のケージフリーホイール。
【請求項9】
前記軌道盤(7)は、前記シャフトまたは前記ハブに固定されており、それぞれ他方の部分に対して回転可能であることを特徴とする、請求項2から8のいずれか一項に記載のケージフリーホイール。
【請求項10】
前記軌道盤(7)は、すべり軸受、特にラジアルすべり軸受、好ましくはラジアルすべり軸受とアキシャルすべり軸受の組み合わせとして形成されることを特徴とする、請求項2から9のいずれか一項に記載のケージフリーホイール。
【請求項11】
前記各スプラグ(5)は、前記スプラグケージ(3)において着脱不能であるように配置されることを特徴とする、請求項2から10のいずれか一項に記載のケージフリーホイール。
【請求項12】
ハブ(2)と、前記ハブに対して相対回転可能なシャフト(1)と、シャフトとハブとの間におけるクランプギャップに配置された、前項のいずれか一項に記載のケージフリーホイールとを有し、前記ケージフリーホイールの片側に隣接してラジアル軸受として形成されたころ軸受またはすべり軸受が配置されており、前記ころ軸受またはすべり軸受を介してシャフト(1)とハブ(2)とが互いに対して支持されているシャフト・ハブ構造。
【請求項13】
前記ケージフリーホイールの前記軌道盤(7)が前記シャフト(1)または前記ハブ(2)に固定されており、それぞれ他方の部分に対して回転可能であることを特徴とする、請求項12に記載のシャフト・ハブ構造。
【請求項14】
前記スプラグケージ(3、13)には、周方向に連続して各軸受ローラ(4)のみならず各スプラグ(5)が設けられ、前記各スプラグ(5)はクラッチイン方向に弾力的に付勢されていることを特徴とする、請求項1のいずれか一項に記載のケージフリーホイール。
【請求項15】
前記フリーホイールケージ(3、13)は、少なくとも一つの軸方向に突出する突起(3b、13b)を有し、前記突起は軸方向に隣接し、軸方向に固定されている前記軌道盤(7、17)に相補係合し、その際に前記軌道盤に対して回転可能であるものの軸方向に固定されていることを特徴とする、請求項14に記載のケージフリーホイール。
【請求項16】
前記フリーホイールケージ(3、13)の前記少なくとも一つの軸方向の突起(3b、13b)は、燕尾状、フック状、またはキノコ状の断面を有し、前記軌道盤(7、17)における相応する凹部(7a、17a)の後ろに半径方向に係合することを特徴とする、請求項15に記載のケージフリーホイール。
【請求項17】
前記フリーホイールケージ(3、13)の前記少なくとも一つの軸方向の突起(3b、13b)は、同心円状に連続したリングまたは部分的に中断されたリングとして形成されることを特徴とする、請求項16に記載のケージフリーホイール。
【請求項18】
前記軌道盤(7、17)における前記凹部(7a、17a)は、周方向を連続するまたは周方向に分割するように形成されることを特徴とする、請求項16または17に記載のケージフリーホイール。
【請求項19】
前記フリーホイールケージ(3、13)の前記少なくとも一つの軸方向の突起(3b、13b)は、前記軌道盤(7、17)における前記凹部(7a、17a)の後ろに半径方向内側から外側に係合することを特徴とする、請求項16から18のいずれか一項に記載のケージフリーホイール。
【請求項20】
前記軌道盤(7、17)は、隣接するシャフト部分またはハブ部分(1、2)に固定され、それぞれ他方の部分(2または1)に対して回転可能であることを特徴とする、請求項15から19のいずれか一項に記載のケージフリーホイール。
【請求項21】
前記軌道盤(7、17)は、すべり軸受として形成されることを特徴とする、請求項15から20のいずれか一項に記載のケージフリーホイール。
【請求項22】
前記軌道盤(7、17)は、ころ軸受を介して前記シャフト部分または前記ハブ部分(1または2)に対して回転可能に支持されることを特徴とする、請求項15から20のいずれか一項に記載のケージフリーホイール。
【請求項23】
前記各スプラグ(5)のばね荷重は、前記フリーホイールケージ(3、13)に対して同心状に配置されたばねリング(6)によって実施され、前記ばねリングは各弾性ばね舌(6a)を介して前記各スプラグ(5)をクラッチイン方向へ付勢することを特徴とする、請求項14から22のいずれか一項に記載のケージフリーホイール。
【請求項24】
前記各軸受ローラ(4)と前記スプラグ(5)は、―必要に応じて各弾性保持要素を介在させて―好ましくは前記軌道盤(7、17)と共に前記フリーホイールケージ(3、13)において着脱不能であるように支持されることを特徴とする、請求項14から23のいずれか一項に記載のケージフリーホイール。
【請求項25】
前記フリーホイールケージ(3、13)は、前記各スプラグ(5)と前記各軸受ローラ(4)の支持に追加的に寄与する、同心状に配置された支持リング(23、33)を有することを特徴とする、請求項14から24のいずれか一項に記載のケージフリーホイール。
【請求項26】
クランクセット(41)、スプロケット(40)およびボトムブラケット(42)を有する駆動軸(1)からなり、前記駆動軸(1)はフリーホイールを介して歯車(43)と連結されており、前記歯車自身は減速ギア(44)を介して電気モータ(45)に接続されており、前記フリーホイールは、フリーホイールケージ(3)を有し、前記フリーホイールケージには周方向に連続して各軸受ローラ(4)のみならず各スプラグ(5)が設けられ、前記各スプラグが巻取方向に弾性的に付勢されている電動自転車の駆動部において、
前記フリーホイールケージ(3)は、少なくとも一つの軸方向に突出する突起(3b)を有し、前記突起は軸方向に隣接する、軸方向に固定された軌道盤(7)と相補係合し、その際に前記軌道盤に対して回転可能であるものの軸方向には固定されていることを特徴とする電動自転車の駆動部。
【請求項27】
請求項16から25のいずれか一項に記載のケージフリーホイールを有する、請求項26に記載の電動自転車の駆動部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に電動自転車の駆動部においてシャフトとハブとの間のクランプギャップに設置されるためのケージフリーホイールに関し、当該ケージフリーホイールは、スプラグケージを有し、スプラグケージには周方向に連続してスプラグケージにおいて回転可能に配置された各スプラグが設けられており、各スプラグはクラッチイン方向に弾力的に付勢されている。
【背景技術】
【0002】
ケージフリーホイールは、多数の実施形態において公知であり、例えば同一出願人による独国特許出願公開第102009030614号明細書および独国特許出願公開第102011108413号明細書を参照されたい。冒頭で述べた各特徴を有するケージリングは、独国特許出願公開第102019218785号明細書から知られるようになった。
【0003】
基本的にフリーホイールが外部の半径方向支持と軸方向支持とを必要とするのは、各スプラグの正確な位置合わせによってのみ自身の機能が確保されるからである。ハブに対してシャフトを傾きのない状態で支持するには、シャフトとハブとを互いに対して二つの支点で支持する必要がある。シャフトとハブとの間のクランプギャップにケージフリーホイールが設置されると、フリーホイールの確実な機能を保証するために従来はケージフリーホイールの両側にすべり軸受またはころ軸受が配置される。このことは各構成要素の荷重設計によっては相応して大きな軸方向の構造寸法につながる。加えて三つの別個の構成要素、すなわち二つの軸受と一つのフリーホイールが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009030614号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102011108413号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102019218785号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動自転車の駆動部の開発の過程において従来のフリーホイールならびに支持に必要とされる外部のころ軸受またはすべり軸受がかなりの設置スペースを必要とすることが判明した。このことが望ましくないのは、これによって従来の自転車と比較して各ペダル間の距離または駆動部ハウジングの軸方向の設置スペースが大きくなるためである。これに基づき、本発明は軸方向において可能な限りコンパクトなシャフト/ハブ連結を可能とするスプラグ・ケージフリーホイールを開発するという課題に基づいている。
【0006】
当該課題は、本発明において冒頭で述べた類のケージフリーホイールにおいてスプラグケージに軸方向に隣接して軌道盤が配置されていることによって解消される。ここで軌道盤の外径および内径は、軸受ギャップの公称寸法から軸受公差を差し引いたものに相応するため、軌道盤はシャフト部品とハブ部品との間においてすべり軸受として機能する。これにより軌道盤は、シャフト/ハブ連結において片側のみのフリーホールとは別個の支持を有するようにケージフリーホイールを構成することを可能にするのは、好ましくはフリーホイールの外部ころ軸受とは反対側における側面に配置される軌道盤が第二の支点を形成することで、一つのころ軸受しか使用していないにもかかわらずシャフトがハブに対して傾斜することを防止するからである。したがって第二のころ軸受を省略することによりシャフト/ハブ連結を軸方向によりコンパクトに設計することが可能であり、さらには安価で堅牢な構造にもつながる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の実施形態において、環状のスプラグケージには周方向に連続して各スプラグが設けられており、各スプラグはスプラグケージの相応する各凹部または各ポケットに挿入されている。これにより本発明は、周方向に連続する各スプラグと各軸受ローラとが用いられ、ころ軸受と組み合わされるフリーホイールを電動自転車の駆動部に使用することを提案している、例えば独国特許出願公開第102019218785号明細書とは異なるアプローチを採用している。本発明による、周方向に連続して各スプラグを設けることによって合計してより大きなスプラグ面が利用可能となるため、フリーホイールは、組み合わせられた、連続して各軸受ローラおよび各スプラグが設けられたフリーホイールに比べて同じ寸法であってもより高い負荷に対応するように設計され得る、または同じ負荷設計であってもより小さい寸法を有するようにすることが可能となる。
【0008】
別個の、フリーホイールの片側に配置されたころ軸受との組み合わせにおける軌道盤は、シャフト部分とハブ部分の間の接触面を広げることで、例えば電動自転車の駆動部において通常使用される、ヘリカルギア状の歯車をハブ部分として支持した場合に生じる傾斜力に対するフリーホイールの剛性を高める。
【0009】
有利な実施形態において軌道盤は、少なくとも部分的に相補係合的に互いに入れ組む係合継ぎを介してスプラグケージと連結されている。これにより軌道盤およびスプラグケージを別々に製造し、係合継ぎを介して容易に連結することが可能となる。当該実施形態の利点は、軌道盤およびスプラグケージを別々の、それぞれの機能に最適な材料、例えばケージをポリアミドやポリエチレンエーテルケトン(PEEK)などの弾性プラスチック、軌道盤を真鍮または硬化鋼などの適切な金属を用いて製造することが可能であることにある。
【0010】
別の有利な実施形態において軌道盤は、スプラグケージに対して回転可能であるものの軸方向に固定されている。このことがとりわけ有利であるのは各スプラグを固定方向に対して直立させる場合にフリーホイールケージが互いに対して固定された接触面に対して各スプラグの回転動作に抗した相対回転を実施するためである。したがってフリーホイールケージに対して回転可能である軌道盤によって相対回転が軌道盤に伝達されないため、軌道盤を接触面の一つに対して回転不動に保持することが可能である。
【0011】
少なくとも部分的に相補係合的に互いに入れ組むスプラグケージと軌道盤との間における係合継ぎの構造形成については当業者にとって様々な可能性がある。よって例えば当該係合継ぎは、燕尾状、フック状、またはキノコ状に周方向に延伸する係合プロファイルを有し得る。
【0012】
係合プロファイルが同心円状に連続したリングあるいは部分的に中断されたリングとして形成されると構造的に特に有利である。同様に、係合継ぎが軌道盤に形成されて軌道盤の周方向を連続するまたは周方向に分割するように形成される凹部を有すると構造的に特に有利である。例えば凹部は、軌道盤の円周上に分散して配置された、それぞれ60度の三つの部分を有することが可能である。
【0013】
基本的には係合プロファイルがスプラグケージに形成され、軌道盤の凹部に半径方向内側から外側に係合することが好適である。
【0014】
軌道盤の軸方向への固定は、シャフトまたはハブにおいて実施され得、例えばすべり軸受の形においてあるいはころ軸受を介在させることによって軌道盤は他方の部分に対して自由に回転可能である。
【0015】
同様に基本的に好適であるのは、軌道盤をすべり軸受、特にラジアルすべり軸受、好ましくはラジアルすべり軸受とアキシャルすべり軸受の組み合わせとして形成することである。
【0016】
各スプラグは、必要に応じて各弾性保持要素を介在させてスプラグケージにおいて着脱不能であるように配置されることが好ましい。これによりユーザはシャフトとハブの間のリングギャップに容易に挿入され得るアッセンブリを得る。軌道盤の軸方向への固定は、シャフトまたはハブに対する圧入またはねじ接続によって得ることが可能である。
【0017】
本発明はさらにシャフト・ハブ構造に関し、当該シャフト・ハブ構造は、ハブと、ハブに対して相対回転可能なシャフトと、シャフトとハブとの間におけるクランプギャップに配置された、前述の類のケージフリーホイールとを有し、ケージフリーホイールの片側に隣接してラジアル軸受として形成されたころ軸受が配置されており、ころ軸受を介してシャフトとハブとが互いに対して支持されている。このようなシャフト・ハブ構造の構造により、フリーホイールの両側において各ころ軸受が設けられた構造と比べてシャフト・ハブ構造の軸方向の全長が短くなるため、相応して特に電動自転車の配置ではクランクセットまたは駆動部ハウジングを軸方向に狭く形成することが可能となる。
【0018】
フリーホイールケージが好ましくは自身の軌道盤とは反対側においてころ軸受に対して軸方向に接触していることが構造的に特に有利である。しかしながら軌道盤がころ軸受に対して軸方向に接触している配置も可能である。
【0019】
同様に、両軸受の位置をケージに対して相補係合的にクリップ固定することも可能である。
【0020】
同様に構造的に特に有利であるのは、ケージフリーホイールの軌道盤がシャフトまたはハブに固定されており、それぞれ他方の部分に対して回転可能であることである。
【0021】
第二の実施形態においてケージリングの形におけるケージフリーホイールのフリーホイールケージに周方向において各スプラグのみならず各軸受ローラもが設けられている。これによりスプラグ・フリーホイールにローラ軸受が組み込まれ、これによりシャフト部分とハブ部分との間のリングギャップにおける追加のころ軸受を省略することが可能となる。各スプラグと各軸受ローラが周方向において交互に共通のフリーホイールケージに配置されているスプラグフリーホイールは、独国特許出願公開第102019218785号明細書および独国特許出願公開第102006004491号明細書から知られるようになった。
【0022】
本発明によると第二の実施形態によるフリーホイールケージは、少なくとも一つの軸方向に突出する突起を有し、突起は軸方向に隣接し、軸方向に固定されている軌道盤と相補係合し、その際に軌道盤に対して回転可能であるものの軸方向には固定されている。こうしてフリーホイールケージは、軌道盤に対して自由に相対回転可能である。
【0023】
これにより高い出力密度を有しながら自身に対して固定される機械部品の正確な支持を保証する、すなわち生じる半径方向力、軸方向力および傾斜力を吸収することが可能であり、特にコンパクトな構造のスプラグ・ケージフリーホイールを開発するという課題が解消される。さらに当該新規構造は、高い操作安全性と有利な製造コストとを特徴とする。
【0024】
よって本発明は、各スプラグと各軸受ローラとが設けられたケージとラジアル/アキシャルすべり軸受とを組み合わせるため、ケージフリーホイールのさらなる軸方向の固定をもはや必要としない。これにより設置スペースを大幅に削減することが可能となる。
【0025】
軌道盤は、シャフト部分とハブ部分との間におけるクランプギャップに対してケージフリーホイールを軸方向に固定するだけではなく、シャフト部分とハブ部分との間における接触面をも広げることにより、例えば電動自転車の駆動部において通常使用される、ヘリカルギア状の歯車をハブ部分として支持した場合に生じる傾斜力に対するフリーホイールの剛性を高める。
【0026】
フリーホイールケージの軸方向の突起の構造形成については当業者にとって様々な可能性がある。よって例えば突起は、燕尾状、フック状、またはキノコ状の断面を有し得て、断面によって軌道盤における相応する凹部に半径方向に係合する。同様に突起と軌道盤との運動学的反転も本発明の範囲内にあり、例えば軌道盤が突起を有し、フリーホイールケージにおける凹部に係合する。
【0027】
フリーホイールケージの少なくとも一つの軸方向の突起が同心円状に連続したリングまたは部分的に中断された、例えばスリット入りリングとして形成されると構造的に特に有利である。軌道盤におけるアンダーカットが設けられた、係合される凹部は、周方向に連続して(すなわち中断せずに)形成され得る。しかしながら製造上の理由から、特に軌道盤が焼結部品または射出成形部品として製造される場合、軌道盤における凹部が同様に分割されていると有利であり得る。例えば凹部は、軌道盤の円周上に分散して配置された、それぞれ60度の三つの部分を有することが可能である。このように形成することにより製造ツールからアンダーカットが設けられた各領域を取り外すことが容易になる。
【0028】
基本的にはフリーホイールケージの軸方向の突起が軌道盤における各凹部に半径方向内側から外側に向かって係合することが好適である。これにより特にフリーホイールケージがプラスチック製であったり未閉リングとして形成されていたりする場合、弾性的スナップによって係合を実現することが容易になる。同様に可能であり、本発明に含まれる代替変形例では、フリーホイールケージの軸方向の突起が軌道盤における各凹部に半径方向外側から内側に向かって係合する、すなわち突起の凹部に嵌合する部分が外側に向いている。このことは製造上の各メリットを提供し得る。
【0029】
軌道盤の軸方向への固定は、シャフト部分またはハブ部分において実施され得、例えばすべり軸受の形あるいはころ軸受を介在させることによって軌道盤は他方の部分に対して自由に回動可能である。
【0030】
クラッチイン方向における各スプラグのばね荷重に関しては、フリーホイールケージに対して同心状に配置された弾性ばねリングを用いることが特に有利であることが判明しており、ばねリングは各弾性ばね舌を介して各スプラグをクラッチイン方向へ付勢する。
【0031】
各スプラグおよび各軸受ローラは、必要に応じて各弾性保持要素を介在させて、好適には軸方向への支保として機能する軌道盤と共にフリーホイールケージにおいて着脱不能であるように支持されることが好ましい。これによりユーザは、シャフトとハブの間のリングギャップに容易に挿入され得るアッセンブリを得ることが可能である。軌道盤の軸方向への固定は、シャフトまたはハブに対する圧入またはねじ接続によって得ることが可能である。
【0032】
最後にフリーホイールケージが各スプラグと各軸受ローラの支持に追加的に寄与する同心状の支持リングを有することが本発明の範囲内にある。よってフリーホイールケージおよび支持リングは、二部式フリーホイールケージを形成する。二部式ケージは、一方では各スプラグをそれぞればね付勢して好ましくは板金プレス部品として形成されるばねリングが開放している、すなわち周方向に対して接合部に対して連結されていない場合に曲がらないように防止する。他方では当該二部式ケージは、特にフリーホイールケージと支持リングが互いに対して機械的に固着されていない場合、各スプラグのクラッチイン時に利点を奏する。この場合、両方が互いに可動であるケージリングおよび支持リングは、各スプラグのクラッチイン動作の同期をもたらす。
【0033】
さらに本発明は、電動自転車の駆動部に関し、当該駆動部は、クランクセット、スプロケットおよびボトムブラケットを有する駆動軸からなり、駆動軸はフリーホイールを介して歯車と連結されており、歯車自身は減速ギアを介して電気モータに接続されており、フリーホイールはフリーホイールケージを有し、フリーホイールケージには周方向に連続して各軸受ローラのみならず各スプラグが設けられ、各スプラグを巻取方向に弾性的に付勢し、フリーホイールケージは少なくとも一つの軸方向に突出する突起を有し、突起は軸方向に隣接し、軸方向に固定されている軌道盤に相補係合し、その際に軌道盤に対して回転可能であるものの軸方向には固定されている。フリーホイールケージのこのような構造により軸方向の全長が短くなるため、相応してクランクセットを軸方向に狭く形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明の更なる各詳細および各特徴は、各図面を参照して四つの各実施形態例の以下の説明から明らかになる。
【0035】
図1】シャフトとハブとの間のクランプギャップに設置されたケージフリーホイールと片側にころ軸受とを有するシャフト・ハブ構造の半径方向断面図である。
図2】ラジアル軸受仕様の相補係合軌道盤を有するケージフリーホイールの第一の実施形態例の斜視図である。
図3図2におけるケージフリーホイールの半径方向断面図である。
図4】ラジアル軸受/アキシャル軸受仕様の相補係合軌道盤を有するケージフリーホイールの第二の実施形態例の斜視図である。
図5図4におけるケージフリーホイールの半径方向断面図である。
図6】ラジアル軸受仕様の相補係合軌道盤を有するケージフリーホイールの第三実施形態例の斜視図である。
図7図6におけるケージフリーホイールの半径方向断面図である。
図8】ラジアル軸受/アキシャル軸受仕様の相補係合軌道盤を有するケージフリーホイールの第四実施形態例の斜視図である。
図9図8におけるケージフリーホイールの半径方向断面図である。
図10】第二の実施形態による、連続して各スプラグと各軸受ローラとが設けられたケージフリーホイールの第一の変形例であって自身の各構成要素を斜視図において個別に図示したものである。
図11図10における同じ各構成要素の半径方向断面図である。
図12】シャフト/ハブ連結において図10および図11における組み立てられたケージリングである。
図13】第二実施形態によるケージフリーホイールの第二変形例であって、自身の各構成要素を斜視図において個別に図示したものである。
図14図13における同じ各構成要素の半径方向断面図である。
図15】シャフト/ハブ連結において図13および図14における組み立てられたケージリングである。
図16】第二実施形態によるケージフリーホイールの第三変形例であって、自身の各構成要素を斜視図において個別に図示したものである。
図17図16における同じ各構成要素の半径方向断面図である。
図18】シャフト/ハブ連結において図16および図17における組み立てられたケージリングである。
図19】第二実施形態によるケージフリーホイールの第四変形例であって、自身の各構成要素を斜視図において個別に図示しており、ケージリングにおいて分割して形成された突起を有するものである。
図20図19における同じ各構成要素の半径方向断面図である。
図21】シャフト/ハブ連結において図19および図20における組み立てられたケージリングである。
図22】軌道盤が分割した凹部を有する、第四変形例の別途実施例である。
図23】ケージリングにおける突起のみならず軌道盤における凹部もが分割して形成されている、第四変形例のさらなる別途実施例である。
図24図10から図23によるケージフリーホイールが設けられた電動自転車の駆動部である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、ハブ2と、ハブに対して相対回転可能なシャフト1と、シャフトとハブの間におけるクランプギャップに配置されたケージフリーホイール3とを有するシャフト・ハブ構造を図示している(図5および図6を参照のこと)。ケージフリーホイール3に対して回転可能であるもののハブ2に対して軸方向に固着された軌道盤7は、ハブ2の相応する凹部に嵌め込まれており、シャフトに対して摺動支持されている。さらに本例における軌道盤は、ケージフリーホイールの軸方向支持を可能にし、これにより軸方向への固定によりスプラグケージの傾斜を防止する。本実施形態において半径方向支持は、ころ軸受4と軌道盤7との協働とにより形成される。よってころ軸受4と軌道盤7とを介してころ軸受4を一つしか使用していないのにもかかわらずケージフリーホイールの両側支持が実現される。
【0037】
図2においてケージフリーホイールが見受けられ、ケージフリーホイールは、平らな円筒形のリングの形における、周方向に連続する複数のポケットを有するスプラグケージ3を有する。ケージフリーホイールは、シャフト部分とハブ部分(本図においては図示せず)の間に配置される。スプラグケージ3の各ポケットには各スプラグ5が挿入される。各スプラグ5は、自身の各ポケットにおいてそれ自体公知である方法でわずかな傾斜動作を実施することにより固定方向においてシャフト部分とハブ部分との間においてトルク伝達を生じさせ得る。高いトルクを伝達するためにスプラグケージ3には可能な限り多くのスプログ5が設けられる。
【0038】
多くはスプラグとも称されるスプラグ・フリーホイールの各スプラグ5は、製造上非円形に構成されており、よって一つは長い、もう一つは短い横方向延伸方向を有する。自身の長い横方向延伸において各スプラグは、クラッチイン時にシャフト部分の外面とハブ部分の内側すべり面とによって形成されるリングギャップに挟まれるように形成される。
【0039】
各スプラグ5が確実にクラッチインされるようにするために各スプラグは、ここではスプラグ列の周りの周方向に設けられたスパイラルばねの形における、リング状に囲むばねリング6によってクラッチイン方向に付勢あるいはプレストレスされている。そのため各スプラグは、自身の外側接触面において周囲を囲む溝を有しており、溝にばねリング6が挿入される。
【0040】
本発明は、例えば個々にばね付勢された、あるいは周囲を囲む板金ばねによってばね付勢された各スプラグ部分などのその他のケージ構造を用いても実現可能である。
【0041】
スプラグケージ3は、一方の側縁において軸方向および半径方向に突出した、フック状のプロファイルを有する第一の嵌合要素3aを有する(図3を参照のこと)。第一の嵌合要素3aは、部分的に軌道盤7における第二の嵌合要素7aに対応し、第二の嵌合要素は凹部またはアンダーカットを形成し、アンダーカットの背後に第一の嵌合要素3aが嵌合することが可能であり、アンダーカットに外側から内側へ係合する。したがって対応する両嵌合要素3a、7aは、互いに係合することが可能であり、軌道盤7とスプラグケージ3との間の相補係合的に互いに入り組む係合継ぎを形成する。
【0042】
ここで嵌合要素3aは分割されている、すなわち周方向に部分ごとに中断されて形成されている。これにより嵌合要素3aを軌道盤7の嵌合要素7aに対して弾性的にスナップすることが可能である。
【0043】
ここで嵌合要素3aは、突起を有する係合フックとして形成されている。当該係合フックは、軌道盤7の取り付け時に同様に係合フックとして形成されている嵌合要素7aの後に係合するまで軽く内側に押圧される。スプラグケージ3と軌道盤7の間の係合継ぎの当該実施形態は、取り付けが容易であり、このことは多くの用途にとって有利である。
【0044】
軌道盤は、自身の外周においてハブ部分に対する摺動面を形成する。これによりラジアル軸受としての機能が発揮される。本発明の範囲において軸受機能の運動学的反転、すなわちシャフト部分に対するすべり支持も可能である。
【0045】
図4から図9においてそれぞれ変更された各実施形態例が図示されている。以下、繰り返しを避けるために図2に図示される実施形態例との本質的な各相違点についてのみ説明する。同一または相応する各要素には同一の符号が付されている。
【0046】
図4においてケージフリーホイールの別の実施形態例が図示されている。軌道盤が半径方向に延伸する、フランジの態様における領域7bを有することが見受けられる(図5を参照のこと)。フランジ領域7bを介して軌道盤7がシャフト部分に対して軸方向に変位不動、好ましくはさらに回転不動に連結され得る。したがって本実施形態例において軌道盤7によって半径方向における支持のみならず軸方向への支持も得られる。
【0047】
スプラグケージ3と軌道盤7との間における係合継ぎは、軸方向において相補係合的であるものの周方向においては回転可能である。これによりケージリングの効果的な固定が得られ、さらなる軸方向の支保が不要であるという利点を有する。
【0048】
図6において軌道盤7がラジアル軸受として機能する、ケージフリーホイールの別の実施形態例が図示されている。当該実施形態において重要なのは、軌道盤7が一側縁において軸方向および半径方向に突出する、周囲を囲む嵌合要素3aを有することである(図6を参照のこと)。嵌合要素7aは、スプラグケージ3の嵌合要素3aと部分的に対応し、嵌合要素に内側から外側へ係合する。これにより軌道盤7とスプラグケージ3との相補係合的に互いに入り組む嵌合連結が形成される。
【0049】
この場合でも嵌合要素3aがスプラグケージ3において分割されて、すなわち部分ごとに中断されて形成されている。これにより突起7aがスプラグケージ3の嵌合要素3aに対して弾性的にスナップすることがより容易となる。
【0050】
ここで嵌合要素7aは、突起を有する係合フックとして形成されている。当該係合フックは、スプラグケージ3への取り付け時に同様に係合フックとして形成されている嵌合要素3aの後に嵌合要素7aが係合するまでスプラグケージの分割された嵌合要素3aを軽く内側に押圧する。スプラグケージ3と軌道盤7の間の係合継ぎの当該実施形態は、取り付けが容易であり、このことは多くの用途にとって有利である。本例において軌道盤は、取り付けをより容易にすることを目的として追加的な面取りを有している。
【0051】
図8においてケージフリーホイールの別の実施形態例が図示されている。軌道盤が半径方向に延伸する、フリーホイールケージに対して拡大した外径を有する領域7bを有することが見受けられる(図9を参照のこと)。軌道盤7の直径が拡大した領域がハブにおける相応する凹部に受け入れられることにより、軌道盤7はハブ部分に対して変位不動、好ましくはさらに回転不動に連結され得る。これにより軌道盤7は、半径方向におけるすべり支持に加えて軸支持をももたらす。軌道盤7も同様に、図6における実施形態例において見受けられるように容易な取り付けのために追加的な面取りを有している。
【0052】
ここでスプラグケージの嵌合要素3aは、再び分割されて、すなわち部分ごとに中断されて形成されている。これにより突起3aが軌道盤7の嵌合要素3aに対して弾性的にスナップすることがより容易となる。
【0053】
嵌合要素3aは、図6における実施形態例において見受けられるのと同様に突起を有する係合フックを有する。当該係合フックは、軌道盤の取り付け時に係合フックが軌道盤7において同様に係合フックとして形成されている嵌合要素7aの後に係合して嵌合要素に内側から外側に係合するまで軽く内側に押圧される。スプラグケージ3と軌道盤7の間の係合継ぎの当該実施形態は、取り付けが容易であり、このことは多くの用途にとって有利である。
【0054】
全ての各実施形態例は、ケージリングと軌道盤との間の相補係合や軌道盤7をラジアルまたは必要に応じてアキシャルすべり軸受として形成することにより、シャフトとハブを支持するための第二のころ軸受を省略することが可能であるため、設置スペースが最小限であることを特徴とする。
【0055】
図10による第二の実施形態において、内側のシャフト部分1と外側のハブ部分2が見受けられ、各部分の間にケージフリーホイールが組み込まれる。ケージフリーホイールは、周方向に連続する複数の窓3aを有する、平らな円筒形のリングの形における実際のケージリング3からなる。各窓3aに円筒形の各軸受ローラ4または各スプラグ5を挿入することが可能である。各軸受ローラ4がローラ軸受の機能を担う一方で、各スプラグ5は自身の各窓においてそれ自体公知である方法でわずかな傾斜動作を実施することにより、シャフト部分1とハブ部分2との間においてトルク伝達を生じさせ得る。高いトルクを伝達するためにリング3には可能な限り多くのスプラグ5が設けられるのに対して各軸受ローラ4の場合は最低三つの軸受ローラで十分であることが多い。
【0056】
各スプラグ5が確実にクラッチインするためには各スプラグはそれぞればねによってクラッチイン方向に付勢される。本実施形態例においてこれはリング状に周囲を囲むばねリング6によって実施され、ばねリングはそれぞれ各スプラグ5の領域においてばね舌6aを有する。
【0057】
多くはスプラグとも称されるスプラグ・フリーホイールの各スプラグ5は、製造上非円形に構成されており、よって一つは長い、もう一つは短い横方向延伸方向を有する。自身の長い横方向延伸において各スプラグは、各軸受ローラ4の直径よりも少し幅が大きいため、各スプラグはクラッチイン時にシャフト部分1の外面とハブ部分2の内側すべり面とによって形成されるリングギャップに挟まれる。自身の短い横方向延伸において各スプラグ5は、各軸受ローラ4の直径よりも少し幅が狭いため、各スプラグはクラッチイン方向に弾性的に付勢されてリングギャップの各すべり面において各すべり面に沿って摺動する。
【0058】
ここで重要なのは、ケージリング3が一方の側縁において軸方向および半径方向に突出した、周囲を囲むリング3bを有することである(図11を参照のこと)。この突出したリング3bは、軸方向に隣接した軌道盤7におけるアンダーカットの形における凹部7aに対応する。軌道盤7は、軸方向に変位不動、好ましくはさらにハブ部分2に対して回転不動に連結される。自身の内周面において軌道盤は、シャフト部分1に対して摺動面を形成している。
【0059】
図12において組み込まれた状態におけるケージリングが図示されている。特にアンダーカットを生じさせるケージリングの軸方向の突起3bが、ばねリング6がケージリング3内を延伸するようにほぼケージリングの外周に配置されていることが見受けられる。
【0060】
軸方向に固定された軌道盤7の凹部7aに軸方向に相補係合的に、しかしながら周方向には可動であるように係合するケージリング3の軸方向および半径方向に突出している突起3bの間の相補係合は、ケージリングの両軸方向に有効な固定が得られる、すなわちケージリングの反対側において追加的な軸方向の支保が不要であるという利点を有する。
【0061】
図13から図15においてケージリングの第二の別途実施例が図示されている。当該別途実施例は、実質的に同一の各部分からなるものの、ケージリング13と軌道盤17における凹部17aのみが第一の別途実施例の場合よりもわずかに小さな直径を有する。これによってケージリング13がばねリング6の外側ではなく内側を延伸することになる、図15を参照のこと。
【0062】
ばねリング13の内側位置は、ハブ2ではなくシャフト1と共に回転すべき場合に適している。この場合、軌道盤17をシャフトに対して固定することが可能であるのに対して、軌道盤は自身の外周においてハブ5に対して相対回転可能である。
【0063】
さらに第二の実施形態例において突起13bと凹部17aとの間における相補係合が第一の実施形態例のように燕尾状ではなくフック状に形成されている。そのため突起13bは円錐状に延伸する外側摺動面を有し、当該摺動面によって突起は係合時に凹部17aの内周における相応する摺動面に沿って摺動する。その際、係合フックの形に形成された突起13bは、当該突起が凹部17aによって形成されたアンダーカットの後に係合するまで軽く内側に押圧される。ケージリング13と軌道盤17の間の係合継ぎの当該実施形態は、第一の実施形態例における連結よりも取り付けが容易であって取り外しが困難であり、このことは多くの用途にとって有利である。
【0064】
図16から図18および図19から図21において、ケージリングの構造の第三および第四別途実施例が説明されている。当該別途実施例は、単独のケージリング3または13を用いるのではなくさらに追加的な支持リング23また33とともに用いる点においてのみ前述の各例とは異なる。支持リング23または33は、ケージリング3または13に類似して形成されており、よって特に各軸受ローラおよび各スプラグを収容するのに必要な各窓23aまたは33aを有する。支持リングは、ケージリング3または13における各スプラグ5および各軸受ローラ4の着脱不能な保持手段を支持し、各スプラグ5のクラッチイン動作の同期を実施する。
【0065】
図16から図18における構造において支持リング23は、ケージリング3の外側に配置されているのに対して図19から図21における構造における支持リング33は、ケージリング13の内側に配置されている、特に図18から図21を参照のこと。
【0066】
両ケースにおけるばねリング6は、ケージリング3または13と支持リング23または33との間に配置されている。
【0067】
ケージリング3または13、ばねリング6ならびに支持リング23または33は、金属製またはプラスチック製であり得る。
【0068】
さらに各閉リングではなく、開口した、半径方向に弾性を有する各リングを用いることも本発明の範囲内にある。
【0069】
図19において見受けられるように、図19において図示される実施形態例において突起3bがケージリング3において分割された、すなわち部分ごとに中断されて形成されたリングとして形成されている。これにより突起3bが軌道盤17における凹部17aに対して弾性的にスナップすることがより容易となる。
【0070】
図22において図示される変形例において、ケージリング3における突起3bに代えて軌道盤17における凹部17aまたはアンダーカットを形成する、軌道盤17の突出する縁が分割されて、すなわち部分ごとに中断されて形成されているのに対して突起3bは図10のように連続したリングとして構成されている。分割されてアンダーカットされた凹部17aは、軌道盤17が焼結部品または射出成形部品として製造される場合、前述のように製造上の利点を有する。
【0071】
最後に図23において組み合わされた変形例が図示されており、ここではケージリング3における突起3bだけではなく軌道盤17における凹部17aもが分割して形成されている。
【0072】
全ての実施形態例は、ケージリングと軌道盤との間の相補係合連結によってフリーホイールのさらなる軸方向への保定を必要としないため、最小限の設置スペースを特徴とする。
【0073】
図24においてハウジングが取り外された電動自転車の駆動部が図示されている。多くはボトムブラケットシャフトとも称される駆動軸1が見受けられ、駆動軸は、スプロケット40と、各ペダルを有する二つのターミナルクランクからなるボトムブラケット・セット41に固着されている。
【0074】
さらにボトムブラケット42が見受けられ、ボトムブラケットを介して駆動軸が自転車のフレームに支持されている。
【0075】
さらにボトムブラケットシャフト1は、ヘリカルギア状の歯車43と減速ギア44とを介して電気モータ45によって駆動可能である。
【0076】
そのため、歯車43は図10から図12におけるハブ部分2と連結されており、ハブ部分2とともに図10から図12において説明されたケージフリーホイール3を囲んでいる。ケージフリーホイール3に対して回転可能であるものの軸方向には固着されている軌道盤7は、ハブ部分2における相応する凹部に圧入されており、ボトムブラケットシャフト1に対して摺動支持されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
【外国語明細書】